令和1(ネ)10069

裁判年月日・裁判所
令和2年6月24日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成29(ワ)38481
ファイル
hanrei-pdf-89568.txt

キーワード

判決文本文18,610 文字)

令和2年6月24日判決言渡令和元年(ネ)第10069号商標権に基づく差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第38481号)口頭弁論終結日令和2年3月11日判決 控訴人株式会社三京房 訴訟代理人弁護士櫻林正己上野達夫補佐人弁理士木村達矢 被控訴人株式会社筑摩書房 訴訟代理人弁護士亀井弘泰近藤美智子 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,別紙商品目録記載1の心理テスト質問用紙に「MMPI-1 性格検査」の標章を付し,同目録記載2の回答用紙(マークカード)に「MMPI-1 回答用紙」の標章を付し,これらの標章が付された心理テスト質問用紙,回答用紙(マークカード)を譲渡してはならない。 3 被控訴人は,心理検査の回答結果の解釈の結果を記載した書面に「MMPI-1 自動診断システム」の標章を付してはならない。 4 被控訴人は,心理検査の心理テスト質問用紙,回答用紙(マークカード),回答結果の解釈サービスに関する広告に,「MMPI-1性格検査」の標章を付して電磁的方法により提供してはならない。 5 被控訴人は,別紙商品目録記載1の心理テスト質問用紙,同目録記載2の回答用紙(マークカード)及び同目録記載3の自動診断システム(パソコン用ソフトウェア)を譲渡し,譲渡のために所持してはならない。 6 被控訴人は,別紙商品目録記載1の心理テスト質問用紙,同目録記載2の回答用紙(マ カード)及び同目録記載3の自動診断システム(パソコン用ソフトウェア)を譲渡し,譲渡のために所持してはならない。 6 被控訴人は,別紙商品目録記載1の心理テスト質問用紙,同目録記載2の回答用紙(マークカード)及び同目録記載3の自動診断システム(パソコン用ソフトウェア)をいずれも廃棄せよ。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。) 1 事案の要旨本件は,指定役務を第44類「心理検査」とする「MMPI」の標準文字からなる商標(登録第5665842号。以下「本件商標」という。)の商標権(以下「本件商標権」という。)を有する控訴人が,被控訴人が別紙商品目録記載1の心理テスト質問用紙(以下「被告質問用紙」という。),同目録記載2の回答用紙(マークカード)(以下「被告回答用紙」という。)及び同目録記載3の自動診断システム(パソコン用ソフトウェア)(以下「被告ソフト」といい,これらを併せて「被告各商品」という。),心理検査の回答結果の診断解釈サービス(以下「被告サービス」という。)に係る診断結果を記載した書面(以下「被告診断結果書」という。)並びに被控訴人の管理,運営するウェブサイト(以下「被告ウェブサイト」という。)上の被告質問用紙,被告回答用紙及び被告サービスに関する広告に別紙被告標章目録記載1ないし5の各標章(以下「被告各標章」と総称し,それぞれを番号に応じて「被告標章1」などという。)を付し,被告各商品を販売する行為等が本件商標権の侵害(商 標法(以下「法」という。)37条1号)又は間接侵害(同条4号又は6号)に該当する旨主張して,被控訴人に対し,法36条1項及び2項に基づき,被告各商品の譲渡等の差止め及び廃棄を求める事案である。 原審は,被告各標章は,いずれも本件商標の指定役務である心理検査又はこれに 該当する旨主張して,被控訴人に対し,法36条1項及び2項に基づき,被告各商品の譲渡等の差止め及び廃棄を求める事案である。 原審は,被告各標章は,いずれも本件商標の指定役務である心理検査又はこれに類似する役務ないし商品の「質」を,普通に用いられる方法で表示するものであるから,法26条1項3号に該当し,本件商標権の効力が及ばないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。 控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。 2 前提事実以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決2頁22行目から3頁2行目までを次のとおり改める。 「 控訴人は,平成25年7月18日,本件商標の商標登録出願をし,平成26年3月20日,その登録査定を受け,同年4月25日,本件商標権の設定登録(以下「本件商標登録」という場合がある。)を受けた(甲146,147)。」⑵ 原判決3頁9行目の「質問項目」を「英文の質問項目」と,同頁12行目の「ここにいう」から15行目の「ことをいう。」までを「ここにいう標準化とは,米国の社会,文化,風土,国民性等に基づいて作成された本件心理検査について,各国の社会,文化,風土,国民性等に合わせて英文の質問項目の翻訳等をした上で,当該国内での一定数のサンプル検査を行い,データを集積して,分析・解釈し,当該国向けの測定値(得点)を解析する尺度・判定基準等を作成することをいう。」と改める。 ⑶ 原判決3頁25行目の「別紙目録記載1」から4頁3行目の「という。)並びに」までを「被告各商品及び」と,同頁7行目の「(以下「被告サービス」という。)」を「(被告サービス)」と改める。 ⑷ 原判決4頁8行目から9行目にかけての「「MMPI-1」は,」の次に「本 までを「被告各商品及び」と,同頁7行目の「(以下「被告サービス」という。)」を「(被告サービス)」と改める。 ⑷ 原判決4頁8行目から9行目にかけての「「MMPI-1」は,」の次に「本件心理検査について」を加える。 ⑸ 原判決4頁12行目の「被告質問用紙」から13行目の「という。),」までを「別紙被告標章目録記載1のとおり,被告質問用紙の表紙上部には,明朝体様の大きめのフォントで「MMPI-1 性格検査」と表示された被告標章1が記載され,」と改める。 ⑹ 原判決4頁16行目の「被告回答用紙」から19行目の「という。),」までを「別紙被告標章目録記載2のとおり,被告回答用紙は,大半がマークをする回答部分であるが,左側に「ファイル番号」,「年令」,「性別」,「名前」等を記載する欄があり,回答部分の枠外上部右寄りに,他の記載に比較して若干大きめのゴシック体様で「MMPI-1 回答用紙」と表示された被告標章2が記載され,」と改める。 ⑺ 原判決4頁22行目の「「MMPI-1」から24行目の「いう。),」までを「別紙被告標章目録記載3のとおり,他の記載に比較して少し大きめの明朝体様の「MMPI-1性格検査」と表示された被告標章3の記載があり,」と改める。 ⑻ 原判決5頁1行目の「被告サービス」から4行目の「という。」までを「別紙被告標章目録記載4のとおり,被控訴人が被告サービスにおいて顧客に提供する被告診断結果書の1枚目の左上には,他の記載に比較して少し大きめのゴシック体様で「MMPI-1自動診断システム」と表示された被告標章4の記載がある。」と改める。 ⑼ 原判決5頁6行目の「「病院での」から10行目の「という。)。」までを「別紙被告標章目録記載5のとおり,「病院での診察,教員・公務員採用試験,職場でのストレスチェックには がある。」と改める。 ⑼ 原判決5頁6行目の「「病院での」から10行目の「という。)。」までを「別紙被告標章目録記載5のとおり,「病院での診察,教員・公務員採用試験,職場でのストレスチェックにはこちら」との見出しの下に,ゴシック体様で「MMPI-1性格検査」と表示された被告標章5の記載がある。」と改める。 ⑽ 原判決5頁11行目から14行目までを削る。 3 争点⑴ 本件商標と被告各標章の類否(争点1)⑵ 被控訴人の行為のみなし侵害行為該当性(争点2)⑶ 被告各標章の法26条1項3号該当性(争点3-1)⑷ 被告各標章の法26条1項4号該当性(争点3-2)⑸ 被告各標章の法26条1項6号該当性(争点3-3)⑹ 無効の抗弁の成否(争点4)争点4-1ないし4-4については,原判決5頁23行目から6頁1行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件商標と被告各標章の類否)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の1記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決6頁5行目の「被告各標章のうち,」を「ア被告各標章のうち,」と改める。 ⑵ 原判決6頁12行目から13行目までを次のとおり改める。 「イ以上によれば,被告各標章から「MMPI」の文字部分を要部として抽出し,これを本件商標と比較し,被告各標章と本件商標の類否を判断すべきである。 そして,本件商標と被告各標章の「MMPI」の文字部分は,外観,称呼及び観念が共通することからすると,本件商標と被告各標章が本件商標の指定役務「心理検査」に使用された場合には,その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,被告各標章は本件商標に類似する商 することからすると,本件商標と被告各標章が本件商標の指定役務「心理検査」に使用された場合には,その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから,被告各標章は本件商標に類似する商標である。」⑶ 原判決6頁17行目の「ないから,」の後に「要部として抽出することは できず,」を加える。 2 争点2(被控訴人の行為のみなし侵害行為該当性)について以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の2記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決8頁3行目及び7行目の各「引き渡し,又は譲渡若しくは引き渡しのために」を「譲渡のために」と改める。 ⑵ 原判決8頁18行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 したがって,被控訴人の行為は,法37条1号,4号又は6号のいずれにも該当しない。」 3 争点3-1(被告各標章の法26条1項3号該当性)について以下のとおり当審における当事者の補充主張を追加するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 当審における被控訴人の補充主張ア 「MMPI」の表示は,ハサウェイとマッキンリーが開発した質問紙法検査に基づいて性格傾向を把握する心理検査(本件心理検査)の名称である「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」(ミネソタ多面的人格目録)の略称であり,本件商標の指定役務「心理検査」の需要者,取引者の間において,「MMPI」の表示は,心理検査の一手法である本件心理検査又はその略称を示すものとして周知であるから,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,本件心理検査の内容である「質」を表すものである。 そして,被控訴人は,別紙被告標章目録記載1ないし5のとおり,被告 略称を示すものとして周知であるから,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,本件心理検査の内容である「質」を表すものである。 そして,被控訴人は,別紙被告標章目録記載1ないし5のとおり,被告各標章における「MMPI」の文字部分を被告各商品の表紙等に一般的な字体で表示し,本件心理検査であることを普通に用いられる方法で表示している。 そうすると,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,いずれも, 本件商標の指定役務「心理検査」の内容又は当該指定役務に類似する商品の内容,すなわち「質」を「普通に用いられる方法」で表示するものであるから,被告各標章は,法26条1項3号に該当し,本件商標権の効力は被告各標章に及ばない。 イこれに対し控訴人は,心理検査は,特定の地域,国においては,一主体にのみ独占的に許諾され,複数の主体に許諾されることはないという取引の実情があり,本件商標(「MMPI」の標準文字)は,本来的に識別力を有するとともに,独占適応性もあり,しかも,日本国内では,ミネソタ大学から本件心理検査の質問票(質問項目。以下同じ。)の翻訳の許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして自他役務識別力ないし特別顕著性を獲得していたことに照らすと,被告各標章は,法26条1項3号に該当しない旨主張する。 しかしながら,控訴人が述べるような取引の実情は存在しない。また,ミネソタ大学が有する本件心理検査の質問票の著作権に関する許諾と「MMPI」の商標の使用許諾とは別異の事柄であり,ミネソタ大学は日本国内において「MMPI」の商標の商標登録を有していないから,本件において,ミネソタ大学の許諾が問題となる余地はない。 次に,控訴人の主張はミネソタ大学から本件心理検査の質問票の翻訳の許諾を受けたAから おいて「MMPI」の商標の商標登録を有していないから,本件において,ミネソタ大学の許諾が問題となる余地はない。 次に,控訴人の主張はミネソタ大学から本件心理検査の質問票の翻訳の許諾を受けたAから控訴人が再許諾を受けたことを前提とするものであるが,ミネソタ大学は,2017年4月7日付けレター(乙11)で,本件心理検査の日本語版を日本国内において翻訳出版することを許諾していない旨明言しており,控訴人がミネソタ大学から許諾を受けている事実は存在しない。また,「MMPI」の表示は,日本国内において被控訴人も継続的に使用しており,控訴人のみが継続的かつ独占的に使用してきたものではない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 ⑵ 当審における控訴人の補充主張ア(ア) 本件心理検査は,ミネソタ大学の研究者であったハサウェイとマッキンリーが,質問形式の心理検査を開発し,これを「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」と命名したものであり,「MMPI」の表示は,「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」の略称であって,造語である。 質問形式の心理検査に用いられる質問票は,著作物として著作権によって保護されており,本件心理検査は,誰もが提供することができる心理検査の一手法ではなく,ミネソタ大学又はその許諾を受けた者のみが提供できる質問票の資料を必須とする心理検査である。心理検査の内容は,不断に改良・改訂されるものであり,常に内容が一定しているものではなく,特定の「質」ではない。そして,本件心理検査の「質」はミネソタ大学によりコントロールされているから,「MMPI」の表示は,ミネソタ大学という特定の出所に係る本件心理検査「Minnes ものではなく,特定の「質」ではない。そして,本件心理検査の「質」はミネソタ大学によりコントロールされているから,「MMPI」の表示は,ミネソタ大学という特定の出所に係る本件心理検査「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」を表すものとして,本来的に識別力を有する。 (イ) 心理検査は,提供主体により判定結果が相違すると,検査の信頼性を害するなどの弊害が著しいことから,特定の地域,国においては,一主体にのみ独占的に許諾され,複数の主体に許諾されることはないという取引の実情(「一国一検査の原則」)がある。 また,本件心理検査は,ミネソタ大学によって開発され,ミネソタ大学が著作権等の権利を有する心理検査の手法であり,「MMPI」の表示を心理検査役務に使用する場合にはミネソタ大学の許諾が必要であることは,当業者なら誰でも認識している。多数の研究,論評等における「MMPI」の表示の使用は,ミネソタ大学が開発した本件心理検査を指すものとして商標的使用とはいえない使用がされているにすぎず,こ のような使用がされているからといって,第三者が心理検査役務を提供する際にミネソタ大学の許諾を得ることなく,「MMPI」の表示を使用し,あるいはその著作権を侵害することが適法化されることはない。 したがって,第三者が心理検査役務を提供するに際し,ミネソタ大学のコントロールと無関係に「MMPI」の表示を使用して心理検査役務を提供することを認める必要性はないから,「MMPI」の表示には商標としての独占適応性がある。 イ前記アの取引の実情の下で,控訴人は,著作権者であるミネソタ大学から許諾を受けたAから,更に許諾を受け(甲15,16,18ないし21,32の2,43ないし47,74),1963年 応性がある。 イ前記アの取引の実情の下で,控訴人は,著作権者であるミネソタ大学から許諾を受けたAから,更に許諾を受け(甲15,16,18ないし21,32の2,43ないし47,74),1963年(昭和38年)から約50年以上にわたりほぼ独占的に,日本国内で本件心理検査の日本語版である原告版を開発,提供し,また,日本の社会,文化,風土に応じて適切に被験者の心理傾向を判定できるようにするための標準化を行い,本件心理検査の「質」をコントロールしてきた。 そして,控訴人が本件心理検査のミネソタ大学原版の翻訳及び標準化を行った本件心理検査の役務の提供に「MMPI」の表示を約50年以上の長期にわたり継続的かつ独占的に使用した結果(甲33ないし35,39ないし60,100ないし145),需要者,取引者の間で,本件商標の登録査定時(平成26年3月20日)において,本件商標は,ミネソタ大学から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識されるに至っており,自他役務識別力ないし特別顕著性を獲得していた。 したがって,この点においても,本件商標には識別力及び独占適応性がある。 ウ以上のとおり,本件商標は,本来的に識別力を有するとともに,独占適応性もあり,しかも,日本国内では,需要者,取引者の間で,ミネソタ大 学から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識され,自他役務識別力ないし特別顕著性を獲得していることに照らすと,被告各標章は,本件商標の指定役務「心理検査」の「質」又は当該指定役務に類似する商品の「品質」を「普通に用いられる方法」で表示する商標であるといえないから,法26条1項3号に該当しない。 4 争点3-2(被告各標章の法26条1項4号該当性),争点 」又は当該指定役務に類似する商品の「品質」を「普通に用いられる方法」で表示する商標であるといえないから,法26条1項3号に該当しない。 4 争点3-2(被告各標章の法26条1項4号該当性),争点3-3(被告各標章の法26条1項6号該当性)及び争点4(無効の抗弁の成否)について原判決の「事実及び理由」の第3の4ないし9記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の請求は,被告各標章が法26条1項3号に該当するので,いずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 争点3-1(被告各標章の法26条1項3号該当性)について⑴ 認定事実前記前提事実と証拠(甲4ないし9,32ないし35,37,39ないし42,76,77,79,81ないし98,148,乙5,6,10(枝番があるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 ア本件心理検査である「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」(ミネソタ多面的人格目録)は,1940年代に米国ミネソタ大学の心理学者ハサウェイと精神医学者マッキンレーによって開発された,質問紙法検査に基づいて性格傾向を把握する心理検査であり,「MMPI」は,その略称である。 本件心理検査は,英文の560の質問項目(重複を含めると566項目)から構成され,被験者の回答から,妥当性尺度により被験者の受検態度の 偏りを検出し,臨床尺度(心気症,抑うつ,ヒステリー等の尺度)によりパーソナリティ特徴を解釈し,判定するものである。 本件心理検査は,世界90か国以上で各国の言語に翻訳,標準化され,使用されている。この標準化とは,米国の社会,文化,風土,国民性 ー等の尺度)によりパーソナリティ特徴を解釈し,判定するものである。 本件心理検査は,世界90か国以上で各国の言語に翻訳,標準化され,使用されている。この標準化とは,米国の社会,文化,風土,国民性等に基づいて作成された本件心理検査について,各国の社会,文化,風土,国民性等に合わせて英文の質問項目の翻訳等をした上で,当該国内での一定数のサンプル検査を行い,データを集積して,分析・解釈し,当該国向けの測定値(得点)を解析する尺度・判定基準等を作成することを意味する。 イ(ア) Aは,1962年(昭和37年)6月1日,米国法人のサイコロジカルコーポレーションから,ミネソタ大学出版が出版した「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」(本件心理検査のミネソタ大学原版)の日本語版の出版について許諾を得た(甲18ないし20の各1,2)。 控訴人は,1963年(昭和38年),MMPI日本版研究会編「日本版MMPI使用手引」及び英文の質問項目を日本語に翻訳した「日本版MMPI質問票」(甲43)を出版した。当時,AはMMPI日本版研究会の会長を務め,「日本版MMPI使用手引」及び「日本版MMPI質問票」の出版に際し,本件心理検査のミネソタ大学原版の翻訳及び標準化に中心的に関与した。 その後,控訴人は,1969年(昭和44年)にMMPI日本版研究会編「MMPIハンドブック」を,1987年(昭和63年)及び1991年(平成3年)に「MMPIマニュアル」を出版した。 控訴人は,本件心理検査のミネソタ大学原版の翻訳を見直し,新たに標準化を行った上で,平成5年10月1日,MMPI新日本版研究会編「MMPIマニュアル」(甲32の1,2)及び「質問票」を出版した。 (イ) 控訴人が昭和38年(1963年)か 翻訳を見直し,新たに標準化を行った上で,平成5年10月1日,MMPI新日本版研究会編「MMPIマニュアル」(甲32の1,2)及び「質問票」を出版した。 (イ) 控訴人が昭和38年(1963年)から平成4年(1992年)ま で使用していた質問票(甲43)には,表紙上部に「日本版MMPI質問票」と記載され,その下に原著がハサウェイとマッキンレーであることなどが記載されていた。 (ウ) 控訴人が平成27年(2015年)から提供している新版の質問票(以下「新版質問票」という。甲44ないし47,74)には,表紙左上部に「Minnesota」,「Multiphasic」,「Personality」,「Inventory」と4段組みに記載され,その直下にはハサウェイ及びマッキンレーの名前が記載され,それらの名前の右側には「MMPI新日本版研究会」と記載されており,新版質問票に対応する新版の回答用紙(以下「新版回答用紙」という。甲48ないし53,75)には,「MMPI Ⅲ型回答用紙」と記載されていた。 (エ) 控訴人が発行した昭和43年(1968年),昭和48年(1973年)及び平成5年(1993年)の各「心理テストカタログ」(甲39ないし41)には,「MMPI」について,ハサウェイ及びマッキンレー両教授によって発表された人格目録テストである旨の解説が付されている。また,控訴人が発行した平成30年(2018年)の「心理テストカタログ」(甲42)には,「MMPI新日本版の形式と実施・採点法」,「MMPIの実施法・まとめ」などの記載がある。 (オ) 控訴人が販売するマニュアル(平成5年(1993年)版。甲32の1,2)の表紙には,「Minnesota」,「Multiphasic」,「Personality」,「Inventory」と記 (オ) 控訴人が販売するマニュアル(平成5年(1993年)版。甲32の1,2)の表紙には,「Minnesota」,「Multiphasic」,「Personality」,「Inventory」と記載され,その直下にはハサウェイ及びマッキンレーの名前が記載され,それらの名前の右側には「MMPI新日本版研究会編」と記載されており,扉の部分には,「新日本版MMPIマニュアル」及び「MMPI新日本版研究会編」と記載され,本文においては,「第1章 MMPIの概要」として,「MMPI」について,ミネソタ大学のハサウェイ及びマッキンレーが「精神医学的診断に客観的な手段を提供 する目的で作成した,質問紙法人格検査(人格目録)である」ことなどの説明がされていた。 (カ) 控訴人は,精神医学,心理学等の専門誌,学会誌等に「MMPI」の標章を用いた広告を掲載しているところ(甲55ないし60,100ないし145),同広告においては,おおむね,「MMPI🄬ミネソタ多面的人格目録」,「MMPI(ミネソタ多面的人格目録)」又は「MMPIミネソタ多面的人格目録」との記載がされ,その記載の下又は上にハサウェイ及びマッキンレーの名前が記載され,それらの名前の記載の下又は右横に,「日本MMPI研究会」又は「MMPI新日本版研究会」と記載されていた(甲55ないし60,102ないし134,136ないし137,139ないし145)。 ウ精神医学,心理学等の多数の辞典類や専門書等において,「MMPI」は,ミネソタ大学のハサウェイ及びマッキンレーにより開発,発表された「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」(ミネソタ多面的人格目録)の略称である旨,心理検査(人格検査ないし性格検査)の一手法である旨などの記載がある。 innesotaMultiphasicPersonalityInventory」(ミネソタ多面的人格目録)の略称である旨,心理検査(人格検査ないし性格検査)の一手法である旨などの記載がある。 また,「千葉テストセンター心理検査専門所」のウェブサイトにおいて,「教育,医療,企業など幅広い現場でご利用が可能」な「性格検査・人格検査」として,「MMPIミネソタ多面的人格目録性格検査」が挙げられ,同検査について上記と同様の説明がされている(甲79)。 一方で,精神医学,心理学等の専門書等には,控訴人が翻訳及び標準化を行った原告版を本件心理検査の日本版である旨の紹介をするもの(甲7ないし9,81ないし95)も存在する。 エ(ア) 被控訴人は,平成29年4月1日,被告各商品及び被告ハンドブックの出版及び販売を開始した。被告各商品及び被告ハンドブックは,本件心理検査のミネソタ大学原版について,原告版とは異なる翻訳及び標 準化を行って,作成されたものである。 (イ) 被告各商品の使用方法は次のとおりである。 被告各商品の購入者は,被告質問用紙及び被告回答用紙を用いて被験者に回答させ,被告ソフトをインストールしたパソコンにカードリーダーを接続して回答済みの被告回答用紙を読み込ませ,被告ソフトによる自動診断結果を得ることができるほか,回答済みの被告回答用紙を被控訴人に送付して被告診断結果書の返送を受ける被告サービスを利用することができる。また,被告ソフトの購入者は,被告質問用紙及び被告回答用紙を用いることなく,パソコンで被告ソフトを起動し,被験者にパソコンの画面を見ながら回答させて,自動診断結果を得ることもできる。 さらに,被控訴人は,自治体等から委託を受け,自治体等が採用試験等に用いた被告回答用紙を解析し,自治体等に検査結 し,被験者にパソコンの画面を見ながら回答させて,自動診断結果を得ることもできる。 さらに,被控訴人は,自治体等から委託を受け,自治体等が採用試験等に用いた被告回答用紙を解析し,自治体等に検査結果を伝える診断解釈サービス(被告サービス)を行っており,被告ウェブサイト上には被告各商品や被告サービス等に関する広告(被告広告)を掲載している。 ⑵ MMPIの表示についての需要者の認識についてア本件商標の指定役務「心理検査」の需要者は,保健医療,福祉,教育等の機関において,心理検査を実施する業務に携わる医師,公認心理師,臨床心理士,公務員の心理職等や研究者であることが認められる。 前記⑴の認定事実によれば,被控訴人が被告各商品の販売及び被告サービスの提供を開始した平成29年4月1日当時において,上記需要者の間では,「MMPI」の表示は,ハサウェイとマッキンレーが開発した質問紙法検査に基づいて性格傾向を把握する心理検査である「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」(ミネソタ多面的人格目録)(本件心理検査)又はその略称を表すものであることが広く認識されていたことが認められる。 イこれに対し控訴人は,控訴人が本件心理検査のミネソタ大学原版の翻訳及び標準化を行った本件心理検査の役務の提供に「MMPI」の表示を約50年以上の長期にわたり継続的かつ独占的に使用した結果,需要者,取引者の間では,被控訴人による被告各商品の販売及び被告サービスの提供の開始前に,「MMPI」の表示は,ミネソタ大学から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識されるに至っていた旨主張する。 しかしながら,控訴人の主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 控訴人 から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識されるに至っていた旨主張する。 しかしながら,控訴人の主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 控訴人が昭和38年(1963年)から平成4年(1992年)まで使用していた質問票は,表紙上部に「日本版MMPI質問票」と記載され,その下に原著がハサウェイとマッキンレーであることなどが記載されていること(前記⑴イ(イ))に照らすと,上記質問票に接した需要者は,「日本版MMPI質問票」における「MMPI」の文字部分を,上記質問票を用いて行われる心理検査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 また,平成27年(2015年)以降の新版質問票にも,表紙に「Minnesota」,「Multiphasic」,「Personality」,「Inventory」と記載された直下にハサウェイらの名前が記載され,その右側には「MMPI新日本版研究会編」と記載されていること(前記⑴イ(ウ))に照らすと,新版質問票に接した需要者は,新版質問票における「MMPI」の文字部分を,新版質問票を用いて行われる心理検査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 そして,「MMPI Ⅲ型回答用紙」との記載のある新版回答用紙には,原著作者の記載等はないが,回答用紙が通常は質問票とセットで利用されるものであることからすると,新版回答用紙における「MMPI」の文字部分は,需要者において,新版解答用紙を用いて行われる心 理検査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 (イ) 次に,控訴人が発行した「心理テストカタログ」における原告版の記載についてみると,少なくとも,昭和43年(1968 査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 (イ) 次に,控訴人が発行した「心理テストカタログ」における原告版の記載についてみると,少なくとも,昭和43年(1968年),昭和48年(1973年)及び平成5年(1993年)の各カタログには,「MMPI」がハサウェイ教授らによって発表された心理検査である旨の解説が付されており,平成30年(2018年)のカタログにも「MMPIの実施法・まとめ」,「MMPI新日本版」などと記載されていることから,これらの記載により,需要者は,「MMPI」の文字部分を心理検査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 さらに,控訴人のマニュアル(平成5年(1993年)版)の表紙には,新版質問票と同様の記載があり,扉の部分には「新日本版MMPIマニュアル」と記載され,本文においても,「第1章 MMPIの概要」に本件心理検査についての説明がされていることから,需要者は,「MMPI」の文字部分を心理検査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 その他,専門誌,学会誌等への広告については,併せて記載されたハサウェイ及びマッキンレーの名前並びに「日本MMPI研究会」又は「MMPI新日本版研究会」との名称から,精神医学,心理学等の専門書等については,ミネソタ大学のハサウェイ及びマッキンレーによって発表されたものである旨,心理検査の1つである旨などの説明から,需要者は,「MMPI」の文字部分は心理検査の一手法である本件心理検査を表示したものと理解するものと認められる。 一方で,上記質問票,回答用紙,カタログ,マニュアル,広告及び専門書において,「MMPI」そのものが控訴人が開発し,標準化を行っ た本件心理検査であるこ ものと理解するものと認められる。 一方で,上記質問票,回答用紙,カタログ,マニュアル,広告及び専門書において,「MMPI」そのものが控訴人が開発し,標準化を行っ た本件心理検査であることを示す記載は見当たらない。 (ウ) 以上によれば,前記⑴イ及びウの認定事実から,本件商標の指定役務「心理検査」の需要者の間で,被控訴人が被告各商品の販売及び被告サービスの提供を開始した平成29年4月1日の時点で,「MMPI」の表示がミネソタ大学から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識されるに至っていたものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 法26条1項3号該当性について法26条1項3号は,役務の普通名称,提供の場所,質等又は当該役務に類似する商品の普通名称,産地,販売地,品質等を普通に用いられる方法で表示する商標については,商標権の効力は及ばない旨規定している。 同号の趣旨は,役務の普通名称,提供の場所,質等の表示が需要者に示されないと取引が円滑に行われないことから,円滑な取引の要請と商標権者の利益の調整を図るため,取引上一般に用いられている方法で,これらの表示を自由に使用することを保障したことにあるものと解される。 以上を前提に,被告各標章の法26条3号該当性について判断する。 ア被告各標章の構成及び表示態様(ア) 被告商標1について別紙被告標章目録記載1のとおり,被告質問用紙の表紙上部には,明朝体様の大きめのフォントで「MMPI-1 性格検査」と表示された被告標章1(甲5の1)の記載がある。 (イ) 被告商標2について別紙被告標章目録記載2のとおり,被告回答用紙(マークカード)には,左側に「ファイル番号」,「年令」 と表示された被告標章1(甲5の1)の記載がある。 (イ) 被告商標2について別紙被告標章目録記載2のとおり,被告回答用紙(マークカード)には,左側に「ファイル番号」,「年令」,「性別」,「名前」等を記載する欄があり,回答部分の枠外上部右寄りに,他の記載に比較して若干大きめのゴシック体様で「MMPI-1 回答用紙」と表示された被告 標章2(甲5の2)が記載されている。 (ウ) 被告標章3について別紙被告標章目録記載3のとおり,被告ソフトのパッケージの表紙の中央部分には,他の記載に比較して少し大きめの明朝体様の「MMPI-1性格検査」と表示された被告標章3(甲6)の記載があり,その下に少し小さくゴシック体様で「自動診断システム」,その下に更に小さく「ver.6.3」との記載がある。 (エ) 被告標章4について別紙被告標章目録記載4のとおり,被控訴人が被告サービスにおいて顧客に提供する被告診断結果書の1枚目の左上には,他の部分より少し大きめのゴシック体様で「MMPI-1自動診断システム」と表示された被告標章4(甲77)の記載がある。 (オ) 被告標章5について別紙被告標章目録記載5のとおり,被告ウェブサイト上の被告各商品,被告サービス等の被告広告の中には,「病院での診察,教員・公務員採用試験,職場でのストレスチェックにはこちら」との見出しの下に,ゴシック体様で「MMPI-1性格検査」と表示された被告標章5(甲37)の記載がある。 イ被告各標章における「MMPI」の文字部分について(ア) 被告各標章は,「MMPI-1」の部分と「性格検査」,「回答用紙」又は「自動診断システム」の部分とを結合した標章である。 平成29年4月1日当時において,需要者の間で,「MMPI」の表示は,ハサウェイと 標章は,「MMPI-1」の部分と「性格検査」,「回答用紙」又は「自動診断システム」の部分とを結合した標章である。 平成29年4月1日当時において,需要者の間で,「MMPI」の表示は,ハサウェイとマッキンレーが開発した心理検査である「MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory」(ミネソタ多面的人格目録)(本件心理検査)又はその略称を表すものであることが広く認識されていたこと(前記⑵ア),ハイフン記号と数字を組み合わせてバージョンを示 すことが一般的に行われていること(甲4,87,乙5)を踏まえると,被告標章1(「MMPI-1 性格検査」)に接した需要者は,被告標章1は,「MMPI-1」という名称の「性格検査」を示したものと理解し,被告標章1における「-1」のハイフン記号及び数字部分は,「MMPI」のバージョンを,「MMPI」の文字部分は,ハサウェイとマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識するものと認められる。また,被告標章3又は被告標章5に接した需要者は,上記と同様に,被告標章3又は被告標章5は,「MMPI-1」という名称の「性格検査」を示したものと理解し,「MMPI」の文字部分は,ハサウェイとマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識するものと認められる。 次に,被告標章2(「MMPI-1 回答用紙」)に接した需要者は,被告標章2における「MMPI」の文字部分は,ハサウェイとマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識し,被告標章2は,本件心理検査に用いられる「回答用紙」であることを示したものと理解するものと認められる。 さらに,被告標章4(「MMPI-1自動診断システム」)に接した需要者は,被告標章4における「MMPI」の文字部分は,ハサウ いられる「回答用紙」であることを示したものと理解するものと認められる。 さらに,被告標章4(「MMPI-1自動診断システム」)に接した需要者は,被告標章4における「MMPI」の文字部分は,ハサウェイとマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識し,被告標章4は,本件心理検査の診断結果を作成する自動診断システムであることを示したものと理解するものと認められる。 (イ) 前記(ア)のとおり,被告各標章に接した需要者は,被告各標章における「MMPI」の文字部分をハサウェイとマッキンレーが開発した本件心理検査を示したものと認識するものと認められるから,「MMPI」の文字部分は,心理検査の内容を示したものと認められる。 そして,法26条1項3号の役務の「質」には役務の「内容」が含ま れるから,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,本件商標の指定役務である「心理検査」の質を示したものと認められる。 次に,前記ア認定の被告各商品及び被告広告における被告各標章の表示態様によれば,被告各標章における「MMPI」の文字部分は,いずれも,その文字の大きさ,フォント及び表示位置等に顕著な特徴があるとはいえず,取引上一般に用いられている方法で表示したものと認められるから,本件商標の指定役務「心理検査」の質を「普通に用いられる方法」で表示したものと認められる。 ウまとめ以上によれば,「MMPI」の文字部分を含む被告各標章は,本件商標の指定役務「心理検査」の「質」又は当該指定役務に類似する商品の「品質」を「普通に用いられる方法」で表示する商標に該当するものと認められるから,法26条1項3号に該当する。 ⑷ 控訴人の主張について控訴人は,本件商標は,本来的に識別力を有するとともに,独占適応性もあり,しかも,日本国 法」で表示する商標に該当するものと認められるから,法26条1項3号に該当する。 ⑷ 控訴人の主張について控訴人は,本件商標は,本来的に識別力を有するとともに,独占適応性もあり,しかも,日本国内では,ミネソタ大学から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識されるに至っており,自他役務識別力ないし特別顕著性を獲得していることに照らすと,被告各標章は,本件商標の指定役務「心理検査」の「質」又は当該指定役務に類似する商品の「品質」を「普通に用いられる方法」で表示する商標であるといえないから,法26条1項3号に該当しない旨主張する。 しかしながら,前記⑶のとおり,法26条1項3号の趣旨は,役務の普通名称,提供の場所,質等の表示が需要者に示されないと取引が円滑に行われないことから,円滑な取引の要請と商標権者の利益の調整を図るため,取引上一般に用いられている方法で,これらの表示を自由に使用することを保障したことにあるものと解されるから,本件商標が本来的に識別力を有するこ とは,被告各標章が同号に該当することを否定する理由にはならないというべきである。 次に,控訴人は本件商標が独占適応性を有することの根拠として,心理検査は,提供主体により判定結果が相違すると,検査の信頼性を害するなどの弊害が著しいことから,特定の地域,国においては,一主体にのみ独占的に許諾され,複数の主体に許諾されることはないという取引の実情(「一国一検査の原則」)があること,本件心理検査は,ミネソタ大学によって開発され,ミネソタ大学が著作権等の権利を有する心理検査の手法であり,「MMPI」の表示を心理検査役務に使用する場合にはミネソタ大学の許諾が必要であるから,第三者が心理検査役務を提供するに際し,ミネソタ大学のコントロ 学が著作権等の権利を有する心理検査の手法であり,「MMPI」の表示を心理検査役務に使用する場合にはミネソタ大学の許諾が必要であるから,第三者が心理検査役務を提供するに際し,ミネソタ大学のコントロールと無関係に「MMPI」の表示を使用して心理検査役務を提供することを認める必要性はないことを挙げるが,本件においては,控訴人が主張するような取引の実情が存在することを認めるに足りる証拠はない。また,ミネソタ大学が本件心理検査の質問事項(ミネソタ大学原版)について著作権を有するからといって,心理検査の役務の提供に「MMPI」の表示をすることにつきミネソタ大学の許諾が必要であるということに当然にはならない。 さらに,前記⑵イで説示したとおり,需要者,取引者の間で,被控訴人による被告各商品の販売及び被告サービスの提供の開始前に,「MMPI」の表示がミネソタ大学から許諾を受けている控訴人の業務に係る本件心理検査の役務を表示するものとして広く認識されるに至っていたものと認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。 ⑸ 小括以上のとおり,被告各標章は法26条1項3号に該当すると認められるか ら,本件商標権の効力は被告各標章に及ばない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。 2 結論以上のとおり,控訴人の請求はいずれも理由がないから,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当である。 したがって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官國分隆文及び裁判官筈井卓矢は,転 棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官國分隆文及び裁判官筈井卓矢は,転補のためいずれも署名押印することができない。 裁判長裁判官大鷹一郎 (別紙)商品目録 1 心理テスト質問用紙商品名「MMPI-1 性格検査」 2 回答用紙(マークカード)商品名「MMPI-1 回答用紙」 3 自動診断システム(パソコン用ソフトウェア)商品名「MMPI性格検査」(自動診断システムver6.3) (別紙)被告標章目録 1 下記のうち青線で囲んだ部分(甲5の1) 2 下記のうち青線で囲んだ部分(甲5の2) 3 下記のうち青線で囲んだ部分(甲6) 4 下記のうち青線で囲んだ部分(甲77) 5 下記のうち青線で囲んだ部分(甲37)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る