主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 本件は、北海道猟友会甲支部の支部長であり、ヒグマを駆除するためにライフル銃を発射した被控訴人が、公安委員会から銃砲所持許可を取り消す旨の処分を 受けたところ、当該処分は銃砲刀剣類所持等取締法(令和3年6月16日号外法律第69号による改正前のもの。以下「銃刀法」という。)所定の要件を満たさず、また、同公安委員会の判断は裁量権を逸脱・濫用したものであると主張して、控訴人に対し、その取消しを求める事案である。 原審は被控訴人の請求を認容したところ、控訴人がこれを不服として控訴し た。 2 関係法令等の定めは別紙1のとおりである。 3 前提事実は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第2の2に記載のとおりであるから、これを引用する(以下、原判決を引用する場合、「原告」を「被控訴人」と、「被告」を「控訴人」、「別紙」を「原判決別紙」 とそれぞれ読み替える。また、略称は原判決の例による。)。 (1) 原判決3頁20行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件発射行為の際の被控訴人、本件ヒグマ及び周辺の建物の位置関係は、おおむね本判決別紙2記載のとおりであった。」(2) 原判決3頁24行目「弾丸の到達するおそれのある建物に向かって」を「弾 丸の到達するおそれのあるa 市bc 番d 所在のA方居宅(以下「本件建物」と いう。)等に向かって(中略)発射して(中略)もって、弾丸の到達するおそれのある建物に向かって」と改める。 丸の到達するおそれのあるa 市bc 番d 所在のA方居宅(以下「本件建物」と いう。)等に向かって(中略)発射して(中略)もって、弾丸の到達するおそれのある建物に向かって」と改める。 (3) 原判決3頁24行目から25行目にかけての「鳥獣保護管理法」を「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(以下「鳥獣保護管理法」という。)」と改める。 (4) 原判決4頁7行目末尾に改行の上、次を加える。 「(6) 銃に関する用語安土(あづち) 弾が必要以上に遠くに飛んで、人家などに到達してしまうことのないように弾の行く手をさえぎる土手などのこと。バックストップともいわれる。 跳弾岩などに当たって跳ね返り、思わぬ方向に飛んでいく弾のこと。 (乙23)」 4 主要な争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件処分が銃刀法11条1項1号の要件を充足しているか(争点①) (控訴人の主張)本件現場の付近には、別紙2及び別紙3『処分関係記録を基に公安委員会が認定した本件現場の概念図』のとおり、ライフル銃の弾丸が到達する範囲内に5軒の建物(本件建物、本件一般住宅、本件物置、本件空き家及びe 会館。以下、これらの建物を併せて「本件周辺建物5軒」という。)が存在しており、 誤射や跳弾によって本件周辺建物5軒に弾丸が到達するおそれがあった。 したがって、被控訴人による本件発射行為は、「弾丸の到達するおそれのある(中略)建物(中略)に向かって」銃猟をすることを禁止する鳥獣保護管理法38条3項に違反し、銃刀法10条2項1号に違反するから、本件処分は同法11条1項1号を充足する。 この点につき被控訴人は、本件現場 )に向かって」銃猟をすることを禁止する鳥獣保護管理法38条3項に違反し、銃刀法10条2項1号に違反するから、本件処分は同法11条1項1号を充足する。 この点につき被控訴人は、本件現場にはバックストップが存在していたた め、その背後の建物に弾丸が到達するおそれはなかったと主張する。 しかしながら、本件ヒグマは、本件発射行為当時、本件現場に存する斜面上方の傾斜が緩やかな部分におり、その背後には、本件周辺建物5軒との間に遮蔽物は存在しなかった。また、仮に被控訴人が捜査段階で作成した図面(乙18の10枚目)のとおり、本件発射行為により発射された弾丸の弾道が市道と 被控訴人の間の地面に交わるものであったとしても、跳弾により背後の建物に到達する可能性があり、やはりバックストップがあったとはいえない。 (被控訴人の主張)被控訴人の主張は、次のとおり補正するほか、原判決5頁8行目冒頭から17行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決5頁8行目「高さ約8m」の後に「(当審における検証の結果に従っても約3m)」と加える。 イ原判決5頁10行目「また、」の後に「ライフル銃は、銃身にライフリングという直進性を向上させるためのらせん状の溝が切られており、これが弾丸に回転力を与えるため弾丸の直進性が向上し、最大で300メートル先の 対象物に命中させることが可能な程度の命中精度を有する一方、」と加える。 ウ原判決5頁17行目末尾に次を加える。 「控訴人は跳弾の可能性を指摘するが、本件ヒグマのいた地点からは本件周辺建物5軒は視認できないから、本件ヒグマに命中した弾丸が跳弾して本件周辺建物5軒に到達するおそれはなかったというべきである。」 (2) 本件処分が公安委員会の裁量権 のいた地点からは本件周辺建物5軒は視認できないから、本件ヒグマに命中した弾丸が跳弾して本件周辺建物5軒に到達するおそれはなかったというべきである。」 (2) 本件処分が公安委員会の裁量権の逸脱・濫用に該当するか(争点②)本件処分が同公安委員会の裁量権の逸脱・濫用に該当するかどうかに係る当事者の主張は、原判決6頁7行目冒頭から7頁9行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被控訴人の請求を棄却すべきと判断する。その理由は次のとおり である。 2 認定事実前記前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、(1)ないし(5)の各事実が認められる。 (1) 本件ライフル銃は、レミントンM700 口径7.62ミリメートルである。 その最大到達距離は、約3キロメートルから約4キロメートルと推定されている。被控訴人は、本件ライフル銃が威力を有することから、ヒグマを駆除する際に本件ライフル銃を使用していた。 同口径のライフル銃について、その弾丸貫徹力を示す弾丸エネルギーが2773J、100メートル先の3.2mmの鋼板3枚を貫通する威力を有する旨 の記載がある文献が存する。 また、馬の骨部を完全に破砕し、徹底的効力を与えるための弾丸活力は、35.0kgf・m(注:約343J)以上である旨の記載がある文献が存する。 (乙7〔6、7頁〕、16〔2頁〕、56、57、弁論の全趣旨)(2) 銃猟に関する文献の記載 ア環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室が協力し一般社団法人大日本猟友会が発行した「狩猟読本」(平成29年4月(平成30年4月増刷(一部改訂)発行)「(1) 銃器の取扱い上の厳守事項(略) ③ 射撃方向射撃 管理室が協力し一般社団法人大日本猟友会が発行した「狩猟読本」(平成29年4月(平成30年4月増刷(一部改訂)発行)「(1) 銃器の取扱い上の厳守事項(略) ③ 射撃方向射撃方向の左右90°に射撃線を想定し、その線の前方に人がいたら発砲してはならない。 (略)④ 矢先の確認 (略)藪や森林の中で離れて共猟する時は、時々合図して位置を知ら せ合う。藪や茂みの奥や、それを越えた先に人がいたり人家があったりする場合が少なくないので、見通しの悪い所や灌木越しの発砲はしない。(略)(2) 基本的注意事項(略) (3) 個別の注意事項(略)⑥ 安土の確認・尾根越え発砲の禁止ライフル実包やスラッグ実包を撃つ時は、必要以上に遠くまで飛ばないように、前方に安土(バックストップ:山・崖・高い土手など) があることを確認する。ライフル弾やスラッグ弾などの単体弾は、前方に安土の無い限り発砲しない。単体弾は遠方まで飛ぶし、推力を失って落下するものにも貫徹力(殺傷力)があるので、尾根を超える様な撃ち方もしてはならない。 (略) ⑪ 跳弾跳弾を避けるため、氷の面、堅い地面、岩などの硬いものに向かって発砲しない。竹林に向かったり、竹林の中での発砲は跳弾の危険が多いから慎む。また、水面に向かって発砲する時も、跳弾の危険が多いので広く前方の安全に注意する。」 「巻き狩り(大物猟)の注意事項(略) 7 跳弾に注意すること。 大物猟用の実包は跳弾の発生率が高く、特に高速ライフル弾は危険が高く、小枝等に触れただけでも跳弾になり易いため、藪の中等での使用 は好ましくない。弾丸は物体に対し45度以上の角度で当たると跳弾と なりやすい。また岩場や凍 特に高速ライフル弾は危険が高く、小枝等に触れただけでも跳弾になり易いため、藪の中等での使用 は好ましくない。弾丸は物体に対し45度以上の角度で当たると跳弾と なりやすい。また岩場や凍結箇所など、跳弾はいつ発生するかわからないので大変危険である。 8 安土のない所へ発砲しないこと。 これは弾丸が猟場外へ飛び出る危険があるためである。ライフル銃弾の場合は、4km先まで飛行することがあるので、峰越しの獲物や尾根 道を走る獲物への発砲は最も危険である。獲物の向こう側が常に安土(山腹)になるように(安土に向かって発砲できるように)位置を決める。」(乙50)イ一般社団法人全日本指定射撃場協会発行の猟銃等取扱読本(平成27年3 月1日発行16訂版)「跳弾が出るものに向けての発射禁止射撃場では、銃口を地面に向けて発射すると、コンクリートの工作物などにより跳弾が発生します。また、猟場では石垣、竹やぶ、ビニールハウスの鉄パイプなどのほか水面に向けて発射したときにも跳弾が発生しま す。 跳弾は飛んでいく方向が分からず、事故となる例が多くあります。」(乙48)ウ財団法人防衛技術協会刊、弾道学研究会編火器弾薬技術ハンドブック(改訂版) 「弾丸の跳飛(ricochet)とは、弾丸が地表面または水面で破砕したり、地中または水中に潜入してしまうことなく、再び空中に飛び出す状態をいう。」「弾丸の跳飛の一般的様相はきわめて複雑であり、弾着時の弾丸および弾着地の条件によって変化する。すなわち、弾丸としては弾丸の形状、質量、 旋速、着速、弾着角などが影響し、弾着地の条件としては地形(平坦地か 起伏地か)、地質(砂地、土壌、岩盤、さらにはその土質、埴生、含水量など)によって跳飛の様相 ては弾丸の形状、質量、 旋速、着速、弾着角などが影響し、弾着地の条件としては地形(平坦地か 起伏地か)、地質(砂地、土壌、岩盤、さらにはその土質、埴生、含水量など)によって跳飛の様相は著しく異なる。」「入射角(注:入射点における弾道接線と地面のなす鋭角)(中略)を次第に増やしていくと50パーセントの弾丸が跳飛し、その他は跳飛せずに土中に残るような入射角が存在する。この角度を跳飛限界(中略)という。」 上記文献には、跳飛限界付近における入射速度と入射角の関係の一例を示す図があり、同図によれば、入射角20ないし25度程度が跳飛限界とされ、それより入射角が小さい場合は高い確率で跳飛が起こったとされている。 (乙56)(3) 本件発射に至る経緯については、原判決7頁14行目冒頭から9頁4行目末 尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 (4) 本件発射の際の状況は、次のとおりである。 ア被控訴人が本件発射行為をした位置(以下「本件発射位置」という。)から本件ヒグマがいた北北東方向付近の地形は、平坦な地面が続いたのち、市道(別紙2の「本件市道」。以下「本件市道」という。)との間に、高低差 8メートル程度の上り勾配の斜面(以下「本件斜面」という。)があるというものである。本件斜面のうち、下方の高低差5メートル程度の部分は急な斜面であったが、上方の高低差3メートル程度の部分は緩やかな斜面となっていた。 本件斜面には草木が繁茂しており背後の見通しが悪く、石も散乱してい た。 本件発射位置からみた本件周辺建物5軒の位置関係(方角、距離)は下記のとおりである。 e 会館北方向距離 89メートル前後本件建物北東方向距離 64メートル前後 本 件周辺建物5軒の位置関係(方角、距離)は下記のとおりである。 e 会館北方向距離 89メートル前後本件建物北東方向距離 64メートル前後 本件一般住宅北東方向(本件建物より東寄り) 距離 43メートル前後本件空き家北北西方向距離 57メートル前後本件物置北北西方向距離 38メートル前後本件周辺建物5軒のうち、e 会館、本件建物及び本件一般住宅は、本件発射位置からみて本件市道を挟んで反対側にあり、本件市道よりさらに標高が 高く、本件発射行為をした位置との高低差は、順に15メートル程度、12メートル程度、10メートル程度であり、本件発射位置から各建物までは、本件市道を除くと、斜度に変化があるものの概ね上り勾配になっていた。 本件空き家及び本件物置は、本件発射位置からみて本件市道より手前にある。本件発射位置との高低差は、いずれも8メートル程度であり、本件発射 位置から各建物までは、斜度に変化があるものの概ね上り勾配になっていた。 本件発射行為当時、本件建物、e 会館及び本件物置と本件発射位置との間には、仮に何らかの物が存在していたとしても、弾丸を遮るに足りる構造物は存在しなかった。 (当審における検証の結果、甲17〔写真6〕、乙2、11、52〔写真2、3、18〕、69、70、101、107)イ(ア) 被控訴人は、本件現場において、Bに対し、私道(別紙2の「本件私道」。 以下「本件私道」という。)を通って本件斜面の北側の本件市道に移動するよう指示を出し、Bはこれに従い、本件私道を通って本件斜面の北側の 本件市道に向かった。(証人B〔5、6頁〕、被控訴人本人〔15、48、52頁〕)(イ) 被控訴人は、 の本件市道に移動するよう指示を出し、Bはこれに従い、本件私道を通って本件斜面の北側の 本件市道に向かった。(証人B〔5、6頁〕、被控訴人本人〔15、48、52頁〕)(イ) 被控訴人は、本件ヒグマが本件斜面の急斜面と緩斜面の境付近(被控訴人との高低差は5メートル程度、本件市道との高低差は3メートル程度)にいた時、本件ヒグマが立ち上がるのを待った上、本件ライフル銃を上方 に向け本件ヒグマの胸付近に狙いを定め、弾丸を1個発射し、これを本件 ヒグマに命中させた(本件発射行為)。この時、被控訴人は、e 会館と本件建物の間の方角を狙って、本件ライフル銃を北北東方向付近に向けていた。 本件発射行為をした位置と本件ヒグマがいた地点の距離は、18メートル前後であった。 (当審における検証の結果、甲21〔8頁〕、被控訴人本人〔17頁〕)(ウ) 本件発射位置における本件ライフルの高さと本件ヒグマの弾丸が命中した部分を直線で結んだ延長線は、本件市道まで本件斜面の地面と交わらないか、交わるとしてもごく浅い角度であった。 (当審における検証の結果、乙52、109) (エ) 本件発射行為当時、本件ヒグマがいた位置と本件一般住宅との間には、仮に何らかの物が存在していたとしても、土手などの弾丸を遮るに足りる構造物が存在しなかった。 (当審における検証の結果)(オ) 本件発射行為当時、C警察官及びD職員は、本件市道上の本件建物又は 本件一般住宅の前付近にいた(証人D〔24頁〕、証人C〔7、8頁〕、甲22、乙5、43)。 ウ(ア) Bは、本件市道の本件建物の前付近から本件斜面の上方に歩いて進入し、本件ヒグマがいた位置より本件市道側(おおむね、別紙3の「○参」付近)にいたところ、被控訴人が本件発射行為により発射し ウ(ア) Bは、本件市道の本件建物の前付近から本件斜面の上方に歩いて進入し、本件ヒグマがいた位置より本件市道側(おおむね、別紙3の「○参」付近)にいたところ、被控訴人が本件発射行為により発射した弾丸は、本件 ヒグマを貫通し、Bが把持していた猟銃の銃床に当たって貫通した(証人B〔7ないし10頁〕、証人C〔6、7頁〕、乙5、43、44)。 (イ) Bは、本件ヒグマが倒れていた付近に降りていき、本件ヒグマに向けて弾丸を発射し、とどめを刺した(証人B〔9頁〕)。 (ウ) 本件ヒグマは、推定年齢0歳、体長80センチメートル、体重7.5キ ログラムであった(乙6)。 (エ) 本件ヒグマを駆除した後、被控訴人、B、D職員及びC警察官は、駆除が無事に終了したこと、特に異常も生じていないことを確認し、午前8時頃、解散した(甲22〔5頁〕、証人D〔14、15頁〕、証人C〔15頁〕、被控訴人本人〔21頁〕)。 (5) 駆除後の経緯 ア被控訴人に対する捜査等(ア) Bは、平成30年8月21日午前9時頃、被控訴人方を訪れ、銃床が破損した猟銃を示し、本件発射行為による弾丸によって破損したと主張してその修理を求めた。 被控訴人は、Bの銃床破損が本件発射行為によるものであることを認め ず、被控訴人が加入していた保険を使って修理することを拒否したことから、Bは、自分が加入する保険を使って上記猟銃を修理することとなった。 Bは、その後被控訴人に対して金銭の支払を要求し、被控訴人がこれを拒否したことから、平成30年10月4日、乙署に対し、被控訴人の本件発射行為により猟銃の銃床が破損した旨の被害申告をした。 (イ) 乙署は、Bから、被控訴人が民家等の所在する方向へ発砲した旨聴取したことから、被控訴人について、鳥獣保護 対し、被控訴人の本件発射行為により猟銃の銃床が破損した旨の被害申告をした。 (イ) 乙署は、Bから、被控訴人が民家等の所在する方向へ発砲した旨聴取したことから、被控訴人について、鳥獣保護管理法違反等の被疑事実で捜査を開始した。 乙署は、平成30年10月11日以降、数回に渡り被控訴人に対する取調べを実施した。被控訴人は、同取調べにおいて、本件ヒグマの背後にバ ックストップがあった、e 会館と本件建物の間に射線(弾丸が通る直線の弾道)を設定した、自分の射撃技術ならば大丈夫だと判断したなどと述べて、一貫して鳥獣保護管理法38条3項違反の事実を否認した。 (ウ) 乙署は、平成31年2月13日、鳥獣保護管理法違反、銃刀法違反等の被疑事実で丙区検察庁に送致し、丙区検察庁は、同年3月頃、被控訴人を 起訴猶予処分とした。 鳥獣保護管理法は、都道府県知事による狩猟免許の制度を設けているところ(同法39条)、知事は、被控訴人に対し、同法38条3項違反を理由とする狩猟免許の取消し(同法52条2項)は行わないものとした。 (甲3、11〔4頁〕、13〔5、8枚目〕、16、乙7〔3頁〕、11ないし18、証人B〔34、35頁〕、被控訴人本人〔21頁〕、 弁論の全趣旨)イ乙署は、平成31年3月6日、公安委員会に対して、被控訴人の本件発射行為が銃砲所持許可の取消事由に該当するとして、取消処分を上申した。同公安委員会は、被控訴人の銃砲所持許可を取り消すことが相当であると判断し、平成31年4月17日、銃砲所持許可の取消処分に関し、被控訴人に対 する聴聞を実施した。被控訴人は、この聴聞において、本件発射行為に先立ち周囲の安全を確認しており弾丸が民家に到達するおそれはなかった旨主張した。 公安委員会は、平成31年4月24日 人に対 する聴聞を実施した。被控訴人は、この聴聞において、本件発射行為に先立ち周囲の安全を確認しており弾丸が民家に到達するおそれはなかった旨主張した。 公安委員会は、平成31年4月24日、被控訴人に対し、銃刀法11条に基づき、本件ライフル銃の所持許可を取り消した(本件処分)。 (前提事実(4)、甲2、8)(6) 事実認定の補足説明ア認定事実(4)ア中、「本件発射行為当時、本件建物、e 会館及び本件物置については、本件発射位置との間に弾丸を遮るに足りる構造物は存在しなかった。」と認定した点について 草木が枯れる冬季には、控訴人が本件発射位置であると主張する地点から本件建物、e 会館及び本件物置を直接視認することができたこと(乙52〔写真2、3、18〕、69、70)、被控訴人が当審における検証において本件発射位置として指示した地点は、控訴人が本件発射位置であると主張する地点と大きく異ならず(当審における検証の結果)、本件発射位置は、控訴 人が本件発射位置と主張する地点(当審における検証において控訴人が指示 したア地点)ないしその付近と認められること、被控訴人自身、捜査段階の取調べにおいて、本件発射行為が安全であった理由の一つとして、建物の屋根らしきものが見えたことから、本件建物とe 会館の間を通る射線を特定して設定した旨供述していたこと(乙18)にかんがみれば、本件発射行為当時、本件発射位置と本件建物、e 会館及び本件物置の間には、草木のほかに 障害物はなく、弾丸を遮るに足りる構造物は存在しなかったと認められる。 なお、本件発射行為がされた夏季には、本件斜面に草木が繁茂して本件発射位置から本件建物、e 会館及び本件建物を目視することは容易ではなかったと考えられるものの、草木は発射された弾 ったと認められる。 なお、本件発射行為がされた夏季には、本件斜面に草木が繁茂して本件発射位置から本件建物、e 会館及び本件建物を目視することは容易ではなかったと考えられるものの、草木は発射された弾丸を遮るに足りる強固な構造物とはいえないから、本件発射行為が草木が繁茂する夏季にされたことは上記認 定を左右しない。 イ認定事実(4)イ(ウ)の認定について上記アのとおり、本件発射位置は、控訴人が本件発射位置と主張する地点ないしその付近と認められる。また、本件発射行為当時、本件ヒグマがいた地点は、本件斜面の急斜面と緩斜面の境付近(当審における検証において、 控訴人及び被控訴人が指示したXないしZ地点付近)であったと認められる(認定事実(4)イ(イ))。そして、控訴人が本件発射位置と主張する地点における本件ライフルの高さと、本件ヒグマがいた位置であると控訴人が主張する地点における弾丸が命中した部分の高さを結んだ直線は本件斜面と交わらないところ(乙52、109)、本件発射位置は、控訴人が本件発射位置 と主張する地点(当審における検証において控訴人が指示したア地点)より本件斜面に近かった可能性があり、また、本件ヒグマがいた位置は、本件ヒグマがいた位置であると控訴人が主張する地点より若干本件発射位置に近かった可能性があるため、本件発射位置における本件ライフルの高さと本件ヒグマの弾丸が命中した部分を直線で結んだ延長線は、本件市道に至るまで の間に本件斜面の地面と交わった可能性が否定することができないものの、 その交わり方はごく浅い角度であったと推認することができる。 以上の検討により、認定事実(4)イ(ウ)のとおり認定した。 ウ認定事実(4)イ(エ)の認定について当審における検証において、本件ヒグマが はごく浅い角度であったと推認することができる。 以上の検討により、認定事実(4)イ(ウ)のとおり認定した。 ウ認定事実(4)イ(エ)の認定について当審における検証において、本件ヒグマがいた地点であると被控訴人が指示した地点(Z地点)と本件一般住宅の間には草木が繁茂していて視認状況 が悪かったにもかかわらず、Z地点からその煙突を視認することができ(当審における検証の結果)、また、本件ヒグマがいた地点であると控訴人側が指示した地点(X地点、Y地点)は、Z地点より本件市道側に存し、その標高はZ地点よりも高かったと考えられ、Z地点と比べて、さらに本件一般住宅との間の地面が弾丸を遮る障害物になりにくいこと(前同)を考慮すれば、 本件一般住宅については、本件発射行為時に本件ヒグマがいた地点との間に弾丸を遮るに足りる構造物は存しなかったと認められる。 以上の検討により、認定事実(4)イ(エ) のとおり認定した。 エ認定事実(4)ウの認定について証人Bは認定事実に沿う証言をしているところ、Bの証言は、Bが、本件 発射行為がされたわずか1時間程度後には本件発射行為によってBの銃床が破損した旨を被控訴人に訴え、この時点でBの銃床に弾丸が貫通したことと符合する破損が生じていたこと(甲13、乙16、44)、本件発射行為の日と近接した平成30年10月5日に、Bが本件ヒグマのとどめを刺した地点(認定事実(4)ウ(イ))で銃床の破損部分に符合する木片が見つかったこ と(乙7)、本件ライフルは、馬の骨部を完全に破砕するに足る程度を優に超える威力を有する強力なものであった一方(認定事実(1))、本件発射行為により標的となったのは推定年齢0歳、体重7.5キログラムの子熊であって(認定事実(4)ウ(ウ))、命中した弾丸は容易に貫通 超える威力を有する強力なものであった一方(認定事実(1))、本件発射行為により標的となったのは推定年齢0歳、体重7.5キログラムの子熊であって(認定事実(4)ウ(ウ))、命中した弾丸は容易に貫通し得たこと、Bが殊更に銃床を破損させるなどして虚偽の被害を訴えた事実はうかがわれないこ とによって裏付けられる。また、当審における検証の結果によれば、本件発 射行為時に本件ヒグマがいた位置からは、本件市道まで緩やかな斜面となっており、草木は繁茂しているものの弾丸を遮るに足りる強固な構造物はなく、本件市道から本件斜面の上方に進入したBの把持する猟銃に本件発射行為による弾丸が当たったとしても矛盾しない。 以上の検討により、認定事実(4)ウのとおり認定した。 3 争点①(本件処分が銃刀法11条1項1号の要件を充足しているか)について(1) 鳥獣保護管理法38条3項は、弾丸の到達するおそれのある人、建物等に向かってする銃猟行為は、人の生命、身体等に対する危険を防止しつつこれを行うことが困難であることから一律にこれを禁止しており、その行為の当該具体的状況の下における具体的危険の有無を問わないものと解される。 (2) 本件発射行為当時、本件ヒグマがいた位置は本件市道との間に高低差3メートル程度しかなく、本件ヒグマの背後に高さ約8メートルの土手があったとは認められず、しかも、本件ヒグマの背後の本件斜面は緩やかな斜面に過ぎなかった一方、被控訴人は、本件発射位置より標高が5メートル程度高い地点で立ち上がった本件ヒグマに対して、本件ライフルを上方に向けて発射しており (認定事実(4)イ(イ))、本件発射行為による弾丸は、本件ヒグマを貫通した後、本件斜面の地面に接触しなかったか、接触したとしても、その入射角がごく小さく(認定 ルを上方に向けて発射しており (認定事実(4)イ(イ))、本件発射行為による弾丸は、本件ヒグマを貫通した後、本件斜面の地面に接触しなかったか、接触したとしても、その入射角がごく小さく(認定事実(4)イ(ウ))、入射角が小さいと跳弾が起こりやすいこと(認定事実(2)ウ)を考慮すれば、本件斜面にとどまることなく跳弾することは容易に推認することができる。現に、本件発射行為による弾丸は、本件ヒグマより本 件市道側にいたBの猟銃に当たって貫通しているのである(認定事実(4)ウ(ア))。そうすると、本件一般住宅については、本件発射行為当時、本件ヒグマがいた地点との間に強固な構造物がなかった上(認定事実(4)イ(エ))、他の4軒の建物、特に本件建物も本件ヒグマがいた位置と至近距離にあった一方、高速ライフル弾は小枝等に触れただけでも跳弾になりやすいとされる中(認定事 実(2)ア)、本件斜面には草木が繁茂していたほか石も散乱し(認定事実(4)ア)、 跳弾が起こりやすい状況であったことを考慮すると、本件発射行為による弾丸は、本件ヒグマに命中したとしても、その後弾道が変化するなどして、本件周辺建物5軒、特に本件建物や本件一般住宅に到達するおそれがあったものと認めるのが相当である(なお、跳弾は、飛んでいく方向が分からず(上記各文献)、複数回起こり得ることからすれば、本件ヒグマがいた位置と本件周辺建物5軒 の間に本件斜面の地面があったとしても、直ちに本件周辺建物5軒に跳弾が到達するおそれがなくなるともいえない。)。 (3) そして、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)は、本件建物及びe 会館が存した方角(北東及び北)とさほど乖離しておらず、本件一般住宅、本件物置及び本件空き家についても、その方角(北東、北北 人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)は、本件建物及びe 会館が存した方角(北東及び北)とさほど乖離しておらず、本件一般住宅、本件物置及び本件空き家についても、その方角(北東、北北西 及び北北西)が、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)と大きく乖離するものではなかったこと、本件周辺建物5軒は、いずれも本件発射行為をした位置から90メートル以内にあったことを考慮すれば、本件発射行為は、「建物等に向かってする銃猟行為」に当たるというべきである。 また、被控訴人は、周辺の地形や建物の位置関係を知悉しながら(被控訴人本人4頁)本件発射行為に及んでいるから、被控訴人には、本件発射行為が、弾丸の到達するおそれのある本件周辺建物5軒に向かってされたものであることの認識があったと認められ、その故意に欠けるところはない。 そうすると、被控訴人による本件発射行為は、鳥獣保護管理法38条3項、 銃刀法10条2項1号に違反するといえるから、被控訴人は、同法11条1項1号所定の事由に該当するといえる。 (4)ア被控訴人は、本件ヒグマの背後には高さ約8メートル(当審における検証の結果に従っても約3メートル)の土手があり、バックストップが存在していたというべきであるから、本件周辺建物5軒に弾丸が到達するおそれはな かった旨主張する。 しかしながら、本件発射行為当時、本件発射位置と本件建物、e 会館及び本件物置との間には弾丸を遮るに足りる構造物は存在しなかった(認定事実(4)ア)から、誤射によってこれらの建物に弾丸が直接到達するおそれがあったと認められる。この点を措くとしても、本件発射行為による弾丸が、本件ヒグマに命中したとしても、その後弾道が変化するなどして、本件周辺建 物5軒 ってこれらの建物に弾丸が直接到達するおそれがあったと認められる。この点を措くとしても、本件発射行為による弾丸が、本件ヒグマに命中したとしても、その後弾道が変化するなどして、本件周辺建 物5軒、特に本件建物や本件一般住宅に到達するおそれがあったものと認めるのが相当であることは、上記(2)で認定説示したとおりである。 したがって、この点に関する被控訴人の主張は採用することができない。 イ被控訴人は、ライフル銃の弾丸には直進性がある上、被控訴人と本件ヒグマとの距離がごく短く、本件ライフル銃にはスコープが装着されていたので あって、猟銃免許を取得した者にとって、およそ外すはずもない至近距離であったことを指摘して、本件発射行為による弾丸が本件周辺建物5軒に到達するおそれはなかった旨主張する。 しかしながら、たとえ本件ヒグマに弾丸が確実に命中したとしても、その後弾道が変化するなどして、本件周辺建物5軒に到達するおそれがあったも の認めるのが相当であることは上記(2)において説示したとおりであり、被控訴人の主張を前提としても、本件発射行為による弾丸が本件周辺建物5軒に到達するおそれがないことを裏付けるものとはいえない。 したがって、この点に関する被控訴人の主張は採用することができない。 4 争点②(本件処分が公安委員会の裁量権の逸脱・濫用に該当するか)について (1) 本件処分が同公安委員会の裁量権の逸脱・濫用に該当するかに係る判断枠組みについては、原判決11頁7行目の「前記第2,1⑶の通達」を「別紙1の3の通達」と改めるほか、10頁26行目冒頭から11頁14行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 (2)アこれを本件についてみると、上記3において認定・説示したところによれ ば、本件発射行為による 、10頁26行目冒頭から11頁14行目末尾までに記載のとおりであるからこれを引用する。 (2)アこれを本件についてみると、上記3において認定・説示したところによれ ば、本件発射行為による弾丸が本件周辺建物5軒に到達する相応の危険性が あったというべきであり、その違反行為が軽微であったとはいえない。これに加えて、被控訴人は、Bが本件ヒグマの背後である本件斜面の北側の本件市道付近に向かったことを認識しながら(認定事実(4)イ(ア))、草木が繁茂していて見通しが悪い本件斜面(認定事実(4)ア)に向けて本件発射行為に及んでいるなど、銃器を扱う者として心得ているべき安全のための遵守事項 (認定事実(2))に複数の点で違反している。また、本件斜面及び本件市道上にはB、C警察官及びD職員がおり(認定事実(4)イ(オ)、ウ(ア))、弾丸の跳飛の一般的様相は極めて複雑で、跳弾は飛んでいく方向が分からず(前記各文献)複数回起こり得ること等にかんがみると、本件発射行為は同人らの生命・身体も危険にさらしたというべきである。そうすると、本件発射行為が 不当なものでなかったということはできない。 それにもかかわらず、被控訴人は、乙署が鳥獣保護管理法違反等の被疑事実について捜査を開始してから本件処分時までの間に、本件発射行為が危険なものであることを受け入れず、一貫してその正当性を主張しており(認定事実(5)ア(イ)、イ)、同種違反の再発可能性があるといわざるを得ない。 そうすると、被控訴人による違反行為は、指示処分(銃刀法10条の9第1項)の「その違反行為が比較的軽微である。」「違反行為の再発防止が期待できる。」との量定基準(別紙1の3の通達別表1の17)を満たさず、銃砲所持許可取消処分の「同種違反の再発のおそれ(中略) 9第1項)の「その違反行為が比較的軽微である。」「違反行為の再発防止が期待できる。」との量定基準(別紙1の3の通達別表1の17)を満たさず、銃砲所持許可取消処分の「同種違反の再発のおそれ(中略)が認められる場合」との量定基準(別紙1の3の通達別表1の19)を満たしているといえ る。 したがって、⑴で補正の上で引用した原判決の判断枠組みに照らしても、同公安委員会の判断が、重要な事実を欠くか、又は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとして認めることはできないから、同公安委員会の判断が裁量権の逸脱・濫用に該当するとはいえない。 イ(ア) 被控訴人は、丁市からの出動要請を受けて、有害駆除という公共の利益 のために緊急性の高い状況で本件発射行為をしたことからすれば、同公安委員会の判断は裁量権の逸脱・濫用に当たる旨主張する。 しかしながら、有害鳥獣駆除に係る発射行為の状況は様々であるから、発射行為が有害鳥獣駆除の一環としてされたことをもって、直ちに、その発射行為の銃刀法違反を理由とする銃砲所持許可の取消処分が、社会通念 に照らし著しく妥当性を欠き、都道府県公安委員会の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと評価されるとは解されない。 これを本件についてみると、本件発射行為による弾丸が本件周辺建物5軒に到達する相応の危険性があった上、被控訴人が銃器を扱う者として心得ているべき安全のための遵守事項に複数の点で違反し、本件発射行為に よってBらの生命・身体も危険にさらされたことは上記アのとおりであり、このような発射行為が繰り返されないようにすべき要請を否定することはできない。 したがって、被控訴人の上記主張を考慮しても、上記アにおいて説示した判断を左右しない。 (イ) 被控 り、このような発射行為が繰り返されないようにすべき要請を否定することはできない。 したがって、被控訴人の上記主張を考慮しても、上記アにおいて説示した判断を左右しない。 (イ) 被控訴人は、本件ヒグマの有害駆除は成功裏に終了し、その時点では何の問題も指摘されていなかったから、公安委員会の判断は裁量権の逸脱・濫用に当たる旨主張する。 しかしながら、現場において本件発射行為について問題が指摘されなかったのは、本件ヒグマの駆除後解散するまで、被控訴人以外誰も本件発射 行為の具体的態様を認識しておらず、また、建物の破損などの具体的な被害も報告されていなかったことの結果に過ぎないというべきである。 したがって、被控訴人の上記主張は、上記アにおいて説示した判断を左右しない。 (ウ) 被控訴人は、現場に臨場した警察官は被控訴人の発射を特段制止した り、被控訴人に対して警告したりしていなかったから、同公安委員会の判 断は裁量権の逸脱・濫用に当たる旨主張する。 しかしながら、C警察官は、本件発射行為当時、本件市道上におり(認定事実(4)イ(オ))、本件発射行為がされた位置及び本件ヒグマの位置を認識していなかったから、C警察官が被控訴人の発射を特段制止したり、警告したりしていなかったとしても、被控訴人による本件発射行為を容認し ていたとはいえない。 したがって、被控訴人の上記主張は、上記アにおいて説示した判断を左右しない。 (3) 被控訴人は、本件処分において建物への弾丸の到達可能性を認定する根拠となった写真(乙1)が本件発射位置とは異なる地点から撮影されたものであ って捏造されたものであることなどをも指摘して、本件発射行為を銃刀法違反として銃砲所持許可の取消しの理由とすることは権利の濫用で 写真(乙1)が本件発射位置とは異なる地点から撮影されたものであ って捏造されたものであることなどをも指摘して、本件発射行為を銃刀法違反として銃砲所持許可の取消しの理由とすることは権利の濫用であるから、本件処分は不適法である旨主張する。 しかしながら、上記写真が本件発射位置よりやや本件私道寄りの地点から撮影されたものであることは認められるものの、撮影地点が本件発射位置と大き く異なるとは認められず、本件発射位置と本件建物との位置関係の認定に一定程度寄与するものであって、本件処分に当たって同公安委員会が上記写真を事実認定の根拠にしたことが不当であるとはいえない。 したがって、この点に関する被控訴人の主張も採用することができない。 (4) 被控訴人は、本件処分の件が報道された後、各地のハンターから、警察官が 臨場した上で公益活動に協力しているにもかかわらず、銃砲所持許可が取り消されるおそれがあるとすれば、怖くて発砲することができず、ヒグマの駆除が困難になるという話を聞いており、このような委縮効果に照らすと、本件控訴を棄却すべきである旨の意見を陳述・主張する。 確かに、控訴人を含む公的機関が、ヒグマ駆除について、従来より猟友会の 献身的な活動に依存してきたという実態があることは否定することができず、 近年、道内でヒグマによる被害が多発している状況の下、ヒグマ駆除の在り方については議論の余地があると思われるが、このことと本件処分が違法であるかどうかという問題は別であるから、被控訴人の上記陳述・主張を踏まえても、本件処分が違法でないとの上記結論は左右されない。 5 よって、被控訴人の請求は棄却すべきところ、これと異なる原判決は相当では なく本件控訴は理由があるから、原判決を取り消し被控訴人の請求を棄却するこ が違法でないとの上記結論は左右されない。 5 よって、被控訴人の請求は棄却すべきところ、これと異なる原判決は相当では なく本件控訴は理由があるから、原判決を取り消し被控訴人の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 小河原寧 裁判官 片山信 裁判官 髙木寿美子 別紙1関係法令等の定め 1 銃砲刀剣類所持等取締法(令和3年6月16日号外法律第69号による改正前のもの)(趣旨) 第一条この法律は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めるものとする。 (所持の禁止)第三条何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣 類を所持してはならない。 一~二の二 (略)三第四条又は第六条の規定による許可を受けたもの(中略)を当該許可を受けた者が所持する場合三の二~十三 (略) 2~5 (略)(許可)第四条次の各号のいずれかに該当する者は、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。 一狩猟、有害鳥獣駆除又は標的射撃の用途に供するため、猟銃又は空気銃(空気けん銃を除く。)を ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。 一狩猟、有害鳥獣駆除又は標的射撃の用途に供するため、猟銃又は空気銃(空気けん銃を除く。)を所持しようとする者(第五号の二に該当する者を除く。)二~十 (略)2~5 (略) (所持の態様についての制限) 第十条 (略) 2 第四条又は第六条の規定による許可を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、当該許可を受けた銃砲を発射してはならない。 一第四条第一項第一号の規定により狩猟又は有害鳥獣駆除(政令で定めるものを除く。)の用途に供するため猟銃又は空気銃の所持の許可を受けた 者が、当該用途に供するため、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の規定により銃猟をする場合。ただし、許可に係る銃砲がライフル銃である場合において、事業に対する被害を防止するため当該ライフル銃の所持の許可を受けた者にあっては、当該事業に対する被害を防止するために獣類の捕獲をする必要がある場合に限る。 二、三 (略)3~5 (略)(指示)第十条の九都道府県公安委員会は、第四条又は第六条の規定による許可を受けた者がこの法律若しくはこれに基づく命令の規定若しくはこれらに基づく処分 又は火薬類取締法第五十条の二第一項の規定の適用を受ける火薬類について同法若しくはこれに基づく命令の規定若しくはこれらに基づく処分に違反した場合において、当該許可を受けた者が当該許可に係る銃砲又は刀剣類について適正な取扱いを行っていないと認めるときは、その者に対し、危害予防上必要な措置を執るべきことを指示することができる。 2 (略) (許可の取消し及び仮領置)第十一条都道府県公安委員会は、 扱いを行っていないと認めるときは、その者に対し、危害予防上必要な措置を執るべきことを指示することができる。 2 (略) (許可の取消し及び仮領置)第十一条都道府県公安委員会は、第四条又は第六条の規定による許可を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その許可を取り消すことが できる。 一この法律若しくはこれに基づく命令の規定若しくはこれらに基づく処分(前条第一項の指示を含む。)又は第四条第二項の規定に基づき付された条件に違反した場合二~五 (略)2~11 (略) 第三十一条の十一次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 一~三 (略)四第十条第二項(略)の規定に違反してけん銃等又は猟銃を発射した者 2 (略) 2 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(銃猟の制限)第三十八条 (略) 2 住居が集合している地域又は広場、駅その他の多数の者の集合する場所 (以下「住居集合地域等」という。)においては、銃猟をしてはならない。 ただし、次条第一項の許可を受けて麻酔銃を使用した鳥獣の捕獲等(以下「麻酔銃猟」という。)をする場合は、この限りでない。 3 弾丸の到達するおそれのある人、飼養若しくは保管されている動物、建物又は電車、自動車、船舶その他の乗物に向かって、銃猟をしてはならない。 3 警察生活安全部長通達「銃砲刀剣類所持等取締法に基づく行政処分事務処理要領の制定について」(平成29年3月16日道本保第4069号)第3 行政処分の基準行政処分の種類に応じた処分の対象となる事実及び処分の基準は、行政処分の 基準(別表1)のとおりとする。 別表1 行政処分の基 6日道本保第4069号)第3 行政処分の基準行政処分の種類に応じた処分の対象となる事実及び処分の基準は、行政処分の 基準(別表1)のとおりとする。 別表1 行政処分の基準 17 銃砲又は刀剣類の所持の許可を受けた者に対する指示(法第10条の9第1項)【処分の対象となる事実】銃砲又は刀剣類の所持の許可を受けた者が、法若しくはこれに基づく命令 の規定若しくはこれらに基づく処分又は火薬類取締法第50条の2第1項の規定の適用を受ける火薬類について、同法若しくはこれに基づく命令若しくはこれらに基づく処分に違反した場合において、当該許可を受けた者が、当該許可に係る銃砲又は刀剣類について適正な取扱いを行っていないと認めるとき。 【処分の基準】法第10条の9第1項に定める法律等に違反し、かつ銃砲又は刀剣類について適正な取扱いを行っていないと認めるときで、・その違反行為が比較的軽微である。 ・違反行為が反復して行われておらず、営利性、計画性も認められない。 ・違反行為の再発防止が期待できる。 等の条件を満たす場合は、危害予防上必要な措置を執るべきことを指示する。 19 銃砲又は刀剣類の所持の許可の取消し(法第11条第1項)【処分の対象となる事実】(1) 法若しくはこれに基づく命令の規定若しくはこれらに基づく処分(法1 0条の9第1項の指示を含む。)又は法第4条第2項の規定に基づき付された条件に違反した場合(2)~(5) (略)【処分の基準】法第11条第1項第1号の場合については、当該違反に伴う実害の発生、 同種違反の再発のおそれ、社会的に非難されるべき点等が認められる場合に、 許可を取り消すものとする。 (略)以上 については、当該違反に伴う実害の発生、同種違反の再発のおそれ、社会的に非難されるべき点等が認められる場合に、許可を取り消すものとする。 (略)以上 別紙2【PDF図面のとおり】 別紙3【掲載省略】
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