平成25年1月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第7674号実用新案権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年9月10日判決原告株式会社UnitJAPAN同訴訟代理人弁護士田中崇公同田邉絵理子被告株式会社コーセー同訴訟代理人弁護士宮川美津子同加藤恭子同石堂瑠威同補佐人弁理士江口昭彦同中塚隆志 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の物件を製造し,販売し,輸入し又は販売の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙物件目録記載の物件を廃棄し,同物件の製造に必要な金型を除去せよ。 3 被告は,原告に対し,金1億3200万円及びこれに対する平成23年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要本件は,考案の名称を「化粧品容器用漏れ止め構造」とする実用新案第3156963号の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の物件(以下「被告製品」という。)の製造販売等が本件実用新案権を侵害すると主張して,被告に対し,実用新案法27条1項,2項に基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄等を求めると共に,実用新案権侵害の不法行為に基づき,損害賠償金 億3200万円及 用新案権を侵害すると主張して,被告に対し,実用新案法27条1項,2項に基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄等を求めると共に,実用新案権侵害の不法行為に基づき,損害賠償金 億3200万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成23年6月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の基礎となる事実以下の事実については,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨より認められる。 (1) 当事者原告は,美容機器の製造販売等を業とする会社であり,被告は,化粧品の製造販売等を業とする会社である。 (2) 本件実用新案権ア原告は,本件実用新案権を有しており,その内容は下記のとおりである(以下,下記の実用新案登録を「本件実用新案登録」という。また,本件実用新案登録に係る明細書を「本件明細書」といい,下記実用新案登録請求の範囲の【請求項1】~【請求項6】の各考案を「本件考案1」~「本件考案6」といい,本件考案1~6を併せて「本件考案」ともいう。)。 なお,本件実用新案権の権利者は,登録時は,原告代表者P1(以下「訴外P1」という。)であり,原告は,平成23年4月7日頃,同権利の譲渡を受けた。 記登録番号第3156963号考案の名称化粧品容器用漏れ止め構造出願日平成21年10月27日登録日平成22年1月6日実用新案登録請求の範囲別紙本件明細書記載のとおりイ本件考案1~6は,以下の構成要件に分説することができる。 (ア) 本件考案1A:本体と,ブラシロッドと,ビンと,を含む化粧品容器用漏れ止め構造であって,B:前記 載のとおりイ本件考案1~6は,以下の構成要件に分説することができる。 (ア) 本件考案1A:本体と,ブラシロッドと,ビンと,を含む化粧品容器用漏れ止め構造であって,B:前記本体は,収容空間を有し,前記収容空間には,電源ユニットと,前記電源ユニットと電気的に連接するモータと,連結具と,が設けられ,C:前記連結具は,前記本体の内部に回動可能に設けられ,D:前記モータに駆動可能であり,E:前記ブラシロッドは,一端が前記連結具と同軸し前記連結具に連結され,他端にブラシヘッドが設けられ,F:前記ビンは,液体収容チェンバーと,前記ビンの一端に設けられる開口と,を有し,前記ブラシロッドは前記開口を経由して前記液体収容チェンバーに挿入される一方,G:前記ブラシロッドに密封ブッシュが設けられ,H:前記本体と前記ビンを結合するときには,前記密封ブッシュの前縁が前記開口に密着されることを特徴とする,化粧品容器用漏れ止め構造。(イ) 本件考案2I:前記モータと前記連結具の間には,更に,減速手段が設けられることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。(ウ) 本件考案3J:前記本体の側面にレールが設けられ,前記レールにスイッチが摺動可能に設けられ,前記スイッチは前記レールに沿って摺動し,これにより,前記スイッチは前記電源ユニットのオン・オフを切替えることができることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。(エ) 本件考案4K:前記減速手段には,幾何形状断面シャフトが設けられ,前記連結具の末端には,幾何形状穴が設けられ,前記幾何形状断面シャフトが前記幾何形状穴に挿入され,そうすると,前記幾何形状断面シャフトは前記連結具と同期に回 段には,幾何形状断面シャフトが設けられ,前記連結具の末端には,幾何形状穴が設けられ,前記幾何形状断面シャフトが前記幾何形状穴に挿入され,そうすると,前記幾何形状断面シャフトは前記連結具と同期に回転することができることを特徴とする,請求項2に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。(オ) 本件考案5L:前記ブラシヘッドは,マスカラ又はグロスを付けるためのブラシであることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。(カ) 本件考案6M:更に,内ねじ付きブッシュを含み,前記内ねじ付きブッシュは,前記本体の前端に設けられ,内ねじを有し,N:前記開口の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ねじ付きブッシュの内ねじと螺合し,O:前記開口の内面に樹脂ブッシュが設けられ,P:前記ブラシロッドが前記樹脂ブッシュを経由して前記液体収容チェンバーに挿入し,前記本体と前記ビンを結合するときには,前記密封ブッシュの前縁が前記樹脂ブッシュに密着されることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。(3) 被告の行為被告は,本件実用新案権が登録された平成22年1月6日以降,被告製品を業として製造販売していた。 (4) 実用新案技術評価書の提示訴外P1は,平成22年10月頃,被告に対し,本件実用新案登録に係る実用新案技術評価書を提示した。 2 争点(1) 被告製品は本件考案1~6の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)(3) 原告の損害(争点3)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告製品は本件考案1~6の技術的範囲に属するか)【原告の主張】 より無効にされるべきものであるか(争点2)(3) 原告の損害(争点3)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告製品は本件考案1~6の技術的範囲に属するか)【原告の主張】(1) 被告製品の構成被告製品の構成は,別紙被告製品説明書(原告の主張)記載のとおりである(以下,被告製品の構成のうち同別紙の各記号に該当する個所を,同記号に従い「構成a」などといい,被告製品において,本体,ブラシロッド,ビンを結合した場合に,本体からビンの側へ向かう方向を前方又は前側,その反対方向を後方又は後側という。乙19,20の各文献に記載された考案についても同様とする。)。また,被告製品の図面は,別紙被告製品説明図(原告の主張)記載のとおりである。 (2) 被告製品の構成要件充足性被告製品が構成要件A~F,I,J,L~Oを充足することは明らかであり,以下に述べるとおり,被告製品は構成要件G,H,K,Pをいずれも充足するから,被告製品は本件考案1~6の技術的範囲に属する。 ア構成要件G,Hについて(ア) 構成要件Hの「前縁」,「開口」構成要件Hは「前記密封ブッシュ(22)の前縁が前記開口(42)に密着される」ことを内容とする。ここでいう「前縁」(前記開口と密着する部分)とは,前方の固定端から連結具へ拡径して密封機能を果たす傘形状の部分の周縁のうち,前側を向く部分(前方に投影可能な面を有する部分)を意味する。また,「開口」(密封ブッシュの前縁と密着する部分)とは,ビンの一端における開放部分を指す。 被告は,「開口」について,ビンの先端部分に限定されると主張するが,このように限定すべき理由はない。 (イ) 構成要件G,Hの充足性 ,ビンの一端における開放部分を指す。 被告は,「開口」について,ビンの先端部分に限定されると主張するが,このように限定すべき理由はない。 (イ) 構成要件G,Hの充足性被告製品は,内ねじ付きブッシュを装着したときに,傘形状ブッシュが拡径し,その前縁がビンの開口に密着することにより「前縁」と「開口」が接し(甲8~10),液漏れを防止しているため(甲11,12),構成要件Gの「密封ブッシュ」,構成要件Gの「化粧品漏れ止め防止構造」を充足する。 被告は,傘形状ブッシュは,ビンの開口の内壁に付着したマスカラ液を掻き落としてビンの中に押し戻す機能を有すると主張するが,ブラシヘッドの幅が最大約7.2mmであるのに対し,傘形状ブッシュの幅は最大約6.8mmであることからすれば,ビンの開口の内壁に付着したマスカラ液は,ブラシヘッドによって掻き落とされるのであり,傘形状ブッシュによって掻き落とされるのではない。 イ構成要件Kについて(ア) 「幾何形状穴」「幾何形状」とは,幾何学的に認識できる形状であればよく,円形単独であっても,幾何形状に当たる。被告製品の連結具の末端に設けられた穴は,「幾何形状穴」を充足する。 (イ) 被告製品のOリング構成要件Kは,幾何形状断面シャフトを連結具に挿入して回転するときに,別部材を介在させないことまで限定しているわけではなく,被告製品のOリングは,構成要件Kの充足性に影響しない。 ウ構成要件Pについて被告製品が構成要件Pを充足する理由は,上記アと同様である。 【被告の主張】(1) 被告製品の構成被告製品の構成a~f,i,j,l~oについては認め,被告製品の構成g,h,k, 被告製品が構成要件Pを充足する理由は,上記アと同様である。 【被告の主張】(1) 被告製品の構成被告製品の構成a~f,i,j,l~oについては認め,被告製品の構成g,h,k,pは否認する。 構成gについて,傘形状ブッシュ(スクレーパー)は,ブラシロッドに固定されておらず,弾性体としての復元力を活かし,ブラシロッドの取付溝に嵌め込まれている。 構成hについて,傘形状ブッシュ(スクレーパー)の前縁は,ビンの開口に密着していない(構成pについても同様である。)。 構成kについて,被告製品の連結具の末端に設けられているのは,幾何形状穴ではなく円型の穴である。また,被告製品は,幾何形状断面シャフトを円形の穴に挿入することだけでは,幾何形状断面シャフトと連結具が同期には回転せず,Oリングと共に円形の穴に挿入する必要がある。 (2) 構成要件充足性被告製品が構成要件A~F,I,J,L~Oを充足することは認めるが,以下に述べるとおり,被告製品は構成要件G,H,K,Pを充足しない。 ア構成要件Hの「前縁」,「開口」(ア) 解釈ブラシロッドに一体又は別体で設けた部材により化粧品の漏出を防止した構造は周知であるから,「前縁」については字義どおり厳格に解して,密封ブッシュとブラシロッドの境界を示す密封ブッシュの前方の端と解釈すべきであり(別紙被告製品説明図(被告の主張)記載1参照),仮にそうでないとしても,密封ブッシュの前方の端から拡径を始める境界までの部分と解釈すべきである(別紙被告製品説明図(被告の主張)記載2参照)。また,「開口」とは,ビンの後方の先端の部分に限定される。 (イ) 充足性被告製品については,傘形状ブッシ と解釈すべきである(別紙被告製品説明図(被告の主張)記載2参照)。また,「開口」とは,ビンの後方の先端の部分に限定される。 (イ) 充足性被告製品については,傘形状ブッシュ(スクレーパー)の前縁は,ビンの開口に密着しておらず,構成要件Hを充足しない。 イ構成要件Gの「密封ブッシュ」,構成要件Hの「化粧品漏れ止め構造」被告製品の傘形状ブッシュ(スクレーパー)は,樹脂ブッシュ(シゴキ)に付着したマスカラ液を掻き落としてビンの中に押し戻すためのものである。傘形状ブッシュ(スクレーパー)と樹脂ブッシュ(シゴキ)はいずれも柔らかく変形する部材であるため,接触時に互いの変形により,完全に液漏れを防止するようには密着せず,液漏れ防止の十分な機能を有していない。 なお,被告製品は,樹脂ブッシュ(シゴキ)の後端の突起部が,本体の内ねじ付きブッシュの後側内壁に密着することによって,液漏れ防止を果たしている。 ウ構成要件K(ア) 「幾何形状穴」「幾何形状」とは,三角形,方形,多角形,円形などを組み合わせた複雑な形状を指し,単純な四角形,円形などの形状は含まれない。被告製品の連結具の末端に設けられているのは円形の穴であるため,「幾何形状穴」を充足しない。 (イ) 被告製品のOリング本件考案では,「幾何形状断面シャフトが前記幾何形状穴に挿入され,そうすると,前記幾何形状断面シャフトは前記連結具と同期に回転することができる」のに対し,被告製品では,幾何形状断面シャフトを円形の穴に挿入するだけでは連結具と同期に回転せず,円形の穴の内壁面にゴム製のOリングを嵌め込み,そこに幾何形状断面シャフト(十字型)を挿入しているため,構成要件Kを充足しない。 状断面シャフトを円形の穴に挿入するだけでは連結具と同期に回転せず,円形の穴の内壁面にゴム製のOリングを嵌め込み,そこに幾何形状断面シャフト(十字型)を挿入しているため,構成要件Kを充足しない。 エ構成要件P被告製品が構成要件Pを充足しない理由は,上記ア,イと同様である。 2 争点2(本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるか)【被告の主張】(1) 乙19文献による主張以下のとおり,本件考案1~5は,乙19文献に記載された考案(別紙乙19文献図8参照)と同一であることから新規性(実用新案法3条1項3号)を欠き,本件考案3,6は,乙19文献に記載された考案から当業者が容易に想到することができたものであるから進歩性(同条2項)を欠く。 したがって,本件実用新案登録は,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものである(同法37条1項2号,同法30条,特許法104条の3第1項)。 ア乙19文献と本件考案1との対比(ア) 構成要件Aについて乙19文献には,構成要件Aの「本体」,「ブラシロッド」,「ビン」に相当するマスカラカバー20,棒70及びマスカラ容器10が開示されており,構成要件Aの「化粧品容器用漏れ止め構造」に相当する構成が開示されている(段落7,55)。 (イ) 構成要件Bについて乙19文献には,構成要件Bの「本体」,「電源ユニット」,「モータ」,「連結具」に相当するマスカラカバー20,バッテリ3,モータ1及び棒70の一部(棒70の部分のうち回転軸2aが挿入されている部分)が開示されており,構成要件Bに相当する構成が開示されている(段落57,62,65,81,図8,19)。 本件考案 ,モータ1及び棒70の一部(棒70の部分のうち回転軸2aが挿入されている部分)が開示されており,構成要件Bに相当する構成が開示されている(段落57,62,65,81,図8,19)。 本件考案の「連結具」は,本件明細書の段落【0015】に「もちろん,前記ブラシロッド20と前記連結具15は一体成形されるものでもよい。」と記載されているとおり,ブラシロッドの一部である場合も含むと解釈される。乙19文献の棒70のうち,回転軸2aが挿入されている部分は,マスカラカバー20の収容空間に設けられ(構成要件B),マスカラカバー20の内部に回動可能に設けられ(同C),回転軸2a及び減速器2を介してモータ1に駆動可能であり(同D),棒70の一端と同軸し連結しているから(同E),機能的には本件考案1の「連結具」に当たる。 (ウ) 構成要件C,Dについて乙19文献には,構成要件C,Dの「連結具」,「本体」及び「モータ」に相当する棒70の一部,マスカラカバー20及びモータ1が開示されており,構成要件C,Dに相当する構成が開示されている(段落57,62,図8,10)。 (エ) 構成要件Eについて乙19文献には,構成要件Eの「ブラシロッド」,「連結具」及び「ブラシヘッド」に相当する棒70,棒70の一部及びゴムブラシ80が開示されており,構成要件Eに相当する構成が開示されている(段落62,図8,10)。 (オ) 構成要件Fについて乙19文献には,構成要件Fの「ビン」,「ブラシロッド」及び「開口」に相当するマスカラ容器10,棒70及び開口部が開示されている。また,本件考案の「液体チェンバー」は,「ビン」の一部分のことをいうと解されるから(段落【0017】参照),乙19文献のマスカラ容器 に相当するマスカラ容器10,棒70及び開口部が開示されている。また,本件考案の「液体チェンバー」は,「ビン」の一部分のことをいうと解されるから(段落【0017】参照),乙19文献のマスカラ容器10の一部分が「液体収容チェンバー」に相当する。さらに,乙19文献には,構成要件Fに相当する構成が開示されている(段落55,56,83,図8,10)。 (カ) 構成要件Gについて乙19文献には,構成要件Gの「ブラシロッド」に相当する棒70が開示されている。 本件考案の「密封ブッシュ」は,本件明細書の段落【0018】に「前記ブラシロッド20に密封ブッシュが一体に成形され,前記密封ブッシュは,傘形状を呈していもいいし,ボール形状を呈していもいいし,その他適当な形状を呈していてもよい。」(原文ママ)と記載されているとおり,ブラシロッドの一部である場合も含むと解釈される(実際,本件明細書で図示されているのは,一体に成形された態様のみである。)。乙19文献の棒70の後部には,略円錐台形状の拡径部及び拡径部から水平方向に伸びる鍔部が形成されている。そして,拡径部及び鍔部の前方を向いた面の一部は,前方にブレード11を有するブッシュに接触しており,拡径部及び鍔部からなる部位は,「密封ブッシュ」に相当する。 したがって,乙19文献には,構成要件Gに相当する構成が開示されている。 なお,密封ブッシュは,様々な形状のものが周知技術として使用されている(乙21,32,34~39)。 (キ) 構成要件Hについて乙19文献には,構成要件Hの「本体」,「ビン」及び「開口」に相当するマスカラカバー20,マスカラ容器10及び開口部が開示されている。また,乙19文献には,「密封ブッシ 乙19文献には,構成要件Hの「本体」,「ビン」及び「開口」に相当するマスカラカバー20,マスカラ容器10及び開口部が開示されている。また,乙19文献には,「密封ブッシュ」に相当する棒70の拡径部が開示され,拡径部の斜面の一部が,前方にブレード11を有するブッシュの後方内周面に接触することで,密封構造を実現することが図示されている。したがって,乙19文献には,構成要件Hに相当する構成が開示されている(図8)。 (ク) 小括上記のとおり,乙19文献には,構成要件A~Hに相当する構成が開示されており,本件考案1は,乙19文献によって新規性を欠く。 イ乙19文献と本件考案2との対比(ア) 構成要件Iについて乙19文献には,構成要件Iの「モータ」,「連結具」及び「減速手段」に相当するモータ1,棒70の一部及び減速器2の歯車列が開示されており,構成要件Iに相当する構成が開示されている(図8,10)。 (イ) 小括したがって,本件考案2は,乙19文献によって新規性を欠く。 ウ乙19文献と本件考案3との対比(ア) 構成要件Jについて乙19文献には,構成要件Jの「本体」,「レール」,「スイッチ」及び「電源ユニット」に相当するマスカラカバー20,動作溝22a,22b,ロータリースイッチ50及びバッテリ3が開示されており,構成要件Jに相当する構成が開示されている(段落65,66,74,84,85,図8,10)。 なお,仮に,乙19文献のロータリースイッチ50が構成要件Jの「スイッチ」に相当しないとしても,構成要件Jに相当する構成は周知技術である(乙22~24)。 (イ) 小括したがって,本件 タリースイッチ50が構成要件Jの「スイッチ」に相当しないとしても,構成要件Jに相当する構成は周知技術である(乙22~24)。 (イ) 小括したがって,本件考案3は,乙19文献によって新規性を欠いており,仮にそうでないとしても,乙19文献及び周知技術によって進歩性を欠く。 エ乙19文献と本件考案4との対比(ア) 構成要件Kについて乙19文献には,構成要件Kの「減速手段」,「幾何形状断面シャフト」,「連結具」及び「幾何形状穴」に相当する減速器2の歯車列,回転軸2a,棒70の一部及びD字切欠き穴71が開示されており,構成要件Kに相当する構成が開示されている(段落62,81,図8,10)。 (イ) 小括したがって,本件考案4は,乙19文献によって新規性を欠く。 オ乙19文献と本件考案5との対比(ア) 構成要件Lについて乙19文献には,構成要件Lの「ブラシ」に相当するゴムブラシ80が開示されており,構成要件Lに相当する構成が開示されている(段落55)。 (イ) 小括したがって,本件考案5は,乙19文献によって新規性を欠く。 カ乙19文献と本件考案6との対比(ア) 相違点乙19文献と本件考案6を対比すると,両者は以下の点で相違する(その余は一致する。)。 相違点1:本件考案6は「内ねじ付きブッシュ」(構成要件M,N)を具備するのに対し,乙19文献は「内ねじ付きブッシュ」を具備しない点相違点2:ビンの開口の内面に設けられるブッシュについて,本件考案6では当該ブッシュの材質が「樹脂」であるのに対し,乙19文献では当該部分の材質が不明である点 具備しない点相違点2:ビンの開口の内面に設けられるブッシュについて,本件考案6では当該ブッシュの材質が「樹脂」であるのに対し,乙19文献では当該部分の材質が不明である点(イ) 相違点についての検討相違点1について,「内ねじ付きブッシュ」は周知技術である(乙28~33)。また,相違点2について,ビンの開口内面に設けられるブッシュの材質が「樹脂」である構成も周知技術である(乙29,31,33~35)。 (ウ) 小括したがって,本件考案6は,乙19文献及び周知技術によって進歩性を欠く。 (2) 乙20文献による主張以下のとおり,本件考案1,2,5は,乙20文献に記載された考案(別紙乙20文献図1参照)と同一であることから新規性(実用新案法3条1項3号)を欠き,本件考案3,4,6は,乙20文献に記載された考案から当業者が容易に想到することができたものであるから進歩性(同条2項)を欠く。 したがって,本件実用新案登録は,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものである(同法37条1項2号,30条,特許法104条の3第1項)。 ア乙20文献と本件考案1との対比(ア) 構成要件Aについて乙20文献には,構成要件Aの「本体」,「ブラシロッド」,「ビン」に相当する蓋体1,軸体5及び容器8が開示されており,構成要件Aの「化粧品容器用漏れ止め構造」に相当する構成が開示されている(乙20・2頁18~29行目,図1)。 (イ) 構成要件Bについて乙20文献には,構成要件Bの「本体」,「電源ユニット」,「モータ」,「連結具」に相当する蓋体1,乾電池3,モータ4及び軸体5の一部(モータ側から伸びた 構成要件Bについて乙20文献には,構成要件Bの「本体」,「電源ユニット」,「モータ」,「連結具」に相当する蓋体1,乾電池3,モータ4及び軸体5の一部(モータ側から伸びた軸状部材が挿入されている部分)が開示されており,構成要件Bに相当する構成が開示されている。 本件考案の「連結具」は,上記のとおり,「ブラシロッド」の一部である場合も含むと解釈される。乙20文献の軸体5のうち,モータ4から伸びた軸状部材が挿入されている部分は,蓋体1の収容空間に設けられ(構成要件B),蓋体1の内部に回動可能に設けられ(同C),モータ4に駆動可能であり(同D),軸体5の一端と同軸し連結しているから(同E),機能的には本件考案1の「連結具」に当たる。 (ウ) 構成要件C,Dについて乙20文献には,構成要件C,Dの「連結具」,「本体」及び「モータ」に相当する軸体5の一部,蓋体1及びモータ4が開示されており,構成要件C,Dに相当する構成が開示されている(乙20・2頁18~24行目,図1)。 (エ) 構成要件Eについて乙20文献には,構成要件Eの「ブラシロッド」,「連結具」及び「ブラシヘッド」に相当する軸体5,軸体5の一部及びブラシ6が開示されており,構成要件Eに相当する構成が開示されている(乙20・2頁18~24行目,図1)。 (オ) 構成要件Fについて乙20文献には,構成要件Fの「ビン」,「ブラシロッド」に相当する容器8及び軸体5が開示されている。また,本件考案の「液体チェンバー」は,「ビン」の一部分のことをいうと解されるから(段落【0017】参照),乙20文献の容器8の一部が「液体収容チェンバー」に相当する。さらに,乙20文献には,構成要件Fに相当する構成が開示さ 「ビン」の一部分のことをいうと解されるから(段落【0017】参照),乙20文献の容器8の一部が「液体収容チェンバー」に相当する。さらに,乙20文献には,構成要件Fに相当する構成が開示されている(乙20・2頁25~29行目,図1)。 (カ) 構成要件Gについて乙20文献には,構成要件Gの「ブラシロッド」に相当する軸体5が開示されている。 本件考案の「密封ブッシュ」は,上記のとおり,「ブラシロッド」の一部である場合も含むと解釈される(実際,本件明細書で図示されているのは,一体に成形された態様のみである。)。乙20文献の軸体5の後部には,略円錐台形状の拡径部が形成されている。そして,拡径部の前方を向いた面の一部は密閉部材7に接触しており,かかる接触により「マスカラ内容物の揮発を防止することができる」(乙20・2頁25~29頁)とされていることから,拡径部は,「密封ブッシュ」に相当する。 したがって,乙20文献には,構成要件Gに相当する構成が開示されている。 なお,密封ブッシュは,上記のとおり様々な形状のものが周知技術として使用されている(乙21,32,34~39)。 (キ) 構成要件Hについて乙20文献には,構成要件Hの「本体」及び「ビン」に相当する蓋体1及び容器8が開示され,軸体の拡径部の一部が,容器の開口に設けられた密閉部材の上部内周面に密着していることが図示されている。したがって,乙20文献には,構成要件Hに相当する構成が開示されている(図1)。 (ク) 小括上記のとおり,乙20文献には,構成要件A~Hに相当する構成が開示されており,本件考案1は,乙20文献によって新規性を欠く。 イ乙20文献と本件考案2と (ク) 小括上記のとおり,乙20文献には,構成要件A~Hに相当する構成が開示されており,本件考案1は,乙20文献によって新規性を欠く。 イ乙20文献と本件考案2との対比(ア) 構成要件Iについて 乙20文献には,構成要件Iの「モータ」,「連結具」及び「減速手段」に相当するモータ4,軸体5の一部及び減速ギアが開示されており,構成要件Iに相当する構成が開示されている(乙20・2頁18~24行目,図1)。 (イ) 小括したがって,本件考案2は,乙20文献によって新規性を欠く。 ウ乙20文献と本件考案3との対比(ア) 相違点乙20文献と本件考案3を対比すると,両者は以下の点で相違する(その余は一致する。)。 相違点:本件考案3は本体の側面に設けられたレールにスイッチが摺動可能に設けられるのに対し,乙20文献はロータリ式スイッチ2の配設態様が明らかではない点。 (イ) 相違点についての検討上記相違点に係る本件考案3の構成は,周知技術である(乙22~24)。乙22~24記載の技術はいずれも電動マスカラに関するもので,乙20文献のロータリ式スイッチに変えて,摺動可能なスライド式スイッチを適用することに,何ら阻害要因はない。 (ウ) 小括したがって,本件考案3は,乙20文献及び周知技術によって進歩性を欠く。 エ乙20文献と本件考案4との対比(ア) 相違点乙20文献と本件考案4を対比すると,両者は以下の点で相違する(その余は一致する。)。 相違点:本件考案4は減速手段及び連結具が,「幾何形状断面シャフト」及び「幾何形状」を設けられた態様で互いに連結 を対比すると,両者は以下の点で相違する(その余は一致する。)。 相違点:本件考案4は減速手段及び連結具が,「幾何形状断面シャフト」及び「幾何形状」を設けられた態様で互いに連結されて同期に回転するのに対し,乙20文献では,減速ギア及び軸体5の一部がそれぞれ「幾何形状断面シャフト」及び「幾何形状穴」を設けない態様で互いに連結されてい同期に回転する点(イ) 相違点についての検討乙19文献には,上記相違点に係る本件考案4の構成が開示されているところ,乙20文献と乙19文献とは,共に技術分野が電動マスカラに関するものであり,当業者は乙20文献に乙19文献の構成を適用することを容易に想到することができ,阻害要因もない。 また,上記相違点に係る本件考案4の構成は,周知技術である(乙19,23,25~27)。 (ウ) したがって,本件考案4は,乙20文献及び周知技術によって進歩性を欠く。 オ乙20文献と本件考案5との対比(ア) 構成要件Lについて乙20文献には,構成要件Lの「ブラシ」に相当するブラシ6が開示されており,構成要件Lに相当する構成が開示されている(乙20・2頁18~29頁,図1)。 (イ) 小括したがって,本件考案5は,乙20文献によって新規性を欠く。 カ乙20文献と本件考案6との対比(ア) 相違点乙20文献と本件考案6を対比すると,両者は以下の点で相違する(その余は一致する。)。 相違点1:本件考案6は「内ねじ付きブッシュ」を含み,「前記内ねじ付きブッシュは,前記本体の前端に設けられ,内ねじを有し,前記開口の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ね 相違点1:本件考案6は「内ねじ付きブッシュ」を含み,「前記内ねじ付きブッシュは,前記本体の前端に設けられ,内ねじを有し,前記開口の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ねじ付きブッシュの内ねじと螺合」している(構成要件M,N)のに対し,乙20文献は「内ねじ付きブッシュ」を具備せず,容器8の「開口の外面に外ねじ」が設けられているかが明らかではない点相違点2:ビンの開口の内面に設けられるブッシュについて,本件考案6では当該ブッシュの材質が「樹脂」であるのに対し,乙20文献では密閉部材7の材質が不明である点(イ) 相違点についての検討相違点1について,「内ねじ付きブッシュ」は周知技術である(乙28~33)。また,「内ねじ付きブッシュ」に対応するように容器の開口の外面に「外ねじ」を設けることも,周知技術である(乙28~33)。 相違点2について,ビンの開口内面に設けられるブッシュの材質が「樹脂」である構成も周知技術である(乙29,31,33~35)。 (ウ) 小括したがって,本件考案6は,乙20文献及び周知技術によって進歩性を欠く。 (3) 明確性要件違反本件考案の効果(「回転可能な部材と回転不能な部材の間に,化粧液が漏れ出して侵入することがない」。【0011】)を奏するためには,少なくとも,①回転可能な部材(ブラシロッド,連結具),回転不能な部材(本体)と密封ブッシュとの関係,②回転可能な部材と回転不能な部材との隙間と,密封ブッシュの前縁が開口に密着する位置との関係が特定されている必要がある。しかし,本件考案1では,密封ブッシュと回転不能な部材(本体)との位置関係,密封ブッシュと回転可能な部材(連結具)との位置関係がいずれも特定されていない。 位置との関係が特定されている必要がある。しかし,本件考案1では,密封ブッシュと回転不能な部材(本体)との位置関係,密封ブッシュと回転可能な部材(連結具)との位置関係がいずれも特定されていない。加えて,本件考案1では,回転可能な部材(ブラシロッド,連結具)と回転不能な部材(本体)との間の隙間と,密封ブッシュの前縁が開口に密着する位置との関係も特定されていない。このため,いかなる場合に上記効果を奏するかは,請求項1の記載から把握することができず不明確である(この点,請求項1を引用する請求項2~6についても同様である。)。また,本件考案の請求項6では,密封ブッシュと回転不能な部材(内ねじ付きブッシュ)との位置関係,回転可能な部材(ブラシロッド,連結具)と回転不能な部材(内ねじ付きブッシュ)との間の隙間と,密封ブッシュの前縁が樹脂ブッシュに密着する位置との関係も特定されていない。このため,いかなる場合に,上記効果を奏するかは,請求項6の記載から把握することができず,考案が不明確である。よって,請求項1~6に係る考案は明確でないから,本件実用新案登録は実用新案法5条6項2号に規定する要件を満たさない。(4) サポート要件違反本件考案の考案の詳細な説明には,「回転可能な部材と回転不能な部材の間に,化粧液が漏れ出して侵入することのない化粧品容器用漏れ止め構造」(【0004】)を課題とし,当該課題を解決するために,密封ブッシュが回転可能な連結具15と回転不能な凸縁11の一端とを覆う点が記載されている。しかしながら,本件考案の請求項1~6には,密封ブッシュの前縁が開口に密着されることは記載されているが,密封ブッシュの前縁がどのように回転可能な連結具と回転不能な凸縁の一端(本体の前端)とを覆うのかについて ら,本件考案の請求項1~6には,密封ブッシュの前縁が開口に密着されることは記載されているが,密封ブッシュの前縁がどのように回転可能な連結具と回転不能な凸縁の一端(本体の前端)とを覆うのかについては記載がなく,課題を解決するための手段が反映されていない。したがって,本件考案の請求項1~6には,考案の詳細な説明に記載された,課題を解決するための手段が反映されておらず,考案の詳細な説明に記載した範囲を超えている。よって,請求項1~6に係る考案は,考案の詳細な説明に記載したものではないから,本件実用新案登録は実用新案法5条6項1号に規定する要件を満たさない。【原告の主張】(1) 乙19文献による主張についてア被告は,乙19文献の棒70の端部(拡径部)が,構成要件Gの「密封ブッシュ」に相当すると主張する。 しかしながら,「密封ブッシュ」は,開口に密着して化粧液などの液体が漏れ出ることを防ぐ機能を有し,軸を受ける筒状の部材と解されるところ,乙19文献の棒70の端部(図8参照)は,軸である棒70の一部に過ぎず,「密封ブッシュ」に該当しない。なお,図4で,韓国登録実用新案第356873号に開示された封止構造を有する他の電動マスカラが示されているが,これについても,実質的にどの構造が何をどこでどのように封止しているかについては何ら記載がない。被告の主張は,本件考案の内容を知った上で,事後的に棒70の端部が「密封ブッシュ」に相当すると述べているにすぎない。なお,被告は,乙19,23,34~39により「密封ブッシュ」は周知であると主張するが,上記各文献はいずれも電動マスカラの部材に関するものではないから,「密封ブッシュ」が周知であったとはいえず,またこれらを適用する動機付けも存しない。 により「密封ブッシュ」は周知であると主張するが,上記各文献はいずれも電動マスカラの部材に関するものではないから,「密封ブッシュ」が周知であったとはいえず,またこれらを適用する動機付けも存しない。イまた,被告は,乙19文献の棒70の一部が,構成要件B,C,E,I,Kの「連結具」に相当すると主張する。 しかしながら,構成要件Eで「前記ブラシロッドは,一端が…前記連結具に連結され」とされているとおり,「連結具」は,ブラシロッドとは異なる部材であるところ,乙19文献の棒70の一部は,棒70を構成する部分であることから,本件考案の「連結具」ではない。 ウ以上のとおり,本件考案1は,乙19文献に対し新規性を有しており,本件考案1が新規性を有しないことを前提とする本件考案2,4,5の新規性欠如の主張,本件考案3,6の進歩性欠如の主張にも理由がない。 (2) 乙20文献による主張についてア被告は,乙20文献の軸体5の端部が,構成要件Gの「密封ブッシュ」に相当すると主張する。 しかしながら,「密封ブッシュ」は,開口に密着して化粧液などの液体が漏れ出ることを防ぐ機能を有し,軸を受ける筒状の部材であるところ,乙20文献の軸体5の端部(図8参照)は,軸体5の一部に過ぎず「密封ブッシュ」に該当しない。 イまた,被告は,乙20文献の軸体5の一部が,構成要件B,C,E,I,Kの「連結具」に相当すると主張する。 しかしながら,構成要件Eで「前記ブラシロッドは,一端が…前記連結具に連結され」とされているとおり,「連結具」は,ブラシロッドとは異なる部材であるところ,乙20文献の「軸体5」の一部は,軸体5を構成する部分であることから,本件考案の「連結具」ではない。 ウ 連結され」とされているとおり,「連結具」は,ブラシロッドとは異なる部材であるところ,乙20文献の「軸体5」の一部は,軸体5を構成する部分であることから,本件考案の「連結具」ではない。 ウ以上のとおり,本件考案1は,乙20文献に対し新規性を有しており,本件考案1が新規性を有しないことを前提とする本件考案2,5の新規性欠如の主張,本件考案3,4,6の進歩性欠如の主張にも理由がない。 (3) 明確性要件違反について請求項1には,回動可能な部材である連結具(構成要件C)と,一端がその連結具と同軸して連結され他端にブラシヘッドが設けられているブラシロッド(同E)とを具備し,そのブラシロッドに密封ブッシュを設ける(同G)構成が開示されており,各部材の関係性は明確である。 なお,本件考案の課題は,構成要件A~Gに加え,構成要件Hの密封ブッシュの前縁が開口に密着する構成により解決できるのであるから,それ以上に,化粧液の侵入先と密封ブッシュの前縁が開口に密着する位置との関係まで特定しなければ明確性を欠くとする被告の主張には根拠がない。 (4) サポート要件違反について本件考案の課題を解決するためには,密封ブッシュの前縁がどのようにして回転可能な連結具と回転不能な凸縁の一端(本体の前端)とを覆うかまで特定しなくとも,密封ブッシュの前縁が開口に密着されることが記載されていることにより,その密着する箇所を越えて液体が漏れ出ることがない構成が開示されているのであるから,当業者は考案の詳細な説明に記載された上記課題を解決するための手段が反映されていることを認識することができる。したがって,請求項1~6に係る考案は,考案の詳細な説明に記載されているといえ,被告のサポート要件違反の主張には理由がない。 題を解決するための手段が反映されていることを認識することができる。したがって,請求項1~6に係る考案は,考案の詳細な説明に記載されているといえ,被告のサポート要件違反の主張には理由がない。 3 争点3(原告の損害)について【原告の主張】(1) 被告は,本件実用新案権の設定登録後,被告製品を少なくとも12万個販売したが,被告製品1個あたりの利益額は1000円を下らず,被告製品の販売による利益は1億2000万円を下らない。 また,弁護士費用として上記金員の10パーセントに相当する1200万円が損害額に加算されるべきである。 したがって,被告が本件実用新案権を侵害したことにより原告が被った損害額は少なくとも1億3200万円であると算定される(実用新案法29条2項)。 (2) なお,原告は,訴外P1から本件実用新案権の譲渡を受けているが,当該譲渡以前に発生した損害賠償請求権については,訴外P1から債権譲渡を受けている(甲6の1・2)。 【被告の主張】損害に関する原告の主張は,否認し争う。原告が被告製品の発注先に対し,被告製品が本件実用新案権を侵害している旨告知したため,被告は,平成23年1月17日以降,被告製品を製造せず,同年2月1日以降,被告製品を販売していない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品は本件考案1~6の技術的範囲に属するか)について(1) 被告製品の構成についてア傘形状ブッシュとビンとの接触状況(構成h)株式会社コーケンによる放射線透過写真(甲9の1・2),地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター技師による放射線透過写真(乙41~43)によると,被告製品で本体,ブラシロッド,ビンを結合した状態において,傘形状ブッシュは,その後方 甲9の1・2),地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター技師による放射線透過写真(乙41~43)によると,被告製品で本体,ブラシロッド,ビンを結合した状態において,傘形状ブッシュは,その後方内周側が裏側で内ねじ付きブッシュ前方の凸縁と接触し,傘形状ブッシュは弾性素材でできていることから,当該接触によりやや拡径しているものと認められ,これによって,製品ごとに程度差はあるものの,傘形状ブッシュの後方外周側の端が,ビンの後部に取り付けられた樹脂ブッシュ(シゴキ)の内側に接触していることが認められる。 原告が提出する被告製品の一部を切り欠き内部を視認可能にした写真においても(甲8,16~18),上記認定を覆すものはない。なお,被告製品の写真撮影報告書(乙14)で撮影された被告製品は,傘形状ブッシュが樹脂ブッシュ(シゴキ)の内側にほとんど接触していない部分があるともいえるが(乙14),接触がないとまではいえない上,同製品は被告製品を加工したものであることからすれば,上記認定を覆すものではない(なお,被告も本件において接触がないとまで主張するものではない。)。 イ漏れ止め防止構造(構成h)原告は,財団法人化学研究評価機構高分子試験・評価センターにおいて,①被告製品,②被告製品のビンの後部に取り付けられた樹脂ブッシュ(シゴキ)の後端を切断したもの,③被告製品の傘形状ブッシュの本体側を切断したものの3種類の試料につき,回転可能な部材である連結具と回転不能な部材である内ねじ付きブッシュとの間からの液漏れの有無を試験したところ(甲10,11,19の1・2),③被告製品の傘形状ブッシュの後端を切断したものについてのみ液漏れが見られた。 上記実験結果によれば,被告製品においては,傘形状ブッシュの後端が化粧品の ろ(甲10,11,19の1・2),③被告製品の傘形状ブッシュの後端を切断したものについてのみ液漏れが見られた。 上記実験結果によれば,被告製品においては,傘形状ブッシュの後端が化粧品の漏れ止め防止の機能を担っており,具体的には,傘形状ブッシュの後方外周側の端が,樹脂ブッシュ(シゴキ)と接触することによって,化粧品の容器外部への漏れ止め防止を果たしており,これによって回転可能な部材と回転不能な部材との間への漏れ止め防止機能も果たしていると認められる(なお,被告は,被告製品では,傘形状ブッシュと内ねじ付きブッシュが密着することにより回転可能な部材と回転不能な部材との間への漏れ止め防止が果たされていると主張するが,当該構造を前提としても,上記実験結果に従えば,傘形状ブッシュと樹脂ブッシュ(シゴキ)との接触によって漏れ止め防止が果たされているといえる。)。 被告は,被告製品では,傘形状ブッシュ(スクレーパー)は,前記樹脂ブッシュ(シゴキ)の内壁に付着したマスカラ液をビンの中に掻き落とすことにより,樹脂ブッシュ(シゴキ)にマスカラ液が溜まり,開口からあふれるのを防止する機能を有するものであるところ,傘形状ブッシュ(スクレーパー)と樹脂ブッシュ(シゴキ)との接触は,素材自体が柔らかく変形できる部材(ゴム製樹脂)同士の接触であるため,互いの変形によってマスカラ液の漏出を完全に阻止するようには密着しないと主張するが,上記アのとおり傘形状ブッシュは,内ねじ付きブッシュの凸縁により拡径して樹脂ブッシュ(シゴキ)と接触していることからすれば,当該接触によって密封機能を果たしているといえるのであって,樹脂ブッシュがゴム製であることは,当該機能には影響しないといえる。また,被告製品の傘形状ブッシュ(スクレーパー)が,樹脂ブッシュ(シゴ ,当該接触によって密封機能を果たしているといえるのであって,樹脂ブッシュがゴム製であることは,当該機能には影響しないといえる。また,被告製品の傘形状ブッシュ(スクレーパー)が,樹脂ブッシュ(シゴキ)の内壁に付着したマスカラ液をビンの中に掻き落とす機能を有していることは,上記密封機能を有することと矛盾せず,上記認定を覆すものではない。 (2) 構成要件G,Hの充足性ア構成要件の解釈(ア) 構成要件Hは,「前記本体と前記ビンを結合するときには,前記密封ブッシュの前縁が前記開口に密着されることを特徴とする,化粧品容器用漏れ止め構造」であり,ブラシロッドに設けられた密封ブッシュの「前縁」(構成要件G参照)とビンの一端に設けられる「開口」(構成要件F参照)が密着することが必要とされている。 (イ) そこで,まず「開口」の解釈について検討するに,「開口」が,文言上,ビンの最後方の端部のみを指すと解すべき理由はないし,本件明細書の請求項6では,「前記開口(42)の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ねじ付きブッシュ(30)の内ねじと螺合し,前記開口(42)の内面に樹脂ブッシュ(43)が設けられ」とされており,「開口」は外面に外ねじ,内面に樹脂ブッシュを設けることが予定されていることからすれば,「開口」は,ビンの最後方の先端部に限られず,広くビンの開放部分を指すと解釈するのが相当である(本件明細書の【図1】,【図3】~【図5】においても,ビンの本体側の凸部が「開口」(42)として図示されている。)。(ウ) また,「前縁」の意義について解釈するに,本件明細書では,密封ブッシュの一部を指す用語として用いられているところ,密封ブッシュ(傘形状ブッシュ)は,凸縁と連結 図示されている。)。(ウ) また,「前縁」の意義について解釈するに,本件明細書では,密封ブッシュの一部を指す用語として用いられているところ,密封ブッシュ(傘形状ブッシュ)は,凸縁と連結具の一端を覆うことによって,化粧液が漏れ出すのを防ぐことからすれば(段落【0018】),ここにいう「前」とは,化粧液のあるブラシヘッド側と解するのが相当であり,「縁」は,物の端,へり等のほか,まわりを表す意味もあること(乙15,16)からすれば,「前縁」とは,傘形状ブッシュのうち広くブラシヘッド側 となる部分を指すと解するのが相当である。被告は,「前縁」の範囲は字義どおり厳格に解すべきであるとして,傘形状ブッシュの前方の端又は拡径を始める境界までを指すと主張するが,採用できない。イ充足性被告製品では,上記(1)で認定したとおり,傘形状ブッシュの後方外周側の端がビンの後部に取り付けられた樹脂ブッシュ(シゴキ)の内側に接触し,これが密着することによって漏れ止め防止構造を果たしていると認められる。 そして,傘形状ブッシュの後方外周部分の端はその「前縁」に当たるということができ,ビンと一体を成す樹脂ブッシュの内側はビンの「開口」に該当し,そして,傘形状ブッシュの後方外周の端は開口部に押し付けられて密着することにより「化粧品の漏れ止め防止構造」を果たしていると認められる(したがって,被告製品の傘形状ブッシュは「密封ブッシュ」にも該当する。)。 したがって,被告製品は,構成要件G,Hを充足する。 (3) 構成要件Kの充足性被告製品の構成kは,連結具の末端に,円形の穴が設けられており,そこにゴム製のOリングを介して十字形状シャフトを挿入することにより,十字形状シャフ Hを充足する。 (3) 構成要件Kの充足性被告製品の構成kは,連結具の末端に,円形の穴が設けられており,そこにゴム製のOリングを介して十字形状シャフトを挿入することにより,十字形状シャフトと連結具を同期に回転する構成であると認められる(弁論の全趣旨)。 構成要件Kは,「前記減速手段には,幾何形状断面シャフトが設けられ,前記連結具の末端には,幾何形状穴が設けられ,前記幾何形状断面シャフトが前記幾何形状穴に挿入され,そうすると,前記幾何形状断面シャフトは前記連結具と同期に回転することができることを特徴とする」である。この「幾何形状穴」については,本件明細書上何ら限定はないが,シャフトの幾何形状が連結具の穴の幾何形状と係合することによって,シャフトが連結具と同期に回転するものでなければならない。 被告製品においては,上記のとおり,連結具の穴は円形であるのに,そこに挿入されるシャフトの断面形状は十字形状であるから,両者がその幾何形状によって係合し同期に回転することはなく,Oリングを介することにより,その抵抗によって同期に回転しているに過ぎない。 したがって,被告製品は,構成要件Kを充足しない。 (4) 構成要件Pの充足性構成要件Pは,「前記ブラシロッドが前記樹脂ブッシュを経由して前記液体収容チェンバーに挿入し,前記本体と前記ビンを結合するときには,前記密封ブッシュの前縁が前記樹脂ブッシュに密着されることを特徴とする」であるところ,上記のとおり,被告製品は傘形状ブッシュの前縁が開口に密着しており,開口の内面に設けられた樹脂ブッシュにも密着していると認められる。したがって,被告製品は,構成要件Pを充足する。 (5) 小括以上のとおり,被告製品は,構成要件A~F,I,J,L~O の内面に設けられた樹脂ブッシュにも密着していると認められる。したがって,被告製品は,構成要件Pを充足する。 (5) 小括以上のとおり,被告製品は,構成要件A~F,I,J,L~Oを充足することは争いがなく,構成要件Kを充足しないが,構成要件G,H,Pについては充足すると認められるので,本件考案1~3,5及び6の技術的範囲に属する。 2 争点2(本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるか)について当裁判所は,乙20文献に記載された考案に基づき,本件実用新案登録は,実用新案登録無効審判により無効にされるべきであると判断する。 (1) 乙20文献の記載本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である乙20文献(訳文)には,以下の記載がある(以下に開示された乙20文献に記載された考案を「乙20考案」という。)。 ア (2頁18~24行目)このような従来のマスカラブラシの問題点を解決するために,多数の電動式マスカラが案出されており,例えば,図1に示されているように,従来の電動式マスカラにおいては,睫毛の化粧をするときに,蓋体(1)の外部に位置したロータリ式スイッチ(2)を回転させて作動させると,乾電池(3)の電源がモータ(4)に供給されてモータ(4)が回転を開始し,モータ(4)の動力が,図示されていない回転軸に設置されたピニオンギア及び減速ギアなどを介して軸体(5)に伝達されることより,軸体(5)が回転する。このように軸体(5)が回転すると,軸体(5)に設置されたブラシ(6)が連動し,軸体(5)と一緒に連動するブラシ(6)を睫毛に当てると,睫毛が自動的に巻き上げられて睫毛の化粧が行われることになる。 イ (2頁25~29行目)図1に示されている従 れたブラシ(6)が連動し,軸体(5)と一緒に連動するブラシ(6)を睫毛に当てると,睫毛が自動的に巻き上げられて睫毛の化粧が行われることになる。 イ (2頁25~29行目)図1に示されている従来の電動式マスカラにおいては,密閉部材(7)は,マスカラの揮発を防止すると同時に,容器(8)からブラシ(6)を抜き出すときに,ブラシに過度に付着しているマスカラ溶液を除去する役割を果たしており,マスカラ内容物の揮発性が高いため,蓋体(1)を容器(8)に装着するときに,密閉部材(7)が圧着する程度にしっかりと装着した場合にのみ,マスカラ内容物の揮発を防止することができる。 (2) 本件考案1と乙20考案との対比ア構成要件A構成要件Aは,「本体と,ブラシロッドと,ビンと,を含む化粧品容器用漏れ止め構造であって,」であるところ,乙20考案には,構成要件Aの「本体」,「ブラシロッド」,「ビン」に相当する蓋体(1),軸体(5)及び容器(8)が開示されている。また,乙20考案には,マスカラ内容物の揮発を防止することが開示されているところ,これは,容器の気密構造を開示したものであることから,「化粧品容器用漏れ止め構造」であることが開示されているといえる。 したがって,乙20考案は,構成要件Aに相当する構成を有するといえる。 イ構成要件B構成要件Bは,「前記本体は,収容空間を有し,前記収容空間には,電源ユニットと,前記電源ユニットと電気的に連接するモータと,連結具と,が設けられ,」であるところ,乙20考案には,「本体」,「電源ユニット」,「モータ」に相当する蓋体(1),乾電池(3),モータ(4)が開示されている(当事者間に争いがない。)。 また,本件考案1の「連結具」は,本体の収容空間内で回動 案には,「本体」,「電源ユニット」,「モータ」に相当する蓋体(1),乾電池(3),モータ(4)が開示されている(当事者間に争いがない。)。 また,本件考案1の「連結具」は,本体の収容空間内で回動可能に設けられ(構成要件B,C),「ブラシロッド」と同軸に連結されるものであるところ(構成要件E),乙20考案の軸体(5)は,一方の端でブラシ(6)と接続しており,他方の端では,軸体(5)と同軸に挿入された軸状部材を介して,モータ(4)に接続されており,その軸状部材の周辺部において,上記「連結具」に相当することと認められる。 原告は,構成要件Bの「連結具」は,「ブラシロッド」とは異なる部材であるところ,乙20文献の軸体(5)の軸状部材の周辺部は,軸体(5)を構成する部分であることから,「連結具」には相当しないと主張する。 しかしながら,「連結具」が「ブラシロッド」と異なる部材でなければならないと解する理由はなく,この点は,本件明細書で「もちろん,前記ブラシロッド20と前記連結具15は一体成形されるものでもよい。」(段落【0015】)と記載されていることからも明らかである(仮に相違点と捉えるとしても,単なる設計事項に過ぎないというべきである。)。 したがって,乙20考案は,構成要件Bに相当する構成を有するといえる。 ウ構成要件C・D構成要件Cは,「前記連結具は,前記本体の内部に回動可能に設けられ,」であり,構成要件Dは,「前記モータに駆動可能であり,」であるところ,乙20考案には,「連結具」,「本体」及び「モータ」に相当する軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部),蓋体(1)及びモータ(4)が開示されている。そして,乙20考案には,「連結具」に相当する軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)は,蓋体(1 「モータ」に相当する軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部),蓋体(1)及びモータ(4)が開示されている。そして,乙20考案には,「連結具」に相当する軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)は,蓋体(1)の内部に回動可能に設けられ,モータ(4)に駆動可能であることが開示されている。 したがって,乙20考案は,本件考案1の構成要件C及びDに相当する構成を有するといえる。 エ構成要件E構成要件Eは,「前記ブラシロッドは,一端が前記連結具と同軸し前記連結具に連結され,他端にブラシヘッドが設けられ,」であるところ,乙20考案には,「ブラシロッド」,「連結具」及び「ブラシヘッド」に相当する軸体(5),軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)及びブラシ(6)が開示されている。そして,乙20考案には,軸体(5)は,一端が軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)と同軸し,当該部分に連結され,他端にブラシ(6)が設けられていることが開示されている。 したがって,乙20考案は,本件考案1の構成要件Eに相当する構成を有するといえる。 オ構成要件F構成要件Fは,「前記ビンは,液体収容チェンバーと,前記ビンの一端に設けられる開口と,を有し,前記ブラシロッドは前記開口を経由して前記液体収容チェンバーに挿入される一方,」であるところ,乙20考案には,「ビン」,「ブラシロッド」に相当する容器(8)及び軸体(5)が開示されている。また,本件考案1の「液体収容チェンバー」は,「ビン」の一部分であると解されるから,乙20考案の容器(8)の一部が「液体収容チェンバー」に相当する。 そして,乙20考案には,容器(8)の一部と,容器(8)の一端に設けられる開口とを有し,軸体(5)は前記開口を経由して,容器(8)に挿入されることが開 の一部が「液体収容チェンバー」に相当する。 そして,乙20考案には,容器(8)の一部と,容器(8)の一端に設けられる開口とを有し,軸体(5)は前記開口を経由して,容器(8)に挿入されることが開示されている。 したがって,乙20考案は,本件考案1の構成要件Fに相当する構成を有するといえる。 カ構成要件G構成要件Gは「前記ブラシロッドに密封ブッシュが設けられ,」であるところ,乙20考案には,「ブラシロッド」に相当する軸体(5)が開示されている。 また,本件考案1の「密封ブッシュ」は,「ブラシロッド」に設けられ,その前縁が「ビン」の開口に密着されることにより,漏れ止め防止の機能を果たすものであるところ(構成要件G,H),乙20考案の軸体(5)は,上記軸状部材と接続されている後方端部において,より太くなっており,これが容器(8)の開口部に備えられた密閉部材(7)と接触することによって,一定の漏れ止め防止の機能を果たしていることから,その後方端部において,上記「密封ブッシュ」に相当することが認められる。 原告は,「密封ブッシュ」は,開口に密着して化粧液などの液体が漏れ出ることを防ぐ機能を有する,軸を受ける筒状の部材であるところ,乙20考案の軸体(5)の後方端部は,軸体を構成する部分であることから,「密封ブッシュ」に該当しないと主張する。確かに,「ブッシュ」については,軸受筒などの意味で使用されるといえるが(甲13~15),「密封ブッシュ」が「ブラシロッド」と異なる部材でなければならないと解する理由はなく,この点は,本件明細書で「前記ブラシロッド20に密封ブッシュが一体に成形され,前記密封ブッシュは,傘形状を呈していもいいし,ボール形状を呈していもいいし,その他の適当な形状を呈してもよい。」(段落 この点は,本件明細書で「前記ブラシロッド20に密封ブッシュが一体に成形され,前記密封ブッシュは,傘形状を呈していもいいし,ボール形状を呈していもいいし,その他の適当な形状を呈してもよい。」(段落【0018】。原文ママ)と記載されていることからも明らかである(仮に相違点と捉えるとしても,単なる設計事項に過ぎないというべきである。)。 したがって,乙20考案は,本件考案1の構成要件Gに相当する構成を有しているといえる。 キ構成要件H構成要件Hは「前記本体と前記ビンを結合するときには,前記密封ブッシュの前縁が前記開口に密着されることを特徴とする,化粧品容器用漏れ止め構造。」であるところ,本件考案1には,構成要件Hの「本体」及び「ビン」に相当する蓋体(1)及び容器(8)が開示されている。そして,乙20考案には,蓋体(1)と容器(8)を結合するときに,軸体(5)の後方端部の前縁を開口に備えられた密閉部材(7)に密着させ,それによって溶液の揮発成分を密封することが開示されている。 したがって,乙20考案は,本件考案1の構成要件Hに相当する構成を有しているといえる。 カ小括以上のとおり,乙20考案は,本件考案1の構成を全て有するものと認められる。 したがって,本件考案1はその特許出願前に頒布された乙20文献に記載された考案であり,本件実用新案登録は,実用新案法3条1項3号に違反し,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件実用新案権を行使することができない。 (2) 本件考案2,5についてア本件考案2は,本件考案1の従属項であって,構成要件I「前記モータと前記連結具の間には,更に,減速手段が設けられることを特徴とする,請求項1に 2) 本件考案2,5についてア本件考案2は,本件考案1の従属項であって,構成要件I「前記モータと前記連結具の間には,更に,減速手段が設けられることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。」が追加されたものであるところ,乙20考案には,「モータ」,「連結具」,「減速手段」に相当するモータ(4),軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)及び減速ギアが開示されている。そして,乙20考案は,モータ(4)と軸体(5)の一部との間に,減速ギアが設けられていることが開示されている。 したがって,乙20考案は,本件考案2の構成要件Iに相当する構成を有しており,乙20考案は,本件考案2の構成を全て有するものと認められる。 イ本件考案5は,本件考案1の従属項であって,構成要件L「前記ブラシヘッドは,マスカラ又はグロスを付けるためのブラシであることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。」が追加されたものであるところ,乙20考案には,「ブラシヘッド」に相当するブラシ(6)が開示されている。そして,乙20考案には,ブラシ(6)がマスカラを付けるためのブラシであることが開示されている。 したがって,乙20考案は,本件考案5の構成要件Lに相当する構成を有しており,乙20考案は,本件考案5の構成を全て有するものと認められる。 ウ以上のとおり,本件考案2,5については,その特許出願前に頒布された乙20文献に記載された考案であり,本件実用新案登録は,実用新案法3条1項3号に違反し,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件実用新案権を行使することができない。 (3) 本件考案3ア本件考案3は,本件考案1の従属項であって,構成要件 案登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件実用新案権を行使することができない。 (3) 本件考案3ア本件考案3は,本件考案1の従属項であって,構成要件J「前記本体の側面にレールが設けられ,前記レールにスイッチが摺動可能に設けられ,前記スイッチは前記レールに沿って摺動し,これにより,前記スイッチは前記電源ユニットのオン・オフを切替えることができることを特徴とする,請求項1に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。」が追加されたものである。 イ構成要件Jについて,乙20考案には,「本体」,「スイッチ」,「電源ユニット」に相当する蓋体(1),ロータリ式スイッチ(2)及び乾電池(3)が開示されている。そして,乙20考案には,ロータリ式スイッチ(2)が,乾電池(3)のオン・オフを切り替えることができることが開示されている。 一方,乙20考案では,ロータリ式スイッチ(2)が,蓋体(1)の側面に設けられたレールに摺動可能に設けられており,レールに沿って摺動するか否かは明らかではなく,以下の相違点が存する。 相違点: 本件考案2は,スイッチが,本体側面に設けられたレールに摺動可能に設けられており,レールに沿って摺動する構造を有するのに対し,乙20考案は,ロータリ式スイッチ(2)の配設態様が明らかではない点。 ウしかしながら,上記相違点に係る本件考案2の構成は,電動マスカラにおいて,本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知技術と認められるのであって(乙22~24),乙20考案に当該周知技術を適用することについて,困難となるような事情も認められない。 したがって,本件考案3については,その特許出願前に頒布された乙20文献に記載された考案に基づき,極めて容易に考案をす 当該周知技術を適用することについて,困難となるような事情も認められない。 したがって,本件考案3については,その特許出願前に頒布された乙20文献に記載された考案に基づき,極めて容易に考案をすることができたものといえ,本件実用新案登録は,実用新案法3条2項に違反し,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件実用新案権を行使することができない。 (4) 本件考案4ア本件考案4は,本件考案1の従属項であって,構成要件K「前記減速手段には,幾何形状断面シャフトが設けられ,前記連結具の末端には,幾何形状穴が設けられ,前記幾何形状断面シャフトが前記幾何形状穴に挿入され,そうすると,前記幾何形状断面シャフトは前記連結具と同期に回転することができることを特徴とする,請求項2に記載の化粧品容器用漏れ止め構造。」が追加されたものである。 イ構成要件Kについて,乙20考案には,本件考案4の「減速手段」及び「連結具」にそれぞれ相当する減速ギア及び軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)が開示されている。そして,乙20考案は,減速ギアと軸体(5)の一部(軸状部材の周辺部)は同期に回転することが開示されている。 一方,乙20考案では,減速ギアと軸体(5)との連結態様が明らかではなく,以下の相違点が認められる。 相違点: 本件考案4では,減速手段及び連結具がそれぞれ「幾何形状断面シャフト」及び「幾何形状穴」を設けられた態様で互いに連結された構造であるのに対し,乙20考案では,減速ギア及び軸体(5)の連結態様が明らかではない点ウしかしながら,上記相違点に係る本件考案4の構成は,電動マスカラにおいて,本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知技術と認められるのであっ (5)の連結態様が明らかではない点ウしかしながら,上記相違点に係る本件考案4の構成は,電動マスカラにおいて,本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知技術と認められるのであって(乙19,23,25参照),乙20考案に当該周知技術を適用することについて,困難となるような事情も認められない。 被告製品が構成要件Kを充足しないことは既に述べたとおりであるが,本件考案4については,その特許出願前に頒布された乙20文献に記載された考案に基づき,極めて容易に考案をすることができたものといえ,本件実用新案登録は,実用新案法3条2項に違反し,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものである。 (5) 本件考案6 ア本件考案6は,本件考案1の従属項であって,構成要件M~Pが追加されたものである。 (ア) 構成要件M構成要件Mは「更に,内ねじ付きブッシュを含み,前記内ねじ付きブッシュは,前記本体の前端に設けられ,内ねじを有し,」であるところ,乙20考案では,「本体」に相当する蓋体(1)が開示されているが,蓋体(1)の前端の構造は明らかではない。(イ) 構成要件N構成要件Nは「前記開口の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ねじ付きブッシュの内ねじと螺合し,」であるところ。乙20考案では,蓋体(1)と容器(8)の連結構造は明らかではない。(ウ) 構成要件O構成要件Oは「前記開口の内面に樹脂ブッシュが設けられ,」であるところ,乙20考案では,開口の内面に密閉部材(7)が設けられているが,その材質が樹脂であるかについては明らかではない。(エ) 構成要件P構成要件Pは「前記ブラシロッドが前記樹脂ブッシュを経由して前記液体収容チェンバー 密閉部材(7)が設けられているが,その材質が樹脂であるかについては明らかではない。(エ) 構成要件P構成要件Pは「前記ブラシロッドが前記樹脂ブッシュを経由して前記液体収容チェンバーに挿入し,前記本体と前記ビンを結合するときには,前記密封ブッシュの前縁が前記樹脂ブッシュに密着されることを特徴とする,」であるところ,乙20考案では,「ブラシロッド」,「樹脂ブッシュ」,「液体収容チェンバー」,「本体」,「ビン」,「密封ブッシュ」に相当する軸体(5),密閉部材(7),容器(8)の一部,蓋体(1),容器(8),軸体(5)の一部(後方端部)が開示されている。そして,乙20考案には,軸体(5)は密閉部材(7)を経由して容器(8)の内部に挿入され,蓋体(1)と容器(8)を結合させるときには,軸体(5)の一部(後方端部)の前縁が密閉部材(7)に密着することが開示されている。一方,上記のとおり,乙20考案では,密閉部材の材質が樹脂であるかについては明らかではない。イ以上を踏まえると,乙20考案と本件考案6は,以下の相違点が存する。相違点1: 本件考案6は「内ねじ付きブッシュを含み,前記内ねじ付きブッシュは,前記本体の前端に設けられ,内ねじを有し,前記開口の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ねじ付きブッシュの内ねじと螺合し」(構成要件M及びN)ているのに対し,乙20考案は,蓋体(1)と容器(8)の連結構造が明らかではない点。 相違点2: 本件考案6では,ビンの開口の内面に設けられるブッシュの材質が「樹脂」であるのに対し,乙20文献では密閉部材(7)の材質が不明である点ウしかしながら,上記相違点1に係る本件考案6の構成は,電動マスカラにおいて,本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知 であるのに対し,乙20文献では密閉部材(7)の材質が不明である点ウしかしながら,上記相違点1に係る本件考案6の構成は,電動マスカラにおいて,本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知技術と認められるのであって(乙28~33参照),乙20考案に当該周知技術を適用することについて,困難となるような事情も認められない。また,上記相違点6に係る本件考案6の構成についても,本件実用新案登録出願以前において採用されていた周知技術と認められるのであって(乙29,31,33~35参照),乙20考案に当該周知技術を適用することについて,困難となるような事情も認められない。 したがって,本件考案6については,その特許出願前に頒布された乙20文献に記載された考案に基づき,極めて容易に考案をすることができたものといえ,本件実用新案登録は,実用新案法3条2項に違反し,実用新案登録無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は,被告に対し,本件実用新案権を行使することができない。 3 小括以上検討したところによれば,本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効にされるべきものと認められ,原告の請求は,その余について検討するまでもなく理由がない。 第5 結語よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官松川充康 裁判官網田圭亮 別紙物件目録 「ビューティヴィジョンエレクトロールマスカラ」の商品名で特定される電動マスカラ以上 裁判官網田圭亮 別紙物件目録 「ビューティヴィジョンエレクトロールマスカラ」の商品名で特定される電動マスカラ以上別紙被告製品説明書(原告の主張)被告製品の化粧品容器用漏れ止め構造は,別紙被告製品説明図に示す各要素からなり,その構成を分説すると,以下のとおりである。a:本体と,ブラシロッドと,ビンと,を含む化粧品容器用漏れ止め構造であって,b:前記本体は,収容空間を有し,前記収容空間には,電源ユニットと,前記電源ユニットと電気的に連接するモータと,連結具と,が設けられ,c:前記連結具は,その基端部が本体に設けられた減速手段の幾何形状断面シャフトと連結することで,本体の内部に回動可能に設けられ,d:前記モータに駆動可能であり,e:前記ブラシロッドは,一端が前記連結具と同軸し前記連結具に連結され,他端にブラシヘッドが設けられ,f:前記ビンは,液体収容チェンバーと,ビンの一端に設けられる開口とを有し,前記ブラシロッドは前記開口を経由して前記液体収容チェンバーに挿入される一方,g:前記ブラシロッドには傘形状ブッシュが固定され,h:前記本体と前記ビンを結合するときには,前記傘形状ブッシュの前縁が前記開口に密着される,化粧品容器用漏れ止め構造。i:前記モータと前記連結具の間には,更に,減速手段が設けられる。j:前記本体の側面にはレールが設けられ,前記レールにスイッチが摺動可能に設けられ,前記スイッチは前記レールに沿って摺動し,これにより,前記スイッチは前記電源ユニットのオン・オフを切替えることができる。k:前記減速手段には,幾何形状断面シャフトが設けられ,前記連結具の末端には,幾何形状穴が設けられ,前記幾 て摺動し,これにより,前記スイッチは前記電源ユニットのオン・オフを切替えることができる。k:前記減速手段には,幾何形状断面シャフトが設けられ,前記連結具の末端には,幾何形状穴が設けられ,前記幾何形状断面シャフトが前記幾何形状穴に挿入され,そうすることで,前記幾何形状断面シャフトは前記連結具と同期に回転することができる。l:前記ブラシヘッドは,マスカラを付けるためのブラシである。m:更に,内ねじ付きブッシュを含み,この内ねじ付きブッシュは,前記本体の前端に設けられ,ビン側へ伸長する枠状部分の内面に内ねじを有し,n:前記ビンは,前記開口の外面に外ねじが設けられ,前記外ねじが前記内ねじ付きブッシュの内ねじと螺合し,o:前記開口の内面に樹脂ブッシュが設けられ,p:前記ブラシロッドが前記樹脂ブッシュを経由して前記液体収容チェンバーに挿入し,前記本体と前記ビンを結合するときには,前記傘形状ブッシュの前縁が前記樹脂ブッシュに密着される。以上別紙被告製品説明図(原告の主張)★ X1p9~11別紙被告製品説明図(被告の主張) 1 主位的主張<図I(被告製品図)>前縁 2 予備的主張 <図L(被告製品図)>前縁(予備的主張)別紙本件明細書★ 甲2を添付 別紙乙19文献図8別紙乙20文献図1
▼ クリックして全文を表示