令和2年3月18日判決言渡令和元年(ネ)第10059号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第13400号)口頭弁論終結日令和2年1月15日判決 控訴人(一審原告) 株式会社ヨコオ 同訴訟代理人弁護士三村量一中島慧福原裕次郎高橋宗鷹同補佐人弁理士相田義明 被控訴人(一審被告) 原田工業株式会社 同訴訟代理人弁護士高橋雄一郎阿部実佑季同訴訟代理人弁理士林佳輔 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由用語の略称及び略称の意味は,原判決に従い,原判決の引用部分の「別紙」をすべて「原判決別紙」と改める。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の各アンテナを製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被控訴人は,被控訴人の占有に係る原判決別紙製品目録記載の各アンテナを廃棄せよ。 4 被控訴人は,控訴人に対し,1489万8400円及びこれに対する平成30年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 係る原判決別紙製品目録記載の各アンテナを廃棄せよ。 4 被控訴人は,控訴人に対し,1489万8400円及びこれに対する平成30年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「アンテナ」とする特許権(登録番号特許第5213250号)を共有する控訴人が,被控訴人が製造,譲渡等をしている車載用アンテナが,上記特許の請求項1~6に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,被控訴人に対し,特許法100条1項に基づく原判決別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被控訴人製品」といい,原判決別紙写真目録記載の被告製品1を「被控訴人製品1」,被告製品2を「被控訴人製品2」という。)の製造等の差止め及び同条2項に基づく同各製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,又は,民法704条に基づく不当利得返還請求として,1489万8400円及びこれに対する不法行為又は催告の後である平成30年5月16日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,被控訴人製品の製造,販売等は上記特許権を侵害しないとして,控訴人の請求を棄却したため,控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実),争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり当審における主張を追加するほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2 事案の概要」2,3及び「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 〔控訴人の主張〕(1) 文言侵害ア被控訴人製品の突出部は,「給電用筒状部」に該当すること(構成要件1A 関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 〔控訴人の主張〕(1) 文言侵害ア被控訴人製品の突出部は,「給電用筒状部」に該当すること(構成要件1A及び1Dの充足性)(ア) 原判決は,被控訴人製品には給電線を通すために,突出部とは別の位置に穴部が存在すると判示するが,以下のとおり,そのような穴部は,被控訴人製品2には存在するが,被控訴人製品1には存在しない。 被控訴人製品1の突出部(甲17)被控訴人製品2の突出部(乙1)(イ) 被控訴人製品1についてa(a) 本件明細書等の段落【0004】は,単なる【背景技術】に関する記載であって,実施例に関する記載ですらない。したがって,同段落の記載を根拠として,アンテナの車両への取付けが完了した状態において空洞に給電線が通っていなければ「給電用筒状部」には当たらないという限定解釈を行うことは誤りである。「給電用筒状部」という文言に照らすと,「給電」に「用」いられる「筒状部」であれば,これに該当すると解すべきである。給電線をその内部の空洞に通すという構成が「筒状部」を給電のために用いる態様の一つであるとしても,そのことは,「筒状部」がそれ以外の態様で給電に用いられている場合について,「給電用筒状部」該当性を否定する理由とはならない。 そして,被控訴人製品の突出部は,少なくとも車両に取り付ける過程において給電線が通されるものであるから,「給電」に「用」いられる「筒状部」であり,「給電用筒状部」に該当する。 (b) 被控訴人は,アンテナベース部にコの字型部材が組み付けられる被控訴人製品1においては,突出部の上面(アンプ基板側)がコの字型部材により塞がれているから,車両に取り付ける過程において (b) 被控訴人は,アンテナベース部にコの字型部材が組み付けられる被控訴人製品1においては,突出部の上面(アンプ基板側)がコの字型部材により塞がれているから,車両に取り付ける過程において突出部は給電線を通さないと主張する。 しかし,突出部の空洞の根元(コの字型部材が存在する部分)を給電線が通っていなかったとしても,突出部の空洞のうちコの字型部材が存在しない部分を給電線が通っていれば,突出部に給電線が通されているといえる。そして,以下の写真のとおり,コの字型部材の存在にかかわらず,アンテナを車両パネルの取付孔に挿入する過程において,給電線が突出部の空洞のうちコの字型部材が存在しない部分を通る(少なくとも,給電線が突出部の空洞の一部を通る可能性は排除されない。)ことは明らかである。 したがって,コの字型部材の存在にかかわらず,被控訴人製品1の突出部は,車両に取り付ける過程において給電線が通されるという点において,「給電」に「用」いられる「筒状部」であり,「給電用筒状部」に該当する。 b(a) 仮に,「給電用筒状部」とは,アンテナの車両への取付けが完了した状態において「給電」に「用」いられる「筒状部」であると解したとしても,以下のとおり,被控訴人製品の突出部は「給電用筒状部」に該当する。 本件明細書等の記載によると,「筒状部」を「用」いた「給電」は,「筒状部」自体に電流を流すことにより行うわけではなく,給電線を用いて行われることは明らかである。したがって,アンテナの車両への取付けが完了した状態において「筒状部」が「給電」に「用」いられるとは,給電線を導出するために用いられるという意味と解するのが自然である。 被控訴人は,「給電用筒状部」に該当するかどうかはナットを取り付けた状態で判断すべきであると主張して 給電」に「用」いられるとは,給電線を導出するために用いられるという意味と解するのが自然である。 被控訴人は,「給電用筒状部」に該当するかどうかはナットを取り付けた状態で判断すべきであると主張しているが,このような考え方を前提として被控訴人製品1をみると,以下の写真のとおり,被控訴人製品1の突出部にナットが取り付けられた状態において,突出部の空洞とナットの底面(ナットの位置決め部材の底面)は,両者が一体となって被控訴人製品1の内部から同製品の後方へと通じるL字型の通線ガイドを形成し,被控訴人製品1の給電線は,当該通線ガイドを通じて被控訴人製品1の内部から同製品の後方へと導出されることになる。逆に,仮に被控訴人製品1の突出部が存在しなければ,上記のL字型の通線ガイドが形成されず,給電線は被控訴人製品の後方に向けて導出されない。 したがって,「給電用筒状部」とは「給電」に「用」いられる「筒状部」という意味であると解したとしても,被控訴人製品1の突出部は「給電用筒状部」に該当する。 (b) 被控訴人は,アンテナベース部にコの字型部材が組み付けられる被控訴人製品1においては,突出部の上面(アンプ基板側)がコの字型部材により塞がれていると主張する。 しかし,たとえ突出部の空洞の根元がコの字型部材によって塞がれていたとしても,被控訴人製品1の給電線が上記L字型の通線ガイドを通じて被控訴人製品1の内部から同製品の後方へと導出される(仮に被控訴人製品1の突出部が存在しなければ,上記のL字型の通線ガイドが形成されず,給電線は被控訴人製品の後方に向けて導出されない。)ことには,変わりがない。 したがって,被控訴人の上記主張は,控訴人の上記主張に対する反論とはならない。 (c) また,被控訴人は,被控訴人製品には給電線を通すため の後方に向けて導出されない。)ことには,変わりがない。 したがって,被控訴人の上記主張は,控訴人の上記主張に対する反論とはならない。 (c) また,被控訴人は,被控訴人製品には給電線を通すために突出部とは別の位置に穴部が存在し,給電線は,実装時に突出部の空洞ではなく当該穴部を通り,給電線の取付け向きの関係から(平行方向),給電線は穴部を通じて導出され,突出部を通じて導出されないと主張する。 しかし,ベース体の底面に単なる穴が存在するだけでは,給電線は単純に真下に向かって垂れ下がるだけであり,アンテナの後方に向けて適切に導出されない。 突出部の空洞とナットの底面(ナットの位置決め部材の底面)が一体となって,被控訴人製品1の内部から同製品の後方へと通じるL字型の通線ガイドを形成しているからこそ,被控訴人製品1の給電線は同製品の後方に向けて適切に導出されるのである。 c 仮に,「給電用筒状部」とは「実際に給電線を通すことが前提とされている」ことを前提としても,被控訴人製品1には,突出部とは別の位置に存在する穴部が存在せず,給電線が突出部の空洞の一部を通っている(少なくとも,給 電線が突出部の空洞の一部を通る可能性は排除されない。)から,被控訴人製品1の突出部は「給電用筒状部」に該当する。 (ウ) 被控訴人製品2についてa 「給電用筒状部」という文言に照らすと,「給電」に「用」いられる「筒状部」であれば,これに該当すると解すべきであるところ,被控訴人製品2の突出部は,少なくとも車両に取り付ける過程において給電線が通されるものであるから,「給電」に「用」いられる「筒状部」であり,「給電用筒状部」に該当する。 b(a) 仮に,アンテナの車両への取付けが完了した状態において「筒状部」が「給電」に「 が通されるものであるから,「給電」に「用」いられる「筒状部」であり,「給電用筒状部」に該当する。 b(a) 仮に,アンテナの車両への取付けが完了した状態において「筒状部」が「給電」に「用」いられる「筒状部」であると解したとしても,アンテナの車両への取付けが完了した状態において「筒状部」が「給電」に「用」いられるとは給電線を導出するために用いられるという意味と解するのが自然である。 そして,被控訴人は,「給電用筒状部」に該当するかどうかはナットを取り付けた状態で判断すべきであると主張しているところ,このような考え方を前提として被控訴人製品2をみると,被控訴人製品2の突出部にナットが取り付けられた状態において,突出部とナットの底面(ナットの位置決め部材の底面)は,両者が一体となって被控訴人製品2の内部から同製品の後方へと通じるL字型の通線ガイドを形成し,被控訴人製品2の給電線は,当該通線ガイドを通じて被控訴人製品2の内部から同製品の後方へと導出されることになる。このように,被控訴人製品2の突出部は,ナットと組み合わせられることにより,給電線を導出するための通線ガイドの一部を形成しており,アンテナの車両への取付けが完了した状態において「給電」に「用」いられている。逆に,仮に被控訴人製品2の突出部が存在しなければ,上記のL字型の通線ガイドが形成されず,給電線は被控訴人製品の後方に向けて導出されない。 したがって,「給電用筒状部」とは「給電」に「用」いられる「筒状部」という意味であると解したとしても,被控訴人製品2の突出部は「給電用筒状部」に該当する。 (b) 被控訴人は,被控訴人製品2の底面における仕切り(金属ベースの一部であるバー)の存在に言及する。 しかし,たとえベース体の底面に上記の仕切りが存在したと に該当する。 (b) 被控訴人は,被控訴人製品2の底面における仕切り(金属ベースの一部であるバー)の存在に言及する。 しかし,たとえベース体の底面に上記の仕切りが存在したとしても,被控訴人製品2の給電線が上記L字型の通線ガイドを通じて被控訴人製品2の内部から同製品の後方へと導出される(仮に被控訴人製品2の突出部が存在しなければ,上記のL字型の通線ガイドが形成されず,給電線は被控訴人製品の後方に向けて導出されない。)ことには,変わりがない。 したがって,被控訴人の上記主張は,控訴人の上記主張に対する反論とはならない。 イ被控訴人製品は,構成要件1F(「前記サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,」)を充足すること構成要件1Fの文言は「前記サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,」であって,「・・・係止爪が前記サブアーム部の上端に位置し,」などではないから,「係止爪」に該当する構成がサブアーム部の上端に位置しているか否かという検討方法は適切ではない。正しくは,まず,「サブアーム部の上端部」を特定した上で,当該部分が「メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪」をなしているか否か(「なす」とは,「形作る」という意味である。)を検討すべきである。 本件発明6の課題解決原理は,「アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」という構成にある。このように,本件発明6の課題解決原理においては,アンテナに抜け ことが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」という構成にある。このように,本件発明6の課題解決原理においては,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,係止爪が車体パネルの内側面(下面)に当接し,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することが本質的に重要であるから,車両パネルの内側面(下面)と当接することを妨げる他の部材が係止爪の 上方に存在してはならない。構成要件1Fの「前記サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,」は,このことを規定したものであり,具体的には,「サブアーム部の上端部」とはアンテナに上方向(抜け方向)の荷重が加わった際に車体パネルの内側面(下面)と接触し得る部分であるサブアーム部の上側の縁であり,当該部分(サブアーム部の上側の縁)が外方向に突出した係止爪をなしている(形作っている)ことを規定している。換言すると,構成要件1Fは,車両パネルの内側面(下面)と当接することを妨げる他の部材が「メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪」の上方に存在しないことを規定するものであって,「メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪」がサブアーム部の上方にあるか下方にあるかといったサブアーム部における高さ方向の位置を規定したものではない。 このような解釈は,「端」という用語の通常の意義とも合致するものである。すなわち,「端」とは「②中心から遠い,外に近い所。へり。ふち。」を意味する用語である(乙3)から,「サブアーム部の上端部」とは,その文言上も,サブアーム部の上側の縁を意味するものと解釈される。 被控訴人製品の爪部は,サブアーム部の上側の縁によって形作られており,アンテナに抜け る(乙3)から,「サブアーム部の上端部」とは,その文言上も,サブアーム部の上側の縁を意味するものと解釈される。 被控訴人製品の爪部は,サブアーム部の上側の縁によって形作られており,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,車体パネルの内側面(下面)に当接する。 したがって,被控訴人製品のサブアーム部の「上端部」(上側の縁)は,「メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし」ている(形作っている)から,被控訴人製品は構成要件1Fを充足する。 ウ被控訴人製品の爪部は「上端に向かって肉厚が増加している」こと(構成要件1G)前記イのとおり,被控訴人製品の爪部は「係止爪」に該当するところ,同爪部は「上端に向かって肉厚が増加している」から,被控訴人製品は構成要件1Gを充足する。 (2) 均等侵害 ア 「給電用筒状部」について均等侵害が成立すること(ア) 第1要件及び第2要件本件発明6の本質的部分は,「アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」という構成にあるから,給電用筒状部は本件発明6の本質的部分ではない。 また,本件発明6の給電用筒状部に給電線を通す構成を,突出部とは別の位置の穴部に給電線を通す構成に置き換えたとしても,「アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)こと た外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」ことには変わりはないから,被控訴人製品に係る構成に置き換えたとしても,本件発明6の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。 したがって,被控訴人製品は均等の第1要件及び第2要件を充足する。 (イ) 第3要件本件発明6の給電用筒状部に給電線を通す構成を,突出部とは別の位置の穴部に給電線を通す構成に置き換えることは,当業者が,被控訴人製品の製造等の時点において容易に想到することができたものである。 なお,被控訴人製品と同様に,給電線をアンテナ装置の真下ではなく後方に導出する構成は,特許第3540734号公報(甲12)に記載されているとおり,本件特許の出願時において周知技術であった。 (ウ) 第4要件被控訴人製品は,本件発明6の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく,被控訴人も,第4要件の充足性を争っていない。 (エ) 第5要件被控訴人製品が,本件発明6の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はない。 被控訴人は,客観的,外形的にみて,用途を限定しない部材が用途を限定する部材を代替すると認識しながら,あえて特許請求の範囲に,用途の限定をしない部材として記載しなかった旨を表示していたといえるから,「給電」用途の「筒状部」を備えない被控訴人製品は,本件発明6の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外された特段の事情が存在すると主張する。 しかし,本件においては,給電線を通す筒状部 「給電」用途の「筒状部」を備えない被控訴人製品は,本件発明6の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外された特段の事情が存在すると主張する。 しかし,本件においては,給電線を通す筒状部と給電線を通さない筒状部の双方を本件明細書(甲2)に明記した上で,あえて前者のみを特許請求の範囲に記載したといった事情は存在しない。したがって,控訴人は,本件特許出願時に,客観的,外形的にみて,被控訴人製品に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたとはいえず,被控訴人の上記主張は失当である。 イフック部の有無に関して均等侵害が成立すること(構成要件1F及び1G)(ア) 第1要件a 原判決は,「抜け力の増大という課題を解決するための構成」が本件発明1の本質的部分であるという判断を前提として,本件発明1における「抜け力の増大という課題を解決するための構成」は「アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときに係止爪が外側に撓んで拡がること」であるのに対し,被控訴人製品における「抜け力の増大という課題を解決するための構成」は「爪部に加えてフック部を備えることにより抜け力を保持」することであり,両者は異なるから,被控訴人製品は均等の第1要件を充足しないと結論付けた。 しかし,発明の本質的部分は,「特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定する ことによって認定されるべき」ものであり,特許発明の課題の解決手段における特徴的原理が何であるかが具体的に確定されなければならないから,特許発明の本質的部分を「Aという課題を解決するための構成」という形で抽象的に認定することは誤りである。 発明の課題の解決手段における特徴的原理が何であるかが具体的に確定されなければならないから,特許発明の本質的部分を「Aという課題を解決するための構成」という形で抽象的に認定することは誤りである。 原判決が採用した上記判断枠組みによると,特許発明の課題解決原理(課題の解決手段における特徴的原理)が「X」であり,対象製品等の課題解決原理が「X+α」である場合には,両者が一致しないことから,均等の第1要件を充足しないという結論となる。しかし,特許発明の課題解決原理が「X」であり,対象製品等の課題解決原理が「X+α」である場合には,対象製品等は特許発明の課題解決原理である「X」を共通に備えているから,「+α」の存在にかかわらず,均等の第1要件を充足することとなる。たとえ対象製品等が,特許発明の課題解決原理(本質的部分)に加えて何らかの付加的な構成を具備していたとしても,そのことをもって均等の第1要件が否定されることにはならない。 b 本件においては,①本件発明6に特有の技術的思想を構成する特徴的部分を具体的に確定し,②被控訴人製品が当該部分を共通に備えているかどうかを検討しなければならない。 本件発明6の課題解決原理(本質的部分)は,「アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」という構成にある。同様に,被控訴人製品においても,抜け方向の荷重が加わると,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部に設けられた爪部が内向きに変位して車体パネルから外れる(すっぽ抜ける)という事象が防止され け方向の荷重が加わると,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部に設けられた爪部が内向きに変位して車体パネルから外れる(すっぽ抜ける)という事象が防止されている。したがって,被控訴人製品は,本件発明6の本質的部分を共通に備えている。 したがって,被控訴人製品は,本件発明6の本質的部分を具備する。 c 原判決は,被控訴人製品は,本件発明1の実施品に匹敵する抜け力を備えているということができ,その抜け力の大きさは,同製品がフック部を備えることに起因しているものと考えるのが自然であり,少なくとも爪部の外部への撓みによるものではないと判示する。 しかし,被控訴人製品においては,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた爪部が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない。 そして,このことは,フック部が存在したとしても,全く変わりがない。 なぜならば,仮に被控訴人製品が上記の原理を利用していなければ,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,サブアーム部に外向きの回転力が加わることがないから,フック部が存在したとしても,従来例の仮固定用ホルダのように,係止爪が内側に向かって変位して,車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)からである。フック部はサブアーム部の内側に位置しているから,係止爪が内側に向かって変位することを防止するわけではない。フック部は,サブアーム部に外向きの回転力が加わり,サブアーム部が外側に向かって変位しているからこそ,車体パネルと接触するのである。したがって,仮にフック部の存在によって抜け力が更に わけではない。フック部は,サブアーム部に外向きの回転力が加わり,サブアーム部が外側に向かって変位しているからこそ,車体パネルと接触するのである。したがって,仮にフック部の存在によって抜け力が更に向上しているとしても,それは本件発明6の課題解決原理を前提としたものであり,あくまでも付加的要素(「+α」)にすぎない。 d 被控訴人は,本件発明の本質的部分は,挿入力は弱いままで,抜け力を強くするための構成,具体的には,係止爪が外側に撓んで拡がる構成であるが,被控訴人製品ではサブアーム部の爪部の上部にフック部が設けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmであるから,抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は外側方向に0.3mmしか動かず,すぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪部がそれを超えて外側に動くことは抑制されているから本件発明の本質的部分を備えていないと主張する。 しかし,被控訴人製品は,本件発明6の課題解決原理を利用するものであり,このことは,サブアーム部の爪部にフック部が付属していたとしても何ら異なるものではない。仮に,フック部の存在によって抜け力が更に向上しているとしても,あくまでも付加的要素(「+α」)にすぎず,被控訴人製品が本件発明6の課題解決原理(X)を備えることには変わりがないから,被控訴人の上記主張は失当である。 また,本件発明6の課題解決原理においては,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することが重要なのであって,サブアーム部が外向きにどの程度撓むか(撓みが大きいか小さいか)は問題ではない。すなわち,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生し,サブアーム部が外側に撓んでさえいれば 程度撓むか(撓みが大きいか小さいか)は問題ではない。すなわち,アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生し,サブアーム部が外側に撓んでさえいれば,その撓みの量が0.3mmであるか,0.5mmであるか,あるいは1mmであるかといったことは,被控訴人製品が本件発明6の課題解決原理を利用しているという事実とは無関係である。 e 被控訴人は,乙14実験の結果を根拠として,被控訴人製品の課題解決原理はフック部を備える点にあり,被控訴人製品は本件発明6の課題解決原理を利用するものではないと主張する。 (a) しかし,仮に,乙14実験の結果が,フック部を切除すると抜け力が低下することを示すものであるとしても,そのことは,被控訴人製品が本件発明6の課題解決原理を利用していないことを意味するものではない。すなわち,本件発明6の課題解決原理が「X」であり,被控訴人製品の課題解決原理が「X+α」であれば,被控訴人製品は本件発明6の課題解決原理を利用しているのであって,フック部を切除した場合に抜け力が小さくなることは,単に,ここでいう「+α」の影響が存在することを示すものにすぎない。仮に「+α」の影響が大きいとしても,その事実は「X」の存在を否定するものではない。被控訴人製品の課題解決原理に「X」が含まれるか否かは,「+α」の影響が大きいか否かとは別途独立に検討されるべき問題である。 (b) 控訴人は,被控訴人製品を購入し,乙14と同様に,フック部の切除前と切除後について被控訴人製品の抜け力を測定する実験を行ったが,その結果,フック部の切除前と切除後とを比較すると,切除後の方が多少抜け力が低下するという傾向がみられたものの,フック部の切除後においても200N以上の抜け力が維持されている 定する実験を行ったが,その結果,フック部の切除前と切除後とを比較すると,切除後の方が多少抜け力が低下するという傾向がみられたものの,フック部の切除後においても200N以上の抜け力が維持されている(甲33)。 これに対し,乙14実験の結果は,フック部の切除前には少なくとも200N以上もあった抜け力が,フック部の切除後は30.4Nや49.5Nなどの極端に小さい値に急激に低下しているものが存在する一方で,フック部の切除後は137. 7Nとなり,抜け力が大きく低下していないものも存在するなど,フック部の切除後の抜け力には大きなばらつきがあり,その内容は明らかに不整合かつ不自然である。また,そもそも,フック部を切除した被控訴人製品は本件発明6の実施品であるところ,本件発明6の実施品であるにもかかわらず30N程度の抜け力しか備えないことは,サブアーム部の下端部が破損しているなどの特別な事情がなければ考え難いことである。 したがって,乙14実験の結果は信用できない。 (イ) 第2要件前記(ア)cのとおり,本件発明6の係止爪にフック部を付属させたとしても,「アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた爪部が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」という点には変わりがない。したがって,被控訴人製品に係る構成に置き換えたとしても,本件発明6の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。 (ウ) 第3要件本件特許の出願日である平成20年12月18日の後,被控訴人が被控訴人製品2を製造した(遅くとも)平成26年6月までの間に公開された,ドイツ公開特許 公報 る。 (ウ) 第3要件本件特許の出願日である平成20年12月18日の後,被控訴人が被控訴人製品2を製造した(遅くとも)平成26年6月までの間に公開された,ドイツ公開特許 公報DE102011010290A1(甲20)をはじめとする複数の特許公報(甲20~23)には,フック部を付属させた係止爪を有する,車載用アンテナの(仮)固定用ホルダが開示されている。例えば,上記のドイツ公開特許公報DE102011010290A1のFig.1,Fig.2等には,フック部を付属させた係止爪を有する,車載用アンテナの仮固定用ホルダが開示されている。 Fig.1のうち,部位13を抜粋・拡大した図したがって,甲20~23に接した当業者が,被控訴人製品の製造開始時である平成26年6月の時点において,本件発明1の係止爪に対しフック部を付属させることを容易に想到することができたことは,明らかである。 (エ) 第5要件被控訴人製品が,本件発明6の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はない。 〔被控訴人の主張〕(1) 文言侵害ア構成要件1A及び1Dの充足性(ア) 被控訴人製品1について a 「給電用筒状部」とは,その文言の通常の意味に照らして,「給電」に「用」いられる「筒状部」と解され,受信した電気信号を車体内へ供給するために用いられるもの(給電線を通すために用いられるもの)であり,受信した電気信号を車体内へ供給するために用いることができるもの(給電線を通すことができるもの)であれば足りると解することはできない。 控訴人の主張によると,給電線を通すことができる形態を持つ部材は,それが電力を供給する機能や目的を有しなくとも, ができるもの(給電線を通すことができるもの)であれば足りると解することはできない。 控訴人の主張によると,給電線を通すことができる形態を持つ部材は,それが電力を供給する機能や目的を有しなくとも,すべて「給電用」に当たることになり,相当ではない。 b アンテナベース部にコの字型部材が組み付けられる被控訴人製品1においては,以下の写真のとおり,突出部の上面(アンプ基板側)がコの字型部材により塞がれているから,「車両への取付けが完了した状態」であっても,「車両に取り付ける過程」であっても,突出部は給電線を通さない。被控訴人製品には給電線を通すために突出部とは別の位置に穴部が存在し,給電線は,実装時に突出部の空洞ではなく当該穴部を通る。上記形状に加え,給電線の取付け向きの関係から(平行方向),給電線は穴部を通じて導出され,突出部を通じて導出されない。 コの字型部材及びナットを外した突出部の上面(アンプ基板側)を突出部の上面(アンプ基板側) 塞ぐコの字型部材c 被控訴人製品1には,給電線を通すために,突出部とは別の位置に 穴部が存在しているから,被控訴人製品1の突出部は,「車両への取付けが完了した状態」であっても,「車両に取り付ける過程」であっても,給電線を通すものではない。 (イ) 被控訴人製品2について被控訴人製品2の突出部は,「車両への取付けが完了した状態」であっても,「車両に取り付ける過程」であっても,給電線を通すものではなく,給電線を自動車の後方に向けて導出するものでもない。 すなわち,以下の写真のとおり,アンプ基板側が金属ベースの一部であるバーで塞がれており,さらにコの字型部材がバーの上のアンプ基板側からはめ込まれている被控訴人製品2におい て導出するものでもない。 すなわち,以下の写真のとおり,アンプ基板側が金属ベースの一部であるバーで塞がれており,さらにコの字型部材がバーの上のアンプ基板側からはめ込まれている被控訴人製品2においては,突出部の上面(アンプ基板側)が金属ベース及びコの字型部材により塞がれているから,「車両への取付けが完了した状態」であっても,「車両に取り付ける過程」であっても,突出部は給電線を通さない。被控訴人製品2には,給電線を通すために突出部とは別の位置に穴部が存在し,給電線は,実装時に突出部の空洞ではなく当該穴部を通る。上記形状に加え,給電線の取付け向きの関係から(平行方向),給電線は穴部を通じて導出され,突出部を通じて導出されない。 突出部の上面(アンプ基板側) 金属ベースを塞ぐコの字型部材を塞ぐ金属ベース イ構成要件1Fの充足性(ア) 控訴人は,構成要件1Fの「サブアーム部の上端部をなす係止爪」が,車両パネルの内側面(下面)と当接することを妨げる他の部材が「係止爪」の上方に存在しないことを規定するものであって,サブアーム部の上方にあるか下方にあるかといったサブアーム部における高さ方向の位置を規定したものではないと主張する。 しかし,構成要件1Fの「係止爪」は,サブアーム部の「上」という高さ方向の位置の「端」の「部」分をなすことは明らかであり,サブアーム部の「上」という高さ方向の位置の「端」の「部」分をなす「係止爪」は,当然,サブアーム部の「上」という高さ方向の位置の「端」の「部」分にあるということにある。 (イ) また,控訴人は,被控訴人製品のサブアーム部の上端部が爪部をなしている(被控訴人製品の爪部は,サブアーム部の上側の縁によって形作られている)と主張する。 にあるということにある。 (イ) また,控訴人は,被控訴人製品のサブアーム部の上端部が爪部をなしている(被控訴人製品の爪部は,サブアーム部の上側の縁によって形作られている)と主張する。 被控訴人製品のサブアーム部の上端部はフック部をなしており,爪部は最上端(フック部の先端)と最下端(サブアーム部の付け根)の中間付近に位置しているから,爪部は,サブアーム部の上端部をなして(上側の縁によって形作られて)いない。 (2) 均等侵害ア 「給電用筒状部」についての均等侵害(ア) 第1要件及び第2要件給電用筒状部も,本件発明6の本質的部分の少なくとも一部を構成する。本件発明6の主たる課題は「抜け力の増大」であり,それは「取付作業性の改善を図ることが可能なアンテナを提供すること」(段落【0015】)と関連している。そして,給電用筒状部が給電線を内部に包摂することによって取付作業の際に給電線が給電用筒状部の軸方向に固定される(段落【0004】には「給電線を通す」とある。)。この結果,ナットを給電用筒状部の外周に螺合させてアンテナを固定する際 に給電線がじゃまにならず取付作業性の改善を図ることが可能となる。被控訴人製品は給電線を通すために,突出部とは別の位置に穴部が存在し,実装時には突出部の空洞ではなく,当該穴部を給電に用いている。したがって,本件明細書等の「取付作業性の改善」に係る課題を解決していないから,給電用筒状は本件発明の課題と無関係とはいえない(イ) 第3要件被控訴人製品の製造時点において,当業者が突出部を給電に用いる構成を,突出部とは別の位置に穴部を設け,当該穴部を給電に用い,突出部を給電に用いない構成に置き換えることを容易に想到できたものではない。 (ウ) 第5要件 ,当業者が突出部を給電に用いる構成を,突出部とは別の位置に穴部を設け,当該穴部を給電に用い,突出部を給電に用いない構成に置き換えることを容易に想到できたものではない。 (ウ) 第5要件請求項中の「給電用筒状部」に関しては,用途を限定しない権利範囲の設定もその選択肢として存在したにもかかわらず,あえて,「給電」という用途に限定して出願されたことがその特許請求の範囲の文言上明らかであり,「給電」用途の「筒状部」を備えない被控訴人製品は出願時の特許請求の範囲から明確に除外されている。このような用途の限定がある場合,第三者は,「給電」の用途ではない部材は「給電用筒状部」という特許請求の範囲から除外されたものであると信頼して行動する。 このように,客観的,外形的にみて,用途を限定しない部材が用途を限定する部材を代替する(すなわち,用途を限定しない権利範囲の設定もその選択肢として存在したこと)と認識しながら,あえて特許請求の範囲に(用途の限定をしない部材として)記載しなかった旨を表示していたといえるから,「給電」用途の「筒状部」を備えない被控訴人製品は,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外された特段の事情が存在する。 イフック部の有無に関する均等侵害(ア) 第1要件本件各発明の本質的部分は,挿入力は弱いままで,抜け力を強くするための構 成(従来技術との対比でいうと,特に抜け力の強化のための構成),具体的には,係止爪が外側に撓んで拡がる構成であるが,被控訴人製品ではサブアーム部の爪部の上部にフック部が設けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmである(乙13)から,抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は外側方向に0. 3mmしか動かずすぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪 フック部が設けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0.3mmである(乙13)から,抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は外側方向に0. 3mmしか動かずすぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪部がそれを超えて外側に動くことは抑制されているから本件各発明の本質的部分を備えていない。 (イ) 第2要件本件各発明は,サブアーム部の上端部が係止爪をなす構成であることにより,係止爪が外側に撓んで拡がる作用効果を奏するが,被控訴人製品ではサブアーム部の爪部の上部にフック部が設けられ,当該フック部と車体のルーフ孔の距離が0. 3mmであるから,抜け方向に荷重が加わった際に,フック部は外側方向に0.3mmしか動かず直ぐに車体のルーフの内側面に当たり,爪部がそれを超えて外側に動くことは抑制され,したがって,係止爪が外側に撓んで拡がる作用効果を奏しない。 (ウ) 第3要件本件発明6において,サブアーム部の上端部が係止爪をなす構成は本件発明6の課題解決との関係で本質的部分に当たるから,本件発明6のサブアーム部の上端部が係止爪をなす構成に変えてサブアーム部の上端部がフック部をなす構成を適用しサブアーム部が外側に撓まない構成に変更するのには阻害要因が存在し,組み合わせの動機付けが存在しない。したがって,当業者は,被控訴人製品の製造等の時点において,本件発明6のサブアーム部の上端部が係止爪をなす構成をサブアーム部の上端部がフック部をなす構成に変更することを容易に想到することはできない。 (エ) 第5要件控訴人は,本件発明6の特許出願手続において,乙6意見書意見書で,「引用発明3における爪部28a,28bは下部の肉厚が増加していますが,これは単に段部を複数形成するためであり,本願発明のようにサブアーム部の下端部(肉厚の薄 続において,乙6意見書意見書で,「引用発明3における爪部28a,28bは下部の肉厚が増加していますが,これは単に段部を複数形成するためであり,本願発明のようにサブアーム部の下端部(肉厚の薄 い部分)を支点として揺動させたり,上端を厚肉にして引っ掛かり量を増加させたりする目的,構成ではありません」(乙6)と主張しており,本件発明6が「サブアーム部の・・・上端を厚肉にして引っ掛かり量を増加させたりする目的,構成」であると主張している。 したがって,控訴人は,本件発明6の特許出願手続において,特許請求の範囲から,サブアーム部の上端を厚肉にせず,引っ掛かり量を増加させない構成を除外している。 被控訴人製品は,サブアーム部の上端部において,上端に向かって肉厚が減少するフック部を採用したものであり,サブアーム部の上端を厚肉にしない構成であって,サブアーム部の肉厚部分では引っ掛かり量を増加させない構成である。被控訴人製品で抜け力が増加するのは,サブアーム部の肉厚部分による効果ではなくフック部の存在によるものである。 したがって,被控訴人製品は,本件発明6の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されている特段の事情が存在する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被控訴人製品は,構成要件1F,1Gを充足せず,また,均等侵害も成立しないものと判断する。 その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由欄の「第4 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決38頁20行目冒頭から39頁10行目末尾までを次のように改める。 「特許請求の範囲の記載及び前記(1)で認定した本件明細書等の記載によると,本件各発明の内容は,以下のとおりであると認められる。 ア車載用ア 冒頭から39頁10行目末尾までを次のように改める。 「特許請求の範囲の記載及び前記(1)で認定した本件明細書等の記載によると,本件各発明の内容は,以下のとおりであると認められる。 ア車載用アンテナを車体パネルに搭載するに当たって当該アンテナを仮保持するための仮固定ホルダについて,従来技術(以下「明細書従来技術」という。)は, 取付基部と,一対のアーム部と,アーム部下端部に肉厚を変化させることで一体に形成された係止爪とを有し,同アーム部は,アンテナ挿入時に内側に撓んで,取付孔を通過し,車体パネルの内側面に引っ掛かってアンテナを仮保持するものである。 この明細書従来技術によると,アンテナ上方向(抜け方向)に荷重が加わったときは,係止爪には撓み機能(外側に拡がる機能)はないため,抜け力(抜くのに必要な力)を十分大きく確保することができず,抜け力を大きくするために係止爪の引っ掛かり量を多くすると,挿入力が大きくなり作業性が悪化する問題があった。 (段落【0003】~【0011】,【0013】,【0014】,図5~7)イそこで,本件各発明は,仮固定用ホルダの構成について,可撓性樹脂で成形し,給電用筒状部の外壁面に沿って下方に延びる複数のメインアーム部と,同メインアーム部に対して下端部にて繋がったサブアーム部とを有し,同サブアーム部の下端部はサブアーム部が外側に拡がるための支点となり,同サブアーム部の上端部はメインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,かつ同係止爪は上端に向かって肉厚が増加しているものとした。 同構成によると,アンテナ挿入時には,メインアーム部及びサブアーム部の両部材が内側に動くため,より小さい挿入力で取付孔への挿入が可能となり,挿入性の向上を図ることができる。また,仮保持後,抜け方向に荷重が加わった ,アンテナ挿入時には,メインアーム部及びサブアーム部の両部材が内側に動くため,より小さい挿入力で取付孔への挿入が可能となり,挿入性の向上を図ることができる。また,仮保持後,抜け方向に荷重が加わったときは,車体パネルの内側面に係止爪の上端が当たり,サブアーム部が外側に拡がるため,抜け力を増大させることができる。さらに,上記のとおり,挿入力が向上したため,係止爪の突出量を多くすることができ,これにより,抜け力の増大を図ることができる。 このように,本件各発明の上記構成により,仮固定用ホルダの挿入力は小さいままで,抜け力を大きくすることが可能となる。 (特許請求の範囲,段落【0013】,【0015】,【0025】,【0029】,【0032】,【0033】,【0035】~【0038】,図3,4)」(2) 原判決39頁12行目冒頭から40頁24行目末尾までを削る。 (3) 原判決40頁25行目の「(2)」を「(1)」に,26行目の「ア」を「ア(ア)」に改め,41頁17行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「(イ) 控訴人は,「サブアーム部の上端部」とは抜け方向の荷重が加わった際に車体パネルの下面と接触し得る部分であるサブアーム部の上側の縁であり,当該部分が外方向に突出した係止爪をなしていれば,構成要件1Fを充足すると主張する。 しかし,控訴人のように解することができないことは,上記(ア)のとおりである。 また,構成要件1E,1Fは,「前記サブアーム部は前記下端部が前記サブアーム部の撓みの支点となり,前記サブアーム部の上端部は・・・係止爪をなし」というものであるところ,そのうちの「サブアーム部の下端部」と「サブアーム部の上端部」との各文言は対をなしており,「サブアーム部の下端部」とは,サブアーム部の下の先端を意味し,「サブ 係止爪をなし」というものであるところ,そのうちの「サブアーム部の下端部」と「サブアーム部の上端部」との各文言は対をなしており,「サブアーム部の下端部」とは,サブアーム部の下の先端を意味し,「サブアーム部の上端部」とは,サブアーム部の上の先端を意味するものと解するのが自然であり,前記1で認定した本件明細書等の記載も,このような解釈を前提としているものと解される。 控訴人の主張のように「サブアーム部の上端部」を「サブアーム部の上側の縁」を意味するものと解すると,構成要件1Fの「サブアーム部の下端部」と「サブアーム部の上端部」との文言が対応しなくなり,また,構成要件1Fが,係止爪のうち車体パネルの下面と当接する部分は係止爪を形成するという当然のことを規定したことになり,不自然である。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。」(4) 原判決41頁12行目の「認められ」の後に「(甲3,乙1,2,13)」を,26行目の「はみ出していること」の次に「(乙2)」を,42頁16行目の「認められる」の次に「(甲3,乙1,2,13)」を,それぞれ加える。 (5) 原判決42頁6行目の「(3)」を「(2)」に,7行目の「(2)」を「(1)」に,それぞれ改める。 (6) 原判決43頁7行目の「(4)」を「(3)」に改め,8行目の「構成要件1A及び1Dを充足せず,また」を削る。 (7) 原判決43頁12行目の「被告製品による均等侵害の成否」を「フック部の有無に関する均等侵害の成否」に改める。 (8) 原判決43頁13行目冒頭から16行目末尾までを削る。 (9) 原判決44頁12行目冒頭から47頁9行目末尾までを次のように改める。 「ア均等侵害が成立するための第1要件にいう本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来 を削る。 (9) 原判決44頁12行目冒頭から47頁9行目末尾までを次のように改める。 「ア均等侵害が成立するための第1要件にいう本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であり,このような特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと解される。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。 ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところが,出願時の従来技術に照らして客観的に不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。 イ本件特許出願の審査において,特許庁は,本件各発明は,平成15年8 月22日に公開された特開2003-234608号公報(甲30。以下「引用文献1」という。)等の文献に基づき,当業者が容易に発明し得た旨の拒絶理由通知書を送付した(乙6)ことから,引用文献1に記載された技術について検討する。 (ア) 引用文献1には,以下のとおりの記載がある(甲30)。 【0010】本発明の自動車用アンテナの実施の形態の構成例を図1ないし図3に示す。図1は本発明の自動車用アンテナの実施の形態の特徴ある構成を分解して示す図であり,図2は本発明の自動車用アンテナの実施の形態における構成の正面図であり,図3は本発明の自動車用アンテナの実施の形態にお 図1は本発明の自動車用アンテナの実施の形態の特徴ある構成を分解して示す図であり,図2は本発明の自動車用アンテナの実施の形態における構成の正面図であり,図3は本発明の自動車用アンテナの実施の形態における車体の下部に位置する要部を拡大して示す図である。これらの図に示すように本発明の自動車用ア ンテナは,アンテナ本体1と,アンテナ本体1を車体に取り付ける取付ナット2とから構成され,アンテナ本体1は,エレメント部8とエレメント部8が固着されるアンテナカバー1aとからなっている。さらに,エレメント部8の上端にはエレメント部8より拡大された径のアンテナトップが設けられており,エレメント部8の下部はゴム系等の柔軟性のある合成樹脂によりモールドされたモールド部とされている。このモールド部には,エレメントに接続されるトラップコイルを内蔵するようにしてもよい。 【0012】そして,エレメント部8が固定されるアンテナカバー1aは,ベース部3に嵌着され,かつ,一対の取付ビスにより螺着・固定されている。さらに,ベース部3には固定板付き基板ブラケット9が固着されており,この基板ブラケット9にはプリント基板10が固着される。すなわち,アンテナカバー1aとベース部3とで形成される空間には,プリント基板10が配設され,このプリント基板10に整合回路や増幅回路および分波器が組み込まれている。ベース部3の下面には,角形状の矩形状突出部14と,矩形状突出部14から延伸した断面円形の円筒状突出部13が形成されている。アンテナ本体1が取り付けられるルーフパネル20には,前記図11(b)に示すような矩形状のアンテナ取付孔21が形成されて,このアンテナ取付孔21に円筒状突出部13の基部とされる矩形状突出部14が挿入されている。この矩形状のアンテナ取付孔21に矩形状突出部1 11(b)に示すような矩形状のアンテナ取付孔21が形成されて,このアンテナ取付孔21に円筒状突出部13の基部とされる矩形状突出部14が挿入されている。この矩形状のアンテナ取付孔21に矩形状突出部14を挿入することで,取付ナット2を締め付ける時のアンテナ取付孔21に対するアンテナ本体1の回り止めを行うことができる。なお,防水のためベース部3の周縁にはゴム等からなるパッド1bが嵌合されると共に,矩形状突出部14にはリング状とされた弾性体からなるOリング5が嵌着されて,アンテナ取付孔21に挿入されている。 【0013】また,矩形状突出部14および円筒状突出部13の内部には貫通孔と貫通孔に沿った切溝が形成されており,この貫通孔と切溝を介して信号を伝達する同軸ケーブル6,および,アンテナカバー1a内に収納されたプリント基板1 0に電源を供給する図10に示す如き電源ライン7が引き出されている。さらに,図4に示すベース部3の詳細図に示すように矩形状突出部14の両側面の位置にベース部3から貫通して細長い角孔14aが2つ形成され,さらに,図3に拡大して示すように,2つの角孔14aが延伸する位置の円筒状突出部13に対向するように切欠部13bが形成されている。この切欠部13bは円筒状突出部13の中途まで形成されている。 【0014】ベース部3に形成された2つの角孔14aには固定板付き基板ブラケット9の折曲された対向する2つの側板がそれぞれ挿通されて図2および図3に示すようにベース部3の裏面へ突出している。この側板にはそれぞれ外側へ傾斜するように形成されたバネ片4aが形成されている。このバネ片4aは,ルーフパネル20に形成された矩形状のアンテナ取付孔21を通過する際にはアンテナ取付孔21の縁部により内側へ曲げられてアンテナ取付孔21を通過し,通過 たバネ片4aが形成されている。このバネ片4aは,ルーフパネル20に形成された矩形状のアンテナ取付孔21を通過する際にはアンテナ取付孔21の縁部により内側へ曲げられてアンテナ取付孔21を通過し,通過すると元の図示する形状に戻ってアンテナ取付孔21より突出するため,円筒状突出部13および矩形状突出部14をアンテナ取付孔21に挿通すると,バネ片4aがルーフパネル20の裏面に係合してアンテナ本体1がルーフパネル20に仮止めされる。 【0015】上記したように,円筒状突出部13に対向する切欠部13bを形成するのは,固定板付き基板ブラケット9の側板は矩形状突出部14を超えて円筒状突出部13まで達しており,固定板付き基板ブラケット9の側板が円筒状突出部13の外周面より突出していると,円筒状突出部13をアンテナ取付孔21に挿通する際に突出している固定板付き基板ブラケット9の側板がアンテナ取付孔21に衝突して,スムースに円筒状突出部13を挿通できなくなるからである。なお,円筒状突出部13および矩形状突出部14をアンテナ取付孔21に挿通した後はバネ片4aの作用によりアンテナ本体1はルーフパネル20に仮止めされる。したがって,アンテナ本体1を支えることなく車体内から取付ナット2を仮止めされたアンテナ本体1の円筒状突出部13の外周面に形成されたネジ部13aに螺合することができる。この取付ナット2は三角状に突出するワッシャー部2aとナット部2b からなり,ナット部2bに対してワッシャー部2aは回転可能に組み立てられている。すなわち,ナット部2bを回転させていくとワッシャー部2aの三角状の先端がルーフパネル20の裏面に食い込むようになり,ルーフパネル20にアンテナ本体1を確実に固着することができるようになる。このようにして,一人の作業者でアンテナ本体1 とワッシャー部2aの三角状の先端がルーフパネル20の裏面に食い込むようになり,ルーフパネル20にアンテナ本体1を確実に固着することができるようになる。このようにして,一人の作業者でアンテナ本体1をルーフパネル20に取り付けることができる。 【0016】次に,ベース部3の詳細構成を図4を参照しながら説明する。ただし,図4(a)はベース部の平面図,同図(b)はその側面図,同図(c)はその裏面図である。ベース部3は金属製のダイキャストとされており,その形状は略楕円形とされている。そのほぼ中央には貫通孔13cが形成され,ベース部3の裏面から突出するよう形成されている矩形状突出部14および円筒状突出部13まで貫通孔13cは及んでいる。また,貫通孔13cの一面には図4(c)に示すように切溝13dが形成されている。この切溝13dは貫通孔13c内に挿通された同軸ケーブル6および電源ライン7を図2に示すようにルーフパネル20に略直交して引き出すだけではなく,切溝13dに同軸ケーブル6を位置させることによりルーフパネル20に略平行に同軸ケーブル6および電源ライン7を引き出せるようにするためである。また,ベース部3の表面から貫通孔13cに挿通された同軸ケーブル6および電源ライン7を,表面に沿って引き出せるように貫通孔13cの上部は図4(b)に示すように傾斜されていると共に,貫通孔13cの一部を覆うようにガイド3cが突出して表面に設けられている。 【0017】また,図4(a)(c)に示すようにベース部3の表面から裏面までに貫通する細長い角孔14aが2つ形成されている。この角孔14aは,前述したように固定板付き基板ブラケット9のバネ片4aが形成された側板が挿通される孔である。さらに,図4(a)に示すようにベース部3の表面には三角形の頂点に位置して3つの係合 る。この角孔14aは,前述したように固定板付き基板ブラケット9のバネ片4aが形成された側板が挿通される孔である。さらに,図4(a)に示すようにベース部3の表面には三角形の頂点に位置して3つの係合突起3aが形成されている。この係合突起3aは,後述する固定板付き基板ブラケット9をカシメて固着するための突起である。さらにまた,ベース部3の略楕円形の周縁に沿ってアンテナカバー1aが嵌合される壁が立設さ れている。さらにまた,ベース部3の裏面には嵌合されたアンテナカバー1aをベース部3に固着する2本のネジを挿通するネジ孔3bが形成されている。 【0018】次に,固定板付き基板ブラケット9の詳細構成を図5を参照しながら説明する。図5に示す固定板付き基板ブラケット9は固定板と基板ブラケットとを一体化して構成した固定板の第1の例であり,金属板を打ち抜いて,次いで折曲加工をすることにより作成されている。図5(a)は固定板付き基板ブラケット9の平面図,同図(b)はその側面図,同図(c)は正面図である。これらの図に示すように固定板付き基板ブラケット9は,平板状の本体9aと,本体9aに対して略直交するよう折曲された対向する2枚の側板4とから構成されている。側板4にはコ字状の切溝4eが設けられることにより矩形状のバネ片4aが形成され,図示するようにバネ片4aの上端が側板4から離れるように折曲されている。 【0019】また,本体9aには三角形の頂点に位置して3つの係合孔9bが形成されていると共に,その略中央には略半円形の切欠部9fが形成されている。 係合孔9bは,それぞれベース部3に形成された係合突起3aに係合する孔であり,側板4をベース部3の角孔14aに挿通して係合突起3aに係合孔9bを係合した後,係合突起3aをカシメることにより,固定板付き基板ブラケ ,それぞれベース部3に形成された係合突起3aに係合する孔であり,側板4をベース部3の角孔14aに挿通して係合突起3aに係合孔9bを係合した後,係合突起3aをカシメることにより,固定板付き基板ブラケット9をベース部3に固着することができる。切欠部9fは,固定板付き基板ブラケット9をベース部3に固着する際に,ベース部3に形成されたガイド3cを固定板付き基板ブラケット9から上に突出させてじゃまにならないようにするための切欠である。さらに,本体9aには,前部および後部に一対の基板支持部9c,9dが形成されている。 この基板支持部9c,9dには,整合回路や増幅回路および分波器が組み込まれたプリント基板10が挟持されてハンダ付けされることにより電気的かつ機械的に支持されるようになる。さらにまた,本体9aの前部には傾斜した膨出部9eが形成されている。この膨出部9eは,貫通孔13cに挿通された同軸ケーブル6および電源ライン7を引き出す際のガイドとされる。 【0020】前記したように構成されたベース部3に固定板付き基板ブラケッ ト9を固着してアンテナ本体1を組み立て,ルーフパネル20に装着する際の各段階の図を図6(a)(b)(c)に示す。図6(a)は,ルーフパネル20に形成した矩形状のアンテナ取付孔21にアンテナ本体1における円筒状突出部13の先端部を挿入した段階の図であり,側板4に形成されたバネ片4aはまだアンテナ取付孔21に挿入されていない。図6(b)は,アンテナ取付孔21に円筒状突出部13をほぼ挿入した段階の図であり,側板4に形成されたバネ片4aはアンテナ取付孔21を通過してルーフパネル20の裏面に当接している。これにより,アンテナ本体1がルーフパネル20に仮止めされるので,アンテナ本体1を支えることなく円筒状突出部13のネジ部13aに取 アンテナ取付孔21を通過してルーフパネル20の裏面に当接している。これにより,アンテナ本体1がルーフパネル20に仮止めされるので,アンテナ本体1を支えることなく円筒状突出部13のネジ部13aに取付ナット2を螺合可能となる。なお,側板4は円筒状突出部13に形成された切欠部13bに位置しているので,側板4の面が円筒状突出部13の外周面より外側へ突出しないようになることから,側板4はアンテナ取付孔21の縁部に衝突することなくスムースに挿通することができるようになる。 【0021】図6(c)は,アンテナ取付孔21に挿入した円筒状突出部13の外周に形成されたネジ部13aに取付ナット2を螺合した段階の図であり,螺合された取付ナット2のワッシャー部2aの先端の三角状の先端がルーフパネル20の裏面に食い込むようになされている。これにより,アンテナ本体1がルーフパネル20に確実に固着される。また,矩形状突出部14の周囲に嵌合されたOリング5がベース部3の裏面とルーフパネル20間で押し潰されてルーフパネル20の表面からの水の浸入を防止している。 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 (イ) 前記(ア)の引用文献1の記載からすると,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「下面に円筒状突出部13を有するベース部3と,ベース部3の上側を覆うアンテナカバー1aと,ベース部3に設けられる固定板付き基板ブラケット9とを備え,固定板付き基板ブラケット9は,円筒状突出部の外周面に沿って下方に伸びる複数の側板4を 部3と,ベース部3の上側を覆うアンテナカバー1aと,ベース部3に設けられる固定板付き基板ブラケット9とを備え,固定板付き基板ブラケット9は,円筒状突出部の外周面に沿って下方に伸びる複数の側板4を有し,側板4にはコ字状の切溝4eを設け,切溝4eに囲まれた矩形状のバネ片4aの上端が側板4から外側に向かって離れるものとし,バネ片4aは,ルーフパネル20に形成されたアンテナ取付孔21を通過する際にはアンテナ取付孔21の縁部により内側へ曲げられてアンテナ取付孔21を通過し,通過する と元の形状に戻ってアンテナ取付孔21より突出するため,円筒状突出部13をアンテナ取付孔21に挿通すると,バネ片4aがルーフパネル20の裏面に係合してアンテナ本体1がルーフパネル20に仮止めされる,自動車用アンテナ。」(ウ) 控訴人は,前記の拒絶理由通知書に対して,乙6意見書を提出したが,乙6意見書には,以下の記載がある。 「本願発明と引用発明1・・・との間には,少なくとも下記の相違点が認められます。 相違点1・・・仮固定用ホルダは,可撓性樹脂で成形されており,メインアーム部と,前記メインアーム部に対して下端部にて繋がったサブアーム部とを有し,前記サブアーム部は下端部が前記サブアーム部の撓みの支点となり,前記サブアーム部の上端部はメインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,かつ前記係止爪は上端に向かって肉厚が増加している点。 これにより,サブアーム部(係止爪)は上端に向かって肉厚が増加しているため,強度が増してサブアーム部自体が撓むことなく,下端部を支点として揺動し,突出量を増減するように作用します。そのため,取付穴に挿入するときは,サブアーム部を含む部分が可撓性樹脂で成形されかつサブアーム部の下端部が撓みの支点となるため,小さな挿 下端部を支点として揺動し,突出量を増減するように作用します。そのため,取付穴に挿入するときは,サブアーム部を含む部分が可撓性樹脂で成形されかつサブアーム部の下端部が撓みの支点となるため,小さな挿入力で容易に挿入できます。また,挿入後の抜け力(抜くのに必要な力)は,サブアーム部が上端に向かって肉厚が増加しておりサブアーム部自体が撓むことがないため,十分大きく確保できます。さらに,サブアーム部が上端に向かって肉厚が増加しているため,突出量を多めに設定することで抜け力を増大させることができます。 一方,引用発明1のバネ片4a及び引用発明2の係止爪12は,いずれも金属板を折り曲げ形成した一定肉厚のものと認められます。このため,本願発明のように,下端部を支点として揺動するのではなく,バネ片4a及び係止爪12全体が弾性変形するように動作します。従って,挿入力を小さくしようとすれば,バネ片4a及び係止爪12の板厚を薄くする必要がありますが,そうすると抜け力も小さく なってしまいます。反対に,抜け力を大きくしようとしてバネ片4a及び係止爪12を厚くすると,挿入力が大きくなってしまう不都合が生じます。」ウまず,引用発明1と比較して,本件発明1の本質的部分を検討する。 (ア) 本件発明1の内容は,前記1(2)で判示したとおりであり,その技術的思想を構成する部分は,仮固定用ホルダの構成を,可撓性樹脂で成形し,前記給電用筒状部の外壁面に沿って下方に延びる複数のメインアーム部と,同メインアーム部に対して下端部にて繋がったサブアーム部とを有し,同サブアーム部の下端部は,同サブアーム部が外側に拡がるための支点となり,同サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,かつ同係止爪は上端に向かって肉厚が増加している ム部の下端部は,同サブアーム部が外側に拡がるための支点となり,同サブアーム部の上端部は前記メインアーム部の外側面よりも外方向に突出した係止爪をなし,かつ同係止爪は上端に向かって肉厚が増加しているものとし,同構成を採用することにより,アンテナ挿入時には,メインアーム部及びサブアーム部の両部材が内側に動くため,より小さい挿入力で取付孔への挿入が可能となり,また,抜け方向に荷重が加わったときは,車体パネルの内側面に係止爪の上端が当接し,サブアーム部が外側に拡がるため,抜け力を増大させることができ,仮固定用ホルダの挿入力は小さいままで,抜け力を大きくすることを可能としたことである。 一方,本件特許の出願前に公開された引用文献1に記載された引用発明1の内容は,前記イ(イ)で判示したとおり,固定板付き基板ブラケット9の構成を,円筒状突出部の外周面に沿って下方に伸びる複数の側板4を有し,側板4にコ字状の切溝4eを設け,切溝4eに囲まれた矩形状のバネ片4aの上端が側板4から外側に向かって離れるものとしたものであり,このうち,側板4は本件発明1のメインアーム部に,バネ片4aは本件発明1のサブアーム部にそれぞれ相当するものであり,アンテナの挿入時には,側板4及びバネ片4aが内側に撓み,抜け方向に荷重が加わったときは,ルーフパネル20にバネ片4aの上端部が当接し,バネ片4aが外側に撓んで仮止めすることになると認められる。 (イ) そこで,本件発明1のうち,引用発明1に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分を検討すると,引用発明1は,抜け方向に荷重が加わった ときに,サブアーム部に相当するバネ片4a全体が撓むため,十分な抜け力を確保できなかったことから,本件発明1は,仮固定用ホルダを可撓性樹脂で成形し,サブアーム部の上端部は上端 重が加わった ときに,サブアーム部に相当するバネ片4a全体が撓むため,十分な抜け力を確保できなかったことから,本件発明1は,仮固定用ホルダを可撓性樹脂で成形し,サブアーム部の上端部は上端に向かって肉厚が増加する係止爪からなるものとすることにより,抜け方向に荷重が加わったときに,サブアーム部の下端部を回転の支点として,サブアーム部が外側に拡がるようにし,同下端部でサブアーム部の回転を受け止めることにより,抜け力を増加させたものと認められる。そして,本件発明1が,サブアーム部の上端部は上端に向かって肉厚が増加する係止爪からなるものとしたのは,上記のとおりサブアーム部の強度を増すためであると認められる。 以上からすると,本件発明1のうち,引用発明1に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分とは,可撓性樹脂で成形されたサブアーム部の上端部は上端に向かって肉厚が増加する係止爪からなるものとし,これにより,抜け方向に荷重が加わったときに,サブアーム部は,下端部を支点として回転するように外側に拡がり,下端部において,サブアーム部の上記回転を受け止めて,抜けを防止するという部分であると認められる。そして,この部分が本件発明1の本質的部分に当たることになる。 (ウ) 控訴人は,本件発明6の本質的部分は,「アンテナに抜け方向の荷重が加わった際に,下端部を支点とした外向きの回転力がサブアーム部に発生することにより,サブアーム部が内側に向かって変位することが防止されるため,サブアーム部に設けられた係止爪が車体パネルから外れて抜けてしまう(すっぽ抜ける)ことがない」という構成にあると主張する。 しかし,控訴人が主張する上記の構成は,引用発明1にも見られるから,同構成が本件発明1や本件発明6の本質的部分ということはできない。 エ次に 抜ける)ことがない」という構成にあると主張する。 しかし,控訴人が主張する上記の構成は,引用発明1にも見られるから,同構成が本件発明1や本件発明6の本質的部分ということはできない。 エ次に,被控訴人製品が,前記ウで認定した本件発明1の本質的部分を共通に備えているかについて検討する。 被控訴人製品においては,サブアーム部は,可撓性樹脂で成形されており,車体パネルに係止するための爪部を備えるが,同爪部は,サブアーム部の中間付近に位 置している(乙1,2,13)ため,その上部のサブアーム部であるフック部が,抜け方向に荷重が加わったときに,サブアーム部がその下端部を支点として外側に拡がることを阻止し,そのため,サブアーム部は,その下端部を回転の支点として外側に拡がることはなく,したがって,同下端部で,サブアーム部の回転を受け止めることによって抜け力を増大させるものではない。 そうすると,被控訴人製品は,本件発明1の本質的部分を備えているとは認められない。 オ控訴人は,被控訴人製品において,抜け方向の荷重が加わると,サブアーム部の下端部を支点とした外向きの回転力が発生することにより,サブアーム部に設けられた爪部が内向きに変位して車体パネルから外れるという事象が防止されているから,被控訴人製品は,本件発明6の本質的部分を備えていると主張する。 しかし,前記エのとおり,被控訴人製品においては,抜け方向の荷重が加わり,サブアーム部が外側に拡がろうとしても,同動きはフック部によって阻止されるため,サブアーム部は,その下端部を回転の支点として外側に拡がることはないから,被控訴人製品は,本件発明1や本件発明6の本質的部分を備えておらず,控訴人の上記主張は理由がない。 カしたがって,本件発明1と被控訴人製品との前記の相違点は,本 て外側に拡がることはないから,被控訴人製品は,本件発明1や本件発明6の本質的部分を備えておらず,控訴人の上記主張は理由がない。 カしたがって,本件発明1と被控訴人製品との前記の相違点は,本件発明の本質的部分ではないということはできないから,被控訴人製品は,均等の第1要件を充足しない。」 2 以上のとおり,被控訴人製品は,構成要件1F,1Gを充足せず,また,均等物ともいえないから,その余の点を判断するまでもなく,被控訴人が被控訴人製品を製造,譲渡等する行為は,本件特許権を侵害しない。 第4 結論よって,控訴人の請求は理由がなく,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官森義之 裁判官佐野信 裁判官熊谷大輔
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