平成28(行ウ)200 登録拒否処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年11月21日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文14,764 文字)

平成29年11月21日判決言渡平成28年(行ウ)第200号登録拒否処分取消請求事件 主文 1 本件訴えのうち被告に対して司法書士名簿への登録手続の義務付けを求める訴えを却下する。 2 原告のその余の訴えに係る請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告が平成28年1月25日付けで原告に対してした司法書士の登録申請に係る登録拒否の処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,司法書士名簿への登録手続をせよ。 第2 事案の概要本件は,司法書士となる資格を有し,かつて司法書士であったがその登録を取り消された経歴を有する原告が,司法書士法(以下「法」という。)9条1項に基づき,被告に対し司法書士名簿への登録の申請(以下「本件申請」という。)をしたところ,法10条1項3号所定の登録拒否事由(司法書士としての適格性の欠如)に該当するとして,これを拒否する処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件処分の取消しを求めるとともに,司法書士名簿への登録の義務付けを求める事案である。 1 法の定め(1) 欠格事由次に掲げる者は,司法書士となる資格を有しない(5条)。 1号禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者 2号ないし4号 (略)5号 47条の規定により業務の禁止の処分を受け,その処分の日から3年を経過しない者6号 (略)(2) 司法書士名簿の登録司法書士となる資格を有する者が,司法書士となるには,日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に,氏名,生年月日,事務所の所在地,所属する司法書士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならない(8 なる資格を有する者が,司法書士となるには,日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に,氏名,生年月日,事務所の所在地,所属する司法書士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならない(8条1項)。 (3) 登録の申請8条1項(上記(2))の登録を受けようとする者は,その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して,日本司法書士会連合会に登録申請書を提出しなければならない(9条1項)。 (4) 登録の拒否ア日本司法書士会連合会は,9条1項(上記(3))の規定による登録の申請をした者が司法書士となる資格を有せず,又は次の各号のいずれかに該当すると認めたときは,その登録を拒否しなければならない。この場合において,当該申請者が2号又は3号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは,67条に規定する登録審査会の議決に基づいてしなければならない。(10条1項)1号及び2号 (略)3号司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき。 イ日本司法書士会連合会は,当該申請者が10条1項2号又は3号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは,あらかじめ,当該 申請者にその旨を通知して,相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない(10条2項)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告(昭和7年▲月▲日生)は,昭和31年9月10日に〇県司法書士会に入会し,〇市内に事務所を設けて司法書士の業務を行い,平成2年10月から平成7年5月まで同会会長を務めた。 (2) 原 (1) 原告(昭和7年▲月▲日生)は,昭和31年9月10日に〇県司法書士会に入会し,〇市内に事務所を設けて司法書士の業務を行い,平成2年10月から平成7年5月まで同会会長を務めた。 (2) 原告は,平成12年12月5日,〇地方裁判所において,要旨,下記の罪となるべき事実(以下「本件犯罪行為」という。)により,懲役2年,執行猶予3年とする刑事事件判決(以下「本件刑事事件判決」といい,同判決に係る刑事事件を「本件刑事事件」という。)を受け,同判決は同月20日に確定した(甲2)。 記ア原告は,aが多額の負債を残して死亡したことから,aの妻b,二女c及びdと共謀の上,(ア) 平成10年10月19日,〇地方法務局において,aがdから金員を借り受けた事実はないのに,aのdに対する金銭消費貸借上の債務をbが相続し,同債務の不履行を停止条件とし権利者をdとする土地・建物の賃借権が設定された旨の内容虚偽の仮登記申請書を提出し,登記官をして不動産登記ファイルにその旨不実の記録をさせ,これを同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した(電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪)(イ) 平成10年10月19日頃,〇公証人合同役場において,公証人に対し,aがdから550万円を借り受け,bが相続によりdに対しその債務を負担していることを確認し,元金を同月31日に一括して支払い,債務不履行のときは強制執行に服する旨の虚偽の申立てをし,公正 証書の原本にその旨不実の記載をさせ,同月22日,これを同所に備え付けさせて行使した(公正証書原本不実記載・同行使罪)。 イ原告は,b,c及びeと共謀の上,(ア) 平成11年9月2日,〇地方法務局において,aがeから金員を借り受けた事実はないのに,aのeに対する金銭消費貸借上の債務をbが相続 載・同行使罪)。 イ原告は,b,c及びeと共謀の上,(ア) 平成11年9月2日,〇地方法務局において,aがeから金員を借り受けた事実はないのに,aのeに対する金銭消費貸借上の債務をbが相続したこと,同債務の不履行を停止条件とし権利者をeとする土地・建物の賃借権が設定された旨の内容虚偽の仮登記申請書を提出し,登記官をして不動産登記ファイルにその旨の不実の記録をさせ,これを同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した(電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪)(イ) 平成11年9月初旬頃,〇公証人合同役場において,公証人に対し,aがeから500万円を借り受け,bが相続によりeに対し未払残金464万円の債務を負担していることを承認し,同債務につき,同年8月から分割して支払い,債務不履行のときは強制執行に服する旨の虚偽の申立てをし,公正証書の原本にその旨不実の記載をさせ,同年9月7日,これを同所に備え付けさせて行使した(公正証書原本不実記載・同行使罪)(ウ) 平成11年10月29日,〇地方裁判所民事部において,裁判官に対し,前記(イ)の公正証書の正本を添付したe名義の強制競売申立書を提出して土地・建物の強制競売を申し立て,平成12年6月5日頃,配当金を要求したが,上記競売による売却金が優先弁済権を有する抵当権者の債権額に満たなかったため,その目的を遂げなかった(詐欺未遂罪)。 ウ原告は,かねて情交関係にあったdが原告との復縁を拒絶したことに立腹し,(ア) 平成11年8月2日頃,レストランにおいて,dに対し,「お前は 詐欺師だ。別れるなら今すぐ500万円を返せ。今の店で商売もできんようにしてやる。」(イ) 平成11年8月4日頃から同月9日頃までの間,dの携帯電話等に電話を掛け,「別れるならすぐに50 詐欺師だ。別れるなら今すぐ500万円を返せ。今の店で商売もできんようにしてやる。」(イ) 平成11年8月4日頃から同月9日頃までの間,dの携帯電話等に電話を掛け,「別れるならすぐに500万円を返せ。詐欺師だ。商売ができんようにしてやる。ヤクザの女だから居直るのか。」(ウ) 平成11年8月16日頃,dの携帯電話に電話を掛け,「電話に出ないということは逃げるのか。破産の申立てをしてやる。そうすれば10年間は商売できんぞ。〇にもおれんようになるぞ。」などと申し向け,dを脅迫した(以上(ア)~(ウ)につき,脅迫罪)。 (3) 〇地方法務局長は,平成12年12月13日,法12条(平成14年法律第33号による改正前のもの)に基づき,原告に対し,同月14日からその業務を禁止する旨の処分をした(乙10)。これを受けて,被告は,同日,法6の8条1項4号,4条5号(いずれも同改正前のもの)に基づき,原告に対し,司法書士の登録を取り消す旨の処分をした。 (4) 原告は,上記(3)の処分の日から3年を経過した後の平成15年12月25日,被告に対し,司法書士の登録申請(以下「第1回申請」という。)をした。被告は,平成16年3月19日,同申請について,登録拒否の処分をした。(甲1,乙6の1及び5)(5) 原告は,平成18年11月1日,被告に対し,司法書士の登録申請(以下「第2回申請」という。)をしたが,同年12月18日,同申請を取り下げた(甲1,乙7の1)。 (6) 原告は,平成20年10月1日,被告に対し,司法書士の登録申請(以下「第3回申請」という。)をした。被告は,同年12月24日,同申請について,登録拒否の処分をした。(甲1,4,乙8の1)原告は,平成21年2月25日付けで,法務大臣に対し,上記処分を不服として審査請求 請」という。)をした。被告は,同年12月24日,同申請について,登録拒否の処分をした。(甲1,4,乙8の1)原告は,平成21年2月25日付けで,法務大臣に対し,上記処分を不服として審査請求をしたところ,法務大臣は,同年5月13日,これを棄却す る旨の裁決をした(乙1の2)。 (7) 原告は,平成27年11月11日,被告に対し,司法書士の登録申請(本件申請)をした。 (8) 被告は,登録審査会の議決を経て,平成28年1月25日,原告に対し,本件申請について司法書士の登録を拒否する旨の処分(本件処分)をした。 (9) 原告は,平成28年5月13日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 本件における争点は,本件処分の適法性(具体的には,法10条1項3号所定の登録拒否事由の有無)であり,これに関する当事者の主張の要旨は以下のとおりである。 (原告の主張の要旨)(1) 司法書士の業務を職業として選択することは,職業選択の自由として憲法22条1項によって保障されている。法に登録拒否事由が定められているのは,職業選択の自由が公共の福祉による制約を受けることの表れであるものの,職業選択の自由は生命,自由及び幸福追求に対する権利(憲法13条)を構成するものであり,最大限尊重することが要求される。 したがって,法10条1項3号所定の登録拒否事由の有無は,憲法による人権保障と調和するか否か,客観的かつ公正であるか否か,具体的現実性を有するおそれがあるか否かを基準として判断されるべきであり,具体的には,登録申請者に司法書士の職務を公正かつ誠実に遂行するであろうことにつき合理的な疑いを生じさせるような著しい個別的事情その他司法書士の職務に照らして司法書士としての適格性を欠くと認められるような個別的事情の存否をもって判断されるべきで 誠実に遂行するであろうことにつき合理的な疑いを生じさせるような著しい個別的事情その他司法書士の職務に照らして司法書士としての適格性を欠くと認められるような個別的事情の存否をもって判断されるべきである。 (2) 原告は,本件刑事事件判決を受けた後,自分の犯した罪について心から反省し,日々贖罪の心情で人生を送ることを決意し,自律した生活を送るとともに,司法書士として必要とされる法律知識について研さんに努めてきたのであって,原告の職業的自覚は十分に改善されている。 また,本件犯罪行為は,複雑な人間関係と情実の中で起こしてしまった単発的な事件にすぎず,15年もの長期間が経過してもなおその社会的影響が継続するような犯罪ではない。 したがって,原告を再度司法書士名簿へ登録して司法書士の業務を行わせても,司法書士制度に対する社会一般の信頼を損なうおそれは既に解消されているから,本件処分当時,原告には,法10条1項3号所定の登録拒否事由に該当する事由はなかった。そうであるにもかかわらず,被告は,原告との約1時間の面談を行ったのみで,原告の4回目の登録申請(本件申請)を拒否する本件処分をしたものであるから,本件処分は違法である。 (被告の主張の要旨)(1) 法は,司法書士の制度を定め,その業務の適正を図ることにより,登記,供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もって国民の権利の保護に寄与することを目的とし(1条),司法書士は,常に品位を保持し,業務に関する法令及び実務に精通して公正かつ誠実にその業務を行わなければならない旨定めている(2条)。 このような司法書士の使命及び職責と,司法書士の登録が認められるために必要な適格性の意味するところに鑑みると,法10条1項3号所定の登録拒否事由に該当するか否かは,①登録取消 定めている(2条)。 このような司法書士の使命及び職責と,司法書士の登録が認められるために必要な適格性の意味するところに鑑みると,法10条1項3号所定の登録拒否事由に該当するか否かは,①登録取消しの理由となった犯罪行為(非違行為)自体の重大性,②登録申請者に上記犯罪行為に対する自己の罪責についての認識(自覚)が欠如しているか否か,規範意識の希薄性がなお存在しているか否か,③登録申請者の登録取消後の生活状況からして信頼回復,再発防止のための積極的,具体的な努力が行われているか否か,職業的自覚が十分に改善されていることを示す特筆すべき積極的な事実や証拠が存在するか否か,④登録取消後,これまで登録申請が認められなかった理由についての認識が欠如しているか又は不十分であるか否か,⑤司法書士会が登録申請者の登録申請を認めることによって惹起される国民の司法書士会に対する信 頼の喪失があるか否かという諸点を考慮して判断すべきである。 (2)ア本件犯罪行為は,原告が,司法書士としての知識や地位を利用して,債権者の権利である不動産の強制換価及び配当の手続を悪用し,配当金を詐取することを目的として,公証人及び登記官をして実体を伴わない不実又は虚偽の公正証書及び登記を作出させたものであり,国民の権利保全に資すべき司法書士の職責に著しく違反し,司法書士に対する信頼と品位を著しく失墜させるだけでなく,ひいては国民の公証制度及び登記制度に対する信頼をも著しく損なうこととなる重大な犯罪である。 本件犯罪行為については,当時,司法書士としての知識や地位を利用した悪質な犯罪であるとして多数の新聞報道等がされ,原告がかつて司法書士の業務について会員を指導するべき立場にある〇県司法書士会会長を務めていたことも報道され,〇県民や国民の司法書士に対する信頼は著 た悪質な犯罪であるとして多数の新聞報道等がされ,原告がかつて司法書士の業務について会員を指導するべき立場にある〇県司法書士会会長を務めていたことも報道され,〇県民や国民の司法書士に対する信頼は著しく毀損され失墜させられており,その影響は〇県を中心として現在も残っている。 イまた,原告の過去3回にわたる登録申請の際の事情聴取面談や弁明書等の内容に照らすと,原告の自己の罪責についての認識に深化は見られない。かえって,原告は,本件申請時に提出した手紙(乙9の2)及び弁明書(乙9の5)において,第3回申請が拒否された原因が第2回申請を担当した被告の役員らにあると主張していることからすると,自己の罪責について認識の後退があり,また,過去の登録拒否の理由について歪んだ認識を有しているといわざるを得ない。 ウそして,原告は,信頼回復や再発防止のための積極的かつ具体的な努力を行っておらず,職業的自覚が十分に改善されていることを示す特筆すべき積極的な事実はない。 エ以上に鑑みると,原告は法10条1項3号所定の登録拒否事由に該当するから,本件処分は適法である(なお,被告は,原告に対する十分な弁明 の機会を与えた上で,原告との面談結果のみならず,第1回申請以降の全ての資料を総合考慮して本件処分をしたものである。)。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 本件刑事事件についてア原告は,平成12年8月17日,公正証書原本不実記載罪等の被疑事実により逮捕され,同年9月4日,詐欺未遂罪等の被疑事実により再び逮捕された。前者の逮捕については,地方紙2紙及び全国紙3紙により報道され,このうち全国紙1紙を除く各紙において,原告がかつて〇県司法 により逮捕され,同年9月4日,詐欺未遂罪等の被疑事実により再び逮捕された。前者の逮捕については,地方紙2紙及び全国紙3紙により報道され,このうち全国紙1紙を除く各紙において,原告がかつて〇県司法書士会会長を務めていたことが報じられた。また,後者の逮捕についても,地方紙1紙により報道された。(乙5の1~6)イ本件犯罪行為のうち脅迫罪に該当するとされた行為を除く各行為は,多額の債務を相続することとなったbらから相談を受けた原告が,上記の債務以外にも債務が存在することとしてdやeをその債権者に仕立て,この架空の債権者による強制執行の申立てにより配当金の交付を受けてこれを騙取することを図って,司法書士の業務及びこれに関して原告が有する法的な知識経験を悪用し,内容虚偽の仮登記申請書を提出するなどして登記官に不動産登記ファイルへの不実の記録をさせ,公証人に公正証書の原本への不実の記載をさせたなどという一連の行為である。また,本件犯罪行為のうち脅迫罪に該当するとされた行為は,原告がdとの交際期間中に同人に対し多額の金銭的援助をしており,同人が原告との不貞関係を解消するために援助を受けた金銭につき分割返済していたという状況の下,これに抗してdとの関係を維持するため同人に執拗につきまとう中で,同人の破産の申立てを示唆するなど,原告が司法書士として有する法的な知識経 験を悪用して行われたものである。(前記前提事実(2),甲2)ウ原告の本件刑事事件における弁護人は,本件犯罪行為のうち脅迫罪に該当するとされた言動は存在せず,仮に存在したとしても害悪の告知といえるか疑問である旨主張したが,〇地方裁判所はこれを採用せず,脅迫罪を含む本件犯罪行為をいずれも認めて,懲役2年,執行猶予3年とする判決(本件刑事事件判決)をした。原告は,これに ても害悪の告知といえるか疑問である旨主張したが,〇地方裁判所はこれを採用せず,脅迫罪を含む本件犯罪行為をいずれも認めて,懲役2年,執行猶予3年とする判決(本件刑事事件判決)をした。原告は,これに控訴せず,同判決は確定した。(前記前提事実(2),甲2)(2) 第1回申請から第3回申請までについてア原告は,第1回申請時における被告の担当者との面談において,本件刑事事件判決の後で信頼回復のためにした行動について質問された際,町内の清掃,fにおけるボランティア活動,町内会の活動等に従事している旨を述べる一方,土地家屋調査士会等の関連団体や本件刑事事件の関係者である公証人に対する謝罪等はしていない旨を述べた(乙6の2)。 イ原告は,第2回申請時における被告の担当者との面談において,①第1回申請後の生活状況について,〇県司法書士会の会員らや関係団体である土地家屋調査士会の会長,さらには本件犯罪行為の関係者である公証人に謝罪したほか,NPO法人においてDV被害に関する講習会等を開催している旨を述べた。また,②本件犯罪行為に及んだ動機について,仕事上の関係者から頼まれ,同情心ないし義侠心から本件犯罪行為に及んだ旨を述べた。(乙7の2)ウ原告は,第3回申請時における被告の担当者との面談において,①最近の生活状況について,配偶者の介護をしながら,NPO法人の業務に従事したり,実家の農業を手伝ったりしているほか,DVD等による研修資料や書籍を通じて司法書士の業務に関する勉強をしている旨を述べ,②本件犯罪行為について,当時交際していた女性に騙され,又は脅迫されたことから,本件犯罪行為に及んだものであって,脅迫罪を認定した本件刑事事 件判決は真実に反する旨を述べた。また,原告は,アパートの賃貸業を行う株式会社gの代表取締役 騙され,又は脅迫されたことから,本件犯罪行為に及んだものであって,脅迫罪を認定した本件刑事事 件判決は真実に反する旨を述べた。また,原告は,アパートの賃貸業を行う株式会社gの代表取締役であり,同会社の借入金を連帯保証している(乙9の3)ところ,③同借入金について,第3回申請時における残額は2億円である旨を述べた。(乙8の2)(3) 本件申請についてア 〇県司法書士会は,平成27年11月19日付けで,原告に対し,第3回申請に対する登録拒否処分後における状況について回答を求める旨の照会書を送付したところ,原告は,同月23日付けでこれに対する回答書を送付した。この回答書には,第2回申請時における被告の担当者との面談において,同担当者であったhから告げられた内容(原告が雇用していたiの自殺原因が原告にあることや,原告の登録について暴力団関係者から反対されていることなど)のほか,hから,次回は必ず受理するから第2回申請を取り下げるように指示された上,日本司法書士会連合会登録常務会(以下単に「登録常務会」という。)からも電話で取下げを強く促されたことから,やむなく第2回申請を取り下げた旨などが記載されている。 (乙9の2〔4~7枚目〕)イ原告は,平成27年12月10日付けで,登録常務会の座長に宛てた書面を送付した。この書面には,①同年11月26日に〇県司法書士会の担当者と面談した際,同担当者から,「iの自殺原因がすべて原告にあることを認め,それ相当の責任を果たせ。」,「司法書士の再登録など,もっての外だ。」などと告げられた旨のほか,②〇県司法書士会の関係者が本件刑事事件の公判における原告の陳述を無許可で録音したことや,第2回申請時における登録常務会による取下げの強制について,関係者の責任を明確にすべきである旨な た旨のほか,②〇県司法書士会の関係者が本件刑事事件の公判における原告の陳述を無許可で録音したことや,第2回申請時における登録常務会による取下げの強制について,関係者の責任を明確にすべきである旨などが記載されている。(乙9の2〔1~4枚目〕)ウ原告は,平成27年12月14日,被告の担当者と面談した際,①最近 の生活状況について,NPO法人においてDV被害に関連する業務に従事しているほか,他の司法書士を訪問して司法書士の業務に関する新たな情報を入手している旨,②本件犯罪行為の動機について,原告自身が脅されたわけではなく,暴力団に脅されていた者を何とかしてやりたいという義侠心から本件犯罪行為を行ったものである旨,③前記(2)ウの借入金について,本件申請時における残高は1億3000万円程度であるところ,アパートの入居率は90%以上であって,年間7~800万円程度の返済をすることができ,銀行とも約束を取り交わしており返済の目処は十分に立っている旨などを述べた(乙9の3)。 エ被告は,平成27年12月18日付けで,原告に対し,司法書士登録拒否予告通知書を送付するとともに,法10条2項に基づき,弁明の機会を付与した(乙9の4)。 オ原告は,平成28年1月5日,被告に対し,弁明書を提出した。この弁明書には,①〇県司法書士会は,公判において無許可で録音を行い,原告が司法書士の資格を国に返還すると陳述した旨を同会の全会員に喧伝したことにより,現在も原告に対する誹謗中傷がされている旨,②第2回申請時には,hから,次回は必ず受理することを約束するとして第2回申請を取り下げるよう促された旨などが記載されている。(乙9の5)カ被告は,平成28年1月25日,原告に対し本件処分をしたところ,本件処分に係る登録拒否通知書には, ることを約束するとして第2回申請を取り下げるよう促された旨などが記載されている。(乙9の5)カ被告は,平成28年1月25日,原告に対し本件処分をしたところ,本件処分に係る登録拒否通知書には,本件申請時の面談における原告の陳述内容に加え,第1回申請から本件申請までの経緯を含む事実関係や,第3回申請時における面談の結果等が記載され,これに続いて,登録の拒否の理由が記載されている。その理由の概要は,第3回申請に係る平成21年5月13日付け裁決がされてから6年が経過し,その間,原告はDV被害者の保護を行うNPO法人の事務局長を務めるなどの活動をしているが,司法書士の信用及び品位を害する重大な犯罪である非違行為の影響は,こ のような時の経過と原告が行ってきた行為をもってしても未だ解消されたとはいえないから,原告は法10条1項3号に該当する,というものである。(甲1) 2 争点(法10条1項3号所定の登録拒否事由の有無)について(1) 法は,司法書士の制度を定め,その業務の適正を図ることにより,登記,供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もって国民の権利の保護に寄与することを目的とする(1条)とともに,司法書士は,常に品位を保持し,業務に関する法令及び実務に精通して,公正かつ誠実にその業務を行わなければならない(2条)ものとしている。これは,司法書士が,他人の依頼を受けて,登記又は供託に関する手続について代理し,裁判所,検察庁,法務局又は地方法務局に提出する書類を作成する等の所定の事務を業とするものであり(法3条),これらの事務は国民の重要な財産の保全に関わるものであることから,司法書士に対して業務遂行上の責務を課し,併せて,社会一般の司法書士に対する信頼を担保しようとするものであると解される。 そして, これらの事務は国民の重要な財産の保全に関わるものであることから,司法書士に対して業務遂行上の責務を課し,併せて,社会一般の司法書士に対する信頼を担保しようとするものであると解される。 そして,上記の責務が遵守されるかどうかは,個々の司法書士の能力や人格,職業的な自覚等に負うところが大きいことから,法は,被告が備える司法書士名簿への登録を受けて司法書士となる(8条)ための要件として,所定の資格を取得すること(4条)及び欠格事由のないこと(5条)に加え,10条1項3号に該当しないことを要するものとし,同号にいう「司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき」に該当すると認められる場合には,司法書士名簿への登録は拒否されるべきものとしていると解される。これは,法が要求する業務上の責務に違反して司法書士に対する社会一般の信頼を損なうおそれのある者について,司法書士としての業務を行うことができないものとすることにより,司法書士制度に対する信頼を確保しようとしたものと 解すべきである。 このような法の定めやその趣旨を踏まえると,司法書士名簿への登録申請者について法10条1項3号所定の登録拒否事由(司法書士としての適格性の欠如)が存するか否かの判断に当たっては,当該申請者についての適格性に関わる諸事情を総合的に考慮することが必要となるところ,かつて司法書士であった者が法又は法に基づく命令に違反したとして法務局又は地方法務局の長による業務禁止の懲戒処分(法47条3号)を受け,法5条5号の欠格事由に当たるため法15条1項4号によりその登録を取り消された場合には,その処分の日から3年を経過したため欠格事由が解消し再び登録申請をすることが可能になったとしても,当該者に係る司法書 5号の欠格事由に当たるため法15条1項4号によりその登録を取り消された場合には,その処分の日から3年を経過したため欠格事由が解消し再び登録申請をすることが可能になったとしても,当該者に係る司法書士としての適格性までが当然に復活するものではなく,かえって,その処分の理由とされた法違反行為等による影響が残存していたり,司法書士としての職業的自覚が改善されていないなどの理由によって,法10条1項3号所定の事由が未だ存続している可能性があることも,直ちには否定することができないというべきである。そこで,このような場合においては,①当該行為の内容,性質,重大性,②当該者の処分後の就業状態や生活状況,反省の程度等からみて,その職業的自覚が十分に改善されているか,③当該者に再び司法書士の業務を行わせることにより,司法書士制度に対する社会一般の信頼が損なわれるおそれがなお存在しているかという観点から,当該者につき,司法書士の信用又は品位を害するおそれその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くといえるような事情があるか否かについて検討するのが相当である。 (2)ア本件についてこれをみるに,〇地方法務局長による業務禁止の懲戒処分の理由とされた本件犯罪行為のうち,脅迫罪に該当するとされた行為を除く各行為は,不動産執行手続において配当金を詐取することを図って,共犯者らを債権者に仕立て,この架空の債権者による強制執行の申 立てを可能にするような内容虚偽の仮登記申請書を提出したり公証人に虚偽の申立てをするなどして,登記官に不動産ファイルへの不実の記録をさせ,公証人に公正証書の原本への不実の記載をさせたなどというものであり(前記認定事実(1)イ),司法書士の業務及びこれに関して原告が有する法的な知識経験を悪用したものであって, ルへの不実の記録をさせ,公証人に公正証書の原本への不実の記載をさせたなどというものであり(前記認定事実(1)イ),司法書士の業務及びこれに関して原告が有する法的な知識経験を悪用したものであって,その犯行態様は悪質であり,司法書士の業務の公正性及び誠実性を著しく損ない,司法書士の信用及び品位を害するものである。また,本件犯罪行為のうち脅迫罪に該当するとされた行為についても,知人女性との不貞関係を維持するため,原告が司法書士として有する法的な知識経験を悪用して行われたものであって,司法書士の信用及び品位を害するものといえる。 以上のような本件犯罪行為の内容及び性質に加え,原告が公正証書不実記載罪等の被疑事実により逮捕された事実につき地方紙のほか複数の全国紙でも報道され,そのほとんどにおいて原告がかつて〇県司法書士会会長を務めていたことが報じられ(前記認定事実(1)ア),社会的にも大きく注目されたことにも鑑みると,本件犯罪行為が司法書士制度に対する社会一般の信頼に及ぼした影響は著しいものであったことが明らかである。そして,このような影響については,時の経過とともに薄れる面を有するものであるとしても,原告がかつて〇県司法書士会会長を務め,〇県を中心に名を知られた存在であることや,本件犯罪行為が司法書士の業務及びこれに関する法的な知識経験を悪用したものであり,司法書士制度に対する信頼の根幹に関わるものといえること,また実際にも,上記逮捕の当時における社会的な注目の程度は大きなものであったことなどに照らせば,処分から長期間を経たからといって本件犯罪行為の与えた影響が払拭されたとはいい難く,原告が再び司法書士の業務を行うようになったことが知られることにより,再び社会的に注目される事態に陥る可能性も否定できないといえる。したがって,原告の司法 行為の与えた影響が払拭されたとはいい難く,原告が再び司法書士の業務を行うようになったことが知られることにより,再び社会的に注目される事態に陥る可能性も否定できないといえる。したがって,原告の司法書 士としての業務が再開された場合に,司法書士制度に対する社会一般の信頼が損なわれるおそれは,否定することができない。 イ次に,職業的自覚の改善という点からみても,原告は,本件犯罪行為に及んだ動機について,第2回申請時及び本件申請時においては同情心ないし義侠心によるものである旨を述べる一方,第3回申請時においては,原告自身が騙され又は脅されたためである旨を述べた上,脅迫罪を認定した本件刑事事件判決は真実に反する旨を述べており(前記認定事実(2)),その供述内容には変遷がある上,いずれの供述についても,本件犯罪行為に対する十分な反省と悔悟を表したものとはいい難い。 また,原告は,被告の担当者から第2回申請を取り下げるよう促された経緯等を記載した書面を複数提出している(前記認定事実(3)ア,イ,オ)ところ,これらの書面は,本件犯罪行為に対する反省や信頼の回復に向けた原告の具体的な行動等を明らかにすることよりも,上記担当者の言動の不当性を訴えることに重きを置いたものであって,本件犯罪行為に対する反省や認識の深まりがうかがわれないと評価されてもやむを得ないものといえる。 なお,原告によれば,本件申請時において,NPO法人を通じてDV被害の保護のための活動に関連する業務に従事しつつ,司法書士の業務に関する勉強もしていたとされているが,仮にこのような活動が実際に行われていたとしても,第2回申請時以降,その活動内容に特段の変化も見られないこと(前記認定事実(2)イ,ウ,(3)ウ)からすると,これらの活動が信頼の回復に向けた特筆 ,仮にこのような活動が実際に行われていたとしても,第2回申請時以降,その活動内容に特段の変化も見られないこと(前記認定事実(2)イ,ウ,(3)ウ)からすると,これらの活動が信頼の回復に向けた特筆すべき行動と評価されるものとは直ちにいい難い。 ウ以上のとおり,本件犯罪行為は,かつて〇県司法書士会会長であった原告が,不動産執行手続における配当金を詐取するために司法書士としての業務及びこれに関する法的な知識経験を悪用して行った悪質なもので あって,その社会的影響は著しく,原告の司法書士としての業務が再開された場合に司法書士制度に対する社会一般の信頼が損なわれるおそれも否定できない一方,原告には本件犯罪行為に対する反省や認識の深まりがうかがわれず,信頼の回復に向けた特筆すべき行動も見られないのであるから,その職業的自覚が十分に改善されていると認めることもできないのであって,これらの事情に照らせば,本件処分の時点において本件刑事事件判決から15年以上が経過しており,その間,原告に法令に違反する行為や社会的に非難されるような行為が見られないことや,原告が経営する会社に係る保証債務の支払状況についても司法書士の不正業務につながるような不安定なものとはいえないことなど原告に有利な事情を考慮しても,なお,原告は「司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠く」(法10条1項3号)という登録拒否事由に該当するものというべきであるから,本件処分は適法である(なお,本件処分に係る手続についても,違法な点はうかがわれない。)。 第4 結論以上によれば,本件処分の取消しを求める請求は理由がないからこれを棄却し,被告に対して司法書士名簿への登録手続の義務付けを求める訴えは, 第4 結論以上によれば,本件処分の取消しを求める請求は理由がないからこれを棄却し,被告に対して司法書士名簿への登録手続の義務付けを求める訴えは,行政事件訴訟法37条の3第1項2号の訴訟要件(本件処分が取り消されるべきものであること)を欠くものとして不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清水知恵子 裁判官村松悠史 裁判官和田山弘剛

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