【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人山本晃の上告趣意第一点について。 所論は、要するに、刑法一九九条死刑の規定は違憲でないとしても、国は憲法一 三条
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人山本晃の上告趣意第一点について。 所論は、要するに、刑法一九九条死刑の規定は違憲でないとしても、国は憲法一 三条、二五条により国民個人の生存育成について責務があるのであつて、もしある 個人に対し国がこの責務を果したのなら、その者に刑法同条の罪責ある場合これを 死刑に処しても右憲法両条に違反するとはいえないが、国がこの責務を果さない限 りは、その個人が刑法同条により処断されるべき場合でも、裁判所は所定刑中死刑 を選択せずもしくは減軽して他の刑に処すべき義務あることを規定しているものと 解されるのであつて、換言すれば、憲法一三条、二五条はその生存育成に関する国 の責務が果されていない個人につき刑法一九九条を適用する場合に関し死刑を選択 せずもしくは減軽すべき旨の特別規定をも定めたものと解されるのであるところ、 本件被告人に対しては国は前記義務を有し、しかもこれを果していないのであるか ら、被告人に対し刑法一九九条を適用するに当つては右憲法両条の是認する範囲内 で所定懲役刑に処すべきであつたのに原審がそうしなかつたのは右憲法両条に違反 する、というものと解される。 憲法二五条は、積極主義の政治として社会的施設の拡充増進に努力しすべての国 民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国家の 任務として宣言したものであり、それは主として社会的立法の制定、実施によるべ きであるが、かかる生活水準の確保向上もまた国の任務とし、国家は国民一般に対 し概括的にかかる責務を負担しこれを国政上の任務としたものであるけれども、個 個の国民に対し具体的、現実的にかかる義務を有するものではない。このことは当 裁判所の判例(昭和二三年(れ)二〇五号同年九月二九日大法廷判決、刑集二巻一 - 1 国政上の任務としたものであるけれども、個 個の国民に対し具体的、現実的にかかる義務を有するものではない。このことは当 裁判所の判例(昭和二三年(れ)二〇五号同年九月二九日大法廷判決、刑集二巻一 - 1 - 〇号一二三五頁)の趣旨とするところであるから、所論において国が憲法二五によ り被告人個人の生存育成につき所論責務を有しながらこれを果していないという点 は理由がなく、これを前提とする憲法同条違反の主張は採用の限りでない。 また、たとえ、憲法一三条により個人の生存育成について国に所論のような責務 があるとしても、国がこれを果していない事実は原審で主張されていないのである から、所論は結局前提を欠き採用するに足りない。 同第二点は事実誤認、単なる法令違反の主張に過ぎず刑訴四〇五条の上告理由に 当らない。 同第三点は判断遺脱をいうが、所論心神耗弱の主張に対しては原判決は控訴趣意 第一点についての説示においてこれを否定する判断を明示しているのであるから所 論は原判決を正解せざるにいでたもので、前提を欠き採用することができない。 被告人本人の上告趣意一の自白調書の不任意性の所論は原審で主張なく、その判 断を経ていないから採用するに足りたい。(所論被告人の司法警察員の面前におけ る各供述調書が任意性を欠く疑があると認められる資料は記録にないのみならず、 右各供述調書を証拠とすることについては被告人において同意している。) 同二の殺意に関する事実誤認の主張、同三の量刑不当の主張はいずれも刑訴四〇 五条の上告理由に当らない。 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて同四一四条、三九六条、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で 主文のとおり判決する。 検祭官 上田次郎公判に出席 昭和三五年三月一五日 最高裁判所第三小法廷 れない。 よつて同四一四条、三九六条、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で 主文のとおり判決する。 検祭官 上田次郎公判に出席 昭和三五年三月一五日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 垂 水 克 己 - 2 - 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 裁判官 高 橋 潔 裁判官 石 坂 修 一 - 3 -
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