令和5(わ)600 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年11月14日 熊本地方裁判所
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判決文本文2,369 文字)

令和6年11月14日熊本地方裁判所刑事部宣告令和5年(わ)第600号殺人被告事件判決 主文 被告人を懲役11年に処する。 未決勾留日数中270日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は、令和5年8月頃には、居住していたアパートの家賃滞納から退去を余儀なくされ、同人の妹の働きかけにより、かねてから関係が良くなく被告人としては関わりたくないと考えていた実父であるA(以下「被害者」という。)と、熊本県八代市a町bc番地の実家で同居するようになり、被害者に食事の準備をしてもらう等して生活していた。被告人は、同年9月13日頃、被害者から仕事をしていないことを非難され、就職活動のために車を貸してほしいと頼んだもののこれを断られ、家を出ていくように言われ、実家の母屋に隣接する納屋で隠れて過ごすようになった。その後、被告人は、食事をとることなく、被害者の目を盗んで母屋で水を飲んで過ごし、心身ともに追い詰められ自殺にも思いを巡らせる中で、自らの生活が立ち行かないのは、幼少期から被告人に暴力を加え、被告人の大学進学にも非協力的であった被害者のせいであるなどとの思いを強め、同月21日頃、母屋の玄関にあった斧を見て、被害者の殺害を思い立ち、1、2時間逡巡した後、母屋のリビングで飲酒して寝ている被害者の姿を見て、自らの境遇と比較して強い怒りを募らせ、被害者の殺害を決意した。 そして、被告人は、同日頃、前記実家において、被害者(当時73歳)に対し、殺意をもって、多数回にわたり、手に持った斧を同人の顔面付近目掛けて振り下ろし、その顔面及び左頸部等を切り付け、よって、その頃、同所において、同人を頭頸部割創による出血性ショックにより死亡させて殺害した。 (量刑の理由) 斧を同人の顔面付近目掛けて振り下ろし、その顔面及び左頸部等を切り付け、よって、その頃、同所において、同人を頭頸部割創による出血性ショックにより死亡させて殺害した。 (量刑の理由) 1 被害者の死亡という結果が取り返しのつかない重大なものであることは言うまでもない。また、被告人は、就寝中で無防備な被害者の頭部や頸部に集中して、重さ約1キログラムの斧を多数回振り下ろし、多数の損傷を生じさせており、これらの損傷は単体であっても命の危険を生じうるほど重篤なものであった。このような犯行態様は苛烈かつ残忍というほかなく、被告人には、衝動的な強い怒りに駆られた強固な殺意があったと認められる。 犯行の経緯、動機に関し、被告人は、幼少期から高校生頃まで、被害者から、手拳や杖で殴打されたり、浴槽内に重りを乗せたふたをして閉じ込められたりするといった暴行や、被告人が大学進学を希望していることは被害者も当然知っていたと思われるにもかかわらず、就職活動も困難な時期になってから大学進学はさせない、と言われるなどの理不尽な扱いを受けた、という。このような扱いを受けた被告人が、長年にわたって被害者に対する恨みや悪感情を募らせ、同人との同居を契機としてこれらの感情を更に強め、本件犯行直前に至っては1週間程度食事もとっていないという追い詰められた状況において、自らの不遇を被害者のせいであると考えるに至ったこと自体は理解できないものではなく、被害者を殺害するに至ったことそれ自体を正当化するものではないにせよ、量刑上一定程度被告人のために考慮することができる。一方で、捜査段階で被告人の精神鑑定を実施したB医師の意見によれば、被告人がり患していたうつ病は軽度であり、本件犯行に直接的な影響を及ぼしたものではないと認められ、この点を弁護人指摘のように被告人に有 で、捜査段階で被告人の精神鑑定を実施したB医師の意見によれば、被告人がり患していたうつ病は軽度であり、本件犯行に直接的な影響を及ぼしたものではないと認められ、この点を弁護人指摘のように被告人に有利に考慮することは相当とはいえない。 そうすると本件は、見るべき前科前歴がない者が、凶器(刃物類又は鈍器類)を用いて親1名を殺害し、処断罪と異なる主要な罪がない同種事案の量刑傾向において、やや重い部類に位置付けられる。 2 更に一般情状について検討するに、被告人は本件犯行の3日後に自首をし、公判廷でも、同人にしか知り得ない犯行前後の状況や被告人の行動等についてあり のままに述べ、罪に応じた罰を受け入れる様子が見てとれる。他方、被告人は、本件犯行の前から自首することを予定していたと供述し、かつ、自首するまでの3日間、被害者のお金で飲み物やたばこを買ったり、図書館で過ごしたりした後にようやく警察署に出頭したことからすれば、自らの行為を深く悔いた上で自首したとまではいい難く、これを量刑上有利に考慮するにも限度がある。さらに、被告人は、被害者に対しては、申し訳ないという気持ちがあると述べる一方、その存在から解放されたという気持ちが強い、と述べており、人の命を奪ったことの重大性を真に理解しているとは評価し難く、反省は十分とはいえない。 他方、被告人は、社会復帰後の生活について自ら考え始めており、これまで不安定な生活状況にあって前科はなく、父である被害者との関係に端を発した本件の経緯に鑑みれば再犯が具体的に懸念されるものではない。 3 以上の検討の結果、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑懲役14年)令和6年11月15日熊本地方裁判所刑事部裁判長裁判官中田幹人 結果、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 主文 (求刑懲役14年) 理由 令和6年11月15日熊本地方裁判所刑事部裁判長裁判官中田幹人 裁判官鈴木和彦 裁判官新田紗紀

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