平成23年7月25日判決言渡平成19年(行ウ)第591号懲戒処分取消等請求事件主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 東京都教育委員会が,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付で,各原告らに対して行った同別紙の「処分内容」欄記載の各懲戒処分(ただし,同別紙の番号「21-2」の懲戒処分を除く。)をいずれも取り消す。 (2) 被告は,原告らに対し,各原告に対応する別紙2懲戒処分等一覧表の「請求金額」欄記載の金員及びこれに対する平成19年10月11日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。 (4) (2)項につき仮執行宣言 2 被告(1) 本案前の答弁上記1(1)の請求に係る訴えのうち,原告P1,原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6,原告P7,原告P8,原告P9,原告P10,原告P11,原告P12,原告P13,原告P14,原告P15,原告P16,原告P17,原告P18,原告P19,原告P20,原告P21,原告P22,原告P23,原告P24及び原告P25(以下,併せて「原告P1ら25名」という。)に係る各懲戒処分の取消しを求める部分の訴えを却下する。 (2) 本案に対する答弁 原告らの請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用は原告らの負担とする。 (4) 上記1(4)につき担保を条件とする仮執行免脱宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が,東 訟費用は原告らの負担とする。 (4) 上記1(4)につき担保を条件とする仮執行免脱宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)が,東京都内の都立高等学校又は都立養護学校の教職員であった原告ら66名について,平成17年3月4日から平成18年4月7日までの間に原告らの所属校で行われた卒業式又は入学式(以下「卒業式等」という。)において,各所属校の校長(以下「本件各校長」という。)から,事前に,①国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず,国歌斉唱時に起立せず(以上は,原告P21及び原告P26を除く原告らの関係),②国歌斉唱時にピアノによる国歌の伴奏をすることを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず,ピアノ伴奏を行わなかった(以上は,原告P21及び原告P26関係)のは,地方公務員法(以下「地公法」という。)32条,33条に違反するとして,地公法29条1項1号ないし3号に基づき,原告らに対し,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付に「処分内容」欄記載の各懲戒処分(以下,各懲戒処分を併せて,「本件各処分」という。)をしたことから,原告らが,本件各処分は憲法19条,20条,23条,26条,31条,教育基本法(ただし,平成18年法律第120号による改正前のもの。以下同じ。)10条1項に違反するなどと主張して,本件各処分の取消しを求めるとともに,本件各処分により精神的苦痛を被ったと主張して,都教委の設置者である被告に対し,国家賠償法に基づき,損害賠償(慰謝料)を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び掲記の証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者 ア原告ら(ア) 原告らは, 害賠償(慰謝料)を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び掲記の証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者 ア原告ら(ア) 原告らは,いずれも,本件各処分を受けた当時,別紙2懲戒処分等一覧表の「勤務学校」欄記載の学校に勤務する教職員(原告P27は実習助手。その余の原告らはいずれも教員。)であった者である。 (イ) 本件各処分として戒告処分の取消しを求める原告ら(ただし,戒告処分と併せて,その後に受けた減給処分の取消しを求めている者を除く。)のうち,原告P1ら25名は,本件訴訟の口頭弁論終結日までの間に東京都を退職した。 イ被告は,地方自治法180条の5第1項1号,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条に基づき,都教委を設置する地方公共団体である。 都教委は,その権限に属する事務を処理させるため,事務局として東京都教育庁(以下「都教育庁」という。)を置いている(地教行法18条1項)。また,都教委が任命した教育長(地教行法16条1項)は,都教委の指揮監督の下に,都教委の権限に属する全ての事務をつかさどるほか(地教行法17条1項),都教育庁の事務を統括し,所属の職員を指揮監督する者である(地教行法20条1項)。 (2) 本件に関係する法令等の規定内容ア国旗及び国歌に関する法律(以下「国旗国歌法」という。)1条1項国旗は,日章旗とする。 2条1項国歌は,君が代とする。 イ教育基本法1条教育は,人格の完成をめざし,平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたつとび,勤労と責任を重んじ,自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を 本法1条教育は,人格の完成をめざし,平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたつとび,勤労と責任を重んじ,自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。 10条1項教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。 2項教育行政は,この自覚のもとに,教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。 ウ学校教育法(ただし,平成19年法律第96号による改正前のもの。以下同じ。)第2章小学校17条小学校は,心身の発達に応じて,初等普通教育を施すことを目的とする。 18条小学校における教育については,前条の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 2号郷土及び国家の現状と伝統について,正しい理解に導き,進んで国際協調の精神を養うこと。 20条小学校の教科に関する事項は,第17条及び第18条の規定に従い,文部科学大臣が,これを定める。 28条3項校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。 6項教諭は,児童の教育をつかさどる。 第3章中学校35条中学校は,小学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,中等普通教育を施すことを目的とする。 36条中学校における教育については,前条の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 1号小学校における教育の目標をなお充分に達成して,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。 の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 1号小学校における教育の目標をなお充分に達成して,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。 38条中学校の教科に関する事項は,第35条及び第36条の規定に 従い,文部科学大臣が,これを定める。 40条第18条の2,第21条,第25条,第26条,第28条から第32条まで及び第34条の規定は,中学校に,これを準用する。 第4章高等学校41条高等学校は,中学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。 42条高等学校における教育については,前条の目的を実現するために,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。 1号中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて,国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。 43条高等学校の学科及び教科に関する事項は,前2条の規定に従い,文部科学大臣が,これを定める。 51条第18条の2,第21条,第28条第3項から第12項まで及び第34条の規定は,高等学校に,これを準用する。(以下略)第6章特殊教育71条盲学校,ろう聾学校又は養護学校は,それぞれ盲者(強度の弱視者を含む。以下同じ。),ろう聾者(強度の難聴者を含む。以下同じ。)又は知的障害者,肢体不自由者若しくは病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施し,あわせてその欠陥を補うために,必要な知識技能を授けることを目的とする。 73条盲学校,ろう聾学校及び養護学校の小 )に対して,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施し,あわせてその欠陥を補うために,必要な知識技能を授けることを目的とする。 73条盲学校,ろう聾学校及び養護学校の小学部及び中学部の教科,高等部の学科及び教科又は幼稚部の保育内容は,小学校,中学校,高等学校又は幼稚園に準じて,文部科学大臣が,これを定める。 76条 (略)第28条(第40条,第51条及び第82条において準用する場合を含む。)(略)の規定は,盲学校,ろう聾学校及び養護 学校に,(略)これを準用する。 エ学校教育法施行規則(ただし,平成19年12月25日文部科学省令第40号による改正前のもの。以下同じ。)25条小学校の教育課程については,この節に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。 54条の2 中学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する中学校学習指導要領によるものとする。 57条の2 高等学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によるものとする。 73条の10 盲学校,ろう聾学校及び養護学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する盲学校,ろう聾学校及び養護学校幼稚部教育要領,盲学校,ろう聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領及び盲学校,ろう聾学校及び養護学校高等部学習指導要領によるものとする。 オ学習指導要領(本件の卒業式等当時のもの)(ア) 小学校学習指導要領及び中学校学習指導要 部学習指導要領及び盲学校,ろう聾学校及び養護学校高等部学習指導要領によるものとする。 オ学習指導要領(本件の卒業式等当時のもの)(ア) 小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領はそれぞれ第4章において,高等学校学習指導要領は第3章において,特別活動に関し,以下のとおり規定している。[甲311,乙23]「第2 内容A~C 略D 学校行事学校行事においては,全校又は学年を単位として,学校生活に秩序と変化を与え,集団への所属感を深め,学校生活の充実と発 展に資する体験的な活動を行うこと。 (1) 儀式的行事学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。 (2) (以下,省略)」「第3 指導計画の作成と内容の取扱い1・2 略 3 入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」(以下,この定めを「国旗国歌条項」という。)(イ) 盲学校,ろう聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領,特別活動に関し,以下のとおり規定している。[甲439,乙54]「 小学部又は中学部の特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱いについては,それぞれ小学校学習指導要領第4章又は中学校学習指導要領第4章に示すものに準ずるほか,次に示すところによるものとする。 1 略 2 児童又は生徒の経験を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊かな人間性をはぐぐむために,集団活動を通して小学 ものに準ずるほか,次に示すところによるものとする。 1 略 2 児童又は生徒の経験を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊かな人間性をはぐぐむために,集団活動を通して小学校の児童又は中学校の生徒及び地域の人々などと活動を共にする機会を積極的に設けるようにする必要があること。その際,児童又は生徒の障害の状態や特性等を考慮して,活動の種類や時期,実施方法等を適切に定めること。」(ウ) 盲学校,ろう聾学校及び養護学校高等部学習指導要領は,特別活動に関し,以下のとおり規定している。[甲439,乙54] 「 特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱いについては,高等学校学習指導要領第4章に示すものに準ずるほか,次に示すところによるものとする。 1 略 2 生徒の経験を広めて積極的な態度を養い,社会性や豊かな人間性をはぐぐむために,集団活動を通して高等学校の生徒及び地域の人々などと活動を共にする機会を積極的に設けるようにする必要があること。その際,生徒の障害の状態や特性等を考慮して,活動の種類や時期,実施方法等を適切に定めること。 3 知的障害者を教育する養護学校において,内容の指導に当たっては,個々の生徒の知的発達の遅滞の状態や発達段階に応じて,適切に指導の充填を定め,具体的に指導する必要があること。」カ地教行法23条教育委員会は,当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で,次に掲げるものを管理し,及び執行する。 3号教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。 5号学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関すること。 3号教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。 5号学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関すること。 8号校長,教員その他の教育関係職員の研修に関すること。 キ地公法29条1項職員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 1号この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例,地方公共団体の規則若しくは地方公 共団体の機関の定める規程に違反した場合2号職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合3号全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合30条すべて職員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,且つ,職務の遂行に当つては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。 32条職員は,その職務を遂行するに当つて,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 33条職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 (3) 都教委の通達ア都教委のP28教育長は,平成15年10月23日,都立高等学校長及び都立盲・ろう・養護学校長(以下,これらの学校を併せて「都立学校」と,その校長を「都立学校長」という。また,盲・ろう・養護学校を「養護学校等」と,その校長を「養護学校等校長」と,都立盲・ろう・養護学校を「都立養護学校等」と,その校長を「都立養護学校等校長」という。)に対し,都立学校長 長」という。また,盲・ろう・養護学校を「養護学校等」と,その校長を「養護学校等校長」と,都立盲・ろう・養護学校を「都立養護学校等」と,その校長を「都立養護学校等校長」という。)に対し,都立学校長に対する職務命令として,以下のとおりの内容の「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(以下「本件通達」といい,本件通達の別紙「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」を「本件実施指針」という。)を発出した。[甲1,乙14の3]「1 学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施すること。 2 入学式,卒業式等の実施に当たっては,別紙『入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針』のとおり行うものとすること。 3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり,教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は,服務上の責任を問われることを,教職員に周知すること。」「別紙入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針 1 国旗の掲揚について入学式,卒業式等における国旗の取扱いは,次のとおりとする。 (1) 国旗は,式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。 (2) 国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合,国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左,都旗にあっては右に掲揚する。 (3) 屋外における国旗の掲揚については,掲揚塔,校門,玄関等,国旗の掲揚状況が児童・生徒,保護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。 (4) 国旗を掲揚する時間は,式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。 2 国歌の斉唱について ・生徒,保護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。 (4) 国旗を掲揚する時間は,式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。 2 国歌の斉唱について入学式,卒業式等における国歌の取扱いは,次のとおりとする。 (1) 式次第には,「国歌斉唱」と記載する。 (2) 国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が,「国歌斉唱」と発声し,起立を促す。 (3) 式典会場において,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。 (4) 国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により行う。 3 会場設営等について入学式,卒業式等における会場設営等は,次のとおりとする。 (1) 卒業式を体育館で実施する場合には,舞台壇上に演台を置き,卒 業証書を授与する。 (2) 卒業式をその他の会場で行う場合には,会場の正面に演台を置き,卒業証書を授与する。 (3) 入学式,卒業式等における式典会場は,児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。 (4) 入学式,卒業式等における教職員の服装は,厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。」イ都教委は,同日,都立学校長を対象者として,「教育課程の適正実施にかかわる説明会」(以下「本件説明会」という。)を開催した。その際,P29都教育庁指導部長(以下「P29指導部長」という。)は,本件通達は都立学校長に対する職務命令であると説明した。 (4) 本件各処分ア(ア) 本件各校長は,原告らのそれぞれの所属校において,別紙2懲戒処分等一覧表の「行為日」欄記載の日に行われた同別紙の「行事」欄記載 る職務命令であると説明した。 (4) 本件各処分ア(ア) 本件各校長は,原告らのそれぞれの所属校において,別紙2懲戒処分等一覧表の「行為日」欄記載の日に行われた同別紙の「行事」欄記載の学校行事(平成16年度卒業式,平成17年度入学式,同年度卒業式又は平成18年度入学式)に先立ち,同別紙の「職務命令」欄記載のとおり,原告P21及び原告P26に対しては,行事における国歌斉唱の際に,楽譜に従ってピアノでの伴奏をすること(以下「ピアノ伴奏」と略称する。)を内容とする職務命令を,その余の原告らに対しては,行事における国歌斉唱の際に,会場内の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱すること(以下「起立斉唱」と略称し,これとピアノ伴奏とを併せて「起立斉唱等」と略称する。)を内容とする職務命令を,それぞれ発令した(以下,これらの職務命令を併せて「本件各職務命令」という。)。 (イ) 原告らは,別紙2懲戒処分等一覧表の「行為日」欄記載の日に行われた同別紙の「行事」欄記載の卒業式等において,本件各職務命令に従 わず,原告P21及び原告P26は国歌斉唱時にピアノ伴奏を行わず(以下,これを「本件不伴奏」という。),その余の原告らは,国歌斉唱時に起立しなかった(以下,国歌斉唱時に起立しないことを「不起立」と略称し,上記原告らの不起立を「本件不起立」といい,これと本件不伴奏とを併せて「本件不起立等」という。)。 イ都教委は,原告らに対し,平成16年度卒業式,平成17年度入学式,同年度卒業式又は平成18年度入学式における原告らの本件不起立等は,それぞれ地公法32条違反(職務命令違反)及び同法33条違反(信用失墜行為)に当たるとして,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付で「処分内容」欄記載の各懲戒処分を行った の本件不起立等は,それぞれ地公法32条違反(職務命令違反)及び同法33条違反(信用失墜行為)に当たるとして,別紙2懲戒処分等一覧表の「処分日」欄記載の日付で「処分内容」欄記載の各懲戒処分を行った(以下,これらの懲戒処分のうち,1か月間給料10分の1を減じる処分を「減給処分10分の1・1月」と,6か月間給料10分の1を減じる処分を「減給処分10分の1・6月」と,1か月間の停職処分を「停職処分1月」とそれぞれ略称する。)。 (5) 東京都人事委員会に対する審査請求原告らは,いずれも,本件各処分を不服として,それぞれ別紙2懲戒処分等一覧表の「審査請求日」欄記載の日付で,本件各処分(ただし,同別紙の番号「21-2」の減給処分10分の1・1月を除く。)の取消しを求めて審査請求をしたが,いずれの審査請求についても,審査請求日から3か月が経過しても裁決はされていない。 (6) 訴えの提起原告らは,平成19年9月21日,当庁に対し,本件訴訟を提起した。 3 争点(1) 本案前の争点戒告処分を受けた後に退職した者は戒告処分の取消しを求める訴えの利益を有しているか (2) 本案の争点ア本件通達,本件各職務命令及び本件各処分は原告らの思想・良心の自由を侵害する憲法19条違反のものであるかイ本件通達,本件各職務命令及び本件各処分は原告らの信教の自由を侵害する憲法20条違反のものであるかウ本件通達及び本件各職務命令は原告らの教師の専門職上の自由を侵害する憲法13条,23条及び26条違反のものであるかエ学習指導要領(国旗国歌条項)の法的拘束力の有無オ本件通達及び本件各職務命令は教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであるか 3条及び26条違反のものであるかエ学習指導要領(国旗国歌条項)の法的拘束力の有無オ本件通達及び本件各職務命令は教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであるかカ本件通達及び本件各職務命令は国際条約(自由権規約,児童の権利に関する条約)に違反する無効なものであるかキ原告らの本件不起立等は地公法32条,33条に違反する行為であるかク本件各処分は憲法31条の定める適正手続に違反するものであるかケ本件各処分は裁量権を逸脱又は濫用したものであるかコ原告らの損害の有無及び額第3 争点に関する当事者の主張 1 本案前の争点(戒告処分を受けた後に退職した者は戒告処分の取消しを求める訴えの利益を有しているか)(1) 被告の主張公務員に対する懲戒処分としての戒告処分は,「その責任を確認し,及びその将来を戒めるもの」であり(人事院規則12-10第4条参照),その法的効果は,公務員が在職していることを前提として認められるものであるから,公務員が退職した場合には,当該公務員に対する戒告処分の法的効力はないものとなる。したがって,既に東京都を退職して公務員の身分を失った原告P1ら25名は,本件各処分(戒告処分)の取消しを求める法律上の 利益を有しておらず,原告P1ら25名に係る本件各処分の取消しを求める部分の訴えは,不適法であり,却下されるべきである。 (2) 原告らの主張行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条は,処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においても,処分の取消しによって回復すべき法律上の利益がある者は,訴えの利益を有する旨を定めている。東京都においては,戒告処分を受けた教職員は,3か月の昇級延伸 経過その他の理由によりなくなった後においても,処分の取消しによって回復すべき法律上の利益がある者は,訴えの利益を有する旨を定めている。東京都においては,戒告処分を受けた教職員は,3か月の昇級延伸を受けることとなり(昭和52年3月22日付け51教人勤発第142号及び昭和63年4月1日付け63教人勤発第5号),勤勉手当の支給においても,1年間の勤勉手当が10%削減されることとなり(学校職員の勤勉手当に関する規則。昭和54年3月20日付け教育委員会規則第16号及び平成15年7月1日付け教区委員会規則第32号),また,懲戒処分を受けたことは,退職後の再任用や再雇用の場面で,従前の勤務実績等の評価において不利に評価される事由とされているところ,このように,当該処分によって不利益を被る可能性が,法令上の仕組として予定されている場合には,当該処分の取消しによってこれらの不利益が回復されることになる。したがって,原告P1ら25名は,退職後においても,本件各処分(戒告処分)の取り消しによって回復すべき法律上の利益があるから,戒告処分の取消しを求める訴えの利益を有する。 2 本件通達,本件各職務命令及び本件各処分は原告らの思想・良心の自由を侵害する憲法19条違反のものであるか(1) 原告らの主張ア原告らが本件不起立等を行った理由は,①日の丸・君が代は,戦前における日本の軍国主義の象徴であり,過去の歴史に対する反省,平和主義の思想等から,起立斉唱等をすることはできない,②多様な価値観がある事柄について,権力側が一律に一定の行動や思想を強制することは許される べきではなく,国民の間に多様な考え方のある日の丸・君が代に対して起立斉唱等をすることはできない,③教師が行政に服従し,軍国主義教育の下で教え子を戦場に送り出したという戦前 することは許される べきではなく,国民の間に多様な考え方のある日の丸・君が代に対して起立斉唱等をすることはできない,③教師が行政に服従し,軍国主義教育の下で教え子を戦場に送り出したという戦前教育に対する反省等から,教師として起立斉唱等をすることはできない,④権力的強制に屈して起立斉唱等をすることは,人権尊重や自主的思考の重要性を強調する教育実践を否定するものであり,教師として起立斉唱等をすることはできない,⑤生徒の中には,その国籍,信仰,平和思想等から,日の丸・君が代を受け入れることができない者が多数存在しており,これら生徒達の人権を最大限保障するという教育信条から,教師として起立斉唱等をすることはできないなどといったものである。なお,原告らが本件不起立等を行った理由は,各原告それぞれのものがあり,以上の理由に限定されるわけではなく,また,いくつかの理由が複合したりしている。 原告らの上記本件不起立等の理由は,原告らの,日の丸・君が代が戦前の日本の軍国主義とアジア諸国への侵略を支援したことを踏まえた日本の歴史を反省するとともに,戦争と国家忠誠に反対する思想,平和を志向する思想,学校の現場で教え子を戦争に送ることに反対し,子ども達の教育に日の丸・君が代を持ち込むことを否定する思想,一般的な日の丸・君が代の意義は肯定しつつも,多種多様な価値観の存在を前提とする教育の現場における強制は教育の本質にそぐわないとする教育観(教師としての良心)等に基づくものである。そして,原告らは,以上の思想,信条等に根ざした人格的核心として,「卒業式等において国旗に向かって起立し,国歌を斉唱できないという考え」あるいは「卒業式等の国歌斉唱時にピアノ伴奏できないという信念」を有している。 イ思想・良心の自由は,個人の内面的態様それ自 式等において国旗に向かって起立し,国歌を斉唱できないという考え」あるいは「卒業式等の国歌斉唱時にピアノ伴奏できないという信念」を有している。 イ思想・良心の自由は,個人の内面的態様それ自体を保障する原理的保障としての意味を強く持っているから,憲法19条による保障の対象は,人の内心活動一般として広範かつ包摂的にとらえられるべきである。上記ア で挙げたもの(以下「原告らの信念等」という。)は,いずれも原告らの人生経験,教育経験などに基づく人格的発展とともに形成され確立されたものであり,人格形成の核心を成す思想に当たり,思想・良心の内容として,憲法19条の保障の対象となるものである。 思想・良心の自由を保障する憲法19条は,公権力が特定の思想の強制又は勧奨を行うこと,すなわち,公権力が特定の思想を個人に注入することを絶対的に禁じている。したがって,国家が,特定の思想に沿った行為を強制することや,特定の思想にそぐわない行為を禁止することを通じて特定の思想を国民に広めていくことは,憲法19条が禁じる特定の思想の強制又は干渉に当たる。 また,公権力が法令によって特定の行為を義務付けた場合,自己の思想に反することを理由に当該法令への服従を拒むことができるかが問題となるが,①当該義務によって課されている行為が,その行為の客観的性質からして,個々人の自律的な価値判断に委ねられるべき事柄であるとき(例えば,神社参拝の義務付け),又は,②当該義務が課されることによって,個々人の人間性の核心が否定されることになると判断されるとき(例えば,兵役)には,法令による義務付けは,憲法19条に違反し,自己の思想・良心に反することを理由に当該法令に従うことを拒むことができると解すべきである。 さらに,思想・良心の自由は (例えば,兵役)には,法令による義務付けは,憲法19条に違反し,自己の思想・良心に反することを理由に当該法令に従うことを拒むことができると解すべきである。 さらに,思想・良心の自由は,憲法19条によって保障された絶対的自由であるところ,思想・良心と密接不可分な外部的行為を行うことを強制することについても,当該行為が思想と直接矛盾抵触するような行為である場合には,外部的行為を強制すること自体が内心に反する行為を強制することとなるから,憲法19条に違反する。 ウ国家とどう向き合うかというのは,個々人の自律的な価値判断に委ねられるべき事柄であるところ,我が国のシンボルとされている国旗・国歌に 関して,国旗(日の丸)に正対しながら起立し,国歌(君が代)を斉唱するという行為(起立斉唱)は,以下(ア)~(ウ)のとおり,国家ないし天皇に対して敬意を表し,賛美する性質を有するものであり,それ自体が国家への帰属に肯定的な価値を認めるという特定の思想に基づくものである。 本件通達及び本件各職務命令は,国旗・国歌という国家シンボルに対する特定の行為や態度を強制するものであり,原告らの内心(主観面)にかかわらず,憲法19条に違反する。 (ア) 明治以降,君が代・日の丸が国民の国家及び天皇制への統合のシンボル及び手段として利用されてきたという歴史的事実がある。 (イ) 起立斉唱は,客観的には,国旗に対して敬意を表する姿勢をとり,国歌の歌詞を発声する行為であり,国歌が表象する国家を賛美する性質を有する。「君が代」が日本国を表象するのか,天皇を表象するのかは,歌詞の解釈が分かれるところであるが,その解釈によっては,「君が代」の起立斉唱が「天皇」を賛美する性質を帯びることとなる。 (ウ) 起立斉唱は,国旗・国歌が するのか,天皇を表象するのかは,歌詞の解釈が分かれるところであるが,その解釈によっては,「君が代」の起立斉唱が「天皇」を賛美する性質を帯びることとなる。 (ウ) 起立斉唱は,国旗・国歌が象徴する国家への敬意を表明する行為であり,少なくとも国家を肯定的に受け入れることなくしてはできない行為であり,国家に積極的な価値を認める思想の表明にほかならない。 エ本件通達及び本件各職務命令は,原告らの信念等と直接矛盾する行為を強制するものであって,原告らの思想を直接侵害するものであるから,憲法19条に違反する。 また,原告らが本件通達及び本件各職務命令が命じる起立斉唱等を拒否する場合,それによって原告らが原告らの信念等を有していることが推知されてしまうことになる。したがって,本件通達及び本件各職務命令は,原告らの有する原告らの信念等の表明を迫るものであり,憲法19条が保障する沈黙の自由を侵害するものでもある。 以上の点について,被告は,内心領域と外部的行為とを切り離せること を前提として,本件各職務命令は,原告らの内心領域における精神的活動においてまで国旗・国歌を尊重するよう強制しているわけではないから,憲法19条に反するものではない旨主張する。しかしながら,内心と外部的行為は不可分であり,これを形式的に分けることは不可能である。上記主張によれば,いかなる外部的行為を命じても内心を侵害することはないこととなり,憲法19条は全く無内容なものとなってしまう。 オ本件通達及びその発出後の都教委の一連の指導は,原告らの信念等ゆえに起立斉唱等を拒む教職員をあぶり出し,徹底的に排除することによって,教職員の起立斉唱等の完全実施を実現し,更には,生徒に対して起立斉唱を強制して,国旗・国歌を尊重する態度を強制 原告らの信念等ゆえに起立斉唱等を拒む教職員をあぶり出し,徹底的に排除することによって,教職員の起立斉唱等の完全実施を実現し,更には,生徒に対して起立斉唱を強制して,国旗・国歌を尊重する態度を強制的に注入するという目的で行われたものである。本件各処分は,単なる形式的な職務命令違反を口実にされているが,原告らは,原告らの信念等を有し,都教委の方針に従順に従わないからこそ,本件各処分を科されたのであり,本件各処分は,一連の都教委の施策に関する事実経過や起立斉唱等を強制することの性質,効果に鑑みれば,実質的には原告らの思想及び信条に基づく不利益取扱いにほかならない。 カ思想・良心の自由は,優越的地位を有する精神的自由の中核を占めるものであるから,その制約が憲法に適合するかの判断は,厳格な基準によるべきである。また,公務員であっても人権保障が及ぶというのが大原則であり,仮に公務員について人権制約を認める場合においても,その事件の性質,公務員としての職務の内容・性質などを考慮し,人権ごとに具体的な制約の正当化根拠が求められなければならない。 原告らの都立学校教員としての職務の内容,性質に鑑みれば,以下(ア)のとおり,起立斉唱等を強制して原告らの思想・良心の自由を制約することが必要不可欠であるとする根拠はなく,以下(イ)及び(ウ)のとおり,原告らが公務員であること(職務の公共性,全体の奉仕者性)は,その思想 ・良心の自由の制約を正当化する根拠とはならない。 (ア) 国旗国歌条項は,後記5(1)において主張するとおり,教職員に対して一律に起立斉唱等を義務付ける根拠となるものではない。また,職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には,当該命令に従う義務はなく,本件各職務命令が出されていることのみをもって,原告らの人権制約 して一律に起立斉唱等を義務付ける根拠となるものではない。また,職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には,当該命令に従う義務はなく,本件各職務命令が出されていることのみをもって,原告らの人権制約を正当化することはできない。 教師の職責は,子どものしなやかで自由な精神の発達,人格の完成,そのために必要な学びの権利を保障し,これに応えることである。被告は,学校行事という教育活動における学校としての統一的な意思決定の重要性に言及するが,そもそも統一的,画一的行動を求めることが教育活動ではなく,学校としての統一的な意思決定に全て従うことが教師の職責とされるわけでもない。学校行事における儀礼,儀式は統一的であるべきであるとか,組織としての学校の秩序を維持すべきであるなどといった観念的な理由によって,原告らの思想・良心の自由の制約を正当化することはできない。 (イ) 公共の福祉による内在的制約は,あくまでも個人の人権と他者の人権との調整原理であるところ,思想・良心の自由に対する公共の福祉による内在的制約が許されるのは,個人の思想・良心の自由によって他者の人権に対する現実的,具体的害悪をもたらす場合でなければならず,思想・良心の自由が精神的自由の中でも特に優越的地位を占める人権であることからすると,その制約が許容されるかどうかについては,厳格な違憲審査基準(本件については,卒業式等において原告らに起立斉唱をさせなければ,当該卒業式等が「明白かつ現在の危険」ないし「重大かつ即時の危険」にさらされるかどうか)によって判断すべきであり,許容されるのは極めて限定的な場合に限られる。 しかしながら,原告らの本件不起立行為等は,ただ単に着席している 又は伴奏をしないという消極的行為であり,これによっては,卒業式等 ,許容されるのは極めて限定的な場合に限られる。 しかしながら,原告らの本件不起立行為等は,ただ単に着席している 又は伴奏をしないという消極的行為であり,これによっては,卒業式等の運営,厳粛さを乱すことはなく,現実に,式典の進行や国歌斉唱に具体的,現実的な害悪は何ら生じておらず,卒業式等は滞りなく終了しているのであり,この点は,被告も認めるところである。 被告は,卒業式等において起立斉唱等をしない教職員がいると,児童・生徒において,国旗・国歌について正しい認識を持ち,国旗・国歌を尊重する態度を学ぶことができなくなり,児童・生徒の学習権を侵害する旨主張する。しかしながら,国旗・国歌にどう向き合うかは子ども一人一人の思想・良心の自由の問題であり,上記主張は,起立斉唱等を行うことが国旗・国歌に対する正しい認識,態度であるという一方的な価値判断を押しつけるものである。一方的な価値判断に基づく指導は,強制ないし教化でしかなく,子どもの学習権から要請される教育ではない。 原告らは,その思想・良心の自由に従ってやむを得ず本件不起立等を行ったのであり,子どもたちに不起立を積極的に呼びかけるわけでも,子どもたちの起立斉唱を阻害するものでもない。 (ウ) 公務員にも人権保障が及ぶのが大原則である。公務員であるから一般的に人権制限が認められるというのは,特別権力関係を認める理論であり,法律の根拠なく人権制約を認めるものであるから,日本国憲法の下では取り得ない考え方である。 キ本件は,国旗たる日の丸と国歌たる君が代という国家シンボルの強制が問題となっている事案であるが,アメリカ憲法判例は,国旗・国歌の国家的,国民的統合機能を踏まえ,これに対する儀礼的行為を行う儀式が本来的に有する思想性,政治性を的確に捉えた上 う国家シンボルの強制が問題となっている事案であるが,アメリカ憲法判例は,国旗・国歌の国家的,国民的統合機能を踏まえ,これに対する儀礼的行為を行う儀式が本来的に有する思想性,政治性を的確に捉えた上で,国旗・国歌に対する儀礼的行為を尊重しつつも,その強制は憲法上許されないと判断している。すなわち,アメリカ憲法判例は,1943年の連邦最高裁判決(WestVirginiaStateBoardofEducationv.Barnette,319 U.S.624。以下「バーネッ ト判決」という。)以来,国家シンボルとしての国旗・国歌に対する特定の行為(国旗に対する起立や敬礼,忠誠の誓いの斉唱や国歌の斉唱など)を強制することは,連邦憲法修正第1条に違反すると一貫して判断している。また,国旗・国歌という国家シンボルが本来的に有する思想性,政治性に着目し,アメリカ憲法判例は,強制を拒否する理由の真摯性,妥当性,適正性を問題にしていない。 (2) 被告の主張ア本件各職務命令は,以下(ア)~(ウ)のとおり,原告らに対し,一定の外部的行為を命ずるものにすぎず,原告らの思想・良心を侵害するものではない。 (ア) 憲法19条が保障する思想・良心とは,世界観,人生観などの個人の内面的な精神活動を指すものであり,事物の是非,善悪の判断などは含まない。そして,憲法19条が思想・良心の自由を侵してはならないとする意味は,国民がいかなる世界観,人生観を持とうとも,それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり,特定の思想を内心に抱くこと自体を禁止することができないということを意味するほか,国家権力が思想の露顕を強制することは許されず,人の内心を強制的に告白させることはできないという,思想についての沈黙の自由を保障するもので こと自体を禁止することができないということを意味するほか,国家権力が思想の露顕を強制することは許されず,人の内心を強制的に告白させることはできないという,思想についての沈黙の自由を保障するものである。 この点,原告らは,国歌斉唱時に起立しない,ピアノ伴奏をしないという信念が,その根底にある原告らの思想・良心や歴史観・教育観とは別に,憲法19条の思想・良心として保護される旨主張するが,それらは思想・良心の核心部分とは解されないから,憲法19条にいう思想・良心には該当しないというべきである。 (イ) 思想が内部にとどまらず,外部に行動となって現れたときは,そのような外部的行為の規制の問題は,精神的活動の規制の問題ではないか ら,少なくとも憲法19条が保障する思想・良心の自由の問題ではない。 外部的行為が人の内心領域の精神活動と密接な関連を有することは否定できないが,外部的行為を制約することが人の人格の核心を形成する世界観,人生観を持つこと自体を禁止することにはならないから,上記規制は,思想・良心の自由を制約するものではない。したがって,法律が一定の作為・不作為を命じるときにそれに服しないことは,内心にとどまらない外部的な行動となるのであり,思想・良心の自由固有の問題ではない。 (ウ) 本件各職務命令は,卒業式等において,児童・生徒に国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,尊重する態度を育てるために,教職員に対し,起立斉唱等を命じるというものであり,そのこと自体は,一定の外部的行為を命じるにとどまるものであって,原告らの内心における精神活動を否定したり,その思想・良心に反する精神的活動を強制するものではないし,いかなる思想を抱いているかを露顕することを強制するものでもない。 イ原告らの本件不起立等について, 内心における精神活動を否定したり,その思想・良心に反する精神的活動を強制するものではないし,いかなる思想を抱いているかを露顕することを強制するものでもない。 イ原告らの本件不起立等について,仮に思想・良心の自由の保障が及ぶかどうかが問題になるとしても,外部的行為である以上,公共の福祉による制約を受けるというべきであり,以下(ア)及び(イ)によれば,本件各職務命令は憲法19条に違反しない。 (ア) 原告らは,全体の奉仕者である地方公務員であり(憲法15条2項),公教育を行うという公共の利益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たっては,全力を挙げてこれに専念する義務がある(地公法30条)。 原告らの思想・良心の自由は,公共の福祉の見地から職務の公共性に由来する内在的制約を受け,原告らが本件各職務命令を受け,起立斉唱等を行う義務を負うことにより,これが制約されるとしても,原告らにおいて受忍すべきものである。 (イ) 原告らの本件不起立等は,式典が滞りなく終了しているという結果から見れば,格別,妨害の事実がなかったともいえるが,それは,単に物理的な妨害行為がなかったというだけにすぎない。原告らは,本件不起立等によって国歌斉唱に関する指導を行わなかったのであるから,児童・生徒が学校教育法等の法規や学習指導要領に基づいた教育,指導を受けられなかったという意味で,児童・生徒の教育を受ける権利を侵害したものであるし,職務命令違反,更には信用失墜行為という服務事故を発生させたことにより,公務員の服務上の規律を害することとなったものである。 ウ原告らは,自らの自由意思で公立学校教職員という特別な法律関係に入った者である。本件各職務命令は,国旗国歌条項に基づき,卒業式等における国旗・国歌の指導を適正に実施するために のである。 ウ原告らは,自らの自由意思で公立学校教職員という特別な法律関係に入った者である。本件各職務命令は,国旗国歌条項に基づき,卒業式等における国旗・国歌の指導を適正に実施するために発せられたものであり,敬礼など特別の行為を求めるものではない。仮にこれにより原告らの思想・良心の自由が制約される点があったとしても,それは自らの自由意思によって教育公務員という特別な法律関係に入った原告らにとってやむを得ない制限である。 エ原告らは,本件各職務命令を受けたことにより,国旗・国歌の指導の一環として国歌斉唱等をすべき義務を負う。本件各処分は,本件各職務命令に違反したことを理由とするものであり,原告らがその内心に国歌斉唱等をしないとする思想,信条等を有していることを理由とするものではないから,本件各処分が原告らの思想・良心の自由を侵害することになるものではない。 3 本件通達,本件各職務命令及び本件各処分は原告らの信教の自由を侵害する憲法20条違反のものであるか(1) 原告らの主張ア原告らのうち,少なくとも,原告P30,原告P31及び原告P32(以 下「原告P30ら3名」という。)は,キリスト教を信仰する者であり,起立斉唱ができない理由として,キリスト教の信仰がある。 憲法20条に定める信教の自由には,①信仰の自由,②宗教的行為の自由,③宗教的結社の自由が含まれるところ,信仰の自由は,憲法19条が保障する思想・良心の自由の宗教的側面であり,その保障の効果も,憲法19条と同様に絶対的に保障されるものである。 イ日の丸・君が代が,戦前及び戦中において,国家神道と強く結び付いた神的,宗教的存在としての天皇崇拝のシンボルであり,皇国思想及び軍国主義思想の精神的支柱として用いられたこと ものである。 イ日の丸・君が代が,戦前及び戦中において,国家神道と強く結び付いた神的,宗教的存在としての天皇崇拝のシンボルであり,皇国思想及び軍国主義思想の精神的支柱として用いられたことは,歴史的事実である。原告P30ら3名においては,日の丸に向かって起立し,君が代を斉唱することを強制されることは,自らの信仰で禁じられている偶像崇拝を強制され,また,唯一の主であるイエス・キリスト以外の「君」を讃えることを強制されることとなる。これは,信仰上禁じられている行為を強制されるという点において,宗教上の行為の自由(自らの信仰に反する宗教上の行為を行わない自由)を侵害するものであり,また,「君」を讃えることを強制されることは,キリスト教の信仰の核心部分を否定されるという点において,信仰の自由(特定の宗教の信仰を否定されない自由)を侵害するものである。日本のキリスト教界は,戦前,軍部や政府の圧力の前に屈服し,神社参拝の要請を行うなど,戦時体制に貢献した歴史があり,その過ちに対する悔悟と再び過ちを繰り返すことは許されないという思いが特別に強く,天皇崇拝及び国家神道のシンボルというべき日の丸に向かって起立し,君が代を斉唱することを強制されることによる苦痛は非常に大きい。以上のとおり,原告P30ら3名は,本件通達及び本件各職務命令により起立斉唱等を強制されることによって,キリスト教が禁じている偶像崇拝を強制され,又は天皇を讃えることを強制されることになるのであるから,本件通達及び本件各職務命令並びにその違反に対して行われた本件各処分 は,原告P30ら3名の関係では,その信仰の自由あるいは宗教的行為の自由を侵害するものである。 ウ被告は,国旗国歌法によって日の丸・君が代が国旗・国歌であることが定められたのであり,それ自体宗教的意味合 P30ら3名の関係では,その信仰の自由あるいは宗教的行為の自由を侵害するものである。 ウ被告は,国旗国歌法によって日の丸・君が代が国旗・国歌であることが定められたのであり,それ自体宗教的意味合いを持つものではないと主張する。しかしながら,前述のとおり,日の丸・君が代が国家神道と結び付いて天皇崇拝のシンボルとして,また,皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として利用されたことは歴史的事実であるし,日の丸・君が代に対する考え方は個人の判断に委ねられるべき世界観や歴史観であり,日の丸・君が代が意味するものは公権力によって決められるものでもない。また,信仰に基づき,日の丸・君が代を天皇崇拝のシンボルと考える者が少数であり,政府や与党の解釈と異なるものであるとしても,憲法上の人権保障の問題である以上,その考え方は尊重されなければならない。 (2) 被告の主張ア日の丸・君が代は,国旗国歌法によって,日本の国旗・国歌と定められたものであり,それ自体,宗教的な意味合いを持つものではない。なお,国旗・国歌は,国民統合の象徴の役割を持つものであり,国旗・国歌を取り巻く政治状況や文化的環境などから,過去に日の丸・君が代が皇国思想や軍国主義思想に利用されたことがあったとしても,また,これを理由として,日の丸・君が代に対して嫌悪の感情を抱く者がいたとしても,日の丸・君が代が,国旗・国歌として定められたということは,日の丸・君が代に憲法が掲げる平和主義,国民主義の理念の象徴としての役割を期待しているということである。 イ卒業式等の儀式的行事における起立斉唱は,出席する教職員にとって通常想定される卒業式等における儀式的所作であるから,宗教上の行為としての意味を持つものではない。本件各職務命令は,一定の外部的行為を命ずるというものであ における起立斉唱は,出席する教職員にとって通常想定される卒業式等における儀式的所作であるから,宗教上の行為としての意味を持つものではない。本件各職務命令は,一定の外部的行為を命ずるというものであり,原告らの内心における精神的活動である信教の自 由を否定したり,信教の自由に反する精神的活動を強制するものでもないし,いかなる信仰を抱いているかを露見させることを強制するものでもない。 ウ原告らにおいても,個人として信教の自由は保障されている。しかしながら,原告らは,公務員として全体の奉仕者としての地位にあり,その職務内容が公教育を行うという公共性を有するものである以上,原告らが個人的な宗教上の理由から,教育(国旗・国歌の指導)を行うことを拒否することは許されない。憲法20条の保障する信教の自由は,内心の信仰にとどまる限り,絶対不可侵のものといえるが,それが宗教的行為として積極的又は消極的な形で外部に表明され,法令に基づく規制や社会的規範と衝突する場合には,一定の制約を免れないというべきである。教職員は,職務命令として起立斉唱を命じられた場合,仮に,信教の自由の問題が生じるとしても,教職員において受忍すべき範囲内の制約であるというべきである。 4 本件通達及び本件各職務命令は原告らの教師の専門職上の自由を侵害する憲法13条,23条及び26条違反のものであるか(1) 原告らの主張ア子どもの成長,発達のためには,憲法13条が保障する幸福追求権を基礎として,教育を受ける権利(憲法26条)が保障されなければならず,教育の場の自由を確保するためには,教育の自主性,自立性(憲法23条)が保障されなければならない。 イ国旗・国歌については多様な考え方があり,多様性を認め合う子どもたちを育てるためには,教師 育の場の自由を確保するためには,教育の自主性,自立性(憲法23条)が保障されなければならない。 イ国旗・国歌については多様な考え方があり,多様性を認め合う子どもたちを育てるためには,教師の専門的判断が必要であるほか,卒業式等の内容は,各学校単位で,そこで学ぶ子どもたちや地域の実情にみあった創意工夫のもとに決定する必要があり,特に,養護学校等においては,各学校の実情や創意工夫を踏まえて,卒業式等を壇上方式で行うのかフロア方式 で行うのかを決めるべきであり,卒業式等の最中の子どもたちの体や心の動きに常に敏感に対応するために,教師の専門的判断が必要である。また,国旗・国歌を教える際にも,子どもたちの発達段階にふさわしい教育方法について,教師の専門的判断が必要である。このように,卒業式等の内容を決めるに当たっては,教師の専門的判断が必要である。 また,高等学校学習指導要領は,「各学校においては,(中略)生徒の人間として調和のとれた育成を目指し,地域や学校の実態,課程や学科の特色,生徒の心身の発達段階及び特性等を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。」(第1章「総則」第1款「教育課程編成の一般的方針」)としており,教育課程の編成権限は各学校が有するものとしている。そして,教育課程は,児童(生徒)の教育をつかさどる教諭(学校教育法51条,28条6項)が,教育条理によって認められる職員会議における集団的討議を経て,全校的に決定されるべきものである。 したがって,都教委及び本件各校長は,国旗国歌条項を根拠として,教育課程の一環である卒業式等の実施方法を一方的に決定,強制することはできないにもかかわらず,学校現場の教師及び教師集団の意見を卒業式等の内容に反映させることを一切認めず,各学校の教師の関与も一 ,教育課程の一環である卒業式等の実施方法を一方的に決定,強制することはできないにもかかわらず,学校現場の教師及び教師集団の意見を卒業式等の内容に反映させることを一切認めず,各学校の教師の関与も一切させずに,卒業式等の実施方法を一方的に決定し,これを強制させる内容の本件通達を発出し,本件各校長をしてその内容を実行させる本件各職務命令を発令させ,その内容どおりの卒業式等の実施を強制した。 ウ本件通達及び本件各職務命令は,子どもの学ぶ権利を充足するために不可欠なプロセスとして憲法及び教育基本法上保障されている,教師集団の各学校単位での創意工夫とその実情に応じた創造的,弾力的な教育内容の決定の余地を完全に奪うものであり,教師の専門職上の自由を侵害するものとして,憲法13条,23条,26条に違反する違憲無効なものである。 (2) 被告の主張 原告らは,本件通達及び本件各職務命令によって,教師の専門職上の自由(憲法13条,23条,26条)が侵害された旨主張するが,以下ア~オのとおり,同主張には理由がない。 ア憲法26条,13条は,教師の個人的人権を保障しているものではなく,子どもが適切な教育を受ける権利を保障しているものである。また,憲法23条は,学校において子どもの教育の任に当たる教師が教育の自由を有し,公権力による支配,介入を受けないで自由に子どもの教育内容を決定することができることを保障したものではない。教師が職務として教育活動を行うのは権限としてであり,個人的権利として行うのではなく,普通教育の場において,教師に教育内容,方法について一定範囲の裁量権が認められるとしても,それは,子どもに適切な教育を受ける権利を保障していることの反射的効果であって,教師個人の人権として保障されているものではない。 ,教師に教育内容,方法について一定範囲の裁量権が認められるとしても,それは,子どもに適切な教育を受ける権利を保障していることの反射的効果であって,教師個人の人権として保障されているものではない。したがって,教師が子どもの学ぶ権利を主張して本件通達及び本件各職務命令の違法を主張することは,「自己の法律上の利益に関係のない違法」(行訴法10条1項)を主張するものとして許されない。 イ本件通達は,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施を適正にするために発出されたものであり,卒業式等の運営全般に関して発出されたものではなく,学校現場における創意工夫や裁量の余地は残されている。 ウ卒業式等の儀式的行事は,その意義を踏まえて,学校という教育組織の中で法令に基づく意思決定により,統一的に実施される必要があり,その内容,方法を個々の教師が決定できるものではない。なお,教育課程の編成に係る権限は,学校教育法28条,40条,51条,76条に基づき「校務」をつかさどる権限を有する校長及び地教行法23条5号に基づき,「学校の教育課程に関すること」を管理,執行する権限を有する学校設置団体の教育委員会にある。 エ学校現場の教師に教育の専門家として一定の裁量権が認められるとして も,全てが教師の裁量に委ねられるものではない。養護学校等の特殊性から教師の専門的判断が必要となる場面があるとしても,全てが教師の専門的な判断に委ねられるものでもない。教育の内容は,教育の機会均等と全国的な一定水準を確保するために学習指導要領に定められており,教師は,学習指導要領の内容に従って子どもたちに教育を行う責務がある。 オ起立斉唱等を命ずる職務命令を受けた教職員が不起立,不伴奏に及ぶということは,国旗・国歌の指導を行わないということである は,学習指導要領の内容に従って子どもたちに教育を行う責務がある。 オ起立斉唱等を命ずる職務命令を受けた教職員が不起立,不伴奏に及ぶということは,国旗・国歌の指導を行わないということであるから,それは教育的目的を阻害するものであり,ひいては,国旗・国歌の指導という教育を受ける子どもの権利を侵害するものである。 5 学習指導要領(国旗国歌条項)の法的拘束力の有無(1) 原告らの主張都教委は,本件通達の本文第1項において,「学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施すること」とし,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令の適法性,有効性の根拠を学習指導要領(国旗国歌条項)に求めている。しかしながら,学習指導要領(国旗国歌条項)は,以下ア~ウのとおり,法的拘束力を有しないというべきである。 ア学習指導要領は,学校教育法を授権規定とし,同法施行規則を受任規定とする文部科学省告示であり,行政が定立した要領にすぎない。戦後,教育行政の役割は,指導行政にとどまるものとされ,学習指導要領は,元来,小・中及び高等学校等の教師が児童・生徒の学習を指導する際の手引書ないし指導書であり,法的拘束力や強制の契機を有するものではなかった。 文部省は,その改訂のたびにその基準性(拘束性)を強調し,昭和33年に学習指導要領を文部省告示として公示し,法的拘束力を主張するようになったが,その授権規定である学校教育法自体に変更はなく,一方的に行政解釈を変えるだけで,学習指導要領を異質なものとすることが許されるわけがない。したがって,学習指導要領は法的拘束力を有しない。 イ最高裁昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁(以下「昭和51年大法廷判決」という。)は,学習指導要領の法的拘束力を全面的に否定していな 指導要領は法的拘束力を有しない。 イ最高裁昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁(以下「昭和51年大法廷判決」という。)は,学習指導要領の法的拘束力を全面的に否定していないものの,同時に,その法的拘束力を無制限に認める立場でもない。昭和51年大法廷判決は,学習指導要領について,教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまる限度においてのみ,遵守すべき基準として認められるとする一方,教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されておらず,又は教師に対して一方的な一定の理論ないしは観念を教え込むことを強制するような点が含まれている場合には,必要かつ合理的な大綱的基準として是認できないとしている。したがって,学習指導要領が上記の点を含むものであるときは,教育基本法10条1項の「不当な支配」に該当するかを問うまでもなく,法律の授権の範囲を逸脱するものとして法的拘束力を持ち得ない。国旗国歌条項は,教育の内容や方法に直接にかかわるものであり,教育行政による干渉がより厳格に回避されるべきものであるが,これを国旗・国歌を一律に強制するための根拠条項と解した場合,「教師による創造的かつ弾力的な教育の余地」や「地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地」を残さないものであるから,その法的拘束力を認めることはできない。また,国家の象徴である国旗・国歌に敬意を表明したり,国旗・国歌に肯定的な態度をとるべきことを強制することは,国家に対してすべからく肯定的な態度を示すべきであるとの一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものともなる。したがって,国旗国歌条項は,必要かつ合理的と認められる大綱的な基準として是 国家に対してすべからく肯定的な態度を示すべきであるとの一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものともなる。したがって,国旗国歌条項は,必要かつ合理的と認められる大綱的な基準として是認できるものではないから,これを根拠として,本件通達及び本件各職務命令により各教員個人に対して国旗・国歌を強制することはできない。 なお,我が国の法令用語法によれば,「~ものとする。」とは,原則としてすべきであるが,合理的な例外を認める趣旨の文言として用いられている。国旗国歌条項は,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」という規定であり,これは,学校現場に国旗・国歌を一律に強制する趣旨の規定ではなく,卒業式等の指導内容,方法を一義的に定めて義務付けた規定と解することもできない。 ウ国旗国歌条項の解釈に当たっては,国旗国歌法制定の趣旨等が参考にされるべきである。国旗国歌法に義務付け条項や尊重条項が入らなかったのは,国旗・国歌を日の丸・君が代とすることは確定するものの,国旗・国歌に対して国民がどのように考え,どのような行動をとるかは,基本的には個々人が自ら判断することであると政府が考えたからにほかならない。 政府は,国旗国歌法の制定前後で教育現場の指導内容に何ら変更はないと答弁していたのであり,この立法者意思を踏まえると,国旗・国歌についてより厳しい指導ないし責務を課すことは許されず,国旗国歌法は本件通達を正当化するものではない。また,国旗国歌法は,国民に対する一切の義務付けがないものとして国会で成立したのであるから,これよりも下位の法形式である学習指導要領(国旗国歌条項)によって国旗・国歌を国民(教職員)に義務付けることはできない。 (2) 被 る一切の義務付けがないものとして国会で成立したのであるから,これよりも下位の法形式である学習指導要領(国旗国歌条項)によって国旗・国歌を国民(教職員)に義務付けることはできない。 (2) 被告の主張学習指導要領(国旗国歌条項)は,以下ア~ウのとおり,法的拘束力を有するものである。 ア昭和51年大法廷判決は,学習指導要領が教育基本法10条の禁止する「不当な支配」に該当するかどうかの点について,学習指導要領を全体として検討し,その全体について法規としての法的拘束力を認めたものである。なお,最高裁が学習指導要領の全体について法規としての効力を認め ていることは,最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決からも明らかである。 イ学習指導要領は,教育の内容,方法に関する国の介入であり,大綱的基準の範囲内にとどめられなければならないことは当然であるが,以下(ア)及び(イ)によれば,国旗国歌条項に法的拘束力があることは明らかである。 (ア) 国旗国歌条項は,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,生徒に国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることが重要なことであること,卒業式等は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,新しい生活への展開への動機付けを行い,学校,社会,国家等の集団への所属感を深める上でよい機会となることから,このような卒業式等の意義を踏まえたうえで,卒業式等の式典において,国歌斉唱等を行うとの趣旨で設けられた規定である。このような趣旨で定められた国旗国歌条項は,教職員に対しても,儀式的行事における常識的,一般的な行為を求めるものにすぎず,一方的 式等の式典において,国歌斉唱等を行うとの趣旨で設けられた規定である。このような趣旨で定められた国旗国歌条項は,教職員に対しても,儀式的行事における常識的,一般的な行為を求めるものにすぎず,一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものではない。 (イ) 国旗・国歌に関する定めは,その性質上,全国的にされることが望ましく,教育における機会均等の確保と全国的な一定の教育水準の維持という目的のために,国旗国歌条項を学習指導要領の一部として規定する必要性及び合理性がある。国旗国歌条項は,国旗・国歌について,具体的にどのような指導,教育をするかについてまでは定めておらず,国歌斉唱等の具体的方法等について指示するものではないから,その内容は,一義的なものではなく,大綱的基準にとどまっている。したがって,弾力的な教育の余地や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分残されてないとはいえない。 ウ国旗国歌法は,国旗・国歌を日の丸・君が代と規定するものであり,国旗国歌法の制定によって教職員に新たな義務が課せられることになったわけではない。しかし,国旗・国歌の指導に際して職務命令を発することができないとか,当該職務命令違反に対して懲戒処分を行い得ないとする趣旨を含むものではない。教職員は,関係法令や上司の職務上の命令に従って教育指導を行うべき職務上の責務を負い,各学校の教育課程の基準として,法規としての性質を有する学習指導要領(国旗国歌条項)及びこれを基準として校長が編成した教育課程に基づいて学習指導を実施するという職務上の責務を負っている。 6 本件通達及び本件各職務命令は教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであるか(1) 原告らの主張ア教育行政機関が教育の内容,方法 上の責務を負っている。 6 本件通達及び本件各職務命令は教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであるか(1) 原告らの主張ア教育行政機関が教育の内容,方法について基準を設定する場合,その基準が教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たらず適法なものであるといえるためには,以下(ア)~(ウ)の要件を満たすことが必要である。 (ア) 教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまっていること(イ) 教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や,地域ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分残されていること(ウ) 教職員に対し一方的な一定の理念や観念を生徒に教え込むことを強制するものでないことイ本件通達は,以下(ア)~(オ)のとおり,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たり,無効である。また,本件各校長は,本件通達どおりに卒業式等を実施するように職務命令を受けていたのであり,本件 各職務命令を発令しないという選択肢はなかったから,本件各職務命令も,本件通達と一体のものとして違法かつ無効である。 (ア) 昭和51年大法廷判決は,「許容される目的のために必要かつ合理的と認められる」介入は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,必ずしも教育基本法10条の禁止するところではないと判示している。しかしながら,本件通達及び本件各職務命令は,以下a~cのとおり,許容される目的のために必要かつ合理的な介入であるとはいえない。 a 本件通達及び本件各職務命令は,卒業式等において国家シンボルに敬意を表する特定の具体的行為(起立斉唱等)を教師に義務付けて,個人の尊厳よりも国 ために必要かつ合理的な介入であるとはいえない。 a 本件通達及び本件各職務命令は,卒業式等において国家シンボルに敬意を表する特定の具体的行為(起立斉唱等)を教師に義務付けて,個人の尊厳よりも国家への統合を重視する愛国主義又は全体主義的な教育を行うことを目的としており,それ自体許容されるものではない。 b 被告は,上記(ア)の目的を覆い隠すため,本件通達及び本件各職務命令の必要性及び合理性を,教育に関する地方自治の原則,国旗国歌条項の適正実施に求めているが,以下(a)及び(b)のとおり,いずれも理由がない。 (a) 教育委員会が,地方の実情に適応した学習権を子どもに保障するため,学習指導要領より個別具体的な基準を教育委員会規則等により設定するということはあり得るものの,国旗・国歌は,国家のシンボルの問題であり,全国的一定水準としての国旗国歌条項よりも個別具体的な内容の指示を出す必要性は考えられない。 (b) 国旗国歌条項は,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施を求めるものであり,その実施方法まで指示するものではない。東京都においては,平成13年以降,全ての都立学校の卒業式等において,国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されていたのであり,国旗国歌条項の適正実施は,本件通達を発出するための目的とはなり得ないものである。 c 仮に本件通達及び本件各職務命令の目的が国旗国歌条項の趣旨に沿ったものであるとして許容されるとしても,本件通達の具体的内容(本件実施指針)は,以下(a)~(d)のとおり,その目的達成のために必要かつ合理的なものとはいえない。 (a) 国旗国歌条項は,国旗掲揚及び国歌斉唱の具体的方法等を指示するものではなく,起立斉唱等の義務を教職員に負わせるものではない。 (b) 卒業式等は,単なる卒業証書 とはいえない。 (a) 国旗国歌条項は,国旗掲揚及び国歌斉唱の具体的方法等を指示するものではなく,起立斉唱等の義務を教職員に負わせるものではない。 (b) 卒業式等は,単なる卒業証書授与式等ではなく,高等学校学習指導要領第4章「特別活動」において「学校行事」の中の「儀式的行事」として位置付けられる教育活動であり,学校ごとの創意工夫を生かすとともに,学校の実態や生徒の発達段階及び特性等を考慮したものでなければならない。そして,教育内容についての第1次的裁量権は,子どもとの人格的接触を通じ,その発達段階や個性に応じて創造的教育活動を行う教諭で構成される学校にあるところ(学校教育法28条3項,6項),本件通達の具体的内容(本件実施指針)は,以下ⅰ~ⅴのとおり,いずれも学校(校長)の裁量権に属する事項についてのものであり,本件通達で指示する必要性及び合理性はない。 ⅰ 本件実施指針は,「国旗は,式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。」と指示するが,国旗をどのように掲揚するかは,学校(校長)の裁量権に属する。 ⅱ 本件実施指針は,会場設営について,「卒業式を体育館で実施する場合には,舞台壇上に演台を置き,卒業証書を授与する」,「式典会場は,児童・生徒が正面を向いて着席するよう設営する」と指示するが,卒業式等の会場設営を壇上式にするか,フロア式・対面式にするかは,生徒の発達状況や自主性を踏まえ,学校ごとの創意工夫に基づき決定されるべきものであり,学校(校長) の裁量権の範囲内に属することである。 ⅲ 本件実施指針は,「式次第には,『国歌斉唱』と記載する」,「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が,『国歌斉唱』と発声し,起立を促す」と指示するが,これは生徒に対する強制の契機を一層強める ⅲ 本件実施指針は,「式次第には,『国歌斉唱』と記載する」,「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が,『国歌斉唱』と発声し,起立を促す」と指示するが,これは生徒に対する強制の契機を一層強めるものである。生徒及び式典参加者の内心に配慮して式次第に「国歌斉唱」と記載しないこと,司会者が「国歌斉唱」と発声して起立を促さないこと,また,起立斉唱に先立ち,内心の自由の説明をすることも,学校(校長)の裁量権の範囲内に属する。 ⅳ 本件実施指針は,「式典会場において,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。」と指示するが,国旗国歌条項は,教職員に対し,起立斉唱を義務付けるものではない。生徒には,自己の信念に基づいて起立斉唱しない自由があるところ,教職員全員が起立斉唱する中で生徒が自己の信念に基づいて起立斉唱を拒否することは事実上困難であり,教職員に起立斉唱を義務付けないことは,学校(校長)の裁量権の範囲内に属する。 ⅴ 本件実施指針は,「国歌斉唱は,ピアノ伴奏により行う。」と指示するが,国旗国歌条項は,音楽科の教師にピアノ伴奏を義務付けるものではない。国歌斉唱をピアノ伴奏で行うことは,むしろ一般的でなく,国歌斉唱の際の伴奏をピアノで行うか,CDで行うかを決めることは,学校(校長)の裁量権の範囲内に属する。 (c) 式典会場のどこからでも十分に確認できる場所に国旗を掲揚することが必要であるとしても,その方法は,各学校ごとの会場設営の状況等によって当然異なり得るし,そのような掲揚方法をしていない学校があれば,当該学校(校長)に対して正すように指示すれ ば良いのであるから,全ての都立学校長に対して本件通達を発出する必要性及び合理性はない。 (d) 校長が 方法をしていない学校があれば,当該学校(校長)に対して正すように指示すれ ば良いのであるから,全ての都立学校長に対して本件通達を発出する必要性及び合理性はない。 (d) 校長が個々の教職員に対し,卒業式等における起立斉唱等について職務命令を発令するか否かは,その裁量に属することであり,都教委が,校長に対し,所属校の全ての教職員に対して当該職務命令を発令するように命令すべき必要性及び合理性はない。 (イ) 公の儀式において国家シンボルに敬意を表すること(起立斉唱)が礼儀だと考えるのは,愛国の感情を重視する愛国主義的な見解であり,一方的な観念である。昭和51年大法廷判決は,「子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入,例えば誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制することは,憲法26条,13条の規定上からも許されない」としており,本件通達及び本件各職務命令は,愛国の感情を重視する一方的な観念を子どもに教え込むことの強制に当たるものであり,許されない。 (ウ) 昭和51年大法廷判決を参考にすれば,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に該当するかは,①教育内容や指導方法にどの程度踏み込んでいるかという内容介入の深さの程度と,②どの程度の強制を行っているかという強制の程度の2つの基準によって判断すべきである。本件通達は,以下a及びbのとおり,いずれの基準からも「不当な支配」に当たる。 a 本件通達(本件実施指針)は,特別活動として一般教科以上に学校ごとの創意工夫が要請される卒業式等の実施について,上記(ア)c(b)ⅰ~ⅴのとおり,学校(校長)の裁量の余地を奪ったものであり,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令は,創造的かつ弾力的な教育活動 ごとの創意工夫が要請される卒業式等の実施について,上記(ア)c(b)ⅰ~ⅴのとおり,学校(校長)の裁量の余地を奪ったものであり,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令は,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を十分に残したもの とはなっておらず,大綱的基準の範囲にとどまらないものである。 b 本件通達及びそれに基づく本件各職務命令は,教育内容が具体的なレベルまで事前に決定されており,これに反すると制裁を伴うという点で,強制の程度は最も強い。 (エ) 被告は,許容された目的の下,その目的達成のため必要,合理的なものであれば,教育委員会は教育の内容,方法についても関与,介入でき,具体的な命令を発することもできる旨主張するが,以下a及びbのとおり,同主張は誤っている。 a 教育行政機関の教育の内容,方法についての関与,介入について,昭和51年大法廷判決が「教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な範囲にとどめられるべき」とした第一の理由は,「子どもの教育は,教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならないから,教師の自由な創意と工夫の余地が要請される」という本質的要請によるものであり,これは,国,地方を問わず,教育行政機関一般についてその介入を制限する根拠となっているものである。むしろ,教育委員会は,教師に対する人事権を有することにより,より一層直接に教育に介入し得る危険があり,その介入に関する「不当な支配」の審査基準が,国の場合よりも緩和される理由はない。 教育委員会は,地方公共団体の執行機関として,管理事務を行うのであるが,教育内容についての第一次的裁 その介入に関する「不当な支配」の審査基準が,国の場合よりも緩和される理由はない。 教育委員会は,地方公共団体の執行機関として,管理事務を行うのであるが,教育内容についての第一次的裁量権は,教諭は児童・生徒の教育をつかさどり(学校教育法51条,28条6項),校長は校務をつかさどる(学校教育法51条,28条3項)とされているように,子どもとの人格的接触を通じ,その発達段階や個性に応じて創造的教育活動を行う学校(校長)にこそある。 b 昭和51年大法廷判決は,教育における地方自治の原則について,教育行政機関の介入を制限する文脈で述べているものであり,これを教育行政機関の介入を拡大する根拠とするのは誤りである。教育委員会が,地方の実情に適応した学習権を保障するため,当該地方における「教育における機会均等の確保」と当該地方全体の「一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的」な大綱的基準を教育委員会規則等によって設定し,その内容が学習指導要領より個別具体的となることはあり得るが,大綱的範囲を超えて,必要かつ合理的であれば制裁を伴う具体的な命令をも発することができるなどということはない。 昭和51年大法廷判決は,教育委員会が「特に必要な場合」には,手続上適法に「具体的な命令を発することができる」と判示しているが,ここにいう「特に必要な場合」とは,教育委員会の生徒に対する安全保護義務に基づく場合や,法令,学習指導要領,教育委員会規則等が遵守されていない特定の学校の校長に対し,事後的に,適法性のコントロールのために,まず懲戒処分等ではない具体的命令を発するというような場合である。また,上述のとおり,地方の実情に適応した大綱的基準を定める場合において,その大綱的基準が学習指導要領と比較してより ロールのために,まず懲戒処分等ではない具体的命令を発するというような場合である。また,上述のとおり,地方の実情に適応した大綱的基準を定める場合において,その大綱的基準が学習指導要領と比較してより具体的となることは考えられるが,具体的命令まで発することは,上記aで述べた教育の本質的要請に反するというべきである。 (オ) 仮に,被告が主張するとおり,教育委員会が許容された目的の下その目的達成のため必要,合理的なものであれば教育の内容,方法についても関与,介入できると解するとしても,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令がこの場合に該当しないことは,上記(ア)~(ウ)で述べたことから明らかである。さらに,上記(エ)のとおり,本件通達及びそれに基づく 本件各職務命令は,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を奪い,教育活動に甚大な影響を与えるものであり,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に該当する。 (2) 被告の主張ア教育委員会(都教委)は,以下(ア)~(ウ)のとおり,子ども自身の利益の擁護のため,また,子どもの成長に対する地域社会,公共の利益と関心にこたえるため,必要かつ合理的と認められる範囲で,教育の内容及び方法に関して国に比してより具体的な基準を設定し,必要な場合には具体的な命令を発する権能を有し,その責務を負っている。したがって,教育委員会は,許容された目的の下,その目的達成のため必要かつ合理的なものであれば,教育の内容,方法についても関与,介入できるのであり,本件通達及び都教委の一連の指導が教育基本法10条1項に違反するかはこの審査基準により判断されるべきである。 (ア) 教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」とは,国民全体ではない一部の勢力( 及び都教委の一連の指導が教育基本法10条1項に違反するかはこの審査基準により判断されるべきである。 (ア) 教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」とは,国民全体ではない一部の勢力(政党,官僚,政界,労働組合等)による介入である。 教育は国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものであるため,国民の意思と教育が直結し,国民の教育に対する意思が表明され,それが教育の上に反映するような組織として,それぞれの地方に固有の権限を有する教育委員会が設置されている。そして,各地方の実情に適応した教育を行わせるのが教育の目的及び本質に適合するとの観念(地方自治の原則)に基づき,公立学校の教育に関する権限は,地方公共団体の教育委員会に属している(地教行法23条,32条等)。 (イ) 昭和51年大法廷判決は,国の教育行政機関が普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,教育に関する地方自治の原則をも考慮しなければならないから,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の確保という目的のために必要かつ合理的と認 められる大綱的基準にとどめられるべきであるとした。これに対し,公立学校を設置する地方公共団体は,上記地方自治の原則のもとに,国が設定した大綱的基準の範囲で,より具体的かつ詳細な基準を設定することができ,またそれが要請されている。現に,昭和51年大法廷判決は,学校設置者たる地方公共団体の教育委員会は,学校を所管する行政機関として,その管理権に基づき,学校の教育過程の編成について基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,必要な場合には具体的な命令を発することもできると判示している。 (ウ) 地教行法23条5号は,学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指 指示を与え,指導,助言を行うとともに,必要な場合には具体的な命令を発することもできると判示している。 (ウ) 地教行法23条5号は,学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関することを教育委員会の職務権限としており,教育委員会は,上記事項について管理し,執行することができると規定している。また,地教行法17条1項は,教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどると規定しており,教育長は,教育課程等に関する事項に関して,校長に対し,通達等により個別具体的な職務の遂行について職務命令を発することができる。したがって,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」と地教行法23条5号及び同法17条1項との理論的整合性の観点からすると,教育委員会がその権限の行使として発出する通達ないし職務命令に関しては,大綱的基準にとどまるべきものと解することはできない。 イ本件通達は,以下(ア)及び(イ)のとおり,許容された目的の下になされ,必要かつ合理的なものであり,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」には該当しない。 (ア) 本件通達は,国旗・国歌に関しては,都立学校において学ぶ児童・生徒に国旗・国歌に対して正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てるという目的の下で,普通教育において指導すべき国旗・国歌に関する基礎的知識を指導するために,また,その余の事項に関しては, 卒業式,入学式,周年行事等の学校行事(儀式的行事)を学習指導要領に則して適正に実施するために発せられたものであって,まさに学校管理機関としての都教委がその権限を行使する許容された目的の下に発せられたものである。なお,都教委は,地教行法23条5号により都立学校の教育課程等に関する権限(編成権 られたものであって,まさに学校管理機関としての都教委がその権限を行使する許容された目的の下に発せられたものである。なお,都教委は,地教行法23条5号により都立学校の教育課程等に関する権限(編成権限)を有しており,国旗国歌条項の具体化として,上記の学校行事における国旗・国歌の指導の内容,方法を校長に指示できるのは当然のことである。 (イ) 本件通達は,本件実施指針において,卒業式等の式典の実施方法を定めているが,以下a及びbのとおり,その内容は,必要かつ合理的なものである。 a 卒業式等は,特別活動のうちの儀式的行事として実施されるものであるが,学習指導要領は,儀式的行事について,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の発展への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定め,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」(国旗国歌条項)と定めており,本件通達は,学習指導要領の上記規定に沿って卒業式等を実施する上で,必要かつ合理的なものである。本件においては,本件実施指針のうち,①「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が『国歌斉唱』と発声し,起立を促す。」,②「式典会場においては,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。」の2項目が問題となるところ,儀式的行事における国歌斉唱は起立して行うことが国際儀礼上の常識であって,我が国に限らず通例であり,教職員がそれに沿った行動をとるものとしても不合理なものではない。また,学校における教育活動のうち卒業式等の儀式的行事は,各クラス単位での授業とは異なり,学校全体として行うものであり,そ の意義からしても,その実施方法についても,全校的に統一性をも はない。また,学校における教育活動のうち卒業式等の儀式的行事は,各クラス単位での授業とは異なり,学校全体として行うものであり,そ の意義からしても,その実施方法についても,全校的に統一性をもって整然と行われる必要がある教育活動である。上記各項目は,いずれも学習指導要領の内容,趣旨に沿ったものであり,都教委が,その判断に基づき,卒業式等などの式典を厳粛かつ清新なものとし,併せて国旗・国歌の指導をするための方式を示したものとして,必要かつ合理的な範囲を超えたものとはいえない。 b 都立学校の卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況は,実施率こそ100%となっていたが,校長が学習指導要領に沿って国旗・国歌の指導を含む適正な卒業式等の実施を教職員に指導ないし指示して実施しようとしてもそれができず,国歌斉唱時に職員が起立しない,三脚で国旗を掲揚して舞台の袖の見えないところに設置する,音楽科担当の教員がいるのに国歌のピアノ伴奏をしない,式次第に国歌斉唱と明記しない,国歌斉唱が終わってから教員が式場に入場するなど,卒業式等における国旗・国歌の適正な指導がなされていない状況が続いていた。都教委は,都立学校における国旗・国歌の指導に関してこのような不適切な実態があったことから,都立学校において国旗・国歌の指導が適正に行われるようにするため,本件通達を発出して儀式的行事の在り方を明確に示す必要があった。 ウ(ア) 原告らは,本件通達によって,卒業式等に関する学校の裁量の余地が奪われる,教育活動への影響が甚大である旨主張する。しかしながら,教育委員会は,前述のとおり,大綱的基準の限度にとどまらず,必要な場合には具体的な命令を発することもできるのであり,原告ら主張の理由によって本件通達が教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配 ら,教育委員会は,前述のとおり,大綱的基準の限度にとどまらず,必要な場合には具体的な命令を発することもできるのであり,原告ら主張の理由によって本件通達が教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に該当することになるわけではない。また,本件通達は,以下a~cのとおり,学校の創意工夫を一切奪うものではなく,学校の教育活動に甚大な影響を及ぼすものでもない。 a 本件通達は,卒業式等などの儀式的行事に限ってその実施方法を示しているものにすぎないものであって,年間を通じての国旗・国歌の指導について指示するものではなく,学校の日常的教育活動に大きく影響するものでもない。 b 儀式的行事に限ってみても,本件通達は,本件実施指針の限度で指示するものであって,式典全体のうち国旗・国歌の指導及び会場設営に関してのみ指示するものであり,いつ国歌斉唱を行うかを始めとして,それ以外の式典の進行等は各学校の創意工夫に任されており,実際に各学校において様々な創意工夫がされている。 c 卒業式等における起立斉唱は,国旗・国歌に関する国際的儀礼にも合致する常識的なものであり,その指導内容は,都立学校に学ぶ児童・生徒が多様であっても共通して学ぶべき事柄である。 (イ) 原告らは,本件通達が教師に対して一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものであると主張する。しかしながら,国旗国歌法は,日の丸・君が代を国旗・国歌として定めており,国際社会においても,国旗・国歌は尊重されるべきとの共通の認識が存在している。そして,我が国だけでなく,他国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるべく児童・生徒に指導することは,普通教育において当然のことであるから,これが一方的な理論や観念を児童・生徒に教え込むものとはいえない。 国だけでなく,他国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるべく児童・生徒に指導することは,普通教育において当然のことであるから,これが一方的な理論や観念を児童・生徒に教え込むものとはいえない。 エ校長は,校務をつかさどり所属職員を監督する権限を有しており(学校教育法28条3項,51条,76条),教育課程の編成等全ての校務を決定し,これを各教職員に分掌させ,必要な指導を行い,職務命令を発することができる(地公法32条)。原告らの主張は,本件通達が教育基本法10条1項に違反するから,本件通達に基づく本件各職務命令も違法であるというものであるが,本件各校長は,卒業式等を学習指導要領に則っ て適正に実施すべく,自らの権限と責任に基づき,本件各職務命令を発したのであるから,仮に本件通達や都教委の指導等が教育基本法10条1項に違反するものであったとしても,本件各職務命令は,手続的にも実体的にも違法となるものではない。 7 本件通達及び本件各職務命令は国際条約(自由権規約,児童の権利に関する条約)に違反する無効なものであるか(1) 原告らの主張ア日本国が締結し批准した条約は,内容が自働執行力のあるものである限り,立法化を待たずに国内法としての効力が認められ,国内法的効力を有するに至った条約は,国内法に優位する。 イ本件通達及び本件各職務命令は,以下(ア)及び(イ)のとおり,我が国が締結,批准した国際条約に違反する違法なものというべきである。 (ア) 起立斉唱等を強制することは,市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)18条が保障する思想・良心の自由及び信教の自由を侵害する。本件通達は,起立斉唱等を強制するものであり,上記条約に違反する違法なものであり,本件各職務命令は,本件各校長が自らの 際規約(自由権規約)18条が保障する思想・良心の自由及び信教の自由を侵害する。本件通達は,起立斉唱等を強制するものであり,上記条約に違反する違法なものであり,本件各職務命令は,本件各校長が自らの権限で独立して発出したものではなく,校長に対する職務命令である本件通達に基づいて発出したものであるから,本件通達と一体として違法となる。 (イ) 本件通達は,卒業式等の在り方について生徒の意見を反映させる余地をなくし,また,卒業式等において生徒の創作物を掲示するなどの余地をなくし,さらに,日の丸・君が代について一つの価値観のみを強制するものであって,子どもの意見表明権を保障し,思想・良心の自由及び宗教の自由を保障している児童の権利に関する条約12条,14条1項に違反する。このことは,原告らが教師として子どもの権利侵害に加担できないという内心の自由,子どもの権利侵害を拒否するという教育 の自由を侵害することを意味する。 (2) 被告の主張ア本件通達が,思想・良心の自由,信教の自由を侵害するものでないことは,既述のとおりであり,自由権規約18条に違反する旨の原告らの主張には理由がない。仮に本件通達が自由権規約18条に違反するとしても,本件各職務命令は,本件各校長がその固有の権限に基づいて発出したものであり,これにより本件各職務命令が無効となるわけではない。 イ原告らは,本件通達が児童の権利に関する条約12条,14条に違反すると主張するが,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものであり,本件各処分の取消事由として主張することはできない(行訴法10条1項)。また,本件通達は,卒業式等における各学校の裁量,工夫を禁止するものではなく,国旗・国歌の指導は,生徒に対する関係ではあくまで教育上の指導として 由として主張することはできない(行訴法10条1項)。また,本件通達は,卒業式等における各学校の裁量,工夫を禁止するものではなく,国旗・国歌の指導は,生徒に対する関係ではあくまで教育上の指導として行うものであって,生徒の思想・良心及び信教の自由を侵害することはないし,国旗・国歌を尊重する態度を育てるための指導は,一方的な理論や観念を教え込むことに当たるものでもない。 8 原告らの本件不起立等は地公法32条,33条に違反する行為であるか(1) 原告らの主張ア本件各処分の処分理由として,地公法32条違反が挙げられているが,同条にいう職務命令とは,①職務上の上司がその職務権限に属することに関して発した職務命令であること,②部下の職務に関する命令であること,③部下の独立の職務に関するものでないこと,④その職務命令の内容が,憲法,法律,条例等に違反しないものであること,以上の要件を満たしたものであることが必要である。しかしながら,以下(ア)及び(イ)のとおり,本件各職務命令は,これらの要件を満たさないから,原告らの不起立行為等は,職務上の義務の違反には当たらない。 (ア) 学校教育法は,教諭については「児童の教育をつかさどる」とする のに対し(同法28条6項,51条),校長については「校務をつかさどり,所属職員を監督する」と規定しており(同法28条3項,51条),このような学校教育法の規定の仕方からすると,校長の教職員に対する監督権限には,教師の教育活動の内容に関わる職務命令を出す権限は含まれないと解すべきである。したがって,学校行事において起立斉唱等を行うことは,教師の教育活動の内容に関わる事項であるから,校長が教職員に対して起立斉唱等を命じることは,校長の権限を逸脱した権限外の行為であり,本件各職務命令の がって,学校行事において起立斉唱等を行うことは,教師の教育活動の内容に関わる事項であるから,校長が教職員に対して起立斉唱等を命じることは,校長の権限を逸脱した権限外の行為であり,本件各職務命令の命令事項については,校長は教職員との関係において職務上の上司に該当しない。 (イ) 本件通達は,既述のとおり,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に該当し,国旗国歌条項の授権範囲を逸脱するものであり,憲法19条,20条に違反する違憲違法な職務命令であるから,重大かつ明白な瑕疵があるものとして,原告らは本件通達に基づく本件各職務命令に服従すべき義務はない。 イ本件各処分の処分理由として,地公法33条違反が挙げられており,同条にいう「その職の信用を傷つけ,又は職員の全体の不名誉となるような行為」とは,世間のひんしゅくを買う行為などと説明されている。しかし,国民の間では起立斉唱等を強制することに反対する考え方の方が多く,原告らの不起立等は,決して世間のひんしゅくを買っているわけではないから,同条違反になるものではない。 (2) 被告の主張ア原告らは,本件各職務命令が地公法32条の要件を満たさない職務命令である旨主張するが,以下(ア)及び(イ)のとおり,理由がない。 (ア) 学校教育法28条3項,51条,76条は,高等学校及び養護学校等における校務は,その校長がつかさどるものとしており,そこにいう「校務」とは,教諭のつかさどる教育を含む学校の果たすべき仕事全体, すなわち学校教育の事業を遂行するために必要とする一切の事務を指すものである。この校務には,学習指導要領に基づく教育課程の計画及び実施についての責務と権限も当然に含まれ,本件各校長が国旗国歌条項の適正実施について本件各職務命令を発する権限が する一切の事務を指すものである。この校務には,学習指導要領に基づく教育課程の計画及び実施についての責務と権限も当然に含まれ,本件各校長が国旗国歌条項の適正実施について本件各職務命令を発する権限があることは明らかである。 (イ) 本件通達が違憲違法でなく,重大かつ明白な瑕疵があるものといえないことは既述のとおりである上,本件通達が違法であるとの上記主張を前提としても,校長が,自らの権限により,本件通達の内容に沿った卒業式等の実施内容を決定し,これを各教職員に分掌させ,その実施に必要な職務命令を発した場合,それは各校長が自らの判断と権限に基づき職務命令を発したということに帰着し,手続上も実質上も違法はない。 本件各職務命令は,本件各校長がそれぞれ自らの判断でその権限に基づいて卒業式等における国旗国歌条項の適正実施のために発したものであるから,手続上も実体上も適法なものである。 イ原告らが行った本件不起立等は,本件各職務命令に違反し,しかも卒業式等という重要な学校行事において,生徒,保護者,来賓の面前で行われたものであり,教育公務員の職に対する信用を傷付ける行為というを妨げないものであるから,地公法33条違反に該当することは明らかである。 9 本件各処分は憲法31条の定める適正手続に違反するものであるか(1) 原告らの主張憲法31条の適正手続の保障は,行政手続にも及ぶところ,本件各処分に至る手続は,以下ア及びイのとおり,公正かつ適正な手続が確保されていたとはいい難く,手続上の違法があるというべきである。 ア原告らの多くは,事情聴取に当たり,弁護士の立会いやメモ,録音を求めたが,いずれも拒否され,本件各処分の前提としての告知及び聴聞の手続は,その機会が奪われたり,不十分なものであった。原告らの中に ア原告らの多くは,事情聴取に当たり,弁護士の立会いやメモ,録音を求めたが,いずれも拒否され,本件各処分の前提としての告知及び聴聞の手続は,その機会が奪われたり,不十分なものであった。原告らの中には, 都教委から「事情聴取を拒否したものとみなす。」と一方的に宣告された者も少なくない。 イ本件各処分における事故報告から諮問,答申を経て本件各処分に至るまでの期間は,あまりにも短期間であった。また,処分審査の過程では,原告らや校長からの事情聴取の内容などの個別の事情は一切考慮されず,本件各処分は,一律,画一の処分となっている。さらに,不起立等を行った者に対して懲戒処分をすることは,いわば見せしめであり,本件通達の発出時から既に決まっていた。このように,本件各処分は,あまりにもずさんな手続によって行われたものであった。 (2) 被告の主張本件各処分に至る手続が違法である旨の原告らの主張は,以下ア及びイのとおり,いずれも理由がない。 ア東京都では,地公法29条2項を受けて,「職員の懲戒に関する条例」(昭和26年9月20日条例84号)及び「職員の分限,懲戒に関する条例の施行について」(昭和26年10月15日総人発秘164号)を定めているが,事情聴取の方法については何ら規定していないから,弁護士の立会い,メモ,録音を認めなかったことに違法はない。都教委は,非違行為を行った原告らからそれぞれ直接に事実関係を確認し,弁明を聴くために事情聴取を行っており,本件各処分の手続は公正に行われたというべきである。なお,原告らの一部に実際に事情聴取ができなかった例があるが,それは,都教委が当該原告らに対して事情聴取の場を提供し,事情聴取に応じるよう説得したが,当該原告らが弁護士の立会等を求めることに固執して事情聴取に応じ 部に実際に事情聴取ができなかった例があるが,それは,都教委が当該原告らに対して事情聴取の場を提供し,事情聴取に応じるよう説得したが,当該原告らが弁護士の立会等を求めることに固執して事情聴取に応じなかったことによるのであり,当該原告らが事情聴取を拒否したものといわざるを得ないものである。 イ都教委は,懲戒処分の事由たる事実について,職務命令違反の現認の報告や違反者本人及び関係者の事情聴取などにより適正に事実の確認をした 上で,先行事案を参考に,処分量定について懲戒分限審査委員会の答申を受け,教育委員会の議を経て本件各処分を行ったものであり,手続に要する十分な時間を取っている。また,懲戒処分は,過去に処分歴等がない限り,同一内容の非違事実であれば同内容の処分量定となるべきものであり,一律,画一の処分になっているとの非難は当たらない。また,非違行為があれば懲戒処分を科すべきことは当然であり,都教委が本件各処分を見せしめの趣旨で行ったという事実はない。 10 本件各処分は裁量権を逸脱又は濫用したものであるか(1) 原告らの主張本件各処分は,以下ア~オのとおり,裁量権を逸脱又は濫用した違法な処分であり,取り消されるべきものである。 ア本件各処分は,懲戒権の目的を逸脱する。 すなわち,地公法が任命権者に懲戒処分の権限を付与した目的は,公務員秩序を維持することにある。公務員秩序とは,単に階層的な命令伝達機能(上命下服)の整備又は徹底を意味するのではなく,公務員の勤務において国民全体に最大の利益を実現するシステムを意味し,その具体的な在り方は,各部門によって異なる。また,教育は,教師と生徒との全人格的な触れあいを通じて,生徒の人格形成を目指す営為であり,命令と服従からなる公務員秩序は,そのよう るシステムを意味し,その具体的な在り方は,各部門によって異なる。また,教育は,教師と生徒との全人格的な触れあいを通じて,生徒の人格形成を目指す営為であり,命令と服従からなる公務員秩序は,そのような教育部門にはなじまない。教育部門においては,生徒に対し,価値観の多様性と個性の尊重を保障する教育本来の在り方に適合したシステムとしての公務員秩序が形成されなくてはならない。しかるに,都教委は,特定の価値観(国旗国歌の尊重等)及び教育観を持ち,教育を支配,統制するという違法な意図と動機から,懲戒処分を濫発したのであり,本件各処分は,あるべき公務員秩序の形成に背馳し,地公法における懲戒制度の趣旨,目的を逸脱するものである。 イ本件各処分は,以下(ア)及び(イ)のとおり,その処分理由とした原告 らが本件各職務命令に違反して本件不起立等に及んだことの非違性の程度と制裁措置による不利益の程度との権衡を著しく失し,比例原則に違反するものである。 (ア) 本件不起立等の非違性は,以下のとおり,ごく小さいものである。 a 本件各職務命令は,仮に違憲違法との評価を免れたとしても,憲法や教育基本法の趣旨に違背した内容のものであるから,本件不起立等の非違性の程度は極めて軽度なものと評価すべきである。 b 原告らは,真摯に自らの生き方を探り,教員としての良心に忠実であろうとしたからこそ,本件不起立等に至ったのであり,その動機の真摯性を踏まえて本件不起立等の非違性の軽重が判断されるべきである。 c 原告らの本件不起立等は,国旗掲揚及び国歌斉唱という卒業式等の進行を殊更妨害するなどの積極的な行為に出たものでも,生徒達に国歌斉唱の拒否をあおるものでもなく,国歌斉唱時のわずか数十秒の間,静かに着席していたというものであ 国旗掲揚及び国歌斉唱という卒業式等の進行を殊更妨害するなどの積極的な行為に出たものでも,生徒達に国歌斉唱の拒否をあおるものでもなく,国歌斉唱時のわずか数十秒の間,静かに着席していたというものであり,自らの思想・良心の自由を防衛する以上の積極的行為を伴わない極めて平穏かつ消極的なものであった。そして,実際にも,卒業式等の進行及び厳粛さに具体的な支障が生じるなどの影響はなかった。被告は,本件不起立等が生徒及び保護者の面前で行われていることは重大であるなどと主張するが,その時間は1分間に満たない消極的態様によるものであり,卒業式等への影響は限りなく小さい。 (イ) 本件各処分により原告らが受ける不利益は,以下のとおり重大なものである。 a 原告らは,本件各職務命令により,憲法で保障されるべき思想・良心の自由を侵害され,本件各処分を受けたことにより,全体の奉仕者たるにふさわしくない,職の信用を傷付けた,職全体の不名誉などと 言われて教師としての自尊心や誇りを全面的に否定され,甚大な精神的苦痛を受けた。 b 原告らは,本件各処分によって,以下(a)~(d)のとおり,大きな経済的不利益を受けた。 (a) 原告らは,本件各処分を受けたことにより,3か月の昇給延伸,勤勉手当の10%削減などといった経済的不利益を受けた。 (b) 東京都においては,平成18年度まで,校長の推薦に基づき,各学校ごとに一定比率の職員を対象にして3~12か月間の昇給時期の短縮を行うという運用がされていたが,原告らは,昇給時期の短縮を受ける対象者から除外される欠格基準とされている懲戒処分である戒告以上の本件各処分を受けたため,上記推薦を得ることができなかった。 (c) 東京都には,教職員を定年退職 給時期の短縮を受ける対象者から除外される欠格基準とされている懲戒処分である戒告以上の本件各処分を受けたため,上記推薦を得ることができなかった。 (c) 東京都には,教職員を定年退職した者が希望すれば嘱託として再雇用や再任用される制度があるが,定年退職した原告らは,嘱託採用を希望しても採用を拒否された。また,定年退職前の原告らについても,定年退職後に嘱託採用を希望しても採用されないという不利益を受けている。 (d) 勤続25年以上の者は,永年勤続者感謝要綱に基づき,永年勤続表彰(「感謝」)の対象となるが,懲戒処分を受けた者は,処分発令から2年間,同表彰の対象から除外される。原告らの中には,同表彰の対象者がいたが,本件各処分を受けたため,当該原告は,同表彰を受けられなかった。また,当該原告は,同表彰に伴う東京都福利厚生事業団からの旅行券(金5万円)の不支給及び長期勤続休暇(在職25年目に4日間)の取得資格停止という不利益も受けている。 c 原告らは,本件各処分だけではなく,本件各処分に関連して,以下 (a)~(e)の特別の制裁措置を受けた。 (a) 本件不起立等によって懲戒処分を受けた者は,各年7月下旬に服務事故再発防止研修の基本研修を受講させられ,減給処分を受けた者は,更に専門研修(個別研修)を受講させられた。 (b) 被処分者が在籍する各学校の管理職は,都教委が主催する研修を受講させられ,卒業式等における起立等を徹底するよう指導され,当該学校において,管理職により,卒業式等における起立等を徹底するため,①全員研修(校内の教職員全員を招集して実施),②グループ研修(分掌等を単位として実施),③個別研修(被処分者を対象として実施)の三つの校内研修が実施された。 式等における起立等を徹底するため,①全員研修(校内の教職員全員を招集して実施),②グループ研修(分掌等を単位として実施),③個別研修(被処分者を対象として実施)の三つの校内研修が実施された。 (c) 被処分者は,教職員に対する業績評価制度において,「学校運営」の項目について,例外なく「C」以下の評価を受けることとなる。 (d) 原告らの中に,本件各処分を受けたことを理由として,学級担任の業務を委嘱されないなど,学校内の校務分掌の上で,不当な取扱いを受けた者がいる。 (e) 原告らの中に,本件各処分を受けた者であることを理由として,人事異動上の不当な取扱い(通常よりも早期に異動させられる,遠隔地の学校に異動させられるなど)をされた者がいる。 d 原告らが,今後,「転向」や「改宗」をし,又は面従腹背の屈辱を甘受して卒業式等において起立等をするようにしない限り,本件各処分と同様の原告らの思想及び良心そのものを対象とする懲戒処分が繰り返され,累積,加重されることとなるが,その不利益は計り知れない。 ウ都教委は,本件各処分において,最も重視すべき事項である原告ら教職員及び生徒の精神的自由の尊重,教育に対する不当な支配の抑制を不当 かつ安易に軽視し,原告らが本件不起立等を除いたその余の面では教師として優秀であることを考慮せず,他方,本来考慮すべきではない事項である都知事や一部の都議会議員の意向を考慮して,卒業式等の進行が妨害される抽象的可能性を過大に評価した。 エ都教委は,職務命令違反1回目は戒告,同2回目は減給処分10分の1・1月,同3回目は減給処分10分の1・6月,同4回目は停職処分1月というように,非違行為の回数のみで処分量定を重くするという取扱いをしている。 1回目は戒告,同2回目は減給処分10分の1・1月,同3回目は減給処分10分の1・6月,同4回目は停職処分1月というように,非違行為の回数のみで処分量定を重くするという取扱いをしている。 オ最高裁平成8年3月8日判決・民集50巻3号469頁は,宗教上の信条に基づいて剣道実技を拒否した学生が,学校長から原級留置処分及び退学処分を受けたという事案において,これら処分に係る裁量権の逸脱又は濫用を認めているところ,同判決との比較においても,上記ア~エの事情に鑑みれば,本件各処分は,社会観念上著しく妥当を欠くものというべきである。 (2) 被告の主張ア本件不起立等は,以下(ア)~(エ)のとおり,公務の適正な遂行を妨げるものであって,都民に対する重大な背信的行為であり,職場内においても,職場内の秩序維持の観点から見過ごすことができないものであって,公務員の服務の根幹に係わる重大な非違行為というべきである。したがって,本件不起立等に対してされた本件各処分における処分量定は適正であり,本件各処分が社会観念上著しく妥当を欠くものでないことは明らかである。 (ア) 本件不起立等は,公教育を担う教育公務員が,卒業式等の場において,公教育の根幹である学習指導要領に基づき教育課程を適正に実施するために発せられた重要な職務命令に違反するという重大な非違行為である。 (イ) 本件不起立等は,卒業式等の来賓,保護者はもとより,適正に国旗・国歌の指導を受けることとされている児童・生徒を目の前にしてあえて起こされた非違行為であり,教育上好ましくないものである。 (ウ) 本件不起立等は,都教委教育長が平成11年10月19日付け都立高等学校長宛ての「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通 あり,教育上好ましくないものである。 (ウ) 本件不起立等は,都教委教育長が平成11年10月19日付け都立高等学校長宛ての「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通達)」(以下「平成11年通達」という。)を発出した以降,校長が繰り返し指導し,本件通達発出後も校長が指導したにもかかわらず発生した職務命令違反行為である。 (エ) 学校も組織である以上,その教師の職にある原告らは,上司である校長の命令に従うことは当然であるにもかかわらず,本件不起立等は,組織人として職務上の義務違反を行ったものである。 イ原告らは,本件通達及び本件各職務命令が違憲違法であることを前提として,本件各処分が裁量権の逸脱又は濫用に該当する旨主張するが,その前提が誤りであることは,既述のとおりであり,上記主張は理由がない。 11 原告らの損害の有無及び額(1) 原告らの主張原告らは,教師としての教育観,職業倫理を獲得した結果として,起立斉唱等ができない教師となった者であり,起立斉唱等の強制は,原告らの教育観や職業倫理を全面的に否定するものである。原告らは,本件通達及び本件各職務命令により,起立斉唱等を強制され,また,自己の信条等に忠実になろうとすれば懲戒処分という不利益を受けざるを得ず,この不利益を回避しようとすれば自己の信条等に反する行為を余儀なくされるという矛盾と葛藤を余儀なくされ,さらに,自己の信条等に忠実に真摯な動機から本件不起立等に出たことによる制裁として本件各処分を受けたことによって大きな精神的苦痛と様々な不利益(上記10(1)イ(イ))を受けた。原告らの受けた精神 的苦痛に対する慰謝料の額は,各懲戒処分ごとに少なくとも50万円を下らない。また,損害に含まれるべき弁護士費用は, 神的苦痛と様々な不利益(上記10(1)イ(イ))を受けた。原告らの受けた精神 的苦痛に対する慰謝料の額は,各懲戒処分ごとに少なくとも50万円を下らない。また,損害に含まれるべき弁護士費用は,それぞれ上記慰謝料の額の1割に相当する5万円を下らない。 (2) 被告の主張争う。本件通達,本件各職務命令及び本件各処分が違憲,違法なものでないことは,既述のとおりであり,原告らの損害賠償請求は理由がない。 第4 争点に対する判断 1 判断の前提となる事実関係上記第2の2の前提事実(以下「前提事実」という。),以下に記載の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 学習指導要領の改訂ア小学校,中学校及び高等学校の各学習指導要領では,平成元年3月まで,特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱いについて,「国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合には,児童(生徒)に対してこれらの祝日などの意義を理解させるとともに,国旗を掲揚し,国歌を齊唱させることが望ましいこと。」と定められていたが,同月15日,学習指導要領が改訂され,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」との国旗国歌条項が定められた。なお,国旗国歌条項は,その後改訂されていない。 養護学校等の小学部・中学部・高等部の学習指導要領では,同年10月まで,特別活動の目標,内容及び指導計画の作成と内容の取扱いについて,それぞれ小学校,中学校,高等学校の学習指導要領に準ずるものとしていたほか,「児童又は生徒の経験を広め,社会性を養い,好ましい人間関係を育てるため,特に特別活動においては,小学校の児童又は中学校の生徒(高等学校の生徒)及び地域社会の人々と活 領に準ずるものとしていたほか,「児童又は生徒の経験を広め,社会性を養い,好ましい人間関係を育てるため,特に特別活動においては,小学校の児童又は中学校の生徒(高等学校の生徒)及び地域社会の人々と活動を共にする機会を積極的に 設けることが必要である。」と定められていたが,同年10月24日,各学習指導要領が改訂され,上記定めのうち,「特に特別活動においては,」の次に「集団活動を通じて」が加えられ,また,上記定めに続けて,「その際,児童又は生徒の心身の障害の状態及び特性等を考慮して,活動の種類や時期,実施方法等を適切に定めるものとする。」が加えられたが,上記取扱いについての小学校,中学校及び高等学校の各学習指導要領の定めを準用する旨の規定に改訂はなかった。 [乙19,20,23,53,54]イなお,文部省作成の「高等学校学習指導要領解説特別活動編」(平成11年12月)には,国旗国歌条項について,以下の解説(以下「指導要領解説」という。)がされている。 「 国際化の進展に伴い,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てることは重要なことである。 学校において行われる行事には,様々なものがあるが,この中で,入学式や卒業式は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,新しい生活の展開への動機付けを行い,学校,社会,国家など集団への所属感を深める上でよい機会となるものである。このような意義を踏まえ,入学式や卒業式においては,『国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする』こととしている。 入学式や卒業式のほかに,全 る上でよい機会となるものである。このような意義を踏まえ,入学式や卒業式においては,『国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする』こととしている。 入学式や卒業式のほかに,全校の生徒及び教職員が一堂に会して行う行事としては,始業式,終業式,運動会,開校記念日に関する儀式などがあるが,これらの行事のねらいや実施方法は学校により様々である。 したがって,どのような行事に国旗の掲揚,国歌の斉唱指導を行うかについては,各学校がその実施する行事の意義を踏まえて判断するのが適 当である。 なお,入学式や卒業式などにおける国旗及び国歌の指導に当たっては,国旗及び国歌に対する正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てることが大切である。 」[甲501,乙61](2) 東京都における国旗・国歌の指導状況等(平成10年まで)ア(ア) 都教育庁指導部は,上記(1)アの学習指導要領の改訂を受けて,平成2年2月3日,「新学習指導要領の移行措置について-入学式・卒業式における国旗・国歌の扱い-」を作成した。これには,国旗・国歌の扱いに関する都教委の基本的な考え方として,「都教育委員会は,かねてから国旗及び国歌について,学習指導要領の趣旨に即してこれを尊重する態度を育てるよう指導してきたところである。児童・生徒が,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,学校教育において,国際社会に生きる日本人としての自覚を培うとともに,国旗及び国歌に対する正しい認識をもたせ,尊重する態度を養うことが極めて大切であると考える。都教育委員会は,各学校の入学式,卒業式などにおける国旗の掲揚,国歌の斉唱指導が,平成2年度から新学習指導要領に即して行われるよう,区市町村 たせ,尊重する態度を養うことが極めて大切であると考える。都教育委員会は,各学校の入学式,卒業式などにおける国旗の掲揚,国歌の斉唱指導が,平成2年度から新学習指導要領に即して行われるよう,区市町村教育委員会並びに都立学校長に対して指導する。」とし,都教委の指導上の要点として,「学校においては,入学式や卒業式などの意義を踏まえ,学習指導要領改訂の趣旨及び移行措置に基づいて,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとすること。」,「入学式や卒業式の実施に当たっては,各教科等における指導との関連を図り,教育活動全体を通じて国旗及び国歌に対する正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てるようにすること。」,「国旗を掲揚し,国歌を斉唱するよう指導するに当たっては,校長を中心として,教職員の共通理解の下に協力して実施 するようにするが,共通理解が得られず実施が困難な状況においては,学習指導要領の法的根拠を示し,校長の責任により実施すること。」,「校長は,国旗の掲揚場所について,入学式や卒業式の意義を踏まえ,そのねらいが達成できるよう適切に定めること。」などを挙げている。 [乙25](イ) また,都教委教育長は,同月20日,都立高等学校長及び都立高等専門学校長に対し,「平成元年度の卒業式における国旗及び国歌の取扱いについては,新学習指導要領に明示された趣旨を踏まえ,一層適切に行うようにする。平成二年度の入学式における国旗及び国歌の取扱いについては,新学習指導要領に則して行う。」と記載した「学年末・学年始めの生活指導について(通知)」を発した。 [乙26]イ都教委教育長は,平成6年1月18日,都立学校長に対し,「入学式や卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通知)」を発出し,「児童 いて(通知)」を発した。 [乙26]イ都教委教育長は,平成6年1月18日,都立学校長に対し,「入学式や卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通知)」を発出し,「児童・生徒が,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,学校教育において,国際社会における日本人としての自覚を培うとともに,国旗及び国歌に対する正しい認識をもたせ,尊重する態度を養うことが極めて大切であります。」として,卒業式等における国旗・国歌の取扱いについて,平成元年改訂の高等学校学習指導要領に基づく遺漏のない実施を求めた。 しかし,東京都内の公立小・中・高等学校の平成5年度卒業式,平成6年度入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の実施状況の調査結果は,以下(ア)及び(イ)のとおりであった。なお,都教育庁指導部長は,同年5月13日,文部省に対して同調査結果を回答するに当たり,実施状況に関する特記事項として,「職員団体の反対があり,十分な実施状況にない。」,「国歌斉唱の際,一部の教員が意識的に着席したままの学校があった。」,「職 員団体等を中心に,各学校の教職員に国旗掲揚及び国歌斉唱に反対するよう呼びかける文書や電話連絡等があった。実施しようとする校長に対しては,抗議電報等が集中するなどで実施できない学校が多くあった。」等を記載している。 (ア) 平成5年度卒業式a 国旗掲揚の実施率小学校 98.4%(1385校/1407校)中学校 99.5%( 662校/ 665校)高等学校 70.5%( 148校/ 210校)b 国歌斉唱の実施率小学校 83.8%(1179校/1407校)中学校 81.2%( 540校/ 665校)高等学校 4.8%( 10校/ 210校)(イ) 平 210校)b 国歌斉唱の実施率小学校 83.8%(1179校/1407校)中学校 81.2%( 540校/ 665校)高等学校 4.8%( 10校/ 210校)(イ) 平成6年度入学式a 国旗掲揚の実施率小学校 98.2%(1382校/1407校)中学校 99.5%( 663校/ 666校)高等学校 83.7%( 175校/ 209校)b 国歌斉唱の実施率小学校 81.0%(1140校/1407校)中学校 82.1%( 547校/ 666校)高等学校 4.3%( 9校/ 209校)[乙28,29]ウ文部省は,平成6年10月,国会における国旗・国歌に関する質疑応答を踏まえた指導方針の確認文書として,「学校における国旗・国歌の指導について」を作成し,衆議院予算委員会において配布しているところ,同 文書には,「学習指導要領は,学校教育法の規定に基づいて,各学校における教育課程の基準として文部省告示で定められたものであり,各学校においては,この基準に基づいて教育課程を編成しなければならないものである。」,国旗国歌条項について,「校長教員は,これに基づいて児童生徒を指導するものである。」,「このことは,児童生徒の内心まで立ち入って強制しようとする趣旨のものではなく,あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことが必要である。」などと記載されている。 [乙30]エ(ア) 文部省初等中等教育局長は,平成10年10月15日,各都道府県教委教育長等に対し,全国の公立小・中・高等学校で行われた平成9年度卒業式及び平成10年度入学式における国旗掲揚,国歌斉唱の実施状況に関する調査結果を記載した「公立小・中・高等学校における入学式及び卒業式での国旗掲揚及び国歌 立小・中・高等学校で行われた平成9年度卒業式及び平成10年度入学式における国旗掲揚,国歌斉唱の実施状況に関する調査結果を記載した「公立小・中・高等学校における入学式及び卒業式での国旗掲揚及び国歌斉唱に関する調査について(通知)」を発出し,平成7年春の調査に比べて全体としては実施率が上昇しているものの,いまだ実施されていない学校があるなどとし,「これからの国際社会に生きていく国民として,我が国の国旗・国歌はもとより諸外国の国旗・国歌に対する正しい認識と,それらを尊重する態度を育てることは重要であ」り,このような考え方に基づき,国旗国歌条項が定められているとして,平成元年改訂の学習指導要領に基づき,国旗及び国歌に関する指導が適切に行われるよう指導の徹底を求めた。上記の調査結果(平成6年度卒業式及び平成7年度入学式の調査結果を含む。)は,以下a~dのとおりである。 a 平成6年度卒業式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 98.4% 97.7% 中学校 98.0% 98.3%高等学校 97.8% 84.7%(b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 87.7% 83.0%中学校 84.2% 81.5%高等学校 77.6% 4.8%b 平成7年度入学式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 98.4% 97.7%中学校 98.0% 98.5%高等学校 97.9% 84.5%(b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 97.7%中学校 98.0% 98.5%高等学校 97.9% 84.5%(b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 85.8% 80.0%中学校 84.0% 81.5%高等学校 78.4% 4.4%c 平成9年度卒業式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.0% 98.9%中学校 98.5% 99.4%高等学校 98.1% 84.0%実施率が100%であったのは,47都道府県のうち,小学校39府県,中学校40府県,高等学校40府県である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 88.2% 85.8%中学校 84.8% 85.3%高等学校 80.1% 3.9%実施率が100%であったのは,47都道府県のうち,小学校29県,中学校33県,高等学校32県である。 d 平成10年度入学式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 98.8% 98.6%中学校 98.4% 99.1%高等学校 98.1% 85.0%都立養護学校等 94.6%実施率が100%であったのは,47都道府県のうち,小学校38府県,中学校40府県,高等学校38府県である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 86.6% 83.8%中学校 84.7% 86.0%高等学校 80.6% (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 86.6% 83.8%中学校 84.7% 86.0%高等学校 80.6% 3.4%都立養護学校等 23.2%実施率が100%であったのは,47都道府県のうち,小学校25県,中学校32県,高等学校32県である。 [乙1,2の1,70,85](イ) 都教育庁指導部長は,上記(ア)の通知を受け,平成10年11月9 日,都立高等学校長等に対し,「公立小・中・高等学校における入学式及び卒業式での国旗掲揚及び国歌斉唱に関する調査について(通知)」を発出し,「これからの国際社会に生きていく国民として,我が国の国旗・国歌はもとより諸外国の国旗・国歌に対する正しい認識と,それらを尊重する態度を育てることは,重要なことであ」るとして,平成元年改訂の学習指導要領に基づき,国旗及び国歌に関する指導が適切に行われるように指導を徹底することを求めた。 [乙1,2の2,70](ウ) また,平成9年及び平成10年当時,都立高等学校における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率は,全国の公立高等学校の中で1番ないし2番目に低かった。そこで,都教委は,都立高等学校に対して学習指導要領に基づいた国旗・国歌の指導を行うよう指導,助言することとし,都教育庁指導部長は,同年11月20日,都立高等学校長に対し,以下の内容の実施指針(以下「平成10年実施指針」という。)を添付した「入学式及び卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の徹底について(通知)」を発出した。 「都立高等学校における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針 1 国旗の掲揚について入学式や卒業式などにおける国旗の取扱いは,次のとおりとする。 指導の徹底について(通知)」を発出した。 「都立高等学校における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針 1 国旗の掲揚について入学式や卒業式などにおける国旗の取扱いは,次のとおりとする。 なお,都旗を併せて掲揚することが望ましい。 (1) 国旗の掲揚場所等ア式典会場の正面に揚げる。 イ屋外における掲揚については,掲揚塔,校門,玄関等,国旗の掲揚状況が生徒,保護者,その他来校者に十分に認知できる場所に掲揚する。 (2) 国旗を掲揚する時間 式典当日の生徒の始業時刻から終業時刻までとする。 2 国歌の斉唱について入学式や卒業式などにおける国歌の取扱いは,次のとおりとする。 (1) 式次第に「国歌斉唱」を記載する。 (2) 式典の司会者が「国歌斉唱」と発声する。 」[甲3,乙1,3,70](3) 東京都における国旗・国歌の指導状況等(平成11年から平成12年まで)ア都教育庁は,平成11年6月23日,都立学校の卒業式等における国旗掲揚・国歌斉唱に伴う様々な問題への対応や学校長に対する支援等を図るため,「卒業式・入学式対策本部」を設置した。 [乙1,32,70]イ国旗国歌法の制定(ア) 平成11年8月13日,国旗国歌法が公布,施行された。 (イ) 国旗国歌法については,その法案の検討過程において,国旗・国歌の尊重義務,国や地方公共団体の国旗掲揚義務等を定める条項を設けることも検討されたが,最終的には,国旗・国歌の定義規定を置くことのみを内容とする法案が国会に提出,審議され成立した。なお,同法案の国会における審議過程における政府関係者の発言内容として以下のものがある。 a 内閣総理大臣による発言(a)「今回の法制化の趣旨は,これまで長年の ,審議され成立した。なお,同法案の国会における審議過程における政府関係者の発言内容として以下のものがある。 a 内閣総理大臣による発言(a)「今回の法制化の趣旨は,これまで長年の慣行により,国民の間に広く定着している国旗と国歌を成文法で明確に規定するものであります」,「政府としては,今回の法制化に当たり,国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えておらず,したがって,国民の生活に何らの影響や変化が生ずることとはならないと考えている」, 「学校における国旗と国歌の指導は,児童生徒が国旗と国歌の意義を理解し,それを尊重する態度を育てるとともに,全ての国の国旗と国歌に対して,ひとしく敬意を表する態度を育てるために行っているものであります。このような,学校における国旗と国歌の指導の重要性に鑑み,今後とも,これまでと同様に適切に実施することといたしており,今回の法制化に伴い,その方針に変更が生ずるものではないと考えております。」(同年6月29日開催の衆議院本会議)(b)「学習指導要領に基づいて,校長,教員は,児童生徒に対し国旗・国歌の指導をするものであります。このことは,児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものでなく,あくまでも教育上の課題として指導を進めていくことを意味するものであります。」(同年7月21日衆議院内閣委員会)b 文部大臣による発言(a)「今回の法案は,国旗・国歌の根拠について,慣習であるものを成文法としてより明確に位置づけるものであり,これによって,学校教育において,国旗・国歌に対する正しい理解がさらに促進するものであると考えており,(…中略…)文部省といたしましては,法制化が行われた場合においても,学習指導要領に基づき,学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導 旗・国歌に対する正しい理解がさらに促進するものであると考えており,(…中略…)文部省といたしましては,法制化が行われた場合においても,学習指導要領に基づき,学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではないと考えており,今後とも,学校における指導の充実に努めてまいります。」(同日開催の衆議院本会議)(b)「学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させまして,そしてこれを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるということが重要なことでございます。学習指導要領に基づきます国旗 ・国歌の指導は,憲法,教育基本法に基づきまして,人格の完成を目指し,平和的な国家及び社会の形成者としての国民を育成することを目的として行っているものでございまして,憲法に定めております思想及び良心の自由を制約するものではないと考えております。」,「学校教育において,国民としての基本的なマナーとして国旗・国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることは,私は極めて重要であると考えております。」,「学校において,校長の判断で学習指導要領に基づき式典を厳粛に実施するとともに,児童生徒に国旗・国歌を尊重する態度を指導する一環として児童生徒にみずから範を示すことによる教育上の効果を期待して,教員に対しても国旗に敬意を払い国歌を斉唱するよう命ずることは,学校という機関や教員の職務の特性にかんがえてみれば,社会通念上合理的な範囲内のものと考えられます。そういう点から,これを命ずることにより,教員の思想,良心の自由を制約するものではないと考えております。」,「国旗・国歌の指導は,国民として必要な基礎的,基本的な内容を身につけることを目的として行われているものでござ を命ずることにより,教員の思想,良心の自由を制約するものではないと考えております。」,「国旗・国歌の指導は,国民として必要な基礎的,基本的な内容を身につけることを目的として行われているものでございまして,(…中略…)児童生徒の内心にまで立ち入って強制するものではございません。あくまでも教育指導上の課題として行われるものでございます。」(同年7月21日開催の内閣委員会文教委員会連合審査会)(c)「教員は,関係の法令や上司の職務上の命令に従いまして教育指導を行わなければならないものでございまして,各学校においては,法規としての性質を有する学習指導要領を基準といたしまして,校長が教育課程を編成し,これに基づいて教員は国旗・国歌に関する指導を含め教育指導を実施するという職務上の責務を負うものでございます。」,「(国旗国歌条項について)校長,教員はこれに基 づいて児童生徒を指導するものであります。このことは児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようとする趣旨のものではなく,あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことを意味するものであります。」(同年8月2日開催の参議院・国旗及び国歌に関する特別委員会)c 内閣官房長官による発言(a)「君が代の歌詞は,我が国憲法のもとでは,天皇を日本及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い平和と繁栄を祈念したものと理解することが適当と考えており,憲法の主権在民の精神に合致するものである」(同年6月29日開催の衆議院本会議)(b)「政府といたしましては,法制化に伴いまして,国民に対し,国旗の掲揚,国歌の斉唱等に関し,義務付けを行うことは考えておらないわけでございまして,現在の運用に変更が生ずることにはならないわけでございます。法制化によりまして,先ほど申し上げましたように,内心の の掲揚,国歌の斉唱等に関し,義務付けを行うことは考えておらないわけでございまして,現在の運用に変更が生ずることにはならないわけでございます。法制化によりまして,先ほど申し上げましたように,内心の自由との関係で問題が生ずるとは承知していません。」(同年7月21日開催の衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会)(c)「かつてこの五十年間,教育の現場におきまして指導要領等が定められました後におきましても,法制化がないじゃないか,法的根拠がないじゃないかということが入学式あるいは卒業式の国旗・国歌のありようについて争いの起きるもととなってきた(…中略…)生徒の内心に入るものではございませんけれども,この法制化によって根拠を得るということの成果はあると考えております。」(同日開催の衆議院内閣委員会)(d)「国旗・国歌の法制化と憲法19条の思想及び良心の自由との関係につきましては,政府といたしましては,法制化に当たりまして, 国旗の掲揚及び国歌の斉唱に関しまして義務付けを行うようなことは一切考えていないところでございまして,各人の内心にまで立ち入って国旗・国歌に対する思いを強制するものではない」(同年8月2日開催の国旗及び国歌に関する特別委員会)[甲2,168,169,554,564の1~10]ウ(ア) 文部省初等中等教育局長及び文部省高等教育局長は,各都道府県教育委員会教育長等に対し,平成11年9月17日,全国の公立小・中・高等学校における平成10年度卒業式及び平成11年度入学式での国旗掲揚,国歌斉唱の実施状況に関する調査結果を記載した「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」を発出し,国旗国歌法の制定に触れ,「国旗及び国歌の指導については,児童生徒に我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態 を記載した「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」を発出し,国旗国歌法の制定に触れ,「国旗及び国歌の指導については,児童生徒に我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるために,学習指導要領に基づいて行われているところであり,この法律の施行に伴って,このような学校におけるこれまでの国旗及び国歌に関する指導の取扱いを変えるものではありません。」とした上で,平成10年春の調査に比べて全体として実施率が上昇しているが,一部の都道府県及び政令指定都市において依然として実施率が低い状況にあるとして,国旗及び国歌に関する指導が一層適切に行われるように指導することを求めた。上記の調査結果は,以下のとおりである。 a 平成10年度卒業式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.0% 99.4%中学校 98.6% 99.8%高等学校 98.8% 92.3% 都立養護学校等 98.2%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校49府県・指定都市,中学校49府県・指定都市,高等学校49府県・指定都市である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 90.5% 87.7%中学校 87.1% 88.4%高等学校 83.5% 7.2%都立養護学校等 26.8%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校39県・指定都市,中学校40県・指定都市,高等学校38県・指定都市である。 b 平成11年度入学式(a) 26.8%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校39県・指定都市,中学校40県・指定都市,高等学校38県・指定都市である。 b 平成11年度入学式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.0% 99.4%中学校 98.6% 99.8%高等学校 99.0% 95.0%都立養護学校等 98.2%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校46府県・指定都市,中学校49府県・指定都市,高等学校49府県・指定都市である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 89.2% 85.6% 中学校 87.2% 87.0%高等学校 85.2% 5.9%都立養護学校等 28.6%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校36県・指定都市,中学校40県・指定都市,高等学校39県・指定都市である。 [乙1,4の1,70,85](イ) 都教育庁指導部長は,上記(ア)の通知を受け,平成11年10月1日,都立学校長等に対し,「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」を発出し,「児童及び生徒が,我が国の国旗及び国歌の意義を理解し,諸外国の国旗及び国歌も含め,それらを尊重する態度を育てることは,重要なことです。」として,平成元年改訂の学習指導要領に基づき,国旗及び国歌に関する指導が一層適切に行われるように指導の徹底を求めた。 [乙1,4の2]エ(ア) 都教委教育長は,平成11年10月19日,都立高等学校長に対し,平成11年通達(入学式及び卒 び国歌に関する指導が一層適切に行われるように指導の徹底を求めた。 [乙1,4の2]エ(ア) 都教委教育長は,平成11年10月19日,都立高等学校長に対し,平成11年通達(入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について)を発出し,卒業式等を学習指導要領及び平成10年実施指針に基づき実施することを命ずるとともに,実施に当たっては,①教職員に対しては,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の意義について,学習指導要領に基づき説明し,理解を求めるよう努めるとともに,併せて,国旗国歌法制定の趣旨を説明すること,②児童・生徒に対しては,国際社会に生きる日本人としての自覚及び我が国のみならず他国の国旗及び国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度が重要であることを十分説明すること,③保護者に対しては,学校教育において,児童・生徒に国旗及び国歌に対する正しい認識や,それらを尊重する態 度の育成が求められていること,並びに卒業式等において,学校は国旗掲揚及び国歌斉唱の指導を学習指導要領に基づき行う必要があることなどを,時機をとらえて説明すること,④校長が国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり,職務命令を発した場合において,教職員が式典の準備業務を拒否した場合,又は式典に参加せず式典中の生徒指導を行わない場合は,服務上の責任を問われることがあることを教職員に周知することを踏まえる必要がある旨通達した。 [甲4,乙1,5,70,85](イ) 都教委教育長は,同日,都立養護学校等校長に対し,「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通達)」を発出し,平成10年実施指針と同内容の「都立盲・ろう・養護学校における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」に基づき,卒業式等を実施することを命ずるとと 旗掲揚及び国歌斉唱の指導について(通達)」を発出し,平成10年実施指針と同内容の「都立盲・ろう・養護学校における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」に基づき,卒業式等を実施することを命ずるとともに,実施に当たっては,上記(ア)①~④の点を踏まえる必要がある旨通達した。 [乙1,55,70,85](ウ) 都教育庁指導部は,平成12年1月,都立学校の全教職員向けに「入学式や卒業式における体験を通して,自国の国旗・国歌を尊重する態度を養い,それを通して,他の国の国旗・国歌も尊重する態度を身に付け,国際社会において信頼され,尊敬される日本人を育成することが重要です。学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な指導の在り方を,校長を中心に全教職員で工夫し,計画的に取り組んでください。」などと記載するとともに,国旗国歌条項,指導要領解説,平成10年実施指針,平成11年通達を掲載するなどした「入学式・卒業式の適正な実施について」と題するリーフレットを作成し,全職員に配布した。なお,このリーフレットは,高等学校教育指導課が作成した都立高等学校向けのものと,心身障害教育指導課が作成した都立養護学校等向けのものがあり,都立 高等学校向けのものには,全国の公立高等学校の卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況の推移(表),ある保護者の抗議文(平成11年3月のある都立高等学校の卒業式において,教員が校長の指示に従わず,卒業式の実施に協力しなかったことについて,保護者が当該学校に提出した抗議文)などが,都立養護学校等向けのものには,「入学式や卒業式などにおける国旗及び国歌の取扱い」と題して,指導要領解説の「特別活動編」第4章「指導計画の作成と内容の取扱い」第3節「入学式や卒業式などにおける国旗及び国歌の取扱い」の中から「3 入学式や卒業式に どにおける国旗及び国歌の取扱い」と題して,指導要領解説の「特別活動編」第4章「指導計画の作成と内容の取扱い」第3節「入学式や卒業式などにおける国旗及び国歌の取扱い」の中から「3 入学式や卒業式においては,その意義をふまえ,国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するよう指導するものとする」の部分を抜粋したものなどが掲載されていた。 [甲234,乙1,6,7,70,85]オ平成11年度卒業式及び平成12年度入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の実施率は以下のとおりであった。 (ア) 平成11年度卒業式a 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.7% 99.9%中学校 99.3% 100%高等学校 99.7% 99.0%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校50府県・指定都市,中学校50都府県・指定都市,高等学校54府県・指定都市である。 b 国歌斉唱の実施率全国東京都 小学校 95.4% 93.2%中学校 93.6% 94.9%高等学校 96.2% 88.5%都立養護学校等 98.2%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校42県・指定都市,中学校43県・指定都市,高等学校45県・指定都市である。 (イ) 平成12年度入学式a 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.6% 99.7%中学校 99.4% 100%高等学校 99.8% 100%都立養護学校等 100%実施率が100 東京都小学校 99.6% 99.7%中学校 99.4% 100%高等学校 99.8% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校50府県・指定都市,中学校51都府県・指定都市,高等学校56都府県・指定都市である。 b 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 94.7% 91.8%中学校 94.0% 95.6%高等学校 98.1% 99.0%都立養護学校等 98.2%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校41県・指定都市,中学校44県・指定都市,高等学校48県・指定都市である。 [乙8の1,85](4) 東京都における国旗・国歌の指導状況等(平成13年から平成14年まで)ア(ア) 文部科学省初等中等教育局長は,平成13年5月25日,各都道府県教育委員会教育長等に対し,全国の公立小・中・高等学校における平成12年度卒業式及び平成13年度入学式での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況に関する調査結果を記載した「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」を発出し,国旗掲揚と国歌斉唱に関しては,平成12年春の調査に比べて全体として実施率が上昇しているが,全校実施が達成されていない都道府県教育委員会等では,域内の全ての学校で実施されるように指導を徹底するように求めた。上記の調査結果及び都立養護学校等における実施率は,以下のとおりである。 a 平成12年度卒業式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.9% 100%中学校 養護学校等における実施率は,以下のとおりである。 a 平成12年度卒業式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.9% 100%中学校 99.9% 100%高等学校 100% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校55都府県・指定都市,中学校54都府県・指定都市,高等学校全都道府県・指定都市である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 98.8% 98.6%中学校 98.2% 99.5% 高等学校 99.5% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校47県・指定都市,中学校48県・指定都市,高等学校53都県・指定都市である。 b 平成13年度入学式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.9% 100%中学校 99.9% 100%高等学校 100% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校55都府県・指定都市,中学校54都府県・指定都市,高等学校全都道府県・指定都市である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 98.7% 98.9%中学校 98.4% 100%高等学校 99.6% 100%都立養護学校等 100%実施率が100 小学校 98.7% 98.9%中学校 98.4% 100%高等学校 99.6% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校46県・指定都市,中学校49都県・指定都市,高等学校54都県・指定都市である。 [甲5,6,乙8の1,33,85](イ) 都教育庁指導部長は,上記(ア)の通知を受け,平成13年6月12 日,都立学校長等に対し,「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」を発出し,平成12年度卒業式及び平成13年度入学式においては,一定の改善が図られたが,今後とも,各学校において,国旗及び国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導を徹底するように求めた。 [甲5,乙1,8の2]イ(ア) 都立高等学校における国旗掲揚,国歌斉唱の実施率は,平成12年度卒業式から100%となったものの,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えないところに置く,国歌斉唱を式次第に明記しない,国歌斉唱は単にCD等により曲を流すだけである,国歌斉唱時には,多くの教員が式典会場の外におり,国歌斉唱が終わってから,外にいた教員が式典会場内に入ってくる,国歌斉唱時に教員が起立しないなどの実態があり,都教委は,その実施方法に課題があると考えていた。 [乙62,70,72~79,84,85,86の1・3~5](イ) 都教育庁指導部長は,平成14年4月11日,都教委定例会において,小・中・高等学校における平成13年度卒業式及び平成14年度入学式での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率が昨年同様100%であったことを報告するとともに,昨年度よりは改善されていはいるが,実施上の課題が残っているとして,その具体例 13年度卒業式及び平成14年度入学式での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率が昨年同様100%であったことを報告するとともに,昨年度よりは改善されていはいるが,実施上の課題が残っているとして,その具体例として,国歌斉唱時に一部の教員及び生徒が起立していない,音楽科担当の教師がピアノ伴奏を拒否する,教員の服装が不適切であるといった具体例を紹介した上で,「今後解決すべき課題が,まだかなり残っているわけでございますが,今後とも指導の徹底を図ってまいりたいと思っております。」と説明した。 [乙67]ウ(ア) 文部科学省初等中等教育局長は,平成14年7月31日,各都道府県教育委員会教育長等に対し,全国の公立小・中・高等学校における平 成13年度卒業式及び平成14年度入学式での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況に関する調査結果を記載した「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」を発出し,国旗掲揚と国歌斉唱に関しては,平成13年春の調査に比べて全体として実施率が上昇しているところ,卒業式等における国旗掲揚,国歌斉唱について,児童・生徒に我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるという学習指導要領の趣旨を踏まえ,域内の全ての学校で適切に実施されるように指導を徹底するように求めた。上記の調査結果及び都立養護学校等における実施率は,以下のとおりである。 a 平成13年度卒業式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.9% 100%中学校 99.9% 100%高等学校 100% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校56都府県・指定都市,中学校57都 0%高等学校 100% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校56都府県・指定都市,中学校57都府県・指定都市,高等学校全都道府県・指定都市である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 99.3% 100%中学校 99.2% 100%高等学校 99.8% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち, 小学校51都県・指定都市,中学校52都県・指定都市,高等学校56都府県・指定都市である。 b 平成14年度入学式(a) 国旗掲揚の実施率全国東京都小学校 99.9% 100%中学校 99.9% 100%高等学校 100% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校55都府県・指定都市,中学校57都府県・指定都市,高等学校全都道府県・指定都市である。 (b) 国歌斉唱の実施率全国東京都小学校 99.2% 100%中学校 99.3% 100%高等学校 99.8% 100%都立養護学校等 100%実施率が100%であったのは,59都道府県・指定都市のうち,小学校50都県・指定都市,中学校53都県・指定都市,高等学校56都府県・指定都市である。 [乙33,67](イ) 都教育庁指導部長は,平成14年11月1日,都立高等学校長に対し ち,小学校50都県・指定都市,中学校53都県・指定都市,高等学校56都府県・指定都市である。 [乙33,67](イ) 都教育庁指導部長は,平成14年11月1日,都立高等学校長に対し,平成13年度卒業式及び平成14年度入学式の国旗掲揚及び国歌斉唱はほぼ全校で実施されたが,国旗掲揚及び国歌斉唱の実施態様については,平成11年通達に即していない学校もあったとして,同通達を添 付して,同通達に基づいて一層の改善を図るよう依頼する「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の徹底について(通知)」を発出した。 [乙33](5) 東京都における国旗・国歌の指導状況等(平成15年から平成16年まで)ア(ア) 文部科学省初等中等教育局教育課程課長は,平成15年3月5日,各都道府県教育委員会教育長等に対し,「公立小・中・高等学校における入学式及び卒業式での国旗掲揚及び国歌斉唱に関する取扱いについて(照会)」を発出し,域内の公立の小・中・高等学校における平成14年度卒業式及び平成15年度入学式での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況の報告を求めた。 [乙9の1,70](イ) 都教育庁指導部長は,上記(ア)の照会を受け,同月6日,都立学校長に対し,「公立小・中学校及び都立学校における入学式及び卒業式での国旗掲揚及び国歌斉唱に関する調査について(依頼)」を発出し,平成14年度卒業式及び平成15年度入学式における公立小・中学校及び都立学校の国旗掲揚,国歌斉唱の実施状況について報告を求めた。 従来の調査においては,① 国旗掲揚をしたか否か,② 国歌斉唱をしたか否か,③ 斉唱しなかった場合,メロディーを流したか否かのみが調査事項とされていたが,平成14年度卒業式以降,国旗掲揚の方法(式典会場内か否 おいては,① 国旗掲揚をしたか否か,② 国歌斉唱をしたか否か,③ 斉唱しなかった場合,メロディーを流したか否かのみが調査事項とされていたが,平成14年度卒業式以降,国旗掲揚の方法(式典会場内か否か,壇上か否か,正面か三脚かなど)や,式次第に国歌斉唱と記載したか否かも調査事項とされた。また,卒業式等の実施に関するトラブルの有無・内容,マスコミ等の取材の有無・内容等についても併せて報告することとされた。 [乙9の2,56] (ウ) 上記(イ)の調査により,国旗掲揚,国歌斉唱ともに100%の実施率であったものの,前記(4)イ(ア)と同様,卒業式等の実態は,国歌斉唱時に起立しない教員がいる,司会者が「起立」を発声しない学校がある,司会者が開式前に内心の自由について説明する学校があるなどの状況であることが確認された。 なお,都立高等学校(全日制)及び養護学校等の平成14年度卒業式及び平成15年度入学式における国旗掲揚の方法及び式次第における「国歌斉唱」の記載の有無に関する調査結果は,以下のとおりである。 a 式典会場内における国旗掲揚の方法(a) 平成14年度卒業式(卒業式の実施校数は,高等学校が合計200校,養護学校等が合計56校である。)高等学校養護学校等正面壇上・掲揚 78校 43校壇上・三脚118校 6校会場内・掲揚0校 2校会場内・三脚4校 5校(b) 平成15年度入学式(入学式の実施校数は,高等学校が合計185校,養護学校等が合計55校である。)高等学校養護学校等正面壇上・掲揚 82校 47校壇上・三脚102校 施校数は,高等学校が合計185校,養護学校等が合計55校である。)高等学校養護学校等正面壇上・掲揚 82校 47校壇上・三脚102校 4校会場内・掲揚0校 0校会場内・三脚1校 4校b 式次第における「国歌斉唱」の記載の有無(a) 平成14年度卒業式高等学校養護学校等 記載あり 197校 56校記載なし 3校 0校(b) 平成15年度入学式高等学校養護学校等記載あり 184校 55校記載なし 1校 0校[甲11,557,乙15,36,37,70](エ) 都教育庁指導部長は,平成15年4月10日,都教委定例会において,小・中・高等学校における平成14年度卒業式及び平成15年度入学式での国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率が昨年同様100%であったことを報告するとともに,卒業式等における実施上の課題が残っているとし,その具体例として,国歌斉唱時に一部の教員や生徒が起立しない,司会が国歌斉唱時に内心の自由の説明をするといった例を紹介した上で,「この問題につきましては教育指導上の課題といたしまして,これまでも各学校に対して指導してきたところでございますけれども,依然としてこうした実態がございますので,大きな課題として受けとめまして,今後とも引き続き指導の徹底を図ってまいりたい」と説明した。また,都教育庁指導部長は,同年5月22日,都教委定例会において,上記(ウ)の調査結果を報告するとともに,卒業式等が学習指導要領に基づき適正に実施されるように指導を継続する旨説明した。 [甲 た,都教育庁指導部長は,同年5月22日,都教委定例会において,上記(ウ)の調査結果を報告するとともに,卒業式等が学習指導要領に基づき適正に実施されるように指導を継続する旨説明した。 [甲9,10]イ(ア) 都教委は,平成15年6月25日,都立学校等における卒業式及び入学式が学習指導要領に基づきより適正に実施されるために,都教育庁理事を本部長とする「都立学校等卒業式・入学式対策本部」(以下「本件対策本部」という。)を設置した。 本件対策本部の第1回会合及び第1回幹事会は,同年7月9日に開催 され,その際に配布された資料の一つである「卒業式・入学式の課題と適正実施に向けての対策(案)」と題する書面には,以下の内容が記載されている。 「平成14年度卒業式及び平成15年度入学式実施上の課題 1 国旗掲揚・実施指針どおり,国旗を舞台壇上正面に掲揚していない。高等学校で舞台壇上正面国旗掲揚は卒業式78校(39%),入学式82校(44%),盲・ろう・養護学校は,卒業式43校(77%),入学式47校(85%)である。 2 国歌斉唱・卒業式や入学式の開式前などに,司会が「内心の自由」について説明する学校がある。 ・国歌斉唱時に,司会が「起立」を発声しない学校がある。 ・国歌斉唱時に,起立しない教員がいる。 3 卒業式・入学式全般・校長の指示に従わない教員がいる。 平成15年度卒業式及び平成16年度入学式に向けての目標(案)○ すべての学校で,国旗を舞台壇上正面に掲揚する。 ○ 国歌斉唱時に,司会が「起立」を発声し,全教員が起立する。 平成15年度卒業式及び平成16年度入学式に向けての対策(案) 1 都立学校における卒業式・入学式の適正実施卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の適正実施を を発声し,全教員が起立する。 平成15年度卒業式及び平成16年度入学式に向けての対策(案) 1 都立学校における卒業式・入学式の適正実施卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の適正実施を図るとともに,教職員の服務の厳正を図るために通達を出す。 2 都立学校における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針の改訂平成11年10月の通達「入学式及び卒業式における国旗掲揚 及び国歌斉唱の指導について」に示された実施指針を改訂する。 3 国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施状況調査卒業式・入学式における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施状況を調査し,その結果を都立学校においては学校別に,区市町村立学校においては区市町村別に都民に公表する。 4 都立学校における卒業式における教育長職員の出席設置者である東京都教育委員会が都立学校の卒業式に出席し,祝意を表する。」[甲11,453,乙1,11,12の1,70,85](イ) 平成15年7月2日に開催された東京都議会平成15年第2回定例会において,P33議員が,都教委に対し,国歌斉唱時に内心の自由について説明すること,国歌斉唱時に起立をしない教職員がいることについて見解を求めたところ,P28教育長は,「国歌斉唱時に関し内心の自由を説明することについてでございますが,卒業式や入学式等におきましては,学習指導要領に示された意義を踏まえまして,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう児童生徒に対して指導しなければならないものでございます。卒業式や入学式等は,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,新しい生活への展開への動機づけを行うための儀式的行事でございまして,国歌斉唱に当たって,司会者が教員に対し内心の自由について説明することは,極めて不適切であると考えております。」, 雰囲気の中で,新しい生活への展開への動機づけを行うための儀式的行事でございまして,国歌斉唱に当たって,司会者が教員に対し内心の自由について説明することは,極めて不適切であると考えております。」,「卒業式,入学式において,児童・生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育成すべき教員が,国歌斉唱時に起立しないということは,あってはならないことでございます。都教育委員会は,今後,卒業式,入学式における国歌斉唱の指導を適正に実施するよう,各学校や区市町村教育委員会を強く指導してまいります。」と答弁した。 [甲88] (ウ) 本件通達案の作成本件通達案には,当初,「国旗掲揚及び国歌斉唱等の実施に当たり,校長が職務命令を発した場合において,教職員がこれに従わない場合は,服務上の責任を問われることを,教職員に周知すること。」と記載されていたが,同年10月1日に開催された本件対策本部の第2回会合及び第3回幹事会において,「職務命令を発した場合において」との記載があると,職務命令を発しなければ処分しないということになるとの意見が出され,上記一文は削除された。しかし,同月9日に開催された本件対策本部の第4回幹事会において,幹事から,本件通達は校長に対しての職務命令であるから,教職員への周知は必要である,卒業式等の適正実施に向けて,教職員に対し繰り返し指導していただき,それでも校長の指導に従わないときは職務命令を発するということである旨の発言がされた結果,本件通達の文言となった。 [甲13,14,乙1,12の2,70,71]ウ本件通達の発出(ア) 本件対策本部は,平成15年10月17日に開催された第3回会合において,それまでの検討結果を取りまとめ,同月23日,都教委の平成15年第17回定 2の2,70,71]ウ本件通達の発出(ア) 本件対策本部は,平成15年10月17日に開催された第3回会合において,それまでの検討結果を取りまとめ,同月23日,都教委の平成15年第17回定例会において,新たに発すべき通達案を報告し,P28教育長は,同日,都立学校長に対し,本件通達を発出した。 [前提事実(3)ア,甲1,15,272,乙1,12の3,13,14の3,70,71](イ) 都教委は,同日,本件説明会を開催した。 P28教育長は,本件説明会において,① 都教委は,教育目標及び基本方針の中で,21世紀を担う児童・生徒に,世界の中の日本人としてのアイデンティティをはぐくむ教育が重要であることを示している,②卒業式等で着席したままの教員や国歌斉唱を妨げるような式の運営をす る教員がおり,実施態様には様々な課題がある,③ 卒業式等の適正な実施は儀式的行事の問題にとどまらず,学校運営に対しての校長の経営方針が明確に反映され,教育課程が適切に実施されることを意味するなどとあいさつした。 その後,P29指導部長が,本件通達を読み上げた。 次に,東京都教育長P34事部長は,本件説明会において,① 職務命令を出すに当たっては,いつ,どこで,誰に向かって発したか記録すること,② 国旗は舞台壇上正面に掲揚すること,③ 屋外の国旗掲揚の時間帯は,始業時から終業時まで,例えば,全日制であれば午前8時15分から午後5時ころまでとすること,④ 教職員には国旗に向かって起立し国歌を斉唱させること,⑤ 教職員の座席を指定すること,⑥ 教職員が起立しない場合,現認確認をし,都教委に報告をすること,⑦ 都教委は,同報告を受けて,服務上の責任を問うこととし,都教育庁を挙げて体制を作ること,⑧ 国歌斉唱時に座っている教職員に と,⑥ 教職員が起立しない場合,現認確認をし,都教委に報告をすること,⑦ 都教委は,同報告を受けて,服務上の責任を問うこととし,都教育庁を挙げて体制を作ること,⑧ 国歌斉唱時に座っている教職員にその場で職務命令を発するのは難しいので,職務命令を発する場合は,事前に発すること,⑨国歌斉唱のピアノ伴奏は,会場にピアノがあれば,専科の教員に命ずることとし,いつ,どこで,誰に向かって命令したのか記録すること,⑩教職員が,ピアノを弾きたくないとの意思を示した場合には,職務命令違反として,現認確認をし,都教委に報告をすること,⑪会場設営については,児童・生徒が正面を向くようにすること,⑫教職員には,厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる儀式に相応しい服装をさせること,⑬都教委において,職務命令の発出の方法,手順に関する手順書を示すことなどを説明した。 最後に,P29指導部長は,本件通達は,都立学校長に対する職務命令であると説明した。 [前提事実(3)イ,甲20~24,46,47,303,304,401, 453,乙1,14の1・2,36~40,41の1~11,41の12の1・2,41の14~22,42の1・2,62,70,72,77~79,85,86の1,95]エ本件説明会後における指導等(ア) 都教委は,平成15年10月23日,本件説明会の終了後,地区(通称「学区」)ごとに連絡会を実施し,主任指導主事らが,校長に対し,①国旗を掲揚する「舞台壇上正面」とは,壇上正面の壁面であり,上から吊り下げる場合を含むが,三脚による掲揚は不可である,②国旗及び都旗は,各学校の予算で購入してもらいたい,国旗が3000円~4000円程度,都旗は2万円程度する,③国旗,都旗,校旗の3枚を掲揚する場合は,正面に国旗,向かって左に都旗,向か 可である,②国旗及び都旗は,各学校の予算で購入してもらいたい,国旗が3000円~4000円程度,都旗は2万円程度する,③国旗,都旗,校旗の3枚を掲揚する場合は,正面に国旗,向かって左に都旗,向かって右に校旗とする,④国歌斉唱時に起立していればよく,入場,一同起立,開式の辞,国歌斉唱の順に起立のまま通して行うことでよい,⑤内心の自由を説明することによって,立ちにくい,歌いにくい状況を作らない,⑥教職員は,式場内に可能な限り入れるようにする,⑦ピアノ伴奏できる者がいない場合には,CD等を流す場合もあるので,ピアノ伴奏ができない場合には,その理由を都教委に文書で提出し,都教委に相談すること,⑧何が式典に相応しい服装であるかは社会通念上の判断である,⑨本件通達の「入学式,卒業式等」の「等」には,周年行事(創立記念式典),開校式,閉校式,落成式が含まれる,⑩平成15年度卒業式には,全ての都立学校に教育庁職員を派遣するなどの指導(説明)を行った。 [甲22~24,47,303,304,313,乙14の1・2,38,70,72](イ) P29指導部長は,同年11月11日,都立高等学校と都立養護学校等の合同の校長連絡会において講話し,都議会議員から卒業式等の実施態様について問題が指摘されている,本件通達は職務命令である,本 件通達を卒業式等の適正実施のために校長のツールとして活用してもらいたい,卒業式等については,まず形から入り,形に心を入れればよい,形式的であっても,立てば一歩前進であるなどと話した。また,同連絡会においては,本件要綱が配布され,その内容の説明が行われた。 [甲22,48,53,乙70,86の1,86の5](ウ) 東京都教育長指導部のP35高等学校教育指導課長(以下「P35指導課長」という。)は,同 が配布され,その内容の説明が行われた。 [甲22,48,53,乙70,86の1,86の5](ウ) 東京都教育長指導部のP35高等学校教育指導課長(以下「P35指導課長」という。)は,同年12月9日,都立高校校長連絡会において,教職員に対する職務命令は,書面により立会人を付けて行うこと,教務主任研修会で本件実施指針が憲法違反ではないかと発言した教務主任がいたが,教務主任の発言として不適切であることなどを話した。 [甲22,48,54,68](エ) なお,P28教育長は,同月10日,都議会本会議第4回定例会において,本件通達に関し,「都教育委員会は,これまでも学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施するよう学校を指導してまいりました。その結果,平成12年度卒業式より,全ての都立高等学校,都立盲・ろう・養護学校で国旗掲揚,国歌斉唱は実施されましたが,国旗が参列者から確認できない位置に掲揚されたり,指導すべき立場の教員が国歌斉唱時に起立しなかったりするなど,実施対応にさまざまな課題がございます。今回の通達は,こうした状況を改善し,入学式や卒業式などの儀式的学校行事が適正に実施されるよう,新たな通達を行ったところでございます。」,「(国旗・国歌の指導は)児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものではなく,あくまでも教育指導上の課題として進めているものでございます。」と説明した。 [甲260](オ) 都教育庁指導部のP36副参事は,同月12日に開催された都立養護学校等校長の事務連絡会において,舞台壇上での卒業証書授与は,各 学校において,児童・生徒一人一人の障害の状況や,施設,設備の状況に応じて個別に配慮していくこと,周年行事における国歌斉唱時に不起立の教員がいたことについて,本 舞台壇上での卒業証書授与は,各 学校において,児童・生徒一人一人の障害の状況や,施設,設備の状況に応じて個別に配慮していくこと,周年行事における国歌斉唱時に不起立の教員がいたことについて,本件通達に基づき適切に対応していくこと,必要な場合には職務命令を確実に出すこと,職務命令を出す場合には文書で個別に出すことなどの話をした。 [乙85,86の1](カ) P35指導課長は,平成16年1月13日,都立高校校長連絡会において,校長に対し,同年3月中に,同年4月に実施される入学式に関し,教職員に対して職務命令を出しておくように指導した。また,学区ごとの連絡会が開催され,例えば,第5学区の連絡会においては,担当指導主事が,校長に対し,①卒業式の実施要項の中には会場の配置図,教員の座席図,司会の進行台本,教員の役割分担表を必ず入れること,②式次第には都教委の挨拶を必ず入れること,③実施要項ができたらすぐに担当指導主事に提出すること,④教職員に対しては,口頭及び文書で職務命令を出すことなどを内容とする指導を行った。 [甲22,48,55](キ) 都教育庁指導部のP37主任指導主事は,同日,都立養護学校等校長の連絡会において,平成15年度卒業式及び平成16年度入学式の適正実施をするために本件通達を教職員へ周知徹底すること,本件実施指針に基づいて卒業式等を実施するについて,肢体不自由養護学校におけるスロープ設置等の個別の適正な対応をしてほしいなどの話をした。 [乙85,86の1](ク) 平成16年1月30日,学区ごとの臨時校長連絡会が開催され,例えば,第5学区の連絡会においては,P35指導課長が,校長に対し,「卒業式・入学式の実施に当たって(A高校の周年行事の実施例)」と題する資料を配付し,同資料に基づき指 の臨時校長連絡会が開催され,例えば,第5学区の連絡会においては,P35指導課長が,校長に対し,「卒業式・入学式の実施に当たって(A高校の周年行事の実施例)」と題する資料を配付し,同資料に基づき指導を行った。なお,同資料には, ①2週間前までに式の実施要項(会場図,座席表,式次第,役割分担表等を含む。)を作成すること,②1週間前までに教職員全体に対して口頭で包括的な職務命令を発令すること,③前日までに教職員個人に対して文書で職務命令を発令すること,④式当日は,国歌斉唱状況を確認し,職務命令違反があった場合には,校長がその事実を確認し,報告書を作成することなどが記載されていた。また,同連絡会では,校長に対して,卒業式等の実施に関するQ&Aも配付されたが,終了後に回収された。 [甲22,23,52](ケ) 同年2月10日,都立高校校長連絡会が開催され,その後,学区ごとの連絡会が開催された。例えば,第5学区の連絡会では,担当指導主事らが,校長に対し,教職員に対する職務命令は文書で一人ひとりに手渡すように指導するとともに,卒業式等の実施に関するQ&A等が記載された「卒業式・入学式の適正な実施のために~新実施指針に関する質問に答えて~」と題する校長手持の資料(冊子)を配布した(なお,同資料は,上記(ク)のQ&Aを一部変更したものである。)。 [甲22,23,48,51](コ) 都教育庁の担当指導主事らは,同月から同年3月にかけて,校長に対し,平成15年度卒業式の実施について,直接又は電話等で指導を行い,事前に卒業式実施要項(式場図,進行表,教職員の座席一覧表等)を提出させるとともに,必要があれば修正等を指導するなどし,卒業式等が終了次第,電話や所定の様式の書面により実施状況等を報告することを求めた。また,都教委は (式場図,進行表,教職員の座席一覧表等)を提出させるとともに,必要があれば修正等を指導するなどし,卒業式等が終了次第,電話や所定の様式の書面により実施状況等を報告することを求めた。また,都教委は,各校長に対し,卒業式で国歌斉唱時の不起立等の服務事故が発生した場合,速やかに都教委の人事部担当管理主事に対し,電話連絡をするとともに,人事部職員課に事故報告書を提出することなどを指示した。 [甲22~24,68,100,219,235,304,465の1, 乙40](サ) 都教育庁指導部高等学校教育指導課長は,平成16年3月11日,都立高等学校長に対し,「入学式・卒業式の適正な実施について(通知)」を発し,一部の学校の卒業式において,生徒のほとんどが国歌斉唱時に起立しなかったりするなどの不適正な事態が生じているとして,校長が自らの権限と責任の下に,教育課程の適正な管理を図り,卒業式等の儀式的行事の適正な実施について,以下のとおり教職員への指導を徹底するよう依頼した。 「1 ホームルーム活動や入学式・卒業式等の予行等において,生徒に不起立を促すなどの不適切な指導を行わないこと。 2 生徒会や卒業式実行委員会等の場で,生徒に不起立を促すなどの不適切な指導を行わないこと。 3 式典の妨げになるような行動に生徒を巻き込まないこと。」[乙59,70](シ) P28教育長は,同月16日,平成16年度東京都議会予算特別委員会において,P33議員から,① 校長が指導を繰り返しても,国旗・国歌に対する不適切な指導が続く場合は,校長は職務命令を発するべきではないか,② 学習指導要領に基づく教育が行われていなければ,処分の対象になるのではないかとの質問を受け,① 当然,校長の権限に基づいて職務命令を出すことになる,② 研 校長は職務命令を発するべきではないか,② 学習指導要領に基づく教育が行われていなければ,処分の対象になるのではないかとの質問を受け,① 当然,校長の権限に基づいて職務命令を出すことになる,② 研修命令を含めた処分の対象となるのは当然である旨答弁した。 [甲121]オ平成15年度の周年記念式典,平成15年度卒業式及び平成16年度入学式における職務命令違反に関する事実経過等(ア) 全ての都立学校において,各校長から教職員に対し,口頭又は文書によって,国歌斉唱の際の起立斉唱又はピアノ伴奏を命ずる職務命令が 発令された。都教委は,本件通達の発出後,平成15年度中に実施された周年記念式典,平成16年3月に都立学校(ただし,一部島しょを除く。)において行われた平成15年度卒業式にそれぞれ職員を派遣し,各職員は,「国歌斉唱」の式次第への記載の有無,「国歌斉唱」の発声や「起立」の号令の有無,国歌斉唱時の教職員や生徒の起立状況等を,所定の報告用メモに記入する形で都教委に報告した。また,卒業式等で不起立等を行った教職員がいた都立学校においては,校長が所定のひな形を使用して,服務事故報告書を作成して都教委人事部職員課に提出した。都教委は,同報告書による事故報告を受けた後,各校長等から事情聴取を行った。 [甲25,75,76,211,220,231の1,404,405,418,453,464の2,乙70~72,85,86の1](イ)a 都教委は,本件通達の発出後,平成15年度に実施された都立学校の周年記念式典において都立学校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立しなかった又は式典会場から退場した教職員10名について,それぞれ事情聴取を行い,その懲戒処分を,平成16年2月4日開催の教職員懲戒分限審査会に諮問した。同審査委 職務命令に違反して国歌斉唱時に起立しなかった又は式典会場から退場した教職員10名について,それぞれ事情聴取を行い,その懲戒処分を,平成16年2月4日開催の教職員懲戒分限審査会に諮問した。同審査委員会は,同教職員10名について,戒告処分を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同年3月12日,上記答申と同内容の処分(戒告処分)を決定し,同月17日,各処分を発令した。 b 都教委は,同月に都立学校で行われた平成15年度卒業式において都立学校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立しなかった,式典会場に入場しなかった,式典会場から退場した,又はピアノ伴奏を拒否した教職員について,同月26日までにほとんどの事情聴取を行った。 c 都教委は,第一次分として,都立高等学校在籍者及び平成15年度 末退職予定者の合計171名の懲戒処分について,平成16年3月29日開催の教職員懲戒分限審査会に諮問した。同審査委員会は,同教職員171名について,戒告処分を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同月12日,上記答申と同内容の処分(戒告処分)を決定し,同日に14名,同月31日に157名について各処分を発令した。また,同戒告処分を受けた現職の教職員のうち再雇用職員採用選考(新規)合格者3名について,その合格が取り消された。 なお,都教育庁は,同日,都立学校ごとに,上記懲戒処分の内容,国歌斉唱時の不起立の有無等を公表した。 d 都教委は,上記cに続く第二次分として,都立養護学校等在籍者10名について,その懲戒処分を同年4月5日開催の教職員懲戒分限審査委員会に諮問した。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる9名については戒告処分を相当とする,②過去に同様の非違行為により戒告の懲戒処分を受け,再び職務命令違反を行った1名については,減給処分10分の1 諮問した。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる9名については戒告処分を相当とする,②過去に同様の非違行為により戒告の懲戒処分を受け,再び職務命令違反を行った1名については,減給処分10分の1・1月の処分を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同日開催の臨時会において,上記答申と同内容の懲戒処分を行うことを決定し,同日,各処分を発令した。 なお,都教育庁は,同月6日,都立学校ごとに,上記懲戒処分の内容,国歌斉唱時の不起立の有無等を公表した。 e 都教委は,同月に都立学校で行われた平成16年度入学式において都立学校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立しなかった,式典会場に入場しなかった,又はピアノ伴奏を拒否した教職員(合計36名)について,それぞれ事情聴取を行った。都教委は,同教職員36名と,上記dに続く第三次分の2名について,その懲戒処分を同年5月17日開催の教職員懲戒分限審査委員会に諮問した。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる35名については戒告処分を相当とす る,②過去に同様の非違行為により戒告の懲戒処分を受け,再び職務命令違反を行った3名については,減給処分10分の1・1月の処分を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同月24日開催の定例会において,上記答申と同内容の懲戒処分を行うことを決定し,同月25日,各処分を発令した。 なお,都教育庁は,同日,都立学校ごとに,上記懲戒処分の内容,国歌斉唱時の不起立の有無等を公表した。 f 都教育庁は,同日,懲戒処分の内容の公表と併せて,今後は,不起立等により懲戒処分を受けた教職員について,適正な教育課程の実施及び再発防止に向けて,以下の内容の研修を行うことを発表した。 (a) 研修センター等における研修① 懲戒処分を受けた学校の校長,副校長及び主幹「 けた教職員について,適正な教育課程の実施及び再発防止に向けて,以下の内容の研修を行うことを発表した。 (a) 研修センター等における研修① 懲戒処分を受けた学校の校長,副校長及び主幹「適正な教育課程の管理に向けた研修」として,「学習指導要領に基づく適正な教育課程の編成・実施及び管理の在り方」に関する研修を実施② 戒告処分を受けた教職員「服務事故再発防止研修」として,「基本研修」(「教育公務員の服務義務と関係法令等」に関する研修を実施③ 減給処分を受けた教職員「基本研修」に加えて,課題に応じた個別の「専門研修」を実施(b) 学校における校内研修校長は,上記(a)①の研修終了後,全教職員に対する育成計画を立てて,課題校として進行管理を行うとともに,適正な教育課程の実施に向けた校内研修を行う。 [甲17,77~79,82,83,274の1~4,275の1~4, 276の1~3,乙71,86の1・2]カ P28教育長は,平成16年6月8日,同年東京都議会第2回定例会において,平成15年度卒業式及び平成16年度入学式について,「通達後初めて行われたものでございまして,学習指導要領や通達に基づいて適正に実施するよう,都教育委員会は全校全教職員に対して,包括的職務命令に加え,個別的職務命令を発出するよう指導したところでございます。」,「都立高校におきましては,なお適正化への途上にあるという現状に鑑みまして,来春の卒業式,入学式におきまして,個別的職務命令を発出するよう指導してまいります。」と答弁した。 [甲89]キ(ア) 都教委は,同月28日,平成15年度に実施された周年記念式典,平成15年度卒業式及び平成16年度入学式における職務命令違反により懲戒処分を受けた都立学校教職員 した。 [甲89]キ(ア) 都教委は,同月28日,平成15年度に実施された周年記念式典,平成15年度卒業式及び平成16年度入学式における職務命令違反により懲戒処分を受けた都立学校教職員のうち退職者を除く212名に対する服務事故再発防止研修の実施を都立学校長宛に通知した。 (イ) 都教委は,平成16年8月2日及び同月9日,服務事故再発防止研修(基本研修)を実施し,合計205名が受講した。 (ウ) 都教委は,同月30日,服務事故再発防止研修(専門研修)を実施し,年度途中退職者1名を除く対象者3名が受講した。 (エ) 病気等による未受講者4名は,平成17年1月21日に追加実施した服務事故再発防止研修を受講し,育児休業による未受講者1名は,平成17年度に受講することとなった。 [乙71]ク都教育庁指導部長は,平成16年12月10日,都立学校長に対し,「学校から児童・生徒及び保護者に配布する文書の取扱いについて(通知)」を発出し,配布物については,全て校長が責任を負うこと,職員団体など,学校及び都教委以外の機関が作成した文書で,校長が配布を許可していな い文書,校長が決定又は承認していない文書等を配布してはならないこと,都立学校のレターボックス(配布物を入れるためにクラスないし学年ごとに設置している箱)を公務以外の目的で使用してはならないことなどを通知した。 [甲243](6) 東京都における国旗・国歌の指導状況等(平成17年以降)ア都教委教育長(P28教育長)は,平成17年1月24日,「再任用及び再雇用職員の任用について(通知)」を発出し,定年退職予定者が再任用及び再雇用の選考に合格した場合であっても,当該合格者が退職日までに服務事故等を起こした場合には,在職期間中の勤務成績不良として任用しな 職員の任用について(通知)」を発出し,定年退職予定者が再任用及び再雇用の選考に合格した場合であっても,当該合格者が退職日までに服務事故等を起こした場合には,在職期間中の勤務成績不良として任用しないことがあるとして,再任用及び再雇用選考合格者にする服務指導等の周知徹底を改めて求めた。 [甲280]イ平成16年度卒業式及び平成17年度入学式における職務命令違反に関する事実経過等(ア) 全ての都立学校において,各校長から教職員に対し,口頭又は文書によって,起立斉唱又はピアノ伴奏を命ずる職務命令が発令された。 (イ) 同年3月に都立学校で行われた平成16度卒業式において校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立しなかった教職員合計48名(原告らのうち合計37名を含む。)について,それぞれ事情聴取が行われ,その懲戒処分が教職員懲戒分限審査委員会に諮問された。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる教職員37名(別紙2懲戒処分等一覧表の原告番号(以下,単に「原告番号」という。)でいうと,1,3,4,6~14,16~20,21-1,22,23,26~29,30-1,32-1,33,34及び37の原告29名を含む。)については,戒告処分を相当とし,②既に職務命令違反により戒告処分を受けた後,再 び職務命令違反を行った教職員9名(原告番号でいうと,2,5,15,24,25,31-1及び35の原告7名を含む。)については,減給処分10分の1・1月を相当とし,③既に職務命令違反により戒告処分,減給処分10分の1・1月をそれぞれ受けた後,再び職務命令違反を行った教職員2名(原告P38を含む。)については,減給処分10分の1・6月とする旨の答申を行い,都教委は,同月30日開催の定例会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同日に 務命令違反を行った教職員2名(原告P38を含む。)については,減給処分10分の1・6月とする旨の答申を行い,都教委は,同月30日開催の定例会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同日に合計8名(上記原告ら37名のうち,原告P11,原告P12及び原告P17の3名を含む。)について,同月31日に合計40名(その余の上記原告ら34名を含む。)について,各懲戒処分を発令した。 (ウ) 平成17年4月に都立学校で行われた平成17年度入学式において校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立せず,または,ピアノ伴奏をしなかった教職員合計9名(原告らのうち合計8名を含む。)について,それぞれ事情聴取が行われ,その懲戒処分が教職員懲戒分限審査委員会に諮問された。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる教職員6名(原告P19,原告P39,原告P40,原告P20及び原告P21の5名を含む。)については,戒告処分を相当とし,②既に職務命令違反により戒告処分を受けた後,再び職務命令違反を行った教職員3名(原告P41,原告P42及び原告P43)については,減給処分10分の1・1月を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同年5月26日開催の定例会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同月27日,各懲戒処分を発令した。 (エ)a 都教委は,同年6月8日,平成16年度卒業式及び平成17年度入学式において職務命令違反により懲戒処分を受けた都立学校教職員のうち退職者を除く45名及び平成16年度服務事故再発防止研修を育児休業中のため未受講であった者1名について,服務事故再発防止 研修の実施を都立学校長宛に通知した。 b 都教委は,平成17年7月21日,服務事故再発防止研修(基本研修)を実施し,44名が受講した。家庭の都合により欠席した1名は同 て,服務事故再発防止 研修の実施を都立学校長宛に通知した。 b 都教委は,平成17年7月21日,服務事故再発防止研修(基本研修)を実施し,44名が受講した。家庭の都合により欠席した1名は同年8月31日に受講した。 c 都教委は,同年9月7日,同月9日,同月13日及び同月14日,服務事故再発防止研修(専門研修)を実施し,11名が受講した。 [前提事実(4),乙71,86の1・2]ウ都教委教育長は,平成17年12月8日,同年第4回東京都議会定例会において,「学習指導要領や通達に基づきまして卒業式及び入学式等を適正に実施するために,全校全教職員に対しまして,包括的職務命令に加え,個別的職務命令を発出するよう校長を指導してまいりました。職務命令は,あくまでも校長の権限と責任に基づいて発出されるものでありますが,今後は,職務命令として必要な要件を参考として通知するとともに,校長連絡会等におきまして周知を図るなど,卒業式,入学式等の適正な実施に向けて校長を支援してまいります。なお,職務命令の発出に課題のある学校につきましては,個別に指導の徹底を図ってまいります。」と答弁した。 [甲90]エ都教育庁指導部長は,平成18年2月10日,都立学校長及び都立中学校・中等教育学校長に対し,「入学式・卒業式等の適正な実施について(通知)」を発し,校長が教職員に対して個別に職務命令を発出する場合には,①各教職員に対し,児童・生徒への指導,司会,ピアノ伴奏等の具体的な職務内容を,実施要項とは別の文書によって個別に示すこと,②児童・生徒への指導に当たり,学習指導要領に基づき適正に指導することを明示すること,③本件通達及び本件実施指針に示された内容に従うことの3点に留意して,校長の権限と責任に基づき,職務命令書を適切に作成するよう依 指導に当たり,学習指導要領に基づき適正に指導することを明示すること,③本件通達及び本件実施指針に示された内容に従うことの3点に留意して,校長の権限と責任に基づき,職務命令書を適切に作成するよう依頼した。 [甲111]オ平成17年度卒業式及び平成18年度入学式における職務命令違反に関する事実経過等(ア) 全ての都立学校において,各校長から教職員に対し,口頭又は文書によって起立斉唱又はピアノ伴奏を命ずる職務命令が発令された。 (イ) 平成18年3月に都立学校で行われた平成17度卒業式において校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立せず,または,ピアノ伴奏をしなかった教職員合計30名(原告らのうち21名を含む。)について,それぞれ事情聴取が行われ,その懲戒処分が教職員懲戒分限審査委員会に諮問された。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる教職員19名(原告P44,原告P22,原告P45,原告P46,原告P47,原告P26,原告P48,原告P49,原告P24,原告P25,原告P50及び原告P51の12名を含む)については,戒告処分を相当とする,②既に職務命令違反により戒告処分を受けた後,再び職務命令違反を行った教職員10名(原告P52ことP53,原告P54,原告P55ことP56,原告P57,原告P58,原告P59,原告P60及び原告P61の8名を含む。)については,減給処分10分の1・1月を相当とし,③既に職務命令違反によって,戒告処分,減給処分10分の1・1月及び減給処分10分の1・6月をそれぞれ受けた後,再び職務命令違反を行った教職員原告P62については,停職処分1月を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同月30日開催の臨時会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同日に合計3名(原告P62を含む。) 反を行った教職員原告P62については,停職処分1月を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同月30日開催の臨時会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同日に合計3名(原告P62を含む。)について,同月31日に合計27名(上記原告ら21名のうち原告P62を除く20名を含む。)について,各懲戒処分を発令した。 (ウ) 都教委教育長は,同月13日,都立学校長及び都立中学校・中等教育学校長に対し,「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の 指導について(通達)」を発出し,「今般,一部の都立高等学校定時制課程卒業式において,国歌斉唱時に学級の生徒の大半が起立しないという事態が発生した」として,本件通達及び平成16年3月11日付け通知の「趣旨をなお一層徹底するとともに,校長は自らの権限と責任において,学習指導要領に基づき適正に児童・生徒を指導することを,教職員に徹底する」ことを求めた。 (エ) 平成18年4月に都立学校で行われた平成18度入学式において校長の職務命令に違反して国歌斉唱時に起立しなかった教職員(原告らのうち5名)について,それぞれ事情聴取が行われ,その懲戒処分が教職員懲戒分限審査委員会に諮問された。同審査委員会は,①初めての懲戒処分となる教職員2名(原告P63及び原告P64ことP65)については,戒告処分を相当とし,既に職務命令違反により戒告処分を受けた後,再び職務命令違反を行った教職員3名(原告P66,原告P45及び原告P67)については,減給処分10分の1・1月を相当とする旨の答申を行い,都教委は,同年5月25日開催の定例会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同月26日,各懲戒処分を発令した。 [前提事実(4),甲91,乙71] 2 本案前の争点(戒告処分を受けた後に退職した者は 日開催の定例会において,上記答申と同内容の各懲戒処分を決定し,同月26日,各懲戒処分を発令した。 [前提事実(4),甲91,乙71] 2 本案前の争点(戒告処分を受けた後に退職した者は戒告処分の取消しを求める訴えの利益を有しているか)について原告P1ら25名は,本件訴訟の口頭弁論終結日までの間に東京都を退職した者であるところ(前提事実(1)ア(イ)),被告は,原告P1ら25名に係る本件各処分(戒告処分)の取消しを求める訴えについて,戒告処分は,その責任を確認し,将来を戒めるという内容の処分であり,公務員が在職していることを前提として認められるものであるから,既に東京都を退職して公務員の地位を失った原告P1ら25名は,本件各処分(戒告処分)の取消しを求める利益 を有していない旨主張する。 一般職に属する地方公務員に対する戒告処分は,公務員が地公法29条1項各号に該当する場合において,その責任を確認し,将来を戒めるという内容の処分であり,公務員たる地位にある者に対して行われ,戒告を受けることにより完結するものであるから,戒告処分を受けた公務員がその地位を有しなくなった場合には,その効力自体はその時点で失われるものと解される。 しかしながら,証拠(甲215)及び弁論の全趣旨によれば,東京都においては,戒告処分を受けた場合,必然的に昇給期間が3か月延伸され,それが退職時までの昇給時期に影響することが認められる。また,証拠(甲280)及び弁論の全趣旨によれば,東京都は,定年退職者等について,従前の勤務実績等に基づく選考により,1年を超えない範囲内で任期を定め,常時勤務を要する職又は短時間勤務の職に採用することができると定める地公法28条の4,28条の5に基づき,再任用及び再雇用の制度を採用し,東京都公立 づく選考により,1年を超えない範囲内で任期を定め,常時勤務を要する職又は短時間勤務の職に採用することができると定める地公法28条の4,28条の5に基づき,再任用及び再雇用の制度を採用し,東京都公立学校再雇用職員設置要綱(昭和60年3月23日付59教人職第554号第5第1項(1))において,「正規職員を退職又は再任用職員を任期満了する前の勤務成績が良好であること」を再雇用の要件の一つとしていることが認められるところ,上記1で認定した事実(以下「認定事実」という。)(5)オ(イ)cのとおり,再雇用職員の採用選考に合格した後,戒告処分を受けたことを理由に合格が取り消された者がいたことが認められる。 以上によれば,東京都においては,戒告処分を受けた者は,戒告処分を前提として,給与上及び人事上の不利益を受ける制度となっているということができ,戒告処分が取り消されれば,昇給予定時期に昇給することが期待できた地位や再雇用されることを期待し得る地位を回復することになると解される。そして,これらの地位は,一定の法的保護に値するものというべきであり,退職によって当然に失われるものとはいえない。そうすると,既に東京都を退職した原告P1ら25名についても,本件各処分(戒告処分)の取消しを求める法 律上の利益があるというべきであるから,被告の本案前の申立ては理由がない。 3 本件通達,本件各職務命令及び本件各処分は原告らの思想及び良心の自由を侵害する憲法19条違反のものかについて(1) 証拠(甲465の6,582の2・5,583の1・2・3の1・4~8,589の174~180・182~190・192~206・209・211・214~221・223~229・231・232・234~236・238~240,原告P68,原告P32,原告P69 4~8,589の174~180・182~190・192~206・209・211・214~221・223~229・231・232・234~236・238~240,原告P68,原告P32,原告P69,原告P39,原告P40,原告P26,原告P49,原告P51の各本人尋問の結果)によれば,原告らは,上記第3の2(1)アに記載の,①日の丸・君が代は,我が国の戦前の軍国主義等の象徴としての役割を果たしたものであり,過去の歴史に対する反省等から,起立斉唱等をすることには反対である,②日の丸・君が代に対しては,多様な考え方があるにもかかわらず,起立斉唱等を一律に強制することには反対である,③戦前教育と同様の過ちを繰り返すべきではなく,起立斉唱等を一律に強制することには,教師として反対である,④一律の起立斉唱等に応じることは,自らの教育実践を否定するものであり,起立斉唱等に応じることはできない,⑤日の丸・君が代を受け入れることができない生徒らの人権を最大限保障する必要があるから,教師として,起立斉唱等に応じることはできないといった考え,信念,信条等を有していることが認められる。そして,原告らのこれらの考え等は,日の丸・君が代に関わる原告らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等ということができる。 (2) 原告らは,卒業式等における起立斉唱等を義務付けることは,憲法19条に違反する旨主張しているところ,憲法19条は,人の内心の精神活動を保障するものであり,人の内心における精神活動が外部に現れる行為までも保障するものではないが,人の外部的行為には,思想・良心と密接に関係するものがあることは否定できず,その人の思想・良心の本質又は核心部分を直 接否定するような外部的行為を強制することは,その人の思想・良心を侵害 いが,人の外部的行為には,思想・良心と密接に関係するものがあることは否定できず,その人の思想・良心の本質又は核心部分を直 接否定するような外部的行為を強制することは,その人の思想・良心を侵害することにほかならないというべきであるから,このような場合には,憲法19条違反の問題が生じ得ると解される。もっとも,上記の思想・良心の本質又は核心部分を直接否定する外部的行為であるかどうかは,各人が自己の思想・良心の本質又は核心部分に反すると独自に考え,主張することによって外部的行為を強制されない自由が一般的に認められるならば,社会生活が成り立たないことは明らかであり,これを承認することはできないことからすると,ある外部的行為を強制することが思想・良心の本質又は核心部分を直接否定し,ひいては思想・良心の自由を侵害することになるかどうかは,その外部的行為自体を客観的な見地から判断して行うのが相当であると解する。 以上の観点から検討するに,現在の主権国家を主体として構成されている国際関係の下では,国旗・国歌はそれぞれの国又は国民全体の象徴として扱われ,相互にこれを尊重し,儀礼の場において,国家又は国民全体への一般的敬意を表すものとして国旗・国歌を尊重することが国際慣習となっていることは周知の事実であること,前提事実(2)ア,認定事実(3)イ~オ,同(4)ア,ウによれば,平成11年に,我が国を示す一般的な象徴としての国旗を日の丸(日章旗),国歌を君が代と定める国旗国歌法が制定され,本件通達及び本件各職務命令が発令された時点以前において,全国の公立学校における卒業式等において,国歌の起立斉唱が広く実施されていたことが認められることからすると,卒業式等における国歌斉唱時に起立斉唱する行為は,一般的,客観的に見て,出席する教職員にとっては通 立学校における卒業式等において,国歌の起立斉唱が広く実施されていたことが認められることからすると,卒業式等における国歌斉唱時に起立斉唱する行為は,一般的,客観的に見て,出席する教職員にとっては通常想定される行為であり,卒業式等における慣例上の儀礼的所作としての性質を有する行為ということができ,かつ,そのような所作として外部からも認識されるものというべきである。また,音楽科担当の教員が卒業式等における国歌斉唱時にピアノ伴奏する行為についても,一般的,客観的に見て,音楽科担当の教員としての 職務上の行為として通常想定され期待されるものであるということができ,かつ,そのような行為として外部からも認識されるものいうべきである。そうすると,卒業式等における国歌斉唱時に起立する行為やピアノ伴奏する行為は,その性質の点から見て,原告らの有する上記の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等それ自体を否定することと不可分に結び付くものとはいえず,国歌斉唱時に起立斉唱等を行うことを定める本件通達及び原告らに対して国歌斉唱時に起立斉唱等を行うことを求める内容の本件各職務命令は,原告らの有する上記の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等それ自体を否定するものということはできない。また,国歌斉唱時の起立斉唱等の行為は,その外部からの認識という点から見ても,特定の思想又はこれに反する思想を有することを外部に表明する行為に当たると評価することは困難であり,特に,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるといわざるを得ない。そして,以上のことからすると,卒業式等における国歌斉唱時に教職員が起立する行為及び音楽科担当の教員がピアノ伴奏する行為は,特定の には,上記のように評価することは一層困難であるといわざるを得ない。そして,以上のことからすると,卒業式等における国歌斉唱時に教職員が起立する行為及び音楽科担当の教員がピアノ伴奏する行為は,特定の思想と結び付くものであると評価することはできないから,本件各職務命令の発令が直ちに,偏った特定の観念を教授することになるとか,児童・生徒に対して一方的な思想,理念等を教え込んだり植え付けたりすることを強制することになるということはできない。 以上によれば,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱等は,儀式的行事における学校職員という社会的な立場にある者としての行動にすぎず,国歌斉唱時に起立斉唱等を行うことを定める本件通達及び原告らに対して起立斉唱等を命ずる本件各職務命令が,原告らの有する上記歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等それ自体を直ちに否定するものと断ずることはできず,また,特定の思想の有無について告白を強要 するものであるということも,児童・生徒に対して一方的な思想や理念を教え込むことを強制するものであるということもできない。 (3) もっとも,卒業式等の国歌斉唱時における起立斉唱については,儀式的行事である卒業式等の場面における儀礼的所作に当たる行為ではあるものの,一般的,客観的に見れば,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素が含まれることを否定することはできない。そうすると,自らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等との関係で否定的な評価の対象となる日の丸や君が代に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではな に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動を求められることとなり,その限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。個人の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,当該外部的行動が社会一般の規範等と抵触する場面において制限を受けることがあるところ,それが必要かつ合理的なものである場合には,その制限によってもたらされる上記の間接的な制約も許容され得るものというべきである。そして,ある職務命令が,個人の歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等に由来する行動と異なる外部的行為を求めることとなる要素を含んでおり,その限りにおいて,当該職務命令が個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があると判断される場合,このような間接的な制約が許容されるか否かは,当該職務命令の目的及び内容並びに上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否か という観点から判断するのが相当である。 本件通達及び本件各職務命令が求める国歌斉唱時の起立斉唱行為は,上記(1)の内容の原告らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素を含むものである 斉唱時の起立斉唱行為は,上記(1)の内容の原告らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素を含むものであることから,そのような敬意の表明には応じ難いと考える原告らにとって,その歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為となるものである。この点に照らすと,本件各職務命令は,一般的,客観的な見地からは儀式的行事としての卒業式等における慣例上の儀礼的所作を求めるものであるが,それが結果として上記の要素との関係において,原告らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等に由来する行動との相違を生じさせることとなるという点で,その限りで原告らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があるものということができる。 他方,卒業式等の教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。学校教育法は,小・中・高等学校における教育目標として,国家の現状と伝統についての正しい理解と国際協調の精神の涵養を掲げ(18条2号,36条1号,42条1号),国旗国歌条項も学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を行う旨を定めており,国旗国歌法は,従来の慣習を法文化して,日の丸を国旗とし,君が代を国歌とする旨を定めている。そして,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱は,教員が日常担当する教科等や日常的に従事する業務ではないものの,児童・生徒に対する学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導の一つとして行われるものである以上,その実 おける国歌斉唱時の起立斉唱は,教員が日常担当する教科等や日常的に従事する業務ではないものの,児童・生徒に対する学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導の一つとして行われるものである以上,その実行が求められるというべきであり,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の 命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地公法30条,32条)に鑑みると,都立学校の教職員である原告らは,法令及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地公法に基づき,学習指導要領に沿った卒業式等の実施の指針を示した本件通達(本件実施指針)を踏まえて,本件各校長から学校行事である卒業式等に関して本件各職務命令を受けたものである。 これらの点に照らすと,本件通達及び本件各職務命令は,都立学校の教職員である原告らに対して卒業式等の式典における慣例上の儀礼的所作として,かつ,国旗国歌条項に沿った教育指導の一つとして,国歌斉唱時の起立斉唱を求めるものであって,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿い,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに卒業式等の円滑な進行を図るものであるということができる。 以上の諸事情を踏まえると,本件通達及び本件各職務命令については,前記のように外部的行動の制限を介して原告らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,本件通達及び本件各職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。 (4 本件通達及び本件各職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。 (4) 本件通達及び本件各職務命令が憲法19条に反するとする原告らの個別の主張(上記第3の2(1)ウ~キ)の検討ア上記第3の2(1)ウの主張について本件通達及び本件各職務命令が憲法19条に違反するものではないことについては,上記(2)及び(3)で述べたとおりであり,これと異なる見解を前提とする原告らの上記主張は,採用することができない。 なお付言するに,卒業式等の国歌斉唱時における起立斉唱は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素が含まれることは否定できないものの,儀式的行事における儀礼的所作に当たる行為であるということを超えて,国家や天皇を賛美する性質を有する行為であると解することはできない。この点,日の丸・君が代を否定的に評価する考えや,これらを国旗・国歌とすることについて異論があることは事実であるが,国旗国歌法は,我が国の過去の歴史における日の丸・君が代の扱い等にかかわらず,日本国憲法の下において,国民が形成していくべき我が国の国旗を日の丸(日章旗)とし,国歌を君が代とするものと定め,一般的にも,日の丸・君が代は,現に存在し,今後も我が国の国旗・国歌であると意識されているものであり,国家又は天皇を賛美するものであると一般的に認識されているものであると解することはできない。また,国家とどう向き合うかは個々人の自律的な判断に委ねられるべき事柄であるということは,一般的,抽象的な意味において,これを否定すべき理由はない。しかしながら,本件は,学校教育における儀式的行事として行われる卒業式等において,学習指 律的な判断に委ねられるべき事柄であるということは,一般的,抽象的な意味において,これを否定すべき理由はない。しかしながら,本件は,学校教育における儀式的行事として行われる卒業式等において,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を担う立場にある教職員に対し,儀式的所作としての行為である国歌斉唱時の起立斉唱を義務付けることができるかが問題となっているのである。そして,儀式的行事における儀式的所作としての行為である起立斉唱が国家とどう向き合うかを明らかにする行為であると解することはできず,そうである以上,教職員としての立場で卒業式等に参加している原告らの自律的な判断に委ねられるべきものでもないことは明らかである。 イ上記第3の2(1)エの主張について本件通達及び本件各職務命令が原告らに対して求める行為の性質等については,上記(2)及び(3)で述べたとおりであり,これが憲法19条に違反するものではないことについても,上記(2)及び(3)で述べたとおりであり, これと異なる見解を前提とする原告らの上記主張は,採用することができない。 なお付言するに,原告らは,本件通達及び本件各職務命令による卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱等の義務付けは,起立斉唱等をすることができないという原告らの信念等と直接矛盾する行為を強制するものであるから,憲法19条に違反する旨主張する。しかしながら,日の丸・君が代に関わる原告らの歴史観ないし世界観及びこれに由来する社会生活上ないし教育上の信念等から,卒業式等における国歌斉唱時に起立斉唱等をすることができないという考えが不可分に導き出されるものではないし,原告らの真摯さの程度等にかかわらず,そのような考えが思想・良心の本質又は核心部分であると解することはできない。仮 時に起立斉唱等をすることができないという考えが不可分に導き出されるものではないし,原告らの真摯さの程度等にかかわらず,そのような考えが思想・良心の本質又は核心部分であると解することはできない。仮に,上記主張が,本件通達及び本件各職務命令が客観的には違憲違法と評価できない場合であっても原告らが主観的に憲法上問題があると判断したときには,すべからく本件通達の発出及び本件各職務命令の発令により原告らの思想・良心の自由が侵害されるということをいうものであるとすると,外部的行為を強制されない自由を一般的に認めることとなるものであって,その帰結自体相当でないといわざるを得ず,採用の限りではない。 また,原告らは,原告らが本件通達及び本件各職務命令が命ずる起立斉唱等を拒否する場合,それによって原告らが原告らの信念等を有していることが推知されることになるから,本件通達及び本件各職務命令は,原告らの有する原告らの信念等の表明を迫るものであり,憲法19条が保障する沈黙の自由を侵害するとも主張する。しかしながら,上記アで説示したとおり,本件通達及び本件各職務命令は,学校教育における儀式的行事として行われる卒業式等において,教職員である原告らに対し,儀礼的所作としての行為である国歌斉唱時の起立斉唱を求めるものであることからすると,原告らの信念等の表明を迫るものであると解することはできず,上 記主張も採用することができない。 ウ上記第3の2(1)オの主張について同主張は,本件通達及びその後の都教委の一連の指導について,原告らの信念等ゆえに起立斉唱等を拒む教職員をあぶり出し,国旗・国歌を尊重する態度を強制的に注入するという目的で行われたものであるなどとして,本件各処分は,原告らの思想及び信条に基づく不利益取扱いにほかな の信念等ゆえに起立斉唱等を拒む教職員をあぶり出し,国旗・国歌を尊重する態度を強制的に注入するという目的で行われたものであるなどとして,本件各処分は,原告らの思想及び信条に基づく不利益取扱いにほかならないというものである。 しかしながら,後記7(2)アで説示するとおり,本件通達は,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として発出されたものであると認められるものである。そして,本件通達及びその後の都教委の一連の指導が,原告らの主張するような目的・意図で行われたものであることを認めるに足りる証拠はない。また,本件各職務命令が原告らの有する特定の思想・良心の抑圧等の意図をもって発令されたものであるとか,本件各処分が,職務命令違反ではなく,原告らの有する思想及び信条を理由として行われたものであるといった事情を認めるに足りる証拠はない。 よって,原告らの上記主張は採用することができない。 エ上記第3の2(1)カの主張について本件通達及び本件各職務命令が憲法19条に違反するものではないこと,本件通達及び本件各職務命令が原告らの思想・良心の自由との関係で間接的な制約となる面はあるとしても,本件通達及び本件各職務命令にはその制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められることについては,上記(2)及び(3)で述べたとおりであり,これと異なる見解を前提とする原告の上記主張は,採用することができない。 オ上記第3の2(1)キの主張について同主張は,アメリカでは,連邦最高裁判所が1943年に出したバーネ ット判決以来,一貫して,国旗・国歌に対する特定の行為を強制することは連邦憲法修正第1条に違反するとの判断が出されている 同主張は,アメリカでは,連邦最高裁判所が1943年に出したバーネ ット判決以来,一貫して,国旗・国歌に対する特定の行為を強制することは連邦憲法修正第1条に違反するとの判断が出されていることを指摘し,本件通達及び本件各職務命令においても同様に解されるべきであるというものである。 しかしながら,証拠(甲154)及び弁論の全趣旨によれば,バーネット判決は,ウエストバージニア州教育委員会が,同州の公立学校の生徒に対し,学校の課程の中の儀式において,国旗への敬礼(右腕をしっかり伸ばし,掌を上に向けて挙げる行為)及び忠誠の誓約(「私はアメリカ合衆国の国旗と,それが象徴する共和国,すなわち全ての人々に自由と正義をもたらす不可分一体の国家に対して忠誠を誓います。」という言葉を唱和すること)を義務付け,教員と生徒の全てが儀式に参加すること,国旗敬礼等を拒否することに対しては不服従行為として退学処分,刑事処罰等の処置が科されることを決議し,国旗敬礼を拒否した生徒が退学処分を受けたという事例について,合衆国国旗に向けて一定の敬礼の姿勢をとることを,退学処分という罰則のもとに要求し,その結果,生徒及び両親が不法な欠席という理由で起訴される可能性を必然的に生じさせることは,憲法上の制約を逸脱し,連邦憲法修正第1条及び14条が保障する知的・精神的自由権を侵すものであると判断したものである。我が国においても,公立学校において上記のような敬礼行為や上記の文言のような誓約を唱和するように義務付け,これに従わない者を退学処分等にするという行為は,憲法違反の行為と評価されるものと考えるが,本件通達及び本件各職務命令が原告らに求めた行為は,卒業式等において国旗に向かって起立して国歌を斉唱するというものであって,一般的,客観的に見て儀式的行事にお 違反の行為と評価されるものと考えるが,本件通達及び本件各職務命令が原告らに求めた行為は,卒業式等において国旗に向かって起立して国歌を斉唱するというものであって,一般的,客観的に見て儀式的行事における慣例上の儀礼的所作であると認識されている行為をすることを求めるにとどまるものであるから,バーネット判決とは事案を異にするものであり,バーネット事件判決の判断は直ちに参考となるものではない。 (5) 以上の次第であるから,本件通達,本件各職務命令及び本件各処分が,原告らの思想及び良心の自由を侵害し,憲法19条に違反するものであるということはできない。 4 本件通達,本件各職務命令及び本件各処分は原告らの信教の自由を侵害する憲法20条違反のものであるかについて原告らは,起立斉唱等を強制されることによって,キリスト教が禁じている偶像崇拝を強制され,また,天皇を讃えることを強制されることになり,原告P30ら3名の信仰の自由あるいは宗教的行為の自由が侵害されている旨主張する。 しかしながら,上記3(2),(3)において説示したとおり,卒業式等における起立斉唱等は,儀式的行事における学校職員という社会的な立場にある者としての行動にすぎず,本件通達及び本件各職務命令が,原告P30ら3名の有する信仰を否定したり,その信仰の有無について告白を強要したりするものであるということはできない。また,原告P30ら3名が信仰するキリスト教が,その教義上,起立斉唱等を禁じていることを認めるに足りる証拠はない。なお,上記3(3)で説示したとおり,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素が含まれることは否定できないものの,一般的,客観的に見て,儀式的行事における儀礼的所作に当たる行為であり,それを超えて 卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素が含まれることは否定できないものの,一般的,客観的に見て,儀式的行事における儀礼的所作に当たる行為であり,それを超えて,宗教的意味合いを持つ行為であるということはできない。 また,原告P30ら3名が,本件通達及び本件各職務命令によって,その信仰に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動を求められることとなり,その限りにおいて,その信教の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難いものの,上記3(3)で説示したとおり,本件通達及び本件各職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものである。 原告P30ら3名に対する関係で本件通達及び本件各職務命令が信教の自由を侵害するものでない以上,原告P30ら3名に対する本件各職務命令違反を理由としてされた本件各処分が信教の自由を侵害するものであるということはできない。 以上によれば,本件通達,本件各職務命令及び本件各処分が,原告P30ら3名の信教の自由を侵害し,憲法20条に違反するものであるということはできない。 5 本件通達及び本件各職務命令は原告らの教師の専門職上の自由を侵害する憲法13条,23条及び26条違反のものであるかについて(1) 原告らは,①教育課程の編成は,児童・生徒の教育をつかさどる教師の専門的判断が必要であり,職員会議の集団的討議を経て全校的に決定されるべきものであるにもかかわらず,都教委及び本件各校長は,教育課程の一環である卒業式等の内容を,教師の関与なく,一方的に決定し,これを強制させる本件通達を発出し,本件各校長をしてその内容を実行させる べきものであるにもかかわらず,都教委及び本件各校長は,教育課程の一環である卒業式等の内容を,教師の関与なく,一方的に決定し,これを強制させる本件通達を発出し,本件各校長をしてその内容を実行させる本件各職務命令を発令させ,その内容どおりの卒業式等の実施を強制した,②本件通達及び本件各職務命令は,各学校単位での創意工夫とその実情に応じた創造的・弾力的な教育内容の決定の余地を完全に奪うものであり,教師の専門職上の自由を侵害するものであるとして,本件通達及び本件各職務命令は,教師の専門職上の自由を定める憲法13条,23条及び26条に違反する旨主張する。 (2) しかしながら,以下ア及びイのとおり,原告らの上記主張はいずれも理由がなく,採用することはできない。 ア上記①の主張について後記7(1),(2)で説示するとおり,地方公共団体の教育委員会は,その管理権(地教行法23条5号)に基づき,公立学校の教育課程,学習指導,生徒指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行 うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発出することもできると解するのが相当であり,本件通達は,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを実現するという目的から発出されたものであって,その内容も,当該目的のために必要かつ合理的なものであるということができる。また,都立学校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する権限を有する者であり(学校教育法28条3項,40条,51条,76条),校務の一つである卒業式等の特別活動における国旗掲揚及び国歌斉唱の方法についても,当該権限の一環として,具体的な内容を伴う職務命令を発令する権限を有していると解され,そのような職務命令を発令 条),校務の一つである卒業式等の特別活動における国旗掲揚及び国歌斉唱の方法についても,当該権限の一環として,具体的な内容を伴う職務命令を発令する権限を有していると解され,そのような職務命令を発令するに当たり,教職員の意見,判断を徴求することが必要条件となっているものではない。 そして,原告らは,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にあり,かつ,後記7(2)で説示するとおり,本件通達は,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として発出されたものであると認められるものであり,原告らは,本件各校長が本件通達を受けて発令した本件各職務命令に従うべき義務を負っている以上,本件通達及び本件各職務命令によって教師の専門職上の自由を侵害されたということはできず,原告らの上記主張は理由がない。 イ上記②の主張について本件通達は,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱等を命じるだけでなく,国旗の掲揚位置や掲揚方法,国歌斉唱の方法,式次第の記載方法,会場設営等について相当程度具体的な内容を定めた実施指針(本件実施指針)を示し,これに沿った卒業式等の実施を命じているものであり(前提事実(3)ア),この限りにおいては,教職員の裁量的行為が制限される。しかしながら,学習指導要領は,儀式的行事について,「学校生活に有意義 な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと」と規定しているところ,卒業式等は厳粛さが要求される儀式的行為であるから,その中では一定の形式に沿った実施が必要な部分があり,この観点からみて,本件実施指針が定める式典形式が不相当なものとはいえない。そして,本件実施指針 業式等は厳粛さが要求される儀式的行為であるから,その中では一定の形式に沿った実施が必要な部分があり,この観点からみて,本件実施指針が定める式典形式が不相当なものとはいえない。そして,本件実施指針が定める式典形式と原告ら教職員が考えているそれとが異なるものであるとしても,そのことから直ちに教職員の教育実践上の裁量を侵害するものということはできない。そして,本件実施指針に定められていないことについては,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地は何ら制限されておらず,弾力的な実施が可能であるということができる。 また,教師は,教育活動を担う専門職であり,限られた一定の範囲で教授の自由があることは肯定されるが,学校行事を実施するに際しては,関係法令等を遵守し,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にあるのであって,その教育活動の全てを教師が自由に決め,その全てが教師の裁量に委ねられているということはできない。特に,教育上の重要な節目となる卒業式等は,各教師が個別に担当する一般の教科と異なり,全校的な規模でとり行われる儀式的行事であって,その基本的な進行については,個々の教師がそれぞれの創意工夫に基づいて自由に児童・生徒を指導すればよいというものではなく,全校的に決定されたところに従って統一のとれた行動が教師に要請されるといわなければならない。児童・生徒に対する指導教育の効果を高めるという観点からも,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが重要であり,そのためにも学校単位での統一的な意思決定とこれに準拠した活動が必要となる場面であるから,教職員は,自らが考える卒業式等の在り方いかんにかかわらず,儀式的行事として決定された内容の卒業式等の実施に協力し,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った れに準拠した活動が必要となる場面であるから,教職員は,自らが考える卒業式等の在り方いかんにかかわらず,儀式的行事として決定された内容の卒業式等の実施に協力し,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき 義務を負っているというべきである。そうである以上,本件通達(本件実施指針)において定められた内容の卒業式等が,原告らそれぞれが相当と考える卒業式等の実施方法と一致しないとしても,そのことが,原告らの教員としての専門職上の自由を侵害するということはできない。 原告らの上記主張は,採用することができない。 (3) 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令は,原告らの教師の専門職上の自由を侵害し,憲法13条,23条及び26条に違反するものということはできない。 6 学習指導要領(国旗国歌条項)の法的拘束力の有無について(1)ア認定事実(1)イによれば,国旗国歌条項は,国際化の進展に伴い,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,児童・生徒が,将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,国旗・国歌に対して一層正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることは重要なことであり,卒業式等は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,新しい生活の展開への動機付けを行い,学校,社会,国家など集団への所属感を深める上でよい機会となるものであるという意義を踏まえて定められたものであることが認められる。 学校教育法18条2号は,小学校における教育の目標として,「郷土及び国家の現状と伝統について,正しい理解に導き,進んで国際協調の精神を養うこと。」を,学校教育法36条1号は,中学校における教育の目標として,「小学校における教育 における教育の目標として,「郷土及び国家の現状と伝統について,正しい理解に導き,進んで国際協調の精神を養うこと。」を,学校教育法36条1号は,中学校における教育の目標として,「小学校における教育の目標をなお充分に達成して,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。」を,学校教育法42条1号は,「中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて,国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。」をそれぞれ規定しているところ,現在の主権国家を主体として構成されている国際関係の下では,国旗 ・国歌はそれぞれの国又は国民全体の象徴として扱われ,相互にこれを尊重し,儀礼の場において,国家又は国民全体への一般的敬意を表すものとして国旗・国歌を尊重することが国際慣習となっていることは周知の事実であることに鑑みると,自国の国旗・国歌について,式典等の場においてこれを尊重する儀礼を学ぶことは,国家及び社会の形成者として,また,国際社会においても活躍し得る個人として必要とされる基本的資質を養い,国際協調の精神を養うことに資するということができる。 以上によると,上記認定の趣旨で定められた国旗国歌条項は,上記学校教育法の各規定が定める教育の目標事項に適った合理的なものであるということができる。 イ高等学校学習指導要領は,学校教育法43条,同法施行規則57条の2に基づいて文部科学大臣が定めて公示したものであり,それが教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的な大綱的基準として是認することができるものは,法規としての性質を有し,遵守すべき基準として拘束力が認められるものと解される(昭和51年大法廷判決参照)。 この点について国旗国歌条項をみると,その制定趣旨は,上記アで ができるものは,法規としての性質を有し,遵守すべき基準として拘束力が認められるものと解される(昭和51年大法廷判決参照)。 この点について国旗国歌条項をみると,その制定趣旨は,上記アで認定したとおりのものであり,全国一律の教育が施される必要のあるものを対象としたものであるということができる。また,その文言も,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」というものであり,大綱的な基準を定めたものということができる。以上によれば,国旗国歌条項は,普通教育の内容及び方法について遵守すべき大綱的基準を定めるものとして,拘束力を有するものというべきである。 なお,原告らは,国旗国歌条項の「指導するものとする」という表現によれば,学校現場における国旗・国歌の指導の強制,義務付けをする趣旨 を有していない旨主張するが,学習指導要領が上述したとおりの性質を持つものであって遵守すべき基準として拘束力が認められるものであることに鑑みると,国旗国歌条項の上記文言は,「指導しなければならない。」よりは緩やかな表現であるということはできるとしても,国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を義務付ける趣旨のものと解するのが相当である。 (2) 原告らの主張(前記第3の5(1))の検討ア原告らは,学習指導要領について,法的拘束力や強制の契機を有するものではない旨主張する(前記第3の5(1)ア)。しかしながら,大綱的基準としての学習指導要領の拘束力を否定すべき事情は何ら認められず,同主張は採用することができない。 イ原告らは,国旗国歌条項について,①教職員に対して国歌斉唱時における起立斉唱等を一律に強制するための根拠条項と解した場合,教師による創 何ら認められず,同主張は採用することができない。 イ原告らは,国旗国歌条項について,①教職員に対して国歌斉唱時における起立斉唱等を一律に強制するための根拠条項と解した場合,教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や地方ごとの特殊性を繁栄した個別化の余地が残されないこととなる,②起立斉唱等を義務付けることは,国家に対してすべからく肯定的な態度を示すべきであるとの,一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものであるから,国旗国歌条項は必要かつ合理的と認められる大綱的な基準に当たらず,その法的拘束力を認めることはできない旨主張する(前記第3の5(1)イ)。 まず,上記①について検討するに,国旗国歌条項は,上記(1)イで説示したとおり,普通教育の内容及び方法について遵守すべき大綱的基準として拘束力を有するものであり,児童・生徒に対する教育指導を担うべき教職員が卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を行う責務を負っていることを定めたものと解されるものの,国旗国歌条項自体から教職員の特定の具体的義務内容が直ちに導き出されるわけではなく,原告らが卒業式等において国歌斉唱時に起立斉唱等をすることを義務付けられたのは,本件各校長が本件通達を受けて発令した本件各職務命令によるので ある。したがって,国旗国歌条項は,教職員に対して国歌斉唱時における起立斉唱等を一律に強制するための直接の根拠条項と解することはできない。 また,国旗国歌条項は,卒業式等以外の場面における国旗・国歌の教育指導の内容又は方法を具体的に定めるものではなく,卒業式等の場面に関しても,国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を定めるのみであることからすると,国旗国歌条項があることにより,教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や地 具体的に定めるものではなく,卒業式等の場面に関しても,国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を定めるのみであることからすると,国旗国歌条項があることにより,教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されないことになるということはできない。 次に,上記②について検討するに,上記(1)アで説示した国旗国歌条項の趣旨及び文言に加えて,上記3(3)で説示した国歌斉唱時における起立斉唱等の意義を併せ考えれば,国旗国歌条項が一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものであるといえるものではない。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告らは,国旗国歌法が,国旗・国歌に関し,国民に対する一切の義務付けがないものとして成立したことに鑑みれば,学習指導要領である国旗国歌条項によって起立斉唱等を教職員に義務付けることはできない旨主張する(前記第3の5(1)ウ)。 しかしながら,上記イで説示したとおり,国旗国歌条項は卒業式等における起立斉唱等を直接義務付けたものではない。したがって,国旗国歌条項が当該義務付けをしていることを前提とした原告らの上記主張は,その前提を欠くというべきである。 なお,国旗国歌条項が,国旗国歌法の制定過程に照らし,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱等を教職員に義務付けることを許容しない趣旨であるかどうかについて,以下検討しておく。 国旗国歌条項が大綱的基準として拘束力を有するものであり,教職員が, 卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を行う一般的責務を負っていることを前提としているものと解されることは,上記イで説示したとおりである。そして,認定事実(1)アのとおり,国旗国 卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を行う一般的責務を負っていることを前提としているものと解されることは,上記イで説示したとおりである。そして,認定事実(1)アのとおり,国旗国歌条項は,国旗国歌法が制定される以前から定められており,教職員は,国旗国歌法の制定前後を通じ,国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき立場にあったというべきである。国旗国歌法が,国旗掲揚及び国歌斉唱について,国民に対する義務付けを予定したものではないことは,原告らが指摘するとおりであるが,認定事実(3)イによれば,政府関係者は,教職員が学習指導要領(国旗国歌条項)に基づいて教育指導を実施すべき職務上の責務を負っていることを明言しており,職務命令が発令される可能性にも言及するなどしていたのであって,国旗国歌法の制定過程において,教職員が国旗国歌条項に基づく教育指導を行うべき責務を負っていることは当然の前提とされており,また,その教育指導の具体的内容として,教職員による起立斉唱等をあえて除外して考えていたものとは解されない。以上によれば,国旗国歌法の制定過程に照らしても,教職員が国旗国歌条項に基づく教育指導を実施すべき一般的責務を負っていることを否定しておらず,卒業式等の適正実施を目的として校長が教職員に対して国歌斉唱時の起立斉唱等について職務命令を発令することを許容しない趣旨で国旗国歌法が立法されたものと認めることはできない。 (3) 以上によれば,学習指導要領(国旗国歌条項)は,普通教育の内容及び方法について遵守すべき大綱的基準として拘束力を有するものであり,その適正実施のための通達や職務命令の発出,発令根拠となるものということができる。 7 本件通達及び本件各職務命令は教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであ するものであり,その適正実施のための通達や職務命令の発出,発令根拠となるものということができる。 7 本件通達及び本件各職務命令は教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであるかについて(1) 教育基本法10条1項は,教育が不当な支配によってゆがめられることな く,専ら教育本来の目的に従って行われるべきことを示したものであり,地方公共団体の教育行政機関の法令に基づく行為にも適用があると解される。 また,同項は,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き,その整備確立のための措置を講ずるに当たっては,教育の自主性尊重の見地から,これに対する不当な支配となることのないようにすべき旨の限定を付したものであり,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められるものは,教育の内容及び方法に関するものであっても,必ずしも同項の禁止するところではないものと解するのが相当である(昭和51年大法廷判決参照)。 国の教育行政機関が法律の授権に基づいて義務教育に属する普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,子どもの教育が,教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならず,そこに教師の自由な創意と工夫の余地が要請されることのほか,教育に関する地方自治の原則(地教行法23条,32条,43条)を考慮し,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的なそれにとどめられるべきものと解されるが,地方公共団体が設置する教育委員会が教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,国の教育行政機関の設けた基準 要かつ合理的と認められる大綱的なそれにとどめられるべきものと解されるが,地方公共団体が設置する教育委員会が教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,国の教育行政機関の設けた基準の範囲内でより具体的に国の実施指針の実現を図るという地方公共団体の教育委員会の機能を考慮すると,その管理権(地教行法23条5号)に基づき,公立学校の教育課程,学習指導,生徒指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発出することもできると解するのが相当である(昭和51年大法廷判決参照)。 (2)ア前提事実(3),認定事実(2)エ,(3)ア,ウ~オ,(4),(5)ア~ウによれ ば,都教委は,平成9年及び平成10年当時,都立高等学校における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率が全国の公立高等学校の中で1番目ないし2番目に低かったことから,都立高等学校長に対し,学習指導要領に基づいた国旗・国歌の指導を行うよう指導,助言することとし,同年11月に平成10年実施指針を添付した通知を発出し,平成11年6月に卒業式・入学式対策本部を設置し,同年10月には平成10年実施指針に基づき卒業式等を実施することを命ずる平成11年通達を発出するなどしたこと,その結果,平成12年度卒業式から国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率は100%となったものの,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えないところに置いたり,国歌斉唱時に教員が起立しないなどの実態があったというものであったこと,都教委は,このような実態を踏まえ,平成14年11月には平成11年通達に基づいて一層の改善を図るよう依頼する通知を発出するなどして指導を継続したが,平成14年度卒業式及び平成15年度入学式における国旗掲揚の方法等についての調査結果は,平成10 1月には平成11年通達に基づいて一層の改善を図るよう依頼する通知を発出するなどして指導を継続したが,平成14年度卒業式及び平成15年度入学式における国旗掲揚の方法等についての調査結果は,平成10年度実施指針で定められた方針どおりに国旗掲揚等を行った都立学校等は全体の半分にも満たないものであり,また,国歌斉唱時に起立をしない教員がいるなどの実態がなおあったこと,都教委は,平成15年6月に本件対策本部を設置し,卒業式等の適正実施について検討した結果をとりまとめ,以上の課題を解決するためには各学校で国旗掲揚及び国歌斉唱の実施についてより一層の改善,充実を図る必要があるとして,同年10月23日,都立学校長に対し,本件通達が発出されたものであることが認められる。 イ都教委が本件通達を発出するに至る以上の経緯によれば,本件通達は,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として発出されたものと認められる。そして,国旗国歌条項に基づく国旗・国歌の指導とは,上記6(1)アで説示したとおり,国旗・国歌の意義を理解させ,他国の国民と相互にそれ らを尊重する態度を育てることを実現することであるから,上記目的は,国際社会における主権国家の構成員として成長することが期待される児童・生徒の教育目的として許容される範囲内のものということができる。 本件通達の発出以前の卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況並びに実態(認定事実(4)イ(ア)及び同(5)ア(ウ))に照らすと,本件通達を発出する必要性も認められ,また,校長を通じて平成10年実施指針の徹底を指導したにもかかわらず,これが徹底されていない実態が広く見られたことに照らせば,これを実現するために,卒業式等における国 達を発出する必要性も認められ,また,校長を通じて平成10年実施指針の徹底を指導したにもかかわらず,これが徹底されていない実態が広く見られたことに照らせば,これを実現するために,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施方法等も定めた通達により具体的な命令を発することが特に必要であったという事情も認めることができる。 さらに,国旗掲揚及び国歌斉唱によって国旗・国歌を尊重する態度を育てることが求められている卒業式等の学校行事において,児童・生徒に範を示すべき立場にある教職員らに対して儀式的行事における儀礼的所作として国歌斉唱時に起立を求めることについては,卒業式等における国旗・国歌に関する教育指導の方法として合理性を認め得るものであるから,本件通達の内容の合理性も認められる。 ウ以上によれば,本件通達の目的は許容されるものであって,その内容は,当該目的のために必要かつ合理的なものであるということができる。 (3) 本件通達が教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に該当するとの原告らの主張(前記第3の6(1)イ)の検討ア原告らは,本件通達について,愛国主義又は全体主義的な教育を行うことを目的とするものであるから,許容されない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)a)。 しかしながら,本件通達の目的は,上記(2)で説示したとおり,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することであると認められるものであり,本件全証拠によ っても,本件通達が愛国主義又は全体主義的な教育を行うことを目的として発出されたものであると認めることはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,本件通達について,国旗・国 国主義又は全体主義的な教育を行うことを目的として発出されたものであると認めることはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,本件通達について,国旗・国歌は国家のシンボルの問題であり,全国的一定水準としての国旗国歌条項よりも個別具体的な指示を出す必要性はない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)b(a))。 しかしながら,国旗・国歌の教育指導の実態は,地域等によって異なり得るものであり,当該実態に応じて,国旗・国歌の指導をより一層改善,充実しようとすることは,地方公共団体の教育委員会としての機能・責務を果たすものということができる。そして,本件通達を発出する必要性が認められることは,上記(2)で説示したとおりである。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 ウ原告らは,本件通達について,国旗国歌条項は卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施を求めるものにすぎず,平成13年以降,全ての都立学校の卒業式等において国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されているから,国旗国歌条項の適正実施は本件通達の目的として許容されない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)b(b))。 しかしながら,国旗国歌条項の制定趣旨等は,上記6(1)アで説示したとおり,国旗・国歌に対して一層正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることなどを目的として,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を求めるということにあることからすると,国旗国歌条項が,単に国旗掲揚及び国歌斉唱を実施すれば足りるという趣旨で定められたものであると解することはできない。平成13年以降全ての都立学校の卒業式等において国旗掲揚及び国歌斉唱を実施しているとはいえ,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えない すれば足りるという趣旨で定められたものであると解することはできない。平成13年以降全ての都立学校の卒業式等において国旗掲揚及び国歌斉唱を実施しているとはいえ,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えないところに置く,国歌斉唱時に教員が起立しないなどといった実態があったというのであり(上記(2)の説示参照), このような実態は,上記の国旗国歌条項の制定趣旨等に鑑みると,国旗・国歌に関する教育,指導の在り方として望ましくないものというべきであり,このような実態を踏まえて国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として本件通達を発出することは,合理的な理由があり,許容されるものというべきである。したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 エ原告らは,国旗国歌条項は教職員に起立斉唱等の義務を負わせるものではないので,本件通達(本件実施指針)で起立斉唱等を指示する必要性,合理性はない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)c(a))。 しかしながら,国旗国歌条項は,国際化の進展に伴い,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,児童・生徒が,将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくために,国旗・国歌に対して一層正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることの重要性を理由として定められたものであり,卒業式等は,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,学校,社会,国家など集団への所属感を深める上でよい機会となるものであることから(上記6(1)ア参照),卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を求めているものであるところ,式典における慣例上の儀礼的所作である卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱は,上記教育指導として不相当なものとはいえず,教職員が学習指導要領(国旗国歌 唱による教育指導を求めているものであるところ,式典における慣例上の儀礼的所作である卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱は,上記教育指導として不相当なものとはいえず,教職員が学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にあることに鑑みれば,教職員に対して国歌斉唱時の起立斉唱を求めることは,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実するという目的にとって,必要かつ合理的なものであるということができる。 また,卒業式等における国歌斉唱時にピアノ伴奏をするという行為は,音楽科担当の教員にとって,通常想定され期待されるものであり,また, 卒業式等に参列する児童・生徒に対し,厳粛かつ清新な気分を味わせて教育効果を高めるという観点からも通常望ましい行為であるということができるから,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にある音楽科担当の教員に対し,卒業式等における国歌斉唱時にピアノ伴奏を求めることは,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実するという目的にとって,必要かつ合理的なものであるということができる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 オ原告らは,本件通達の具体的内容(本件実施指針)について,卒業式等の実施方法等に関する学校(校長)の裁量権に属する事項である国旗の掲揚方法,会場設営方法,式次第の記載内容及び国歌斉唱に関する司会者の言動,国歌斉唱の仕方,伴奏の方法について,本件通達(本件実施指針)で指示する必要性,合理性はない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)c(b))。 しかしながら,以下(ア)~(カ)のとおり,原告らの上記主張は採用する について,本件通達(本件実施指針)で指示する必要性,合理性はない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)c(b))。 しかしながら,以下(ア)~(カ)のとおり,原告らの上記主張は採用することができない。 (ア) 国旗掲揚の方法本件実施指針は,国旗掲揚の方法について,「国旗は,式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。」等としており,相当程度具体的に指示する内容のものである。国旗掲揚の方法としては,これ以外の方法も考え得るところではあるが,上記(2)アで説示した本件通達(本件実施指針)発出前の国旗掲揚の実態に照らすと,国旗国歌条項の趣旨に沿う国旗掲揚の方法として,上記指示内容が不相当なものであるということはできず,また,国旗掲揚の方法を具体的に命じることが,卒業式等の実施における学校(校長)の裁量権を不当に制約するものということはできない。 (イ) 会場設営の方法 本件実施指針は,会場設営の方法について,「卒業式を体育館で実施する場合には,舞台壇上に演台を置き,卒業証書を授与する」,「入学式,卒業式等における式典会場は,児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。」等としており,相当程度具体的に指示する内容のものである。会場設営の方法としては,これ以外の方法(いわゆるフロア方式等)も考え得るところではあるが,卒業生に対する卒業証書の授与を式典会場の正面舞台の壇上において行い,参列者が当該授与の場面(正面舞台)を注目するという形式の会場設営の方法は,卒業式等に参列する児童・生徒(特に卒業生)に対して,厳粛かつ清新な気分を味わせて教育効果を高めるという観点から,通常想定される設営方法であるということができることに鑑みれば,上記指示内容が不相当なものであるということはできず,ま 卒業生)に対して,厳粛かつ清新な気分を味わせて教育効果を高めるという観点から,通常想定される設営方法であるということができることに鑑みれば,上記指示内容が不相当なものであるということはできず,また,会場設営の方法を具体的に命じることが,卒業式等の実施における学校(校長)の裁量権を不当に制約するものということはできない。 (ウ) 起立斉唱開始の方法等本件実施指針は,起立斉唱開始の方法等について,「式次第には『国歌斉唱』と記載する。」,「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が,『国歌斉唱』と発声し,起立を促す。」としている。 国旗国歌条項は,卒業式等における国歌斉唱による教育指導を求めており,実際に国歌斉唱が実施される以上,式次第に「国歌斉唱」と記載することは至極当然のことであるというべきである。 また,前記6(1)アで説示したとおり,国旗・国歌はそれぞれの国又は国民全体の象徴として扱われ,相互にこれを尊重し,儀礼の場において,国家又は国民全体への一般的敬意を表すものとして国旗・国歌を尊重することが国際慣習となっており,自国の国旗・国歌について,式典等の場においてこれを尊重する儀礼を学ぶことは,国家及び社会の形成者と して,また,国際社会においても活躍し得る個人として必要とされる基本的資質を養い,国際協調の精神を養うことに資するものであるということができる。そして,国旗国歌条項は,卒業式等における国歌斉唱による教育指導を求めているが,卒業式等の場面における教育指導の具体的方法としては,起立斉唱を求めること以外の方法はおよそ考え難い。 そうすると,卒業式等の国歌斉唱の場面において,「国歌斉唱」と発声して卒業式等の参列者に対して起立を促すことの必要性及び合理性はあるというべきであり,こ 斉唱を求めること以外の方法はおよそ考え難い。 そうすると,卒業式等の国歌斉唱の場面において,「国歌斉唱」と発声して卒業式等の参列者に対して起立を促すことの必要性及び合理性はあるというべきであり,これを求める上記指示内容が不相当なものであるということはできず,また,このことを具体的に命じることが,卒業式等の実施における学校(校長)の裁量権を不当に制約するものということはできない。 なお,原告らは,児童・生徒及び式典参加者の内心に配慮し,式次第に「国歌斉唱」と記載しないこと,司会者が起立を促さないことなどが必要であるという趣旨の主張もしている。児童・生徒や参列者の中には,国歌斉唱時に起立斉唱することができないという考えを持っている者や国歌斉唱時に起立斉唱を促されること自体に嫌悪感ないし精神的葛藤を抱く者が含まれていること自体は否定できず,児童・生徒や参列者に対し,国歌斉唱時に起立を促すことを超えて,起立斉唱を強制するといったことは許容されるものではないし,また,このような児童・生徒に対する教育上の配慮が望まれるというべきである。しかしながら,卒業式等における国歌斉唱は,上述したとおり,自国の国旗・国歌について,式典等の場において国旗・国歌を尊重する儀礼を児童・生徒に学ばせる教育指導として行われるものであるから,そのような児童・生徒が含まれるであろうことに対する配慮の必要性から,当然に国歌斉唱時における起立を促すことをしないということにはならないし,教育指導の方法として起立斉唱を促すことの必要性及び合理性自体が否定されるという ことはできない。 (エ) 起立斉唱の方法本件実施指針は,起立斉唱の方法について,「式典会場において,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。 ことはできない。 (エ) 起立斉唱の方法本件実施指針は,起立斉唱の方法について,「式典会場において,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。」としている。教職員に対して国歌斉唱時の起立斉唱を求めることは,学習指導要領(国旗国歌条項)に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実するという目的にとって,必要かつ合理的なものであることは,上記エで説示したとおりであり,卒業式等において国歌斉唱をする場合,本件実施指針が指示する上記方法により行うことは,一般的な方法であって,これが不相当であるということはできず,また,起立斉唱の方法を具体的に命じることが,卒業式等の実施における学校(校長)の裁量権を不当に制約するものということはできない。 (オ) 伴奏の方法本件実施指針は,伴奏の方法について,「国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により行う。」としている。上記エで説示したとおり,卒業式等の国歌斉唱時におけるピアノ伴奏は,卒業式等に参列する児童・生徒に対し,厳粛かつ清新な気分を味わせて教育効果を高めるという観点からも通常望ましいものであり,また,音楽科担当の教員にとって通常想定され期待される行為であり,音楽科担当の教員がいる場合に卒業式等の国歌斉唱時にピアノ伴奏を命じることが不相当なものということはできず,また,卒業式等の実施における学校(校長)の裁量権を不当に制約するものということはできない。 (カ) 本件実施指針は,上記(ア)~(オ)の事項につき相当程度具体的な内容の指示をし,これに沿って卒業式等を実施することを求めているものであり,硬直的であるとの評価もあり得るところではある。 しかしながら,学習指導要領は,儀式的行事について,「学 体的な内容の指示をし,これに沿って卒業式等を実施することを求めているものであり,硬直的であるとの評価もあり得るところではある。 しかしながら,学習指導要領は,儀式的行事について,「学校生活に 有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と規定しているところ,卒業式等は厳粛さが要求される儀式的行事であるから,その中では一定の形式に沿った実施が必要な部分があり,上記(ア)~(オ)で説示したところを併せ考えれば,本件実施指針が定める式典形式が不相当なものであるということはできない。そして,本件実施指針が定める式典形式が教職員が相当と考える式典形式と異なるものであるとしても,そのことから直ちに学校(校長)の裁量権を侵害するものということはできず,本件実施指針が定めていない部分の卒業式等の進行,内容等については,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地があることも併せ考えると,本件実施指針が当然に又は直ちに卒業式等の実施における学校(校長)の裁量権を侵害するものであるということはできない。 カ原告らは,式典会場のどこからでも十分に国旗が確認できる場所に掲揚することについて,各学校ごとの会場設営の状況等により異なり得るし,そのような掲揚方法をしていない学校に対してのみ,それを正すように指示すれば足りるから,全ての都立学校長に対して本件通達を発出する必要性,合理性はない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)c(c))。 しかしながら,教育委員会が都立学校長に対して指導又は命令をする場合において,全ての都立学校長に対する通達,通知の形式で行うか,個々の都立学校長に対する個別命令の形式で行うかの決定は,教育委員会がその状況等に応じて適宜判断すべき 校長に対して指導又は命令をする場合において,全ての都立学校長に対する通達,通知の形式で行うか,個々の都立学校長に対する個別命令の形式で行うかの決定は,教育委員会がその状況等に応じて適宜判断すべき事柄であると解される。上記(2)アで説示したとおり,都教委が全ての都立学校長に対して平成10年実施指針及び平成11年通達による指導等を行ってきたにもかかわらず,国歌斉唱時に起立しない教師がなおいたなどの実態があったという経緯,状況に鑑みれば,本件通達を全ての都立学校長に対する職務命令という形式で発出することについて相応の理由があったということができる。そうすると,国旗 掲揚の方法を通達の形式で都立学校長全員に発出したことについて,その必要性及び合理性がないということはできない。 キ原告らは,教職員に対して卒業式等における起立斉唱等を命ずる職務命令を発令するか否かは校長の裁量に属することであるから,都立学校長に対し,所属校の全ての教職員に対して当該職務命令を発令するように命令すべき必要性,合理性はない旨主張する(前記第3の6(1)イ(ア)c(d))。 しかしながら,本件通達(本件実施指針)は,都立学校長に対する職務命令として発出されたものであるが,その内容に照らすと,校長が所属校の全ての教職員に対して起立斉唱等を命ずる職務命令を発令すべきことを明示的に命じているとまでは認められない。 もっとも,認定事実(5)ウ,エ,オ(ア),カ,(6)イ(ア),オ(ア)によれば,都教委は,都立学校長に対し,本件通達を発出するとともに,本件説明会や校長連絡会等において,教職員に対して個別に文書により職務命令を発令する場合の方法,留意点等について指導し,本件通達発出後初めて都立学校で行われた周年記念行事及び平成15年度卒業式に ,本件説明会や校長連絡会等において,教職員に対して個別に文書により職務命令を発令する場合の方法,留意点等について指導し,本件通達発出後初めて都立学校で行われた周年記念行事及び平成15年度卒業式において,全ての都立学校長が教職員に対して本件各職務命令と同内容の職務命令を発令したこと,P28教育長は,東京都議会第2回定例会において,平成15年度卒業式及び平成16年度入学式について,「学習指導要領や通達に基づいて適正に実施するよう,都教育委員会は全校全教職員に対して,包括的職務命令に加え,個別的職務命令を発出するよう指導したところでございます。」,「都立高校におきましては,なお適正化への途上にあるという現状に鑑みまして,来春の卒業式,入学式におきまして,個別的職務命令を発出するよう指導してまいります。」と答弁しており(認定事実(5)ウ,エ,オ(ア),カ),都教委は,都立学校長に対し,本件通達の発出だけにとどまらず,所属校の全ての教職員に対して起立斉唱等を命じる職務命令を発令するように指導していたこと,平成16年度卒業式及び平成1 7年度入学式並びに平成17年度卒業式及び平成18年度入学式では,全ての都立学校において各校長から所属校の全ての教職員に対して口頭又は文書によって国歌斉唱時の起立斉唱又はピアノ伴奏を命ずる職務命令が発令されたことが認められる。しかしながら,前記(2)アで説示したとおり,平成10年実施指針及び平成11年通達等による指導にもかかわらず,国歌斉唱時に教職員が起立しないなどの実態があったことから,本件通達(本件実施指針)の発出に至ったという経緯に照らせば,都教委が,本件通達の発出だけにとどまらず,都立学校長に対して上記内容の指導をしたことにも相応の理由があるということができる上,上記指導は,その内容に照らすと, の発出に至ったという経緯に照らせば,都教委が,本件通達の発出だけにとどまらず,都立学校長に対して上記内容の指導をしたことにも相応の理由があるということができる上,上記指導は,その内容に照らすと,当該職務命令の発令を都立学校長に強制する内容のものとはいえない。また,証拠(乙41の1~11,41の12の1・2,41の13~25,42の1・2,62,72,74~79,95)によれば,複数の都立学校長が,本件通達発出後,本件実施指針の定める卒業式等の実施のために職務命令の発出の必要性を自ら判断して教職員に対する職務命令を発令していることが認められる。この事実関係に照らすと,本件通達と都教委による上記の指導とを一体的に見た場合でも,本件通達が,都立学校長に対し,所属校の全ての教職員に対して起立斉唱等を命ずる職務命令を発令すべきことまでも職務命令として命じたものということはできない。 したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。 ク原告らは,公の儀式において国家シンボルに敬意を表すること(起立斉唱)が礼儀だと考えるのは,愛国の感情を重視する愛国主義的な見解であり,本件通達及び本件各職務命令は,愛国の感情を重視する一方的な観念を子どもに教え込むことの強制であって許されない旨主張する(前記第3の6(1)イ(イ))。 しかしながら,この点に関する当裁判所の判断は,上記3(2)で説示したとおりであり,原告の上記主張は採用することができない。 ケ原告らは,本件通達及び本件各職務命令について,①卒業式等の実施方法に関する学校の裁量を奪い,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を十分に残したものとなっておらず,②制裁を伴う方法によって教育 命令について,①卒業式等の実施方法に関する学校の裁量を奪い,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を十分に残したものとなっておらず,②制裁を伴う方法によって教育内容を事前に決定するものであり,内容介入の深さと強制の程度に鑑みれば,教育基本法10条1項の「不当な支配」に該当する旨主張する(前記第3の6(1)イ(ウ))。 しかしながら,①の点は,上記オで説示したこと,本件通達(本件実施指針)に定められていないことについては,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地があることからすると,採用することができない。 ②の点は,上記エで説示したとおり,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にある教職員に対して起立斉唱等を求めることには必要性及び合理性が認められるものであり,地方公務員である教職員は,そのような起立斉唱等を命じる職務命令に従わなければならない(地公法32条)ことからすると,採用することができない。 コ原告らは,①教育行政機関の教育の内容,方法についての関与,介入について,昭和51年大法廷判決が大綱的な範囲にとどめられるべきと判断した第一の理由は,「子どもの教育は,教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならないから,教師の自由な創意と工夫の余地が要請される」という教育の本質的要請からであり,これは,国,地方を問わず,教育行政機関一般についてその介入を制限する根拠となるものであるから,教育委員会による介入についても妥当する,②教育における地方自治の原則をもって教育委員会による介入を拡大する根拠とすることは間違っており,教育委員会が具体的な命令を発することができる場合は限られており,上記の教育の本質的要請 妥当する,②教育における地方自治の原則をもって教育委員会による介入を拡大する根拠とすることは間違っており,教育委員会が具体的な命令を発することができる場合は限られており,上記の教育の本質的要請 にも反する旨主張する(前記第3の6(1)イ(エ))。 しかしながら,上記(1)で説示したところによれば,教育委員会が教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合において,当該基準が大綱的基準にとどめられなければならないと解することはできず,また,教育委員会が具体的な命令を発することができる事柄が限定されていると解することもできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令は,教育基本法10条1項の禁止する「不当な支配」に当たるものということはできない。 8 本件通達及び本件各職務命令は国際条約(自由権規約,児童の権利に関する条約)に違反する無効なものであるかについて(1) 原告らは,①本件通達及び本件各職務命令は,思想・良心の自由及び信教の自由を保障する市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)18条に違反する,②本件通達は,子どもの意見表明権,思想・良心の自由及び信教の自由を保障している児童の権利に関する条約12条,14条1項に違反する旨主張する。 (2) 本件通達及び本件各職務命令が,憲法19条及び20条に違反するものであるということができないことは,上記3及び4において説示したとおりである。したがって,本件通達及び本件各職務命令が,自由権規約18条に違反するものであるということもできず,原告らの上記①の主張は採用することができない。 児童の権利に関する条約は,子どもの権利について定めたものである。そうすると, が,自由権規約18条に違反するものであるということもできず,原告らの上記①の主張は採用することができない。 児童の権利に関する条約は,子どもの権利について定めたものである。そうすると,原告らが,同条約12条及び14条1項に違反する旨を主張することは,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものであるといわざるを得ない(行訴法10条1項)。また,上記5(2)イで説示したとおり,本件通達は,本件実施指針に定められていないことについては,教職員や児 童・生徒の自主的工夫の余地があり,弾力的な実施が可能であり,卒業式等の実施方法について,各学校の裁量の余地を残しているということができるから,本件通達(本件実施指針)に基づいて国旗・国歌の指導を行うことが,児童・生徒の思想・良心の自由又は信教の自由を侵害するという関係にあるということもできない。したがって,原告らの上記②の主張も採用することができない。 (3) 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令が,国際条約(自由権規約,児童の権利に関する条約)に違反するということはできない。 9 原告らの本件不起立等は地公法32条,33条に違反する行為であるかについて(1) 地公法32条違反についてア都立学校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する権限を有する者である(学校教育法28条3項,40条,51条,76条)。都立学校長がつかさどる校務については,特段の限定はされておらず,当該学校自体及び当該学校の所属職員が処理している仕事の全てが含まれるものと解される。そうすると,都立学校長は,上記内容の校務を遂行するための監督権限の発動として,所属職員に対し,職務命令を発令する権限を有しており,校務の一つである卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の方法につ 。そうすると,都立学校長は,上記内容の校務を遂行するための監督権限の発動として,所属職員に対し,職務命令を発令する権限を有しており,校務の一つである卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の方法についても,当該権限の一環として,具体的な内容を伴う職務命令を発令する権限を有しているものと解され,本件各校長は,同権限に基づいて,本件各職務命令を発令したものと認められる。 他方,本件各職務命令が憲法19条,20条に違反し,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に当たるものであって,重大かつ明白な瑕疵のある無効なものであるとの原告らの主張が採用できないものであることは,上記3,4及び7で説示したとおりであり,他に本件各職務命令の効力を否定すべき理由を認め得る証拠はない。 以上によれば,本件各職務命令は有効なものであるというべきであるから,原告らが本件各職務命令に違反して本件不起立等に及んだのは,上司の職務上の命令違反に当たり,地公法32条違反を構成する。 イ原告らの主張(上記第3の8(1))の検討(ア) 原告らは,校長の教職員に対する監督権限には,教育活動の内容にかかわる職務命令を出す権限は含まれていない旨主張する(上記第3の8(1)ア(ア))。 しかしながら,この点は上記アで説示したとおりであり,原告らの上記主張は,校長が,学校の本来的活動である教育活動について何らの監督権限を行使し得ないことを内容とする独自の見解であって,採用することができない。 (イ) 原告らは,本件通達が,教育基本法10条1項の禁止する「不当な支配」に該当し,憲法19条及び20条にも違反するから,本件通達に基づく本件各職務命令も重大かつ明白な瑕疵があり,原告らは本件各職務命令に服従すべき義務 達が,教育基本法10条1項の禁止する「不当な支配」に該当し,憲法19条及び20条にも違反するから,本件通達に基づく本件各職務命令も重大かつ明白な瑕疵があり,原告らは本件各職務命令に服従すべき義務はないと主張する(上記第3の8(1)ア(イ))。 しかしながら,以上の主張が採用できないものであることは,上記3,4及び7で説示したとおりである。 (2) 地公法33条違反についてア原告らは,地方公務員として職務命令に従う義務を負い,かつ,児童・生徒の範となるべき都立学校の教職員であって,学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にあるにもかかわらず,児童・生徒や保護者等の参列する卒業式等において,上記(1)アで説示したとおり,適法であると認められる本件各職務命令に違反して本件不起立等に及んだのであるから,それは,教職員の職の信用を傷付ける行為に当たり,また,教職員全体の不名誉となる行為であるというべきであるから,地公法33条違反を構成する。 イ原告の主張(上記第3の8(1)イ)の検討原告らは,起立斉唱を強制することには反対の考えも多く,本件不起立等が世間のひんしゅくを買っているわけではないなどと主張する。 しかしながら,児童・生徒を教育指導すべき立場にあるにもかかわらず,適法な本件各職務命令に公然と違反したこと自体が,教職員の信用を傷付け,教職員全体の不名誉となる行為であることは,上記アで説示したとおりであり,それが,教職員に起立斉唱等を義務付けることに反対する意見があることや,世間のひんしゅくの有無,程度により左右されるものではない。 (3) 以上のとおり,原告らの本件不起立等は,地公法32条,33条に違反するものである。 10 本件各処分は憲 があることや,世間のひんしゅくの有無,程度により左右されるものではない。 (3) 以上のとおり,原告らの本件不起立等は,地公法32条,33条に違反するものである。 10 本件各処分は憲法31条の定める適正手続に違反するものであるかについて(1) 原告らは,本件各処分の前提としての告知及び聴聞の機会が奪われたり,不十分であったりしたとして,本件各処分が憲法31条の定める適正手続に違反する旨主張する(上記第3の9(1)ア)。 しかしながら,地公法31条1項所定の地方公務員には,懲戒処分に際して聴聞又は弁明の機会の付与は法律上要求されておらず(行政手続法3条1項9号,13条1項),地方公務員である原告らについて,本件各処分を受けるについて事前の聴聞又は弁明の機会がなかったとしても,そのこと自体から,本件各処分の手続に重大な違法があるということはできない。 また,認定事実(6)イ,オによれば,原告らは,本件各処分に先立ち,事情聴取を受けているものと認められる。なお,原告らの中には,弁護士の立会いやメモ・録音を拒否されたことから,具体的な事情説明には至らなかった者が含まれているものと認められるが,事情聴取に当たって,弁護士の立会いやメモ・録音を求める権利が被聴取者に保障されていることを認め得る根拠はなく,原告らが弁護士の立会いやメモ・録音を許容されない限り事情聴 取を受けることができないことについて客観的合理的な理由があったことをうかがわせる事情もない。したがって,上記の点をもって,本件各処分の手続上の違法があるということはできない。 (2) 原告らは,①事故報告から本件各処分までの期間があまりにも短期間である,②原告らの個別的事情は一切考慮されることなく,一律,画一の処分となっている,③本件各処 るということはできない。 (2) 原告らは,①事故報告から本件各処分までの期間があまりにも短期間である,②原告らの個別的事情は一切考慮されることなく,一律,画一の処分となっている,③本件各処分は,いわば見せしめであり,本件通達の発出時から懲戒処分は既に決まっていたとして,本件各処分に至る手続がずさんであった旨主張する(上記第3の9(1)イ)。 そこで検討するに,上記①の主張については,認定事実(6)イ,オによれば,本件各処分は,いずれも教職員懲戒分限審査委員会に対する諮問,同委員会による答申,都教委における決定という一連の手続を経て発令されていることが認められる。この点に加えて,本件不起立等は,それ自体は単純な行為であって,必ずしも事実確認等に時間を要するような非違行為の事案とは解されないことを併せ考えれば,本件各処分を発令するまでの期間が短かったからといって,そのこと自体から本件各処分がずさんであるということはできず,その他これを認めるに足りる証拠はない。 上記②の主張については,上記(1)で説示したとおり,都教委は,教職員懲戒分限審査委員会に対する諮問,同委員会による答申,都教委における決定という一連の手続に先立ち,原告らに対して事情聴取の機会を付与していることに鑑みれば,本件各処分に至るまでの検討過程において,原告らの個別的事情を一切考慮していないということはできず,また,本件不起立等は,それ自体は単純な行為であることに鑑みれば,本件不起立等に係る事実関係,動機等を適切に把握すべきということはいえるとしても,個別的事情の相違が必ずしも処分の量定に大きく影響するとまでは解されないことを併せ考えれば,処分内容が事実上共通しているからといって,そのことが本件各処分の手続的違法性を疑わせる事情であるとまではいう 的事情の相違が必ずしも処分の量定に大きく影響するとまでは解されないことを併せ考えれば,処分内容が事実上共通しているからといって,そのことが本件各処分の手続的違法性を疑わせる事情であるとまではいうことができない。 上記③の主張については,本件各処分が見せしめであり,本件通達の発出時から懲戒処分が既に決まっていたという事実を認めるに足りる証拠はない。 (3) 以上によれば,本件各処分が適正手続(憲法31条)に違反する旨の原告らの上記主張は採用することができない。 11 本件各処分は裁量権を逸脱又は濫用したものであるかについて(1) 地方公務員に対する懲戒処分は,地方公務員としてふさわしくない非行がある場合に,その責任を確認し,地方公務員関係の秩序を維持するために科せられる制裁である。このような懲戒制度の趣旨に照らすと,地方公務員に地公法所定の懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,平素から事情に通暁し,職員の指揮監督の衡にあたる懲戒権者の裁量に任されていると解される。そうすると,裁判所が懲戒処分の適否を審査するに当たっては,懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し,その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱してこれを濫用したと認められる場合に限り,違法であると判断すべきである(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁昭和59年(行ツ)第46号平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。 (2) 証拠(甲 (行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁昭和59年(行ツ)第46号平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。 (2) 証拠(甲278)によると,都教委は,教職員の非違行為への対応として,過去の非違事例を類型化し,これらに対する懲戒処分の標準的な処分量定を作成して公表していること,本件各処分当時の当該処分量定の内容(以下「本件処分量定基準」という。)の内容は,概要,以下のとおりであることが認められる。 ア処分量定の決定以下①~③のほか,適宜,非違行為後の対応等も含め総合的に考慮のうえ判断するものとする。処分量定を定める表(省略)における処分量定は,あくまで標準であり,個別の事案の内容や処分の加重によっては,同表に掲げる処分量定以外とすることもあり得る。また,同表に掲げられていない非違行為についても,懲戒処分の対象となり得る。 ① 非違行為の態様,被害の大きさ及び司法の動向など社会的重大性の程度② 非違行為を行った職員の職責,過失の大きさ及び職務への影響など信用失墜の度合い③ 日常の勤務態度及び常習性など非違行為を行った職員固有の事情イ処分量定の加重過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合は,量定を加重する。 ウ職務命令違反に関する処分量定上記表では,職務に伴う非行としての勤務態度不良(職務命令違反,職場離脱等)についての処分量定は,減給と戒告としている。 (3) 証拠(乙71,86の2)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ア都教委は,原告らの本件不起立等について,以下(ア)~(エ)の4事項を考 減給と戒告としている。 (3) 証拠(乙71,86の2)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ア都教委は,原告らの本件不起立等について,以下(ア)~(エ)の4事項を考慮するともに,過去の同種事案(ピアノ不伴奏)に関する処分内容を参考として処分量定を行っており,都教育庁人事部職員課における事情聴取,処分量定案の検討,教職員懲戒分限審査委員会に対する諮問,同委員会による答申,都教委における決定という一連の手続を経て本件各処分を行った。 (ア) 本件不起立等は,児童・生徒にとって学校生活に有意義な変化や折 り目をつけるために重要な学校行事である卒業式等の場において,公教育を担う教育公務員が,公教育の根幹である学習指導要領に基づき教育課程を適正に実施するために発せられた重要な職務命令に違反するという重大な非違行為であること。 (イ) 本件不起立等は,卒業式等の来賓,保護者はもとより,適正に国旗・国歌指導を受けることとされている児童・生徒を目の前にして教職員が行ったものであり,教育上好ましくないこと。 (ウ) 本件不起立等は,平成11年通達以後,校長が適正に卒業式等を実施するよう指導を繰り返し行い,さらに,本件通達が発せられた後にも,本件通達に基づいて校長が教職員に対して適正に卒業式等を実施するように指導を行った経過があったにもかかわらず,発生した職務命令違反であること。 (エ) 学校も組織である以上,上司の職務上の命令に従うことは当然のことであり,本件不起立等は,組織人としての職務上の義務違反であること。 イ国歌斉唱時の国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを命ずる職務命令に違反した教職員に対して減給処分又は停職処分の懲戒処分がされた事案があるが,これは, 職務上の義務違反であること。 イ国歌斉唱時の国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを命ずる職務命令に違反した教職員に対して減給処分又は停職処分の懲戒処分がされた事案があるが,これは,当該被処分者が,過去に非違行為を行って懲戒処分(戒告処分)を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った事案であり,このような非違行為には処分量定を加重するという運用をしていること,当該違反者は,上記アの4事項に該当するとともに,他の教職員の前で校長からの職務命令を公然と無視したという看過できない非違行為であること,児童・生徒の教育を行う教育公務員は他の公務員より高い行為規範と自覚が求められるのであって,繰り返し同様な非違行為を行った責任は重いことが考慮されたことによる。 (4) 以上を前提として,本件各処分における裁量権の逸脱又は濫用の有無につ いて検討する。 ア本件各処分のうち戒告処分について(ア) 前提事実(4)イによれば,本件不起立等について戒告処分を受けた原告は48名(原告番号でいうと,1,3,4,6~14,16~20,21-1,22,23,26~29,30-1,32-1,33,34,37~42,45,48,49-1,52,53,55,56,58~63及び65の原告)いるところ,認定事実(6)イ,オ並びに証拠(甲583の1・2・3の1・4~8,589の174・176・177・179・180・183~187・189・190・192~196・199~203・205・206・211・214・215・221・226・227・229・232・234~236・239,原告P68,原告P32,原告P39,原告P40,原告P26,原告P49,原告P51)及び弁論の全趣旨によれば,これらの原告らは,当該戒告処分 26・227・229・232・234~236・239,原告P68,原告P32,原告P39,原告P40,原告P26,原告P49,原告P51)及び弁論の全趣旨によれば,これらの原告らは,当該戒告処分が初めて受けた懲戒処分であることが認められる。 他方,上記原告らについて,本件不起立等以外に非違行為と評価されるような業務実態があったことをうかがわせる証拠はない。 (イ) 上記原告らの処分理由となった本件不起立等の非違性の程度について検討するに,上記3~9で説示したとおり,本件各職務命令は,国旗国歌条項の定める卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するために発令された適法なものであるところ,上記原告らは,いずれも都立学校の教職員として,本件各職務命令に従わなければならない立場にあったにもかかわらず,これに従わずに本件不起立等に及んだのであり,上記原告らによる本件不起立等は,生徒や保護者が参列し,厳粛かつ清新な雰囲気で挙行されるべき卒業式等の場面において,公然となされたものであることに照らせば,上記原告らの本件不起立等によって卒業式等の進行自体に具体的な支障がなかったとしても,本件不起立等 を軽微な非違行為であるということはできない。 (ウ) 以上によれば,上記原告らの本件不起立等は,それ自体軽微な非違行為とはいえないものであること,上記原告らは,本件不起立等以外に問題となるような業務実態がない者であるが,このことは本件不起立等自体の非違性を減殺するものではないこと,上記原告らに対する戒告処分は,懲戒処分の種類の中で最も軽いものであることを併せ考慮すると,上記原告らの本件不起立等に対して戒告処分を科したことが社会通念上著しく妥当を欠くとはいえない。したがって,都教委の上記原告らに対する本件各処 分の種類の中で最も軽いものであることを併せ考慮すると,上記原告らの本件不起立等に対して戒告処分を科したことが社会通念上著しく妥当を欠くとはいえない。したがって,都教委の上記原告らに対する本件各処分(戒告処分)について,裁量権の逸脱又は濫用があると認めることはできない。 イ本件各処分のうち減給処分10分の1・1月について(ア) 前提事実(4)イによれば,本件不起立について減給処分10分の1・1月を受けた原告は21名(原告番号でいうと,2,5,15,21-2,24,25,30-2,31-1,32-2,35,43,44,46,47,49-2,50,51,54,57,64及び66の原告)いるところ,認定事実(6)イ,オ並びに証拠(甲465の6,582の2・5,583の3の1,589の175・178・188・194・197・198・203~205・209・216・217・219・220・225・228・231・238・240,原告P69)及び弁論の全趣旨によれば,原告番号2,5,15,24,25,31-1及び35の原告7名は,平成16年度卒業式(平成17年3月実施)における本件不起立の前に,平成15年度卒業式(平成16年3月実施)における職務命令違反(国歌斉唱時の不起立)で戒告処分を受けていること,原告番号の21-2,30-2及び32-2の原告3名は,平成17年度入学式(同年4月実施)における本件不起立の前に,その直前である平成16年度卒業式(平成17年3月実施)における職務命令違反 (国歌斉唱時の不起立)で戒告処分を受けていること,原告番号43,47,50,57,64及び66の原告6名は,平成17年度卒業式(平成18年3月実施)における本件不起立の前に,平成15年度卒業式(平成16年3月実施)における職務命令違 ていること,原告番号43,47,50,57,64及び66の原告6名は,平成17年度卒業式(平成18年3月実施)における本件不起立の前に,平成15年度卒業式(平成16年3月実施)における職務命令違反(国歌斉唱時の不起立)で戒告処分を受けていること,原告番号46の原告は,平成17年度卒業式(平成18年3月実施)における本件不起立の前に,平成15年度周年行事(同年11月実施)における職務命令違反(国歌斉唱時に会場から退場)で戒告処分を受けていること,原告番号51の原告は,平成17年度卒業式(平成18年3月実施)における本件不起立の前に,平成16年度入学式(同年4月実施)における職務命令違反(国歌斉唱時に会場から退場)で戒告処分を受けていること,原告番号44及び54の原告2名は,平成18年度入学式(同年4月実施)における本件不起立の前に,平成15年度卒業式(平成16年3月実施)における職務命令違反(国歌斉唱時の不起立)で戒告処分を受けていること,原告番号49-2の原告は,平成18年度入学式(同年4月実施)における本件不起立の前に,その直前である平成17年度卒業式(平成18年3月実施)における職務命令違反(国歌斉唱時の不起立)で戒告処分を受けていることが認められる。 他方,上記原告らについて,前回の処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に非違行為と評価されるような業務実態があったことをうかがわせる証拠はない。 (イ) 本件各職務命令が適法であり,上記原告らが本件各職務命令に従うべき立場にあった者であること,本件不起立が軽微な非違行為であるということができないものであることについては,上記ア(イ)で説示したとおりである。 (ウ) 以上によれば,上記原告らは,既に本件不起立と同様の職務命令違 反に 軽微な非違行為であるということができないものであることについては,上記ア(イ)で説示したとおりである。 (ウ) 以上によれば,上記原告らは,既に本件不起立と同様の職務命令違 反により戒告処分を受けていた者であり,職務命令違反行為である本件不起立が懲戒処分の対象となることを十分認識していたにもかかわらず,同種の非違行為である本件不起立をあえて繰り返したと評価される者であり,その非違性の程度は,1回目のそれより重いといわざるを得ない。そして,都教委においては,上記(2)及び(3)で認定したとおり,過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合には,原則として量定を加重して対応する運用をとっていることが認められるところ,このような運用が不相当なものであるとは認められない。以上に加えて,減給処分は,戒告処分の次に重い懲戒処分として定められている懲戒処分であり,減給処分10分の1・1月は,減給処分の中でも比較的軽いものであること,上記原告らは,前回の処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に問題となるような業務実態はない者であるが,このことは本件不起立自体の非違性を減殺するものではないことを併せ考慮すると,上記原告らの本件不起立に対して減給処分10分の1・1月を科したことが社会通念上著しく妥当を欠くとまではいい難い。したがって,都教委の上記原告らに対する本件各処分(減給処分10分の1・1月)について,裁量権の逸脱又は濫用があると認めることはできない。 ウ原告P38に対する減給処分10分の1・6月について(ア) 前提事実(4)並びに証拠(甲129,589の209,乙41の9)及び弁論の全趣旨によれば,原告P38は,①P70養護学校の平成14年度入学式において,日の丸 分の1・6月について(ア) 前提事実(4)並びに証拠(甲129,589の209,乙41の9)及び弁論の全趣旨によれば,原告P38は,①P70養護学校の平成14年度入学式において,日の丸の掲揚及び君が代奏楽が行われることに対する抗議の意思を表明するため,縦約10センチメートル,横約15センチメートルの黒の枠と,その枠内の中央に直径約3センチメートルの塗りつぶした赤い丸を描き,この絵柄に向かって左上から右下方向に黒色の斜線を入れた模様が右胸部分に,直径約20センチメートルのハ ートの絵柄に鎖を重ねた模様が背中側に描かれた白無地のブラウスを着用して上記入学式に出席しようとし,上記学校の校長から上着の着用を命じる職務命令を受けたにもかかわらず,これに従わないまま入学式に臨席し,さらに,同校長から事情聴取のために校長室に来るように命じる職務命令を受けたにもかかわらず,これに従わなかったことを処分事由として,平成14年11月6日付けで戒告処分(以下「本件P38先行戒告処分」という。)を受けたこと,②その後,平成15年度卒業式において,事前に国歌斉唱時に起立斉唱することを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず起立しなかったことを処分事由として,平成16年4月6日付けで減給処分10分の1・1月の懲戒処分(以下「本件P38先行減給処分」という。)を受けたこと,③その後,平成16年度卒業式における本件不起立を処分事由として,減給処分10分の1・6月の懲戒処分を受けたことが認められる。 他方,原告P38について,本件各処分以前の各懲戒処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に非違行為と評価されるような業務実態があったことをうかがわせる証拠はない。 (イ) 原告P38に対する本件各職務命令が適法であり,同原告 各懲戒処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に非違行為と評価されるような業務実態があったことをうかがわせる証拠はない。 (イ) 原告P38に対する本件各職務命令が適法であり,同原告が本件各職務命令に従うべき立場にあった者であること,卒業式等における不起立(上記(ア)の②及び③)が軽微な非違行為であるということができないものであることについては,上記ア(イ)で説示したとおりである。また,本件P38先行戒告処分の処分事由(上記(ア)の①)についても,厳粛かつ清新な雰囲気で挙行されるべき卒業式に上記(ア)の①で認定したような服装で臨席することは不相当というべきであり,それへの対応として校長が発令した上着着用を命じる職務命令は,その必要性及び合理性の認められる相当な職務命令であると解されるところ,同原告は同職務命令に従わなかったというものであるから,これだけを取り上げて も,軽微な非違行為であったということはできない。 (ウ) 上記(ア)で認定した処分経緯によれば,原告P38は,卒業式等における不起立を処分事由とする懲戒処分としては,本件P38先行減給処分が初めてのものであり,本件不起立に対するものが2回目のものであるが,これらに先立って本件P38先行戒告処分を受けていること,上記(イ)で説示したとおり,本件不起立の非違性は軽微なものではない上,同原告は,本件P38先行戒告処分及び本件P38先行減給処分を受け,職務命令違反行為である本件不起立が懲戒処分の対象となることを十分認識していたにもかかわらず,あえて同種の非違行為を繰り返したものというべきであって,本件不起立の非違性の程度が相対的に重く評価され得る事情があること,過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合には, 行為を繰り返したものというべきであって,本件不起立の非違性の程度が相対的に重く評価され得る事情があること,過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合には,量定を加重して対応する運用が不相当であるとはいえないこと,同原告は,本件各処分以前の各懲戒処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に問題となるような業務実態はない者であるが,このことは本件不起立自体の非違性を減殺するものではないことを併せ考えると,同原告の本件不起立に対して減給処分10分の1・6月を科したことが社会通念上著しく妥当を欠くとまでは断じ難い。したがって,都教委の同原告に対する本件各処分(減給処分10分の1・6月)について,裁量権の逸脱又は濫用があると認めることはできない。 エ原告P62に対する停職処分1月について(ア) 証拠(甲589の204)及び弁論の全趣旨によれば,原告P62は,①平成16年3月に実施された平成15年度卒業式において事前に国歌斉唱時に起立斉唱することを命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず起立しなかったことを処分事由として,平成16年3月31日付けで戒告処分(以下「本件P62先行戒告処分」という。)を受けたこ と,②平成17年3月に実施された平成16年度卒業式において事前に国歌斉唱時に起立斉唱することを命ずる職務命令(本件各職務命令)を受けていたにもかかわらず起立しなかったことを処分事由として,平成17年3月31日付けで減給処分10分の1・1月の懲戒処分(本件各処分のうちの別紙2懲戒処分等一覧表の番号31-1のもの。以下「本件P62先行減給処分1」という。)を受けたこと,③同年9月13日開催の服務事故再発防止研修(専門研修)への参加を命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず 処分等一覧表の番号31-1のもの。以下「本件P62先行減給処分1」という。)を受けたこと,③同年9月13日開催の服務事故再発防止研修(専門研修)への参加を命ずる職務命令を受けていたにもかかわらず同研修に参加しなかったこと(以下「本件研修不参加」という。)を処分事由として,同年12月1日付けで減給処分10分の1・6月の懲戒処分(以下「本件P62先行減給処分2」という。)を受けたこと,④平成18年3月30日,同月10日に実施された卒業式において事前に起立行為を命ずる職務命令(本件各職務命令)を受けていたにもかかわらず起立しなかったことを処分事由として停職処分1月の懲戒処分(本件各処分のうちの別紙2懲戒処分等一覧表の番号31-2のもの)を受けたことが認められる。 他方,原告P62について,本件各処分以前の各懲戒処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に非違行為と評価されるような業務実態があったことをうかがわせる証拠はない。 (イ) 原告P62に対する本件各職務命令が適法であり,原告P62が本件各職務命令に従うべき立場にあった者であること,卒業式等における不起立(上記(ア)の①,②及び④)が軽微な非違行為であるということはできないことについては,上記ア(イ)で説示したとおりである。また,本件研修不参加についてみても,本件不起立に対する懲戒処分(上記(ア)の②)を原因として命じられた研修への参加を拒絶して職務命令違反をさらに重ねたという態様に照らして,その非違性は小さくないといわざるを得ない。 (ウ) 上記(ア)で認定した処分経緯によれば,原告P62は,本件各処分(停職処分1月)の前に,2度にわたり卒業式等における不起立を処分事由として懲戒処分(本件P62戒告処分と本件P62減給処分1)を受けて 記(ア)で認定した処分経緯によれば,原告P62は,本件各処分(停職処分1月)の前に,2度にわたり卒業式等における不起立を処分事由として懲戒処分(本件P62戒告処分と本件P62減給処分1)を受けていたほか,その後にも職務命令に違反して本件研修不参加をして減給処分10分の1・6月の懲戒処分(本件P62減給処分2)を受けていた者であること,上記(イ)で説示したとおり,本件不起立の非違性は軽微なものではない上,同原告は,上記のとおり3度にわたって懲戒処分を受けており,職務命令違反行為である本件不起立が懲戒処分の対象となることを十分認識していたにもかかわらず,あえて同種の非違行為を繰り返したものであって,本件不起立の非違性の程度が相対的に重く評価され得る事情があること,過去に非違行為を行い懲戒処分を受けたにもかかわらず,再び同様の非違行為を行った場合には,量定を加重して対応する運用が不相当であるとはいえないこと,都教委が定める本件処分量定基準では,職務命令違反に対する処分量定は減給又は戒告とされているが,これはあくまで標準を定めるものであり,個別の事案の内容や処分の加重に当たっては,これと異なる処分量定があり得るものとされていること(上記(2)),4度にわたって同種の職務命令違反を繰り返すということは通常想定し難い事態であり,同原告の本件不起立は確信的な職務命令違反行為であると評価せざるを得ないこと,同原告は,本件各処分以前の各懲戒処分の対象とされた非違行為及び本件不起立以外に問題となるような業務実態はない者であるが,このことは本件不起立自体の非違性を減殺するものではないことを併せ考えると,同原告の本件不起立に対して停職処分1月を科したことが社会通念上著しく妥当を欠くとまではにわかに断じ難い。したがって,都教委の同原告に対する本件各処分 違性を減殺するものではないことを併せ考えると,同原告の本件不起立に対して停職処分1月を科したことが社会通念上著しく妥当を欠くとまではにわかに断じ難い。したがって,都教委の同原告に対する本件各処分(停職処分1月)について,裁量権の逸脱又は濫用があると認めることはできない。 オなお,証拠(甲281の1~3,385の1~4)及び弁論の全趣旨によれば,東京都は,他の地方公共団体に比べて,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱等を命じる職務命令に対する違反行為について厳しい姿勢で臨んでいることがうかがわれ,例えば,広島県においては,同種の非違行為を繰り返した場合であっても,懲戒処分としては戒告処分を繰り返し科していることが認められる。しかしながら,教職員の非違行為にどの程度厳しい姿勢で臨むかという姿勢ないし考えは,各地方公共団体及びその教育委員会が,当該地域の実情等をも踏まえながら,それぞれ検討すべき教育行政,管理政策上の問題であり,その姿勢ないし考えが全国的に一律,一様のものでなければならないというものではない。したがって,同種の非違行為について,東京都とその他の地方公共団体との間で懲戒処分の量定が異なっているからといって,直ちに東京都における懲戒処分について裁量権の逸脱又は濫用があったものと認めることはできない。東京都においては,国旗国歌条項に基づく卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に向けた都教委による取組とその実施場面における実態は概要上記7(2)アのとおりのものであり,都教委は,この実態を踏まえて,卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として本件通達を発出し,また,都立学校長は,その実施のために本件各職務命令を発令したという状況の下で,原告らが本件不起立等の職務命令違反行為を行い 旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として本件通達を発出し,また,都立学校長は,その実施のために本件各職務命令を発令したという状況の下で,原告らが本件不起立等の職務命令違反行為を行い,これに対して本件各処分がされているという事実関係があるのであるが,このような点に関する広島県における実情をうかがい知る証拠はなく,広島県との比較において,都教委の原告らに対する処分量定が裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものということはできない。 (5) 本件各処分が裁量権を逸脱又は濫用したものであるとする原告らの個別の主張(上記第3の10(1))の検討ア原告らは,命令と服従からなる公務員秩序は,教育部門になじむもので はないところ,都教委は,特定の価値観や教育観によって教育を支配,統制するという意図と動機から懲戒処分を濫発したものであって,本件各処分は,懲戒制度の趣旨及び目的を逸脱したものであると主張する(上記第3の10(1)ア)。 確かに,教育は,教師と生徒との全人格的な触れ合いを通じて,生徒の人格形成を目指す営為であり,このような教育の本来的性質は,教育部門における公務員秩序の在り方を検討する上でも重要な要素となるものであるということはできる。しかしながら,原告らは,公立学校の教育を担う地方公務員である以上,適法な職務命令に従うべき義務があることはいうまでもなく,そのことは,教育の上記本来的性質と矛盾抵触するものではない。そして,原告らは,本件各処分が特定の価値観や教育観によって教育を支配,統制するという意図と動機から濫発されたものであるとも主張するが,同事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,①本件各職務命令は,仮に違憲違法でないと 動機から濫発されたものであるとも主張するが,同事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,①本件各職務命令は,仮に違憲違法でないとしても,憲法及び教育基本法の趣旨に反するものであり,原告らが真摯な動機から本件不起立等に至ったこと,本件不起立等による卒業式等への影響は限りなく小さいことからすると,本件不起立等の非違性の程度は軽い,②原告らは,本件各職務命令及び本件各処分によって,甚大な精神的苦痛を被った,③原告らは,本件各処分によって,昇給延伸などの経済的不利益を被った,④原告らは,本件各処分だけではなく,各種研修の受講を義務付けられ,教職員に対する業績評価において不利益な評価を受けるなどの人事上の不利益を被った,⑤不起立等に対する懲戒処分は,原告らが転向ないし改宗しない限り,幾度も繰り返されることとなり,その不利益は甚大であるとして,本件不起立等の非違性の程度と本件不起立等に対する制裁措置としての本件各処分により受ける原告らの不利益の程度との権衡を著しく失し ている旨主張する(上記第3の10(1)イ)。 しかしながら,以下(ア)~(オ)で説示するとおり,原告の上記主張を採用することはできない。 (ア) 上記①の点について本件不起立等を軽微な非違行為であるということができないことは,上記(4)ア(イ)で説示したとおりである。なお,上述のとおり,本件各職務命令は適法なものであり,原告らが教職員として学習指導要領(国旗国歌条項)に沿った教育指導を行うべき立場にあるにもかかわらず,学校行事である卒業式等において公然と職務命令違反行為である本件不起立等を行ったことに鑑みれば,原告らが本件不起立等を行った動機の真摯性の程度,本件不起立等 指導を行うべき立場にあるにもかかわらず,学校行事である卒業式等において公然と職務命令違反行為である本件不起立等を行ったことに鑑みれば,原告らが本件不起立等を行った動機の真摯性の程度,本件不起立等により卒業式等の進行に影響がなかったことを踏まえてもなお,その非違性が軽いものと評価することはできない。 (イ) 上記②の点について本件各職務命令が適法なものであり,原告らは教職員として起立斉唱等を行うべき義務を負っていたのであるから,本件不起立等が懲戒処分の対象となり得ることは当然であって,原告らが,本件各処分を受けたことによって精神的苦痛を受けたとしても,それは本件各処分に伴う事実上の影響にすぎず,本件各処分の適法性ないし相当性を左右する事情には当たらないというべきである。 (ウ) 上記③の点について原告らは,本件各処分を受けたことにより,昇給延伸や勤勉手当の削減等に加えて,定年退職後に嘱託を希望しても採用されないなどの経済的不利益を受け得ることが認められる(上記2参照)。しかしながら,これらは,本件各処分自体が予定し,また,本件各処分自体によって直接に生じる経済的不利益ではなく,上記の昇給等や再雇用は,それらを定める給与制度や人事制度等において,懲戒処分を受けていないこと, 勤務成績が良好であることなどを要件としていることによって生じるものである。したがって,これらの経済的不利益は,本件各処分自体の適法性ないし相当性を直接左右する事情には当たらないというべきものである。 (エ) 上記④の点について不起立等によって懲戒処分を受けた者が,各種研修等への参加を義務付けられたからといって,これを制裁措置と評価することはできないし,これが制裁としてされたことを認める 上記④の点について不起立等によって懲戒処分を受けた者が,各種研修等への参加を義務付けられたからといって,これを制裁措置と評価することはできないし,これが制裁としてされたことを認めるに足りる証拠もない。また,教職員に対する業績評価において,本件各処分を受けたという事実を考慮に入れることは至極当然であるし,原告らが,本件各処分を受けたことを理由として不当な取扱いを受けたことを客観的に認めるに足りる証拠はない(オ) 上記⑤の点についてある非違行為を行って懲戒処分を受けたにもかかわらず,その後も同種非違行為を繰り返した場合,後の非違行為の非違性が相対的に重く評価されることになることは不相当であるとはいえず,後の非違行為に対する懲戒処分の量定が加重されることも不相当であるとはいえない。また,上記3及び4で説示したとおり,本件各職務命令は,原告らの思想及び良心の自由又は信教の自由を侵害するものではないから,本件各職務命令に従うためには原告らが転向ないし改宗しなければならない旨の主張は,本件各職務命令と思想・良心の自由及び信教の自由との関係について上記と異なる見解を前提としたものであり,採用することができない。 ウ原告らは,①都教委が,本件各処分において,原告ら教職員及び生徒の精神的自由の尊重,教育に対する不当な支配の抑制といった事情を軽視した,②原告らが,本件不起立等を除いたその余の面では,教師として優秀 であることを考慮していない,③本来考慮すべきではない都知事や一部の都議会議員の意向を考慮して卒業式等の進行が妨害される抽象的可能性を過大に評価しており,本件各処分は,重視すべき事項を軽視し,本来考慮すべきではない事項を考慮したものであると主張する(上記第3の10(1)ウ)。 して卒業式等の進行が妨害される抽象的可能性を過大に評価しており,本件各処分は,重視すべき事項を軽視し,本来考慮すべきではない事項を考慮したものであると主張する(上記第3の10(1)ウ)。 しかしながら,以下(ア)~(ウ)で説示するとおり,原告の上記主張を採用することはできない。 (ア) 上記①の点について上記3,4及び7で説示したとおり,本件各職務命令及び本件各処分が,憲法19条,20条,教育基本法10条1項に違反するものであるということはできず,上記主張事実を認めるに足りる証拠はない。 (イ) 上記②の点について本件不起立等がそれ自体軽微な非違行為といえないことは,上記(4)ア~エの各(イ)で説示したとおりであるところ,原告らが教師として優秀であるかどうかという事情は,本件不起立等自体の非違性を減殺するものではない。そして,懲戒処分の要否,処分量定を検討するに当たり,普段の勤務態度,勤務成績等も考慮要素になり得るものであるが,原告らの本件不起立等に対する本件各処分が社会通念上著しく妥当を欠くものといえないことは,上記(4)ア~エの各(ウ)で説示したとおりである。 (ウ) 上記③の点について本件各処分において,都知事や一部の都議会議員の意向が影響してその処分量定が決められた事実を認めるに足りる証拠はない。なお,本件不起立等は,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を学習主導要領(国旗国歌条項)の趣旨に則って適正に実施するために発令された本件各職務命令に対する違反行為であるから,それに対する処分を検討するについて,卒業式等の進行等への影響を考慮に入れるのは当然のことである ところ,本件処分においてこれを過大に評価したとことを認めるに足りる証拠もな 反行為であるから,それに対する処分を検討するについて,卒業式等の進行等への影響を考慮に入れるのは当然のことである ところ,本件処分においてこれを過大に評価したとことを認めるに足りる証拠もない。 (6) 以上によれば,都教委が原告らに対して行った本件各処分が裁量権を逸脱又は濫用したものということはできない。 12 原告らの損害賠償請求について上記2~11 で検討説示したところによれば,本件各処分には実体上及び手続上の違法性は認められない。したがって,原告らの国家賠償法に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 第5 結語以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官青野洋士 裁判官渡邊和義 裁判官村田一広は,差し支えにつき署名押印することができない。 裁判長裁判官青野洋士
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