平成12(行コ)22 一般廃棄物処理業不許可処分取消請求控訴事件(原審・金沢地方裁判所平成10年(行ウ)第6号)

裁判年月日・裁判所
平成14年8月28日 名古屋高等裁判所 金沢支部 警察関係
ファイル
hanrei-pdf-15324.txt

判決文本文7,306 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人が控訴人に対し,平成10年3月19日付けで,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)7条1項に基づき,野々市町内において事業活動に伴って生じる一般廃棄物(し尿・浄化槽汚泥を除く。)の収集・運搬を業として行うことの許可申請をしたところ,控訴人が同年4月2日付けでこれを不許可とする処分(以下「本件不許可処分」という。)をしたことから,被控訴人がその取消しを求めた事案である。 2 原審は,被控訴人の請求を認容したため,これを不服とする控訴人(原審被告)が,本件控訴に及んだ。 3 当事者間に争いのない事実,争点,争点に関する当事者双方の主張は,次項に控訴人の当審における補充主張を付加するほかは,原判決「第二事案の概要」の一,二に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 控訴人の当審における補充主張(1) 廃棄物処理法7条3項1号について一般廃棄物の処理は,改正前の地方自治法2条3項7号,9項及び同別表2の2の10の3に明示されているとおり市町村固有の行政事務の一環として位置づけられており,これを具体化したのが廃棄物処理法である。したがって,市町村が一般廃棄物の処理を履行するにあたっては,自ら直接処理するのが本来的ということができる。しかし,現実には,市町村の清掃用具等の設備及び従業員確保等の財政負担の軽減あるいは経費の有無等から,市町村以外の者に委託し,あるいは民間業者に対して許可することによって履行 的ということができる。しかし,現実には,市町村の清掃用具等の設備及び従業員確保等の財政負担の軽減あるいは経費の有無等から,市町村以外の者に委託し,あるいは民間業者に対して許可することによって履行しているのが実状である。ただし,市町村長が民間業者に一般廃棄物収集・運搬業の許可をしても,それによって市町村が一般廃棄物収集・運搬の責務を免れることはないから,市町村長の許可を受けた民間業者である一般廃棄物収集・運搬業の立場は,一般廃棄物の収集・運搬に責務を負う市町村と上命下服の関係に立つ履行補助者的立場である。 このような理解に立てば,廃棄物処理法7条3項1号の「市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」とは,市町村自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集・運搬のみをいうものではなく,市町村の許可を受けた民間業者による一般廃棄物の収集・運搬も含まれると解すべきである。 仮に同法7条3項1号の「市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」が市町村自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集・運搬のみをいうものと解されるとしても,野々市町の場合には,一般廃棄物の収集・運搬が困難でないと認定判断することを正当化し得る特段の事情が認められる。 すなわち,株式会社石川衛生公社(以下「衛生公社」という。)は,古く昭和37年4月1日から控訴人より委託を受けて家庭系一般廃棄物の収集・運搬を行い,その関係で昭和54年4月1日からは控訴人より事業系一般廃棄物収集・運搬について同法7条1項の許可を受けて,一体的に家庭系・事業系一般廃棄物の収集・運搬を行ってきたのである。かかる事実関係からすれば,衛生公社における事業系一般廃棄物の収集・運搬の実体は限りなく委託に近い。このような沿革からすれば,控訴人において,事業系一般廃棄物の収集・運搬について,衛生公社1社に対し同 る事実関係からすれば,衛生公社における事業系一般廃棄物の収集・運搬の実体は限りなく委託に近い。このような沿革からすれば,控訴人において,事業系一般廃棄物の収集・運搬について,衛生公社1社に対し同法7条1項の許可を与え,衛生公社が事業系一般廃棄物の収集・運搬を支障なしに行っていることは,野々市町においては同法7条3項1号規定の「困難性」は認められないと認定判断することを正当化し得る特段の事情ということができる。 (2) 廃棄物処理法7条3項2号についてア複数業者に一般廃棄物収集・運搬業の許可を与えることにより,事業系一般廃棄物の量が増加し,深刻な事態が生じることになる。 なぜなら,許可業者が増えた場合,過当競争により料金の値下げを招き,事業所の中には,手数料さえ払えば許可業者がごみを処分してくれるとの安易な考えから,控訴人が事業所に求めるごみ搬出抑制措置(ごみの分別,資源化,減量化)に協力せず,その結果,中間処理施設である松任石川環境クリーンセンター(野々市町,松任市その他周辺の町村で設立した「松任石川広域事務組合」が設置した中間処理施設であり,以下「クリーンセンター」という。)へのごみの搬入量が増大して同施設の処理能力を超える事態が生じ,同時に,ごみ質の低下,施設周辺の環境悪化が発生することになるからである。また,クリーンセンターに域外の廃棄物が搬入されるおそれもあるからである。現に神奈川県川崎市や,羽咋郡広域事務組合など,許可業者を増やした市町村,広域事務組合は,軒並み事業系一般廃棄物が急増している。 イ廃棄物処理法7条3項2号にいう「一般廃棄物処理計画」は,基本計画と実施計画の双方をいう。野々市町の基本計画は,ごみ処理基本計画(乙1号証)のうち20頁ないし30頁(「第4章ごみ処理基本計画の検討」の部分。以下「基本計画」とい 一般廃棄物処理計画」は,基本計画と実施計画の双方をいう。野々市町の基本計画は,ごみ処理基本計画(乙1号証)のうち20頁ないし30頁(「第4章ごみ処理基本計画の検討」の部分。以下「基本計画」という。)であり,平成6年11月に策定され,平成20年度を最終年度とした計画である。野々市町が,一般廃棄物の処理において最も重要視しているのは,一般廃棄物の処理の効率化と資源の有効利用,一般廃棄物の減量化である。これについて,同法2条の3は,国民に対し,廃棄物の排出の抑制,再生利用,分別排出,自己処分,減量についての市町村への協力を義務付けている。また,同法4条は,市町村に対し,一般廃棄物処理の減量に関し,住民の自主活動の促進を図らなければならないと定めている。 これを踏まえ,野々市町では,基本計画第4章第1節1項において,「ごみ処理基本姿勢」を定め,資源の有効利用で一般廃棄物処理に対処し,一般廃棄物処理にあたっては経済的で効率的な運営を行うことを基本として,収集・運搬,中間処理,最終処分の各処理体制を長期的展望のもとに相互によく整合のとれた体制として計画的に整備していくと定めている。基本計画は,第4章第1節2項「基本方針」において,①適正処理の促進として,「廃棄物の発生から最終処分まで一貫した廃棄物の適正処理を行うため,収集計画に基づき計画的な収集・運搬を行う。」と定め,②生活環境の保全として,一般廃棄物の速やかな収集・運搬,減量化をすることを定め,③資源化と有効利用の促進において,省資源,省エネルギーを図るための一般廃棄物の減量化,資源化,有効利用をすることを定め,その他,④で処理施設の近代化,高度化について,⑤で一般廃棄物の適正処理,減量化,資源化を進めるための住民に対する啓発について,⑥で経済的で効率の良い一般廃棄物処理体系の確立につい することを定め,その他,④で処理施設の近代化,高度化について,⑤で一般廃棄物の適正処理,減量化,資源化を進めるための住民に対する啓発について,⑥で経済的で効率の良い一般廃棄物処理体系の確立についてそれぞれ定めている。そして基本計画第4章第4節1項において,一般廃棄物の「排出抑制・再資源化計画」を定め,(1)で「住民・事業者の協力の基に排出源での抑制策,ごみの減量化・資源化のための施設整備を検討するとともに,既存処理設備や最終処分場の延命化に努めるものとする。特に排出源での抑制に向けて,住民・事業者に対し,ごみ処理の現状を知らせ,考え,行動してもらうために,具体的なごみの減量の目標と方策を示していくものとする。」と定めて,減量化・資源化を強く進めていくことを目標としている。 野々市町の一般廃棄物処理の基本計画が以上のとおりであり,事業系一般廃棄物収集・運搬業の許可業者が増えると上記アで述べたとおり事業系一般廃棄物は明らかに増加することからすると,控訴人に対する被控訴人の事業系一般廃棄物の収集・運搬業の許可申請は,基本計画第4章第1節1項,2項,第4章第4節1項(1)に適合しないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件不許可処分はこれを取り消すべきものと判断するが,その理由は,次項に控訴人の当審における補充主張に対する当裁判所の判断を付加するほかは,原判決「第三争点に対する判断」の一ないし三に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の補充主張に対する判断(1) 補充主張(1)についてア控訴人が衛生公社に廃棄物処理法7条1項の許可を与えているということは,野々市町による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること(同条3項1号)を自ら認めていることであり,衛生公社の業務により野々市町における一般廃棄物の 棄物処理法7条1項の許可を与えているということは,野々市町による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること(同条3項1号)を自ら認めていることであり,衛生公社の業務により野々市町における一般廃棄物の収集・運搬が支障なく行われているからといって,野々市町自身による一般廃棄物の収集・運搬が困難であることには変わりがない。同条3項1号の「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること」との要件は,当該市町村自身の意思と能力によって判断されるものであって,許可業者の存在を含めて判断されるべきものではない。このことは,条文の文理及び趣旨に照らし明らかであり,この点に関する控訴人の主張は失当である。 イまた,控訴人は,野々市町においては,古くから衛生公社1社に許可を与え,一般廃棄物の収集・運搬が支障なく行われてきたのであるから,その実体は限りなく委託に近く,一般廃棄物の収集・運搬が困難でないと認定判断することを正当化し得る特段の事情がある旨主張する。しかし,委託と許可は,法形式及び法的効果を異にするのであり,いやしくも行政庁である控訴人が,委託によらず,許可という法形式を採用しながら,その許可が限りなく委託に近いなどと主張することは,法治主義の原則からしても,許されることではない。したがって,控訴人の上記主張も採用することができない。 (2) 補充主張(2)についてア控訴人は,事業系一般廃棄物の収集・運搬の許可業者を複数にすれば,過当競争を招き,一般廃棄物がリサイクルされないままに事業所から排出され,結果として一般廃棄物が増加し,その処理を行う中間処理施設(クリーンセンター)の能力の限界を越える事態が予想されるが,これは,一般廃棄物の減量化,再資源化,処理施設の延命化などを定める野々市町の「一般廃棄物処理計画」に反する旨主張する。 う中間処理施設(クリーンセンター)の能力の限界を越える事態が予想されるが,これは,一般廃棄物の減量化,再資源化,処理施設の延命化などを定める野々市町の「一般廃棄物処理計画」に反する旨主張する。 イしかしながら,事業系一般廃棄物の収集・運搬の許可業者を複数にすれば,一般廃棄物が増加するとの事実は,本件全証拠によるも,これを認めるに足りないというべきである。 (ア) 廃棄物処理法は,事業系一般廃棄物の処理について,3条1項で「事業者は,その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と規定している。他方,一般廃棄物の処理は,市町村の固有事務であるから,市町村としては,事業者がその事業活動から生じた一般廃棄物を処理施設に搬入してくれば,これを有料とし,また,分別,再生利用化などの協力を要請することができるとしても(3条2項,3項),基本的には,これを受け入れなければならない(乙45号証)。そして,乙59号証(別件訴訟の証人Aの尋問調書)にもあるように,一般廃棄物が増加するかどうかの主要な要因は,そのときの経済状況,事業所の数,資源リサイクルの状況などであることからすると,同法7条1項の収集・運搬の許可業者の数が一般廃棄物の増加と直接結び付くとは,通常考え難いことである。 (イ) 控訴人は,川崎市や輪島市などの例を引用して,許可業者の増加が廃棄物の増加に繋がると主張するが,乙41号証の1によれば,野々市町では,許可業者は1社であるにもかかわらず,事業系一般廃棄物は,平成10年度から平成12年度にかけて増加の傾向にあることが認められる。また,乙54,55号証によれば,東京都のように多数の許可業者が存在するのに,ここ数年,ゴミの排出量が減少している都市もあることが認められ,控訴人が引用する都市の例をもって,控 あることが認められる。また,乙54,55号証によれば,東京都のように多数の許可業者が存在するのに,ここ数年,ゴミの排出量が減少している都市もあることが認められ,控訴人が引用する都市の例をもって,控訴人の主張が裏付けられたということはできない。むしろ,一般的にいえば,ゴミの減量化は,全国の自治体にとって,その対策に苦慮する行政上の最重要課題の一つであるから,仮に,控訴人の主張するように,複数の業者に収集・運搬の許可を与えることが一般廃棄物(ゴミ)の減量化に反するというのであれば,全国の市町村はこぞって可能な限り許可業者の数を1社に限定しようとする筈である。しかし,弁論の全趣旨によれば,同法7条1項の許可を複数の業者に与えている市町村は全国に多数存在していることが窺われ,乙30,46ないし48,51号証によれば,石川県においても,野々市町より一般廃棄物の排出量の多い金沢市や小松市などはもとより,排出量の少ない羽咋市その他の町でも複数の業者に許可を与えており,その中には,野々市町が所属する松任石川広域事務組合(一般廃棄物処理のため,松任市及び石川郡3町5村が設立した組合で,以下「本件事務組合」という。)の組合員である美川町も含まれていることが認められる。また,一般廃棄物収集・運搬業の許可についてのアンケート調査の結果報告(乙56号証)によれば,回答をした都市(23市)から幾つかの問題点が指摘されているが,少なくとも,複数の業者に収集・運搬の許可を与えることがゴミの減量化の阻害要因となっているとの指摘はされていないことが認められる。このようなことからすると,控訴人の主張は,必ずしも一般的通用性を有するとは認められない。 (ウ) 控訴人は,複数の業者に許可を与えれば,過当競争を招き,一般廃棄物の分別化,リサイクル化が阻害されるともに,不法投棄, すると,控訴人の主張は,必ずしも一般的通用性を有するとは認められない。 (ウ) 控訴人は,複数の業者に許可を与えれば,過当競争を招き,一般廃棄物の分別化,リサイクル化が阻害されるともに,不法投棄,他地区の廃棄物の不法搬入などが生じるなどと主張する。なるほど,競争原理が働けば,利点はあるものの,弊害の生じる可能性も,一概にこれを否定することはできない。しかし,一般廃棄物の分別化,リサイクル化は,基本的には,事業者と行政の責任であって,業者間の過当競争の故をもって,それが阻害されるなどと主張することは,責任の転嫁であり,首肯することができない。また,市町村長は,抜き打ち検査などから業者に法令違反の事実が認められれば,許可を取り消し(同法7条の3),又は許可を更新しない(同法7条3項4号)こともできるのであるから,この点からも,控訴人の主張に合理性があるとは認められない。 なお,控訴人は,野々市町が所属する本件事務組合が設置した中間処理施設(クリーンセンター)の運営や処理能力のことを問題にしているが,前記のとおり,同組合の一員である美川町は複数の業者に収集・運搬業の許可を与えているところ,そのことにより,中間処理施設(クリーンセンター)の運営その他に支障が生じたことは,何ら主張立証されていないのであって,この点に関する控訴人の主張は根拠を欠くものといわなければならない。 (エ) 以上のことからすると,控訴人の主張に添う当審証人Bの証言,乙57,59号証などをもってしても,同法7条1項の許可を複数の業者に与えることが事業系一般廃棄物の減量化,再資源化の阻害要因になるとは認め難く,これを前提とする控訴人の主張は,採用するに由ないものである。 ウなお,控訴人は,野々市町においては,事業系一般廃棄物の収集・運搬の業務は控訴人が許可した衛生公社をも の阻害要因になるとは認め難く,これを前提とする控訴人の主張は,採用するに由ないものである。 ウなお,控訴人は,野々市町においては,事業系一般廃棄物の収集・運搬の業務は控訴人が許可した衛生公社をもって充てる旨を「一般廃棄物処理計画」で明らかにしているので,他の業者にその許可を与えることは,「一般廃棄物処理計画」に適合しないと主張するが,その主張に理由のないことは,既に引用した原判決の説示するとおりである。 3 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫裁判官榊原信次裁判官渡邉和義

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る