平成15(わ)457 恐喝被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月28日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,368 文字)

主文 被告人A及び被告人Cをそれぞれ懲役2年6月に,被告人Bを懲役2年に処する。 未決勾留日数中,被告人A及び被告人Bに対しいずれも360日を,被告人Cに対し200日をそれぞれその刑に算入する。 被告人Cに対し4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人Aは,登記簿上は存在するもののその所在地が明らかでない兵庫県朝来郡a町b字cd番の畑(登記簿上の地積512平方メートル。以下「本件土地」という。)の所有名義人であるD及びEの親族,被告人Bは,政治結社「F」の情宣局長,被告人Cは,株式会社Gの取締役であり,かつ同郡e町議会議員であるが,被告人3名は,同郡a町議会議長で同町bf所在のHを経営するI(当時65歳)が,本件土地を同店石置き場として不法に占拠していると因縁を付けて,同人から,本件土地の売買代金名下に金員を喝取しようと企て,共謀の上,平成14年8月28日午後1時ころ,同郡e町内所在のe町町民グランドにおいて,前記Iに対し,Bにおいて,「政治結社F情宣局長B」などと記載された名刺を示し,殊更に右翼団体構成員であることを誇示した上,同年9月1日午後1時ころ,前記H事務所南方の石置き場及び同事務所において,前記Iに対し,被告人Aにおいて,「右翼に街宣されて生き残った政治家はおらへんで。生きた金使うたほうがいいで。」「捨て銭になるか。生き金になるか。それは社長の考え一つ」などと申し向け,引き続き,同日午後2時ころ,前記H事務所において,前記Iに対し,Cにおいて,「Aは,『この件はBに話を渡す。』と言っている。Bは,『明日から街宣をかける。』と言っている。街宣されたら大変なことになる,考え直したほうがええ。わし H事務所において,前記Iに対し,Cにおいて,「Aは,『この件はBに話を渡す。』と言っている。Bは,『明日から街宣をかける。』と言っている。街宣されたら大変なことになる,考え直したほうがええ。わしに任せ,指一本でどうや。」「あと200万くらい,いいやないか。」などと申し向けて1200万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければBの街宣行為等によって前記Iの財産,名誉等にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し,同人をして,その旨畏怖させて,やむなく売買代金名下に1200万円を支払う旨約束させ,よって,そのころ,前記H事務所において,同人からその手付金名下に小切手2通(額面合計200万円)の交付を受け,もって,人を恐喝して財物を交付させ,次いで,同年9月5日から平成15年3月19日までの間,Bにおいて,多数回にわたり,同店付近路上を含む同郡a町内,同郡e町内及びその周辺地域において,街宣車の拡声器を使用し,その付近の住民らに対し,「他人の土地を取り込んで俺の物だとこのように言っている議員先生もいらっしゃいます。」「a町の議長,この土地が非常にお好きなようで,盗ったものは離さないでいる。登記簿は昔のものだからと一点ばりである。皆さんはどのようにお考えでしょうか。」「H石置き場に他人名義の土地が160坪以上あるんです。ところが,この議長は知らぬ存ぜぬのほっかむりなんです。それで議長という要職が務まるでしょうか。」「他人の土地に物を置いて20年経てば時効だ・・これが現職の議長です。」「我々が追及したときにはそのような土地は存在していないと言いながら,裁判で300円の供託金で,俺の物だから手を付けたらいけないよと,こういう方を二重人格,二枚舌と言うんです。責任動議がとられるまで皆さん方に訴えていく覚悟でございます。」「この4月に入りますと統 ,裁判で300円の供託金で,俺の物だから手を付けたらいけないよと,こういう方を二重人格,二枚舌と言うんです。責任動議がとられるまで皆さん方に訴えていく覚悟でございます。」「この4月に入りますと統一選挙があると聞いておりますが,いろいろな問題に首を突っ込むような方々ではなくて,皆さん方のためになる方を選んでいただきたい。」などと申し向けて街宣し,これを前記Iに知らしめ,さらに,平成14年10月27日午前9時20分ころ,前記H事務所において,前記Iに対し,Cにおいて,「わしは徹底的にやるよ。わしが入ったらもう怖いぞ。 ほかのとちゃうで。弁護士に頼んだってあけへんがな。もう契約してもうとんのに。わしが立会になっとるんや。あんたの責任で出さなあかんのや。Aさんみたいにちょろこいことせえへんで,わしは。これからどんどんごっつうやられるで。われこそ首吊って死なんなんぞ。なめとったら,追い込まれるで。」などと申し向けて残金1000万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければBによる街宣行為等によって前記Iの生命,身体,財産,名誉等に更にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し,同人をしてその旨畏怖させたが,同人が残金の支払に応じなかったため,その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)―括弧内の甲,乙で始まる数字は検察官請求証拠番号―省略(補足説明) 1 被告人らの各弁護人は,各被告人には恐喝の犯意も共謀の事実もないから各被告人について無罪である旨主張し,被告人3名はそれぞれ金員を脅し取る意図はなく,そのような相談もしていない旨これに沿う供述をするところ,前掲関係各証拠によれば,判示事実は優に認められるのであるが,その理由につき補足する。 2 関係各証拠によれば,次の事実が認められる。 (1)被告人Aは親族(祖父が兄弟)でいずれも知的 述をするところ,前掲関係各証拠によれば,判示事実は優に認められるのであるが,その理由につき補足する。 2 関係各証拠によれば,次の事実が認められる。 (1)被告人Aは親族(祖父が兄弟)でいずれも知的障害のあるE及びその妹D共有名義の兵庫県朝来郡a町b字cd番の畑(登記簿上の地積512平方メートル。 以下「本件土地」という。)を売却して代金を入手しようと考えたが,本件土地は登記簿上存在するもののその現実の所在場所がわからない土地であったため,養父郡g町(当時。以下同じ。)の法務局やa町役場の職員に聞くなどしてその所在について調査し,本件土地が法務局の字限図(甲38)に記載がないことを知ったものの,また,a町役場税務課職員Jから法務局の字限図に基づいて税務課保管の字限図は作成されているから,税務課保管の字限図に本件土地の所在が表記されているからといって,土地特定の決め手には全くならない旨説明を受けたものの,後者の図面(J証言調書添付資料③)に本件土地の表示があることなどから,本件土地は,I所有名義で同人が営むHの石置き場などとして使用されている同所h番の土地(以下「h番の土地」という。)に含まれており,同人が不法占拠しているのではないかと考えるに至った。 (2)平成14年8月20日(以下,月日のみの記載はいずれも平成14年)ころ,前記Hの石置き場を実地に調査した際,同店事務所(2階が事務所となっている。以下「I事務所」という。)南方に所在する駐車場(以下「K駐車場」という。)をCが経営する株式会社Gが造成したことを知り,その後,被告人AはGの事務所を訪ねCに対し,本件土地の所在が特定できないので力になって欲しいと頼み,Cはこれを了承した。 (3)その後の同月中旬ころ,Iがa町議会議員,議長であることから,右翼団体の威力を利用してIに本件土地の 訪ねCに対し,本件土地の所在が特定できないので力になって欲しいと頼み,Cはこれを了承した。 (3)その後の同月中旬ころ,Iがa町議会議員,議長であることから,右翼団体の威力を利用してIに本件土地の買取を要求し,同人がこれに応じない場合にはさらにいわゆる街宣活動により圧力をかけて脅してでも買取名下に金員を受け取ろうと考え,知人の政治結社「F」の情宣局長である被告人Bに,a町の自分の土地を他人が無断で使用しているので一緒に行ってくれないかと持ちかけた。Bは「F」の塾長Lの許可を得てこれを了承し,同月27日Aの運転する車で鳥取県内のBの自宅からa町に向かったが,その道中,本件土地を無断使用しているIがa町議会議員,議長であること,Iには同月20日ころ一回電話したが相手にされず電話を切られたこと,買取代金は2000万円くらいを考えており,成功した場合には謝礼を払うこと等を告げた。BはAがIを脅迫してでも本件土地の売買契約を成立させようとしていることを知り,これに協力して,一割くらいは手間賃として貰うつもりとなった。 同日,AはCに電話し,K駐車場の造成の際の境界等について説明して欲しいと依頼し,翌28日にK駐車場で落ち合うことにしたが,その際,「この件については右翼に入ってもらうことにした。」と告げた。Cは,Aが政治家であるIに対し右翼を使って交渉を有利に進めようとしていることを知った。 (4)翌同月28日朝,A,BはCとK駐車場で会い,AがBとCをそれぞれ「右翼団体員である。」「e町議会議員でGの社長である。」などと紹介し,現場で土地の境界についてCから当時も同所に畑はなかったなどと説明を受けたが,本件土地がどこに所在するかは全くわからなかった。 その後,AとBはIをその自宅に訪ね,Iは本件土地を購入したことはない,h番の土地は購入したと Cから当時も同所に畑はなかったなどと説明を受けたが,本件土地がどこに所在するかは全くわからなかった。 その後,AとBはIをその自宅に訪ね,Iは本件土地を購入したことはない,h番の土地は購入したときから山林であって畑はなかったなどと説明をし,e町町民グランドで行われるグランドゴルフ大会に出席するため席を立った。その直後ころ,BはAに対し,「遠くから来たのだからIとは今日中に話をつけよう。」旨申し向け,これにAは同意し,e町町民グランドに出向いた。 同日午後1時前ころ,IはCとe町町民グランドのトイレで出会ったが,その際,CはIに対し,「あんたのところにAという男と右翼が来たやろ。前の晩から来とるらしいで。」と話し掛けた。 他方,AとBは同日午後1時ころ同グランドに到着し,BはIに声を掛け,「政治結社F情宣局長B」などと記載された名刺を渡して,殊更に自分が右翼団体の幹部であることを認識させた。また,BはCに「朝,お世話になりました。」などと挨拶し,同じ名刺を手渡した。 その後,Bの発案でIに圧力を加える意図で,A及びBはa町役場に赴き,同町長との面会を求めてそれぞれ名刺を手渡すとともに,本件土地の登記簿謄本を示すなどしながら,同町長にIが他人の土地を無断使用していると訴えた。その後,二人は養父郡g町の法務局に向かったが,途中,その旨を告げて,BはM警察署でIに対する街宣のための道路使用許可申請用紙を受け取った。 同日午後7時30分ころ,A及びBはI事務所でIと面会し,Iが本件土地をh番の土地として不法占拠している旨主張したが,Iは土地購入の際畑などなかったと説明してこれを認めなかった。 (5)同月29日,Bは,M警察署において,兵庫県朝来郡内で反共宣伝のため9月2日から1週間,朝来郡一円を街宣車3台で街宣活動をする旨の許可申請を行っ 畑などなかったと説明してこれを認めなかった。 (5)同月29日,Bは,M警察署において,兵庫県朝来郡内で反共宣伝のため9月2日から1週間,朝来郡一円を街宣車3台で街宣活動をする旨の許可申請を行った。 同日Aは,Cに対し,Bが街宣の届出をした旨電話連絡をし,その際,9月1日昼ころI事務所に行くので立ち会って欲しい旨要請し,Cはこれを了承した。そして,CはIに対し,「大変なことになっとるで。街宣の届けがM警察署に出ている。」旨電話し,同日午後3時過ぎころ,e町議会事務局でIと会い,激しい不安に脅えるIに対し,街宣を止めるため大阪の右翼の大物を紹介してもよいなどと申し向けたが,Iはこれを断った。 (6)8月30日,IはM警察署に赴き,右翼から土地の問題で街宣をかけられそうな事態にあり,その右翼らと9月1日に会うことになっている旨相談したところ,誰かを連れて会うように助言を受けたため,友人であるNに立ち会って貰うよう依頼し,了承を得た。 (7)9月1日,I事務所にI,N,A,B,Cが集まり交渉が開始された。AはIに対し,本件土地はIの石置き場に含まれており,同所を不法占拠している,買い取れと要求したのに対し,Iは,昭和48年に国道の西にある山林と国道脇の窪地である同所を購入したのであり,本件土地の所在は明らかでない旨主張し譲らなかった。 その後,石置き場でIに対し,Aは同人の考える本件土地の所在を示すなどしたがIは納得しなかった。同所から事務所に戻る際,AはIに対し,「右翼に街宣されて生き残った政治家はおれへんで。生きた金使うたほうがいいで。」などと申し向けて,同人を脅迫した。事務所に戻った後も,Aは,Iに対し本件土地を買うように執拗に要求するとともに,「捨て銭になるか。生き金になるか。それは社長の考え一つ」などと申し向け,売買代金名下に と申し向けて,同人を脅迫した。事務所に戻った後も,Aは,Iに対し本件土地を買うように執拗に要求するとともに,「捨て銭になるか。生き金になるか。それは社長の考え一つ」などと申し向け,売買代金名下に金員を支払うよう要求した。 翌9月2日朝来郡4町の合併協議会の発足式が行われIも出席する予定であったところ,Iは,Aの要求を拒めば,Bが街宣活動を行ってこの式典を滅茶苦茶にするのではないか,自らの政治生命が奪われるのではないかと恐怖し,街宣活動を止めるためには売買代金名下になにがしかの金員を支払うのもやむを得ないと考え,本件土地を購入することを承諾した。 このような経過で代金額交渉に入ったが,Bは「金の話になるなら出るわ。」と述べて事務所から階下に下り,続いて,Nも脅される惨めな姿を見せたくないと考えたIの要請により階下に下り,A,C,Iの3名が同室に残った。 当初,Aは2500万円を,Iは200万円を主張し,Cは両者の間を行き来し,「売買価額」の仲介作業を行い,同日午後2時ころ,Iが街宣を止めたい一心で750万円の金額を提示すると,これを聞いたAは,そんな馬鹿な値段はない,これ以上Iが要求を拒むのであればBが街宣活動をする旨Cに通告し,Cは,Iに対し,「Aは,『この件はBに話を渡す。』と言っている。Bは,『明日から街宣をかける。』と言っている。街宣されたら大変なことになる,考え直したほうがええ。わしに任せ,指一本でどうや。」などと申し向けて1000万円の交付を要求した。Iはやむなくこれを受け入れる旨返答したが,Aの意向を聞いたCがさらに200万円を上乗せするようIに迫り,Iはやむなくこれを受け入れ,売買代金額は1200万円となった。 その後,AとBが同事務所に戻り,Aが手付金として200万円の支払を求めたところ,Iは,街宣は絶対にしない を上乗せするようIに迫り,Iはやむなくこれを受け入れ,売買代金額は1200万円となった。 その後,AとBが同事務所に戻り,Aが手付金として200万円の支払を求めたところ,Iは,街宣は絶対にしないこと,残金1000万円は9月10日過ぎに支払うが,その際には本件土地の所在を明らかにすることを条件にする旨を伝え,Aらはこれを了承し,同所で小切手2通(額面合計200万円)の交付を受けた。 (8)Bは,9月5日からa町周辺において街宣車でIの信用を低下させるような街宣活動を開始し,その後も街宣活動の許可申請を行い,9月13日からはIの実名を出して同人を標的にこれを非難する街宣活動を続けたが,その内容はIを中傷し,本件土地に関するIの言い分を破廉恥行為であるがごとく宣伝し,あるいは地方選挙ではIのような者でない者を選んで欲しいなどとするものであり,このような街宣活動は,平成15年3月19日まで,合計44回,参加した車両は延べ53台,人員は延べ137人に及ぶなど執拗なものであった。 (9)平成14年9月6日,AはIの自宅において本件土地の所在場所について話し合ったが,結局判明しなかった。その際,Iが街宣しない約束であったのにこれをしていると抗議すると,Aは,「体を張ってでも止めます。」と述べたが,同日夜,Iに電話で,Bは街宣を止めないと言っている,残金は支払われていないのかと聞かれたと話し,残金が支払われなければ街宣は止まらない旨を伝え,同人が弁護士に相談した旨言うと,「来年選挙ですな。」と暗に選挙への影響をほのめかすなどして,Iから残金を交付させようとした。 (10)9月12日,Cは,g町の法務局でBに出会った際,同人に対し,「以前にもa町に右翼が来たことがある。」「大阪や岡山から街宣車を呼んで,もっと数を増やして街宣したらどないや。」などと述べて 。 (10)9月12日,Cは,g町の法務局でBに出会った際,同人に対し,「以前にもa町に右翼が来たことがある。」「大阪や岡山から街宣車を呼んで,もっと数を増やして街宣したらどないや。」などと述べて,残金の支払を渋るIに圧力を加えるよう促した。さらに,Cは,同日,Iに電話で,「法務局でBに会ったが,大阪や岡山から街宣車を7台も8台も連れてきて街宣するぞと言いよった。」などと述べて,残金の支払がなければ街宣活動が激しくなる旨を告げた。なお,前記のとおり,翌13日には,BはIの実名を出して,本件土地をIが不法占拠している旨街宣内容をエスカレートさせている。 (11)Aから頼まれ,Bは,10月26日,G事務所において,Cに対し,「本件土地の件は裁判になっているようです。Iは残金をまだ支払っていない。なんとかならんですかね。」などと述べて,CにおいてIにさらに圧力をかけるように依頼した。 (12)10月27日,CはIの自宅において,Iに対し,「わしは徹底的にやったる。わしが入ったら怖いぞ。ほかのとちゃうで。弁護士に頼んだってあかへんがな。契約してもうとんのに。わしが立会になっとるさけ。あんたの責任で出さなあかんのや。Aさんみたいにちょろこいことせえへんで。これからどんどんごっつうやられるで。われこそ首吊って死なんなんぞ。なめとったら,追い込まれるで。」などと申し向けて残金1000万円の交付を要求して脅迫した。 以上の事実が認められる。 3 Aは,捜査段階から公判段階に至るまで,一貫して本件はあくまで正当な不動産売買交渉の結果,Iに対し本件土地の不法占拠を認めさせ,売買契約が成立したもので恐喝の犯意はなかった,他の被告人らとの間に共謀もなかった旨供述するが,右翼であるBに交渉への立会を求めた理由を明らかにできない点など,その供述内容自体が曖昧か を認めさせ,売買契約が成立したもので恐喝の犯意はなかった,他の被告人らとの間に共謀もなかった旨供述するが,右翼であるBに交渉への立会を求めた理由を明らかにできない点など,その供述内容自体が曖昧かつ不自然,不合理である上,その骨格部分については十分信用できるI証言やBの各検察官調書等に照らし,信用できない。 Bは,捜査段階においては本件犯行を全面的に認める旨の供述をしているところ,公判段階に至ってこれを否定する供述をするが,その供述内容自体が極めて不自然,不合理であるから,同被告人の各検察官調書の信用性は十分である。 さらに,Cは捜査段階から,A及びBと本件恐喝の共謀はしていないと述べながらも,Aが右翼のBと共謀して街宣をネタにIを脅していたこと,9月1日の段階でIが街宣されることにひどく脅えていることをそれぞれ認識しており,10月27日Iを脅迫して残額を支払わせようとしたことは認めているのであって,公判段階におけるその供述を含め検討しても,同人の各検察官調書の信用性もまた十分である。 4 2認定の事実によれば,Aにおいて,所在の明らかでない本件土地を種に,被害者であるIが街宣活動をおそれる地方議会議員,議長であることに目をつけ,右翼であるBに依頼し,同じく地方議会議員のCを中立的な仲介者のごとき役割で犯行に引き込み,3者共謀の上,被害者に対し恐喝行為に及んだことは明白であって,Cにおいて,A,Bの恐喝行為を認識しながら,これに同調して10月27日には自ら激しい脅迫行為に及び,残金の支払を要求したものであるから,被告人ら3名が,少なくとも暗黙のうちに,Iから金員を喝取する旨の意思を相通じて本件犯行に及んだものと認めるに十分である。 5 以上のとおり,前掲関係各証拠によれば,判示恐喝の事実を認めるに十分である。各弁護人の主張は理由がない のうちに,Iから金員を喝取する旨の意思を相通じて本件犯行に及んだものと認めるに十分である。 5 以上のとおり,前掲関係各証拠によれば,判示恐喝の事実を認めるに十分である。各弁護人の主張は理由がない。 (法令の適用)被告人3名の判示各所為はそれぞれ包括して刑法60条,249条1項に該当するところが,それぞれその所定刑期の範囲内で被告人A及び被告人Cをいずれも懲役2年6月に,被告人Bを懲役2年に処し,被告人3名に対し同法21条を各適用して未決勾留日数中,被告人A及び被告人Bに対しいずれも360日を,被告人Cに対し200日をそれぞれその刑に算入し,被告人Cに対し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由)本件は,被告人3名が共謀の上,被害者に対し,右翼によるいわゆる街宣活動をほのめかし,あるいは街宣活動を行うなどして脅迫を加え,売買代金の手付金名下に額面合計200万円の小切手2通を喝取し,さらに売買残代金名下に1000万円を喝取しようとしたが,これを遂げなかったという恐喝の事案であるところ,Aは,知的障害のある遠縁の者の財産を管理するとして,その者らの財産中に所在の明らかでない本件土地があることに目を付け,地方政治家である被害者が石材店石置き場として占有する土地中に本件土地が含まれているとして,被害者が本件土地を不法占拠していると因縁を付け,右翼団体の共犯者に依頼して右翼団体の行う街宣活動を恐喝の手段として利用する本件犯行を企図し,同じく地方政治家であるCに中立的な仲介者的役回りを演じさせて共謀の上本件犯行に及んだものであり,約7か月にわたり執拗に街宣活動を続けることにより売買代金手付金あるいはその残金支払名下に恐喝行為に及んだものであって,陰湿で悪質な犯行である上, 回りを演じさせて共謀の上本件犯行に及んだものであり,約7か月にわたり執拗に街宣活動を続けることにより売買代金手付金あるいはその残金支払名下に恐喝行為に及んだものであって,陰湿で悪質な犯行である上,被害者の受けた恐怖心,困惑その他の心身の苦痛は大きい。また,本件のような右翼の政治活動に名を借りた恐喝犯行を放置すれば,社会一般に与える悪影響は軽視できないのであって,一般予防の見地からも,厳しい非難に値する。 Aについてみると,同被告人は本件犯行の首謀者であり,本件は同人が立案した計画的犯行であると認められること,捜査段階から公判段階に至るまで,恐喝する意図はなかったと強弁するなど不合理な弁解を続けて恥じるところがないこと,同被告人には同種懲役前科3犯を含め5犯の懲役前科があること等を併せ考慮すると,同被告人の刑事責任は相当に重いといわざるを得ない。 Bについてみると,同被告人の果たした役割は街宣活動を手段にした恐喝事件である本件犯行に不可欠のものであったこと,同被告人は公判段階において,恐喝する意図はなかったなどと不合理な弁解を続け,本件犯行を直視してこれを省みる態度がみられないこと等を併せ考慮すると,同被告人には前科がなくはじめての公判請求であることを考慮してもなお,同被告人の刑事責任もまた相当に重いといわざるを得ない。 Cについてみると,同被告人は,少なくとも,9月1日の犯行開始までには他の共犯者と共謀を遂げており,10月27日には被害者に対し単独で激しい脅迫を加えているとはいえ,Aの依頼により当初は仲介者として本件に関与したもののごとくであり,その犯情は必ずしも軽くはないが,他の被告人2名と比べれば犯情において斟酌すべきものがあること,同被告人は捜査公判を通じて客観的事実関係は概ね認めるものの,恐喝する意図はなかった旨不合理な弁 であり,その犯情は必ずしも軽くはないが,他の被告人2名と比べれば犯情において斟酌すべきものがあること,同被告人は捜査公判を通じて客観的事実関係は概ね認めるものの,恐喝する意図はなかった旨不合理な弁解を続けて止まないこと,多数の罰金前科のほか公職選挙法違反の懲役前科を有することを併せ考慮すると,同被告人の刑事責任もまた重い。 以上の事情を総合勘案し,被告人3名をそれぞれ主文の刑に処し,Cに対しては,その刑の執行を4年間猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成16年10月28日神戸地方裁判所第1刑事部裁判官杉森研二

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