- 1 -平成24年3月7日判決言渡平成22年(ネ)第7078号残業代金等請求,残業代等請求控訴事件 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2(1) 1審被告は,1審原告Aに対し,356万9309円及び【別紙1-1-1】「未払残業代目録(原告A)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Aに対し,259万6023円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3(1) 1審被告は,1審原告Bに対し,247万5841円及び【別紙1-1-2】「未払残業代目録(原告B)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Bに対し,224万0622円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4(1) 1審被告は,1審原告Cに対し,312万1765円及び【別紙1-1-3】「未払残業代目録(原告C)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Cに対し,289万6152円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5(1) 1審被告は,1審原告Dに対し,106万0806円及び【別紙1-1-4】「未払残業代目録(原告D)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済み 1審被告は,1審原告Dに対し,106万0806円及び【別紙1-1-4】「未払残業代目録(原告D)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年- 2 -6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Dに対し,106万0806円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6(1) 1審被告は,1審原告Eに対し,158万9159円及び【別紙1-1-5】「未払残業代目録(原告E)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Eに対し,158万9159円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7(1) 1審被告は,1審原告Fに対し,249万7638円及び【別紙1-1-6】「未払残業代目録(原告F)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 1審被告は,1審原告Fに対し,226万9675円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 1審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 9 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を1審原告らの負担とし,その余を1審被告の負担とする。 本判決主文第2項(1),第3項(1),第4項(1),第5項(1),第6項(1),第7項(1)は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審被 第4項(1),第5項(1),第6項(1),第7項(1)は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審被告(1) 原判決中1審被告敗訴部分を取り消す。 (2) 上記部分につき1審原告らの請求をいずれも棄却する。 2 1審原告ら- 3 -(1) 原判決を次のとおり変更する。 ア(ア) 1審被告は,1審原告Aに対し,630万6417円及び【別紙2-1-1】「未払残業代請求目録(控訴人A)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (イ) 1審被告は,1審原告Aに対し,630万6417円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ(ア) 1審被告は,1審原告Bに対し,424万4598円及び【別紙2-1-2-②】「未払残業代請求目録(控訴人B)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (イ) 1審被告は,1審原告Bに対し,424万4598円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ(ア) 1審被告は,1審原告Cに対し,440万0088円及び 【別紙2-1-3】「未払残業代請求目録(控訴人C)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (イ) 1審被告は,1審原告Cに対し,440万0088円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員 欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (イ) 1審被告は,1審原告Cに対し,440万0088円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ(ア) 1審被告は,1審原告Dに対し,199万8546円及び【別紙2-1-4】「未払残業代請求目録(控訴人D)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 - 4 -(イ) 1審被告は,1審原告Dに対し,199万8546円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 オ(ア) 1審被告は,1審原告Eに対し,282万2703円及び【別紙2-1-5】「未払残業代請求目録(控訴人E)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (イ) 1審被告は,1審原告Eに対し,282万2703円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 カ(ア) 1審被告は,1審原告Fに対し,443万0873円及び【別紙2-1-6】「未払残業代請求目録(原告F)」の各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する同目録記載の各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (イ) 1審被告は,1審原告Fに対し,443万0873円及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 仮執行宣言第2 事案の概要 1 1審原告らは,1審被告に登録型派遣社員として雇用され,株式会社G(以下「G」という。)に添乗員として派遣され,Gが 年5分の割合による金員を支払え。 (2) 仮執行宣言第2 事案の概要 1 1審原告らは,1審被告に登録型派遣社員として雇用され,株式会社G(以下「G」という。)に添乗員として派遣され,Gが主催する募集型企画旅行の添乗業務(以下「本件添乗業務」ともいう。)に従事していた。 本件は,1審原告らが,本件添乗業務につき未払の時間外割増賃金等があると主張して,1審被告に対し,【別紙2-1-1~6】(ただし,【別紙2-1-2】については【別紙2-1-2-①】)の各「未払残業代請求目録」に記載された未払時間外割増賃金等及びこれに対する各支払期日の翌日から各支- 5 -払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,この未払時間外割増賃金等と同額の付加金及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1審被告は,本件添乗業務には労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの。以下「労基法」という。)38条の2が定める事業場外労働時間のみなし制の適用がある等と主張して,これを争った。 原審は,本件添乗業務には事業場外労働時間のみなし制の適用があるとした上,みなし労働時間を判定して,【別紙3】のとおり,1審原告らの請求を一部認容した。 1審原告ら及び1審被告は,原判決中それぞれの敗訴部分を不服として控訴した。ただし,1審原告Bは,請求額を【別紙2-1-2-②】「未払残業代請求目録(控訴人B)」記載のとおりに減縮した。 2 事案の概要の詳細は,後記3を加え,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」の2,3及び「第3 当事者らの主張」の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,引用部 ,後記3を加え,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」の2,3及び「第3 当事者らの主張」の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,引用部分中の「本件派遣先」をいずれも「G」と,「添乗員業務」をいずれも「添乗業務」と,「本件みなし制度」をいずれも「事業場外労働時間のみなし制」と,「労働基準法」をいずれも「労基法」とそれぞれ改める。 (1) 原判決7頁12行目の「なっており,」の次に「これが」を加える。 (2) 同14頁9行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。 「(4) 募集型企画旅行契約の内容等(乙8,9)国土交通省が旅行業法12条の3に基づいて公示している標準旅行業約款の募集型企画旅行契約の部には,以下の定めがあり,Gが標準旅行業約款に準拠して定める旅行業約款(募集型企画旅行契約の部)にも,同様の定めがある。 - 6 -(用語の定義)2条1項「この約款で「募集型企画旅行」とは,当社が,旅行者の募集のためにあらかじめ,旅行の目的地及び日程,旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が当社に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し,これにより実施する旅行をいいます。」(旅行契約の内容)3条「当社は,募集型企画旅行契約において,旅行者が当社の定める旅行日程に従って,運送・宿泊機関等の提供する運送,宿泊その他の旅行に関するサービス(以下「旅行サービス」といいます。)の提供を受けることができるように,手配し,旅程を管理することを引き受けます。」(契約書面の交付)9条1項「当社は,前条の定める契約の成立後速やかに,旅行者に,旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その ように,手配し,旅程を管理することを引き受けます。」(契約書面の交付)9条1項「当社は,前条の定める契約の成立後速やかに,旅行者に,旅行日程,旅行サービスの内容,旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面(以下「契約書面」といいます。)を交付します。 9条2項「当社が募集型企画旅行契約により手配し旅程を管理する義務を負う旅行サービスの範囲は,前項の契約書面に記載するところによります。」(契約内容の変更)13条「当社は,天災地変,戦乱,暴動,運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止,官公署の命令,当初の運行計画によらない運送サービスの提供その他の当社の関与し得ない事由が生じた場合において,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,旅行者にあらかじめ速やかに当該事由が関与し得ないものである理- 7 -由及び当該事由との因果関係を説明して,旅行日程,旅行サービスの内容その他の募集型企画旅行契約の内容(以下「契約内容」といいます。)を変更することがあります。ただし,緊急の場合において,やむを得ないときは,変更後に説明します。」(旅程管理)23条「当社は,旅行者の安全かつ円滑な旅行の実施を確保することに努力し,旅行者に対し次に掲げる業務を行います。ただし,当社が旅行者とこれと異なる特約を結んだ場合には,この限りではありません。 一旅行者が旅行中旅行サービスを受けることができないおそれがあると認められるときは,募集型企画旅行契約に従った旅行サービスの提供を確実に受けられるために必要な措置を講ずること。 二前号の措置を講じたにもかかわらず,契約内容を変更せざるを得ないときは,代替サービスの手配を行うこと,この際 従った旅行サービスの提供を確実に受けられるために必要な措置を講ずること。 二前号の措置を講じたにもかかわらず,契約内容を変更せざるを得ないときは,代替サービスの手配を行うこと,この際,旅行日程を変更するときは,変更後の旅行日程が当初の旅行日程の趣旨にかなうものとなるように努めること。また,旅行サービスの内容を変更するときは,変更後の旅行サービスが当初の旅行サービスと同様のものとなるよう努めること等,契約内容の変更を最小限にとどめるよう努力すること。」(添乗員等の業務)25条1項「当社は,旅行の内容により添乗員その他の者を同行させて第二十三条各号に掲げる業務その他当該募集型企画旅行に付随して当社が必要と認める業務の全部又は一部を行わせることがあります。」25条2項「前項の添乗員その他の者が同項の業務に従事する時間帯は,原則として八時から二十時までとします。」- 8 -(旅程保証)29条1項「当社は,別表第二上欄に掲げる契約内容の重要な変更(次の各号に掲げる変更(運送・宿泊機関等が当該旅行サービスの提供を行っているにもかかわらず,運送・宿泊機関等の座席,部屋その他の諸設備の不足が発生したことによるものを除きます。)を除きます。)が生じた場合は,旅行代金に同表下欄に記載する率を乗じた額以上の変更補償金を旅行終了日の翌日から起算して三十日以内に支払います。ただし,当該変更について当社に第二十七条第一項の規定に基づく責任が発生することが明らかである場合には,この限りではありません。 一次に掲げる事由による変更イ天災地変ロ戦乱ハ暴動ニ官公署の命令ホ運送・宿泊機関等の旅行サービ 。 一次に掲げる事由による変更イ天災地変ロ戦乱ハ暴動ニ官公署の命令ホ運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止ヘ当初の運行計画によらない運送サービスの提供ト旅行参加者の生命又は身体の安全確保のため必要な措置二第十六条から第十八条までの規定に基づいて募集型企画旅行契約が解除されたときの当該解除された部分に係る変更」(別表第二)上欄に掲げる変更補償金の支払いが必要となる事項「一契約書面に記載した旅行開始日又は旅行終了日の変更二契約書面に記載した入場する観光地又は観光施設(レストランを含みます。)その他の旅行の目的地の変更三契約書面に記載した運送機関の等級又は設備のより低い料金のも- 9 -のへの変更(変更後の等級及び設備の料金の合計額が契約書面に記載した等級及び設備のそれを下回った場合に限ります。)四契約書面に記載した運送機関の種類又は会社名の変更五契約書面に記載した本邦内の旅行開始地たる空港又は旅行終了地たる空港の異なる便への変更六契約書面に記載した本邦内と本邦外との間における直行便の乗継便又は経由便への変更七契約書面に記載した宿泊機関の種類又は名称の変更八契約書面に記載した宿泊機関の客室の種類,設備,景観その他の客室の条件の変更九 (記載省略)」(5) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣事業法」という。)の定め1審原告らは,1審被告からGに派遣されて添乗業務に従事したものであるところ,労働者派遣の場合,派遣先における業務の遂行に必要な限度で派遣 関する法律(以下「労働者派遣事業法」という。)の定め1審原告らは,1審被告からGに派遣されて添乗業務に従事したものであるところ,労働者派遣の場合,派遣先における業務の遂行に必要な限度で派遣中の労働者に対する指揮命令が派遣先に委ねられており,労働者派遣事業法42条は,派遣先に対し,派遣中の労働者に係る派遣就業をした日,派遣就業をした日ごとに始業し,及び終業した時刻並びに休憩した時間等の事項を記載した派遣先管理台帳の作成(同条1項)及びこれらの事項を派遣元事業主に通知すること(同条3項)を義務付けており,同法44条2項は,派遣中の労働者の派遣就業に関しては,派遣先の事業のみを,派遣中の労働者を使用する事業とみなして,休憩,休日,時間外労働等に関する労基法34条,35条,36条1項等を適用すると規定している。 しかし,同法37条(時間外,休日及び深夜の割増賃金),38条の2(事業場外労働時間のみなし制)は,労働者派遣事業法44条2項の特例の対象となっておらず,原則どおり派遣元の使用者に適用されるのである- 10 -から,休日,時間外労働等の有無やその時間は,派遣先であるGが把握して1審被告に通知し,その対価である割増賃金の支払義務は派遣元の使用者である1審被告が負う関係となる。」(3) 同16頁22行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。 「エ以上のとおり,1審原告らの添乗業務は,アイテナリー等の事前の具体的な旅程の指示があり,添乗マニュアルなどによって始業・就業の指示がなされ,旅程遂行中(添乗業務の遂行中)に添乗員に対する連絡・指示手段があり,事後の詳細な添乗日報の提出により具体的な労働遂行過程を報告しているのであるから,労働時間の算定は可能であり,始業時刻から終業時刻までの間の,休憩時間ないし非労働時間さえ特定でき ・指示手段があり,事後の詳細な添乗日報の提出により具体的な労働遂行過程を報告しているのであるから,労働時間の算定は可能であり,始業時刻から終業時刻までの間の,休憩時間ないし非労働時間さえ特定できれば(ただし,1審原告らは,添乗業務遂行中に休憩時間ないし非労働時間は存在しないと主張するものである。),労働時間の認定は極めて容易である。 そして,本件における1審原告らの労働時間は,1審原告Aにつき【別紙2-3-1】「時間外労働一覧(原告A)」記載のとおり,1審原告Bにつき【別紙2-3-2】「別紙未払残業代請求目録(月別)」記載のとおり,1審原告Cにつき【別紙2-3-3】「時間外労働一覧(原告C)」記載のとおり,1審原告Dにつき【別紙2-3-4】「別紙未払残業代請求目録(月別)」記載のとおり,1審原告Eにつき【別紙2-3-5】「時間外労働一覧(原告E)」記載のとおり,1審原告Fにつき【別紙2-3-6】「(別紙)時間外労働一覧(原告F)」記載のとおりである。」(4) 同22頁6行目の「被告会社は」を「ア 1審被告は」と改め,同頁13行目冒頭から16行目末尾までを次のとおり改める。 「 また,固定残業代制が適法と認められるためには,賃金のうち,割増賃金部分が明確に区別され,労基法所定の計算による金額がその額を上回る- 11 -ときはその差額を当該賃金支払期日に支払うことが使用者と労働者の間で合意されていなければならないが,本件においてはそのような合意は存在しない。」(5) 同22頁19行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。 「イそして,1審原告らの日当が8時間の所定労働時間の対価であることを前提とし,前記第2,2(1)エの労働時間により,各支払期日における未払残業代等を算出すると,1審原告A(なお,1審原告Aは早朝深 イそして,1審原告らの日当が8時間の所定労働時間の対価であることを前提とし,前記第2,2(1)エの労働時間により,各支払期日における未払残業代等を算出すると,1審原告A(なお,1審原告Aは早朝深夜割増賃金を請求しない。)につき【別紙2-1-1】「未払残業代請求目録(控訴人A)」記載のとおり,1審原告Bにつき【別紙2-1-2-②】「未払残業代請求目録(控訴人B)」記載のとおり,1審原告Cにつき【別紙2-1-3】「未払残業代請求目録(控訴人C)」記載のとおり,1審原告Dにつき【別紙2-1-4】「払残業代請求目録(控訴人D)」記載のとおり,1審原告Eにつき【別紙2-1-5】「未払残業代請求目録(控訴人E)」記載のとおり,1審原告Fにつき【別紙2-1-6】「未払残業代請求目録(控訴人F)」記載のとおりとなる。」 3 付加金について(1) 1審被告の主張ア仮執行の宣言に基づく給付1審被告は,平成22年10月4日,1審原告らに対し,原判決の仮執行の宣言に基づき,原判決主文において支払を命じられた未払賃金及びそれに対する年6分分の割合による遅延損害金を支払った。 イ付加金について(ア) 本件について,1審被告は,1審原告らが加入する組合から割増賃金の支払要求を受けたことから,事業場外労働時間のみなし制の適用の有無についての主張が対立しており,未払賃金の有無及び仮にそれが存在するとしてその金額を算定することが困難な状況ではあった- 12 -ものの,紛争解決のため,添乗員に対して一定額(日当を11.75で除して1時間の単価を出し,それに過去2年分の添乗日数を乗じた額)の支払を提示した。それに対し,1審原告らが加入している組合の当時の組合員25名中16名については1審被告の提案に応じ請求を取り下げることを明らかに 価を出し,それに過去2年分の添乗日数を乗じた額)の支払を提示した。それに対し,1審原告らが加入している組合の当時の組合員25名中16名については1審被告の提案に応じ請求を取り下げることを明らかにしたが,1審原告らがこれに応じなかったため,今日に至っているものである。1審被告としては,仮に1審被告に未払割増賃金債務があるのであれば,その支払を拒むものではない。添乗業務に事業場外労働時間のみなし制の適用があるか否かの解釈には争いがあるのであるから,1審被告が三田労働基準監督署による添乗業務には事業場外労働時間のみなし制を適用できない旨の指導に従わなかったことをもって,1審被告の対応が悪質であると評価されるものではない。 したがって,仮に1審被告に未払割増賃金債務が認められたとしても,本件事情の下において,1審被告に対して付加金の支払を命じることは相当ではない。 (イ) 裁判所が付加金の支払を命ずるには,口頭弁論終結時において割増賃金不払の事実が存在することが必要であると解されるところ,前記アのとおり,1審被告は1審原告らに対し原判決主文において支払を命じられた未払割増賃金及びそれに対する年6分の割合による遅延損害金を支払っているのであるから,付加金を付することはできない。 また,控訴審判決主文において支払を命じられる未払割増賃金及び遅延損害金の額が原判決主文において支払を命じられた額を上回る場合であっても,一審被告は,不足額の追加支払を拒むものではないのであるから,当該不足額について付加金を付することは相当でない。 ウ遅延損害金について前記アのとおり,原判決の仮執行宣言に基づく給付として,1審被告- 13 -が,平成22年10月4日,1審原告らに対し,原判決主文において支払を命じられた未払賃金及びそれ 損害金について前記アのとおり,原判決の仮執行宣言に基づく給付として,1審被告- 13 -が,平成22年10月4日,1審原告らに対し,原判決主文において支払を命じられた未払賃金及びそれに対する年6分の割合による遅延損害金を,各預金口座に振込送金して支払ったところ,1審原告らは,同月14日,1審被告に対し,受領を拒否する意思を明らかにした。 したがって,1審被告は,1審原告らが受領拒絶の意思表示をした同日以降債務不履行責任を免れたのであり,同日以降の遅延損害金の支払義務を負わない。 (2) 1審原告らの主張1審被告は,労働基準監督署による是正勧告に従わず,時間外割増賃金の支払を拒否しており,1審原告らによる付加金の請求は認められるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 1審原告らの添乗業務の内容について次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第4 争点に対する判断」の1に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,引用部分中の「本件派遣先」をいずれも「G」と改める。 (1) 原判決24頁5行目の「甲A49,」の次に「甲B3」を,「甲B48,」の次に「甲C2」を,「甲F32」の次に「乙8,9」をそれぞれ加える。 (2) 同25頁1行目の「(なお」から同頁2行目の「されていない。)」までを「。指示書には,旅行日程の記載があり,ツアー中の各日について,最初の出発場所と最終の到着場所,その間の運送機関と観光地及びそれぞれの出発時刻,到着時刻,所要時間等が記載されている」と改める。 (3) 同25頁19行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。 「 また,最終日程表には,発着地,交通機関,スケジュールの欄があり,ツアー中の各日について,最初の出発場所と最終の到着場所,その間の運 ) 同25頁19行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。 「 また,最終日程表には,発着地,交通機関,スケジュールの欄があり,ツアー中の各日について,最初の出発場所と最終の到着場所,その間の運送機関と観光地及びそれぞれの出発時刻,到着時刻,所要時間等が記載さ- 14 -れている。」(4) 同25頁22行目の「ツアーの催行時において,」の次に「天災地変,戦乱,暴動,運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止,官公署の命令等の主催旅行会社の関与し得ない事由が生じ,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときでなければ,」を加える。 (5) 同30頁15行目の「添乗員日報」を「添乗日報」と改め,同頁16行目末尾に「添乗日報については,最新の情報が得られ,次の添乗やコース作りの参考になるように,ツアー内容につき時間を含めて正確で詳細な記載が求められており,ツアー中の各日ごとに,旅程に沿って出発地,運送機関の発着地,観光地や観光施設,到着地について出発時刻,到着時刻を記載し,さらに食事の内容や各施設の状況等を記載するようになっていて,添乗日報の記載内容は,添乗員の旅程管理の状況を把握することができるものとなっている。」を加える。 (6) 同32頁9行目の「1時間半ほど前」を「の1時間半から1時間ほど前」と改める。 (7) 同34頁21行目の「記載がされ」から同頁22行目末尾までを「記載されており,到着時刻,出発時刻,所要時間等についての詳細な記載が求められている。」と改める。 (8) 同35頁21行目冒頭から同36頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「(4) 旅程等の変更について前提事実(4)のとおり,パンフレット及び最終日程表におけるツアーの旅行日程の記載のうち,旅行開始日や旅行終了日,観光地や観光施設 までを次のとおり改める。 「(4) 旅程等の変更について前提事実(4)のとおり,パンフレット及び最終日程表におけるツアーの旅行日程の記載のうち,旅行開始日や旅行終了日,観光地や観光施設(レストランを含む。)その他の旅行目的地,運送機関,宿泊機関等は,旅行主催会社(G)と参加者との間の契約に基づく旅程保証の対象となり,その変更は,原則として変更補償金の支払義務を発生させるものである。 - 15 -そのため,添乗員は,そのような変更が生じないように旅程管理することが義務付けられている。 一方,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,必要最小限において旅行日程を変更することがあり,この変更業務を添乗員が行うことがあるが,添乗員は,事故などの大きなトラブルのほか,旅程やホテルの変更等ツアー参加者との契約上問題となる変更,ツアー参加者からのクレームの対象となりそうな変更が必要となったときには,本件派遣先の営業担当者宛に報告し,指示を受けることが義務付けられており,携帯電話を所持しツアー開始後常時電源を入れておくよう求められている。」 2 本件添乗業務に対する事業場外労働時間のみなし制(労基法38条の2)の適用の可否について(1) 事業場外労働時間のみなし制について労基法38条の2第1項は,その本文で,労働者が事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときには,所定労働時間労働したものとみなす旨定め,そのただし書で,当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては,当該業務に関しては,厚生労働省令で定めるところにより,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす旨定めている(事業場外労働時間のみなし制)。 この制度は,労働者が いては,当該業務に関しては,厚生労働省令で定めるところにより,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす旨定めている(事業場外労働時間のみなし制)。 この制度は,労働者が事業場外で行う労働で,使用者の具体的な指揮監督が及ばないため,使用者による労働時間の把握が困難であり,実労働時間の算定が困難な場合に対処するために,実際の労働時間にできるだけ近づけた便宜的な労働時間の算定方法を定めるものであり,その限りで使用者に課されている労働時間の把握・算定義務を免除するものと解される。 そして,使用者は,雇用契約上,労働者を自らの指揮命令の下に就労さ- 16 -せることができ,かつ,労基法上,時間外労働に対する割増賃金支払義務を負う地位にあるのであるから,就労場所が事業場外であっても,原則として,労働者の労働時間を把握する義務を免れないのであり(労基法108条,同法規則54条参照),同法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」とは,当該業務の就労実態等の具体的事情を踏まえて,社会通念に従って判断すると,使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価され,客観的にみて労働時間を把握することが困難である例外的な場合をいうと解するのが相当である。 本件通達は,事業場外労働でも「労働時間を算定し難いとき」に当たらない場合についての,発出当時の社会状況を踏まえた例示であり,本件通達除外事例①②③に該当しない場合であっても,当該業務の就労実態等の具体的事情を踏まえ,社会通念に従って判断すれば,使用者の具体的な指揮監督が及ぶものと評価され,客観的にみて労働時間を把握・算定することが可能であると認められる場合には,事業場外労働時間のみなし制の適用はないというべきである。 また,前提事実(5)のとおり,1審原告らは, ものと評価され,客観的にみて労働時間を把握・算定することが可能であると認められる場合には,事業場外労働時間のみなし制の適用はないというべきである。 また,前提事実(5)のとおり,1審原告らは,1審被告からGに派遣されて添乗業務に従事したものであり,休日,時間外労働等の有無やその時間は,直接的には派遣先であるGが把握し,同社はこれを1審被告に通知する義務を負うのであるから,1審原告らの従事した添乗業務が労働時間を算定し難いものであるか否かは,1審原告らが添乗業務を遂行するに当たって派遣先であるGから受ける労働時間の管理に関する指揮監督の態様に基づいて判断されるべきものである。 以上の観点から,以下,本件添乗業務について,その労働時間が算定し難いものであるか否かを検討する。 (2) Gの具体的な指揮監督が及んでいるか否か前記認定のとおり,国内ツアーの場合,添乗員は,ツアー出発日前日,- 17 -1審被告の事業所に出社し,添乗業務書類(パンフレット,最終日程表,指示書,参加者名簿等)を受け取り,書類内容等の確認を行い,出発日当日は,ツアー参加者の集合時刻(バス利用の場合は出発時刻,鉄道利用の場合は列車出発時刻の30分前,航空機利用の場合は航空機出発時刻の50分前)の約30分前に集合場所に到着して各種の業務を開始し,その後上記添乗業務書類により指示されたツアーの旅程管理を行い,帰着後数日以内に,1審被告に出社して帰着報告を行い,その後,Gに対して添乗日報,アンケート等を提出する。 また,前記認定のとおり,海外ツアーの場合,添乗員は,ツアー出発の2日前に1審被告の事務所に出社し,添乗業務書類(パンフレット,最終日程表,アイテナリー,参加者名簿等)を受け取り,ランドオペレーターの担当者から最終手配内容の説明を受けるなどの打ち合わ アー出発の2日前に1審被告の事務所に出社し,添乗業務書類(パンフレット,最終日程表,アイテナリー,参加者名簿等)を受け取り,ランドオペレーターの担当者から最終手配内容の説明を受けるなどの打ち合わせをし,出発日当日は,ツアー参加者の空港集合時刻(通常,航空機の出発時刻の2時間前)の1時間前までに空港に到着して各種の業務を開始し,その後上記添乗業務書類により指示されたツアーの旅程管理を行い,帰国後3日以内に,1審被告の事務所に出社してツアーの報告を行い,その後,Gに添乗日報,アンケート等を提出する。 そして,前判示のとおり,募集型企画旅行契約においては最終日程表が契約内容となっており,旅行主催会社であるGは参加者に対し最終日程表に記載された旅行日程どおりの旅行サービスを提供する契約上の義務を負っているところ,最終日程表における旅行日程の記載のうち,旅行開始日や旅行終了日,観光地や観光施設(レストランを含む。)その他の旅行目的地,運送機関,宿泊機関等は,Gと参加者との間の契約に基づく旅程保証の対象となっており,その変更は,原則としてGに変更補償金の支払義務を発生させるものであるから,添乗員は,派遣先であるGに対し,そのような変更が生じないように旅程管理をする義務を負うものというべきで- 18 -ある。また,前判示のとおり,旅行主催会社であるGは,参加者との契約において,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,必要最小限において旅行日程を変更することができるものと定められており,この変更業務を添乗員が行うことがあるが,添乗員は,事故などの大きなトラブルのほか,旅程やホテルの変更等ツアー参加者との契約上問題となる変更,参加者からのクレームの対象となりそうな変更が必要となったときには,本件派遣先であるGの営業担当者宛に報告 事故などの大きなトラブルのほか,旅程やホテルの変更等ツアー参加者との契約上問題となる変更,参加者からのクレームの対象となりそうな変更が必要となったときには,本件派遣先であるGの営業担当者宛に報告し,指示を受けることが義務付けられており,携帯電話を所持してツアー開始後常時電源を入れておくよう求められているのである。 ところで,最終日程表,指示書,アイテナリー(以下,これらを併せて「指示書等」という。)に記載された旅行日程における出発地,運送機関の発着地,観光地や観光施設,到着地についての出発時刻,到着時刻等は,当該ツアー当日の天候,道路の渋滞状況,列車や航空機の運航状況,参加者の状況等の様々な要素によって変わり得るものであり,また,前判示のように旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,必要最小限において旅行日程を変更することもあることから,指示書等の記載は確定的なものではなく,合理的な理由による変更可能性を有するものというべきである。しかし,指示書等は,募集型企画旅行契約に基づき参加者に対して最終日程表に記載された旅行日程どおりの旅行サービスを提供する義務を負っている旅行主催会社であるGが,その義務を履行するために,添乗員に対して最終日程表に記載された旅行日程に沿った旅程管理をするよう業務指示を記載した文書であるものと認めるのが相当であって,上記変更可能性を有するからといって指示書等の添乗員に対する拘束力そのものが否定されるべきものではないことは明らかである。そして,添乗員は,派遣先であるGに対し,指示書等の旅行日程における出発時刻,到着時刻,滞在時間等に関する記載を指針にして,ツアーごとの具体的な事情を考慮- 19 -しながら,その記載に沿った旅程管理をする義務を負うものであり,その記載は,業務指示として添乗員 出発時刻,到着時刻,滞在時間等に関する記載を指針にして,ツアーごとの具体的な事情を考慮- 19 -しながら,その記載に沿った旅程管理をする義務を負うものであり,その記載は,業務指示として添乗員にこのような義務を負わせるものということができる上,添乗員は,事故などの大きなトラブルのほか,旅程やホテルの変更等ツアー参加者との契約上問題となる変更,参加者からのクレームの対象となりそうな変更が必要となったときには,派遣先であるGの営業担当者宛に報告し,指示を受けることが義務付けられ,携帯電話を所持し常時電源を入れておくよう求められているのであるから,このような旅程管理上重要な問題については,派遣先であり旅行主催会社であるGが添乗業務中の個々の添乗員に対し報告を求め,個別の指示まで行うことができる仕組みが整えられているのである。 そして,前判示のとおり,添乗員が作成してツアー終了後に派遣先のGに提出する添乗日報は,出発地,運送機関の発着地,観光地や観光施設,到着地についての出発時刻,到着時刻等を正確かつ詳細に記載し,当該旅程に関する最新の情報を提供することが求められ,添乗員は同社に対しこれを正確かつ詳細に記載する義務を負うものであり,本件各ツアーについて1審原告らが作成した添乗日報(甲A,甲B,甲C,甲D,甲E,甲F中の添乗日報)にも,ツアー中の各日ごとに,出発から到着までの旅程に沿って,出発地,運送機関の発着地,観光地や観光施設,到着地,宿泊機関等について出発時刻,到着時刻,所要時間が記載され,さらに食事の内容等に関しても詳細な記載がされており,1審原告らが行った旅程管理の状況が把握できる内容となっている。 そうすると,本件添乗業務においては,指示書等により旅行主催会社であるGから添乗員である1審原告らに対し旅程管理に関する具体的な り,1審原告らが行った旅程管理の状況が把握できる内容となっている。 そうすると,本件添乗業務においては,指示書等により旅行主催会社であるGから添乗員である1審原告らに対し旅程管理に関する具体的な業務指示がなされ,1審原告らは,これに基づいて業務を遂行する義務を負い,携帯電話を所持して常時電源を入れておくよう求められて,旅程管理上重要な問題が発生したときには,Gに報告し,個別の指示を受ける仕組みが- 20 -整えられており,実際に遂行した業務内容について,添乗日報に,出発地,運送機関の発着地,観光地や観光施設,到着地についての出発時刻,到着時刻等を正確かつ詳細に記載して提出し報告することが義務付けられているものと認められ,このような1審原告らの本件添乗業務の就労実態等の具体的事情を踏まえて,社会通念に従って判断すると,1審原告らの本件添乗業務にはGの具体的な指揮監督が及んでいると認めるのが相当である。 これに対し,1審被告は,指示書等における旅行日程の記載は参考程度のものであり,添乗員はその記載内容に拘束されない旨主張するが,旅行主催会社であるGは,募集型企画旅行契約に基づき参加者に対して最終日程表に記載された旅行日程どおりの旅行サービスを提供する義務を負っており,その義務を履行するために,添乗員に対して最終日程表に記載された旅行日程に沿った旅程管理をするよう業務指示を記載した文書として指示書等を交付していること,指示書等に記載された旅行日程は合理的な理由による変更可能性を有するものであるが,そのことによって指示書等の記載内容の業務指示としての拘束力そのものが否定されるものではないことなど前判示の各点に照らせば,1審被告の主張は採用することができない。 (3) 「労働時間を算定し難いとき」に当たるか否かア労働者が事業場 示としての拘束力そのものが否定されるものではないことなど前判示の各点に照らせば,1審被告の主張は採用することができない。 (3) 「労働時間を算定し難いとき」に当たるか否かア労働者が事業場外で行う労働で,使用者の具体的な指揮監督が及ばないため,使用者による労働時間の把握が困難であり,実労働時間の算定が困難な場合に対処するために事業場外労働時間のみなし制を設けたという制度趣旨に照らすと,使用者の具体的な指揮監督が及んでいない場合については,従業員の自己申告があれば労働時間の算定が可能であるとして労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとするのは,その趣旨に反するものというべきである。 - 21 -しかし,本件添乗業務においては,指示書等により旅行主催会社であり派遣先であるGから添乗員である1審原告らに対し旅程管理に関する具体的な業務指示があり,1審原告らはこれに基づいて業務を遂行する義務を負い,携帯電話を所持して常時電源を入れておくよう求められて,旅程管理上重要な問題が発生したときには,Gに報告し,個別の指示を受ける仕組みが整えられ,実際に遂行した業務内容について,添乗日報に,出発地,運送機関の発着地,観光地や観光施設,到着地についての出発時刻,到着時刻等を正確かつ詳細に記載して提出し報告することを義務付けられており,1審原告らに対しGの具体的な指揮監督が及んでいると認められることは前判示のとおりである。 そして,前判示の事業場外労働時間のみなし制を設けた趣旨に照らすと,このようにGの具体的な指揮監督が及んでいるのであれば,労働時間を算定するために補充的に自己申告たる性質を有する添乗日報を用いる必要があったとしても,そのことをもって直ちに労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」 及んでいるのであれば,労働時間を算定するために補充的に自己申告たる性質を有する添乗日報を用いる必要があったとしても,そのことをもって直ちに労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たると解するのは相当でなく,Gによる時間管理に関する指揮監督の態様を考慮した上,Gが補充的に自己申告たる性質を有する添乗日報をも用いて添乗員の添乗業務に関する労働時間を把握するについて,その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難とは認められないのであれば,労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるものではないと解するのが相当である。 これに対し,1審被告は,昭和62年9月に行われた参議院社会労働委員会における答弁(乙4)に照らせば,労働時間の算定に当たって自己申告である添乗日報が考慮される必要がある場合には「労働時間を算定し難いとき」に当たるとするのが立法者意思であった旨主張するようである。 - 22 -しかし,上記答弁は,これをもって,労働者に使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合においても,労働時間の算定に当たって自己申告をも考慮される必要がある場合にはすべて「労働時間を算定し難いとき」に当たるとするのが立法者意思であったとまでは認めることはできず,前記判断を左右するに足りない。 イそこで,Gによる時間管理に関する指揮監督の態様を考慮した上,Gが補充的に添乗日報の記載を利用して添乗員の添乗業務に関する労働時間を把握するについて,その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難であると認められるか否かを検討する。 前判示の事実を総合すると,本件添乗業務において,Gは,添乗員に対し,指示書等により旅程管理についての具体的な業務指示をし,これに従って添乗員が実際に行った旅程管理の状況について出発時 検討する。 前判示の事実を総合すると,本件添乗業務において,Gは,添乗員に対し,指示書等により旅程管理についての具体的な業務指示をし,これに従って添乗員が実際に行った旅程管理の状況について出発時刻,到着時刻等を詳細かつ正確に記載した添乗日報を作成して報告することを求め,添乗員は,指示書等によって示されたGの具体的な業務指示に従って旅程管理を行う義務を負い,携帯電話を所持して常時電源を入れておくよう求められて,旅程管理上重要な問題が発生したときには,Gに報告し,個別の指示を受ける仕組みが整えられており,実際に行った旅程管理の状況を正確かつ詳細に添乗日報に記載してGに提出することを義務付けられているものであるところ,添乗日報の記載には,後記のように,指示書等と対照して労働時間を正確かつ公正に算定するに足りる信用性を裏付ける客観的な状況があり,実際に証拠として提出されている添乗日報の記載の信用性を疑わせるような事情も認められないのである。 以上の点に,添乗員は,実際にツアー参加者に対する説明,案内等の実作業に従事している時間はもちろん,実作業に従事していない時間であっても,ツアー参加者から質問,要望等のあることが予想される状況- 23 -下にある時間については,これに対応できるようにする労働契約上の役務の提供を義務付けられており,そのような時間も労基法上の労働時間に含まれることなど後記3判示の本件添乗業務における労働時間の内容を総合すれば,Gは,指示書等に記載された具体的な業務指示の内容を前提にして,実際に行われた旅程管理の状況についての添乗日報の記載を補充的に用いることにより,本件添乗業務についての添乗員の労働時間を把握するについて,その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難であるとは認められないというべきである。 添乗日報の記載を補充的に用いることにより,本件添乗業務についての添乗員の労働時間を把握するについて,その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難であるとは認められないというべきである。 すなわち,前判示のとおり,添乗日報は,指示書等によって予めGから示された具体的な業務指示に従って実際に行った旅程管理の状況について作成されるものであり,旅程管理の実施の際に指示書等記載の旅程について合理的な理由に基づく変更が加えられることがあって,添乗日報の記載の方が詳細であることが多いとはいえ,その記載内容の合理性については指示書等の記載と対照することで相当程度判断できるものと認められる。その上,各ツアーの出発時刻,到着時刻は,いずれの運送機関を利用する場合でも客観的に把握できる性質のものであり,しかも,添乗員は,出発から到着まで旅程中,ほとんどの時間においてツアー参加者と行動を供にし,運送機関,観光地や観光施設,宿泊施設等において乗務員,店員,フロントの係員と接触しながら移動しているため,添乗員の旅程管理については多くの現認者が存在するのであって,虚偽の記載をした場合にはそれが発覚する可能性が高く,また,Gにおいて記載内容の合理性に疑問をもった場合,添乗員に問い質すほか,これらの者や施設に確認することも可能であると認められる。さらに,添乗員が指示書等により業務指示を受けた最終日程表に記載された旅行日程を合理的な理由なしに実施せずに,これを実施した旨の虚偽の記載をした場合には,参加者が契約の不履行であるとして旅行主催会社であるGに苦- 24 -情を申し出たり,アンケートに記載する可能性が高いところ,Gは添乗員が参加者から回収したアンケートを添乗日報とともに提出させているのである。そして,上記の各旅行日程は,旅行主催会社であるGの参加 -情を申し出たり,アンケートに記載する可能性が高いところ,Gは添乗員が参加者から回収したアンケートを添乗日報とともに提出させているのである。そして,上記の各旅行日程は,旅行主催会社であるGの参加者に対する契約上の義務履行の内容を成すものであるから,Gは,上記義務履行に遺漏なきを期し,参加者に質の良いサービスを提供するためにも,その履行内容としての添乗員による旅程管理の正確かつ詳細な実施状況を把握する必要性が高いことからすれば,その把握に日常努力を払っているものと推認されるのである。 もっとも,添乗日報に記載された出発時刻,到着時刻等は指示書等に記載された出発時刻,到着時刻等と完全には一致しない場合があることが認められるものの,前判示のとおり,指示書等に記載されたこれらの時刻は,当該ツアー当日の天候,道路の渋滞状況,列車や航空機の運航状況,参加者の状況等の様々な要素によって変わり得るものであり,また,旅行の安全かつ円滑な実施を図るためやむを得ないときは,必要最小限において旅行日程を変更することもあることから,合理的な理由による変更可能性を有するものであることに照らすと,上記不一致をもって,直ちに添乗日報の記載そのものの正確性,信用性が失われるものではない。 また,1審原告らが作成した本件各ツアーに係る添乗日報には,宿泊施設で夕食をとる場合の会食の開始時刻,終了時刻や外で夕食をとった後の宿泊施設への帰着時刻等の記載が漏れている例も認められるが,指示書等の記載と対照すればこれらの時刻を相当程度把握することができ,しかも,業務上の指示により添乗日報に上記時刻の記載を徹底させることが困難であるとは認められないのであるから,この記載漏れをもって,添乗日報が添乗員の労働時間を把握するについて補助的に利用する資料として不適格であるとい より添乗日報に上記時刻の記載を徹底させることが困難であるとは認められないのであるから,この記載漏れをもって,添乗日報が添乗員の労働時間を把握するについて補助的に利用する資料として不適格であるということはできない。 - 25 -そうすると,派遣先であるGの具体的な指揮監督が及んでいる1審原告らの本件添乗業務について,このような状況下で作成される添乗日報における到着時刻や出発時刻等の記載には,指示書等と対照して労働時間を正確かつ公正に算定するに足りる信用性を裏付ける客観的な状況があるというべきであり,1審原告らが作成した本件各ツアーに係る添乗日報の記載についても,その信用性を疑わせるような事情は認められない。 以上の点に,添乗員は,実際にツアー参加者に対する説明,案内等の実作業に従事している時間はもちろん,実作業に従事していない時間であっても,ツアー参加者から質問,要望等のあることが予想される状況下にある時間については,これに対応できるようにする労働契約上の役務の提供を義務付けられており,そのような時間も労基法上の労働時間に含まれることなど後記3判示の本件添乗業務における労働時間の内容を総合すれば,本件添乗業務において,Gは,指示書等に記載された具体的な業務指示の内容を前提にして,実際に行われた旅程管理の状況についての添乗日報の記載を補充的に用いることにより,本件添乗業務についての添乗員の労働時間を把握するについて,その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難であるとは認められないというべきである。 したがって,本件添乗業務について,労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとは認められず,本件添乗業務に事業場外労働時間のみなし制の適用はないと解するのが相当である。 3 労働時間の算定(1) 労 て,労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとは認められず,本件添乗業務に事業場外労働時間のみなし制の適用はないと解するのが相当である。 3 労働時間の算定(1) 労働時間について労基法32条の労働時間とは,労働者が使用者(本件では派遣先であるG。以下同じ。)の指揮命令下に置かれている時間をいい(最高裁平成1- 26 -2年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁),労働者が実作業に従事していない時間であっても,労働契約上の役務の提供を義務付けられていると評価される場合には,使用者の指揮命令下に置かれているものであって,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができると解するのが相当である(最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決・民集56巻2号361頁)。 前記認定の本件添乗業務の内容によれば,添乗員は,実際にツアー参加者に対する説明,案内等の実作業に従事している時間はもちろん,実作業に従事していない時間であっても,ツアー参加者から質問,要望等のあることが予想される状況下にある時間については,ツアー参加者からの質問,要望等に対応できるようにしていることが労働契約上求められているのであるから,そのような時間については,労働契約上の役務の提供を義務付けられているものであって,労働からの解放が保障されておらず,労基法上の労働時間に含まれると解するのが相当である。 そうすると,前記認定の事実関係に照らせば,本件添乗業務における添乗員の労働時間については,その認定を覆すに足りる事情のない限り,以下のとおりと認められる。 ア就労開始時刻(ア) ツアー出発日a 海外ツアーの場合集合時刻の1時 における添乗員の労働時間については,その認定を覆すに足りる事情のない限り,以下のとおりと認められる。 ア就労開始時刻(ア) ツアー出発日a 海外ツアーの場合集合時刻の1時間前集合時刻が明らかでない場合航空機出発時刻の3時間前(集合時刻は航空機出発時刻の2時間前)b 国内ツアーの場合- 27 -(a) バス利用の場合出発時刻の30分前(集合時刻は出発時刻)(b) 鉄道利用の場合出発時刻の1時間前(集合時刻は出発時刻の30分前)(c) 航空機利用の場合出発時刻の1時間20分前(集合時刻は出発時刻の50分前)(イ) 滞在期間中(自由行動日を除く。)及びツアー終了日a 海外ツアーの場合(a) 連泊でない場合出発時刻の1時間前(b) 連泊の場合出発時刻の30分前b 国内ツアーの場合(a) 連泊でない場合出発時刻の30分前(b) 連泊の場合出発時刻の15分前イ就労終了時刻(ア) 滞在期間中(自由行動日を除く。)a 海外ツアーの場合(a) ホテル到着後,特段の日程のない場合ⅰ 連泊でない場合到着時刻の1時間後ⅱ 連泊の場合到着時刻(b) ホテル到着後,添乗員が同伴する日程が組まれている場合ⅰ ホテルでの夕食の場合夕食終了時刻夕食終了時刻が明らかでない場合夕食開始時刻の1時間後夕食開始時刻が明らかでない場合 夕食終了時刻夕食終了時刻が明らかでない場合夕食開始時刻の1時間後夕食開始時刻が明らかでない場合連泊でない場合ホテル到着時刻の1時間30分後- 28 -連泊の場合ホテル到着時刻の1時間後ⅱ ホテル外における日程が組まれている場合ホテル到着時刻ホテル到着時刻が明らかでない場合当該日程の終了時刻当該日程の終了時刻が明らかでない場合当該日程の開始時刻の1時間後b 国内ツアーの場合(a) ホテル到着後,特段の日程のない場合ⅰ 連泊でない場合ホテル到着時刻の15分後ⅱ 連泊の場合ホテル到着時刻(b) ホテル到着後,添乗員の同伴する日程が組まれている場合ⅰ ホテルでの夕食の場合夕食終了時刻夕食終了時刻が明らかでない場合夕食開始時刻の1時間後夕食開始時刻が明らかでない場合連泊でない場合ホテル到着時刻の1時間15分後連泊の場合ホテル到着時刻の1時間後ⅱ ホテル外における日程が組まれている場合ホテル到着時刻ホテル到着時刻が明らかでない場合当該日程の終了時刻当該日程の終了時刻が明らかでない場合当該日程の開始時刻の1時間後(イ) ツアー終了日- 29 -a 海外ツアーの場合成田空港到着の1時間後b 国内ツアーの場合到着時刻の15分後ウ運送機関を利用した移動中における 該日程の開始時刻の1時間後(イ) ツアー終了日- 29 -a 海外ツアーの場合成田空港到着の1時間後b 国内ツアーの場合到着時刻の15分後ウ運送機関を利用した移動中における労働時間について(ア) 航空機による移動の場合航空機には客室乗務員が乗務しており,ツアー参加者を含めた乗客に対するサービスの提供は客室乗務員が行うものであり,航空安全・保安の観点から機内での立ち歩きは控えるよう求められていること(甲35の3,証人H(原審))に加え,出発直後及び到着直前にはツアー参加者に対する行動予定の告知,出入国手続に関連する出入国カードの記載方法や手荷物受取り等に関する質問への対応等の作業が想定されるが,それ以外の時間については添乗員が行うべき作業をする必要性が皆無に等しく実質的に上記のような義務付けがされていないと認められることを総合考慮すると,航空機による移動中の以下の時間については,添乗員に労働契約上の役務の提供が義務付けられているとはいえず,下記abの時間は労基法上の労働時間と認めることはできない。 a 乗継空港のない場合出発空港出発時刻の1時間後から到着空港到着時刻の1時間前までb 乗継空港のある場合(a) 出発空港出発時刻の1時間後から乗継空港到着時刻の30分前まで(b) 乗継空港出発時刻の30分後から到着空港到着時刻の1時間前まで(イ) 鉄道・船舶による移動の場合a 就寝時間帯が含まれていない場合- 30 -鉄道・船舶による移動の場合,ツアー参加者からの要望に対応するのは添乗員であり,ツアー参加者が活動している時間帯については,ツアー参加者からの質問や要望に答える作業をする必要性が皆無に等しく実質的に上記のような義務付けがされてい ー参加者からの要望に対応するのは添乗員であり,ツアー参加者が活動している時間帯については,ツアー参加者からの質問や要望に答える作業をする必要性が皆無に等しく実質的に上記のような義務付けがされていないとは認められないから,添乗員に労働契約上の役務の提供としてツアー参加者への対応が義務付けられているというべきであり,全ての移動時間が労基法上の労働時間と認められる。 b 就寝時間帯が含まれる場合ツアー参加者が就寝している時間帯については,ツアー参加者からの質問や要望がほとんどない状況にあると認められるから,添乗員に労働契約上の役務の提供としてツアー参加者への対応など添乗員が行うべき作業をする必要性が皆無に等しく実質的に上記のような義務付けがされていないと認められるのであるから,以下の時間については,労基法上の労働時間と認めることはできない。 出発時刻の1時間後から到着時刻の1時間前まで(ウ) バスによる移動の場合バスによる移動の場合,ツアー参加者からの要望に対応するのは添乗員である上,Gの「募集型企画旅行商品の品質ガイドライン」(甲31)には「5-1 バスの安全運行に関する添乗員の注意義務」として,交通規則の遵守と安全運転の励行を確認,注意などが記載されているように,添乗員にはドライバーの運転にも注意を払うことが求められている(甲30,31)のであるから,バスによる移動の時間については,添乗員に労働契約上の役務の提供が義務付けられているというべきであり,全ての移動時間が労基法上の労働時間と認められる。 エ休憩時間について- 31 -(ア) 添乗員が同伴する食事時間については,添乗員は,ツアー参加者の食事の注文や代金の支払の手助けをするほか,ツアー参加者の動静に注意を払っていることが求められており について- 31 -(ア) 添乗員が同伴する食事時間については,添乗員は,ツアー参加者の食事の注文や代金の支払の手助けをするほか,ツアー参加者の動静に注意を払っていることが求められており,添乗員に労働契約上の役務の提供が義務付けられているというべきであるから,労基法上の労働時間と認められる。 (イ) 前提事実(1)(2)のとおり,1審被告の派遣従業員就業規則(乙1,23,24)には,就業時間及び休憩時間は,労基法32条,32条の2ないし4,34条によるものとし,始業時刻,終業時刻,休憩時間の配置については,派遣先の事業所の事情を勘案し,個別契約(就業条件明示書)の定めるところによる旨の定めがあり,1審被告が添乗員に対して交付する派遣条件明示書には,実際の始業・終業・休憩時間については派遣先の定めによる旨記載されていた。これらの規定によると,添乗員は,1審被告との契約上は,労基法に定められた休憩時間をとることができる旨の就業規則の定めのあることが認められる。 しかし,1審被告の就業規則も,休憩時間について,派遣先との個別契約の定めるところによるとの規定があり,1審被告が添乗員に対して交付する派遣条件明示書でも,休憩時間については派遣先の定めによるとの規定があるところ,前判示のとおり,1審原告らは,派遣先であり旅行主催会社であるGに対しては,添乗業務として,ツアー参加者に同行して旅程管理を行う義務を負うものであるため,同行中の時間は,実際にツアー参加者に対する説明,案内等の作業に従事している時間はもちろん,そうでない時間であっても,ツアー参加者から質問,要望等のあることが予想される状況下にある時間帯については,ツアー参加者からの質問,要望等に対応する義務を負っているものと認められるのであるから,Gにおいて,ツア であっても,ツアー参加者から質問,要望等のあることが予想される状況下にある時間帯については,ツアー参加者からの質問,要望等に対応する義務を負っているものと認められるのであるから,Gにおいて,ツアー参加者との関係で- 32 -添乗員の休憩時間を保障する措置が執られていなければ,添乗員が労働からの解放が保障された休憩時間を取っていたと認めることはできない。 そして,前提事実(4)のとおり,Gが定める旅行業約款(募集型企画旅行契約の部)(乙9)には,「添乗員等の業務」につき,「業務に従事する時間帯は,原則として8時から20時までとします。」と定められ(25条2項),Gからツアー参加者に渡される「海外旅行出発までのご案内とご注意」(乙10)には,「ご旅行条件書」として,「添乗員の業務」につき「業務に従事する時間帯は,原則として8時から20時までとします。」と記載されており(17の(4)),これらの記載によれば,参加者と旅行主催会社であるGとの間の契約では,参加者は添乗員が同行している限り上記の時間帯の全てについて添乗サービスを求めることができる旨の約定がなされているものというべきであるから,添乗員はツアー参加者との関係で休憩時間を保障されているとはいえないのであり,添乗員自らがツアー参加者に対して明示又は黙示に休憩時間をとることを伝えて休憩時間を取ったというような特別の事情がない限り,休憩時間があったと認めることはできない。 オ自由行動時間について(ア) 自由行動時間について,1審被告の「国内添乗マニュアル〈基礎編〉」(甲26)には,「(5)自由行動(自由散策)」として「お客様の自由行動の時間は,添乗員にとっての自由行動の時間では決してありません。」と,社団法人I協会の「派遣添乗員の基礎教本」(甲63)には,「 甲26)には,「(5)自由行動(自由散策)」として「お客様の自由行動の時間は,添乗員にとっての自由行動の時間では決してありません。」と,社団法人I協会の「派遣添乗員の基礎教本」(甲63)には,「9 自由行動」として「この時間は,添乗員にとっては自由行動時間ではありませんので,お客様の行動を把握し,状況により適宜対応が出来るようにしておきます。」「〈自由行動中の添乗員- 33 -の役割と留意事項〉・時間を有意義に過ごせるように観光情報の提供をする。・自由行動中の事故を未然に防ぐため,注意事項を徹底する。 ・緊急時の連絡のとり方を必ず伝えておく。・特定のお客様と行動を共にしない。」と記載されており,添乗員には労働契約上の役務の提供が義務付けられていると認められるのであるから,自由行動時間についても労基法上の労働時間と認められる。 (イ) 添乗員がツアー参加者に同行することのない終日自由行動日であっても,前記(ア)と同様に,添乗員にとっての自由行動日ではなく,添乗員には,ツアー参加者の行動を把握し,状況により適宜対応が出来るようにしておくことが求められているのであるから,所定労働時間(8時間)については,添乗員に労働契約上の役務の提供が義務付けられていると認められる。そして,前判示のとおり,添乗員の業務に従事する時間帯が原則として8時から20時までとされていることに照らすと,終日自由行動日については,始業時刻9時,終業時刻18時,休憩時間1時間として,8時間を労基法上の労働時間と認めるのが相当である。 (ウ) 乗継空港での自由行動時間についても,前記(ア)と同様に,添乗員に労働契約上の役務の提供が義務付けられており,労基法上の労働時間と認められる。 (2) 1審原告らの労働時間本件における1 審原告らの労働時間について,上 ても,前記(ア)と同様に,添乗員に労働契約上の役務の提供が義務付けられており,労基法上の労働時間と認められる。 (2) 1審原告らの労働時間本件における1 審原告らの労働時間について,上記(1)の認定と異なる認定をすべき事情は認めるに足りないのであるから,1審原告らの主張する労働時間のうち,上記(1)により認められる労働時間は,1審原告Aにつき【別紙1-3-1】「労働時間等一覧(原告A)」記載のとおり,1審原告Bにつき【別紙1-3-2】「労働時間等一覧(原告B)」記載のとおり,1審原告Cにつき【別紙1-3-3】「労働時間等一覧(原告C)」- 34 -記載のとおり,1審原告Dにつき【別紙1-3-4】「労働時間等一覧(原告D)」記載のとおり,1審原告Eにつき【別紙1-3-5】「労働時間等一覧(原告E)」記載のとおり,1審原告Fにつき【別紙1-3-6】「労働時間等一覧(原告F)」記載のとおりである。 4 時間外割増賃金等の算定(1) 算定基礎賃金額について1審被告は,派遣条件明示書には,1日の労働時間は「午前8時から午後8時まで」の11時間(所定労働時間8時間+所定時間外労働3時間+休憩1時間)である旨記載されており,日当は,この11時間に対する対価として支払われていた旨主張する。 ところで,本件における添乗員の賃金は,日当として定額で支払われているところ,これに時間外割増賃金が含まれているというためには,まず,所定労働時間8時間に対する賃金部分と所定時間外労働に対する割増賃金部分が明確に区別されていなければならない。 しかしながら,前判示のとおり,1 審被告の就業規則の労働時間及び休憩時間に関する規定は,抽象的に労基法の該当条文を引用するだけのものであり,就業条件明示書の就業期間・休憩時間に関する記載 ない。 しかしながら,前判示のとおり,1 審被告の就業規則の労働時間及び休憩時間に関する規定は,抽象的に労基法の該当条文を引用するだけのものであり,就業条件明示書の就業期間・休憩時間に関する記載も,就業時間を添乗サービスの提供時間である午前8時から午後8時までとし,休憩時間については派遣先の定めによるとするにとどまり,これらの記載から,添乗員の日当が11時間分の労働に対する対価であり,8時間分が所定労働に対する対価部分で,3時間分は所定時間外労働に対する割増賃金部分であることが明らかであると認めることはできない。 その上,仮に時間外手当を加えて基本給を決定する旨の合意がなされたとしても,時間外手当部分に当たる部分を明確に区分して合意し,かつ,労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことを合意した場合のみその予定時間外手当分を当該- 35 -月の時間外手当の一部又は全部とすることができると解すべきところ,就業条件明示書には時間外勤務なしとする記載があり,賃金査定結果,支払明細書にも時間外割増賃金に関する記載はないことに照らすと,本件における日当について,8時間の所定労働時間に対する賃金部分と3時間の所定時間外労働に対する割増賃金部分が明確に区別され,これについて1審被告と1審原告らの間で上記のような合意がなされていたと認めることはできない。また,上記事情によれば,1審被告と1審原告らの間において,本件における日当の額について,8時間の所定労働時間の1時間分の11倍の額であるとの合意がなされたとも認められない。 したがって,本件において割増賃金等の額を算出するに当たっては,各日当が所定労働時間8時間分の賃金であるものとして,各日当の8分の1の額を基礎金額と認めるのが相当である。 も認められない。 したがって,本件において割増賃金等の額を算出するに当たっては,各日当が所定労働時間8時間分の賃金であるものとして,各日当の8分の1の額を基礎金額と認めるのが相当である。 (2) 休日について労基法35条1項は,「使用者は,労働者に対し,毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。」と定めているところ,「週」は「起算日から計算して7日の期間」を意味し,この期間が休日付与義務の単位期間となるのであるから,1審被告が,ツアーごとに,当該ツアーの期間を労働期間として,派遣添乗員(1審原告ら)を雇用している本件においては,ツアー出発日を起算日とした7日の期間を単位期間として,その期間内に休日が付与されたか否かを判断すべきことになる。 したがって,本件添乗業務においては,第7日目及び第14日目の労働が休日労働に該当するものと認められる。 1審被告は,1審原告らの添乗業務に労基法35条2項の適用がある旨主張するが,1審被告は就業規則において単位となる4週間の起算日を定めているものとは認められないこと(労基法施行規則12条の2第2項)及び上記判示の点に照らすと,1審被告の主張は採用することができない。 - 36 -(3) 時間外割増賃金等の額以上により,1審原告らの日当(前提となる事実(1)エ)を8で除した金額を時間外割増賃金等の算定基礎賃金額とし,1審原告らの労働時間(前記3(2))に基づき,各人の未払時間外割増賃金等を算出すると,1審原告Aにつき【別紙1-1-1】「未払残業代目録(原告A)」記載のとおり(ただし,早朝深夜割増分は請求外),1審原告Bにつき【別紙1-1-2】「未払残業代目録(原告B)」記載のとおり,1審原告Cにつき【別紙1-1-3】「未払残業代目録(原告C)」記載のとおり,1審 り(ただし,早朝深夜割増分は請求外),1審原告Bにつき【別紙1-1-2】「未払残業代目録(原告B)」記載のとおり,1審原告Cにつき【別紙1-1-3】「未払残業代目録(原告C)」記載のとおり,1審原告Dにつき【別紙1-1-4】「未払残業代目録(原告D)」記載のとおり,1審原告Eにつき【別紙1-1-5】「未払残業代目録(原告E)」記載のとおり,1審原告Fにつき【別紙1-1-6】「未払残業代目録(原告F)」記載のとおりとなる。なお,それぞれの算出過程は【別紙1-2-1~6】記載のとおりである(ただし,合計額欄中の合計欄を除く。)。 5 付加金について(1) 以上のとおり,1審被告は,前記4判示の時間外割増賃金等を支払わず,労基法37条の規定に違反したものと認められ,1審原告らは,未払時間外割増賃金等と同額の付加金の支払を求めるところ,1審被告の労基法違反の態様,1審原告らの不利益の性質,内容等諸般の事情を考慮すると,1審原告らの上記未払金と同一の額から違反のあった時から2年以内に請求されていない額を控除した額(労基法114条ただし書)と同一額の付加金の支払を命ずるのが相当である。 以上によれば,1審被告の支払うべき付加金の額は,1審原告Aにつき259万6023円,1審被告Bにつき224万0622円,1審被告Cにつき289万6152円,1審被告Dにつき106万0806円,1審被告Eにつき158万9159円,1審被告Fにつき226万9675円となる。 (2)アこれに対し1審被告は,原判決後,原判決の仮執行の宣言に基づき,- 37 -原判決主文において支払を命じられた未払賃金及びそれに対する年6分の割合による遅延損害金を1審原告らに支払ったのであるから,付加金の支払を命ずることはできない旨主張する。 しかし,1審被告の主張は, 判決主文において支払を命じられた未払賃金及びそれに対する年6分の割合による遅延損害金を1審原告らに支払ったのであるから,付加金の支払を命ずることはできない旨主張する。 しかし,1審被告の主張は,原判決で未払割増賃金及びこれと同額の付加金の支払を命じられた後,支払を命じられた未払割増賃金についての原判決の仮執行の宣言に基づく給付をしたことを理由として,原判決中付加金の支払を命じた部分の取消しを求めることに帰するものであり,採用することができない。その上,1審被告の上記支払は,原判決の仮執行の宣言に基づく給付であって,上級審の判断次第ではその精算があり得ることを前提とした支払にすぎず,1審原告らの前記4判示の時間外割増賃金等債権を確定的に消滅させる任意の弁済と同視することはできないのであり,1審被告による使用者としての義務違反状態が消滅したということもできないのであるから,これをもって,前記(1)の判断を左右するに足りるものではないというべきである。 イ 1審被告は,仮に1審被告に未払割増賃金債務があるのであれば,その支払を拒むものではなく,添乗業務に事業場外労働時間のみなし制の適用があるか否かの解釈には争いがあるから,1審被告がこれを支払わなかったことが悪質であると評価されるものではなく,仮に1審被告に未払割増賃金債務が認められたとしても,本件事情の下において,1審被告に対して付加金の支払を命じることは相当ではない旨主張する。 しかし,1審被告は,本件添乗業務について,事業場外労働時間のみなし制の適用があると主張して,1審原告らに対し前記4判示の時間外割増賃金等の支払を拒否しているところ,1審被告の上記主張には理由がないこと,1審被告は,三田労働基準監督署から,派遣添乗員の時間外・休日労働について,それぞれ法定の割増賃金を支払っ 4判示の時間外割増賃金等の支払を拒否しているところ,1審被告の上記主張には理由がないこと,1審被告は,三田労働基準監督署から,派遣添乗員の時間外・休日労働について,それぞれ法定の割増賃金を支払っていないなどとして是正勧告書・指導票が出されたのに対しても,派遣添乗員の労働時間の把握は- 38 -困難であり是正指導の内容を拒否する回答をしたことなど,前判示の1審被告の労基法違反の態様,1審原告らの不利益の性質,内容等諸般の事情を総合考慮すると,本件において付加金の支払を命じることが相当でないと判断すべき事情は認められず,1審被告の上記主張によっても,前記(1)の判断を左右するに足りない。 6 遅延損害金について1審被告は,前記5(2)アのとおり,原判決の仮執行宣言に基づく給付として,平成22年10月4日,1審原告らに対し,原判決主文において支払を命じられた未払賃金及びそれに対する年6分の割合による遅延損害金を,各預金口座に振込送金して支払ったところ,1審原告らは,同月14日,1審被告に対し,受領を拒否する意思を明らかにしたのであるから,1審被告は,1審原告らが受領拒絶の意思表示をした同日以降債務不履行責任を免れたのであり,同日以降の遅延損害金の支払義務を負わない旨主張する。 しかし,前記5(2)ア判示のとおり,1審被告の上記支払が原判決の仮執行の宣言に基づく給付であって,上級審の判断次第ではその精算がありうることを前提とした支払にすぎず,1審原告らの前記4判示の時間外割増賃金等債権を確定的に消滅させる履行に当たるとは認められないのであるから,これに対する1審原告らの上記対応が受領拒否に当たるものとは認められず,1審被告の主張は採用することができない。 7 まとめ以上によれば,1審原告らの未払時間外割増賃金等についての支払請 から,これに対する1審原告らの上記対応が受領拒否に当たるものとは認められず,1審被告の主張は採用することができない。 7 まとめ以上によれば,1審原告らの未払時間外割増賃金等についての支払請求は,【別紙1-1-1~6】の各「合計」欄記載の金額及びうち各月の「未払残業代」欄記載の金額に対する各「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,また,1審原告らの付加金についての支払請求は,前記5(1)判示の額及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済み- 39 -まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 8 結論よって,以上と異なる原判決は失当であって,1審原告らの控訴及び1審被告の控訴はいずれも一部理由があるから,原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官大竹たかし 裁判官山 﨑 まさよ 裁判官林俊之は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官大竹たかし
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