平成26(行ウ)3 保護変更決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年5月13日 佐賀地方裁判所 棄却
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判決文本文87,266 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が「処分日」欄記載の各年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の各原告に対してした各保護変更決定処分を取り消す。 2 第2事件別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の処分行政庁が「処分日」欄記載の年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の原告に対してした保護変更決定処分を取り消す。 3 第3事件別紙処分一覧表3の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日」欄記載の各年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の各原告に対してした各保護変更決定処分を取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、佐賀県内に居住して生活保護法(以下「法」という。)に基づく生活扶助の支給を受けている原告らが、法の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)の数次の改定により、所轄の福祉事務所長らからそれぞれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定を受けたため、保護基準の上記改定は憲法25条、法3条、8条等に違反する違憲、違法なものであるとして、被告らを相手に、上記各保護変更決定の取消しを求める事案で ある。 2 関係法令の定め等⑴ 法法には、要旨以下の定めがある。 ア最低生活の原理(3条)生活保護制度により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。 イ基準及び程度の原則(8条)保護は、厚生労働大臣の定める基準(保護基準)により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で することができるものでなければならない。 イ基準及び程度の原則(8条)保護は、厚生労働大臣の定める基準(保護基準)により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする(1項)。保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない(2項)。 ウ保護の種類(11条)保護には、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助の8種類がある。 エ生活扶助(12条)生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(1号)及び移送(2号)の範囲内において行われる。 ⑵ 生活扶助基準ア保護基準のうち、生活扶助基準の定めは、次のとおりである。 生活扶助基準(別表第1)は、基準生活費(第1章)と加算(第2章)とに大別されている。居宅で生活する者の基準生活費は、市町村別に1級地-1から3級地-2まで六つに区分して定められる級地(別表第9) 及び年齢別に定められる第1類と、級地等及び世帯人員別に定められる第2類とに分けられ、原則として世帯ごとに、当該世帯を構成する個人ごとに算出される第1類の額(以下「第1類費」という。)を合算したものと第2類の額(以下「第2類費」という。)とを合計して算出される。 第1類費は、食費、被服費等の個人単位の経費に、第2類費は、光熱水費、家具什器費等の世帯単位の経費にそれぞれ対応するものとされている。(乙A1)イ生活扶助基準の設定方法は、次のとおりで 第1類費は、食費、被服費等の個人単位の経費に、第2類費は、光熱水費、家具什器費等の世帯単位の経費にそれぞれ対応するものとされている。(乙A1)イ生活扶助基準の設定方法は、次のとおりである。 標準世帯(現在は、33歳、29歳、4歳の3人世帯)の最低生活費を具体的な額として設定した上で、これを一般世帯を参考に、第1類費(食費、被服費等の個人的経費)と第2類費(光熱水費、家具什器等の世帯経費)に分解する。そして、標準世帯を基軸として、第1類費については栄養所要量を参考とした指数、第2類費については消費支出を参考とした世帯人員別の指数をそれぞれ設定し、その指数を標準世帯の第1類費、第2類費に適用することによって、年齢階級別、世帯人員別の生活扶助基準額を設定する。さらに、級地についても、1級地-1において、上記のとおり年齢階級別、世帯人員別の最低生活費を定めた上で、その他の級地はこれに指数を適用することにより設定する。 以上のように、生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を生活扶助基準の「水準」(高さ)として設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解し、さらに、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して分解する(これらの標準世帯の基準額を分解する過程を「展開」という。)ことによって、あらゆる世帯に適用可能な基準として設定している。(乙A20) 3 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。) ⑴ 当事者原告らは、法に基づく生活保護の支給を受けている者である。 第1事件及び第3事件原告ら(ただし、第3事件原告番号9を除く。)は、佐賀市に居住し、第3事件原告番号9は、鳥栖市に居住し、第2事件原告は、佐賀県西 法に基づく生活保護の支給を受けている者である。 第1事件及び第3事件原告ら(ただし、第3事件原告番号9を除く。)は、佐賀市に居住し、第3事件原告番号9は、鳥栖市に居住し、第2事件原告は、佐賀県西松浦郡a町に居住している。級地は、佐賀市は2級地-1、鳥栖市は3級地-1、佐賀県西松浦郡a町は3級地-2である。(乙A1)⑵ 保護基準改定に至る経緯平成23年2月、生活扶助基準について学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、厚生労働省の審議会である社会保障審議会の下に新たに常設部会として生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)が設置された。 基準部会は、平成21年の全国消費実態調査(以下「全消調査」という。)の特別集計等のデータを用いて、国民の消費動向、特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か等について、検証を行った(以下「平成25年検証」という。)。基準部会は、平成25年1月18日、検証結果を取りまとめた社会保障審議会生活保護基準部会報告書(甲A6、乙A6。以下「平成25年報告書」という。)を公表した。 平成25年報告書には、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、年間収入階級第1・十分位層(年間収入の低い方から順番に並べ、世帯数が等しくなるよう十等分し、収入の低い層から順次第1から第10までの数字を付したもののうち、「第1」に該当する世帯層。以下単に「第1・十分位」といい、他の分位についても同様に表記する。)を設定し、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて指数(消費実態の指数)を算出し、年齢、世帯人員及び地域別による生活扶助基準額による指数と比較したところ、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出による指数と生活扶助基準額による指 扶助相当支出を用いて指数(消費実態の指数)を算出し、年齢、世帯人員及び地域別による生活扶助基準額による指数と比較したところ、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出による指数と生活扶助基準額による指 数との間にかい離が認められた旨の内容が記載されていた。 (以上につき、甲A6、乙A6、16、21)。 ⑶ 保護基準改定の概要ア厚生労働大臣は、平成25年報告書に基づき、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準の年齢・世帯人員・居住地域別の較差を調整する(以下「ゆがみ調整」という。)とともに、近年デフレ傾向が続いているにもかかわらず生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、平成20年以降の物価動向を勘案した見直し(以下「デフレ調整」という。)を行うこととした。(乙A16)イゆがみ調整は、具体的には、第1類費基準額について、各年齢階級間の基準額の差を小さくした。また、第1類費基準額の逓減率(世帯人員が1人増加するごとに第1類費基準額の合計額に乗じる割合)について、世帯人員の増加に応じた逓減割合を大きくするとともに、第2類費基準額について、世帯人員の増加に応じた各世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくした。さらに、第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ各級地間の基準額の差を小さくするように調整した。平成25年検証の結果を生活扶助基準に反映する比率は、増額方向と減額方向共に2分の1とした(以下「2分の1処理」という。)。(乙A17)デフレ調整は、総務省から公表されている消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)を基に、すべての消費品目から、①生活扶助以外の他扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療など)及び②原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目( の消費品目から、①生活扶助以外の他扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療など)及び②原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関係費、NHK受信料など)を除いて算出した消費者物価指数(生活扶助に相当する品目を対象とする消費者物価指数。以下「生活扶助相当CPI」という。)の動向を勘案し(甲A7)、物価の動向を勘案する起点は平成20年以降とし(乙A16)、平成 20年の年平均の生活扶助相当CPIと平成23年の年平均の生活扶助相当CPIを用いて算出した、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率(-4.78%)を考慮することとした。(甲A7)ウまた、厚生労働大臣は、ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の見直しについては、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として、①平成25年度から平成27年度までの3年間をかけて段階的に実施する(期末一時扶助を除く)とともに、②見直しの影響を一定程度に抑える観点から、改定前の生活扶助基準からの増減幅がプラスマイナス10%を超えないように調整した。(乙A16)エ厚生労働大臣は、上記生活扶助基準の見直しの1年次目として、平成25年5月16日厚生労働省告示第174号(乙A3。以下「平成25年告示」という。)による同年8月1日付け生活保護基準の改定(以下「平成25年改定」という。)を行い、2年次目として、平成26年3月31日厚生労働省告示第136号(乙A29。以下「平成26年告示」という。)による同年4月1日付け生活保護基準の改定(以下「平成26年改定」という。)を行い、3年次目として、平成27年3月31日厚生労働省告示第227号(乙A88。以下「平成27年告示」という。)による同年4月1日付け生 日付け生活保護基準の改定(以下「平成26年改定」という。)を行い、3年次目として、平成27年3月31日厚生労働省告示第227号(乙A88。以下「平成27年告示」という。)による同年4月1日付け生活保護基準の改定(以下「平成27年改定」といい、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定を「本件保護基準改定」という。)を行った。 ⑷ 保護基準改定に基づく保護変更決定ア別紙処分一覧表1から3までの「処分庁」欄記載の各処分行政庁は、同表「処分日」欄記載の各年月日に、同表「処分の名宛人」欄記載の者に対し、本件保護基準改定のうち同表「処分日」の各年に対応する保護基準改定に基づく保護変更決定処分(以下「本件各保護変更決定」という。)をし、生活保護費を減額した。 なお、第1事件原告らのうち、別紙処分一覧表1の原告番号8及び9は、同一世帯に属しているため、世帯主である原告番号8に対して保護変更決定処分がされている。 イ原告らは、本件各保護変更決定を不服として、佐賀県知事に対し、それぞれ別紙処分一覧表1から3までの「審査請求日」欄記載の各年月日に、審査請求を行ったが、同表「裁決日」欄記載の各年月日に、これらを棄却する旨の裁決がされ、各同日頃、原告らに通知された。 ⑸ 本件訴えの提起第1事件原告らは、平成26年2月25日、別紙処分一覧表1のうち平成25年改定に基づく保護変更決定処分の取消しを求める訴えを提起した(第1事件)。 第2事件原告は、平成26年2月25日、別紙処分一覧表2のうち平成25年改定に基づく保護変更決定処分の取消しを求める訴えを提起し(第2事件)、第1事件に併合された。 第1事件原告番号2、4、5、7、11、13及び第2事件原告は、平成27年9月28日、別紙処分一覧表1又は2のうち、平成26年改定及び 消しを求める訴えを提起し(第2事件)、第1事件に併合された。 第1事件原告番号2、4、5、7、11、13及び第2事件原告は、平成27年9月28日、別紙処分一覧表1又は2のうち、平成26年改定及び平成27年改定に基づく保護変更決定処分の取消しを求める訴えの追加的変更をした。 第3事件原告らは、平成27年9月30日、別紙処分一覧表3の平成26年改定又は平成27年改定に基づく保護変更決定処分の取消しを求める訴えを提起し(第3事件)、第1事件に併合された。 第3 主たる争点 1 本件保護基準改定が厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、憲法25条、法3条及び8条に違反した違法があるか(争点1)。 2 本件保護変更決定処分中、平成25年改定に基づく保護変更決定処分につき、 行政手続法14条の処分理由提示義務に違反した違法があるか(争点2)。 第4 主たる争点に関する原告らの主張の要旨 1 争点1(本件保護基準改定の憲法25条、法3条及び8条違反の有無)について⑴ 厚生労働大臣の裁量判断の枠組み厚生労働大臣の保護基準の設定は、法8条1項の委任に基づく委任命令であり、かつ、同条2項による規律を受けていることから、本件保護基準改定が違法かどうかは、同改定が法8条1項及び同2項の委任の範囲内かどうかという観点から判断すべきである。そして、法8条1項及び2項の文理、法の趣旨目的などを踏まえると、法8条1項及び2項は、特に以下のアからウまでの3つの観点から厚生労働大臣の裁量を規律している。 ア生活扶助基準改定について厚生労働大臣に広範な裁量はなく、判断過程審査の対象や方法が厳しく限定されていること老齢加算東京訴訟最高裁判決(平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小 ついて厚生労働大臣に広範な裁量はなく、判断過程審査の対象や方法が厳しく限定されていること老齢加算東京訴訟最高裁判決(平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁)を前提に、本件保護基準改定を考えると、従前の生活扶助基準に見合う「最低限度の生活の需要」が認められないとして、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした「最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続」については、専門家による諮問機関である基準部会の検討に基づいた高度に専門技術的な考察がされるべきであり、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等を厳格に審査し、厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落が認められれば、裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められるものと解すべきである。 より具体的には、㋐「本件保護基準の改定に対応する要保護者の需要の変動があるか否か」と㋑「本件保護基準改定後の生活扶助基準の内容が生 活保護受給者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるか否か」を判断過程審査の対象とし、㋐及び㋑につき「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無が審査されなければならない。 イ保護基準の引下げは原則として許されず、引下げを行う場合には、その正当性を立証する責任が国にあること憲法25条、法1条、3条、8条及び56条の立法趣旨から、保護基準の引下げは、正当な理由の主張立証があって初めて許容されると解すべきである。 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)2条1項、9条及び11条1項からも、締約国のとった措置によって社会保障に関する権利の実現がそれ以 ると解すべきである。 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)2条1項、9条及び11条1項からも、締約国のとった措置によって社会保障に関する権利の実現がそれ以前よりも後退することは許されないという「制度後退禁止原則」が導かれ、被告らの側で正当な理由を主張立証しない限り、裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められると解すべきである。 ウ要保護者の生活状況に関する法定考慮事項を考慮せず、財政事情や国民感情等の生活外的要素を考慮することは許されないこと厚生労働大臣が保護基準を設定するにあたっては、法8条1項、2項及び9条に規定された要保護者の生活上の需要を把握するための要保護者の生活上の属性にかかわる事項を考慮することが義務付けられている。ここに国の財政事情や国民感情等の生活外的要素が挙げられていないことからすれば、法8条及び9条は、少なくとも、保護基準の下限を画するにあたっては、国の財政事情、国民感情、政権与党の公約等の生活外的要素を考慮することを禁じていることになり、仮に、考慮を禁止まではしていないとしても、義務的考慮事項と比べれば優先順位や重みづけは当然に劣後するというべきである。 エまとめ以上の審査の結果、㋐本件保護基準改定に対応する要保護者の需要の変動があり、㋑改定後の生活扶助基準の内容が生活保護受給者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がある場合、本件保護基準改定は、法1条、3条、8条1項及び2項、社会権規約2条1項、9条及び11条1項並びに憲法25条1項に反し、違法、違憲となる。 一方、上記㋐㋑の判断の過程及び手続に過誤、欠落がない場合であっても、生活扶助基準の引下げの場合には、従前の保護基準に基づいて生 、9条及び11条1項並びに憲法25条1項に反し、違法、違憲となる。 一方、上記㋐㋑の判断の過程及び手続に過誤、欠落がない場合であっても、生活扶助基準の引下げの場合には、従前の保護基準に基づいて生活設計を立てていた被保護者にとって、その期待的利益の喪失を来すものであるから、その期待的利益についても可及的に配慮する必要があり、基準改定の具体的な方法等について激変緩和措置の要否や方法等を検討することが求められる。ただし、これは「最低限の生活」は確保された上での「+α」の措置であるから、国の財政事情等の生活外的要素の考慮も含めた専門技術的かつ政策的な判断となるが、専門技術的判断を含む以上、やはり、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無を検討しなければならない。そして、生活扶助基準の減額改定に際し、激変緩和措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした厚生労働大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められる場合にも、法1条、3条、8条1項及び2項等の規定に違反し、違法となる。 ⑵ 手続面(判断過程の外的側面)からの裁量権の逸脱・濫用本件保護基準改定は、以下のとおり、判断過程の外的側面から裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められる。 ア総額670億円の生活保護費の削減額をもたらす改定が基準部会の検証 を経ずに導き出されたこと本件保護基準改定は、デフレ調整(削減効果約580億円)とゆがみ調整(削減効果約90億円)を行うことによって、3年間で総額約670億円の生活保護費削減をもたらすものである。デフレ調整は基準部会の検証を経ておらず、ゆがみ調整も、基準部会の検証結果だけであれば、財政的に 減効果約90億円)を行うことによって、3年間で総額約670億円の生活保護費削減をもたらすものである。デフレ調整は基準部会の検証を経ておらず、ゆがみ調整も、基準部会の検証結果だけであれば、財政的にはニュートラル(削減効果がプラスマイナスゼロ)であったのに、基準部会に無断で検証結果の数値に2分の1処理を行うことによって、約90億円の削減効果を得ていた。 このように、総額670億円の削減効果の全額が専門家による検討を経ずに導き出されている点に本件保護基準改定の際立った特異性があり、それ自体が判断過程の外的側面から裁量権の範囲の逸脱又は濫用を基礎づけるものである。 イ確立した行政慣行の逸脱による裁量権の逸脱・濫用最高裁平成27年3月3日第三小法廷判決・民集69巻2号143頁(平成26年(行ヒ)第225号営業停止処分取消請求事件)は、「行政庁が処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認める特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当た」るとした。この考え方を敷えんすると、処分基準に準じる程度に確立した行政慣行と異なる取扱いをすることは、それを相当と認める特段の事情がない限り、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるものと解される。 専門家の検討を踏まえることなく生活扶助基準を改定することが確立した行政慣行を逸脱すること法8条1項の立法過程において、専門家の判断を必ず踏まえることに よって厚生(労働)大臣の裁量判断の正当性が根拠づけられるものとされていたこと、その後現に保護基準の改定は専門家からなる審議会の検討結果を踏まえ 程において、専門家の判断を必ず踏まえることに よって厚生(労働)大臣の裁量判断の正当性が根拠づけられるものとされていたこと、その後現に保護基準の改定は専門家からなる審議会の検討結果を踏まえて行われてきたこと、特に、現行の水準均衡方式という改定方式の下ではかかる審議会における検討を踏まえることが強く要請されており、学識経験者による定期的な保護基準の専門的かつ客観的な評価・検証を行うことを目的として社会保障審議会の下に直接置かれた常設の専門部会である基準部会が設置されたことからすれば、基準部会等の専門家からなる審議会の検討を踏まえることは処分基準に準じる確立した行政慣行となっていた。 デフレ調整とゆがみ調整の2分の1処理は、基準部会の検討を踏まえることなく行われたものであるところ、基準部会の検討に付議することは容易に可能であり、それを行わないことを相当とする特段の事情は何ら認められないことからすれば、厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たる。 デフレ調整において物価を本格的に考慮したことが確立した行政慣行である水準均衡方式を逸脱すること水準均衡方式にいう「水準均衡」とは、生活扶助基準と消費実態の均衡を意味しているので、直接、消費実態で確認するしかない。物価や賃金は、消費に大きな影響は持つが消費実態そのものではないので、物価の議論を本格的に考慮することができない。昭和59年から本件保護基準改定に至る30年近くにわたって現に水準均衡方式に基づく生活扶助基準の改定が行われ、一度も物価指数を用いた改定が行われたことがないことからすれば、物価の本格的考慮を許さない水準均衡方式は、処分基準に準じる確立した行政慣行となっていた。 ところがデフレ調整は、史上初めて物価指数による計算を直接生活扶助基準の改定に用いたの いことからすれば、物価の本格的考慮を許さない水準均衡方式は、処分基準に準じる確立した行政慣行となっていた。 ところがデフレ調整は、史上初めて物価指数による計算を直接生活扶助基準の改定に用いたのであり、確立した行政慣行である水準均衡方式 と異なる取扱いをすることを相当と認める特段の事情が認められないことは明らかである。 ウ自由民主党の公約実現という「動機の不正」による裁量権の逸脱・濫用本件保護基準改定がされたのは、生活扶助費の1割削減という自由民主党(以下「自民党」という。)の政権公約を実現するという政治的意図があったからにほかならない。すなわち、①直近の平成24年12月16日の総選挙において、自民党が生活保護給付水準の10%引下げを選挙公約としていたこと、②同年12月27日及び28日の記者会見において、田村憲久厚生労働大臣が生活扶助費の1割削減という選挙公約に一定の制約を受ける旨発言していること、③平成25年1月16日開催の基準部会第12回会合において、事務局から提出された平成25年報告書の案に「他に合理的な説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」との文言が潜り込まされていたこと、④この文言は委員からの異論噴出で訂正に至ったにもかかわらず、平成25年報告書を取りまとめる前に厚生労働省の幹部が、自民党の生活保護プロジェクトチームの座長であった世耕弘成官房副長官に対し、デフレ調整とゆがみ調整の2分の1処理を前提とした取扱厳重注意文書を示して説明をしていたこと、⑤基準部会が平成25年報告書を取りまとめた同年1月18日のわずか9日後の同月27日に、厚生労働省がデフレ調整を含む平成25年予算案の概要を発表し、同月29日に、平成25年度予算案が閣議決定されたこと、⑥その際にも、2分の1 を取りまとめた同年1月18日のわずか9日後の同月27日に、厚生労働省がデフレ調整を含む平成25年予算案の概要を発表し、同月29日に、平成25年度予算案が閣議決定されたこと、⑥その際にも、2分の1処理については公表されなかったこと、⑦本件訴訟においても、被告らは2分の1処理を激変緩和措置であるなどと主張するに至っているが、原告らから指摘を受けるまで自ら明らかにすることはなかったことなどの諸事情に照らすと、本件保護基準改定は、厳に避けられるべきとされている政治的色彩、すなわち自民党の政権公約を実現するという政治的意図に基づいて、あえて基準部会に付議することを 回避して行われたものであることが明らかである。 本件保護基準改定が自民党の政権公約の影響を受け、それを実現すべく行われたものであるということは、行政機関がバイアスのかかったスタンスにより結論を先取りし、本来必要な調査・検討を怠ったことを意味し、判断過程の瑕疵の典型例である権限の濫用ないし動機の不正として、裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められる。 ⑶ 内容面(論証過程)からの裁量権の逸脱・濫用本件保護基準改定は、以下のとおり、その内容面(論証過程)からも裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められる。 アデフレ調整の問題点比較年度の選択の問題a 物価が高騰した平成20年を比較の起点としたこと厚生労働大臣が比較の起点(期首)として選んだ平成20年は、原油価格の高騰によりその後の年に比べて相対的に物価が高くなった年である。平成20年だけが、ここ10年近い間で著しい物価高騰に見舞われていたのであり、この年を基準とすれば、消費者物価指数はもちろん、生活扶助相当CPIの下落率も大きい値が算出されることは明白であった。厚生労働大臣は、生活扶助費削減の結論 で著しい物価高騰に見舞われていたのであり、この年を基準とすれば、消費者物価指数はもちろん、生活扶助相当CPIの下落率も大きい値が算出されることは明白であった。厚生労働大臣は、生活扶助費削減の結論を導くため恣意的に、物価が著しく高騰し、その後大きく下落することとなる平成20年を起点として選択したのである。 b 平成19年を比較の起点としなかったこと被告らは、デフレ調整を行う必要性について、平成20年度以降については消費の動向を考慮した改定を行っておらず、それ以降の消費、物価等の経済動向は生活扶助基準に反映されていない状況にあったと主張するが、これを前提とすると、経済動向を反映した最後の保護基準改定は平成19年度ということになり、平成19年から平成20年 にかけて生じていた「インフレ」(年平均1.4ポイント)は、デフレ調整にも保護基準改定にも反映されていないことになる。被告らの主張を前提とすると、デフレ調整の起点は、平成19年とされるべきである。 生活扶助相当CPIは、国際規準から逸脱していることa 国際規準1、2からの逸脱平成20年の生活扶助相当CPIは、価格の基準年を平成22年として指数値100とし、比較年を平成20年として計算されているため、A教授の意見書(甲120)にある、「基準時は比較時より過去の時点となる」という国際規準1(以下、国際規準1から4まで、いずれもA教授の意見書に挙げられたものを指す。)、「基準時の指数値は100となる」という国際規準2から逸脱する。 b 国際規準3、4からの逸脱平成20年の生活扶助相当CPIは、485品目を対象とし、他方平成23年の生活扶助相当CPIは、517品目を対象として算定しているため、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相 脱平成20年の生活扶助相当CPIは、485品目を対象とし、他方平成23年の生活扶助相当CPIは、517品目を対象として算定しているため、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIを比較する際、期首である平成20年と期末である平成23年では品目数が異なる。これは、「マーケットバスケット方式によって消費者物価指数は作成されなければならない」という国際規準3、「基準時と比較時の品目は完全に同一で対応していなければならない」という国際規準4から逸脱する。 c 接続を用いていないこと生活扶助相当CPIは、総務省統計局が平成22年に改定した品目から非生活扶助相当品目を控除してウエイト(家計の消費支出全体に占める各品目の支出金額の割合)を構成している。 総務省統計局の作成する平成17年基準消費者物価指数作成時の指 数品目と、平成22年のウエイトの更新以降の指数品目には、変更(追加28品目と廃止22品目)がある。生活扶助相当CPIは、これらの欠損値について、追加品目に関しては平成20年の価格指数をゼロとする処理をし、廃止品目は排除している。 マーケットバスケット方式に合致させるには、廃止品目を排除せずに平成17年を基準とする指数系列と平成22年を基準とする指数系列を作成し、「接続」を行う必要があるが、生活扶助相当CPIは接続処理を行っていないという瑕疵がある。 d 生活扶助相当CPIはロウ指数ではないこと生活扶助相当CPIはロウ指数であるとの被告らの主張は、訴訟の中盤以降に差し掛かって思い付いた後付けの理屈に過ぎない。 ロウ指数は、ウエイトの参照時点をどの時点に取るかによって、物価を計測する期間の平均の性質が異なる指数であり、ウエイトの参照時点によって同じ指数同士でも比較ができなく いた後付けの理屈に過ぎない。 ロウ指数は、ウエイトの参照時点をどの時点に取るかによって、物価を計測する期間の平均の性質が異なる指数であり、ウエイトの参照時点によって同じ指数同士でも比較ができなくなるという問題が生じることから、ロウ指数を採用している国は存在しない。 ロウ指数は基準時と比較時の物価を固定買い物かご方式で比較するものであるところ、平成20年の生活扶助相当CPIの品目は485品目、平成23年の生活扶助相当CPIの品目は517品目であり、買い物かごが固定されていないから、生活扶助相当CPIはロウ指数ではない。 e 国際規準に従った「生活扶助相当接続CPI」は-2.26%に過ぎないことマーケットバスケット方式に忠実に接続を用いて算出した「生活扶助相当接続CPI」の変化率は、-2.26%である。生活扶助相当CPIの計算結果は、国際規準から逸脱した異例の計算方式を採用することによって、国際規準に忠実な計算方式の2倍以上の過大な物価 下落率を導き出しており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を明らかに欠くものである。 平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは、異なる集団を比較していること平成20年の生活扶助相当CPI(104.5)と平成23年の生活扶助相当CPI(99.5)は、品目数及び平均の性質(前者が調和平均、後者が相加平均)を異にするため、別の集団である。したがって、生活扶助相当CPIによる変化率-4.78%は、異なる集団の指数を比較し、変化率を測定していることになるが、このような方法は統計学的にはありえない手法である。 下落率が大きくなる計算方法を採用したことa パーシェ指数が物価の過大な下落率を導く算式であること生活扶助相 を測定していることになるが、このような方法は統計学的にはありえない手法である。 下落率が大きくなる計算方法を採用したことa パーシェ指数が物価の過大な下落率を導く算式であること生活扶助相当CPIの平成20年から平成22年までの変化率は固定基準年方式パーシェ指数と同様の変化率を示すところ、固定基準年方式のパーシェ指数は、物価が持続的に下落している局面において、数量が大幅に増加するようなIT関連財などが存在する場合、基準時点から時間が経過するほどかい離が大きくなり、このような指数算式は国民経済計算の国際規準からも排除されている。平成20年から平成22年にかけての生活扶助相当CPIは、その計算方法自体が大きな下落率を導く要因となっている。 b ノートパソコン・テレビの価格低下等の影響が極めて大きいこと生活扶助相当CPIの平成20年から平成22年までの変化率が実質パーシェ式の計算になっているため、パソコン類は品質調整による価格低下と購入量増加、テレビについては価格低下と特殊事情による平成22年のテレビ購入量の増加が、物価下落の数値に大きく影響している。平成20年から平成23年の生活扶助相当CPIの変化率- 4.78%のうち、ノートパソコンとテレビの影響を除いた変化率は-2.12%である。 このようにパソコンやテレビの大幅な価格低下が生活扶助相当CPIの下落率を大きくする原因であったが、生活保護受給世帯は、元々家電製品を購入する金銭的余裕がなく、パソコンやテレビの価格下落の恩恵を受ける割合は極めて小さい。生活保護受給世帯にとってみれば、他人の支出構造に基づく物価下落とその物価下落が過大な数値を示す計算方法を根拠に自身の生活費が大きく削られたことになる。 生活保護受給世帯の消費実態(ウエイト)に基づいていないことa みれば、他人の支出構造に基づく物価下落とその物価下落が過大な数値を示す計算方法を根拠に自身の生活費が大きく削られたことになる。 生活保護受給世帯の消費実態(ウエイト)に基づいていないことa 社会保障生計調査のデータを使用すべきであったこと消費者物価指数の動向は、品目によって全く異なり、どのような品目にどれだけの割合で支出するかという消費実態も、所得階層によって全く異なる。このことからすれば、デフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加しているか否かを判断するためには、生活扶助相当CPIを計算する際は、生活保護受給世帯の消費実態(ウエイト)に基づいて計算をしなければならない。 ところが、生活扶助相当CPIを算出するにあたって用いられたウエイトは、総務省が行う家計調査の結果における一般世帯(2人以上世帯)の品目別消費支出金額を基に作成されており、生活保護受給世帯の品目別消費支出金額を基に作成されていない。 生活保護受給世帯は、一般世帯よりも消費支出額の絶対額が低く、消費支出構造にも、一般世帯と比較して食料と光熱・水道の支出割合が明らかに高く、教養娯楽の項目の支出が少ないといった特徴があるから、デフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が実質的にどれだけ変化したのかを明らかにするためには、生活保護受給世帯の消費実態を示す社会保障生計調査を利用すべきであった。 社会保障生計調査のデータを使って計算をすると、平成20年から平成23年の生活扶助相当CPIの変化率は-0.64%にすぎない。 仮に、家計調査を使うのが妥当だとしても、その場合には、一般世帯(2人以上世帯)の消費構造ではなく、生活保護受給世帯に近接した第1・十分位の消費構造を使うべきであった。 b 生活保護受給世帯にとって4.78%の物価下落 が妥当だとしても、その場合には、一般世帯(2人以上世帯)の消費構造ではなく、生活保護受給世帯に近接した第1・十分位の消費構造を使うべきであった。 b 生活保護受給世帯にとって4.78%の物価下落はなかったこと総務省CPIの平成20年から平成23年の変化率は、-2.35%である。生活扶助相当CPIの変化率-4.78%という数値は、その2倍以上であり、常識的に考えてあり得ない数値である。上記のとおり、平成20年から平成23年の生活扶助相当CPIの変化率は、接続指数を用いた場合は-2.26%、社会保障生計調査のデータを用いた場合は-0.64%であり、厚生労働省の生活扶助相当CPIである-4.78%は突出しており、-4.78%もの物価下落による恩恵を生活保護受給世帯が受けているとは到底言えず、生活扶助相当CPIは、統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものである。 イゆがみ調整の違法性生活扶助基準と第1・十分位の消費支出を比較した問題平成25年報告書は、第1・十分位を比較対象とした理由として、以下の①から⑥までの理由を挙げるが(以下「理由①」のように略記することがある。)、以下のとおり、そのいずれも根拠となり得ない。仮に比較対象とするのであれば、第1・五分位等のもっと上の階層に設定すべきであり、第1・十分位を比較対象としたことは、統計等の客観的数値等との合理的関連性を著しく欠き、本件保護基準改定に対応する要保護者の需要の変動があるとはいえないことから、裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められる。 第1・十分位を比較対象とした理由①として、「これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと」が挙げられているが、昭和3 ・十分位を比較対象とした理由①として、「これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと」が挙げられているが、昭和39年以降採用されていた格差縮小方式における比較対象は一般勤労者世帯の消費水準であり、昭和58年以降採用されている水準均衡方式における比較対象は一般国民生活における消費水準(一般勤労者世帯平均を主軸に、第1~2・五分位の消費水準)であったから、これまでの検証がすべて第1・十分位を比較対象としていた事実はなく、前提に誤りがある。 理由②として、「第1・十分位の平均消費水準が、中位所得層の約6割に達していること」を挙げる点は、上位2割以外のすべての階層が所得のシェアを減らした結果、中位所得層である第3・五分位に相当する第5~6・十分位以下の階層のシェアは全体の3割以下に位置していることからすれば、第3・五分位層を全世帯の平均的階層と位置付けて比較対象とすること自体が誤りである。 理由③として、「必需的な耐久消費財について、第1・十分位層に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されていること」を挙げる点は、社会的必需品はネガティブリストであって、これがなければ貧困であるとは言えても、これがあるから貧困でないとは言えない。また、「平成22年家庭の生活実態及び生活意識に関する調査結果概要」(甲A63)の社会的必需項目のうち、第3・五分位層と比較した第1・十分位の普及率が90%を切る項目が全体(60項目)のうち3分の2(40項目)に及んでいることからすれば、第1・十分位における必需的耐久消費財の普及状況が中位所得階層と遜色ないなどとはいえない。 理由④として、「全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分 )に及んでいることからすれば、第1・十分位における必需的耐久消費財の普及状況が中位所得階層と遜色ないなどとはいえない。 理由④として、「全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分 位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの、高所得層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位層が減少しているわけではないこと」を挙げる点は、第1・十分位の占める位置が相対的に低下していることを示しているのであるから、むしろ、第1・十分位を比較対象とすることが不適切であることを根拠づけるものである。 理由⑤として、「第1・十分位層に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること」を挙げる点は、第1・十分位が相対的貧困線以下のあってはならない状況にあることを示しているから、むしろ、第1・十分位を比較対象とすることが不適切であることを根拠づけるものである。 理由⑥として、「第1・十分位と第2・十分位との間に大きく消費が変化」していることを挙げる点は、いわゆる「変曲点」以下の水準では最低生活を営むことが難しくなることを示しているから、むしろ、第1・十分位を比較対象とすることが不適切であることを裏付けるものである。 比較対象に生活保護受給世帯と考えられるサンプルを含めた問題ゆがみ調整の検証過程において、生活扶助基準と第1・十分位の消費支出を比較する際に、比較対象の第1・十分位の中に生活保護受給世帯(と考えられる世帯)を含めてしまったのは、比較する2つの集団が比較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならないという統計学上の原則に反し、正当性が存在しない。 比較対象となる第1・十分位に生活保護受給世帯のサンプルが含まれることには原告らが指摘する問題があるため、平成19年に生活 区別されなければならないという統計学上の原則に反し、正当性が存在しない。 比較対象となる第1・十分位に生活保護受給世帯のサンプルが含まれることには原告らが指摘する問題があるため、平成19年に生活扶助基準に関する検討会(以下「生活扶助基準検討会」という。)が行った検証(以下「平成19年検証」という。)においては、比較対象から生活保護受給世帯のサンプルは除去されており、本件保護基準改定後である平成 29年に基準部会が行った生活扶助基準の検証(以下「平成29年検証」という。)においても、一般低所得世帯の消費支出データからは、生活保護を受給していると推察される世帯は除去された。 第1・十分位から生活保護を受給していると推察される世帯を除外して比較すると、第1・十分位の20%程度がより高い消費支出を示す第2・十分位層の世帯に置き換わり、第1・十分位の消費支出は各段に高く算出されることになる。 以上のとおり、ゆがみ調整を行うにあたって第1・十分位から生活保護受給世帯と考えられるサンプルを除去しなかったのは、統計学上の原則を逸脱し、公的扶助基準の設定にあたって確立した専門的知見に反している上、仮に正しい手法が採用されていたのであれば、比較対象である第1・十分位の消費水準が大幅に上昇したり、世帯分布の変化に伴い基準額表の具体的数値が変動したりすることからすれば、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を著しく欠くものである。 回帰分析によるゆがみ調整の問題平成25年検証において、生活扶助基準額と第1・十分位の消費支出のかい離を検証する際に、回帰分析を用いて、第1・十分位に属する世帯の消費支出額を算出しているが、以下のとおり、「決定係数」、「回帰係数のt検定」及び「その他の問題」からすれば、回帰分析の 消費支出のかい離を検証する際に、回帰分析を用いて、第1・十分位に属する世帯の消費支出額を算出しているが、以下のとおり、「決定係数」、「回帰係数のt検定」及び「その他の問題」からすれば、回帰分析の結果の精度が著しく低いことが明らかである。 a 低い決定係数の回帰モデルに基づいてゆがみ調整を行っていること決定係数は、定式化された回帰モデルと現実のデータとの適合の良さ、すなわち、回帰モデルから得られる予測値の良さ(精度)を示す数値であるところ、平成25年報告書におけるゆがみ調整の際の回帰分析の結果をみると、決定係数が0.3前後であり、これは、世帯や 個人の消費支出額をこのモデルから説明できるのは30%程度であり、逆に消費支出額の70%近くが別の要因によって左右されることを意味しており、統計学的にみた場合、あくまでも参考程度の域を超えるものではないというのが妥当な評価である。 b 回帰係数のt検定回帰係数の統計的検定を行うために必要となるのがt値と呼ばれる検定統計量である。t検定を行った場合、回帰係数に有意な差が認められなかった説明変数は、そもそも被説明変数を説明する変数としては不要であるため、当該説明変数を除いて改めて回帰モデルの推定を行うはずである。しかしながら、平成25年報告書では、そのような再分析は試みられておらず、不要な説明変数を除かずに回帰モデルの推定を採用するという致命的な欠陥をそのままにしている。このような統計学的に問題のある回帰モデルに基づいて消費支出額の予測値を求め、さらにそこからゆがみの大きさを指標化したとしても、それが現実の消費構造を反映したものであるという結論を導き出すことは困難である。 c その他の問題回帰分析の結果を適切に評価するためには、 の大きさを指標化したとしても、それが現実の消費構造を反映したものであるという結論を導き出すことは困難である。 c その他の問題回帰分析の結果を適切に評価するためには、この統計的方法に課せられる様々な仮定を満たしておかなければならない。例えば、「誤差項の分散均一性(比較する2つのグループにおいて、サンプルの分散が等しいこと)や正規性(比較する2つのグループにおいて、サンプルが正規に分布していること)」、「説明変数間の多重共線性(説明変数間に非常に強い相関や、一次従属的な変数関係にあること)」などの仮定であるが、これらについては平成25年報告書ではまったく触れられていない。また、第11回基準部会に厚生労働省が提出した資料(甲A125)からすると、厚生労働省は通常の最小二乗法(OLS)に よる回帰分析を行ったか疑問である。 平成25年検証結果の数値に2分の1処理を行った問題厚生労働大臣が、ゆがみ調整に当たり、平成25年検証結果の数値に2分の1処理をしたことは、手続面において、基準部会の検証結果を恣意的に改変した点において裁量権の逸脱・濫用があるだけではなく、内容面においても、以下のとおり裁量権の逸脱・濫用が認められる。 a 90億円程度の生活扶助費の削減効果を追加的に得たこと2分の1処理を行った場合、それを行わない場合よりも全体での支給額が減額となる。2分の1処理により、全体として90億円程度の生活扶助費の削減効果を追加的に得た。 b 本来、生活扶助費が上がる世帯の上げ幅を大幅に圧縮したこと2分の1処理は、平成25年報告書どおりであれば、本来生活扶助費が上がるはずだった世帯、特に生活保護受給世帯の大半を占める「60~69歳」、「70歳~」の単身世帯の生活扶助費の上げ幅 圧縮したこと2分の1処理は、平成25年報告書どおりであれば、本来生活扶助費が上がるはずだった世帯、特に生活保護受給世帯の大半を占める「60~69歳」、「70歳~」の単身世帯の生活扶助費の上げ幅を大幅に圧縮し、大多数の生活保護受給世帯に多大な不利益をもたらした。 c ゆがみ調整の趣旨を没却すること平成25年報告書に基づくゆがみ調整の目的は、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を指数化して分析し、そのゆがみを是正することにあったにもかかわらず、2分の1処理をしたために、平成29年検証の際に同様のゆがみが残り、改めてその是正を行う必要が生じる結果となった。 つまり、2分の1処理によって、ゆがみの是正が半分にとどまり、半分は是正されないままとなったのであり、2分の1処理は、平成25年検証が目指したゆがみ調整の趣旨を没却するものといえる。 d 激変緩和措置としての合理性を欠くこと被告らは、2分の1処理は激変緩和措置であると主張するが、本件 保護基準改定には、引下げ幅を最大で10%とするという激変緩和措置が組み込まれており、文字どおり激変となる世帯はこの措置によって救済されるため、2分の1処理によって救済される世帯は少数で、かつ少額の救済にとどまり、その効果は極めて限定的である。しかも生活保護受給世帯の大半は、本来のゆがみ調整では扶助基準が上がるはずだった単身中高齢世帯であるのに、それらの世帯の引き上げ幅の反映率を2分の1にして多大な不利益を与える一方で、全体からみると少数の下がる世帯の引き下げ幅の反映率を2分の1にするのは、激変緩和措置として明らかに不合理である。 ウデフレ調整とゆがみ調整を併せて行ったことによる問題ゆがみ調整の目的・内容には絶対 ると少数の下がる世帯の引き下げ幅の反映率を2分の1にするのは、激変緩和措置として明らかに不合理である。 ウデフレ調整とゆがみ調整を併せて行ったことによる問題ゆがみ調整の目的・内容には絶対水準の調整が含まれていること第8回基準部会の資料4(甲A218の2)、同部会や第10回基準部会におけるB課長補佐の発言を見れば、基準部会のメインテーマは一貫して生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と均衡しているか否かという検証であり、基準部会は水準(高さ)の調整を別途行うことを前提に展開の指数だけを検証したのではなく、水準検証をゆがみ調整の中で一体化して行ったのであり、ゆがみ調整は相対水準の調整に留まるものではなく、絶対水準の調整も含まれている。 デフレ調整は年齢階級別・世帯人員別・級地別の消費実態の違いを無視していること生活保護受給世帯では年齢の違いにより消費実態の傾向が大きく異なり、世帯人員による消費の違いも2人から4人まではスケールメリットが働いているが、5人に達するとスケールメリットにも限界がある様子がうかがわれる。そして、物価は地域ごとに異なり結果として消費実態も異なることから、級地による消費の違いも生じる。デフレ調整は、このような年齢階級別、世帯人員別、級地別の違いを考慮していない。 ゆがみ調整の上にデフレ調整を行うことは物価の二重評価となることゆがみ調整は、平成21年全消調査の個票データを基礎として、生活扶助基準と第1・十分位の消費支出との比較検証を行ったものである。 上記個票データは、対象世帯の消費支出の実額が記載された生データであるから、物価変動の影響を反映した統計値である。そして、ゆがみ調整において、体系と絶対水準の一体的検証が行われ、物価変動の影響が反映した消費支出の統計値に基づいて、基準額 額が記載された生データであるから、物価変動の影響を反映した統計値である。そして、ゆがみ調整において、体系と絶対水準の一体的検証が行われ、物価変動の影響が反映した消費支出の統計値に基づいて、基準額表レベルでの保護基準の上げ下げが行われたのであるから、その上に物価を本格的に考慮したデフレ調整を行うことは、明らかに物価の二重評価である。 2 争点2(処分理由提示義務違反の有無)について被告らが、原告らに通知した生活保護変更通知書(以下「本件通知書」という。)は、概ね「基準改定による」としか記載されておらず、名宛人からすれば、どういう基準がどのように適用されたのかを知ることができず、不服申立てをすべきかの判断もできない。原告らに通知された本件通知書は、当該不利益処分の理由について行政手続法14条1項が要求する程度に提示されたとはいえないから、その処分の取消しを免れない。 第5 主たる争点に関する被告らの主張の要旨 1 争点1(本件保護基準改定の憲法25条、法3条及び8条違反の有無)について⑴ 厚生労働大臣の裁量判断の枠組み憲法25条1項の趣旨を実現するために制定された法8条1項及び2項に規定される最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、保護基準の設定、改定については、高度な専門技術的な考察を踏まえ、単純に比較することが困難な異質かつ多元的な諸利益を評価し、それらを比較考量して政策 的価値判断を行う必要がある。したがって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断について、専門技術的かつ政策的な観点からの広範な裁量が認められる。 このような本件保護基準改定の内容、性質等に鑑みると 値判断を行う必要がある。したがって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断について、専門技術的かつ政策的な観点からの広範な裁量が認められる。 このような本件保護基準改定の内容、性質等に鑑みると、本件保護基準改定の適否については、本件保護基準改定に至った厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落等があるか否かが審査されるべきであり、その審査は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性等を見ることにより、被告らが挙げる理由から本件保護基準改定の判断が導かれ得るかを検討することによって行われるべきである。 なお、本件保護基準改定において採用した方法が唯一絶対のものではないことは当然であり、改定の手法としては様々なものが想定できるところ、本件保護基準改定の手法と比較して、ほかの手段、手法を採用することが合理的、合目的的であるとか、妥当であるなどとして本件保護基準改定に係る判断の過程に過誤、欠落等があると評価することは、専門技術的、政策的観点からの広範な裁量を認めた趣旨を没却するもので相当ではない。上記のとおり、あくまで、被告らが挙げる理由から本件保護基準改定の判断が導かれ得るか、被告らの挙げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かが審査されるべきである。 ⑵ 手続面(判断過程の外的側面)に係る原告らの主張についてア生活扶助基準の見直しは必ずしも専門家によって構成される審議会等の検討結果に従って実施しなければならないものではないこと原告らは、保護基準の改定には基準部会等の専門機関の審議等を経ることが不可欠であると主張する。 しかし、生活扶助基準の設定、改定において、基準部会等の専門機関の意見を聴くことは法律上の要件とされていない。このように、法が、保護基準の設定、改定について、基準部会等の外部機関の意見を 張する。 しかし、生活扶助基準の設定、改定において、基準部会等の専門機関の意見を聴くことは法律上の要件とされていない。このように、法が、保護基準の設定、改定について、基準部会等の外部機関の意見を聴取すること を求めていないのは、高度に専門技術的かつ政策的な判断を要する保護基準の設定、改定については、厚生労働大臣(所部の職員を含む)が専門技術的能力を有することを前提に、終局的には厚生労働大臣の政策的価値判断に委ねる趣旨と解される。 実際、厚生労働大臣は、審議会等による定期的な検証が行われた場合には、その検証結果を踏まえた改定を行い、その余の保護基準の改定については、審議会等の専門機関に諮ることなく行ってきたが、そのいずれにおいても、厚生労働大臣が、その当時の社会経済情勢等の諸般の事情を総合的に勘案の上、その専門技術的、政策的裁量判断において行ってきた。 デフレ調整による生活扶助基準の水準の適正化が実施された経緯等をみても、当時の生活扶助基準の水準は一般低所得世帯との均衡が崩れた状態にあり、生活扶助基準の水準を減額して適正化を図る必要性が高い状況にあったにもかかわらず、基準部会は、当初は水準の検証についても行うこととしていたものの、最終的には展開部分についての評価、検証を行うにとどまり、他の定期的な検証では実施されている水準の評価を行わなかった。そこで、厚生労働大臣は、基準部会の検証結果に基づくことなく、自らの判断で生活扶助基準の水準の適正化を図った(デフレ調整)ものであり、このような判断の過程に過誤、欠落等があるとはいえない。 イ厚生労働大臣が消費以外の指標を用いて改定を行うことは妨げられないこと保護基準の設定、改定については、厚生労働大臣に広範な裁量権が認められており、改定の方式についても法令上の定めはない。消費を 厚生労働大臣が消費以外の指標を用いて改定を行うことは妨げられないこと保護基準の設定、改定については、厚生労働大臣に広範な裁量権が認められており、改定の方式についても法令上の定めはない。消費を基礎とする水準均衡方式についても、法令上のものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針にすぎない。 したがって、厚生労働大臣が、消費以外の指標を用いて改定を行うことを妨げるものはなく、水準均衡方式による毎年度の改定においては、消費 以外の要素を含めたその時々の社会経済情勢等を総合的に勘案した改定が行われてきた。 ウ本件保護基準改定に係る生活扶助基準の見直しは、政治的な意図を考慮して行われたものではないこと本件保護基準改定に係る生活扶助基準の見直しは、ゆがみ調整及びデフレ調整の必要性に応じて適切に行われたものである。当時の厚生労働大臣も、生活扶助基準の見直しについては、生活扶助基準検討会や基準部会による報告等を踏まえて、その内容を検討する必要性があることを強調して、生活保護費の10%引下げという自民党の政権公約をそのまま受け入れるものではないことを明らかにしている。その結果行われた本件保護基準改定に係る生活扶助基準の見直しの程度も、3年間で生活保護費全体の2. 3%を削減するというものにとどまっており、自民党の政権公約を実現するとの政治的な意図で行われたものでないことは明らかである。 ⑶ デフレ調整による生活扶助基準の見直しについてア厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至った理由厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至った理由は、以下のとおりである。 デフレ調整に至る経緯a 水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は昭和61年12月から始まった平成景気( 大臣がデフレ調整に係る判断に至った理由は、以下のとおりである。 デフレ調整に至る経緯a 水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は昭和61年12月から始まった平成景気(いわゆるバブル景気)が平成2年10月に終えんし、その後遺症から、複合不況といわれる長期間の景気低迷期からなかなか脱却できず、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状況にあった。 このような社会経済情勢の中で、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について十分検討を行うこととされ、平成15年6月 の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議においても同様に、生活保護制度の在り方の検討の必要性が指摘された。また、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である」とされた。 こうした中、厚生労働大臣は、水準均衡方式に基づき、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出)を踏まえながらも、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘案の上、昭和59年度から平成12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以降は改定率を暫時縮小)をし、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成15年度及び平成16年度は減額改定してきた。 b その後、生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)における生活扶助基準の検証(以下「平成16年検証」という。)において、生活扶助基準の水準については、標準3人世帯(標準世帯を指す。)の生活扶助基準と一般低所得世帯(第1・十分位)の 会」という。)における生活扶助基準の検証(以下「平成16年検証」という。)において、生活扶助基準の水準については、標準3人世帯(標準世帯を指す。)の生活扶助基準と一般低所得世帯(第1・十分位)の勤労3人世帯(夫婦子1人)の消費支出とを比較した結果、「勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった」との結論が得られた。 そこで、厚生労働大臣は、平成17年度の生活扶助基準を据え置き、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準改定についても、当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、水準を据え置いてきた。 c そして、平成20年度の改定については、平成19年11月に取りまとめられた平成19年報告書において、夫婦子1人世帯(標準世帯) 及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準が第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めとなっている(夫婦子1人世帯の基準額が15万0408円、生活扶助相当支出額が14万8781円であり、基準額が約1%高い。また、単身高齢世帯〔60歳以上〕の基準額が7万1209円、生活扶助相当支出額が6万2831円であり、基準額が約13%高い。)との結論が得られていたため、一般低所得世帯との消費実態との均衡を図る観点から、減額改定を行うことも十分考えられる状況にあった。 しかし、厚生労働大臣は、平成20年度の予算編成当時(平成19年12月当時)、原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極める必要があったことから、平成19年検証に基づく減額改定を行わず、据え置くこととし、このような社会経済情勢を踏まえて、平成20年度の消費等の動向を基礎とした改定も行わなかった。 d 影響等を見極める必要があったことから、平成19年検証に基づく減額改定を行わず、据え置くこととし、このような社会経済情勢を踏まえて、平成20年度の消費等の動向を基礎とした改定も行わなかった。 d その後、平成21年度の改定においても、予算編成当時(平成20年12月当時)、平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、後述のとおり平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあったことから、厚生労働大臣は、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置いた。 e そして、厚生労働大臣は、平成22年度については、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、平成23年度及び平成24年度については、同様に、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、いずれの年度においても消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした。 f 前記のように、平成20年9月のリーマンショックに端を発した「百年に一度」とも評される世界金融危機は、我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与えていた。 完全失業率は平成21年から急激に悪化し、一般勤労者世帯の賃金も平成21年に3.9%の減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、消費者物価指数も平成21年から平成23年まで3年連続で対前年比がマイナスとなり、家計消費支出も平成21年から平成23年まで名目値で3年連続の減少となるなど、再び、賃金、物価及び家計消費がいずれも大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数も 費支出も平成21年から平成23年まで名目値で3年連続の減少となるなど、再び、賃金、物価及び家計消費がいずれも大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数も急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加していった。 g 以上のような状況を受け、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記された。 デフレ調整の実施に至る経緯平成19年検証の結果、生活扶助基準は一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、平成19年検証に基づく減額改定を行わなかったことによって、生活保護受給世帯の基準額と一般低所得世帯の消費実態との均衡がすでに崩れた状況(生活保護受給世帯の基準額の方が高い状況)にあった。 その上、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価及び家計消費が下落する経済情勢にあり、一般低所得世帯の消費水準等が下落する一方、その経済動向を踏まえた減額 改定が行われずに据え置かれてきた結果、一般国民との均衡は更に崩れた状況にあった。 このように、平成19年検証の結果及び平成20年以降の経済動向を基準に反映させることができなかった結果、本件保護基準改定前の水準は、一般低所得世帯の生活実態との均衡が大きく崩れた状態(生活保護受給世帯の基準額が高い状態)となっていたが、平成25年検証では展開部分に関する抜本的な見直しが行われる一方、生活扶助基準の水準が妥当か否かの評価、検証は行われなかった。 そして、平成20年以降の経済動向を見ると、前記のとおり、一般国民の消費水 5年検証では展開部分に関する抜本的な見直しが行われる一方、生活扶助基準の水準が妥当か否かの評価、検証は行われなかった。 そして、平成20年以降の経済動向を見ると、前記のとおり、一般国民の消費水準が下落する一方、デフレ傾向にもかかわらず基準が据え置かれたことによって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(平成20年以降の据え置きによって基準額が実質的に引き上げられた)と評価できる状況にあった。 この点、物価を指標として水準の改定を行うことは、専門機関の検証結果(専門委員会の中間取りまとめ)でも指摘されており、保護基準の各種加算においては物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきた。 以上のことなどを踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価を生活扶助基準に反映させることによって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加(基準の実質的な引上げ)したことによる一般国民との間の不均衡を是正することとした。 イ平成20年以降の生活保護受給世帯の相対的、実質的な可処分所得の増加(基準の実質的な引上げ)による一般国民との不均衡の程度厚生労働大臣は、平成20年以降の物価を生活扶助基準に反映させることによって、一般国民との不均衡を是正し、水準の適正化を図ることとした。 そして、厚生労働大臣は、以下のからまでの理由により、平成20 年以降の物価の動きを把握するに当たり、総務省CPIのうち、生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いることとし、それを用いて以下のの算定過程により、平成20年から平成23年までの物価下落率(4.78%)を算定した。 その上で、厚生労働大臣は、以下のに記載した理由により、その統計上の数値が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(基準の での物価下落率(4.78%)を算定した。 その上で、厚生労働大臣は、以下のに記載した理由により、その統計上の数値が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(基準の実質的な引上げ)による一般国民との不均衡を是正するのに相当なものと評価し、その数値分を減額する改定を行ったものである。 総務省CPIのうち、生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いて物価変動率を算定するとした理由物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、その品目の価格(指数)及びウエイトを把握する必要があるところ、平成25年改定当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格(指数)及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在したが、その他に信頼性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。 もっとも、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではないと考えられた。 以上の理由から、厚生労働大臣は、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除いた品目の価格指数及びウエイトのデータを用いて物価を算定することとした(生活扶助相当CPI)。 物価変動を算定する期間を平成20年から平成23年までとした理由厚生労働大臣は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を把握するに当たり、総務省CPIのデータを用いることとしたところ、平成25年 年までとした理由厚生労働大臣は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を把握するに当たり、総務省CPIのデータを用いることとしたところ、平成25年改定当時の最新のデータは、平成24年1月27日に公表された平成23年のものであった。そのため、厚生労働大臣は、物価指数を算定する終点を平成23年とし、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定することとした。 平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由物価指数は、現実の消費実態を反映したものとするため、ウエイトを用いて算定されるところ、平成25年改定当時、総務省CPIのウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準のものと平成22年基準のものが存在した。 この点、国民の消費の内容は時間と共に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点とできるだけ近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までのデフレ傾向を見るために、平成22年のウエイト(消費の構造)を用いることとした。 具体的な物価下落率の算定過程厚生労働大臣は、総務省CPIのデータ(生活扶助による支出が想定される品目の平成20年と平成23年の価格指数のデータ、平成22年基準のウエイトのデータ)を用いて、平成20年と平成23年の物価下落率を算定することとした。 まず、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」か ら、生活扶助による支出が想定される平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及びウエイトを抜 公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」か ら、生活扶助による支出が想定される平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及びウエイトを抜き出し表にまとめる。 次に、まとめた表中の各品目別の価格指数に、各品目に対応するウエイトの値を乗じる。 さらに、各品目の価格指数にウエイトの値を乗じた数値を合計すると、平成20年が646627.9、平成23年が635973.1となる。 これらの数値を、生活扶助相当品目のウエイトの合計である6189(平成20年)及び6393(平成23年)でそれぞれ除する。 そうすると、以下の計算式のとおり、平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平成23年の生活扶助相当CPIは99.5となる。 平成20年:646627.9÷6189=104.5平成23年:635973.1÷6393=99.5そして、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、次の計算式のとおり、-4.78%と算定される。 99.5−104.5104.5×100=-4.78%平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(-4. 78%)は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことによる一般国民との不均衡を是正するのに相当なものと評価されたこと以上のとおり、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの平成20年から平成23年の物価変動率を-4.78%と算定したところ、平成19年検証によって既に一般低所得世帯の消費実態との不均衡(標準世帯において約1%、単身高齢世帯において約13%)が確認されていたことに加え、百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響が生じており、物価以外の消費等経済指標を勘案すれば、平 (標準世帯において約1%、単身高齢世帯において約13%)が確認されていたことに加え、百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響が生じており、物価以外の消費等経済指標を勘案すれば、平成20年以 降の生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したこと(基準の実質的な引上げ)による一般国民との不均衡を是正するのに相当な数値と判断された。 ウ原告らの指摘を踏まえても、デフレ調整にかかる厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱、濫用があるとは認められないこと平成20年を比較の起点としたことにつき、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められないこと平成16年検証では、勤労3世帯の生活扶助基準の水準は「基本的に妥当」と評価されていたところ、平成19年報告書では、生活扶助基準は一般低所得者世帯の消費実態と比べて「高い」と評価された。したがって、本来であれば、平成20年度以降に、速やかに、生活扶助基準の見直しの検討を行わなければならなかったところ、平成20年度予算編成当時の原油価格高騰、平成21年度予算編成当時の物価上昇、世界金融危機の影響、その後も国民生活の安心が優先されるべき状況にあったことを考慮して、平成20年度以降の生活扶助基準額が据え置かれてきた。 したがって、デフレ調整の起点を、本来、保護基準の見直しが行われるべきであった「平成20年」としたことは合理的である。 デフレ調整における物価算出の手法が国際的な基準に反するとの原告らの主張には理由がないことa デフレ調整において用いた物価指数は、消費者物価指数マニュアルの「ロウ指数」であること平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIは、いずれも「消費者物価指数マニュアル-理論と実践-」(以下「消費者物価指数マニュアル」と 数マニュアルの「ロウ指数」であること平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIは、いずれも「消費者物価指数マニュアル-理論と実践-」(以下「消費者物価指数マニュアル」という。)に記載されたロウ指数であり、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIも、消費者 物価指数マニュアルのロウ指数(中間年ロウ指数)であり、国際的な基準に沿う妥当な算式である。 b 国際規準1及び2に関する原告らの主張には理由がないこと原告らは、基準時(価格参照時点)を比較時よりも過去の時点としなければならない(国際規準1)、基準時(価格参照時点)の指数は100でなければならない(国際規準2)との国際規準があると主張するが、少なくともロウ指数においては、基準時(価格参照時点)を任意の時点に置くことができるから、基準時点(価格参照時点)を平成22年として平成20年の生活扶助相当CPIを算出したことは、国際的な基準に反するものではない。また、指数参照時点とは、その時点の指数の値が100とされる時点にすぎないから、任意の時点に設定できるのであり、原告らが主張する国際規準2はない。 c 国際規準3及び4に関する原告らの主張に理由がないこと原告らは、生活扶助相当CPIは平成20年の品目数と平成23年の品目数が同一ではないから、「固定買い物かご指数」(ロウ指数)ではなく、マーケットバスケット方式によって消費者物価指数は作成されなければならない(国際規準3)、基準時と各比較時の対象とする品目は完全に同一で対応していなければならない(国際規準4)という国際規準に反すると主張し、さらに、平成22年にウエイトが更新されているから指数系列の接続をしなければならないと主張する。 平成20年の生活扶助相当CPIは485品目、平成23年の 際規準4)という国際規準に反すると主張し、さらに、平成22年にウエイトが更新されているから指数系列の接続をしなければならないと主張する。 平成20年の生活扶助相当CPIは485品目、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目を用いて計算されており、平成20年と平成23年とで指数作成の基礎となった品目は計算上異なっているものの、欠価格品目を計算上除外して指数を算出することは、欠価格品目を考慮しないこと(買い物かごから除外すること)を意味するものではなく、欠価格品目を他のすべての品目の物価の動きと同じものと 仮定し、「同じ買い物かご」同士を比較することを意味する。したがって、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIについて、平成23年の生活扶助相当CPIを平成20年の生活扶助相当CPIで除して計算したことは、新規採用品目(32品目)の価格の動きを「-4.78」と仮定して、平成20年から平成23年までの同じ買い物かご(517品目)を購入するのに必要な全費用の割合の変化を算出したことと同義であって、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIが固定買い物かご指数(ロウ指数)であることには変わりがない。 また、原告らは接続が必要であると主張するが、デフレ調整において用いた物価指数は固定買い物かご指数であるから、原告らの主張は前提を欠く上、接続は、長期的な物価変動を継続的に見るために、基準改定前後の数値を数学的、形式的につなぐものにすぎないから、接続によって適切な物価算出が可能になるとの趣旨の原告らの主張は、接続の意義、目的を誤解するものである。 異なる集団を比較するものであるとの原告らの主張について原告らは、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは、前者が調和平均、後者が相加平均 、目的を誤解するものである。 異なる集団を比較するものであるとの原告らの主張について原告らは、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは、前者が調和平均、後者が相加平均と性質を異にする別の集団であるため、変化率-4.78%は、異なる集団の指数を比較するものであると主張する。 しかしながら、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPI(中間年ロウ指数)は、基準時(価格を比較する基準となる時点。 ロウ指数においては任意の時点に設定することができる。)の置き方を変えることによって、二つの指数に分解して表現することができる。その場合、基準時(比較時)を置く時点によって、二つの指数は、ラスパイレス指数、パーシェ指数の定義に合致することになる(基準時をウエイ ト参照時点に設定すればラスパイレス指数、比較時をウエイト参照時点に設定すればパーシェ指数となる。)。もっとも、ロウ指数を二つの指数に分解したとしても、基準時等を置き替えたにすぎないから、分解された二つの指数がロウ指数であることに変わりはない。 生活扶助相当CPIを用いたことにより、電化製品の物価下落が過大に評価される結果となっているとの主張について原告らは、生活扶助相当CPIは電化製品の値下がりが過大に影響しているなどと主張するが、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、生活保護受給世帯の電化製品の普及率は、例えば、パソコンの普及率は約4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっており、生活保護受給世帯においても相当程度電化製品を所持して生活を営んでいることは明らかであり、生活扶助で購入することが十分予想される。それにもかかわらず、仮に、電化製 や冷蔵庫はほぼ10割となっており、生活保護受給世帯においても相当程度電化製品を所持して生活を営んでいることは明らかであり、生活扶助で購入することが十分予想される。それにもかかわらず、仮に、電化製品の物価下落幅が大きいからといって、生活扶助相当CPIの算出にあたり電化製品を算出品目から除外したりすることは、かえって恣意的な算定方法となり、適当ではない。 総務省から公表されている消費者物価指数のウエイトを用いて物価変動率を算出した厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落等があるとは認められないこと原告らの主張するように、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することも可能であったとしても、厚生労働大臣は、統計資料として精度や適格性、従来の改定手法との整合性等を総合的に勘案し、総務省から公表されている消費者物価指数のウエイトデータを用いる判断をしたものであって、このような厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落等があるとはいえない。 ⑷ ゆがみ調整による生活扶助基準の見直しについてア厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至った理由平成16年検証では、生活扶助基準の展開部分に関して、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないとの指摘がされ、この指摘を踏まえて、厚生労働大臣は、平成17年度から、第1類費については4人以上世帯の場合に「0.95」、5人以上世帯の場合に「0.90」の逓減率を導入し、第2類費については4人以上世帯の生活扶助基準を抑制するとの見直しを行った。また、平成16年検証では、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全消調査等をもとに5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとの指摘がされ 、平成16年検証では、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全消調査等をもとに5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとの指摘がされた。 平成19年検証では、「水準の妥当性」(生活扶助基準の水準と一般低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか)のほか、年齢階級別、年齢別及び級地別の展開部分である「体系の妥当性」(第1類費と第2類費の合算によって定められている生活扶助基準額が消費実態を適切に反映しているか、具体的には、年齢階級別、世帯人員別の基準額が妥当かどうか)、「地域差の妥当性」(現行の級地制度が級地間における生活水準の差を反映しているかどうか)についても評価、検証が行われた。 その中で、展開部分に関する評価、検証に対する基本的な考え方として、「生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。」との考え方が示され、また、生活扶助基準の評価、検証の方法として、「国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全消調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」として、平 成16年検証と同様の考え方が示された。 その検証の結果、展開部分については、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別に見ると、「20歳~39歳」及び「40歳~59歳」では生活扶助基準額が相対的にやや低めである一方、「70歳以上」では相対的にやや高めであるなど消費実態からややかい離している、世帯人員別にみると、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利で 0歳~59歳」では生活扶助基準額が相対的にやや低めである一方、「70歳以上」では相対的にやや高めであるなど消費実態からややかい離している、世帯人員別にみると、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる、地域別にみると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきているといえるとの結論が得られた。 そのため、平成19年検証を踏まえて、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分について見直しを行うことが考えられたものの、厚生労働大臣は、当時の社会経済情勢等の諸般の事情を総合的に勘案し、平成19年検証に基づく展開部分の見直しは見送ることとした。 そこで、平成25年検証において、平成19年検証の「世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要」との指摘を踏まえ、生活保護受給者間における実質的な公平を図る観点から、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」について検証、評価が行われることとなった。 このように、平成25年検証は、平成19年検証の指摘を踏まえ、生活扶助基準の「展開のための指数」の適正化を行うことによって、世帯構成が異なる生活保護受給者間の公平を図る目的で行われたものである。 基準部会は、平成19年検証における検証方法についての指摘を踏まえ、平成21年の全消調査のデータを用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別間の消費実態の違いを把握し、その世帯構成による消費実態の相違を生活扶助基準の展開部分に反映させることとした。 具体的には、全消調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人 、級地別間の消費実態の違いを把握し、その世帯構成による消費実態の相違を生活扶助基準の展開部分に反映させることとした。 具体的には、全消調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の相違を示す「一般低所得世帯の消費実態による指数」を把握し、それを「生活扶助基準額による指数」に反映することとした。 そして、基準部会は、一般低所得世帯として第1・十分位世帯を用いることとした。すなわち、基準部会は、①これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることが示されていること、⑥分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることから、第1・十分位の世帯を用いることとしたものである。 このような基準部会での検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間にかい離が認められた。 そして、上記のような検証結果が基準 齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間にかい離が認められた。 そして、上記のような検証結果が基準部会によって取りまとめられたことを踏まえ、厚生労働大臣は、基準部会による平成25年検証結果に基づき、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」に反映させることを手段として、生活扶助基準の展開部分を適正化して生活保護受給世帯間 の公平を図るゆがみ調整を行う判断に至ったものであり、このような同大臣の判断の過程に過誤、欠落等は認められない。 イ原告らの指摘を踏まえても、デフレ調整にかかる厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱、濫用があるとは認められないこと生活扶助基準の妥当性を検証するに際し、第1・十分位の消費水準を比較対象とすることは適当であり、これと異なる世帯を対象とすべき合理的理由はないこと専門委員会における平成16年検証、生活扶助基準検討会における平成19年検証、さらには、基準部会における平成25年検証のいずれにおいても、実際に、生活扶助基準の妥当性については、第1・十分位を比較対象として検証することが相当である旨各会の委員が判断し、検証がされている。とりわけ、基準部会においては、原告らも指摘する平成25年報告書の第1・十分位を比較対象とする6つの理由を、基準部会委員も確認した上で、第1・十分位を比較対象とすることで問題はないとして検証を実施している。むしろ、本件保護基準改定において、これらと異なる取扱いをし、あえて第1・十分位ではない世帯を比較対象とすべき合理的理由は見当たらない。 生活保護受給世帯との比較対象である第1・十分位に属する世帯に生活保護受給世帯を含めて比較しているとの原告らの主張は失当であ 第1・十分位ではない世帯を比較対象とすべき合理的理由は見当たらない。 生活保護受給世帯との比較対象である第1・十分位に属する世帯に生活保護受給世帯を含めて比較しているとの原告らの主張は失当であること平成25年検証は、生活扶助基準額に一般低所得世帯の消費実態が適切に反映されているかを検証するため、平成21年の全消調査の第1・十分位のデータを使用し、その消費実態の年齢階級、世帯人員、級地別の指数と、それらの各世帯が実際に当時の基準により生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の年齢階級、世帯人員、級地別の指数を比較したものである。すなわち、ここで「第1・十分位の世帯の消費支出」と 比較している対象は、法及び告示で定められた当時の基準による「生活扶助基準額」であり、実際の生活保護受給世帯の消費支出額を比較対象としたものではない。したがって、平成25年検証は、「2つの集団」及び2つの集団におけるそれぞれの「消費支出」を比較したものではなく、比較の対象とする要因に関し厳密に区別されなければならないといった点を考慮する余地はない。 回帰分析の手法について原告らは、ゆがみ調整における回帰分析の手法について問題があると主張するが、以下のとおり、原告らの主張は前提とする回帰分析の知見に誤りがあるか、あるいは回帰分析の手法の妥当性(当不当)に関するものであるから、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱、濫用を基礎づけるものではない。 a 回帰モデルの決定係数は、どの程度の決定係数の値であれば、実態を近似したものとして妥当と評価されるかについては一般的な規準は存在せず、平成25年検証の回帰分析における決定係数の値は極端に低いものではないから、平成25年検証の決定係数の値のみをもって、その回帰分析が不合理 として妥当と評価されるかについては一般的な規準は存在せず、平成25年検証の回帰分析における決定係数の値は極端に低いものではないから、平成25年検証の決定係数の値のみをもって、その回帰分析が不合理であると指摘する原告らの主張は、統計的分析の当不当を指摘するものにすぎない。 bt検定の採用方法が誤っているとの原告らの主張についても、t検定によって帰無仮説(「効果がない(無効)」ことや「異なっていない(同質)」ことを主張する仮説。)が棄却できない場合の統計的解釈を誤るものである。 c 回帰分析の結果を適切に評価するための仮定を満たしているか触れられていないとの原告らの主張についても、原告らの指摘する仮定を満たしているかといった検討は、t検定と同様、回帰分析結果について事後的にその制度を検証するための統計的検定の手法であり、それ らの各手法を用いなければ、回帰分析の結果を採用し得ないといったような統計的知見は全く存在しない。 ⑸ 激変緩和措置の概要及び厚生労働大臣がその判断に至った理由ア激変緩和措置の判断についての厚生労働大臣の裁量権の範囲保護基準の設定、改定については厚生労働大臣に広範な裁量権が認められているところ、激変緩和措置を講じるか否か、講じるとしてどのような内容の措置を講じるかについては、基本的には政策判断に属する事柄であるから、厚生労働大臣の極めて広範な裁量に委ねられているというべきである。そして、本件保護基準改定は、生活扶助基準の適正化を目的とするものであるから、老齢加算のように、一定の年齢に達している者は支給を受けることができるという被保護者の事実上の期待を保護する必要性は高いものではない。そうすると、本件保護基準の改定に当たって、激変緩和措置を講じるか否か、どのような内容の措置を講じるかの判断について 受けることができるという被保護者の事実上の期待を保護する必要性は高いものではない。そうすると、本件保護基準の改定に当たって、激変緩和措置を講じるか否か、どのような内容の措置を講じるかの判断については、その判断の過程に過誤、欠落等を示す明白な事情が認められるような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱、濫用が認められることはなく、適法というべきである。 イ厚生労働大臣が激変緩和措置を講じた理由厚生労働大臣は、ゆがみ調整、デフレ調整による生活扶助基準の見直しを行うこととしたが、平成25年報告書に記載のとおり、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合は、夫婦子1人世帯(子は18歳未満) 8.5%夫婦子2人世帯(子は18歳未満) 14.2%母子世帯(18歳未満の子1人) 5.2%の減額率となるなど、子供がいる世帯への影響が相当大きくなることが予想された。 その上、生活扶助基準の展開のための指数については、平成25年検証 において初めて詳細な分析が行われたものであり、その手法は専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法と評価できる一方、平成25年検証において採られた手法が唯一のものということもできず、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた。そして、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われており、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に、更なる検証が行われることが予定されていた。 以上を踏まえて、厚生労働大臣は、次の定期的な検証までの激変緩和措置として、平成25年検証の結果を反映する比率を2分の1としたものである(2分の1処理)。 もっとも、平成25年検証の結果の反映比率を2分の1としても、デフレ調整による 期的な検証までの激変緩和措置として、平成25年検証の結果を反映する比率を2分の1としたものである(2分の1処理)。 もっとも、平成25年検証の結果の反映比率を2分の1としても、デフレ調整による減額(-4.78%)と併せて行うことによって、生活扶助基準額が大幅に減額となる世帯が生じることも見込まれた。そこで、生活扶助基準額が大幅に減額となる世帯の負担軽減を目的として、その減額幅の上限を10%とした。 以上の理由から、厚生労働大臣は、本件保護基準改定に当たり、平成25年検証結果の反映比率を2分の1とするとともに、減額幅の上限を10%とした上で、生活扶助基準への反映を平成25年から3年にわたって行うという一連の激変緩和措置を講じることとしたものである。 ⑹ 結論以上のとおり、被告らが挙げる理由から容易に本件保護基準改定の判断に至り得るのであって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断過程に、過誤、欠落等は認められない。したがって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱、濫用は認められず、本件保護基準改定は適法というべきである。 2 争点2(処分理由提示義務違反の有無)について 本件各保護変更決定は、同決定より前の平成25年5月16日の時点で既に官報により一般に周知されていた平成25年告示に伴って、当該告示どおりの処分を行うものであり、本件各保護変更決定の時点においてその内容は事実上確定していたから、行政庁による恣意的な判断が介入するおそれはない。また、上記のとおり、本件各保護変更決定より前の上記年月日の時点で、平成25年告示が官報により一般に周知されていたことに加え、本件各保護変更決定の通知書の記載とそれ以前の通知書を見比べることによっても、本件各保護変更決定の通知を受けた時点で、 上記年月日の時点で、平成25年告示が官報により一般に周知されていたことに加え、本件各保護変更決定の通知書の記載とそれ以前の通知書を見比べることによっても、本件各保護変更決定の通知を受けた時点で、保護基準の改定により生活扶助支給額が減額されたことは理解可能であることからすれば、本件各保護変更決定の通知書における理由の提示が「基準改定による」又は「基準改定」というものであったとしても、被保護者による不服申立ての便宜を損なうものではない。 そうであれば、本件各保護変更決定の通知書における保護変更理由の記載は、当該決定に当たって理由を付さなければならないとする法及び行政手続法の規定の趣旨に反するものではないから、かかる点をもって本件各保護変更決定が違法となるものではない。 第6 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 生活扶助基準の改定方式の変遷生活扶助基準の改定方式としては、現在の法が施行された昭和25年当時は、マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)、昭和36年からは、エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)、昭和40年からは、 格差縮小方式(政府経済見通しにおける個人消費の伸び率に格差縮小分を上乗せし、一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)がそれぞれ採用されてきたが、昭 消費の伸び率に格差縮小分を上乗せし、一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)がそれぞれ採用されてきたが、昭和59年以降は、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式によって行われている。(乙A7の2、10)⑵ 水準均衡方式の採用ア格差縮小方式の採用の経緯昭和40年から採用された格差縮小方式は、昭和39年12月16日付け社会福祉審議会生活保護専門分科会による中間報告(乙A32。以下「昭和39年中間報告」という。)において、生活保護水準改善の方策につき、「第1・10分位階級における消費水準の最近の上昇率に加えて、第1・10分位階級と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善を行うべきである。」とされたことを契機に、翌年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び率を基礎として、それに格差縮小分をプラスすることにより低所得世帯と被保護世帯の消費支出水準格差を縮小する方式として採用されたものである。(乙A7の2、9、10)イ水準均衡方式の採用の経緯水準均衡方式は、厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会が昭和58年12月に取りまとめた「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(乙A8。以下「昭和58年意見具申」という。)を受けて新たに導入された生活扶助基準改定方式である。 中央社会福祉審議会は、当時の我が国の社会経済情勢が、第2次オイルショックを契機とする長期の景気停滞の下で、雇用機会や賃金上昇率の低下などの減少が顕在化し、低所得者階層が増加する傾向にある一方、国家財政は、益々窮迫し、限られた財源のより効果的な配分を確保するため、 各種施策につ の景気停滞の下で、雇用機会や賃金上昇率の低下などの減少が顕在化し、低所得者階層が増加する傾向にある一方、国家財政は、益々窮迫し、限られた財源のより効果的な配分を確保するため、 各種施策についての見直しが要請される中、要保護者の最低生活を守るべき生活保護制度の基本的立場を堅持しながら、当時の生活扶助基準の評価と、それを受けた生活扶助基準改定方式の在り方について検討し、意見を昭和58年意見具申に取りまとめた。 昭和58年意見具申は、当時の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達していると評価した。もっとも、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるので、生活保護受給世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要があるとも指摘した。 昭和58年意見具申は、上記の生活扶助基準の評価を踏まえ、生活扶助基準の在り方として、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整がはかられるよう適切な措置をとることが必要である」とした上で、「当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。」として、水準均衡方式によることが妥当であるとした。また、「なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。」とも指摘した。 (以上につき、乙A8)ウ昭和59年以降の生活扶助基準の改定厚生(労働)大臣は、昭和58年意見具申 費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。」とも指摘した。 (以上につき、乙A8)ウ昭和59年以降の生活扶助基準の改定厚生(労働)大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年度以降は水準均衡方式により生活扶助基準の改定を行ってきた。もっとも、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出)を踏まえながらも、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘案して決定をしており、昭和59年度から平成 12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以降は改定率を暫時縮小)をし、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成15年度及び平成16年度は減額改定した。(乙A10、75)なお、一般勤労者世帯の消費支出を100としたときの被保護勤労者世帯の消費支出額の割合(格差)は、平成13年度以降7割を超え、平成21年度には77.8%に達した。(乙A7の2)⑶ 平成16年検証に至る経緯ア専門委員会が設置された背景水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は、バブル経済崩壊後、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状況にあった。例えば、一般勤労者世帯の賃金は、事業所規模5人以上の調査産業計の1人の平均月間現金給与総額は平成13年から平成16年まで減少が続き、消費者物価指数(全国・総合)についても平成11年から平成15年まで対前年比がマイナスとなり、全国勤労者世帯の家計消費支出も平成10年から平成15年まで減少が続いていた。(乙A4、11)このような社会経済情勢の中で、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案(いわゆる社会福祉基礎構造改革法案)に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について、十分検討を行うこととされ、平成15年6月の社会保障審議会意 社会福祉事業法等一部改正法案(いわゆる社会福祉基礎構造改革法案)に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について、十分検討を行うこととされ、平成15年6月の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議においても同様に生活保護制度の在り方の検討の必要性が指摘された。 さらに、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である。」とされた。 (乙A12の2) イ平成15年中間取りまとめ上記指摘を踏まえて、平成15年に、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般についての検討を目的とした専門委員会が社会保障審議会福祉部会の下に設置された。(乙A12の1)専門委員会は、平成15年12月16日、「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(乙A13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を公表した。平成15年中間取りまとめは、生活扶助基準の評価について、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位の消費水準に着目することが適当であるとした。また、生活扶助基準の改定方式については、最近の経済情勢は水準均衡方式を採用した当時と異なることから、例えば、5年間に一度の頻度で生活扶助基準の水準について検証を行うことが必要であるとし、定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えら 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられるとした。(乙A13)ウ平成16年検証専門委員会は、平成16年12月15日、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(乙A4。以下「平成16年報告書」という。)を公表した。平成16年報告書の内容は、以下のとおりである。 生活扶助基準の評価・検証等について、水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを見極めるため、全消調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。 当時の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、算定方法については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、特に①多人数世帯基準の是正、②単身世帯基準の設定及び③第1類費の年齢別設定の見直しについて改善が図られるように、これらの検討の必要がある。 級地について、当時の一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められたところ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 (以上につき、乙A4)エ厚生労働 ると、地域差が縮小する傾向が認められたところ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 (以上につき、乙A4)エ厚生労働大臣による生活扶助基準の改定厚生労働大臣は、平成16年報告書において、勤労3人世帯の生活扶助基準について、その水準は基本的に妥当であったとの結論が得られたことから、平成17年度の生活扶助基準を据え置き、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準改定についても、当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、水準を据え置いた。(乙A77~79)また、厚生労働大臣は、平成16年報告書において、前項の①の多人数世帯における生活扶助基準の是正について指摘されたことを受けて、平成17年度から、第1類費については4人以上世帯の場合に「0.95」、5人以上世帯の場合に「0.90」の逓減率を導入し、第2類費については4人以上世帯の生活扶助基準を抑制するとの見直しをした。(乙A7の3)⑷ 平成19年検証に至る経緯 ア生活扶助基準検討会の設置平成16年報告書において、「今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを見極めるため、全消調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。」とされたことに続き、平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」においても、早急に生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直し及び級地の見直しを行うこととされ、生活保護制度の見直しの必要性が指摘された。(乙A14の2)これらを踏まえて、平成19年から、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析、検討を行う 直し及び級地の見直しを行うこととされ、生活保護制度の見直しの必要性が指摘された。(乙A14の2)これらを踏まえて、平成19年から、級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析、検討を行うことを目的として、学識経験者等による生活扶助基準検討会が開催された。(乙A14の1)イ生活扶助基準検討会の検討生活扶助基準検討会では、定期的な検証のほか、平成16年報告書で指摘され、課題として残っている、①水準の妥当性(生活扶助基準の水準が、保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか)、②体系の妥当性(第1類費と第2類費の合算によって定められている生活扶助基準額が消費実態を適切に反映しているか、具体的には、年齢階級別、世帯人員別の基準額が妥当かどうか)、③地域差の妥当性(現行の級地制度が級地間における生活水準の差を反映しているかどうか)を主な検討項目として評価、検証がされた。 生活扶助基準の評価、検証の方法としては、「国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全消調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である。」として、平成16年検証と同様の考え方が示された。 ウ平成19年報告書生活扶助基準検討会は、平成19年11月、「生活扶助基準に関する検討 会報告書」(乙A5。以下「平成19年報告書」という。)を公表した。同報告書に取りまとめられた上記①から③までの評価・検証の結果は、以下のからのとおりである。 ①水準の妥当性に関する評価・検証について夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準と生活扶助基準額を比較したところ、これらの世帯における生活扶助相当支出額は、世帯当たり14万8781円であったのに対して の妥当性に関する評価・検証について夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準と生活扶助基準額を比較したところ、これらの世帯における生活扶助相当支出額は、世帯当たり14万8781円であったのに対して、これらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高め(約1.1%)となっている。 単身世帯(60歳以上)の第1・十分位と生活扶助基準額を比較したところ、これらの世帯における生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対して、これらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっている。 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当とされてきたが、㋐第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、㋑第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、今回、これを変更する理由は特段ないと考える。ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に達しているが、単身世帯〔60歳以上〕については、その割合が5割〔第1・五分位でみると約6割〕にとどまっている点に留意する必要がある。 (以上につき、乙A5) ②体系の妥当性に関する評価、検証について 体系の妥当性に関する評価、検証については、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 世帯人員別に設定 いては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 世帯人員別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1としたときの比率で、4人世帯は生活扶助基準額が2.27と、生活扶助相当支出額の1.99に比べて相対的にやや高め、5人世帯でも生活扶助基準額が2.54と、生活扶助相当支出額の2.14に比べて相対的にやや高めとなっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる。 年齢階級別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、単身世帯の第1~3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1としたときの比率で、20歳から39歳では生活扶助基準額が1.05と、生活扶助相当支出額の1.09に比べて相対的にやや低め、40歳から59歳では生活扶助基準額が1.03と、生活扶助相当支出額の1.08に比べて相対的にやや低めになっている。一方70歳以上では生活扶助基準額が0.95と、生活扶助相当支出額の0.88より相対的にやや高めであるなど消費実態からややかい離している。 (以上につき、乙A5)③地域差の妥当性に関する評価、検証について現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と、平成16年の消費実態を比較すると、地域差が縮小している傾 向がみられる。世帯類型、年齢階層などで実際の生活様式は異なるとし の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と、平成16年の消費実態を比較すると、地域差が縮小している傾 向がみられる。世帯類型、年齢階層などで実際の生活様式は異なるとしても、平均的には、現行の地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきているといえる。 (以上につき、乙A5)エ生活扶助基準の据え置き厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準について、予算編成当時(平成19年12月当時)、原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極める必要があるとして、平成19年検証に基づく生活扶助基準の見直しを行わず、据え置くこととし、このような社会経済情勢を踏まえて平成20年度の消費等の動向を基礎とした改定も行わなかった。(乙A7の1、80)その後、平成21年度の改定においても、予算編成当時(平成20年12月当時)、平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられたことから、厚生労働大臣は、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置いた。(乙A7の1、15、81)そして、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準については、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、平成23年度及び平成24年度については、同様に、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、いずれの年度においても消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした。(乙A7の1、82~84)⑸ 平成25年検証に至る経緯ア基準部会 の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、いずれの年度においても消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした。(乙A7の1、82~84)⑸ 平成25年検証に至る経緯ア基準部会が設置された経緯平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機は、我が 国の消費等の実体経済に大きな影響を与えた。(甲A7、乙A85の1、2)完全失業率は、平成20年平均で4.0%であったのが、平成21年平均では5.1%、平成22年平均でも5.0%と急激に悪化した。また、一般勤労者世帯の賃金(事業所規模5人以上の調査産業計の1人平均月間現金給与総額)も、平成21年に3.9%の減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じた。また、消費者物価指数(全国・総合)についても、平成21年から平成23年まで3年連続で対前年比がマイナスとなり、全国勤労者世帯の家計消費支出も平成21年から平成23年まで名目値で3年連続の減少となった。このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数も急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加していった。(乙A6、11)。 以上のような状況を受け、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記された。(乙A6)生活保護制度の見直しの必要性が引き続き指摘され、また、平成16年報告書において生活扶助基準の定期的な検証の必要性が指摘される中、これらの指摘を踏まえて、平成23年2月に、学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に新たに常設 成16年報告書において生活扶助基準の定期的な検証の必要性が指摘される中、これらの指摘を踏まえて、平成23年2月に、学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に新たに常設部会として基準部会が設置され、平成25年検証が行われることとなった。(乙A6)イ平成25年検証平成25年検証の目的及び概要生活扶助基準の算定は、第1類費及び第2類費を合算する仕組みとなっているところ、平成16年報告書では、世帯人員別にみると必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したスケールメリットとなっていない ため、体系の設定及び算定方法について見直しを検討する必要があると指摘された。また、平成19年報告書においても、世帯構成などが異なる生活保護受給者間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から、必要な見直しを行っていくことが必要であるとの考え方が示され、具体的には、生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全消調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当であると指摘された。これらを踏まえ、平成25年検証においては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証が行われることとなった。 具体的には、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として第1・十分位を設定し、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて指数(消費実態の指数)を算出した。その上で、様 るべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として第1・十分位を設定し、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて指数(消費実態の指数)を算出した。その上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行うこととした。その際、仮に第1・十分位のすべての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。 (以上につき、乙A6)平成25年検証の議論の経緯a 比較対象として第1・十分位を用いることについて(乙A6) 比較対象として第1・十分位を用いることについて、基準部会は、平成24年10月5日に実施された第10回部会(乙A22)、平成24年11月9日に実施された第11回部会(甲A99の1)及び平成25年1月16日に実施された第12回部会を通じて議論を行い、一定の留意事項(後記e)があることを踏まえつつも、以下の①から⑥の理由により、平成25年検証において第1・十分位を用いることにつき妥当であると判断した。 ① これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断されたこと② 第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること③ 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること④ 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の 財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること④ 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと⑤ 第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることが示されていること⑥ 分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることb 生活扶助基準の水準(高さ)の検証を行うかどうかについて平成24年11月9日に実施された第11回部会において、厚生労 働省事務局は、年齢別、世帯人員別及び級地別の3要素に焦点を当て、詳細な消費実態の分析に基づく評価、検証を行った上で、その結果を踏まえた上で水準の検証を行うことを基本方針として確認したものの、委員から、上記3要素による較差を補正した上で水準の検証に耐えられるデータが残るのかどうかについて消極的な意見が述べられ、その後、平成25年検証において、水準の評価、検証が行われることはなかった。(甲A99の1及び2、125、219の1、乙A22、39)検証手法と検証結果基準部会は、平成25年1月18日、平成25年報告書(乙A6)を公表した。平成25年報告書において取りまとめられた検証手法及び検証結果は、以下のとおりである。 a 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準について① 検証手法年齢階級別に設定されている生活扶助基準額の第1類費について、異なる年齢階級間の比率(指数)が消費実態と比べてどれほどのかい離があるかを検証した。な 1類費)の基準額の水準について① 検証手法年齢階級別に設定されている生活扶助基準額の第1類費について、異なる年齢階級間の比率(指数)が消費実態と比べてどれほどのかい離があるかを検証した。なお、全消調査には10代以下の単身世帯のデータがほとんどないため、10代以下の者がいる複数人世帯のデータを用いて、10代以下の者も含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう回帰分析を採用した。 ② 検証結果年齢階級別の生活扶助(第1類費)基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指数にかい離が認められた。具体的には、以下のとおり、0~2歳の消費実態を1としたときの各年齢階級間の指数の差は、当時の生活扶助(第1類費)基準額よりも消費実態の方が小さくなっていることが認められた。 〔年齢階級別(第1類費)の基準額の水準〕生活扶助基準額第1・十分位の消費実態0~2歳 0.69 1.003~5歳 0.86 1.036~11歳 1.12 1.0612~19歳 1.37 1.1020~40歳 1.31 1.1241~59歳 1.26 1.2360~69歳 1.19 1.2870歳以上 1.06 1.08b 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準① 検証手法第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化(単身世帯を1)し、当時の生活扶助基準額を同様に指数化したものと比較した。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、上記a②で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全 数化(単身世帯を1)し、当時の生活扶助基準額を同様に指数化したものと比較した。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、上記a②で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し、世帯人員による影響のみを評価できるようにした。 生活扶助基準額(第1類費、第2類費別)の世帯人員体系の検証において世帯人員別の平均消費を評価する際には、直接的な評価手法として回帰分析を用いてはいないが、回帰式に基づく結果との整合性を確認する目的で回帰分析を行った。 ② 検証結果第1類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるに つれてかい離が拡大する傾向が認められた。具体的には、以下のとおり、単身世帯の消費実態を1としたときの各世帯人員別の指数の差は、当時の生活扶助(第1類費)基準額よりも消費実態の方が小さくなっていることが認められた。 〔世帯人員別(第1類費)の基準額の水準〕生活扶助基準額第1・十分位の消費実態単身世帯 0.88 1.002人世帯 1.76 1.543人世帯 2.63 2.014人世帯 3.34 2.345人世帯 3.95 2.64第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。具体的には、以下のとおり、単身世帯の消費実態を1としたときの各世帯人員別の指数の差は、当時の生活扶助(第2類費)基準額よりも を比べると、世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。具体的には、以下のとおり、単身世帯の消費実態を1としたときの各世帯人員別の指数の差は、当時の生活扶助(第2類費)基準額よりも消費実態の方が大きくなっていることが認められた。 〔世帯人員別(第2類費)の基準額の水準〕生活扶助基準額第1・十分位の消費実態単身世帯 1.06 1.002人世帯 1.18 1.343人世帯 1.31 1.674人世帯 1.35 1.755人世帯 1.36 1.93c 生活扶助基準の地域差① 検証手法 各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化(1級地-1を1)したものと、当時の生活扶助基準額を同様に指数化したものとを比較した。なお、指数化に当たっては、第1類費相当支出部分については世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに、上記bの過程で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員数による消費水準の相違の影響を除去し、地域差による影響のみを評価できるようにした。 生活扶助基準額の級地間較差の検証において級地別の平均消費を評価する際には、直接的な評価手法として回帰分析を用いてはいないが、回帰式に基づく結果との整合性を確認する目的で回帰分析を行った。 ② 検証結果級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、地域差は、消費実態の方が小さくなっていることが認められた。具体的には、以下のとおり、1級地-1の消費実態を1としたときの級地別の指数の差は、当時の生活扶 1・十分位の消費実態による指数を比べると、地域差は、消費実態の方が小さくなっていることが認められた。具体的には、以下のとおり、1級地-1の消費実態を1としたときの級地別の指数の差は、当時の生活扶助基準額よりも消費実態の方が小さくなっていることが認められた。 〔級地別の基準額の水準〕生活扶助基準額第1・十分位の消費実態1級地の1 1.02 1.001級地の2 0.97 0.962級地の1 0.93 0.902級地の2 0.88 0.903級地の1 0.84 0.873級地の2 0.79 0.84 d 年齢、世帯人員、地域の影響を考慮した場合の水準上記aからcまでの検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響をみると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8.5%、夫婦と18歳未満の子2人世帯では-14. 2%、母親と18歳未満の子1人世帯では-5.2%となるなど、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々である。 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 e 検証結果に関する留意事項今回試みた検証手法は、平成19年検証の報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態の間にどの程度かい離が生じているかを 関する留意事項今回試みた検証手法は、平成19年検証の報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態の間にどの程度かい離が生じているかを詳細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組み合わせによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。 今回採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。さらに基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準 についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 とりわけ第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。 また、現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。 また、現実には第1・十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要である。 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 (以上a~eにつき、乙A6)⑹ 本件保護基準改定の概要アゆがみ調整厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を踏まえ、生活扶助基準について、本件保護基準改定により、平成25年検証において認められた第1・ 十分位の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員、居住地域別とのかい離を調整した。 具体的には、平成25年検証の年齢階級別の基準額の水準についての検証結果を踏まえ、第1類費基準額について、各年齢階級間の基準額の差を小さくした。また、世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準についての検証結果を踏まえ、第1類費基準額の逓減率(世帯人員が1人増加するごとに第1類費基準額の合計額に乗じる割合)について、世帯人員の増加に応じた逓減割合を大きくするとともに、第2類費基準額について、世帯人員の増加に応じた各世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくした。さらに、級地別の基準額の水準についての検証結果を踏まえ、第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ各級地間の基準額の差を小さくするよう調整した。平成25年検証の結果を反映する比率は2分の1とした(2分の1処理)。 (以上につき、乙A17)イデフレ調整生活扶助基準の水準については、平成19年検証の結果、生 するよう調整した。平成25年検証の結果を反映する比率は2分の1とした(2分の1処理)。 (以上につき、乙A17)イデフレ調整生活扶助基準の水準については、平成19年検証の結果、生活扶助基準は一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、平成19年検証に基づく減額改定が行われず、その後、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価及び家計消費が下落する経済情勢にあり、一般低所得世帯の消費水準等が下落する一方、その経済動向を踏まえた減額改定が行われずに据え置かれてきた。 厚生労働大臣は、平成19年検証の結果及び平成20年以降の経済動向を基準に反映させることができなかった結果、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の生活実態との均衡が大きく崩れた状況にあると判断し、平成20年以降の経済動向をみると、一般国民の消費水準が下落する一方、デフレ傾向にもかかわらず基準が据え置かれたことによって、生活保護受給 世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価した。そこで、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価を生活扶助基準に反映させることによって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことによる一般国民との間の不均衡を是正することとしてデフレ調整を行うこととした。厚生労働大臣は、以下のとおり、平成20年から平成23年の物価変動率を-4.78%と算定し、この値が平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことによる一般国民との不均衡を是正するのに相当な数値であると判断し、生活扶助基準額につきその数値分を減額する改定を行った。(甲A7、乙A16)物価動向を勘案する起点と終点厚生労働大臣は、上記イのとおりのデフレ調整を行う理由に加え、平成19年検 ると判断し、生活扶助基準額につきその数値分を減額する改定を行った。(甲A7、乙A16)物価動向を勘案する起点と終点厚生労働大臣は、上記イのとおりのデフレ調整を行う理由に加え、平成19年検証の結果を踏まえた上で、当時の政府の判断として平成20年度以降の基準を据え置くことが妥当とされたことから、物価動向を勘案する起点を平成20年とすることとし、物価動向を勘案する終点を、平成25年改定当時の最新のデータが得られる平成23年とした。(甲A7、乙A16、弁論の全趣旨)物価の動向を把握する上で用いたデータ平成20年以降の物価の動向を把握するに当たっては、総務省CPIを算出する際に指数品目として採用されている品目のうち、生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いることとし、㋐家賃、教育費及び医療費等の生活扶助以外の他扶助で賄われる品目、㋑自動車関係費及びNHK受信料等の原則として生活保護受給世帯には支出することが想定されていない品目を除いた他品目を用いて生活扶助相当CPIを算出した。(甲A7) ウエイト参照時点消費者物価指数は、指数品目の価格指数に、家計の消費支出全体に占 める支出額の割合であるウエイトを乗じ、これを合計した上で、ウエイトの総数で除することで算出される(乙A25)。価格指数及びウエイトは、刻々と変化することから、どの時点のウエイトをとるかによって、ラスパイレス指数、パーシェ指数などの指数が考案されている(乙A26)。総務省CPIは、ウエイト参照時点(ウエイトを計算する基礎となる時点)を対象期間の期首に固定したラスパイレス方式である。(乙A25)生活扶助相当CPIに算定する上で用いるウエイトは、総務省CPIのウエイトのデータとして、平成20年と平成23年の間である平成22年のウエ 間の期首に固定したラスパイレス方式である。(乙A25)生活扶助相当CPIに算定する上で用いるウエイトは、総務省CPIのウエイトのデータとして、平成20年と平成23年の間である平成22年のウエイト(消費の構造)が用いられた。総務省CPIのウエイトは、総務省が実施する家計調査の結果を踏まえて5年ごとに改定されている。(甲A7、弁論の全趣旨)具体的な物価下落率の算定過程まず、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」(乙A27)から、生活扶助による支出が想定される平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及びウエイトを抜き出し表にまとめる。なお、平成22年に指数品目の改定が行われ、新たに32品目が採用されたことから、平成20年は485品目、平成23年は517品目となる。 次に、まとめた表中の各品目別の価格指数に、各品目別のウエイトの値を乗じる。 さらに、各品目別の価格指数にウエイトの値を乗じたものを合計すると、平成20年が「646627.9」、平成23年が「635973. 1」となる。 これらの数値を、生活扶助相当品目のウエイトの合計である6189(平成20年)及び6393(平成23年)でそれぞれ除する。 そうすると、以下の計算式のとおり、平成20年の生活扶助相当CPIは「104.5」、平成23年の生活扶助相当CPIは「99.5」となる。 平成20年の生活扶助相当CPI=(①平成22年基準消費者物価指数の指数品目から一部を除外したもの〔485品目〕の平成20年時点の各価格指数×②各品目の平成22年のウエイト)の合計÷平成22年のウエイトの総数=646627.9÷6189=104.5平成23年の生活扶助相当CPI=(①平 5品目〕の平成20年時点の各価格指数×②各品目の平成22年のウエイト)の合計÷平成22年のウエイトの総数=646627.9÷6189=104.5平成23年の生活扶助相当CPI=(①平成22年基準消費者物価指数の指数品目から一部を除外したもの〔517品目〕の平成23年時点の各価格指数×②各品目の平成22年のウエイト)の合計÷平成22年のウエイトの総数=635973.1÷6393=99.5そして、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、次の計算式のとおり、-4.78%と算定される。 99.5−104.5104.5×100=-4.78%(以上につき、甲A7、乙A27、28、53、弁論の全趣旨)ウ激変緩和措置厚生労働大臣は、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる増減額幅の上限を10%とした上で、その結果の反映を3年にわたって実施するという激変緩和措置を講じることとした。(甲A7、乙A16) エ本件保護基準改定による生活扶助基準額の増減率本件保護基準改定による生活扶助基準額の増減率は、以下のとおりである。また、「-10%~-5%」の減額となる世帯25%につき、「-10%~-9%」が減額となる世帯は2%である。(甲A7)増減率該当世帯割合-10% ~ -5% 25%-5% ~ 0% 71%0% ~ 2% 3% 2 本件保護基準改定の合憲性及び適法性(争点1)について⑴ 判断枠組みについてア法3条によれば、法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することが 3% 2 本件保護基準改定の合憲性及び適法性(争点1)について⑴ 判断枠組みについてア法3条によれば、法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、法8条2項によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず、これを超えないものでなければならない。そうすると、仮に、保護基準が最低限度の生活の需要を超えていると認められるのであれば、生活扶助基準の減額をすることは同項の規定に沿うところであるということができる。もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断・決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するにあたっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、保護基準中の生活扶助基準に係る部分を改定するに際し、改定を行うべき理由があるかどうかや、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するにあたっては、厚生労働大臣に上記のような専 門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 イまた、生活扶助基準を改定すべき理由が認められる場合であっても、改定により保護基準が減額となる場合は、従前の生活扶助費が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては、保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、上記のよう が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては、保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、被保護者のこのような期待的利益にも可及的に配慮するため、改定の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、前記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 ウそして、生活扶助基準の改定の要否の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や、被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、前記ア及びイのような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、生活扶助基準の算定方法及びその額等については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて検討がされてきたところである。これらの経緯等に鑑みると、ゆがみ調整及びデフレ調整を内容とする保護基準の改定は、①当該改定の時点において、生活保護受給者間に年齢別、世帯別、地域別にゆがみが生じており、かつ、デフレ傾向において生活扶助基準が据え置かれたことによって生活保護受給世帯に実質的な購買力の増加が認められ、当該改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査をし、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②ゆがみ調整及びデフレ調整に際し、 激変緩和措置を含めた具体的な方法等についての方針及び現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活 認められる場合、あるいは、②ゆがみ調整及びデフレ調整に際し、 激変緩和措置を含めた具体的な方法等についての方針及び現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきである(最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 エ原告らの主張について原告らは、いったん最低限度の生活の需要を満たすために必要として設定された保護基準を引き下げることは原則として許されず(制度後退禁止原則)、被告の側で正当な理由を主張立証しない限り、裁量権の逸脱濫用が認められ、憲法25条を受けて定められた法1条、3条、8条2項及び56条並びに社会権規約2条1項、9条及び11条に違反して違法となると主張する。 しかし、法3条及び8条2項の規定により、保護基準が最低限度の生活需要を満たしつつこれを超えないものでなければならないことからすれば、一度設定した保護基準であっても、その後の社会経済情勢の変化等によって、これを減額することも想定されているというべきである。 また、社会権規約9条は、締約国において、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、国が前記の権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは、社会権規約2条1項が締約国において「立法措置その他のす 保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは、社会権規約2条1項が締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」こと を求めていることからも明らかである(最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・集民156号271頁参照)。 以上によれば、原告らが主張する制度後退禁止原則や社会権規約等は、生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権を制約するものということはできない。 原告らは、法8条2項及び9条に定められた法定考慮事項を考慮しなければならず、国の財政事情や国民感情等の生活外的要素を「+α」ではない最低生活の設定の場面で考慮することは許されないと主張する。 しかし、前記のとおり、法8条2項にいう最低限度の生活は抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断・決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。この政策的判断を行うには、法8条2項及び9条に定められた事項以外にも、経済的・社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係を考察するための基礎となる事項や、それに基づく政策的判断に係る事項などを考慮することが当然に予定されているというべきであり、厚生労働大臣が原告らのいう生活外的要素を考慮することが許されないということはできない。 ⑵ デフレ調整の適否についてア厚生労働大臣が どを考慮することが当然に予定されているというべきであり、厚生労働大臣が原告らのいう生活外的要素を考慮することが許されないということはできない。 ⑵ デフレ調整の適否についてア厚生労働大臣がデフレ調整の判断に至った理由認定事実⑹イのとおり、厚生労働大臣は、平成19年報告書において、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされ、その上、平成20年以降、賃金、物価及び家計消費が下落する経済情勢にありながらも、生活扶助基準の減額改定が行われずに据え置かれてきた結 果、一般国民との均衡は大きく崩れた状況にあると判断し、平成20年以降の経済動向は、一般国民の消費水準が下落する一方、デフレ傾向にもかかわらず基準が据え置かれたことによって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に引き上げられたと評価して、平成20年以降の物価を生活扶助基準に反映させることによって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことによる一般国民との間の不均衡を是正するためにデフレ調整を行うこととした。 そして、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価の動きを把握するに当たり、総務省CPIのうち、生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いて平成20年から平成23年までの物価下落率を算定し、その統計上の数値-4.78%が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との不均衡を是正するのに相当なものと評価し、その数値分を減額する改定を行った。 厚生労働大臣がデフレ調整を行った上記判断の過程及び手続について、従前の審議会等における検証結果や本件保護基準改定に至るまでの社会経済情勢及びその指標となる統計の数値等の認定事実に照らして、過誤、欠落があるとは直ちには認められない。以下、原告 及び手続について、従前の審議会等における検証結果や本件保護基準改定に至るまでの社会経済情勢及びその指標となる統計の数値等の認定事実に照らして、過誤、欠落があるとは直ちには認められない。以下、原告らが厚生労働大臣のデフレ調整の判断の過程及び手続に過誤、欠落があると主張する点につき、検討する。 イ保護基準改定について専門家による検討が不可欠であるか原告らは、法8条1項の立法過程において、厚生(労働)大臣が保護基準を定めるにあたっては専門家による審議会の検討を経て、これに基づいて決定することが当然の前提とされ、かかる専門家の判断を必ず踏まえることによって、厚生(労働)大臣の裁量判断の正当性が根拠づけられるものとされていたこと、その後、現に保護基準の改定は専門家からなる審議会の検討結果を踏まえて行われてきたことなどからすれば、基準部会等の 専門家からなる審議会の検討を踏まえることは処分基準に準じる確立した行政慣行となっていたものであり、デフレ調整は基準部会の検討を踏まえることなく行われているから、手続面からみて裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たると主張する。 しかしながら、生活扶助基準の設定、改定において、基準部会等の専門機関の意見を聴くことは法律上の要件とされていない。実際、厚生労働大臣は、審議会等による定期的な検証が行われた場合(平成16年検証、平成19年検証及び平成25年検証)以外の保護基準の改定については、審議会等の専門機関に諮ることなく行っており、そのいずれにおいても、厚生労働大臣が、その当時の社会経済情勢等の諸般の事情を総合的に勘案の上、判断している。 したがって、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、専門機関の検証等を経ることが不可欠であるとはいえず、原告らの主張は採用できない。 ウ生活扶助基準の改定 合的に勘案の上、判断している。 したがって、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、専門機関の検証等を経ることが不可欠であるとはいえず、原告らの主張は採用できない。 ウ生活扶助基準の改定に当たり物価を考慮することが許されないか原告らは、水準均衡方式にいう水準均衡は、生活扶助基準と消費実態の均衡を意味しているところ、物価や賃金は、消費に大きな影響は持つが消費実態そのものではないので、水準均衡方式において物価を本格的に考慮することは許されず、むしろ物価の本格的考慮を許さない水準均衡方式が処分基準に準じる確立した行政慣行となっているから、物価を本格的に考慮したデフレ調整は、確立した行政慣行を逸脱していると主張する。 しかし、保護基準の設定、改定については、厚生労働大臣に裁量権が認められており、改定の方式についても法令上の定めはなく(前記のとおり、水準均衡方式が導入される前は、マーケットバスケット方式、エンゲル方式、格差縮小方式が採用されていた。認定事実⑴)、水準均衡方式についても、法令上のものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用 している事実上の改定指針にすぎない。 また、厚生労働大臣は、水準均衡方式を用いた改定でも、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出予測値及び実績値)のみをもって改定率を算定しておらず、消費以外の要素も含めた経済動向や社会情勢等を総合的に勘案して生活扶助基準の水準を改定してきたのであって(認定事実⑵ウ)、厚生労働大臣が、消費以外の指標を用いて改定を行うことを妨げるものではない。 以上のとおり、物価の本格的考慮を許さない水準均衡方式が処分基準に準じる確立した行政慣行となっているとは認められないので、原告らの主張はその前提を欠くというべきである。 エデフレ調整が政治的意図に基づいて り、物価の本格的考慮を許さない水準均衡方式が処分基準に準じる確立した行政慣行となっているとは認められないので、原告らの主張はその前提を欠くというべきである。 エデフレ調整が政治的意図に基づいて行われたものか原告らは、本件保護基準改定に係る生活扶助基準の見直しは、自民党の公約を実現するという政治的意図を考慮して行われたものであり、行政機関がバイアスのかかった考え方により結論を先取りして、本来必要な調査・検討を怠ったものであるとして、判断過程に瑕疵があり、裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められると主張する。 証拠によれば、平成24年12月16日の総選挙において自民党が「生活保護費(給付水準の原則1割カット)の適正化」を選挙公約としていたこと(甲A35)、当時の厚生労働大臣は、同月27日及び28日の記者会見において、生活保護水準の10%引下げについて、「下げないということはないと思います。」、「当然自民党から選出をされた大臣としては、ある程度の制約は受けると思います。」、「確かに、自民党の公約には書いてある部分はありますが、だからと言って、現状をしっかりと把握せずに、そのまま進めるというわけにはいきませんので、そこはしっかりと現状把握しながらやはりちゃんと検討会の方の御意見もあるわけですから、そこを踏まえて、最終的には適切に判断してまいりたいと思っています。」などと発言 したこと(甲A37、38)、基準部会が平成25年報告書をとりまとめる平成25年1月18日より前に厚生労働省の幹部が自民党の生活保護プロジェクトチームの座長であった世耕弘成官房副長官に対し、デフレ調整と2分の1処理を前提とした文書を示して説明をしていたこと(甲A96の3、97、98)、厚生労働省のデフレ調整を含んだ平成25年度予算政府案は、平成25年1月2 世耕弘成官房副長官に対し、デフレ調整と2分の1処理を前提とした文書を示して説明をしていたこと(甲A96の3、97、98)、厚生労働省のデフレ調整を含んだ平成25年度予算政府案は、平成25年1月29日に閣議決定されたこと(乙A46)の各事実が認められる。 上記各事実によれば、厚生労働大臣は、自民党の選挙公約があるとしても、生活扶助基準の見直しについては、必要性を把握した上で進める姿勢を明らかにしているのであって、厚生労働大臣の言動等をもって本件保護基準改定にバイアスがかかっているとか、結論を先取りして必要な調査を怠ったものであるということはできない。また、上記各事実からは、基準部会の平成25年報告書の取りまとめの作業と並行して厚生労働省におけるデフレ調整の検討が進められていた事実が認められるものの、第11回部会以降、平成25年検証において水準の妥当性の評価、検証を行わないこととなったことからすれば(認定事実⑸イb)、厚生労働省において平成19年検証の結果やその後の社会経済情勢を踏まえて、水準の調整の検討を平成25年報告書の取りまとめ作業と別に進めることは不自然なものとはいえず、そのような検討をすることが妨げられるものではない。原告らは、デフレ調整が必要なのであれば、平成25年検証の議論の俎上に載せるべきであったとも主張するが、基準部会の役割は、生活扶助基準の妥当性の検証にあり、現に厚生労働大臣が行う政策について基準部会の了承を得なければならないものではない。そうすると、厚生労働大臣が意図的にデフレ調整について基準部会に諮らずに政治的意図をもってこれを行ったということはできない。 オ平成20年を比較の起点としたことについて 原告らは、厚生労働大臣が比較の起点(期首)として選んだ平成20年は、原油価格の高騰により著しい をもってこれを行ったということはできない。 オ平成20年を比較の起点としたことについて 原告らは、厚生労働大臣が比較の起点(期首)として選んだ平成20年は、原油価格の高騰により著しい物価高騰に見舞われていた年であり、厚生労働大臣は、生活扶助費削減の結論を導くため恣意的に、平成20年を起点として選択した、平成20年度以降消費の動向を考慮した改定を行っていないことを理由として平成20年をデフレ調整の起点とするのであれば、経済動向を反映した最後の保護基準改定は平成19年度であるから、平成19年をデフレ調整の起点とすべきであると主張する。 しかしながら、デフレ調整を行う上で、どの時点を起点とするかは、厚生労働大臣の合理的な裁量に委ねられた事柄であり、他に取り得る起点が考えられることをもって、厚生労働大臣の判断の過程に過誤や欠落があるということはできない。厚生労働大臣が、デフレ調整を行うこととした理由は、平成19年報告書において、生活扶助基準の水準が一般低所得者世帯の消費実態と比較して高いとされ、その上、平成20年9月の世界金融危機以降、賃金、物価及び家計収支が落ち込む経済情勢の中で、一般国民の消費水準等が下落する一方で、生活扶助基準については減額改定が行われないまま据え置かれてきた結果、一般国民との均衡が大きく崩れた状況にあると判断し、平成20年以降の経済動向をみると、デフレ傾向にもかかわらず、平成20年以降生活扶助基準が据え置かれたことによって、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的に増加したと評価し、これによる生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るためであったことからすれば、物価変動を算定する起点を平成20年としたことはデフレ調整の理由に沿うものといえ、厚生労働大臣の上記判断の過程に、過誤、欠落があ 世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るためであったことからすれば、物価変動を算定する起点を平成20年としたことはデフレ調整の理由に沿うものといえ、厚生労働大臣の上記判断の過程に、過誤、欠落があるとは認められない。 また、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1%を超える上昇をしているものの(甲A95)、平成20年以降の経済情勢に加え、平成19年報告書において生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実 態と比較して高い(標準世帯である夫婦子1人世帯において基準額が生活扶助相当支出額よりも約1.1%高い)とされていたことに照らすと、平成19年から平成20年にかけての消費者物価指数の上昇をもって、平成20年を起点とした厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるとはいえない。 なお、仮に平成19年を起点として、平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率を試算すると-4.60%であり、平成20年を起点とした場合の変化率(-4.78%)との差は0.18%にとどまっており(甲A212、乙A27、100、弁論の全趣旨)、平成20年を起点としたことが意図的であるとの原告らの主張は当たらない。 カ生活扶助相当CPIの国際的な基準における妥当性原告らは、生活扶助相当CPIはA教授の意見書(甲120)にいう国際規準を逸脱しており、消費者物価指数とはいえず、その数値(-4.78%)をそのまま実際の政策に使うことは許されず、その計算結果は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものであると主張する。 これに対し、被告らは、デフレ調整において用いた生活扶助相当CPIは、いずれも消費者物価指数マニュアルに掲載された算式であるロウ指数であり、消費者物価指数マニュアルに掲載されている算式であること自体をもっ し、被告らは、デフレ調整において用いた生活扶助相当CPIは、いずれも消費者物価指数マニュアルに掲載された算式であるロウ指数であり、消費者物価指数マニュアルに掲載されている算式であること自体をもって、国際的な基準であると主張する。 生活扶助相当CPIの指数算式とロウ指数証拠によれば、消費者物価指数を計算する方法を評価する基準は複数存在するが、現在までのところ、唯一無二の最良な算式というものは存在しないこと(乙A94)、消費者物価指数マニュアルは、日本を含めた主要国の物価指数作成当局において消費者物価指数を作成する際に用いられているものであり、その位置づけは、「統計機関が消費者物価指数 (CPI)を作成するに際しての模範的慣行として支持」されているもので、手引書として、「各国における関連統計の作成者を支援すること」を主たる目的として作成されたものであること、同マニュアルにロウ指数が記載されていること(甲A130)の各事実が認められる。 ロウ指数とは、比較される時点間において、一般に「買い物かご」と言われるある一定量の数量を購入するために要する全費用の割合の変化を示した指数であり、0時点とt時点の物価を比較する際に、0時点を1とした場合のt時点の物価が、以下の①のような定義式で表すことのできる物価指数をいう。数量を計測する時点bはウエイト参照時点であり、物価を比較する0時点及びt時点と異なることが許容されている。 P=∑pitqibi∈I∑pi0qibi∈I①平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIの算式は次のとおりである。 P20=∑pi20qi i∈I∑pi22qi i∈I②P23=∑p の生活扶助相当CPIの算式は次のとおりである。 P20=∑pi20qi i∈I∑pi22qi i∈I②P23=∑pi23qi i∈I∑pi22qi i∈I③そして、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIの算式は次のとおりである。 P=∑pi23qi i∈I∑pi20qi i∈I④(以上につき、乙A94)以上のとおり、上記の②から④までの式における生活扶助相当CPIは、いずれも一定の買い物かごを購入するのに必要な全費用の変化を表したものであり、ロウ指数の定義式①に合致する指数であり、ロウ指数 であると認めることができる。 指数の対象品目についてもっとも、平成20年の生活扶助相当CPIは485品目、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目の価格指数のデータを用いて計算していることから、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIは、計算の基礎となった品目数が異なるため、一定の買い物かごを購入するのに必要な全費用の割合の変化を表したロウ指数といえるのかが問題となる。 物価指数の作成実務において、一部の品目の価格が観察できないという状況は、しばしば発生しており、「欠価格」の問題として知られている(乙A94)。総務省統計局の消費者物価指数の作成においては、欠価格の問題が生じた場合には、欠価格品目の価格動向について類似品目の価格動向と同一であったと仮定する方法が採用されている(乙A94、95)。平成20年の生活扶助相当CPIは、欠価格品目の価格を計算上除外して物価指数を算出しているところ、このことは、平成20年時点でも価格の観察できる品目の価格動向 法が採用されている(乙A94、95)。平成20年の生活扶助相当CPIは、欠価格品目の価格を計算上除外して物価指数を算出しているところ、このことは、平成20年時点でも価格の観察できる品目の価格動向と平成22年基準の欠価格品目の価格動向が同一であることを仮定したことと同値である(乙A93、94)。 この生活扶助相当CPIにおける欠価格の処理方法は、総務省統計局の定める処理手順とは異なっているものの、欠価格は、その性質から正解となる価格の動向は観察不能であり、どのような処理をするにしても「真の価格動向」との差は避けられないこと(乙A94)、平成20年の生活扶助相当CPIの算出において、欠価格品目は32品目であり、支出ウエイトにして約3%(204/6393)に過ぎず、その影響は限定的と考えられること(乙A94)からすれば、生活扶助相当CPIにおける欠価格の処理が不合理なものとはいえず、生活扶助相当CPIの指数算式は、概念的にはロウ指数であるということができる。 原告らの主張についてa 国際規準1、2から逸脱しているとの主張について原告らは、基準時(価格参照時点)は比較時より過去の時点でなければならない(国際規準1)、基準時(価格参照時点)の指数値は100でなければならない(国際規準2)との「国際規準」があるとし、生活扶助相当CPIは、「国際規準1」及び「国際規準2」から逸脱したものであると主張する。 しかしながら、消費者物価指数マニュアルに、基準時点(価格参照時点)を比較時点よりも過去の時点としなければならないことを示す記載はなく、他方で、統計学の基礎的な教科書に、基準時(価格参照時点)は、比較時よりも新しい時点とすることも可能である旨の記載がされており(乙A60)、原告らの主張する「国際規準1」があることを認めるべき く、他方で、統計学の基礎的な教科書に、基準時(価格参照時点)は、比較時よりも新しい時点とすることも可能である旨の記載がされており(乙A60)、原告らの主張する「国際規準1」があることを認めるべき確たる証拠はない。 次に、指数参照時点とは、その時点の指数の値が100とされる時点にすぎないから、任意の時点に設定でき、基準時点(価格参照時点)の指数値が100でなければならない(価格参照時点と指数参照時点が一致しなければならない)との「国際規準2」があるとはいえない。 b 国際規準3、4からの逸脱、接続を用いていないこと及び生活扶助相当CPIはロウ指数ではないとの主張について原告らは、①「マーケットバスケット方式によって消費者物価指数を作成しなければならない(国際規準3)」、「国際規準3の必然的結果として、基準時と比較時の対象とする品目は完全に同一で対応していなければならない(国際規準4)」とした上で、生活扶助相当CPIは平成20年の品目数と平成23年の品目数が同一ではないので、国際規準3、4から逸脱している旨、②マーケットバスケット方式に合致させるには、廃止品目を排除せずに平成17年を基準とする指数系列 と平成22年を基準とする指数系列を作成して接続を行う必要があるが、生活扶助相当CPIは接続処理を行っていない旨、③ロウ指数は基準時と比較時の物価を固定買い物かご方式で比較するものであるところ、上記のとおり生活扶助相当CPIは平成20年の品目数と平成23年の品目数が同一ではないから「固定買い物かご指数」(ロウ指数)ではない旨主張する。 しかしながら、欠価格品目を計算上除外して指数を算出することは、欠価格品目を他のすべての品目の物価の動きと同じものと仮定することを意味するものであるところ、このような欠価格品目の補完 旨主張する。 しかしながら、欠価格品目を計算上除外して指数を算出することは、欠価格品目を他のすべての品目の物価の動きと同じものと仮定することを意味するものであるところ、このような欠価格品目の補完方法が不合理なものでなく、生活扶助相当CPIはロウ指数であると評価できることは上記のとおりであり、国際規準3及び4に反するとか、接続をしなければ物価変動を観察することはできないとの原告らの主張は当たらない。 c 平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは、異なる集団を比較するものであるとの主張について原告らは、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは、品目数及び平均の性質(前者が調和平均、後者が相加平均)を異にするため、別の集団であり、両者を比較することは統計学的に意味がないと主張する。 証拠(乙A94)によれば、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIについては、基準時(価格を比較する基準となる時点。)の置き方を変えることによって、二つの指数に分解して表現することができる。具体的には、基準時を平成22年として、平成20年の物価指数(平成20年を比較時としたパーシェ指数の逆数)、平成23年の物価指数(平成23年を比較時点としたラスパイレス指数)を算出し、平成20年から平成23年までの物価変動率を計算したも のと分解して表現することができる。このように二つの指数に分解して表現できることは、それが一定の買い物かごを購入するために必要な全費用の割合の変化を表したロウ指数であることを否定するものではなく、平均の質が異なる指数同士を比較したものであるという原告らの主張には理由がない。 d 小括以上によれば、平成20年を基準とした平成23年の生活扶助相当CPIは 定するものではなく、平均の質が異なる指数同士を比較したものであるという原告らの主張には理由がない。 d 小括以上によれば、平成20年を基準とした平成23年の生活扶助相当CPIは、概念的には、消費者物価マニュアルに記載されたロウ指数であるといえ、生活扶助相当CPIが国際的な基準を逸脱するものであるとの原告らの主張には理由がない。 キ下落率が大きくなる計算方法を採用したとの主張について原告らは、①平成20年から平成22年にかけての生活扶助相当CPIの変化率は、固定基準年方式パーシェ指数と同様の変化率を示すが、同指数は、物価が持続的に下落する局面において数量が大幅に増加するようなIT関連財などが存在する場合、基準時点から時間が経過するほどかい離が大きくなるという性質を持っており、厚生労働大臣は、これを知りながら下落率が大きくなる計算方法を採用した、②その結果、物価が持続的に大きく下落したノートパソコンとテレビの影響が突出して生じており、生活保護受給世帯がこれらの物価下落の恩恵を受ける割合が極めて小さいから、生活扶助相当CPIの下落率は、保護利用世帯の可処分所得の実質的増加を示すものとはいえず、統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものであると主張する。 平成20年の生活扶助相当CPIは、平成22年に見直されたウエイトに基づくものであるから、パーシェ式(比較する時点の品目を固定して、それ以前の物価を算定する方式)に該当するといえ、下方バイアスが生ずるという特徴があるところ(弁論の全趣旨)、物価指数を算定する上で唯一 無二の算式は存在しない中で、指数算式の特徴をもって、その算式が誤りであるということはできない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関す 算定する上で唯一 無二の算式は存在しない中で、指数算式の特徴をもって、その算式が誤りであるということはできない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、例えば、生活保護受給世帯のパソコンの普及率は4割弱、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっており(乙A36)、生活保護受給世帯においても相当程度電化製品を所持して生活を営んでいるのであって、生活扶助で購入することも予想されるから、生活扶助相当CPIの算出にあたり電化製品を算出品目から除外しないで算定したことに誤りがあるとはいえない。そして、生活扶助相当CPIにおいて、一定の品目が除外され、除外されなかった品目の物価の下落率が大きいために、総務省CPIに比べて生活扶助相当CPIの方の下落率が大きくなるとしても、それは、生活扶助相当CPIの算定において、生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目を除いた結果であるから、そのことをもって、改定率の設定に当たり生活扶助相当CPIを選択した厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるということはできない。 ク生活保護受給世帯の消費実態(ウエイト)に基づいていないとの主張について生活扶助相当CPIの算定には、一般国民の家計の収支状況を調査した家計調査に基づき作成された総務省から公表されている消費者物価指数のウエイトデータが用いられているところ、原告らは、生活保護受給世帯は、一般世帯よりも消費支出額の絶対額が低く、消費支出構造にも食料や光熱・水道の支出割合が明らかに高く、教養娯楽の項目の支出が少ないといった一般世帯とは異なる いるところ、原告らは、生活保護受給世帯は、一般世帯よりも消費支出額の絶対額が低く、消費支出構造にも食料や光熱・水道の支出割合が明らかに高く、教養娯楽の項目の支出が少ないといった一般世帯とは異なる特徴があるため、生活扶助相当CPIのウエイト は、社会保障生計調査のデータによるべきであり、仮に、家計調査を使うとしても第1・十分位の消費構造を使うべきであったと主張する。 総務省統計局が実施している家計調査は、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。家計調査の調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮されており、選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている(以上につき、乙A89)。家計調査の結果は、一般国民の消費等の分析に広く用いられており、総務省から公表されている消費者物価指数、内閣府の「国民経済計算」、「景気動向指数」、経済産業省の「通商白書」等のほか、会社、研究所、労働組合等の民間においても利用されている(乙A90)。 これに対し、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護者の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で被保護者の家計収支の状況を調査する一般統計調査であり、社会保障生計調査の調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われ、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住 府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われ、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計される(乙A91)。 以上のように、家計調査は統計資料としての精度が高く、家計上の支出等の把握を目的としており、詳細な品目ごとのウエイトを把握することができるのに対し、社会保障生計調査は、サンプル数が必ずしも多くなく、詳細な品目ごとのウエイトは把握できないことなど一定の限界もあるとい え、家計調査及び社会保障生計調査それぞれの統計の目的、調査対象及び調査手法を踏まえると、総務省から公表されている消費者物価指数のウエイトデータを用いた厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落等があるとはいえない。また、家計調査を用いるとしても、第1・十分位におけるウエイトを使用すべきとの主張についても、生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正するというデフレ調整の目的からすれば、第1・十分位のウエイトではなく、消費者物価指数のウエイトデータを用いた厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるとはいえない。 ケ小括以上によれば、厚生労働大臣のデフレ調整に至る判断の手続及び過程につき、過誤、欠落は認められず、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められない。 ⑶ ゆがみ調整の適否についてア厚生労働大臣がゆがみ調整の判断に至った理由認定事実によれば、生活扶助基準の展開部分については、平成16年検証以降、一般低所得世帯の消費実態とかい離があることが指摘されていた。 すなわち、平成16年検証では、展開部分に関して、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないとの指摘がさ 所得世帯の消費実態とかい離があることが指摘されていた。 すなわち、平成16年検証では、展開部分に関して、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないとの指摘がされ、級地についても、地域差が縮小する傾向が認められたとして、今後級地制度全般について見直しを検討することが必要であるとされた。 また、平成19年検証では、展開部分について、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別に見ると、「20歳~39歳」及び「40歳~59歳」では生活扶助基準額が相対的にやや低めである一方、「70歳以上」では相対的にやや高めであるなど消費実態からかい離している旨、世帯人員別にみると、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる旨、地域別にみると、現行の級地制度 における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきているといえる旨指摘された。そして、平成25年検証は、平成19年検証の指摘を踏まえ、生活保護受給者間における実質的な公平を図る観点から、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」について検証、評価が行われたところ、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間にかい離が認められた。 厚生労働大臣がゆがみ調整の判断に至った理由は、平成25年検証の結果に基づき、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」に反映させることを手段として、生活扶助基準の展開部分を適正化して生活保護受給世帯間の公平を図るためであり、平成16年検証及び平成19年検証において見直しの必要性が指摘されていた経緯や、専門家から構成される基準部会が行った平成25年検証の結果に基づくも 正化して生活保護受給世帯間の公平を図るためであり、平成16年検証及び平成19年検証において見直しの必要性が指摘されていた経緯や、専門家から構成される基準部会が行った平成25年検証の結果に基づくものであることからすれば、その判断の過程及び手続に、過誤、欠落があるとは直ちには認められない。 以下、原告らの主張に基づき、上記のゆがみ調整に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等を検討する。 イ第1・十分位を比較対象としたことについて原告らは、基準部会が、第1・十分位を比較対象とした理由として挙げる①から⑥までの理由は、いずれも失当であり、仮に比較対象とするのであれば、第1・五分位等のもっと上の階層に設定すべきであったことからすれば、統計等の客観的数値等との合理的関連性を著しく欠くものであると主張する。 しかしながら、認定事実⑸イaのとおり、基準部会は、平成25年検証において、比較対象を第1・十分位とすることの妥当性について、複数回の部会において議論した上で、平成25年報告書において、検証結果に 関する留意事項として、全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合について、第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要であるとし、現実には第1・十分位の階層には保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要であるとの指摘をしつつも、理由①から⑥までにより第1・十分位を比較対象とすることが妥当であるとの結論に至ったも 護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要であるとの指摘をしつつも、理由①から⑥までにより第1・十分位を比較対象とすることが妥当であるとの結論に至ったものであるから、原告らが主張する他の分位を比較対象とすべきとの主張は、検証手法の当不当を指摘するものに過ぎず、第1・十分位を比較対象とした手法に過誤、欠落等があるとは認められない。 以下、個々の理由について述べる。 原告らは、理由①の「これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと」について、これまでの検証がすべて第1・十分位を比較対象としていた事実はないから、前提に事実誤認があると主張する。 しかしながら、生活扶助基準の妥当性については、格差縮小方式の導入のきっかけとなった、昭和39年中間報告では、第1・十分位と生活保護受給層との格差縮小を見込んだ改善を行うべきであるとされ(認定事実⑵ア)、また、格差縮小方式から水準均衡方式へ移行するきっかけとなった昭和58年意見具申では、当時の生活扶助基準は一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達していると評価し、大部分の国民が維持してきた生活様式が保たれる限界点である「変曲点」における収入分位が2.99-50分位(収入階級「50」分位のうち、「2.99」分位を指す。)とされ、そこでの生活扶助相当消費支出額と生活扶助基準 額との比較がされた(甲A115の1~3、乙A31)。 その後の平成15年中間取りまとめにおいても、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当であ 、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当であるとされている(認定事実⑶イ)。さらに、平成19年報告書においても、生活扶助基準の検証に当たり、第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達しており、第1・十分位の世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあるとして、第1・十分位の消費水準と比較により検証を行っている(認定事実⑷ウ)。 このように、生活扶助基準の妥当性の検証については、従前から一貫して、低所得世帯の消費実態に着目して行われてきていると認められるのであって、理由①のうち、「これまでの検証に倣い」との記載は、これまでの検証が低所得世帯の消費実態に着目して行われてきたことを指すものであるといえ、この理解に事実誤認があるとはいえない。 原告らは、理由②の「第1・十分位の平均消費水準が、中所得層の約6割に達していること」について、中位所得層である第3・五分位に相当する第5~6・十分位以下の階層のシェアは全体の3割以下に位置していることからすれば、第3・五分位層を全世帯の平均的階層と位置付けて比較対象とすること自体が誤りである、理由④の「全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの、高所得層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位層が減少しているわけではないこと」について、第1・十分位の占める位置が相対的に低下している ことを示しているのであるか を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位層が減少しているわけではないこと」について、第1・十分位の占める位置が相対的に低下している ことを示しているのであるから、むしろ第1・十分位を比較対象とすることが不適切であることを根拠づけるものであると主張する。 しかしながら、上記イのとおり、基準部会は、全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合について、第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあることから、今後もその動向に留意する必要があるとしながらも、平成25年検証において第1・十分位を比較対象とすることは妥当であると判断したのであり、その判断に事実誤認があるとはいえない。 原告らは、理由③の「必需的な耐久消費財について、第1・十分位層に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されていること」について、「平成22年家庭の生活実態及び生活意識に関する調査結果概要」(甲A63、乙A36)の社会的必需項目のうち、第3・五分位と比較した第1・十分位の普及率が90%を切る項目が全体(60項目)のうち3分の2(40項目)に及んでいることからすれば、事実誤認があると主張する。 しかしながら、原告らは、上記調査項目の60項目すべてが社会的必需項目であることを前提としているのに対し、基準部会は、「2011年社会的必需品調査」(甲A104)において、回答者の50%以上が「必要であり、入手することができるべきである」と答えた16項目を社会的必需品とし、うち15項目について第1・十分位と第3・五分位の普及率を比較した結果、必需的な耐久消費財について、第1・十分位における普及状況は中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足 た16項目を社会的必需品とし、うち15項目について第1・十分位と第3・五分位の普及率を比較した結果、必需的な耐久消費財について、第1・十分位における普及状況は中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されているとの判断に至ったものと認められる(甲A63、103、乙A36)のであって、その判断に事実誤認があるとは認められない。 原告らは、理由⑤の「第1・十分位層に属する世帯の大部分はOEC Dの基準では相対的貧困線以下にあること」と理由⑥の「第1・十分位と第2・十分位との間に大きく消費が変化」していることは、いずれもむしろ第1・十分位を比較対象とすることが不適切であることを裏付けるものであると主張する。 しかしながら、平成25年検証が一般低所得世帯の消費実態による指数と生活扶助基準による指数との間の乖かい離を相対的に調整するものであり、世帯構成などが異なる生活保護受給者間において実質的な給付水準の均衡を図ることを目的とするものであることに照らせば、生活扶助受給世帯と消費構造が同質的な一般低所得世帯を設定することは合理性があり、理由⑤及び⑥を踏まえて、第1・十分位を設定したことに誤りがあるとはいえない。 したがって、基準部会が第1・十分位を比較対象としたことが、統計等の客観的数値等との合理的関連性を著しく欠くとする原告らの主張は、いずれも採用できない。 ウ比較対象に生活保護受給世帯と考えられるサンプルを含めたことについて原告らは、平成25年検証は、生活保護受給世帯との比較対象である第1・十分位の世帯に生活保護受給世帯(と考えられる世帯)を含めて比較しているから、統計学上の正当性が存在しないと主張する。 しかし、認定事実⑸イのとおり、平成25年検証は、生活扶助基準額に一般低所得世帯の消費実態が適切に反映されているかを検 れる世帯)を含めて比較しているから、統計学上の正当性が存在しないと主張する。 しかし、認定事実⑸イのとおり、平成25年検証は、生活扶助基準額に一般低所得世帯の消費実態が適切に反映されているかを検証するため、平成21年の全消調査の第1・十分位のデータを使用し、その消費実態の年齢階級、世帯人員、級地別の指数と、それらの各世帯が実際の当時の基準により生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の年齢階級、世帯人員、級地別の指数を比較したものである。すなわち、ここで「第1・十分位の世帯の消費支出」と比較している対象は、法及び告示で定められた当時の 基準による生活扶助基準額であり、実際の生活保護受給世帯の消費支出額を比較対象としたものではない。したがって、原告らの第1・十分位の世帯と生活保護受給世帯とを比較したものであることを前提とした主張は当たらない。 エ回帰分析による消費支出額の推計とゆがみ調整の方法について原告らは、A教授の意見書(甲A124)等を根拠に、平成25年検証で用いられたデータや回帰分析の手法について、以下の問題点を指摘するので検討する。 回帰モデルの決定係数について原告らは、平成25年検証における回帰モデルの決定係数が低いとし、ゆがみ調整は、精度が著しく低い回帰分析の結果に基づいてされたものであり、統計等の客観的数値等との合理的関連性を欠くものであると主張する。 回帰分析における決定係数は、推定した回帰モデルがどれくらいデータを説明しているのか、当てはまりの良さを示す指標であり、0から1の値をとり、0の値は、「完全なはずれ」(説明変数に被説明変数の変動を説明する力が全くないこと)、1の値は、「完全な当てはまり」(説明変数が被説明変数の変動を完全に説明できていること)を意味する。(乙A67、68)決定係 なはずれ」(説明変数に被説明変数の変動を説明する力が全くないこと)、1の値は、「完全な当てはまり」(説明変数が被説明変数の変動を完全に説明できていること)を意味する。(乙A67、68)決定係数について、どの程度の値であれば実態を近似したものとして妥当と評価されるかについては一般的な基準は存在せず、マクロ経済分析などにおける時系列データの分析の場合では、決定係数が0.8くらいであれば「あてはまりはまあまあ良い」と考えられ、0.9以上であれば「良い」と考えられ、0.5以下である場合は、「あまり良くない」と考えられるものの、クロス・セクション・データ分析の場合は、0. 3くらいしか得られない場合も多く、0.5であれば「極めて良い」と 判断される。(乙A67、68)平成25年検証においては、平成21年の全消調査の個票データである個々の家計のデータ(クロス・セクション・データと呼ばれるものである。乙A67。)を用いた世帯の消費を被説明変数とする回帰分析を行ったものである。その回帰分析(年齢体系の第1類費)における決定係数の値は、世帯の年間収入を基にしたデータ①については「0.28」、世帯員1人当たりの年間収入を基にしたデータ②については「0.36」であると認められるところ(乙A6)、上記のクロス・セクション・データにおける決定係数の評価を前提とすると、その値を採用することが統計学的に誤りといえるような極端に低いものとはいえず、統計等の客観的な数値との合理的関連性を欠くものとはいえない。 回帰係数のt検定について原告らは、「回帰係数のt検定」を行った場合、回帰係数に有意な差が認められなかった説明変数はそもそも被説明変数を説明する変数として不要であるため、当該説明変数を除いて改めて回帰モデルの推定を行うはずであるところ、平成 のt検定」を行った場合、回帰係数に有意な差が認められなかった説明変数はそもそも被説明変数を説明する変数として不要であるため、当該説明変数を除いて改めて回帰モデルの推定を行うはずであるところ、平成25年検証の回帰分析においてはそのような再分析は行われていないという致命的な欠陥がある旨主張する。 回帰分析における「t検定」は、「説明変数の被説明変数への真の効果がゼロである」という帰無仮説を、t値(推定係数をその標準誤差で割ることで求められる。)を用いて一定の有意水準(帰無仮説を棄却する基準となる確率のことで、5%や1%といった値がよく使われる。この有意水準の値が低いほど、帰無仮説が正しいことを根拠づけることとなる。)を設定した上で検定し、これが否定されることで、「説明変数の被説明変数への効果がある(0ではない)」という対立仮説を採択するものである(乙A61、弁論の全趣旨)。 帰無仮説の検証において、帰無仮説の下で期待された結果が生じなか った場合、その帰無仮説を「棄却する」といい、これは、反対の内容である対立仮説を受け入れることであり、これがt検定が目的とするところである。もっとも、帰無仮説が棄却されなかったからといって、帰無仮説が積極的に支持されたわけではなく、単に結果が帰無仮説と「矛盾はしない」ことがいわれただけで、帰無仮説が真であることを積極的に「証明」したわけではない。(乙A69)したがって、有意水準を5%とした場合にt検定によって帰無仮説が棄却されなかったとしても、その説明変数について、その有意性が0であるといえるものではなく、これが除去されなければ、その回帰分析が統計的に誤っているということはできない。 その他の問題について原告らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、①誤差項の分散均一性、②正規 ではなく、これが除去されなければ、その回帰分析が統計的に誤っているということはできない。 その他の問題について原告らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、①誤差項の分散均一性、②正規性及び③説明変数間の多重共線性など、統計的方法に課せられている仮定を満たしておく必要があるにもかかわらず、平成25年検証において、これらの仮定を満たしているか否か触れられていない旨主張する。また、原告らは、④厚生労働省が平成25年検証において通常行われるべき最小二乗法(OLS)による回帰分析を行ったか疑問である旨主張する。 前記①から③までの「仮定を満たしているか否か」といった検討は、t検定と同様、回帰分析結果について、事後的にその精度を検証するための統計的検定の手法である。しかしながら、上記各手法を用いなければ回帰分析の結果を採用し得ないといったような統計的知見は見当たらず、原告らの指摘する上記各手法による検討を経ていないことが、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調整が、統計等の客観的数値との合理的関連性を欠くことにはならない。 また、前記④について、部会資料2(甲A125)のイメージ図中に 「データの平均的傾向を最も偏りなく反映するという条件から、aとbが求まる。(最小二乗法の考え方)」と記載されていることからすれば、平成25年検証においては最小二乗法(OLS)が行われ、かつ、その内容は基準部会の委員に対して説明されているものと認められ、上記イメージ図は、回帰分析について簡略に説明するために、実際に行われた重回帰分析ではなく、単回帰分析のイメージ図を用いたものであり、そのイメージ図が厳密な正確性を欠くものであったとしても、それが故に直ちに判断過程に過誤、欠落があったということはできない。 オ 2分の1処理について原告らは 析のイメージ図を用いたものであり、そのイメージ図が厳密な正確性を欠くものであったとしても、それが故に直ちに判断過程に過誤、欠落があったということはできない。 オ 2分の1処理について原告らは、厚生労働大臣が、ゆがみ調整を行うにあたって、平成25年検証の結果の反映比率を2分の1にした(2分の1処理)ことは、手続面において、基準部会の検証結果を恣意的に改変したものである旨、内容面においても、2分の1処理をした方がしない場合よりも財政上の削減効果が得られる旨、平成25年報告書どおりであれば生活扶助費が上がるはずだった世帯の上げ幅を大幅に圧縮した旨、2分の1処理により、ゆがみの是正が半分にとどまり、ゆがみ調整の趣旨が没却された旨主張する。 しかしながら、平成25年検証結果をそのまま反映した場合には、大幅に減額される世帯があったこと(認定事実⑸イd)、平成25年報告書には、検証結果に関する留意事項として、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要があると明記されていたこと、生活扶助基準の展開のための指数については、平成25年検証において初めて詳細な分析が行われたものであり、平成25年検証において採られた手法が唯一のものということもできず、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められたこと、さらに、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的 に行われており、今後とも引き続き検証を行うことが見込まれること(以上につき、認定事実⑸イe)からすれば、ゆがみ調整を行うにあたって、平成25年報告書の反映比率を2分の1とした厚生労働大臣の判断に過誤、欠落があるとはいえない。 ⑷ ゆがみ調 見込まれること(以上につき、認定事実⑸イe)からすれば、ゆがみ調整を行うにあたって、平成25年報告書の反映比率を2分の1とした厚生労働大臣の判断に過誤、欠落があるとはいえない。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整とを併せて行ったことについて原告らは、①ゆがみ調整の基礎資料である平成21年の全消調査の個票データは、対象世帯の消費支出の実額が記載された生データであって、物価変動の影響を反映した統計値であるから、ゆがみ調整において物価は既に考慮されていることとなり、重ねて物価を本格的に考慮したデフレ調整を行うことは物価の二重評価となる旨、②基準部会では、絶対水準の検証とゆがみ調整とを一体的に行うこととされており、ゆがみ調整の中で水準検証を一体化して行ったから、ゆがみ調整と重ねてデフレ調整をすることは許されないなどと主張する。 しかしながら、①について、認定事実⑸イのとおり、ゆがみ調整は、全消調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の相違を示す「一般低所得世帯の消費実態による指数」を把握し、それを「生活扶助基準額による指数」に反映したものであり、個票データに消費支出が記載されているとしても、それは指数化されて年齢別、世帯人員別及び級地別の比較に用いられる以上、物価が考慮されていることにはならない。 また、認定事実⑸イbのとおり、基準部会は、平成25年検証における平成24年11月9日の第11回部会において、厚生労働省事務局が、年齢別、世帯人員別及び級地別の分析評価の結果を踏まえた上で水準検証を行うことを基本方針とすることの確認をした際、委員からこれに対して水準検証を行うことは困難である旨の意見が出され、その後、水準の妥当性について検証が行われることなく、平成25年報告書が取りまとめられるに至った事実か とすることの確認をした際、委員からこれに対して水準検証を行うことは困難である旨の意見が出され、その後、水準の妥当性について検証が行われることなく、平成25年報告書が取りまとめられるに至った事実からすれば、平成25年検証においては、水準の妥当性の検証は行われていな いのであって、平成25年検証においてゆがみ調整の中で水準の検証を一体的に行ったとの原告らの主張は採用できない。 ⑸ 本件保護基準改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるかについて原告らは、本件保護基準改定後の原告らの生活が最低限度の生活を維持するに足りないものであると主張し、証人C及び原告のうち1名は本件保護基準改定が原告らの生活に与えた影響等について、当法廷で証言、供述する。 しかし、法3条、8条2項にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断・決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するにあたっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的な判断を必要とするものであり、本件保護基準改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するにあたっては、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められ、本件保護基準改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査をすべきことは上記説示したとおりである。 そして、上記のような観 程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査をすべきことは上記説示したとおりである。 そして、上記のような観点から審査をした結果、ゆがみ調整及びデフレ調整について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められないことはこれまでに説示したとおりである。加えて、認定事実⑹エのとおり、本件保護基準改定による生活扶助基準額の増減率で見た世帯割合は、5から10%の減額となる世帯が25%、0から5%の減額となる世帯が71%、0から2%の増額となる世帯が3%となり、結局70%の世帯の見直し幅が物価の下落幅 を下回る結果となっており、9から10%の減額となる世帯は2%にとどまっていることなども考慮すると、本件保護基準改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められない。 また、原告らは、仮に本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用が認められないとしても、原告らの中には、高齢の要介護保護受給者が複数おり、これらの原告らは、介護給付については法の介護扶助として現物給付がされるとしても、介護保険の対象とはならない介護費用や支給限度額を超える介護費用は、その者の生活扶助費で賄うしかない状況にあるのに、処分行政庁である福祉事務所長が、上記原告らの事情を考慮せずに、本件保護基準改定に基づいて一律に本件保護変更処分を行ったことが、福祉事務所長の裁量権の範囲の逸脱又は濫用となると主張する。 しかしながら、本件保護基準改定は、生活扶助基準につきデフレ調整及びゆがみ調整を実施した見直しに伴うものであり、生活保護受給世帯すべてに共通する事由に基づくもの 囲の逸脱又は濫用となると主張する。 しかしながら、本件保護基準改定は、生活扶助基準につきデフレ調整及びゆがみ調整を実施した見直しに伴うものであり、生活保護受給世帯すべてに共通する事由に基づくものであるから、福祉事務所長において、個別の生活保護受給者の具体的な需要に応じて本件保護基準改定に基づく保護変更処分の要否を決めるべきものではない。したがって、福祉事務所長らが本件保護基準改定に基づいて本件保護変更処分を行うに際し、原告らの個別具体的な需要を考慮して保護変更の要否を判断しなかったことにつき、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められず、原告らの主張は採用できない。 3 争点2(処分理由提示義務違反の有無)について⑴ 法は、保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもってその決定を行い、書面をもって、これを被保護者に通知しなければならず、その通知書には決定の理由を付さなければならないこととされている(法25条2項、24条2項〔ただし、平成25年法律第104号による改正後は24条4項〕)。 また、行政庁は、不利益処分をする場合、原則として、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならず、不利益処分の形式が書面である場合には、理由の提示も書面によらなければならないこととされている(行政手続法14条1項、3項)。 一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであり、どの程度の記載をすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らして個別的に決定すべきである( 、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであり、どの程度の記載をすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らして個別的に決定すべきである(最高裁昭和36年(オ)第84号同38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁参照)。 ⑵ 本件保護基準改定による原告らに対する本件保護変更処分は、平成25年告示(乙A3)、平成26年告示(乙A29)及び平成27年告示(乙A88)(以下これらの告示を総称する場合に「平成25年告示等」という。)に基づいてされたものであり、本件保護変更処分のうちの平成25年告示に基づく処分の通知書には、保護変更理由として、「基準改定による」(甲Bア2、同イ2、同エ2、同オ2、同カ2、同キ2、同ク、ケ2、同コ2、同サ2、同シ2、同ス2)、又は「基準改定」(甲Cア2)と記載されている。 本件保護変更処分は、同決定より前の平成25年5月16日の時点等ですでに官報等により周知されていた平成25年告示等どおりの処分を行うものであり、本件保護変更処分の時点においてその内容は事実上確定していたといえるから、行政庁による恣意的な判断が介入するおそれはない。また、本件保護変更処分より前の前記年月日の時点で、平成25年告示等が官報等により周知されていたことに加え、本件保護変更処分の通知書の記載とそれ以前の通知書を見比べることによっても、本件保護変更処分の通知を受けた時点で、保護基準の改定により生活扶助支給額が減額されたことは理解可能であることからすれば、本件保護変更処分の通知書における理由の提示が被保 護者による不服申立ての便宜を損なうものではない。このように、本件保護変更処分の通知書における保護変更理由の記載は、当該決定にあたって理由を付さなければならないとする おける理由の提示が被保 護者による不服申立ての便宜を損なうものではない。このように、本件保護変更処分の通知書における保護変更理由の記載は、当該決定にあたって理由を付さなければならないとする法及び行政手続法の規定の趣旨に反するものではない。 ⑶ 以上によれば、本件保護変更処分の通知書における理由の提示は、処分の理由を付さなければならないとした法及び行政手続法の趣旨を没却するものではないから、当該理由の提示に、法25条2項、24条2項や行政手続法14条1項、同条3項に違反する理由不備の違法はないというべきである。 第7 結論以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 佐賀地方裁判所民事部 裁判長裁判官三井教匡 裁判官水野麻子 裁判官髙岡寛実

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