【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第 一、二
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上、法律上の主張並に証拠関係は次に記載するほか、原判決記載の事実摘示と同一であるからこれを引用する。 第一、 控訴人の主張一、 本件年次有給休暇の請求は、権利行使の方法においても信義則に違背し、権利の濫用である。即ち、被控訴人は昭和三三年一二月九日に同月一〇、一一日の両日に亘る本件年次有給休暇の請求をしたのであるが、当時、被控訴人の勤務していた白石営林署では勤務時間の割振りが、始業午前八時一五分終業午後五時休憩午後〇時一五分―午後一時休息午前八時一五分―午前八時三〇分午後四時四五分―午後五時となつていて、午後の休息時間になれば退庁することが認められていたので、実態上午後四時四五分が退庁の時刻となつていた。ところが被控訴人から右有給休暇の請求がなされたのはこの退庁時刻の間際であつた。 この請求を同署経営課長を通じて受けた白石営林署長は、(イ)被控訴人はaに行くために年次有給休暇を請求するとのことであるが、aにおいては拠点闘争が行われることを予て聞いているし、拠点闘争の内容についてもいろいろな人から聞いているのでそのような行動に参加すべきでないことを説得し、(ロ)いま休まれると業務に差支えが生ずるので休暇は他の日に取つて貰いたいということを説明し、(ハ)このような時期にこのような休暇目的に対して休暇の承認をすることは他の職員の士気にも影響があると考えられるので被控訴人の請求を思い止まらせ るので休暇は他の日に取つて貰いたいということを説明し、(ハ)このような時期にこのような休暇目的に対して休暇の承認をすることは他の職員の士気にも影響があると考えられるので被控訴人の請求を思い止まらせようとし、(ニ)経営課長の言によれば、被控訴人は同課長に対し「駄目でも行く。」と言つている由であるが、このような言動は職員として不穏当であるからそのことを説明して被控訴人にその考えを変えさせようと思つて、同課長に対し直ちに被控訴人を署長室に呼んで来るよう指示したが、この間僅かに二、三分の間に被控訴人は既に姿を消し、行方をくらましてしまつていた。 ところで、被控訴人は、その言うところに従つても、前記一二月九日の朝には、既に同月一〇、一一日の両日aに行くことを決心していたというのであり、右九日には経営課長等と一緒に小原、越河財産区の実態調査に出張し終日行動を共にしていたのであるから、しようと思えばその間何時でも同課長に本件年次有給休暇の請求が申し出られた筈である。然るに、これをしないでおいて、態々退庁時刻の間際になつて突如として翌日以降の年次有給休暇の請求をするというがごときことは、使用者に対し時季変更権を行使できる時間的余裕を十分与えないこととなるのであつて、信義則に背き、権利を濫用するものである。 仮に一歩を譲つて、被控訴人が十二月九日の退庁時刻間際に本件有給休暇の請求をしたことが止むを得なかつたとしても、被控訴人としては白石営林署長が時季変更権を行使しないことを見届けてから退庁すべきであつた。 何故ならば、同署経営課長は被控訴人からその請求を受けた際、「駄目だ」と言つていたのであるから、被控訴人の所属長たる同署長が時季変更権を行使するかも知れないということは当然予測された筈であるし、被控訴人に「駄目でも行く。」と言われた経営課長がその場 た際、「駄目だ」と言つていたのであるから、被控訴人の所属長たる同署長が時季変更権を行使するかも知れないということは当然予測された筈であるし、被控訴人に「駄目でも行く。」と言われた経営課長がその場で署長に伺いを立てるために署長室へ入つて行つたことは被控訴人もこれを承知していたのであるから、被控訴人としては、同署長による時季変更権の行使の有無、或いはそれがどのように行使されるかを見届けるまで暫時その場に待つことが信義則に適う所以であると考えられるからである。そのために、通常の退庁時刻を若干経過することがあるとしても、午後五時までは本来勤務時間でもあるから、そのように待つことが不可能であつたとは言えない筈である。 しかるに、被控訴人のように、請求後直ちに退出し、行方をくらませてしまつたのでは、使用者が時季変更の前提となる有給休暇請求者の意見を聞くことが出来なくなるばかりか、時季変更の意思表示を請求者に伝達しようにも出来ないこととなるのであつて、被控訴人のかかる挙措は使用者の時季変更権の行使を妨害するものと言うべく、まさに権利の濫用である。 二、 本件年次有給休暇の請求に承認を与えることは、他の職員の士気に著しく悪影響を与え、ひいては職場全体の事業の正常な運営を妨げるものであつた。即ち、労基法第三九条第三項但書の「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、単にその職員の所属する部局の事務が当該休暇の承認により支障の生ずる場合丈でなく、これが承認を与えることにより他の職員の士気(モラール)を低下させ、ひいて職場全体の秩序ある運営を損うこととなる場合をも包含するものと解すべきであるが、本件の場合、従来主張のように白石営林署殊に被控訴人所属の経営課は通常の業務の上に臨時の業務も重つて頗る多忙であり、(一二月という月は通常業務の外に年末手当とか給与の 含するものと解すべきであるが、本件の場合、従来主張のように白石営林署殊に被控訴人所属の経営課は通常の業務の上に臨時の業務も重つて頗る多忙であり、(一二月という月は通常業務の外に年末手当とか給与の繰上支給などがあつて署全体としても毎年非常に忙しい上に、この年は昭和三三年の定員外職員の仲裁裁定の追給支給日を最終一二月二五日ということで事務を進めていたほか、被控訴人の所属係は青森営林局の官行地造林の調査という臨時の業務が重つていた。)、被控訴人はこの繁忙期に警職法改悪反対統一行動(政治スト)に対する処分撤回闘争参加という公共企業体職員として許さるべきでない行動に出るため年次有給休暇を請求するというのであつたから、これを承認することは他の職員の士気に著しく悪影響を与え、ひいては職場全体の秩序ある正常な運営を害するものであつた。従つて、この点においても本件には労基法第三九条第三項但書の理由があり、白石営林署長は同年一二月九日午後六時頃発信の被控訴人宛の電報によつて時季変更権を行使しているのである。 三、 被控訴人に対する白石営林署長の不承認の措置は被控訴人を差別待遇したものでない。即ち、本件有給休暇請求のなされた昭和三三年一二月初旬頃、白石営林署長が職員からの有給休暇請求を不承認としたのは被控訴人からの請求事案だけでそのほかはいずれも承認されているのであるが、それは従来主張のような正当な事由に基いて不承認としたものであつて、被控訴人を不当差別待遇したものではない。その頃、被控訴人以外の者で年次有給休暇の請求をしたものは数人に過ぎず、それとても病気等の止むを得ない事由に因るものであり、且つ、その大半は業務極めて多忙の折柄、時間単位により請求している状態であつたので、いずれも承認としたものである。 第二、 被控訴人の主張当審における控訴人 の止むを得ない事由に因るものであり、且つ、その大半は業務極めて多忙の折柄、時間単位により請求している状態であつたので、いずれも承認としたものである。 第二、 被控訴人の主張当審における控訴人の主張は争う。 第三、 証拠関係控訴代理人は、乙第二二号証の一乃至七、第二三号証の一乃至九、第二四号証の一乃至一四、第二五号証の一乃至一六、第二六乃至第二八号証、第二九号証の一乃至三、第三〇号証の一乃至五、第三一乃至第三四号証を各提出し、当審証人A、同Bの各証言を援用し、甲第七、八、一〇、一一号証の各成立及び同第九号証中の三本木営林署長名義の押印部分の成立はいずれも認めるけれども、同第九号証のその余の部分の成立は不知と述べた。 被控訴代理人は、甲第七乃至第一一号証を各提出し、当審証人Cの証言と当審における被控訴本人尋問の結果を援用し、当審において新に提出された乙号証の中、第二六号証の成立は知らないがその余は全部成立を認めると述べた。 理由 一、 被控訴人が昭和三一年四月林野庁一般職員として控訴人に雇用され、以後白石営林署に勤務して公共企業体等労働関係法(公労法)の適用をうける職員であること、同人は昭和三三年一二月九日当時、同署経営課造林係に所属し、一三日間の年次有給休暇請求権を有していたこと、同人は同月九日同署備付の年次有給休暇簿に同月一〇、一一日の二日間年次有給休暇を請求する旨記載し、これを所属の経営課長を経由して白石営林署長に提出し、右二日間の年次有給休暇を請求し、この両日出勤しなかつたこと、同署長はこの請求を不承認として欠勤に取扱い同月二五日に支払うべき賃金からこの欠勤分として金六五〇円を差引いたことは当事者間に争いがない。 以上の争のない事実によれば、被控訴人は公労法第二条第二項第二号所定の職員である として欠勤に取扱い同月二五日に支払うべき賃金からこの欠勤分として金六五〇円を差引いたことは当事者間に争いがない。 以上の争のない事実によれば、被控訴人は公労法第二条第二項第二号所定の職員であるから、同法第四〇条第一項第一号により国家公務員法第二条第三項並にこれに基づく人事院規則の適用が排除され、年次有給休暇については労基法第三九条の規定がそのまま適用になるものであること明らかである。 二、 被控訴人は、労基法所定の年次有給休暇請求権は形成権であるからその効果が生ずるためには使用者の承認を要しないと主張し、控訴人は、この権利は使用者に対して有給休暇の付与承認を請求し得る請求権たるに止まるものであるから、使用者の承認のない限りその効果は生じないと主張するので、まずこの点について判断する。 労基法第三九条第一、二項は、労働者が所定の期間、所定の割合以上の出勤で継続勤務をした場合に、使用者はその労働者に対して所定日数の有給休暇を与えなければならないと規定しているのであるが、思うに、この規定は、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えることによつて労働者の心身の疲労を回復させ労働力の維持培養を図るという生産性の見地からする考慮も其処に存するとは言え、その主たる立法の趣旨は、労働契約が生きた人間の労働力の売買(即ち労働時間内の拘束)を内容とするものであるところから、憲法第二五条の精神に従い、同法第二七条第二項を具体化するものとして、労働者が人たるに値する生活を営むことができるようにするために、その最低労働条件を定めたものであつて(労基法第一条参照)、労働者に賃金を得させながら、一定期間労働者を就労から開放することにより、継続的な労働力の提供から生ずる精神的肉体的消耗を回復させると共に、人たるに値する社会的文化的生活を営むための金銭的、時間的 、労働者に賃金を得させながら、一定期間労働者を就労から開放することにより、継続的な労働力の提供から生ずる精神的肉体的消耗を回復させると共に、人たるに値する社会的文化的生活を営むための金銭的、時間的余裕を保障しようとするとこ<要旨第一>ろにあると解するのが相当である。而して、労基法第三九条第一、二項の要件が充たされた場合には、法の定</要旨第一>める労働条件の一として、使用者は一定日数の労働義務を免除し労働者を就労から開放することを国家から一方的に義務づけられるのであり、反面、労働者はそれによつて当然一定日数の労働義務を免除され、その日数の就労から開放されるという一種の種類債権を取得することになるのであるから、この権利義務発生のために更に労働義務免除という使用者の意思表示を必要とする余地はない訳である。 そして、この種類債権は一定日数の労働日が個々に指定されることによつてその目的物が特定され、その特定された日が有給休暇日となつてその日の労働義務は消滅することになるのであるが、同条第三項が「使用者は有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。但し、請求された日に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることが出来る。」と規定しているのは、有給休暇の日を何時に指定するかは労働者を使用して事業の運営に当る使用者にとつても重大な関心の存するところではあるけれども、前示のとおり、有給休暇の制度は労働者が人たるに値する生活を営むことが出来るように保障することを主たる立法の趣旨とするものであるところから、この趣旨に照して、労働義務の免除される休暇の日はまず労働者の意思に従つてこれを決定させることが最も効果的であるとの見地に基づき、この指定権を特に労働者に与え、唯、同項但書の事由がある場合に限つて使 の趣旨に照して、労働義務の免除される休暇の日はまず労働者の意思に従つてこれを決定させることが最も効果的であるとの見地に基づき、この指定権を特に労働者に与え、唯、同項但書の事由がある場合に限つて使用者は労働者の指定を拒否し別の時季を更に指定するよう労働者の意思を聞くことが出来るものとして、その限度で使用者の利益との調整を図つたものと解すべきであるから、有給休暇が何時取らるべきかは、右但書の事由とこの事由による使用者の拒否の無い限り、労働者の指定によつて決定され、その外に更に使用者の承認を得ることは必要でないと言うべきである。従つて、労働者から有給休暇の請求、即ち有給休暇日の指定があつても、使用者の承認がない以上、有給休暇にはならないという控訴人の主張は採用することが出来ない。 控訴人は、労基法第一一九条が同法第三九条違反の罪に対し刑罰をもつて臨んでいるのは、右第三九条において、休暇の効果発生前における使用者の行為(承認若しくは不承認)を予定しているからであると主張するけれども、有給休暇となるべき日が、前示のとおり、法律的には労働者の意思によつて一方的に決定され得るものであるとは言つても、現実の社会生活において経済的な実力の相違から使用者に対して従属的地位を余儀なくされている労働者の権利行使、若しくは有給休暇を現実にとることが使用者によつて事実上妨害されるということはあり得ることであり、この罰則の規定は労働保護法としての性格を有する労基法がかかる場合を考慮して労働者保護の見地から、前示有給休暇日指定権の正当な行使乃至はその行使の効果として現実に有給休暇をとることが使用者に事実上妨害されることを防止するため、その妨害行為を「第三九条違反」として刑罰をもつて臨んでいるものと解せられるのであるから、これをもつて前示の判断を左右する根拠とは認 に有給休暇をとることが使用者に事実上妨害されることを防止するため、その妨害行為を「第三九条違反」として刑罰をもつて臨んでいるものと解せられるのであるから、これをもつて前示の判断を左右する根拠とは認め難い。 三、 控訴人は、被控訴人が本件有給休暇を請求した真の目的はa営林署における違法不当な大衆交渉に参加し、この闘争を支援することにあつたのであり、他面、年次有給休暇の制度は、長期労働によつて低下する労働力の維持培養を目的とし、それ故に使用者に対し、労務の給付を受けないで賃金の支払義務を強制しているものであるから、本件のような請求は信義則違反、或いは有給休暇請求権の行使として本来認められている範囲を逸脱した権利の濫用であると主張する。 (一) しかしながら、年次有給休暇というのは、前示のとおり、労働契約が生きた人間の労働力の売買を内容とするものであり、その性質上就労時間内の拘束を伴うものであるところから、賃金を得させながら、一定期間労働者を就労から開放することにより、労働者をして金銭的にも時間的にも人たるに値する生活を営むことが出来るように保障することを主たる立法の趣旨となるものであると理解すべきものであり、有給休暇請求権と言うのはかかる趣旨で設けられた有給休暇日の指定権を意味するものと解せられるのである。而して、この指定権は労基法の規定によつて労働者に附与されているのであり、この指定によつて当該指定日の労働義務は消滅し、(即ち、その日は休暇となり)、労働者はその日の就労から開放されることになるのであるが、労働者がこの休暇を如何なる目的で如何なる用途に利用するかはわが国における法律の何等関知しないところであるから、就労から開放されるという本質において有給休暇もまた一般の休日と異るところはないのである。唯、異るところは、それが有給であると 用途に利用するかはわが国における法律の何等関知しないところであるから、就労から開放されるという本質において有給休暇もまた一般の休日と異るところはないのである。唯、異るところは、それが有給であるという一点てあるが、これとでも有給休暇に賃金が支払われるのは、その期間中労働者に対して何等かの休暇利用目的の制限若しくは使用者の支配を存置せしめようとするためではなく、労働者が就労から開放されて人たるに値する生活を現実に営むことができるようにその金銭的根拠を保障しようとする趣旨に基づくものと解せられる(労基法第一条参照)のであるから、このことをもつて有給休暇の本質が右と異るものであると言うことは出来ない。 そして、就労から開放される有給休暇日において、労働者がこれを如何なる用途に利用するかは、一般の休日と同様に、もとより労働者の自由であると言うべく、労働者としては有給休暇の請求に際しては単に休暇となるべき日を指定しさえすればそれで十分であつて、休暇利用の方法用途まで一々申出る必要はないと解せられるのであるから、このような休暇の利用目的如何によつて、有給休暇の請求自体が本来認められている範囲を逸脱しているとか、逸脱していないとか言うのは当らないのである。労基法第三九条第三項但書の事由による使用者の拒否がない限り、労働者は何時でも自己の希望する時期に休暇となるべき日を指定して就労から開放され、その休暇日を自らの責任において自由に利用することができる、これが労働者の権利として労基法の保障するところである。 <要旨第二>従つて、控訴人は、被控訴人が本件有給休暇を請求した真の目的は違法な大衆交渉に参加し、この闘争を支</要旨第二>援することにあつたと主張するけれども、譬えそうだとしても、それは労基法の定める有給休暇請求権の行使とは次元を異にする休暇の使 を請求した真の目的は違法な大衆交渉に参加し、この闘争を支</要旨第二>援することにあつたと主張するけれども、譬えそうだとしても、それは労基法の定める有給休暇請求権の行使とは次元を異にする休暇の使用目的という別異の事項について被控訴人がその責任で決定したまでのものというべく、有給休暇請求権の行使としてはなお依然として法によつて与えられた正当な権利行使の範囲内にあると認むべきものであるから、その行為が労基法以外の分野において懲戒若しくは刑罰等の対象として問擬される場合のあることは格別、これをもつて信義則に反するとか、有給休暇請求権の行使として本来認められている範囲を逸脱したものであるとか、権利の濫用であるというのは当らない。この点に関する控訴人の主張は採用することが出来ない。 (二) 仮に然らずとしても、この点に関する控訴人の主張は採用することが出来ない。その理由は、左に記載するほか、原判決一五枚目裏一三行目から同二四枚目表二行目までに記載のそれと同一であるからこれを引用する。 原判決一七枚目裏六行目の「証人D」とある次に「当審証人C」を、同一七枚目表一行目の「乙第七号証の一、二」とある次に「乙第二八号証を、同枚目表三行目の「同E」とある次に「(A、Bについては原審及び当番)」を、同枚目表一四行目の「同A」の次に「及び当審証人A、同C」を、同一八枚目裏一一行目の「証人D」の次に「及び当番証人C」を、同枚目裏一三行目の「乙第一五号証の一、二」の次に「乙第二七号証」を、同一四行目の「A」の次に「(原審及び当審)」を、同二〇枚目裏三行目の「原告本人尋問」の前に「原審及び当審における」をそれぞれ加える。 四、控訴人は、本件有給休暇請求権の行使は、その行使の方法においても信義則に違背し、権利の濫用であると主張する。 よつて按ずるに、被控訴人が 問」の前に「原審及び当審における」をそれぞれ加える。 四、控訴人は、本件有給休暇請求権の行使は、その行使の方法においても信義則に違背し、権利の濫用であると主張する。 よつて按ずるに、被控訴人が昭和三三年一二月九日白石営林署経営課長を通じて同署々長に同月一〇、一一日の年次有給休暇を請求したことは当事者間に争いがなく、原審証人F、原審及び当審証人Bの各証言によれば、この請求がなされたのは同月九日午後四時三〇分頃被控訴人が経営課長等と共に現地調査の出張から帰庁した後であつて(原審及び当審における被控訴本人の供述にはこの請求のなされた時刻が午後四時二〇分頃であつたという部分があるけれども、この供述は原審証人Fの証言に照して措信し難い。)、当時、白石営林署では勤務時間の割振りが、始業午前八時一五分、終業午後五時、休憩午後〇時一五分―午後一時、休息午前八時一五分―午前八時三〇分、午後四時四五分―午後五時となつていて午後の休息時間(午後四時四五分―)に入れば退庁することが認められていたので、この請求は退庁時刻に切迫してなされたものであることが認められる。 また、被控訴人が同月九日同署経営課長等と共に小原越河財産区の現地調査に出張したことは当事者間に争いがなく、原審及び当審における被控訴本人の供述によれば、被控訴人は同日の朝出張に出発する間際にaから電話連絡のあつたことを知らされ、その時点において、同月一〇、一一日両日自らaに行くために有給休暇を請求する決意を定めていたことが認められる。 更に、原審証人F、原審及び当審証人Bの各証言と原審及び当審における被控訴本人の供述によれば、この有給休暇の請求に際しては被控訴人と経営課長との間に、「明日も現地へ出張するのですか。」「明日は出張しない。」「それでは明日から年休を下さい。」「とこへ行くのか。」「 被控訴本人の供述によれば、この有給休暇の請求に際しては被控訴人と経営課長との間に、「明日も現地へ出張するのですか。」「明日は出張しない。」「それでは明日から年休を下さい。」「とこへ行くのか。」「aです。」「それでは駄目だ。」「駄目でも行きます。」とのやりとりがあつて、同課長は直ちに署長室に赴き、伺を立てたところ署長から被控訴人を署長室に伴つてくるよう指示されて二、三分の後に自席に戻つたのであるが、その時被控訴人は既に退庁して庁内に見当らず、そのため同課長は早速被控訴人が居住していた白石営林署の寮や国鉄白石駅まで行つて被控訴人を探したけれども遂に探し出すことは出来なかつたことが認められる。 しかしながら、被控訴人が本件有給休暇の請求をする決意を定めた時が九日分朝であつたとは言つても、それは前示のとおり経営課長らと共に小原、越河財産区の現地調査に出張する出発間際のことであるし、成立は争いのない乙第一号証の一乃至三、原審証人F、原審及び当審証人Bの各証言と原審又び当審における被控訴本人の供述によれば、当時白石営林署では職員が有給休暇を請求するには通常本人が各課備付の年次休暇簿に休暇の日、日数累計、事由を記入の上押印をして所属の課長に提出する方法がとられていたことが認められるのてあるから、被控訴人としてはこの出張の時間中は右の通常の方法による有給休暇の請求はしようにも出来ない訳であるし、また同人が譬えこの出張時間中に申出たとしてもそれが署長にまで届くのは帰庁後に請求するのと異るところはないものと言うべく、被控訴人が右現地の出張から帰庁した時刻が同日午後四時三〇分頃であつたことは前示認定のとおりであるから、その後において(原審証人Fの証言と原審及び当審における被控訴本人の供述によればその直後と認められる。)被控訴人が本件有給休暇の請求をした 午後四時三〇分頃であつたことは前示認定のとおりであるから、その後において(原審証人Fの証言と原審及び当審における被控訴本人の供述によればその直後と認められる。)被控訴人が本件有給休暇の請求をしたとしても、それは同人にとつて時間的に止むを得ないものと言うべきであり、他面被控訴人がことさら事を構えてその休暇手続を就業時間の終了間際にした形跡を認められる資料もないしするのでこれが信義則に反するとか、権利の濫用であると非難するのは当らない。 更に、原審証人F、原審及び当審証人Bの各証言によれば、白石営林署長Bは、同年一二月三日頃他の営林署長等と共に仙台に会合した際、上部機関である青森営林局作業課長から警職法改悪反対統一行動に参加した職員の処分撤回闘争の情勢について説明をうけると共に、近くこの闘争の一環としてaでも拠点闘争が行われ、県内労働組合分会から応援に行くことが予想されるから、そのような者がある場合には阻止するように指示されたため、その当時において既にaへ行くための有給休暇の請求がなされればこれを承認しないように取扱うことを決意し、その後このことを所部の課長にも伝達していたもので、さればこそ経営課長は被控訴人から本件有給休暇にaへ行くと聞くや言下に前示のとおり「駄目だ。」と述べたものであることが認められるのであるから(なお、当時白石営林署においては有給休暇を請求するのに際し、その利用目的(事由)を申出る取扱とされていたことは前示認定のとおりである。)この白石営林署長の決意は本件請求が九日の午前中になされると同日の午後四時三〇分以降においてなされるとに拘らず、既定のものとして異るところはないものと言うべく、従つて、この上更に使用者に対して時季変更権を行使出来る十分な時間的余裕を与えなければならないという控訴人の主張はこの点から見ても理由 るとに拘らず、既定のものとして異るところはないものと言うべく、従つて、この上更に使用者に対して時季変更権を行使出来る十分な時間的余裕を与えなければならないという控訴人の主張はこの点から見ても理由がない。 次に、控訴人は、被控訴人が前示のとおり有給休暇の請求後直ちに退庁してしまつたことを掴まえて、使用者の時季変更権の行使を防害する権利の濫用であると主張するけれども、既に述べたように有給休暇請求権の行使というのは休暇となるべき日の指定を意味するのであり、労基法第三九条第三項但書の事由が客観的に存在しない限り、当該指定日の労働義務はこの指定だけによつて消滅することになる(即ち休暇日となる。)のであつて、本件においでは後記のとおり、右但書の事由が認められない場合てあるから、もともと使用者が行使すべき時季変更権なるものは存在しないものというべく、従つて被控訴人がそのように有給休暇の請求後直ちに退庁してしまつたからといつて、それが控訴人の言うように時季変更権の行使を防害するものであるとか、権利の濫用であるというのは当らない。 この点に関する控訴人の主張もまた理由がない。 <要旨第三>五、 控訴人は、本件有給休暇の請求に対しては、労基法第三九条第三項但書の事由に基づく適法な時季変更権</要旨第三>の行使がなされていると主張する。よつて按ずるに、被控訴人が昭和三一年四月林野庁一般職員として雇用された者で、以後白石営林署に勤務し、昭和三三年五月一日からは同署経営課造林係に所属して造林関係等の業務に従事していたこと、同人が同年一二月八、九日の両日経営課長等と共に青森営林局から来署したGに同行し、小原越河財産区等の現地調査に出張したこと、当時経営課所属のHが長期療養後の勤務で健康がすぐれなかつたことはいずれも当事者間に争いのないところである。 成立に 共に青森営林局から来署したGに同行し、小原越河財産区等の現地調査に出張したこと、当時経営課所属のHが長期療養後の勤務で健康がすぐれなかつたことはいずれも当事者間に争いのないところである。 成立に争いのない乙第二四号証の一乃至一四、原審証人Fの証言と同審における被控訴本人の供述によると、昭和三三年一二月初め当時、同署経営課は国有林の経営を担当し、治山係三名、収穫係五名、造林係六名の三係で構成され、この造林係は更に種苗係一名(T)、官行造林係二名(H、被控訴人)国有林係二名(M、外一名)運転手一名から成つていたが、被控訴人は官行造林係に所属し、係の主査はHであつたけれども同人は前記のとおり健康がすぐれなかつた事情もあつて被控訴人がその補助をしており、旁ら時には種苗係の仕事も手伝つていたこと、官行造林の業務のうち現地に出て働く所謂外業は毎年四月頃から一二月頃までがその仕事の時期であるが、これは主に本署外の担当区ですることになつており、署の係の仕事は書類の整理作成等の所謂内業が主であり、外業のように特に季節的な仕事の時期はないがそのうちでも毎年四、五月頃がとりわけ多忙であること、被控訴人は前記のとおり昭和三三年五月一日からこの仕事についたもので当時右係に移つて来てから日も浅く係の仕事には未熟であつたことが認められる。 原審証人Gの証言とその証言によつて成立を認め得る乙第二号証の一乃至一四、原審証人F、原審及び当審証人Bの各証言と原審における被控訴本人の供述によれば、昭和三三年九月林野庁から青森営林局に宛てて、分収造林特別措置法が国会でとり上げられ、従来の官行造林地についても経営面で考慮を払わなければならなくなつたことと大正九年に始まつた官行造林の伐採期が近づいたことなどから、今後の官行造林事業の運営上の基礎資料とするため臨時に実態調査をして 従来の官行造林地についても経営面で考慮を払わなければならなくなつたことと大正九年に始まつた官行造林の伐採期が近づいたことなどから、今後の官行造林事業の運営上の基礎資料とするため臨時に実態調査をして資料を作成し昭和三四年四月末日までに提出するように要請があつたこと、これに基づいて青森営林局経営部計画課のGが昭和三三年一二月六日朝白石営林署管内の小原、越河財産区の実態調査のため同営林署に同月一一日までの予定で来署し、同署経営課長Fに改植関係の資料、主伐間伐関係の資料、昭和三三年九月頃における立木の処分価調、基本図嵌入図等の提出を求めたこと、右嵌入図は官行造林図の写に改植の結果を嵌入記載したものであつて本来担当区において改植の都度作成されているべきものであるがこれが未だ出来ていなかつたので、Gは予め青森営林局から携行して行つた同局保管簿冊の写並に前案の図面に基づいて現地調査に臨むこととし、(嵌入図を持つて行かなければ現地調査が出来ないという訳のものではない。)、唯白石営林署に滞在中に右嵌入図が出来上ればこれと現地調査の結果とを対比し、不明の点があればその場で問い訊し、説明を求めるなり再検討して貰うということも可能であつて、調査をより正確なものとすることが出来るので、同署滞在中である同月一〇日までにこれを作成整備するようFに依頼したこと、そこで同人は同月六日直ちにこの作成の作業を前記Hに命じたのてあるが、同課長としでは同月一一日までには間に合うという見透しであつたので、被控訴人にはこのような資料作成のことは命ぜず、被控訴人には八日の朝になつて同月八、九日の両日Gに同行して経営課長等と共に現地に出張することを命じたこと、この出張に当つても被控訴人は格別その目的を告げられたこともなく、八日は被控訴人の外に経営課長F及び担当区の伊蔵春夫が右Gに同 九日の両日Gに同行して経営課長等と共に現地に出張することを命じたこと、この出張に当つても被控訴人は格別その目的を告げられたこともなく、八日は被控訴人の外に経営課長F及び担当区の伊蔵春夫が右Gに同行して越河、小原地区に出張し、九日には同課長、被控訴人と右Iが同行して小原越河地区に出張したのであるがその際にも被控訴人が特に同行の目的を告げられたことはなく、現地の案内説明等は両日共専ら右F及びIがこれをしていたこと、もつともFとしてはこの機会に被控訴人をして将来のために少しでも現地の事情を知らしめることとその結果後で前記資料の作成を手伝つて貰うという意図でこの同行を命じたものであること、右資料の作成は結局Gの滞在中に間に合わないことがわかつたので、同人は予定を一日繰上げて同月一〇日古川営林署に出発したが、その際青森営林局へ帰庁する予定日を告げ、その頃までに同局宛所要の資料を送付するように言い置いたので、同署経営課では右資料の嵌入図面一一枚のうち二枚は女子職員に手伝つて貰つて作成し、残り九枚はHが作成して右Gから依頼された同人の帰庁予定日までには全部の資料を間に合うように送付し、Gにおいても同人の担当した分は林野庁が指定した期限に間に合うよう調査報告を終了したことが認められる。 原審及び当審証人Bの証言と原審における被控訴本人の供述によれば、昭和三三年には定員外職員についての仲裁々定が出され、これに基づく追給を同年一二月二五日までに支払うべき臨時の給与事務があり、右定員外職員の給与の支払は経理課の担当であるが、その計算は支給を受ける労務者を使用している所管各課においてすることになつていたことが認められる。 本件有給休暇の請求がなされた昭和三三年一二月初旬頃、白石営林署長が職員からの有給休暇請求を不承認としたのは被控訴人からの本件請求事案だ いる所管各課においてすることになつていたことが認められる。 本件有給休暇の請求がなされた昭和三三年一二月初旬頃、白石営林署長が職員からの有給休暇請求を不承認としたのは被控訴人からの本件請求事案だけでそのほかはいずれも承認となつていることは控訴人の自認するところであり、成立に争いのない乙第二二号証の一乃至七、同第二三号証の一乃至九、同第二四号証の一乃至一四、同第二五号証の一乃至一六と原審及び当審における証人Bの証言によれば、Bは昭和三一年一二月一六日から昭和三四年一二月一五日まで三年間に亘つて白石営林署長の職に在つたのであるが、この間職員からの有給休暇請求を不承認としたのは本件のほか一、二度他の時期に変更させたことがある丈で他は全部承認としていること、白石営林署では昭和三三年一二月中だけでも被控訴人のほか、庶務課J(同月一八日、〇・五日間)、経理課K(同月八日、三時間)、同L(同月二二、二三、二六、三日間)、経理課M(同月二、二五日、二日間)、同H(同月一一、一三、二二日、三日間)、同N(同月二、一六、一七、一九日、一日九時間)、事業課O(同月九、一〇、一三、二二日、二日一時間)、同P(同月一八、二六日、一・五日間)、同Q(同月六日、〇・五日間)、同S(同月一六、一七日、一日間)、同R(同月二四日、二時間)、同T(同月一二日、一日間)、同U(同月一三日、〇五日間)等が夫々有給休暇を請求しており、更に被控訴人においても本件請求以外に同月一―三日(二日間)、一六日(三時間)、一九日(一日間)の有給休暇を請求しているが、これ等はいずれも承認となり、時季変更権の行使はなされていないのであつて、不承認となつたのは本件の請求だけであることが認められる。 また、前記乙第二二号証の一乃至七、第二三号証の一乃至九、第二四号証の一乃至一四、第二五号証 時季変更権の行使はなされていないのであつて、不承認となつたのは本件の請求だけであることが認められる。 また、前記乙第二二号証の一乃至七、第二三号証の一乃至九、第二四号証の一乃至一四、第二五号証の一乃至一六によれば、白石営林署で被控訴人が本件有給休暇の請求をした一二月一〇、一一日の両日のうちに有給休暇の請求をしたのはほかに事業課所属のO(一〇日の一日間)がある丈で、それ以外に有給休暇を請求していた者はないことが認められる。 以上の事実に従つて、年次有給休暇の制度が法によつて保障されている以上労働者の誰かが有給休暇をとることがあるということは事業を運営する上に本来予定されているべきであることを考慮に入れながら、白石営林署殊に被控訴人の所属していた経営課の業務、人員、被控訴人の配置、経験、熟練の度合、担当業務の内容、作業の繁閑、代行者による作業の能否、時期を同じくして有給休暇を請求した者の有無、人数等諸般の事情を綜合すると、本件有給休暇の請求がなされた昭和三三年一二月一〇、一一日当時、白石営林署、特に被控訴人所属の経営課では通常の業務の上に臨時の業務が重つてかなり多忙であつたとは認められるけれども、それだからと言つて被控訴人の本件有給休暇をとることが、控訴人の事業の正常な運営を妨げる場合であつたとまでは認め難いのであり、他にこの事実を証明すべき証拠はない。 控訴人は、更に当時被控訴人所属課が多忙であつた許りでなく、この繁忙期において本件のように処分撤回闘争参加という職員としては許されない行動に出るための有給休暇を承認することは、他の職員の士気に悪影響を与え、ひいては職場全体の秩序ある正常な運営を害するものであつたと主張する。 しかしながら、被控訴人所属の課が多忙であつたと言つてもそれによつて労基法第三九条第三項但書にいう事業の正常な に悪影響を与え、ひいては職場全体の秩序ある正常な運営を害するものであつたと主張する。 しかしながら、被控訴人所属の課が多忙であつたと言つてもそれによつて労基法第三九条第三項但書にいう事業の正常な運営を妨げる場合であつたとまで認め難いことは右に判示のとおりであり、本件有給休暇請求の目的が処分撤回闘争の参加という職員として許されない行動に出ることにあつたとしても、そのような休暇利用の目的如何によつて有給休暇請求権行使の能否が左右さるべきものでないこと並びに然らずとしてもその事実の認め難いことは前示記載のとおりであるから、本件有給休暇の請求は労基法の定める適法な権利行使に過ぎないものというべく、従つてこれを容認することこそが法の期待する正常な秩序というものであり、譬えそれによつて他の職員に何等かの精神的影響を与えることがあるとしても、それをもつて控訴人の主張のように職場全体の秩序ある正常な運営を妨げるものであるというのは当らない。 従つて、この点に関する控訴人の主張もまた理由がない。 六、 そうすれば、控訴人が被控訴人に対して本件未払賃金六五〇円及びこれに対する賃金支給日の翌日たる昭和三三年一二月二六日以降その支払済に至るまで年五分の割合による法定遅延損害金の支払義務あること明らかであるから、被控訴人の本訴請求は正当としてこれを認容すべきものであり、これと同旨の原判決は相当である。 よつて、本件控訴は理由がないので棄却することとし、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条に従つて主文のとおり判決した。 (裁判長判事田中宗雄判事松本晃平判事藤井俊彦) 判事藤井俊彦)
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