平成25年1月30日判決言渡平成24年(行ケ)第10191号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年12月11日判決原告有限会社日新電気被告特許庁長官指定代理人杉浦貴之同千馬隆之同瀬良聡機同田村正明 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2011-19017号事件について平成24年4月17日にした審決を取り消す。 第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「紫の可視光線と不可視光線近紫外線を透過する安全マスク」とする発明について,平成20年3月7日に特許出願したが(以下「本願」という。)(甲5,6),平成23年5月31日に拒絶査定され(甲11),同年8月17日に拒絶査定不服審判(不服2011-19017号事件)を請求した(甲12)。特許庁は,平成24年4月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年5月12日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲本願に係る特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)(甲5,6)。 「殺菌作用のある,紫の可視光線と された。 2 特許請求の範囲本願に係る特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)(甲5,6)。 「殺菌作用のある,紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の働きにより,常に清潔で健康的な空気を供給することを特徴とした「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する安全マスク」。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりであり,その要旨は,以下のとおりである。 (1) 本願発明は,本願前に頒布された刊行物である特開2000-197711号公報(甲1。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 審決が認定した引用発明の内容並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明の内容「マスク1と,四角にクリップ82を具えた合成樹脂製の薄い素材に沢山の通気孔80が開孔された透光性を有するマスクカバー81と,これとは別体の複合フィルター21を具えて成り,複合フィルター21は,炭素繊維層4の前面に光触媒層3を塗布し,マスク1とマスクカバー81との間に複合フィルター21を挟み込むようにして,マスクカバー81に設けられたクリップ82でマスクカバー81をマスク1に固定してなるものであり,吸気の殺菌は,この複合フィルター21の光触媒層3の面が外側(太陽光や蛍光燈の光が当たる側)と成るようにして光触媒層3に紫外線が当たるとこの部位の空気がイオン化され,この生成されたイオンによりここを通過する吸気が殺菌されることによって行われ,マスクを通過する空気は自然に殺菌されるマスク。」 イ一致点常に清潔で健康的な空気を供給する イオン化され,この生成されたイオンによりここを通過する吸気が殺菌されることによって行われ,マスクを通過する空気は自然に殺菌されるマスク。」 イ一致点常に清潔で健康的な空気を供給する「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する安全マスク」である点。 ウ相違点本願発明は,「殺菌作用のある,紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の働きにより,」常に清潔で健康的な空気を供給するものであるのに対し,引用発明は,光触媒層3に紫外線が当たることによりその部位の空気がイオン化され,この生成されたイオンによりそこを通過する吸気が殺菌されてマスクを通過する空気が自然に殺菌されるものであって,紫の可視光線や近紫外線自体の働きによる吸気の殺菌を想定したものではない点。 第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張(1) 本願発明についてア本願発明におけるマスクは,1次側(外側)を紫が透かして見えるような紫透明のマスクとし,2次側(内側)を紫外線が消滅する構造とした,二重構造のマスクであり,清潔で健康的な空気を供給することを特徴とした安全マスクである。 イ 1次側を紫が透かして見えるように透明にして光を透過させれば,透過した光線は,紫の可視光線と不可視光線の近紫外線となり,これらの透過光により,ウイルス等は殺菌される。 変化が早く強力なウイルス等のDNAを損傷させて殺菌するためには,紫外線の波長を400nm以下にしなければならない。紫外線の透過率の測定結果(甲12)によると,薄い紫色のマスクは350nmの波長の紫外線を40%,濃い紫色のマスクは350nmの波長の紫外線を20%透過している。また,紫透明絹織物の透過率の測定結果(甲15(枝番号の記載は省略する。))によると,350nmの波長の紫外線の透過率は,生地1枚のみ い紫色のマスクは350nmの波長の紫外線を20%透過している。また,紫透明絹織物の透過率の測定結果(甲15(枝番号の記載は省略する。))によると,350nmの波長の紫外線の透過率は,生地1枚のみの場合が81.85%,生地2枚重ねの場合が66.62%である。このように,本願発明におけるマスクでは,1次側 の透過光の波長が400nmを大幅に下回っており,この透過光によりウイルス等を殺菌するということが裏付けられたといえる。また,薄い色の方が紫外線の透過率が高く,本願発明におけるマスクは,1次側の紫透明の生地の色が薄ければ薄いほど,殺菌能力が高まることが裏付けられている。 ウ紫外線は長時間浴びていると害があるため,本願発明のマスクの2次側は,有害で短い波長が届かないようにやや厚みのあるガーゼや布にするか,あるいは紫外線を中和する色彩の布にして,1次側を透過した紫外線を消滅させ,紫外線の波長が直接肌に届かないようにする。 (2) 引用発明について引用発明におけるマスクでは,微弱な紫外線しか透過せず,それだけではウイルス等を殺菌することはできない。そこで,引用発明では,マスクの内部に化学物質を内蔵させ,微弱な紫外線と化学物質であるトルマリン又は酸化チタンT102が化学反応を誘発させ,波長を400nm以下の360ないし370nmにしてウイルス等を殺菌するという構造を採っている。 (3) 本願発明と引用発明の対比及び本願発明の容易想到性本願発明と引用発明とでは,以下の2点において相違する。 ① 前記のとおり,本願発明では,マスクの1次側を透過した紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の波長は400nm(数値は低いほどよい。)以下になるので,この透過光のみでウイルス等を殺菌するのに対し,引用発明では,微弱な紫外線だけではウイルス 次側を透過した紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の波長は400nm(数値は低いほどよい。)以下になるので,この透過光のみでウイルス等を殺菌するのに対し,引用発明では,微弱な紫外線だけではウイルス等を殺菌することはできないため,化学物質の力を借りて化学反応を誘発させることにより,透過光の波長を360ないし370nmにして,ウイルス等を殺菌するというものであり,引用発明と本願発明とでは,ウイルス等の殺菌の原理が相違する。また,本願発明は,引用発明とは異なり,1次側の透過光のみで殺菌し,化学物質等は一切必要としない点で,「エコ」である。 ② 本願発明では,有害な紫外線の波長が肌に届かないように,マスクの2次側で,1次側を透過した紫外線を消滅させる構造を採っているのに対し,引用発明で は,人体に有害な400nm以下の波長が発生しても,その波長を無害化する対策は採られていない。 また,特開平10-146396号公報(甲2。以下「甲2文献」という。)記載のマスクは無色透明のマスクであり,太陽光線や照明光線を透過しているので,殺菌性はある。しかし,太陽光線や照明光線の7色全部の光が混じって透過しているので,紫外線の波長は微弱であり,その殺菌効果は日光消毒くらいが限界である。 変化が早く強力なウイルス等のDNAを損傷させて殺菌するためには,紫外線の波長を400nm以下にしなければならず,日光消毒程度ではウイルス等を殺菌することはできない。 以上のとおり,本願発明は引用発明や甲2文献記載の発明とはウイルス等の殺菌の原理が異なっており,当業者が本願発明に至るのは容易でない。 2 被告の反論(1) 原告は,本願発明におけるマスクは,1次側を紫が透かして見えるような紫透明のマスクとし,2次側を紫外線が消滅する構造とするという,二重構造とな 発明に至るのは容易でない。 2 被告の反論(1) 原告は,本願発明におけるマスクは,1次側を紫が透かして見えるような紫透明のマスクとし,2次側を紫外線が消滅する構造とするという,二重構造となっていると主張するが,このような構造は特許請求の範囲には記載されておらず,原告の主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。 本願に係る明細書(以下「本願明細書」という。)には,本願発明が紫外線の強力な殺菌作用に着目したものであることや,紫外線の殺菌作用とこれを長時間浴びた場合の害に関する記載は存在するが,紫の可視光線と不可視光線の近紫外線のみを透過するマスクでなければ,ウイルス等を殺菌することができないとは記載されていない。紫外線を透過するものであれば,それ以外の波長の光を透過するものであっても,殺菌効果を奏すると解するのが相当であり,実際に紫外線を含む太陽光は,殺菌作用があり,細菌だけでなくウイルスについても,これを死滅させる作用があることは,技術常識である。 また,発明の詳細な説明に,「紫色又は紫を透かして見えるように透明にして光を透過させれば,そこから出てくる光線は紫の可視光線並びに不可視光線の近紫外 線となる。」との記載があることから,紫透明のマスクの実施態様が記載されていると解されるとしても,それはあくまで実施態様の一つにすぎない。そして,紫外線以外の波長の光も含む太陽光で殺菌ができることは,前述のとおりであるところ,特許請求の範囲の記載から,本願発明を紫透明のマスクや紫の可視光線と不可視光線の近紫外線のみを透過するマスクに限定して解釈すべき理由はなく,「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線」以外の波長の光を透過するものも含むと解するのが相当である。 さらに,特許請求の範囲には,原告主張のようなマスクの二重構造について 定して解釈すべき理由はなく,「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線」以外の波長の光を透過するものも含むと解するのが相当である。 さらに,特許請求の範囲には,原告主張のようなマスクの二重構造については何ら記載がなく,本願発明におけるマスクを原告主張のような二重構造のマスクに限定することはできない。 (2) 原告は,引用発明では,マスクの内部に化学物質を内蔵させ,微弱な紫外線と化学物質であるトルマリン又は酸化チタンT102が化学反応を誘発させ,波長を400nm以下の360ないし370nmにして殺菌するという構造を採っていると主張するが,引用例にはそのような記載はない。 (3) 原告は,本願発明では,マスクの1次側を透過した有害な紫外線を2次側で消滅させるのに対し,引用発明では,人体に有害な波長を無害化する対策がないと主張する。しかし,前記のとおり,本願発明におけるマスクがこのような二重構造であるとの主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではない。 (4) 紫外線自体による殺菌は周知であり,光触媒による殺菌と紫外線自体による殺菌を併用することも従来から行われている。したがって,引用発明において,マスク全体に当たる紫の可視光線や近紫外線による吸気の殺菌を行うという構成を採用することは,当業者であれば容易に想到し得たことであり,この点に関する審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由はいずれも理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 事実認定(1) 本願発明本願発明に係る特許請求の範囲は,第2,2に記載のとおりである。 本願明細書には,以下の記載がある。また,図面の図1は別紙のとおりである。 (甲5)「【発明の詳細な説明】【技術分野】本発明はウイルス等によ 特許請求の範囲は,第2,2に記載のとおりである。 本願明細書には,以下の記載がある。また,図面の図1は別紙のとおりである。 (甲5)「【発明の詳細な説明】【技術分野】本発明はウイルス等による風邪や他の病気を予防するために使用するマスクに関するものであり以下にわたって説明する。まず自然界においては明るいところであれば7色の光と,赤の外側には不可視光線の赤外線並びに紫外線が存在している。赤の外側は赤外線であり赤外線は波長が長く,人体に透過させれば波長が浸透して血流の流れを活発にして,あらゆる病気の治療並びに予防に用いられている。もう一方の反対側の紫の外側に紫外線が存在しており,その紫外線は強力な殺菌作用がある。紫色又は紫を透かして見えるように透明にして光を透過させれば,そこから出てくる光線は紫の可視光線並びに不可視光線の近紫外線となる。紫外線は強力な殺菌作用がある利点はあるが,長時間浴びると殺菌する性質があるから害になるといわれている,そこで本発明者はその紫外線の強力な殺菌作用に着目をした,すなわち紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過するマスクで呼吸気系の鼻や口を覆うものを1次側(外側)とすれば,内側に(2次側)は図(4)の取替え布は紫外線の波長が直接肌に届かないように,やや厚みのある布,あるいは紫外線が中和する色彩の布を用えれば,(4)の衛生ガーゼ布の表面は常に殺菌されているから清潔で健康的な空気を常時鼻から呼吸することになり,ウイルスによる風邪や他の原因不明の病気を予防並びに飛散することを防ぐことを特徴とした「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する安全マスク」であります。」(2) 引用例の記載引用例には,以下の記載がある(甲1)。 「【請求項9】 マスクカバーに光触媒層と炭素繊維層とから成る複合フィルタ 光線の近紫外線を透過する安全マスク」であります。」(2) 引用例の記載引用例には,以下の記載がある(甲1)。 「【請求項9】 マスクカバーに光触媒層と炭素繊維層とから成る複合フィルタ ーを設けて成るマスクカバー。 【請求項10】 マスクカバーとマスクとの間に光触媒層と炭素繊維層とから成る複合フィルターを着脱自在に設けたことを特徴とする,請求項9のマスクカバー。 【請求項11】 マスクカバーが透明であり且つマスクカバーの裏面に光触媒層が,この光触媒層の裏面に炭素繊維層が設けられていることを特徴とする,請求項9のマスクカバー。」「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら現代のように衛生的であることを追及する時代にあっては,更に積極的に抗菌・殺菌が可能なマスクやマスクカバーといったものが希求されている。また花粉症を効果的に軽減し得るマスクやマスクカバーが要望されている。本発明はこのような問題点に鑑み,それ自体で抗菌作用・殺菌作用や花粉分解・花粉吸着作用を有し,衛生的な使用が可能なマスク及びマスクカバーを提供することを課題とするものである。」「【0027】マスクカバーは,着用したマスクの外側に掛けるものであるが,この時マスクとマスクカバーとの間に光触媒層を挟み込むようにすることにより,所望の効果を得る。マスクカバーは透光性であることを要す。」「【0054】第12実施形態次に図13はマスクカバー8を図示したものである。合成樹脂製の薄い素材に沢山の通気孔80を開孔し,両側に掛け紐83を設け,全面に複合フィルター2を貼付して成る。 【0055】着用したマスクの外側を本マスクカバー8で覆うようにし,両側の掛け紐83を耳に掛けて使用するが,この際,光触媒層3の面が外側(太陽光や蛍光燈の光が当たる側)と成る 2を貼付して成る。 【0055】着用したマスクの外側を本マスクカバー8で覆うようにし,両側の掛け紐83を耳に掛けて使用するが,この際,光触媒層3の面が外側(太陽光や蛍光燈の光が当たる側)と成るようにする。通気孔80は呼気・吸気をよく通過させるが,光触媒層3に紫外線が当たるとこの部位の空気がイオン化され,この生成されたイオンによりここを通過する吸気が殺菌される。或いは花粉が分解される。従ってこのマスクカバー8を掛けてさえいれば,マスクを通過する空気は自然に殺菌 されていることに成る。」「【0057】第13実施形態本実施形態のマスクカバー81は,四角にクリップ82を具えた合成樹脂製の薄い素材に沢山の通気孔80が開孔され,これとは別体の複合フィルター21を具えて成るものである。この複合フィルター21は,炭素繊維層4の前面に光触媒層3を塗布して成るものである。 【0058】本実施形態のマスクカバー81を使用するには,マスク1とマスクカバー81との間に複合フィルター21を挟み込むようにして,マスクカバー81に設けられたクリップ82でマスクカバー81をマスク1に固定する。即ち吸気の殺菌や雑菌の除去は,この複合フィルター21が行なうことに成る。」(3) 各刊行物の記載内容ア特開2006-34340号公報(甲3)上記刊行物は,発明の名称を「照明付きハンドル」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,パチンコ機や回動遊技機等の遊技機のハンドルに紫外線成分を含む青色ないし青紫色の光を照射することにより,ハンドルの殺菌又は除菌を行うことが記載されている。 イ特開平10-296246号公報(甲4)上記刊行物は,発明の名称を「浴水循環装置」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,浴槽内の浴水の細菌を紫外線灯で 行うことが記載されている。 イ特開平10-296246号公報(甲4)上記刊行物は,発明の名称を「浴水循環装置」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,浴槽内の浴水の細菌を紫外線灯で殺菌すること,紫外線灯は通常100~450nm位の領域の波長の光を出しており,紫外光だけでなく,紫色の可視光も出力していることが記載されている。 ウ特開2007-44334号公報(乙1)上記刊行物は,発明の名称を「電子機器,その殺菌処理方法,および無影灯」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,太陽光線に含まれている紫外線には,微生物に対して殺菌作用があること,従来,医療用具について,紫外光を用いた殺菌処理が行われていること,紫外光,特に近紫外光を照射するLEDには, 太陽光と同様の殺菌能力があること,電子機器内部に紫外光ないし近紫外光を照射する紫外光LEDを設けて,電子機器内部を殺菌することが記載されている。 エ特開平8-150291号公報(乙2)上記刊行物は,発明の名称を「洗濯物乾燥機」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,洗濯物乾燥機の前面板を紫外線透過材料とすることにより,太陽光に含まれる紫外線による殺菌効果が得られることが記載されている。 オ特開2000-24655号公報(乙3)上記刊行物は,発明の名称を「水質浄化装置」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,従来,水槽や池等の水中に含まれる有害微生物の除去,大腸菌の殺菌等をするために,紫外線ランプによる紫外線照射が行われていたこと,水質浄化装置において,太陽光を集光して赤外線及び紫外線密度を高めて原水に照射することにより殺菌,有機物分解等を行うことが記載されている。 カ特開2007-196202号公報(乙6)上記刊行物 浄化装置において,太陽光を集光して赤外線及び紫外線密度を高めて原水に照射することにより殺菌,有機物分解等を行うことが記載されている。 カ特開2007-196202号公報(乙6)上記刊行物は,発明の名称を「浄化方法および浄化装置」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,水の浄化において,光触媒と紫外線領域の波長の光を照射自在な紫外線灯を用い,浄化対象液につき,紫外線灯からの紫外線の照射を受けた光触媒の酸化作用と,紫外線灯からの紫外線による殺菌作用の両方によって,分解対象物の分解及び微生物の殺菌などの浄化が行われることが記載されている。 キ特開2003-210941号公報(乙7)上記刊行物は,発明の名称を「光触媒キャビネット」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,木質製キャビネットにおけるホルムアルデヒドによるシックハウス症候群の発生を抑止するため,収納部の内表面に光触媒物質を含む光触媒層を形成し,光源として紫外灯を用いることにより,紫外線による殺菌作用と,紫外線によって励起された光触媒物質による抗菌作用が得られることが記載されている。 ク特開2007-307542号公報(乙8) 上記刊行物は,発明の名称を「光照射レンズを用いた光触媒装置」とする発明に係る公開特許公報である。同公報には,液体と気体に含まれる有害ガスや有害物質を,光触媒の作用で分解,除去するとともに,紫外線により殺菌することが記載されている。 2 判断上記認定事実によると,本願時において,紫色の可視光線や紫外線による殺菌が様々な分野において利用されており,マスクにおいても紫色の可視光線や紫外線により殺菌をすることができることは,当業者に周知であったと認められ,また,紫外線による殺菌と,紫外線を光源とする光触媒による殺 々な分野において利用されており,マスクにおいても紫色の可視光線や紫外線により殺菌をすることができることは,当業者に周知であったと認められ,また,紫外線による殺菌と,紫外線を光源とする光触媒による殺菌とを併用することができることも,当業者の技術常識であったと認められるから,引用発明のマスクにおいて,殺菌作用のある紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の働きを用いた本願発明に係るマスクに至ることは,当業者にとって容易であると解される。 以上のとおりであり,本願発明が容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 3 原告の主張に対して(1) 本願発明について原告は,①本願発明におけるマスクは,1次側(外側)を紫が透かして見えるような紫透明のマスクとし,2次側(内側)を紫外線が消滅する構造とした,二重構造のマスクであり,また,②本願発明におけるマスクの1次側を紫が透かして見えるように透明にすれば,そこを透過した光線は,紫の可視光線と不可視光線の近紫外線であり,その波長は400nm以下であるため,ウイルス等を殺菌する効果がある旨を主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,特許請求の範囲には,「紫の可視光線と不可視光線の近紫外線を透過する」との構成は記載されているが,マスクの構造等を限定する記載はない。したがって,本願発明におけるマスクが,1次側(外側)を紫透明のマスクとし,2次側(内側)を紫外線が消滅する構造とした二重構造のマスクであることを前提とする原告の主張は,特許請求の範囲 の記載に基づかない主張であり,その主張自体失当である。 (2) 引用発明の認定について原告は,引用発明におけるマスクは,微弱な紫外線しか透過しないため,内蔵した化学物質に化学反応を起こさせ,透過光の波長を400nm以下の その主張自体失当である。 (2) 引用発明の認定について原告は,引用発明におけるマスクは,微弱な紫外線しか透過しないため,内蔵した化学物質に化学反応を起こさせ,透過光の波長を400nm以下の360ないし370nmにしてウイルス等を殺菌すると主張する。 しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,引用例には,化学反応によって,透過光の波長を変化させる旨の記載はなく,また,光触媒の反応によって光の波長が変化することを裏付ける証拠もない。原告の主張は失当である。 (3) 本願発明と引用発明の対比について原告は,本願発明と引用発明とは,①本願発明では,マスクの1次側を透過した紫の可視光線と不可視光線の近紫外線の波長は400nm(数値は低いほどよい。)以下になるので,この透過光のみでウイルス等を殺菌し,「エコ」であるのに対し,引用発明では,化学物質による化学反応を誘発させることにより,透過光の波長を360ないし370nmにして,ウイルス等を殺菌するものである点,②本願発明では,有害な紫外線の波長が肌に届かないように,マスクの2次側で,1次側を透過した紫外線を消滅させる構造を採っているのに対し,引用発明では,そのような対策が採られていない点で相違すると主張する。 しかし,原告の主張は,前記のとおり,特許請求の範囲の記載及び引用例の記載のいずれにも基づかない主張であって,主張自体失当である。 4 結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決にはこれを取り消すべき違法はない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官小田真治 別紙図1
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