令和4(ネ)281 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年10月27日 東京高等裁判所 その他 東京地方裁判所 平成30(ワ)33181
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判決文本文10,024 文字)

- 1 - 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 被控訴人は、控訴人に対し、330万円及びこれに対する平成30年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 控訴人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、第1、第2審を通じてこれを3分し、その1を被控訴人の、その余を控訴人の負担とする。 3 この判決は、第1項⑴に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、1100万円及びこれに対する平成30年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は、原判決のものを用いる。) 1 本件は、控訴人が、被控訴人が発行した週刊誌である「週刊文春」第60巻第40号(本件雑誌)に掲載された記事(本件記事)によって名誉を毀損されたと主張して、被控訴人に対し、不法行為による損害賠償として、慰謝料1000万円及び弁護士費用相当額100万円の合計1100万円並びにこれに対する本件雑誌の発行日である平成30年10月18日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、控訴人の請求を棄却したところ、これを不服として控訴人が控訴した。 2 前提事実、争点及びこれに関する当事者の主張は、控訴の理由も踏まえて以下のとおり補正するほかは、原判決の「第2 事案の概要等」の2及び3に記 - 2 -載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁18行目の「の読み方」を「が具体的にいかなる事実を摘示する おり補正するほかは、原判決の「第2 事案の概要等」の2及び3に記 - 2 -載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁18行目の「の読み方」を「が具体的にいかなる事実を摘示するものとして理解されるか」に改め、同19行目の「あるものの、」の次に「一般読者の普通の注意と読み方を基準とした場合、」を加える。 ⑵ 原判決4頁8行目の「書類送付状」を「「書類送付状」と題するA4の書面」に改める。 ⑶ 原判決8頁10行目の「税理士法人に対する」を「税理士法人にB’が税務代理を委任したことを証する」に改める。 ⑷ 原判決12頁20行目の「なお、」の次に「Aが控訴人の「右腕」であったか否かの評価は、真実性ないし相当性の立証の対象となる本件記事の摘示事実(本件各記載)の重要な部分ではない。また、」を加える。 ⑸ 原判決13頁7行目の「可能であったというべきであるから、」を「可能であったというべきであり、むしろ、控訴人が、同日、「今日は何、忙しいのよ。」、「時間がない。」などと述べていたことは、同日時間的余裕が十分にない中でBらに対応していたことを裏付けているといえるから、」に改める。 ⑹ 原判決13頁11行目の「冒す必要は」を「冒す動機ないし必要は」に改める。 ⑺ 原判決15頁12行目から13行目にかけての「高くないと」の次に「相談者に」を加える。 ⑻ 原判決16頁18行目の「原告の」の次に「最も信頼し、頼りにしていた部下であったことはないから、」を加える。 ⑼ 原判決16頁19行目末尾に「Aが、福岡県大牟田市を拠点として業務を行っている税理士であることは、公表されているホームページから容易に確認できるところ、かかるAが控訴人の政治活動を支える「右腕」として活動していると理解することは困難であるし、Aは、C政治経済研究 行っている税理士であることは、公表されているホームページから容易に確認できるところ、かかるAが控訴人の政治活動を支える「右腕」として活動していると理解することは困難であるし、Aは、C政治経済研究所の監査役 - 3 -や取締役に就任したことがあるものの、控訴人の日々の政治活動において実際にどのような役割を果たしていたのか等については、何も明らかにされていないから、Aが控訴人の「右腕」ともいうべき存在だったとの本件記事の内容は真実ではない。」を加える。 ⑽ 原判決17頁12行目の「甲8参照)。」の次に「控訴人は、現職の参議院議員であり、多忙を極めているから、スケジュール表は、行動準則として一般の人よりもはるかに内容の正確性及び完全性が要求され、スケジュール表に記載のない予定をこなすなどということはあり得ない。」を加える。 ⑾ 原判決17頁21行目の「面会する」の次に「時間的な」を加え、同行目の「合理的理由」を「緊急性や必要性」に改める。 ⑿ 原判決19頁14行目の「訪れたとの点が」を「訪れたとの点は、参議院議員会館の面会申込書(甲2)や控訴人のスケジュール表(甲8)にその旨の記載がないこと等の客観的な資料と矛盾し、」に改め、同15行目の「被告の記者は」の次に「、Bが同日控訴人と面会したというB及びDの上記各発言が客観的な資料と矛盾し、信用性に欠けることを容易に理解できたはずであるにもかかわらず、」を加える。 ⒀ 原判決19頁20行目から21行目にかけての「尽くすことなく」の次に「、合理的な資料又は根拠もないまま、」を加える。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被控訴人は、控訴人に対し、不法行為による損害賠償として、330万円及びこれに対する本件雑誌の発行日である平成30年10月18日から支払済みまで民法所 。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被控訴人は、控訴人に対し、不法行為による損害賠償として、330万円及びこれに対する本件雑誌の発行日である平成30年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を命じ、控訴人のその余の請求を棄却するのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおり補正するほかは、原判決の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決20頁9行目から10行目にかけての「前記第2の2⑵のとおり、」 - 4 -の次に「一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、」を加える。 ⑵ 原判決21頁8行目の「場合であって、」の次に「新聞記事と比較して、知る権利に奉仕する程度が低く、迅速性も要求されない」を加え、同13行目から14行目にかけての「雑誌等においても」を「雑誌等の記事についても」に改める。 ⑶ 原判決21頁15行目の「本件における」を「本件各記載における」に改める。 ⑷ 原判決21頁26行目の「上記100万円をAから受け取ろうとした上で」を「、Aに連絡して上記100万円を自己の管理する金融機関の口座に振り込むよう命じて受け取ろうとした上で」に改める。 ⑸ 原判決22頁14行目から15行目にかけての「内閣府特命担当大臣等」の次に「の国務大臣」を加える。 ⑹ 原判決22頁22行目の「国務大臣に就任する原告の資質を」を「本件疑惑を報じて控訴人の国務大臣としての資質を広く有権者である国民に」に改める。 ⑺ 原判決23頁5行目末尾に「したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。」を加える。 ⑻ 原判決23頁12行目の「得ていた。また、被告の記者らは、」を「得ており、また、」に、同15行目の「提供されていた。」を「提供さ て、控訴人の上記主張は採用することができない。」を加える。 ⑻ 原判決23頁12行目の「得ていた。また、被告の記者らは、」を「得ており、また、」に、同15行目の「提供されていた。」を「提供されていたことが認められる。」にそれぞれ改める。 ⑼ 原判決23頁17行目の「していたが、」の次に「本件各記載のうち、」を、同18行目の「⑲)については、」の次に「Aについての「控訴人の右腕」であるとの評価が摘示事実①の重要な部分とは直ちに認め難いし、この点を措くとしても、」をそれぞれ加える。 ⑽ 原判決24頁6行目の「ことなどによって」の次に「、概ね」を、同8行目の「Bが」の次に「、B’には別に顧問の会計士がいるにもかかわらず、」 - 5 -を、同9行目の「乙19、」の次に「22、」をそれぞれ加える。 ⑾ 原判決24頁17行目の「青色申告の承認取消処分等への」を「青色申告の承認取消処分等を受けることを免れるための」に改める。 ⑿ 原判決25頁1行目冒頭から同30頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「証拠(乙20、22、23、E供述)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人の記者らは、本件雑誌が発行されるまでの間、B及びDに取材を実施し、両名から、概ね摘示事実②に沿った供述を得たところ、B及びDの供述内容はほぼ一致しており、また、Bの供述は、平成28年の取材時と平成30年の取材時とでほぼ変わることはなく、重要な部分においてほぼ一貫していたことが認められる。 しかし、他方で、証拠(乙20、E供述)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、本件雑誌が発行されるまでの間、控訴人事務所及び控訴人本人に対して取材を実施したところ、控訴人事務所及び控訴人本人は、平成27年9月4日にBが参議院議員会館の控訴人事務所を訪問して控訴人と 訴人は、本件雑誌が発行されるまでの間、控訴人事務所及び控訴人本人に対して取材を実施したところ、控訴人事務所及び控訴人本人は、平成27年9月4日にBが参議院議員会館の控訴人事務所を訪問して控訴人と面談した事実はなく、同日、控訴人が、国税当局への「口利き」の対価であることを認識しながら100万円を受け取ろうとしたり、旧知の国税局長に電話を掛けようとしたりしたなどの事実はない(乙10、20)として、摘示事実②の重要な部分について全面的に否認していたことが認められる。 また、前記アのとおり、X氏(B)が、Aに対し、着手金100万円を支払って自身の会社(B’)の青色申告承認の取消処分に関し国税当局への「口利き」を依頼したとの摘示事実①の重要な部分については、B及びDの供述のほか、本件送付状、本件照会回答書等の客観的な資料が存在することから、被控訴人が真実であると信じたことに相当の理由があると認められるものの、控訴人が、上記の100万円を、Aから自己の管理する金融機関の口座に振り込ませて受け取ろうとしたことや、 - 6 -旧知の国税局長とされる人物に電話を掛けようとしたことなどの摘示事実②の重要な部分については、これに沿う上記のB及びDの供述のほか、本件雑誌の発行後のFの供述(乙18、F供述)が存在するのみであり、その事実を裏付ける供述以外の客観的な証拠はない。 確かに、本件送付状(乙5)には、「秘書・税理士 A」とともに「参議院議員 C」も差出人として掲げられ、「着手金100万円を、至急下記にお願い申し上げます。ご確認後、国税に手配させて頂きます。」との記載はあるものの、本件送付状は、控訴人事務所が使用している文書送付の書面(甲3)とは形式が異なるものであり、書面の外観上、その作成に控訴人本人が関与した形跡はうかがわれないし、 て頂きます。」との記載はあるものの、本件送付状は、控訴人事務所が使用している文書送付の書面(甲3)とは形式が異なるものであり、書面の外観上、その作成に控訴人本人が関与した形跡はうかがわれないし、本件照会回答書(乙6)も、Bから本件送付状に記載された指定金融機関の口座(Aが代表を務める税理士法人の福岡銀行大牟田支店の普通預金口座)に100万円が振り込まれたことを明らかにするのみであり、控訴人が上記100万円の振込要求に関与していることを裏付けるものではない。 また、Aは、Eの取材に対し、Bから100万円を受領した事実は最終的に認めたものの、更に控訴人にその100万円を渡したか否か等については、「そこについてはノーコメントにさせてください」などと述べ(乙20、E供述)、Aが100万円を控訴人に交付したことについて明確な供述をしていない。 上記の点に関し、被控訴人は、平成28年5月にDから情報を得た後、同年7月まで種々の取材を重ねたものの、当時は記事とすることを見送っていたが(被控訴人が自認する事実である。)、平成30年10月に控訴人の入閣が報じられた後に改めて取材を実施したところ、同月11日に、被控訴人の記者の取材により、前記100万円の振込先口座の実在を確認できたことから、Bの発言は信用性が高いと判断されたため、記事とするに至ったものであるなどと主張する。しかし、そのような口 - 7 -座が実在することは、既に平成28年当時から資料として被控訴人が取得していた本件送付書及び本件照会回答書(株式会社八十二銀行作成(ウェブサイト上の表示)のB’の口座からA指定の上記口座に対する100万円の振込履歴を表示した振込・振替状況照会結果の写し(乙6))に照らし、もともと確実性の高い事実であったのであり、改めて振込先口座そのものの存在 示)のB’の口座からA指定の上記口座に対する100万円の振込履歴を表示した振込・振替状況照会結果の写し(乙6))に照らし、もともと確実性の高い事実であったのであり、改めて振込先口座そのものの存在を確認できたといっても上記各資料の信用性を補強するにとどまるものであって、何ら摘示事実②の重要な部分について客観的裏付けとなるものではない。 そして、特に、摘示事実②においては、Bが、平成27年9月4日に控訴人事務所を訪れ、そこで実際に控訴人に面会したという事実が真実であるか否かが重要であると認められるが、上記事実については客観的な裏付けがない。 かえって、本件訴えが提起された後になって判明したことではあるが、控訴人事務所が置かれている参議院議員会館の同日の面会申込書には、Bが同議員会館を訪れた事実は記載されておらず(甲2)、また、同日のBとの面会については控訴人のスケジュール表にも記載がない(甲8)。控訴人は、本件雑誌の発行当時、国務大臣も務めていた極めて多忙な国会議員であり、多数の関係者と調整の上であらかじめ定められたスケジュールに従って行動しており、そのため、スケジュール表は、控訴人の行動準則としての正確性と完全性が求められている(甲7、8、10、弁論の全趣旨)。このことは、週刊誌「週刊文春」の発行者として平素から国会議員や国務大臣等に対する取材活動を行っている被控訴人にとって十分に認識している事実であったにもかかわらず、被控訴人の記者らは、控訴人及び控訴人事務所に対し、「取材のお願い」と題するファクシミリ文書(乙9)により、平成27年9月4日に控訴人が議員会館でBと面会した事実があったか否かを質問したのみで、これに対 - 8 -して、控訴人事務所から「ご質問の日に面談した事実はありません。」との回答がされたの 平成27年9月4日に控訴人が議員会館でBと面会した事実があったか否かを質問したのみで、これに対 - 8 -して、控訴人事務所から「ご質問の日に面談した事実はありません。」との回答がされたのに対し(乙10)、さらに、同日の控訴人の具体的スケジュールを確認するなど、面会の事実の否定についてこれを弾劾するための反面調査を行っていない(弁論の全趣旨)。他方で、控訴人は、同日は、午前10時1分に開議した参議院本会議に出席し、午前10時7分に同会議が散会した後、羽田空港に移動し、午前11時20分同空港発の飛行機に搭乗して佐賀県に向かっているが(甲8ないし11、13、乙21)、同日の状況に関して述べるB及びDの供述を前提とすると、控訴人は、上記の僅かな時間の中で国会議事堂から参議院議員会館内の控訴人事務所に戻り、Bと面会し、Bから事情の説明を受け、その趣旨を理解し、Bの要望に応えるために旧知の国税局長に「口利き」のための電話を掛けたということになるが、本件全証拠によっても、同日、そのような時間的な余裕があったものとは認められない。 以上によれば、控訴人が、平成27年9月4日、控訴人事務所を訪れたBと面会したという摘示事実②の重要な部分について、重大な疑問があり、これについては、被控訴人が、前記のとおり、当日の控訴人の具体的なスケジュールについて更に調査をし、Bらに再調査をするなど、適切に取材をすれば、容易に判明したはずであるにもかかわらず、被控訴人が十分な調査をしなかった結果、本件雑誌の発行当時には明らかにはならなかったということができる。 なお、被控訴人は、控訴人が、同日、Bとの面会において、「今日は何、忙しいのよ。」、「時間がない。」などと発言していたことは、時間的余裕が十分にない中でBに対応していたことを裏付けていると主張する なお、被控訴人は、控訴人が、同日、Bとの面会において、「今日は何、忙しいのよ。」、「時間がない。」などと発言していたことは、時間的余裕が十分にない中でBに対応していたことを裏付けていると主張する。しかし、上記のとおり、控訴人が、同日控訴人事務所を訪れたBと面会したという事実自体について重大な疑問がある上、発言したとする内容も、繁忙であるとの一般的な状況を述べたとするのみで、何ら、 - 9 -当日の具体的な状況との符合を伺わせるものではないから、これにより、控訴人が、Bの面前で上記のような発言をしたことが裏付けられるとする被控訴人の主張は採用することができない。 国会議員である控訴人が、依頼を受けて金銭を受け取った上、B’に対する行政処分(青色申告承認取消処分等)に関し、国税当局に「口利き」をして国会議員等としての影響力を行使しようとする行為は、公職者あっせん利得罪(あっせん利得処罰法1条1項)等の犯罪に該当する可能性のある行為である。しかも、青色申告承認取消処分の判断について、法律上は処分行政庁に裁量が認められるとしても(法人税法127条1項)、実務上は処分基準である事務運営指針に基づいて相当程度機械的に行われていることがうかがえ(乙17)、国税当局に対する「口利き」が奏功してその判断が覆るような可能性は相当に低いと考えられる。そして、このことは、国会議員であり、かつ大蔵省の官僚であった控訴人も知悉していたものと認められる。また、本件記録上、控訴人が、Bから依頼された「口利き」の内容や依頼に至る経緯及び依頼者であるBないしB’の素性等について、A等から詳細を確認した形跡はうかがえない。このような状況下において、控訴人が、Aから事情を聴取することなく、Bの説明のみを聞いて、事情を理解した上で、Bの面前で、Aが受 いしB’の素性等について、A等から詳細を確認した形跡はうかがえない。このような状況下において、控訴人が、Aから事情を聴取することなく、Bの説明のみを聞いて、事情を理解した上で、Bの面前で、Aが受け取った100万円を自己が管理する金融機関の口座に振り込むよう秘書に命じさせたり、あるいは、国税局長に電話を掛けて、特定の納税者であるB’の青色申告承認取消処分に関して「口利き」をしたりすることは、控訴人自身の立場を危うくする行為であるのは明らかであるといえ、控訴人が、Bらの面前で、そのような言動を行うこと自体、不自然かつ不合理な行為というべきである。 また、本件記事が指摘する控訴人の行為が公職者あっせん利得罪等の犯罪に当たり得ることや青色申告承認取消処分に関する「口利き」が奏 - 10 -功し難いことは、本件記事の掲載に当たり、税理士や元特別国税調査官のほか、元検察官等に対する取材を実施していた被控訴人(乙20)も当然に認識していたと認められる。 そして、Bは、控訴人事務所から紹介されたAに対し、国税当局に対する「口利き」をしてもらってB’の青色申告承認取消処分等を免れるために100万円を支払ったにもかかわらず、Aが税理士として行った青色申告承認継続のための国税事務所に対する働きかけは奏功せず、結果的にB’の青色申告承認は取り消されたものであり(乙22、弁論の全趣旨)、控訴人事務所やその主宰者である控訴人について悪感情を有している可能性は否定できないし、Dも、控訴人の後援会の幹事長をわずか半年で解任された者であり(甲13、乙19、D供述、弁論の全趣旨)、控訴人に悪感情を抱いている可能性は否定できない。そうすると、B及びDが、摘示事実①については真実を語りながら、更に100万円の授受や国税当局への「口利き」についての控訴人 D供述、弁論の全趣旨)、控訴人に悪感情を抱いている可能性は否定できない。そうすると、B及びDが、摘示事実①については真実を語りながら、更に100万円の授受や国税当局への「口利き」についての控訴人本人の関与といった摘示事実②については虚偽の供述をする動機がないとまではいえず、被控訴人は、本件雑誌の発行当時、上記のような経緯等を知っていたか、取材によって容易に知り得たと認められる。そうすると、被控訴人としては、上記のとおりBやDの供述が内容自体において不自然かつ不合理であることも踏まえ、その供述の信用性については、慎重に検討する必要があったというべきである。 以上によれば、控訴人が、平成27年9月にX氏(B)と面会し、国税当局への「口利き」の対価であることを認識しながら、Aに自己が管理する金融機関の口座に100万円を振り込ませて受け取ろうとした上で、旧知の国税局長とされる人物(H)に電話を掛けようとしたとの摘示事実②は、真実であるとは認められず、また、被控訴人が、本件記事掲載当時、摘示事実②を真実であると信じたことに相当の理由があると - 11 -も認められない。」⒀ 原判決30頁6行目冒頭から同11行目末尾までを次のとおり改める。 「⑸ 被控訴人の損害賠償義務について以上のとおり、被控訴人は、本件記事を掲載した本件雑誌を発行したことにより、控訴人の社会的評価を低下させたものであり、摘示事実②は真実とは認められず、被控訴人が真実と信じたことにつき相当の理由があるとも認められないから、被控訴人は、控訴人に対し、不法行為による損害賠償義務を負うというべきである。 そして、控訴人は、控訴人の社会的評価を低下させる摘示事実②を掲載した本件雑誌が発行されたことにより、精神的苦痛を被ったと認められるところ による損害賠償義務を負うというべきである。 そして、控訴人は、控訴人の社会的評価を低下させる摘示事実②を掲載した本件雑誌が発行されたことにより、精神的苦痛を被ったと認められるところ、(ア)控訴人が、本件雑誌の発行当時、現職の国会議員であり、国務大臣を務め、当時のG内閣の唯一の女性閣僚として相応の注目と社会的評価を受けていたこと、(イ)摘示事実②は、控訴人が公職者としての犯罪に該当し得る行為を行ったと摘示するとともに、控訴人が金銭を収受して税務行政を歪めようとしたとの印象を与えるものであり、その社会的評価を相当に低下させるものであること、(ウ)被控訴人は、週刊誌(マスメディア)である「週刊文春」の発行者として社会的に大きな影響を与え得る立場にあり、相当の発行部数がある本件雑誌に本件記事を掲載して販売したことにより、摘示事実②に係る情報が社会内に大量に伝播・流布されたと認められること、その他本件に現れた一切の事情を勘案すると、摘示事実②を記載した本件雑誌の発行によって控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては300万円が相当であり、これと相当因果関係のある弁護士費用相当額のうち、被控訴人が負担すべき金額としては、本件事案の性質や本件訴訟の経過、難易度その他一切の事情に鑑み30万円とするのが相当である。」 2 以上の次第で、控訴人の請求は、被控訴人に対し、330万円及びこれに対 - 12 -する本件雑誌の発行日である平成30年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。 よって、これと異なる原判決を異なる限度で変更することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官矢尾和子 主文 よって、これと異なる原判決を異なる限度で変更することとし、主文のとおり判決する。 理由 東京高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官矢尾和子 裁判官古閑裕二 裁判官堀田次郎

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