平成9(ワ)10 火災保険金等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月26日 神戸地方裁判所
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判決文本文105,114 文字)

判決平成14年3月26日神戸地方裁判所平成9年(ワ)第10号火災保険金等請求事件 主文 1 被告乙1は,原告甲1に対し金1980万円及びこれに対する平成7年6月1日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告甲1のその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告甲1と被告乙1との間では,これを10分し,その9を被告乙1の,その余を原告甲1の各負担とし,原告甲1と被告乙2,被告乙3との関係では原告甲1の負担とし,その余の原告らと被告らとの関係では,原告らの各負担とする。 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求(1次的請求) 1 別表1被告名欄記載の各被告は,それぞれ対応する同表原告名欄記載の各原告(同表原告名欄甲2関係を除く。)に対し,同表請求金額欄記載の各金員及びこれに対する平成7年6月1日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告乙4は,原告甲3に金237万5000円,原告甲4,原告甲5,原告甲6に各金79万1666円及びそれぞれに対する平成7年6月1日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,被告らの負担とする。 4 仮執行宣言(2次的請求) 1 別表1被告名欄記載の各被告(被告乙1を除く。)は,それぞれ対応する同表原告名欄記載の各原告に対し(同表原告名欄甲2関係を除く。),同表請求金額欄記載の各金員及びこれに対する平成7年6月1日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告乙4は,原告甲3に金237万5000円,原告甲4,原告甲5,原告甲6に各金79万1666円及びそれぞれ 員及びこれに対する平成7年6月1日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告乙4は,原告甲3に金237万5000円,原告甲4,原告甲5,原告甲6に各金79万1666円及びそれぞれに対する平成7年6月1日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,被告ら(被告乙1を除く。)の負担とする。 4 仮執行宣言(3次的請求) 1 別表2被告名欄記載の各被告は,それぞれ対応する同表原告名欄記載の各原告に対し(但し,同表原告名欄甲2関係を除く。),同表請求金額欄記載の各金員及びこれに対する平成7年6月1日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告乙4は,原告甲3に金112万5000円,原告甲4,原告甲5,原告甲6に各金37万5000円及びそれぞれに対する平成7年6月1日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,別表2被告名欄記載の被告らの負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,兵庫県南部地震が発生した平成7年1月17日に,所有ないし占有する,神戸市須磨区a又はb(以下単に「a」,「b」という。)に存在した建物ないしその中の家財が火災によって焼失したと主張する火災保険契約者や火災共済契約者ないしその相続人である原告らが,保険者ないし共済者或いはその承継人である被告らに対し,1次的に,火災保険金ないし火災共済金及びこれに対する商事法定利率による遅延損害金の支払を求め(但し,原告甲7及び原告甲8は,共有持分者の保険金請求権について任意的訴訟担当による請求もしている。)(更に,原告甲9は,1次的請求のうちの予備的請求として,被告東京海上が,原告甲9に家財についての火災保険金を請求しうる地位にあるものと誤信させたことを平成7年6月7日法律第10 請求もしている。)(更に,原告甲9は,1次的請求のうちの予備的請求として,被告東京海上が,原告甲9に家財についての火災保険金を請求しうる地位にあるものと誤信させたことを平成7年6月7日法律第105号による廃止前の保険募集の取締に関する法律(以下「旧募取法」という。)16条1項1号,5号違反であると主張して損害賠償を請求している。),2次的に地震免責条項,地震保険等に関する情報提供をしなかったとして,旧募取法16条1項,11条1項違反,不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失に基づき火災保険金相当額の損害賠償金及びそれに対する民法所定の割合による遅延損害金の支払,3次的に被告会社らに対し,3次請求のうち主位的に地震保険金及びこれに対する商事法定利率による遅延損害金,2次請求のうち予備的に地震保険金相当額の損害賠償金及びそれに対する民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 第3 前提事実(争いがないか,後掲()内の証拠によって認めることができる。) 1 平成7年1月17日午前5時46分,兵庫県淡路島北部を震源とするマグニチュード7.2の規模の兵庫県南部地震が発生し,阪神・淡路地区に甚大な被害がもたらされた。 同日午前9時頃,神戸市長田区c通(以下「c通」という。)d丁目e番f号所在のA方から出火し,住居・店舗等1311棟延べ14万2945平方メートルが焼損した(以下「本件火災」という。)。 2 原告ら(原告甲2らは除く。)及び原告甲2ら被相続人亡甲2は,a又はbにそれぞれ同表該当欄記載の各建物ないし各家財(以下原告甲1と被告乙1の関係については「共済目的物」,その余の関係については「保険目的物」という。)を所有ないし占有していた(但し,原告甲7に関する保険目的物のうち,別表1原告番号4記載の保険の目的①の建物の持 被告乙1の関係については「共済目的物」,その余の関係については「保険目的物」という。)を所有ないし占有していた(但し,原告甲7に関する保険目的物のうち,別表1原告番号4記載の保険の目的①の建物の持分は4分の3,原告甲8の同表原告番号6記載の保険の目的①の建物の持分は2分の1である。また,原告甲9は,同表原告番号11の保険の目的欄記載の建物を所有しておらず,借家していた。)。 3 被告乙1を除く被告ら及び乙5(以下「被告会社ら」という。)は,火災保険を含む損害保険業等を目的とする株式会社である。 被告乙1は,火災共済等の共済事業を行っている生活共同組合連合会である。 4 別表1原告名欄記載の原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,対応する別表1被告名欄記載の各被告との間に,同表記載の内容の火災保険契約(被告乙1との間では火災共済契約)を締結した(但し,原告甲9と被告東京海上との間では,保険契約書上,同表記載の内容の火災保険契約が締結されたこととなっており,その成立については後記のとおり争いがある。)(なお,被告乙6の当時の商号は乙7株式会社である。詳細は後記10記載のとおり。以下,後記10以外においては,いずれも被告乙6という。)。 5 原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,被告らに対し,それぞれ遅くとも平成7年4月30日までに,本件火災による損害の発生を通知した。 原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2と被告らの間で締結された火災保険契約ないし火災共済契約においては,原則として,上記通知の日から30日以内に,被告らはそれぞれ保険金ないし共済金を支払わなければならない(乙A5ないし8,乙B3,乙C11ないし13,乙D1ないし3,乙E4,乙E5の1,2,丙1)。 6 被告会社らの火災保険に関する普通保険約款(被告 ぞれ保険金ないし共済金を支払わなければならない(乙A5ないし8,乙B3,乙C11ないし13,乙D1ないし3,乙E4,乙E5の1,2,丙1)。 6 被告会社らの火災保険に関する普通保険約款(被告乙2,乙5,被告東京海上,被告乙6の長期総合保険契約普通保険約款Ⅰ損害条項2章10条2項2号,被告乙2の火災保険普通保険約款1章2条2項2号,被告乙2,被告東京海上の住宅総合保険契約普通保険約款1章2条2項2号,被告乙6,被告乙2,乙5の住宅火災保険普通保険約款1章2条2項2号,被告乙4の店舗総合保険普通保険約款1章2条2項2号,乙5の積立生活総合保険普通保険約款1章2条2項2号,被告乙8の店舗総合保険普通保険約款1章2条2項2号)には,次のような条項があった(乙A5ないし8,乙B3,乙C11ないし13,乙D1ないし3,乙E4,乙E5の1,2)。 「当会社は,次に掲げる事由によって生じた損害または傷害(これらの事由によって発生した前条(保険金を支払う場合)の事故が延焼または拡大して生じた損害または傷害,および発生原因のいかんを問わず前条(保険金を支払う場合)の事故がこれらの事由によって延焼または拡大して生じた損害または傷害を含みます。)に対しては,保険金を支払いません。 地震もしくは噴火またはこれらによる津波。ただし,前条(保険金を払う場合)の地震火災費用保険金については,この限りではありません。」 7 被告乙1の火災共済に関する火災風水害等共済事業規約22条5項には,共済金を支払わない場合として,次のように記載されていた(丙1)。 「その損害が次に掲げる損害に該当するときは,第19条の共済金を支払わない。」「原因が直接であると間接であるとを問わず,地震・・・によって生じた火災等・・・による損害」 8 原告 「その損害が次に掲げる損害に該当するときは,第19条の共済金を支払わない。」「原因が直接であると間接であるとを問わず,地震・・・によって生じた火災等・・・による損害」 8 原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,別表1該当欄の被告らから,備考欄記載の地震火災費用保険金ないし地震火災費用共済金の支払を受けた。 9 亡甲2は,平成9年1月1日に死亡したが,妻である原告甲2が2分の1,子であるその余の原告甲2らがその6分の1の持分で,相続した(弁論の全趣旨)。 10 乙7株式会社は,平成13年10月1日,乙9株式会社を合併し,商号を乙6株式会社と変更した(被告乙6)。 11 乙5は、平成13年4月2日合併により法人が消滅したが、合併後存続する法人である被告乙3がその地位を承継した(以下承継の前後を問わず,被告乙3という。)。 第4 原告らと被告会社ら関係の争点 1 地震免責条項の拘束力及び解釈(原告らの主張)(1) 約款開示論アはじめに本件においては被告会社らは,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対して,保険契約締結時に地震免責条項の内容の開示をしていないので,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2はその条項について合意する余地はなく,地震免責条項は当事者間で締結された保険契約に取り入れられず,契約の内容とはなっていないから,原告らに対し保険約款中の地震免責条項の拘束力は及ばない。 イ約款開示論の現代的意味とその根拠確かに,保険関係には,保険数理と保険の団体性が認められ,団体法的視点のみからとらえることにより,約款の拘束力を根拠づける考え方が,保険産業の育成・発展に大きく貢献したことは事実である。しかし,現代において,保険産業の発展はめざましく,その基盤は充分に確立し 的視点のみからとらえることにより,約款の拘束力を根拠づける考え方が,保険産業の育成・発展に大きく貢献したことは事実である。しかし,現代において,保険産業の発展はめざましく,その基盤は充分に確立し,育成,発展という歴史的意味は喪失している。 他方,現在,消費者取引一般において,消費者は約款の内容やその存在すら知らないで契約するため,消費者の意識や期待と約款の内容が大きく乖離していた場合に,トラブルが多発している。このような状況の中,消費者保護の観点から,普通取引約款一般について,約款論の見直しがせまられており,特に普通保険約款についてその必要性が強調されている。これは我が国だけでなく,国際的な傾向である。 約款は,あくまで契約内容であるから,普通保険約款を保険数理論を基礎とする法律関係や団体法的視点からではなく,契約法理としてとらえる必要がある。そして,契約理論に立ち返ると約款の各条項が契約内容となるためには,附合者である保険契約者の各条項についての承諾が当然必要となり,その前提として約款の重要事項や一般人の合理的意思に反する条項について開示が必要である。 ウ普通保険約款がより開示が要求される理由(ア) 普通保険約款は抽象的なサ-ビスが商品内容であるから,商品内容を特定するためには,普通保険約款開示が必要である。 (イ) 約款は,内容を事業者側が文書化したものであり,これを熟知しているのに,消費者側は商品知識・取引経験に乏しいのが一般である。従って,事業者は,取引をする際に,消費者が誤って商品選択をしないために,すなわち消費者の商品選択の自由を保障するために,約款の内容を開示する必要があり,更に,約款の内容は技術的なものが多く,また一般消費者には理解しづらい文言の規定も多いので,商品選択の心理過程に誤りがない わち消費者の商品選択の自由を保障するために,約款の内容を開示する必要があり,更に,約款の内容は技術的なものが多く,また一般消費者には理解しづらい文言の規定も多いので,商品選択の心理過程に誤りがないようにするため,重要かつ難解なものについては充分説明しなければならない。 エ普通保険約款の中でも特に地震免責条項の開示が重要な理由(ア) 旧募取法(新保険業法)との関係旧募取法16条1項(保険業法300条)は,損害保険会社側は,「保険契約の締結又は保険募集に関して,左に掲げる行為をなしてはならない」として,その1号において「保険契約者又は被保険者に対して・・・保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為」を禁止し,その違反に対しては,旧募取法22条1項4号(保険業法317条1項7号)により,刑罰が科せられることとなっている。 地震免責条項は,保険金の支払の有無が直接問題とされる契約目的そのものにかかわる条項であるから,旧募取法16条1項1号(保険業法300条)所定の「保険契約の契約条項のうち重要な条項」に該当する。 よって,特に地震免責条項につき,被告会社らは原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対して事前に開示すべき義務を負担していた。 (イ) 地震保険との関係後記のとおり,地震保険契約は,火災保険契約に原則として自動的に付帯して契約されることになっているから,保険会社は火災保険契約の締結の際には必ず申込者に地震保険に加入するか否かの意思を確認しなければならず,その前提として火災保険契約の地震免責条項を説明しなければならない。 オ地震免責条項の開示の程度・方法約款の必要な開示の程度及び方法は,約款の種類や約款の条項によって異なるが,以下,地震免責条項について検討する。 責条項を説明しなければならない。 オ地震免責条項の開示の程度・方法約款の必要な開示の程度及び方法は,約款の種類や約款の条項によって異なるが,以下,地震免責条項について検討する。 保険は目に見えないサ-ビス商品であり,地震免責条項はそのサ-ビスの重要な内容である。また,保険金の支払がなされるか,なされないかは,保険の内容の最も重要かつ基本的な部分である。更に,商品選択(特に地震保険との関係)にも大きな影響を及ぼす事項である。しかも,地震免責条項は商法の定める事由以外で保険金の不払いを定めるものである。 そうすると,地震免責条項は,火災保険約款中でも,契約締結時や更新時に明確に認識されていなければならない重要な条項であり,開示も強く要請され,保険申込書中あるいは契約のしおりに記載しているだけでは足りず,契約締結前にこれらの書面や約款を示し,わかりやすく説明するか,あるいはその内容を口頭で充分説明することが必要とされると考えられる。そして,地震免責条項は後述するとおり,文言自体理解しがたいものであるから,口頭でのわかりやすい充分な説明は必須である。 (2) 約款の拘束力に関する意思推定論についてアはじめに被告会社らは,約款が拘束力を有する根拠として大判大正4年12月23日民録21輯2182頁(以下「大正4年大判」という。)をあげる。 しかし,その判決は,企業基盤が弱く,企業の育成保護が強く要請された時代のものであるから,既に社会情勢・経済情勢が大きく変化し,もはや企業の育成保護の要請が不必要となり,消費者保護の観点の重視が世界的な動向となっている現在において,どの程度の価値を有するのか極めて疑問である。 イ同判決の意思推定論について同判決は約款に拘束される根拠を約 要となり,消費者保護の観点の重視が世界的な動向となっている現在において,どの程度の価値を有するのか極めて疑問である。 イ同判決の意思推定論について同判決は約款に拘束される根拠を約款による意思の推定に求めている。すなわち同判決は,約款に拘束される根拠を契約法のレベルでとらえている。従って,約款による意思とは何かについて,約款が企業により一方的に作成されたものであるという事実をふまえた上で慎重に検討していく必要がある。 理論的に掘りさげて検討すると,附合者側の「約款による意思」が推定されるためには,その条項が合理的なものであり,一般的な契約者の期待に反していないことが必要である。なぜなら,一般的な契約者の期待に反する条項について,附合者側が合意するということは考えられず,約款による意思を推定することは不可能であるからである。 ウまとめそして,仮に,約款の拘束力に関して意思推定論を採用したとしても,地震免責条項は,①文言が不明瞭で理解できず,②仮に文言をなんとか噛み砕いたとしても内容が漠然不明確であり,③また地震免責条項の存在理由も乏しく,市民感情と合わなくなっていること等から,不当・不合理な条項であり,一般者の合理的な期待に反しており,地震免責条項による意思があったと推定することはできない。 よって,意思推定論によっても,地震免責条項には拘束されない。 (3) 地震免責条項の不意打ち条項性についてア判例の意思推定説と「不意打ち条項」について顧客の合理的期待を超えた「不意打ち条項」には,約款に依るとの意思の推定が及ばず,契約内容とならない。 大正4年大判は,約款の個別の条項に認識がなくとも拘束力を認める根拠として意思推定説を採用するが,その理由として,保険契約者が には,約款に依るとの意思の推定が及ばず,契約内容とならない。 大正4年大判は,約款の個別の条項に認識がなくとも拘束力を認める根拠として意思推定説を採用するが,その理由として,保険契約者が「其約款が内容の如何に拘わらず概して適当なるべきに信頼して契約するものに外ならず。」とし,それ故に「当事者双方が特に普通保険約款に依らざる旨の意思を表示せずして契約したるときは,反証なき限り其の約款に依るの意思を以て契約したるものと推定すべく」と判断した。従って,同判決でも契約者の信頼に反するような約款条項が存在するときには,意思の推定が及ばないことを認めているのであり,この判決からも顧客の合理的期待を超えた「不意打ち条項」は,約款によるとの意思の推定が及ぶ契約内容とはならない。 イ意思表示論と「不意打ち条項」について顧客の合理的期待を超えた「不意打ち条項」は,意思表示の合致があるとはいえず,契約内容にならない。これは,意思表示論から導かれる当然の帰結である。 ウドイツ約款規制法と「不意打ち条項」について(ア) また,「不意打ち条項」が契約内容とならない点については,既にドイツの約款規制法3条で「約款中の条項で,当該事情とりわけ契約の外形からして約款使用者の相手方がそれを予期する必要がないほどに異例であるものは契約構成要素とならない。」と規定されている。 「不意打ち条項」は,条項の内容上の不当性を問題とするのではなく,当該契約類型とその条項の関係あるいは当該契約締結時の諸事情から,その条項を契約要素に取り入れるかを問題にするものである。この規制目的は,約款使用者に当該事情にふさわしい形での説明を必要とし,顧客を異例な内容によるだまし討ちから保護しようとするものである。 (イ) 要件まず,問題となっ にするものである。この規制目的は,約款使用者に当該事情にふさわしい形での説明を必要とし,顧客を異例な内容によるだまし討ちから保護しようとするものである。 (イ) 要件まず,問題となっている条項が「異例であること」,即ち,当該契約条項の存在自体が契約類型からみて「異例」であったり,また契約締結時の諸事情から一般的に顧客が抱く期待を判断し,当該契約条項が「異例」であることが必要である。 次に,異例性を原因として,顧客側に「不意打ち要因の存在」,即ち,その内容について強調・指示・説明が欠けるため,そのような異例な条項の存在を顧客が到底予想できないという要因が必要である。 エ地震免責条項の「不意打ち条項」性(ア) 不意打ち要因火災保険契約を締結する消費者は,火災にあった場合には火災保険金が支払われると考えるのが一般であり,これは普遍的で合理的な期待である。我が国の一般的消費者を想定すると,地震火災については,地震を原因とする火災について免責がありうることは,或いは消費者の中で知っている者もいるかも知れないが,その場合でも,関東大震災のように,地震による地盤の揺れと同時多発的に発生した火災が免責対象となっていると考え,地盤の揺れが終わって,建物の被災による倒壊を免れた後,相当期間を経過して出火し,更にそれが延焼した場合まで,火災保険金が支払われないとまでは,何らかの具体的説明を受けない限り,思いもよらないのが通例である。地震免責条項のうち,後記の第1類型,第2類型についてさえ,地震が終わった後,相当の時間を経過し,更に何らかの人為的様相が介在した後の出火についてまで免責するならば,消費者の合理的期待に反するし,また,その強調・指示・説明もなかった。とりわけ,第3類型は,後出の新潟地震判決を受け,原因の如 ,更に何らかの人為的様相が介在した後の出火についてまで免責するならば,消費者の合理的期待に反するし,また,その強調・指示・説明もなかった。とりわけ,第3類型は,後出の新潟地震判決を受け,原因の如何を問わず地震に際して発生した火災を広く免責対象としようとしたもののようであるが,そのことを広く消費者に周知徹底したこともなく,保険約款の中に忍びこませたものであり,後記の第3類型の不意打ち要因ははなはだ大きく,消費者の合理的期待に反する。その上「地震による延焼」を被告会社らのように広く解釈し,「消防力の低下」までも含むとするなら,一般消費者は誰一人としてそれを想定することはできず,またこの点についても強調・指示・説明がないので,合理的期待に反する度合いはなおさら大きく,更に不意打ち要因も大きくなる。 (イ) 異例性問題とされる条項が現実の取引において広く普及しているという一事をもって異例性を否定すべきでなく,顧客として予定された取引領域に属する普通人がそのような条項が約款中に盛られていることを予期するものかどうかによって異例性は決められる。 地震発生後相当時間を経過して発生した火災を免責としたり,延焼した場合に広汎な範囲で地震による延焼として免責し,ほとんどすべての場合で免責とされるような地震免責条項は,火災の場合に保険金を支払うという火災保険契約の本質から異例というほかはない。 オ以上より,地震免責条項全体,とりわけ第3類型については「不意打ち条項」となり,契約内容とはならない。また,特に本件のような事案に地震免責条項を適用するのは不意打ちである。 (4) 地震免責条項の無効性についてアはじめに約款については,企業が一方的に作成することも踏まえ,地震免責条項の目的,内容の合理性の観点からする 用するのは不意打ちである。 (4) 地震免責条項の無効性についてアはじめに約款については,企業が一方的に作成することも踏まえ,地震免責条項の目的,内容の合理性の観点からすると,条項そのものが信義則や公序良俗に反し無効と解される余地はないかを慎重に検討する必要がある。 現在においては,普通取引約款一般について,消費者保護の観点から,約款条項や法理論の見直しが迫られており,特に普通保険約款についてその必要性が強い。このように,約款の行政的規制(認可)は限界にきており,裁判所は各約款,特に保険約款について,慎重な検討が求められている。 イ地震免責条項の目的の不合理性(ア) 免責条項一般が法認されている理由a 保険事故に対する保険金の支払を免責したり,あるいは企業体の行う事業に起因して生ずる損害賠償責任を一定の場合に免責する等の,いわゆる免責条項と呼ばれている約款規定の存在理由は,いくつか存する。 その1つは,被保険者側あるいは被害者側に帰責事由の存する作為ないし不作為があるために,保険金や損害賠償金を支払うことが公正でないと考えられるような場合であり,生命保険における告知義務違反,各種保険における故意免責等いわゆるリスク・モラルに基づく免責はその典型である。 これに対し,被保険者側あるいは被害者側に特に帰責事由がないのに,保険者や加害者を免責する条項については,これまでもその合理性,有効性等をめぐってさまざまな議論がなされてきたが,結局のところは,当該事業をめぐるコストと収益のバランスに帰着するというほかない。即ち,かような免責条項はあくまでも経済的理由から,消費者を犠牲にし企業利益のために置かれているものであって,その意味では絶対的なものではなく結局はコストをめぐってのリスク 帰着するというほかない。即ち,かような免責条項はあくまでも経済的理由から,消費者を犠牲にし企業利益のために置かれているものであって,その意味では絶対的なものではなく結局はコストをめぐってのリスクを避けながら,健全な企業の保護,育成を図るところにその存在理由がある。 b もともと,免責条項は,企業の保護,育成の要請のために消費者或いは被害者の救済を犠牲にしているものであるから,本来企業は,その成長に応じ,消費者の犠牲の上になり立つ免責条項は積極的に改正していかなければならない。 c 今日の我が国の損害保険会社は,多額の資産を蓄積し,産業基盤の確立した企業体であって,国民は,もはや健全な保護,育成を図るべき発展途上の企業であると考えていないものであるから,地震免責条項によって損害保険会社を保護すること自体,今日の国民感情に合わなくなっている。 (イ) 地震免責条項そのものの存在理由a 地震免責条項の存在理由としては,地震による損害の巨大性や地震危険の予測不可能性等の特性から,地震危険は危険分散技術としての保険の数理になじまないことがあげられる。 しかし,地震そのものは大地の震動であり,人間が防ぐことのできないものであるが,今日,震災は人間の手によって防いだり小さくしたりすることが可能である。とりわけ地震の瞬間の揺れによって物が損壊を受けることはある程度不可抗力という面が否定できないものの,地震の揺れが終了した後の人間の様々な活動,その中で生じる火災に対する対処等は,まさに人間の社会生活そのものの問題である。いつどこで地震が起こるか予測することは現在の科学でも困難であるが,災害を最小限に抑えるようにするのは,可能である。その点では台風災害と変わらない。しかし,風水害は免責とせず,地震は免責とされている保険約款は,不合 こるか予測することは現在の科学でも困難であるが,災害を最小限に抑えるようにするのは,可能である。その点では台風災害と変わらない。しかし,風水害は免責とせず,地震は免責とされている保険約款は,不合理である。 地震による火災は予測不可能なほど大規模なものになると被告会社らは主張するが,我が国の近現代史において,その例となりうるのは,関東大震災のみである。しかし,関東大震災は多数が火を使っていた時間帯に起こったもので,地震と同時に発生した火災が多数を占めていた。本件地震に関しては,地震が終わった後に起こった火災が相当数あったものの,保険会社の予測を超えるような天文学的な数字にのぼったものでは全くない。 以下,詳細に分析する。 b 風水害,震災火災等の歴年分析(a) 大地震における火災関東大震災以後の主な大地震における全壊家屋数と全焼家屋数を勘案しても,関東大震災以後,損害保険会社の存立の基礎を危うくするほどの大火災は全く起きていない。 (b) 大火昭和元年以降の焼損棟数1000戸を超える大火を検討すると,保険の対象となるフェ-ン現象,台風等による大火の被害の方が,大地震における火災に比べて大規模な場合が多い。 (c) 風水害(台風等)ちなみに昭和21年以降の主な風水害(台風等)による住宅被害(住宅全壊・流失1000戸以上)を検討すると,保険の対象となる風水害(台風等)による住宅被害の方が大震災後の火災損害より大規模な場合が多い。 なお,元来,風水害は火災保険において担保されていなかった。これは,戦後,毎年のように大型台風が来襲し,それによる損害がきわめて大きく,保険経営上,大きな問題であったからである。 しかし,昭和34年9月,伊勢湾台風の来襲による大災害が監 なかった。これは,戦後,毎年のように大型台風が来襲し,それによる損害がきわめて大きく,保険経営上,大きな問題であったからである。 しかし,昭和34年9月,伊勢湾台風の来襲による大災害が監督官庁の強い要望を呼び,保険金額の3%を風水害保険金として約款に盛り込むこととなり,「住宅総合保険」と名付けられ,昭和35年12月1日に認可,同36年1月1日に実施された。その後,昭和37年6月1日に店舗総合保険が創設されその際,風水害に加えて「風水雪害保険金」とされると共に,支払保険金額が保険金額の10%とされ,住宅総合保険も同様に改定された。昭和48年12月1日,家計保険たる住宅火災保険が創設されたが,当初,風水雪害は担保されていなかったところ,昭和59年6月1日の約款改定により風災(台風を含む),ひょう災,雪災も担保されるようになった(ただし20万円未満の小損害は免責)。併せて,その他の一般物件及び工場物件用の火災保険約款にも同様の制度が導入され,現在に至っている。 (d) まとめこのように歴史的に見て,関東大震災以後もかなり頻繁に大地震は発生しているが,損害保険会社の存立の基礎を危うくするほどの大火災は全く起きておらず,むしろ,保険の対象となるフェ-ン現象等による大火,風水害(台風等)による建物被害の方が大規模な場合が多く,地震火災のみが免責されねばならない必然性はない。 c 出火件数の経年比較(本件地震の影響の大小)出火件数の経年比較の観点からしても,本件地震の影響は限定的で,火災に関していえば,保険会社の存立の基礎を揺るがすような大規模な災害でないことは明らかである。 即ち,我が国において,平成7年上半期は,阪神淡路大震災があったにもかかわらず,平成6年上半期に比べ,建物火災件数はむしろ減少しており を揺るがすような大規模な災害でないことは明らかである。 即ち,我が国において,平成7年上半期は,阪神淡路大震災があったにもかかわらず,平成6年上半期に比べ,建物火災件数はむしろ減少しており,焼損棟数も約5000棟の増加があるにすぎない。 d 損害保険業界の損益状況本件火災に伴う全半壊家屋は約16万戸(うち神戸市内,約9万4000戸),全半焼家屋は7456棟・9322世帯であるが,これに対し,1996年10月末現在の建築確認申請数は神戸市内で3万5287件に過ぎず(神戸市住宅局環境課情報),未だ多くの被災者が再築に着工できずにいる。そのため仮設住宅で暮らす被災者数は,1996年11月1日現在,兵庫県内で約3万9700世帯(うち神戸市内は約2万5000世帯),兵庫県外への避難者数が約15万人という悲惨な状況が続いている。 これに対し,損害保険業界は,大震災における損害保険金支払総額を当初2000億円と予測していたところ(1995年1月27日朝日新聞),その後,同年4月21日には1200ないし1300億円に大幅下方修正し,同年5月25日に報道された損保大手5社の3月期決算では,阪神淡路大震災における保険金支払い額は252億円のみで済み,経常利益が2155億円・前年度比18.2%の大幅増収となっている。 すなわち,被災契約者が頼りにしていた保険金を得られず,仮設住宅や親戚宅等で避難生活を強いられ,あるいは二重ロ-ンに苦しんでいるのに,損害保険会社は,かえって大幅増収を計上しているのである。かかる非常識,非人道的な結果をもたらしたものは被告会社ら損害保険会社の地震免責条項の存在とその運用に外ならず,その合理性は極めて疑問といわざるをえない。 e 消防力の不備,西宮市との比較後記のように,本件地 果をもたらしたものは被告会社ら損害保険会社の地震免責条項の存在とその運用に外ならず,その合理性は極めて疑問といわざるをえない。 e 消防力の不備,西宮市との比較後記のように,本件地震による神戸市内の損害は,神戸市の消防力が,西宮市に比べ,不備であることによるものである。 このように,地震に伴う損害には,人災的要素のものがあることが実状である。 f 世界における地震免責条項の有無地震免責条項は世界的に普遍的なものではない。例えば,アメリカでは,地震による火災を通常の火災保険約款で担保したうえで,地震による建物の損壊を火災保険の特約として担保する方式(保険金額は火災保険と同額)が行われている。また,イギリス,フランスやニュ-ジ-ランドでは地震による火災はもちろんのこと,地震による損壊も,火災保険またはそれに自動付帯される地震保険でカバ-されている(保険金額は火災保険と同額)。 このように多くの先進国では,地震による火災も火災保険またはそれに自動付帯される地震保険によって,通常の火災の場合と同額の保険金が支払われる制度が採られているのであって,地震が火災保険制度の中で特殊な取扱いを必要とする異常危険であるとの考え方は,むしろ排除されつつあるのが世界的な傾向である。 (ウ) 生命保険との比較生命保険の約款においては,死亡保険等の主契約において地震免責がないが,災害割増特約や傷害特約その他の特約においては,地震免責が認められている。しかし,その規定の仕方は「被保険者が地震,噴火,津波または戦争その他の変乱により死亡しまたは高度障害状態に該当した場合で,その原因により死亡し,または高度障害状態に該当した被保険者の数の増加がこの特約の計算の基礎に影響を及ぼすときは,会社は,災害死亡保険金もし 他の変乱により死亡しまたは高度障害状態に該当した場合で,その原因により死亡し,または高度障害状態に該当した被保険者の数の増加がこの特約の計算の基礎に影響を及ぼすときは,会社は,災害死亡保険金もしくは災害高度障害保険金を削除して支払うかまたはこれらの保険金を支払わないことがあります。」といった表現とするか,もしくは原則免責としながらも,他方で「被保険者が地震,噴火,津波または戦争その他の変乱により災害割増保険金の支払事由に該当した場合でも,これらの事由により災害割増保険金の支払事由に該当した被保険者の数の増加がこの特約の計算の基礎に及ぼす影響が少ないと認めたときは,会社はその程度に応じ災害割増保険金の全額を支払い,またはその金額を削減して支払います。」といった条項を置く形を取っている。 そして,生命保険各社は,本件地震については,これらの規定の適用上,保険金の支払を削減したり不払としたりする場合には該当しないとして,特約に基づく保険金の支払を行った。 (エ) まとめ以上からすれば,地震免責条項は,現在において存在価値をほとんど失った時代遅れのもので,被保険者の犠牲において損害保険会社に無用な利益をもたらすだけのものとなっている。この条項に存在価値を認めるとすれば,地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会社の基礎をくつがえすような程度にまで達した場合のみである。 本件地震がその程度に至っていないことは前述のとおりであるが,またこのようなことは実際には今後とも生じない可能性が極めて高く,そうであるのに,現行の地震免責条項だけが存在し続け,全ての地震を通じて免責が広く認められることとなれば,損害保険会社に利益をもたらすだけのものとなり,大変不合理な結果を招く。 ウ地震免責条項 そうであるのに,現行の地震免責条項だけが存在し続け,全ての地震を通じて免責が広く認められることとなれば,損害保険会社に利益をもたらすだけのものとなり,大変不合理な結果を招く。 ウ地震免責条項の文言の不明瞭性(ア) 地震免責条項は,法律の専門家が読んでもわかりづらく,一般の市民にとっては,読んだだけでは全く意味不明な条項である。 (イ) その条項を,何とか噛み砕いて3つの類型に分けると,次のとおりになる。 ① 地震によって生じた火元の火災が保険の目的に与えた損害(第1類型)② 地震によって生じた火災が延焼または拡大して保険の目的に与えた損害(第2類型)③ 出火原因のいかんを問わず何らかの原因によって生じた火災が地震によって延焼または拡大して保険の目的に与えた損害(第3類型)(ウ) 現行地震免責条項成立の経過新潟地震に関する東京地判昭45.6.22下民集21巻5・6号864頁(以下「新潟地震判決」という。)は,当時の地震免責条項である「原因が直接であると間接であるとを問わず,地震又は噴火に因って生じた火災及びその延焼その他の損害」との規定について,「原因が直接であると間接であるとを問わず地震に因って生じた」は火災にかかり,「その延焼その他の損害」を修飾するのではないと解釈し,当時の地震免責条項は,現行地震免責条項で言えば第1類型及び第2類型にあたる場合だけに適用され,第3類型が含まれるようには文言上読めない旨判断した。そこで,損害保険各社はこれを受けて,第3類型も含ませることを意図して昭和50年に大蔵大臣の認可を得て,現行地震免責条項に改定した。 (エ) 改定された現行地震免責条項の文言は,損害保険各社が意図したように読めないだけでなく,不明瞭で,一般人にとっても,意味不明であり,無効で 大蔵大臣の認可を得て,現行地震免責条項に改定した。 (エ) 改定された現行地震免責条項の文言は,損害保険各社が意図したように読めないだけでなく,不明瞭で,一般人にとっても,意味不明であり,無効である。 エ地震免責条項の内容の漠然不明瞭性地震免責条項の文言が不明瞭であることを理由として無効であるとまでは言えないとしても,第3類型は,範囲が非常に不明確であって,このような漠然不明確な内容を含む条項は無効である。 オ地震免責条項の公序良俗違反性このように,地震免責条項は,①文言が不明瞭で理解できず,②仮に文言を何とか噛み砕いたとしても内容が漠然不明確であるのでこれにより地震免責条項は無効であるが,更に③地震免責条項が存在理由も乏しい時代遅れのものであり,損害保険会社を利するだけの条項であること,それに加えて④約款は大企業がその経済的優位を背景として一方的に作成されていること,⑤消費者の利益の保護が国際的に重要な課題となっており,我が国においても消費者契約法(仮称)の立法化の動きがあり,同法によれば消費者に不当に不利な条項を無効とすることに鑑みると,もはや地震免責条項は約款の条項としては,著しく正義に反し,公序良俗違反により無効である。 (5) 地震免責条項の解釈ア地震免責条項の存在意義に限局した制限的解釈(ア) 前述したとおり,地震免責条項は,地震損害の巨大性,予測不可能性がもたらす結果から損害保険会社の経営基盤を保護するという存在意義を有する限りで適用されるべきであるから,制限的に解釈されるべきである。したがって,地震免責条項にいう「地震」とは,「地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会社の基礎を崩し,企業の存立を危うくするような地震」を意味すると解するのが相当で 。したがって,地震免責条項にいう「地震」とは,「地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会社の基礎を崩し,企業の存立を危うくするような地震」を意味すると解するのが相当である。 (イ) 法文上の根拠商法665条は,「火災ニ因リテ生シタル損害ハ其火災ノ原因如何ヲ問ハス保険者之ヲ填補スル責ニ任ス」と規定し,火災保険にいわゆる「危険普遍の原則」を採用し,その例外としての同条但書にいう法定免責事由として,地震損害は含めていない。法定免責事由として,商法640条が戦争その他の変乱に因る損害の場合を,商法641条が保険の目的の瑕疵や保険契約者側の事故招致の場合を挙げているにすぎない。 即ち,商法は,被保険者側に帰責事由がない場合には,戦争または戦争に準ずる場合以外の全ての火災による損害を填補するという考え方を取っているのであり,この考え方から地震免責条項を解釈するならば,免責事由としての地震とは,戦乱や変乱に匹敵する広範囲の火災被害を発生させ,損害保険会社の経営基盤を危うくするような大地震を意味すると解される。 商法665条が任意規定であるとしても,本件のような免責条項を解釈する場合の指針として生かされるべきである。 (ウ) なお,判例上もこのような免責約款の存在意義に照らした合理的な制限解釈はこれまでも行われてきたところであり,典型例として,自動車保険の普通保険約款中の「保険の目的が法令または取締規則に違反して使用または運転させられるとき」は免責される,との条項について,制限解釈された判例がある(大阪高判昭40.9.29(判例集未登載),その上告審である最判昭44.4.25(民集23巻4号882頁))。 イ合理的意思解釈(ア) 約款の拘束力の根拠は,当事者の意思の推定であるから (大阪高判昭40.9.29(判例集未登載),その上告審である最判昭44.4.25(民集23巻4号882頁))。 イ合理的意思解釈(ア) 約款の拘束力の根拠は,当事者の意思の推定であるから,約款の解釈は,当事者の合理的意思によるべきである。 この場合の「当事者の意思」は,一般人の意思の認識を意味する(通説,判例)。 (イ) そして,地震免責条項を一般保険契約当事者の通常の意思としてどのように読めるかを検討する。 原告らは共通して,地震免責条項の「地震による火災」,「地震による延焼」という場合の「地震」という言葉を,文字どおり大地の揺れを意味すると受け取っているのであり,だからこそ大地の揺れがおさまった後に何らかの理由で発生した火災は,「地震による火災」ではないと素朴に理解しているのである。これが,一般保険契約当事者が地震免責条項を素直に読んでみた場合の通常の意思である。 これに対し,被告は,「地震による火災」,「地震による延焼」という場合の「地震」という言葉を,大地の揺れよりももっと広く,地震発生後の様々な社会生活上の支障を含めた意味,言い換えれば「震災」と同義に解しているもので,そこから,地震による影響が多かれ少なかれ,社会生活上に残っているような状況下の火災を,時的場所的限定なく,こぞって「地震による火災」「地震による延焼」とするような解釈が生まれてくるのである。 以上から,「地震によって」というのは,「地盤の揺れによって」の意であると解釈すべきである。 (ウ) したがって,a 地震免責条項の第1類型及び第2類型に言う「地震によって生じた火元の火災」とは,地盤の揺れによって建物が物理的に倒壊するのと同様に,地盤の揺れによって物理的に建物から火が出たという場合,即ち防ぎようのない, 条項の第1類型及び第2類型に言う「地震によって生じた火元の火災」とは,地盤の揺れによって建物が物理的に倒壊するのと同様に,地盤の揺れによって物理的に建物から火が出たという場合,即ち防ぎようのない,まさに不可抗力によって生じた火災という意味で,地盤の揺れによって倒壊したり発火したりせずに持ちこたえた建物は,もはや地震免責の対象とならない。 b 第3類型は,既に地震の前に火災が発生した建物が,地盤の揺れによって崩れて周囲に燃え広がったような場合を言うのであり,地震によってライフラインの機能が低下し,消防力が多かれ少かれ低下した状況下に,何らかの理由で火災が発生したが,消防活動がうまくいかずに延焼を生じた場合は,まさに人為的要素によって火災が拡大もしくは延焼したのであって,含まれないのは当然である。これらは,地震時の対策を行政が先頭となって普段より立てておけば防ぐことができるもので,不可抗力でないからである。要するに,第3類型も,地震によって建物が倒壊したのと同様に評価できるような場合を指している。 ウ 「疑わしきは作成者に不利に」の解釈原則(ア) 約款の解釈にあたっては,約款作成の利益状況,即ち作成者が一方的に有利な約款を作成しかねないという実態からして,解釈によって公正さを保つために,作成者の利益を相手方の不利益において図るような解釈は許されない,との解釈原則が存する。即ち,文言から2通りの解釈ができる場合には,作成者に不利に解釈すべきである。 (イ) 上記解釈原則は,判例上も(新潟地震判決),国際的にも一般的な基準として承認されている(ドイツの「普通取引約款の規制に関する法律」5条,「消費者契約における不公正条項に関するEC指令」(1993年4月5日採択)では,第5条,上記EC指令を受けて制定されたスウェ-デンの契約条項(消 る(ドイツの「普通取引約款の規制に関する法律」5条,「消費者契約における不公正条項に関するEC指令」(1993年4月5日採択)では,第5条,上記EC指令を受けて制定されたスウェ-デンの契約条項(消費者関係)法(1994年)同旨)。 (ウ) したがって,地震免責条項にいう「地震」とは,作成者に不利に解釈し,「地盤の揺れ」そのものを意味すると解釈するべきである。 エ免責条項の構造からくる解釈基準危険普遍の原則から,保険事故発生によって被保険者に損害が生じたときは,その事故の発生原因の如何を問わず,保険者は保険金支払義務を負うというのが原則であり,免責条項は例外である。 そうであるのに,免責条項の算出基準が妥当かどうかの検証は著しく困難で不可能であるため,営利追求をその本質とする企業において,免責条項を大きく網をかぶせて作成するという結果を招来し,どうしても作成者に一方的に有利に作成されることとなる。従って,本当は現行より限定的な免責条項でも,企業の目的とするところは充分達せられる。 免責条項のもつ上記のような構造的性格からも,免責条項は厳格に解釈されなければならない。 オまとめしたがって,地震免責条項にいう「地震によって」とは「地盤の揺れによって」の意であり,かつその場合の「地震」とは,「地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会社の基礎を崩し,企業の存立を危うくするような地震」を意味するということになる。 カ行政的認可は以上の解釈の妨げとならない。 行政的認可が司法による約款の合理的解釈の妨げにならず,むしろ必要性が現在重視されていることは前述のとおりである。 (被告会社らの主張)(1) 損害保険制度保険は,確率的予測を前提と 的認可が司法による約款の合理的解釈の妨げにならず,むしろ必要性が現在重視されていることは前述のとおりである。 (被告会社らの主張)(1) 損害保険制度保険は,確率的予測を前提とする危険の分散化のためのシステムであるから,保険料の総額と支払保険金の総額とは均等していなければならず(収支相当の原則),その原則は各保険団体ごとに適用されなくてはならず,被保険事業においては,個々の保険加入者の事故発生の危険率等に応じて保険料の額を割り振り,他方,保険加入者は,保険料と対価的均衡関係にある損害の範囲においてのみ保険金の支払を受けることができる(給付反対給付の原則)。このように,保険は,高度の数理計算を基礎とする極めて技術的な性格を持つ制度である(保険の技術性)。また,保険は,大量の保険加入者によって共同の備蓄を形成し,危険の分散を図るものであるから,個々の保険加入者は保険団体の構成員としての性質を有し,保険団体内部における危険の公平な分散のために各種の制約に服する(保険の団体性)。 (2) 原告らの約款開示論ア現代社会においては,社会システムの多種化・複雑化に従い,社会全般で大量化,画一化,合理化,迅速化が要請されているため,個々の約款内容についての具体的認識がない場合でも,約款による附合契約は有効と解すべきである。 そして,特に,保険加入者と保険会社との関係は,形式的には保険契約という個人法的な債権関係であるが,保険の技術性,団体性からすると,個々の保険加入者で異なる保険契約の内容を定めることは許されず,約款による附合契約によるべき場合といえ,現在の保険契約は,主務官庁の監督の下,保険会社が,詳細な標準的約款(普通保険約款)を作成し,保険加入者はこれに従って保険契約を締結することとされ,保険約款に基づいて保 附合契約によるべき場合といえ,現在の保険契約は,主務官庁の監督の下,保険会社が,詳細な標準的約款(普通保険約款)を作成し,保険加入者はこれに従って保険契約を締結することとされ,保険約款に基づいて保険契約が行われれば,保険加入者の知,不知にかかわらず,強行法規に触れない範囲で,保険約款が保険加入者を拘束するものとされている。 したがって,契約者の個性に従い,保険目的物,保険金額,保険料など個別に決定するものは,保険の申込書に記載し,保険契約者に共通するルールは,約款として定め,契約申込書(契約書)には,その契約の内容となるべき約款を特定して記載するに止めている。 このように,保険申込書によって契約が成立すれば,その契約は,申込書に記載されているもの以外は,特定の約款を内容とする契約が締結されたということになる。 イ約款(ア) 大正4年大審院判決以来,判例は一貫して,「当事者双方が特に普通保険約款に依らざる旨の意思を表示せずして契約したるときは,反証なき限り,その約款に依るの意思をもって契約したるものと推定する」と判断している。 (イ) この判例理論は当然のことを述べているものである。 契約法の根本原則からいうと,当事者は合意した内容の契約に拘束される。 しかし,契約当事者が契約に関して起こりうるすべてのことについて,契約の段階で明示的に契約書を書いたり,口頭で確定することは煩瑣である。 そこで,当事者が契約の時点で明示していなくとも,通常当事者の意思にある民商法の補助規定が適用されることとなる。 一方,各業界にある業界のルールが,民商法の補助規定と異なる場合に,業界のルールが契約上に明示されなくとも,事実たる慣習として,任意規定に優先されて適用されることとなる。これは,契約 る。 一方,各業界にある業界のルールが,民商法の補助規定と異なる場合に,業界のルールが契約上に明示されなくとも,事実たる慣習として,任意規定に優先されて適用されることとなる。これは,契約当事者の意思解釈の問題である。 契約時点で,当事者の頭の中に全くなかったことを根拠にして,民商法の補助規定や業界ルールの適用が否定されることはない。 (ウ) 時代の変化とともに,社会は高度化し,新たな規範が次々と必要とされる。しかし,民法の典型契約や保険法は改正されることがない。これは,約款の制定や変更で賄われているからである。 (エ) 上記の論理的帰結は,約款は,全体として契約の内容となることとなり,契約の一部だけが契約の内容にならないということは,双方当事者が特別の合意をしない限りあり得ない。これは,契約当事者が約款の各規定を具体的に知る知らないとは関係ない。 (オ) 一般の火災保険は,100年以上の歴史を有し,かつ,一般人レベルで極めてなじみが深い。したがって,約款の開示は十分であり,後記のとおり,その内容は合理的である。 a 約款の開示現在,火災保険,自動車保険は広く普及しており,保険契約の基本的構造及び共通する部分は約款に定められていることは公知の事実であって,保険契約の度毎に,遅滞なく約款が送付されている。 したがって,約款を見る意思さえあれば,内容はすぐ解り,かつ,仮に約款の内容について疑問がある場合には,ハウツゥものの本を読む,損害保険会社各社に問い合わせる,保険代理店に問い合わせるなどすれば容易に解明できる。 b 一般の火災保険が地震危険を担保しないことも公知である。 関東大震災以来,裁判例の結果は一致しており,大きな震災の度毎にそのことは報道されている。また,損害保険協会は, 解明できる。 b 一般の火災保険が地震危険を担保しないことも公知である。 関東大震災以来,裁判例の結果は一致しており,大きな震災の度毎にそのことは報道されている。また,損害保険協会は,地震保険の普及促進を図るため,広告に努めており,一般の火災保険の申込の際には,地震保険の普及を図るため,地震保険に不加入の場合には,地震保険意思確認欄に押印を求めている。 ウ情報開示義務,説明義務について後に詳述するとおり,原告らが主張するような情報開示義務,説明義務は存在しない。 エ地震保険について後に詳述するとおり,地震保険について,原告らが主張するような原則付帯方式は採られていないから,それを前提とする原告らの主張は理由がない。 (3) 地震免責条項の有効性ア地震損害の巨大性,発生予測の困難性,逆選択の危険(地震は地域的に頻度差が大きく,いったん発生すれば一定地域に長期に地震が反復する傾向があるから,そのような地域,時期にだけ保険に加入する等の傾向が生じ,危険の平均化が難しいこと)からすると,地震は保険に馴染みにくい異常危険である。 イ判例,学説によっても地震免責条項の有効性に異論はない。 ウ昭和41年5月18日に地震保険に関する法律(以下「地震保険法」という。)が制定された。その際,前記の地震が保険に馴染みにくいという問題点に対しては,保険の目的の制限や支払限度額を定め,一定額を超える損害については政府の再保険制度を採用して民営ベースに乗せ,地震保険を火災保険等の特定の保険に付帯させ,逆選択の防止を図った上,保険料率は,1498年から1964年までの467年間に,日本及びその周辺で発生し,災害をもたらした計331の地震を参考にし,地震保険発足当時の被害額を想定して算定され,その後の制度改 を図った上,保険料率は,1498年から1964年までの467年間に,日本及びその周辺で発生し,災害をもたらした計331の地震を参考にし,地震保険発足当時の被害額を想定して算定され,その後の制度改訂の際にも同様な方法で保険料率が算定されるとの措置がとられた。 このように,地震保険は約5世紀にわたる期間を料率計算の前提とし,様々な制約を設けて始めて実現可能となったものである。このことは地震損害を現在の火災保険で付保することが不可能であって,地震免責条項が合理的であることを示すものである。 エ保険制度と本訴請求収支相当の原則からすると,特定の危険を免責として保険の担保範囲から除外する場合,それを前提に収支が均衡するよう保険料率が計算される。そして,火災保険では,地震損害を填補しないことを前提として,単年度内で収支が均衡するよう保険料率の計算がされているから,地震損害を填補するための原資は蓄積されておらず,地震火災による保険金の支払を拒絶しても,保険会社に利得は生じず,公序良俗の問題が生じる余地はない。このことは,火災保険のみの加入者は,地震損害の填補を受ける対価を負担していないことを意味し,そのような者に保険会社が保険金を支払うことは,保険の財政的基盤を危うくするもので許されない。このように,火災保険に基づく地震損害の填補の請求は,保険制度の本質に照らし認められない。 (4) 被告会社らの地震免責条項の意義第1類型,第2類型のみならず,第3類型,即ち,発生原因の如何を問わず生じた火元の火災が地震によって延焼または拡大して生じた損害も免責されると解すべきである。 また,「地震」や「地震によって」の意義を原告らが主張するように限定すべきでない。 2 地震免責条項該当性(原告らの主張)(1) 本件火 じた損害も免責されると解すべきである。 また,「地震」や「地震によって」の意義を原告らが主張するように限定すべきでない。 2 地震免責条項該当性(原告らの主張)(1) 本件火災の火元火災は,地震によって生じたものではない。 ア本件火災は,地震発生後3時間後に出火したものであるから,地震以外の不審火等様々な火災発生原因の可能性があり,地震によるものと判断することはできない。 イまた,出火原因認定書(乙1)には,出火原因不明とある。今回の火災について神戸市消防局において十分に調査をしても,結局,出火原因不明であったのであるから,到底,地震による出火と考えることは出来ない。 (2) 保険目的物への損害は,火元の火災が地震によって延焼又は拡大して生じたものではない。 ア地震によって延焼又は拡大したかについての判断は,個々の保険目的物に燃え移る時点で具体的に行わなければならず,発生してから延焼拡大していく火災と,まさに保険目的物に燃え移ろうとしている火災は区別し,後者を問題としなければならない。そう考えると,次のとおり,その時点では,既に消防力は回復しているのであるから,本件は,「地震によって延焼又は拡大」したものではない。 (ア) 本件火災は,平成7年1月17日(以下同月中は日にちのみで示す。)午前9時頃,c通d丁目e番fA方付近で出火した。 本件火災は,17日午後6時から7時頃,東側からa2丁目付近に延焼し,18日午前零時頃までに,a町2丁目が全焼した。出火原因認定書の延焼経路図(乙1,97頁)によると本件保険目的物に延焼したのは,概ね17日午後7時から午後8時にかけてである。また,建設省建築研究所が,放送各局の中継をビデオに収録した映像及び神戸大学が実施したヒアリング調査をもとに作成した別紙 本件保険目的物に延焼したのは,概ね17日午後7時から午後8時にかけてである。また,建設省建築研究所が,放送各局の中継をビデオに収録した映像及び神戸大学が実施したヒアリング調査をもとに作成した別紙延焼動態図(乙4)によると17日午後7時5分頃は,本件保険目的物所在地辺りは燃えていない。 (イ) 当時のa町2丁目の付近の消火活動状況は,17日午後5時以降に,再出動が開始され,6時から7時に再出動現場に到着している。この時点で,a町2丁目に東側から延焼が始まっている。 これに対し,17日午後7時から8時頃に,水源を神戸市民プールにして,再出動後の放水を開始している。この時の消防隊は①b2丁目とa町2丁目との境界道路から東へと②a町2丁目B駐車場よりに,筒先進入させて消火にあたっている。この時点で,a町2丁目東半分まで延焼してきている(乙1,97頁)のであり,保険目的物に延焼しようとする前に,放水が開始されている。 (乙1,95頁以下)(ウ) 消火活動は,途中から,水源はJR鷹取工場内の貯水槽や長田港からの海水中継に変わって,継続して行われている。また,このころ,他都市からの派遣隊や,市内の応援隊,消防団員等が続々と到着し,応援を受けているのであり,時がない場合と同様かそれ以上に効果的な消火活動が展開されている(乙1,95頁)。 原告甲1方が燃える頃には,既に南北の23メートル道に消防車が50台位来ており,先頭は和歌山の消防自動車であった(証人C,15頁~16頁)。 消防隊が筒先進入させて消火に当たったa町2丁目街区北側付近の両側は消火活動が効果的に行われたので焼け残った(乙1,88頁,甲9の1,3,証人T16頁から18頁)。 保険目的物付近は,本件地震時に建物の崩壊等で道路が塞がれることもなく 目街区北側付近の両側は消火活動が効果的に行われたので焼け残った(乙1,88頁,甲9の1,3,証人T16頁から18頁)。 保険目的物付近は,本件地震時に建物の崩壊等で道路が塞がれることもなく,この点で消火活動に支障は出ていなかった(証人C118頁)。 上記の放水によって,延焼速度は低下し,効果的に消防活動がされた(乙1,97頁)。 (エ) 以上からみて,保険目的物に延焼し始めるのは,概ね17日午後7時から8時にかけてであるが,それ以前ないしは同時に放水活動が開始され,地震がない場合と同様かそれ以上に効果的な消火活動がされている。 (オ) したがって,保険目的物に延焼し始める時点では,地震とは関係ない十分な消防力があったのであり,到底,本件損害については,火元の火災が地震によって延焼または拡大して生じたものとはいえない。 イ地震免責条項の解釈上消防力を考慮すべきではない。 火災保険料の決定において,消防力は考慮されておらず,地震と同様な自然災害である台風の影響で消防力が低下していた場合には免責条項はなく,人為的な理由での消防力の低下についても免責しないことからすると,地震免責条項においても消防力の低下を考慮すべきではないことは明らかである。 ウ仮に,消防力の低下を考慮すべきとしても,それは,①類型的に地震の揺れによって通常直接的に発生すると予想されるものに限定されるべきであり,②時間的にも,地震によって一時的に消防力が低下した場合でも,通常消防当局の対応措置や近隣自治体・国等からの応援がされて消防力が回復することが期待できるのであるから,通常その応援がされるのに必要な時間を経過した場合は,もはや地震との因果関係はないと限定して考えなくてはならない。そして,通常その応援がされるのに必要な時間とは,交通, ことが期待できるのであるから,通常その応援がされるのに必要な時間を経過した場合は,もはや地震との因果関係はないと限定して考えなくてはならない。そして,通常その応援がされるのに必要な時間とは,交通,通信手段が発達した現代においては,長くともせいぜい地震発生後半日程度を考えるべきである。 本件では,保険目的物に延焼し始めるのは概ね17日午後7時から午後8時にかけてであり,本件地震の発生後半日以上経過しているから,保険目的物への延焼と本件地震には相当因果関係はない。 エ神戸市における消防力の不備(ア) 神戸市では本件地震後,175件の火災(うち建物火災は157件)が発生し,7386棟の建物が焼損し,焼損面積は81万9108平方メ-トルに及び,529人が焼死した。火災件数に比べて焼損建物数が多く,焼損面積が大きいのは地震後発生した火災が次々と延焼して大きな損害をもたらしたことによるものである。 本件地震の震度は神戸市において,6ないし7を示したが,上記の本件地震後の火災の延焼拡大の防止は決して不可能ではなく,いわば人災であった。 (イ) 神戸市の「地域防災計画」の不備D大学教授が,1972年に神戸市域は将来マグニチュ-ド7クラスの大地震が起こる可能性の高い地域に含まれると指摘したのを始め,神戸市が地震対策のために専門家に調査依頼した結果の報告書(昭和49年「神戸と地震」)でも神戸市周辺地域は活断層が複雑に走っており,今後大地震が発生する可能性が充分あるという指摘がされていた。その後も,神戸市域では直下型の大地震がいつ発生してもおかしくないという警告がなされていた。 ところが,想定震度を6にすると多額の予算を要するために,神戸市は想定震度を5として「地域防災計画」を策定した。しかも,想定震度を5と いつ発生してもおかしくないという警告がなされていた。 ところが,想定震度を6にすると多額の予算を要するために,神戸市は想定震度を5として「地域防災計画」を策定した。しかも,想定震度を5としても決して充分な対策がとられたとはいえなかった。 (ウ) 消防力の基準a 消防組織法は,消防は市町村が責任を負うことを定めているが(同法6条),同法20条の「勧告」として,市町村が遵守すべき消防に関する施設,人員の「最小限度」を「消防力の基準」(甲26)(以下「消防力基準」という。)として定めている(消防力基準1条)。 b 「市街地」に配置する消防ポンプ自動車の数消防力基準によると,消防署又はその出張所の管理すべき消防ポンプ自動車の数は長田区に14台(1台は予備),須磨区に20台(2台は予備)となるところ(消防力基準2条3号,別表第2,11条),実際に,本件火災当時,長田区,須磨区に配置されていた消防ポンプ自動車の数は,長田区4台(ポンプ付救助車を含む。),須磨区5台に過ぎなかった。 また,配置すべき消防ポンプ自動車数を各区毎に算出すると,神戸市全体では159台(14台は予備)を配置しなければならないことになる。 ところが,実際には,神戸市の保有している消防ポンプ自動車の合計は56台しかなかった。 これに対し,芦屋市,西宮市の場合は,平均風速を神戸市と同様に4メートル未満とすると,それぞれ配置すべき消防ポンプ自動車数は芦屋市12台(1台は予備),西宮市41台~45台(4,5台は予備)であるところ,実際には芦屋市には9台,西宮市には53台が配置されていた。 このように,神戸市は,消防ポンプ自動車数において,消防力基準を大幅に下回っていた。 c このように,神戸市は,通常求められる消防組 芦屋市には9台,西宮市には53台が配置されていた。 このように,神戸市は,消防ポンプ自動車数において,消防力基準を大幅に下回っていた。 c このように,神戸市は,通常求められる消防組織法20条の勧告として,市町村が遵守すべき消防に関する施設,人員の「最小限」として定められた「消防力の基準」さえ満たしていなかったものであるから,仮に,地震免責条項において,「地震によって延焼又は拡大」したかについて消防力と関係づけて考えたとしても,保険目的物の損害を生ぜしめた消防力不足の原因は,当初からの消防力の不備に由来するものであり,本件地震によってことさらに消防力が低下したものとは評価できない。よって,その損害と本件地震との因果関係は認められない。 (エ) 防火水槽の不備a 人口1万人当たりの防火水槽の数は,神戸市が8.64であるのに対し,西宮市は22.2であり,西宮市に比較して,神戸市の防火水槽の設備が立ち遅れていた。 しかも,神戸市における防火水槽の配置は,北区,西区のような新興の住宅開発地域に偏って配置されており,長田区を始め,市街地には十分配置されていなかった。 b 神戸市が本件地震の9年前に策定した「地域防災計画」の「地震対策編」は,震度5を想定しており,消防用水は消火栓から引くことを前提としていた。ところが,本件地震では,断水により消火栓が使用不能になったため,消火用水が確保できたかが,火災の延焼拡大に決定的な影響を与えた。 例えば,西宮市では長田区の2倍近い火災が発生したが,焼失面積では長田区の60分の1に止まった。 これは,防火水槽という消防水利の分散化が有利に働いた他,河川などの自然水利の有効利用や消防分団との連繋強化を図ったことも署員の咄嗟の判断を助けた。 c 本件火災の地域に 1に止まった。 これは,防火水槽という消防水利の分散化が有利に働いた他,河川などの自然水利の有効利用や消防分団との連繋強化を図ったことも署員の咄嗟の判断を助けた。 c 本件火災の地域には29基の消火栓があったが,すべて断水し,防火水槽6基のみが頼れるものであったが,それらは1時間足らずで使い果たされた。 d このように,防火水槽の不備の点からも,通常保有すべき消防力に不備があるから,仮に,地震免責条項において,「地震によって延焼又は拡大」したかについて消防力と関係づけて考えたとしても,保険目的物の損害を生ぜしめた消防力不足の原因は,当初からの消防力の不備に由来するものであり,本件地震によってことさらに消防力が低下したものとは評価できない。よって,その損害と本件地震との因果関係は認められない。 オ消防活動の判断の誤り(ア) 地震の際に消防活動の判断の誤りがある場合は,仮に,地震免責条項において,「地震によって延焼又は拡大」したかについて消防力と関係づけて考えたとしても,地震と関係のない火災において消防活動の判断を誤った場合と同様であるから,当該損害と地震との因果関係は認められないこととなる。 (イ) 神戸市は,西宮市が基本戦術を定め,市内消防団や他市応援団と連繋を図り,大規模な延焼拡大を回避したのに対し,消防活動を各地区の消防署単位で自己の担当範囲の消防活動を行わせたために,他の地区や他都市からの応援との連携を的確にはかることが出来ず,結局大きな損害を出している。これは,消防活動における判断の誤りである。 (ウ) また,本件の消防活動にヘリコプターを使用しなかったのは,判断の誤りである。 a 本件地震が発生した直後から,大阪府八尾空港に駐屯する陸上自衛隊中部方面航空隊は,ヘリコプターによる情報収集を開始し,特 ,本件の消防活動にヘリコプターを使用しなかったのは,判断の誤りである。 a 本件地震が発生した直後から,大阪府八尾空港に駐屯する陸上自衛隊中部方面航空隊は,ヘリコプターによる情報収集を開始し,特に長田区の延焼拡大に対処するため,15機のヘリコプターによる空中消火の準備を具体的に整え,兵庫県を通じ,神戸市に対して協力を申し入れていた(甲8)。 b しかし,神戸市消防局は,その協力申し入れに対して回答を留保し,18日午前10時にこれを拒否した。 c 神戸市消防局は,次のような理由でヘリコプターによる消火活動を実施しなかったとしている(甲31)。 ①消火効果を高めるためには多数のヘリコプターを集中して導入する必要があり現実問題として困難かつ危険であること,②屋根等の構造物の影響で有効注水が得にくいこと,③落水の影響で家屋倒壊を助長する危険性や要救助者に危険が生じること,④消火効果を高めるため低空飛行を行った場合,ヘリコプターの吹き下げ流の影響で火勢を拡大する危険性が高いこと,⑤市街地での火災エネルギーは非常に強いため低空飛行はヘリコプター自体が危険であること(上空での酸欠によるエンジンの停止,上昇気流による操縦困難性)(エ) しかし,①については,15機のヘリコプターが即時に投入できるよう準備されていたし,観測ヘリを旋回させて空中消火にあたるヘリを誘導し,その安全を確保することが可能であって,現に,ノースリッジ地震においては,そのように実施された。②については,屋根に開口部が生じた際などに水や消火剤を投入することによって十分効果的な消火が可能であり,③についても,水や消火剤を投入するタイミングの問題であって,④についても,飛び方によって避けることは可能であり,⑤についても接近方向を考慮すれば,熱や酸欠による操縦困難を避 的な消火が可能であり,③についても,水や消火剤を投入するタイミングの問題であって,④についても,飛び方によって避けることは可能であり,⑤についても接近方向を考慮すれば,熱や酸欠による操縦困難を避けることは十分可能である。 (オ) このように,神戸市消防局の挙げる理由は,いずれも空中消火を拒否する合理的な理由とはいえない。 (カ) このようにして,神戸市の貧弱な消防力や消防水利を前提としても,自衛隊の協力を仰ぐことによって,本件火災についても延焼拡大の範囲を最小限にくい止めることが可能であった。 (被告会社らの主張)(1) 本件地震の発生本件地震は神戸市などの直下で発生した大都市直下型のもので,戦後最大の被害が阪神地区に及ぼされ,多くの人的被害,建物被害,交通関係の被害,生活関連施設の被害,消防署を始めとする各種公的機関の施設や機能の被害がもたらされた。 (2) 本件地震後の火災の特徴本件地震後,神戸市を中心として同時多発的に火災が発生し,それがその後も数日間にわたって五月雨的に継続したが,その原因が特定できたもののうち,電気関係の火災やガス関係の火災が多く見られたところ,その発生の経過,原因は,1994年に発生したロサンゼルスのノースリッジ地震後の火災と同様であった。したがって,大都市直下型の地震である本件地震において,地震から数時間あるいはそれ以上の時間経過後に発生する火災の原因はこの電気関係の火災やガス関係の火災によるものとの推定が働く。 また,大都市直下型の地震後に発生する火災では,通常時は,その初期に家人等の私的な消防力によって鎮火できる火も,都市機能の破壊や消防力の著しい低下と競合して,巨大な火災へと延焼拡大する。 (3) 地震と火災の因果関係と出火原因ア出火原因特定 ,その初期に家人等の私的な消防力によって鎮火できる火も,都市機能の破壊や消防力の著しい低下と競合して,巨大な火災へと延焼拡大する。 (3) 地震と火災の因果関係と出火原因ア出火原因特定の困難性神戸市消防局の原因調査結果によれば,本件地震後に神戸市内で発生した火災の多くの原因を不明としていて,特に,大規模火災は原因不明とされているが,これは,消防機関による火災原因等の調査の目的から,特定の火源及びその火源がどのような経過をたどって着火物に引火し,火災といえるまでに拡大していったのかを科学的かつ一義的に確定する必要があるため,火災原因を認定するのが極めて慎重であることによる。 しかし,大地震後に発生した本件のような大規模火災では,延焼は広範囲に及ぶこと,特に出火場所は跡形もないほど焼き尽くされていること,当時火災が頻発していて,消防機関に,火災原因を調査する余裕はなかったことから,火源等の特定は困難であったもので,地震と火災の因果関係を認めるには,火源等を特定しなくとも,その火災の発生時間帯や発生経過などを総合的に考慮して判断すべきである。 そして,火災のうち,原因が不明である割合が本件地震後は通常より極めて高かったことからすると,原因が不明であることと本件地震との間には因果関係があるというべく,かえって,不明火は本件地震によると推定すべきである。 イ不明火率の平年との比較神戸市における「建物火災」のうち,不明火の割合を本件地震前年の平成6年と震災後10日間とで対比すると,約八,九十倍となっている。このように,地震後の建物火災において,出火原因が不明である割合が例年に比して際だって高く,むしろ地震後の火災の特徴ともなっている。 したがって,特定の出火原因が明らかにされない限り地 る。このように,地震後の建物火災において,出火原因が不明である割合が例年に比して際だって高く,むしろ地震後の火災の特徴ともなっている。 したがって,特定の出火原因が明らかにされない限り地震に起因すると推定すべきである。 ウ本件火災で焼損した街区は,震度7の激震地であり,建物の被害も大きい場所であって,後記のとおり,火元の建物も本件地震により倒壊していたこと,本件地震の際激震地には火災が集中していることからすると,本件火災はそれだけで本件地震によるものと推認できる。 (4) 本件火災の発生ア地震発生前の本件火災地域の状況本件火災は,c通5,6丁目,g通5,6丁目,h通3,4丁目から須磨区のb1,2丁目,a町1,2丁目,i町1ないし4丁目,j町1ないし4丁目(以下須磨区を略す。)の一帯で東西に長く広範囲に燃え拡がっている。保険目的物が存在したa町はこの火災地域の一部である。 c通,g通6丁目は住居地域,h通,g通5丁目が準工業地域に指定されている。c通5丁目の東端にはc通商店街,c通6丁目の西部には水笠西公園があり,h通にはケミカルシューズ製造工場,家庭内作業所が多数建ち並んでいた。 b及びa町は住居地域に指定され,これより南側のi町1ないし4丁目,j町1ないし4丁目一帯が準工業地域に指定されており,i町及びj町一帯は大規模なケミカルシューズ製造工場が建ち並んでいた(神戸市消防局編集「阪神・淡路大震災における火災状況」68頁)。 イ火元,出火時刻について本件火災は,本件地震によって家屋が倒壊した長田区c通d丁目e番f所在のA方付近から,午前9時ころ出火した(前掲「火災調査報告書」)。 ウ延焼拡大の状況本件火災は,発生直後,発生現場付近は当初無風状態であった 家屋が倒壊した長田区c通d丁目e番f所在のA方付近から,午前9時ころ出火した(前掲「火災調査報告書」)。 ウ延焼拡大の状況本件火災は,発生直後,発生現場付近は当初無風状態であったため,倒壊建物に延焼しながらゆっくりとした速度でやや東向きに周囲へ拡大した。その後,風が北東から吹き始め,東側は午後2時30分ごろにはc通商店街で焼け止まり状態となった。しかし,西側へは延焼拡大が続き,午後3時ごろには,c通5丁目全域,c通6丁目及びh通3,4丁目に達し,このころから北東の風が強くなってきたため,延焼速度は速くなった。 午後4時ごろには,道路上に倒壊した建物を媒体として須磨区側へ延焼し,午後5時30分ごろには,a町,i町,j町の各1丁目の全域に拡大した。一方,北側へは午後6時30分ごろ,g通6丁目及びb1,2丁目の一帯に達し,さらに,西側へと勢力を増しながら火災は拡大した。また,南側街区では午後6時ごろには,i町1丁目付近からj町2丁目付近へと飛び火し,i小学校を回り込むように,幅員26メートルの主要市道西出高松前池線付近まで延焼した。このころには風にあおられての飛び火が多くなり,午後7時ごろには,j町2丁目からi小学校の南側の民家へ,さらに,i町2丁目から主要市道西出高松前池線を越えてj町3丁目へ飛び火し,j町3,4丁目一帯へと拡大した(前掲「阪神・淡路大震災における火災状況」70頁)。 エ消防署の活動状況本件火災については,管轄する長田消防署消防隊が最初に駆けつけた。 この長田消防署消防隊の活動状況は,前掲「火災調査報告書」によると,以下のとおりである。 17日午前11時ごろ,長田消防署3階署長室の西面窓から西方には幾本もの黒煙が確認できた。本件火災場所についても,西方約1キロメート ,前掲「火災調査報告書」によると,以下のとおりである。 17日午前11時ごろ,長田消防署3階署長室の西面窓から西方には幾本もの黒煙が確認できた。本件火災場所についても,西方約1キロメートルで県道神戸明石線のすぐ南側付近に大きな黒煙の上昇が視認できた。 午後零時過ぎごろ,長田5(ポンプ車),長田27(はしご車)の2隊で現場に向かった。長田署から県道神戸明石線に入り,西進するも西行車線は渋滞のため,署前付近から車両がほとんど進まない状況であり,前方車両をマイクで左右に振り分け誘導しながらの進行であった。大道通2丁目付近で幹線道路を避け,k通とl通との境界道路へ迂回,街区内道路へ左折したが,家屋の倒壊が激しく隊員の先導を受けながらの走行となる。k通2,3丁目の交差点で,電柱から垂れ下がった電線が支障となり,前進できなくなり,再び幹線道路に引き返し他の迂回路を探しながら前進するも,大道通k通の南北道路は家屋が倒壊し通行できない状況であった。やむを得ず,渋滞中を進むが西代の陸橋が破損し通行できないため,側道に入りg通3丁目のE(レストラン)を左折,g通とc通との境界道路を西へ進入しようとしたが,ここも倒壊した建物が道路を塞いでいた。その200メートル前方付近から黒煙がほぼ真上に上昇しているのが車中から見分された。c通とh通との境界道路からも同様の状況が見分される。 この付近で,長田5に同乗していた救助隊数名を降ろし付近の救助活動に当たらせるとともに,長田5は再度,県道神戸明石線に戻り西進,長田27がg通5丁目県道上の防火水槽に部署するのを確認し,須磨区との境界道路を南下し水笠西公園北西付近の防火水槽(40トン)に到着した。 現場到着し,g通6丁目とc通6丁目の間の境界道路を東へ進み延焼範囲を見分すると,c通6 部署するのを確認し,須磨区との境界道路を南下し水笠西公園北西付近の防火水槽(40トン)に到着した。 現場到着し,g通6丁目とc通6丁目の間の境界道路を東へ進み延焼範囲を見分すると,c通6丁目の北東部一帯から炎と多量の黒煙が立ち上り西へと延焼中であった。 放水を継続するも,「火勢は全く衰えず」,「1時間足らずで防火水槽を使い果たし」,その後は隊員に付近の「使用可能な水利を探しに回らせたが」,「消火栓は断水」,「防火水槽は空の状況」であった。長田港からの海水中継隊との連絡をとるため,「無線送信するが連絡不通であり,公衆電話,携帯電話も回線不通で使用できない状況で」あった。 その後,「他都市からの応援隊が駆け付けてくれたので」,i小学校プール水を中継送水してくれるよう依頼した。放水を再開したものの,「少ない筒先を有効に機能させるため,筒先移動しながらの防御となる」。強まってきた北風の影響で,延焼速度は急に速まり,「道路に炎が噴出し」,熱気と濃煙のため「放水員は北へ北へと後退しながらの防御となる」。その後も,「路上に倒壊している家屋に次々に着火」,午後4時頃,須磨区i町1丁目1番付近の倒壊家屋に延焼するのを確認する。「水源が残り少ないとの情報を得て,このままでは放水活動ができないと判断し,大隊長の指示を仰ぐべく須磨1にて長田消防署へいったん戻る」。副大隊長から「神戸市民プールからの中継送水,長田港からの海水中継隊の送水,これらの水源を基に西への延焼阻止することとの下命を受ける」。 午後5時ころ再出動すると,「県道神戸明石線に入ったところで,すでに長田区の西方の空一帯が真っ赤に染まっている状況」であった。g通5,6丁目の境界から南方を見分するとg通5,6丁目の南半分が炎上中で,そこから南方は「炎が猛烈で確認できない 線に入ったところで,すでに長田区の西方の空一帯が真っ赤に染まっている状況」であった。g通5,6丁目の境界から南方を見分するとg通5,6丁目の南半分が炎上中で,そこから南方は「炎が猛烈で確認できない」。g通6丁目と須磨区b1丁目との境界から南方を見分すると,「両街区の南半分が炎上中で」,「そこから南方は炎が猛烈で確認できない」。b1,2丁目の境界から南方を見分すると,「西側は須磨区a町1丁目街区が北端まで延焼し」,東側は「a町2丁目街区への延焼が認められる」。 火災は県道神戸明石線とJR高架の間の広大な幅で西へと延焼しており,「消防隊の放水による火勢鎮圧は不可能な状況であった」。中継体制が完了し,b2丁目とa町2丁目との境界道路から東へ一線,a町2丁目C駐車場内へ一線それぞれ筒先進入させ防御にあたらせる。「この時点で,a町2丁目街区東半分まで延焼してきている状況である」。この後,水源は神戸市民プールからJR鷹取工場内の貯水槽や長田港からの海水中継に切り替える。また「他都市からの派遣隊や市内の応援隊,消防団員が続々と到着し応援を受けた」。 「18日2時頃,b2丁目,a町2丁目一帯は概ね延焼阻止し」,火勢が県道を越え西へ延焼する危険がないと判断し,派遣隊等に放水活動を引き継ぐ。 (以上,長田5(ポンプ車)に同乗した長田消防署中隊長である消防司令F作成の「火災状況見分書」)(5) 地震免責条項の適用ア地震による火災免責前掲「火災原因認定書2」によれば,本件火災の原因は不明として処理されているが,本件火災は,倒壊した建物より,本件地震発生後3時間余りして出火しているのであるから,特段の事情がない限り,地震によるものと事実上推定されるべきである。 そして,本件火災の火元である「A方付近」の火災 ,倒壊した建物より,本件地震発生後3時間余りして出火しているのであるから,特段の事情がない限り,地震によるものと事実上推定されるべきである。 そして,本件火災の火元である「A方付近」の火災は地震によって発生したものであるから,原告らの主張する損害は,地震免責条項の「地震によって発生した火災が延焼または拡大して生じた損害」に該当する。 イ延焼拡大による火災免責また仮に,火元の火災が地震によるものとは認められないとしても,前記のとおり,本件火災の覚知が火災発生より2時間も要していること,覚知の方法が電話等通常の手段ではなく,消防署員の視認であること,出動が火災覚知から1時間を要していること,出動から現場到着まで,距離1キロメートル,平常時であれば数分の距離を,1時間30分要していること,それは,倒壊家屋,交通渋滞,これに加え救助活動等が消防隊の到着を大幅に遅らせたことによること,消防隊が到着した後も断水などのため,十分な消火活動ができなかったことなどからすると,本件火災が,保険目的物に延焼したのは,本件地震により消防力が無力になったことによるから,その損害は,地震免責条項の「発生原因のいかんを問わず火災が地震によって延焼または拡大して生じた損害」に該当する。 3 寄与度に応じた因果関係の認定(割合的解決)(原告らの主張)(1) 本件火災について地震の影響があったことを認めざるを得ないとしても,本件火災の延焼拡大には地震以外の様々な人為的な要因も寄与していること,地震免責条項が難解でかつ説明が十分にされていないことを考慮すれば,延焼に寄与した諸事情の程度に応じて保険金額の算定をするのが妥当である。 (2) この理論は判例でも認められている(大高判平11.6.2判時1715号86頁,その上告審最判平成11 を考慮すれば,延焼に寄与した諸事情の程度に応じて保険金額の算定をするのが妥当である。 (2) この理論は判例でも認められている(大高判平11.6.2判時1715号86頁,その上告審最判平成11年(オ)第1378号,同年(受)第1163号,大高判平11.11.10判タ1038号246頁)。 (3) このような考え方は,割合的因果関係論,寄与度減責の理論として判例において広く認知されている(交通事故によるむち打ちにつき損害の拡大に被害者の心因的要因が寄与している時に,民法722条2項の類推適用によって寄与度減額をした最判昭和63.4.21判タ667号99頁,共同不法行為の加害者の各使用者間において求償権が成立する範囲についての最判平成3.10.25判タ924号4頁,水俣病東京訴訟第1審判決である東京地判平成4.2.7判例時報臨時増刊平成4年4月25日号,西淀川第2次~第4次訴訟第1審判決である大阪地判平成7.7.5判時1538号17頁)。 (4) 割合的因果関係論及び寄与度減責の理論,あるいはこれらに類似する判例理論は,複数原因が共同する場合において,賠償額を決定するに当たり,個々の原因の寄与度を考慮するという点において共通している。本件地震後の火災に関する前記判決も,火災の発生に複数の原因が考えられる場合に,個々の原因の寄与度を考慮して保険金額を算定すべきであるという点について共通性を有する。つまり,損害賠償額や保険金額の算定にあたって,オールオアナッシングの考え方をすることは,公平の見地から妥当でなく,寄与度に応じた金額を算定すべき点において共通している。 (5) 本件においても,延焼拡大に対する寄与度は地震以外の要因が大である。従って,仮に本件延焼と本件地震との因果関係を一部肯定すべきであるとしても,保険金額の算定にあたっ おいて共通している。 (5) 本件においても,延焼拡大に対する寄与度は地震以外の要因が大である。従って,仮に本件延焼と本件地震との因果関係を一部肯定すべきであるとしても,保険金額の算定にあたっては,信義則及び公平の見地から,地震の寄与度より大きな人為的な寄与度も考慮して,十分な保険金額の算定がされるべきである。 (被告会社らの主張)(1) 相当因果関係説の内容我が国では,火災保険について,裁判例のすべてと学説の大部分が,相当因果関係説を採用している。 この火災保険において採用されている相当因果関係説は,不可欠条件のうち適当条件のみをもって結果の原因とする因果関係論である。 相当因果関係説をとった場合,複数の不可欠条件が適当条件となることがある。この場合,民法などの一般法域では,一定の行為に対し一定の結果を付与するのは法律そのものであるから,すべての適当条件は各々独立してその原因たりうる。 (2) 免責危険優先の原則保険契約において,免責危険を設定するのは,保険者の負担する危険の原因又は結果を制限する趣旨であるから,当然免責危険の方が担保危険に優先する(免責危険優先の原則)。 即ち,複数の不可欠条件が適当条件として損害の原因となる場合,一方が担保危険で,他方が免責危険であるときは,免責危険が優先するから,結局は,全損害について,保険者は免責される。 (3) 不法行為論における因果関係との対比民法などの一般法域において,相当因果関係説をとった場合,複数の不可欠条件が適当条件となった場合は,免責危険優先の原則の適用はないから,共同不法行為の危険により,各原因発生に責任ある者がそれぞれ全ての損害賠償の責を負う場合もあれば,割合的認定をすることもできる(最小1判昭63. 件となった場合は,免責危険優先の原則の適用はないから,共同不法行為の危険により,各原因発生に責任ある者がそれぞれ全ての損害賠償の責を負う場合もあれば,割合的認定をすることもできる(最小1判昭63.4.21民集42巻4号243頁)。しかし,保険契約においては,免責危険優先の原則が働くから,原告らの「寄与度に応じた保険金額の算定」の主張は採れない。 4 本件火災による損害の有無及び額(原告らの主張)保険目的物は,本件火災によって,その全部が焼失し,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は少なくとも別表1保険金額欄記載の金額の損害を被った。 保険目的物は,本件地震でほどんど被害がなかった(甲9の2,3,甲41ないし50,証人甲3頁,13頁,14頁,18頁,19頁)。 (被告会社らの主張)保険目的物の所在地で本件火災があったことは認めるが,その余は知らない。 保険目的物は,本件地震によって既に損壊していた可能性がある,ないし,損壊していたから,本件火災によって損害を被ったとの主張は不知ないし否認する。 5 情報提供義務不履行に基づく火災保険金相当額の損害賠償請求(原告らの主張)(1) 事業者は,消費者に対し,契約締結過程における信義則上の情報提供義務を負担しており,この説明義務の不履行をした事業者は,不十分または不実の情報提供により契約関係に入った消費者に対し,損害賠償責任を負う。 このような情報提供義務不履行による損害賠償責任は,ワラント取引,変額保険取引において主として論じられてきたが,保険契約においても妥当する。 (2) 情報提供義務の根拠情報提供義務の根拠は,①事業者と消費者との間の情報量及びその分析能力の格差からすると,対事業者取引における消費者の自己決 たが,保険契約においても妥当する。 (2) 情報提供義務の根拠情報提供義務の根拠は,①事業者と消費者との間の情報量及びその分析能力の格差からすると,対事業者取引における消費者の自己決定権を保障し,私的自治を実質的にする必要があること,②損害保険は免許事業であるから,事業者に責任があること(平成7年6月7日法律第105号による改正前保険業法1条,現保険業法3条1項,旧募取法16条1項(現保険業法300条1項)),③保険のような約款取引においては,約款作成者に責任があることである。 このような考え方は,証券商品に関する判例でも認められている。 (3) 損害賠償責任の根拠この損害賠償責任は,旧募取法11条1項,不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失責任に基づく責任である。 (4) 損害賠償責任の範囲保険会社は,地震免責条項は本件のごとき火災には適用がないと信じていた消費者たる保険契約者に対し,その信頼を保護すべく,権利外観法理と類似する考え方によって,火災保険金相当額の損害賠償をする義務がある。 (被告会社らの主張)(1) 後に詳述するように被告会社らに原告の主張する情報提供義務はなく,損害賠償責任の根拠もない。 (2) 損害については,本来不法行為における損害の範囲は客観的に画されるべきもので,被害者が主観的に獲得できるであろうと期待していた金額が法律上の損害となることはない。原告ら(原告甲2らは除く。)及び亡甲2は,地震免責条項のない火災保険に加入したことはありえず,地震による火災により保険の目的が損害を被った場合に火災保険金を受け取ることは不可能である。 したがって,火災保険金相当額が原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の損害となることはない。 6 地震保険契 より保険の目的が損害を被った場合に火災保険金を受け取ることは不可能である。 したがって,火災保険金相当額が原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の損害となることはない。 6 地震保険契約に基づく地震保険金請求(原告らの主張)(1) はじめに後記の原則付帯方式の帰結として,家計保険たる火災保険契約締結にあたっては,損害保険会社において地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない限り,地震保険が付帯されるが,保険において原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は被告会社らから地震保険に関する一切の説明を受けておらず,地震保険を付帯しない旨の意思表示をしたことはない。したがって,本件では,地震保険契約が成立している。 (2) 原則付帯方式原則付帯方式とは,損害保険会社において,契約時に必ず地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない限り地震保険が付帯されるという方式と定義されるところ(甲33,18頁),昭和54年6月14日付保険審議会答申(甲37)を受けた昭和55年地震保険法第4次改訂により地震保険の引受方式は原則付帯方式に1本化された。 原則付帯方式の帰結として,火災保険契約の契約者が,特に地震保険を付帯しない旨の意思表示をしなければ,地震保険が付帯されることとなる(国会答弁(甲40の1ないし3),元大蔵省銀行局保険第2課長が執筆した「地震保険制度の改正について」(甲34),甲58,59,乙39の6)。 (3) 地震保険不付帯の火災保険契約の締結過程火災保険契約締結過程において地震保険不付帯の意思表示がされるまでの経過は,正常に情報提供がされた場合には次のようになる。 ア保険会社は,契約申込者に地震保険契約付帯の火 約の締結過程火災保険契約締結過程において地震保険不付帯の意思表示がされるまでの経過は,正常に情報提供がされた場合には次のようになる。 ア保険会社は,契約申込者に地震保険契約付帯の火災保険契約書の書式を提示し,必ず,地震保険付帯の形で火災保険契約の締結を求める。 イ契約申込者は,火災保険契約締結の意思で,保険会社側が提出する契約書式に署名し,その名下に押印する。この時点で地震保険について原則付帯方式が適用される結果,その時点で,地震保険付帯の形で火災保険契約が締結されたことになる。 ウその後,保険会社から契約者に対し,地震免責条項との関連における地震保険制度の存在とその内容及び地震保険の付帯方式等の情報提供がされる。 具体的には①地震免責条項の存在及びその内容に関する情報提供,即ち,火災保険約款中には極めて広汎な免責を規定する地震免責条項が存在し,火災保険だけでは地震後の火災には保険金は一切支払われないことになるであろうという説明,②地震保険の存在及びその内容に関する情報提供,即ち,上記地震による損害を填補するため地震保険制度が存在しており,地震保険を付帯しておれば,地震後の火災の場合でも保険金が支払われるという説明,③地震保険の付帯方式に関する情報提供,即ち,地震保険は火災保険に原則付帯されているものの取り外しは可能であり,これを取り外す場合には契約申込書中の地震保険意思確認欄に押印する方法によるべきこと及び④地震保険を取り外した場合にはその分だけ保険料が安くなることの説明がされる。 エ契約者において,保険会社から開示説明された情報をもとに,特に,①地震保険を取り外した場合の危険性,即ち地震免責条項による免責の危険と地震保険付帯の動機付け要因と,②地震保険を取り外した場合のメリット,即ち保険料の負担 会社から開示説明された情報をもとに,特に,①地震保険を取り外した場合の危険性,即ち地震免責条項による免責の危険と地震保険付帯の動機付け要因と,②地震保険を取り外した場合のメリット,即ち保険料の負担の軽減という地震保険不付帯の動機付け要因との比較考量の上,不填補の危険を覚悟し,地震保険不付帯を決意した場合に,地震保険意思確認欄に押印がされ,これが地震保険不付帯の申し出となる。 (4) 地震保険における主張立証責任まず,保険契約者が火災保険契約の成立を主張・立証すると,原則付帯方式の帰結として,地震保険契約の成立が基礎付けられる。 次に,地震保険契約の成立を否定する保険会社は,地震保険不付帯の申し出を抗弁として,主張・立証することとなる。 (5) 別個の意思表示必要論に対する反論現行制度において,地震保険と火災保険は別の種類の保険であるとしても,それによって当然別個の意思表示が必要ということとはならない。 地震保険契約は,法律上単独では申し込むことができず,必ず他の家計火災保険に付帯されるものとされており(地震保険法2条2項3号),しかもその引受方式として原則付帯方式という抱き合わせ販売との手法がとられている結果,火災保険契約申込の意思表示がなされると同時に,それに包含される形で地震保険契約の申込の意思表示がされる仕組みとなっているものであり,地震保険のみに関する独立した申込の意思表示は予定されていない。 したがって,地震保険についての独自の意思表示は不要であり,契約締結時に,保険契約者が家計火災保険のみに着目し,地震保険を意識しなくとも,地震保険が付帯された火災保険が成立する。 (6) 衆参両院における付帯決議の趣旨昭和55年の地震保険法改正の際,衆参両院で,地震保険の 火災保険のみに着目し,地震保険を意識しなくとも,地震保険が付帯された火災保険が成立する。 (6) 衆参両院における付帯決議の趣旨昭和55年の地震保険法改正の際,衆参両院で,地震保険の勧誘並びにその付保割合及び付保金額は,契約者の意向を尊重し,強制に亘ることのないよう行政指導を万全にするようにとの付帯決議がされている。 これは,地震保険が原則自動付帯される結果,家計火災保険の契約者が知らないうちに地震保険に加入することになることを前提に,保険会社側がこれを利用して,地震保険に関する説明を懈怠したまま,知らないうちに地震保険に加入させ,高額な地震保険料を請求する事態を危惧したものである。 この決議は,①保険契約者が知らないうちに地震保険に加入する事態がありうることを前提としていること,②契約者の意向尊重を要求しており,その前提において,保険会社に地震保険制度に関する説明を求めていることの2点において,原告らの主張を裏付ける。 (7) 地震保険意思確認欄の趣旨地震保険意思確認欄は,保険契約者の意図をより明確に確認することによって,①地震保険の契約漏れを防止する一方,②災害時の保険金支払に当たって地震保険付帯の有無にかかるトラブル発生の未然防止を図る目的で導入された。 この地震保険意思確認欄の制度の導入後,原則自動付帯による引受方式が採用された結果,次のような効果が生じる。 ①については損害保険会社が地震保険の存在を保険契約者に告知し,その内容を説明することが制度的に保障され,②については,地震保険意思確認欄に保険契約者が納得の上押印した場合を除いては地震保険が付帯されたものとして取り扱わなければならず,前記事業方法書所定の「この契約を付帯しない旨の申し出」(地震保険不付帯の意思表 地震保険意思確認欄に保険契約者が納得の上押印した場合を除いては地震保険が付帯されたものとして取り扱わなければならず,前記事業方法書所定の「この契約を付帯しない旨の申し出」(地震保険不付帯の意思表示)は,必ず地震保険意思確認欄への押印の方法によらなければならないとされる一種の要式行為となった。 (8) 地震保険不付帯の意思表示の欠如ア地震保険意思確認欄に押印が存在しないケース原告甲1は,被告乙2に対する地震保険金請求に関して,乙A1の地震保険意思確認欄に押印をしておらず,地震保険が付帯されている。 保険契約者において,地震保険意思確認欄に押印する方法で地震保険不付帯の意思表示をしなかった場合には,原則自動付帯方式・地震保険意思確認欄制度の帰結として,地震保険が付帯されたままの火災保険契約が成立する。 なお,地震保険の保険金額を決定していないことは,被告乙2が,原告甲1に地震保険制度に関して一切の情報の提供をしなかったからであるから,後記のとおり,この点が,地震保険契約成立を妨げるものではない。 イ地震保険意思確認欄への押印と私文書の真正の推定について(ア) はじめに地震保険意思確認欄に,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が所持する印鑑が押捺されているとしても,民事訴訟法228条4項及びこれに関するいわゆる2段の推定によって,地震保険不付帯の意思表示がされていると考えてはならない。 (イ) 地震保険意思確認欄に原告らが所持しない印鑑が押捺されているケース原告甲7,原告甲11の乙A2,乙C4ないし8の地震保険意思確認欄の印影は,同原告らの所持する印鑑によって顕出されたものではないから,2段の推定の働く余地はなく,地震保険不付帯の意思表示と見ることはできない。 乙A2,乙C4ないし8の地震保険意思確認欄の印影は,同原告らの所持する印鑑によって顕出されたものではないから,2段の推定の働く余地はなく,地震保険不付帯の意思表示と見ることはできない。 なお,火災保険契約については,同原告らも申込の意思を有しており,火災保険契約申込にかかる上記書類の記載については,保険代理店による代行署名を印影も含めて追認し,その法律効果をみずからに帰属させることとする。したがって,火災保険契約については,地震保険が原則付帯された形態で成立している。 しかし,地震保険の不付帯の意思表示については,同原告らは追認を拒絶する。 対応する被告保険会社らにおいて,同原告らの所持する印鑑により地震保険意思確認欄の印影が顕出されたことを立証しない限り,その余の立証を待つまでもなく,同原告らは当然に地震保険に加入していることになる。 (ウ) 押印代行のケースa 保険代理店による押印代行のケース原告甲12,原告甲7に関する乙A2以外の地震保険意思確認欄の印影は,同原告らが所持する印鑑により顕出されたものであるが,それらは,同原告らに印章を手渡された保険代理店により押印されたものである。 いわゆる委託背任型の間接反証として,本人が当該文書への使用とは異なる特定の目的のために他人に印章を交付した事実が立証されれば,たとえ,印影が本人の印章によるとしても,それは本人の意思に基づかないで顕出された疑いが生じる結果,私文書の成立についての推定は妨げられる。 そして,同原告らは,火災保険契約を締結するため,その印章を保険代理店に手渡して押印を代行してもらったものにすぎない。その際,対応する被告会社らないしその保険代理店は,地震保険に関する情報提供を行わず,そのため,同原告らは,地震保険 締結するため,その印章を保険代理店に手渡して押印を代行してもらったものにすぎない。その際,対応する被告会社らないしその保険代理店は,地震保険に関する情報提供を行わず,そのため,同原告らは,地震保険について,一切何も知らなかった。したがって,同原告らが,地震保険不付帯の意思表示のために,保険代理店に対して自己の所持する印章を交付したことなど一切なく,地震保険意思確認欄への押印は,同原告らから,火災保険契約締結のための押印代行を依頼した保険代理店が,その委託の趣旨に背反して,同原告らに無断で,権限もないのに行ったものである。 したがって,上記の成立に関する推定は働かず,結局,同原告らは,地震保険不付帯の意思表示をしていないことになり,地震保険は自動付帯されている。 b 保険代理店から委託された者による押印代行のケース原告甲1の被告乙3関係,原告甲8の地震保険意思確認欄の印影は,同原告らが所持する印章により顕出されたものであるが,同原告らは保険代理店から委託を受けた銀行等に印鑑を手渡し,同銀行等により押印がされたものである。 同銀行らは,保険契約締結における対応する保険会社らの補助者であるところ,補助者の行為は,保険会社らの行為と同視しうる。 したがって,同原告らについても,上記推定は働かず,結局,同原告らは,地震保険不付帯の意思表示をしていないことになり,地震保険は自動付帯されている。 (エ) 理解せず押印しているないし捨て印類似のケース原告甲13,原告甲11,原告甲11商店,亡甲2の地震保険意思確認欄への押印は,同原告ら及び亡甲2ないしその委託を受けた者が,自らしたものである。 しかし,同原告ら及び亡甲2は,いずれも地震保険に関する情報提供を受けておらず,地震保険の存在すら知ら 確認欄への押印は,同原告ら及び亡甲2ないしその委託を受けた者が,自らしたものである。 しかし,同原告ら及び亡甲2は,いずれも地震保険に関する情報提供を受けておらず,地震保険の存在すら知らず,意味がわからないまま,被告保険代理店により火災保険契約申込における当然の必要事項であるかのように押印を慫慂された結果,地震保険意思確認欄への押印をした。 このような押印には,意思表示としての実質が備わっておらず,意思の欠缺ないし表示上の錯誤として,地震保険不付帯の法律効果を発生させない。 (9) 地震保険契約締結に関する意思の合致被告会社らは,その事業方法書において,「当会社は,地震保険の元請け保険を法律第2条第2項第3号の規定に従い,普通火災保険(住宅火災保険を含む,以下同じ),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険または団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者からこの契約を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」と定めて地震保険の付帯方式につき原則付帯方式を採用し,かつ,自社で使用する火災保険申込書の書式には地震保険意思確認欄を設けて,地震保険不付帯の意思表示は,同欄への押印の方法によってなすべきことを書式上も明らかにしている。 原則付帯方式を採用した事業方法書及び地震保険意思確認欄を設けた火災保険申込書の書式により,被告会社らは,火災保険契約の契約者に対して,地震保険付帯の意思表示を,一律かつ包括的に行っている。 他方,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2にとっては,上記事業方法書及び火災保険申込書の書式は,約款として機能することとなり,判例上採用されている,いわゆる意思推定説によって,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,火災保険契約締結にあたっては,事業方法書記載の 及び火災保険申込書の書式は,約款として機能することとなり,判例上採用されている,いわゆる意思推定説によって,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,火災保険契約締結にあたっては,事業方法書記載のとおり,特段に地震保険契約を付帯しない旨の申し出をしない限り,自動的に地震保険に加入することとなる。 事業方法書の内容は,損害保険会社を拘束するのであって,損害保険会社が,事業方法書に記載されている方法と異なる方法を用いて保険契約の勧誘締結をすることはありえない。事業方法書に違反する方法で保険会社が保険業を営んだ場合には,事業免許の取消処分までなされる可能性がある(旧保険業法12条1項)。特に,原則付帯方式については,これを採用する旨の保険審議会答申を受けた法令上の措置として,火災保険事業方法書(第4編地震保険)の改正の方法がとられたという経緯がある(甲34,8頁)。 地震保険は,必ず他の家計保険に付帯されるものであるから(地震保険法2条2項3号),地震保険契約の申込が家計火災保険の申込の意思表示と独立して単独でされることは,法律上ありえない。 また,実質的に考えても,火災保険契約の契約申込者は,地震後の火災であっても,広汎な地震免責条項が適用されるとは夢にも思わず,素朴に,火災で契約目的物が損害を受けた場合には,地震であろうがなかろうが,保険金が支給されるものと考えて火災保険契約を締結するのが通例であり,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2もそのような意思を有していた。したがって,黙示的にではあれ,地震保険契約締結の申込の意思表示をしていることは明らかである。 よって,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2と被告会社らとの間には地震保険契約締結の意思の合致がある。 (10) 事後的な保険証券の送付について 表示をしていることは明らかである。 よって,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2と被告会社らとの間には地震保険契約締結の意思の合致がある。 (10) 事後的な保険証券の送付について被告会社らは,契約締結手続終了後に,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対し,保険証券ないしその写しを送付したと主張しているが,それは,被告会社らの契約締結時における情報提供義務の不履行を是正し,説明を代替する効果をもたない。 すなわち,そもそも地震保険の存在さえ知らない原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対し,蟻よりも小さいような文字で地震保険不付帯の旨を印刷した書面を送付しても,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2がこれに気付く可能性は小さく,このような小さい文字で欄外に印刷された文章を,送付された契約者が読むということは通常期待できない。 (11) 成立する地震保険契約の内容特定地震保険契約においては,当事者,保険目的物は,付帯される火災保険契約におけるのと共通である旨規定されていること(地震保険約款23条),地震保険の保険料率は,保険の目的が建物か家財かの区分,建物の所在地域及びその構造によってあらかじめ決められているから,当事者,保険目的物,保険料率,保険期間は,個別に合意されることは要しない。保険金額だけは,保険契約者に選択が認められているが,それについても,それが付帯される火災保険契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントに相当する範囲で(地震保険法2条4号),かつ,保険目的物が居住用建物の場合には1000万円,生活用動産の場合には500万円が上限という制限が存する。 上記のとおり,地震保険契約において,未確定部分といえるのは,保険金額のみで,しかも,保険金額は,法令及び約款によ は1000万円,生活用動産の場合には500万円が上限という制限が存する。 上記のとおり,地震保険契約において,未確定部分といえるのは,保険金額のみで,しかも,保険金額は,法令及び約款により一定範囲内に定まっているものであり,これが契約意思ないしは任意法規により具体的に確定することができるものであることは明白である。 (12) 地震保険の保険料額の決定及びその支払について原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2と被告会社らと地震保険額・地震保険料額について明示的な合意をしていないのは,被告会社らが,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対し,地震保険制度の存在はもちろん,地震保険の保険金額,保険料額についても,その選択の幅があることを含めてきちんと情報提供をすべきであるのに,それを怠ったことによる。 したがって,地震保険の保険金額,保険料額についての明示的な合意がなかったという一事をもって,地震保険不成立を導くことは,背理である。 また,保険においては,被告会社らは,地震保険の内容について説明を怠っているのはもちろん,地震保険料の額についても,何の説明もしていないのであって,自ら説明を怠って額の告知さえしていない地震保険料が支払われていないとして,地震保険金の支払拒絶を認めるのでは,帰責事由のある当事者が,みずからの帰責事由を援用して,契約上の責任をのがれることを許すことになる。 したがって,被告会社らは,地震保険料未収を理由に地震保険金支払義務がないと主張することはできない。 (13) 地震保険金額の選択第1次的には,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が付帯しうる地震保険金額の上限,すなわち,主契約の約定保険金額の50パーセント相当額が黙示的に選択されていると主張する。 額の選択第1次的には,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が付帯しうる地震保険金額の上限,すなわち,主契約の約定保険金額の50パーセント相当額が黙示的に選択されていると主張する。 なぜならば,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,火災保険約款中の地震免責条項の存在を知らず,地震後の火災であっても,全額火災保険が支払われると信じていたことを合理的に解釈すると,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の地震保険原則付帯火災保険契約申込の意思の内容としては,主契約の保険金額の100パーセントの地震保険金額を選択するつもりがあったと理解するのが正当である。しかし,法律上,約款上の制約があるので,その最上限である50パーセントの保険金額として,地震保険契約が成立することになると理解するのが,当事者の意思にもっとも合致する。 第2次的には,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が,地震保険金額について何ら特定していないとすれば,民法401条1項の趣旨に鑑み,30パーセントから50パーセントの範囲の中等として,主契約の約定保険金額の40パーセント相当額が選択されていると主張する。 第3次的には,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震保険不付帯の意思表示をしていない以上,ともかく,地震保険契約は成立しているところ,地震保険金額は最下限でも主契約の約定保険金額の30パーセントとされているのであるから,これが選択されていると主張する。 なお,地震保険料については,損益相殺がされるべきであるが,その主張・立証責任は,被告会社らにある。 ところで,特に,原告甲1と原告甲7については,地震保険に加入する意思と能力を有していたことは明らかであって,現に本件地震後は地震保険に加入している。したがって,第1次的 告会社らにある。 ところで,特に,原告甲1と原告甲7については,地震保険に加入する意思と能力を有していたことは明らかであって,現に本件地震後は地震保険に加入している。したがって,第1次的主張によるべきである。 (被告会社らの主張)(1) 原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の地震保険契約締結の事実は否認する。 (2) 地震保険は,地震危険が大数の法則に乗らないものであるが,国民一般の生活の安定に資するため,国が関与する形で作られた。 これは,居住の用に供する建物又は生活用動産のみを目的として,地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災,損壊,埋没又は流失による損害を一定限度まで填補するもので(地震保険法2条2項1号,2号),火災保険とは別の種類の保険と位置づけられていて,現行法令では,地震保険が火災保険の一部分となるような制度は採られておらず,地震保険契約の締結に当たっては,火災保険契約とは別に保険者と保険契約者の意思の合致が必要であって,地震保険の契約の申込がない以上,地震保険は成立しない。 (3) 地震保険法は,地震保険は一定の損害保険契約に付帯して地震保険が締結されること(同法2条2項3号,同法施行規則1条2項)が定められるに止まり,特定の損害保険契約を締結すれば当然に地震保険が成立する旨定めた法令はないから,原告らの主張は前提を欠く。 (4) 原告らが主張する事業方法書の記載は概ね正しいが,事業方法書は,行政法である保険業法に関するもので,免許申請に添付する書類で監督官庁に対するものであり(保険業法4条2項2号),保険会社と保険契約者を規律するものではないこと,その規定の趣旨も,前記特定の火災保険に付帯する形とすること及び強制加入としないことを定めたものにすぎず,この るものであり(保険業法4条2項2号),保険会社と保険契約者を規律するものではないこと,その規定の趣旨も,前記特定の火災保険に付帯する形とすること及び強制加入としないことを定めたものにすぎず,この記載が,特定の火災保険に加入した場合に地震保険に加入したものとして取り扱うことを定めたものではないことからすると,原告らの主張を裏付けるものとはならない。 (5) 保険契約成立の要件損害保険契約は,当事者の一方が損害を填補するために一定の保険金を支払うことを約し,相手方がこれにその報酬である保険料を与えることを約すことによって効力を生じる(商法629条)から,保険金と保険料の定めがない限り,損害保険契約が成立する余地がない。そして,地震保険金は,主たる保険契約の保険金の30パーセントから50パーセントの間で任意に選択できることとなった(地震保険法2条2項4号)から,地震保険金が確定しない以上,保険契約は成立しない。 また,保険契約が成立しても,保険料の支払があるまでは,保険のカバーはされない。 (6) 奥尻判決奥尻判決でさえ,地震保険契約が火災保険契約と一体であるという解釈は誤りであることを明らかにしている。 (7) 原告らが主張する根拠についてア地震保険に関する付帯方法の変遷昭和41年6月の地震保険制度発足当時,地震保険は住宅総合保険及び店舗総合保険に「自動付帯」されるものとして成立した。 昭和47年5月の第1次改定で,地震保険を付帯しうる契約を追加したが,追加された保険については,地震保険は,「自動付帯」でなく,契約者は付帯しないことができるとされ,これは,業界用語として,「原則自動付帯」と呼ばれた。 昭和50年2月の第2次改定では,地震保険を付帯しうる契約が,更に拡大 保険は,「自動付帯」でなく,契約者は付帯しないことができるとされ,これは,業界用語として,「原則自動付帯」と呼ばれた。 昭和50年2月の第2次改定では,地震保険を付帯しうる契約が,更に拡大され,これらについては地震保険は「任意付帯」とされた。 昭和55年7月の第4次改定によって,自動付帯がなくなり,「原則付帯」と呼ばれるようになった。 イ第1次改定は,地震保険を拡大する必要がある一方,強制することは好ましくないということで,契約者に付帯しない自由を認め,玉虫色に「原則自動付帯」との表現が使われたが,実態は任意付帯に過ぎず,地震保険運営のため,割高な地震保険の加入を心理的に促すための用語に過ぎない。 昭和55年7月以降,自動付帯がなくなったため,全てを原則付帯という用語で呼称するようになったが,法令や事業方法書にも「原則付帯」なる語は用いられていない。これは,地震保険制度の責任を負う行政機関たる旧大蔵省が,できるだけ加入して欲しいという意味で,「原則付帯」との語を使っているに過ぎず,衆議院大蔵委員会での答弁も,契約の一般原則を修正するものではない。 (8) 昭和52年7月1日「地震保険ご確認欄」を火災保険申込書に設けたことについてア当時東海大地震の発生確率が高いとの予測が世論をにぎわしており,地震保険法を所管する大蔵省の意向も受け,損害保険業界は地震保険の普及率の向上及び地震発生時におけるトラブル防止等の対策を講じる必要があると判断した。 そこで,地震保険の認識を深めるとともに,地震保険加入者の増大を期待する政策的手段として,火災保険申込書に「地震保険ご確認欄」を設けた。 イところが,「地震保険ご確認欄」創設後まもなく,これに関する新聞報道に誤解を招くものがあり,また,一部の募集実態が を期待する政策的手段として,火災保険申込書に「地震保険ご確認欄」を設けた。 イところが,「地震保険ご確認欄」創設後まもなく,これに関する新聞報道に誤解を招くものがあり,また,一部の募集実態が地震保険の加入が強制的と受け取られ,批判を招いた。 そこで,G協会は,損害保険会社に対し,契約者にいやしくも強制加入であるかのごとき誤解を与えることのないように警告を発した。 また,昭和55年7月改正の際の国会審議において,地震保険への加入並びにその付保割合及び付保金額については,契約者の意向を尊重し,強制にわたることのないよう指導に万全を期することが,衆参両大蔵委員会で,付帯決議された。 (9) 地震保険不加入欄への押印の意味契約申込書に地震保険意思確認欄を設ける方式は,現行の地震保険の引受方式前から採用されていて,任意付帯方式の場合も地震保険意思確認が書面でされていた。したがって,契約申込書に地震保険意思確認欄が設けられているからといって,原告らの主張する強制付帯同様の取り扱いをとるべきということもできない。 地震保険意思確認欄の主たる意義は,将来のトラブルの未然防止であって,ここに押印がないからといって,自動的に地震保険契約が成立するものではない。 (10) 地震保険不加入の確認原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の各契約申込書は,原告甲1以外の原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2については,地震保険意思確認欄に各原告の押印があり,各原告は地震保険に加入しない旨申し出たことが証明されている。 そして,地震保険が付保されないことは,後日契約者宛に送付される保険証券において地震保険の保険金額,保険料が記載されないことからも明らかであり,地震保険料も徴収されず,これに対し,保険証券を そして,地震保険が付保されないことは,後日契約者宛に送付される保険証券において地震保険の保険金額,保険料が記載されないことからも明らかであり,地震保険料も徴収されず,これに対し,保険証券を受領した原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2から地震保険が付保されてないことにつき異議の申し出や,地震保険料負担の申し出もなかったのであるから,地震保険不加入欄への各原告の押印は真意によるものと推認できる。 (被告乙6の主張)(1) 原告らの主張(8)イ(ウ)aのうち,原告甲12が保険代理店に印鑑を手渡し,保険代理店により押印がされたとの主張は不知。 地震保険意思確認欄への保険代理店による押印は,契約者の委託の趣旨に背反して,権限もないのに無断で捺印したものであるとの主張は争う。 (2) 原告らの主張(8)イ(ウ)bのうち,原告甲8が,銀行等に印鑑を手渡し,同銀行等により,押印がなされたとの主張は不知。 地震保険意思確認欄への銀行等による押印は,契約者の委託の趣旨に背反して,権限もないのに無断で捺印したものであるとの主張は争う。 (3) 原告甲8及び原告甲12の加入していた火災保険は更新ないし更改されたものであり,以前の契約の際保険証券と約款を受領しているのに,地震保険に入りたいとの要望は無かったこと,特に,原告甲8の代理店は,原告甲8の夫の近親者であり,強い信頼関係の下にあることからすると,地震保険意思確認欄への押印が,同原告らの主張する者によってされたとしても,委託の趣旨に反するとは言えない。 (被告乙2の主張)(1) 原告甲1は,乙A1の地震保険不加入欄に押印がないことを理由に,地震保険に加入していたと主張する。 しかし,原告甲1による地震保険の申込,被告乙2による同保険の承諾のいずれの意思 (1) 原告甲1は,乙A1の地震保険不加入欄に押印がないことを理由に,地震保険に加入していたと主張する。 しかし,原告甲1による地震保険の申込,被告乙2による同保険の承諾のいずれの意思表示もないから,被告乙2と同原告との間には,地震保険契約は成立していない。 (2) 同原告は,昭和43年頃,被告乙2と火災保険契約を締結し,昭和60年前後からは,火災保険の更改手続を毎年行っているが,この間,地震保険申込の意思表示は一度もされていない。地震保険不加入欄に押印がないのは,印鑑の押し忘れに過ぎない。 原告甲1が,地震保険に加入したのであれば,その保険金額及び保険料額を決めている筈であるし,乙A1の地震保険の欄には,保険金額及び保険料が記載されている筈であるのに,それがない以上,地震保険契約に関する意思の合致は存在せず,地震保険契約が成立する余地はない。 7 情報提供義務違反を理由とする損害賠償請求(原告らの主張)(1) はじめに被告会社らは,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対して,信義則上,地震免責条項及び地震保険に関する情報提供義務を負担しているのに,その義務を懈怠し,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震保険意思確認欄への押印の意味を知りえない態様で同欄に機械的に印影を顕出させ,もって,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震保険を付帯する機会を剥奪したものであり,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が付帯した蓋然性のある地震保険金相当の損害賠償義務を負担する。 このことは,裁判例でも認められている(平成5年7月の北海道奥尻島を襲った震度6の地震後に発生した火災の被災者が,損害保険会社を被告として火災保険金及び地震保険金を請求した事件に関する函館地判平成12.3.30(以下「 も認められている(平成5年7月の北海道奥尻島を襲った震度6の地震後に発生した火災の被災者が,損害保険会社を被告として火災保険金及び地震保険金を請求した事件に関する函館地判平成12.3.30(以下「奥尻判決」という。))。 このような情報提供義務の不履行による損害賠償責任は,ワラント取引,変額保険取引において主として論じられてきたものであるが,保険契約においても妥当する。 (2) 情報提供義務事業者と消費者との情報量及び情報分析能力の格差が信義則上看過しえない程度に達している場合(情報面の格差),あるいは,事業者が,当該事業に精通した専門家として,それに関する知識のない一般消費者を顧客として事業を展開し利益をあげており,事業者に寄せられる社会的信頼に答える責任があると認められる場合(事業者の社会的責任)には,事業者は,消費者に対して情報提供義務を負担すると一般に理解されるところ,本件では,下記の理由が存在するから,被告会社らは原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対して,地震免責条項の存在・内容,地震保険の存在・内容,地震保険付帯方式の各点につき,情報提供をするべき義務を信義則上負担していた。 ア理論的根拠①消費者側と保険会社側に保険,特に,地震免責条項,地震保険の約款についての情報面の格差が著しいこと,②地震保険に関する情報が重要であること,③地震保険制度自体が公共性を持つこと,④損害保険会社は,地震保険引受に関して国民からの受託者的地位にあることが挙げられる。 イ制度的根拠①地震保険意思確認欄制度が設けられていること,②原則付帯方式制度がとられていることが挙げられる。 (3) 因果関係についてア地震保険意思確認欄制度・原則付帯方式この両制度を前提とすると,地震 認欄制度が設けられていること,②原則付帯方式制度がとられていることが挙げられる。 (3) 因果関係についてア地震保険意思確認欄制度・原則付帯方式この両制度を前提とすると,地震保険不付帯欄に押印することによって,地震保険を付帯しない旨の意思表示をしない以上,地震保険に加入することになるところ,地震保険に関する情報提供がされず,地震保険の存在さえしらされなかった保険契約者は,本件地震保険意思確認欄への押印をわざわざすることもないから,自動付帯の帰結として,ことごとく地震保険に加入することになる。 イ本件における因果関係論被告会社らによる情報提供義務懈怠下での地震保険意思確認欄への押印慫慂行為がなければ,地震保険意思確認欄への原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の印鑑の押印がなかったであろうことは明白である。 ウ反証としての地震保険不付帯の意思表示被告会社らの情報提供義務の懈怠及び地震保険意思確認欄への押印慫慂行為がなければ,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は自動的に地震保険に加入していたから,地震保険の説明を適正に受けていても,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は地震保険不付帯の意思表示をしたであろうことは,論理的には,反証として,被告会社らにおいて,主張,立証すべき事項である。 しかし,この反証は,ドイツ法で言うところの「適法行為選択の異議」に該当し,現実に情報提供義務の不履行をしている被告会社らが仮定的にであれ情報提供義務を尽くしたことを前提とする反証を行うことは自己の態度に矛盾するものとして,信義則上許されない。 また,①巨大地震はないであろうというのが阪神間での通常人の認識であったとか,②阪神間における地震保険加入率が低かったとか,③地震保険料は高額であると 盾するものとして,信義則上許されない。 また,①巨大地震はないであろうというのが阪神間での通常人の認識であったとか,②阪神間における地震保険加入率が低かったとか,③地震保険料は高額であるとかを理由に,安易に,保険契約者は説明を受けていても地震保険不付帯を選択したとの事実認定をすることは到底できない。 なぜならば,①を認めるに足りる証拠はなく,火災というめったにない危険に備えようとして保険に加入する原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は地震について保険による備えをしなかったと認定するには飛躍があり,②は,被告会社らの地震保険制度に関する情報提供を懈怠した結果として発生した可能性があり,むしろ,地震保険制度について説明を受けたら加入する保険契約者が統計上必ず何パーセントかは存在したことからは,保険契約者が必ず地震保険不付帯を選択したとの立証は失敗に帰していると評価しうる。更に,個々の保険契約者によって資力,地震災害に対する危険の認識度,保険制度の利用の是非に関する考え方が異なっている以上,③が一律に地震保険不付帯へと導く要因となるとはいえない。 (4) 損害原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震保険に加入していたならば得られたであろう地震保険金相当額であるところ,それは,前記のとおり,火災保険金の50パーセント,40パーセント,或いは30パーセントである。 (5) 自己決定権侵害による慰謝料請求被告会社らの行為が違法であるが損害との因果関係がないと判断されるとしても,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2は,被告会社らの違法行為によって,地震保険加入についての意思決定の機会及び地震保険に加入していれば自己の財産の損害を担保することができた可能性という財産的利益を違法に侵害されたものとして,その 甲2は,被告会社らの違法行為によって,地震保険加入についての意思決定の機会及び地震保険に加入していれば自己の財産の損害を担保することができた可能性という財産的利益を違法に侵害されたものとして,その精神的苦痛に対して,地震保険に加入したであろう蓋然性の程度を考慮した慰謝料を請求する。 (6) プラスアルファの違法行為論に対する反論前記のとおり,地震保険制度に関する情報提供義務は法的な義務であり,特に原則付帯方式が採用されている現状のもとで情報提供義務の懈怠がある以上は,積極的な虚偽説明あるいは誤解助長行為を要さずして,損害賠償請求が認められてしかるべきである。 旧募取法16条1項1号が「保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為」を刑罰をもって強く禁止している趣旨からみても,情報提供義務違反(不告知)が,積極的な虚偽説明あるいは誤解助長行為に比肩する重大な違法行為であることは明白である。 (被告会社らの主張)(1) 原告らが主張する説明義務は争う。 ア金融投資案件に関する判例について近時金融投資案件に関する判例において,説明義務が問題とされているが,これは,リスクの大きな投資案件であること,金額も大きいこと,これら投資に関する契約は比較的最近日本社会に導入されたもので人々はそれに関する知識を必ずしも十分に持っていないとの事実認識が前提にあり,しかも,一律に投資者を保護する論理ではなく,契約者の人的要素等を考慮したうえでの信義則適用の補助概念であり,また,これが認められる場合でも多くの場合,契約者の過失を認め,過失相殺がされていることからすると,これらの金融投資案件と一般の火災保険契約とでは,前提が異なる。 イ消費者契約法消費者契約法は,近時悪徳商法ともいうべき営業がなされ, 過失を認め,過失相殺がされていることからすると,これらの金融投資案件と一般の火災保険契約とでは,前提が異なる。 イ消費者契約法消費者契約法は,近時悪徳商法ともいうべき営業がなされ,それらには不合理ではあるが約款に明記された消費者にとって甚だ不利益な条項があり,一般法のルールからはこれを排除しにくいということから制定されたものである。 しかし,消費者契約法は,附合契約そのものを否定するものでなければ,疑問を呈するものではない。 同法が「必要な情報を提供するよう努めなければならない」としているのは,附合契約全体に不当な混乱を起こさないためであると考えられる。 ウ旧募取法における,いわゆる「重要事項説明義務」について(ア) 損害保険約款に規定されている各ルールには,保険会社を免責するもの,保険金を減額するものが多くあり,その全てが重要である。 (イ) 旧募取法16条1項1号(保険業法300条1項1号)は,保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為を罰則をもって禁止しており,原告らは,この規定を根拠に,保険契約の際に,必ず,保険会社側が,重要事項を説明する義務があると主張するが,現実に,年間数千万件の一般の火災保険は,附合契約としてなされ,通信販売や自動販売機で加入手続をする保険契約がされておらず,かつ,監督官庁たる当時大蔵省(現金融庁)も原告らが主張するような行政指導はしていない。 (ウ) 旧募取法16条1項1号の意味これは,積極的に虚偽のことを告げて被保険者を錯誤に陥れることを禁じるのみならず,被保険者が錯誤に陥っている状況を利用してはならず,そのような場合に,積極的に錯誤を質すことを求めるものであって,それを超えて,約款の全てを説明しなければならないとの意味ではない。 みならず,被保険者が錯誤に陥っている状況を利用してはならず,そのような場合に,積極的に錯誤を質すことを求めるものであって,それを超えて,約款の全てを説明しなければならないとの意味ではない。 (2) 因果関係及び損害について本件地震発生前の阪神間の地震保険加入率は非常に低かったことからすると,仮に原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震免責条項につき口頭で説明を受けていたとしても,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震保険に加入した可能性は著しく低く,地震保険金を受領した蓋然性を認めることはできず,原告らの主張は失当である。 自己決定権侵害に基づく慰謝料についても争う。 8 共有建物について(原告甲7と被告乙2,原告甲8と被告乙6間)(原告甲7,原告甲8の主張)(1) 共有関係原告甲7とその妻であるHは,別表1原告名原告甲7に対応する保険の目的①の建物を,それぞれ4分の3,4分の1の持分で共有している。 原告甲8とその子であるIは,別表1原告名原告甲8に対応する保険の目的①の建物を,それぞれ2分の1の持分で共有している。 (2) 他人のためにする保険契約商法は,他人のためにする保険契約を認め,保険契約者と被保険者が異なることを容認しているから,本件の場合にも,H又はIとの共有持分については,他人のためにする保険契約が成立している。 (3) 任意的訴訟担当本件において,H及びIの持分についての保険金請求権は,同人らに帰属するが,Hの保険金請求については原告甲7が,Iの保険金請求については原告甲8がそれぞれ任意的訴訟担当によって訴えを提起しうる。 すなわち,任意的訴訟担当は,係争権利関係に無縁な者,法律知識のない者が訴訟に登場し,訴訟手続が混乱 が,Iの保険金請求については原告甲8がそれぞれ任意的訴訟担当によって訴えを提起しうる。 すなわち,任意的訴訟担当は,係争権利関係に無縁な者,法律知識のない者が訴訟に登場し,訴訟手続が混乱し,権利主体の利益を害する事態を防止するという弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止の趣旨を潜脱するおそれのない場合に許容されると解されるが,本件において,Hと原告甲7とは夫婦,Iと原告甲8は親子で,一個の火災保険契約の目的とされた建物を共有している関係にあるから,当該建物が火災にあったことを理由とする保険金請求訴訟において,保険契約者である原告甲7がHを,原告甲8がIをそれぞれ任意的訴訟担当することは当然に許される。 9 原告甲9と被告乙8の契約関係(原告甲9の主張)(1) 原告甲9は,別表1原告名原告甲9に対応する保険の目的欄記載の保険目的物を所有しておらず,借家していた。 (2) 原告甲9は,従前より,被告乙8との間で,家財につき火災保険契約を締結していたが,平成4年にその更新にあたり,同被告側の保険代理店の手違いにより,建物を目的とする火災保険契約の申込書が作成された。 したがって,原告甲9には,家財についての火災保険契約を更新する意思しかなく,保険契約は,家財を目的として成立した。 (3) 仮に,原告甲9の締結した火災保険契約が,建物を目的とするものであったとすると,被告乙8には,以下のとおり,旧募取法16条,11条により,原告甲9に対し,家財についての火災保険金相当額の賠償責任がある。 即ち,被告乙8の保険代理店は,被告甲9が借家に居住しており,これを目的として火災保険契約を締結しても,被保険利益がないことを知っていたから,同保険代理店は,原告甲9が従前から加入していた家財についての火災保険契約を従前ど 店は,被告甲9が借家に居住しており,これを目的として火災保険契約を締結しても,被保険利益がないことを知っていたから,同保険代理店は,原告甲9が従前から加入していた家財についての火災保険契約を従前どおり更新するよう配慮する注意義務があったとともに,原告甲9に対し,建物を保険の目的とする火災保険契約を締結するような申込に承諾すべきでなく,逆に,甲9からそのような申込を受けた場合には,被保険利益の欠如により当該保険契約は無効である旨の説明をする注意義務がある。 そうであるのに,同保険代理店は,いずれの注意義務も履行せず,原告甲9に,漫然と借家を保険の目的とする火災保険契約を締結させ,これをもって,原告甲9に,火災の場合には,家財についての火災保険金を受領しうる地位にあるものと誤信せしめたものであって,同保険代理店の行為は,旧募取法16条1項1号,5号に該当する違法なものである。 よって,被告乙8は,原告甲9に対し,旧募取法11条により,家財についての火災保険金相当額の賠償責任がある。 (被告乙8の主張)(1) (原告甲9の主張)(1)は知らない。 (2) 同(2)のうち,原告甲9と被告乙8が平成4年に火災保険契約を更新したことは認めるが,その余は否認する。 (3) 同(3)は否認ないし争う。 (4) 契約に至る事実関係ア原告甲9は被告乙8との火災保険契約にあたり,従来はJを通じて契約を締結していたが,本件契約前の昭和57年3月17日の契約においても,保険の目的は建物とされていた(乙D4)。本件で問題となっている契約は,上記契約が,平成4年3月17日に更新されたものであるが,この契約更新時には,代理店のK総合保険(代理店主K(以下「K」という。))を通じて更新手続を行った。 イ上記契約の数日前,Kは 契約は,上記契約が,平成4年3月17日に更新されたものであるが,この契約更新時には,代理店のK総合保険(代理店主K(以下「K」という。))を通じて更新手続を行った。 イ上記契約の数日前,Kは,原告甲9に面会し,契約更新について打ち合わせを行い,原告甲9に本件建物の敷地は借地であるが,建物の所有者は原告甲9であることを確認した。その際,Kは,原告甲9に家財の火災保険も勧めたが,原告甲9は,保険料が高額との理由により不要であるとした。 第5 原告甲1と被告乙1との間の争点 1 地震免責条項の拘束力及び解釈(原告甲1の主張)(1) 共済事業と保険事業についてア共済契約は,保険契約と異なり,一般不特定多数人を対象とするのではないが,当事者の一方が偶然の一定の事故によって生じる損害を填補すること,または相手方もしくは第三者の生死に関し一定の金額を支払うことを約束し,相手方がこれに対し対価を支払うことを約束する契約であることは,保険契約と何ら異なるところはない。特に被告乙1は,各都道府県の単位生活協同組合37組合を会員とし,会員の組合会員数が平成7年3月末には516万1174人にのぼる全国組織体であり,この点でも保険と近似している。 イ協同組合等がおこなう火災共済を「保険」とせず「共済」と呼称しているのは,保険業法において「株式会社または相互会社」でなければ保険事業を行うことはできないとされている(前記改正前保険業法3,4条)ために,事業内容が火災保険と同種のものについても,火災共済という呼称を使っているものに過ぎない。 ウ共済は,募集経費がほとんど不要であり,その分保険会社の保険と比べ掛金(保険料)が安くなっていること,剰余金が出れば相応の割戻が行われること(事業規約29条の2),共済金額の上限が定められているこ 共済は,募集経費がほとんど不要であり,その分保険会社の保険と比べ掛金(保険料)が安くなっていること,剰余金が出れば相応の割戻が行われること(事業規約29条の2),共済金額の上限が定められていること(事業規約9条,事業実施規則6条)などの点に共済の特色を有しているものの,被告乙1の火災共済事業においても,損害保険において保険業法に基づき積立が要求されている異常基金積立金(同法88条)の制度と同じ趣旨で責任準備金の積立(事業規約29条)がされているし,保険金と共済金とを同じ性格のものと捉えて,保険契約と共済契約が重複している場合のそれぞれの責任額決定基準規定が定められている(事業規約20条6項)。 このように,被告乙1の火災共済事業も損害保険制度と同一の保険原理で運営されているものであり,その法的性格も同一である。 エ以上により,共済契約も,その性質が許されないときを除き,商法その他の法規に定める保険に関する規定を準用すべきである。 (2) 規約約款の開示についてア(ア) 規約が,個々の共済契約の内容となるためには,当該規約の内容が当事者の意思により契約に取り入れられるのであるから,契約成立までの時点で,規約が契約の相手方に開示されていることが必要である。そして,契約申込者が取引に不慣れで法律知識に乏しいことなどからすれば,地震免責条項のように特に重要な事項についての規約の内容の開示があったというためには,契約締結前に書面に基づく口頭によるわかり易い説明かあるいはその内容を口頭で十分説明する必要がある。 (イ)a なお,被告乙1は,組合の事業規約の内容になっている事項は,その知,不知を問わず,構成員である組合員を拘束すると主張する。 しかし,被告乙1事業規約3条には,「この会は,共済契約を締結するときは,共 告乙1は,組合の事業規約の内容になっている事項は,その知,不知を問わず,構成員である組合員を拘束すると主張する。 しかし,被告乙1事業規約3条には,「この会は,共済契約を締結するときは,共済契約申込者に対して,第2章から第5章までに規定する事項のうち共済契約の内容となるべきものを,あらかじめ正確に提示しなければならない。」と規定されており,その趣旨からすると,規約は,内部的なものであり,直接,共済契約申込者を拘束するものではないことは明白である。 また,組合員が意思決定を行う組合員総会とでもいうべき機関は存在せず,共済契約締結以外に組合事業に参加する手続きがないことからすると,そもそも組合員を構成員とする団体の実体がない。従って,原告甲1を団体の構成員であるとして,それを前提とする主張は妥当でない。 b 被告乙1は,火災共済申込者は,組合員として事業規約に従うとの意思をもって共済契約の加入申込をしているものと推定できるし,共済事業が地震災害までを保障するものではないことは,組合員であり,共済事業の特質を最も理解している原告甲1こそ認識しているものだと主張するが,県民共済の火災共済勧誘方法及び加入手続からして,到底そのような意思の推定などできないし,そのような認識はない。 c 更に,被告乙1は,原告甲1は事業規約を開示せずして契約する方法により申込をする意思を有していたのであるから,後から送付される事業規約に従うとの意思があったとみることができるとも主張するが,原告甲1ら火災共済契約申込者は,事業規約の存在自体を知らないのであるから,そのような意思を認めることはできない。 イ原告甲1の共済加入手続等について原告甲1は,平成2年5月3日頃,建物と家財について県民共済の火災共済に加入した。その手続は, であるから,そのような意思を認めることはできない。 イ原告甲1の共済加入手続等について原告甲1は,平成2年5月3日頃,建物と家財について県民共済の火災共済に加入した。その手続は,案内書の指示に従い,葉書で行った。その際,地震免責条項によって,地震の場合に火災共済金が支払われないことがあるなどの説明を受けたことはなかったし,説明を受け得るシステムではなかった。 共済加入後,被告乙1から加入証書と「ご加入のしおり」が送付されたが,「ご加入のしおり」は大変小さな字で細々と記載されているので原告甲1はその内容はほとんど見ていない。 その後,火災共済契約は自動更新されているが,更新の際,新たに証書や「ご加入のしおり」が送られたことはなく,平成5年3月19日に,共済金の変更手続をした際も「ご加入のしおり」等は送られていない。 また,原告甲1には,規約は交付されていない。 (甲5,丙8,9の各1,2,証人T(21頁~23頁))以上のように,原告甲1は,契約前に地震免責条項について被告乙1から説明を受けていないから,火災共済契約の対象となっていない。 (3) 地震免責条項の解釈ア第1類型,即ち,地震によって生じた火元火災に限られる。 イ判例も同旨である。 ウこのことは,損害保険会社の地震免責条項の体裁との違い,損害保険会社が,新潟地震判決を受けて,第3類型についても,免責の対象となることを明文化するため,地震免責条項を改定したのに,被告乙1は約款を改定しなかったこと,被告乙1の地震免責条項には,損害保険会社の旧約款にある「延焼」の文言すらないことからすると,明らかである。 エ第4,1(原告らの主張)(5)ウ記載のとおり,被告乙1の地震免責条項についても,作成者である被 免責条項には,損害保険会社の旧約款にある「延焼」の文言すらないことからすると,明らかである。 エ第4,1(原告らの主張)(5)ウ記載のとおり,被告乙1の地震免責条項についても,作成者である被告乙1の不利に解釈すべきであることからも,上記解釈は裏付けられる。 オ更に,被告乙1は,同一の約款においては,同一の語句は同一の意義を有するものと解釈されなければならないと主張しているが,同一の語句であっても両者を区別する意義がある場合には当然異なった意味を有するものとして解釈しなければならない。 そして,共済者の填補責任の規定では,損害発生の原因が共済事故としての火災によるものであるか否かが問題とされているのに対し,共済事故であっても共済者に共済金支払を免れさせるという地震免責条項においては,火災の発生原因が免責事由である地震によるものか否かが問題となっている。また,共済事故発生によって被共済者に損害が生じた場合は,その発生原因如何を問わず共済者は共済金を支払うというのが原則で免責条項はあくまで例外規定であり被共済者にとって重大な結果をもたらす。したがって,地震免責条項において火元の火災と延焼火災を厳格に区別しなければならない。 よって,被告乙1の事業規約2条の火災の文言に延焼火災が含まれているからといって,地震免責条項の火災の文言にも同様に延焼火災も含まれるとの被告乙1の解釈は誤りである。 (4) 具体的な地震免責条項の解釈や不開示の態様を除き,第4,1(原告らの主張)を引用する。 (被告乙1の主張)(1) 被告乙1の火災共済事業ア被告乙1の概要被告乙1は,消費生活協同組合法に準拠し設立された非営利法人で,現在各都道府県生活協同組合36組合を会員とする全国的組織体である。その事業目的は定款1 の火災共済事業ア被告乙1の概要被告乙1は,消費生活協同組合法に準拠し設立された非営利法人で,現在各都道府県生活協同組合36組合を会員とする全国的組織体である。その事業目的は定款1条に「購買,住宅,観光,共済等の事業を行う生活協同組合の互助と団結をもって,民主的な運営により,事業の発展を図り,勤労者の生活の安定と生活文化の向上に寄与することを目的とする」と定められている。事業内容は多岐にわたり,会員である単位生活協同組合の事業を支援している。 また,火災共済契約の取扱団体は,被告乙1の委託を受けた兵庫県民共済生活協同組合(以下「兵庫県民共済」という。)である。 イ共済事業の特異性共済事業は,保険事業と異なり,①加入者の相互扶助を目的とする非営利事業であって,加入資格者も組合員に限られ,②経済的弱者を対象とし,その相互扶助を目的とするところから,安価であって,③加入手続が簡便で,事業経費率は低率である。 ウ共済事業と保険業の違い共済は相互扶助を目的とし,共同社会の連帯意識による地域・職域の特定人の組織化(合意による加入)でする事業で,組織の準拠法としても共済には各種共同組合法が制定され,組合に対する人的,物的な管理面に対する団体法的制約があり,所轄行政庁による監督がされているのに対し,保険(損保)は営利性をもち,資本主義的自己責任原則による不特定多数による危険群団の構成(選択による加入)で,商法,保険業法が適用され,業務として,保障,貯蓄,資産運用,金融仲介があることなどに相違がある。 このような相違から,被告乙1は,消費者生活協同組合財務処理規則13条,14条,17条にそれぞれ定められた支払準備金,責任準備金,割り戻し準備金その他定款所定の控除すべき金額の他,資産の蓄積が このような相違から,被告乙1は,消費者生活協同組合財務処理規則13条,14条,17条にそれぞれ定められた支払準備金,責任準備金,割り戻し準備金その他定款所定の控除すべき金額の他,資産の蓄積が認容されず,共済事業に係る経理の他の経理への資金運用も禁止されていて(同規則12条),損保会社と異なり,利益を蓄積することなく加入者(組合員)に還元し,運用すべき資産は有していない。 エ約款の開示論について原告甲1は,消費者保護の観点から約款開示の必要性を説くが,それは前記の保険を前提にした議論で,被告乙1との火災共済契約の契約者は,共済事業の主体たる組合の構成員で,消費者問題を前提として議論することはできない。また,商法の適用もないので,同法665条が契約内容を補充することはありえない。 (2) 地震免責約款の拘束力ア判例は,火災保険における地震免責約款を有効とし,保険契約締結の際,開示がなくとも,拘束力はその当事者に及ぶとしているが,共済契約についても同様に解すべきである。 イ火災共済契約申込の手続及び地震免責条項の開示方法(ア) 既に生命共済に加入している共済組合員が,火災共済に加入する場合には,組合員が郵便はがきによる加入申込書を送付することによって共済契約の申込みをし,被告乙1が火災共済契約の諾否を決定し,加入証書と「ご加入のしおり」を送付することによって,共済契約掛金の支払を停止条件として共済契約承諾の通知をする。そして,掛金が支払われた場合,共済契約は申込の時において成立したものとみなし,かつ,その効力は払込の日の属する月の翌月1日の午前零時から生ずるものとし,払込のあった翌日から前記効力の生ずる日の前日までの間に共済事故が発生したときは,その払込のあった日の翌日の午前零時から効力を生ずるものと 払込の日の属する月の翌月1日の午前零時から生ずるものとし,払込のあった翌日から前記効力の生ずる日の前日までの間に共済事故が発生したときは,その払込のあった日の翌日の午前零時から効力を生ずるものとし,共済金の支払の責に任ずることとなっている(事業規約11条7項)。 地震免責条項は,「ご加入のしおり」に「原因が直接か間接かを問わず,戦争,その他の変乱,地震または噴火によって生じた火災等または風水害等による損害」として明記されていて,前記のとおり,上記「ご加入のしおり」は,承諾の意思表示としての加入証書と同時に申込者に送付されるが,通常は,掛金払込による効力の発生する以前に送付されている。 また,「ご加入のしおり」が送達された時点で,契約申込者は事業規約を知り得るが,そこには加入者の意思でいつでも火災共済契約を解除することができること,掛金を2か月間支払わなければ自動的に失効することが明記されているから,その時点で加入意思を継続するか否かを選択できる。 (イ) 生命共済の加入者であった原告甲1は,平成2年5月3日頃L新型火災共済事業部から,新型火災共済加入申込書(はがき)の交付を受け,申込手続をした。同加入申込書は,同月7日Lで受付され,被告乙1から同原告あて同月16日頃加入証書と「ご加入のしおり」が送付されている。 なお,上記火災共済契約は,平成3年4月1日に更新され,以後1年毎に更新され,継続されている。その間,平成5年3月19日共済金額の変更申込がされた。 原告甲1は,初回の加入証書受領の時点で「ご加入のしおり」を受領しているので,更新時に契約内容は開示されている。 ウ被告乙1の火災共済契約は,組合員のみが締結することができる共済契約で,原告甲1は,Lの組合員として,同共済の定款,規約等に拘 しおり」を受領しているので,更新時に契約内容は開示されている。 ウ被告乙1の火災共済契約は,組合員のみが締結することができる共済契約で,原告甲1は,Lの組合員として,同共済の定款,規約等に拘束される。 (3) 開示の方法について契約締結前に地震免責条項の口頭の説明をすることは,前記の共済事業の性質からして,事業として不可能である。 (4) 地震免責条項の有効性地震災害は蓋然性の測定や保険料の算定ができないから,保険技術上保険から除外される合理性があり,地震損害についての請求が認容されることになると,高額な掛金を取る保険制度はともかく,被告乙1は共済事業の予定していない不測の支払義務を負担することになり,保険事業のように蓄積した資産もないことから,共済制度そのものの崩壊をもたらす。 また,共済事業規則には,このような場合を想定して地震災害に対し,お見舞金として一件当たり最高300万円を支払うことが定められていて,既に,被告乙1は本件地震の見舞金として44億1453万3000円を支払っている。 (5) 地震免責条項の解釈本条が旧損害保険の地震免責約款と異なり,火元火災と延焼火災を区別していないこと,火災共済規約2条,2条の2,19条の他の条項でも火元火災と延焼火災を区別していないことからすると,本条の火災には延焼火災も含まれると解すべきであるから,火元火災,延焼火災を問わず,直接,間接に地震によって生じた火災について免責される旨を定めたと解すべきである。 このことは,実質的にも,(1)で述べた火災共済事業の火災保険事業との相違,地震の火災への係わりが極めて複雑・多様で,しかも出火・拡大・延焼・消火の火災の各場面において深く関係しており,地震によって生じた火災による損害を,単純 )で述べた火災共済事業の火災保険事業との相違,地震の火災への係わりが極めて複雑・多様で,しかも出火・拡大・延焼・消火の火災の各場面において深く関係しており,地震によって生じた火災による損害を,単純な地震動によって火源が着火物に燃え移ったことによる火災による損害とのみとらえることは,狭きに失することからも裏付けられる。 また,本約款が新潟地震判決の前後で改訂されていないのは,改訂しなくとも第3類型が地震免責約款の対象となるとの判断で,この点に関する原告甲1の主張は前提を誤ったものである。 2 地震免責条項該当性(原告甲1の主張)本件火災における火元の火災の発生原因が地震によるものでないことは第4,2(原告らの主張)(1)記載のとおりである。 (被告乙1の主張)(1) 本件地震の発生,本件地震後の火災の特徴,地震と火災の因果関係と出火原因,本件火災の発生についての事実関係については被告会社らの主張のとおり(2) 地震免責条項該当性ア火災原因認定書2によると,本件火災原因は不明として処理されているが,前記のとおり,本件火災の火元火災は,倒壊した建物より地震発生後3時間余りで出火しているのであるから,特段の事情のない限り,本件地震によるものと事実上推定すべきである。 したがって,共済目的物の損害は,「原因が直接であると間接であるとを問わず,地震・・・によって生じた火災等による損害」に該当する。 イ前記のとおり,本件火災の覚知が火災発生より2時間も要していること,覚知の方法が,電話等通常の手段ではなく,消防署員の視認であること,出動が火災覚知から1時間を要していること,出動から現場到着まで,距離1キロメートル,平常時であれば数分の距離を,1時間30分要していること,それは,倒壊家屋,交 ではなく,消防署員の視認であること,出動が火災覚知から1時間を要していること,出動から現場到着まで,距離1キロメートル,平常時であれば数分の距離を,1時間30分要していること,それは,倒壊家屋,交通渋滞,これに加え救助活動等が消防隊の到着を大幅に遅らせたことによること,消防隊が到着した後も断水などのため,十分な消火活動ができなかったことなどからすると,本件火災が,共済目的物に延焼したのは,本件地震により消防力が無力になったことによる。 したがって,共済目的物の損害は,「原因が直接であると間接であるとを問わず,地震・・・によって生じた火災等による損害」に該当する。 3 本件火災による共済目的物の損害の有無及び程度(原告甲1の主張)(1) 本件地震による損傷の有無及び程度本件火災当時,甲14,15の土地上に,甲16の建物と甲17ないし23の建物が接続して1棟の鉄筋コンクリート造の建物(以下「本件1棟の建物」という。)が建っていた。甲16の建物は,原告甲1所有の3階建の店舗・共同住宅で被告乙2に加入しており,甲17ないし23の建物は,1階が公衆浴場で2階ないし4階が居宅となっており,乙5及び被告乙1に加入していた。なお,甲17(1階公衆浴場)が原告甲15の所有で,その余の甲18ないし23は原告甲1の所有であった。共済目的物は,鉄筋コンクリート造4階建居宅の2階部分にある(以下「201号室」という。)が,建物,家財ともに,本件地震でほとんど被害はなかった(甲5,甲50,証人T3頁)。 なお,原告甲1は,本件地震の約10年前(建物を接続させて1棟の建物として建築して1~2年後)に念のため注入工事もしている(甲50,証人T3頁,31頁,32頁)。 (2) 本件火災による共済目的物の損害の有無及び程度ア 約10年前(建物を接続させて1棟の建物として建築して1~2年後)に念のため注入工事もしている(甲50,証人T3頁,31頁,32頁)。 (2) 本件火災による共済目的物の損害の有無及び程度ア共済目的物の家財は全焼であった。 イ甲16から甲23の1棟の建物は鉄筋コンクリート造であったため外側は残っていた。しかし,原告甲1が賃貸していた202号室(甲19),301号室(甲20),302号室(甲21),401号室(甲22)及び402号室(甲23)の各居住者は全員「全焼」の「り災証明書」を得た。また,原告甲1は,甲第16号証の建物も,1,2階を店舗付住宅,3階を住居としてすべて賃貸していたが,その賃借人も全員が「全焼」の「り災証明書」を得た。 また,被告乙2と乙5は本件火災後調査をし,被告乙2は同社に加入している甲16の建物について全焼を認め,また,乙5も同社に加入している建物(甲17ないし23,1階から4階)について,全焼を認めた。しかし,具体的な火災後の状況としては,4階部分(甲22,23)は,1階から3階(甲17ないし21)に比べると若干ましで,1階から3階(甲17ないし21)は丸焼けであったが,4階部分(甲22,23)はお化け屋敷の様ではあるが1部残っているものもあった。そして,甲16の建物と甲17ないし21の建物(4階建の1階から3階部分)はどちらも全焼ではあったが,あえて比較すると甲16の方が少しましで,甲17ないし21の建物(4階建の1階から3階部分)の方がひどかった。なお,被告乙1は,調査に来るよう促したが,全焼であることは解っている,問題は地震免責条項であると応答するのみであった。 以上は甲50,甲24の1,2,証人T(1頁~6頁,25頁)により明らかである。 よって,共済目的物である201号 ことは解っている,問題は地震免責条項であると応答するのみであった。 以上は甲50,甲24の1,2,証人T(1頁~6頁,25頁)により明らかである。 よって,共済目的物である201号室は全焼であった。 ウ自白の撤回について被告乙1は,答弁書において,201号室が全焼していることを認めているのであるから,それを後になって争うのは自白の撤回である。 エ抵当権の設定について原告甲15は,本件地震後付近の住民の要望等があり,1階の公衆浴場(甲17)を早く復興させるため,その資金繰が必要で,その所有する土地(甲14,15)を担保に融資を受け,抵当権を設定した。 その時に,債権者の方から上記土地上の建物についても登記があるので一緒に抵当権設定登記をしておく必要があるといわれ,本件共済目的物である201号室を含む建物(以下「本件1棟の建物」という。)に価値はなかったが,抵当権を設定したものに過ぎない(甲14ないし甲23参照)。 オ本件1棟の建物は,全焼であったため,本件火災後,火災により耐力がなくなった基幹部分の工事,コンクリート補強,天井補強,梁の補強工事をし,2000万円を要した(甲25,50,証人T(8,9,27~30頁)。なお,証人Tは「基礎補強」と証言しているが(証人T8頁),この「基礎」の意味は,地盤の基礎(いわゆる基礎工事の基礎)ではなく,建物の基礎すなわち建物基幹部分(躯体部分)のことを言っているものであり,このことは,原告証拠説明書,全体の証言の流れから明らかである。)。 カこのように,201号室は全焼であった。他の損害保険会社のように調査に来ていれば明白であるのに被告乙1は調査に来ていない。 キなお,り災証明が半焼であるのは,原告甲1から要望したからにすぎない。り災証 うに,201号室は全焼であった。他の損害保険会社のように調査に来ていれば明白であるのに被告乙1は調査に来ていない。 キなお,り災証明が半焼であるのは,原告甲1から要望したからにすぎない。り災証明の変更は実際は事実上かなりなされていたことは被災地の公知の事実である。原告甲1が変更を要望したのは,全焼なら公衆浴場の営業が再開できないとの誤解によるものである(証人T5,6頁)。丙13は,半焼以上となっており全焼も含まれる。そして,丙13の分類は,半焼以上,全壊,死亡であるので,本件では,半焼以上という分類に該当する。 (被告乙1の主張)(1) 本件地震による共済目的物の損傷の有無,程度共済目的物である201号室は,本件火災の発生前,本件地震により相当程度損壊しており,火災共済対象の建物の評価額が下落していた。 201号室は,本件火災後,基礎部分の補強を含め,鉄筋コンクリートの耐力がなくなったための補強及び塗装工事のため,2000万円かけて工事がされたこと,201号室は築後長期間が経過していることからすると,201号室に,本件地震による多大な損傷があったことが推測される。また,原告甲1の主張する注入工事があったとすれば,そうであるのに,本件火災後補強工事がされたことからすると,本件地震によって,相当程度損壊したことが窺われる。 裁判例には,本件地震による損壊率を考慮しているものがあること,本件地震の程度及び多くのコンクリート建物の倒壊例があったことからすると,共済目的建物の基礎部分及び躯体部分の損壊が皆無ということは想定できず,外観上の損傷が見当たらなくとも,本件火災発生当時の共済目的物たる建物の本件火災当時の評価額は,相当程度減ぜられるべきである。 (2) 本件火災による共済目的物の損害の有無,程度 とは想定できず,外観上の損傷が見当たらなくとも,本件火災発生当時の共済目的物たる建物の本件火災当時の評価額は,相当程度減ぜられるべきである。 (2) 本件火災による共済目的物の損害の有無,程度ア 201号室は,本件火災により,半焼したもので全焼したものではない。 このことは,本件1棟の建物の4階部分が殆ど焼損していなかった事実から同建物の火災は,建物の階層部分により焼損程度が異なっていたことが窺われること,本件地震後根抵当権が設定されていること(丙14),罹災証明には半焼として届けられていること,証人Tが,その件について,公衆浴場再開のため罹災証明を「半焼」にしてもらったと供述している点は,公衆浴場再開が必ずしも「半焼」を要件としている訳ではないこと,罹災証明交付庁が安易に事実に反する証明書を交付するとは考えられないことから,整合性に欠け,その信憑性は低いことから解る。 イ原告甲1の自白の撤回の主張について被告乙1は,答弁書において,共済目的物の焼失は認めたが,損害については争っているものであるから,全焼を認めたものではない。 したがって,その後,積極的に半焼と主張し,原告甲1の全焼の主張を明示的に否認しても,自白の撤回には当たらない。 4 損害発生通知時期について(原告甲1の主張)原告甲1は,本件火災発生後,本件火災の発生及び本件損害の発生を,被告乙1に対し電話で通知をしていたのであり,遅くとも平成7年4月30日までには,本件火災によって本件損害が発生したことを通知していた(甲50,証人T7頁)。 5 遅延損害金について(原告甲1の主張)前記のとおり,被告乙1の行っている共済事業は,実質的には保険会社の保険事業と同質のものであるから,商法502条9号の「 ,証人T7頁)。 5 遅延損害金について(原告甲1の主張)前記のとおり,被告乙1の行っている共済事業は,実質的には保険会社の保険事業と同質のものであるから,商法502条9号の「保険」に該当する営業的商行為である。 従って,本件共済金に係る遅延損害金の割合は,商法514条により年6分とされなければならない。 (被告乙1の主張)争う。 第6 当裁判所の判断 1 地震免責条項の拘束力(1) 約款開示論についてア原告らは,約款の開示論を主張し,地震免責条項のように重大かつ不合理な条項,特に第3類型については,書面のみならず,口頭でその内容を保険ないし共済契約申込者である原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に説明し,理解させない以上,契約条項とならない旨主張する。 しかし,被告らが主張するとおり火災保険契約ないし火災共済契約は収支相当の原則,給付反対給付の原則が働く,技術的,団体的な性質を有し,画一化,合理化に馴染む契約であるから,約款による附合契約によるべき典型的な契約類型というべきである。また,約款の個別条項である地震免責条項自体はともかく,保険契約ないし共済契約は普通保険約款や各団体規約等に従って契約内容が定まることは一般に知られていて,かつ,上記普通保険約款や各団体規約等の内容が合理的であると一般に信頼されていることが推認される。 したがって,上記普通保険約款や各団体規約等に従って保険契約ないし共済契約がされた場合は,特段の事情がない限り,保険契約ないし共済契約の申込者は,上記普通保険約款や各団体規約等に従う旨の意思を有すると推認するのが相当である(大正4年大審院判決)。 原告らが主張する開示論は,約款等の個別的内容についての契約者の知,不知を問題とし ,上記普通保険約款や各団体規約等に従う旨の意思を有すると推認するのが相当である(大正4年大審院判決)。 原告らが主張する開示論は,約款等の個別的内容についての契約者の知,不知を問題とし,結局,約款等に基づく附合契約を個別契約と同視するものであって相当でないから,採用できない。 イまた,原告らは,普通保険約款の開示が要求される理由として,①商品内容の特定や②消費者の商品選択の自由の保障を挙げ,特に,地震免責条項の開示が必要な理由として,③旧募取法16条1項,④地震保険との関係を挙げるが,それらが,直ちに,原告らが主張する開示論ないし不意打ち論を裏付けるものではない。 特に,原告らは,④について,地震保険は火災保険等に原則付帯方式をとっていることを前提に,その点の情報開示がない以上,地震免責条項の効力はないとも主張するが,原告らの主張を前提としても,その説明の目的は,地震保険を付保する意思の確認であるから,それが,火災保険の約款中地震免責条項の効力のみを否定する根拠にはなりえず(後述の債務不履行の成否や地震保険契約の成否が問題となるに止まる。),原告らのこの点の主張も理由がない。 (2) 地震保険の不意打ち条項性について原告らは,顧客の合理的期待を超えた「不意打ち条項」には,約款によるとの意思の推定が及ばず,契約内容とならないこと,当該規定が内容的に「異例」で,「不意打ち要因」がある場合に,不意打ち条項となると主張した上,地震免責条項,特に,第3類型を免責とする部分は不意打ち条項であるから,火災保険契約や火災共済契約とならず,原告らを拘束しない旨主張する。 しかし,原告らの主張する不意打ち条項に関する一般的な見解を採用するとしても,「異例」と判断されるためには,その条項が,約款による契約全体か 済契約とならず,原告らを拘束しない旨主張する。 しかし,原告らの主張する不意打ち条項に関する一般的な見解を採用するとしても,「異例」と判断されるためには,その条項が,約款による契約全体からして,合理的な一般人において,想定することを期待することが不可能であることが必要と解されるところ,火災保険において,異常危険について免責条項があること,地震が異常危険に該当することを想定することは合理的な一般人に期待することが不可能とは言い難いこと,第3類型についても(第3類型が,地震免責条項の対象となるか否かは後述する。),後述するように,地震によって,直接,間接に延焼,拡大が助長されることも想定され,それが地震との関連を有するとの見解が異例とも言い難いことからすると,地震免責条項が不意打ち条項に該当するとは言えない。 (3) 特段の事情の有無前記のとおり,上記普通保険約款や各団体規約等に従って保険契約ないし共済契約がされた場合は,特段の事情がない限り,保険契約ないし共済契約の申込者は,上記普通保険約款や各団体規約等に従う旨の意思を有すると推認するのが相当であるが,その契約に至る経緯からして,約款ないし規約によらないで契約したと解すべき特段の事情がある場合などには,前記の意思推定の前提を欠くべき事情があるといえるから,その推定が覆され,約款の効力が否定される場合もあり得る。 そこで,契約に至る経緯等によって,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に約款や規約によらない旨の特段の事情が認められるかを検討する。 ア認定事実(ア) 原告甲1と被告乙1関係証拠(甲5,丙1,2,丙8,9の各1,2,丙10ないし12,証人T)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 原告甲1は,以前か (ア) 原告甲1と被告乙1関係証拠(甲5,丙1,2,丙8,9の各1,2,丙10ないし12,証人T)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 原告甲1は,以前から被告乙1の生命共済に加入していたところ,平成2年5月3日頃,建物と家財について被告乙1の火災共済に加入することとして,案内書の指示に従い,郵便はがきである加入申込書を,被告乙1側に送付した。被告乙1側は,同月7日それを受け付け,同月16日ころ,加入証書と「ご加入のしおり」(丙2)を原告甲1に送付することによって,掛金の支払を停止条件とする共済契約承諾の意思表示をした。 被告乙1においては,掛金が支払われた場合,共済契約は申込の日において成立したものとみなし,かつ,その効力は払込の日の属する月の翌月1日の午前零時から生ずるものとし,払込のあった日の翌日から前記効力の生ずる日の前日までの間に共済事故が発生したときは,その払込のあった日の翌日の午前零時から効力を生ずるものとし,共済金の支払の責に任ずることとなっている(事業規約11条7項)。 なお,「ご加入のしおり」には事業規約が集約されており,「共済金のお支払いができない場合」として「原因が直接か間接かを問わず,・・・地震・・・によって生じた火災等・・・による損害」が記載されている(第10,1項(4))。 上記火災共済契約は,平成3年4月1日に更新され,以後1年毎に更新され,継続されている。その間,平成5年3月19日共済金額の変更申込がされたが,更新の際,新たに証書や「ご加入のしおり」が送られたことはなく,共済金の変更手続をした際も「ご加入のしおり」等は送られていない。 また,原告甲1には,規約は交付されていない。更に,一連の手続きにおいて,原告甲1は,口頭によっ り」が送られたことはなく,共済金の変更手続をした際も「ご加入のしおり」等は送られていない。 また,原告甲1には,規約は交付されていない。更に,一連の手続きにおいて,原告甲1は,口頭によっては地震免責条項によって,地震の場合に火災共済金が支払われないことがあるなどの説明を受けたことはなかったし,説明を受け得るシステムではなかった。 (イ) 原告甲1と被告乙2ないし被告乙3関係並びに原告甲15関係証拠(甲50,乙A1,乙C1ないし3,乙C18の2,3,乙C19,証人T)及び弁論の全趣旨によると,原告甲1ないし原告甲15は,被告乙3ないし被告乙2との間で,以前から火災保険契約を締結しており,更改がされていること,本件の火災保険契約書のうち被告乙3関係(乙C1ないし3)の地震保険意思確認欄には,同原告らの所有する印章によって押印された印影があるが,被告乙2関係(乙A1)には,地震保険意思確認欄に押印がないこと,それらには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があり,地震保険金や地震保険料の記載がないこと,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載がないこと,同原告らは地震保険料を支払ったことがないことが認められる。 なお,証拠(甲50)によると,同被告ら側が,同原告ら側に,地震保険について説明したとは窺えない。 (ウ) 原告甲12関係証拠(甲48,乙D5,6,乙E1,2)及び弁論の全趣旨によると,原告甲12は,被告乙6及び被告乙8との間で,以前から火災保険契約を締結しており,更改がされていること,本件の火災保険契約書の一部(乙D5,乙E1,2)の地震保険意思確認欄には,同原告の所有する印章によって押印された印影があること,その押印のない契約書( 保険契約を締結しており,更改がされていること,本件の火災保険契約書の一部(乙D5,乙E1,2)の地震保険意思確認欄には,同原告の所有する印章によって押印された印影があること,その押印のない契約書(乙D6)は,地震保険の対象外の物件であること,それらには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があり,地震保険金や地震保険料の記載がないこと,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載がないこと,原告甲12は地震保険料を支払ったことがないことが認められる。 なお,証拠(甲48)によると,同被告ら側が,同原告側に,地震保険について説明したとは窺えない。 (エ) 原告甲7関係証拠(甲43,乙A2,3)及び弁論の全趣旨によると,原告甲7は,被告乙2との間で,保険代理店M保険を通じて,以前から火災保険契約を締結し,更改していること,本件の火災保険契約書のうち乙A3,4の地震保険意思確認欄には,原告甲7の所有する印章によって押印された印影があること,本件の火災保険契約書のうち乙A2の地震保険意思確認欄の押印は,原告甲7の所有しない印章によってされていること,それらには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があり,地震保険金や地震保険料の記載がないこと,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載がないこと,同原告は地震保険料を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲43)によると,同被告側が,同原告側に,地震保険について説明したとは窺えない。 (オ) 原告甲13関係証拠(甲41,乙B1)及び弁論の全趣旨によると,原告甲13は,被告乙4との間で,その保険代理店であるNを通じて,以前から 震保険について説明したとは窺えない。 (オ) 原告甲13関係証拠(甲41,乙B1)及び弁論の全趣旨によると,原告甲13は,被告乙4との間で,その保険代理店であるNを通じて,以前から火災保険契約を締結し,更新していたこと,平成何年かの更改の際に,原告甲13の妻Oは,Nから「神戸は地震がないから,このままでいいね。」と言われ,「そうですね。このへんは地震はあまりないですね。」と答えたことがあること,Oは,同原告の所有する印章によって,火災保険契約書である乙B1の地震保険意思確認欄に押印したこと,それには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷はあるが,地震保険金や地震保険料の記載がないこと,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載がないこと,原告甲13は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲41)には,被告乙4側が,原告甲13側に,地震保険について説明したことはない旨の記載があるが,同時に,上記のやり取りがあった旨の記載もあり,地震保険について,まったく説明しなかったか否かは判然としない。 (カ) 原告甲8関係証拠(甲42,乙E3)及び弁論の全趣旨によると,原告甲8は,被告乙6との間で,その保険代理店である原告甲8の夫の姉の配偶者の弟であるPを通じて,以前から火災保険契約を締結し,更新していたこと,本件の火災保険契約書である乙E3の作成の際には,同原告は,夫の姉から本件火災保険の保険料を立て替えているのでその立替分を持参するよう請求されて持参し,そこで,同原告ないし夫の姉が,乙E3の保険契約者欄と地震保険意思確認欄に署名したこと,それには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷はあるが,地震保険金や地震保険料の記載が 請求されて持参し,そこで,同原告ないし夫の姉が,乙E3の保険契約者欄と地震保険意思確認欄に署名したこと,それには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷はあるが,地震保険金や地震保険料の記載がなく,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載がないこと,同原告は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,甲42のうち,夫の姉が上記各押印欄に押印したとの部分は,乙E3の各押印欄に署名がされていることからして,採用することができない。 また,証拠(甲42)によると,乙7側が,原告甲8側に,地震保険について説明したとは窺えない。 (キ) 原告甲11関係証拠(甲46,乙C4ないし8)及び弁論の全趣旨によると,原告甲16は,被告乙3との間で,その保険代理店である同原告の母原告甲17の妹Qを通じて,以前から火災保険契約を締結し,更改していること,その契約は,Qが,甲16に,更改の頃,電話で,更改の意思の確認をして,Qが購入した甲11名の印章を使用して,本件の火災保険契約書を作成していたこと,乙C4ないし8もそのような方法で作成されたこと,それらには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があるが,地震保険金や地震保険料の記載がなく,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載もなく,同原告は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲46)によると,被告乙3側が,同原告に地震保険について説明したとは窺えない。 (ク) 原告甲17関係証拠(甲45,乙C9)及び弁論の全趣旨によると,原告甲17は,被告乙3との間で,その保険代理店である同原告の妹Q(以下「Q」とい ついて説明したとは窺えない。 (ク) 原告甲17関係証拠(甲45,乙C9)及び弁論の全趣旨によると,原告甲17は,被告乙3との間で,その保険代理店である同原告の妹Q(以下「Q」という。)を通じて,以前から火災保険契約を締結し,更新していること,同原告は,同原告の所有する印章によって,本件の火災保険契約書である乙C9の地震保険意思確認欄に押印したこと,それには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があるが,地震保険金や地震保険料の記載がなく,更新手続後同原告に約款及び保険証書が送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載もなく,同原告は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲45)及び弁論の全趣旨によると,被告乙3側が,同原告に地震保険について説明したとは窺えない。 (ケ) 原告甲18関係証拠(甲47,乙C10)及び弁論の全趣旨によると,原告甲18代表者甲16は,以前から被告乙3との間で,その保険代理店であるQを通じて,火災保険契約を締結し,更新していたこと,同原告代表者甲16は,同原告の所有する印章によって,本件の火災保険契約書である乙C10の地震保険意思確認欄に押印したこと,それには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があるが,地震保険金や地震保険料の記載がなく,更新手続後約款及び保険証書が同原告に送付されたが,その保険証書には,地震保険に加入した旨の記載もなく,同原告は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲47)によると,被告乙3側が,同原告に地震保険について説明したとは窺えない。 (コ) 亡甲2関係証拠(甲44,乙B2)及び弁論の全趣旨によると,亡甲2と被告乙4は,以前から火災保険契約を締結し と,被告乙3側が,同原告に地震保険について説明したとは窺えない。 (コ) 亡甲2関係証拠(甲44,乙B2)及び弁論の全趣旨によると,亡甲2と被告乙4は,以前から火災保険契約を締結し,更新していたこと,乙B2の本件の火災保険契約書の更新手続は,その妻である原告甲2Aが行ったこと,その際,亡甲2の印章によって,その地震保険意思確認欄に押印がされたが,それが原告甲2Aによるか,被告側担当者によるかは定かでないこと,それには,地震保険金や地震保険料の記載がなく,更新手続後約款及び保険証書が亡甲2に送付されたが,その保険証書には地震保険に加入した旨の記載がないこと,亡甲2は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲44)によっても,同被告側が,亡甲2側に地震保険について説明したか否かは判然としない。 (サ) 原告甲9関係証拠(甲49の1,乙D4,7,8)及び弁論の全趣旨によると,原告甲9は,以前から被告乙8との間で,火災保険契約を締結し,更新していたこと,本件の火災保険契約書(乙D7)の地震保険意思確認欄には,同原告の印章による押印がされていること,それには,普通保険約款を承認する旨の不動文字での印刷があり,地震保険金や地震保険料の記載がなく,更新手続後約款及び保険証書が同原告に送付されたが,その保険証書には地震保険に加入した旨の記載はなく,同原告は地震保険金を支払ったことはないことが認められる。 なお,証拠(甲49の1)には,被告乙8が,同原告に地震保険について説明していないとの部分もあるが,乙D8には,それに反する記載もあり,甲49の1のみから,上記事実を認定することはできない。 イ上記認定事実によると,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2には,規約ないし約款によらない あるが,乙D8には,それに反する記載もあり,甲49の1のみから,上記事実を認定することはできない。 イ上記認定事実によると,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2には,規約ないし約款によらないと解すべき特段の事情は認められないから,原告らは,地震免責条項を含む規約ないし約款に拘束されると解すべきである。 2 地震免責条項の有効性(1) 証拠(甲33ないし35,37ないし39,甲40の1,2,甲52,58ないし62,乙9の2,乙10ないし13,26ないし30,37ないし41,54,丙12)及びに弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア地震発生の合理的な確率は容易に計算できないこと,地震損害が莫大な額にのぼること,地震損害における平均損害額と最大損害額との差が著しいこと,地震は地域的に頻度差が大きく,発生すれば一定地域に長期に地震が反復する傾向があるから,危険度の高い者の保険加入が多く,逆選択が大きすぎて,危険の平均化ができないことからすると,地震は保険に馴染みにくい異常危険である。それを踏まえ,火災保険では,地震免責条項が定められ,地震と一定の関連を持つ火災については火災保険によって填補されないとの制度がとられている。そして,判例も地震免責条項を有効と解してきた(大判大15.6.12民集5巻8号495頁)。 イ他方,地震による損害の填補の社会的要請も高く,明治政府発足後,巨大地震が起きる度に地震保険の必要性が説かれ,最終的に,昭和39年の新潟地震を経て,昭和41年5月18日に地震保険法が制定され,地震による財産損害を保険事故とする損害保険契約である地震保険の制度が発足した。その際,前記のとおり地震が異常危険であることを踏まえ,保険会社の担保力不足をカバーするため,再保険によって政府が保険責任を分担し,官民一体 険事故とする損害保険契約である地震保険の制度が発足した。その際,前記のとおり地震が異常危険であることを踏まえ,保険会社の担保力不足をカバーするため,再保険によって政府が保険責任を分担し,官民一体のシステムを作り,地震保険の再保険専門会社をつくり,損保業界が一体となったシステムを作り,保険料率は長期間にわたる資料に基づいて算出し,火災保険等の特定の保険に付帯させ,逆選択を防止し,一地震についての保険金総支払限度額を設け,保険金額の引受限度額を設けた上,対象を居住用建物と生活用動産に限定した。また,保険料率の算定に際し,1498年から1964年に至る467年間に日本及び隣接地に発生した地震等,過去の記録等から求められる各々の地震の大きさに基づき,これらの地震が再来した場合,倒壊・焼失・流出等によりどの位の損害が発生するかなどを予測し,損害額を推定し,純保険料率を算定し,それに経費等の付加保険料率を足すことでこれを行った。 ウ被告会社らの火災保険においては,地震に関連する一定の火災に基づく損害を含む地震損害を填補しないことを前提として,純保険料率の計算がされ,それに経費や利潤を加え,最終的に保険料率が算定されている。 エまた,被告乙1についても,同様であると推認できる。 (2) これらの事実からすると,少なくとも現行の火災保険契約ないし火災共済契約において,地震に関連する一定の火災に基づく損害を填補するための利益の蓄積はないことになるから,それについて保険金ないし共済金を支払えば,収支相当の原則に反する上,火災保険料ないし火災共済掛金は地震損害の填補を受ける対価となっておらず,給付反対給付の原則からしても,火災保険ないし火災共済のみの加入者に保険金ないし共済金を支払う根拠はないことになる。したがって,少なくとも,現行の制度,運用を 震損害の填補を受ける対価となっておらず,給付反対給付の原則からしても,火災保険ないし火災共済のみの加入者に保険金ないし共済金を支払う根拠はないことになる。したがって,少なくとも,現行の制度,運用を前提とすると,地震免責条項は不合理とは言えない。 (3) この点について,原告らは,①産業基盤の確立した企業体にはリスクモラル以外の免責条項を適用して保護する必要がないこと,②地震は異常危険ではなく,損害保険業界は大きな利益を得ており,本件地震時に多額の損害が出たのは地震によるものではなく神戸市の消防力の不足によるものであって,地震免責条項は世界的に普遍的ではないこと,③生命保険との比較を主張し,地震免責条項は不合理であるとか,④地震免責条項,特に,第3類型についての文言の不明瞭性,⑤更に,約款は大企業がその経済的優位を背景として一方的に作成していること,消費者の利益の保護が国際的に重要な課題となっており,我が国においても消費者契約法(仮称)の立法化の動きがあり,その法律によれば消費者に不当に不利な条項を無効とすることなどを付け加え,地震免責条項は,公序良俗に反し無効であると主張する。 (4) しかし,①については,付保される損害の範囲を確定し,それを前提として,保険金と保険料との間に収支相当の原則が働く保険と,そのような意味での収支相当の原則の働かない企業の損害賠償とを同様に論じることができないので採用できない。 ②については,前記のとおり地震免責条項は不合理とは言えないので,採用できない。なお,そこで,原告らは,他国の制度との比較を理由に,地震火災による損害は火災保険の対象とすべきと主張しているが,確かに,立法論ないし制度論としてはその見解も検討には値するが,そのような制度を採用することが合理的かを決するに際しても地震火災の発 由に,地震火災による損害は火災保険の対象とすべきと主張しているが,確かに,立法論ないし制度論としてはその見解も検討には値するが,そのような制度を採用することが合理的かを決するに際しても地震火災の発生頻度や地震火災によって生じると想定される損害額等を予想し,異常危険か否かを慎重に検討することが不可欠であるし,現在の火災保険ないし火災共済制度では,地震による一定の火災については保障せず,地震保険で賄うことを前提に保険料率が定められていることからすると,解釈論としては到底採用できない。また,原告らは,当時,損害保険会社が現に高い利潤の蓄積があったことを理由として,地震免責条項によって免責とされる範囲が広すぎると指摘するが,仮に,原告らが前提とする事実が認められ,かつ,その利潤を保険契約者に還元すべきとの判断が相当であるとしても,その利潤は,保険料率設定のシステムの見直し等によって,保険契約者全体に平等に還元されるべきもので,地震免責条項の効力や解釈によって解消すべき問題ではなく,この点も地震免責条項の効力を否定すべき理由とはならない。 ③については,その保険料率の定め方を検討しないまま生命保険の議論が直ちに損害保険の議論に当てはまるものではない。 ④については,被告らの地震免責条項には一定の解釈の余地があるが,中核的な部分は明らかで,それが漠然性ないし不明確性が故に無効とはいえない。なお,解釈の余地を許す部分については,後記のようにその意義を合理的に意思解釈すれば足りる。 ⑤については,確かに約款は,企業側が作成するものであるが,それだけを根拠に地震免責条項を無効とすることができず,消費者契約法(仮称)において指摘する点も,消費者に不当に不利益な条項に関することであるから,地震免責条項が不合理とはいえないことからす るが,それだけを根拠に地震免責条項を無効とすることができず,消費者契約法(仮称)において指摘する点も,消費者に不当に不利益な条項に関することであるから,地震免責条項が不合理とはいえないことからすると,地震免責条項の効力を否定すべき理由とはなりえない。 (5) これらの検討からすると,地震免責条項は公序良俗に反するものではない。 3 地震免責条項の意義(1) 被告会社らの地震免責条項の意義ア被告会社らの地震免責条項には「次に掲げる事由によって生じた損害または傷害(これらの事由によって発生した前条(保険金を支払う場合)の事故が延焼または拡大して生じた損害または傷害,および発生原因のいかんを問わず前条(保険金を支払う場合)の事故がこれらの事由によって延焼または拡大して生じた損害または傷害を含みます。)に対しては,保険金を支払いません。」とし,「地震」をその事由としてあげていることは前記のとおりである。そして,上記免責条項の文言からすると,第1類型,第2類型のみならず,第3類型,即ち,出火原因のいかんを問わず生じた火元火災が地震によって延焼または拡大して生じた損害も免責とする趣旨と解すべきである。このことは,この文言が,新潟地震判決が従来の地震免責条項の規定では第3類型を対象としていないと判断したことを受け,第3類型も対象とするために昭和50年に地震免責条項約款が改正され,定められたものであること(乙9の2,乙10,43)によっても裏付けられる。 イまた,そこでいう「地震」の意義については,限定する必要はなく,「地震によって」の意義も地震と火災の発生ないし延焼に相当因果関係がある場合と解すべきである。 この点に関し,原告らは,「地震」の意義を,「地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会 義も地震と火災の発生ないし延焼に相当因果関係がある場合と解すべきである。 この点に関し,原告らは,「地震」の意義を,「地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会社の基礎を掘り崩し,企業の存立を危うくするような地震」と制限的に解釈すべきであると主張する。 しかし,地震免責条項に合理性が乏しいことを前提とするもので,採用できない。 ウ次に,原告らは,「地震によって」は,二義的に解されるから,そのような場合には約款作成者に不利に,より限定的な「地震の揺れによって」と解釈すべきと主張し,特に,第3類型について,「地震によって延焼または拡大」についても,既に地震の前に火災が発生していた建物が,地盤の揺れによって崩れて周囲に燃え広がった場合に限定すべきであり,地震による消防力の低下による延焼のような人為的要素によって火災が拡大もしくは延焼した場合は含まれないと解すべきである旨主張する。 しかし,文言上はそのような限定は不自然であるばかりか,実質的に検討するとしても,後記で詳述するように,地震という異常危険に際して,通常の頻度を超えて発生する火災には,漏電,ガス漏れ及び地震によって必然的に起こる消防力の低下などの二次的なものも存在するものであるから,地震免責条項の趣旨からすると,そのようなものを一切地震免責条項の対象から排除するとの解釈は妥当とは言い難いことも併せ考えると,被告会社らの主張するように,地震と相当因果関係がある延焼または拡大と解するのが相当である。 また,原告らは,上記のように解釈すると,因果関係が不当に拡大される旨も主張するが,条件関係があれば直ちに因果関係を肯定するのではなく,相当性も判断されるべきものであって,例えば,原告らが特に問題とする消防力の低下によって延焼した すると,因果関係が不当に拡大される旨も主張するが,条件関係があれば直ちに因果関係を肯定するのではなく,相当性も判断されるべきものであって,例えば,原告らが特に問題とする消防力の低下によって延焼した場合などのように,防災計画の不備や防災設備の不足などの地震以外の人為的な要素の影響が想定できる場合には,延焼に影響した人為的要素は何か,それが通常想定しうるものか,地震とその人為的要素のいずれが延焼等により重大な影響を与えたかなど,地震以外の他の要因の具体的な内容,程度を考慮して,個別的に,地震との相当因果関係を否定すべき要素とまでなるか否かを検討すれば足りるから,この原告らの主張も理由がない。 (2) 被告乙1の地震免責条項の意義ア被告乙1の地震免責条項は,「原因が直接であると間接であるとを問わず地震・・・によって生じた火災」については共済金を支払わないとされていることは前記のとおりで,上記条項が適用される「火災」は,被告乙1の火災風水害等共済事業実施規則2条により,「人の意図に反してもしくは放火により発生し,人の意思に反して拡大する消火の必要のある燃焼現象であって,これを消火するためには,消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とする状態をいう。」とされている(丙1)。 そうすると,同2条による火災には延焼火災も含むことになるが,地震免責条項における「火災」の意義は,その規定の体裁からいうと,火元火災と延焼火災を一連の燃焼現象と捉え,「着火」から連続して「延焼拡大」する一連の燃焼現象を捉えていると解されるから,その一連の燃焼現象が「地震によって生じる」即ち地震によって発生することを表現していると解することができる。したがって,「地震によって生じた」の文言は,燃焼現象の「発生」のみにかかると解され,「延焼拡大」に の燃焼現象が「地震によって生じる」即ち地震によって発生することを表現していると解することができる。したがって,「地震によって生じた」の文言は,燃焼現象の「発生」のみにかかると解され,「延焼拡大」にかかると解することはできない。 そうだとすると,上記地震免責条項は,第1類型及び第2類型のみを意味するもので,第3類型,即ち,原因の如何を問わず生じた火元火災が地震によって延焼又は拡大して生じた損害は含まないと解するのが相当である。 イなお,被告乙1は,火災共済事業の火災保険事業との相違,地震の火災への係わりが極めて複雑・多様であることなどを根拠に,その地震免責条項の解釈において,第3類型も免責されるべきとの解釈が裏付けられると主張するが,規定の体裁からより自然な解釈は前記認定のとおりであること,被告乙1は火災共済加入者を拘束する結果となる規約の作成に直接携わった者であるから,その内容を一義的に定めるべき責任を負うことは,事業の性格を問わず,被告会社らと同様であることからすると,上記規約を実質的な理由から,被告乙1に有利に解釈することは許されないと解すべきである。 4 本件火災の地震免責条項該当性(1) 本件地震後の火災発生状況前記争いのない事実に,証拠(甲29,乙2,3,31ないし34,丙3ないし7)並びに弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。 ア本件地震の発生本件地震は,17日午前5時46分に発生した,北緯34度26分,東経135度03分,深さ約14キロメートルを震源とするマグニチュード7.2の地震であり,地殻の浅いところで発生した典型的な都市直下型内陸地震である。本件地震の震度は,保険目的物及び共済目的物所在地であるa町,bを含む神戸市周辺において,気象庁観測史上最高の震度7の激 .2の地震であり,地殻の浅いところで発生した典型的な都市直下型内陸地震である。本件地震の震度は,保険目的物及び共済目的物所在地であるa町,bを含む神戸市周辺において,気象庁観測史上最高の震度7の激震あるいは超震度7と測定された。なお,神戸市内では,市街地を中心として多数の木造家屋が倒壊し,全壊建物は6万7421棟,半壊建物は5万5145棟に上った。 災害時には神戸市全域で停電したが,市街地では,地震の約4時間後一部の地域で一時的に通電した。神戸市内の当時の市ガスの供給戸数は62万6750戸で,17日11時50分に49万3050戸で供給が停止された。電話については,地震発生時の電源停止による交換機故障によって,約30万回線が不通となった。しかも,同日から21日までには,全国から神戸方面に対して通常の50倍程度の通話が集中したため,電話が極めて繋がりにくい状況となった。 イ本件地震後の火災発生状況(ア) 神戸市において発生した火災は,本件地震後から27日午前5時45分までの10日間で175件であり,その焼損棟数は7048棟(全焼建物6975棟,半焼建物73棟),焼損延面積は81万9223平方メートルに上った。 上記175件の火災を発生時間別及び発生日別にみると,本件地震発生から同日午前6時までに54件,その後1時間毎に10件,5件,10件と発生し,同日午前9時以降に30件,以後1日毎に14件,15件,8件,5件,3件,6件,3件,9件,3件,0件と発生した。 (イ) 上記175件の火災のうち,建物火災は157件であり,そのうち56件は本件地震発生から同日午前6時までの14分間に発生し,その中には,焼損面積が1万平方メートルを超えるものが9件,1000平方メートル以上1万平方メートル未満のものが22件あった。 のうち56件は本件地震発生から同日午前6時までの14分間に発生し,その中には,焼損面積が1万平方メートルを超えるものが9件,1000平方メートル以上1万平方メートル未満のものが22件あった。 17日には午前6時以降に47件の建物火災が発生し,そのうち,焼損面積が1万平方メートルを超えるものが2件,1000平方メートル以上1万平方メートル未満のものが9件あった。 (ウ) 本件火災の火元建物所在地である神戸市長田区においては,本件地震発生後27日午前5時45分までの10日間で27件(17日中に17件)の火災が発生した。上記27件の火災を発生時間別及び発生日別にみると,本件地震発生から同日午前6時までに12件,その後1時間毎に1件,0件,0件と発生し,同日中には午前9時以降に4件,以後1日毎に1件,4件,2件,0件,0件,1件,0件,1件,1件,0件である。 また,神戸市長田区に西接する神戸市須磨区において,本件地震発生後27日午前5時45分までの10日間で20件(17日中に13件)の火災が発生した。上記20件の火災を発生時間別及び発生日別にみると,本件地震発生から同日午前6時までに4件,その後1時間毎に2件,1件,1件と発生し,同日中には午前9時以降に5件,以後1日毎に2件,1件,0件,0件,0件,1件,1件,2件,0件,0件と発生した。 ウ本件地震後の火災の出火原因上記175件の火災のうち,火災原因が判明したものは68件であり,残り107件は火災原因が判明しなかった。原因が判明した火災は小規模の火災である。また,17日中に発生した109件の火災のうちでは,火災原因が判明したものは36件であり,残り73件は火災原因が判明しなかった。上記火災原因が判明した36件を原因別にみると,①電気設備・器具に起因するも 17日中に発生した109件の火災のうちでは,火災原因が判明したものは36件であり,残り73件は火災原因が判明しなかった。上記火災原因が判明した36件を原因別にみると,①電気設備・器具に起因するもの12件,②電源コードに起因するもの4件,③配線等に起因するもの3件,④燃焼器具に起因するもの10件,⑤その他に起因するものが7件である。 (2) 本件地震とノースリッジ地震後の火災発生状況との比較上記(1)記載の認定事実及び証拠(丙3)によれば,本件地震後の火災発生状況は,1994年にロサンゼルスで発生したノースリッジ地震後の火災発生状況と類似しているところ,ノースリッジ地震後の散発的に発生した火災は,ガス漏れないし損壊建物への通電再開に起因するものとされている。 (3) 本件火災発生時の状況前記争いのない事実及び証拠(乙1,34,丙7)並びに弁論の全趣旨によると次の事実が認められる。 ア本件火災出火時の状況の詳細本件火災は,17日午前9時頃,c通d丁目e番f号所在のA方の木造建物から,S夫妻が,全壊した家屋に下敷きになっていたので,付近住民が出火元建物内に入り,救助活動を行っていた際に出火したものである。 火元では,付近住民が,消火器を持ち寄り消火活動に当たったが,奏功しなかった。 なお,出火当時,出火元建物付近は,停電していた。都市ガスの供給が止まっていたとは認められないが,前記認定の地震の規模からして,この付近に通常と同程度の量のガスが供給されていたか否かは判然としない。 イ本件火災出火時の気象状況本件火災出火時の気象状況は,天候曇,風向は北北東で風速毎秒1.3メートル,気温2.6度,相対湿度70パーセント,実効湿度59パーセントであり,乾燥注意報が出されていた。 ウ 気象状況本件火災出火時の気象状況は,天候曇,風向は北北東で風速毎秒1.3メートル,気温2.6度,相対湿度70パーセント,実効湿度59パーセントであり,乾燥注意報が出されていた。 ウ出火原因調査長田消防署長作成名義の火災調査報告書(乙1)では,本件火災の覚知は17日午前11時ころで,出火時刻は同日午前9時ころとされているが,出火箇所,発火源,着火物及び着火経過はいずれも不明とされ,その根拠として,長田消防署消防司令補R(以下「R」という。)作成の「火災原因認定書2」には,「人的及び物的な確証が得られず,発火源・経過・着火物等が特定出来ないため不明として処理する。」ものとされている。 (4) 本件地震と本件火災の発生との因果関係上記認定の事実によると,本件火災は,発生したのが本件地震後約3時間も経過した後であること,倒壊した建物に下敷となった家人の救出中に倒壊家屋が着火ないし引火したことが認められるというのであるから,本件地震によって発生したとは認められない。 (5) 被告らの主張についてア被告らは,本件地震後の火災発生状況とノースリッジ地震後の火災発生状況との類似性や,大地震後の火災では,火災原因の調査や証拠の確保が困難であることなどから,本件火災は,本件地震によって発生したと推定されるべきである旨主張する。 しかし,ノースリッジ地震後の火災発生状況との類似性は,一般的傾向を示すにとどまり,特に通電に関しては,本件火災の出火当時,出火元建物付近は停電していたのであるから,直ちに,通電によるものと推認することができず,また,ガス漏れについても一般的には可能性は否定できないが,被告らの主張する上記各事実のみから,本件火災原因をガス漏れによるものであると推認することはできない。 イ ものと推認することができず,また,ガス漏れについても一般的には可能性は否定できないが,被告らの主張する上記各事実のみから,本件火災原因をガス漏れによるものであると推認することはできない。 イまた,被告らは,本件地震直後の地震発生率の高さ,本件火災が発生した地域は震度7の激震地であり,火元の建物も全壊していたこと,本件地震の際激震地では火災が集中していることからすると,本件火災は,本件地震による火災と推認すべきであるとか,本件地震後に発生した火災の出火原因調査が困難であったことから,本件火災が本件地震によるものであると推認すべき旨主張する。しかし,前記認定のとおり,本件火災発生時には既に人為的な活動がされており,地震と関係のない失火等の可能性も生じていることなどからすると,被告ら主張の上記各事実のみでは,本件火災が本件地震による火災と推認するに十分でない(そのような推認を認めるとすれば事実上,因果関係に対する立証責任を転換することになり,通常,被告らに比して,調査のための能力・組織において劣る契約者である原告らに本件火災が地震以外の原因によるものであることを調査,解明すべき負担を強いることになるから,相当でない。)。 したがって,被告らのこの主張を採用することはできない。 ウなお,火災調査報告書(乙1),消防庁作成の「阪神淡路大震災の記録」中の住民へのヒヤリングの結果(丙7)には,本件火災は,出火元建物内に生き埋めとなった家人を救出する際,救助者が照明用にローソクに火を点けたところ一瞬にして広まったと窺えるり災者ないし住民からの聞き込み結果があるが,上記回答を寄せた者は特定されておらず,かつ,その陳述の根拠,その作成の具体的経過が明らかでないこと,特に乙1の回答のうち,漏れたガスに引火したとまで特定するものは,上記陳述が 聞き込み結果があるが,上記回答を寄せた者は特定されておらず,かつ,その陳述の根拠,その作成の具体的経過が明らかでないこと,特に乙1の回答のうち,漏れたガスに引火したとまで特定するものは,上記陳述が伝聞であることを認めるものであること,また乙1の回答のうち,直接体験とも読めるものは,周囲にガスの臭いがない旨陳述していること,多くの聞き取りがされたようであるのに,その点についてガス等への引火の点まで明確に触れられたのは少数に過ぎないこと,ガソリンが漏れたと認めるに足りる証拠はないことからすると,上記各陳述のみから,ローソクの火が,本件地震によって漏れたガスやガソリンに引火したと認めるには足りない。 (6) 以上のとおりであって,本件火災の火元は地震によって生じたものとはいえないから,第1類型,第2類型には該当せず,その余を判断するまでもなく,被告乙1の地震免責条項には該当しない。 したがって,被告乙1は,原告甲1が,本件火災によって共済目的物が被った損害について,賠償する責任がある。 5 本件火災の延焼と本件地震との相当因果関係(被告保険会社ら地震免責条項の適用の可否)(1) 認定事実前記認定の事実及び証拠(甲4,8,29ないし32,乙1ないし3,31ないし34,乙B2,乙D4,丙3ないし7,証人T)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア消火活動開始までの経緯(ア) 本件火災現場は,北は主要地方道神戸・明石線(以下「神戸明石線」という。),南はJR山陽本線に挟まれた街区であり,長田消防署の西方1キロメートルに位置し,各街区間は,幅員6メートルの道路で区切られている。 本件火災発生直後から,前記A宅では,付近住民が消火器などを持ち寄り,消火に当たった。当初の火勢はそ 消防署の西方1キロメートルに位置し,各街区間は,幅員6メートルの道路で区切られている。 本件火災発生直後から,前記A宅では,付近住民が消火器などを持ち寄り,消火に当たった。当初の火勢はそれほどでもなかったが,本件地震による断水のため,水による消火は不可能であったこともあって,結局,近隣建物に延焼し,ゆっくりと燃え広がっていった。 本件地震後,神戸市長田区においては,午前7時までの間に13件の火災が発生し,長田消防署内では,同時多発火災に対処するための作戦会議が開かれていた。午前9時ころに発生した本件火災が,管轄消防署である長田消防署に覚知されたのは,午前11時ころであり,そのころ,本件火災現場付近には,大きな黒煙が上がっていた。 (イ) 上記作戦会議により本件火災現場方面の中隊長としての任務を受けた長田消防署消防司令T(以下「T」という。)は,午後零時過ぎころ,長田5(ポンプ車),長田27(はしご車)の2隊で現場に向かった。なお,火災の規模にもよるが,通常は現場にはより多くの消防車を配置していた。 Tらは,長田消防署から神戸明石線を西進しようとしたが,渋滞のため同署前付近からほとんど進行できず,前方車両をマイクで左右に振り分けて誘導しながら,ようやく進行する状況であった。Tらは,本件火災現場への到着を早めるため,長田区l通2丁目(以下長田区については区名を省略する。)付近で神戸明石線から街区内道路へ迂回したが,家屋の倒壊が激しく,消防隊員の先導を受けながら走行せざるを得なかった。しかし,上記迂回路も,電柱から垂れ下がった電線が進路を妨げて前進できなくなったため,Tらは,再び神戸明石線に引き返した。Tらは,迂回路を探しながら同線を前進したが,南北道路は家屋が倒壊して通行できない状況であったため,やむを得ず,渋滞 った電線が進路を妨げて前進できなくなったため,Tらは,再び神戸明石線に引き返した。Tらは,迂回路を探しながら同線を前進したが,南北道路は家屋が倒壊して通行できない状況であったため,やむを得ず,渋滞中の神戸明石線を進行した。しかし,同線上の陸橋が破損し通行できなかったため,Tらは,再び迂回し,g通とc通との境界道路を西進しようとしたが,倒壊建物が進路を妨げていた。なお,Tは,同所付近で,本件火災現場の黒煙がほぼ真上に上昇するのを確認した。 (ウ) Tらは,再度,神戸明石線に引き返して西進し,長田27は,g通5丁目の県道上の40トン容量の防火水槽の部署につき,Tら乗車の長田5は,更に前進して長田区と須磨区との境界道路を南下し水笠西公園北西付近の40トン容量の須磨区10番の防火水槽の部署についたが,時刻は,午後1時30分ころになっていた。 火勢は,そのころ,c通5丁目街区を大きく焼失した上,北はc通6丁目北東街区に延焼し,南はh通3丁目の北西街区および同区h通4丁目北東街区に延焼し,更に西へ延焼しようとしており,既存の部隊では筒先包囲のできない状態となっていた。 イ消火活動について(ア) Tらが本件火災現場に到着した際,既に須磨消防署の1小隊が水笠西公園内からc通6丁目北東街区に向け,1線放水を行っていた。 Tらは,g通6丁目への延焼を阻止するため,g通6丁目とc通6丁目との境界道路に,長田5及び27から各1線放水,h通4丁目への延焼を阻止するため,同じく各1線放水で防御活動に当たったが,火勢は全く衰えなかった。そのうち,長田27が部署した防火水槽の水は約30分で,長田5が部署した防火水槽の水は約1時間でそれぞれ使い果たし,その後,長田27は,他都市の応援部隊に補給を依頼することにより,継続して放水したが,ホース 長田27が部署した防火水槽の水は約30分で,長田5が部署した防火水槽の水は約1時間でそれぞれ使い果たし,その後,長田27は,他都市の応援部隊に補給を依頼することにより,継続して放水したが,ホースの延長距離が長かったため水圧が低下し,有効な放水はできなかった。一方,Tらは,付近の水利を探し求めたが,消火栓は断水し,JR新長田駅高架付近の防火水槽は空であつた。その間,Tは,長田港からの海水中継隊と連絡を取るため,無線送信したが,連絡不通であり,連絡できなかった。 (イ) その後,Tは,他都市から到着した応援隊に,須磨区i町2丁目所在の神戸市立i小学校(以下「i小学校」という。)のプールの水を長田5に中継送水するよう依頼し,放水を再開したが,少ない筒先を有効に機能させるため,筒先移動しながら放水する状態であった。 一方,須磨消防署北須磨出張所のU(以下「U」という。)は,午後2時20分ころ,41トン容量の須磨区9番の防火水槽の部署につき,h通4丁目に1線放水,c6丁目に1線放水で防御活動に当たったが,午後4時ころには水がなくなり,撤収せざるを得なかった。 しかし,火勢は一向に衰えないまま,午後4時ころ,路上に倒壊した建物を媒介として,h通4丁目からi町1丁目へと延焼し,更に常盤町1丁目へと延焼していった。 (ウ) その後,Tは,水源が残り少ないとの情報を得たことから,このままでは放水活動ができないと判断し,大隊長の指示を得るため,いったん長田消防署に戻り,副大隊長から,神戸市民プールからの中継送水及び長田港からの海水中継隊による中継送水を水源として西への延焼を阻止するよう指示され,Tらは,長田5と広報車に使用可能なホースや筒先,強力ライト等の夜間装備を積載し,再出動した。Tらが,県道明石線に入ったところで,すでに長田区の 継送水を水源として西への延焼を阻止するよう指示され,Tらは,長田5と広報車に使用可能なホースや筒先,強力ライト等の夜間装備を積載し,再出動した。Tらが,県道明石線に入ったところで,すでに長田区の西方の空一帯が真っ赤に染まっている状況であった。また,火災の延焼範囲を把握すべく,周辺何か所かを見分した後,b1丁目と原告甲9,亡甲2ら所有の保険目的物所在のb2丁目(乙B2,乙D4)の境界から,南方を見分すると,東側は,他の原告ら所有の保険目的物が所在するa町2丁目街区への延焼が認められるも,b2丁目南東角に位置する共同石油へはまだ延焼していない状況である。 (エ) この頃,長田区消防団員らは,JR鷹取工場内の工業用水を,三田市の元ポンプを用い,中継に長田5,北消防団の積載車2台を入れ,先ポンプに長田27を配置した中継態勢をとり,また,長田港からの海水中継も用いた。当初は,b2丁目とa町2丁目との境界道路から東へ1線,a町2丁目C駐車場内へ1線,それぞれ筒先進入させ,防御に当たり,この時点で,a町2丁目街区の東半分まで延焼してきている状況であった。また,b,a町,i町の各1丁目から各2丁目へ延焼したため,最終的に,各町の2丁目,3丁目境界南北道路(幅16メートル)で延焼を阻止するため,筒先を配置し,防御活動を行った。 (オ) この付近への延焼時間は,別紙延焼動態図記載のとおりであって,保険目的物に延焼したのは,17日午後7時以降である。 ウ本件火災のその後の延焼拡大状況について本件火災は,当初,付近は無風状態であったため,ゆっくりとした速度でやや東向きに周囲へ拡大した。その後,風が北東から吹き始め,東側は午後2時30分ころにはc通商店街で焼け止まり状態となったが,西側へは延焼拡大が続き,最終的には,長田区6万0958平方メ した速度でやや東向きに周囲へ拡大した。その後,風が北東から吹き始め,東側は午後2時30分ころにはc通商店街で焼け止まり状態となったが,西側へは延焼拡大が続き,最終的には,長田区6万0958平方メートル,須磨区8万1987平方メートルの合計14万2945平方メートルを焼損し,鎮圧されたのは18日の午後2時20分頃であった。 エ例年の火災発生状況本件地震の1年前である平成6年1月17日から26日迄の神戸市内で発生した建物の火災においては,焼損面積が極めて小さいごく小規模な火災を除けば,多くは発生後数分間で覚知されていて,鎮火時間もほとんどは発生後1時間程度に止まった。 (2) 上記認定事実によれば,本件火災の火元火災は午前9時ころに発生したもので,付近住民に覚知されていて,当初は火勢も強くなかったことが窺われるから,本件地震による断水がなければ,水による鎮火も十分ありえ,少なくとも火勢を衰えさせ,延焼の速度をより遅くすることができたと推認できること,上記火元火災は,付近住民に覚知されていたことからすると,本件地震がなければ,同人らが長田消防署に119番通報することによって直ちに長田消防署が覚知すると推認できるのに,通信機能の低下などのため,長田消防署が覚知したのは午前11時であり,そのころ,長田消防署管内では他に十数件の火災が発生しており,長田消防署は,上記同時多発火災に対応するため消防力を分散せざるを得ず,そのため,本件火災覚知後も出動までに約1時間を要し,投入できた消防車も2台に止まったこと,長田消防署から約1キロメートル先の本件火災現場に到着するためには,通常であれば数分で可能であると推認できるのに,避難や救助に向かう車両による交通渋滞や倒壊家屋による進路閉鎖などのため,約1時間30分の時間を要したこと,それらの要 の本件火災現場に到着するためには,通常であれば数分で可能であると推認できるのに,避難や救助に向かう車両による交通渋滞や倒壊家屋による進路閉鎖などのため,約1時間30分の時間を要したこと,それらの要因から,消防隊員らが本件火災現場で消火活動を開始した頃には,火勢は既存の部隊では対処できない程度に拡大していた上,消火栓は本件地震による断水のため使用できず,消防隊員らは水利を求めて転戦せざるを得なかったこと,本件火災の延焼は,出火後しばらくはゆっくりとした速度で進み,保険目的物に延焼したのも17日午後7時ないし8時頃と認められることからすると,前記認定の通常時の火災発生時と覚知時間や鎮火時間との対比からすると,本件地震がなければ,その延焼を防止できた高度の蓋然性があったというべきである。したがって,本件地震と,保険目的物への延焼との間には,相当因果関係があると認めるのが相当である。 (3) 原告らの主張についてア原告らは,地震による延焼か否かを判断する際の延焼とは,火災が,直接保険目的物に延焼する場面のみを捉えるべきであって,その時点では,消防力は回復していたので,本件では,地震による消防力の低下による延焼ではなかった旨主張する。 しかし,延焼という文言は,火元から最終的に問題とされる保険目的物へ火災が拡大するまでの一連の経緯と捉えるのが文言上自然であること,地震免責条項の趣旨からすると異常危険である地震と相当因果関係のある火災について免責することと解されるところ,延焼を地震免責条項の対象とする以上,そこでいう延焼を直接保険目的物に延焼する時点のみを捉える実質的根拠もないことからして採用することはできない。 イ原告らは,地震免責条項の解釈上,消防力の低下を考慮すべきではない旨主張するが,大地震によって,交通網,通信網, 延焼する時点のみを捉える実質的根拠もないことからして採用することはできない。 イ原告らは,地震免責条項の解釈上,消防力の低下を考慮すべきではない旨主張するが,大地震によって,交通網,通信網,水利施設,消防施設が破壊され,消防力が低下することは通常予想できることからすると,その点を一切考慮すべきでないとの原告らの主張は採用できない。 ウ原告らは,消防力の低下を考慮すべきとしても,類型的に地震の揺れによって通常直接的に発生すると予想されるものに限定されるべきである旨主張するが,地震免責条項の解釈の際に述べたとおり,「地震によって」の意義を「地震の揺れによって直接」と限定して解すべきではないので,この主張も採用できない。 更に,原告らは,消防力の低下を考慮すべきとしても,通常消防当局の対応措置や近隣自治体・国等からの応援がされて消防力が回復するのに必要な時間である半日程度を経過した場合は,もはや地震との因果関係がないと主張するが,その点は,地震との相当因果関係の有無を判断する際に考慮すべきであって,一律に時間によって判断すべきではないから,この主張も採用しない。 エ原告は,保険目的物への延焼は,神戸市における消防力の不備によるもので,本件地震によるものではない旨主張するのでこの点を検討する。 (ア) 証拠(甲26ないし30,乙31)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 a 神戸市は,地震対策のために専門家に調査依頼した結果の報告書(昭和49年「神戸市と地震」)において,大地震が発生する可能性が十分あると指摘されていたのに,予算を勘案して,想定震度を6とせず5として「地域防災計画」を策定した。 b 当時,神戸市の保有している消防ポンプ自動車数は,消防組織法20条の勧告を大幅に下回り,その充足率は全国平 ていたのに,予算を勘案して,想定震度を6とせず5として「地域防災計画」を策定した。 b 当時,神戸市の保有している消防ポンプ自動車数は,消防組織法20条の勧告を大幅に下回り,その充足率は全国平均や近隣市と比して大幅に下回っていた。 c 神戸市は,想定震度を5としていた関係で,消防栓の使用が可能であることを前提としており,防火水槽は,乏しかった。 d 西宮市や芦屋市は,神戸市に比べ,消防ポンプや防火水槽の充足率が高く,単位面積当たりの本件地震後の火災による被害は著しく少なかった。 (イ) 上記認定の事実からすると,神戸市の想定震度数,保有消防ポンプ数,設置防火水槽数によっては,保険目的物への延焼は防止された可能性は窺えなくもないが,地方公共団体が,常に,本件地震程度の大地震が発生することを想定して,防災計画を立てることが一般的であることを認めるに足りる証拠はなく,神戸市の想定震度数,保有消防ポンプ数,設置防火水槽数の低さないし少なさが,本件地震と保険目的物への延焼との間の相当因果関係を否定するほどのものであったと認めるに足りる証拠もない。 したがって,前記認定の事実を考慮しても,保険目的物への延焼は,本件地震によると認定することができ,この点の,原告らの主張も採用できない。 オ原告らは,保険目的物への延焼は,消防活動の判断の誤りによるものであるから,本件地震によるとはいえない旨主張するので,この点を検討する。 (ア) 証拠(甲8,30,31)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 a 神戸市は,同時多発の火災の状況を踏まえ,管轄区域の災害は基本的に各消防署で対応する基本方針を決定し,各消防署の判断に任せ,神戸市全体で,各消防署の震災被害の有無,程度を把握し,それを踏まえて,消防署間の連携を取るとの方法 の状況を踏まえ,管轄区域の災害は基本的に各消防署で対応する基本方針を決定し,各消防署の判断に任せ,神戸市全体で,各消防署の震災被害の有無,程度を把握し,それを踏まえて,消防署間の連携を取るとの方法は採用せず,このため,各消防署管内ごとに焼失被害に大きな隔たりが生じた。他方,西宮市は,市全体で基本計画を立て,被害の少ない北消防署のポンプ自動車2台を消防局に集結させ,あらゆる車両に可搬式動力ポンプ,水管を積載させて現場に投入すると共に,市内消防団及び他市応援隊と連携を図り,大規模な延焼拡大は回避できた。 b 大阪府八尾空港に駐屯する陸上自衛隊中部方面航空隊は,本件地震直後から,ヘリコプターによる空中消火の準備を整え,兵庫県を通じて,神戸市に対して協力を申し入れていたが,神戸市は回答を留保し,18日午前10時になって,これを拒否した。神戸市消防局が,その根拠とするところは,①消防効果を高めるためには多数のヘリコプターを集中して導入する必要があり現実問題として困難かつ危険であること,②屋根等の構造物の影響で有効注水が得にくいこと,③落水の影響で家屋倒壊を助長する危険性や要救助者に危険が生じること,④消火効果を高めるため低空飛行を行った場合,ヘリコプターの吹き下げ流の影響で火勢を拡大する危険性が高いこと,⑤市街地での火災エネルギーは非常に強いため低空飛行はヘリコプター自体が危険であること(上空での酸欠によるエンジン停止,上昇気流による操縦困難性)であった。それに対しては,神戸市消防局が指摘する各点は,実施方法を工夫することによって避けることができ,ノースリッジ地震においては,ロサンゼルス市消防局が保有するヘリコプターが有効な消防活動を行ったとの批判がされている。 (イ) 前記認定の事実からすると,神戸市が市全体で,消防車を有効適切に配置する スリッジ地震においては,ロサンゼルス市消防局が保有するヘリコプターが有効な消防活動を行ったとの批判がされている。 (イ) 前記認定の事実からすると,神戸市が市全体で,消防車を有効適切に配置することができ,ヘリコプターによる消火が適切に実施できれば,本件火災の延焼範囲がより狭まった可能性は窺えるが,本件地震発生直後,神戸市がそれらの配置ないし要請をしなかったことには,それなりの理由があり,それが事後的にみて最善であったか否かはさておき,本件地震の規模,程度からして,当時の判断としては,一般的に想定することができないほど不合理な判断とまではいい難いから,これらの各点が,消防活動の判断の誤りとして,本件地震と保険目的物への延焼の相当因果関係を否定するものとまではいえない。 (4) 以上のとおりであるから,原告らの主張する保険目的物への延焼は,本件地震と相当因果関係がある。 よって,保険目的物の損害には,被告保険会社らの地震免責条項が適用されるから,その余の点について判断するまでもなく,同原告らの被告保険会社らに対する火災保険金請求はいずれも理由がない。 6 寄与度に応じた因果関係の認定(割合的解決)について原告らは,本件火災の延焼拡大には,本件地震以外の様々な人為的な要因も寄与していること,地震免責条項の条項が難解でかつ説明が十分されていないことを考慮すれば,延焼に寄与した諸事情の程度に応じて保険金額の算定をするのが妥当である旨を主張する。 しかし,地震免責条項は,地震による火災を,異常危険と捉え,保険者である保険会社らの負担を免責するものであるから,延焼との因果関係が肯定され,地震免責条項に該当すると判断された以上,その損害は一律に免責されると解すべきである。火災に他の要因が影響した場合には,それが, 険会社らの負担を免責するものであるから,延焼との因果関係が肯定され,地震免責条項に該当すると判断された以上,その損害は一律に免責されると解すべきである。火災に他の要因が影響した場合には,それが,相当因果関係を否定すべき程度のものかどうか,即ち,相当性の判断において考慮すべきものと解される。 そして,前記認定のとおり,本件においては,本件地震と保険目的物への延焼との間には,相当因果関係があると解するのが相当であるから,原告らのこの点に関する主張は採用することができない。 7 原告甲1の共済目的物(201号室)の本件火災による損害の有無及び額(1) 201号室の位置,構造証拠(甲5,10,14ないし23,甲24の1,2,甲50,丙14,証人V)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 原告甲1及び原告甲15は,a町U丁目V番W,同V番Xの各土地に,昭和43年に3階建の店舗・共同住宅(甲16)(以下「3階建部分」という。)を,昭和56年に1階が公衆浴場(101号室)で2階ないし4階が居宅となっている4階建の建物(甲17ないし23)(以下「4階建部分」という。)を建築した。更に,本件地震の約10年ほど前,それらを接続し,本件1棟の建物とし,その頃,改装工事を施し,基礎に注入工事をした。うち,公衆浴場部分は,原告甲15の所有で,その余の部分は原告甲1の所有であった。うち,3階建部分は被告乙2の保険目的物であり,4階建部分は,被告乙3の保険目的物ないし被告乙1の共済目的物であった。また,201号室は,被告乙1の共済目的物である。 (2) 共済目的物の本件地震による損壊の有無,程度並びに本件地震前の評価ア本件地震による損壊の有無,程度に関する認定事実証拠(甲5,甲9の1ないし3, 乙1の共済目的物である。 (2) 共済目的物の本件地震による損壊の有無,程度並びに本件地震前の評価ア本件地震による損壊の有無,程度に関する認定事実証拠(甲5,甲9の1ないし3,甲10,50,乙1,証人V)及び弁論の全趣旨によると,本件1棟の建物,その隣近所の建物及び電柱には,本件地震直後本件火災の延焼前,外観上,本件地震による損壊が窺えないこと,本件地震によって201号室内部には目に見えた被害はなく,食器が割れ,照明器具が2個落下した程度であったこと,前記のとおり,本件1棟の建物は,築後相当期間が経過しているが,本件地震の約10年前注入工事が施された鉄筋コンクリート造の建物であることがそれぞれ認められるが,他方,前記認定の本件地震の規模,a町2丁目が震度7の激震区に該当し,その周辺の木造住宅には倒壊したものも少なくなかったと認められることからすると,共済目的物所在地付近の建物及び家財については,顕在化していなくても,相当程度損害を被っていたと推認できる。 イ本件地震による損壊の有無程度についての判断上記認定事実によると,201号室の建物は,本件地震によって,時価の1割程度の損害を被ったと推認でき,また,その中に存在した家財も,2割程度の損害を被ったと推認できる。 ウ本件地震前の評価201号室の建物や家財の当時の価値については,原告甲1としては,共済金額に応じた掛金を支払う義務があることからすると,共済目的物に相応する共済金額によって火災共済契約を申し込んだと推認できるから,具体的に共済目的物である建物や家財の価値がそれより低いと認めるべき特段の事情が窺えないので,それらは共済金額相当の価値があったと推認できる。 エ本件地震直後の共済目的物の評価したがって,本件火災時には る建物や家財の価値がそれより低いと認めるべき特段の事情が窺えないので,それらは共済金額相当の価値があったと推認できる。 エ本件地震直後の共済目的物の評価したがって,本件火災時には,201号室の建物は1620万円,家財は480万円の価値があったと認めるのが相当である。 (3) 201号室の本件火災による損害(全焼か半焼か)ア認定事実証拠(甲5,10,50,証人V及び後記摘示の証拠)並びに弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 (ア) 本件火災後,本件1棟の建物の外側は残っていた。また,3階建部分及び4階建部分の202号室等は,全焼の罹災証明を得ている。また,乙2は本件地震後調査に訪れ,3階建部分の全焼を概ね認めており,被告乙3は4階建部分の4階以外の全焼を概ね認めていた。被告乙1は,原告甲1の要請に対して,調査に訪れなかった。 (甲24の1,2)(イ) 原告甲1は,本件地震後,神戸市から,公衆浴場を再開して欲しい旨の要請を受けた。そこで,原告甲1は,本件1棟の建物に手を加え,公衆浴場を再開することとした。 (ウ) 原告甲1の妻V(以下「V」という。証人Vと同一人物)は,平成7年2月13日,り災場所等欄に「a町m丁目n-o」と書き,持家,住宅欄にチェックした上,公衆浴場の再開のためには,本件1棟の建物を解体せず,改築せざるを得ないと判断し,り災程度欄の半焼をチェックしたり災証明書の交付を受けた。 (丙13)(エ) 原告甲1は,公衆浴場の営業再開のための資金を捻出する目的で,平成7年3月24日,本件1棟の建物の各敷地を担保に供したが,その際,金融機関が,その土地上に本件1棟の建物が存在し,その旨の登記も存在したことから,それらについても担保に供するよう要請したの で,平成7年3月24日,本件1棟の建物の各敷地を担保に供したが,その際,金融機関が,その土地上に本件1棟の建物が存在し,その旨の登記も存在したことから,それらについても担保に供するよう要請したので,原告甲1はそれに応じた。 (甲14ないし23)(オ) 原告甲1は,平成7年7,8月頃,建築業者から,本件1棟の建物のコンクリートが燃えて,耐力が無くなったので,各部屋を補強する工事をする必要があると説明を受け,雨漏りもしていたので,同年11ないし12月頃まで,建物の補強工事,外装工事,内装工事をした。補強工事の代金としては,2000万円,外装工事,内装工事の代金としては,5000万円を要した。 (甲25)(カ) 原告甲1は,本件1棟の建物を取り壊し,平成12年7月に,その敷地に建物を新築した。 イ判断(ア) 前記認定の事実からすると,201号室の家財が全焼であったことは明らかである。そこで,以下,建物について検討する。 (イ) 被告乙1の火災共済契約における火災風水害等共済事業実施規則9条2項1号によると,契約物件の焼損率が70パーセント以上の場合を全焼ということ,焼損率は住宅の面積に対する被災面積の割合で決められるとされている(丙1)。 (ウ) 上記ア記載の認定事実からすると,本件1棟の建物を全体として見ると,平成12年7月に建物を新築する前までは,補修して使用されていたが,コンクリートが燃えたため,補強工事が必要で,補修費用全体としては7000万円を要したこと,その数年後本件1棟の建物は取り壊され,新築されたことからすると,上記補修によって,本件火災前の本件1棟の建物と同価値となったとは判断し難いこと,201号室の隣の202号室は全焼であって,4階建部分の4階以外は,被告乙3や被告乙2によって全焼 れたことからすると,上記補修によって,本件火災前の本件1棟の建物と同価値となったとは判断し難いこと,201号室の隣の202号室は全焼であって,4階建部分の4階以外は,被告乙3や被告乙2によって全焼と判断されたことからすると,201号室もその70パーセント以上が焼損し,全焼であったと推認するのが相当である。 もっとも,上記ア記載のとおり,Vは,り災場所等欄に「a町m丁目n-o」と記載された建物について,半焼とのり災証明しか得ていないが,それは,公衆浴場の早期再開のためには,本件1棟の建物を改築する他はないとの判断に基づくものと窺えることやVの判断が必ずしも上記規約の文言(全焼は焼損率70パーセント以上)を意識したものとも解されないことからすると,Vが半焼のり災証明を得たことは,上記認定を覆すに足りるものではない。 ウそうすると,原告甲1の201号室の建物部分の火災共済金額は当時の共済目的物の価値である1620万円,家財部分の火災共済金額は当時の共済目的物の価値である480万円となるから,原告甲1が受領を自認する120万円を控除すると,原告甲1の火災共済金の支払請求は,1980万円の限度で理由がある。 8 被告乙1に対する請求における遅延損害金について原告甲1は,火災共済金の付帯請求として,商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるところ,被告乙1の共済契約そのものは絶対的商行為に該当するものではない。また,商法上営業的商行為とされる保険は,営利保険を引き受ける契約をいうが,被告乙1の火災共済事業等は営利を目的とするものではないし,また,被告乙1は,上記共済契約を「営業として」行ったものではないから,営業的商行為とはいえない。更に,被告乙1は商法上商人であるということはできない。また,原告甲1が商人であっ するものではないし,また,被告乙1は,上記共済契約を「営業として」行ったものではないから,営業的商行為とはいえない。更に,被告乙1は商法上商人であるということはできない。また,原告甲1が商人であって,その営業のために上記火災共済契約を締結した旨の主張,立証もないから,上記共済契約を附属的商行為とみることもできない。 なお,原告甲1は,火災共済は実質上火災保険と同質であることを根拠に,保険に該当する旨主張する。しかし,共済と保険は,危険の分散との点においては共通するものの,前者は互助,後者は営利という異なる理念によって運営されている,異なる制度であり,火災共済事業を営利目的の保険と同視することはできない。 したがって,原告甲1の商事法定利率による遅延損害金の請求は理由がない。 9 別表2記載の原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2と被告会社らとの間の地震保険契約の成否(1) 同原告らは,地震保険は,火災保険契約時に地震保険意思確認欄に押印することによって,それを付帯しない旨の意思表示をしない限り,付帯される原則付帯方式が採られていることを前提とし,本件では,その旨の意思表示はない,その意思表示がある場合においても,それは,同被告会社らの情報提供の懈怠により,契約者が地震保険の存在を知らず,意味も分からないまま押印したに過ぎないから,その意思表示は錯誤無効となる旨主張した上,保険金額を制度上の上限である火災保険金額の50パーセントないし30パーセントとする地震保険契約が締結されたものと解すべきであると主張するので,以下検討する。 (2) 関連事実証拠(甲33,34,37ないし39,甲40の1ないし3,甲52,58ないし62,乙9の2,乙10ないし13,26ないし29,53)及び弁論の全趣旨によると,次の る。 (2) 関連事実証拠(甲33,34,37ないし39,甲40の1ないし3,甲52,58ないし62,乙9の2,乙10ないし13,26ないし29,53)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 ア昭和41年5月18日に地震保険が公布施行された当初は,地震保険を付帯できる保険としては,住宅総合保険及び店舗総合保険のみであって,それらの保険に加入することによって,自動的に地震保険にも加入することとされた。 昭和47年5月1日の改定において,地震保険を付帯しうる契約として,長期総合保険,建物更新保険が加えられたが,それらについては,自動付帯を原則とするが契約者又は被保険者に一定の事情がある場合には付帯しなくともよいとされる原則自動付帯の方式が採られた。 昭和50年4月1日の改定において,地震保険を付帯しうる契約として,更に,普通火災保険,住宅火災保険,月掛火災保険,団地保険,月掛団地保険,火災相互保険,満期戻長期保険が加えられたが,それらについては,任意付帯とすることとされた。 イこの時点で,地震保険の付帯方式は,住宅総合保険,店舗総合保険に対する自動付帯,長期総合保険等に対する原則自動付帯方式,普通火災保険等に対する任意付帯の3方式がとられたが,原則自動付帯,任意付帯にかかるものについては,契約者の選択制ということから地震保険付帯率は低く,契約件数も漸増に止まり,普及率の伸長が見られなかった。そこで,原則自動付帯,任意付帯方式にかかる契約の地震保険付帯については,契約者の意思をより明確に確認することによって,地震保険の契約漏れを防止する一方,災害時の保険金支払に当たって地震保険付帯の有無にかかるトラブルの事前防止を図ることとした。 そこで,昭和52年7月1日から,地震保険加入 ることによって,地震保険の契約漏れを防止する一方,災害時の保険金支払に当たって地震保険付帯の有無にかかるトラブルの事前防止を図ることとした。 そこで,昭和52年7月1日から,地震保険加入についての契約者の意思確認方法として,原則自動付帯ないし任意付帯とされている火災保険契約の申込書に地震保険意思確認欄を設け,付帯を希望しない契約者は,押印してもらう扱いとされた。 ウ昭和54年6月14日付保険審議会答申で,地震保険の引受方式に関し,その普及を目的に「家計火災保険のすべてに原則的に自動付帯する方式を採ることとすべきである」との答申がされ,これを受け,昭和55年法59号によって地震保険法が改正された。 エ被告会社らを含む損害保険各社は保険事業の免許を受けるために主務大臣に提出すべき事業方法書に「地震保険の元請け保険を地震保険に関する法律2条2項3号の規定に従い,普通火災保険(住宅火災保険も含む),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険又は団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者から地震保険を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」という趣旨の規定をし,損害保険各社は,統一的に火災保険契約書の申込書中に地震保険意思確認欄を設け,地震保険の付帯を希望しない保険契約者が押印するとの契約書式が採用された。 オ上記改正を審議した衆参両議院でその提案をした政府委員が,原則付帯方式に一本化すると説明したが,それに対し,保険料の負担を考えれば,契約者の意思確認や国民への地震保険の周知徹底が必要との意見も出された。また,昭和55年7月5日「損保企画」と題する雑誌の「地震保険改正について」と題する記事において,(前)銀行局保険第2課長は,答申の考え方は引受方法を原則自動付帯方式に一本化したものである旨の解説をし,そ 和55年7月5日「損保企画」と題する雑誌の「地震保険改正について」と題する記事において,(前)銀行局保険第2課長は,答申の考え方は引受方法を原則自動付帯方式に一本化したものである旨の解説をし,そのための法令上の措置は,火災保険事業方法書の改正により措置している旨解説した。 カ他方,地震保険法中に明文化されたのは,地震保険が特定の損害保険契約に付帯して締結されることに止まり,上記の一定の損害保険契約が締結された場合に地震保険の締結が擬制されると定めた規定はなく,同法で地震保険の保険金額は火災保険の30パーセント以上50パーセント以下と幅のあるものと定められた。 キ昭和55年の上記改正の際,衆参両院で,地震保険の加入並びにその付保割合及び付保金額は,契約者の意向を尊重し,強制に亘ることのないよう行政指導を万全にするとの付帯決議がされた。 ク同被告会社ら損害保険各社及び社団法人G協会は,代理店に対して,昭和55年の条規改正によって,地震保険は「すべて「原則付帯」一本となり,これは最終的に付帯するか否かの選択を契約者に委ねること」である旨説明した。 (3) これらの事実を踏まえると,確かに,昭和55年の地震保険の上記改正の際,立法を提案した大蔵省側は,地震保険の引受方式について,火災保険契約締結時に地震保険意思確認欄に押印する方法で,地震保険に加入しない特段の意思表示をしない限り地震保険が成立するという意味での原則自動付帯方式を目指したことは窺えるが,現に立法化された地震保険法にはその旨明定されておらず,地震保険は火災保険の内容によって保険金額及び保険料額が当然に定まるものとはされていないこと,地震保険意思確認欄の制度は任意付帯の際にも採用されていたことからすると,昭和55年の上記改正によって,上記の意味での原則自動付帯方式 て保険金額及び保険料額が当然に定まるものとはされていないこと,地震保険意思確認欄の制度は任意付帯の際にも採用されていたことからすると,昭和55年の上記改正によって,上記の意味での原則自動付帯方式は採用されなかったと解さざるをえず,地震保険契約が成立するためには,火災保険契約とは別に保険者と保険契約者の意思の合致が必要と解すべきである。 そうすると,前記認定の同原告らと被告会社らの火災保険契約締結前後の事実,特に,同原告らのうち,当時,地震保険契約を締結するという積極的意思を有した者はいなかったこと,地震保険意思確認欄への意思に基づく押印の有無を問わず,火災保険契約申込書ないし契約書には,地震保険契約の保険金や保険料の記載がないこと,同原告らのうち,地震保険料を支払った者はおらず,契約後に同原告らに火災保険契約のみが記載された保険証書が送付されたことからすると,同原告らと被告会社らとの間で,火災保険契約を締結する際に,地震保険契約を締結する意思の合致があったとは認められない。 よって,同原告らの地震保険金の請求には,理由がない。 10 被告会社らの損害賠償義務の有無(1) 原告らは,被告会社らは,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対して,信義則上の情報提供義務を負担しており,この説明義務の不履行をした事業者は,不十分または不実の情報提供による契約関係に入った消費者に対し,旧募取法16条1項,11条1項,不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失に基づき,損害賠償責任を負う,このような情報提供義務不履行による損害賠償責任は,ワラント取引,変額保険取引と同様保険契約においても妥当する,その根拠は,①事業者と消費者との間の情報量及びその分析能力の格差を理由とする消費者の自己決定権の保障及び私的自治の実質化,②事業者の は,ワラント取引,変額保険取引と同様保険契約においても妥当する,その根拠は,①事業者と消費者との間の情報量及びその分析能力の格差を理由とする消費者の自己決定権の保障及び私的自治の実質化,②事業者の責任,③旧募取法16条1項,④約款作成者の責任である,損害賠償の範囲は,権利外観法理と類似する考え方によって,火災保険金相当額であると主張する。 また,原告らは,被告会社らは,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に対して,信義則上,地震免責条項及び地震保険に関する情報提供義務を負担しているのに,その義務を懈怠し,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2の地震保険の付帯を妨げたことによって,同様に,地震保険金相当額の損害賠償義務を負う旨主張した上,その理論的根拠として,⑤保険契約申込者と保険会社側に,地震免責条項,地震保険の約款についての情報面の格差が著しいこと,⑥地震保険に関する情報の重要性,⑦地震保険制度の公共性,⑧損害保険会社は,地震保険引受に関して国民からの受託者的地位にあること,制度的根拠として,⑨地震保険意思確認欄制度が設けられていること,⑩原則付帯方式がとられていることを挙げる。 (2) 確かに,被告会社らは普通保険約款の作成者であって,その内容を熟知しており,事業者として,その内容を火災保険契約申込者である原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2に開示する社会的責任を負うものではあるが,他方,火災保険契約が普通保険約款に基づく附合契約であることは一般に知られていること,原告らが重大であると主張する保険金の支払に関する免責条項などの条項は地震免責条項以外にも多数あり,その全てを,保険契約締結前に,保険契約申込者に文書のみならず口頭も交え説明することを法的義務とするならば,取引を約款によって行う意義は低下すること,保険契約申込者側 は地震免責条項以外にも多数あり,その全てを,保険契約締結前に,保険契約申込者に文書のみならず口頭も交え説明することを法的義務とするならば,取引を約款によって行う意義は低下すること,保険契約申込者側も,約款による取引の利便性及びそれに基づく保険商品コストの削減の利益を享受していることを総合考慮すると,原告らの主張するように,被告会社らが,地震免責条項や地震保険について積極的に説明しなかったことのみから,直ちに不法行為などによって損害賠償義務を負うものとは解し難い。 もっとも,被告会社ら側が,積極的に保険契約者である原告らが火災保険契約が地震による火災も付保するものと誤解するような言辞を弄し,挙動を示し,あるいは,原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2が地震による火災も付保するものと誤解していることを知り,又は,これを容易に知りうるような事情がありながらそれを放置するなど,被告会社ら側に何らかの違法事由が認められる場合には,不法行為などによる損害賠償義務を負う余地があるが,本件において,前記認定した原告ら(原告甲2らは除く)及び亡甲2と被告会社らの火災保険契約締結前後の事実によると,そのような事情は窺えない。 したがって,火災保険金相当額の請求が可能か,あるいは地震保険の目的とならない物件についても地震保険金相当額の請求をなしうるかなどその余の点について判断するまでもなく,原告らのこの請求には理由がない。 (3) なお,原告らは,被告会社らの説明義務違反によって,地震保険加入についての意思決定の機会及び地震保険に加入していれば自己の財産の損害を担保することができた可能性という財産的利益を違法に侵害された旨も主張する。 しかし,上記のとおり,地震保険等を説明しなかったことのみで違法と判断することは困難であるから,原 の財産の損害を担保することができた可能性という財産的利益を違法に侵害された旨も主張する。 しかし,上記のとおり,地震保険等を説明しなかったことのみで違法と判断することは困難であるから,原告らのこの主張は採用しない。 (4) 更に,原告らは,地震保険に関する情報提供義務は法的な義務である旨主張し,情報提供義務違反のみで,損害賠償の原因となる旨主張する。 しかし,上記(2)のとおり,その見解は採用できない。 11 以上の次第で,原告甲1の請求は,被告乙1に対し,火災共済契約に基づき,金1980万円及びこれに対する請求の30日以降であることが明らかな平成7年6月1日から支払済に至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,同原告のその余の請求及び同原告を除く他の原告らの請求は,その余の点を検討するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,民事訴訟法61条,64条,65条1項を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部裁判長裁判官松村雅司裁判官水野有子裁判官増田純平

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