- 1 - 令和6年7月24日宣告令和6年(わ)第132号判決上記の者に対する過失運転致死傷被告事件について、当裁判所は、検察官園麻美及び国選弁護人澤口桜子各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を禁錮2年6月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和4年8月1日午前9時20分頃、普通乗用自動車を運転し、札幌市a区bc条d丁目e番付近道路をf方面からg方面に向かい時速約50キロメートルで進行中、同所が下り勾配のため減速するに当たり、アクセル及びブレーキを的確に操作して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、減速しようとした際、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込み、そのままアクセルペダルを踏み続けて進行した過失により、自車を時速約66キロメートルまで加速させて進行させ、その頃、折から同市a区bc条d丁目h番先の信号機により交通整理の行われている交差点入口に設けられていた横断歩道上を信号に従って左方から右方に向かって横断していたA(当時70歳)運転の自転車右側面部に自車前部を衝突させて、同自転車もろとも同人を自車ボンネットに跳ね上げて自車フロントガラスに衝突させて路上に転落させ(以下この衝突等を「第1事故」という。)、引き続きアクセルペダルを踏み続けて進行した上、同日午前9時21分頃、同区ij条k丁目l番付近道路まで自車を進行させた際、自車を時速約136キロメートルまで加速させて進行させ、その頃、同区mn条o丁目p番先道路において、自車を対向車線上に進出させて、折から対向進行してきたB(当時36歳)運転の普通乗用自動車前部に自車前部を衝突させ、その衝撃により、同人運転車両の左後方で停止していたC(当時37歳)運転の中型貨 、自車を対向車線上に進出させて、折から対向進行してきたB(当時36歳)運転の普通乗用自動車前部に自車前部を衝突させ、その衝撃により、同人運転車両の左後方で停止していたC(当時37歳)運転の中型貨物自動車右側面部に前記B運転車両の- 2 - 左後部を衝突させ、さらに、その衝撃により同車を右半回転させて、同車右前部を同車の後方で停止していた車両の右前部に衝突させ(以下これらの衝突等を「第2事故」という。)、よって、前記Aに胸骨骨折等の傷害を負わせ、同日午前10時19分頃、同市(住所省略)所在のD病院において、同人を前記傷害に起因する重症胸部外傷により死亡させるとともに、前記Bに全治約62日間を要する頭部挫創等の傷害を、前記Cに加療約23日間を要する頸椎捻挫等の傷害をそれぞれ負わせた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条被害者ごとにいずれも自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文科刑上一罪の処理刑法54条1項前段、10条(1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから、1罪として犯情の最も重い過失運転致死罪の刑で処断)刑種の選択 禁錮刑訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由)アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違い等をすることなく、これらを的確に操作することは、自動車運転者にとって最も基本的な注意義務の1つである。そして、被告人は、ブレーキペダルと誤ってアクセルペダルを踏んだ上、第1事故までの間だけをみても約10秒間(走行距離約200メートル)のうちほとんどという比較的長い時間、最終的に第2事故を起こして停止するまでをみると約1分15秒間(走行距離約1.6キロメートル)のうちほとんどという非常に長い時間にわたってアクセルペダルを踏み続けた ちほとんどという比較的長い時間、最終的に第2事故を起こして停止するまでをみると約1分15秒間(走行距離約1.6キロメートル)のうちほとんどという非常に長い時間にわたってアクセルペダルを踏み続けた。この間、意図に反して車両が減速しないどころか加速し、目前に迫る車両等を避けなければならないという状況であり、被告人は相当混乱、狼狽した状態であったとは認められる。しかし、このような精神状態や加齢の影響等を踏まえても、上記のとおりの踏み間違いの時間の長さや、他の車両の接近に対して車線変更をするなどのハンドル操作を行えていること、第1事故- 3 - から第2事故までの間も車両を停止させるためにパワースイッチを押したりシフトレバーを変えるなどの自身の目的に沿った操作を行えていることなどを踏まえれば、踏み間違いに気づくことを期待することが難しかったとは言いがたい。そして、本件事故の発生につき各被害者らに落ち度はなく、被告人の過失は重大である。 その結果、第1事故においては1名の尊い命が犠牲となった。事故によって被害者が受けた肉体的精神的苦痛は計り知れないものであり、幸せな日常や家族との将来が突如として奪われた無念さは察するに余りある。遺族らが強い憤りをあらわにし、厳しい処罰感情を示すのももっともである。さらに被告人は、上記のとおり非常に長い時間、距離にわたって踏み間違いを続け、時速約136キロメートルという高速度まで加速して第2事故を惹起し、2名の負傷者を出した。幸いさらなる死者は出なかったものの、危険性の非常に高い事故であった。また、1名の負傷者は入院加療も要しており、結果も決して軽くはない。 なお、被告人は、平成20年に自動車運転過失傷害罪で罰金30万円に処せられ、他にも10年以上前自動車運転中に事故を惹起したことがあるというのであり 入院加療も要しており、結果も決して軽くはない。 なお、被告人は、平成20年に自動車運転過失傷害罪で罰金30万円に処せられ、他にも10年以上前自動車運転中に事故を惹起したことがあるというのであり、検察官はより慎重な運転を心がけるべきであったと指摘する。しかし、被告人の日頃の運転態度が本件発生に寄与しているかどうかは明らかでない。むしろ、被告人に以後事故等はなく優良運転者免許証を有し、本件頃は速度を落として運転するなど慎重な運転を心がけていた。そして前科等の時期にも鑑みれば、上記の点を本件の犯情の悪質さを指摘する事情として捉えることはできない。他方、被告人が日頃慎重に運転していたとしても、それは日頃の不良な運転態度が表れた事案ほど悪質ではないことを犯情の一要素として指摘できるにとどまる。 以上からすると、本件は、アクセルとブレーキを踏み間違えるなどした過失により死者1名を伴う事故を起こした事案の中でも悪質である。 その上で、犯情以外の点についてみると、被告人は、対人無制限の任意保険に加入しており、既に軽い傷害にとどまった被害者に対しての賠償は完了するとともに、その余の被害者等に対しても適正な賠償がなされることが見込まれる。被告人も、- 4 - 自己の罪を認めて被害者等に対して謝罪の言葉を述べ、誠実に本件に向き合う姿勢が認められる。そして、今後車の運転をしないことを約束し、家族らも被告人の監督を約束している。 これらの事情も十分考慮に値するが、やはり本件の犯情の悪質さからして刑の執行を猶予するのは相当ではなく、被告人にとって有利な事情は刑期の面において最大限考慮の上、主文の実刑を科すこととした。 (求刑禁錮4年6月、弁護人の科刑意見付執行猶予)令和6年7月24日札幌地方裁判所刑事第3部 事情は刑期の面において最大限考慮の上、主文の実刑を科すこととした。 (求刑禁錮4年6月、弁護人の科刑意見付執行猶予)令和6年7月24日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判官加島一十
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