平成13(ワ)2158 預託金返還請求

裁判年月日・裁判所
平成14年6月14日 札幌地方裁判所
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判決文本文14,896 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,金618万7000円及びこれに対する平成13年7月28日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,金640万円及びこれに対する平成13年7月28日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,被告が経営するゴルフクラブの会員であった原告が,入会の際に保証金として預託した金員の据置期間が経過したとして,預託金640万円の返還を請求したのに対し,被告が,据置期間は延長されており,まだ据置期間が経過していないこと,仮に据置期間が経過しているとしても,年会費等の反対債権があり,相殺によって一部消滅することを主張して争っている事案である。 1 前提となる事実等(争いのない事実)(1) 被告(平成3年4月17日に旧商号「株式会社A」から商号変更した。)は,Bゴルフ倶楽部(現名称は「Cゴルフコース」という。以下「本件ゴルフクラブ」という。)を経営している(なお,ゴルフ会員権を取得した者によって組織されるゴルフクラブが存在するが,財産や運営の点で独立の権利義務主体となり得る実質を有しておらず,会員の入会や退会等のゴルフ場の一定の運営及び管理について,被告の下で活動をする団体にすぎないものであったと解されることから,以下,当該ゴルフクラブの諸活動を含めて本件ゴルフクラブによるものと表現する。)。 (2) 原告は,昭和63年10月31日,被告との間で,本件ゴルフクラブに入会する旨の預託金制ゴルフ会員契約(以下「本件会員契約」という。)を締結し,同日,被告に対し,入会金とし 表現する。)。 (2) 原告は,昭和63年10月31日,被告との間で,本件ゴルフクラブに入会する旨の預託金制ゴルフ会員契約(以下「本件会員契約」という。)を締結し,同日,被告に対し,入会金として160万円,保証金(以下「預託金」という。)640万円,合計800万円を支払って,本件ゴルフクラブの会員権を取得した。 (3) 本件ゴルフクラブは,平成3年6月20日までに正式開場した。 (4) 本件ゴルフクラブの当初の会則(以下「旧会則」という。)では,預託金について,本件ゴルフクラブが正式開場した後,満10年間据え置き,その後は,退会の際,預託者の請求により被告取締役会又は本件ゴルフクラブ理事会の承認を得て返還する旨の規定を置いていた。 本件ゴルフクラブの理事会は,平成11年10月4日に,旧会則について,預託金の据置期間の延長が可能な場合として,従前定められていた「天災地変その他不可抗力の事由がある場合」に,「経済情勢の変化」及び「預託金の返還を承認することによりクラブ運営が経済上困難となって,全会員に対する平等な取扱いが不可能となり,会員のプレー権が保護されないおそれのある場合」を加える旨の会則変更を行うこと,これに基づいて,預託金の据置期間を平成13年6月21日から10年間延長し,平成23年6月20日までとすること等を内容とする決議を行った(以下「本件理事会決議」という。)。そして,本件理事会決議については,平成12年12月15日に開催された本件ゴルフクラブの会員総会において,会員総数1311名のうち946名が賛成の意を表明した(以下「本件総会決議」という。)。 (5) 原告は,旧会則による預託金の据置期間の経過後である平成13年7月24日,被告に対し,内容証明郵便をもって,本件ゴルフクラブの退会を申し出るとともに,預託金の 「本件総会決議」という。)。 (5) 原告は,旧会則による預託金の据置期間の経過後である平成13年7月24日,被告に対し,内容証明郵便をもって,本件ゴルフクラブの退会を申し出るとともに,預託金の返還を請求し,この内容証明郵便は,同月27日に被告に到達した。 (6) 被告は,預託金の据置期間が経過したとされる場合には,原告に対する倶楽部振興金19万2000円(預託金の3パーセント)及び平成13年度分の会費2万1000円の支払請求権を自働債権とし,本件の原告から被告に対する預託金返還請求権を受働債権として,対当額で相殺する旨を主張し,平成14年2月21日の本件弁論準備手続期日において,その意思表示をした。 2 争点預託金据置期間延長の有効性 3 争点についての当事者の主張(被告)(1) 会員総会の規定の存在ア旧会則第19条は「会員総会は理事会において必要と認める場合に開き,理事長がこれを招集し議長となる。」と規定している。これは,ゴルフ場の運営にかかわる重要事項については,会員全員にかかわるので,会員の一部(理事)により構成された理事会ではなく,会員全員の決議によるのが適切であることから規定されたものである。 同規定は,旧会則第4章「役員及び理事会」の中に規定されており,理事会の決議事項は本件ゴルフクラブの運営に必要な事項全般にわたっているから,理事会において,本件ゴルフクラブの運営上の重要事項であって全会員の意見を聞く必要があると判断した場合に開催するものとして規定されたことは明らかである。 会員総会は会議体であるから,多数決の原則に立ち,多数の意思をもって全体の意思とする。 すなわち,同規定は,本件ゴルフクラブ運営上の重要事項については,全会員により構成される会員総会の多数決決議により意思決定を行い,その意思決定をもっ 則に立ち,多数の意思をもって全体の意思とする。 すなわち,同規定は,本件ゴルフクラブ運営上の重要事項については,全会員により構成される会員総会の多数決決議により意思決定を行い,その意思決定をもって,会員全体の意思とすることを定めた規定である。 イ本件ゴルフクラブの理事会は,会員総会に関する前記規定の趣旨に従って,預託金据置期間を延長する旨の本件延長決議の是非を問うために会員総会を招集することとし,旧会則に会員総会の手続規定を追加した上で,会員総会の招集を決議した。 したがって,原告が本件総会決議に反対であっても,会員総会の規定を含む旧会則を承認のうえ入会した以上,会員総会の多数決決議に従う義務がある。 (2)本件総会決議の正当性ア手続的な有効性(ア) 被告は,本件総会決議を行った会員総会の招集に至る前に,会員説明会,会員代表による会員権問題対策委員会における会員の意見聴取,理事会における会員の意見聴取,全会員に対する会員権償還問題に関する理事会決議書の送付,反対会員の意見聴取と説得など,会員の意向をくみ上げる様々な努力を行い,会員の意思を確認し,7割を超える会員がプレー継続のため据置期間の延長を望んでいることを把握した上で,会員の代表機関である会員総会の判断を仰ぐ手続をとったもので,被告の一方的な意思により会員総会を強行したものではない。 そして,会員総会の招集については,全会員に会員総会の議題を示した招集通知を行いその賛否を明示する書式の委任状を送付して会員総会への出席又は委任状出席を求め,委任状未提出の会員にはその提出を行うよう連絡をとり,全会員の意思を確認する手続がとられた。 (イ) 本件理事会決議に際し,過半数の会員が据置期間の延長の決議の取消を請求する場合には,同決議は無効となる旨規定された。 イ本件総会決 よう連絡をとり,全会員の意思を確認する手続がとられた。 (イ) 本件理事会決議に際し,過半数の会員が据置期間の延長の決議の取消を請求する場合には,同決議は無効となる旨規定された。 イ本件総会決議当時の被告の財務状況等本件理事会決議のころ,本件ゴルフクラブの会員権相場は30万円前後に著しく下落していたが,預託金額面は400万円から2400万円であるから,据置期間を延長しなければ,総額約76億円の預託金返還請求が集中することは明白であった。他方,直近の営業利益は920万円であったから,営業利益の中で預託金を返済できるのは最高2口で,据置期間を延長せずに預託金を返済すればたちまち本件ゴルフクラブの運営費用の不足を生じる財政状況にあった。 ウ代替措置被告は,据置期間の延長に同意した会員に対しては,延長に伴う不利益を減少させる方策として,以下の代替措置をとった。 (ア) 会員権の分割会員権の分割は,投下資本の回収を望む会員に対し,会員数の増加により他の会員の優先的施設利用権の侵害にならない口数を限度として,会員資格を分割し,優先的施設利用権を無償で与え,譲渡換金により少しでもその回収額を高めようとしたものである。 実際に分割を行った会員733名のうち,譲渡による名義書換の手続がとられた分割後の会員権は546口に及んだ。 (イ)年会費の値下げ年会費を値下げし,北海道内の会員は3万5000円を2万円に,道外の会員は2万円を1万円に減額した。 (ウ)名義書換料の値下げ名義書換料を50万円から20万円に値下げし,分割後の会員権の換金を促進するとともに,譲渡の際の会員権の市場価格を高めた。 (エ)プレー券等の交付プレー料金の支払に代えることができる4万円相当のプレー券,もしくは,2万円相当の商品券を発行し,据置期間の延長に同意した会員に交付 に,譲渡の際の会員権の市場価格を高めた。 (エ)プレー券等の交付プレー料金の支払に代えることができる4万円相当のプレー券,もしくは,2万円相当の商品券を発行し,据置期間の延長に同意した会員に交付した。 (オ)倶楽部振興金の廃止旧会則には,預託金の3パーセントに相当する金員を据置期間満了時に預託金から充当し,あるいは,預託金償還時に控除して,倶楽部振興金を支払う旨規定されていたが,据置期間の延長に同意した会員に対しては,倶楽部振興金の徴収を行わないこととした。 エ優先的施設利用権の優先預託金制ゴルフ場においては,ゴルフ場の用地買収,コース造成資金は会員から支払われる預託金によって調達されるのであるから,プレー権こそ会員契約の基本的部分であり,預託金返還請求権の行使がゴルフ場経営会社に対して与える負担の大きい場合には,他の会員に対する施設保持義務の履行のため一会員に対する預託金返還債務は否定されることになる。 被告の場合も,預託金は全額施設建設のため消費され,本件理事会決議の時点において,ほとんど預託金返還原資がない以上,会員の預託金返還請求に応じることは他の会員に対する施設保持義務の履行ができなくなる状況であった。 そのため,本件ゴルフクラブの理事会は,優先的施設利用権を優先したものである。 オ据置期間延長後の預託金返還可能性被告は,以下のような売上増額等の努力を行っており,平成13年度は1100万円の黒字となり,平成14年度も黒字を見込んでいる。このような売上の増額及び会員募集によって平成23年には原告に対して預託金を返還することができる。 (ア) 平日会員の募集平成13年度から「ウイークデークラブ」という呼称により,入会金1万円(預託金なし)で平日にメンバー料金で利用できる会員を募集したが,平成14年4月20日現在,1 できる。 (ア) 平日会員の募集平成13年度から「ウイークデークラブ」という呼称により,入会金1万円(預託金なし)で平日にメンバー料金で利用できる会員を募集したが,平成14年4月20日現在,100名の者が同クラブに登録しており,平日の入場者数を増加させることができた。 (イ) リピーターの確保被告はリピーター確保のため,コンペの幹事を一人一人訪問してコンペの再度開催を依頼し,コンペ開催により,1000組(3500名)を来場させることができた。またダイレクトメールや割引券の発行などを通じてリピーターを誘致する営業活動を強化している。 (ウ) 道外客の誘致旅行各社との連携を強めた結果,昨年は25組約100名の来場があった。平成14年7月には,本件ゴルフクラブから車で20分のところに収容者300名の大規模ホテルがオープンするため,被告は,その宿泊客を対象に加え,さらに積極的に宣伝活動を行い,今後3年間に400組1500名を確保する計画を立てている。 (エ) 経費節減コース管理の人件費のうち,多く発生していた残業について,残業時間が発生しない勤務体制をとり,またキャディの給与体系の見直しを図ったことにより,平成13年度は,約250万円を削減した。 また,施設管理のボイラー,ハウス内清掃等について外注していたものを自社で行うことに切り替え,約300万円を節減した。 さらに,現在5名の通年雇用社員を3名に減少させた。 カ預託金の据置期間延長に対する承諾状況会員総会において,据置期間延長の本件理事会決議に関する諾否について投票を行い,会員数では946名(72.2パーセント)の賛成を得た。預託金額で算定しても,賛成の会員の預託金額の合計は,全会員の預託金総額の64.1パーセントとなる。 延長についての同意書を提出した会員は,平成14年4月 946名(72.2パーセント)の賛成を得た。預託金額で算定しても,賛成の会員の預託金額の合計は,全会員の預託金総額の64.1パーセントとなる。 延長についての同意書を提出した会員は,平成14年4月19日現在,会員数では873名(78.7パーセント)であり,これを預託金額で算定すると,同意書を提出した会員の預託金額の合計は,全会員の預託金総額の76.7パーセントに及ぶ。 (原告)(1) 被告の主張(1)アのうち,旧会則19条において,会員総会に関する規定が設けられていることは認めるが,その余の主張及びイの主張は否認ないし争う。 本件ゴルフクラブに関する被告と会員との間の契約内容は,一般の契約同様,契約時に判断され,原告と被告間の契約内容は入会時の規約に基づくのであり,被告の一方的な事情による契約内容の変更は許されない。原告が本件ゴルフクラブに入会した時点で,預託金について定められていたのは旧会則7条2項のみであり,会員総会に関する規定は,その文言や定められた経緯からしても,単に会員の意見を聞く場として会員総会を定めたものに過ぎず,預託金について会員を拘束する決議を行う場を設定したものではない。したがって,原告が,本件総会決議に拘束される理由はない。そして,本件理事会決議における預託金の据置期間延長は,旧会則7条2項において定められた預託金の据置期間延長事由に該当しない事由に基づいて行われたものであり,本件理事会決議が,原告を拘束することもない。 (2) 被告の主張(2)は不知。 被告の主張する諸事情があることによって,原告について,預託金の据置期間延長が有効となるものではない。 第3 争点に対する判断 1 前提となる事実等,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (1) 被告は,預託金 の据置期間延長が有効となるものではない。 第3 争点に対する判断 1 前提となる事実等,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (1) 被告は,預託金制のゴルフクラブである本件ゴルフクラブの経営等を目的とする会社であり,原告は,昭和63年10月31日,被告との間で,本件ゴルフクラブに入会する旨の本件会員契約を締結し,同日,被告に対し,入会金として160万円,預託金として640万円,合計800万円を支払って,本件ゴルフクラブの会員権を取得した。 (2) 原告が本件会員契約を締結した際の本件ゴルフクラブの会則である旧会則は,本件ゴルフクラブ会員の募集にあたって被告によって作成されたものであるが,預託金について,本件ゴルフクラブが正式開場した後,満10年間の据置期間をおいた上で,退会の際の預託者の請求により,被告取締役会又は本件ゴルフクラブ理事会の承認を得て返還されること,ただし,天災地変その他不可抗力の事由が発生した場合は,被告取締役会又は本件ゴルフクラブ理事会の決議により据置期間を延長することができる旨を定めるほか,役員及び理事会に関する規定を置く章の中に,理事会において必要と認める場合には会員総会を開き,理事長がこれを招集し議長となる旨を定めていた。 (3) 本件ゴルフクラブへの入会にあたっては,本件ゴルフクラブの会則が交付され,被告の担当者等により,本件ゴルフクラブの会員の権利義務は会則に基づくものであることが説明された。その際,会員総会がどのような場合に開かれるかといった,会員総会に関する説明は特に行われなかった。 (4) 本件ゴルフクラブは,平成3年6月20日までに正式開場した。 (5) 本件ゴルフクラブの会員によって支払われた預託金は,本件ゴルフクラブのゴルフコース,クラブ 説明は特に行われなかった。 (4) 本件ゴルフクラブは,平成3年6月20日までに正式開場した。 (5) 本件ゴルフクラブの会員によって支払われた預託金は,本件ゴルフクラブのゴルフコース,クラブハウス等の諸施設の建設,維持に使用されており,被告において,平成11年8月ころには,平成13年6月20日の据置期間満了後に予想される預託金の返還請求に応じる余力がないことが明らかとなっていた。また,本件ゴルフクラブの理事や他の会員からも,預託金返還請求への対応如何についての問題提起がされるようになっていた。 (6) そこで,被告は,会員説明会を開催して,預託金返還に関する被告の現状を説明するとともに,会員の意見を聞くことを企画した。そして,本件ゴルフクラブの理事会とも協議をして,①預託金の据置期間を10年間延長すること,②会員権を分割すること,③本件ゴルフクラブの運営を被告から切り離すこと等を内容とする対策案を作成し,平成11年8月9日付の文書で,同月20日に開催する会員説明会の案内を会員に送付した。 会員説明会は,146名の会員が出席し,3時間半にわたって行われ,被告からの本件ゴルフクラブ運営の現状の説明,会員との間の質疑応答等が実施された。そして,対策委員会を設置して,引き続き預託金の償還問題の対応を話し合うことが決められた。 (7) 対策委員会(C預託金償還問題対策委員会との名称が付された。以下「対策委員会」という。)は,自薦及び他薦により,15名の会員が委員となり,4回の協議を経て,平成11年10月4日,以下の内容の答申を本件ゴルフクラブの理事会に提出した。 ① 預託金の据置期間を平成13年6月21日からさらに10年間延長する。 ② 会員権を2~4口まで分割する。 ③ 預託金に関する会則を一部改定する。 ④ 本件ゴルフクラブの運 ラブの理事会に提出した。 ① 預託金の据置期間を平成13年6月21日からさらに10年間延長する。 ② 会員権を2~4口まで分割する。 ③ 預託金に関する会則を一部改定する。 ④ 本件ゴルフクラブの運営管理会社をすみやかに発足させる。 ⑤ 本件ゴルフクラブの適切な運営を期するため,会員による運営委員会を特別委員会として設置する。 (8) 本件ゴルフクラブの理事会は,平成11年10月4日,対策委員会の答申の内容に従った本件理事会決議を行った。本件理事会決議の具体的な内容は,以下のとおりであった。 ① 預託金に関する会則規定について,預託金の返還を承認することによりクラブ運営が経済上困難となって全会員に対する平等な取扱いが不可能となり,会員のプレー権が保護されないおそれのある場合にも据置期間の延長ができること,それを踏まえて,預託金の据置期間を平成23年6月20日までとすること,全会員の過半数が据置期間延長決議の取消を請求した場合には,延長決議は取り消されて無効となることを内容とする変更を行う。 ② 据置期間延長の代償措置として,会員権を2口から4口までに分割することを可能とし,分割の場合の名義書換料を無料とすること,年会費及び名義書換料を値下げすることの措置をとる。 ③ 本件ゴルフクラブの運営管理会社として株式会社Dを設立させ,株式の51パーセント以上を本件ゴルフクラブの会員が保有する。 ④ 本件ゴルフクラブの適切な運営を期すために,会員による「E運営委員会」を特別委員会として設置する。 なお,会員総会に関する規定は,旧会則における規定のまま維持された。 また,このほか,預託金据置期間延長の代償措置の一環として,4万円相当のプレー券,もしくは2万円相当の商品券が発行された。 (9) 被告は,平成11年10月中旬,全会員に対し,本件理事会決議に た。 また,このほか,預託金据置期間延長の代償措置の一環として,4万円相当のプレー券,もしくは2万円相当の商品券が発行された。 (9) 被告は,平成11年10月中旬,全会員に対し,本件理事会決議について,同意するか否かを問う同意書を送付した。平成12年8月18日までに,全会員の71.6パーセントに相当する795名の会員が本件理事会決議を同意する旨の回答を提出したが,原告は同意書を提出しなかった。 (10) 本件ゴルフクラブの理事会は,平成12年5月16日に,会員総会において理事を選出すること,会員権分割について規定上明確にすることのために,会則の改正を行い,会員総会の構成,過半数で決議する旨の決議方法及び決議事項に関する規定を新たに設けた。そして,同年8月17日には,本件理事会決議の諾否を会員総会に問うことを決定した。これらの内容は,会員に文書で報告された。 (11) 平成12年10月20日,本件ゴルフクラブの理事長は,第1回の会員総会を同年12月15日に開催し,理事等の選任及び本件理事会決議の諾否を議案とする旨の招集通知を会員に送付した。 (12) 平成12年12月15日,本件ゴルフクラブの第1回会員総会が開催され,995口の会員数の出席があり(内委任状出席の会員数は858口),本件理事会決議について,賛成946口,反対47口,棄権2口との結果となった。これを預託金の額や割合でみると,賛成が全体の64.1パーセントとなる。この内容は,平成13年1月に,会員に報告された。 なお,平成14年4月19日の時点では,本件理事会決議に同意する旨の同意書を提出した会員は,会員数の割合によると78.7パーセント,預託金額の割合によると76.7パーセントとなっている。 (13) 平成11年3月末時点での被告の財産状況をみると,資産のほとん 旨の同意書を提出した会員は,会員数の割合によると78.7パーセント,預託金額の割合によると76.7パーセントとなっている。 (13) 平成11年3月末時点での被告の財産状況をみると,資産のほとんどが本件ゴルフクラブのゴルフコース,クラブハウス等の固定資産となっているが,それらは,不動産登記簿上,被告の代表者が代表取締役を務めるF企業株式会社の保有となっている。負債としては,預託金返還債務があり,総額で75億9300万円となっており,平成10年度の当期利益は,920万9000円であった。 (14) 本件ゴルフクラブの会員権相場は,平成12年8月から平成13年9月ころまで,30万円前後で推移していた。 (15) 原告は,旧会則による預託金の据置期間が経過しても預託金の返還がされないことを危惧して,平成12年1月25日ころ,被告に対し,本件ゴルフクラブの退会の申出をなすことを条件に,平成13年6月20日以降の預託金の返還を求めて訴訟を提起した。この訴訟(以下「前訴」という。)は同年11月20日まで審理が行われたが,被告は,本件理事会決議に同意しない会員に対して据置期間の延長を主張する意図はないことを主張し,その結果,平成13年1月17日,将来の給付の訴えの必要性が認められないとして,原告の訴えを却下する旨の判決がされた。 (16) 原告は,旧会則による預託金据置期間の経過後である平成13年7月24日,被告に対し,内容証明郵便をもって,本件ゴルフクラブの退会を申し出るとともに預託金の返還を請求し,この内容証明郵便は,同月27日に被告に到達した。 2 以上の事実関係をもとに検討する。 (1) まず,ゴルフ会員権を有する者の地位について検討すると,預託金制ゴルフクラブにおいては,預託金を支払い,会則に従った権利義務を有することを承諾して 。 2 以上の事実関係をもとに検討する。 (1) まず,ゴルフ会員権を有する者の地位について検討すると,預託金制ゴルフクラブにおいては,預託金を支払い,会則に従った権利義務を有することを承諾して入会契約を締結することによって成立する,ゴルフクラブ経営主体との間の契約上の地位であると解されている。本件においても,本件ゴルフクラブは預託金制であり,会員となろうとする者が預託金を支払い,会則に従って権利義務を負うことを承諾して被告との間で会員契約を締結することにより,会員のゴルフクラブ施設の優先的利用権,預託金返還請求権,年会費の支払義務等を包含した債権的法律関係が生ずることとなる。したがって,会員の地位は,被告との会員契約に基づくものであり,その内容は,会員契約に際して承諾した会則に基づいて決せられることとなり,原告についても,昭和63年10月31日に本件会員契約を締結した時点での本件ゴルフクラブの会則である旧会則に基づいて,権利義務を負うと解される。 (2) そこで,旧会則7条における預託金の定めについて見ると,同条は,本件ゴルフクラブが正式開場した後,満10年間据え置き,その後退会の際に返還すること,天災地変その他不可抗力の事由が発生した場合は被告取締役会又は本件ゴルフクラブ理事会の決議により据置期間を延長し得ることを規定している。 本件ゴルフクラブは,遅くとも平成3年6月20日までに正式開場したので,それまでに預託金を支払っている原告の場合,平成13年6月20日に預託金の据置期間が満了することとなるところ,本件理事会決議において,据置期間を平成23年6月20日まで延長すること,本件会則について,預託金の返還を承認することによりクラブ運営が経済上困難となって全会員に対する平等な取扱いが不可能となり,会員のプレー権が保護されない 期間を平成23年6月20日まで延長すること,本件会則について,預託金の返還を承認することによりクラブ運営が経済上困難となって全会員に対する平等な取扱いが不可能となり,会員のプレー権が保護されないおそれのある場合にも据置期間の延長ができるようにする変更が決議されているので,この点を検討する。 まず,旧会則において据置期間延長ができると定められている,不可抗力の事由が発生した場合とは,条文の構成から,その直前に例示されている天災地変に準ずるような場合であると解されるから,本件のように,経済状況の変化による会員権相場の暴落や被告の厳しい財政状況という事情は,それに該当しない。 そして,本件理事会決議では,理事会による会則改正権限に基づき,前記のとおり据置期間延長事由の追加が行われているが,会則改正は通常の理事会決議と同様の要件で決議されると定められていること,据置期間延長について限定された事由の存在が要求されていること等からすると,預託金の据置期間を延長するといった契約上の基本的な権利に対する重大な変更を伴う会則改正は,会則が予定するものではないと解される。したがって,会員の同意がない以上,変更の効力は当該会員に対して生ずることはないと解され,原告は,本件理事会決議に同意していないと認められるので,原告との関係で本件理事会決議がそのまま有効となることはない。 (3) 本件では,本件理事会決議について,その諾否を問う会員総会が開催され,本件理事会決議を承認する旨の本件総会決議がされており,被告は,この決議の存在をもって,本件理事会決議において決議された預託金の据置期間延長が効力を有するものである旨主張するので,この点を次に検討する。 旧会則では,会員総会について1条を設け,理事会において必要と認める場合に開き,理事長がこれを招集し議長と された預託金の据置期間延長が効力を有するものである旨主張するので,この点を次に検討する。 旧会則では,会員総会について1条を設け,理事会において必要と認める場合に開き,理事長がこれを招集し議長となる旨を規定しているところ,被告は,これについて,ゴルフ場の運営に関わる重要事項については,会員全員に影響するので,会員の一部(理事)により構成された理事会ではなく,会員全員の決議によるのが適切であることから規定されたものであるとし,本件ゴルフクラブ運営上の重要事項については,会員総会の多数決決議により意思決定を行い,その意思決定をもって,会員全体の意思とすることを定めたものである旨主張する。 しかしながら,本件ゴルフクラブの運営に関する重要事項等を決議する権限を有する理事会については,決議事項及び決議方法に関する定めをおいているのに対し,会員総会はその決議事項や決議方法に関する規定はなく,しかも,前記の会員総会の規定は役員及び理事会について規定する章に置かれているものであって,このような条文構成からすると,本件ゴルフクラブ運営上特に重要な事項について,広く会員から意見を聞くための会議であることはうかがえるものの,理事会と独立して意思決定をする機関であるとは言い難い。そして,原告が本件会員契約を締結する際,あるいは,その後においても,会員総会の決議により会員の権利が制限され得る旨の説明がされたことはない。さらに,理事会がすべて会則に関して変更の権限があると考えており,また,会員総会において決議すべき場合を想定していたわけではない旨の被告代表者の供述からすると,被告において,会員総会の決議によって会員の権利義務を変更する権根があると解していたとは考えにくい。 そうすると,旧会則において,会員総会において会員の権利義務を制限する等の決議をする 述からすると,被告において,会員総会の決議によって会員の権利義務を変更する権根があると解していたとは考えにくい。 そうすると,旧会則において,会員総会において会員の権利義務を制限する等の決議をすることは予定されていなかったと解される。 なお,本件では,会員総会に関する手続規定等が会則変更によって追加され,その後,会員総会に本件理事会決議の諾否について付議する旨の通知がされているので,この経過の原告に与える影響如何について検討すると,まず,このような会則変更自体が同意をしていない会員に効力を生ずるとすることには疑問があるところである。そして,このような会則変更及び会員総会への付議が平成12年8月18日付の被告名義の書面で会員に通知されているところ,被告は,前訴で提出された同年11月17日付の準備書面において,会員総会における決議の効力についてはふれず,かえって,同意しない会員に対してまで据置期間延長を主張する意図は有していない旨を主張しているのであって,これらの状況を経て会員総会が開催されて本件総会決議がされたとしても,それによって同意しない原告が拘束されることはないと言うべきである。 (4) 被告は,①本件総会決議までに多くの会員の意見をくみ上げる措置をとり,会員の意見に従って手続を進めたこと,②据置期間の延長は過半数の会員が反対した場合には取り消される旨の規定が設けられたこと,③被告の財務状況等からやむを得ない措置であること,④据置期間の延長について種々の代償措置がとられていること,⑤預託金制ゴルフ場においては,優先的施設利用権を優先すべきであること,⑥据置期間延長後に預託金を返還する可能性があること,⑦大多数の会員が据置期間の延長に同意していること,の諸事情から,本件総会決議の有効性を主張する。 たしかに,前記のとおり,本件総 きであること,⑥据置期間延長後に預託金を返還する可能性があること,⑦大多数の会員が据置期間の延長に同意していること,の諸事情から,本件総会決議の有効性を主張する。 たしかに,前記のとおり,本件総会決議に至るまでに,会員の意見を広くくみ上げる手続がとられ,実際に多数の会員が据置期間の延長に同意していること,本件ゴルフクラブの運営に会員の意見を反映させる措置がとられてきていること,被告の財務状況等からすると,旧会則に基づく据置期間の満了によって預託金の返還に応じれば,本件ゴルフクラブの経営は破たんし,他の会員のプレー権や施設利用権が犠牲となること,被告において,据置期間の延長の代償措置が種々とられていることが認められる。 しかし,会員の意見を広くくみ上げる手続がとられ,多数の会員が据置期間の延長に同意している状況であることによって,本件総会決議が原告との関係においても効力を有すると解することは,結局,会則によって与えられた据置期間満了による預託金返還請求権という会員の被告に対する契約上の権利を多数決によって制限するものであり,このことは,当該権利を変更する理由として予定されていたわけではない。本件ゴルフクラブの経営が破たんするおそれがある場合に,不同意権利者の権利を制限して再建を図るのであれば,倒産手続等の法的手続によるべきであり,本件における手続によって制限が可能となる根拠は見い出し難い。預託金制ゴルフ場において,常に優先的施設利用権が預託金返還請求権に優先するとは解されず,被告が指摘する裁判例も,据置期間満了前の破産法に基づく会員契約解除の可能性について述べているものであって,本件のような事例において一般的に該当するものではないと解される。預託金返還請求権の重要性に照らすと,代償措置がとられていること,過半数の会員が反対した場 除の可能性について述べているものであって,本件のような事例において一般的に該当するものではないと解される。預託金返還請求権の重要性に照らすと,代償措置がとられていること,過半数の会員が反対した場合に据置期間延長は取り消される旨の規定が加えられたこと,延長後の据置期間満了時に預託金の返還が可能であることの諸事情は,ただちに,預託金返還請求権の制限を正当化するものではないと解されるし,実質的にも,本件における代償措置は十分でなく,現在の被告の財務状況によれば,延長された据置期間満了時の預託金返還が可能である旨の主張は,結局,会員権相場の上昇への期待に基づくものであり,合理性がないと言わざるを得ない。 (5) 以上によれば,本件総会決議によっても,預託金据置期間延長の効力が原告に及ぶことはなく,その他,預託金据置期間延長の効力が原告に及ぶと解することができる事情も認められないから,原告との関係では,預託金据置期間延長は効力を有しないと解される。 第4 結論以上の次第で,原告について,預託金の据置期間が経過したと解される結果,被告の原告に対する倶楽部振興金19万2000円(預託金の3パーセント)及び平成13年度分の会費2万1000円の支払請求権が生じており,被告の相殺の意思表示により,合計21万3000円の限度で本件の預託金返還請求権が消滅するので,原告の請求は,預託金である640万円から前記21万3000円を控除した618万7000円及びこれに対する平成13年7月28日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用について民事訴訟法64条ただし書,61条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第1部 があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用について民事訴訟法64条ただし書,61条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第1部裁判官山田真紀

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