平成14(わ)1475 業務上過失傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月28日 神戸地方裁判所
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判決文本文2,704 文字)

主文 被告人を罰金15万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成13年12月27日午後6時20分ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,神戸市垂水区Aa丁目b番c号先の信号機による交通整理が行われている交差点を,青色信号に従い南方から東方へ向かい右折するに当たり,あらかじめ右折の合図をして交差点中心の直近の内側を徐行し,対向車両の有無及びその安全を確認して右折進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,右折の合図はしたが,右折前方の横断歩道上に注意を奪われ,対向車両の有無及び安全を十分に確認しないまま時速約20キロメートルで内小回りに右折進行した過失により,折から同交差点を青色信号に従い北方から南方に向け対向直進してきたV(当時50歳)運転の普通乗用自動車(軽四)前部に自車左前角部を衝突させ,よって,同人に約3週間の加療を要する胸骨骨折の傷害を,同人運転車両に同乗していたW(当時2歳)に全治まで約1週間を要する頭部打撲・挫創の傷害を負わせた。 (証拠の標目)(括弧内の数字は検察官の証拠請求番号を表す。)省略(補足説明) 1 被告人及び弁護人は,被害車両は無灯火のまま交差点に進入しており,被告人には過失はないと主張するので,この点について,裁判所の判断を補足して説明する。 2 各関係証拠によれば,事後に実施された実況見分時には,被害車両の前照灯は,スイッチレバーがオフ状態となっており,消灯されていたことが認められる。 3 この点につき,本件事故直後に現場を通りかかった証人Xは,ガソリンが ば,事後に実施された実況見分時には,被害車両の前照灯は,スイッチレバーがオフ状態となっており,消灯されていたことが認められる。 3 この点につき,本件事故直後に現場を通りかかった証人Xは,ガソリンが漏れて引火すると大変なことになると思い,被害車両の運転者Vに,「ライトを消しましょうね。」と言って,ハンドルの後ろにあったライトスイッチレバーを回す動作をしたと公判廷で明確に供述している。 もっとも,同証人は,前照灯が点いているのを見たのではなく,被害車両の運転席のパネルが明るかったため,前照灯が点いていると思ったとか,スイッチレバーが動いたかどうか,今となってははっきりしないとも供述している。しかし,同証人は,25年の運転経験があるというのであり,前照灯を消すという単純な動作を誤るとは考えにくい上,そもそも,前照灯が消えていたとすると,それを消そうという考えも起こらなかったと思われること,加えて,前記Vは,周りが明るかったときに,「消しますね。」と言われて,暗くなったと述べていることなどに照らすと,証人Xが,前照灯を消したことは明らかである。 4 証人Vは事故当時,自車の前照灯を点けていたと供述しているところ,本件事故が起こったのは日没後1時間20分以上経過した時間帯で,現場は郊外の一般市道であって,前照灯を点けていなければ走行することが困難な状況であることからして,相当の運転歴を有するVが前照灯を点け忘れて走行していたとは考えがたく,また,前記のX証言にも一致していることからも,証人Vの前記供述は信用することができる。なお,証人Vは公判廷において,交差点で停止した後,スモールライトからヘッドライトに切り替え忘れたことはないかという質問に対し,「ないとは言えないと思います。」と答えているが,これは自動車の運転に伴う日常的な行為で,記 おいて,交差点で停止した後,スモールライトからヘッドライトに切り替え忘れたことはないかという質問に対し,「ないとは言えないと思います。」と答えているが,これは自動車の運転に伴う日常的な行為で,記憶に残りにくい事柄について,一般的に答えたものであって,同証人の前記供述の信用性を否定するものとはいえない。 5 これに対し被告人は,被害車両に気付いた地点や急ブレーキを踏んだか否かなど,本件の核心となる点について合理的な説明のないまま供述を変遷させていること,関係各証拠により被告人自身が押捺したことが明らかな供述調書について,自分は押捺していないと強く主張し,不合理な供述態度を示していることなど,その供述態度等に照らし,被告人の供述は信用することができない。 6 以上のとおり,被害車両は前照灯を点けて交差点に入ったものと認められ,被告人の弁解はその前提を欠くものであって,判示の被告人の過失は,優にこれを認定することができる。 (法令の適用)被告人の判示行為は刑法211条1項前段に該当するところ,これは1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として犯情の重いVに対する業務上過失傷害罪の刑で処断することとし,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で被告人を罰金15万円に処し,その罰金を完納できないときは,同法18条により5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし,訴訟費用については刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転し,交差点を青色信号に従って右折するに際し,安全確認を怠ったため,同交差点を直進してきた普通乗用自動車(軽四)と衝突し,その運転者及びその同乗者に傷害を負わせたという業務 人が,普通乗用自動車を運転し,交差点を青色信号に従って右折するに際し,安全確認を怠ったため,同交差点を直進してきた普通乗用自動車(軽四)と衝突し,その運転者及びその同乗者に傷害を負わせたという業務上過失傷害の事案である。被告人は,対向車両の安全確認という基本的な注意義務に違反したものであって,その過失は一方的で重大である。また,被告人は自己の過失をいっさい認めず,被害弁償もしておらず,反省の様子がないことなどに照らすと,被告人の刑事責任は軽視することができない。 しかし,被害者らの傷害の程度は,さほど重大なものではなかったこと,被告人は,事故発生直後に救急車を呼ぶなど,救護義務を果たしていること,被告人には前科がないことなど,被告人に酌むべき情状もあるので,これらを総合考慮し,所定刑中罰金刑を選択し,主文の刑を定めた。 (求刑・罰金15万円)(検察官鈴木淳史出席)平成15年7月28日神戸地方裁判所第4刑事部裁判官笹野明義

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