平成16(行ウ)497 公金支出差止等(住民訴訟)請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年5月11日 東京地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文76,189 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち,以下の部分をいずれも却下する。 (1) 被告東京都水道局長に対し,八ッ場ダムに関し,特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金,水源地域対策特別措置法12条1項1号に基づく水源地域整備事業の経費負担金及び財団法人P1基金の事業経費負担金の支出の差止めを求める部分のうち,平成20年11月25日までにされた支出の差止めを求める部分(2) 被告東京都水道局長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める部分(3) 被告東京都知事に対し,八ッ場ダムに関し,以下のとおりの各課長に,各負担金又は繰出金の支出命令をさせることの差止めを求める部分ア東京都建設局総務部企画計理課長に,河川法63条に基づく受益者負担金イ東京都都市整備局総務部企画経理課長に,水源地域対策特別措置法12条1項2号に基づく水源地域整備事業の経費負担金ウ東京都都市整備局総務部企画経理課長に,財団法人P1基金の事業経費負担金エ東京都財務局経理部総務課長に,東京都水道局長が特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金を支出するについて,これを補助するために行う一般会計から水道事業特別会計に対する繰出金(4) 以下の各被告に対し,各負担金又は繰出金の支出命令の差止めを求める部分のうち,平成20年11月25日までにされた支出命令の差止めを求める部分ア被告東京都建設局総務部企画計理課長に,河川法63条に基づく受益者負担金- 2 -イ被告東京都都市整備局総務部企画経理課長に,水源地域対策特別措置法12条1項2号に基づく水源地域整備事業の経費負担金ウ被告東京都都市整備局総務部企画経理課長に,財団法人P1基金の事業経費負担金エ被告東京都財務局経理部総務課長に,東京都水道 域対策特別措置法12条1項2号に基づく水源地域整備事業の経費負担金ウ被告東京都都市整備局総務部企画経理課長に,財団法人P1基金の事業経費負担金エ被告東京都財務局経理部総務課長に,東京都水道局長が特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金を支出するについて,これを補助するために行う一般会計から水道事業特別会計に対する繰出金 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告東京都水道局長は,八ッ場ダムに関し,次の各負担金を支出してはならない。 (1) 特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金(2) 水源地域対策特別措置法12条1項1号に基づく水源地域整備事業の経費負担金(3) 財団法人P1基金の事業経費負担金 被告東京都水道局長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 被告東京都知事は,八ッ場ダムに関し,以下のとおりの各課長に,各負担金の支出命令をさせてはならない。 (1) 東京都建設局総務部企画計理課長に,河川法63条に基づく受益者負担金(2) 東京都都市整備局総務部企画経理課長に,水源地域対策特別措置法12条1項2号に基づく水源地域整備事業の経費負担金(3) 東京都都市整備局総務部企画経理課長に,財団法人P1基金の事業経費負担金- 3 -(4) 東京都財務局経理部総務課長に,東京都水道局長が特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金を支出するについて,これを補助するために行う一般会計から水道事業特別会計に対する繰出金4(1) 被告東京都建設局総務部企画計理課長は,河川法63条に基づく受益者負担金の支出命令をしてはならない。 (2) 被告東京都都市整備局総務部企画経理課長は,水源地域対 事業特別会計に対する繰出金4(1) 被告東京都建設局総務部企画計理課長は,河川法63条に基づく受益者負担金の支出命令をしてはならない。 (2) 被告東京都都市整備局総務部企画経理課長は,水源地域対策特別措置法12条1項2号に基づく水源地域整備事業の経費負担金の支出命令をしてはならない。 (3) 被告東京都都市整備局総務部企画経理課長は,財団法人P1基金の事業経費負担金の支出命令をしてはならない。 (4) 被告東京都財務局経理部総務課長は,東京都水道局長が特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金を支出するについて,これを補助するために行う一般会計から水道事業特別会計に対する繰出金の支出命令をしてはならない。 被告東京都知事は,東京都を代表して次の損害賠償請求をせよ。 P2に対し,金149億0473万5146円及び内金18億6418万9492円に対する平成16年9月10日から支払済みまで,内金130億4054万5654円に対する平成20年10月16日から支払済みまで,各年5分の割合による遅延損害金 被告東京都水道局長は,東京都を代表して次の損害賠償請求をせよ。 (1) P3に対し,金11億2500万円及びこれに対する平成16年9月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金(2) P4に対し,金2億0500万円及びこれに対する平成16年9月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金第2事案の概要本件は,東京都の住民である原告らが,東京都が設定の申請をした八ッ場ダムのダム使用権は東京都の水道事業に不要であり,東京都が八ッ場ダムにより- 4 -治水上の利益を受けることもないなどと主張して,①地方自治法242条の2第1項1号に基づき,被告東京都水道局長(以下「被告水道局長」という。)に対する特定多目的ダム法7条に基づく建 より- 4 -治水上の利益を受けることもないなどと主張して,①地方自治法242条の2第1項1号に基づき,被告東京都水道局長(以下「被告水道局長」という。)に対する特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金(以下「建設費負担金」という。)等の支出の差止め,被告東京都知事(以下「被告知事」という。)に対する被告東京都建設局総務部企画計理課長,被告東京都都市整備局総務部企画経理課長及び被告東京都財務局経理部総務課長(以下「被告課長ら」という。)による河川法63条に基づく受益者負担金(以下「受益者負担金」という。)等の支出命令をさせないこと,並びに被告課長らの上記負担金等の支出命令の差止め(前記第1の1,3,4),②地方自治法242条の2第1項3号に基づき,被告水道局長に対する,国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実の違法確認(前記第1の2),③同項4号本文に基づき,被告知事及び同水道局長に対する,P2ら個人に対する損害賠償の請求(同第1の5,6)を求めた事案である。 法令の定め(1) 特定多目的ダム法及び同法施行令ア特定多目的ダム法7条1項は,ダム使用権の設定予定者は,多目的ダムの建設に要する費用のうち,建設の目的である各用途について,多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該用途に供することによって得られる効用から算定される推定の投資額及び当該用途のみに供される工作物でその効用と同等の効用を有するものの設置に要する推定の費用の額並びに多目的ダムの建設に要する費用の財源の一部に借入金が充てられる場合においては,支払うべき利息の額を勘案して,政令で定めるところにより算出した額の費用を負担しなければならない旨定めている。 イ同法施行令9条1項は,上記負担金のうち同条2号に掲げる負担金以外の負 においては,支払うべき利息の額を勘案して,政令で定めるところにより算出した額の費用を負担しなければならない旨定めている。 イ同法施行令9条1項は,上記負担金のうち同条2号に掲げる負担金以外の負担金の納付の方法及び期限は,毎年度,国土交通大臣が当該年度の事業計画に応じて定める額を,同大臣が当該年度の資金計画に基づいて定め- 5 -る期限までに納付する旨定め,同法施行令11条の3は,国土交通大臣は,負担金を徴収しようとするときは,負担金の額を決定し,負担金の徴収を受ける者に通知する旨定めている。 ウ同法16条2項2号は,国土交通大臣は,同法7条1項の負担金を納付しないときに該当すると認めたときは,ダム使用権の設定予定者の設定の申請を却下しなければならない旨定め,同法12条は,ダム使用権の設定予定者のダム使用権の設定の申請が却下され又は取り下げられたときは,その者が既に納付した同法7条1項の負担金を還付するものとするが,基本計画を廃止する場合を除き,新たにダム使用権の設定予定者が定められるまでその還付を停止することができる旨定めている。 エ同法施行令14条の2は,同法12条の規定により還付する負担金の額は,ダム使用権の設定予定者の事業からの撤退により当該事業が縮小され又は当該事業に係る基本計画が廃止されたときに当該者に還付する場合,既に納付した負担金の額から当該者について同法施行令1条の2第2項又は4項の規定により算出した額を控除した額(当該者が既に納付した負担金の額が同法施行令1条の2第2項又は4項の規定により算出した額を超えない場合にあっては零)とする旨定めている。 (2) 河川法及び同法施行令ア河川法63条1項は,国土交通大臣が行なう河川の管理により,同法60条1項の規定により当該管理に要する費用の一部を負担する都府県以外 あっては零)とする旨定めている。 (2) 河川法及び同法施行令ア河川法63条1項は,国土交通大臣が行なう河川の管理により,同法60条1項の規定により当該管理に要する費用の一部を負担する都府県以外の都府県が著しく利益を受ける場合においては,国土交通大臣は,その受益の限度において,同項の規定により当該都府県が負担すべき費用の一部を当該利益を受ける都府県に負担させることができる旨定め,同法64条1項は,同法63条1項の規定により利益を受ける都府県が負担すべき費用は,政令で定めるところにより,国庫に納付しなければならない旨定めている。 - 6 -イ同法施行令38条は,国土交通大臣は,その行なう一級河川の管理に要する費用の負担に関し,同法63条1項の規定によりその費用を負担すべき都道府県に対し,その負担すべき額を納付すべき旨を通知しなければならない旨定めている。 (3) 水源地域対策特別措置法及び同法施行令ア水源地域対策特別措置法12条1項は,水源地域整備計画に基づく事業がその区域内において実施される地方公共団体で当該事業に係る経費の全部又は一部を負担するものは,政令で定めるところにより,同項1号(同法2条1,2項に規定する指定ダム等を利用して河川の流水を水道,工業用水道又は発電の用に供することが予定されている者),同項2号ホ(指定ダム等の建設により洪水等による災害の発生が防止され,又は洪水等による災害が軽減される地域をその区域に含む地方公共団体)及び同号イないしニに掲げる者と協議し,その協議によりその負担する経費の一部をこれに負担させることができる旨定めている。 イ同法施行令9条は,上記規定による整備事業についての負担の調整は,指定ダム等の建設の目的,指定ダム等の建設により関係当事者が受ける利益その他の諸般の事情を勘案して,関係 とができる旨定めている。 イ同法施行令9条は,上記規定による整備事業についての負担の調整は,指定ダム等の建設の目的,指定ダム等の建設により関係当事者が受ける利益その他の諸般の事情を勘案して,関係当事者の負担の衡平を図ることを旨として行うものとする旨定めている。 争いのない事実等(証拠により認定した事実は末尾に証拠を挙げた。)(1) 当事者ア原告らは,東京都に居住する住民である。 イ被告水道局長は,地方公営企業法に基づき東京都が経営する水道事業及び工業用水道事業に関し,その業務を執行し,かつ当該業務につき東京都を代表する権限を有する者である。 ウ被告知事は,東京都の執行機関であって,東京都の財産を管理する一般的権限を有する者である。 - 7 -エ被告東京都建設局総務部企画計理課長(平成20年3月31日以前の職名は同部計理課長。以下「被告建設局課長」という。)は,被告知事から,受益者負担金の支出命令権限を委任された者である。 オ被告東京都都市整備局総務部企画経理課長(平成15年度は都市計画局総務部企画計理担当課長。以下「被告都市整備局課長」という。)は,被告知事から,水源地域対策特別措置法12条1項に基づく負担金(以下「水特法負担金」という。)及び財団法人P1基金(以下「本件基金」という。)の事業経費負担金(以下「基金負担金」という。)の支出命令権限を委任された者である。 カ被告東京都財務局経理部総務課長(以下「被告財務局課長」という。)は,被告知事から,一般会計から特別会計への繰出金(以下「一般会計繰出金」という。)の支出命令権限を委任された者である。 キP2は,平成15年9月10日から平成20年11月25日まで東京都知事の地位にある者であり,P3は平成15年9月9日から平成16年7月15日まで,P4は同月16日から 権限を委任された者である。 キP2は,平成15年9月10日から平成20年11月25日まで東京都知事の地位にある者であり,P3は平成15年9月9日から平成16年7月15日まで,P4は同月16日から同年9月9日まで,それぞれ東京都水道局長の地位にあった者である。 (2) 八ッ場ダム建設事業の概要ア八ッ場ダムは,国(国土交通省)を事業主体として,群馬県α1にある利根川水系吾妻川に設置される,治水,利水等を目的とする多目的ダムである。 イ八ッ場ダム建設事業は,昭和22年9月のカスリーン台風による利根川の氾濫を契機として,当時の建設省が,昭和24年2月に利根川改修改定計画を策定し,昭和27年5月に予備調査を開始したことに端を発し,平成9年法律第69号による改正前の河川法16条1項に基づく「利根川水系工事実施基本計画」(甲B3ないし5,乙5,12,89)及び同改正後の同法16条1項に基づく「利根川水系河川整備基本方針」(甲B6)- 8 -に位置付けられるとともに,水資源開発促進法4条の規定に基づき昭和51年4月16日の閣議決定を経た「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画」(昭和51年総理府告示第19号)(乙6)において,利根川水系における新規水源開発事業の1つと位置付けられたものであり,昭和61年7月10日,平成11年法律第160号による改正前の特定多目的ダム法4条1項,5項に基づき,建設に関する基本計画が告示された(昭和61年建設省告示第1284号)(乙2)。 ウ東京都(以下「都」ということがある。)は,昭和60年11月9日,当時の建設大臣に対し,同法15条に基づき,八ッ場ダムの使用権の設定を申請し,上記基本計画においてダム使用権の設定予定者と定められた。 エ八ッ場ダムによって開発される水利権は,毎秒22.209立方メー 時の建設大臣に対し,同法15条に基づき,八ッ場ダムの使用権の設定を申請し,上記基本計画においてダム使用権の設定予定者と定められた。 エ八ッ場ダムによって開発される水利権は,毎秒22.209立方メートルであり,このうち東京都の水道用水のためには毎秒5.779立方メートル(1日約50万立方メートル)の設定が予定されている。また,八ッ場ダムの洪水調節容量は6500万立方メートルと計画されている。 (3) 各支出の原因及び支出手続ア建設費負担金(ア) 納付通知国土交通大臣は,別紙建設費負担金の負担額欄記載のとおり,都の負担予定額及び納付期限を決定した上,同納付通知欄記載の日にこれを都に通知した(乙23の1,2,乙24の1,2,弁論の全趣旨)。 (イ) 支出被告水道局長の支出事務を担当する金銭出納員は,別紙建設費負担金の負担額欄及び支出欄記載のとおり,各期の納付金を国庫に納入した(乙25の3ないし5,乙27の1ないし4,弁論の全趣旨)。 イ受益者負担金(ア) 納付通知- 9 -国土交通大臣は,都に対し,別紙受益者負担金の負担・納付通知欄記載の日に,同負担額欄記載のとおり負担・納付すべきことを通知した(乙68の2,3,乙69の1ないし3,弁論の全趣旨)。 (イ) 支出被告建設局課長は,出納長(平成19年度以後は会計管理者,以下単に「出納長」という。)に対し,別紙受益者負担金の支出命令欄記載の日に,同負担額欄記載の支出を命令し,出納長は,同支出欄記載の日に国庫に納入した(乙70の2,3,乙71の1ないし3,弁論の全趣旨)。 ウ水特法負担金(ア) 協定等下流受益者である都,茨城県,埼玉県及び千葉県は,群馬県との間で,平成8年2月22日,①下流受益者は八ッ場ダムに係る水源地域整備事業に係る経費の一部を負担すること,②この経費のうち, (ア) 協定等下流受益者である都,茨城県,埼玉県及び千葉県は,群馬県との間で,平成8年2月22日,①下流受益者は八ッ場ダムに係る水源地域整備事業に係る経費の一部を負担すること,②この経費のうち,下流受益者が負担する割合を全体で0.8201とし,都は0.3242を負担すること,③群馬県は,毎年度,8月10日までに翌年度の整備事業の事業計画を取りまとめ,下流受益者との間で協議すること,④群馬県は,毎年度,6月30日までに当該年度の整備事業の事業実施計画を取りまとめ,下流受益者との間で協議すること,⑤下流受益者は,毎年度,当該年度に実施する全ての整備事業に要する経費のうち群馬県費,α1費及びα2費の合計額に,下流受益者が負担する経費の割合及び下流受益者の都県別負担割合を乗じて算出した額を群馬県に支払うこと,⑥群馬県は,毎年度の整備事業の事業実施計画に変更が生じた場合,当該年度の12月5日までに下流受益者に協議の上,変更することができること等について合意した(以下「本件水特法経費負担協定」という。)(乙13,29)。 - 10 -平成8年4月15日,都における一般会計と水道事業特別会計(以下「水道事業会計」という。)間の負担割合が,それぞれ1000分の433,1000分の567と定められた(乙30)。 (イ) 各事業年度負担金額の決定毎年度の事業計画,事業実施計画及びその変更について,別紙水特法負担金(負担金額の決定)の事業計画,事業実施計画及び事業実施計画変更欄記載のとおり,群馬県は都に対し協議を行って都がこれに同意し,これにより,一般会計及び水道事業会計の各事業年度負担金額は,同負担金額欄記載のとおりとなった(乙31の1,2,乙32の1,2,乙34の1,2,乙40の1,2,乙41の1,2,乙43の1,2,弁論の全趣旨)。 (ウ) 及び水道事業会計の各事業年度負担金額は,同負担金額欄記載のとおりとなった(乙31の1,2,乙32の1,2,乙34の1,2,乙40の1,2,乙41の1,2,乙43の1,2,弁論の全趣旨)。 (ウ) 支出被告都市整備局課長は,別紙水特法負担金(支出)都知事分の支出命令欄記載の日に,出納長に対し,同負担額欄記載の支出を命令し,出納長は,同支出欄記載の日に,群馬県に納入した。また,水道局金銭出納員は,別紙水特法負担金(支出)水道局長分の支出欄記載の日に,同負担額欄記載の金額を群馬県に納入した。(乙35の2,乙36の2,乙38の1,2,乙39の1,2,乙44の2,乙45の2,乙47の1,2,乙48の1,2,弁論の全趣旨)エ基金負担金(ア) 協定等都,埼玉県,千葉県,茨城県及び群馬県は,本件基金との間で,平成2年8月1日,八ッ場ダム建設に係る基金事業に要する経費の負担について協定を締結し,都の負担割合は1000分の337.6とされた(以下「本件基金経費負担協定」という。)(乙15)。 本件基金は,利根川水系八ッ場ダム業務細則に定められた事業の範囲- 11 -内で作成した事業計画書及び収支予算書並びに本件基金経費負担協定に基づき,毎年度,当該年度に係る事業の規模及び負担等について都,埼玉県,千葉県,茨城県及び群馬県と細目協定を締結して,当該事業を実施している(乙14,49,50,弁論の全趣旨)。 平成12年7月11日,都における一般会計と水道事業会計間の負担割合が,それぞれ1000分の433,1000分の567と定められた(乙51)。 (イ) 各年度負担金額の決定都は,別紙基金負担金(負担金額の決定)細目協定欄記載の日に,群馬県ほか3県とともに本件基金と細目協定を締結し,同覚書欄記載の日に,細目協定に関する覚書を締結し,その後,同精算 各年度負担金額の決定都は,別紙基金負担金(負担金額の決定)細目協定欄記載の日に,群馬県ほか3県とともに本件基金と細目協定を締結し,同覚書欄記載の日に,細目協定に関する覚書を締結し,その後,同精算通知欄記載の日に本件基金理事長から被告知事及び同水道局長あてに精算通知があり,同負担金額欄記載のとおり各年度負担金額が決定した(乙16の1,2,乙52,55,58,60,63,66,弁論の全趣旨)。 (ウ) 支出被告都市整備局課長は,別紙基金負担金(支出)都知事分の支出命令欄記載の日に,出納長に対し,同負担額欄記載の支出を命令し,出納長は,同支出(精算)欄記載の日に本件基金に対し支出し,その後同欄記載の日に同負担額欄記載の還付がされた。また,水道局金銭出納員は,別紙基金負担金(支出)水道局長分の支出(精算)欄記載の日に,本件基金に対し同負担額欄記載の支出をし,その後同欄記載の日に同負担額欄記載の還付がされた。(乙53の1,2,乙56,57の1,2,乙59の1,2,61の1,2,乙64,67の1,2,弁論の全趣旨)オ一般会計繰出金被告財務局課長は,出納長に対し,水道事業会計に対する繰出金のうち八ッ場ダム建設費負担金分として,別紙繰出金支出命令欄記載の日に同負- 12 -担額欄記載の支出命令をし,出納長は水道事業会計に対し支出した。(乙72の1ないし4,乙73の1,2,弁論の全趣旨)(4) 住民監査請求原告らは,東京都監査委員に対し,平成16年9月10日付けで,被告水道局長及び被告知事を名宛人とする勧告を発することを求めて住民監査請求を行ったが,同監査委員は,同年10月25日付けで,原告らの主張が事業の必要性そのものを問題とするものであって財務会計上の行為の違法性・不当性を具体的かつ客観的に示したものとは認められないとの理由で却下した が,同監査委員は,同年10月25日付けで,原告らの主張が事業の必要性そのものを問題とするものであって財務会計上の行為の違法性・不当性を具体的かつ客観的に示したものとは認められないとの理由で却下した(甲1)。 (5) 本件訴訟の提起等原告らは,平成16年11月22日,本件訴えを提起し,平成20年10月15日の本件弁論準備手続期日において,被告知事に対し,平成16年9月10日以後にされた支出命令を原因とするP2への損害賠償請求することを求めて訴えを追加的に変更した。 争点 (1) 被告水道局長がダム使用権設定申請を取り下げないことは,地方自治法242条の「財産の管理を怠る事実」に該当するか。(争点1)(2) 被告知事が,被告課長らへの指揮監督権限を行使することにより,負担金ないし繰出金の支出命令をさせないことを求める請求は,地方自治法242条の2第1項1号の当該行為の差止請求に該当するか。(争点2)(3) 八ッ場ダムに係る建設費負担金,受益者負担金,水特法負担金,基金負担金及び一般会計繰出金(以下「本件各負担金」という。)の支出は,地方自治法2条14項,同条16項,同法138条の2,地方財政法4条1項,地方公営企業法17条の2第2項に反し違法であるか。(争点3)(4) 八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げないことは,地方財政法8条に反し違法であるか。(争点4)- 13 - 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(被告水道局長がダム使用権設定申請を取り下げないことは,地方自治法242条の「財産の管理を怠る事実」に該当するか。)について(原告らの主張)地方自治法237条の「財産」には,同条238条1項4号の「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」及び同条項7号の「出資による権利」が含まれるところ,ダム使用権の設定予定者 原告らの主張)地方自治法237条の「財産」には,同条238条1項4号の「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」及び同条項7号の「出資による権利」が含まれるところ,ダム使用権の設定予定者となるためには,実体的にダム使用権の設定要件(特定多目的ダム法15条2項)に適合し,かつ当該多目的ダムの建設に関する基本計画中にその旨が規定される必要があり(同法4条2項5号),さらに設定予定者は,ダム使用権の設定を受ける排他的権利を確保する反面,所定の負担金納付義務を負うことになり(同法7条),設定申請が却下された場合に納付済みの負担金は還付される(同法12条)関係にあるので,ダム使用権設定予定者の地位は,「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」又は「出資による権利」に該当し,地方自治法237条の「財産」に含まれ,ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実は,同法242条の「財産の管理を怠る事実」に該当する。 (被告水道局長の主張)ダム使用権設定予定者の地位なるものは,将来ダム使用権が設定される予定者であるということであって,ダム使用権設定予定者の地位ないしダム使用権設定申請を取り下げる権利は,地方自治法237条1項の定める「財産」,すなわち公有財産,物品及び債権並びに基金のいずれにも該当せず,また,ダム使用権設定予定者の地位を放棄することが,同法242条の定める財産の「管理」に該当することもあり得ないから,本件訴えのうち,ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実の違法確認を求める部分は不適法である。 (2) 争点2(被告知事が被告課長らへの指揮監督権限を行使することにより,- 14 -負担金ないし繰出金の支出命令をさせないことを求める請求は,地方自治法242条の2第1項1号の当該行為の差止請求に該当するか。 被告知事が被告課長らへの指揮監督権限を行使することにより,- 14 -負担金ないし繰出金の支出命令をさせないことを求める請求は,地方自治法242条の2第1項1号の当該行為の差止請求に該当するか。)について(原告らの主張)支出命令権限が委任されている場合でも,当該支出についての本来的権限を有している被告知事には,指揮監督権限を行使して受任者をして違法な支出命令をさせないようにすべき義務がある。そして,被告知事に対して支出差止めを命じる判決があった場合は同被告から権限委任を受けた被告課長らも当該判決に拘束されると解され,また,八ッ場ダム建設事業に関する都の費用負担は極めて巨額であるから,被告課長らのみの判断により決定することは極めて困難であり,さらに,将来における支出については被告知事において本来的権限に基づき負担金の支出の可否及び要否を自ら判断すべきであるから,上記請求も適法である。 (被告知事の主張)上記請求は,被告知事が被告課長らに対し指揮監督権限を行使するように求めているものであるが,それは地方自治法242条の2第1項1号にいう当該行為の差止請求に該当せず,その訴えは不適法である。 (3) 争点3(本件各負担金の支出は,地方自治法2条14項,同条16項,同法138条の2,地方財政法4条1項,地方公営企業法17条の2第2項に反し違法であるか。)について(原告らの主張)ア本件各負担金支出の違法事由(ア) 建設費負担金東京都の水道事業を実施するために客観的必要性のない水利権を確保するための費用を支出することは,地方公共団体が住民に対し負っている地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項の最少経費原則に違反し,執行機関が地方公共団体に対して負っている誠実執行義務(地方公- 15 -営企業法6条,地方自治法138条の2)にも し負っている地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項の最少経費原則に違反し,執行機関が地方公共団体に対して負っている誠実執行義務(地方公- 15 -営企業法6条,地方自治法138条の2)にも違反し,このことは水道法2条1項及び同法2条の2第1項からも確認されるところ,都が八ッ場ダムにおいて確保しようとしている水利権は,都の水道事業に全く必要のないものであるから,被告水道局長の建設費負担金の支出は違法である。 また,特定多目的ダム法12条が予定している,ダム使用権設定申請を取り下げる権利は,国との関係で何の制約も受けず,地方公共団体が自由に行使できる権利であるから,ダム使用権設定予定者たる地位を維持することが,それに伴う負担金支出の継続を上回る利益を水道事業にもたらさないことが客観的に認められる場合,被告水道局長としては,ダム使用権設定申請を取り下げる権利を行使して爾後の負担金支出義務を回避すべきであって,ダム使用権設定申請を取り下げる権利を行使することなしに漫然と負担金の支払をすることは違法である。 (イ) 受益者負担金八ッ場ダムは,利根川流域の治水という目的との関連性に乏しく,ダムサイト(ダム用地)周辺の岩盤・地質がダムを建設するための適格性を欠き,ダム湖周辺の地盤が地すべりの危険をはらんでいるため,河川法3条2項の定める河川管理施設の客観的効用を備えておらず,それにより都が「著しく利益を受ける」(同法63条)といえないから,都が国に負担金を納付することは地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反し違法である。また,八ッ場ダム建設事業は,条理法上の環境影響評価義務,生物の多様性に関する条約及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に抵触し,このような事業のために地方公共団体が公金を支出することは地方自治法2 設事業は,条理法上の環境影響評価義務,生物の多様性に関する条約及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に抵触し,このような事業のために地方公共団体が公金を支出することは地方自治法2条16項に反し許されない。 そして,地方財政法25条3項は,国が地方公共団体の負担金を法令の定めるところに従って使用しなかったときに,地方公共団体は国に対- 16 -し負担金の支出を拒否し,また支出済みの負担金の返還を請求することができる旨を規定しているところ,上記のとおり国が都から八ッ場ダムの受益者負担金を徴することは違法なのであるから,被告知事には同条項に基づく負担金支払拒否権を行使すべき義務があり,国からの納付通知に対応して漫然と支出決定をすることは,同法4条に反し,財務会計法規上の義務(地方自治法138条の2に規定する誠実執行義務)に違反するもので違法である。 (ウ) 水特法負担金水源地域対策特別措置法に基づく水源地域整備事業が実施される区域以外の地方公共団体に,同事業の経費を負担させることができるのは,その地方公共団体が指定ダムにより利水上の受益が予定されているか(同法12条1項1号,2号イ,ロ),治水上の利益が予定される場合(同2号ホ)に限られるところ,東京都は八ッ場ダムにより利水上も治水上も利益を受けないから,それにもかかわらず群馬県との間に負担金の支出を内容とする合意を締結することは,公序良俗に反し(民法90条),若しくは,東京都にとって必要のない事業であることを当事者がいずれも認識して行った心裡留保(民法93条)に基づくものであって,いずれにしても無効であり,無効な支出負担行為に基づく支出命令はその根拠を欠き違法となる。 また,本件水特法経費負担協定は,「この協定に疑義が生じた場合は,協議の上処理する」ことを規定し,基 って,いずれにしても無効であり,無効な支出負担行為に基づく支出命令はその根拠を欠き違法となる。 また,本件水特法経費負担協定は,「この協定に疑義が生じた場合は,協議の上処理する」ことを規定し,基本協定を受けて結ばれる毎年度の協議に際し被告知事が負担金を拒否することをも想定しているから,仮に協定それ自体が原始的に無効でないとしても,ダムによる受益の事実が客観的に存在しないにもかかわらず,被告知事がこの拒否権を行使しないまま漫然と協定上の負担金を支出することは違法である。 (エ) 基金負担金- 17 -東京都は八ッ場ダムにより利水上も治水上も利益を受けないのであるから,本件基金経費負担協定は,上記同様,民法90条又は93条により無効であって,関係する支出命令は根拠を欠くものである。 また,仮に協定自体が原始的に無効でないとしても,ダムによる受益の事実が客観的に存在しないにもかかわらず,被告知事が,協定が許容している年度毎の協議拒否権を行使しないまま,漫然と協定上の負担金を支出することは違法と評価される。 (オ) 一般会計繰出金地方公営企業の特別会計の経費は,当該地方公営企業の経営に伴う収入によって賄われるのが原則である(地方財政法6条,地方公営企業法17条の2第2項)。同法18条1項は,同法17条の2第1項の規定によるもののほか,一般会計から特別会計への出資をすることができるとしているが,かかる出資については上記原則の例外とは認められておらず(同法17条の2第2項),当該地方公営企業の経営に伴う収入によって賄われる経費に充てられなければならない。 ところが,都にとっては,八ッ場ダムにより貯留される予定の流水を利用する必要は全くなく,かかる流水を確保する権利を得ても,この水を売ることにより収入を得る見込みは全くないから,八ッ場ダム建設 ない。 ところが,都にとっては,八ッ場ダムにより貯留される予定の流水を利用する必要は全くなく,かかる流水を確保する権利を得ても,この水を売ることにより収入を得る見込みは全くないから,八ッ場ダム建設事業のための経費を負担しても,水道事業による収入により賄える見込みは皆無であり,上記繰出は,地方公営企業法17条の2第2項に反し違法である。 イ八ッ場ダムによる利水上の利益の不存在都の水需要は平成4年度ころをピークとして減少傾向にあり,水源確保の目安となる年間一日最大配水量は,平成19年度には日量500万立方メートルを割り込んだ。その主要な要因は,節水型機器の普及,漏水量の減少,1年を通じた配水量の平準化である。また,都の給水人口は未だ増- 18 -加しているが,今後10年以内にピークを迎えることは確実であり,他に水需要が増加する要因は見当たらない。その一方で,都が保有する水源は地下水を含め日量701万立方メートルもあるから,これ以上の水源確保の必要はない。 都の過去10回の水需要予測はいずれも過大であったが,都は平成15年12月の水需要予測において,あえて従前の予測手法をそのまま踏襲し,平成25年度の一日最大配水量が日量600万立方メートルに増加すると予測しているが,一日最大配水量は平成4年度から減少の一途を辿っており,予測の誤りは深刻である。また,都が認めている水源は日量623万立方メートルであるが,現に使用されている地下水を水源として評価していない等の点で不合理である。さらに,10年に1回の渇水年を想定すると水源の供給可能量はおよそ2割減少する旨の国土交通省の見解は全く信用できないが,たとえそのことを考慮しても,都は既に有り余る水源を保有しているので,将来とも水が不足することはない。 ウ八ッ場ダムによる治水上の利益の不存在利 減少する旨の国土交通省の見解は全く信用できないが,たとえそのことを考慮しても,都は既に有り余る水源を保有しているので,将来とも水が不足することはない。 ウ八ッ場ダムによる治水上の利益の不存在利根川水系河川整備基本方針は,カスリーン台風洪水を対象洪水として,基準点であるα3地点(群馬県伊勢崎市。利根川上流部の河川が全て合流して平野部に流れ出す場所である。)の基本高水流量(ダム等の河川管理施設が全くない状態での,各河川の重要度に応じた計画規模の洪水で想定される最大流量)を毎秒2万2000立方メートルとし,このうち毎秒5500立方メートルを八ッ場ダムを含む上流ダム群で調節し,残り1万6500立方メートルを河道で対応することとしている。 しかしながら,カスリーン台風の実績洪水流量は上流部の3地点の観測流量を単純に合算した毎秒1万7000立方メートルと推定されているところ,河道貯留効果(河川が合流した際に河川流量が低減する現象)を考慮すれば実際には毎秒約1万5000立方メートルであったと考えられ,- 19 -α3上流部での氾濫流量は毎秒1000立方メートルにとどまるから,これを考慮しても,洪水ピーク流量は毎秒1万6000立方メートル程度にしかならない。また,国土交通省が根拠とした,カスリーン台風の再来計算と,総合確率法による1/200確率流量(200年に1回の最大流量)は,いずれも科学的根拠がなく,実態と遊離しており,α3地点の基本高水流量毎秒2万2000立方メートルは過大である。 さらに,国土交通省の計算によれば,カスリーン台風が再来した場合のα3地点に対する八ッ場ダムの治水効果はゼロとなっており,他の大洪水においても八ッ場ダムの治水効果は非常に小さい。 したがって,八ッ場ダムは,どのような観点からみても不要である。 エ八ッ場ダムの危険 α3地点に対する八ッ場ダムの治水効果はゼロとなっており,他の大洪水においても八ッ場ダムの治水効果は非常に小さい。 したがって,八ッ場ダムは,どのような観点からみても不要である。 エ八ッ場ダムの危険性(ア) ダムサイトの危険性八ッ場ダムのダムサイト周辺の基礎岩盤は,亀裂や貫入岩などが多く,複雑かつ不安定であり,岩級区分(岩片の堅さ,割れ目間隔及び割れ目の性状により岩盤を評価したもの)が低い箇所が多く,透水性が高い箇所が多い。また,ダムサイト周辺には熱水変質帯(本来硬い鉱物が温泉水等による化学的な反応によって分解され粘土鉱物等に変質したもの)が広く分布し,ダムサイトのすぐ下流には,この地域で最も大きな断層がある上,ダムサイト地域には,その断層に伴って生じた小さな断層がたくさんある。 これらの事実によれば,八ッ場ダムのダムサイト周辺の岩盤・地質は,ダムを建設するための適格性は全くなく,八ッ場ダムが完成したとしても,基礎岩盤がダム提体の重みに対する耐久性を持たない可能性,ダム提体の底部や側面部,ダム貯水池の側面部等が水圧によってずれる可能性,ダム提体が浮力によって不安定となる可能性,貯水が十分に行えない可能性,さらにはダム提体や貯水池が断層の活動によってずれてしま- 20 -い破壊される可能性を包含する,欠陥だらけの危険な構造物である。 (イ) 地すべりの危険性また,ダム湖となる吾妻川の両岸の斜面には22の地すべり痕跡があり,このうち少なくともα4地区α5,α6地区α7,α8地区α9,α8地区α10(α11)は地すべりの危険地区ないし要対策地域であり,国土交通省も地すべりの危険性について一応の認識を有しているが,α4地区α5では,想定すべり面が滑落崖やその直下の分離丘も入らないほど狭小なものであり,α6地区α7では,最も中心的な活動地 であり,国土交通省も地すべりの危険性について一応の認識を有しているが,α4地区α5では,想定すべり面が滑落崖やその直下の分離丘も入らないほど狭小なものであり,α6地区α7では,最も中心的な活動地と目すべき中央の地すべりが認定から外され,α8地区α9では,想定される7つの地すべりブロックのうち,川よりの1つが湛水により不安定化するとされながら,上部への波及は全く視野に入れられておらず,α8地区α10(α11)では,地すべりが起こった限られた範囲では対策が施されたが,同様の地質・地形条件を持つ上下流部は放置されているなど,いずれの地区についても国土交通省の対策は手抜きであり,地すべり発生の危険性を除去できるものとはいえない。 (被告らの主張)ア八ッ場ダムは,河川管理者である当時の建設大臣が定めた「利根川水系工事実施基本計画」,水資源開発促進法4条に基づき内閣総理大臣が決定した「利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画」に位置付けられ,特定多目的ダム法4条1項に基づき国土交通大臣が建設に関する基本計画を定めたダムであるところ,原告らの主張の実質は国が行った上記基本計画等の不当をいうものであって,地方公共団体における適正な財務会計処理の保障を目的とした住民訴訟制度の目的を逸脱し,失当である。 イ本件各負担金支出の違法事由について(ア) 建設費負担金及び受益者負担金について建設費負担金は,特定多目的ダム法7条1項及び同法施行令11条の- 21 -3の規定に基づいて,受益者負担金は,河川法63条1項及び64条1項の規定に基づいて,それぞれ国土交通大臣の納付命令によって徴収されるものであり,これらの国土交通大臣の納付命令がある以上,被告らは,当該納付命令が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得な ぞれ国土交通大臣の納付命令によって徴収されるものであり,これらの国土交通大臣の納付命令がある以上,被告らは,当該納付命令が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,当該納付命令を尊重し,その内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことは許されない。したがって,支出命令等の差止めが許されるのは,国土交通大臣の当該納付命令に重大かつ明白な違法がある場合に限られ,損害賠償請求責任を問うことができるのは,国土交通大臣の当該納付命令を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる(最高裁判所平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁)。 なお,原告らは,建設費負担金,受益者負担金については,地方財政法25条3項の支出拒否権により支出を拒否できるから,その権限を行使しないままに負担金支給決定をすることは財務会計法規上の義務違反となるとも主張するが,同項が規定する支出の拒否等は,国が地方公共団体の負担金を法令の定めるところに従い,これを使用しなかった場合に地方公共団体がその事実を主張して支出の拒否・返還請求ができると規定するものであり,地方公共団体に,国の納付命令そのものの適法性を判断し,それに対する不服をいう権限を与えたものではないし,原告らは建設費負担金及び受益者負担金が法令の定めるところに従って使用されていないことを主張するわけでもないから,いずれにしても,その主張は前提を欠くものとして失当である。 また,原告らは,上記各支出が違法であることの理由として,八ッ場ダムの建設計画に重大かつ明白な瑕疵があると主張し,本訴訟において,種々の文献を証拠として提出し,さらに証人をもって,八ッ場ダム建設- また,原告らは,上記各支出が違法であることの理由として,八ッ場ダムの建設計画に重大かつ明白な瑕疵があると主張し,本訴訟において,種々の文献を証拠として提出し,さらに証人をもって,八ッ場ダム建設- 22 -の不当性を立証しようとしているが,そもそも,重大かつ明白な瑕疵が存在するのであれば,それは当該計画自体から看取できるはずであり,法廷に提出された証拠によらなければ分からないような瑕疵が重大かつ明白であるはずがない。 (イ) 水特法負担金及び基金負担金について八ッ場ダム建設事業は国土交通大臣が作成した各基本計画に基づいて行われているものであるところ,八ッ場ダム建設地の周辺における関係住民の生活の安定と福祉の向上を図るため,生活環境,産業基盤等を整備し,あわせてダム貯水池の水質の汚濁を防止し,又は湖沼の水質を保全するために策定される水源地域整備計画の実施を推進するための費用の一部を受益者である都が負担することは合理的かつ妥当なものであるから,そのためである水特法負担金及び基金負担金の支出をもって違法とすることはできない。 また,水特法負担金は,国土交通大臣による水源地域の指定に基づき実施される事業の負担金であり,また,基金負担金は,水特法に基づく事業を補完するために行う基金事業の負担金であるから,いずれも,支出命令等の差止めが許されるのは,国土交通大臣の当該水源地域の指定に重大かつ明白な違法がある場合に限られ,損害賠償請求責任を問うことができるのは,国土交通大臣の当該水源地域の指定を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られるのである。そして,八ッ場ダムの建設計画自体に重大かつ明白な瑕疵がないことは,前記(ア)のとおりである。 また,原告らは,水源地域対策事業に関する協定や合意にお 違反する違法なものであるときに限られるのである。そして,八ッ場ダムの建設計画自体に重大かつ明白な瑕疵がないことは,前記(ア)のとおりである。 また,原告らは,水源地域対策事業に関する協定や合意における協議の定めにおいて,支出の拒否権があるとして,その権限を行使しないままに負担金支給決定をすることは財務会計法規上の義務違反となると主張するが,協議の定めは,協定や合意に係る疑義についての協議を定め- 23 -るものであって,支出の際の拒否権が定められているわけではないし,支出の際にかかる協定や合意の有効性を判断する権利を与えるものではないから,原告らの主張はその前提を欠くものであり,主張自体失当である。 (ウ) 一般会計繰出金について一般会計繰出金の根拠である地方公営企業法18条は,同法17条の2第1項(同条2項にいう「前項の規定」)による負担のほかに一般会計等からの出資を認めるものであるから,上記繰出金が同法17条の2第2項に反する旨の原告らの主張は法の解釈を誤ったものであり,主張自体失当である。 ウ八ッ場ダムによる水源確保の必要性について都は,清浄にして豊富低廉な水の供給を図り,もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的(水道法1条)とし,常時給水義務を負う(同法15条2項)水道事業者として,また,住民の福祉の増進を図るべき(地方自治法1条の2第1項)地方公共団体として,渇水によって都民の生活,社会経済活動等が極力影響を受けないよう努力する責務を負う。首都東京において,平常時はもとより,大規模渇水があった場合でも,安定給水を達成し,これを将来においても持続していくためには,水道の需要量に影響を及ぼす様々な要因(将来人口,経済成長率等)を基礎にした長期的な水道需要予測をし,これを基本としながら,将来における渇 定給水を達成し,これを将来においても持続していくためには,水道の需要量に影響を及ぼす様々な要因(将来人口,経済成長率等)を基礎にした長期的な水道需要予測をし,これを基本としながら,将来における渇水発生の危険性や水源の具体的状況等をも総合的に考慮して,先行的に水源を確保していかなければならない。 都水道局は,平成15年12月,近年の水の需要動向の変化を踏まえ,平成12年12月に策定された「東京構想2000」で示された将来の人口,経済成長率等の基礎指標に基づき将来の水道需要量の見直しをし,平成25年度における一日最大配水量は600万立方メートル程度になるも- 24 -のと見込んでいる。水道需要予測は,過去の水道使用実績を基に重回帰分析などの統計的手法により各用途別の計画一日平均使用水量を求め,これに適切に設定した計画有収率及び計画負荷率を用いて将来需要量である計画一日最大配水量を算出するものであるところ,都が水道需要予測において重回帰分析手法により算出した計画一日平均使用水量とその後の一日平均使用水量の実績値をみると,両者は近い趨勢を示している。また,一日最大配水量の実績値が計画一日最大配水量を下回っているのは,安定給水の確保を重視した計画負荷率を設定していることによるものであり,都の予測手法の問題ではない。 また,現在,都が保有する水源量は,日量約630万立方メートルであり,これに八ッ場ダムなどにより今後得られる見込みの水源量(日量50万立方メートル)を単純に加えた将来の保有水源量(計画当時の河川流況を基に利水安全度1/5(5年に1回程度発生する渇水時に必要な水を安定的に取水できること)として算出した水源量)は,日量680万立方メートルとなる(なお,多摩地区の地下水は,地盤沈下のおそれ及び水質問題があり,将来の保有水源に含めること 生する渇水時に必要な水を安定的に取水できること)として算出した水源量)は,日量680万立方メートルとなる(なお,多摩地区の地下水は,地盤沈下のおそれ及び水質問題があり,将来の保有水源に含めることは適当でない。)。しかし,近年の降雨の状況や都の水源確保の目標を踏まえて算出した将来の保有水源量(近年の河川流況を基に利水安全度1/10として算出した水源量)は,課題を抱える水源を含んだ上で,日量570万立方メートル程度ないし590万立方メートル程度となり,将来の需要量である日量600万立方メートルに不足することとなる。 そして,全国的な水資源開発の整備水準は利水安全度1/10であり,利根川・荒川水系については,計画上,全国水準よりも低水準である利水安全度1/5により水源開発が進められてきているところ,利根川水系における現況の利水安全度は1/2から1/3である。 これらのことを総合的に勘案すると,被告水道局長において,将来の水- 25 -源量は将来の水道需要量に対して十分なものとはいえず,八ッ場ダムによる水源確保が必要であると判断したことは合理的である。 エ八ッ場ダムによる治水上の利益について昭和22年9月のカスリーン台風は,都区部東部地域を水没させたが,もし,カスリーン台風並みの台風に襲われ,利根川が当時と同じ箇所で決壊した場合,その被害は氾濫面積約500平方キロメートル,浸水区域内人口約200万人,被害総額約33兆円と予測されている。 現在の国の治水計画である「利根川水系河川整備基本方針」では,基準地点のα3において,基本高水のピーク流量毎秒2万2000立方メートルのうち上流ダム群で毎秒5500立方メートルを調節することとしており,八ッ場ダムは同計画の一環をなすものである。また,利根川上流域は,奥利根流域,吾妻川流域及び烏・神流川流域 万2000立方メートルのうち上流ダム群で毎秒5500立方メートルを調節することとしており,八ッ場ダムは同計画の一環をなすものである。また,利根川上流域は,奥利根流域,吾妻川流域及び烏・神流川流域の3流域に区分され,利根川の治水計画においては3流域の降雨量,降雨量の時間分布及び地域分布を考慮して洪水調節施設を配置する必要があるところ,洪水調節機能を持つダムは奥利根流域に5ダム,烏・神流川流域には1ダムあるが,利根川上流域の全流域面積の約4分の1を占め過去に多くの降雨が発生した吾妻川流域には八ッ場ダム以外のダムはなく,しかも八ッ場ダムの洪水調節容量は,利根川の既設ダムの中で最大であり,利根川水系上流の既設6ダムの洪水調節容量全体の約6割に相当することから,八ッ場ダムは他の既設ダムと相まってα3上流での効果的な洪水調節を可能とし,利根川水系全体の治水上の安全確保に寄与するものである。 したがって,八ッ場ダムは,利根川の洪水防止効果が極めて高く,都にとって必要なものである。 オ八ッ場ダムの危険性について(ア) ダムサイトの危険性について原告らは,国に対する情報公開請求により入手した地質調査報告書- 26 -(甲D1ないし4)で指摘された事項に独自の分析を加え,八ッ場ダムが危険なダムであると結論付けているが,八ッ場ダム計画の事業者であり,実際に調査・設計・施工をしている国土交通省は,上記報告書のみならず,昭和60年度から平成15年度にかけて地質調査を実施し,さらに平成16年度以降も必要に応じて地質調査を実施し,ダム設計に反映させており,学識経験者からなる八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会にも諮った上で,ダムサイトに関する技術的な問題については対応可能であるとしており,報告内容の一部を捉え,ダムサイト全体の安全性に重大明白な瑕 験者からなる八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会にも諮った上で,ダムサイトに関する技術的な問題については対応可能であるとしており,報告内容の一部を捉え,ダムサイト全体の安全性に重大明白な瑕疵があるとする原告らの主張は失当である。 (イ) 地すべりの危険性について原告らは,国に対する情報公開請求により入手した報告書(甲D9ないし11)及びホームページ(甲D12)を基に,八ッ場ダムの貯水池周辺斜面における地すべりの危険等を縷々主張するが,八ッ場ダム計画の事業者であり,実際に八ッ場ダムの貯水池周辺斜面の安定性を確保するために調査・検討・施工をしている国土交通省は,上記各報告書,他の調査報告書のほか,八ッ場ダム貯水池周辺地盤安定検討委員会を設け,地質や地すべりの専門家の意見を踏まえつつ,必要な対策を検討して実施してきており,さらにダム完成後の湛水に当たり万全を期すために,事前に貯水池全域の斜面を対象に再検討を行うとともに,上記委員会の意見を踏まえ,必要な箇所では斜面の変動を観測する動態観測等を実施する予定となっている。 (4) 争点4(八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げないことは,地方財政法8条に反し違法であるか。)について(原告らの主張)地方財政法8条は,地方公共団体の財産は,常に良好な状態で管理し,その所有の目的に応じて最も効率的に運用しなければならない旨を規定してい- 27 -る。 都の水道事業が八ッ場ダム使用権を確保してもこれに見合った収入を得られないのに対し,八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げるなら,今後の負担金の支払義務を免れるのはもとより,既払分も一定の条件付きで返還を受けられる(特定多目的ダム法12条)から,このような財務会計上の権限の行使を怠ることは,地方財政法8条に違反する。 (被告水道局長の主張)地方財政 れるのはもとより,既払分も一定の条件付きで返還を受けられる(特定多目的ダム法12条)から,このような財務会計上の権限の行使を怠ることは,地方財政法8条に違反する。 (被告水道局長の主張)地方財政法8条における「財産」の意義は,地方自治法237条1項における場合と同じであるところ,八ッ場ダムの使用権設定予定者である地位又は使用権の設定を受けるべき権利が同項の「財産」には該当しないから,八ッ場ダムの使用権設定申請の適否について同法8条を論拠とすることはできない。 なお,ダム使用権の設定予定者たる地位を保有する目的はダム使用権を取得することであるから,その目的に応じて運用するというのは,その地位を喪失しないように保持するということであり,地方財政法8条からその地位を放棄する義務が生じることはあり得ない。 第3争点に対する判断 争点1(被告水道局長がダム使用権設定申請を取り下げないことは,地方自治法242条の「財産の管理を怠る事実」に該当するか。)について(1) 原告らは,ダム使用権設定予定者の地位は,地方自治法238条1項4号の「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」又は同項7号の「出資による権利」であるから,同法237条の「財産」に当たり,ダム使用権設定申請を取り下げないことは同法242条の「財産の管理を怠る事実」に該当すると主張する。 しかし,地方自治法238条1項は,「「公有財産」とは,普通地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げるもの(基金に属するものを除- 28 -く。)をいう。」として,公有財産の範囲を具体的に定めているところ,これは同じ「財産」の範疇に属する物品,債権及び基金との区分を明確にし,公有財産の管理体制と責任関係を明確にする趣旨であると解される。 そして,同項4号は,公有財産として「地上権,地役 ているところ,これは同じ「財産」の範疇に属する物品,債権及び基金との区分を明確にし,公有財産の管理体制と責任関係を明確にする趣旨であると解される。 そして,同項4号は,公有財産として「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」を掲げているところ,地上権,地役権及び鉱業権は,いずれも用益物権又は用益物権とみなされるものであるから,「その他これらに準ずる権利」とは,法律上確立している用益物権,又は用益物権に類する性格を有する権利をいうものと解するのが相当である。これに対し,ダム使用権の設定予定者たる地位は,将来,ダム使用権の設定を受け得るという手続上の地位にすぎず(特定多目的ダム法16条2項,17条),実際にダム使用権の設定を受けるには,実体的にダム使用権の設定要件に適合し(同法5条,15条2項),当該多目的ダムの建設に関する基本計画中にその旨が規定される必要があるのであり(同法4条2項5号),そのようなダム使用権の設定予定者たる地位をもって,およそ用益物権又は用益物権に類する性格を有する権利であると解することはできないことは明らかである。したがって,ダム使用権設定予定者の地位は,地方自治法238条1項4号の「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」には当たらない。 また,同項7号は,公有財産として「出資による権利」を掲げているところ,ダム使用権の設定予定者は,多目的ダムの建設費の負担義務を負うが(特定多目的ダム法7条),納付先である特定多目的ダムの建設主体は国土交通大臣すなわち国であり(同法2条1項),それにより利益配当や残余財産の分配を受けることもないから,多目的ダムの建設費の負担が「出資」であるといえないことは明らかである。 さらに,公有財産は,同法237条2項,238条の4以下においてその貸付け,交換,譲渡等を制限 産の分配を受けることもないから,多目的ダムの建設費の負担が「出資」であるといえないことは明らかである。 さらに,公有財産は,同法237条2項,238条の4以下においてその貸付け,交換,譲渡等を制限する規定が置かれているが,そもそもダム使用権の設定予定者たる地位について,貸付け,交換,譲渡等の処分がされるこ- 29 -とはおよそ想定されていないのであって(特定多目的ダム法6条,21条参照),同法237条2項,238条の4以下の規定を適用する余地もない。 以上によれば,ダム使用権の設定予定者たる地位は,同法238条1項4号の「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」,同項7号の「出資による権利」のいずれにも当たらないことは明らかである。 (2) このほか,原告らは,ダム使用権の設定予定者たる地位は,地方財政法8条の「財産」,地方公営企業法20条,同法施行令14条の「資産」に該当する旨主張する。 しかしながら,地方自治法237条は「この法律において「財産」とは,公有財産,物品及び債権並びに基金をいう。」と明示的に定義しており,したがって,同法242条にいう「財産の管理を怠る事実」の「財産」は,公有財産,物品及び債権並びに基金に限られると解すべきであって,地方財政法8条の「財産」や地方公営企業法20条,同法施行令14条の「資産」の解釈いかんによって,地方自治法が明示的に定義した「財産」の内容が変容を受けることはおよそ考え難いから,原告らの上記主張は失当であり,ほかにダム使用権の設定予定者たる地位が同法237条及び242条の「財産」に当たると解すべき理由はない。 (3) 加えて,ダム使用権設定申請を取り下げれば,そもそもダム使用権の設定予定者たる地位自体を放棄することになり,そのような行為がダム使用権の設定予定者たる地位の「管理」に当た すべき理由はない。 (3) 加えて,ダム使用権設定申請を取り下げれば,そもそもダム使用権の設定予定者たる地位自体を放棄することになり,そのような行為がダム使用権の設定予定者たる地位の「管理」に当たるとは解することはできないから,ダム使用権設定申請の取り下げを怠る事実が地方自治法242条の「管理を怠る事実」に当たるとはいえない。 (4) 以上によれば,ダム使用権設定予定者の地位は地方自治法237条の「財産」に該当せず,また,ダム使用権設定申請を取り下げないことは,同法242条の「管理を怠る事実」に該当しないというべきである。 したがって,本件訴えのうち,同法242条の2第1項3号に基づき被告- 30 -水道局長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める部分(前記第1の2)は,不適法である。 争点2(被告知事が被告課長らへの指揮監督権限を行使することにより,負担金ないし繰出金の支出命令をさせないことを求める請求は,地方自治法242条の2第1項1号の当該行為の差止請求に該当するか。)について(1) 地方自治法242条の2第1項1号は,同法242条1項の請求に係る違法な行為につき,「当該執行機関又は職員」に対する「当該行為」の全部又は一部の差止めの請求をすることができる旨定めている。そして,客観訴訟である住民訴訟は,法が定める場合に限って適法に訴えを提起することができるのであり,それに該当しない訴えが不適法になることは,いうまでもないところである。 (2)そこで検討するに,同法242条の2第1項1号が,差止めの請求の対象として掲記する「当該行為」とは,同法242条1項の請求に係る違法な行為,すなわち,違法な「公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行 2条の2第1項1号が,差止めの請求の対象として掲記する「当該行為」とは,同法242条1項の請求に係る違法な行為,すなわち,違法な「公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担」をいうところ,被告知事が被告課長らに対して指揮監督権限を行使することは,これらの各行為のいずれにも該当しないことは明らかである。 また,地方自治法242条の2第1項1号の差止めの請求は,違法な財務会計行為がされる前に当該行為の差止めを求めるものであって,差止めの対象となる行為をするか否かを決定する権限を現実に有している者を被告としなければ,訴えを提起する目的を実現できないのであるから,同号にいう「当該執行機関又は職員」とは,差止めの対象となる行為をする権限を現実に有する者をいうものと解するのが相当であるところ,前記争いのない事実等(第2の2(1)エないしカ)のとおり,原告らが問題とする各負担金及び繰出金の支出命令を行う権限は,被告知事から被告課長らに対して委任され- 31 -ており,被告知事は,これらの支出命令を行う権限を有していないのであるから,同号にいう「当該執行機関又は職員」に該当しないというべきである。 したがって,被告知事が被告課長らへの指揮監督権限を行使することにより,負担金ないし繰出金の支出命令をさせないことを求める請求は,地方自治法242条の2第1項1号が定める差止めの請求に該当せず,不適法な訴えであるというほかない。 この点につき,原告らは,被告知事に対して支出差止めを命じる判決があった場合は被告知事から権限委任を受けた被告課長らも当該判決に拘束されることになり,また,八ッ場ダム建設事業に関する費用負担は巨額であり,被告課長らの判断により決定することは困難であって,被告知事が将来における支出 から権限委任を受けた被告課長らも当該判決に拘束されることになり,また,八ッ場ダム建設事業に関する費用負担は巨額であり,被告課長らの判断により決定することは困難であって,被告知事が将来における支出の可否及び要否を判断すべきであると主張する。しかしながら,上記のとおり,そもそも地方自治法242条の2第1項1号により,被告知事に対して支出差止めを命じる判決をすることは予定されておらず,実際上も,権限委任を受けた被告課長らに対して支出差止めを命じる判決がされるならば,それで十分に目的を達成することができ,さらに,支出金額が高額であることは,何ら上記の法解釈に影響を及ぼすものでないことは明らかであるから,この点についての原告らの主張は失当であるといわざるを得ない。 (3) したがって,本件訴えのうち,被告知事に対し,被告課長らへの指揮監督権限の行使により負担金ないし繰出金の支出命令をさせないことを求める部分(前記第1の3)は,地方自治法242条の2第1項1号の当該行為の差止請求に該当せず,不適法である。 このほか原告らは,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,被告水道局長及び被告課長らに対し,本件各負担金の支出又は支出命令の差止めを求めているところ(前記第1の1,4),地方自治法242条の2第1項1号に規定する執行機関等に対する行為の差止めを求める訴えは,その性質上,差止めの対象となる行為が完了した場合には,訴えの利益を欠き,不適法になると解- 32 -されるから,上記訴えのうち,本件口頭弁論終結日である平成20年11月25日までにされた本件各負担金の支出又は支出命令の差止めを求める部分は,訴えの利益を欠き,いずれも不適法である。 争点3(本件各負担金の支出は,地方自治法2条14項,同条16項,同法138条の2,地方財政法4条1項 各負担金の支出又は支出命令の差止めを求める部分は,訴えの利益を欠き,いずれも不適法である。 争点3(本件各負担金の支出は,地方自治法2条14項,同条16項,同法138条の2,地方財政法4条1項,地方公営企業法17条の2第2項に反し違法であるか。)について(1) 建設費負担金についてア建設費負担金の支出の違法性についてそもそも特定多目的ダム法7条1項は,ダム使用権の設定予定者は,多目的ダムの建設に要する費用のうち,同項所定の額を勘案して,政令で定めるところにより算出した額の費用を負担しなければならない旨定めており,基本計画においてダム使用権の設定予定者とされた以上,その者が,建設費負担金を納付する時点で,ダム建設完了後に設定される予定のダム使用権を利用する必要のあることを要件としていない。したがって,都が国土交通大臣の納付通知を受けた時点で,都がダム使用権の設定予定者である以上,ダム建設完了後,都に設定されることが予定されるダム使用権が都の水道事業に客観的に必要となるか否かにかかわらず,法律上,都は建設費負担金の納付義務を負うことになる。したがって,都がダム使用権の設定予定者であり,国土交通大臣の納付通知がある以上,被告水道局長は,当該納付通知を尊重し,その内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があるから,被告水道局長が,国土交通大臣の納付通知に従って建設費負担金を支出することは,財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない。 これに対し原告らは,ダム使用権の設定予定者は,ダム使用権の設定の申請を自由に取り下げることができ,その場合は建設費負担金納付義務を免れることができるから,被告水道局長には,負担金支出に見合う利水上- 33 -の利益のないことが客観的に認められる場合には,ダム使用権の設定の申 下げることができ,その場合は建設費負担金納付義務を免れることができるから,被告水道局長には,負担金支出に見合う利水上- 33 -の利益のないことが客観的に認められる場合には,ダム使用権の設定の申請を取り下げて負担金納付義務を回避すべき義務があり,これをせずに漫然と負担金の支払をすることは,被告水道局長が都に対して負っている誠実執行義務(地方公営企業法6条,地方自治法138条の2)に反し違法であると主張する。 しかし,都は,清浄にして豊富低廉な水の供給を図り,もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを究極的な目的とする水道法(同法1条)に基づく水道事業を営んでいるところ,水道は,国民の日常生活に直結し,その健康を守るために欠くことのできないものであり,かつ,水は貴重な資源であることから(同法2条1項参照),都は,地方公共団体として,当該地域の自然的社会的諸条件に応じて,水道の計画的整備に関する施策を策定,実施するとともに,水道事業者として,水道事業の適正かつ能率的な運営に努める責務を負い(同法2条の2第1項),給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは,正当な理由がなければ,これを拒んではならず,給水契約の成立した水道利用者に対し,常時水を供給しなければならない(同法15条1,2項)のであって,都は,渇水によって都民の生活が極力影響を受けないよう努力する責務を負っているというべきである。ダム使用権の設定の申請も,このような責務を果たすべくされるものであるところ,一般にダムの建設は計画から完成に至るまで長期間にわたり多額の費用を要するものであるから,ダム使用権の設定の申請に当たっては,給水義務を全うするため,将来の経済,社会の発展にも対応することができるよう,長期的な給水区域内の水道需要及び供給能力を合理的に 額の費用を要するものであるから,ダム使用権の設定の申請に当たっては,給水義務を全うするため,将来の経済,社会の発展にも対応することができるよう,長期的な給水区域内の水道需要及び供給能力を合理的に予測した上,水道事業の適正かつ能率的な運営の観点から,その要否を慎重に検討,判断した上ですべきであり,そのような検討,判断がされた上でダム使用権の設定の申請がされた以上は,その後に生じた短期的な事情のみからその判断を変更することは原則として想- 34 -定されていないというべきである。 そして,地方公営企業は,常に企業の経済性を発揮することを経営の基本原則としているところ(地方公営企業法3条),被告水道局長は,水道事業管理者として,地方公営企業法8条1項各号に掲げる事項を除くほか,地方公営企業の業務を執行し,当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表し(同法8条1項),予算の原案の作成,決算の調整,当該企業の用に供する資産の取得,管理,処分,契約の締結,料金等の徴収など幅広い事務を担任し(同法9条),地方公営企業の業務に関する契約の締結並びに財産の取得,管理及び処分については条例又は議会の議決を要しないとされていること(同法40条1項)にかんがみると,企業の経済性を発揮するためにはこれらの事務の遂行は被告水道局長の合理的な裁量に委ねられているというべきである。 したがって,被告水道局長が,既にしたダム使用権の設定の申請を取り下げるか否かは,上記のように都に課せられた給水義務を全うするため,長期的な給水区域内の水道需要及び供給能力を合理的に予測した上,水道事業の適正かつ能率的な運営の観点から,慎重に判断すべきであって,その判断が合理的な裁量の範囲を逸脱したものであるといえない限り,ダム使用権の設定の申請を取り下げないことが違法であるとはいえ ,水道事業の適正かつ能率的な運営の観点から,慎重に判断すべきであって,その判断が合理的な裁量の範囲を逸脱したものであるといえない限り,ダム使用権の設定の申請を取り下げないことが違法であるとはいえず,被告水道局長が都に対して負っている誠実執行義務(地方公営企業法6条,地方自治法138条の2)に反するともいえないというべきである。 そこで,被告水道局長が八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げない判断が,合理的な裁量の範囲を逸脱したものであるか否かについて,以下検討する。 イ水道需要予測について(ア) 都の水道需要予測の概要についてaそこで,被告水道局長がダム使用権の設定の申請を取り下げない判- 35 -断の前提としている水道需要予測について検討するに,証拠(乙123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,都は,昭和50年度以降,都の行政全体の将来像を示す長期計画に基づく社会,経済指標等を用いて,水道需要予測を随時行っているところ,直近では,平成12年12月に長期計画である「東京構想2000」が策定されたことに伴い,平成15年12月に予測の見直しを行ったこと,同予測では,区部並びにα12,α13及び島嶼を除く多摩28市町(計画区域)を対象として,昭和61年度から平成12年度までの用途別使用水量実績に適合する重回帰分析(水道需要の変動に関係が深い社会・経済等の要因を説明変数として回帰モデル式を設定し,これに説明変数の将来値を与えて予測する方法)のモデル式を選定し,これにモデル式を構成する社会・経済指標の将来値を当てはめて,用途別に将来の一日平均使用水量を求め,これらの使用水量を合算して計画一日平均使用水量とした上で,計画有収率(総配水量に対し,漏水等を除き,料金若しくはこれに準ずるものの対象となった水量の割合である「有収率」の将来値 均使用水量を求め,これらの使用水量を合算して計画一日平均使用水量とした上で,計画有収率(総配水量に対し,漏水等を除き,料金若しくはこれに準ずるものの対象となった水量の割合である「有収率」の将来値)を設定し,さらに計画負荷率(一日最大配水量に対する一日平均配水量の割合を示す「負荷率」の将来値)により需要の年間変動を考慮して,平成25年度における計画一日最大配水量を推計したことがそれぞれ認められる。 そして,証拠(乙100,123,124,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,社団法人日本水道協会が平成12年3月に発行した「水道施設設計指針2000」(以下「本件指針」という。)には,水道施設の整備計画や需要予測に関する基本的な考え方や具体的な手法が記載されているところ,これによれば,基本計画の策定に当たっては,事業の長期化に伴って施設整備の途上で整備計画と社会的ニーズの不整合が生じる可能性があるため,国や地方自治体が策定する長- 36 -期的な地域・社会整備方針等との整合を図ることが重要であり,具体的には,上位計画に基づいた人口動態予測や経済成長率等を反映させた的確な需要予測により将来計画を策定する必要があるとされていること,将来の水道需要量は,計画一日最大給水量によって示すとされているところ,その一般的な算定手順として,各用途別の一日平均使用水量実績を基にして,各計画用途別一日平均使用水量を推計し,これを合算して計画一日平均使用水量とし,これを適切に設定した計画有効率の値で除することにより計画一日平均給水量を算出し,これを適切に設定した計画負荷率の値で除することにより計画一日最大給水量を算出するという手法が掲記されていること,各用途別の一日平均使用水量実績から各計画用途別一日平均使用水量を推計する手法として,時系列傾向分析による 画負荷率の値で除することにより計画一日最大給水量を算出するという手法が掲記されていること,各用途別の一日平均使用水量実績から各計画用途別一日平均使用水量を推計する手法として,時系列傾向分析による推計(回帰分析の1つで過去の使用水量又は原単位(一人当たり又は一件当たりの使用水量)の傾向が今後とも続くものとみなし,実績の趨勢に最もよく適合する傾向線を用いて推計する方法),重回帰分析による推計(原単位か使用水量のいずれを推計するかを検討した上で,水道需要の変動に関係が深い社会・経済等の複数の要因を説明変数として回帰モデルを設定し,これに説明変数の将来値を与えて予測する方法)など複数の推計手法が紹介されていることがそれぞれ認められるところ,都の平成15年12月の予測は,このような本件指針で示された方法に基本的に従って行われたものであって,合理的なものということができる。 b都が重回帰分析による推計をした点について,原告らは,重回帰分析などを用いた都の過去における予測はことごとく過大であったから,都の予測値には全く説得力がない旨主張する。 しかしながら,重回帰分析自体は一般的な統計学的手法であり,本件指針でも合理的な推計方法の1つとして示されており,また,それ- 37 -ぞれの予測が合理的であるか否かは,設定されたモデル式の具体的な内容いかんによるものと考えられるから,重回帰分析を用いた都の過去の推計が仮に実際の結果と比べて過大であったとしても,平成15年12月の予測で重回帰分析を用いたことが直ちに不合理であるということはできない。 また,原告らは,大阪府や横浜市は,生活用水の予測に当たり,洗濯,風呂,炊事,水洗便所等の用途別に将来値を求め集計する手法を用いることにより,一人当たり生活用水が減少すると予測しており,最近の一人当たり生活 らは,大阪府や横浜市は,生活用水の予測に当たり,洗濯,風呂,炊事,水洗便所等の用途別に将来値を求め集計する手法を用いることにより,一人当たり生活用水が減少すると予測しており,最近の一人当たり生活用水の漸減傾向に沿った合理的な予測であるから,都においてもこのようにきめ細かな予測手法を採用しなければならない旨主張する。 しかしながら,使用目的別分析による推計手法を採ったとしても,用途別の将来値をそれぞれ推計する作業が必要となるから,予測の正確性は,それぞれの用途別の具体的な将来値の推計作業の正確性に左右されることになるのであって,使用目的別分析を用いること自体が直ちに予測の正確性を担保するものとは解し難い上,長期的に,上位計画に基づいた人口動態予測や経済成長率等を反映させることが必要とされる水道需要予測としては,その具体的な予測結果が,直近の短期的な一人当たり生活用水の増減傾向と異なるものとなったからといって,直ちに不合理なものであるということはできない。 このほか本件全証拠によっても,都が重回帰分析による推計をした点が不合理であるとは認められない。 (イ) モデル式の設定と計画一日平均使用水量の算出についてa次に,証拠(乙123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,都は,重回帰分析によるモデル式を設定するに当たって,実績期間である昭和61年度から平成12年度の使用水量を,生活用水,都市活動- 38 -用水及び工場用水の3用途に区分して検討したこと,生活用水については,経済動向,世帯の規模,節水意識などの要因の影響を受けると考えられることから,計画区域について政府機関等が公表した数値や指標の中から,経済要因として,都内総生産,雇用者報酬,雇用者報酬+家計財産所得,個人所得を,規模要因として平均世帯人員を,節水要因として年次を,そ から,計画区域について政府機関等が公表した数値や指標の中から,経済要因として,都内総生産,雇用者報酬,雇用者報酬+家計財産所得,個人所得を,規模要因として平均世帯人員を,節水要因として年次を,それぞれ説明変数の候補として選定し,これらを様々に組み合わせてモデル式を構成して一人一日当たり使用水量を算定し,その結果と過去の実績値との適合性を比較検討した結果,最もよく適合した,個人所得と平均世帯人員を用いたモデル式である生活用水一人一日当たり使用水量=EXP(4.14034)×(個人所0.242654-0.571423得)×(平均世帯人員)を採用したこと,都市活動用水及び工場用水については,一日当たり使用水量について同様に,それぞれ年間商品販売額及びサービス業総生産(都市活動用水),第二次産業従業者数(工場用水),年次を説明変数としたモデル式を採用したこと,その上で,それぞれの説明変数の将来値を,それと関連のある「東京構想2000」の基礎指標を基に算定して,モデル式に代入し,平成25年度における用途毎の計画一日平均使用水量を算出したところ,生活用水は332万3000立方メートル,都市活動用水は119万2000立方メートル,工場用水は7万1000立方メートル,合計458万6000立方メートルであったことがそれぞれ認められる。 そして,証拠(乙100,124)によれば,都が用いた説明変数のうち,個人所得,平均世帯人員,年間商品販売額,サービス業総生産及び第二次産業従業者数は,本件指針において,いずれもこれらと同一若しくは同種の数値が説明変数として例示されていることが認められ,また,社会通念に照らして,年次が進むにつれて,節水技術の- 39 -進展や節水意識の浸透により節水効果が高まると措定することが不合理であるとは考え難いから, として例示されていることが認められ,また,社会通念に照らして,年次が進むにつれて,節水技術の- 39 -進展や節水意識の浸透により節水効果が高まると措定することが不合理であるとは考え難いから,都の採用したモデル式は,一般的なモデル式の設定手法に基づき設定されたものであったと考えられる。さらに,証拠(乙123,証人P5)によれば,とりわけ生活用水の一人一日当たり使用水量の算定に用いたモデル式は,予測に用いた実績期間である昭和61年度から平成12年度までにおける推計値と実績値がよく一致している一方,都が推計した最終的な計画一日平均水量は,平成17年度でみれば,予測値が448万3000立方メートルに対し,実績値が425万9000立方メートル,その差は22万4000立方メートル(予測値の約4.99パーセント)にとどまり,実績値との間に大きな乖離が生じているとはいえないことが認められるのであって,このほかに都の計画一日平均使用水量の算出過程に不合理な点があると認めるに足りる証拠はない。 b以上の点について原告らは,都の算定した生活用水の一人一日当たり使用水量は,実績が平成6年度以降は横這い傾向,平成10年度以降は漸減傾向になっているのに,一貫して増加の一途を辿っていて明らかな過大予測であるところ,平成15年12月の予測は,実績との乖離が明瞭な平成10年1月の予測の手法を基本的に踏襲したものであることから,確実に過大予測となることが予見できたはずであり,その原因は,説明変数である個人所得と平均世帯要員がいずれも増加要因として働くようにされていて減少要因が含まれていないというモデル式自体にあり,これは,都が将来の水道需要を大きくしたいという意図のもと,恣意的な予測をした結果に他ならないと主張する。 しかしながら,ここでいう一人一日当たり使 減少要因が含まれていないというモデル式自体にあり,これは,都が将来の水道需要を大きくしたいという意図のもと,恣意的な予測をした結果に他ならないと主張する。 しかしながら,ここでいう一人一日当たり使用水量は,あくまで計画値であるから,長期的な水道需要予測をする上で,給水人口が予想外に増加した場合等でも給水に支障が生じないよう,ある程度の余裕- 40 -をもって設定することもあながち不合理であるとはいい難いところ,実績が平成6年度以降は横這い傾向,平成10年度以降は漸減傾向にあり,その要因が原告らの主張する節水型機器の普及や漏水量の減少にあったとしても,それらにも自ずから限界があることからすれば,一時点の漸減傾向と同様の減少傾向がその後も将来にわたり長期間続くことが明らかであるということはできないのであって,一時点での実測値が計画値を下回ったからといって,直ちに不合理な過大予測であるということはできない。また,都の設定したモデル式においては,独立した節水要因を掲げていないが,証拠(乙123,証人P5)によれば,都は,節水要因として年次を説明変数としたモデル式を含む様々なモデル式を試作して過去の実績値との適合性を検討したが,その結果,節水要因としての年次を説明変数に用いて生活用水の一人一日当たり使用水量を試算することについて統計的有意性が認められず,他方で,個人所得と平均世帯人員を説明変数として用いた前記aのモデル式は,モデル式の適合度を示す決定係数が0.9以上(0.945),説明変数の有意性を示す検定数値(t値)が絶対値2以上(個人所得につき7.17,平均世帯人員につき-8.38)となり,統計的な有意性があると判断されたことから,上記のモデル式を採用したことが認められ,他に節水要因を独立に説明変数として用いたモデル式で,実績値と つき7.17,平均世帯人員につき-8.38)となり,統計的な有意性があると判断されたことから,上記のモデル式を採用したことが認められ,他に節水要因を独立に説明変数として用いたモデル式で,実績値との適合性が上記のモデル式より高いものが存在することを認めるに足りる証拠はないのであるから,都が設定したモデル式に独立の節水要因が掲げられていないからといって不合理であるとはいえない。他方で,実績期間である昭和61年度から平成12年度までに生じたのと同様の節水傾向は,そのような実績値に基づいて構築された前記のモデル式に織り込み済みであるということができるところ,平成13年度以降にそれまでと異質な節水傾向が発生したこと- 41 -を認めるに足りる証拠はないのであるから,都が将来の水道需要を大きくしたいという意図のもと,恣意的な予測をしたとはいい難く,この点についての原告らの主張は採用できない。 (ウ) 計画有収率の設定及び計画一日平均配水量の算出について次に,証拠(乙123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,都は,上記のとおり算出した計画一日平均使用水量から計画一日平均配水量を算出するための計画有収率を設定するに当たり,有収率は,実績期間において昭和61年度の82.0パーセントから平成12年度の90.5パーセントまで向上していたところ,有収率は漏水量に大きく左右されるものであって,計画的に漏水防止対策を進めることなどにより確実に向上させることができることから,平成25年度における計画有収率を94パーセントと設定した上,平成25年度における計画一日平均使用水量458万6000立方メートルを0.94で除して,平成25年度における計画一日平均配水量を487万9000立方メートルと算出した(4,586,000÷0.94=4,878,723)ことが 均使用水量458万6000立方メートルを0.94で除して,平成25年度における計画一日平均配水量を487万9000立方メートルと算出した(4,586,000÷0.94=4,878,723)ことが認められ,以上の計算過程に何ら不合理な点は窺えない。 (エ) 計画負荷率の設定及び計画一日最大配水量の算出についてaまた,証拠(乙123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,都は,上記のとおり算出した計画一日平均配水量から計画一日最大配水量を算出するための計画負荷率を設定するに当たり,負荷率は天気,気温等の気象条件や渇水,都市の性格,生活様式,企業活動等の社会条件など,様々な要因が複合的に影響して変動するものであって,傾向分析により将来値を推計することは困難であるところ,一日最大配水量の実績値が計画値を上回れば供給能力の不足を来すことになることから,水道水の安定供給確保の観点から計画負荷率を低めに設定する必要があるとの判断のもと,実績期間である昭和61年度から平成- 42 -12年度までの実績値を踏まえ,実績値が計画値を超えることのないように,最低値である81パーセントと設定した上,平成25年度における計画一日平均配水量487万9000立方メートルを0.81で除して,平成25年度における計画一日最大配水量を600万立方メートルと推計した(4,879,000÷0.81=6,023,456)ことが認められる。 そして,証拠(乙100,123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,本件指針において,負荷率は,都市の規模,都市の性格,気象条件等によって左右されることから,計画負荷率の設定に当たっては,長期的傾向を把握するとともに過去の実績値や給水人口別負荷率,他の類似都市との比較を行い,気象による変動条件にも十分留意して計画値を決定するものと 左右されることから,計画負荷率の設定に当たっては,長期的傾向を把握するとともに過去の実績値や給水人口別負荷率,他の類似都市との比較を行い,気象による変動条件にも十分留意して計画値を決定するものとされるにとどまり,具体的な算定手法の紹介や例示がされていないこと,平成18年度に都水道局総務部が実施した調査結果によれば,他の主要な都市の計画負荷率は,札幌市80. 0パーセント,千葉市79.7パーセント,川崎市84.6パーセント,横浜市79.7パーセント,京都市77.0パーセント,神戸市85.0パーセント,広島市78.0パーセント,北九州市83.5パーセント,福岡市82.9パーセントであったことがそれぞれ認められるのであるから,都が水道水の安定供給確保の観点を重視し,計画負荷率として実績期間における実績値の最低値を採用した手法が特段不合理であるとはいえないし,都の採用した計画負荷率81パーセントが,他の主要都市と比較して格別低い値であるともいえず,他に都の採用した計画負荷率が不合理であることを窺わせる証拠はない。 bこの点について原告らは,負荷率は確実な上昇傾向にあって,平成19年度は90パーセントを超えており,これは大阪府水道部が分析するように,屋外プールの減少,洗濯乾燥機の普及,空調機器の普及- 43 -という確かな要因によるものであるから,大阪府と同様,過去5年間の負荷率の最小値をとるべきであったと主張する。 しかしながら,負荷率は年度による変動が大きいものであって,例えば平成元年度は87.8パーセントであったのに対し平成2年度が82.0パーセントと,1年で5.8ポイント減少し(被告準備書面(16)の20頁・表1参照),近時も平成12年は90.9パーセントであったのが,平成13年度には平成10年度(86.5パーセント)と同程度ま パーセントと,1年で5.8ポイント減少し(被告準備書面(16)の20頁・表1参照),近時も平成12年は90.9パーセントであったのが,平成13年度には平成10年度(86.5パーセント)と同程度まで減少している(甲6の10頁,被告準備書面(16)の20頁・表1参照)のであるから,負荷率の上昇が確実であると即断することはできないし,大阪府水道部が分析する負荷率の上昇要因についても,それらが負荷率の上昇にどの程度寄与するのか明らかではなく,気象条件等,その他の変動要因の効果を完全に否定するものとはいえないのであるから,都が大阪府と同様,過去5年間の負荷率の最低値(平成8年度から平成12年度まででは,平成8年度の83. 7パーセント)を採らなかったことが不合理であるとはいえない。 また,原告らは,利根川流域の県の水道需要予測は,ほとんどが過去10年間の最低値を採用し,平成20年7月4日の閣議決定で変更された後の利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画(以下「第5次利根川荒川フルプラン」という。)の策定段階で国土交通省が示した水道需要予測では,過去10年間で小さい方の3か年の平均値を採用しているから,都は架空の水道需要を作出するために,計画負荷率を恣意的に低く設定したと主張する。 しかしながら,都は日本の首都であり,人口が集中し,政治・経済・文化の中枢機能が高度に集積した東京を計画区域としており,ひとたび渇水が生じれば社会的に大きな混乱が生じることは想像に難くないのであるから,このような都市の性格を重視して,利根川流域の各- 44 -県や国土交通省と比較して,水道水の安定供給確保の観点に重きをおいた手法を採用することは,むしろ合理的な理由があるといえるのであって,他県や国土交通省と異なる方法で計画負荷率を設定したのが恣意的であると 土交通省と比較して,水道水の安定供給確保の観点に重きをおいた手法を採用することは,むしろ合理的な理由があるといえるのであって,他県や国土交通省と異なる方法で計画負荷率を設定したのが恣意的であるとの原告らの主張は採用できない。 (オ) 原告らの主張する計画再検討義務についてこのほか原告らは,第5次利根川荒川フルプランの策定のため,関係都県が平成19年10月ころに水需給計画を国土交通省に提出するに当たり,他県は新しい水道需要予測を行ったのに対し,都は,従前の水需給計画における水道需要予測が実績と乖離し,その乖離が年々拡大してきているにもかかわらず,新しい水道需要予測に取り組もうとしておらず,行政としての計画再検討義務を放棄した違法があると主張する。 しかしながら,原告らが予測と実績との乖離であると指摘するところは,主として生活用水の一人一日当たり使用水量と計画負荷率に由来するものであるところ,前記(イ)記載のとおり,生活用水の一人一日当たり使用水量は,現時点で漸減傾向がみられるからといって同様の傾向がその後も将来にわたって長期間続くことが明らかであるとはいえず,ある程度多めに算出することもあながち不合理であるとはいい難いし,また,前記(エ)記載のとおり,計画負荷率については,水道水の安定供給確保の観点に重きをおいた手法を採用することは合理的な理由があることであるから,計画年次より前の中間年次における実績値と差違があるからといって,それが直ちに不合理な乖離であるということはできない。また,証拠(乙123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,都は,昭和50年度以降,概ね長期計画の策定に伴い水道需要予測の見直しを行ってきており,直近の予測がされた平成15年から前回の予測がされた平成9年までは6年間,平成9年の予測からその前の予測がされた平 ,昭和50年度以降,概ね長期計画の策定に伴い水道需要予測の見直しを行ってきており,直近の予測がされた平成15年から前回の予測がされた平成9年までは6年間,平成9年の予測からその前の予測がされた平成2年までは7年間経過していることが認められることからすると,- 45 -平成15年12月の予測から3年余り経過したにすぎない平成19年10月ころに予測の見直しをしなかったからといって,予測の見直しをすべき義務を懈怠したり放棄したということはできず,他に都が計画再検討義務を放棄した違法があることを認めるに足りる証拠はない。 (カ) 小括以上のとおりであって,本件全証拠によっても,平成25年度における計画一日最大配水量を600万立方メートルと推計した都の水道需要予測に,不合理な点があるとは認められない。 ウ保有水源量について(ア) 都の保有水源量の評価の概要についてまず,証拠(乙84,85,123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,平成20年4月1日に滝沢ダムに係る水利権が許可されたことにより,現在,都が保有水源量として評価しているのは,別紙「保有水源(現在)」記載のとおり,日量約630万立方メートルであり,うち約8割に相当する約492万立方メートルは利根川・荒川水系のものであること,この保有水源量には,都が,河床の低下等により取水の安定性に問題があるとしている日量約82万立方メートル(課題を抱える水源),渇水時など河川の流況が悪化した際に他に先駆けて取水制限を受けるとしている日量約12万立方メートル(不安定水源)が含まれており,水源施設が完成しているなど取水の安定性が高いとしている水源(安定水源)から得られる水量は日量約536万立方メートルであること,都が将来の保有水源量として評価しているのは,別紙「保有水源(将来)」記載のとおり 成しているなど取水の安定性が高いとしている水源(安定水源)から得られる水量は日量約536万立方メートルであること,都が将来の保有水源量として評価しているのは,別紙「保有水源(将来)」記載のとおり,日量約680万立方メートルであり,これも上記の課題を抱える水源及び不安定水源を含めたものであること,都は,計画上の利用量率(取水地点から浄水場に至るまでの導水施設からの漏水や浄水場で維持管理上必要となる作業用水などにより,取水から浄水- 46 -場を出るまでの過程で生じる損失を考慮して,取水量を配水量に換算するための計画上の値)として,水系別に別紙「保有水源(将来)」記載の利用量率欄のとおり設定しており,都全体の計画上の利用量率は93. 4パーセントとなること,都の現在の保有水源量日量約630万立方メートル,将来の保有水源量日量約680万立方メートルは,いずれも,昭和51年4月に国が利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画を策定する際に,計画当時の河川流況を基に,水供給の安定性の水準を示す利水安全度を1/5,すなわち概ね5年に1回程度発生する渇水時に必要な水を安定的に取水できることを目標とした計画における供給可能量を前提とした水源量であることがそれぞれ認められる。 (イ) 計画上の利用量率についてa上記の都の保有水源の評価のうち,計画上の利用量率について検討するに,証拠(乙100,123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,本件指針において,水道は,渇水等の災害時及び事故等の非常時においても,住民の生活に著しい支障を及ぼすことがないよう,給水の水量的な安定性を確保することが求められており,そのためには,計画取水量,計画浄水量,計画給水量などの決定に当たっては,それぞれの水道施設の条件により,余裕を見込んでおくこと等についても ,給水の水量的な安定性を確保することが求められており,そのためには,計画取水量,計画浄水量,計画給水量などの決定に当たっては,それぞれの水道施設の条件により,余裕を見込んでおくこと等についても考慮し,併せて,これに見合った水利権を確保する必要があるとされていること,計画取水量は,取水から浄水処理までの損失水量を考慮して,計画一日最大給水量の10パーセント程度増しとして定めていること,また,利用量率の実績は漏水や原水の水質等により毎日変動するため,毎日安定的に給水するためには,計画上は日々の利用量率が低い状況になったときに必要な需要量を配水できるように設定する必要があるとの考え方を前提とした上で,α14から取水した水がα15を経由することによる影響を除くために,浄水場に取り込まれた- 47 -水量(原水量)に対する配水量の割合を元に,日単位の利用量率(対原水)を求めてみると(乙123の19頁・図7参照),最下限は約90パーセントであるものの,ほとんどが上記の都全体の計画上の利用量率である93.4パーセントを下回ることがないこと,また日単位の利用量率(対原水)の年度別の平均は95パーセントから97パーセントの間で推移し,直近の平成19年度の平均値は95パーセントであったことがそれぞれ認められるのであるから,本件指針の内容や,上記の利用量率の実績に照らして,都全体の計画上の利用量率が93.4パーセントとされていることは相当な数値であると考えられ,本件全証拠によっても,都の設定した計画上の利用量率の値が不合理に低いものであるとは認められない。 bこの点について原告らは,保有水源量は取水可能量を示しているものであり,また浄水場の浄水工程内の滞留水量は毎日増減があって毎日の取水量と配水量は対応するものでないから,日単位の利用量率(対 。 bこの点について原告らは,保有水源量は取水可能量を示しているものであり,また浄水場の浄水工程内の滞留水量は毎日増減があって毎日の取水量と配水量は対応するものでないから,日単位の利用量率(対原水)と比較するのは誤りであり,年単位の利用量率の実績は97パーセントから99パーセントの間にあるから,都全体の計画上の利用量率は実績より大幅に小さく,これにより保有水源を過小評価していると主張する。 しかしながら,本件指針にあるように,そもそも利用量率は,給水の水量的な安定性を確保するための余裕として設定するものであるから,その具体的な設定は必然的に裁量的な判断に基づくものとなるところ,利用量率の実績が漏水や原水の水質等により日々変動することは否定できないのであるから,日々の利用量率が低いときでも必要な需要量を配水できることを担保すべきであって,日単位の利用量率と比較することが不合理であるということはできず,また,それが年単位の利用量率の値より小さいからといって,直ちに不合理なものであ- 48 -るということもできない。 また,原告らは,都が用いる水系別の計画上の利用量率は,根拠が明らかでなかったり,60年ないし80年前の数字を踏襲したものであって,根拠がないと主張する。 しかしながら,都全体の計画上の利用量率が妥当なものであることは既にみたとおりであるから,水系別の計画上の利用量率の根拠が判然としないからといって,保有水源の評価全体の合理性に影響するとはいえず,原告らの上記主張も理由がない。 このほか原告らは,最近の浄水場は職員のトイレ排水や雑排水以外は排水を一切出さない完全クローズドシステムになっているところがほとんどであり,そのような浄水場では利用量率が概ね98パーセント以上になっているから,都全体の計画上の利用量率93.4パーセ 排水以外は排水を一切出さない完全クローズドシステムになっているところがほとんどであり,そのような浄水場では利用量率が概ね98パーセント以上になっているから,都全体の計画上の利用量率93.4パーセントは現状とかけ離れていると主張する。 しかしながら,原告らの主張によっても,クローズドシステムであるはずのα16浄水場の利用率が90パーセント前後まで低下しているというのであるから,最近の浄水場では利用量率が概ね98パーセント以上になっているという原告らの主張の前提自体に疑問があるといわざるを得ず,原告らの上記主張に与することはできない。 (ウ) 多摩地区の地下水についてa都は,多摩地区の地下水については,地盤沈下のおそれ及び水質問題があり,将来にわたり安定的な水源として位置付けることが困難であるとして,保有水源に含めていないところ,証拠(乙101)によれば,東京都環境局が平成18年5月に作成した「東京都の地盤沈下と地下水の現況検証について」(以下「平成18年報告書」という。)は,平成12年から平成16年にかけての地表面の変動量をみると,都内の多くの地域において年間0ないし3.9ミリメートルの- 49 -地盤沈下が継続し,特に,多摩台地部においては,41観測井のうち38井で地表面の変動として沈下を記録し,そのほとんどの地域で200メートル以深の洪積層が依然として収縮していること,渇水年は,通常年に比較して地下水位が低下する傾向にあり,大きいところでは5メートル程の水位低下が生じており,こうした水位低下や渇水時における地下水揚水量の増加が認められた地域においては,平常年と比較して地盤沈下量が増加していることから,渇水年においては地盤沈下に配慮した地下水の利用が望まれること,地盤沈下は,一度沈下が起こると元の地盤高に回復することは不可 られた地域においては,平常年と比較して地盤沈下量が増加していることから,渇水年においては地盤沈下に配慮した地下水の利用が望まれること,地盤沈下は,一度沈下が起こると元の地盤高に回復することは不可能であり,かつ,年間の沈下量がそれほど大きくない場合であっても,長期的にみれば累積的に沈下が進行するという特徴があることに留意すべきであり,地盤沈下が発生すればその対策に莫大な経費が必要なことから,地盤沈下を未然に防止するための対策を実施することが不可欠であること,そのため,現時点においては,揚水規制を継続し,現状の地下揚水量を超える揚水を行わないことが必要であり,多摩台地部では地下水位が上昇傾向にないことから,今後も地下水の涵養対策を推進することが必要であると結論付けていることがそれぞれ認められる。 そして,証拠(甲26,乙123,124)及び弁論の全趣旨によれば,本件指針において,地下水は地表の汚濁源からの汚染を受けた場合は水質の回復に極めて長期間を要する旨指摘されているところ,多摩地区の地下水は,これまでトリクロロエチレン,ジオキサンなどの地下水汚染物質が検出されたことから,一部の井戸の使用が中止されたことが認められる。 以上のとおり,多摩地区においては,地表面の地盤沈下が継続しており,従来の揚水規制を継続するとともに地下水の涵養対策を推進することが要請されていて,特に渇水年においては地盤沈下に配慮した- 50 -地下水利用が必要であるとされているのであって,今後将来にわたり,特に渇水年において,従来同様の利用が可能であることが保障されているのではない上,地下水の汚染源を具体的に特定して予測し,事前に対策をとることは困難であると考えられるところ,現実に地下水汚染が発生していて,地下水が一度汚染されれば,長期間にわたって使用できな いるのではない上,地下水の汚染源を具体的に特定して予測し,事前に対策をとることは困難であると考えられるところ,現実に地下水汚染が発生していて,地下水が一度汚染されれば,長期間にわたって使用できなくなるのであるから,地下水が将来にわたり安定的な水源であるとはいえないとして保有水源に含めていない都の判断は,不合理であるということはできない。 bこれに対し,原告らは,都内の地盤沈下は昭和60年以降沈静化し,環境省が問題視する年間2センチメートルを多少超える沈下がみられたのは,渇水年であった平成6年だけであるから,地盤沈下が20年前から沈静化しており,多摩地区の地下水利用を削減する必要はない旨主張する。 しかしながら,仮に,多摩地区の地下水利用について,現時点で削減する必要があるとはされていないとしても,将来にわたり削減する必要が生じないことが確実視されていない以上は,直ちに将来にわたっての安定的な水源であるとみなすことができるということにはならない。 また,原告らは,東京都環境保全局が,平成5年12月15日付け「水道水源用井戸の掘り替えについて」(甲C19)において,水道水源用井戸の掘り替えについては,既存の井戸と同等以下の揚水能力とする場合に限り認めるとしていることから,多摩地域の水道用地下水を全面転換する根拠がなくなった旨主張する。 しかしながら,上記取扱いは,平成4年の地下水実態調査報告書において,地下水の水収支は平衡状態に近く,現在の地下水位を維持していれば,地盤沈下が進行する可能性は少ないとされていることを理- 51 -由として,当面の取扱いとしてされたものにすぎないところ,平成18年報告書によれば,α17観測所では,平成4年から平成8年にかけて地盤は沈下から隆起に転じていたが,平成8年の渇水を境に地盤は再び沈下傾向を示 当面の取扱いとしてされたものにすぎないところ,平成18年報告書によれば,α17観測所では,平成4年から平成8年にかけて地盤は沈下から隆起に転じていたが,平成8年の渇水を境に地盤は再び沈下傾向を示しており,α18観測所では,平成4年から5年にかけて,地盤は沈下から隆起に転じたが,平成6年の渇水期以降,地盤は沈下傾向を継続しているとした上で,多摩台地部を中心に地表面は依然として沈下していることから,「H11設定水位」を維持すれば,地盤沈下は全く起こらないとは言い切れないことが明らかとなったとされていること(乙118)からすれば,平成5年12月の取扱いで前提とされた地盤沈下の状況はその後悪化したと考えられるのであって,平成5年12月時点での取扱いを理由に,多摩地区の地下水を,将来にわたり安定的な水源とみなすことができるとはいえない。 このほか原告らは,平成18年報告書のまとめとして,「現状の地下揚水量を超える揚水を行わないことが必要である。」と書かれていることから,既設井戸については揚水量を現状より増やさなければ現在の利用を続けることに支障はないという結論になっていると主張する。 しかしながら,平成18年報告書の内容は既に検討したとおりであって,多摩台地部では地下水位が上昇傾向にないことから,今後も地下水の涵養対策を推進することが必要であるとされているのであるから,無条件に既設井戸について現在の利用を続けることを容認するものとはいえない。 原告らはまた,多摩地域の水道水源井戸290本のうち,汚染で休止されたものは9本(3パーセント)にすぎず,汚染物質の除去装置を設置すれば利用可能であるから,地下水汚染の理由は水道用地下水切捨ての理由にならないと主張する。 - 52 -しかし,証拠(甲26)によれば,上記9本のうち6本は平成14年中に 染物質の除去装置を設置すれば利用可能であるから,地下水汚染の理由は水道用地下水切捨ての理由にならないと主張する。 - 52 -しかし,証拠(甲26)によれば,上記9本のうち6本は平成14年中に休止され,1本は平成15年に休止されたことが認められるところ,このように近年に複数の井戸が休止されていることからすると,近い将来,同様に,地下水汚染を理由に井戸が休止されることが起こるおそれを否定できない。また,いかなる地下水汚染であっても除去装置を設置すれば利用可能となるとは即断し難く,清浄な水の供給義務を負う水道事業者たる都として,汚染された井戸の利用を休止することが,利用者の安全を確保する上で不必要,不合理であるなどとはいえないことは明らかであり,原告らの上記主張も採用できない。 原告らはこのほか,都のように,現在使っている水道用地下水を水源として評価しない自治体は,利根川流域の他県では例がないと主張する。 しかし,前記イ(エ)b記載のとおり,首都東京を抱える都においては,水道水の安定供給確保の観点に重きをおいた計画を採用することは,むしろ合理的な理由があるといえるのであって,利根川流域の他県と異なるからといって,都の評価方法が不合理であるとはいえず,原告らの上記主張もまた採用できない。 (エ) 利水安全度についてa前記(ア)記載のとおり,都の現在の保有水源量日量約630万立方メートル,将来の保有水源量日量約680万立方メートルは,いずれも,利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画策定時に,計画当時の河川流況を基に,利水安全度を1/5,すなわち前記のとおり概ね5年に1回程度発生する渇水時に必要な水を安定的に取水できることを目標とした計画における供給可能量を前提としたものであるところ,証拠(乙84ないし86)及び弁論の全趣旨 5,すなわち前記のとおり概ね5年に1回程度発生する渇水時に必要な水を安定的に取水できることを目標とした計画における供給可能量を前提としたものであるところ,証拠(乙84ないし86)及び弁論の全趣旨によれば,利根川・荒川水系における計画上の利水安全度1/5は,木曽川水系,- 53 -淀川水系及び筑後川水系における計画上の利水安全度1/10より低水準である上,利根川水系では,昭和47年から平成16年までの33年間で13回の取水制限がされており,平成6年度から平成15年度までの10年間でみれば,夏冬合わせて5回(平成6年度1回67日,平成7年度1回76日間,平成8年度2回97日間,平成13年度1回18日間),渇水による取水制限がされ,うち2回は15パーセントの給水制限が,うち2回は自主節水の要請がそれぞれされていることから,利根川水系における現況の利水安全度は1/2から1/3というべき状態にあることが認められる。 そして,証拠(乙84,104,123,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,都は,平成9年5月に策定した「東京水道新世紀構想-STEP21-」において,給水安全度1/10,すなわち10年に1回程度発生する厳しい渇水時において給水制限が起きない安全度を目標とすることを公表したこと,都は,給水安全度を向上させる施策のうち,節水施策の推進は,具体的な数値化が難しく,地下水の有効活用は,地下水から将来にわたり安定的な取水を見込むことができないことなどから,給水安全度1/10を確保するためには,都の保有水源の約8割を占める利根川・荒川水系の利水安全度1/10をみたす水源の確保が必要であると判断していることがそれぞれ認められ,上記判断に特段不合理な点はない。 さらに,証拠(乙86,120,123,126,証人P5)及び弁論の全趣旨によれ 安全度1/10をみたす水源の確保が必要であると判断していることがそれぞれ認められ,上記判断に特段不合理な点はない。 さらに,証拠(乙86,120,123,126,証人P5)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省の資料によると,利根川水系では,近年の少雨傾向により河川流況が減少傾向にあることから,河川から安定的に取水できる水量が当初計画した水量より減少しているとされており,具体的には,昭和58年から平成14年までの20年間の河川流況を基にして利水安全度1/10を得られるよう評価すると,α- 54 -19導水及びα19開発を除く利根川水系からの取水可能量は21. 4パーセント減少し(評価率78.6パーセント),荒川水系からの取水可能量は28.2パーセント減少する(評価率71.8パーセント)とされたこと,上記切下率(評価率)を基にして都の将来の保有水源量を算定し直すと,別紙保有水源(将来)(利水安全度1/10)のとおり,日量590万立方メートル程度となることがそれぞれ認められ,以上の算定方法が不合理であることを窺わせる証拠はない。 bこの点について原告らは,ダム起業者でもある国土交通省が,建設計画の段階では利水参加者に一定の水量の供給を約束しておきながら,より厳しい渇水年がくれば供給量が大きく減ってしまうというのは,契約不履行に他ならず,負担金額はそれに対応して小さくなるべきである旨主張する。 しかしながら,そもそも上記の切下率の設定について,仮に起業者である国土交通省に責任があるとしても,それによって,建設費負担金の額が当然に減額されるべきであると解すべき理由はない上,上記切下率は,近年の少雨傾向による河川流況の減少傾向を踏まえた上で,利水安全度を1/5から1/10に高めた場合のものであるところ,少雨傾向による河川流況の減少傾向は気 あると解すべき理由はない上,上記切下率は,近年の少雨傾向による河川流況の減少傾向を踏まえた上で,利水安全度を1/5から1/10に高めた場合のものであるところ,少雨傾向による河川流況の減少傾向は気象の変化という不可抗力に基づくものであり,利水安全度の向上は,水道事業者である都が給水安全度1/10という目標を実現する上で必要であると判断したことから採用されたものであって,ダム起業者である国土交通省の責めに帰すべきものではないから,いずれにせよ原告らの上記主張は採用できない。 また,原告らは,情報公開請求によって取得した国土交通省の第5次利根川荒川水系フルプラン案の説明資料(甲21号証の添付資料2の4枚目)からするならば,国土交通省は,冬季にはかんがい用水が- 55 -激減するにもかかわらず,実際の流量より過大な確保流量を設定した上で,利水安全度1/10では供給可能量が大幅に減るという,現実と遊離した説明をしていると主張する。 しかしながら,国土交通省が,原告ら主張の上記説明資料に従って利水安全度1/10における供給可能量を算定したと認むべき証拠は存在しないのであって,国土交通省が現実と遊離した説明をしているという原告らの上記主張は採用できない。 (オ) その他の原告らの主張についてこのほか原告らは,最近20年間で東京都水道で取水制限がされたのは4年のみであり,都民の実生活への影響はほとんどなかったところ,給水制限が行われた最も近年の平成8年度と平成20年度を比較すると,一日最大配水量が減少する一方,保有水源は増加しているから,同程度の渇水が発生してもその影響はさらに軽微となるはずであると主張する。 しかしながら,証拠(乙102,103)及び弁論の全趣旨によれば,例えば平成6年の渇水では,7月29日から9月19日までの間,最大で15 が発生してもその影響はさらに軽微となるはずであると主張する。 しかしながら,証拠(乙102,103)及び弁論の全趣旨によれば,例えば平成6年の渇水では,7月29日から9月19日までの間,最大で15パーセントの給水制限が続き,最長で昼夜併せて12時間に及ぶ減圧給水を余儀なくされたほか,公園などの噴水の中止,プールの使用時間の短縮,工場の生産ライン縮小などの社会的影響が発生したことが認められるから,給水制限の都民の実生活への影響はほとんどなかったとは到底いえない。また,原告らの主張は,近年の一日最大配水量の減少傾向が今後も継続することを前提とするものであるところ,平成25年度における計画一日最大配水量を600万立方メートルとした都の推計が不合理なものであるといえないことは既に検討したとおりであるから,結局,原告らの上記主張は前提を欠くものといわざるを得ず,採用できないといわざるを得ない。 さらに,被告らが引用する国土交通省ホームページの八ッ場ダムによ- 56 -る取水制限日数削減効果に関するグラフ(甲C28号証3枚目参照)では,例えば平成8年の渇水時に117日間の取水制限が行われたが,その時点で八ッ場ダムが完成していれば17日間の取水制限にとどまったとされていることについて,原告らは,八ッ場ダムの洪水期(7月から9月まで)の利水容量は2500万立方メートルしかないにもかかわらず,八ッ場ダム完成後は既存ダムと合わせた貯水量が7679万立方メートル増加するというのは,現実にはあり得ない過大な計算がされており,実際には八ッ場ダムが完成しても渇水の状況が変わることはないと主張する。 しかしながら,原告らの主張は,八ッ場ダム完成後も,既存ダムの貯水量が同一であることを当然の前提とするものであるところ,八ッ場ダムの利水容量が洪水期(7月から9月 況が変わることはないと主張する。 しかしながら,原告らの主張は,八ッ場ダム完成後も,既存ダムの貯水量が同一であることを当然の前提とするものであるところ,八ッ場ダムの利水容量が洪水期(7月から9月まで)に減少するのを見越して,6月までは既存ダムからの流水を削減して八ッ場ダムからの流水により流量を確保する等の方法で,既存ダムの貯水量を増加させることにより,水系全体の貯水量を高めたとしても,1つの水系に複数のダムが設置されている場合の運用として何ら不合理なものではないのであるから,上記計算が現実の条件を無視した意図的なものであるとは到底いえず,他に上記計算が不合理なものであることを窺わせる証拠はなく,原告らの上記主張もまた採用できない。 (カ) 小括以上のとおりであって,本件全証拠によっても,都が八ッ場ダム完成後の将来の保有水源量を日量590万立方メートル程度と評価することに,不合理な点は認められない。 エ建設費負担金の支出に関するまとめ以上によれば,都が,平成25年度における計画一日最大配水量を600万立方メートルと推計し,課題を抱える水源及び不安定水源を含む,八- 57 -ッ場ダム完成後の将来の保有水源量を日量590万立方メートル程度と評価したことに不合理な点はなく,これらを前提とすれば,被告水道局長による八ッ場ダムによる水源確保が必要であるとの判断は合理的な裁量の範囲を逸脱したものとはいえない。 このことは,証拠(乙84,87の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,厚生労働大臣による水道水源開発等施設整備費補助金の交付を受けている地方公共団体は,厚生労働省が定めた水道施設整備事業の評価実施要領に基づき,社会経済情勢等の変化,事業の進捗状況等を踏まえたコスト縮減,代替案立案等の可能性の検討等により,原則として5年経過毎に当該水道 共団体は,厚生労働省が定めた水道施設整備事業の評価実施要領に基づき,社会経済情勢等の変化,事業の進捗状況等を踏まえたコスト縮減,代替案立案等の可能性の検討等により,原則として5年経過毎に当該水道施設整備事業の再評価を行い,必要に応じて事業の見直し等をすることとされているところ,都水道局においては,学識経験者等により構成される事業評価委員会を設置し,平成17年3月29日,同委員会において,事業の利水上の必要性及び費用対効果が確認され,建設に要する費用の概算額を約4600億円とした第2回改定後の八ッ場ダムの基本計画による整備が適切であるとして,事業の継続を決定したことが認められることからも裏付けられる。 このほか原告らは,八ッ場ダム建設事業は,環境保護法令に違反する違法な事業であるから,被告水道局長がダム使用権の設定申請を行い,利水予定者として建設費負担金を支出することは,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に違反すると主張するが(原告最終準備書面(6)14頁),前記ア記載のとおり,都が現に八ッ場ダムのダム使用権の設定予定者である以上,都は建設費負担金の納付義務を負うのであって,被告水道局長が国土交通大臣の納付通知に従って建設費負担金を支出することが財務会計法規上違法であるとはいえないのであるから,原告らの上記主張は失当であり,他に被告水道局長の建設費負担金の支出が違法であることを認めるに足りる証拠はない。 - 58 -したがって,被告水道局長の建設費負担金の支出が違法であるとはいえない。 (2) 受益者負担金についてア受益者負担金の支出命令の違法性について(ア) 原告らは,国土交通大臣の納付通知に基づく被告建設局課長の受益者負担金の支出命令が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項1号に基づく上記支出命令の差止めと, 支出命令の違法性について(ア) 原告らは,国土交通大臣の納付通知に基づく被告建設局課長の受益者負担金の支出命令が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項1号に基づく上記支出命令の差止めと,同項4号に基づく指揮監督権者である被告知事個人への損害賠償の請求を求めている。ところで,先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,それにより直ちにその後の財務会計行為が違法となるわけではなく,原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が,財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限り,同項4号に基づく損害賠償の請求を求めることができると解するのが相当である(最高裁判所平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁)。そして,受益者負担金は,河川法63条1項,64条1項により,国土交通大臣が都府県に負担させることができるとされているものであり,同法施行令38条1項の通知の性格は,国土交通大臣が発する具体的な費用負担の命令であると解すべきであるから,被告建設局課長は,上記通知が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,上記通知を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことは許されないと解される。そうすると,上記のような瑕疵が存する場合でない限り,被告建設局課長がする支出命令は,その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされる違法なものということはできないと解するのが相当である。そして,地方自治法242条の2第1項1号に基づく差止請求においても,財務会計行為の違法性について,これと異なる解釈をすべき理由は見出- 59 -し難い。 これに対し原告らは,地方財政法25条3項が,国が地方公共団体の負担金を法令の定めるとこ 差止請求においても,財務会計行為の違法性について,これと異なる解釈をすべき理由は見出- 59 -し難い。 これに対し原告らは,地方財政法25条3項が,国が地方公共団体の負担金を法令の定めるところに従って使用しなかったときに,地方公共団体は国に対し,負担金の支出を拒否し,また支出済みの負担金の返還を請求することができる旨定めていることから,被告知事及び被告建設局課長が同条項に基づく支払拒否権を行使しないまま,国からの納付通知に対応して漫然と支出命令をすることは,財務会計法規上の義務に違反すると主張する。 しかしながら,原告らが受益者負担金について主張するところは,八ッ場ダムが利根川流域の治水という目的との関連性に乏しく,ダムサイト周辺の岩盤・地質がダムを建設するための適格性を欠き,ダム湖周辺の地盤が極めて不安定で地すべりの危険があるとの理由で,都が八ッ場ダムによって「著しく利益を受ける」(河川法63条)ことがないため,国が都に対し受益者負担金の納付を命令し,都が国に対し負担金を納付することは違法であること,そして,八ッ場ダムは環境保護法令に抵触する事業であるから同事業のために地方公共団体が公金を支出することは地方自治法2条16項に反することであって,地方財政法25条3項が予定する,国が地方公共団体の負担金を「法令の定めるところに従って使用しなかった」ことを主張するものではなく,また,国が都の納付する受益者負担金を法令の定めるところに従って使用していないことを認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張はその前提を欠くものであって,失当である。 (イ) そこで,本件における国土交通大臣の河川法施行令38条に基づく通知が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に当たるか否かについてみる る。 (イ) そこで,本件における国土交通大臣の河川法施行令38条に基づく通知が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に当たるか否かについてみるに,本件において既にされた通知は,前記争いのない事実等(第2の2(3)イ)- 60 -記載のとおりであって,いずれも通知それ自体に瑕疵があることを窺わせる証拠はなく,今後されるであろう同種の通知についても,それ自体に瑕疵が生じるであろうことを窺わせる証拠はない。そして,原告らが本訴において主張するのは,これらの通知のさらに前提となる利根川水系工事実施基本計画及び利根川水系河川整備基本方針(八ッ場ダムの治水対策上の必要性)自体の瑕疵,あるいは,八ッ場ダムの建設に関する基本計画ないしこれらに基づき建設される八ッ場ダムそれ自体(ダムサイトの危険性,地すべりの危険性)の瑕疵なのであるから,これらの瑕疵が重大かつ明白であって,利根川水系工事実施基本計画ないし利根川水系河川整備基本方針及び八ッ場ダムの建設に関する基本計画が無効であるなどの特段の事情がない限り,国土交通大臣のする通知が著しく合理性を欠き,そのため予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に当たるとはいえないと解するのが相当である。 そこで,以下,かかる特段の事情の有無について検討する。 イ八ッ場ダムの治水対策上の必要性について(ア) 治水対策上の必要性を基礎付ける事実についてまず,証拠(乙11の1,2,乙81,82,122)及び弁論の全趣旨によれば,都の区域は特別区の設置された区部,その西側の多摩地域及び島嶼地域に大別されるところ,このうち区部の東部地域には低地が広がっていて,特に,利根川から分派して東京湾に注ぐ一級河川の江戸川と接する江戸川区及び葛飾区並びにその北側 区部,その西側の多摩地域及び島嶼地域に大別されるところ,このうち区部の東部地域には低地が広がっていて,特に,利根川から分派して東京湾に注ぐ一級河川の江戸川と接する江戸川区及び葛飾区並びにその北側の足立区は,大部分が東京湾満潮時の海面より低い地域であり,荒川,江戸川のほかその他の中小河川も平常時の水位が地盤と同じかそれ以上となっていて,水害の危険度が著しく高くなっていること,昭和22年9月のカスリーン台風では,記録的豪雨により,利根川の本川及び支派川で合わせて24か所約5900メートルの堤防が破堤し,水系全体で約2300平方キロメ- 61 -ートルが浸水したこと,特に同月16日に利根川右岸の埼玉県北埼玉郡α20(現在のα21)での破堤による氾濫は,埼玉県東南部のほか東京都足立区,葛飾区及び江戸川区を水没させ,氾濫面積は約450平方キロメートルとなり,死者78名,負傷者1506名,家屋の浸水13万8854戸(都内では8万8430戸)という激甚な被害を生じさせたこと,大雨の発生回数は,年によりかなりの変動を伴うものの,長期的には,近年,発生回数が増加する傾向がみられること,国土交通省関東地方整備局においては,平成14年時点で,カスリーン台風と同規模の洪水が起こり,当時と同じ場所で堤防が決壊した場合,その被害は氾濫面積約500平方キロメートル,浸水区域内人口約200万人,被害総額約33兆円と推定していることがそれぞれ認められる。 また,証拠(甲B6,乙82)及び弁論の全趣旨によれば,利根川上流は大きく奥利根流域,吾妻川流域及び烏・神流川流域の3流域に区分されており,このうち吾妻川流域は利根川上流域の全流域面積の約4分の1を占め,過去に多くの降雨が発生していること,利根川上流で洪水調節機能を持つダムは,奥利根流域に5つ,烏・神流川流域に 流域に区分されており,このうち吾妻川流域は利根川上流域の全流域面積の約4分の1を占め,過去に多くの降雨が発生していること,利根川上流で洪水調節機能を持つダムは,奥利根流域に5つ,烏・神流川流域には1つあるが,吾妻川流域には八ッ場ダム以外になく,しかも八ッ場ダムの洪水調節流量6500万立方メートルは,利根川水系の既設6ダムの中で最大であり,利根川水系上流の既設6ダムの洪水調節容量全体1億1484万立方メートルの約6割に相当することがそれぞれ認められる。 そして,証拠(甲20,甲B6)及び弁論の全趣旨によれば,現在の国の治水計画である利根川水系河川整備基本方針(平成18年2月策定)では,基準地点であるα3(群馬県伊勢崎市)において,基本高水(洪水防御に関する計画の基本となる洪水をいう。河川法施行令10条の2参照)のピーク流量(計画規模の降雨を対象流域に与え,ダム等による洪水調節をせずに洪水を流下させる場合に計画基準点を流れる洪水- 62 -のピーク流量のこと)毎秒2万2000立方メートルのうち毎秒5500立方メートルを上流のダム群で調節することとし,八ッ場ダムはその一環をなしていること,α3における基本高水のピーク流量毎秒2万2000立方メートルは,カスリーン台風が再来した場合の洪水流量毎秒2万2000立方メートルと,1/200確率流量(概ね200年に1度程度の確率で発生する規模の洪水のピーク流量)毎秒2万1200立方メートルとに基づき設定されたこと,カスリーン台風が再来した場合の洪水流量毎秒2万2000立方メートルは,支川の合流などを考慮して流域をいくつかの小流域に分割し,各支流毎に貯留関数法(国土交通省が管理する河川の洪水の流出計算で一般的に使用されている手法で,流域内に降った雨がその流域に貯留され,その貯留量に応じて流出量が して流域をいくつかの小流域に分割し,各支流毎に貯留関数法(国土交通省が管理する河川の洪水の流出計算で一般的に使用されている手法で,流域内に降った雨がその流域に貯留され,その貯留量に応じて流出量が定まると考えて,流出量を推計するもの)による流出計算を行い,それらの時差を考慮しながら合流させて基準地点の洪水流量を計算する,流出計算モデルにより算定されたこと,1/200確率流量毎秒2万1200立方メートルは,総合確率法,すなわち地域分布や時間分布が異なる多くの降雨パターンの実績降雨を代表降雨群とし,それらを任意の確率規模の雨量に引き伸ばし,これらが降雨として生じたものと仮定して,それぞれのケース毎に流出計算を行い,求められた洪水流量群を統計処理して,必要とする確率規模の洪水流量を算出する手法により算定されたことがそれぞれ認められる。 また,河川整備基本方針は,水害発生の状況,水資源の利用の現況及び開発並びに河川環境の状況を考慮し,かつ,国土形成計画及び環境基本計画との調整を図って,水系に係る河川の総合的管理が確保できるよう定められなければならない旨定められ(河川法16条2項),その内容の客観性及び公平性を確保すべく,国土交通大臣が河川整備基本方針を定めようとするときは,あらかじめ,社会資本整備審議会の意見を聴- 63 -かなければならない旨定められているところ(同条3項),証拠(乙106の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,利根川水系河川整備基本方針は,平成17年12月19日に社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会において審議された上で定められたことが認められ,他に同基本方針の策定手続に瑕疵があることを窺わせる証拠はない。 さらに,証拠(乙2ないし4,74ないし79)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通大臣は,八 て審議された上で定められたことが認められ,他に同基本方針の策定手続に瑕疵があることを窺わせる証拠はない。 さらに,証拠(乙2ないし4,74ないし79)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通大臣は,八ッ場ダムの建設に関する基本計画について,特定多目的ダム法4条4項に基づき,平成13年9月27日,第1回計画変更を告示して,完成予定年度を昭和75年度から平成22年度に変更し,さらに平成16年9月28日,第2回計画変更を告示して,建設に要する費用の概算額を約2110億円から約4600億円に変更したこと,第2回計画変更に先立ち,国土交通大臣は,平成15年3月27日,行政機関が行う政策の評価に関する法律6条に基づく国土交通省政策評価基本計画(平成14年3月22日制定)を改定して,個別公共事業の再評価の実施に当たっては,各地方整備局に設置された,学識経験者等の第三者で構成される事業評価監視委員会を開催し,その意見を尊重することとし,国土交通省関東地方整備局に設置された同局事業評価監視委員会は,平成15年11月20日,国土交通省所管公共事業の再評価実施要領に基づき,第2回計画変更につき,事業を巡る社会経済情勢等の変化,事業の投資効果及び事業進捗状況を踏まえた事業の必要性,事業の進捗の見込み,新工法の採用等によるコスト縮減や代替案立案等の可能性の諸観点から検討をした結果,八ッ場ダム建設事業に事業の必要性,計画の妥当性等が認められたことから,事業の継続を了承し,これを踏まえ,国土交通大臣は,八ッ場ダム建設事業を継続することとし,平成16年3月29日,行政機関が行う政策の評価に関する法律10条- 64 -に基づき平成15年度評価書を作成したことがそれぞれ認められる。 これらの事実によれば,八ッ場ダムは,カスリーン台風と同程度の規模の降雨が,利根川上流域 行う政策の評価に関する法律10条- 64 -に基づき平成15年度評価書を作成したことがそれぞれ認められる。 これらの事実によれば,八ッ場ダムは,カスリーン台風と同程度の規模の降雨が,利根川上流域,特に吾妻川流域にあった場合に,吾妻川流域で唯一の洪水調節機能を有するダムとして,都区部の東部地区を含め,利根川流域で生じる水害の発生を防止するために必要であり,そのことは利根川水系河川整備基本方針の策定手続及び八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更手続において確認されており,それゆえ,八ッ場ダム建設事業は,利根川水系河川整備基本方針及び八ッ場ダムの建設に関する基本計画に基づく適法な事業であると推認することができる。 (イ) α3における基本高水のピーク流量についてaこれに対し原告らは,カスリーン台風の実績洪水流量が,近傍の複数の観測地点の観測値を単純に合算した毎秒1万7000立方メートルと推定されているが,河道貯留効果を考慮すれば毎秒約1万5000立方メートルであったと考えられ,α3上流部での氾濫流量毎秒1000立方メートルを考慮しても,計画高水流量とほぼ同等の毎秒1万6000立方メートル程度にしかならないことからみて,利根川水系河川整備基本方針に定められたα3における基本高水のピーク流量毎秒2万2000立方メートルは過大であると主張する。 しかしながら,そもそも,利根川水系河川整備基本方針に定められたα3における基本高水のピーク流量毎秒2万2000立方メートルは,カスリーン台風から30年余り経過した,昭和55年12月の第2回改定後の利根川水系工事実施基本計画(甲B4,乙89)において,昭和24年の利根川改修改訂計画で設定された毎秒1万7000立方メートルを,その後の利根川流域の経済的,社会的発展にかんがみ,近時の出水状況から流域の出 工事実施基本計画(甲B4,乙89)において,昭和24年の利根川改修改訂計画で設定された毎秒1万7000立方メートルを,その後の利根川流域の経済的,社会的発展にかんがみ,近時の出水状況から流域の出水特性を検討した上で,決定されたもの(同号証の3頁),すなわち,昭和22年9月のカスリーン台風- 65 -以降,利根川上流域の各支川は災害復旧工事や改修工事により河川の洪水流下能力が徐々に増大し,従来上流で氾濫していた洪水が河道により多く流入しやすくなり,下流での氾濫の危険性が高まったこと,また,都市化による流域の開発が上流の中小都市にまで及び,洪水流出量を増大させることとなったことなど,昭和24年2月の利根川改修改訂計画から30年が経過して利根川を取り巻く情勢が一変したため,これに対応した治水対策とすべく改訂されたものであって(甲20),カスリーン台風の実績洪水流量をそのまま基礎とするものではないから,カスリーン台風の実績洪水流量と単純に比較する原告らの主張はそもそも失当である。この点について原告らは,利根川上流域の状況がカスリーン台風時と現在とで大差がないことをその主張の前提としているが,本訴提起後に原告訴訟代理人らが作成した報告書(甲B54号証,甲B68号証)はα3上流部の全てを調査したものではなく,調査範囲内においても堤防の状況に一切変化がなかったことを示すものではない上,利根川上流域の都市的利用は昭和25年ころから昭和60年ころまでの間に大幅に増加していること(乙106の2の6頁参照)についての検討は,限定的な資料に基づく推論がされるにとどまってる(甲B67号証参照)のであって,他に,カスリーン台風以後の利根川流域の経済的,社会的発展による出水状況の変化がα3地点の洪水流量を増加させることはないことを認めるに足りる証拠はな るにとどまってる(甲B67号証参照)のであって,他に,カスリーン台風以後の利根川流域の経済的,社会的発展による出水状況の変化がα3地点の洪水流量を増加させることはないことを認めるに足りる証拠はない。 以上の点を措くとしても,原告らの申請した大熊証人作成にかかる「利根川治水の変遷と水害」(昭和56年2月)(甲B56)においては,「利根川上流域は,大小支川が多数合流し,渓谷の狭窄河道が数多く存在し,その水理機構は複雑をきわめている。」「昭和22年9月洪水の利根川上流域の出水記録が同一量水標であるにもかかわら- 66 -ず資料によって異なっていたり,狭窄河道の貯留効果を測定し得るような量水標の配置がとられていないことなどに見られるように,利根川上流域の水理機構の実態は,究明されているとは言い難い状況である。」との認識が示されているところ(同号証の340ないし341頁),カスリーン台風時にはα3における実測流量は,流量標が観測途中に流出したため実績流量はなく(同号証の363頁),原告らの主張する毎秒約1万5000立方メートルも河道貯留効果を前提とした単なる推計値にすぎず,他にカスリーン台風時のα3における実測流量が毎秒約1万5000立方メートルを超えなかったことを認めるに足りる証拠はない。 さらに,カスリーン台風時のα3上流部での氾濫流量が毎秒1000立方メートルとする点については,原告らの主張によれば,大熊証人がα3上流部の氾濫について現地調査を行ったのは,昭和45年4月に発行された利根川ダム統合管理事務所作成の「昭和22年9月洪水氾濫推定図」(甲B58の図8-27)に接したことにあり,その現地調査の方法は「ほとんどが現地で,そこに住んでいる人に22年の水害状況がどうであったかを聞いていった」(証人大熊調書17~18頁)というもの 図」(甲B58の図8-27)に接したことにあり,その現地調査の方法は「ほとんどが現地で,そこに住んでいる人に22年の水害状況がどうであったかを聞いていった」(証人大熊調書17~18頁)というものであるから,カスリーン台風から20年以上経過した時点での供述に基づく調査方法それ自体からくる制約を受けざるを得ないのであって,他にカスリーン台風時のα3上流部での氾濫流量が毎秒1000立方メートルであったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 加えていえば,大熊証人の前記著作(甲B56)によれば,カスリーン台風時のα3地点最大流量は,吾妻川と烏川のピーク出水がほぼ重なって形成され,奥利根川のピーク流出が相対的に5,6時間遅れていたものであって,降雨パターンによっては,奥利根川流域・吾妻- 67 -川流域・烏川流域からのピーク出水が全て重なり合うこともあり得,こうした場合α3地点最大流量が毎秒2万立方メートルを超えることは考えられるとされており(同号証の371頁),近時の大雨の発生回数の増加傾向(乙122)に照らしても,利根川上流域でカスリーン台風時の降雨を上回る降雨の発生しないことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,カスリーン台風時の実績洪水流量を理由とする原告らの主張は採用できない。 bまた,原告らは,カスリーン台風が再来した場合の洪水流量毎秒2万2000立方メートルの算定に使用した貯留関数法を用いた流出計算モデルと,1/200確率流量毎秒2万1200立方メートルの算定に使用した総合確率法は,いずれも科学的根拠がないと主張する。 しかしながら,原告らの主張は要するに,昭和44年ころ貯留関数法を使ってα3地点における最大流量が毎秒2万6500立方メートルを超えるとする見解が存在したことから,貯留関数法という計算手法自体の信用性に ながら,原告らの主張は要するに,昭和44年ころ貯留関数法を使ってα3地点における最大流量が毎秒2万6500立方メートルを超えるとする見解が存在したことから,貯留関数法という計算手法自体の信用性に疑義があること,また,上記計算過程において数字が意図的に操作された疑いが強いことから原告らが検証しようとしても,国土交通省関東地方整備局が必要な資料の開示を拒否しているためにこれができず,流出計算モデルの適合度の検証に用いられた昭和33年,34年,57年及び平成10年の実績降雨は,計画降雨量の52ないし68パーセントにとどまるから,計画降雨量にも適合するモデルである保証はないことなど,単なる推測の域を出ないものであって,原告らの上記主張もまた採用の限りではない。 cさらに原告らは,国土交通省関東地方整備局が利根川水系利根川浸水想定区域図の作成に使用した計算資料(甲B39号証)によれば,カスリーン台風が再来しても,現況の断面,現況の洪水調節施設を前- 68 -提に上流部で氾濫した上で,α3におけるピーク流量は毎秒1万6750立方メートルにとどまり,α3の下流(利根川中流部)は計画高水流量毎秒1万6500立方メートルまではあふれることがないよう堤防等が概成されており,その差毎秒250立方メートルは水位測定に際しての誤差の範囲ともいうべきものであるから,α3地点の下流での洪水を調節するために八ッ場ダムは不要であると主張する。 しかしながら,α3における基本高水のピーク流量毎秒2万2000立方メートルが,α3の上流における将来の河道整備により上流部での氾濫がないことを前提として設定されたものであるとしても,α3の上流にも多くの市街地や農地があり,河道整備がされる可能性が皆無ではないのであるから,「河川について,洪水,高潮等による災害の発生が防 氾濫がないことを前提として設定されたものであるとしても,α3の上流にも多くの市街地や農地があり,河道整備がされる可能性が皆無ではないのであるから,「河川について,洪水,高潮等による災害の発生が防止され……るようにこれを総合的に管理することにより,国土の保全と開発に寄与し,もつて公共の安全を保持し,かつ,公共の福祉を増進すること」という河川法の目的(同法1条)に照らして,α3の上流における将来の河道整備を考慮することが直ちに不合理であるとはいえない。 d以上によれば,α3地点における基本高水のピーク流量毎秒2万2000立方メートルが不合理であるということはできない。なお,付言すると,大熊証人の前記著作におけるα3地点最大流量毎秒2万立方メートルを前提とした場合にも,計画高水流量毎秒1万6500立方メートルとの差は毎秒3500立方メートルとなり,原告らの引用する既設6ダムによるα3地点での洪水調節効果毎秒1749立方メートルを考慮してもなお,利根川上流部にダムを新設する必要性は否定し難いことになるのであるから,α3地点における基本高水のピーク流量を根拠とする原告らの主張は,いずれにせよ理由がないというべきである。 - 69 -(ウ) 八ッ場ダムの治水効果についてこのほか原告らは,国土交通省の計算(甲B62)によると,カスリーン台風が再来した場合の八ッ場ダムのα3地点における治水効果はゼロであり,過去57年間で最大の平成10年9月洪水における実測流量に基づき八ッ場ダムの治水効果を試算してもわずかであり(甲B79),他の大洪水においても,八ッ場ダムが治水効果を持つのは極めてまれなことであること,その計算で使用された八ッ場ダムの洪水計算モデルにおける最大流入量毎秒3900立方メートルは,吾妻川流域の群馬県吾妻郡α22地先(α23地点 ッ場ダムが治水効果を持つのは極めてまれなことであること,その計算で使用された八ッ場ダムの洪水計算モデルにおける最大流入量毎秒3900立方メートルは,吾妻川流域の群馬県吾妻郡α22地先(α23地点)での観測流量と比べ極めて過大であることから,八ッ場ダムは,α3地点での流量と水位の低減を目的としたダムとしては全く不要であると主張する。 しかしながら,そもそも,原告らの主張によれば,カスリーン台風では,吾妻川流域の雨量が少なく,かつ降雨の時間がずれていたというのであって,利根川上流部の過去の降雨パターン(乙82の6頁参照)をみても,降雨パターンには様々なものがあることは明らかであるから,仮にカスリーン台風が再来した場合の八ッ場ダムの治水効果がゼロであったとしても,八ッ場ダムが不要であるとはいえない。むしろ,大熊証人の前記著作(甲B56)では,カスリーン台風時の出水状況を例に検討した場合,「吾妻川の八ッ場ダムに関して言うならば……ダム地点ピーク時刻は烏川合流点ピーク時刻より約2時間早く,その調節効果はあるものと思われる。しかし,吾妻川の出水の特徴として吾妻渓谷より上流の出水が下流の最高水位にあまり影響をもたない現象があり,また,前橋~上福島狭窄部の調節効果があることから,烏川合流点の最大流量低減にどの程度の効果を発揮できるものなのか,疑問が残る。ただし,八ッ場ダムの洪水調節方式は…洪水の立ち上り部分を大幅にカットし,前半部分で200m/sしか放流しない方式が計画されており,吾妻川 - 70 -の水理機構を考慮したものとして評価できる。」(同号証の373頁)とされている上,原告らの主張を前提としても,昭和34年9月洪水に基づく計算値では,八ッ場ダムの治水効果は毎秒1369立方メートルと算定されているのであるから,八ッ場ダムの治水効果が 証の373頁)とされている上,原告らの主張を前提としても,昭和34年9月洪水に基づく計算値では,八ッ場ダムの治水効果は毎秒1369立方メートルと算定されているのであるから,八ッ場ダムの治水効果が乏しいといえないことは明らかである。 また,八ッ場ダム地点の洪水計算モデルの係数は,吾妻川の群馬県渋川市α24地先での,昭和34年8月,昭和56年8月,昭和57年8月及び同年9月の洪水時における流量の観測値等により検証されているのであるから(甲B62),昭和56年から観測が開始されたにとどまるα23地点での観測流量のみから,上記計算モデルにおける最大流入量毎秒3900立方メートルが過大であると断定することもできない。 したがって,原告らの主張はいずれも採用できず,ほかに八ッ場ダムが,α3地点での流量と水位の低減を目的としたダムとして不要であることを認めるに足りる証拠はない。 (エ) 小括以上のとおり,原告らの主張はいずれも採用できず,他に八ッ場ダムが都区部の東部地区を含む利根川流域で生じる水害の発生を防止するために必要であるとの推認を覆すに足りる証拠はなく,都が八ッ場ダムの治水上の利益を受けることがない旨の原告らの主張は採用できない。 ウダムの危険性について原告らは,八ッ場ダムは,基礎岩盤に多くの問題を抱えており,完成したとしても基礎岩盤がダム堤体の重みに対する耐久性を持たない等,種々の問題が生じる可能性を包含する欠陥だらけの危険物であり(ダムサイトの危険性),また,貯水池の湖岸斜面の少なくとも4箇所で湛水地すべりの危険が現在し,このまま工事を続行すれば,重大な瑕疵を持った構造物となる危険性が高いから(貯水池周辺の地すべりの危険性),このような- 71 -ダムを作るために公金を支出することは許されないと主張する。 しかしながら,前記アの 行すれば,重大な瑕疵を持った構造物となる危険性が高いから(貯水池周辺の地すべりの危険性),このような- 71 -ダムを作るために公金を支出することは許されないと主張する。 しかしながら,前記アのとおり,受益者負担金を支出することが違法になるのは,国土交通大臣のする通知が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合であって,具体的には,八ッ場ダムの建設に関する基本計画ないしこれらに基づき建設される八ッ場ダムそれ自体の瑕疵が重大かつ明白であって,八ッ場ダムの建設に関する基本計画が無効であるなどの特段の事情がある場合に限られると解するべきであって,原告らの指摘する個々の問題が生じる可能性があることのみから直ちに受益者負担金を支出することが違法となるとはいえない。 そこで以下,ダムサイトの危険性,地すべりの危険性について,かかる特段の事情があるといえるか否かについて検討する。 (ア) ダムサイトの危険性についてa国土交通省の検討・対応状況についてまず,証拠(甲D1ないし4,乙88の2,乙112ないし114)及び弁論の全趣旨によれば,八ッ場ダムのダムサイトの安全性については,事業主体である国土交通省が,昭和60年度から平成15年度にかけて,さらに平成16年度以降も必要に応じて地質調査を実施し,ダム設計に反映させ,学識経験者等からなる八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会にも諮った上で,ダムサイトに関する技術的な問題については対応可能としていることが認められる。 b基礎岩盤の脆弱性について(a) 次に,証拠(甲D1,甲F5の2の1)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,八ッ場ダムサイトの岩級区分を,岩塊の硬軟,割れ目間隔及び割れ目性状という3つの要素の組み合わせにより,良好な順にB級, 次に,証拠(甲D1,甲F5の2の1)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,八ッ場ダムサイトの岩級区分を,岩塊の硬軟,割れ目間隔及び割れ目性状という3つの要素の組み合わせにより,良好な順にB級,CH級,CM級,CL級,D級に分類し,D級を- 72 -ダム基礎岩盤には適さない岩盤と判断しているところ,基礎岩盤は全体にB級岩盤を主体とし,地表に近づくに従いCH級,CM級,CL級岩盤からなり,ダム高が最も高くなり,最も大きなせん断強度(物体をずらすように作用する力に対する強度)が必要となる渓谷中央部の河床から両岸の斜面にかけては,施工時に掘削除去されるべき地表から概ね5ないし10メートルの範囲にCM級岩盤がみられるが,その下部のダム基礎となる部分はB級を主体としていると判断していることが認められる。 (b) これに対し原告らは,平成15年3月にP6株式会社が作成した「H14ダムサイト地質解析業務報告書」(以下「H14報告書」という。)(甲D1)の56ないし64頁を引用して,河床標高より深部でさえも多数の開口割れ目の存在が確認されていると主張する。 しかしながら,B級には割れ目間隔が50センチメートル以上のものが,CH級には割れ目間隔が最小で5センチメートル以上のものが含まれうるところ,同報告書の91頁において,原告らの主張する割れ目の存在を前提として,基礎岩盤は全体にB級岩盤を主体とし,また渓谷中央部のダム基礎となる部分はCH級及びB級からなることが明らかにされているのであるから,国土交通省の上記判断は不合理であるとはいえない。 また原告らは,岩級区分がB級ないしCH級と評価されている部分でも少なからぬ箇所では,平成19年3月にP6株式会社が作成した「H17α4地区他地質調査報告書」(以下「H17報告書」という。)添付の岩盤の透水 は,岩級区分がB級ないしCH級と評価されている部分でも少なからぬ箇所では,平成19年3月にP6株式会社が作成した「H17α4地区他地質調査報告書」(以下「H17報告書」という。)添付の岩盤の透水性を評価したルジオンマップ(甲F5の2の2図15ないし17)において,ルジオン値(岩盤の透水性を示す数値で,ボーリング孔1メートルに水を1平方センチメート- 73 -ル当たり10キログラムの圧力で注入して,毎分1リットルの水が注入されるときに,1ルジオンとなる。)が20以上とされているから,岩級区分をCL級に見直すべきであると主張する。 しかしながら,上記のとおり,八ッ場ダムサイトの岩級区分は岩塊の硬軟,割れ目間隔及び割れ目性状から定められているもので,ルジオン値によるものではなく,そのことはB級の説明として「ルジオン値は概ね2未満である。」,CL級の説明として「ルジオン値は20以上を主体とする。」といった幅のある表現しかされておらず,CM級やD級ではルジオン値に基づく説明がされていないこと(甲D1の86頁)からも明らかであるから,ルジオン値が20以上であることから直ちに岩級区分をCL級に見直さないことが不合理であるとはいえない。 さらに原告らは,H14報告書で「擾乱帯」と呼ばれた,左岸河床の河道方向の-1軸から2軸(ダム軸(ダムの位置を示す基本線であり,重力式コンクリートダムにおいてはダム天端上流面を通る河川横断線)の上流側40メートルないし下流側80メートル)まで連続する,やや脆弱で鏡肌を伴うやや破砕質な部分は,断層破砕帯(断層の境界部の岩盤が崩れて帯状に脆弱となっている部分)の要件を十分備えている上,河床中央のボーリングで採取された岩体の一部(甲D15の添付図-6)が赤色変質していることや,「擾乱帯」の延長線上の右岸側に10を超 盤が崩れて帯状に脆弱となっている部分)の要件を十分備えている上,河床中央のボーリングで採取された岩体の一部(甲D15の添付図-6)が赤色変質していることや,「擾乱帯」の延長線上の右岸側に10を超えるルジオン値を示す部分があることから,「擾乱帯」がダムサイト直下に延長している可能性があり,ダム底の岩盤のせん断抵抗に大きな影響を与えると主張する。 しかしながら,上記ボーリング結果からは断層の存在は認められない上,原告らの主張はいずれにせよ「擾乱帯」がダムサイト直下- 74 -に延長している可能性をいうにとどまるものであって,他に「擾乱帯」がダムサイト直下にまで延長していることを認めるに足りる具体的な証拠はない。 (c) 以上によれば,基礎岩盤は全体にB級岩盤を主体とし,地表に近づくに従いCH級,CM級,CL級岩盤からなり,渓谷中央部の河床から両岸の斜面にかけての下部のダム基礎となる部分はB級を主体としているとの国土交通省の判断が不合理であるとはいえず,このほか,八ッ場ダムのダムサイトの基礎地盤が,ダム建設に不適格な脆弱なものであることを認めるに足りる証拠はない。 c基礎岩盤の透水性について次に原告らは,八ッ場ダムのダムサイトは,河床直下,左岸側,右岸側のいずれも透水性が高い脆弱な岩盤であり,グラウチング工法(セメントミルク注入)をもってしても対処することは不可能であると主張する。 しかしながら,証拠(甲D15添付図-10,甲F5の2の2図15ないし17)によれば,全体的にみれば,国土交通省がH17報告書に基づき,河床付近の基礎岩盤及び左岸の地下水位以深ではルジオン値が小さいと評価していることに格別不合理な点があるとは認め難い。 また,証拠(乙109,111)及び弁論の全趣旨によれば,現在のグラウチング技術指針は,旧グラウチング 岸の地下水位以深ではルジオン値が小さいと評価していることに格別不合理な点があるとは認め難い。 また,証拠(乙109,111)及び弁論の全趣旨によれば,現在のグラウチング技術指針は,旧グラウチング技術指針(昭和58年6月30日付け建設省河川局開発課長通達)制定後,約20年が経過し,その間に数多くの施工データや知見が蓄積される一方,複雑な地質を有する基礎地盤を対象とする工事が増えたことから,平成15年に,ダムの安全性を損なわないことを前提に改定されたものであり,具体的には,従来グラウチングの分類として,ダムの基礎地盤及びリム部- 75 -(ダム軸の左右岸部分)において,浸透路長が短い部分と貯水池外への水みちとなるおそれのある高透水部の遮水性の改良を目的として行われる,孔長の比較的長いカーテングラウチング,コンクリートダムの着岸部付近において施工されるコンソリデーショングラウチング等に大別されていたもののうち,コンソリデーショングラウチングにつき,遮水性の改良を目的とするものと,断層・破砕帯等の弱部の補強を目的とするものとに細分類した上で,カーテングラウチングについては,改良目標値を,従来ダム形式により一律に定めていたのを,深度が最大ダム高の2分の1までは2ないし5Lu(ルジオン値),最大ダム高までは5ないし10Luを標準とする代わりに,透水性の改良が難しい地盤では浅部の複数列化によって厚みのある遮水ゾーンを形成する等の対応をとることとし,遮水性の改良目的のコンソリデーショングラウチングについては,水理地質構造等を適切に勘案して適切に設定し,硬岩からなる亀裂性の地盤の場合は5Lu程度とし,また弱部の補強目的のコンソリデーショングラウチングでは,ルジオン値で設定する場合は10Lu以下,単位セメント量で設定する場合は地盤の性状,注入 し,硬岩からなる亀裂性の地盤の場合は5Lu程度とし,また弱部の補強目的のコンソリデーショングラウチングでは,ルジオン値で設定する場合は10Lu以下,単位セメント量で設定する場合は地盤の性状,注入圧力に応じて適切な値を設定することとし,また,施工途中においても「施工データの分析→計画の検証・見直し→施工」をルーティン化して行うことを義務付け,施工状況に応じた合理的なグラウチングを行うこととされたことが認められるところ,改定後のグラウチング技術指針の内容に格別不合理な点は認め難い。 そして,証拠(甲F5の2の1,乙110)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,現在のグラウチング技術指針に基づき,八ッ場ダムにおけるグラウチングを設計・施工することとし,既に判明している左岸の高透水部に対してはカーテングラウチングの施工範囲を拡大する変更をしたことが認められることからみても,国土交通省は,- 76 -施工中に新たな問題点が発見された場合,計画の検証・見直しをした上でその後の施工をすることが可能であると考えられ,他に透水性の高い部分にグラウチング工法で対処することがおよそ不可能であることを認めるに足りる証拠はない。 d熱水変質帯の分布についてさらに原告らは,八ッ場ダムのダムサイトは,熱水変質帯が広く分布する地域であり,ダム軸が位置する場所もまた,当然熱水変質帯の中にあることを前提として考えなければならないところ,熱水変質帯に属する岩盤は,風化・劣化して強度が低下しており,仮に現在熱水変質が及んでいないか又は強度低下がわずかであったとしても,熱水変質は進行し,ダム完成後の水位の著しい変動により変質が加速されることから,このような熱水変質帯が広く分布する場所にダムを建設すること自体が誤りであると主張する。 しかしながら,証拠(甲D1,甲D 変質は進行し,ダム完成後の水位の著しい変動により変質が加速されることから,このような熱水変質帯が広く分布する場所にダムを建設すること自体が誤りであると主張する。 しかしながら,証拠(甲D1,甲D15の添付図-7,8,甲F5の2の1,甲F5の2の2の図1,3,4,乙112)及び弁論の全趣旨によれば,H14報告書では,ダム基礎岩盤の安定性に関して着目すべき中性の熱水変質は,ダムサイト右岸,上流部など広い変質帯の中心部に分布し,-5軸(当初のダム軸から200メートル上流部)を中心に脈状に広がるが,-1軸(当初のダム軸から40メートル上流部)では,中変質(W2)と強変質(W1)が局所的に分布する程度となり,0軸(当初のダム軸)では変質がみられなかったことから,経済性を重視して,確実に変質帯を避けるように河川にやや斜交して設定された当初のダム軸の右岸側を上流に移動させる場合に,-1軸のW1及びW2の変質帯の延びの方向を明らかにするような調査を行うことが望ましいと指摘されたこと,そこで,国土交通省においてさらに地質調査を行い,変質帯の分布状況を把握し,それによれ- 77 -ば,熱水変質によるCL,CM級岩盤はダムサイト付近ではほとんど分布がみられず,ダムサイト近傍の熱水変質帯の先端部分は強度低下が生じていないか極めてわずかで,従来想定されていたよりも良好な岩盤であることが判明したことから,堤体基礎が変質帯にかからない範囲で,ダム軸の右岸側を上流側に20メートル移動させた上で,新たに設定したダム軸をもとに堤体の設計を進めることとしたことがそれぞれ認められることからすると,熱水変質帯に関する問題は既に解消されたというべきであり,他に,新たに設定されたダム軸が熱水変質帯の中にあること,あるいは,変更後のダム軸に建設されたダムが将来の熱水変質 認められることからすると,熱水変質帯に関する問題は既に解消されたというべきであり,他に,新たに設定されたダム軸が熱水変質帯の中にあること,あるいは,変更後のダム軸に建設されたダムが将来の熱水変質の進行による悪影響を受けることを認めるに足りる的確な証拠はない。 e断層の存在についてさらに原告らは,八ッ場ダムのダムサイト周辺には,この地域で最も大きな親断層が存在し,それがダム軸の右袖部を通過しているか,少なくともその直近を通っており,その親断層の活動に伴って生じた子や孫に当たる断層が,ダムサイト周辺に密に分布し,基礎地盤のせん断抵抗力を極めて脆弱にしていると主張する。 しかしながら,証拠(甲D1)によれば,H14報告書では,右岸高標高部の小規模な数箇所を除き,地質学的及び工学的に際だった断層は認められないと判断されていることが認められる。 また,原告らが指摘する群馬県表層地質図(甲D5の2)は広い範囲を対象としたおおまかなものであって,原告らの主張する親断層の記載(原告最終準備書面(4)48頁,別紙図5-19参照)が八ッ場ダムのダム軸に交差するか,あるいは少なくともダムの安全性に影響するような近距離を通過することが明らかであるとはいえない。 また,昭和45年1月に株式会社P7が作成した利根川水系吾妻川- 78 -八ッ場ダム・ダムサイト地表地質調査報告書(甲D17号証)の6,7頁では,ダムサイト下流の2本の断層の存在が指摘されているものの,結論として「……ダム建設に大きな問題となる規模のものは認められなかった。しかし,今回の調査では,断層破砕帯の大規模なものは認められなかったが,調査地右岸に分布する段丘面下には,断層通過の可能性が地形的にあり調査の必要がある。」とするにとどまっており,ダム建設に支障となる断層があるとするものではない 帯の大規模なものは認められなかったが,調査地右岸に分布する段丘面下には,断層通過の可能性が地形的にあり調査の必要がある。」とするにとどまっており,ダム建設に支障となる断層があるとするものではない。そして,上記2本の断層は,同報告書の第1図の左側に実線(「断層(破砕帯(50~100cm))」),破線(「断層(伏在)」)で記載されているところ(甲D19の26頁参照),このうちの吾妻川に近い断層は上流のダムサイトに向かって延びるものの,ダムサイトに達する前に消滅している上,その後の調査で,地表部を除き脆弱部が存在しないことが確認されており(甲F5の2の1,甲F5の2の2図20,21),もう1本の断層はダムサイトに向かうことなく南方に延びており,原告らの主張によれば,後者の断層が原告ら主張の親断層であるというのであるから,同報告書の記載によっても,原告ら主張の親断層が八ッ場ダムのダム軸に交差するか,あるいはダムの安全性に影響するような近距離を通過することは認められない。 このほか原告らは,実際に大きな断層の露頭が確認されており,群馬県表層地質図に示された親断層は,上記2本の断層の中間の断崖と貫入岩脈を結んだ線上(原告最終準備書面(4)の図5-22の緑色線)に存在する可能性が考えられ,その場合はダムの堤体の右袖を親断層が通過することになるとも主張するが,原告らの主張する大きな断層の露頭はダムサイトから離れた下流にあり(甲D18),原告らの主張によっても,結局,ダムの堤体の右袖を親断層が通過する可能性が考えられるというに留まり,上記断層の存在を認めるに足りる具- 79 -体的な証拠はないから,原告らの主張は前提を欠くといわざるを得ない。 以上のほか,ダムサイト周辺にダムの安全性に影響を与える断層が存在することを認めるに足りる証拠はない。 るに足りる具- 79 -体的な証拠はないから,原告らの主張は前提を欠くといわざるを得ない。 以上のほか,ダムサイト周辺にダムの安全性に影響を与える断層が存在することを認めるに足りる証拠はない。 f小括このほか原告らは,ダムサイト周辺の基礎地盤が八ッ場層と呼ばれる陸成層で,溶岩の岩脈の貫入やシーティング節理(応力解放や風化に伴って生じる地表面に亜平行な割れ目)のため一般的に不安定であることや,昭和46年に建設省が,現在のダムサイトの位置と同じ場所の上流案の中止を決めたことなどについても縷々主張するが,八ッ場ダムのダムサイトの安全性に関わる具体的な事実関係は既に検討したとおりであって,原告らの主張はいずれも問題が発生する可能性の指摘にすぎず,他にダムサイトの安全性に関して,八ッ場ダムの建設に関する基本計画ないしこれらに基づき建設される八ッ場ダムそれ自体の瑕疵が重大かつ明白であって,八ッ場ダムの建設に関する基本計画が無効であるなどの特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない。 (イ) 貯水池周辺の地すべりの危険性についてa国土交通省の検討,対応状況についてまず,証拠(甲D9ないし12,甲F6の2の1,2,乙93,117)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,八ッ場ダムの貯水池周辺の地すべりの検討に当たり,平成8年度から平成12年度までの間,八ッ場ダム貯水池周辺地盤安定検討委員会を設けて地すべりの専門家の助言を受けながら,貯水池周辺全体を対象に,文献資料等を収集し,地すべりの可能性があり,かつ,湛水の影響を受ける箇所として22箇所を抽出し(別紙抽出地すべり位置図(22箇所)),こ- 80 -れらについて現地踏査により詳細な地形状況,岩盤の風化・緩み状況等の確認調査を行うとともに,各箇所の既存の調査データの収集・整理を 所を抽出し(別紙抽出地すべり位置図(22箇所)),こ- 80 -れらについて現地踏査により詳細な地形状況,岩盤の風化・緩み状況等の確認調査を行うとともに,各箇所の既存の調査データの収集・整理を併せて行い,その結果に基づき,当該箇所の地形成因が地すべりによるものかどうか判定を行い,湛水による地すべりの可能性が高い5箇所(α4地区α5(同別紙③),α8地区α9(同別紙⑭),α6地区α252箇所,α6地区α7(同別紙⑲))と,湛水による地すべりの可能性が低い17箇所(α8地区α10(同別紙⑮)など)とに分類し,その後α6地区α7を2箇所(同別紙⑲-1,2)に分割したこと,国土交通省は,上記の湛水による地すべり発生の可能性が高い合計6箇所について,さらに現地におけるボーリング調査,動態観測及び詳細な踏査を実施し,地すべり地形の有無,地すべり面の有無及び深度,地すべり規模の特定をし,地すべり対策の必要性を検討した結果,α4地区α5とα6地区α72箇所については,家屋,道路,鉄道等の保全対象物があることから地すべり対策が必要であると判断して,押え盛土による対策工事(地すべりの末端部に擁壁と盛土を施工して末端部の抵抗を付加し,地すべり地全体の安定化を図るもの)を行うこととする一方,α8地区α9については,地すべりによる貯水池への影響が軽微であり,貯水池周辺の保全対象物へは影響が及ばないことから,地すべり対策の必要はないと判断したこと,また,国土交通省は,貯水池周辺の保全対象物の規模や位置が平成12年度までの検討で想定していた計画と変わってきていることから,ダム完成後の湛水に当たり万全を期すため,貯水池全域の斜面を対象に地すべり対策を再検討して修正することを予定しているが,技術的に十分対応可能であると判断していることがそれぞれ認められる ることから,ダム完成後の湛水に当たり万全を期すため,貯水池全域の斜面を対象に地すべり対策を再検討して修正することを予定しているが,技術的に十分対応可能であると判断していることがそれぞれ認められる。 以上のとおり,貯水池周辺の地すべり対策は,これまでの調査に基づき,地すべり発生の可能性が高く,かつ地すべり対策の必要がある- 81 -と判断された箇所に限定して,具体的な対策工事を計画した段階であって,現時点で具体的な対策工事が予定されていない箇所ではおよそ対策工事をしないとするものではないから,現時点において完成後のダムが危険であるというためには,地すべりの発生する可能性がある箇所で,地すべりの発生を防止するために必要な対策工事を行うことが不可能であるか,そのような対策工事を行わないことが確定している場合に限られるというべきである。 bα4地区α5について原告らは,国土交通省が,α4地区α5における押え盛土による対策工事を安価にするため,前提となるすべり面を,地すべり地の頭部の急崖,その下部にあるドーム状の岩塊及び同岩塊直下の空洞のある岩盤を含まず,同岩塊の下方から設定し,地すべり区域がドーム状の岩塊及びその直下の空洞のある岩盤を含めた場合と比べ半分程度となっているから,対策工事として不十分であり安全性の確保ができないと主張する。 しかしながら,証拠(甲D9,甲F6の2の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,斜面での土塊(岩塊)の移動は地すべりと崩壊の2つに大別され,地すべりは,地下水を大きな誘因として,主として粘性土をすべり面として滑動し,継続的,再発性があり,規模が大きいのに対し,崩壊は,特に降雨強度を誘因として,粘質土をすべり面とすることは少なく,突発的であり,一般に規模が小さい(地すべり性崩壊では規模が大きい場合がある 動し,継続的,再発性があり,規模が大きいのに対し,崩壊は,特に降雨強度を誘因として,粘質土をすべり面とすることは少なく,突発的であり,一般に規模が小さい(地すべり性崩壊では規模が大きい場合がある)とされていること,また対策工事のうち,押え盛土工事は,確実な工法であるが,土量に比較して効果が低く,土量が大きければ貯水池の容量に影響を及ぼすという難点もあり,これに対し排土工事は,地すべり頭部の土塊を排除して安定化を図る工法で,最も確実な対策工事の1つであるとされていること,- 82 -α4地区α5の地すべりは,硬質な八ッ場安山岩類の下位の変質帯が地すべり面となって地すべりが発生し,この地すべりに伴って変質帯の上部に分布する硬質な八ッ場安山岩類は緩みが進行し,崩落に至ったものと推認されていること,国土交通省は,この変質帯を地すべり面と想定して押え盛土工事を計画しているほか,排土工事などの対策工事を施すことにより,技術的には対応可能と判断していることが認められる。 以上の事実によれば,国土交通省は,押え盛土工事の難点を踏まえ,再発性のある地すべりに対しては押え盛土工事を予定し,地すべりの上部で突発的に生じる可能性のある崩落に対しては,別途,排土工事などの対策工事を検討しているということになるから,国土交通省の対応は合理的なものということができ,他に対策工事として不十分な点があることを窺わせる証拠はない。 cα6地区α7について次に原告らは,α6地区α7には,幅,奥行が約400メートルの大きな地すべり域(別紙抽出地すべり位置図(22箇所)⑲)があるのに,国土交通省は,上流側と下流側の小さな地すべり(同別紙⑲-1,2)だけを想定した対策工事を予定し,大きな地すべりの危険を放置していると主張する。 しかし,証拠(甲D9,10,甲F6の2 があるのに,国土交通省は,上流側と下流側の小さな地すべり(同別紙⑲-1,2)だけを想定した対策工事を予定し,大きな地すべりの危険を放置していると主張する。 しかし,証拠(甲D9,10,甲F6の2の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,平成12年度までに行われた調査の結果,大きな地すべりの存否については,地すべり面が確認されておらず,河岸近くの林層に堅硬な熔岩が深部まで連続して分布し,この林層を切って地すべり面が形成されるとは考えにくいため,滑動する可能性は極めて小さいと判断する一方,上流側と下流側の2つの地すべりの存否については,応桑岩屑流堆積物の下の林層内部に変質した弱- 83 -層があり,これが地すべり面となって過去に地すべりを起こしたものと判断し,これらの判断を前提とした対策工事をすることとしているが,当該地区の周辺整備の状況に合わせ,今後地すべり対策の再検討を行い修正を加えることを予定していることが認められる。 したがって,国土交通省が,α6地区α7における大きな地すべりの危険を放置しているとはいえない。 dα8地区α9について原告らは,国土交通省は7つに分割したブロックのうち,α9右岸の吾妻川よりの1つは湛水により不安定化するとみており,同ブロックが地すべりを起こせば,その崩壊が上流側や山側の他のブロックに連鎖するおそれがあるのに,それが放置されていると主張する。 しかしながら,証拠(甲F6の2の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,平成12年度までに,詳細踏査,ボーリング調査及び動態調査を実施した結果,地すべり地が7つのブロックに分割され,このうち2つは推定される地すべり土塊の全てが貯水池の常時満水位より高い位置にあり,湛水の影響を受けず,残りの5ブロックについて湛水の影響を考慮した地すべり土 地すべり地が7つのブロックに分割され,このうち2つは推定される地すべり土塊の全てが貯水池の常時満水位より高い位置にあり,湛水の影響を受けず,残りの5ブロックについて湛水の影響を考慮した地すべり土塊の安定計算を行ったところ,そのうち1つのブロックは不安定との結果となったが,同ブロックの地すべり土塊は全てが湛水区域内にあって地すべりによる貯水池への影響が軽微であり,貯水池周辺の保全対象物へは影響が及ばないことから,地すべり対策の必要性はないと判断したが,ダム完成後の湛水に当たり万全を期すために再検討を行い,今後も実施される地すべり調査などにより地すべり対策に修正を加えることを予定していることが認められる。 したがって,国土交通省が,α8地区α9において,地すべりの危険を放置しているとはいえない。 - 84 -eα8地区α10について原告らは,国土交通省が,α8地区α10の地層に堆積する林層が変質して土砂化あるいは粘土化しているとの認識を有していたにもかかわらず,平成10年にα8地区α10の地すべり調査の対象区域に含まれる同地区α11で発生した地すべりを予測できず,同地すべり後も,地すべり部分では対策を講じたもののその上下流は放置していると主張する。 しかしながら,証拠(甲F6の2の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,国土交通省は,上記地すべり発生後,α8地区α10を,湛水による地すべりの可能性があり精査が必要な箇所に加えた上,同地区α11の地すべり地に,恒久対策として貯水池完成後の湛水による影響も考慮した対策工事を既に実施し,試験湛水時に斜面の安定性を再確認することとしているほか,ダム完成後の湛水に当たり万全を期すために,貯水池全域の斜面を対象に再検討を行うことを予定していることが認められる。 したがって,国土交通省が,α8地区 斜面の安定性を再確認することとしているほか,ダム完成後の湛水に当たり万全を期すために,貯水池全域の斜面を対象に再検討を行うことを予定していることが認められる。 したがって,国土交通省が,α8地区α10において,地すべりの危険を放置しているとはいえない。 f小括以上のとおり,現時点において,地すべりの発生する可能性がある箇所で,地すべりの発生を防止するために必要な対策工事を行うことが不可能であるか,そのような対策工事を行わないことが確定しているとはいえず,ほかに八ッ場ダムの貯水池周辺における地すべりの発生を理由として,八ッ場ダムが危険な事業であることを認めるに足りる証拠はない。 (ウ) ダムの危険性についてのまとめ以上のとおり,ダムの危険性に関する原告らの主張はいずれも採用で- 85 -きず,ほかに八ッ場ダムの建設に関する基本計画ないしこれらに基づき建設される八ッ場ダムそれ自体の瑕疵が重大かつ明白であって,八ッ場ダムの建設に関する基本計画が無効であるなどの特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 エその他の原告らの主張について原告らは,八ッ場ダム建設事業が,条理法上の環境影響評価義務,生物の多様性に関する条約及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に抵触するから,このような事業のために地方公共団体が公金を支出することは地方自治法2条16項に反し許されないと主張する。 しかしながら,地方自治法2条16項は,地方公共団体は,法令に反してその事務を処理してはならない旨を定めたものであるところ,八ッ場ダム建設事業は都の事務ではなく,また被告建設局課長の支出負担行為が環境影響評価義務等に違反することもあり得ないから,八ッ場ダム建設事業が環境保護法令に反するか否かを検討するまでもなく,原告らの主張が失当であることは明らかで く,また被告建設局課長の支出負担行為が環境影響評価義務等に違反することもあり得ないから,八ッ場ダム建設事業が環境保護法令に反するか否かを検討するまでもなく,原告らの主張が失当であることは明らかである。 オ受益者負担金の支出命令に関するまとめ以上によれば,国土交通大臣のする受益者負担金の通知が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に当たるとはいえないから,被告建設局課長は上記通知を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことは許されず,したがって,被告建設局課長がする支出命令が,その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされる違法なものということはできず,それについて被告知事に指示監督上の義務違反があるということもできない。 (3) 水特法負担金及び基金負担金について原告らは,水特法負担金及び基金負担金の支出命令の違法性として,都が- 86 -八ッ場ダムにより利水上も治水上も利益を受けないにもかかわらず,負担金の支出を内容とする合意をすることは,公序良俗に反し(民法90条)又は都にとって必要のない事業であることを当事者双方が認識した上でした心裡留保(民法93条)に基づくものであって無効である,あるいは,本件水特法経費負担協定及び本件基金経費負担協定が許容している毎年度の協議拒否権を行使しないまま漫然と負担金を支出することは違法であると主張する。 しかしながら,被告水道局長による八ッ場ダムによる水源確保が必要であるとの判断が合理的な裁量の範囲を逸脱したものとはいえないことは前記(1)のとおりであり,他に都が八ッ場ダムによる利水上の利益を受けないことを認めるに足りる証拠はなく,また,都が八ッ場ダムによる治水上の利益を受けることがないとはいえないこと とはいえないことは前記(1)のとおりであり,他に都が八ッ場ダムによる利水上の利益を受けないことを認めるに足りる証拠はなく,また,都が八ッ場ダムによる治水上の利益を受けることがないとはいえないことは前記(2)イのとおりであるから,原告らの主張はいずれも採用できず,他に水特法負担金及び基金負担金の支出が違法であることを窺わせる証拠はない。 (4) 一般会計繰出金について原告らが繰出金の支出命令の違法性を主張する前提としているのは,要するに,都が八ッ場ダムにより利水上の利益を受けないことであるところ,前記(3)のとおり,都が八ッ場ダムによる利水上の利益を受けないことを認めるに足りる証拠はないのであるから,その余の点について検討するまでもなく,原告らの主張は採用できない。 (5) まとめ以上によれば,本件各負担金の支出又は支出命令は,いずれも違法であるとはいえない。 第4 結論 以上によれば,本件訴えのうち,被告水道局長が国土交通大臣に対し八ッ場ダム使用権設定申請を取り下げる権利の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める部分,被告知事に対し,被告課長らに負担金及び繰出金の支出命令- 87 -をさせないことを求める部分,並びに被告水道局長及び被告課長らに対し,平成20年11月25日までにされた本件各負担金の支出又は支出命令の差止めを求める部分は,いずれも不適法であるから却下し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官定塚誠裁判官中山雅之裁判官佐々木健二は差し支えにより署名押印することができない。 裁判長裁判官定塚誠 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官 定塚誠 裁判官 中山雅之 裁判官 佐々木健二 は差し支えにより署名押印することができない。 裁判長裁判官 定塚誠

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