平成23(行ケ)10245 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年1月31日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文7,735 文字)

平成24年1月31日判決言渡平成23年(行ケ)第10245号審決取消請求事件平成23年12月19日口頭弁論終結判決 原告 X 被告特許庁長官指定代理人田合弘幸同横林秀治郎同唐木以知良同芦葉松美 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が不服2010-2901号事件について平成23年6月20日にした審決を取り消す。 第2 当事者間に争いのない事実等 1 特許庁における手続の経緯等原告は,発明の名称を「ノート型パソコン固定収納二層式かばん」とする発明について,平成18年6月8日に特許出願(特願2006-159264号。請求項の数7。以下「本願」という。)をし,平成21年11月16日付けで拒絶査定を受けた。これに対し,原告は,平成22年1月23日付けで,拒絶査定に対する不服審判の請求(不服2010-2901号)をした(甲4)。 特許庁は,平成23年6月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下,単に「審決」という。)をし,その謄本は,同年7月9日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載本願の特許請求の範囲の請求項7の記載は,次のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」という。)「かばんの主収容部を中仕切り板で二層に区分し,かばん枠材に固定し,中仕切り板の上下二箇所に有効な収容部を創出する開閉機構及び錠前機構を持つかばん」 3 審決の理由 を「本願発明」という。)「かばんの主収容部を中仕切り板で二層に区分し,かばん枠材に固定し,中仕切り板の上下二箇所に有効な収容部を創出する開閉機構及び錠前機構を持つかばん」 3 審決の理由(1) 審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。 要するに,審決は,本願発明は,本願出願日前に頒布された刊行物である特開2005-342493号公報(以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができないので,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである,とするものである。 (2) 審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明の内容,同発明と本願発明との一致点及び相違点を次のとおり認定した。 ア引用発明の内容ノートパソコンを収納するケースの内部における主たる収納スペースを,設置台25でノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースとに仕切り,設置台高さ調整用穴36への蝶番取付け部37のはめ込みねじ止めによりケース本体1に固定される高さ調整機能を持ち,設置台25の上部及び下部にそれぞれノートパソコンを収納設置するスペース及び内部収納スペース26を構成する蝶番35, 及び,施錠部21を持つノートパソコンを収納するケース。 イ一致点かばんの主収容部を中仕切り板で二層に区分し,中仕切り板の上下二箇所に有効な収納部を創出する開閉機構及び錠前機構を持つかばん。 ウ相違点本願発明では,開閉機構がかばん枠材に固定されるのに対して,引用発明では,開閉機構(蝶番35)がかばん枠材(ケース本体1)に,設置台高 を創出する開閉機構及び錠前機構を持つかばん。 ウ相違点本願発明では,開閉機構がかばん枠材に固定されるのに対して,引用発明では,開閉機構(蝶番35)がかばん枠材(ケース本体1)に,設置台高さ調整用穴36への蝶番取付け部37のはめ込みねじ止めにより高さ調整可能に固定される点。 第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(手続違背)原告は,本願の拒絶査定に係る不服審判請求時,審判官との面接を希望したにもかかわらず,面接がされないまま,違法に審決がなされた。 (2) 取消事由2(相違点の認定及び容易想到性判断の誤り)審決には,以下のとおり,本願発明と引用発明の相違点を看過し,容易想到性判断を誤った違法がある。 ア本願発明は,かばんにノート型パソコン固定用中仕切板を設けるのに対し,引用発明は,ケース内部にノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切る開閉可能な台を設ける点において相違する。 イ本願発明は,ノート型パソコン固定用中仕切板にZ型留め具用防振ボルトナットセットでノート型パソコンを固定後,上記中仕切板と中仕切板受枠を防振ボルトナットセットで固定し,緩衝材とノート型パソコンは隙間を確保しているのに対し,引用発明は,取付け位置が調節可能なノートパソコン保持用冶具が設けられており,その冶具と内部にクッション材を用いたケース蓋を閉じることによってノー トパソコンを堅牢に保持する点において相違する。 ウ本願発明のかばんは,移動車両に座して使用する時,隣人への影響が少ないような幅(45㎝から48㎝程度)であるのに対し,引用発明のケースは,A3サイズまでの書類及びノートパソコンを収納する点において相違する。 エ本願発明の中仕切りは,中空構造であるのに対し が少ないような幅(45㎝から48㎝程度)であるのに対し,引用発明のケースは,A3サイズまでの書類及びノートパソコンを収納する点において相違する。 エ本願発明の中仕切りは,中空構造であるのに対し,引用発明のケース内部のスペースを仕切る開閉可能な台は,単に軽量で頑丈な金属製である点において相違する。 オ本願発明は,側蓋を中仕切板受枠に固着している,かばんの外部に設置された三連丁番により,単独又は同時に回動可能な機能を保持し,中仕切板受枠の底鋲側に固着している丁番及び角度保持金具を回動させることで,移動車両内で座した状態でもパソコン作業に好適な角度を創出し,保持することができる上,ノート型パソコンのディスプレイを閉めることなく書類の取り出しができるのに対し,引用発明の蝶番は,ノートパソコンを収納するケースの内部に設置され,ノートパソコン設置台25の高さ(深さ)調整機能を有し,上記好適な角度を創出し,保持することができず,ノートパソコンの上蓋を閉めないと収納物を取り出せない点において相違する。 カ本願発明は,中仕切板でかばんの主収容部を上下2層に区画しているのに対し,引用発明は,ノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切る開閉可能なパソコン設置台と,マウス台の2つでノートパソコンを収納するケースの内部を区分する点において相違する。 2 被告の反論(1) 取消事由1(手続違背)に対して特許法145条2項には,拒絶査定不服審判は,書面審理による旨が規定されている。実務上,面接が,審判請求事件において,審判合議体と請求人側との密な意思疎通を図り,審理促進に役立てるために行われている(面接ガイドライン(審判編)1.1)が,特許法上規定された手続ではなく,審判合議体の審理を補完する ものにす 審判合議体と請求人側との密な意思疎通を図り,審理促進に役立てるために行われている(面接ガイドライン(審判編)1.1)が,特許法上規定された手続ではなく,審判合議体の審理を補完する ものにすぎない。審判手続において,当事者に面接の機会や釈明の機会を与えるか否かは審判合議体の裁量に属する事項であり,本件において,審判合議体が原告に対し,面接や釈明の機会を与えなかったことに裁量権の逸脱はない。 (2) 取消事由2(相違点の認定及び容易想到性判断の誤り)に対してア原告は,本願発明における中仕切り板は,ノート型パソコン固定用中仕切板であり,引用発明におけるノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切る設置台とは異なると主張する。 しかし,原告の上記主張は,本願の特許請求の範囲の請求項7の記載に基づかない主張であり失当である。すなわち,引用発明における設置台は,ノートパソコンを収納するケースの内部における主たる収納スペースを,ノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースとに仕切るものであって,本願発明において,かばんの主収容部を二層に区分する中仕切り板と相違しない。 また,仮に,本願発明における中仕切り板をノート型パソコン固定用中仕切板として限定的に捉えたとしても,引用発明における設置台は,ノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切るものであるから,本願発明におけるノート型パソコン固定用中仕切板と相違するものではなく,原告の上記主張は失当である。 イ原告は,本願発明における開閉機構は,かばんの外部に設置され,高さ調製をする機構は保持していない三連丁番であるのに対し,引用発明における開閉機構は,ノートパソコンを収納するケースの内部に設 。 イ原告は,本願発明における開閉機構は,かばんの外部に設置され,高さ調製をする機構は保持していない三連丁番であるのに対し,引用発明における開閉機構は,ノートパソコンを収納するケースの内部に設置され,ケース本体1に固定される高さ(深さ)調整機能を持つ蝶番であり,両者は形状及び目的において相違する,と主張する。 しかし,原告の上記主張は,本願の特許請求の範囲の請求項7の記載に基づかない主張であり,失当である。すなわち,本願の特許請求の範囲の請求項7には,開閉機構が三連丁番であると解される記載はなく,開閉機構をかばんの内外いずれに設置するかについても特定されていない。また,本願発明における開閉機構は,か ばんの枠材に固定し,中仕切り板の上下二箇所に有効な収容部を創出する機能を有するものであって,このような機能を有する開閉機構としては,種々の構成が採り得るものであり,その構成が,三連丁番に限定されるものではない。 そして,審決が,①本願発明では,開閉機構がかばん枠材に固定されるのに対し,引用発明では,開閉機構(蝶番35)がかばん枠材(ケース本体1)に,設置台高さ調整用穴36への蝶番取付け部37のはめ込みねじ止めにより高さ調整可能に固定される点を相違点と認定し,その上で,②引用発明の開閉機構(蝶番35)は,中仕切り板(設置台25)の上下二箇所に有効な収容部を創出する(構成する)点で本願発明の開閉機構と共通しており,開閉機構(蝶番35)として高さ調整不能な形式のものを選択し,かばん枠材(ケース本体1)に固定することは,当業者が適宜なし得ると判断した点に誤りはない。 ウ原告は,本願発明は,中仕切り板によって,かばんの主収容部を上下二層に区画するものであり,引用発明のように,設置台とマウス台によって,ノートパソコンを収納するケースの 判断した点に誤りはない。 ウ原告は,本願発明は,中仕切り板によって,かばんの主収容部を上下二層に区画するものであり,引用発明のように,設置台とマウス台によって,ノートパソコンを収納するケースの内部をそれぞれ一部ずつ区画するものではない,と主張する。 しかし,原告の上記主張は失当である。すなわち,本願発明のかばんの主収容部は,かばんの内部に区画された収容部の個数とは関係なく,単にかばん内部の区画された収容部のうち主たる(最大の)収容部を意味するものにすぎず,本願発明の「かばんの主収容部を中仕切り板で二層に区分し」には,かばんの内部全体を中仕切り板で二層に区分する構成のみならず,かばんの内部を部分的に中仕切り板で二層に区分する構成が含まれる。また,刊行物1には,「・・・ノートパソコンを収納するケースであって,ケース内部に,ノートパソコンの設置と各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切る開閉可能な台を設けており・・・」との記載があり,図1,2及び5には,ケース本体1の内部に形成される,ノートパソコン本体が設置されるスペースと,内部収納スペースとからなる収納スペースが,ケース本体の内部における主たる(最大の)収容部として図示されている。 したがって,引用発明のノートパソコンを収納するケースの内部における主たる収納スペースが本願発明のかばんの主収容部に相当し,引用発明における設置台が本願発明における中仕切り板に相当するとした審決の認定,判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,取消事由に係る原告の主張は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりであるが,事案に鑑み取消事由2から判断する。 1 取消事由2(相違点の認定及び容易想到性判断の誤り)について原告の取消事由に係る主張は,以下のとおり,失当である。 する。その理由は,以下のとおりであるが,事案に鑑み取消事由2から判断する。 1 取消事由2(相違点の認定及び容易想到性判断の誤り)について原告の取消事由に係る主張は,以下のとおり,失当である。 (1) 原告は,本願発明では,中仕切り板がノートパソコン固定用中仕切り板であるのに対し,引用発明では,ノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切る開閉可能な台がある点で相違すると主張する。 しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであり,これによれば,本願発明において,中仕切り板は,かばんの主収容部を二層に区分すること,これにより中仕切り板の上下二箇所に有効な収納部が創出されることは特定されているものの,ノートパソコン固定用であることについての特定はない。したがって,本願発明の中仕切り板がノートパソコン固定用中仕切り板であることを前提とする原告の主張は,その主張自体失当である。 (2) 原告は,本願発明は,かばんの外部に設置された三連丁番により,単独又は同時に回動可能な機能を有し,角度保持金具を回動させることで,移動車両内で座した状態でもパソコン作業に好適な角度を創出し,保持することができる上,ノート型パソコンのディスプレイを閉めることなく書類の取り出しができるのに対し,引用発明の開閉機構(蝶番)は,ケース内部に設置され,ノートパソコン設置台の高さ(深さ)調整機能を有し,上記機能(好適な角度の創出,保持機能等)は有しないと主張する。 しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,本願発明の特 許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであり,開閉機構(丁番)は,かばんの枠材に固定され,中仕切り板の上下 しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,本願発明の特 許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであり,開閉機構(丁番)は,かばんの枠材に固定され,中仕切り板の上下二箇所に有効な収容部を創出するものであることは特定されているものの,これが三連丁番であるとか,単独又は同時に回動可能な機能を有し,角度保持金具を回動させることで,移動車両内で座した状態でもパソコン作業に好適な角度を創出し,保持することができる上,ノート型パソコンのディスプレイを閉めることなく書類の取り出しができるとの機能を有するものであるとの特定はない。したがって,審決が,①本願発明では,開閉機構がかばん枠材に固定されるのに対し,引用発明では,開閉機構(蝶番35)がかばん枠材(ケース本体1)に,設置台高さ調整用穴36への蝶番取付け部37のはめ込みねじ止めにより高さ調整可能に固定される点を相違点と認定し,その上で,②引用発明の開閉機構(蝶番35)は,中仕切り板(設置台25)の上下二箇所に有効な収容部を創出する(構成する)点で本願発明の開閉機構と共通しており,開閉機構(蝶番35)として高さ調整不能な形式のものを選択し,かばん枠材(ケース本体1)に固定することは,当業者が適宜なし得ると判断した点に誤りはない。 (3) 原告は,本願発明は,中仕切板でかばんの主収容部を上下2層に区画しているのに対し,引用発明は,ノートパソコンの設置スペースと各種周辺機器やアイテムを収納できるスペースを仕切る開閉可能なパソコン設置台と,マウス台の2つでケース内部を区分する点で相違すると主張する。 しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであり,これによれば,かばん内部の収容部の個数についての 違すると主張する。 しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,本願発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであり,これによれば,かばん内部の収容部の個数についての特定はなく,単に,かばん内部の区画された収容部のうち主たる収容部を中仕切り板で二層に区分するものと特定されていることに照らすならば,かばんの内部を部分的に中仕切り板で二層に区分する構成を排除するものではない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (4) その他,原告は,本願発明と引用発明との相違点として,パソコンの固定方法,かばんの幅,中仕切りの構造等について,縷々主張するが,いずれも本願の特 許請求の範囲の請求項7の記載に基づく主張ではなく,主張自体失当である。 (5) 小括以上のとおり,審決には,本願発明と引用発明との相違点の認定及び容易想到性判断に誤りはなく,原告の上記主張には理由がない。 2 取消事由1(手続違背)について原告は,本願に係る不服審判請求時,審判官との面接を希望したにもかかわらず,面接がされないまま,審決がされた手続には違法がある旨主張する。 しかし,原告の上記主張は失当である。すなわち,特許法145条2項には,拒絶査定不服審判は,書面審理による旨が規定されている。したがって,当事者に面接の機会を与えなかったことは,特段の事情のない限り違法を来すことはない。また,本件において,審判合議体が原告に対し面接の機会を付与しなかった点に,審決の違法を来す特段の事情はうかがえない。したがって,原告主張に係る手続の瑕疵を認めることはできない。 3 結論以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,他に審決にはこれを取り消すべき違法は認められない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも,理 続の瑕疵を認めることはできない。 主文 結論以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,他に審決にはこれを取り消すべき違法は認められない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも,理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官知野明

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