平成30年10月25日判決言渡平成30年(行コ)第13号固定資産税等課税処分無効確認等,審査申出却下処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成26年(行ウ)第90号(甲事件),同年(行ウ)第103号(乙事件),平成28年(行ウ)第119号(丙事件)) 主文 1 一審原告らの各控訴及び一審被告の控訴をいずれも棄却する。 2 原判決主文第1項は,一審原告Bによる請求の減縮により,「一審被告は,一審原告Bに対し,184万2500円及びうち別紙一審原告B請求・認容一覧表の認容額欄記載の各金額に対する対応する損害金起算日欄記載の各年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」と変更されている。 3 一審原告らの控訴費用は一審原告らの,一審被告の控訴費用は一審被告の各負担とする。 4 原判決主文第1 項(請求の減縮により変更された後のもの)は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告ら(1) 原判決主文第1項及び第2項中金銭請求に係る部分を次のとおり変更する。 (2) 一審被告は,一審原告Bに対し,366万3200円及びうち別紙一審原告B請求・認容一覧表の過大額欄記載の各金額に対する対応する損害金起算日欄記載の各年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 一審被告は,一審原告Dに対し,216万6500円及びうち原判決別紙3原告D請求一覧の過大徴収額欄記載の各金額に対する対応する起算日欄記載の各年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) (2)及び(3)につき仮執行宣言 2 一審被告(1) 原判決主文第1項を取り消す。 (2) 前項の取消しに係る一審原告Bの請求を棄却する。 第2 事案の概要等( 支払え。 (4) (2)及び(3)につき仮執行宣言 2 一審被告(1) 原判決主文第1項を取り消す。 (2) 前項の取消しに係る一審原告Bの請求を棄却する。 第2 事案の概要等(略称は,特記しない限り,原判決の例による。) 1 事案の概要甲事件は,原判決別紙4物件目録記載1及び2の建物(一審原告B各建物)を所有し,その固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)を納付してきた一審原告Bが,平成11年度から平成26年度までの各賦課決定の前提となる価格の決定には,一審原告B各建物の新築時の再建築費評点数の算出の誤りなどがあり,上記の評価の誤りは大阪市長の故意又は過失による違法行為であると主張して,国家賠償法1条1項に基づき,一審被告に対し,上記各年度に係る固定資産税等の過納金合計366万3200円及び各年度の過納金に対する年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(本件国家賠償請求①)事案であり,乙事件は,原判決別紙4物件目録記載3の建物(本件家屋②)を所有し,その固定資産税等を納付してきた一審原告Dが,同じく,平成6年度から平成26年度までの各賦課決定の前提となる価格の決定には,本件家屋②の新築時の再建築費評点数の算出の誤りがあり,上記の評価の誤りは大阪市長の故意又は過失による違法行為であると主張して,国家賠償法1条1項に基づき,一審被告に対し,上記各年度に係る固定資産税等の過納金合計216万6500円及び各年度の過納金に対する年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(本件国家賠償請求②)事案である。 一審原告Bは,原審においては,丙事件として,一審原告Bが,一審原告B各建物についての平成27年度固定資産税の課税標準として大阪市長が決定して固定資産課税台帳に登録した価格を不服として,大阪市固定資産評価審査委員会に おいては,丙事件として,一審原告Bが,一審原告B各建物についての平成27年度固定資産税の課税標準として大阪市長が決定して固定資産課税台帳に登録した価格を不服として,大阪市固定資産評価審査委員会に対して行った審査の申出に対する同委員会の決定(本件決定)について, 一審被告を相手に,その取消しを求めていた。 原判決は,一審原告Bの本件国家賠償請求①を184万2500円及び各年度の過納金に対する遅延損害金の限度で認容し,その余の請求及び丙事件の取消請求をいずれも棄却し,一審原告Dの本件国家賠償請求②を棄却した。そのため,一審原告Bは本件国家賠償請求①が棄却された部分,一審原告Dは本件国家賠償請求②の棄却を不服としてそれぞれ控訴を提起し,一審被告も,本件国家賠償請求①が認容された部分を不服として控訴を提起した。 一審原告Bは,当審において,本件国家賠償請求①を366万3200円(原審での請求額は400万8300円)及びうち別紙一審原告B請求・認容一覧表の過大額欄記載の各金額に対する対応する損害金起算日欄記載の各年月日(一審原告Bは,控訴の趣旨変更(減縮)申立書において,申立書の別紙の表の「損害金起算日」は原判決別紙2の各年度第4期の損害金起算日を転記したとするので,表中の平成22年3月1日は同月2日の,平成23年3月2日は同月1日の誤記と認める。)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求に減縮した。 以上のとおり,当審の審判の対象は本件国家賠償請求①及び本件国家賠償請求②である。 2 関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,次の3及び4において当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2から5までに記載のとおりである(3(4),4(2)イ,5(4)及び専ら丙事 点に関する当事者の主張は,次の3及び4において当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2から5までに記載のとおりである(3(4),4(2)イ,5(4)及び専ら丙事件に関する部分を除く。)から,これを引用する。ただし,原判決16頁3行目の「評点数を」の次に「1㎡当たり」を加え,25頁6行目及び7行目を削る。 3 当審における一審原告らの主張(1) 争点①のうち,本件家屋①(一審原告B各建物のうち原判決別紙4物件目録記載2の附属建物を除いたもの)のPHC杭の標準評点数について(一審 原告Bの主張)PHC杭は,既製コンクリート杭の一種であり,既製コンクリート杭は平成9年度評価基準の評点基準表に「鉄筋コンクリート杭」として示されている。 PHC杭に「所要の評点項目及び標準評点数がない」とはいえず,鉄筋コンクリート杭の標準評点数2万3300点をもって評価すべきである。 (2) 争点①のうち,本件家屋①の部分別「その他の工事」の補正係数について(一審原告Bの主張)一審原告Bが行った現地調査及び新築当時の竣工図面の調査の結果をまとめた家屋調査書(甲40)によれば,本件家屋①の新築時の「その他の工事」が通常の2倍の量まで行われたものではないことは,明らかである。 一審被告は,「その他の工事」に過大な補正係数を適用している。 (3) 争点②の新築中高層耐火建築住宅に係る減税措置の適用について(一審原告Bの主張)大阪市税条例141条3項は,都市計画税につき,同条例72条の2(新築中高層耐火建築住宅の固定資産税の軽減措置)を準用し,同条例72条の2の5(特優賃である貸家住宅の固定資産税の軽減措置)を準用していない。このことは,都市計画税については,同条例72条の2の5の規定が存在しないもの の固定資産税の軽減措置)を準用し,同条例72条の2の5(特優賃である貸家住宅の固定資産税の軽減措置)を準用していない。このことは,都市計画税については,同条例72条の2の5の規定が存在しないものと同視することができるため,同条例72条の2の5の適用の有無は観念することができないことを意味する。したがって,同条例72条の2の要件を充足する本件賃貸部分(一審原告B各建物のうち原判決別紙4物件目録記載2の建物)には,同条例141条3項により,同条例72条の2の適用がされ,同条の定める都市計画税の軽減措置が適用される。 特優賃制度が始まる前から新築中高層耐火建築住宅の都市計画税軽減措置の規定があったとすれば,その当時は,特優賃の性能を有する新築中高層耐火建築住宅も,当然に上記軽減措置を受けていたはずである。特優賃制度が できたとしても,適用除外を定めた条文がない限り,上記軽減措置は引き続き適用されるべきである。 (4) 争点⑦(本件国家賠償請求権②に係る除斥期間の成否)について(一審原告Dの主張)ア固定資産税等の過納付に係る損害については,賦課決定に基づいて固定資産税等の納付を行ったことにより生じたものといえるから,各年度の賦課決定時をもって除斥期間の起算日とすべきである。不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,除斥期間は,損害の全部又は一部が発生したときから進行するとされている。 固定資産税等の課税処分は,各年度毎に行われる独立した処分であるから,各年度に課税処分がされることにより,それぞれ独立した損害が発生する。初年度(平成3年度)の損害の発生をもって損害全体の一部が発生したとみるべきではない。したがって,初年度の課税処分がされることにより全体について がされることにより,それぞれ独立した損害が発生する。初年度(平成3年度)の損害の発生をもって損害全体の一部が発生したとみるべきではない。したがって,初年度の課税処分がされることにより全体についての除斥期間が進行することはない。そのように解さないと,家屋が建築されてから20年以上が経過した後に所有権が第三者に移転した場合,当該第三者は新築時の家屋の評価の違法を争うことができなくなり,不当である。 イ一審被告は,本件家屋②の評価(再建築評点数の算出)に誤りがあったにもかかわらず,そのような誤りがなかったかのように装って各年度の賦課決定を行い,一審原告Dはそのような誤りがあったなど知らずに固定資産税等を納付し続けてきた。民法161条は,天災その他避けることができない事変のため時効を中断することができないときは,時効が停止すると定めるところ,同条の趣旨は本件に当てはまる。 少なくとも一審原告Dが除斥期間により権利が消滅したと是認することは著しく正義,公平の理念に反する。 4 当審における一審被告の主張(1) 争点①のうち,本件家屋①に用いられたPHC杭の補正係数についてア各部分別の評点項目における「補正係数」には,各補正項目の補正率をいう補正係数と,各評点項目の最終的な補正係数をいう補正係数とがある。 評価基準では,杭打地業の各補正項目に係る増点補正率を前者の補正係数の最高限とすることについては言及しているが,評点項目に適用すべき最終的な補正係数の限度については一切言及しておらず,そのような記述は評価基準上のどこにも存在しない。評価基準は,杭打地業について評点項目に適用すべき最終的な補正係数の限度を定める趣旨ではない。 イ場所打コンクリート杭は,建物や場所の条件に合わせて作る特注の杭であるから,単純に評価基準に ない。評価基準は,杭打地業について評点項目に適用すべき最終的な補正係数の限度を定める趣旨ではない。 イ場所打コンクリート杭は,建物や場所の条件に合わせて作る特注の杭であるから,単純に評価基準に示されている方法で計算すると工事金額を適正に評価に反映することができない場合が生ずる。そこで,本数換算式を用いて評価をすることが考えられ,平成9年度評価基準解説(乙7)でこれが示されている。 本数換算式は,増点補正率の範囲では処理できないものを評価するのであるから,最終的な補正係数は,増点補正率の数値を上限としなければならないものではない。 ウ場所打コンクリート杭と同様の理由で,PHC杭についても,本数換算式を用いるべき場合がある。自治省固定資産税課が昭和47年4月14日に開催した都道府県税務担当者会議でも,このような取扱いは容認されていた。このため,一審被告は,PHC杭についても,本数換算式を導入している。 このような評価基準の補正は,当該補正の必要な状況が往々にしてみられるか否かによって行われるものではなく,また,本数換算式を用いる必要のあるPHC杭は往々にして使用されていた。 エ評価基準における杭打地業の計算単位は「一本」であり,杭の本数の多 い少ないしか評価に反映できない。しかし,この基準では,同じコンクリート量を用いながら,太いPHC杭で本数が少ないものと,細いPHC杭で本数が多いものとでは,後者の評価額が高くなるという結果が生ずる。 適正にコンクリート量を評価するには,本数換算式を適用する必要がある。 また,本数換算式を適用しても,増点補正率部分に当てはめる数値が増点補正率を超えていなければ,地盤の改良に当たる部分までをも評価したことにはならない。 オ昭和57年度評価基準解説において,場所打コンクリー 換算式を適用しても,増点補正率部分に当てはめる数値が増点補正率を超えていなければ,地盤の改良に当たる部分までをも評価したことにはならない。 オ昭和57年度評価基準解説において,場所打コンクリート杭については本数換算式を用いることができる旨の記載がありながら,既製杭には同様の計算方法が許される旨の記載がないのは,PHC杭が昭和57年度の評価基準に示されていない評点項目であるからにすぎない。 PHC杭について本数換算式を用い,その結果,最終的な補正係数が増点補正率の5.0を超えたとしても,それは評価基準に反するものではない。 カ一審被告の担当者は,本件家屋①の杭の長さが20mと増点補正率に示している杭よりも約1.7倍の体積量の差があると見受けられることから,本数換算式を適用することが適切であると判断したのであって,その取扱いに過失はない。 (2) 一審原告B各建物に係る根切り工事の補正係数の算出誤りの違法性について根切り土量の補正係数2.88を2度乗ずるという計算上の誤りがあったとしても,この誤りを即,国家賠償法上違法と評価することはできない。 地方税法417条1項は,固定資産課税台帳に登録されている価格を修正することができるのは重大な錯誤がある場合に限定しているが,これは,固定資産税に係る債権を早期に安定させようとする趣旨にある。重大な錯誤に該当しなくても国家賠償法上の違法性は認められるというのは,徒に税務行 政を混乱させる。重大な錯誤がなければ固定資産課税台帳の登録価格を修正する必要はなく,修正しないことが地方税法上は違法でないにもかかわらず,国家賠償法上違法であるとしては,地方税法の立法趣旨を無視し,法律関係に矛盾を生じさせる。 根切り土量の補正係数2.88を2度乗じた誤りは,評価基準に定められている 上は違法でないにもかかわらず,国家賠償法上違法であるとしては,地方税法の立法趣旨を無視し,法律関係に矛盾を生じさせる。 根切り土量の補正係数2.88を2度乗じた誤りは,評価基準に定められている内容を逸脱するような誤りではなく,一審被告は根切り工事の評価自体は評価基準に則って行った。評価基準違反の中に計算誤りを含めることは不適切である。しかも,評点数の正誤差は約3.25%又は約15.43%と軽微である。このような誤りは,地方税法417条1項にいう重大な錯誤に基づくものとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,一審原告Bの本件国家賠償請求①(甲事件)は184万2500円及び原審が認容した遅延損害金の限度で理由があり,一審原告Dの本件国家賠償請求②(乙事件)は理由がないものと判断する。その理由は,次の2及び3において当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の1から4まで及び6から8までに記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決56頁15行目の「異義」を「異議」に改める。 2 当審における一審原告らの主張に対する判断(1) 争点①のうち,本件家屋①のPHC杭の標準評点数について一審原告Bは,PHC杭は既製コンクリート杭の一種であるから平成9年度評価基準の「鉄筋コンクリート杭」の標準評点数をもって評価すべきであると主張する。 しかし,証拠(甲11)によれば,既製コンクリート杭といっても,当初の,単純な中空のコンクリート円柱体の杭から,予め圧縮力を与えるプレストレスを導入した遠心力成形プレストレストコンクリート杭(PC杭),オー トクレーブ(高温高圧蒸気)養生を行った遠心力高強度プレストレストコンクリート杭(PHC杭),通常の常温蒸気養生を行ったPHC杭 入した遠心力成形プレストレストコンクリート杭(PC杭),オー トクレーブ(高温高圧蒸気)養生を行った遠心力高強度プレストレストコンクリート杭(PHC杭),通常の常温蒸気養生を行ったPHC杭,杭先端部を拡底したPHC拡底杭(ST杭),鋼管の内部にコンクリートを投入した外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭),さらには,高強度プレストレスト鉄筋コンクリート杭(コピタ型PRC杭)など,様々な杭が時代によって生産されていったことが認められる。これらの杭は,原材料,製造方法を異にするから,杭の代金を異にすることが想定され,これを打ち込む方法及び対価も異にすることが考えられる。 そうであれば,既製コンクリート杭であれば「鉄筋コンクリート杭」の標準評定数で評価すべきであるとはいうことができない。確かに,そのような評価も「差し支えない」とまではいえるとしても,評価すべきであるというのは別である。 よって,一審原告Bの上記主張は採用することができない。 (2) 争点①のうち,本件家屋①の部分別「その他の工事」の補正係数について一審原告Bは,甲40の家屋調査書によれば,本件家屋①の新築時の「その他の工事」が通常の2倍の量まで行われたものではないことが分かる旨主張する。 しかし,原判決も指摘するとおり(44頁1 行目から8行目まで),甲40の基となる現地調査は,本件家屋①が新築された平成10年10月から約17年後である平成28年1月17日に実施されたものである。したがって,これによって新築時の「その他の工事」の内容を認定することは困難である。 また,甲40を見ても,A4版の用紙1 枚にまとめられたもので,本件家屋①の写真は添付されているものの,調査当時の状態ですら室内の収納棚等,共用部分のフェンス等がどのような素材,仕様等なのかは明瞭とはいえ 甲40を見ても,A4版の用紙1 枚にまとめられたもので,本件家屋①の写真は添付されているものの,調査当時の状態ですら室内の収納棚等,共用部分のフェンス等がどのような素材,仕様等なのかは明瞭とはいえない。 一方で,類似の家屋や標準的な家屋がどのようなものかは具体的に触れられていない。そうであれば,甲40から,本件家屋①の「その他の工事」が通 常の工事と比較して多い少ないとは,判断することはできないというほかない。 よって,一審原告Bの上記主張は採用することができない。 (3) 争点②の新築中高層耐火建築住宅に係る減税措置の適用について一審原告Bは,大阪市税条例141条3項が都市計画税につき同条例72条の2(新築中高層耐火建築住宅の固定資産税の軽減措置)を準用し,同条例72条の2の5(特優賃である貸家住宅の固定資産税の軽減措置)を準用していないことから,同条例72条の2の要件を充足する本件賃貸部分には,同条例141条3項により同条例72条の2の適用がされるべきである旨主張する。 しかし,一審原告Bの上記主張は,大阪市税条例141条3項によって準用される同条例72条の2において,72条の2の5の適用がある場合を除く旨を明文で定めていることと矛盾する。すなわち,同条例72条の2によれば,同条の適用を受ける新築中高層耐火建築住宅から特優賃である貸家住宅は除かれているのである。いったん同条から除かれた特優賃である貸家住宅が,141条3項が72条の2の5を準用していないからといって,72条の2の中に戻ってくるというような解釈をすることはできない。 また,一審原告Bは,特優賃制度が始まる前には特優賃の性能を有する新築中高層耐火建築住宅も大阪市税条例72条の2の軽減措置を受けていたはずであるから,特優賃制度ができた後も上記軽減措置は引 ない。 また,一審原告Bは,特優賃制度が始まる前には特優賃の性能を有する新築中高層耐火建築住宅も大阪市税条例72条の2の軽減措置を受けていたはずであるから,特優賃制度ができた後も上記軽減措置は引き続き適用されるべきであるとも主張する。 しかし,条文の内容からすれば,特優賃制度ができたときに,同条例72条の2は,特優賃である貸家住宅を同条の適用を受ける新築中高層耐火建築住宅から明文で外し,同条例141条3項は,72条の2の5を準用しなかったのであるから,特優賃である貸家住宅は都市計画税の軽減措置の対象としないという選択をしたと解される。それは,原判決も指摘するとおり(4 8頁4行目から11行目まで),特優賃である貸家住宅に該当することによって相当程度の各種優遇措置を受けられることが根拠となったものと考えられる。そうであるにもかかわらず,一審原告Bの主張するような明文に反する解釈をすることはできない。 よって,一審原告Bの主張はいずれも採用することができない。 (4) 争点⑦(本件国家賠償請求権②に係る除斥期間の成否)についてア一審原告Dは,固定資産税等の過納付に係る損害は賦課決定に基づいて固定資産税等の納付を行ったことにより生じたといえるから,各年度の賦課決定時をもって除斥期間の起算日とすべきであると主張する。 しかし,一審原告Dの主張によれば,各年度の固定資産税等の過納付は,本件家屋②の新築時における再建築費評点数の算出の誤りに起因するというのである。そうであれば,違法行為は,上記評価の時点,遅くとも初年度の固定資産税等の納税通知書を交付した時点で終了している。したがって,除斥期間の起算点もその時点とすべきである。各年度における固定資産税等の賦課及び徴収は,具体的な損害発生に向けての行為ではあっても,誤った評 等の納税通知書を交付した時点で終了している。したがって,除斥期間の起算点もその時点とすべきである。各年度における固定資産税等の賦課及び徴収は,具体的な損害発生に向けての行為ではあっても,誤った評価という違法行為の一部とはいえないから,新築時における評価を違法行為とする場合の除斥期間の起算点とすることはできない。 また,一審原告Dは,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,除斥期間は,損害の全部又は一部が発生したときから進行するとも主張する。 しかし,損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合とは,典型的には,蓄積進行性,遅発性の健康被害が想定され,本件の損害とはかなり性格を異にする。評価基準によれば,固定資産税の課税標準となる家屋の価格は,木造家屋及び非木造家屋の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,評点数に評点1点当たりの価額を乗じて価額を求めるが,各個の家屋の評点数は当該家屋の再建築 費評点数を基礎とし,これに損耗の状況による減点を行って付設する,在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数は,基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて求めることとされている(原判決7頁21行目から8頁1行目,12頁10行目から26行目まで。弁論の全趣旨によれば,平成3年度から平成27年度までいずれの年度の評価基準においても同趣旨の定めが置かれていたものと認められる。)。すなわち,特段の事情がない限り,新築時に再建築費から価格を算出し,3年毎の基準年度に所定の補正率を乗じて補正が行われる。このような評価の仕方からすれば,新築時の評価の誤りは,初年度の固定資産税の過納付に係る損害のみならず,その後の年度の固定 費から価格を算出し,3年毎の基準年度に所定の補正率を乗じて補正が行われる。このような評価の仕方からすれば,新築時の評価の誤りは,初年度の固定資産税の過納付に係る損害のみならず,その後の年度の固定資産税の過納付に係る損害も抽象的には内包しているとみることができる。その意味でも,損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には当たらない。 さらに,一審原告Dは,固定資産税等の賦課決定は各年度に行われる独立した処分であるから,各年度に賦課決定がされることで独立した損害が発生するのであって,初年度(平成3年度)の損害の発生をもって損害全体の一部が発生したとみるべきではないと主張する。 しかし,既に説示したとおり,本件では,除斥期間の起算点は損害の発生をもって決めるべきものではない。また,上記のとおり,新築時の評価の誤りで抽象的には初年度以外の年度の損害の発生も観念することができることからすれば,初年度の損害の発生をもって損害全体の一部が発生したと評価することができる。 よって,一審原告Dの主張はいずれも採用することができない。 イ一審原告Dは,一審被告が本件家屋②の評価に誤りがなかったかのように装って各年度の賦課決定を行い,一審原告Dはそのような誤りがあったなど知らずに固定資産税等を納付し続けてきたので,民法161条の趣旨 が妥当し,少なくとも一審原告Dに除斥期間を適用することは著しく正義,公平の理念に反すると主張する。 しかし,大阪市長が本件家屋②の評価に誤りがあることに気付きながら,誤りがなかったかのように固定資産税等の賦課決定等をしていたとの事実はない(一審原告Dもそのような主張はしていない。)。原判決が説示するとおり(56頁10行目から18行目まで),大阪市長が本件家屋②の平 なかったかのように固定資産税等の賦課決定等をしていたとの事実はない(一審原告Dもそのような主張はしていない。)。原判決が説示するとおり(56頁10行目から18行目まで),大阪市長が本件家屋②の平成4年度以降の評価の際に職務上尽くすべき注意義務に違反したとの事実も認められない。一審原告Dにも各年度の登録価格につき不服申立ての機会があったことを踏まえると,一審被告が各年度の賦課決定を行ってきたことをもって天災その他避けることができない事変と同視することは困難といわざるを得ない。 また,上記事情からすれば,一審原告Dに除斥期間を適用することが著しく正義,公平の理念に反するとまでいうことも困難である。 よって,一審原告Dの上記主張は採用することができない。 3 当審における一審被告の主張に対する判断(1) 争点①のうち,本件家屋①に用いられたPHC杭の補正係数についてア一審被告は,「補正係数」には,各補正項目の補正率をいう補正係数と各評点項目の最終的な補正係数をいう補正係数とがあり,評価基準は杭打地業について評点項目に適用すべき最終的な補正係数の限度を定める趣旨ではないと主張する。 しかし,昭和57年度評価基準解説によれば,杭打地業は本来的には地盤の改良であって家屋そのものではないものの,他方で家屋を支持するものである以上は建物の存続と密接不可分のものであるから,一定の範囲に限って家屋に含めるという考え方を採用し,そのため,杭打地業を家屋の評価に反映させるが,「増点補正率は,文字どおりこの場合の最高限であるとし,これを上回る補正率は適用しないものとされている。」という記載が されている(甲16)。平成3年度評価基準解説(乙6),平成9年度評価基準解説(乙7)も,杭打地業の増点補正率は最高限であると記載している。 適用しないものとされている。」という記載が されている(甲16)。平成3年度評価基準解説(乙6),平成9年度評価基準解説(乙7)も,杭打地業の増点補正率は最高限であると記載している。 これらの記載を前提とすると,増点補正率は,杭打地業について評点項目に適用すべき最終的な補正係数の限度を定めている趣旨のものと解すべきである。 イ一審被告は,場所打コンクリート杭の本数換算式について,増点補正率の範囲では処理できないものを評価するのであるから,最終的な補正係数は増点補正率の数値を上限としなければならないものではないと主張する。 弁論の全趣旨(一審被告の原審最終準備書面)によれば,平成9年度評価基準の杭打地業に列挙されている杭を工法によって分類すると,工場等で製造するなどしてから現場に持ち込む既製杭と,現場で製造する場所打杭に分けることができ,そのうち前者の既製杭には木杭,鉄筋コンクリート杭が,後者の場所打杭にはペデスタル杭(場所打コンクリート杭)が含まれることが認められる。平成9年度評価基準解説は,既製杭と場所打コンクリート杭がある中で,場所打コンクリート杭について,工事の場所的な制約から口径の太いもの,杭長の長いものがあって,増点補正率の範囲では処理できないものが往々に見受けられるとの理由を挙げた上で,本数換算をすることができるとしている。その趣旨は,場所打コンクリート杭に限って本数換算の方法により評価することを許容するものと認めるほかない。 場所打コンクリート杭について,最終的な補正係数が増点補正率の数値を上限としなければならないものではないとしても,そのことが,既製杭に該当するPHC杭に直ちに当てはまるものでないことはいうまでもない。 ウ一審被告は,PHC杭についても本数換算式を用いるべき場合が ばならないものではないとしても,そのことが,既製杭に該当するPHC杭に直ちに当てはまるものでないことはいうまでもない。 ウ一審被告は,PHC杭についても本数換算式を用いるべき場合があるとして,自治省固定資産税課が開催した昭和47年の都道府県税務担当者会議でもこのような取扱いが容認されていたと主張する。 しかし,自治省固定資産税課が作成した昭和57年度評価基準解説には,既製杭について本数換算の方法により評価することを容認する旨の記載はなく(甲16),平成3年度評価基準解説(乙6),平成9年度評価基準解説(乙7)にもそのような記載はない。 また,昭和47年の上記会議の結果報告書(乙8)をみると,自治省固定資産税課が本数換算の方法によって評価することを容認した杭として「鋼管杭,アースドリル」が挙げられているが,一方で,標準杭の「H型鋼,アースドリル,鋼管杭」は「ペデスタル」と取り扱って差し支えないとされたとも記載されている(サンドパイル,PCパイルは「鉄筋コンクリート」と取り扱って差し支えないとされている。)。イでみたとおり,ペデスタル杭は場所打コンクリート杭であるから,自治省固定資産税課の回答は,場所打コンクリート杭と取り扱えるものは本数換算も許されるといっているにすぎないと解される。 したがって,自治省固定資産税課の昭和47年の回答を基に,PHC杭についても本数換算が容認されるということはできない。 なお,一審被告は,1級建築士の意見書(乙39)を提出し,同意見書の中には,PHC杭についても本数換算式を用いることが許される旨の記載がある。しかし,同意見書の内容は,昭和57年度評価基準解説,平成3年度評価基準解説及び平成9年度評価基準解説と整合した説明にはなっておらず,これを採用することができない。 よって,一審 旨の記載がある。しかし,同意見書の内容は,昭和57年度評価基準解説,平成3年度評価基準解説及び平成9年度評価基準解説と整合した説明にはなっておらず,これを採用することができない。 よって,一審被告の上記主張は採用することができない。 エ一審被告は,本数換算式を適用しないと,同じコンクリート量を用いながら太いPHC杭で本数が少ないものと細いPHC杭で本数が多いもの とでは後者の評価額が高くなるという不当な結果が生ずる,本数換算式を適用しても地盤の改良に当たる部分までをも評価したことにはならないと主張する。 確かに,一定の場合に工事量を家屋の評価に反映していない場合が出てくることがあるとしても,それは,明示的な容認がない本数換算式をPHC杭にも用いてよいということには直結しない。 そもそも,アでみたとおり,平成9年度評価基準において,杭打地業の増点補正率は最高限を示すと定めているのは,杭打地業は家屋の建築に必要なものである一方で地盤の改良に当たるものでもあるため,家屋の価格への影響を一定限度にとどめるとの考え方に基づくものである。したがって,そのような増点補正率の上限を超える補正の余地が生ずるような杭を用いたときは,地盤の改良に当たるとみるべきである。 よって,一審被告の上記主張は採用することができない。 オ一審被告は,昭和57年度評価基準解説において場所打コンクリート杭については本数換算式を用いることができる旨の記載がありながら既製杭には同様の計算方法が許される旨の記載がないのは,PHC杭が昭和57年度の評価基準に示されていないからにすぎないと主張する。 しかし,平成9年度評価基準解説は,既製杭と場所打コンクリート杭がある中で,場所打コンクリート杭について,工事の場所的な制約から口径の太いもの,杭長の長いものが ていないからにすぎないと主張する。 しかし,平成9年度評価基準解説は,既製杭と場所打コンクリート杭がある中で,場所打コンクリート杭について,工事の場所的な制約から口径の太いもの,杭長の長いものがあって,増点補正率の範囲では処理できないものが往々に見受けられるとの理由を挙げた上で,場所打コンクリート杭に限って本数換算をすることができるとしている。これは,既製杭についてはそのような本数換算は行わないという趣旨であるというべきであり,PHC杭も既製杭に含まれる以上は,PHC杭についても本数換算は容認されていない趣旨であったというべきである。 よって,一審被告の上記主張は採用することができない。 以上みたとおり,PHC杭について本数換算式を用い,最終的な補正係数が増点補正率の5.0を超えたことを評価基準違反でないということはできない。 カ一審被告は,一審被告の担当者は本件家屋①の杭の長さから本数換算式を適用することが適切であると判断したのであって,その取扱いに過失はないと主張する。 しかし,一審被告は,平成9年度評価基準解説に,場所打コンクリート杭に限って本数換算をすることができる旨の記載が明示されていながら,これに反する評価を行ったのである。したがって,合理的な根拠なく評価基準によらずに固定資産の価格を決定したものであって,職務上の法的義務に反したものといわざるを得ない。国家賠償法上違法であるとともに,過失が認められる。 一審被告の上記主張は採用することができない。 (2) 一審原告B各建物に係る根切り工事の補正係数の算出誤りの違法性について一審被告は,根切り土量の補正係数2.88を2度乗ずるという計算上の誤りを即,国家賠償法上違法と評価することは地方税法417条1項の趣旨に反する,評価基準違反の中に軽微な計算 りの違法性について一審被告は,根切り土量の補正係数2.88を2度乗ずるという計算上の誤りを即,国家賠償法上違法と評価することは地方税法417条1項の趣旨に反する,評価基準違反の中に軽微な計算誤りを含めることはできないなどと主張する。 しかし,地方税法417条1項は,市町村長が登録価格の公示後に,登録価格等に重大な錯誤があることを発見した場合における修正についての定めであり,これが,国家賠償法上の違法性に関係するものとは解されない。そもそも,登録価格の公示以前に錯誤を発見した場合には,同項の適用はない。 概要調書の送付を受けた道府県知事において,市町村における固定資産の価格の決定が固定資産評価基準に即していないと認めたときは,修正を勧告することができるところ(地方税法419条1項),その場合は,当該錯誤が重 大であるか否かは問わない。登録価格に不服がある場合,納税者は,所定の期限内に固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができるところ(同法432条1項),この場合も錯誤が重大であるか否かは問わない。行政処分は,違法であっても所定の期限内に不服を申し出ないと取り消すことができなくなることがあるが(行政事件訴訟法14条参照),取り消すことができなくなったからといって当該処分の違法性が当然に治癒されるものではなく,国家賠償法上の損害賠償の対象から当然に除外されるものでもない。 一審被告の担当者が評価基準に沿った計算をしなかった以上は,それが計算誤りにすぎないとか,評点数の正誤差が軽微であるとの理由で違法という評価を免れる余地はなく,過失が否定されることもない。 よって,一審被告の上記主張は採用することができない。 第4 結論以上のとおりであるから,一審原告Bの請求(甲事件)は184万2500円及びその遅延損害金の限 く,過失が否定されることもない。 よって,一審被告の上記主張は採用することができない。 第4 結論以上のとおりであるから,一審原告Bの請求(甲事件)は184万2500円及びその遅延損害金の限度で理由があり,一審原告Dの請求(乙事件)は理由がなく,これと同旨の原判決は相当であり,一審原告らの各控訴及び一審被告の控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,一審原告Bの請求の減縮により原判決主文第1項が変更されているのでその旨を明らかにし,仮執行宣言につき民事訴訟法310条本文を適用して,主文のとおり判決する大阪高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官江口とし子 裁判官大藪和男 裁判官森鍵一
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