主文 検察官に対し,別紙証拠目録記載の各証拠の開示を命ずる。 その余の申立てをいずれも棄却する。 理由 第1基本事件の概要並びに申立ての趣旨及び理由基本事件の公訴事実の要旨は,「被告人は,A弁護士会に所属する弁護士であり,Bに対する盗品等有償譲受け被告事件(以下「B事件」という。)の弁護人であるが,Cらと共謀の上,B事件の真犯人はD及びEである旨主張し,同主張と合致する証拠を作出しようと企て,平成18年2月28日ころ,東京都F区「G」店内において,Eをして,「銀行通帳の売買で逮捕されたBさんの弁護士費用と引っ越し費用のうち,私と弟で100万円を出しました。これは,私たちのやった事でBさんが裁判になったお金です。」などと記載させ,D及びEが真犯人である旨の内容の虚偽の書面(以下「本件書面」という。)を作成し,同年9月6日,宮崎市旭2丁目3番13号宮崎地方裁判所第205号法廷において,これを真正な証拠であるように装って宮崎地方裁判所刑事部に提出し,もって他人の刑事被告事件に関する証拠を偽造してこれを使用したものである。」というものである。 そして,本件証拠開示命令の申立ての趣旨及び理由は,主任弁護人Hほか7名(以下「弁護人」と略称する。)作成の平成19年2月23日付裁定請求書(以下「請求書」という。),同年3月12日付意見書及び同月14日付裁定請求理由補充書各記載のとおりであるから,これらを引用するが,要するに,弁護人が開示を求める次に掲げる証拠は,検察官が刑事訴訟法316条の15第1項により開示をすべき証拠であるのに,いずれも開示されていないので,当該証拠の開示命令を裁判所に対して請求するというものである。(なお,請求書第1請求の趣旨の2記載の書面についての申立ては撤回された。)①Eの平成18年2月28日付け作成の「 示されていないので,当該証拠の開示命令を裁判所に対して請求するというものである。(なお,請求書第1請求の趣旨の2記載の書面についての申立ては撤回された。)①Eの平成18年2月28日付け作成の「私たちは,銀行通帳の売買で逮捕された」で始まる書面。(請求書第1の1)②D,E,I,J及びCのすべての供述録取書等(既に開示されているものを除く。 請求書第1の3)③被告人以外の者の供述録取書等であって,被告人が平成18年1月中旬ころ東京都F区の喫茶店「K」内又は同年2月28日ころ同区「G」内においてなした各言動の有無内容に関する供述を内容とするものすべて。(既に開示されているものを除く。請求書第1の4)④平成18年5月1日から現在に至るまでの間に作成された捜査報告書及び捜査官の手控えメモであって,E及びDの各供述(伝聞供述を含む。)が記載されているものすべて。 (請求書第1の5)第2当裁判所の判断 証拠①について①の書面は,B事件の弁護人として被告人がその第6回公判期日に取調べ請求をして採用され,弁第3号証として取り調べられた上,原本が提出され,証拠書類として宮崎地方裁判所において保管中であり,検察官の手持ち証拠中にないことが認められるから,弁護人の主張は理由がない。(なお,同書面については,おって,本件基本事件において記録の取寄せを行う予定である。) 証拠②について②の供述録取書等については,いずれも刑訴法326条の同意がなければ,検察官がその供述者を証人として尋問を請求することが予定されているものと考えられるところ,証人の信用性を検討するには,供述者の身分や経歴及び事件関係者との関係等を含めて考察する必要があるから,そのような供述録取書等で未開示のものがあれば,弊害のないかぎり,開示の対象になると考えるのが相当である。 を検討するには,供述者の身分や経歴及び事件関係者との関係等を含めて考察する必要があるから,そのような供述録取書等で未開示のものがあれば,弊害のないかぎり,開示の対象になると考えるのが相当である。 (1)D及びEの各供述録取書等検察官から提示を受けたD及びEの供述録取書等について,調査し検討する。 Dは,被告人らからB事件の身代わり犯人として出頭するよう命令され,本件書面の作成を強制されるに至った経緯及び状況等を立証趣旨とする検察官調書3通(甲1から甲3まで。 甲2は謄本)の供述者,Eは,被告人らから本件書面の作成を強制されるに至った経緯及び状況等,被告人からB事件の身代わり犯人として出頭しない場合には本件書面を裁判に提出すると言われたこと,「K」で面会した人物の特定等を立証趣旨とする検察官調書4通(甲4から7まで。甲5は謄本)の供述者であり,提示を受けたDの平成18年11月30日付け警察官調書謄本及びEの平成18年11月29日付警察官調書謄本には,それぞれ供述者の職歴や本件関係者との関係に関する記載があり,これらはD及びEの各供述の証明力を判断するのに重要であると認められる。一方,D及びEは,一緒に金融業を行っていた者に迷惑がかかる恐れを懸念しているところ,これは金融業者の所在及び名称並びに金融業の関係者の名前を伏せるなどすることによって弊害を除去することは可能であるから,そのような条件を付した上で,いずれも法316条の15第1項5号ロに該当する書面として,検察官に開示させるのが相当である。 その余の供述録取書等は,今後弁護人の明示する争点と関連するとして開示すべきか否かはともかく,現時点における当事者双方の主張とは関連性が明らかではなく,供述の証明力を判断するのに重要であるとは認められない。 (2)Iの供述録取書等検察官から提 連するとして開示すべきか否かはともかく,現時点における当事者双方の主張とは関連性が明らかではなく,供述の証明力を判断するのに重要であるとは認められない。 (2)Iの供述録取書等検察官から提示を受けたIの供述録取書等について,調査し検討する。 Iは,本件書面の作成を強制された旨Eから聞いた状況,B事件についてのJ及びDらの言動を立証趣旨とする検察官調書謄本2通(甲23,24)の供述者であり,提示を受けた平成18年11月23日付弁解録取書謄本は,Bと共謀して犯したとされる別の盗品等有償譲受け事件の被疑者としてIが司法警察員に対して述べた言い分を録取したものであると窺われるが,Bとの関係に関する記載がIの供述の証明力を判断するための一材料となり得るところ,この弁解録取書謄本を開示する重要性の程度は,本件においてはそれほど高くはないものの一応認められるのであり,Iの証人尋問に備えて被告人の防禦の準備のために開示が必要ともいえる。一方,弁解録取書謄本の内容は,別件盗品等有償譲受け事件についての簡単な言い分であって,これを開示して生じるおそれのある弊害は考え難い。また,提示を受けた平成18年11月24日付警察官調書謄本は,上記別件盗品等有償譲受け事件の被疑者としてその身上関係を録取したものであり,供述者の職歴や本件関係者との関係に関する記載があり,これらはIの各供述の証明力を判断するのに重要であると認められる一方,検察官において開示の弊害に関し具体的な主張はされていないことに照らすと,いずれも法316条の15第1項5号ロに該当する書面として,検察官に開示させるのが相当である。 (3)Jの供述録取書等検察官から提示を受けたJの供述録取書等について,調査し検討する。 Jは,被告人との面識状況,被告人からB事件の記録を見せられ被告人に組織図に記載 示させるのが相当である。 (3)Jの供述録取書等検察官から提示を受けたJの供述録取書等について,調査し検討する。 Jは,被告人との面識状況,被告人からB事件の記録を見せられ被告人に組織図に記載された関係人の氏名を教示した状況,被告人から依頼されDらの写真を集めて被告人に交付した状況,「K」における被告人及びDらとの面会状況,被告人らがB事件の身代わり犯人としてDらに出頭を命令した状況,本件書面の内容が虚偽であること,被告人らに依頼され,Dらの住所等を電話で教えたこと,被告人作成に係る冒頭陳述の記載内容に事実との相違点があること,被告人の弁解内容に虚偽が含まれていること等を立証趣旨とする検察官調書謄本7通(甲25から31まで)の供述者であり,提示を受けた平成18年12月6日付弁解録取書謄本は,I,Bほか1名と共謀して犯したとされる別の盗品等有償譲受け事件の被疑者としてJが司法警察員に対して述べた言い分を録取したものであると窺われるが,本件関係者に関する記載がJの供述の証明力を判断するための一材料となり得るところ,この弁解録取書謄本を開示する重要性の程度は,本件においてはそれほど高くはないものの一応認められるのであり,Jの証人尋問に備えて被告人の防禦の準備のために開示が必要ともいえる。一方,弁解録取書謄本の内容は,別件盗品等有償譲受け事件についての簡単な言い分であって,これを開示して生じるおそれのある弊害は考え難い。また,提示を受けた平成18年11月16日付け警察官調書謄本は,上記別件盗品等有償譲受け事件の被疑者としてその身上関係を録取したものであり,供述者の職歴や本件関係者との関係に関する記載があり,これらはJの各供述の証明力を判断するのに重要であると認められる一方,検察官において開示の弊害に関し具体的な主張はされていないことに照らす であり,供述者の職歴や本件関係者との関係に関する記載があり,これらはJの各供述の証明力を判断するのに重要であると認められる一方,検察官において開示の弊害に関し具体的な主張はされていないことに照らすと,いずれも法316条の15第1項5号ロに該当する書面として,検察官に開示させるのが相当である。 その余の供述録取書等は,現段階においては,その内容に上記の検察官証明予定事実との関連性が見当たらず,J供述の証明力を判断するための重要性や必要性も認められない。 (4)Cの供述録取書等検察官に提示を求めて調査してみても,既に開示済みのもの以外に存在しないと認められるから,弁護人の主張は理由がない。 証拠③について開示済みのもの以外に存在しないと認められるから,弁護人の主張は理由がない。 証拠④について(1)捜査報告書開示済みのもの以外に存在しないと認められるから,弁護人の主張は理由がない。 (2)手控えメモ検察官手持ちの証拠中に存在しないことが認められる上,その他,当然に検察官に事件を送致等する際に送致書や送付書に添付すべき関係書類及び証拠物といえるような手控えメモの存在も窺えないから,弁護人の主張は理由がない。 結論 そうすると,弁護人の申立てのうち,検察官に対し,別紙証拠目録記載の各証拠の開示を命ずる限度で理由があり,その余はいずれも理由がないから,法316条の26第1項により,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官・重富朗,裁判官・髙原知明,裁判官・上村海)別紙証拠目録 Dの平成18年11月30日付け警察官調書謄本(金融業者の事務所の所在及び名称並びに店長の名前に関する供述部分を除いたもの。) Eの平成18年11月29日付け警察官調書謄本(金融業者の事務所の所在及び名称並びに金融業者の関係者に関する供述 (金融業者の事務所の所在及び名称並びに店長の名前に関する供述部分を除いたもの。) Eの平成18年11月29日付け警察官調書謄本(金融業者の事務所の所在及び名称並びに金融業者の関係者に関する供述部分を除いたもの。) Iの平成18年11月23日付け弁解録取書謄本 Iの平成18年11月24日付け警察官調書謄本 Jの平成18年12月6日付け弁解録取書謄本 Jの平成18年11月16日付け警察官調書謄本
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