【DRY-RUN】主 文 原判決中、被告人A、同Bに関する部分を破棄する。 被告人A、同Bを各懲役五年に処する。 同被告人等に対する原審未決勾留日数中、各九拾日を右各本刑に算入す る
主文 原判決中、被告人A、同Bに関する部分を破棄する。 被告人A、同Bを各懲役五年に処する。 同被告人等に対する原審未決勾留日数中、各九拾日を右各本刑に算入する。 被告人Cに関する控訴は、これを棄却する。 理由 本件控訴の趣意及びこれに対する弁護人の答弁は末尾添附の神戸地方検察庁豊岡支部検察官検事佐山恭彦作成名義の控訴趣意書及び弁護人奥田忠策作成名義の答弁書各記載のとおりである。 控訴趣意第一点について、所論は先ず、被告人Cには、少くとも義父Dを殺害するについての、未必の殺意があつたことが証拠上明らかであるから、原判決が判示第三の事実において、同被告人の傷害致死の事実を認定したのは、事実を誤認したものであるというのである。 しかし、原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判示第三の事実は、十分これを認めるに足るところであつて記録を精査するも、原判決の事実の認定には所論の如き誤認はない。もつとも、検察官指摘の各証拠によると、被告人Cが日頃から義父Dを厄介視して、その死を願つており、また、本件犯行当時CがDに対し「死んでしまえ」とか「殺してやろう」とか、いいながら、その頭部を板切れで「ばんばん」殴つたことが認められるが、これだけの事実をもつては、未だ同被告人に真実Dを殺害するの意思があつたものとは認めがたい。けだし、真実殺意があつたものと認め得るがためには、その犯意は真摯でなければならないのであつて、本件の如く、同被告人が当時出産を間近に控え精神の興奮状態にあつた上、最初Dに再びEとの家出の相談でもしていたのかを確めるつもりで二階へ上り詰問したところ、返事がなかつたのに憤慨し、逆上の余り、とつさに、その場に有合せの衣装箱のふた板をもつて、その頭部を殴るに至つた事情等特段 Eとの家出の相談でもしていたのかを確めるつもりで二階へ上り詰問したところ、返事がなかつたのに憤慨し、逆上の余り、とつさに、その場に有合せの衣装箱のふた板をもつて、その頭部を殴るに至つた事情等特段の事情の看取できる案件においては、右Cの放言暴行は、単に日頃から厄介視し、嫌悪していたDに対する罵倒とこらしめの意図をもつてなされたものに過ぎないものと認められるのであつて、これをもつて到底殺害の真意から出たものとは認めがたい。しかもこの事実は、Cの検察官に対する昭和二十八年二月二十四日附第一回供述調書中、Cの供述として「殺すつもりで叩いたのではありません」との記載に徴しても明らかなところであつて、同調書及び原審第五回公判調書中、同人の「板で思いきり殴ると、Dは弱つているから死ぬかもわからんと思つた」旨の各記載部分は、犯行当時におけるCの心理の表現としてはにわかに措信しがたい、すると、原判決には、この点に関し所論の如き事実の誤認はないから上記の論旨は理由がない。 次いで、所論は、原判決は、その第四事実において、被告人A、同BのDに対する殺人未遂(被告人Aについては尊属殺未遂)の事実を認定したが、Cの与えた右Dの頭部殴打によるその左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈からの打撲傷の出血は、同人に対する被告人A、同B等の本件投下行為により助長促進されたものであることは原審検証調書及び医師Fの鑑定書により明らかなところであり、しかも、右Dの死は、この出血が漸次脳底に貯溜して凝固し呼吸中枢を圧迫した呼吸麻痺によるものであることも、また明白であるから、同被告人等の行為は右D死亡の原因をなしているのであつて、同被告人等にDに対する殺人既遂(被告人Aについては尊属殺既遂)の罪責のあることはもちろんであるから、原判決の事実認定には誤認があるというのである。よつて按ず 右D死亡の原因をなしているのであつて、同被告人等にDに対する殺人既遂(被告人Aについては尊属殺既遂)の罪責のあることはもちろんであるから、原判決の事実認定には誤認があるというのである。よつて按ずるに、医師Fの各鑑定書、同人の当審における証言によると、Dの死因は、その頭部の殴打のため起つた左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈の各切断による僅かずつの出血が漸次脳底に貯溜して凝固し呼吸中枢を圧迫した呼吸麻庫によるものであることが認められる外、さらに右証拠によれば、その出血量の少い間は、遂には死亡の結果を致すものであつたとしても、その危険は徐々に進行するに止まるものであつたが、その後さらに同人が高所から落下したものとすれば、その落下の事実により、右の出血は助長促進され、その死亡の結果を早めることに役立つたであろうことを、十分窺い知るに足るのである。ところで、原判決挙示の証拠によれば、右Dの頭部を殴打し、同人にその左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈の切断による出血の傷害を与えたのは被告人Cであり、被告人A、同B等はただ、右傷害後において、Dを殺害するの目的で、二階から同人を投下したに過ぎないことを認め得るのではあるが、この事実に上記認定の事実を参酌すると、被告人Cの加えた頭部殴打により既に始まつていた右Dの左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈切断による出血は、右被告人A、同B等のDに対する二階からの投下行為により助長促進され、これが脳底に貯溜凝固し、呼吸麻庫による同人の死亡を早める結果にな<要旨>つたものと認めざるを得ないのである。しかして、ある行為が単に結果の発生を助長促進したに過ぎないとき</要旨>でも、その行為と結果との間に因果関係を認めることを妨げないのであるから、本件の如く、DがCよりうけた殴打により既にその左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈よりの出血を始め、 促進したに過ぎないとき</要旨>でも、その行為と結果との間に因果関係を認めることを妨げないのであるから、本件の如く、DがCよりうけた殴打により既にその左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈よりの出血を始め、そのまま放置してもその出血が漸次脳底に貯溜し、呼吸中枢の圧迫による呼吸麻痺により遂には死亡の結果を来たしたものであつたとしても、かかる被害事実にさらに、被告人A、B等の右の如き投下行為が加わりDの出血を助長促進し、その死亡の結果を早めたものである以上、右被告人等両名の所為とDの死亡との間には因果関係があるものと認むべく、従つて、同被告人等にはDに対する殺人既遂罪(被告人Aについては尊属殺既遂)の罪責のあることもちろんであるといわなければならない。よつて、これと異なる見解の下に、同被告人等の殺人未遂(被告人Aに対しては尊属殺未遂)の事実を認定した原判決には事実の誤認があり、しかも右誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであると認むべきであるから、この点に関する論旨は理由があり、原判決中、被告人A、同Bに関する部分は破棄を免れない。 控訴趣意第二点について、しかし、被告人Cについては、原判決認定の事実に誤認のないことは前述の如くであり、しかも、その犯行の動機態様、罪質、犯情、同被吉人の経歴、性格、精神智能の程度家庭及び家計の状況等諸般の点に鑑みるときは、同人に対する原判決の量刑が決して軽きに過ぎる不当のものとは認めがたいから論旨は理由がない。 なお、その余の被告人等に対する当裁判所の量刑についての判断は、下記に破棄自判するところによつて、自から明らかであるから、ここにはこれを省略する。 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十二条により原判決中被告人A、同Bに関する部分を破棄し、同法第三百九十六条により被告人Cに関する控訴を棄却し、なお、同 あるから、ここにはこれを省略する。 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十二条により原判決中被告人A、同Bに関する部分を破棄し、同法第三百九十六条により被告人Cに関する控訴を棄却し、なお、同法第四百条但し書に従い、右破棄した部分につき更に次のとおり判決する。 罪となるべき事実被告人Aと向C、被告人Bと原審相被告人Gとは各夫婦であり、また被告人Cは被告人Bの妹であつて、共に被告人B方に同居し、また被告人A、同B等は兵庫県養父郡a町所在Hの雑役夫をしていたが、いずれもその日の衣食にもこと欠く赤貧の暮しを送つていたところ、昭和二十七年十月頃被告人Aの実父D(当時六十五年)と妹E(当時二十年)とが同被告人方に同居することになつた。ところが、右Dは元来愚鈍な上に老衰して日雇の仕事にも出られないことはもちろん、自宅で草履を造ることさえできず、Eもまた白痴に近く家事の手伝いさえできないので、被告人等は常に同人等を厄介視し、被告人Cは、右D等親子に三度の食事さえ満足に与えず、時には虐待さえするので、Dはいたたまれずに娘Eを連れて家出し、部落の藁塚や納屋に寝て農家に食を乞い、また家にいる時でも乞食同様の有様で、大小便の始末もろくにしない状態であつたから、被告人B、同C、原審相被告人G等は、右Dを極度に嫌悪していたものであるが第一、 被告人Bは、昭和二十八年一月中旬頃勤務先の製材工場で他の職工から、右Dのことを指してお前の家には乞食を泊めているのかと冷笑されたことに憤慨し、その肩書住居において炉辺にいたDに対し、少しは仕事をせい、性根を入れてやる旨申向けて囲炉りの火中にあつた火ばしをもつて右Dの左下肢大腿部を二回にわたり殴りつけよつて同部位に長さ三、三センチ位、巾二、六センチ位及び長さ二、六センチ位、巾二センチ位の二個所にわたる火傷の傷害を 申向けて囲炉りの火中にあつた火ばしをもつて右Dの左下肢大腿部を二回にわたり殴りつけよつて同部位に長さ三、三センチ位、巾二、六センチ位及び長さ二、六センチ位、巾二センチ位の二個所にわたる火傷の傷害を与え、第二、 被告人Bは、相被告人C及び原審相被告人Gと共謀の上、昭和二十八年一月下旬頃肩書住居において、右Dが徒食し、その上寝床で用便するので、同人を折かんしょうと企て、被告人BはDに対し、今日は性根の入るようにきゆうをすえてやる旨申向け、いやがる同人をその場に坐らせ、持合せのもぐさと囲炉りの中の「おき」を用いて同人の両手の甲に各一個ずつきゆうをすえ、よつてその左右各手甲部にだ円形の長さ各三、八センチ位、巾三センチ及び三、二センチ位の火傷による各傷害を、さらに同人をその場に仰臥させてその外陰部き頭前面中央部に一個のきゆうをすえ、よつて同所に円形の直径一、五センチ位の火傷による傷害を与え、第三、 被告人Bは、生来愚鈍の上兇暴性を有し、被告人A等の一家四人が、被告人B等夫婦の九州への旅行不在中に同家へ同居するようになつた事情から、被告人Bに対し遠慮しているのに乗じ実子であるAをもはばからず、右Dを虐待していたものであるが、昭和二十八年二月九日肩書自宅の二階において、原判示第三の事実摘示の如くたまたま右Dが被告人Cから衣装箱のふた板をもつて、その頭部を数回殴打されているのを見て、同人を二階から投下して殺害しやうと決意し、被告人Aにもその旨を促し、Aはまた、生来愚鈍温順な性質の男であつて、実父Dが右の如く殴打虐待されているのを見て施すすべも知らないまま、一そうひと思いに同人が殺された方が本人のためにも幸せであると考え、右Bの申出に応じ、ここに右被告人等両名は共謀して、心身共に衰弱の上右の如くCから殴打され、身動きもできないDを、被告人Bがその 、一そうひと思いに同人が殺された方が本人のためにも幸せであると考え、右Bの申出に応じ、ここに右被告人等両名は共謀して、心身共に衰弱の上右の如くCから殴打され、身動きもできないDを、被告人Bがその脚部を、同Aがその肩部を各かかえて、その隣りにある同家表入口の土間上方に当る板敷の個所まで運び一たん横にねかした上、その板敷の端から直ちに同人を約八尺下の右階下の土間上に投下し、よつて同人をしてさきに被告人Cが同人に与えたその頭部殴打に基因する左硬脳膜静脈及び左中顳・静脈切断による出血を助長促進せしめ、呼吸中枢の圧迫による呼吸麻痺により翌二月十日午前七時頃同家において死亡するに至らしめ、その殺害の目的を遂げたものである。 なお、被告人A及びBは右各犯行当時において、それぞれ心神耗弱の状態にあつたものである。 証拠の標目判示冒頭の事実につき、一、 被告人等の各戸籍謄本の記載、一、 I、J、K、Lの司法警察職員に対する各供述調書の記載、一、 被告人等の司法警察職員に対する各供述調書の記載、その余の判示各事実につき、一、 原審第二回公判調書(供述)中の証人M、同F、同第三回公判調書(供述)中の証人A、同第四回公判調書(供述)中の証人B、同第六回公判調書(供述)中の証人E、同Nの、同第十一回公判調書中の証人Fの各供述記載、一、 当審における証人Fの証人尋問調書の記載、一、 N、I、O、P、K、Q、R、Eの司法警察職員に対する各供述調書の記載、一、 医師M作成のDの死体検案書、医師F作成の各鑑定書、検察官作成の検視調書及び検証調書の各記載、一、 原審並びに当審における各検証調書の記載、一、 被告人等の司法警察職員に対する各供述調書の記載、一、 押収の板切れ二枚、布切れ一枚、火ばし二本の各存在、法令の適用、被 の各記載、一、 原審並びに当審における各検証調書の記載、一、 被告人等の司法警察職員に対する各供述調書の記載、一、 押収の板切れ二枚、布切れ一枚、火ばし二本の各存在、法令の適用、被告人Aに対し、判示第三の所為につき、刑法第二百条、なお、同法第三十九条第二項、第六十八条第二号、第六十六条、第六十八条第三号、第二十一条、被告人Bに対し、判示第一、第二の所為につき、各刑法第二百四条(但し、第二の所為につき更に刑法第六十条)判示第三の所為につき、刑法第六十五条第二項、第百九十九条、以上につき各刑法第三十九条第二項、第六十八条第三号更に同法第四十五条前段、第四十七条、第十条、第二十一条、よつて、主文のとおり判決する。 (裁判長判事瀬谷信義判事山崎薫判事西尾貢一)
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