平成19(ネ)929 弁護士報酬等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年6月12日 名古屋高等裁判所 棄却 名古屋地方裁判所 平成18(ワ)3715
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判決文本文18,873 文字)

主文 1審原告らの本件控訴及び1審被告の本件控訴をいずれも棄却する。 1審原告らに係る控訴費用は1審原告らの負担とし,1審被告に係る控訴費用は1審被告の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 1審原告ら(1)控訴の趣旨ア原判決を以下のとおり変更する。 1審被告は,1審原告らに対し,6000万円及びこれに対する平成16年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ訴訟費用は,第1,2審を通じて1審被告の負担とする。 ウ仮執行宣言(2)1審被告の控訴の趣旨に対する答弁ア1審被告の控訴を棄却する。 イ控訴費用は,1審被告の負担とする。 1審被告(1)控訴の趣旨ア原判決中,1審被告の敗訴部分を取り消す。 イ1審原告らの請求をいずれも棄却する。 ウ訴訟費用は,第1,2審を通じて1審原告らの負担とする。 (2)1審原告らの控訴の趣旨に対する答弁ア1審原告らの控訴をいずれも棄却する。 イ控訴費用は,1審原告らの負担とする。 第2事案の概要 本件は,1審被告(名古屋市)の住民である1審原告らが,1審被告が発注 したごみ焼却場建設工事の指名競争入札について談合が行われたなどと主張して,上記工事を受注した建設会社等に対して,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下「旧法」という。)242条の2第1項4号の規定に基づき住民訴訟(以下「本件住民訴訟」という。)を提起し,同訴訟において,上記建設会社等に対して総額9億円とこれに対する遅延損害金の支払を命じる判決が確定したので,同条7項の規定に基づいて,1審被告に対し,本件住民訴訟に要した弁護士報酬額の範囲内で相当と認められる額として1億2397万3362円及び内1億0500万円に対しては1審被告にその支払を 定したので,同条7項の規定に基づいて,1審被告に対し,本件住民訴訟に要した弁護士報酬額の範囲内で相当と認められる額として1億2397万3362円及び内1億0500万円に対しては1審被告にその支払を請求した日の翌日である平成16年12月23日から,内1897万3362円に対しては訴状送達の日の翌日である平成18年9月29日からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,1審原告らの請求は,3800万円及びこれに対する平成16年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとしてこれを認容し,その余を棄却したため,1審原告ら及び1審被告の双方がこれを不服として控訴した。 なお,1審原告らは,控訴審において,請求金額を6000万円に減縮した。 前提事実,争点に関する当事者の主張は,以下のとおり,原判決を補正し,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 なお,略語については原判決のそれによる(以下,同じ。)。 (原判決の補正)(1)原判決4頁3行目の「下請企業として」を「下請企業として使用し」と改める。 (2)同4頁19行目の「(以下,」の次に「「A」といい,」を加える。 (3)同4頁26行目の「追及するものであった」を「追及するとともに,不当利得の返還を求めるものであった」と改める。 (4)同5頁13行目の「審理経過一覧表記載のとおり」の次に「(ただし,同表中(原判決41頁4行目)の「本案前の抗弁に対する答弁陳述」を「本案前の抗弁に対する答弁書陳述」と改める。」を加える。 (5)同9頁3行目から4行目まで及び同10行目から11行目までを ただし,同表中(原判決41頁4行目)の「本案前の抗弁に対する答弁陳述」を「本案前の抗弁に対する答弁書陳述」と改める。」を加える。 (5)同9頁3行目から4行目まで及び同10行目から11行目までをいずれも以下のとおり改める。 「(1)争点(1)(本件住民訴訟における弁護士報酬相当額の算定方法等)について」(6)同10頁18行目から19行目にかけての「最終的な支払に至るまでに」を「確定に至るまでに」と改める。 (7)同11頁21行目から22行目にかけての「弁護士報酬」から同23行目の「やむを得ない。」までを「経済的利益の額が算定不能の場合の弁護士報酬の算定基準として他に有効な基準がない以上,上記場合に限って本件報酬基準規程を参照することはやむを得ない。」と改める。 (8)同11頁24行目の「しかし,」を「すなわち,」と,同26行目の「同項の」を「同条1項4号の住民訴訟の経済的利益の額は算定不能と解するのが相当であるから,」とそれぞれ改める。 (9)同13頁23行目の「主張し,」から同24行目の「これが」までを「主張して上告したが,これは」と改める。 (当審における1審原告らの主張)(1)ア弁護士報酬は弁護士の提供する労務の対価であるところ,旧法242条の2第1項4号の住民訴訟において原告側代理人弁護士が提供する労務はまさに損害賠償請求訴訟のそれであり,地方公共団体が自ら損害賠償請求訴訟を遂行する場合と異なるものではない。 イ1審被告は住民訴訟の経済的利益の額は算定不能である旨主張しているが,①上記のとおり,地方公共団体が自ら損害賠償請求訴訟を提起して弁護士に委任した場合との権衡を失することになり,地方公共団体が相応の 経済的利益を得たにもかかわらず,これに見合う弁護士費用の支出を不当に免れる結果になること,②民事訴訟にお 請求訴訟を提起して弁護士に委任した場合との権衡を失することになり,地方公共団体が相応の 経済的利益を得たにもかかわらず,これに見合う弁護士費用の支出を不当に免れる結果になること,②民事訴訟における請求額は,訴訟の複雑性,困難性を左右する重要な要素であり,請求額の大小にかかわらず同一の弁護士報酬しか認められないのは合理的でないこと,③住民訴訟の被告側弁護士の報酬が請求額や認容額等を基準として支払われることは経験則上明らかであるが,1審被告の上記主張によれば,1つの訴訟であるにもかかわらず,原告側弁護士と被告側弁護士の報酬算定基準が異なることになり衡平を失することから,1審被告の上記主張は失当である。 ウしたがって,本件報酬基準規程に基づいて弁護士報酬相当額を算定する際には,地方公共団体が受けた経済的利益の額を基準として算定すべきである。 (2)ア本件住民訴訟は,多数の弁護士の努力により長期間に及ぶ審理の結果勝訴判決を得たものであり,事実関係からも論点が多岐にわたる非常に複雑な訴訟であったから,本件報酬基準規程8条に規定されている報酬額の増額要素があるといえる。しかし,1審原告らは,本件が住民訴訟であり公益的な意義を有していることから,あえて増額の主張はしていないものである。まして,報酬額の減額要素は存在しない。 イAとそれ以外の本件住民訴訟の被告らとの損害賠償責任は連帯債務の関係にあり,Aに対する請求が棄却されたとしても,他の連帯債務者から賠償を受けることができたのであるから,これを理由として弁護士報酬相当額を減額することはできない。 ウ本件住民訴訟においてはAについての独自の証人調べは行われておらず,同人の争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化した事実はない。 (当審における1審被告の主張)(1)ア住民訴訟の本質は ウ本件住民訴訟においてはAについての独自の証人調べは行われておらず,同人の争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化した事実はない。 (当審における1審被告の主張)(1)ア住民訴訟の本質は,住民全体の利益のために,公益の代表者として住民としての固有の立場において,地方公共団体の財務会計上の行為の適正化 を主張することであり,地方公共団体の権利利益の保護救済を図ることではない。そのため,旧法242条の2第1項4号に基づく訴えに係る利益は,地方公共団体の損害が回復されることによって住民全体の受けるべき利益であり,それはその性質上,勝訴によって地方公共団体が直接受ける利益と同一ではあり得ない(昭和53年3月30日最高裁判所判決)。 したがって,本件報酬基準規程に基づいて弁護士報酬相当額を算定する際には,住民訴訟における認容額を経済的利益の額とすべきではない。 イまた,上記住民訴訟の本質から考えると,弁護士報酬相当額の算定に当たっては,住民訴訟の経済的利益を算定不能とした上記昭和53年判決に基づく申立手数料の算定方法との整合性を図る必要がある。 ウさらに,住民訴訟は,住民参政の一環に属するものであるから,本来的には選挙無効訴訟と同様に弁護士報酬の請求はできないものであるところ,衡平の観点から特殊例外的に弁護士費用相当額を請求することが認められていることからも,一般的な民事訴訟とは異なり経済的利益は算定不能とすべきである。 エ上記ア,イ,ウによれば,住民訴訟の経済的利益の額は算定不能というべきであるから,本件報酬基準規程16条1項によりその経済的利益の額を800万円として弁護士報酬額を算定した上で,弁護士報酬相当額を決定すべきである。 なお,同条2項は,経済的利益の額が算定不能の場合は,弁護士は依頼者と協議のうえ,その額を,事件等 経済的利益の額を800万円として弁護士報酬額を算定した上で,弁護士報酬相当額を決定すべきである。 なお,同条2項は,経済的利益の額が算定不能の場合は,弁護士は依頼者と協議のうえ,その額を,事件等の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して,適正妥当な範囲内で増減額することができる旨規定しているが,上記のとおり,住民訴訟の本質は,地方公共団体の財務会計上の行為を正すことにあり,地方公共団体の経済的利益の回復を図ること自体にあるのではないから,住民訴訟における弁護士の訴訟活動の評価として判決の認容額を重視すべきではない。 (2)ア平成16年4月1日に廃止された本件報酬基準規程は,弁護士報酬が経済的利益の額に比例する形になっていたが,同年3月に刊行された弁護士報酬ガイドブック(乙19の1)によれば,事案の難易,時間及び労力に比べて経済的利益を絶対的に優位なものとして扱う必要がなく,経済的利益が大きくなるにしたがって弁護士報酬も高額にしていかなければならない必然性はないとされている。 イ日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)の平成17年のアンケート調査によれば,請求額300万円の金銭消費貸借に係る民事訴訟の着手金は20万円前後とする弁護士が半数近くである一方,請求額1億円の住民訴訟の着手金は30万円前後とする弁護士が半数以上となっている(乙19の2,3)。また,本件報酬基準規程が廃止される前の平成14年ののアンケート調査においてさえ,請求額1億円の住民訴訟の着手金は30万円ないし50万円とする弁護士が大多数であった(乙19の4)。このように,住民訴訟における弁護士報酬は他の一般民事訴訟に比して低額であり,住民訴訟においては訴訟の対象となっている権利義務の価格が重要視されていないことが分かる。 ウ実際の弁護士報酬 の4)。このように,住民訴訟における弁護士報酬は他の一般民事訴訟に比して低額であり,住民訴訟においては訴訟の対象となっている権利義務の価格が重要視されていないことが分かる。 ウ実際の弁護士報酬は本件報酬基準規程が定める金額よりも低廉であり,本件報酬基準規程は弁護士報酬を定める際の上限として参考にされているにすぎない。 (3)1審原告らは,住民が旧法242条の2第1項4号に基づいて住民訴訟を提起する場合と,地方公共団体が自ら損害賠償請求訴訟を提起する場合との権衡を指摘するが,同号の住民訴訟は,住民としての固有の立場において財務会計上の違法な行為又は怠る事実に係る職員等に対し損害の補填を要求することが中心的目的になっているのであり,この目的実現のために訴訟技術的配慮により代位請求形式がとられているにすぎないのであるから,代位請求という形式から判断して,地方公共団体が自ら訴訟を提起する場合と比較 することは住民訴訟の本質から考えて適切ではない。 第3当裁判所の判断当裁判所も,原判決とはその算定方法を異にするものの,1審原告らの本件請求は,3800万円及びこれに対する平成16年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 争点(1)(本件住民訴訟における弁護士報酬相当額の算定方法等)について当事者双方は,「本件住民訴訟の弁護士報酬額の範囲内で,1審原告らが1審被告に対して請求し得る相当額はいくらか」を直接の争点とし,具体的には,後記のとおりの経済的利益について,勝訴額をもってするのか(1審原告ら),算定不能とするのか(1審被告)を争点としている。当裁判所は,日弁連の報酬規程の改正を踏まえ,以下のとおり検討,判断 的には,後記のとおりの経済的利益について,勝訴額をもってするのか(1審原告ら),算定不能とするのか(1審被告)を争点としている。当裁判所は,日弁連の報酬規程の改正を踏まえ,以下のとおり検討,判断する。 (1)制度の概要ア前提事実のとおり,1審原告らが本件代理人弁護士らに委任して提起した本件住民訴訟において,①Aを除く本件住民訴訟の被告らは,1審被告に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を,②本件住民訴訟の法人被告らは,1審被告に対し,連帯して,上記①に加えて8億円及びこれに対する平成9年2月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう命ずる本件控訴審判決が確定し,同判決に従って,Y建設から1審被告に対し,遅延損害金を含めて合計12億4720万1661円が支払われたことが認められるから,1審原告らは,旧法242条の2第7項に基づいて,1審被告に対し,本件代理人弁護士らに支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額(弁護士報酬相当額)の支払を請求をすることができる。 イ旧法242条の2第7項は,住民訴訟が,住民によって自己の個人的な 権利利益を擁護するためではなく,住民全般の公共の利益を確保するために提起されるものであることから,当該住民訴訟に要した費用の全部を常に住民に負担させるのは適当ではなく,特に同条の2第1項4号の請求は住民が地方公共団体に代わって訴訟を提起するものであり,住民が勝訴したときは地方公共団体が現実に経済的利益を受けることになるので,住民が弁護士に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額を地方公共団体が住民に支払うものとすることが衡平の理念に合致することから設けられた規定である。 ウそして,上記の相当と認められる額(弁護士報酬 弁護士に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額を地方公共団体が住民に支払うものとすることが衡平の理念に合致することから設けられた規定である。 ウそして,上記の相当と認められる額(弁護士報酬相当額)は,弁護士の活動の対価として社会通念上相当な額をいうものと解するのが相当であるが,その算定方法を具体的に定めた国の法律,政令,規則及び自治体の規程等は存在しない。ところで,日弁連では,各地の弁護士会が弁護士報酬に関する標準を示す規定を定める場合の基準を定めることを目的として本件報酬基準規程(乙1)を設けていた。ただし,本規程は,平成16年4月1日に廃止され,新たに「弁護士の報酬に関する規程」が制定された(乙19の1)。そして,本件における弁護士報酬相当額の請求権の発生時期は,本件住民訴訟の本件控訴審判決が確定した平成16年9月21日であるから,本件における弁護士報酬相当額決定のために第1に参考とすべきは,上記の新たな「弁護士の報酬に関する規程」(以下「乙19新規程」という。)というべきである。 なお,1審原告らは,本件報酬基準規程に従って弁護士報酬を支払う旨を約して,本件住民訴訟を委任している(原判決23頁イ(ア))が,弁護士報酬相当額は上記約定の弁護士報酬の範囲内で算出されるものであるから,1審原告らが支払う予定の弁護士報酬額は1審被告が1審原告らに支払うべき弁護士報酬相当額の上限を画するにすぎない。 (2)弁護士会の乙19新規程の内容と本件報酬基準規程の機能 ア乙19新規程によれば,「弁護士の報酬は,経済的利益,事案の難易,時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならない。」(2条)とされている。つまり,弁護士報酬算定の考慮事情として「経済的利益」「事案の難易」「時間及び労力」「その他の事情」が明示さ 労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならない。」(2条)とされている。つまり,弁護士報酬算定の考慮事情として「経済的利益」「事案の難易」「時間及び労力」「その他の事情」が明示されたものであり,経済的利益は考慮の対象から外すことはできないものの,他の考慮事情と比較して絶対的に優位なものとして扱うべきものではなくなったと認められる。また,乙19新規程によっても,経済的利益が,報酬算定の重要な指標であることに変わりはないので,引き続き,経済的利益を具体的にどのように算定するかの問題は残っている。そして,本件報酬基準規程(以下「旧報酬規程」ともいう。)は,廃止されたとはいえ,他に基準がない以上,乙19新規程における経済的利益に基づく弁護士報酬額を具体的に定める場合に,なお,重要な参考となるというべきである。 イちなみに,旧報酬規程によれば,弁護士の着手金は事件等の対象の経済的利益の額を,報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定するとされ(13条),着手金及び報酬金(以下,両者を併せて「弁護士報酬」という。)は経済的利益の額をいわば優位な基準としてこれに比例する形で算出されることとされていた。そして,旧報酬規程は,14条で,経済的利益が算定可能な場合について,各種債権の経済的利益の額の算定方法を定めていたが,15条で,この算定方法で算定された経済的利益の額が紛争の実態に比して明らかに大きいときは,経済的利益の額を紛争の実態に相応するまで減額しなければならないとし,次に16条で,経済的利益の額が算定不能の場合については,その額を800万円とするが,弁護士は依頼者と協議のうえ,その額を事件等の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して適正妥当な範囲内で増減額することができると定 不能の場合については,その額を800万円とするが,弁護士は依頼者と協議のうえ,その額を事件等の難易,軽重,手数の繁簡及び依頼者の受ける利益等を考慮して適正妥当な範囲内で増減額することができると定めていた。 ウそうすると,本件の弁護士報酬相当額は,乙19新規程に従い,経済的利益,事案の難易,時間及び労力,その他の事情を総合考慮して定めなければならず,そのうちの経済的利益については,旧報酬規程に基づいて算出した額を参考とするのが相当というべきである。 なお,弁護士報酬相当額の請求権は,住民が当該住民訴訟に勝訴した場合に発生するものであるから,弁護士報酬相当額の算定に当たっては,勝訴を得るために必要ないし相当であった訴訟活動をその対象とすべきであり,不相当な訴訟活動はこれを除外すべきである。 (3)本件の弁護士報酬相当額の算出そこで,以下,上記の算定方法に基づいて本件の弁護士報酬相当額を検討する。 ア弁護士報酬相当額を算出する上での本件住民訴訟の経済的利益について(ア)1審原告らは,本件住民訴訟における「経済的利益の額」は本件住民訴訟の対象となっている経済的利益の額(着手金については9億円,報酬金については12億4720万1661円)とすべきである旨主張し,1審被告は,本件住民訴訟の「経済的利益の額」は算定不能であるところ,経済的利益の額が算定不能の場合の弁護士報酬の算定基準として他に有効な基準がない以上,上記場合に限って本件報酬基準規程を参照することはやむを得ない(その場合の経済的利益の額は800万円とされる。旧報酬規程16条1項)旨主張している。 (イ)本件住民訴訟の経済的利益と弁護士報酬額の試算住民訴訟の目的は,住民全体の利益のために地方公共団体の財務会計上の行為を正すことにあるから,住民が原告となって訴訟を行う場合の 旨主張している。 (イ)本件住民訴訟の経済的利益と弁護士報酬額の試算住民訴訟の目的は,住民全体の利益のために地方公共団体の財務会計上の行為を正すことにあるから,住民が原告となって訴訟を行う場合の経済的利益は住民全体のための利益であり,算定不能というべきである。 そこで,経済的利益を算定不能として本件報酬基準規程に基づいて念のため弁護士報酬額を試算してみると,以下のとおりである。 ①着手金についてⅰ着手金の算定基準となる「事件等の対象の経済的利益の額」が算定不能の場合は,これを800万円とするとされているから,着手金は49万円(800万円×5%+9万円)となる。 ⅱところで,着手金は審級ごとに算定するものとされている(5条)ところ,1審原告らのAに対する上告は棄却されているから,上告は勝訴を得るために必要な訴訟活動であったとはいえないし,また,Aを除く本件住民訴訟の被告らの上告も口頭弁論を経ることなく上告棄却及び上告不受理決定がされており,これに対する訴訟活動も不要であったと推認されるから,結局,上告審における着手金は認められない。 ⅲまた,本件報酬基準規程は,同一の弁護士が引き続き上訴事件を受任するときは,着手金を適正妥当な範囲内で減額することができる旨定めているところ(17条3項),本件住民訴訟においては,原判決別紙「第1審代理人目録」及び「控訴審代理人目録」記載のとおり,第1審から口頭弁論期日に出頭して弁護団の中心となって活動したと認められる9名の弁護士が控訴審においても訴訟代理人となっているほか,控訴審以降において訴訟代理人に加わった者の中には,既に訴訟復代理人として,あるいは本件第1審判決を待たずに訴えを取り下げた一部の1審原告の訴訟代理人として,第1審より本件住民訴訟に関与していた者も含まれており(甲1, 代理人に加わった者の中には,既に訴訟復代理人として,あるいは本件第1審判決を待たずに訴えを取り下げた一部の1審原告の訴訟代理人として,第1審より本件住民訴訟に関与していた者も含まれており(甲1,9ないし11),控訴審の代理人弁護士が控訴審において新たに事件処理を受任した場合と同様の状況にあるわけではないから,着手金の算定に当たっては,同一の弁護士が引き続き受任した場合と同視すべきものと解するのが相当である。 したがって,控訴審の着手金は約半額の25万円とするのが相当 である。 ⅳそうすると,第1審及び控訴審の着手金は合計74万円となる。 ②報酬金について本件報酬基準規程は,同一弁護士が引き続き上訴審を受任したときの報酬金は,特に定めのない限り,最終審の報酬金のみを受ける旨定めているから(5条),報酬金は,98万円(800万円×10%+18万円)となる。 ③合計の弁護士報酬額上記のとおり,着手金と報酬金の合計金額は172万円となる。 (ウ)1審被告が得た金額による弁護士報酬額の試算次に本件住民訴訟における被代位者である1審被告の立場から見ると,本件住民訴訟において,1審原告らの勝訴判決により,1審被告は元本9億円,遅延損害金3億4720万1661円の合計12億4720万1661円を得ており,これは,1審被告自らが訴訟を提起した場合にはそのまま経済的利益とされる性質の金員である。そこで,上記金額を経済的利益として本件報酬基準規程に基づいて念のため弁護士報酬額を試算してみると,以下のとおりである。 ①着手金についてⅰ着手金の算定基準となる「事件等の対象の経済的利益の額」は9億円であるから,着手金は2169万円(9億円×2%+369万円)となる。 ⅱ上告審における着手金が認められないことは上記(イ)①ⅱのとおりである 定基準となる「事件等の対象の経済的利益の額」は9億円であるから,着手金は2169万円(9億円×2%+369万円)となる。 ⅱ上告審における着手金が認められないことは上記(イ)①ⅱのとおりである。 ⅲ控訴審における着手金について適正妥当な範囲内で減額すべきことは上記(イ)①ⅲのとおりであるところ,その金額は約半分の1085万円とするのが相当である。 ⅳそうすると,第1審及び控訴審の着手金は合計3254万円となる。 ②報酬金について報酬金の算定基準となる「委任事務処理により確保した経済的利益の額」は12億4720万1661円であるから,報酬金は5726万8066円(12億4720万1661円×4%+738万円)となる。 ③上記のとおり,着手金と報酬金の合計金額は8980万8066円となる。 (エ)アンケート結果に基づく市民のための弁護士報酬の目安について乙19号証の2,3によれば,日弁連が弁護士に対して平成17年2月に実施したアンケート調査によると,請求額が300万円の金銭消費貸借に係る民事訴訟の着手金は20万円前後が46.2%で一番多いのに対し,請求額が1億円の住民監査請求の着手金は20万円前後が43. 2%で一番多く,引き続き住民訴訟を受任した場合の着手金は30万円前後が50.6%で半数以上となっていることが認められる。 上記認定事実によれば,住民訴訟は自己の権利擁護のためではなく,住民全般の公共の利益を確保するために提起するものであるとの住民訴訟の性格から,その着手金は他の一般民事訴訟に比して低額とされていることが推認される。 (オ)まとめ(本件弁護士報酬相当額を算定する上での本件住民訴訟の経済的利益について)本件住民訴訟は公共の利益のために提起されるものであり,その経済的利益は算定不能(本件報酬基準規程によ れる。 (オ)まとめ(本件弁護士報酬相当額を算定する上での本件住民訴訟の経済的利益について)本件住民訴訟は公共の利益のために提起されるものであり,その経済的利益は算定不能(本件報酬基準規程によれば800万円とみなされる。)ではあるが,他方で1審被告が本件住民訴訟の勝訴判決によって得た成果(元本9億円,遅延損害金3億4720万1661円)をも正 しく評価する必要があるから,本件弁護士報酬相当額を算定する上での本件住民訴訟の経済的利益の上限と下限は,1審被告が得た金額と算定不能によるみなし金額になると解するのが相当である。そして,本件弁護士報酬相当額を算定する上での具体的な経済的利益が上記の範囲内のどの当たりに位置するかは,本件報酬基準規程が,弁護士報酬と事件の経済的利益との割合を事件の経済的利益の額が高額になるにしたがって低率にしていることを考慮して判断するのが相当である。また,上記のとおり,アンケート結果によれば,住民訴訟の着手金は一般民事訴訟に比して低額とされていることも考慮する必要がある。以上の事情を総合考慮すると,本件弁護士報酬相当額を算定する上での本件住民訴訟の経済的利益は,着手金及び報酬額のいずれの場合も5億円と認めるのが相当である。 そこで,経済的利益を5億円として本件報酬基準規程に基づいて弁護士報酬額を試算してみると,以下のとおりである。 ①着手金についてⅰ経済的利益の額は5億円であるから,着手金は1369万円(5億円×2%+369万円)となる。 ⅱ上告審における着手金が認められないことは上記(イ)①ⅱのとおりである。 ⅲ控訴審における着手金について適正妥当な範囲内で減額すべきことは上記(イ)①ⅲのとおりであるところ,その金額は半分の684万5000円とするのが相当である。 ⅳそうすると,第1審及び である。 ⅲ控訴審における着手金について適正妥当な範囲内で減額すべきことは上記(イ)①ⅲのとおりであるところ,その金額は半分の684万5000円とするのが相当である。 ⅳそうすると,第1審及び控訴審の着手金は合計2053万5000円となる。 ②報酬金について経済的利益の額は5億円であるから,報酬金は2738万円(5億 円×4%+738万円)となる。 ③上記のとおり,着手金と報酬金の合計金額は4791万5000円となる。 イ本件住民訴訟の難易,時間及び労力について(ア)本件住民訴訟の事案の内容,訴訟の経過等は,以下に補正するほかは,原判決の第3の1の(3)アの(ア)ないし(コ)(原判決28頁6行目から同31頁18行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 ①原判決28頁21行目の「Z建設が要した費用」を「Z建設が水銀問題解決のために負担した費用」と改める。 ②同29頁21行目の「主張がなされた(乙5号証)」を「主張及び請負契約の一部無効に基づく不当利得返還の主張がなされた(甲23,乙5)」と改める。 ③同30頁17行目の「主張を追加し,」を「主張及び本件談合に基づく請負契約の無効を理由とする不当利得返還の主張を追加し,」と改める。 ④同30頁20行目の次に改行して以下のとおり加える。 「なお,1審原告らは,今後の訴訟方針として,①名古屋市当局による予定価格への9億円上乗せ事実の立証,②A関与の立証,③損害の発生及びその額の立証に重点を置くこととした(甲23)。」⑤同31頁4行目から5行目までを以下のとおり改める。 「上記B及びCの立証趣旨は予定価格の見積りが適正に行われたことであり(弁論の全趣旨),Dの立証趣旨は予定価格への9億円の上乗せの有無,Aの責任の有無であり(乙29),Eの立証趣旨は9億円の損害 「上記B及びCの立証趣旨は予定価格の見積りが適正に行われたことであり(弁論の全趣旨),Dの立証趣旨は予定価格への9億円の上乗せの有無,Aの責任の有無であり(乙29),Eの立証趣旨は9億円の損害の有無であった(乙30)。」⑥同31頁6行目の「(ケ)」の次に「本件住民訴訟の第1審における争点は,①予定価格に9億円が上乗せされたか,②本件談合の有無と 請負契約の効力,③損害の有無及び額,④Aの責任の有無であったところ,」を加える。 ⑦同31頁8行目の「本件談合があったものと」を「本件談合があり,請負契約は無効であると」と改める。 ⑧同31頁12行目から13行目までを以下のとおり改める。 「そこで,1審原告らはAに対して控訴を提起し,Aを除く本件住民訴訟の被告らも控訴を提起した。上記控訴審においては,法人被告らが過失相殺の主張をしたり,Z建設が損益相殺の主張をするなどしたが,平成14年3月26日に言い渡された本件控訴審判決は,これらの主張を排斥し,基本的に本件第1審判決を維持した。なお,本件控訴審判決は,請負契約の無効については判断する必要がないとした(甲2)。」⑨同31頁18行目の次に改行して以下のとおり加える。 「また,Aを除く本件住民訴訟の被告らも上告及び上告受理の申立てをしたがいずれも排斥され,平成16年9月21日,本件控訴審判決が確定した(前提事実)。」(イ)本件住民訴訟における弁護士への委任状況等は,以下のとおり付加するほかは,原判決の第3の1の(2)イの(ア),(エ)(原判決23頁12行目から14行目まで,同24頁15行目から26行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 「乙28によれば,本件住民訴訟の口頭弁論期日及び進行協議期日における1審原告ら側の代理人弁護士の1期日当たりの出頭状況は,第1審 頁15行目から26行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 「乙28によれば,本件住民訴訟の口頭弁論期日及び進行協議期日における1審原告ら側の代理人弁護士の1期日当たりの出頭状況は,第1審が平均4.625人,控訴審が平均3.5人であり,全体では平均4. 4375人であったことが認められる。」(ウ)上記(ア),(イ)によれば,本件住民訴訟の難易,時間及び労力については以下のようにいうことができる。 ①本件住民訴訟は,1審原告らが,8名の被告に対し(訴訟提起時点では10名であったが,その後,2名について取り下げられた。),新南陽工場の第二期工事の指名競争入札の予定価格に違法な上乗せがあったこと,仮にそれが認められないとしても,本件談合が存在し,そのため上記請負契約の締結及び代金の支払が違法であると主張し,これに対して,本件住民訴訟の被告らが,上記予定価格の上乗せ,本件談合の存在,本件談合による損害の発生及びその額のいずれも否認して争ったことから,1審原告らがこれらの各争点に関する主張・立証活動を展開し,本件住民訴訟の被告らがこれに対する反論・反証を行った事案であり,第1審の審理期間だけでも約5年4か月に及び,その間に39回の口頭弁論期日及び2回の進行協議期日が開かれ,4名の人証調べが実施されたこと,また,控訴審も約1年8か月に及び,その間に4回の口頭弁論期日及び5回の進行協議期日が開かれたこと,さらに,上告審は約2年6か月を要したこと,また,1審原告ら側代理人弁護士は,口頭弁論期日及び進行協議期日に1期日当たり平均4. 4375人が出頭して訴訟行為を行っていたこと(甲1ないし13,乙28)からすると,本件住民訴訟は大規模かつ複雑であり,訴訟代理人弁護士として時間及び労力のかかる事案であったといえる。 ②また,本件住民訴 人が出頭して訴訟行為を行っていたこと(甲1ないし13,乙28)からすると,本件住民訴訟は大規模かつ複雑であり,訴訟代理人弁護士として時間及び労力のかかる事案であったといえる。 ②また,本件住民訴訟の争点の1つである本件談合の有無については,本件住民訴訟の提起後にD,Fらが逮捕され,刑事事件へと発展する中でその全貌が明らかになったものであり,その談合の内容は,新南陽工場の第一期工事において生じた水銀問題の処理のため,Z建設において必要となった補償金相当額を同社に得させるべく,同社のGと懇意にしていた市議会議員のFの指示の下,当時の名古屋市建築局次長であったDが,Y建設に対し,Z建設を下請とし,その下請代金に上記補償金相当額を上乗せすることを了承させた上,第二期工事の落 札価格を教示したという複雑な事実経過を背景とするものであった(甲1)。そして,1審原告らは,本件住民訴訟の提起から約1年後に本件談合に関する請求原因事実の追加主張と,刑事事件記録に基づく本件談合の存在の立証活動を開始したが,その証拠としては上記刑事事件の記録がほとんどであるとしても,上記刑事事件の記録は相当大部なものであったと推認され,その検討・分析,本件住民訴訟へ提出すべき書証の取捨選択については相当の労力を要したことが推認される。 ③他方,予定価格の上乗せの争点については,1審原告らはその立証にかなりの重点を置き,Eを除く3名の証人調べもこの争点に関して行われているから,上記争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化した側面があることは容易に推認されるところである。しかし,1審原告らのこの点に関する主張は判決において採用されず,勝訴を得るために必要ないし相当であったとは認められないから,上記争点に関する訴訟活動は弁護士報酬相当額の算定に当たってはこれを る。しかし,1審原告らのこの点に関する主張は判決において採用されず,勝訴を得るために必要ないし相当であったとは認められないから,上記争点に関する訴訟活動は弁護士報酬相当額の算定に当たってはこれを除外すべきである。 ④また,1審原告らは,Aに対する請求についても相当の重点を置いて主張,立証に努め,上告までしたが敗訴で終わったものであるから,この点に関する訴訟活動も弁護士報酬相当額の算定に当たってはこれを除外すべきである。そして,1審原告ら側の代理人弁護士のAに対する訴訟活動が本件住民訴訟全体の訴訟活動の中で占める割合は,本件控訴審判決が主文で,「1審原告らの本件控訴により1審被告A及び参加人並びに1審原告らに生じた訴訟費用及び参加費用はすべて1審原告らの負担とし,その余の訴訟費用は,第1,2審を通じて,1審被告Aを除く1審被告らに生じたもののすべて及び1審原告らに生じたものの3分の2を同1審被告らの負担とし,その余を1審原告ら の負担とする。」としていることから,3分の1程度であったと推認される。 なお,1審原告らは,Aとそれ以外の本件住民訴訟の被告らとの損害賠償責任は連帯債務の関係にあり,Aに対する請求が棄却されても,他の連帯債務者から賠償を受けることができたのであるから,これを理由として弁護士報酬相当額を減額することはできない旨主張する。 しかしながら,上記主張は経済的利益のみをもって弁護士報酬相当額を算定する場合には妥当するが,当裁判所のように,事案の難易,時間及び労力等についても考慮して弁護士報酬相当額を算定する場合には妥当しないから,1審原告らの上記主張は採用できない。 また,1審原告らは,本件住民訴訟においてはAについての独自の証人調べは行われておらず,同人の争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化した事実は しないから,1審原告らの上記主張は採用できない。 また,1審原告らは,本件住民訴訟においてはAについての独自の証人調べは行われておらず,同人の争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化した事実はない旨主張するが,証人調べが行われていないとしても上記認定事実(原判決引用部分)からすれば,Aの争点に関する審理のために本件住民訴訟が長期化したことは容易に推認されるから,1審原告らの上記主張は採用できない。 他方,1審被告は,1審原告らの主張に対応するために1審被告が訴訟参加せざるを得なくなって,1審被告の代理人弁護士に弁護士報酬を支払うこととなり,その結果,1審原告らの主張が認められなかったのであるから,これらを弁護士報酬相当額の減算要素として考慮すべきである旨主張するが,弁護士費用は本人負担が原則であるから,1審被告の上記主張は採用できない。 ⑤なお,1審被告は,1審原告らの請負契約の無効を理由とする不当利得の返還請求は,本件控訴審判決において判断する必要がないとされているから,勝訴には必要がない主張であった旨主張する。 しかしながら,勝訴には必要がなかったとしても,本件第1審判決 では請負契約の無効が認定されており,上記認定事実(原判決引用部分)に照らしても,不相当な請求であったとまでは認められないから,弁護士報酬相当額の算定に当たって,上記請負契約の無効を理由とする不当利得の返還請求に係る訴訟活動を除外することは相当でないというべきである。 ⑥要するに,本件住民訴訟は大規模かつ複雑であり,1審原告ら側の弁護士が必要とした時間及び労力は,相当程度大の事件であったと認められる一方,1審原告ら側の弁護士の訴訟活動のうち,予定価格の上乗せ及びAの責任追及に関する部分は,本件の弁護士報酬相当額を算定する上ではこれを除外すべきである。 は,相当程度大の事件であったと認められる一方,1審原告ら側の弁護士の訴訟活動のうち,予定価格の上乗せ及びAの責任追及に関する部分は,本件の弁護士報酬相当額を算定する上ではこれを除外すべきである。 ウ他に考慮すべき事情証拠によれば,和解で終了した他の住民訴訟における弁護士報酬額について,以下のとおり認められる。 (ア)甲53の1ないし4によれば,住民訴訟で被告とされた各企業が,当該訴訟における和解調書(平成13年2月28日和解成立)で,愛知県に対し,賠償額合計5518万7250円の1割に相当する551万8725円の弁護士報酬相当額の解決金の支払を約束したことが認められる。 (イ)甲54によれば,住民訴訟で被告とされた各企業が,当該訴訟における和解調書(平成13年9月5日和解成立)で,原告らに対し,賠償額合計1億9000万円の約5%に相当する1000万円の弁護士費用の支払を約束したことが認められる。 (ウ)甲55の1によれば,住民訴訟で被告とされた各企業が,当該訴訟における和解調書(平成15年7月18日和解成立)で,原告らに対し,賠償額9億5250万円の約5%に相当する4750万円の弁護士報酬の支払を約束したことが認められる。 (エ)甲55の2によれば,住民訴訟で被告とされた各企業が,当該訴訟における和解調書(平成15年7月18日和解成立)で,原告らに対し,賠償額4750万円の約5%に相当する250万円の弁護士報酬の支払を約束したことが認められる。 エ上記ア(オ)のとおり,本件弁護士報酬相当額を算定する上での本件住民訴訟の経済的利益を5億円として本件報酬基準規程に基づいて試算してみた弁護士報酬額は4791万5000円となる。 そして,上記イ(ウ)①,②のとおり,本件住民訴訟は提訴から判決が確定するまでに約9年6か月を要 的利益を5億円として本件報酬基準規程に基づいて試算してみた弁護士報酬額は4791万5000円となる。 そして,上記イ(ウ)①,②のとおり,本件住民訴訟は提訴から判決が確定するまでに約9年6か月を要し,その間に合計50回もの口頭弁論期日及び進行協議期日が開かれて4名の証人尋問が実施され,1審原告ら側の代理人弁護士も1期日当たり平均4.4375人が出頭するなど,大規模かつ複雑であり,訴訟代理人弁護士として時間及び労力のかかる事案であったこと,1審原告らは提訴から約1年後に本件談合の主張,立証を開始したところ,その証拠は刑事事件の記録がほとんどであるが,その検討・分析,本件住民訴訟へ提出すべき書証の取捨選択については相当の労力を要したことが推認されることから,上記4791万5000円を5割増ししてみると,7187万2500円(4791万5000円×(1+0.5))となる。 他方,1審原告らは予定価格に9億円が上乗せされた旨主張し,この立証にかなりの重点を置き,そのために3名の証人調べが行われるなどしたが,上記主張は判決において否定されたから,この点に関する訴訟活動は,弁護士報酬相当額を算定するに当たっては除外すべきであること,また,1審原告らはAに対する請求についても相当の重点を置いて主張,立証に努め,上告までしたが敗訴で終わったから,この点に関する訴訟活動も弁護士報酬相当額の算定に当たってはこれを除外すべきであるところ,1審原告ら側の代理人弁護士のAに対する訴訟活動が本件 住民訴訟全体の訴訟活動の中で占める割合は3分の1程度と推認されることから,上記7187万2500円を5割減してみると,3593万6250円(7187万2500円×(1-0.5))となる。 これに,上記ウのとおり,他の住民訴訟の和解において企業が支払うことを約束し とから,上記7187万2500円を5割減してみると,3593万6250円(7187万2500円×(1-0.5))となる。 これに,上記ウのとおり,他の住民訴訟の和解において企業が支払うことを約束した弁護士報酬であり,また,本件報酬基準規程が廃止される前であるから,本件とは事情を異にするものではあるが,弁護士報酬額を損害賠償額の1割とした事例が1件,約5%とした事例が3件存在することを考慮すると,本件住民訴訟の弁護士報酬相当額は3800万円と認定するのが相当である。 争点(2)(住民訴訟の原告本人が弁護士である場合,弁護士報酬相当額を地方公共団体に請求することができるか)について当裁判所も,住民訴訟の原告が弁護士資格を有する者であっても,同人がその訴訟の追行を弁護士資格を有する者に委任し,その委任事務処理の対価を負担する場合には,弁護士資格を有しない原告の場合と同様に,旧法242条の2第7項の規定に基づいて,地方公共団体に対し,弁護士報酬相当額の支払を請求することができると解するのが相当であると判断する。その理由は,原判決の第3の2(原判決34頁の10行目から26行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点(3)(住民訴訟の代理人が訴訟追行に要した実費は旧法242条の2第7項の報酬に含まれるか)について当裁判所も,住民訴訟の代理人が訴訟追行に要した実費は旧法242条の2第7項の報酬に含まれないと判断する。その理由は,原判決の第3の3(原判決35頁の1行目から19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 結論 以上によれば,1審原告らの本件請求は,3800万円及びこれに対する平 成16年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理 結論 以上によれば,1審原告らの本件請求は,3800万円及びこれに対する平 成16年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから,これと結論を同じくする原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がない。 なお,仮執行宣言(原判決は仮執行宣言を付しておらず,1審原告らは第1の1(1)控訴の趣旨ウで仮執行宣言を求めている。)については必要とは認められないから,これを付さないこととする。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部裁判長裁判官岡光民雄裁判官林道春裁判官山下美和子

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