【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検事八木胖提出に係る松本区検察庁検察官事 務取扱検察官検事二川武作成名義の控訴趣意書記載
主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検事八木胖提出に係る松本区検察庁検察官事務取扱検察官検事二川武作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれを引用し、これに対し次のとおり判断する。 本件記録によれば、本件公訴事実は、「被告人は昭和三十四年六月十日午後四時三十分頃小型四輪乗用自動車(A外四名同乗)を運転して長野県諏訪郡a町bc番地先道路を進行し、対向進行した氏名不詳者運転の特種自動車(大型ガーデントラクター)とすれ違うにあたり、右道路は非舗装で幅員も狭くかつ凹凸が多いのに、前方並びに左側の安全を確認することなく、漫然左側へ移行して道路より約一米五十センチ下の水田に転落し、以て道路及び交通の状況に応じ公衆に危害を及ぼさせないような方法で右自動車を操縦しなかつたものである」と云うに在るところ、これに対し原判決は、本件に於ける道路の状況及び交通の状況を確定した上、被告人が右ガーデントラクターと擦れ違つてから後ハンードルを右に切り道路中央に出でんとした際、道路の凹凸の状況を確めず右に切るのが不十分であつたためバウンドによりハンドルを左にとられ道路からすり落ちて転落したか、或は未だ道路中央の安全な箇所に行かないうちにハンドルを左に戻したため左側車輪が道路からはずれ転落したか、或はまた一旦道路中央に出た後ハンドルを左に戻した際左に戻し過ぎたため乃至左に戻した後道路すれすれを進行したため転落したか、証拠上本件転落の原因たる速度と方法とが右いずれであるか確定できないから、本件公判事実はその証明がないとし、進んで本件自動車の同乗着たるA外四名は被告人と行を共にした友人同志だから道路交通取締法第八条第一項にいわゆる公衆に当らないとして無罪の言渡をしていることが認められる 公判事実はその証明がないとし、進んで本件自動車の同乗着たるA外四名は被告人と行を共にした友人同志だから道路交通取締法第八条第一項にいわゆる公衆に当らないとして無罪の言渡をしていることが認められる。 所論はこれに対し、(一)原判決は本件転落の原因につき、被告人がいかなる速度と方法で右自動車を操縦したため転落するに至つたかが証拠上明らかでないとしているが、なる程被告人の供述は、警察、検察庁、原審公判廷と一貫していない点はあるが、ハンドル操縦の具体的方法につき稍動揺しているのに過ぎなく、他の証拠と綜合すれば、公訴事実どおり、被告人が大型車とすれ違つた後、時速十粁で道幅五、五米のところから四、三米になつている道路の中央辺に出るべくハンドルを右に切り、これを左に戻す際道路の左端を確認しないまま左に戻したため自動車が転落するに至つた事実を認定し得るのに、原判決は、この点証拠の価値判断を誤まり事実を誤認したもので、その誤認が判決に影響を及ぼすこと明らかである。 (二)また原判決は、道路交通取締法第八条第一項の公衆とは不特定又は多数人を意味するが、本件自動車に同乗していた五人は前日以来行動を共にした友人等であつて不特定人でも多数人でもないから公衆とは言えないと判示しているが公衆とは単に道路を通行している他の車馬、軌道車、歩行者に限らず、道路上或は附近の人又は家屋物件等その他その操縦する車馬、軌道車に乗車している人をも包含しているものと解すべきであるから、本件同乗者も右公衆中に含まれることが明らかであり、原判決はこの点に於ても法令の解釈適用を誤つたもので、その誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであると云うに在る。 よつて案ずるに、当審に於ける事実取調の結果を参酌し、原審が適法に取り調べた証拠を綜合するときは、被告人は、昭和三十四年六月十四日午後四時三十 誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであると云うに在る。 よつて案ずるに、当審に於ける事実取調の結果を参酌し、原審が適法に取り調べた証拠を綜合するときは、被告人は、昭和三十四年六月十四日午後四時三十分頃A外四名の友人等を同乗させ小型四輪自動車を運転し、南方から長野県諏訪郡a町bc番地先道路に差し蒐つたこと、右道路は非舗装で、B川と称する小川に架設された石橋手前は道路の幅員は五、五米あるも、右石橋の幅員は四、二米、その先は概ね四、三米であり、進行方向の道路右側は、柴垣を隔ててC宅があり、左側は、高さ一、五米の斜面の土手、用水堀畦、水田が順々にあり、右石橋附近進行方向の稍左側に凹地が二箇所あること、当時右道路上には擦れ違つたガーデントラクターの外、車馬歩行者が見当らなかつたこと、以上の状況の下に於て被告人はガーデントラクターと互に速度を落し乍ら右幅員の最も広い箇所で擦れ違い、その直後、速度を時速五、六粁から十粁にあげ道路中央に出すべくハンドルを右に切り、次いで左に戻し、自動車の左前車輪を道路左端から逸脱させ自動車を転落させたことを認めることができる。所論は罪となるべき事実を略々右のとおり認定するこ<要旨>とができ、右事実が道路交通取締法第八条第一項に違反すると主張するが、しかし、道路交通取締法第八条第</要旨>一項には「車馬又は軌道車の操縦者は道路、交通、積載の状況に応じ公衆に危害を及ぼさないような速度と方法で操縦しなければならない。」とあつて、これが過失をも処罰する規定がないから、いわゆる故意犯であると云わなければならない。従つて自動車の運転者が道路又は交通の状況に応ぜず公衆に危害を及ぼす虞ある速度と方法を以て操縦しなければ右第八条第一項の違反罪とならないことが明らかである。これを本件について見るに、右転落に至つたのは、被告人が自動車を 道路又は交通の状況に応ぜず公衆に危害を及ぼす虞ある速度と方法を以て操縦しなければ右第八条第一項の違反罪とならないことが明らかである。これを本件について見るに、右転落に至つたのは、被告人が自動車を安全に操縦すべくガーデントラクターと擦れ違つた直後道路左側から幅員の稍狭い道路中央に出ずべくハンドルを右に切り、速力を時速五、六粁から十粁前後にあげ進行するや否や、道路上の凹部のため二、三回ベウンドしたためハンドルを左に戻したるも、道路の幅員、道路の左端の状況に対する観測を誤り、ハンドルを左に戻し過ぎたため、自動車の左前車輪を道路左端から逸脱させたことに因るものであることが証拠上明白であつて、結局本件転落は自動車の操縦方法を誤りハンドルを左に戻し過ぎた過失によるものと思われ、所論のように被告人に於て同乗者等いわゆる公衆に危害を及ぼす虞あることを知り乍ら、敢て道路左端を進行する等のためハンドルを左に戻す操縦方法を執つたことに因るものであるとは到底考えられない。それ故、本件に於ては、被告人が公衆に危害を及ぼす速度と方法で自動車を操縦したことにつき犯意の証明がないものと云わなければならない。なお、原判決が事実認定の参考として摘示するように、仮りに被告人がガーデントラクターと擦れ違つた真後道路中央に出ずべくハンドルを右に切り速度を時速五、六粁から十粁位に上げて進行した瞬間、路面の凹部により二、三回バウンドし右バウンドのためハンドルを左に執られそのまま自動車の左前車輪を道路左端から逸脱させ転落せしめたとしても、ハンドルを左に執られたのはもとより被告人の予期しないところであるから、被告人に道路面の凹部に注意しなかつた点のあることは兎に角公衆に危害を及ぼす虞ある方法で自動車を操縦したことにつき犯意があると云うことはできない。従つて以上説示のとおり本件公訴事 いところであるから、被告人に道路面の凹部に注意しなかつた点のあることは兎に角公衆に危害を及ぼす虞ある方法で自動車を操縦したことにつき犯意があると云うことはできない。従つて以上説示のとおり本件公訴事実についてはその証明が十分てないから、その理由は兎に角本件公訴事実につきその証明なしとして無罪の言渡をした原判決は結局正当であつて、原判決には所論のような判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認の違法はないから、爾余の控訴趣意につき判断するまでもなく、論旨は理由がない。 よつて本件検察官の控訴は理由がないから、刑事訴訟法第三百九十六条によりこれを棄却し、当審に於ける訴訟費用は、同法第百八十一条第三項により被告人には負担させないこととし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事山田要治判事滝沢太助判事鈴木良一)
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