主文 1 本件申立てをいずれも却下する。 2 申立費用は申立人らの負担とする。 事実 及び理由第1 申立ての趣旨経済産業大臣は,本案事件の第一審判決言渡しまで,A株式会社に対し,平成23年3月に発生したB発電所の事故を踏まえて発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針及びその補完指針並びに発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令が改定されるまでの間,A株式会社C発電所第3号機及び第4号機に関する定期検査終了証をいずれも交付してはならない。 第2 事案の概要本件は,滋賀県,京都府及び大阪府に居住する申立人らが,電気事業法(以下「法」という。)54条所定の定期検査を実施中であるA株式会社C発電所(以下「C発電所」という。)第3号機及び第4号機につき,電気事業法施行規則(以下「施行規則」という。)93条の3に基づく経済産業大臣からA株式会社(以下「A」という。)への定期検査終了証の各交付が行政処分に当たるとして,相手方を被告として定期検査終了証の各交付の差止めを求める本案事件を提起するとともに,仮の救済として,定期検査終了証の各交付の仮の差止めを申し立てた事案である。 1 法令の定め(1) 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の定めア原子炉等規制法は,原子力基本法の精神にのっとり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ,かつ,これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに,これらによる災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵, 再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必 的に行われることを確保するとともに,これらによる災害を防止し,及び核燃料物質を防護して,公共の安全を図るために,製錬,加工,貯蔵, 再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制を行うほか,原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために,国際規制物資の使用等に関する必要な規制を行うことを目的としている(1条)。 イ発電の用に供する原子炉(原子炉等規制法23条1項2号から4号までのいずれかに該当するものを除く。以下「実用発電用原子炉」という。)を設置しようとする者は,経済産業大臣の許可を受けなければならない(同項1号)。 ウ原子炉等規制法27条(設計及び工事の方法の認可),28条(使用前検査),28条の2(溶接の方法及び検査)並びに29条(施設定期検査)の各規定は,法及び法に基づく命令の規定による検査を受けるべき原子炉施設であって実用発電用原子炉に係るものについては適用されない(原子炉等規制法73条)。 (2) 法の定めア法は,電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって,電気の使用者の利益を保護し,及び電気事業の健全な発達を図るとともに,電気工作物(発電,変電,送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械,器具,ダム,水路,貯水池,電線路その他の工作物(船舶,車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう(2条1項16号)。)の工事,維持及び運用を規制することによって,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ることを目的としている(1条)。 イ事業用電気工作物(法38条1項に定める一般用電気工作物以外の電気工作物をいい(同条3項),実用発電用原子炉はこれに該当する。)を設置する者は,事業用電気工作物を としている(1条)。 イ事業用電気工作物(法38条1項に定める一般用電気工作物以外の電気工作物をいい(同条3項),実用発電用原子炉はこれに該当する。)を設置する者は,事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準(以下「技術基準」という。)に適合するように維持しなければならず(法39 条1項),経済産業大臣は,事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは,事業用電気工作物を設置する者に対し,その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し,改造し,若しくは移転し,若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ,又はその使用を制限することができる(法40条)。 ウ特定重要電気工作物(発電用のボイラー,タービンその他の電気工作物のうち,公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるものであって,経済産業省令で定める圧力以上の圧力を加えられる部分があるもの並びに発電用原子炉及びその附属設備であって経済産業省令で定めるものをいう。)を設置する者は,経済産業省令で定めるところにより,経済産業省令で定める時期ごとに,経済産業大臣が行う検査を受けなければならない(法54条1項)。 エ経済産業大臣は,法39条,40条,54条等の規定の施行に必要な限度において,その職員に,原子力発電工作物を設置する者,燃料体の加工をする者又はボイラー等若しくは格納容器等(原子力発電工作物に係るものに限る。)の溶接をする者の工場又は営業所,事務所その他の事業場に立ち入り,原子力発電工作物,帳簿,書類その他の物件を検査させることができるほか,法の施行に必要な限度において,その職員に,事業場等への立ち入り,物件等の検査をさせるなどの措置を執ることができる(法107条)。 (3) 施行規則の定めア させることができるほか,法の施行に必要な限度において,その職員に,事業場等への立ち入り,物件等の検査をさせるなどの措置を執ることができる(法107条)。 (3) 施行規則の定めア法54条1項の経済産業省令で定める時期は,特定重要電気工作物の区分ごとに,運転が開始された日以降13月を超えない時期又は定期検査が終了した日以降13月又は18月を超えない時期とされている(施行規則91条1項)。 イ経済産業大臣は,法54条1項の定期検査を終了したと認めたときは, 定期検査終了証を交付する(施行規則93条の3)。 2 前提事実(各項掲記の疎明資料等により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア申立人らは,いずれも滋賀県,京都府及び大阪府に居住する者である。 イ経済産業大臣は,法54条1項所定の定期検査を実施し,定期検査が終了したと認めたときには施行規則93条の3により定期検査終了証を交付することとされている行政庁である。 (2) C発電所第3号機及び第4号機の運転開始ア通商産業大臣(当時)は,昭和62年2月10日,Aの申請に基づき,同社に対し,3号炉及び4号炉を増設するC発電所に係る原子炉の設置変更許可をした(疎乙5)。 イ Aは,平成3年12月18日,C発電所第3号機の運転を開始した。 ウ Aは,平成5年2月2日,C発電所第4号機の運転を開始した。 (3) C発電所第3号機に係る定期検査ア Aは,平成23年2月17日,経済産業大臣に対し,定期検査申請書に検査希望年月日を同年3月18日から同年7月14日までとして,C発電所第3号機について法54条1項に基づく定期検査の申請を行った(疎乙6)。 イ経済産業大臣は,平成23年3月18日,C発電所第3号機の定期検査を開始 日から同年7月14日までとして,C発電所第3号機について法54条1項に基づく定期検査の申請を行った(疎乙6)。 イ経済産業大臣は,平成23年3月18日,C発電所第3号機の定期検査を開始した。 ウ Aは,平成23年6月21日,経済産業大臣に対し,同年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波に起因するB発電所事故を踏まえた緊急安全対策等の実施状況を踏まえ,今後の定期事業者検査工程の見直しを行うこととしたことに伴い,定期検査終了予定日を未定とする定期検査申請書の変更をした上,同変更についての説明書類を提出した(疎乙7)。 エ C発電所第3号機について,現時点において,施行規則90条の2第5号の通常運転時における総合的な性能に関する検査(以下「総合負荷性能検査」という。)は開始されていない(公知の事実)。 (4) C発電所第4号機に係る定期検査ア Aは,平成23年6月21日,経済産業大臣に対し,定期検査申請書に検査希望年月日を同年7月22日から同年11月18日までとして,C発電所第4号機について法54条1項に基づく定期検査の申請を行った(疎乙8)。 イ経済産業大臣は,平成23年7月22日,C発電所第4号機の定期検査を開始した。 ウ Aは,平成23年10月19日,経済産業大臣に対し,同年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波に起因するB発電所事故を踏まえた緊急安全対策等の実施状況を踏まえ,今後の定期事業者検査工程の見直しを行うこととしたことに伴い,定期検査終了予定日を未定とする定期検査申請書の変更をした上,同変更についての説明書類を提出した(疎乙9)。 エ C発電所第4号機についても,現時点において,総合負荷性能検査は開始されていない(公知の事実)。 (5) 本案 期検査申請書の変更をした上,同変更についての説明書類を提出した(疎乙9)。 エ C発電所第4号機についても,現時点において,総合負荷性能検査は開始されていない(公知の事実)。 (5) 本案事件の提起等申立人らは,平成24年3月14日,平成23年3月に発生したB発電所の事故を踏まえて発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針及びその補完指針並びに発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令が改定されるまでの間,経済産業大臣がAに対し施行規則93条の3に基づきC発電所第3号機及び第4号機に係る定期検査終了証の各交付を行うことを差し止めることを求める本案事件を提起するとともに,仮の救済として,本件申立てをした(顕著な事実)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件申立てに係る申立人らの主張は別紙「仮の差止め申立書」及び別紙「準備書面」のとおりであり,これに対する相手方の主張は別紙「意見書」のとおりであって,本件の争点は,本案事件が適法に係属しているか否か,具体的には施行規則93条の3に基づく定期検査終了証の交付が行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条7項にいう「処分」と認められるかである。 第3 当裁判所の判断 1 仮の差止めの申立ては,「差止めの訴えの提起があつた場合」に行うことができるものであるところ(行訴法37条の5第2項),「差止めの訴えの提起があつた場合」というためには,差止めの訴えが適法に係属していることが必要である。そして,差止めの訴えとは,行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において,行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう(同法3条7項)ところ,ここでいう処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う わらずこれがされようとしている場合において,行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう(同法3条7項)ところ,ここでいう処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)から,施行規則93条の3に基づく経済産業大臣による定期検査終了証の交付が上記にいう処分に当たらない場合には,行訴法37条の4第1項に基づき同交付の差止めを求める訴えは不適法であって,本案事件の適法な係属を欠くこととなる。 そこで,施行規則93条の3に基づく定期検査終了証の交付が処分と認められるかにつき,以下検討する。 2 実用発電用原子炉に関する規制の仕組み(1) 実用発電用原子炉に対する規制の概要実用発電用原子炉については,その設備が原子力施設であることから原子 炉等規制法による規制を受けるとともに,電気を供給する事業に供される発電用設備であることから法による規制を受けることとされている。 すなわち,実用発電用原子炉を設置しようとする者は,経済産業大臣の原子炉設置許可を受けなければならず(原子炉等規制法23条1項1号),また,事業用電気工作物(実用発電用原子炉もこれに含まれる。)の設置又は変更の工事であって,公共の安全の確保上特に重要なものについてはその計画につき経済産業大臣の認可を受けなければならず(法47条1項,2項),同認可を受けて設置又は変更の工事をする事業用電気工作物であって,公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるもの(特定事業用電気工作物)については,その工事について経済 項,2項),同認可を受けて設置又は変更の工事をする事業用電気工作物であって,公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるもの(特定事業用電気工作物)については,その工事について経済産業大臣の検査を受け,同検査に合格した後でなければ使用してはならないものとされている(法49条1項)。そして,実用発電用原子炉及びその附属設備であって経済産業省令で定めるもの(以下「実用発電用原子炉等」という。)は,特定重要電気工作物に該当するため,その設置者は,経済産業省令で定めるところにより,経済産業省令で定める時期ごとに経済産業大臣が行う定期検査を受けなければならないとされている(法54条1項,施行規則89条ないし90条)。 (2) 技術基準適合維持義務法39条1項は,事業用電気工作物の設置者に対し,事業用電気工作物を技術基準に適合するよう維持する義務(以下「技術基準適合維持義務」という。)を課しており,上記(1)の工事計画の認可や使用前検査においても,技術基準に適合しないものではないことが認可又は検査合格の条件とされている(法47条3項1号,49条2項2号)など,設置者には実用発電用原子炉について設計,建設段階及び運転段階において技術基準に適合するように維持することが義務付けられている。そして,経済産業大臣は,事業用電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは,その設置者に対し修 理,改造,移転や使用の一時停止又は使用制限を内容とする技術基準適合命令を発することができるものとし,技術基準適合命令に違反した者には罰則を科すなど(法40条,116条2号),事業用電気工作物の使用開始後においても設置者の技術基準適合維持義務が果たされることを確保するための仕組みが採られている。技術基準適合命令発令の要件は技術基準に適合 すなど(法40条,116条2号),事業用電気工作物の使用開始後においても設置者の技術基準適合維持義務が果たされることを確保するための仕組みが採られている。技術基準適合命令発令の要件は技術基準に適合していないと認められることのみであり,法54条1項の定期検査との関係については法令上何らの規定も設けられていない。したがって,定期検査や法107条による立入検査において実用発電用原子炉等が技術基準に適合しないものではないことが確認されたとしても,そのことによって一定期間技術基準適合命令を発することが法的に不可能となるものではなく,経済産業大臣は当該実用発電用原子炉等が技術基準に適合していないと判断した場合には,次回の定期検査が実施されるまでの間であっても技術基準適合命令を発することができる。 (3) 定期検査ア法は,事業用電気工作物の設置者が技術基準適合維持義務を負うことを前提として,その遵守を担保するため,特定電気工作物(実用発電用原子炉等はこれに含まれる。)の設置者に当該工作物が技術基準に適合していることを確認するための定期事業者検査を行わせることとしており(55条),また,公共の安全の確保上特に重要なものである特定重要電気工作物については,その設置者に経済産業大臣による定期検査を受けることを義務付けている(54条)。定期検査を拒み,妨げ,又は忌避した者に対しては罰則が科せられるが(法117条の2第3号),定期検査を一定期間内に終えなければならない旨の定めや定期検査開始後一定期間内に検査を終えなかったことについて罰則を科する旨の定めは存在しない。 イ定期検査は,定期事業者検査への立ち会い又はその定期事業者検査の記録の確認によって行われるところ(施行規則90条の2),検査項目に応 じて,経済産業大臣と独立行政法人原子 は存在しない。 イ定期検査は,定期事業者検査への立ち会い又はその定期事業者検査の記録の確認によって行われるところ(施行規則90条の2),検査項目に応 じて,経済産業大臣と独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「機構」という。)とが分担して実施することとされている(法54条2項,施行規則93条の4第1項ないし3項)。 ウ定期検査を受けようとする者は,定期事業者検査の計画,方法等に関する説明書類を添えて定期検査申請書を希望する検査開始日の1か月前までに提出しなければならず(施行規則93条1項,2項),当該申請書の提出を受けた経済産業大臣は,定期検査の対象となる事項について行うべき検査の方法その他必要な事項を定めた検査実施要領書を定めるとともに,機構に対して機構が行う検査に関する事務の一部の実施について所定の事項を通知し(施行規則93条の2第1項,2項),定期検査を実施する。 定期検査は,検査項目とする定期事業者検査に立ち会い,又は記録を確認することにより,設置者が適切な定期事業者検査要領書を定め,これに則り定期事業者検査を実施し,施行規則94条の3第2項に定める判定方法(一定の期間を設定し,その期間において技術基準に適合している状態を維持するかどうかを判定する方法)を行っているか否かを確認するとともに,当該定期事業者検査に係る設備が技術基準に適合しないものではないことを確認する方法で行われ,最初に実用発電用原子炉の運転を停止させなければ行うことができない検査(施行規則90条の2第1号ないし4号)を行い,経済産業大臣は,機構が行う検査については機構から通知を受け(法54条3項),経済産業大臣が行う検査項目と併せて,上記検査に係る事項について技術基準に適合しないものではないと判断した場合には,実用発電用原子炉を再起動し,発電を開 ついては機構から通知を受け(法54条3項),経済産業大臣が行う検査項目と併せて,上記検査に係る事項について技術基準に適合しないものではないと判断した場合には,実用発電用原子炉を再起動し,発電を開始させた上で,通常運転時における総合的な性能に関する検査(総合負荷性能検査。施行規則90条の2第5号)を行う(平成21年1月27日原院第1号・原子力発電工作物に係る保安規程及び定期検査に関する運用について(内規)(以下「平成21年1号内規」という。)。疎乙3)。 エ経済産業大臣は,総合負荷性能検査の結果,実用発電用原子炉等につき通常運転時における総合的な性能に問題がないものと判断した場合には,定期検査を終了したものと認め,設置者に対して定期検査終了証を交付することとされている(施行規則93条の3,平成21年1号内規(疎乙3))。 なお,総合負荷性能検査の実施のために行われる実用発電用原子炉の運転は,実務上「調整運転」と呼ばれており,定期検査終了証交付後に行われる「営業運転」ないし「商業運転」と区別されているが,法令上これらの区別はされておらず,定期検査の運用等を定めた平成21年1号内規及び定期検査に係る部分の解釈等について定められた平成20年12月22日原院第4号・原子力発電工作物の保安のための点検,検査等に関する電気事業法施行規則の規定の解釈(内規)(以下「平成20年4号内規」という。)においてもこれらの用語は用いられていない。また,法令及び各内規において,定期検査中の実用発電用原子炉について運転が制限される旨の規定や当該原子炉が設置された原子力発電所において発電した電力を供給することを禁止又は制限する旨の規定も存在しない。そして,総合負荷性能検査が終了した段階で実用発電用原子炉の運転を一旦停止し,定期検査終了証の交付が 設置された原子力発電所において発電した電力を供給することを禁止又は制限する旨の規定も存在しない。そして,総合負荷性能検査が終了した段階で実用発電用原子炉の運転を一旦停止し,定期検査終了証の交付がされた段階で原子炉を再起動することとする旨の法令及び内規等の定めは存在しない。(疎乙2,3)オ特定重要電気工作物の設置者は,定期検査を受けたことのある特定重要電気工作物については,その区分に応じて前回の定期検査が終了した日以降13か月あるいは18か月を超えない時期ごとに定期検査を受けなければならないとされているところ(法54条1項,施行規則91条1項),平成20年4号内規では,定期検査が終了した日とは,施行規則93条の3に基づく定期検査終了証を交付した日とするものとされている(疎乙2)。 3 検討(1) 上記2のような法,施行規則及び内規の定めによれば,施行規則93条の3に基づく定期検査終了証の交付は,経済産業大臣が,特定重要電気工作物の設置者に対し,法54条1項に基づく定期検査において所定の検査を実施した結果,当該時点において検査の対象となった特定重要電気工作物が技術基準に適合しないものではないこと等を確認し,定期検査が終了したものと認めるという判断の結果を通知するものであり,いわゆる観念の通知に当たると解される。 そして,定期検査終了証の交付は,法54条1項及び施行規則93条の3に基づいて行われる行為であり,法的根拠を有するものといえる。 (2) そこで,定期検査終了証の交付が直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものといえるかについて検討するに,法は,事業用電気工作物の設置者に対し,技術基準適合維持義務を課し,事業用電気工作物の使用開始後においても,技術基準に適合していないと認められる場合には経済 確定するものといえるかについて検討するに,法は,事業用電気工作物の設置者に対し,技術基準適合維持義務を課し,事業用電気工作物の使用開始後においても,技術基準に適合していないと認められる場合には経済産業大臣が技術基準適合命令を発して事業用電気工作物を技術基準に適合させるための措置を設置者に行わせることとし,技術基準適合維持義務の実効性を確保しているところ,事業用電気工作物のうち特定電気工作物については,その設置者に定期事業者検査を行わせ,技術基準に適合していることを確認させるとともに,その一部である特定重要電気工作物について,その設置者に経済産業大臣による定期検査を受けることを義務付け,経済産業大臣は定期事業者検査が適切に行われているか,技術基準に適合しないものではないかを確認することとして,技術基準適合状態を定期的に確認するなどしている。そして,定期検査の結果,技術基準に適合していないものと認められる場合には,経済産業大臣は,特定重要電気工作物の設置者に対して技術基準適合命令を発して,特定重要電気工作物を技術基準に適合させるための必要な措置を講じるよう命ずることができる。このように,定期検査は,実用発 電用原子炉の設置者による技術基準適合維持義務が適切に履践されているかを確認するために行われるものであるところ,定期検査の実施にあたっては,実用発電用原子炉の運転を停止しなければ行うことができない検査を行うこととされており,実用発電用原子炉の運転を停止することが予定されているものということができるが,一方で,通常運転時における総合的な性能に関する検査を行うこととされているように,定期検査の終了前に実用発電用原子炉を再起動することも予定されており,定期検査が終了しなければその運転を行うことができないという仕組みは採られていない。 能に関する検査を行うこととされているように,定期検査の終了前に実用発電用原子炉を再起動することも予定されており,定期検査が終了しなければその運転を行うことができないという仕組みは採られていない。また,使用前検査においては同検査に合格しなければ特定事業用電気工作物の使用をしてはならない旨明文をもって定められている(法49条1項)のに対し,定期検査については,定期検査の実施中あるいは定期検査終了証の交付を受けるまでの間,実用発電用原子炉の運転及びその運転によって発電した電力の供給等について制限がされるとの明文の定めは設けられておらず,定期検査に係る平成20年4号内規及び平成21年1号内規をみてもかかる運用がされているとは認められない。 したがって,定期検査終了証の交付によって設置者による実用発電用原子炉の運転及びその運転によって発電した電力の供給につき制限が解除されるとの仕組みは採られていないから,この点をもって定期検査終了証の交付に法的効果が付与されていると解することはできない。 (3) また,実用発電用原子炉等の事実状態に着目し,実務上,定期検査における総合負荷性能検査の実施のために原子炉の運転を行っている状態は「調整運転」と,定期検査が終了した後の運転状態は「営業運転」ないし「商業運転」と呼ばれているが,「調整運転」や「営業運転」ないし「商業運転」との用語は法令及び内規等においては用いられておらず,法令上の根拠を有する概念とはいえない。 この点,申立人らは,「調整運転」と「営業運転」ないし「商業運転」と が区別されている根拠として,原子力安全・保安院が平成23年7月11日,D発電所第3号機とC発電所第1号機が約4か月間にわたって「調整運転」を続けていることについて「法令上問題がある」と指摘した点を主張している。しか として,原子力安全・保安院が平成23年7月11日,D発電所第3号機とC発電所第1号機が約4か月間にわたって「調整運転」を続けていることについて「法令上問題がある」と指摘した点を主張している。しかし,相手方は,この点について,原子力安全・保安院原子力災害対策監の発言の趣旨について,各電力会社が総合負荷性能検査を受検できる状態であるにもかかわらず,定期検査終了日が「未定」の記載のまま同検査の準備を行わず,定期検査を終了することができない状態が継続することは法の予定するところではなく,具体的な事情によっては定期検査忌避(法117条の2第3号)に該当する可能性があることを示唆したものであると反論していること(なお,申立人らはこの点に対する具体的な再反論はしていない。)をも踏まえると,上記平成23年7月の原子力安全・保安院の担当者の発言をもって「調整運転」と「営業運転」ないし「商業運転」との間に差異があることの根拠とすることはできない。そして,「調整運転」の際に「営業運転」ないし「商業運転」と同様に電力を供給し得ることは先にみたとおりであって,そのほか,関係法令や一件記録を精査しても,「調整運転」と「営業運転」ないし「商業運転」との間で法的効果において何らかの差異があると認めることはできない。 (4) 事業用電気工作物の設置者は,事業用電気工作物について技術基準適合維持義務を負い,また,特定電気工作物の設置者は,同工作物について定期事業者検査を行うべき義務を,その一部である特定重要電気工作物の設置者は,経済産業大臣による定期検査を受けるべき義務をそれぞれ負うところ,定期検査において技術基準に適合しないものではないことが確認されて検査が終了した場合には定期検査終了証の交付がされることになるものの,その交付を受けた者について技術基準適合維持義 れぞれ負うところ,定期検査において技術基準に適合しないものではないことが確認されて検査が終了した場合には定期検査終了証の交付がされることになるものの,その交付を受けた者について技術基準適合維持義務や次回の定期事業者検査を実施すべき義務ないし定期検査を受けるべき義務が免除されるものではなく,経済産業大臣は定期検査が終了した後次回の定期事業者検査ないし定期検査 が実施されるまでの間であっても技術基準適合命令を発することが妨げられるものではないから,技術基準適合維持義務及び定期事業者検査を実施すべき義務ないし定期検査を受けるべき義務との関係において定期検査終了証の交付に法的効果が付与されていると解することもできない。 また,特定重要電気工作物の設置者は,13か月又は18か月ごとに定期検査を受けるべき義務があるところ,平成20年4号内規では定期検査終了証の交付日をもって次回の定期検査を受けるべき時期の起算日とすることとされているが,これは設置者が法54条1項及び施行規則91条1項に基づいて負う一定の時期ごとに定期検査を受けるべき義務について,法54条1項及び施行規則91条1項により客観的に定められている次回の定期検査までの期間の始期を明確にする趣旨で同始期を定期検査終了証の交付日とするとの取扱いを定めたものにすぎず,法54条1項の規定によって定期検査が終了した場合には一定の時期までは定期検査を受ける必要はなくなるものの,定期検査終了証の交付によって次回の定期検査を受けるまで定期検査を受けるべき義務を免除する旨の法的効果を発生させることとしたものとは解されないから,この点をもって定期検査終了証の交付に法的効果が付与されていると認めることもできない。 (5) 定期検査を受けようとする者は,定期検査申請書を希望する検査開始日の1か月 たものとは解されないから,この点をもって定期検査終了証の交付に法的効果が付与されていると認めることもできない。 (5) 定期検査を受けようとする者は,定期検査申請書を希望する検査開始日の1か月前までに提出しなければならないこととされているが,これは経済産業大臣に対して定期検査という事実行為の実施を促すものにすぎず,特定重要電気工作物の設置者は定期検査を受けるべき義務を負うことや,上記(4)のとおり定期検査終了証の交付を受けることによって設置者の負う義務が免除される関係にないことからすれば,かかる申請書の提出に関する定めをもって定期検査を受けることについての申請権を認めたものとは認められず,上記義務に従って定期検査を受ける際の手続の一環として定期検査申請書を提出しなければならないこととされているにすぎないものと解される。 したがって,定期検査終了証の交付が申請に対する応答処分としての法的効果を有するものということはできない。 なお,定期検査の申請に対し適法な手続で判断を受けられることを特定重要電気工作物の設置者の権利ないし法的地位として付与するというのであれば,定期検査の結果,経済産業大臣が技術基準に適合していないと判断した場合には,定期検査不合格処分を行い,それに対する不服申立ても可能とするなどの諸規定を設けることも十分考えられるところであるが,法及び施行規則は,施行規則93条の3で定期検査終了証を交付することを定めているにとどまり,その他の手続を何ら定めていないことに照らすと,特定重要電気工作物の設置者に対し,上記のような手続的な権利ないし法的地位を保障していると解することもできない。 (6) 申立人らは,経済産業大臣が定期検査終了証を交付せず,技術基準適合命令も行わない場合には,定期検査終了証の交付に処分性を認 手続的な権利ないし法的地位を保障していると解することもできない。 (6) 申立人らは,経済産業大臣が定期検査終了証を交付せず,技術基準適合命令も行わない場合には,定期検査終了証の交付に処分性を認めなければ特定重要電気工作物の設置者の権利救済を図る途がなくなる旨主張するが,定期検査の実施中に設置者に対して何らかの法的制約が課され,定期検査が終了しなければこれが解除されないという関係を認めることができないことは上記(2)(3)のとおりであるから,申立人らの主張はその前提を欠くものであって失当である。 また,仮に定期検査において技術基準に適合しないとの判断がされたとしても,そのことから直ちに特定重要電気工作物の設置者が元々負っている技術基準適合義務に加えて何らかの義務を負うわけではなく,同設置者は上記技術基準に適合しないと判断された点に関する技術基準適合命令がされてはじめて同適合命令に応じた具体的な作為義務を負うものといえるのであって,上記2(3)のとおり,実用発電用原子炉を再起動させて行う総合負荷性能検査が終了した段階で同原子炉の運転を一旦停止し,定期検査終了証の交付がされた後に同原子炉を再起動させる仕組みにはなっていないことに照らすと, 法や施行規則は上記のように再起動させた原子炉について総合負荷性能検査の結果が技術基準に適合しないとの判断がされた場合には,法40条の技術基準適合命令によってその使用を一時停止させ,さらには,必要な修理等をさせることをその制度上予定しているものと解されるから,かかる判断に不服のある設置者は上記技術基準適合命令に対する取消訴訟を提起するなどしてこれを争うことが可能であって,設置者の権利救済に欠けるところはないものと解される。したがって,設置者の救済の必要性をもって定期検査終了証の交付に処分性 準適合命令に対する取消訴訟を提起するなどしてこれを争うことが可能であって,設置者の権利救済に欠けるところはないものと解される。したがって,設置者の救済の必要性をもって定期検査終了証の交付に処分性を認めるべき根拠とすることもできない。 (7) なお,経済産業大臣は,行政手続法5条1項を受けて,法に基づく経済産業大臣の処分に関する審査基準として「電気事業法に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準等」(平成12年5月29日資第16号,最終改正平成24年3月29日資第2号)を定め,これを公表しているところ(顕著な事実),その第1「申請に対する処分」の「1.審査基準」において,(23)「第54条第1項の規定による定期検査」の項を設け,「第54条第1項の規定による定期検査に係る審査基準については,第39条第1項の経済産業省令で定める技術基準に適合しないものではない等当該電気工作物の安全性が確保されていると認められることとする」としている。この「電気事業法に基づく経済産業大臣の処分に係る審査基準等」の記載内容に照らせば,経済産業大臣は,定期検査の申請に対する応答は行政処分性を有しているとの見解を採っているようにも見得るところであるが,上記の検討結果によれば,定期検査終了証の交付が行政処分であるとする根拠を見出すことはできないのであって,経済産業大臣が上記のような見解を採っているとしても,そのことから定期検査終了証の交付に行政処分性を認めることはできないものというほかない。 (8) よって,施行規則93条の3に基づく定期検査終了証の交付は,これによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する法律上の効果を 有するものではなく,行訴法3条7項にいう処分とは認められない。 4 結論以上によれば,施行規則93条の3に基づく定期検 直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する法律上の効果を 有するものではなく,行訴法3条7項にいう処分とは認められない。 4 結論以上によれば,施行規則93条の3に基づく定期検査終了証の各交付の差止めを求める本案事件に係る訴えは不適法であり,かつ,その不備を補正することができないから,本件申立ては適法な本案訴訟の係属を欠く不適法な申立てといわざるを得ない。よって,その余の点について判断するまでもなく,本件申立てはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし,申立費用の負担について行訴法7条,民訴法65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり決定する。 平成24年4月27日大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官尾河吉久 裁判官長橋正憲
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