平成14(ネ)200 保証債務履行,貸金等,債務不存在確認等各請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月26日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 平成11(ワ)1421
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判決文本文27,587 文字)

主文 1 被控訴人C,被控訴人D1,被控訴人D2,被控訴人D3,被控訴人D4,被控訴人E,被控訴人F,被控訴人G1,被控訴人G2,被控訴人G3及び被控訴人G4の本件控訴をいずれも棄却する。 2 原判決中,控訴人A農協敗訴部分を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人B組合及び被控訴人Cは,控訴人A農協に対し,連帯して金3億円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人B組合は,控訴人A農協に対し,金1億2000万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 (3) 控訴人A農協のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その4を控訴人A農協の負担とし,その4を被控訴人B組合及び被控訴人Cの負担とし,その余を被控訴人E,被控訴人F,被控訴人D1,被控訴人D2,被控訴人D3,被控訴人D4,被控訴人G1,被控訴人G2,被控訴人G3及び被控訴人G4の負担とする。 4 原判決の主文第1,2項及びこの判決の主文第2項(1)(2)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴人A農協の控訴の趣旨 1 原判決中控訴人A農協敗訴部分を取り消す。 2 控訴人A農協に対し,(1) 被控訴人B組合,被控訴人C,被控訴人E及び被控訴人Fは,連帯して,5億円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人D1は,2億5000万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,被控訴人D2,被控訴人D3及び被控訴人D4は,それぞれ を支払え。 (2) 被控訴人D1は,2億5000万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,被控訴人D2,被控訴人D3及び被控訴人D4は,それぞれ,8333万3333円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,各金員の限度で(1)の被控訴人らと連帯して,各支払え。 (3) 被控訴人G1は,2億5000万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,被控訴人G2,被控訴人G3及び被控訴人G4は,それぞれ,8333万3333円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を各金員の限度で(1)の被控訴人らと連帯して,各支払え。 (4) 被控訴人H1は,2億5000万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,被控訴人H2及び被控訴人H3は,それぞれ,1億2500万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,各金員の限度で(1)の被控訴人らと連帯して,各支払え。 (5) 被控訴人I1は,2億5000万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,被控訴人I2,被控訴人I3,被控訴人I4及び被控訴人I5は,それぞれ,6250万円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,各金員の限度で(1)の被控訴人らと連帯して,各支払え。 (6) 被控訴人J1,被控訴人J2及び被控訴人J3は,それぞれ,1億6666万6666円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員 連帯して,各支払え。 (6) 被控訴人J1,被控訴人J2及び被控訴人J3は,それぞれ,1億6666万6666円及びこれに対する平成7年12月3日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を,各金員の限度で(1)の被控訴人らと連帯して,各支払え。 3 被控訴人B組合は,控訴人A農協に対し,2億円及びこれに対する平成7年11月18日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 5 仮執行宣言第2 被控訴人C,被控訴人D1,被控訴人D2,被控訴人D3,被控訴人D4,被控訴人E,被控訴人F,被控訴人G1,被控訴人G2,被控訴人G3及び被控訴人G4(以下「11名の被控訴人ら」という。)の控訴の趣旨 1 原判決中,11名の被控訴人らの敗訴部分を取り消す。 2 控訴人A農協の11名の被控訴人に対する請求をいずれも棄却する。 3 控訴人A農協は,被控訴人Cに対し,原判決の別紙物件目録記載の各不動産について,a法務局b出張所平成6年5月30日受付第11190号抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。 4 訴訟費用は第1,2審とも控訴人A農協の負担とする。 第3 事案の概要控訴人A農協は,控訴人A農協のKに対する貸金5億円につき,被控訴人B組合及びその理事である被控訴人C,被控訴人E,被控訴人F,D(被控訴人D1,被控訴人D2,被控訴人D3及び被控訴人D4の被相続人),G(被控訴人G1,被控訴人G2,被控訴人G3及び被控訴人G4の被相続人),H(被控訴人H1,被控訴人H2及び被控訴人H3の被相続人),I(被控訴人I1,被控訴人I2,被控訴人I3,被控訴人I4及び被控訴人I5の被相続人),J(被控訴人J1,被控訴人J2及び被控訴人J3の被相続人)の8名が連帯保証したとし 控訴人H3の被相続人),I(被控訴人I1,被控訴人I2,被控訴人I3,被控訴人I4及び被控訴人I5の被相続人),J(被控訴人J1,被控訴人J2及び被控訴人J3の被相続人)の8名が連帯保証したとして,被控訴人らに対し,保証債務金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた(原審第1事件)。 控訴人A農協は,控訴人A農協のKに対する貸金2億円につき,被控訴人B組合とその理事のうち,被控訴人C,被控訴人E,被控訴人F,D,Gの5名が連帯保証したとして,被控訴人らのうち上記被控訴人ら並びにD及びGの各相続人である被控訴人らに対し,保証債務金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた(原審第2事件)。 被控訴人らは,保証契約の不成立や錯誤無効等を主張して争い,そのうち被控訴人Cは,上記2億円の貸金の担保のため被控訴人C所有の不動産に設定された抵当権設定登記について,これの設定契約が錯誤無効であるなどと主張して,所有権に基づきその抹消登記手続を求めた(原審第3事件)。 原判決は,被控訴人B組合のした保証契約は土地区画整理法31条所定の総会決議を欠き無効であるとして,控訴人A農協の被控訴人B組合に対する請求を全て棄却し,その余の被控訴人に対する請求のうち,貸金5億円の保証契約に基づく請求(理事8名関係)については,保証契約の成立が認められないとして,これを棄却し,貸金2億円の保証契約に基づく請求(理事5名関係)については,保証契約が有効に成立したとして全部認容し,被控訴人Cの抵当権抹消登記手続請求を棄却した。 上記判決を不服として,控訴人A農協と,被控訴人Cを含む理事5名(ないしその相続人)の双方が,それぞれの敗訴部分につき控訴した。 当審において,控訴人A農協は,被控訴人B組合が総会の議決を欠くために連帯保証責任を負わない場 農協と,被控訴人Cを含む理事5名(ないしその相続人)の双方が,それぞれの敗訴部分につき控訴した。 当審において,控訴人A農協は,被控訴人B組合が総会の議決を欠くために連帯保証責任を負わない場合には,被控訴人B組合の理事らが法定の議決を経ることなく,独断で被控訴人B組合の代表機関として連帯保証をしたため本件各貸付を実行して損害を被ったから,被控訴人B組合には民法44条1項により,各理事には,直接の不法行為者として,損害賠償義務があると主張して,不法行為による損害賠償請求を予備的に追加し,更に,上記保証が法人の目的外の行為であるとして被控訴人B組合に責任が認められないとしても,理事らは民法44条2項,719条により損害賠償責任を負う旨主張した。 1 争いがない事実(末尾に証拠の記載がないもの)及び証拠により容易に認められる事実(1) 被控訴人B組合は,a市c土地区画整理事業(以下「本件区画整理事業」という。)を施行することを目的として,平成4年2月20日にa市によって設立を認可された土地区画整理組合である。同事業は,a市c区d地区の山林99万0520平方メートルを区画整理して道路,公園,小学校等の公共施設用地を含む郊外住宅地を整備することを目的とするものであった。構成員たる地権者は約200名である。(甲12,乙3,弁論の全趣旨)(2) 被控訴人B組合は,本件区画整理事業の実施のため,平成4年3月18日,Kが代表者であるL株式会社(以下「訴外会社」という。)に対し,本件区画整理事業の業務代行を委託した。 (3) 控訴人A農協は,K個人に対し,平成5年11月29日,以下の約定により5億円を貸し渡した(以下「本件貸付(1)」という。)。 ア貸付金額 5億円イ弁済期平成6年4月30日一括 K個人に対し,平成5年11月29日,以下の約定により5億円を貸し渡した(以下「本件貸付(1)」という。)。 ア貸付金額 5億円イ弁済期平成6年4月30日一括支払ウ利息年5.8パーセントエ利息の支払期平成6年3月末日,同年4月末日オ損害金年14パーセント(4) 被控訴人B組合は,控訴人A農協に対し,Kの本件貸付(1)に基づく債務を連帯保証する旨約束した(以下「本件保証契約(1)」という。)。 同保証契約締結を承認する被控訴人B組合総会の議決は存在しない。 (5) 控訴人A農協は,K個人に対し,平成6年5月30日,以下の約定により2億円を貸し渡した(以下「本件貸付(2)」という。)。 ア貸付金額 2億円イ弁済期平成6年8月31日一括支払ウ利息年5.8パーセントエ利息の支払期平成6年6月末日,同年8月末日オ損害金年14パーセント(6) 被控訴人B組合,被控訴人C,D,G,被控訴人E,被控訴人Fは,控訴人A農協に対し,同日,Kの本件貸付(2)に基づく債務を連帯保証する旨約束した(以下「本件保証契約(2)」という。)。 同保証契約の締結を承認する被控訴人B組合総会の議決は存在しない。 また,上記連帯保証人のうち被控訴人B組合を除く者は,いずれも被控訴人B組合の理事であった(以下上記5名の理事を「5名の理事」といい,これと当時の理事I,同H,同Jを合わせて「8名の理事」という。)。 (7) 被控訴人Cは,同日,控訴人A農協との間で,控訴人A農協の本件貸付(2)に基づく債権を担保するため,原判決の別紙物件目録記載 と当時の理事I,同H,同Jを合わせて「8名の理事」という。)。 (7) 被控訴人Cは,同日,控訴人A農協との間で,控訴人A農協の本件貸付(2)に基づく債権を担保するため,原判決の別紙物件目録記載の不動産につき抵当権設定契約を締結し(以下「本件抵当権設定契約」という。),同日,その旨の登記手続を了した。 (8) 本件貸付(1)については,平成7年12月2日までの,本件貸付(2)については,同年11月17日までの各損害金が支払われた。 (9)ア Dは,平成13年1月12日死亡し,被控訴人D1はその妻として,被控訴人D2,被控訴人D3及び被控訴人D4はその子として,これを相続した。 イ Gは,平成8年4月3日死亡し,被控訴人G1はその妻として,被控訴人G2,被控訴人G3及び被控訴人G4はその子として,これを相続した。 ウ Hは,平成12年8月30日死亡し,被控訴人H1はその妻として,被控訴人H2及び被控訴人H3はその子として,これを相続した。 エ Iは,平成6年5月20日死亡し,被控訴人I1は,その妻として,被控訴人I2,被控訴人I3,被控訴人I4及び被控訴人I5はその子として,これを相続した。 オ Jは,平成7年10月23日死亡し,被控訴人J1,被控訴人J2及び被控訴人J3は,その子として,これを相続した。 (10) 被控訴人らは,原審における平成11年11月12日付答弁書(第1事件)及び平成12年5月22日付準備書面(第2事件)により,詐欺(後記争点(3)及び(8)における被控訴人らの主張)を理由に,各保証契約を取り消す旨の意思表示をした。 2 争点(1) 本件貸付(1)に関する8名の理事と控訴人A農協との保証契約の成否。 (2) 控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は,主債務者及 り消す旨の意思表示をした。 2 争点(1) 本件貸付(1)に関する8名の理事と控訴人A農協との保証契約の成否。 (2) 控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は,主債務者及び借入金の使途の点で錯誤無効といえるか。 (3) 被控訴人らは,各保証契約及び本件抵当権設定契約を,訴外会社又はKの詐欺に基づくとして取り消すことができるか。 (4) 被控訴人B組合のした各保証契約は目的外行為として無効といえるか。 (5) 被控訴人B組合のした各保証契約は土地区画整理法31条6号により総会議決を欠き無効であるといえるか。 (6) 上記(4)ないし(5)の無効を前提とした場合,理事らのした各保証契約は,錯誤により無効といえるか。 (7) 本件貸付(1)及び(2)は,員外貸付として無効といえるか。 (8) 本件貸付(1)及び(2)が員外貸付である場合,控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は詐欺に基づくものとして取り消すことができるか。また,錯誤無効といえるか。 (9) 控訴人A農協の被控訴人らに対する各保証債務履行請求は信義則に反するといえるか。 (10) 控訴人A農協の,被控訴人らに対する不法行為を理由とする請求の当否。 3 争点(1)(本件貸付(1)に関する8名の理事と控訴人A農協との保証契約の成否)に関する当事者の主張(1) 控訴人A農協の主張ア平成5年11月17日に開催された被控訴人B組合の理事会において,被控訴人B組合及びその理事が本件貸付(1)の連帯保証人となることが承認され,8名の理事は,上記承認議決を記録した議事録(甲2の2)に押印し,もって,個人として,Kの本件貸付(1)に基づく債務について連帯保証する旨を承諾した。 イ上記アの事実が認められないとし され,8名の理事は,上記承認議決を記録した議事録(甲2の2)に押印し,もって,個人として,Kの本件貸付(1)に基づく債務について連帯保証する旨を承諾した。 イ上記アの事実が認められないとしても,8名の理事は,同月29日に開催された被控訴人B組合の理事会において,被控訴人B組合及び8名の理事がKの本件貸付(1)に基づく債務について連帯保証することを承認し,その旨承諾した。 (2) 被控訴人らの主張控訴人A農協の主張は否認する。また,理事らが保証の意思表示をしたことはない。 同主張の議事録(甲2の2)は,Kが偽造したものである。平成5年11月17日に被控訴人B組合の理事会が開催されたことはない。同日,被控訴人C,被控訴人E,G及びKがM建築設計事務所に集って臨時の打合わせ会議をし,その際同月16日付け理事会議事録(甲2の1)を作成した(ただし,その余の理事の押印は本人に無断で行われた。)が,同月17日付け議事録(甲2の2)を作成してはいない。 4 争点(2)(控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は,主債務者及び借入金の使途の点で錯誤無効といえるか。)に関する当事者の主張(1) 被控訴人らの主張ア被控訴人B組合及び理事らは,Kから,「本件区画整理事業に必要な下水道負担金をf町に納入するため本件貸付(1)及び(2)を受ける必要がある。借主は訴外会社である。」旨の説明を受け,その旨誤信し,本件保証契約(1)及び(2)を締結するに至ったのである。 イところが,上記各貸付は,Kが借入金を個人的に費消するために締結したもので,実際にも,Kは借入金7億円を山口県e市の土地購入資金や造成費等に費消した。 ウしたがって,本件各保証契約及び本件抵当権設定契約は,要素の錯誤があり,無効で に費消するために締結したもので,実際にも,Kは借入金7億円を山口県e市の土地購入資金や造成費等に費消した。 ウしたがって,本件各保証契約及び本件抵当権設定契約は,要素の錯誤があり,無効である。 (2) 控訴人A農協の主張ア被控訴人B組合は,訴外会社に対し土地区画整理事業の業務代行を委託し,その代表取締役であるKに対しゴム印(記名判)と実印の保管を任せていたことからすれば,訴外会社又はKは,被控訴人B組合の代理人類似の立場にあった。したがって,錯誤の有無は訴外会社又はKについて判断すべきであるところ,両者には何らの錯誤は存在しない。 イ被控訴人B組合の平成9年7月付けの事業概要書(甲15)及び理事会議事録(甲8の1ないし4)等の記載,被控訴人B組合が3回にわたる変更契約書(甲3の1ないし3)を作成したこと等から,被控訴人B組合の事業のためにK名義で7億円を借り入れることを被控訴人B組合理事らが了承していたことは明らかであるから,被控訴人B組合及び8名の理事に被控訴人ら主張のような錯誤は存在しなかった。 ウ被控訴人B組合及びその理事らは,訴外会社やKにすべてを任せ,10億円という高額の下水道負担金についてf町に問い合わせすらしていないのであるから,仮に錯誤があったとしても,重大な過失がある。 エ被控訴人B組合及びその理事らは,訴外会社やKと極めて密接な関係を持っていたばかりか,平成5年11月29日に開催された被控訴人B組合の理事会において,出席理事が異議なく本件保証契約(1)を締結することを承認し,理事らは,その後も連帯保証人であることを前提として行動していること等の経緯にかんがみれば,被控訴人らが錯誤無効を主張することは信義則に反する。 5 争点(3)(控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当 らは,その後も連帯保証人であることを前提として行動していること等の経緯にかんがみれば,被控訴人らが錯誤無効を主張することは信義則に反する。 5 争点(3)(控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は,訴外会社又はKの詐欺に基づくとして取り消すことができるか。)に関する当事者の主張(1) 被控訴人らの主張ア訴外会社又はKは,K名義で借り受け,借入金を個人的に利用する意図であったにもかかわらず,被控訴人B組合及びその理事らに対し,「主債務者は訴外会社で,借入金の使途は下水道負担金である。」旨の説明をし,その旨誤信させ,控訴人A農協主張の各保証契約を締結させた。 イ控訴人A農協組合長であったNは,遅くとも昭和63年ころから,KがN宅を訪れたり,あるいは,O市会議員の後援会事務所で出合うなどして,Kと頻繁に顔を合わせていた。このように,NはKと親密な関係にあったから,控訴人A農協は,Kが個人的用途に利用する意図で借入を受けようとしているのを十分認識していたと認められる。この点は,Kが,本件貸付(1)が実行された後,下水道負担金として入送金することなく,控訴人A農協から1300万円の現金の払戻しを受けていること,控訴人A農協が,Kを組合員に加入させた平成5年11月29日以前に本件貸付(1)の禀議を通しており,しかも100万円の出資金(5億円の融資金から支払われた。)を保証料と偽装していることから,窺うことができる。 また,控訴人A農協は,本件貸付(1)の実行後,融資規程19条1項に定める借入金の使途を調査すべき義務があったのにこれを怠り,その後,さらに本件貸付(2)を実行しているのである。 上記の点からすれば,控訴人A農協は,訴外会社またはKの前記アの真意を知っていたか,又は知ることができたと 義務があったのにこれを怠り,その後,さらに本件貸付(2)を実行しているのである。 上記の点からすれば,控訴人A農協は,訴外会社またはKの前記アの真意を知っていたか,又は知ることができたというべきである。 ウしたがって,被控訴人らは,控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約が詐欺によるものであることを理由に取り消すことができる。 (2) 控訴人A農協の主張ア被控訴人B組合は,訴外会社に対し土地区画整理事業の業務代行を委託し,その代表取締役であるKに対しゴム印と実印の保管を任せていたから,訴外会社又はKは,被控訴人B組合の代理人類似の立場にあったといえる。したがって,訴外会社又はKの詐欺は,第三者の詐欺とはいえない。 イ仮に第三者の詐欺に当たるとしても,控訴人A農協は,被控訴人B組合の理事数名から,本件区画整理事業における下水道負担金支払のため是非融資を実行して欲しい旨の要請を受けて本件貸付(1)及び(2)を実行したのであり,あくまでも被控訴人B組合の事業のために必要な資金であると信じていた。 また,融資規程19条は,もっぱら控訴人A農協の利益を守るための規定であり,本件のように消費貸借契約の申込み時に使途が明確に特定されている場合には,控訴人A農協がさらに調査をしなかったからといって,控訴人A農協が訴外会社又はKの詐欺行為を知り得べきであったとはいえない。 Kが一部現金で払戻しを受けていることは被控訴人ら主張のとおりであるが,これは何ら不自然なことではないし,その金額に照らすと,この事実から,控訴人A農協は,Kが5億円を個人的に費消する意図であったことを知っていたとまでは認められない。また,控訴人A農協は,Kの出資金を保証料と偽っていた事実はなく,Kからは100万円の出資を受 実から,控訴人A農協は,Kが5億円を個人的に費消する意図であったことを知っていたとまでは認められない。また,控訴人A農協は,Kの出資金を保証料と偽っていた事実はなく,Kからは100万円の出資を受け入れただけである(保証料100万円は,a県農業信用基金協会に支払われた。)。 したがって,被控訴人らの前記主張は理由がない。 ウ前記4(2)エの事情にかんがみれば,被控訴人らが上記のような詐欺による取消を主張することは,信義則に反する。 6 争点(4)(被控訴人B組合のした各保証契約は目的外行為として無効といえるか。)について(1) 被控訴人らの主張被控訴人B組合は,土地区画整理事業を行うことを目的とする公益法人であるから,他人の債務を連帯保証することは,目的外の行為に当たり,絶対的に無効である。したがって,被控訴人B組合が締結した本件保証契約(1)及び(2)は無効である。 (2) 控訴人A農協の主張本件貸付(1)及び(2)は,被控訴人B組合の事業資金に充てるために被控訴人B組合の業務代行者に対し実行されたものであり,実質的にみれば,被控訴人に対する融資であるといえる。したがって,本件保証契約(1)及び(2)は,被控訴人B組合が他人の債務を保証したものではない。 仮にこれらが目的外の行為であるとしても,絶対的に無効となるものではなく,組合総会の議決を要する行為であるに過ぎない。 さらに,前記4(2)エの事情にかんがみれば,被控訴人らが上記のような無効を主張することは,信義則に反する。 7 争点(5)(被控訴人B組合のした各保証契約は土地区画整理法31条6号により総会議決を欠き無効であるといえるか。)について(1) 被控訴人らの主張ア土地区画整理組合が連帯保証人になるため 点(5)(被控訴人B組合のした各保証契約は土地区画整理法31条6号により総会議決を欠き無効であるといえるか。)について(1) 被控訴人らの主張ア土地区画整理組合が連帯保証人になるためには,土地区画整理法31条6号により,総会の議決が必要であるところ,本件保証契約(1)及び(2)を承認する旨の総会議決はなされていない。 イ被控訴人B組合は公益法人であること,総会議決事項は法律によって定められていることからすると,総会の議決を欠く行為は,絶対的に無効である。 仮にそうでないとしても,控訴人A農協は,金融機関であって,被控訴人B組合の内部手続を知りうる立場にあったにもかかわらず,本件保証契約(1)及び(2)に際し,総会議事録の提示を求めなかったから,総会の議決が存在しないことを知らなかったことにつき過失がある。 ウしたがって,本件保証契約(1)及び(2)は,被控訴人B組合に関しては効力を有しない。 (2) 控訴人A農協の主張ア本件貸付(1)及び(2)は,実質的には被控訴人B組合に対する融資であるから,本件保証契約(1)及び(2)は,総会の議決がなくとも有効である。 イ被控訴人B組合は,平成8年12月15日開催の総会において,本件保証契約(1)及び(2)を承認した(甲15)。したがって,本件保証契約(1)及び(2)締結時に総会の議決がなかったとしても,その瑕疵は治癒された。 ウ前記4(2)エの事情にかんがみれば,被控訴人らが上記のような無効を主張することは,信義則に反する。 8 争点(6)(被控訴人B組合のした各保証契約が,目的外行為であること,又は,土地区画整理法31条6号により総会議決を欠くことから,無効であるといえる場合,理事らのした保証契約は錯誤無効といえるか。)について )(被控訴人B組合のした各保証契約が,目的外行為であること,又は,土地区画整理法31条6号により総会議決を欠くことから,無効であるといえる場合,理事らのした保証契約は錯誤無効といえるか。)について(1) 被控訴人らの主張理事らは,本件貸付(1)及び(2)については,訴外会社が被控訴人B組合の代行者として協定書(乙11)に基き,法令を遵守し,必要な手続を履行して行っており,被控訴人B組合が上記各貸付について有効に保証したことを前提として,本件保証契約(1)及び(2)を締結した。ところが,被控訴人B組合のした本件保証契約(1)及び(2)は,前記のとおり無効であったのであるから,理事らのした控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は,錯誤により無効である。 (2) 控訴人A農協の主張仮に被控訴人B組合のした本件保証契約(1)及び(2)が無効であったとしても,理事らに何ら錯誤は存在せず,無効となることはない。 前記4(2)エの事情にかんがみれば,被控訴人が上記のような錯誤無効を主張することは,信義則に反する。 9 争点(7)(本件貸付(1)及び(2)は,員外貸付として無効といえるか。)について(1) 被控訴人らの主張本件貸付(1)及び(2)は,いわゆる員外貸付であって,農業協同組合法10条1項1号,同条26項2号,控訴人A農協定款2条5項2号に違反する違法な貸付けであり,無効である。 Kは,控訴人A農協の地区内に住民票を架空移転して本件貸付(1)及び(2)を受けたが,実際には控訴人A農協地区内に住所を有していない。 (2) 控訴人A農協の主張Kは,本件貸付(1)及び(2)当時,「控訴人A農協の地区内に居住し,3アールの土地を耕作し,1年のうち70日農業に従事している 協地区内に住所を有していない。 (2) 控訴人A農協の主張Kは,本件貸付(1)及び(2)当時,「控訴人A農協の地区内に居住し,3アールの土地を耕作し,1年のうち70日農業に従事している。」として組合加入の申込みをし,控訴人A農協はこれを承認した。したがって,Kは組合員であって本件貸付(1)及び(2)は員外貸付ではない。 仮にこれが認められないとしても,被控訴人B組合が控訴人A農協の準組合員資格を有していたことは明らかであり,本件貸付(1)及び(2)が被控訴人B組合の業務代行者が同組合の事業資金を借り入れるために締結されたものであることを考慮すると,これらは準組合員に対する貸付けとして適法である。 さらに,仮に員外貸付だとしても,Kは被控訴人B組合の業務代行者の地位にあり,両者が極めて密接な関係にあったことを考慮すると,本件貸付(1)及び(2)は実質的には被控訴人B組合に対する貸付けである。そして,被控訴人B組合が,自らの意思で事業資金をK名義で借り入れておきながら,後になってこれを員外貸付であるから無効であると主張しているのであり,前記4(2)エの事情をも考慮すると,被控訴人らが上記のような無効を主張することは,信義則に反する。 10 争点(8)(本件貸付(1)及び(2)が員外貸付である場合,控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は詐欺に基づくものとして取り消すことができるか。また,錯誤無効といえるか。)について(1) 被控訴人らの主張ア控訴人A農協の代表者であるNは,本件貸付(1)及び(2)が員外貸付として違法であることを知っていたにもかかわらず,これを秘し,被控訴人B組合及び8名の理事に控訴人A農協主張の保証契約及び本件抵当権設定契約を締結させたものである。 したがっ )が員外貸付として違法であることを知っていたにもかかわらず,これを秘し,被控訴人B組合及び8名の理事に控訴人A農協主張の保証契約及び本件抵当権設定契約を締結させたものである。 したがって,同各契約は,被控訴人A農協の詐欺に基づくものであるから,これを取り消す。 イ被控訴人B組合及び8名の理事は,本件貸付(1)及び(2)が適法なものであると誤信して上記各契約に至った。したがって,同各契約は,錯誤により無効である。 (2) 控訴人A農協の主張本件貸付(1)及び(2)は員外貸付ではないから,被控訴人ら主張の詐欺行為や錯誤はなかった。 前記4(2)エの事情にかんがみれば,被控訴人らが上記のような錯誤無効や詐欺による取消を主張することは,信義則に反する。 11 争点(9)(控訴人A農協の被控訴人らに対する保証債務履行請求は信義則に反するといえるか。)について(1) 被控訴人らの主張控訴人A農協は本件貸付(1)及び(2)が違法であることを隠して本件保証契約(1)及び(2)を締結させたこと,控訴人A農協は,同農協の理事会に本件貸付(1)及び(2)の決裁を仰ぐ際,意図的に不自然なまでの簡易な融資に関する報告をし,その決裁を得て,同貸付を実行したこと等の点にかんがみれば,被控訴人らに対し,保証債務の履行を請求することは,信義則に違反し又は権利の濫用であって許されない。これにより,本件抵当権も消滅した。 (2) 控訴人A農協の主張争う。 12 争点(10)(控訴人A農協の被控訴人らに対する不法行為を理由とする請求の当否)について(1) 控訴人A農協の主張被控訴人B組合が,総会の議決を経ることなく,本件保証契約(1)及び(2)を締結したとすれば,同組合の理事らは,控訴人A農協 を理由とする請求の当否)について(1) 控訴人A農協の主張被控訴人B組合が,総会の議決を経ることなく,本件保証契約(1)及び(2)を締結したとすれば,同組合の理事らは,控訴人A農協から被控訴人B組合が連帯保証することが本件各貸付の条件である旨告知されたのに,被控訴人B組合の法定の議決を経ることなく,独断で被控訴人B組合として連帯保証をし,もって,控訴人A農協をして,Kへの本件貸付(1)及び(2)を実行させたのであるから,理事らの行為は,民法44条1項にいう「理事がその職務を行うにつき」なした違法な行為であるといえる。したがって,被控訴人B組合は,同条項により,控訴人が被った損害を賠償する義務があり,また各理事には,直接の不法行為者として損害賠償義務がある。 また,上記保証が法人の目的外の行為であるとして被控訴人B組合に責任が認められないとしても,理事らは民法44条2項,719条により損害賠償責任を負う。 (2) 被控訴人らの主張ア被控訴人Cが被控訴人B組合を代表して本件保証契約(1)及び(2)を締結したのであるから,これが不法行為を構成するかどうかのみが問題となり,他の理事の行為は問題外である。 イ区画整理事業における業務代行者は,独力で資金を調達しなければならない(乙21,22)から,区画整理組合が業務代行者の借受について連帯保証することは目的外行為である。したがって,被控訴人Cのした本件保証契約(1)及び(2)の締結は,その職務につきなした行為ではない。 また,同契約締結は総会議決を欠くから,この点からも,被控訴人Cの職務とはいえない。 ウ行為の外形からみて職務行為であるといえたとしても,公益法人である被控訴人B組合が業務代行者でさえもないKの借受について連帯保証する行為 から,この点からも,被控訴人Cの職務とはいえない。 ウ行為の外形からみて職務行為であるといえたとしても,公益法人である被控訴人B組合が業務代行者でさえもないKの借受について連帯保証する行為が目的外行為であることは明白である。したがって,控訴人A農協は,この点を知った上で,本件保証契約(1)及び(2)を締結し,本件貸付(1)及び(2)を実行したのであるから,被控訴人B組合に対し,民法44条による損害賠償を求めることはできない。 エ被控訴人Cは,本件貸付(1)及び(2)が区画整理事業のため使用されると信じていたのであり,主債務者からの回収が不能になることなど予見不能であった。したがって,故意,過失はない。 また,行為態様からみて,被控訴人Cの行為が違法であるとはいえない。 オ本件貸付(1)及び(2)の回収が不能となった原因は,控訴人A農協がKに対し違法な員外貸付を行ったこと,Kに対する信用調査を怠ったことにある。 また,控訴人A農協が被控訴人B組合に対し総会議事録の提出を求めたならば,容易に本件保証契約(1)及び(2)が無効であることが確認できた。 これらの点からすると,被控訴人Cの行為と損害との間に因果関係はない。 第4 争点に対する当裁判所の判断 1 本件貸付(1)があったこと,本件貸付(1)について本件保証契約(1)が成立したこと,本件貸付(2)があったこと,本件貸付(2)について本件保証契約(2)が成立したことは当事者間に争いがない。 2 争点(1)(本件貸付(1)に関する8名の理事と控訴人A農協との保証契約の成否)について(1) 証拠(甲2の1,2,被控訴人C本人,被控訴人E本人)によれば,平成5年11月16日ころ,被控訴人B組合の臨時理事会が開催されたとする議事録が作成されており の保証契約の成否)について(1) 証拠(甲2の1,2,被控訴人C本人,被控訴人E本人)によれば,平成5年11月16日ころ,被控訴人B組合の臨時理事会が開催されたとする議事録が作成されており,また翌17日にも臨時理事会が開催されたとする議事録が作成されており,いずれも議題は「資金借入れに係る保証の件」とされ,16日分の議事録は,訴外会社が控訴人A農協より下水道設置に伴う負担金に充てるべき資金を借り入れるにつきその保証をすることを承認可決した,との内容であり,17日分の議事録は借入主を訴外会社ではなくKと改めたものであって,いずれも8名の理事の記名と押印があることが認められる。 しかし上記16,17日の臨時理事会における議決が現実にあったとしても,被控訴人B組合の意思決定に関するものであるから,被控訴人B組合が本件保証契約(1)を締結するについての承認議決であると解せられ,この議決があるからといって,これに出席した理事,あるいは,出席しなくともその議事録に押印した理事が,個人として,本件保証契約(1)と同一内容の保証をすることを承諾する旨の意思表示をしたとまで認めることはできないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 控訴人A農協は,本件貸付(1)の実行は被控訴人B組合理事の個人保証が条件であった,被控訴人B組合理事らもこのことを承諾していた等と主張するが,仮に,そのような条件が示されており,これを被控訴人B組合理事らが承諾していたとしても,保証の意思表示自体が認められない以上,前記結論を左右しない。 (2) 控訴人A農協は,平成5年11月29日に開催された被控訴人B組合の理事会において,8名の理事は,本件貸付(1)の連帯保証人となることを追認したと主張する。 しかしながら,追認の対象となる保証の意思表 農協は,平成5年11月29日に開催された被控訴人B組合の理事会において,8名の理事は,本件貸付(1)の連帯保証人となることを追認したと主張する。 しかしながら,追認の対象となる保証の意思表示が認められず,追認はあり得ないから,上記主張は失当である。 また,同主張は,8名の理事が上記理事会において,本件貸付(1)について個人として保証する旨の意思表示をしたとの趣旨と解されなくもないが,議事録等(甲8の2,3)には上記の点を窺わせる記載はなく,これによって上記主張事実を認めることはできないし,他にこれを認めるに足りる証拠もない。 (3) 以上によれば,上記争点に関する控訴人A農協の主張は採用できないから,控訴人A農協の被控訴人ら(被控訴人B組合を除く。)に対する本件貸付(1)についての保証契約に基づく請求は,その余の主張について判断するまでもなく,理由がない。 3 争点(5)(被控訴人B組合のした保証契約は土地区画整理法31条6号により総会議決を欠き無効であるといえるか。)について(1) 一般に,土地区画整理組合が他人の債務を保証する行為は,土地区画整理法31条6号(平成11年法律第25号による改正前は31条5号)所定の「組合の負担となるべき契約」の締結に該当するから,被控訴人B組合が本件保証契約(1)及び(2)を締結するためには,総会の議決を経なければならなかったといえる(これが同号に定める例外である「予算をもって定めるもの」であるとの主張,立証はない。)。そして,本件保証契約(1)及び(2)の締結について,これを承認する被控訴人B組合の総会の議決が存在しないことは当事者間に争いがないから,本件保証契約(1)及び(2)は総会の議決を経ずになされた違法なものである。 ところで,上記規定の趣旨は,保留地の処分 る被控訴人B組合の総会の議決が存在しないことは当事者間に争いがないから,本件保証契約(1)及び(2)は総会の議決を経ずになされた違法なものである。 ところで,上記規定の趣旨は,保留地の処分によって事業を維持する土地区画整理組合にとって,同組合がどのような債務を負担するかは事業施行上重要な事項であることから,予算をもって定めたもののほかは,組合の負担となるべき契約を締結するためには総会の承認議決を要することとし,組合員の権利を保護しようとした点にあり,定款等でその要件を軽減できないものとしたのである。このような法の趣旨に加えて,土地区画整理組合が,換地処分という公権力の行使を委ねられた公法人で,土地区画整理事業の施行地域内に土地所有権等を有する者が当然にその構成員となるなどの点から公益性の高い団体であること,上記の議決事項とされている点は法律上明定されているので契約の相手方が議決の必要な行為であることを認識するのは比較的容易であること等の点を総合勘案すると,本件保証契約(1)及び(2)のような総会の議決を経ずに締結された被控訴人B組合の負担となる契約は,契約の相手方との関係においても無効であると解するのが相当である。 したがって,被控訴人B組合のした本件保証契約(1)及び(2)は無効というべきである。 (2) この点につき,控訴人A農協は,「被控訴人B組合は平成8年12月15日に開催された第3回総会において,本件保証契約(1)及び(2)の締結を追認した。」と主張する。そして,控訴人A農協主張のとおり,平成9年7月付の事業概要書(甲15)には,事務費の内訳のうち借入金として控訴人A農協からの7億円の借入金があることが記載されている。 しかしながら,その記載内容(3枚目に「当社検討」といった記載がある。)や事務費 書(甲15)には,事務費の内訳のうち借入金として控訴人A農協からの7億円の借入金があることが記載されている。 しかしながら,その記載内容(3枚目に「当社検討」といった記載がある。)や事務費の合計額が,本件総会において承認された事業計画概要書(乙3)では34億4400万円とされているのに,甲15では,50億円とされていること等に照らすと,概要書(甲15)は被控訴人B組合が作成したものとは認め難い。のみならず,上記7億円の借入金に関する記載は事業概要書における記載であって,これから本件保証契約(1)及び(2)について総会の承認議決があったとまで認めることはできない。むしろ,上記総会の議事録(乙3)によれば,本件保証契約(1)及び(2)の承認は本件総会の議案とさえされていなかったことが認められる。そして,他に控訴人A農協の上記主張事実を認めるに足りる証拠はない。 もっとも,証拠(甲14)によれば,上記総会において組合員から本件貸付(1)及び(2)や本件保証契約(1)及び(2)についての質問があったこと,この質問を受けて,P監事が,「Kが控訴人A農協から借り受けた7億円について被控訴人B組合や理事が連帯保証人となっている。」などと言って説明したことが認められるが,それは説明にとどまるものであり,この事実から本件保証契約(1)及び(2)の承認議決があったと認めることはできない。また,被控訴人B組合のC理事長やP監事らが控訴人A農協宛に送付した文書中にも,同旨の記載があるが(甲17の2,18,19の1),理事会の議決をもって被控訴人B組合の行為として理解しているものと解され,これらをもって総会の議決があったとは認め得ない。証拠(甲15,被控訴人E本人)によれば,株式会社Qは,被控訴人B組合が訴外会社との業務委託契約を解除した後の業 行為として理解しているものと解され,これらをもって総会の議決があったとは認め得ない。証拠(甲15,被控訴人E本人)によれば,株式会社Qは,被控訴人B組合が訴外会社との業務委託契約を解除した後の業務代行者となる予定であったところ,同社作成の事業計画においては,7億円の債務の存在も考慮に入れて事業計画が作成されていたことが認められるが,これは本件保証契約(1)及び(2)が有効であった場合を想定して作成されたものであり,これにより上記承認議決があったとは認められない。 (3) そこで,被控訴人B組合が上記の無効を主張することが信義則に反するかどうかについて検討する。 証拠(甲20,27,乙24,証人K,証人R,被控訴人E本人)によれば,被控訴人B組合理事の一部の者らは,控訴人A農協に対し,本件貸付(1)及び(2)の実行を積極的に働きかけたこと,控訴人A農協は,これに対し,被控訴人B組合及び被控訴人B組合理事らが連帯保証することを条件にこれに応じたこと等の控訴人A農協の主張に沿う事実が認められる。 しかしながら,被控訴人B組合理事らは,控訴人A農協に本件貸付(1)及び(2)を実行するよう働きかけ,他のほとんどの組合員に諮ることなく,本件保証契約(1)及び(2)の締結に至ったことが認められ(甲14),このような場合に無効の主張を許さないのは,組合員の権利を保護しようとした前記規定の趣旨に反すること,控訴人A農協は,被控訴人B組合との間で本件保証契約(1)及び(2)を締結するに際し,前記の被控訴人B組合理事会議事録(甲2の1,2)は提出させたものの,土地区画整理法31条の規定を知らなかったため,総会の議決を経たかどうかは確認しなかったことが認められ(証人K,証人R),この点で金融業務を営むことを許された控訴人A農協にも落ち度が 出させたものの,土地区画整理法31条の規定を知らなかったため,総会の議決を経たかどうかは確認しなかったことが認められ(証人K,証人R),この点で金融業務を営むことを許された控訴人A農協にも落ち度があったこと等の事情にかんがみれば,前記の控訴人A農協の主張に沿う事実を考慮しても,被控訴人B組合が上記無効を主張することは信義則に反しないというべきである。 (4) 以上によれば,控訴人A農協の被控訴人B組合に対する本件保証契約(1)及び(2)に基づく請求は,いずれも理由がない。 4 小括上記2及び3の判断の結果,控訴人A農協の主位的請求については,5名の理事のした本件保証契約(2)の有効性の判断を残すのみとなった。合わせて被控訴人Cの請求にかかる,同人のした本件抵当権設定契約の有効性につき判断する(ただし,以下においては,説明ないし判断の便宜上本件貸付(1)及び本件保証(1)についても合わせて触れることがある。)。 5 争点(2)(控訴人A農協主張の5名の理事のした本件保証契約(2)及び本件抵当権設定契約は,主債務者及び借入金の使途の点で錯誤無効といえるか。)について(1) 被控訴人らは,「5名の理事は訴外会社が主債務者であると誤信して本件保証契約(2)を締結した。この点で錯誤がある。」と主張し,被控訴人C及び被控訴人Eはこれに沿う供述をしている。 しかしながら,被控訴人Eは控訴人A農協の理事として,Gは同監事として,平成5年12月16日開催の控訴人A農協理事会において,本件貸付(1)の主債務者がK個人であることの報告を受けたこと(甲10),5名の理事は,平成6年5月23日に開催された被控訴人B組合理事会において,Kから,K個人名義で2億円を借り入れる旨の説明を受け(甲8の4),同年5月30日ころ,債務者がKである たこと(甲10),5名の理事は,平成6年5月23日に開催された被控訴人B組合理事会において,Kから,K個人名義で2億円を借り入れる旨の説明を受け(甲8の4),同年5月30日ころ,債務者がKである旨明記されている本件貸付(2)の金銭消費貸借契約証書に連帯保証人として署名押印したこと(甲5)の各事実に照らすと,被控訴人C及び被控訴人Eの上記供述は信用できず,他に被控訴人らの上記主張を認めるに足りる証拠はない。 (2) 被控訴人らは,「5名の理事は,本件貸付(2)が被控訴人B組合の事業のために使用されるものと信じて,本件保証契約(2)を締結したのである。ところが,Kは,上記借受当初から,個人的使途に費消する意図であった。この点で本件保証契約(2)は錯誤により無効である。」と主張する。 しかしながら,証拠(乙13,証人K)によれば,f町に対する下水道負担金の支払義務が生じたのは平成6年8月30日であり,本件貸付(1)及び(2)当時,下水道負担金の支払義務は具体的には発生していなかったが,f町との間の下水道負担金をめぐる交渉は,それ以前から行われており,平成6年2月にはいったん覚書が締結されたものの,負担金の金額等をめぐる交渉が当初の予定よりも長引いたことが窺われる。このような事情にかんがみれば,Kが後に本件貸付(1)及び(2)による借入金を自己のため費消したことから直ちに,Kが当初より同借入金を自己のために費消する意図であったと推認することはできないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。加えて,保証契約を締結する場合,主債務者の借受金の使途は,主債務の内容ではないから,その使途に関する錯誤は,特段の事情のない限り,法律行為の要素の錯誤とはいえず,本件において特段の事情は認められない。 したがって,この点に関する被控訴人ら 使途は,主債務の内容ではないから,その使途に関する錯誤は,特段の事情のない限り,法律行為の要素の錯誤とはいえず,本件において特段の事情は認められない。 したがって,この点に関する被控訴人らの上記主張は採用できない。 6 争点(3)(控訴人A農協主張の本件保証契約(2)及び本件抵当権設定契約は,訴外会社又はKの詐欺に基づくとして取り消すことができるか)について被控訴人らは,訴外会社又はKが,当初から借入金を個人的に利用する意図を有していながら,5名の理事を騙し,主債務者は訴外会社で,借入金の使途は下水道負担金であると誤信させ,被控訴人B組合らに本件保証契約(2)を締結させたと主張する。 しかしながら,前記4の認定あるいは説示からすれば,同主張は前提とする事実を欠くから,採用できない。仮に,Kが当初より本件貸付(2)の借入金を自己のために費消する意図であり,この点で詐欺行為があったと認められるとしても,控訴人A農協がこれを知っていた,又は,知り得ることができたと認められるに足りる証拠はないから,この点からも上記主張は採用できない。 7 争点(6)(被控訴人B組合のした本件保証契約(2)が無効であることを前提とした場合,5名の理事のした本件保証契約(2)は錯誤無効といえるか)について証拠(甲15,被控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,本件貸付(2)による借受金は下水道負担金に充てられ,後日被控訴人B組合が住宅金融公庫から約10億円の融資を受け,これより返済する予定であったこと,5名の理事は,このような事情から自ら保証責任を負うことはないとの認識の下に,本件保証契約(2)を締結したこと,控訴人A農協もこの点を十分認識していたことが認められ,これらの事実にかんがみれば,5名の理事は,被控訴人B組合のした本件保証契約 を負うことはないとの認識の下に,本件保証契約(2)を締結したこと,控訴人A農協もこの点を十分認識していたことが認められ,これらの事実にかんがみれば,5名の理事は,被控訴人B組合のした本件保証契約(2)が有効であると信じ,この動機を黙示に表示して,本件保証契約(2)を締結したものと認められ,前記のとおり,結果的に被控訴人B組合のした本件保証契約(2)は無効であったのであるから,この点で,民法95条にいう錯誤があったといえる。 しかしながら,5名の理事は,公法人である被控訴人B組合の執行機関たる理事であったから,土地区画整理法等の法令を十分認識し,これを遵守して事業の遂行をしなければならない義務を負っていたといえる。にもかかわらず,被控訴人Cは,被控訴人B組合の代表者として,総会決議を経ないまま被控訴人B組合の本件保証契約(2)を締結し,土地区画整理法所定の手続を履践せず,その余の4名の理事は,上記の点を看過して上記保証契約を承認したのであって,これらの点にかんがみれば,5名の理事には被控訴人B組合のした本件保証契約(2)が有効であると信じたことにつき重大な過失があったというべきである。 したがって,5名の理事は,同人らがした本件保証契約(2)が錯誤により無効であると主張することはできないから,この点に関する被控訴人らの主張は採用できない。 8 争点(7)(本件貸付(1)及び(2)は,員外貸付として無効といえるか)について(1) 証拠(甲21,25,乙6 18,20,証人K)によれば,Kは,平成5年11月29日,控訴人A農協に対し正組合員としての新規加入を申込み,控訴人A農協の承諾を得て控訴人A農協の正組合員となったこと,Kは控訴人A農協に対し,同日出資金として100万円を支払ったこと,Kは,上記申込書に,Kの住所を「a市c 合員としての新規加入を申込み,控訴人A農協の承諾を得て控訴人A農協の正組合員となったこと,Kは控訴人A農協に対し,同日出資金として100万円を支払ったこと,Kは,上記申込書に,Kの住所を「a市c区dg丁目h-i」,耕作面積を「畑3アール」,農業従事日数を「年間70日間」と記載したこと,Kは,住民票上の住所を,平成5年11月16日に「a市m区n町J丁目k番l号」から「同市c区dg丁目h番i号」に移転し,同年12月3日に「同市m区n町J丁目k番l号」に戻し,さらに,平成6年5月6日に再度「同市c区dg丁目h番i号」に移転し,同年7月11日にこれを「同市m区n町J丁目o番p号」に移転したこと,「a市c区dg丁目h番i号」は,a市会議員Oの後援会事務所の所在地であって,Kが居住したことはないことが認められる。 また,控訴人A農協の定款(甲22)上,控訴人A農協の組合員とは,正組合員及び准組合員をいうものとされ,正組合員資格を有する者は,①3アール以上の土地を耕作する農民で,その耕作する土地又は住所が控訴人A農協の地区内にある者,②1年のうち60日以上農業に従事する農民で,その住所が控訴人A農協の地区内にある者等であり,准組合員資格を有する者は,①控訴人A農協の地区内に住所を有する個人で,控訴人A農協の施設を利用することが適当であると認められる者,②農事組合法人等この組合の地区内に住所を有する農民が主たる構成員となっている団体で,協同組織のもとに当該構成員の共同の利益を増進することを目的とするもの,その他控訴人A農協又は控訴人A農協の地区内に住所を有する農民が主たる構成員又は出資者となっている団体であって,この組合の施設を利用することが適当であると認められる者等とされている(定款8条)。 上記事実によれば,Kは本件貸付(1)及 住所を有する農民が主たる構成員又は出資者となっている団体であって,この組合の施設を利用することが適当であると認められる者等とされている(定款8条)。 上記事実によれば,Kは本件貸付(1)及び(2)を受けるため,形式的に住民票上の住所をc区内に移転させ,控訴人A農協の組合員となったことが明らかであり,本件貸付(1)及び(2)当時,Kが現実にc区内に住所を有していた事実はない。加えて,Kが現実にc区内に畑を所有し,これを耕作していた事実を認めるに足りる証拠もない。この点につき,Kは,「c区内に畑を購入した。」旨証言するが,一方で,「その場所は分からない。」などと証言しており,同証言は信用できない。 したがって,Kは,本件貸付(1)及び(2)の実行当時,実質的には控訴人A農協の組合員資格を有していなかったと認められるから,これらは違法な員外貸付であったといえる(農業協同組合法10条23項)。なお,控訴人A農協の定款には一定の条件の下で員外貸付を許容する旨の規定(定款2条6項,55条)があるが,本件貸付(1)及び(2)はこれに該当しない。 (2) しかしながら,員外貸付であることから当該貸付が当然に無効であると解するのは相当でなく,当該貸付をめぐる事実関係から,それが組合の目的の範囲内に属するものである場合には有効であると解するのが相当である。 そこで,これを本件についてみると,本件貸付(1)及び(2)は,控訴人A農協の地区内における土地区画整理事業の事業資金(下水道負担金)として使われる目的で実行されたものであり,被控訴人B組合から業務委託を受けた訴外会社の代表者に対する貸付けであったところ,本件区画整理事業の目的は同地区内における健全な住環境の整備であり,しかも同事業の対象土地の地権者のほとんどは同地区内の住民で 組合から業務委託を受けた訴外会社の代表者に対する貸付けであったところ,本件区画整理事業の目的は同地区内における健全な住環境の整備であり,しかも同事業の対象土地の地権者のほとんどは同地区内の住民であったから,同事業は控訴人A農協の事業目的に沿うものであったこと,③同事業の主体である被控訴人B組合は,控訴人A農協の准組合員としての資格を有すること(前記定款,証人R)等の点にかんがみると,本件貸付(1)及び(2)は,控訴人A農協の目的の範囲内の行為であったといえるから,有効である。したがって,この点に関する被控訴人らの主張は採用できない。 もっとも,本件貸付(1)及び(2)にかかる借入金は,Kがこれを他に流用したため,結果的には被控訴人B組合の利益のためには用いられなかったけれども,本件貸付(1)及び(2)の効力は当該契約が締結されたときの事情に基づいて判断すべきであるから,上記事実は前記結論を左右しない。 9 争点(8)(本件貸付(1)及び(2)が員外貸付である場合,控訴人A農協主張の各保証契約及び本件抵当権設定契約は詐欺に基づくものとして取り消すことができるか。また,錯誤無効といえるか)について証拠(被控訴人E本人)及び弁論の全趣旨によれば,5名の理事は,本件貸付(1)及び(2)の実行当時より,Kがc区内に居住する者ではなく,住民票上の住所移転をして5億円あるいは2億円の貸付が可能となるのを知っていたことが窺われ,この事実からすれば,この点に関する被控訴人らの主張は前提たる事実を欠くので採用できない。 10 争点(9)(控訴人A農協の被控訴人らに対する各保証債務履行請求は信義則に反するといえるか)についてまず,被控訴人らの主張のうち控訴人A農協が違法な員外貸付であることを隠して理事5名に本件保証契約(2)を締結さ 農協の被控訴人らに対する各保証債務履行請求は信義則に反するといえるか)についてまず,被控訴人らの主張のうち控訴人A農協が違法な員外貸付であることを隠して理事5名に本件保証契約(2)を締結させたとの点については,そもそも前記9に認定のとおり,これを隠していたとの事実が認められないから,前提を欠くので採用できない。 また,証拠(甲11)によれば,平成6年6月27日開催の控訴人A農協の理事会において,本件貸付(2)の実行に関する報告が行われたこと,これに用いられた資料は,融資先,融資金額,利息,融資日,返済期限及び既融資金残高を記載した比較的簡易なものであり,融資先であるKの資力等に関する情報を記載した資料等は提出されなかったことが認められる。しかしながら,前記認定のとおり,控訴人A農協だけでなく,5名の理事もまた,本件貸付(2)は被控訴人B組合の事業に使用され,住宅金融公庫からの約10億円の融資によって比較的近い時期に返済されると認識していたこと,実際にもそのような事情があったこと等の点にかんがみれば,上記報告が比較的簡易なものであったことを考慮しても,控訴人A農協の本件保証契約(2)に基づく保証債務の履行請求が信義則に反したり,権利濫用に当たるとはいえない。 そして,他に,この点に関する被控訴人らの主張を採用するに足りる事実は証拠上認められないから,同主張は採用できない。 11 小括以上により,控訴人A農協の主位的請求については,5名の理事のした本件保証契約(2)は有効であり,この限りで理由があるが,その余は失当であることになる。また,被控訴人Cのした本件抵当権設定契約も有効であり,同被控訴人の抹消登記手続請求は理由がないことになる。 そこで最後に,残った争点である,控訴人A農協の予備的請求,即ち,被控 ことになる。また,被控訴人Cのした本件抵当権設定契約も有効であり,同被控訴人の抹消登記手続請求は理由がないことになる。 そこで最後に,残った争点である,控訴人A農協の予備的請求,即ち,被控訴人B組合に対する民法44条に基づく(本件貸付(1)及び(2)による損害の)賠償請求及び8名の理事に対する不法行為を理由とする(本件貸付(1)による損害の)賠償請求の当否につき検討する。 12 争点(10)(控訴人A農協の被控訴人らに対する不法行為を理由とする請求の当否)について(1) 前記7において説示したところからすれば,被控訴人Cは,被控訴人B組合の代表者たる地位にあったから,土地区画整理法等の法令を十分認識し,これを遵守して事業の遂行をしなければならない義務を負っていたといえる。にもかかわらず,被控訴人Cは,総会決議を経ないで被控訴人B組合の代表者として本件保証契約(1)及び(2)を締結し,土地区画整理法所定の手続を履践しなかったのであるから,職務上の過失があったというべきである。 しかし,その余の理事らは,控訴人A農協に対して被控訴人B組合を代表して連帯保証の意思表示をした訳ではなく,理事会において,被控訴人B組合が連帯保証をすることを決議するという,内部的な手続をしたにとどまる(ただし,予備的請求として問題になる本件保証契約(1)に関しては,理事会で議決されたかさえも疑わしい。甲2の1,2,甲8の2,被控訴人C,被控訴人E)から,その行為は,控訴人A農協に対する不法行為とはいえず,個人として控訴人A農協に対する賠償責任を負う理由はない。 (2) そして,被控訴人Cのこの過失行為により,控訴人A農協は,被控訴人B組合に本件保証契約(1)及び(2)に基づき保証債務の履行を請求することができなくなったのであるから,民法4 由はない。 (2) そして,被控訴人Cのこの過失行為により,控訴人A農協は,被控訴人B組合に本件保証契約(1)及び(2)に基づき保証債務の履行を請求することができなくなったのであるから,民法44条の類推適用により,被控訴人B組合に対し,これによる損害の賠償を求めることができ,また,代表者として本件保証契約(1)及び(2)を締結した被控訴人Cに対し,個人として不法行為責任を問うことができるといえる。 (3) この点につき,被控訴人B組合は,「区画整理事業における業務代行者は,独力で資金を調達しなければならないから,区画B組合が業務代行者の借受について連帯保証することは目的外行為である。したがって,被控訴人Cのした本件保証契約(1)及び(2)の締結は,その職務につきなした行為ではない。また,同契約締結は総会議決を欠くから,この点からも,被控訴人Cの職務とはいえない。」と主張する。 しかし,民法44条にいう「法人の職務を行うにつき」とは,当該行為が外観上代表者の職務行為であることで足り,有効又は適法な行為であることは要しないと解せられる。本件では,本件保証契約(1)及び(2)は本件貸付(1)及び(2)上の債務を主たる債務とするものであったが,これらの貸付金は上下水道負担金の支払に充てられ,後に被控訴人B組合が住宅金融公庫からの融資金によって返済することが予定されていたことからすれば,本件貸付(1)及び(2)は被控訴人B組合の事業遂行のためになされたものであり,実質的には被控訴人B組合の借入れであったとみることができること,控訴人A農協だけでなく被控訴人B組合や被控訴人Cもまたこの点を十分認識していたことにかんがみれば,一般的には,業務代行者が独力で資金を調達すべきであることや総会議決を欠いたため本件保証契約(1)及び(2)が だけでなく被控訴人B組合や被控訴人Cもまたこの点を十分認識していたことにかんがみれば,一般的には,業務代行者が独力で資金を調達すべきであることや総会議決を欠いたため本件保証契約(1)及び(2)が無効であることを考慮しても,被控訴人整理本件保証契約(1)及び(2)は被控訴人Cの代表者としての職務行為であったというべきである。したがって,被控訴人B組合の上記主張は採用できない。 (4) また,被控訴人B組合は,「上記のような判断は,結局,土地区画整理法が,組合の負担となるべき契約には総会の決議を要すると規定した趣旨を没却させるものであって,不当である。」と主張するが,法律行為が有効であるかどうかの点と不法行為責任を負うかどうかの点とは別異の要件に基づく法律効果の有無の問題であって,被控訴人B組合が公法人である以上,その理事の不法行為によって他に損害を与えた場合には,その責任を負うと解するほかない。なお,被控訴人B組合は国家賠償法規定の公共団体であるといえるが,本件保証契約(1)及び(2)の締結行為は同法にいう公権力の行使には当たらないから,同法の適用は受けないので,上記不法行為をした理事に個人としての責任を負わせることに法律上の障害はない。 (5) しかしながら,他方,控訴人A農協は,農業協同組合法によって金融業務を行うことを許可された法人であるから,被控訴人B組合のような土地区画整理法によって設立された法人と保証契約を締結する場合には,その契約が同法に則ったものかどうかの点について十分調査し,その適法性を確認しなければならない義務があったというべきである。にもかかわらず,控訴人A農協はこれを怠ったから,この点で過失がある。また,控訴人A農協は,Kについてさしたる信用調査をしなかったばかりか,Kが本件土地区画整理事業の代行を受託し たというべきである。にもかかわらず,控訴人A農協はこれを怠ったから,この点で過失がある。また,控訴人A農協は,Kについてさしたる信用調査をしなかったばかりか,Kが本件土地区画整理事業の代行を受託した訴外会社の代表者であることから,近い時期に被控訴人B組合に対する住宅金融公庫からの融資金によって返済を受けられるものと軽信し,安易にK個人に本件貸付(1)及び(2)を実行し,これをKが自由に費消し得る状態のまま放置したのであって,この点でも控訴人A農協には過失があったというべきである。 したがって,過失相殺がなされるべきといえるが,その割合は,双方の過失の内容,特にその両過失が被控訴人B組合側の手続上の不備に起因するものであること等諸般の事情を考慮すると,控訴人A農協が4割,被控訴人B組合及び被控訴人Cがいずれも6割とするのが相当である。 (6) そして,前記争いのない事実にあるとおり,平成7年12月3日には本件各貸付金に対する遅延損害金の支払が遅滞するようになったのであるから,遅くともこの当時にはKからの回収が不能となり,前記不法行為による損害が発生したものと推認される。 13 結論よって,控訴人A農協の請求は,理事5名に対する主位的請求のうち本件貸付(2)の保証契約に基づく元金2億円とこれに対する未払いの約定損害金(理事らの責任は連帯責任であるが,その相続人の場合は,相続債務の限度で,他の理事らと連帯責任を負う。),被控訴人B組合に対する予備的請求(理事の不法行為に基づく損害賠償請求)のうち,本件貸金(1)(2)の合計元本7億円の6割である4億2000万円とこれに対する遅延損害金,被控訴人B組合の代表者である被控訴人Cに対する本件貸付(1)に関する不法行為を理由とする予備的請求のうち損害の6割である3億円とこれに対す 円の6割である4億2000万円とこれに対する遅延損害金,被控訴人B組合の代表者である被控訴人Cに対する本件貸付(1)に関する不法行為を理由とする予備的請求のうち損害の6割である3億円とこれに対する遅延損害金,の各限度で,それぞれ理由があるが,その余はいずれも理由がなく,被控訴人Cの請求は理由がないので,これと一部異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官能勢顯男裁判官齋藤憲次

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