- 1 -平成18年9月28日判決言渡・同日原本領収裁判所書記官平成17年(ワ)第82号不当利得返還請求事件主文 被告は原告に対し,別紙債券目録記載の各債券を引き渡せ。 被告は原告に対し,平成9年10月1日から第1項の引渡済まで2億5000万円に対する年5分の割合による金員を支払え。 第1項の引渡が不能のときは,被告は原告に対し,2億5000万円及びこれに対する平成9年10月1日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,被告の負担とする。 この判決第1ないし3項は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求の趣旨 主文第1項同旨 被告は原告に対し,平成9年10月1日から第1項の引渡済まで年1254万2500円の割合による金員を支払え。 第1項の引渡が不能のときは,被告は原告に対し,2億5085万円及びこれに対する平成9年10月1日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が別紙債券目録記載の無記名割引債券(以下本件債券という)上の権利と被告の悪意の不当利得を主張して,(a)本件債券の引渡及び法定利息の支払と,(b)引渡が履行不能の場合のこれに代わる損害賠償を請求する事案である。 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(1)当事者・関係者①原告(昭和56年設立。旧々商号・A有限会社,旧商号・B有限会社)は,- 2 -精密機械器具部品の製造等を主な目的とする会社であり,平成2年11月から平成9年11月30日までCが,同年12月1日以降はDが,代表取締役を務めていた(乙9の7ないし12)。 ②株式会社E(旧商号・有限会社F。以下Fという)は,自動車部品の製造加工を主な目的とする ら平成9年11月30日までCが,同年12月1日以降はDが,代表取締役を務めていた(乙9の7ないし12)。 ②株式会社E(旧商号・有限会社F。以下Fという)は,自動車部品の製造加工を主な目的とする会社であり,被告は,昭和38年から平成13年10月26日まで,その代表取締役を務めていた者である(乙8の1ないし5)。 ③G株式会社は,自動車部品製造業を,H株式会社は,不動産賃貸管理業を営む会社である(以下それぞれG,Hという。甲4)。 ④Iは,(a)昭和61年4月から昭和62年4月までと平成元年2月から平成2年11月まで,原告の代表取締役を務めていた者であり,そのほか,(b)昭和51年6月から平成9年9月6日まではGの,(c)従前から平成9年9月6日まではHの代表取締役も務めていた(甲4,乙9の3から7,10の4ないし15)。 ⑤Jは,(a)昭和58年5月からGの取締役,平成9年12月17日からその代表取締役を務めている者であり,そのほか,(b)昭和61年4月から昭和62年4月までと平成元年2月から平成2年11月までは,原告の取締役も務めていた(甲4,乙9の3から7,10の8ないし15)。 ⑥Kは,昭和59年Gに入社し,平成3年2月原告に転籍して,経理等を担当していた者である(甲4,11)。 ⑦Lは,Gの経理課長だった者である(甲4)。 (2)原告の取引・資本関係及びFの取引関係①原告は,平成3年ないし平成6年当時,Gからプラグタイトなど自動車部品の製造を下請しており,Gは,同部品をM自動車系列のN株式会社に納入していた(以下原告とGとの上記取引を本件取引といい,上記自動車部品を本件部品という。甲4,11)。 ②原告の株式は,当初その全部を,従業員持株制度ができた後も,約6割を- 3 -Iが保有しており,Hの株式は,全部をIと 上記取引を本件取引といい,上記自動車部品を本件部品という。甲4,11)。 ②原告の株式は,当初その全部を,従業員持株制度ができた後も,約6割を- 3 -Iが保有しており,Hの株式は,全部をIとその妻子が保有していた。 一方,Gの株式は,O株式会社とその関係者が保有していた(甲4,11,証人Kの証言)。 ③また,Fも,Gから自動車部品の製造を下請していた(乙11の14,45)。 (3)原告に関する簿外取引(ただし,下記簿外資金の権利者に争いがある)IとL,Kは,平成4年頃から平成6年頃にかけて,他の関係者には無断で,(a)納入済の本件部品の増額代金名目でGから出捐された資金の一部を,原告で記帳しないとの方法により,合計約14億6000万円の簿外資金を,(b)部品管理費名目で原告から出捐された資金の一部を,Hで記帳しないとの方法により,合計約13億ないし15億円の簿外資金を,それぞれ捻出し,その一部でP銀行発行の無記名割引債券を購入するなどしていた(上記(a)(b)の各取引とその前後の同種取引を,その主体や法的性質とは無関係に,以下それぞれ本件売上除外,本件架空仕入といい,一括して本件簿外取引という。また,上記各簿外資金の全部又は一部を本件簿外資金という。甲4,11,乙15,証人Kの証言)。 (4)Iの死亡等Iは,平成9年9月6日死亡したが,その後上記(1)①⑤のとおり,Cが原告の代表取締役から退任して,Dがこれに就任し,一方Gの代表取締役(専務取締役)には,Jが就任した。 (5)本件債券の購入(ただし,購入代金の原資及び購入の主体に争いがある)本件債券(券面総額2億5085万円)は,J以外の関係者には無断で,Kが原告名義で手続して,平成9年9月25日,Q証券株式会社から代金2億5000万円で購入され,同年10月1日引渡された いがある)本件債券(券面総額2億5085万円)は,J以外の関係者には無断で,Kが原告名義で手続して,平成9年9月25日,Q証券株式会社から代金2億5000万円で購入され,同年10月1日引渡された(以下それぞれ本件購入資金,本件購入という。甲1,2,11,Q証券に対する調査嘱託)。 (6)本件債券の交付(ただし,交付の主体,経過及び法的効力に争いがある)- 4 -本件債券は,平成9年10月1日,d市のファミリーレストラン・Rに,KとJ,被告が会した席上で,他の関係者には無断で,被告に交付された(以下本件交付という)。 (7)別件税務訴訟の経過①原告の平成5年,平成6年,平成9年及び平成10年の各9月期の法人税,法人特別税その他の申告に対し,a税務署長は,本件簿外取引が原告の売上計上漏れ等に当たり,本件購入資金を含む本件簿外資金は原告の所得に当たるとして,平成12年3月28日付で更正処分を行なった(甲4)。 ②これに対し,原告は,平成15年4月,上記処分の取消請求訴訟を提起し(b地方裁判所平成15年(行ウ)第4号。以下別件税務訴訟という),本件購入資金を含む本件簿外資金が自己の所得に当たらない旨を主張して争ったが,平成17年9月16日,敗訴判決を言渡された(甲4,乙14)。 (8)別件民事訴訟の経過①原告は,Jから被告への本件債券の交付を主張して,平成12年4月,これを含む券面総額5億1735万円の無記名割引債券に関し,Jを相手方とする損害賠償ないし不当利得返還の請求訴訟を提起したが(b地方裁判所a支部平成12年(ワ)第120号),平成15年12月25日,Jから被告への本件債券の交付は認められないとして敗訴(その余の債券に関し一部勝訴)判決を言渡され,控訴した後の平成16年6月1日,Jとの間で,なんらの債権債務がないことを 平成15年12月25日,Jから被告への本件債券の交付は認められないとして敗訴(その余の債券に関し一部勝訴)判決を言渡され,控訴した後の平成16年6月1日,Jとの間で,なんらの債権債務がないことを相互に確認する旨の裁判上の和解をした(c高等裁判所平成16年(ネ)第680号。以上を一括して,以下別件民事訴訟(1)という。乙11の1ないし19)。 ②Gは,本件簿外資金は同社の資金であり,原告とS株式会社(旧商号・T株式会社)及びIがこれを横領した旨主張して,平成13年9月,上記各社とIの相続人らを相手方とする,総額7億8524万7474円の損害賠償請求訴訟を提起したが(b地方裁判所a支部平成13年(ワ)第325号。以- 5 -下別件民事訴訟(2)という),上記訴訟当事者及び利害関係人のKは,平成16年6月1日,(a)Gと,原告,S及びKとの間,(b)GとIの相続人らとの間で,それぞれなんらの債権債務がないことを相互に確認する旨の裁判上の和解をした(乙12の1ないし14)。 (9)関係預金口座の存在(ただし,下記以外の口座の権利者に争いがある)関係金融機関には,別紙口座目録記載の各名義の預金口座が存在していたが(以下同目録記載の番号で本件口座(1)などという),そのうち本件口座(4)は,原告を預金者とする原告の公表口座であった(上記目録掲記の書証,株式会社U銀行に対する調査嘱託の結果)。 争点 本件の主な争点は,(ア)原告による本件債券上の権利の取得(以下単に本件債券取得という)の成否(下記(1)①ないし④。請求原因),(イ)本件口座(4)からの出金に基づく原告の本件簿外資金の所有権喪失の成否(同(2)④オ),(ウ)本件交付に基づく本件債券の被告への贈与ないし原告の権利放棄の成否(同(2)⑥),(エ)本件交付に基づく本件債券の即時取 らの出金に基づく原告の本件簿外資金の所有権喪失の成否(同(2)④オ),(ウ)本件交付に基づく本件債券の被告への贈与ないし原告の権利放棄の成否(同(2)⑥),(エ)本件交付に基づく本件債券の即時取得の成否(同(2)⑦。以上抗弁)であり,更に上記(ア)の争点に関し,(a)本件債券取得が認められるのに必要な要件事実の範囲・内容,(b)本件購入資金の形成過程,(c)本件簿外資金の帰属先が,上記(ウ)(エ)の争点に関し,(d)本件交付の主体及び経過,(e)交付者の処分権限の存否(下記(2)⑥⑦。抗弁),(f)被告の悪意,重過失の有無(同(1)⑬。再抗弁)が争いになっている。 (1)原告の主張①Kは,原告のためにする意思をもって,前示1(5)のとおり,本件購入をなし,原告は,本件債券を保有しているところ,被告は,法律上の原因なく,かつそのことを知りながら,前示1(6)のとおり,Kから本件交付を受けて,本件債券の券面相当額を受益し,原告は,これと同額の損失を被った。 ②仮に上記①の事実だけでは,本件債券取得が認められないとしても,本件- 6 -購入資金は,本件簿外資金のうちから,原告を預金者とする公表口座である本件口座(4)に入金され,更に以下のとおり同口座から出金された金員を原資とするものであるところ,金員は,特別の場合を除き,物としての個性を有せず,単なる価値そのものであって,その価値は所在に随伴すると考えるべきであり(最判昭和39年1月24日),本件口座(4)に入金されていた本件購入資金は,原告の一般財産に帰属するから,原告の本件債券取得が認められる(下記アないしクの全部又は一部を,以下本件資金移動という)。 ア平成7年9月29日,本件口座(4)から本件口座(5)に3億1200万円を総合振込の方法で送金し,同日,本件口座(5)の残高 められる(下記アないしクの全部又は一部を,以下本件資金移動という)。 ア平成7年9月29日,本件口座(4)から本件口座(5)に3億1200万円を総合振込の方法で送金し,同日,本件口座(5)の残高で額面3億2600万円の小切手を発行した。 イ平成7年10月27日,本件口座(6)を開設し,同日,上記小切手で3億2600万円を同口座に入金した。 ウ平成8年2月28日,本件口座(6)を解約し,解約金3億2617万6480円を,同日,本件口座(7)に入金した。 エ平成8年2月29日,本件口座(7)を解約し,解約金から2億8747万1471円を,同日,本件口座(8)に入金した。 オ平成8年9月17日,本件口座(8)を解約し,解約金で額面2億8772万3730円の原告の自己宛小切手を発行した。 カ平成8年12月25日,本件口座(9)を開設し,上記小切手で2億8772万3730円を同口座に入金した。 キ平成9年9月5日,本件口座(9)を解約し,解約金から額面2億5000万円の原告の自己宛小切手(以下本件小切手という)を発行した。 ク平成9年9月25日,本件小切手でQ証券に2億5000万円を支払い,これを本件購入資金に充当した。 ③また,上記②アの本件口座(4)からの出金は,Hに対する借入金の返済,すなわち本件架空仕入で生じた買掛債務の支払として処理されているところ,- 7 -本件架空仕入によって捻出された資金は,原告の資産とみられるから,この点からも,原告の本件債券取得が認められるべきである。 ④本件購入資金中に,本件売上除外による本件簿外資金が含まれるとしても,GとNの間では,実際に本件部品の単価改定が行なわれており,Gからその製造元である原告への送金も,これに基づく正当な商行為を原因とするものだったことが窺われるから,本件債券取得が 含まれるとしても,GとNの間では,実際に本件部品の単価改定が行なわれており,Gからその製造元である原告への送金も,これに基づく正当な商行為を原因とするものだったことが窺われるから,本件債券取得が認められる。 ⑤よって,原告は被告に対し,(a)悪意の不当利得による返還請求権に基づき,本件債券の引渡と,本件交付をした平成9年10月1日から同引渡済まで,本件債券の券面総額2億5085万円に対する民法所定の5分相当額である年1254万2500円の割合の法定利息の支払を求めるとともに,(b)上記引渡が履行不能の場合の,これに代わる損害賠償として,2億5085万円及びこれに対する平成9年10月1日以降の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する。 ⑥本件購入及び本件交付等の経過は,以下のとおりである。 アIは,原告の創業者で大株主であり,原告の経営全般を執行する実質経営者であった。また,Jも,取締役でない時期にも取締役会に出席するなど,創業当時から原告の経営に深く関与していた。 Iは,前示1(3)のとおり,本件簿外取引によって,原告のために本件簿外資金を形成したが,その存在をJ,原告の専務取締役の丁に知らせたのみで,Cら当時の原告役員には秘匿していた。 イKは,Iの指示に基づき,本件口座(9)等で本件簿外資金を管理しており,その指示で,上記②キのとおり,平成9年9月5日,本件口座(9)を解約し本件小切手の発行を受けたが,翌6日Iが死んだため,本件簿外資金の存在をCらに知られることを恐れ,Jに相談した結果,両名は,Iの意向を汲んで,原告名義で本件債券を購入し,更に被告に交付して疎開させることを決めた。なお,当時Kは,被告と親密な付合いがなく,Jの意向で被- 8 -告に渡すことにしたものである。 ウそして,Kは,前示1(5)のと 義で本件債券を購入し,更に被告に交付して疎開させることを決めた。なお,当時Kは,被告と親密な付合いがなく,Jの意向で被- 8 -告に渡すことにしたものである。 ウそして,Kは,前示1(5)のとおり本件購入手続をし,平成9年10月1日d市内のRで,Jの意向どおり被告に交付したが,IもKも,公表口座である本件口座(4)の残高は,原告の資産であり,本件口座(5)ないし(9)の残高,本件小切手及び本件債券は,いずれも原告の簿外資産であるという認識を有していたもので,Kは被告に対し,本件債券は原告の簿外資産である旨を説明している。 ⑦本件債券が原告の資産であることは,以下の点からも認められる。 ア前示1(3)のとおり,もともと本件簿外資金には,本件売上除外によるものと,本件架空仕入によるものがあったところ,Iに,これら本件簿外取引の性質の違いに応じて本件簿外資産の権利者を異にする意図があったとは認められないが,本件架空仕入による本件簿外資金は,その成因からしても,IにGのものとする意思があったとは窺えず,現にその指示に基づいて,原告の従業員であるKが管理していたのであるから,本件簿外資金全部が原告に帰属することは明らかである。 イ本件簿外資金は,ピーク時29億円余りにも及んだが,Iの指示で,(a)平成7年9月期と平成8年9月期に,約8億5000万円を公表口座に移管して,原告の公表資産に取り込んだほか,(b)約1億5000万円を原告の工場,会社の改装費に,(c)約2億円をe所在の原告名義の建物の購入費に充てるなどした結果,本件簿外資金から,総額約16億円の無記名割引債券購入代金を除いた約13から14億円のうち,ほとんどを占める約12億円が原告のために使用されており,(d)上記の無記名割引債券も,原告の貸金庫で保管されていたのであるから 約16億円の無記名割引債券購入代金を除いた約13から14億円のうち,ほとんどを占める約12億円が原告のために使用されており,(d)上記の無記名割引債券も,原告の貸金庫で保管されていたのであるから,本件簿外資金をI個人ないしGに帰属するものとみる余地はない。 ウ本件口座(5)ないし(9)は,原告の名義で開設された預金口座であり,原告の自己宛小切手である本件小切手も原告の貸金庫で保管されており,本- 9 -件口座(4)から出た本件購入資金は,いずれも上記口座と貸金庫で,原告の資産として管理されていた。 エ本件購入に当たり,Kは,本件簿外資金を無記名割引債券に変えるとのIの生前の意向を汲んで,他の無記名割引債券と同様,Q証券から原告名義で本件債券を購入している。本件購入資金がIの個人資産なら,Kは,Iの相続人に相談するはずであるが,それをしていない。 オ別件税務訴訟では,本件債券を含む無記名割引債券は原告に帰属すると認定されて,この認定に伴う租税債務は,すべて原告が支払った。本訴の判断が上記と異なることは,原告が原資について課税処分を受けた資産を喪失するという著しい不正義を生ぜしめることになり,妥当ではない。 ⑧後示(2)②イないしエの主張は争う。 ア原告は,かかる可能性をまったく認めるものではないが,万が一,本件口座(4)に入金された本件購入資金に,Iの個人資産など,原告にとって法律上の原因を欠く金員が混入していたとしても,上記②掲記の最高裁判決判示のとおり,同人の遺族ら損失者と原告との間に不当利得の問題が発生するだけであって,本件債券の帰属に影響を及ぼすものではない。 イKとJが,平成10年頃,本件簿外取引にかかる伝票,帳簿類を廃棄しているため,原告は,本件購入資金の原資を前示以上に明確にすることができないが,本件債券が原告 の帰属に影響を及ぼすものではない。 イKとJが,平成10年頃,本件簿外取引にかかる伝票,帳簿類を廃棄しているため,原告は,本件購入資金の原資を前示以上に明確にすることができないが,本件債券が原告に帰属することは,明らかである。 ⑨後示(2)③のうち,本件簿外資金がIとL,Kの手で保管されており,Cらがその存在を知らなかったことは認め,別件税務訴訟における原告の主張内容もおおむね認めるが,原告が本件簿外資金ないし本件債券につき,所有の意思を有していなかったとの点は否認し,法的主張は争う。 別件税務訴訟での原告の対応は,下記事情から可能性としては考えられる,「Gの隠し資産を通過させていたにすぎない」旨を指摘し,裁判所の判断を求めたものである。実質的経営者であるIが本件簿外資金を管理していた以- 10 -上,原告が所有の意思を欠くことになるわけではない。 ア原告は,前示1(7)①のとおり,平成12年3月28日付で税務当局から,本件売上除外につき,売上計上漏れとの更正処分を受けたものの,(a)当時,J,Kらが本件簿外取引の伝票,帳簿類を廃棄していたため,上記処分の当否を判断できる状況にはなく,(b)当局指摘の簿外資産である無記名割引債券も,G代表者のJが管理し,あるいは本件債券として同人から被告に交付されており,原告の管理下にないことが判明した。 イそのため,原告は,当否の判断もつけられないまま,多額の課税処分を受諾することはできず,一方で,原告の債券取得が認められず,J等からの無記名割引債券の返還請求訴訟に敗訴する二重の危険もあったため,かかる事態を避けるため,やむを得ず,別件税務訴訟において上記のような主張をしたにすぎない。 ウその後,別件税務訴訟判決では,本件簿外資金及び本件債券が原告に帰属すると認定されて,当局の更正処分が妥当 る事態を避けるため,やむを得ず,別件税務訴訟において上記のような主張をしたにすぎない。 ウその後,別件税務訴訟判決では,本件簿外資金及び本件債券が原告に帰属すると認定されて,当局の更正処分が妥当と判断されたのであるから,同訴訟における原告の主張内容が本件債券の帰属に影響するものではない。 ⑩後示(2)④のうち,Iが昭和51年6月から平成9年9月までGの代表取締役であり,IとJが原告でナンバーワン,ナンバーツーの存在だったことは認め,その余は,否認ないし争う。本件購入の経過は,上記⑥のとおりであって,本件債券は,原告の資産である。 ⑪後示(2)⑤アは,上記④のとおり否認ないし争い,後示(2)⑤イは,上記⑦イのとおり否認ないし争う。後示(2)⑤ウの主張も争う。 ⑫後示(2)⑥冒頭の事実は否認し,法的主張は争う。 ア後示(2)⑥アないしウの事実は,不知ないし否認する。被告の主張を裏付ける客観的証拠はない。また,被告自身の供述によっても,追徴額は総額1億4700万円から1億5700万円程度にしかならず,2億5085万円にのぼる本件債券の贈与を正当化するだけの事情は存在しない。 - 11 -イ後示(2)⑥エの事実は,上記⑥イ,ウのとおり否認ないし争い,後示(2)⑥オの事実は不知。同カも否認ないし争う。 ウ本件債券の処分権限を有していたのは,原告の実質的経営者のIであって,JやKに権限はなく,Iからの処分の指示も認められない。 ⑬後示(2)⑦は,否認ないし争う。 ア上記⑥ウのとおり,Kは,本件交付時に,原告の簿外資産である旨を説明しており,被告は,Kがかかる簿外資産の処分権限を有していないことを熟知していた。また,上記⑫アのとおり,本件贈与を正当化する事情は存在しないから,被告には,少なくとも重大な過失がある。 イ被告自身,本件債券に は,Kがかかる簿外資産の処分権限を有していないことを熟知していた。また,上記⑫アのとおり,本件贈与を正当化する事情は存在しないから,被告には,少なくとも重大な過失がある。 イ被告自身,本件債券につき,原告の物でもGの物でもない,わけの判らないものとの説明によって本件交付を受けた旨を供述しており,同債券が誰に帰属するのか,処分権限を有する者が誰かにつき具体的認識を欠いていたのであるから,即時取得の要件を欠くというべきである。 ⑭後示(2)⑧は,否認ないし争う。 (2)被告の主張①ア前示(1)①のうち,Kが原告のために本件購入を行なったこと及び原告の本件債券取得は,下記②ないし⑤のとおり否認する。被告が本件交付を受けた事実は認めるが,交付者と法律上の原因の欠缺及び被告の悪意は,下記⑥⑦のとおり否認し,原告の本件債券の保有は争う。 イ前示(1)②のうち,本件口座(4)が原告を預金者とする公表口座であることは認めるが,同口座に入金された金員がすべて原告の一般財産に帰属するとの主張は,下記②のとおり争い,本件資金移動は,不知ないし否認する。 ウ前示(1)③のうち,本件口座(4)からの出金が本件架空仕入で生じた買掛債務の支払として経理処理されている事実は不知。法的主張は争う。 エ前示(1)④のうち,本件購入資金に本件売上除外による資金が含まれるこ- 12 -とは認め,その余は否認ないし争う。 オ前示(1)⑥は,下記④⑥のとおり否認ないし争う。 カ前示(1)⑦冒頭及び同アの主張は争い,同イの事実は,下記⑤イのとおり否認する。前示(1)⑦ウの事実は認めるが,その評価は争い,同エの事実は,下記④カ,⑤ウのとおり否認ないし争う。 前示(1)⑦オのうち,別件税務訴訟の認定は認めるが,法的主張は争う。 同訴訟では,下記⑦エのとおり,実質所得者課税 実は認めるが,その評価は争い,同エの事実は,下記④カ,⑤ウのとおり否認ないし争う。 前示(1)⑦オのうち,別件税務訴訟の認定は認めるが,法的主張は争う。 同訴訟では,下記⑦エのとおり,実質所得者課税の原則に基づき,本件簿外資金が,最終的に原告に帰属すると判断されただけであって,同認定は,それ以前に,本件債券が誰に帰属していたかとは無関係である。 ②原告の本件債券取得が認められるためには,本件購入資金が原告に帰属していたことの具体的主張立証が必要であるが,前示(1)①ないし④の主張は,以下のとおり,これを満たすものではなく,本件債券取得は認められない。 ア平成7年9月29日,本件口座(4)から出た前示(1)②アの3億1200万円は,その後複数の口座を移転し,口座解約から次の口座開設まで時間を置き,金額も変更しており,真実本件購入資金に充てられたか疑問である。 特にIが,死の前日である平成9年9月5日に至って,Kに前示(1)②キの本件口座(9)の解約を指示したというのは極めて疑問であって,同口座からの出金が適法な権限に基づくとも認められない。 イ仮に本件口座(4)から出金された金員が本件購入資金に充てられていたとしても,これは,下記④のとおり,Iが本件簿外資金の行方をくらますマネーロンダリングの手段として,本件口座(4)を利用しただけであって,一方本件口座(9)等は,Iの個人口座であり,原告は権利者でない。 したがって,本件購入資金が本件口座(4)を通り抜けていった事実から,直ちに同資金が原告に帰属することになるものではない。 ウ原告があくまで,本件債券上の権利者だと主張するのであれば,本件購- 13 -入資金を含む本件口座(4)の残高が,どこから捻出されたものかを具体的に主張立証すべきであるが,必要な主張立証はなされていない。 エ原 本件債券上の権利者だと主張するのであれば,本件購- 13 -入資金を含む本件口座(4)の残高が,どこから捻出されたものかを具体的に主張立証すべきであるが,必要な主張立証はなされていない。 エ原告引用の最高裁判決は,第三者保護のための判示であって,本件には適用されない。 ③また,簿外資金が企業に帰属するというためには,執行権限ある取締役など資産の管理に当たる者が,これに対する所有の意思を有していることが必要というべきところ,本件簿外資金は,IとL,Kが秘密裏に保管しており,当時の代表取締役Cら原告の関係者は,その存在を知らなかった。そのうえ,原告は,税務署の調査を受けるまでは,本件債券の存在も知らず,これを知った後も,前示1(7)②のとおり,別件税務訴訟において,下記⑤アその他の事情をあげて,本件簿外資金がGの隠し財産である旨主張していたのであるから,本件債券につき所有の意思を有していなかったことは明らかである。 ④本件購入の経過は,以下のとおりであって,本件債券は,Iが本件簿外取引で着服,隠匿した本件簿外資金によって購入した同人の個人資産であり,そうでないとしてもGの資産であって,原告には本件債券の返還請求権がない。 アIは,前示1(1)④(b)のとおり,昭和51年6月から平成9年9月まで20年余の長きにわたって,Gの代表取締役として君臨し,同社の経営を独裁的に牛耳ってきた者であり,原告では,前示1(1)④(a)のとおり,昭和61年から平成2年までのうちの僅かな期間しか代表取締役に就任していなかったが,G及び原告のグループの中では,Jとともに,それぞれナンバーワン,ナンバーツーの存在であった。 イIは,G代表取締役としての権限を濫用し,前示1(3)のとおり,(a)本件売上除外により,GのNに対する売上を横領したり,(b)本 Jとともに,それぞれナンバーワン,ナンバーツーの存在であった。 イIは,G代表取締役としての権限を濫用し,前示1(3)のとおり,(a)本件売上除外により,GのNに対する売上を横領したり,(b)本件架空仕入により,あたかもGが代金を支払ったかのように装うことによって,同社から着服した金員を,TないしH名義を冒用して開設した本件口座(2)(3)- 14 -に入金して,Kに保管させており,まとまった金額になると,無記名割引債券を購入して,隠匿していた。 ウこのうち本件売上除外では,GのL経理課長から原告の経理担当者のKへの指示に基づき,納入済の本件部品の単価改定による増額代金の名目で,取引実態に基づくことなく,Gから,同社に帰属する本件口座(1)に振り込まれた金員のうち,原告の公表口座である本件口座(4)に入金された分以外から,本件簿外資金が形成されていったものである。 エ仮に,本件購入資金が,原告の公表口座である本件口座(4)や,本件口座(5)ないし(9)に入金されていた事実があるとしても,これは平成6,7年頃,税務調査を受けることになったことや顧問税理士の指導で,平成6年4月4日に本件口座(3)を,平成7年5月18日に本件口座(1)を解約したため,その後も本件簿外資金の行方をくらますマネーロンダリングの手段として,Iが本件口座(4)等を利用しただけであり,また本件口座(5)ないし(9)は,原告名義を冒用して開設したIの個人口座であるから,本件簿外資金が原告に帰属することはない。 オ仮に原告が合法的に取得した資金が本件口座(4)に入金されていたとしても,上記エと同様,Iが個人の裏金を捻出するため,本件口座(4)を利用しただけであって,同口座から出金された金員は,正当な処分権限を有しないIやKが,Cら正当な処分権限を有する者に発覚 ていたとしても,上記エと同様,Iが個人の裏金を捻出するため,本件口座(4)を利用しただけであって,同口座から出金された金員は,正当な処分権限を有しないIやKが,Cら正当な処分権限を有する者に発覚しないように横領,領得したものであり,出金した時点で,客観的にI個人の裏金となっており,その後他の口座を転々としたうえ,本件購入資金に充てられただけであるから,本件債券は,Iの隠匿資産である。 カKも,IないしGのために,原告の名義を冒用して無記名割引債券を購入していたものであって,原告のために本件購入を行なう意思はなく,「(本件債券は)薮に捨ててもいいようなものだ」との意識から,本件交付時,被告には,「捨てても焼いても自由にしてもらっていい」との趣旨- 15 -の発言をしている。 ⑤本件簿外資金が原告の資産でないことは,以下の点からも明らかである。 ア上記④ウのとおり,本件売上除外によるGからの送金は,納入済の本件部品の単価改定を名目とするもので,同社のL経理課長からKへの一方的指示に基づくものであるが,(a)売主である原告からの申し出ではなく,買主のGの指示で単価改定が行なわれたという経緯は極めて不自然であり,(b)両社間で本件部品の単価改定があったことを裏付ける契約書類は存在しないし,(c)同部品の仕入原価や製造管理コストの高騰といった事情も見当たらないのであって,単価改定を装っていたにすぎない。 イIは,本件簿外資金の中から,判明しているだけでも,下記の多額の金員を費消しており,ほかにも相当額を自分のために遣っていた。 aa市lに土地を購入し,代金2億円で自分の妾宅を建築した。 b自分の本宅建築のために,b県i町に土地を購入し,W建設に建築代金3億円を支払った。 c自分の病気療養所建築のために,d市に代金1億円で土地を購入し を購入し,代金2億円で自分の妾宅を建築した。 b自分の本宅建築のために,b県i町に土地を購入し,W建設に建築代金3億円を支払った。 c自分の病気療養所建築のために,d市に代金1億円で土地を購入し,岡谷建設と請負契約を締結した。 dIは,cjのクラブ等で「Iちゃん」の愛称で通っていたほどの遊び人で,同所での遊興等に多額の金員を散財していた。 e現に,本件口座(9)に入金した前示(1)②カの本件簿外資金2億8772万3730円のうち,本件購入資金2億5000万円を除く3772万3730円をわずか5か月余りで自己のために費消しており,Kにも,本件簿外資金で購入した割引債券5000万円を贈与した。 ウ真実Kに,原告のためにする意思があったとすれば,同人が本件購入資金の処理に窮することはあり得ず,Jの指示だけで正当な理由もなく,2億5000万円もの巨額の本件債券を購入して,同人に引き渡したり,被告に贈与するなどということも起こり得ないはずである。 - 16 -⑥仮に原告の本件債券取得が認められるとしても,被告は,以下の経過で,JとKから本件債券の贈与を受けたものであり,そうでないとしても,原告は,本件債券上の権利を放棄したものであるところ(以下それぞれ本件贈与,本件放棄という),JとKには,その処分権限があった。 ア被告の経営するFは,前示1(2)③のとおり,Gから自動車部品の製造を下請していたところ,昭和60年4月頃,突然h税務署の調査を受け,約1億円の法人税の申告漏れを指摘された。 イこれは,IがG代表取締役の権限を濫用し,Fからの架空仕入を起こして,支払代金を着服していたことによるものであったが,被告は,Iから,事態が明らかになれば,GだけでなくOのグループ全体にとって大変なことになり,自分も代表取締役の地位を失うので,助ける 入を起こして,支払代金を着服していたことによるものであったが,被告は,Iから,事態が明らかになれば,GだけでなくOのグループ全体にとって大変なことになり,自分も代表取締役の地位を失うので,助けると思ってFの申告漏れとして処理してくれ,償いは後日必ずする等と懇請され,Gからの受注量の多寡がFの運命を左右する状態になっていたこともあって,やむなくこれに応じた。 その結果,Fが法人税等7700万円余り,また同社の所得の行方が不明で被告個人の所得とみなされたことから,被告個人も所得税等1億5000万円近く,合計約2億円超を追徴され,被告は,その多くを親族等からの借入でまかなった。 ウその後,被告が助けを求めたのに対し,Iは,もうしばらく待ってほしいといいながら,約束を履行しないまま,平成9年9月6日死亡したが,約1週間後被告は,Gの事実上の代表取締役だったJから,Iの生前,Fや被告に大変迷惑をかけたのに,なんの償いもしていないと聞いている等と事情を尋ねられたため,上記脱税事件の経過を説明した。 Iから同様の話を聞いていたこともあって,上記の後,Jは,本件債券を被告に贈与しようと考えた。 エそして,平成9年10月1日,Jからの電話で被告がd市のRに行くと,- 17 -JとKから,贈与したいので受け取ってほしいと,袋に入った本件債券を差し出された。被告は,袋の中身も解らず,再三断ったが,Jから,GはFや被告に大変な損害をかけているので,償いとして差し上げるから,是非受け取ってほしい,これは被告が自由に使おうが,捨てても焼いても自由にしてもらっていいなどと言われたため,G及び原告のグループでIの地位を承継したJ,ないしKが,本件債券を贈与してくれたものと信じて,本件交付を受けたものである。 オその後,被告は,本件債券を換金して,被告やFの いなどと言われたため,G及び原告のグループでIの地位を承継したJ,ないしKが,本件債券を贈与してくれたものと信じて,本件交付を受けたものである。 オその後,被告は,本件債券を換金して,被告やFの借入返済に充て,あるいは代物弁済として交付した(ただし一部を紛失)。 カ仮に本件贈与が認められないとしても,上記エのとおり,JとKは,捨てても焼いても自由にしてもらっていい等と言って,本件交付をなしたものであるから,原告は,本件債券上の権利を放棄した。 ⑦JとKに,本件債券の処分権限があったことは,以下の事実から明らかであり,仮に同人らに処分権限がなかったとしても,被告は,善意,無重過失であるから,商法519条,小切手法21条に基づき,本件交付によって本件債券を即時取得した。 ア本件簿外資金は,Iの生存中は,上記④アのとおりG及び原告のグループのナンバーワンの地位にあった同人が,自己の隠匿資金として管理しており,仮にこれがI個人の資金でなかったとしても,その管理は,上記地位にあったIに全面的に任されていた。 イIの死後は,上記④アのとおり,G及び原告のグループで同人に次ぐナンバーツーの地位にあり,右腕として経営に携わっていたJが,Iの隠匿資産である本件簿外資金を確定的に取得したものであり,仮にこれがI個人の資金でなかったとしても,同人の上記管理権限を承継したから,Jは,本件債券の処分権限又は,その代理権を有していた。 ウまた,K自身も,Iの指示に基づき,直接本件購入手続を担当していた- 18 -者であるから,本件債券の処分権限があった。 エなお,別件税務訴訟判決は,本件簿外資金の最終的帰属先を原告と判断しているが,これは,別件民事訴訟(1)(2)の和解等の結果,本件簿外取引によって獲得された本件債券以外の無記名割引債券の大半を,原告 なお,別件税務訴訟判決は,本件簿外資金の最終的帰属先を原告と判断しているが,これは,別件民事訴訟(1)(2)の和解等の結果,本件簿外取引によって獲得された本件債券以外の無記名割引債券の大半を,原告が確定的に取得していることから,法人税法の実質所得者課税の原則(同法11条)に基づき,原告を権利の帰属先と認定しただけであって,被告は,上記事情によって本件簿外資金が最終的に原告に帰属する以前に,Jから本件贈与を受けていたものである。 オIは,Gや原告,H等になにかあった場合,本件簿外資金を各社のために使おうと考えており,(a)KやJに,その旨発言したり,(b)平成7年9月期と平成8年9月期に,合計約8億5000万円を原告の公表資産とするなどしており(これにより,本件架空仕入で原告から流出した本件簿外資金は,ほとんど原告に還流しており,債券化されて残った本件簿外資金は,ほとんど本件売上除外によってGから流出した資金といえる),これらの事情によれば,Iは,本件簿外資金を,一次的に自己の所有としながらも,二次的には,必要が生じたときは,G,原告,Hにも還流する意思があったと推測できる。 Kは,Iの上記意向を受けて,無記名割引債券や本件小切手を,上記イのとおりJに引き渡したものである。 ⑧原告は,前示1(8)のとおり,別件民事訴訟(1)(2)において,JないしGとの間で,相互に債権債務がないことを確認する裁判上の和解をしたが,被告は,各和解のJないしGの側に含まれるというべきであるから,原告は,同和解によって被告に対する請求権を放棄した。 第3争点に対する判断 前提となる事実(a)前示第2の1の各事実,甲4ないし11,乙9の1ないし13,10の1- 19 -ないし15,11の1・3・5,11の9の1ないし3,11の12・15・17ない 対する判断 前提となる事実(a)前示第2の1の各事実,甲4ないし11,乙9の1ないし13,10の1- 19 -ないし15,11の1・3・5,11の9の1ないし3,11の12・15・17ないし19,12の5・13・14,15ないし20,26,証人Kの証言,(b)いずれも後示採用できない部分を除く乙11の2・4・13・14,12の1・3,21ないし23,25,28,29,45,証人Jの証言,被告本人尋問の結果によれば,以下の事実が認められる。 (1)Gは,M自動車系列のOの関連会社として,遅くとも昭和40年代までに設立された会社である。Gは,自動車部品製造を主たる業務内容とし,その株式は,Oとその関係者(以下一括してOグループという)が保有していた。 Iは,Gに入社後,昭和40年代に取締役,昭和51年6月には,戊とともに代表取締役に就任し,昭和60年5月以降は,同社の唯一人の代表取締役となって,死亡した平成9年9月6日までその地位にあったが,格別のGの株式は,保有していなかった。 (2)一方,Iは,上記のかたわら,Gの代表取締役に就任後の昭和56年,下記のような意図から,Gの資金を利用して,精密機械器具部品の製造等を主な目的とする原告(当時の商号・A有限会社。本店所在地・b県d市g番地)を設立した。 Iは,原告の設立者で,また当初株式全部を,従業員持株制度ができた後も約6割を保有する大株主でもあり,代表取締役に就任していた下記期間以外にも,財務を中心に,営業を除く原告の経営全般に深く関与しており,社長と呼ばれて,役員会にも出席するなど,原告内では,事実上ナンバーワンの影響力を有していた。 その一方で,Iは,原告をOグループの支配の及ばない自分独自の会社にしようとする意図から,自分と原告との関係をOグループの監査団等に秘匿しており 告内では,事実上ナンバーワンの影響力を有していた。 その一方で,Iは,原告をOグループの支配の及ばない自分独自の会社にしようとする意図から,自分と原告との関係をOグループの監査団等に秘匿しており,原告の役員としては,昭和61年4月から昭和62年4月までと平成元年2月から平成2年11月までの短期間,代表取締役を務めただけで,平成2年11月以降は,Cを代表取締役に就け,もっぱら対外的な活動をさせるなど- 20 -して,上記関係をカモフラージュしていた。 そのほか,Iは,従前から不動産賃貸管理業を営むHも経営しており,その代表取締役を務め,自分と妻子だけで同社の株式全部を保有していた。 (3)Jは,昭和48年Gに入社し,昭和58年5月取締役に就任した。 Jは,上記のかたわら,Iとともに原告の設立にかかわり,上記(2)第3段のようなIの意図に沿って,同人と同じ,昭和61年4月から昭和62年4月までと平成元年2月から平成2年11月までの短期間は,原告の取締役も務めていた。 そして,Jは,それ以外の期間も,Iと一緒に役員会に出席するなど,原告内ではIに次ぐ影響力があったが,原告には非常勤で,もっぱら工場の技術指導に従事するだけであり,財務や経理には関与していなかった。 (4)Lは,Gの経理課長であり,Iの指示を受けて,伝票,帳簿類の作成等の経理事務を処理するほか,原告の経理事務についても,みずから,あるいは下記のとおりKに指示して処理していた。 Kは,昭和59年Gに入社後,昭和60年頃から次第に原告に出向して,経理・総務を担当するようになり,平成3年2月に原告に転籍し,管理グループ課長として,IとLの指示に従い,伝票,帳簿類の作成など経理や総務の事務を処理していた。 (5)ところで,Gでは,従前からM自動車系列のNにプラグタイト等の本件部品を に原告に転籍し,管理グループ課長として,IとLの指示に従い,伝票,帳簿類の作成など経理や総務の事務を処理していた。 (5)ところで,Gでは,従前からM自動車系列のNにプラグタイト等の本件部品を継続的に納入していたが,本件取引によりその製造を原告に下請させており,上記各取引では,IなどがNとの交渉を行ない,同人の指示に基づき,L,KがGと原告の経理を処理していた。 本件取引で,Gから原告への本件部品代金の支払は,本件口座(1)(2)(4)の3つの口座を通じて行なわれており,一方NとGとの間では,納入済の本件部品について,過去に溯って単価を値上げ改定することがあった。 なお,Fも,Gから自動車部品の製造を下請していたが,同社と原告との間- 21 -には,格別の取引関係はない。 (6)しかるところ,Iは,上記3社間の取引や,A所名義の本件口座(1)及び,HないしT名義の本件口座(2)(3)その他の預金口座を利用して,自分が自由にできる簿外資金を捻出することを企て,L及びKに指示して,(a)Gに納入済の本件部品の増額代金の名目で同社から出捐された資金の一部を,原告で記帳しないなどの本件売上除外と,(b)部品管理費の名目で原告から出捐された資金の一部を,Hで記帳しないなどの本件架空仕入の方法を使って,少なくとも一時的に正規の記帳がなされていない本件簿外資金を作り出したが,その金額は,平成4年頃から平成6年頃だけで,前者によるものが約14億6000万円,後者によるものが約13億ないし15億円にのぼった。 そして,これら本件簿外資金の捻出は,税務当局の摘発やOグループ等の調査を免れるため,IとL,Kだけによって秘密裏に行なわれており,他の関係者は,捻出自体には直接関与していなかった。 (7)このうち本件売上除外では,納入済の本件部品の増額代金の 発やOグループ等の調査を免れるため,IとL,Kだけによって秘密裏に行なわれており,他の関係者は,捻出自体には直接関与していなかった。 (7)このうち本件売上除外では,納入済の本件部品の増額代金の名目でGから振り込まれた金員のうち,原告の公表口座である本件口座(4)に入金された以外の分から,本件簿外資金が形成されており,(ア)一旦本件口座(2)に入金された金員が,全額本件口座(4)に振り替えられていたのに対し,(イ)本件口座(1)に入金された金員は,一部本件口座(4)に振り替えられた分以外が,本件口座(3)へと入金され,簿外資金化されていった(甲4・7,38頁)。 上記口座のうち,(a)本件口座(4)は,総勘定元帳と税務申告書の付属資料に記載された原告の公表口座で,原告の通常取引に基づく金員も入金されていたが,(b)本件口座(1)(2)は,それぞれ原告の旧商号類似の名義やHに類似の名義を使用した口座で,原告の総勘定元帳には存在が記されていたものの,税務申告書の付属資料には記載がなく,(c)Hの名義を借用した本件口座(3)は,総勘定元帳にも税務申告書の付属資料にも記載されていなかった(甲4・6,7頁)。 - 22 -また,本件口座(1)は,Gから原告への支払代金額が大きすぎて注目を集めないよう,本件口座(2)に入る代金額を小さくみせる目的で使われていた。 (8)これら入出金の経理処理については,Iの指示で,LからKに対し,過去一定期間に溯って,Iが指定した金額の簿外資金を本件部品の総数で除した金額を部品単価に上乗せする内容の請求書を,G宛に発行するよう連絡があり,Kは,これに従った請求書を原告から発行していた。 その一方で,(a)原告とGとの間では,上記請求書以外に,本件部品の単価改定に関する契約書その他の書面は作成されておらず,(b) するよう連絡があり,Kは,これに従った請求書を原告から発行していた。 その一方で,(a)原告とGとの間では,上記請求書以外に,本件部品の単価改定に関する契約書その他の書面は作成されておらず,(b)本件部品の仕入原価や製造管理コストの高騰といった,通常単価改定の基礎となるべき事情は,原告側には存在していなかった。 (9)また,Gから原告に対する上記(7)の送金の中には,NとGの単価改定交渉に基づき,Gに入金された以上の金員が,原告に振り込まれた場合もあり,たとえば平成5年2月26日には,平成4年6月分から12月分の単価改定による増額代金として,5億2646万8091円がNからGの当座預金口座に振り込まれたが,Iは,Lに指示して,(a)上記金員に,Nから入金された別の販売代金を付加した合計5億8914万1557円を,原告宛に振り込ませるとともに,(b)この送金を隠蔽するため,その他の本件売上除外についてと同様,上記金員の入金自体をGの帳簿に記帳させなかった(甲4・39頁,乙28・4頁)。 (10)一方,本件架空仕入では,原告からHに本件部品の部品管理という架空の業務を発注したことにして,その費用名目で買掛金を計上し,そのうちHの帳簿に記載しなかった分を,原告がHに対し負担する借入金に振り替えた後,返済金の名目で原告から金員を出捐して,本件簿外資金を形成していた。 そのほか,本件簿外資金との関係は明確でないが,本件口座(1)とほぼ同一名義でU銀行f支店に開設されていた本件口座(10)には,遅くとも平成5年以降,平成7年にかけて,Gから断続的に相当額の送金がなされており,上記支店に- 23 -は,ほかに甲名義の本件口座(11)もあった。 (11)以上の本件簿外取引によって形成された本件簿外資金は,一部が本件口座(4)に入金され,その限り 額の送金がなされており,上記支店に- 23 -は,ほかに甲名義の本件口座(11)もあった。 (11)以上の本件簿外取引によって形成された本件簿外資金は,一部が本件口座(4)に入金され,その限りで原告の公表資産に組み入れられており,平成7年9月期と平成8年9月期で合計約8億5000万円にのぼった。一方,本件簿外資金の一部には,H名義の定期預金に組み直されたり(総額4億5000万円。 甲4・40頁),簿外資金としてGへ送金されたり(総額3億6800万円。 ただし,Gでは短期借入金として記帳済。甲4・51頁),あるいは,これらから原告名義の預金口座等に戻されたりしたものもあった。 そして,本件簿外資金は,税務当局の摘発やOグループの監査を逃れる目的から,上記のような相互に複雑に錯綜した,極めて多数回の資金移動を繰り返しながら,順次下記(12)(13)のような最終的な使途に充てられていった。 (12)本件簿外資金の最終的な使途は,Iの指示で,無記名割引債券の購入に充てられたものが最も多額であり,平成9月1月7日から同年9月25日までに,本件債券を含む券面総額15億8702万円の無記名割引債券が購入されたが(乙11の12),このうち本件債券と,Vに交付された券面額1億円分の無記名割引債券以外は,U銀行f支店の原告名義の貸金庫(以下本件貸金庫という)に保管されて,Kがその鍵を管理していた。 これら無記名割引債券は,もっぱら上記(11)第2段のような目的から,本件簿外資金を隠匿し易くする手段として購入したもので,Iは,税法上の時効等が完成したあかつきに,これら債券を自由に換金等する心積もりだった。 (13)上記以外の本件簿外資金の使途には,(a)a市lにH名義で土地を購入し,原告の社宅という名目で,Iの妾宅を代金約2億円で建築したもの,(b)Iの本 ら債券を自由に換金等する心積もりだった。 (13)上記以外の本件簿外資金の使途には,(a)a市lにH名義で土地を購入し,原告の社宅という名目で,Iの妾宅を代金約2億円で建築したもの,(b)Iの本宅建築のため,名義は不明であるがb県i町に土地を購入し,原告の迎賓館の建築という名目で,W建設と請負契約を締結したが,Iの死亡で解約し,違約金約2300万円が原告の負担となったもの,(c)Iの病気療養所建築のため,代金約1億円でd市にH名義で土地を購入したもの,(d)代金約1億50- 24 -00万円で原告の工場等を改装したものなどがあった。 また,Iは,かなりの頻度でcに出張して,jのクラブ等で遊興や接待を繰り返しており,これにも本件簿外資金から多額の金員を出捐していた。 以上のような浪費等により,Iは,たとえば平成8年12月25日,本件口座(9)に入金された前示第2の2(1)②カの本件簿外資金2億8772万3730円のうちから,約5か月間で3772万3730円を次々と引き出しており,その大半を自己のために費消したと推測される。 そのほか,Iは,Kにも,本件簿外資金で購入した割引債券5000万円分を贈与していた(Kは,後日これを原告に返還した)。 (14)以上の本件簿外資金の管理や資金移動は,Iの指示に基づき,Kが担当していたが,両名とも,Gや原告などの間に,明確な法的経済的区別をしておらず,いずれの会社・関係者に属する資産か,極めて薄弱な認識のまま本件簿外資金の管理を行なっていた(乙16・4,18頁。乙26・2頁)。 また,下記(16)のとおり,本件簿外取引に関する経理資料が破棄されたため,現在では,上記(12)(13)やその他の使途に充てられた金員が,本件簿外取引のどの部分によって形成されたものか,あるいは同取引による以外の金員が混入して 簿外取引に関する経理資料が破棄されたため,現在では,上記(12)(13)やその他の使途に充てられた金員が,本件簿外取引のどの部分によって形成されたものか,あるいは同取引による以外の金員が混入しているか否かなどを,明確にすることができなくなっている。 (15)しかるところ,Iは,上記のような資金移動の一環として,平成7年9月29日,Kに原告の公表口座である本件口座(4)から3億1200万円を出金させ,以後平成9年9月5日までに,前示第2の2(1)②アないしキのとおり,原告名義の本件口座(5)ないし(9)の間を転々とさせた結果,同日,額面2億5000万円の本件小切手が発行されて,Kがこれも管理していた。 ところで,Iには糖尿病と不整脈の持病があり,平成6年5月頃から9月頃まで入院した病歴もあったが,本件小切手が発行された翌日の平成9年9月6日,Iは,突然死亡してしまった。一方,当時原告は,新しい代表取締役として己の関連会社からDを招聘していた。 - 25 -そのため,このままでは,本件貸金庫の無記名割引債券等がD新社長らに発覚したり,税務当局に公になったりして,自分が責任を追及され,あるいは逮捕等される事態になるのではないかと強く恐れたKは,平成9年9月下旬頃,原告内で上記(3)の立場にあったJに対し,上記無記名割引債券の処理と,更に本件小切手の処理について,順次相談を持ちかけた。 (16)これに対し,Jは,まず無記名割引債券について,D新社長には同債券や本件簿外資金の存在を秘匿し,知らぬ存ぜぬで押し通すようKに指示を与える一方,F社長としてかねて面識のあった被告に,隠匿に最適な貸金庫を紹介してもらい,X銀行h支店にJ名義の貸金庫を開設したうえ,当時本件貸金庫内にあった無記名割引債券全部,券面総額12億3617万円分を,Kに命じて上 かねて面識のあった被告に,隠匿に最適な貸金庫を紹介してもらい,X銀行h支店にJ名義の貸金庫を開設したうえ,当時本件貸金庫内にあった無記名割引債券全部,券面総額12億3617万円分を,Kに命じて上記貸金庫に移させた。 その後,Jは,平成9年12月17日,Gの代表取締役(専務取締役)に就任したが,平成10年夏頃Kに命じて,本件簿外取引に関する伝票,帳簿類を焼却させ,また平成11年2月新たに原告の取締役に就任した庚から,同年3月23日,簿外資産に関する問合せを受けたのに対しても,「簿外資産があったとしても,原告には関係ない」旨を回答した。 (17)一方,本件小切手に関するKの上記(15)の相談に関しては,生前Iが債券化の意向を持っていたのを聞いたJは,平成9年9月下旬頃,Kに対し,上記意向に沿って,本件小切手の資金も,無記名割引債券の購入に充てたうえ,これを被告に交付して,D新社長らの追及を逃れるよう勧めた。 そこで,Kは,J以外の関係者には無断で原告名義で手続し,平成9年9月25日,本件小切手で代金2億5000万円をQ証券に支払って,本件債券を購入し,同年10月1日,同社から引渡を受けた。 (18)そのうえで,Jは,平成9年10月1日,被告を電話でd市内のファミリーレストラン・Rに呼び出し,Kと一緒に被告に会った。 その席上,Kは,本件債券の入った封筒を被告に差し出し,Jは,被告は口- 26 -が堅いから安心だなどと言って,これを受け取るよう勧めたが,二人とも封筒の具体的な中身やその由来等については説明しなかった。 その際Jは,被告の資金繰りが厳しいので,当面これを遣ってもらうなどとも説明しており,Kは,本件債券が被告から返還されないのではないかと危惧を抱いたが,上記のとおり,逮捕等される事態を強く恐れていたため,上記説明に異を唱える しいので,当面これを遣ってもらうなどとも説明しており,Kは,本件債券が被告から返還されないのではないかと危惧を抱いたが,上記のとおり,逮捕等される事態を強く恐れていたため,上記説明に異を唱えることはなく,被告は,封筒入りの本件債券を持ち帰った。 (19)一方,原告では,平成11年4月,庚が新しい代表取締役に就任したが,平成5年,平成6年,平成9年及び平成10年の各9月期の法人税,法人特別税その他の申告に関し,a税務署から,本件簿外取引が原告の売上計上漏れに当たり,前示無記名割引債券が簿外資産に当たる等の指摘を受けた。 そこで,原告では社内調査を行ない,簿外資産についてJに問合せた結果,庚らにも本件簿外資金の存在が判明したが,上記(16)のとおり,関係する経理資料は廃棄されており,Jには,事実上回答を拒否されてしまった。 そのため,対応に苦慮した原告から,事態が税務当局に発覚した旨連絡した結果,当局の追及を恐れたJは,平成11年5月19日,上記(16)の無記名割引債券中,券面額10億6967万円分を原告に返還した。しかし,(a)Jは,それ以外の1億6650万円分を返還せず,(b)被告に交付された本件債券や,(c)Vに交付された券面額1億円分の無記名割引債券も原告の手元に戻らなかった。また,問題の税務申告に対し,原告は,平成12年3月28日付で多額の更正処分を受けてしまった。 (20)そこで,(a)原告は,Jから被告への本件債券交付を主張して,平成12年4月,これを含む券面総額5億1735万円の無記名割引債券に関し,JとVを相手方とする損害賠償ないし不当利得返還請求訴訟(別件民事訴訟(1))を提起したが(Vへの請求は後に弁論分離),Jは,上記無記名割引債券が原告の資産である点を否認し,(b)かえって,Gは,同社所有の本件簿外資金を原告 ないし不当利得返還請求訴訟(別件民事訴訟(1))を提起したが(Vへの請求は後に弁論分離),Jは,上記無記名割引債券が原告の資産である点を否認し,(b)かえって,Gは,同社所有の本件簿外資金を原告とS株式会社及びIが横領した旨主張して,平成13年9月,上記各社とI- 27 -の相続人らを相手方とする総額7億8524万7474円の損害賠償請求訴訟(別件民事訴訟(2))を提起した。 その後,別件民事訴訟(1)では,平成15年12月25日,Jに対する原告の一部勝訴の判決が出たが,結局平成16年6月1日,(ア)同訴訟の控訴審で,原告とJとの間で,なんらの債権債務がないことを相互に確認する旨の裁判上の和解が,(イ)別件民事訴訟(2)の第一審で,(a)Gと,原告,S及びKとの間,(b)GとIの相続人らとの間で,それぞれなんらの債権債務がないことを相互に確認する旨の裁判上の和解が成立した。 以上の経過で,本件債券を除く上記(12)の無記名割引債券は,そのうち約11億円分を原告が納税資金に充て,1億6650万円分はJが保持するという結果になった(乙16・23頁)。 (21)一方,原告は,上記(19)の更正処分の取消を求めて,平成15年4月,別件税務訴訟を提起し,本件購入資金を含む本件簿外資金が自己の所得に当たらない旨を主張して争ったが,平成17年9月16日,敗訴判決を言渡され確定した。 原告の本件債券取得の成否等(前示第2の2(1)①②,同(2)④オの主張について)(1)まず,関係者の法的地位について検討するに,前示1(2)認定の事実によれば,Iは,原告設立後のほとんどの期間,原告の取締役,代表取締役に就任していなかったが,単に原告の大株主というに留まらず,設立以来一貫して,事実上の経営者として振る舞っており,Cその他の原告の代表取締役や役員 原告設立後のほとんどの期間,原告の取締役,代表取締役に就任していなかったが,単に原告の大株主というに留まらず,設立以来一貫して,事実上の経営者として振る舞っており,Cその他の原告の代表取締役や役員が,Iのかかる行動を制約しようとした形跡も窺えないから,Iと原告との間には,黙示の委任契約が結ばれていたと認めるのが相当である。したがって,Iは,Gの代表取締役であると同時に,原告とも委任関係に立ち,これに由来する権限に基づき,原告の資産を管理していたと認めることができる。 これに対し,Jは,前示1(3)のとおり,原告内でIに次ぐ影響力があり,原- 28 -告との間に上記同様の委任関係にあった可能性も認められるが,通常は工場で非常勤の技術指導をするだけで,原告の財務や経理には直接関与していなかったのであるから,上記委任関係に基づく権限が存在していたとしても,Iに比べ大きく制約されたものであって,特に財務面に関しては,ほとんど権限を有していなかったと認めるのが相当である。 また,Kは,原告に出向,転籍後,前示1(4)(6)(8)(14)認定のとおり,通常の経理事務等を処理するほか,本件簿外資金の経理処理を担当し,Iからその資金移動や無記名割引債券の管理も任されていたと認められるが,その権限は,あくまで事務的かつ補助的なものに留まっていたと認めるのが相当である。 (2)次に,財物の法的帰属の概念について検討する。 ①一般に財物の帰属については,法領域毎に別個の概念が成立し,たとえば法人税法,所得税法では,実質的所得概念が妥当する結果(法人税11条,所得税12条),財物取得の原因となるべき法律行為が私法上無効と評価される場合であっても,財物(所得)の帰属を肯定することを妨げず,ただ当該無効原因に基づき,取得者が経済的利益を喪失した場合に限り,課税 税12条),財物取得の原因となるべき法律行為が私法上無効と評価される場合であっても,財物(所得)の帰属を肯定することを妨げず,ただ当該無効原因に基づき,取得者が経済的利益を喪失した場合に限り,課税処分が許されないに留まる(最判平成2年5月11日・訟務月報37巻6号1080頁)。反対に,かかる実質的所得につき,事実上管理の実態を喪失した場合は,取得者への所得帰属が否定される余地もあるというべきである。 ②これに対し,私法上の所有権概念は,あくまで,取得原因となる法律関係の有効無効によって決定されるべきものであって,原因たる法律関係を欠く場合には,特段の事情がない限り,財物の所有権取得は認められず,たとえ領得の意思をもって,財物の保管を開始し,あるいはすでに保管する財物の態様を変更したとしても,取得原因となるべき有効な法律関係が存在しない限り,それだけでは,財物の帰属主体に変動を生ずるものではない。 ③そして,上記の点は,金員についても妥当するのであって,特段の推定規定等を援用できる場合を別とすれば,金員の所有権を主張する者は,自己が- 29 -私法上有効な法律上の原因に基づき,その所有権を取得したことを主張立証しなければならず,単に自己の所有であるとの認識に基づき金員を占有していたなどの事情によっては,これに対する所有権取得を基礎づけることができないというのが相当である。 (3)以上に基づき,原告の本件債券取得についてみるに,原告は,まず前示第2の2(1)①②のとおり,Kが,(ア)原告名義で原告のためにする意思を有して本件購入を行なったこと,ないしこれに加えて,(イ)自己を権利者とする本件口座(4)に入金されていた金員を原資として,本件購入資金が形成されたものであることを主張し,これらの事実によって,自己の本件債券取得が基礎づけら と,ないしこれに加えて,(イ)自己を権利者とする本件口座(4)に入金されていた金員を原資として,本件購入資金が形成されたものであることを主張し,これらの事実によって,自己の本件債券取得が基礎づけられる旨を主張している。 ①しかしながら,まず上記(ア)の点について検討するに,無記名割引債券は,他人名義を借用して購入することを妨げないものであって,原告名義による購入手続は,それだけでは本件債券取得を基礎づける事実とはいえない。 また,債券の購入資金が,購入行為者以外の第三者に帰属するものである場合には,真実の出捐者が,購入にかかる債券を購入行為者に帰属せしめる趣旨で資金を供したなどの特段の事情の認められない限り,単に自己のためにする意思を有していたというだけで,購入行為者の債券取得が認められるものではないと解するのが相当である。 したがって,原告の本件債券取得が認められるには,本件購入資金が自己に帰属することの主張立証を要するというべきであって,原告の前示第2の2(1)①の主張は,直ちに採用することができない。 ②そこで,上記(イ)の点についてみるに,一般に,(a)法律上の原因によらないで普通預金口座に振り込まれた金員について,受取人と金融機関との間には,これを目的とする金銭消費寄託契約が成立するが(最判平成8年4月26日・判例解説登載),(b)当該金員が法律上の原因なくして自己の支配下にあることを知る受取人は,これを自由に処分する権限を有するものでは- 30 -なく(最判平成15年3月12日・刑集57巻3号322頁),正当な権利者への返還のため,当該金員を預金口座から引き出したり,送金手続を取るなど以外に,その保管状況を変更することも許されないと解されるから,かかる処分の自由のない金員について,預金口座を有する受取人に所有権がある ため,当該金員を預金口座から引き出したり,送金手続を取るなど以外に,その保管状況を変更することも許されないと解されるから,かかる処分の自由のない金員について,預金口座を有する受取人に所有権があるというのは,法的にはまったく無意味というほかはない。 また,(c)第三者の出捐により普通預金口座に入金された金員を目的とする預金債権の帰属につき,判例(最判平成15年6月12日・民集57巻6号1頁)は,当該口座開設の事実から,直ちに預金債権が口座開設者に帰属することを肯定しているものではなく,債務整理事務の費用に充てるため出捐者から交付を受けたなど,当該金員の口座開設者への帰属を正当化するだけの契約関係その他の事情を要件としていることが窺えるのであって,このような事情を欠く場合にまで,入金の事実のみによって,口座開設者に金員の所有権を取得させる趣旨に出たものとは解せられない。 結局,法律上の原因によらないで金員が普通預金口座に振り込まれた場合,あるいは,金員を横領等した者が,普通預金口座を開設し,自己の金員として入金した場合等において,(a)金融機関との関係では,多数多額の資金移動の円滑な処理を目的とする普通預金口座の性質上,口座の開設者のみが,消費寄託契約上の地位を取得し,預金者として金融機関に対し権利行使をなし得ることになるが,(b)一方,かかる預金者と出捐者との間における金員の帰属の問題は,上記(a)とは別個に,両者間の金員移動を基礎づける法律関係の存否・内容によって決せられるべきものであって,預金者への有効な金員移動を認めるだけの法律関係が存在しない場合にまで,預金口座への入金の事実だけから,預金者の金員取得が認められるものではないと解するのが相当である(Y・Z「預金の帰属をめぐる諸問題」・金融法務事情1746号24頁及び,特に同注9 しない場合にまで,預金口座への入金の事実だけから,預金者の金員取得が認められるものではないと解するのが相当である(Y・Z「預金の帰属をめぐる諸問題」・金融法務事情1746号24頁及び,特に同注96,97参照)。 したがって,原告の前示第2の2(1)②の主張も,直ちに採用することがで- 31 -きない。 ③上記②の認定に対し,原告は,最判昭和39年1月24日・判例時報365号26頁をあげて,本件購入資金が自己に帰属する旨を主張しているが,(a)同判決は,金員の騙取者から,執行吏がその交付を受けた場合において,善意で仮差押をした債権者を保護すべき旨を判示した事案であり,(b)同判決が引用する最判昭和29年11月5日・刑集8巻11号1675頁は,産業組合法に違反して,保証責任貯蓄信用組合に預け入れられ,組合に返還義務のある金員に関する背任罪の成立について判示した事案であって,いずれも本件に直接適用されるものではない(そして,実際には,第三者保護の観点からは,必ずしもすべての場合に金員の所有権が占有に随伴するという必要はないのであって,小切手法21条を類推適用して,善意,無重過失の第三者を保護すれば足りると考えられる)。 これに対し,原告主張のように解するときは,窃盗等により他人の金員所有権を侵害した者は,そのまま金員を所持し,あるいはこれを預金することにより,被害者からの返還請求等に対し,所有権をもって対抗できることになるが,窃取等は金員の移動を基礎づける有効な法律関係には当たらないし,上記の結論は常識はずれであって,原告の主張は,容易に採用できない。 ④なお,普通預金口座に入金した時点で,混和等により金員の特定性が失われ,出捐者ないし元権利者の所有権が消滅するか否かについても検討するに,不当利得の成立に関し,判例(最判昭和49年9月 きない。 ④なお,普通預金口座に入金した時点で,混和等により金員の特定性が失われ,出捐者ないし元権利者の所有権が消滅するか否かについても検討するに,不当利得の成立に関し,判例(最判昭和49年9月26日・判例解説登載)は,金員が有効な法律関係によらず預金者の支配下にあることにつき悪意の第三者が,当該金員から債務の弁済を受けたときは,当該金員が預金口座内で預金者の他の資金と混合して保管されていたときでも,社会観念上金員の同一性が認められるとして,不当利得の成立を肯定しており,本件においても,金員の同一性について同様に考えることができる。 これに対し,普通預金口座内で金員の同一性が失われると考える場合には,- 32 -たまたま原因関係の欠如を知った受取人は,口座の残高が,法律上の原因によらずに振り込まれた金員額を下回らないよう配慮していた場合でも,前示②(b)の判例の趣旨に従い,それ以外の金員の引出し行為等につき,詐欺の罪責を追及される結果になると考えられるが,このような結論は妥当ではなく,預金口座内で金員の同一性が失われると解することはできない。 ⑤以上によれば,原告は,本件購入資金が自己の占有下にあったと主張するだけでは,同資金についての所有権を基礎づけることができず,原告の主張は,そのままでは,本件債券取得を認めるに足りる主張とはいえない。 一方,金員についても,民法188条の適用があり,占有者には占有に基づく権利の推定が及ぶと解されるところ,原告の主張は,この趣旨を含むと認められるから,本件購入資金について,次項以下でこの点を検討する。 (4)まず,本件購入資金に関する原告の占有の有無について検討する。 ①前示1(15)認定の事実によれば,本件購入資金は,従前本件口座(4)に入金されており,平成7年9月29日,同口座から出金され (4)まず,本件購入資金に関する原告の占有の有無について検討する。 ①前示1(15)認定の事実によれば,本件購入資金は,従前本件口座(4)に入金されており,平成7年9月29日,同口座から出金された3億1200万円を原資として形成されたものであると認められるが,本件口座(4)は,前示1(7)(a)認定のとおり,原告を預金者とする原告の公表口座であり,特段の事情がない限り,同口座に入金された預金債権の目的たる金員は,金融機関を通じ,原告の間接占有の下にあったと認めるのが相当である。 そして,本件口座(4)から出金した上記金員が移動した先の本件口座(5)ないし(9)は,前示1(15)認定のとおり,いずれも原告名義の普通預金口座であり,これら資金移動は,当時原告の管理グループ課長だったKが担当し,本件小切手も同人が保管していたのであるから,以上の事実によれば,本件購入資金及びその原資となった金員は,少なくとも本件口座(4)に入金されて以降原告の占有下にあったと認めるのが相当であって,反証のない限り,本件購入資金の所有権は,原告にあると推定することができる。 ②これに対して,被告は,前示第2の2(2)③④のとおり,(a)本件口座(4)- 33 -は,Iがマネーロンダリングの手段として利用しただけであり,本件口座(5)ないし(9)は,原告の名義を冒用したI個人の口座にすぎない,(b)原告の代表取締役であるCらの権限ある役員には,本件簿外資金に対する認識がなく,所有の意思もなかった等と主張して,本件購入資金に関する原告の占有を争っており,乙11の2・4・13・14,12の1・3,証人Jの証言の中には,一部上記主張に沿うかのような部分がある。 しかしながら,本件口座(4)は,前示1(7)(a)のとおり原告を預金者とする原告の公表口座であり,これに ・13・14,12の1・3,証人Jの証言の中には,一部上記主張に沿うかのような部分がある。 しかしながら,本件口座(4)は,前示1(7)(a)のとおり原告を預金者とする原告の公表口座であり,これに預金された金員について原告が占有を取得しなかったとはいえず,前示特段の事情を認めるだけの証拠はない。また,前示(1)認定の事実によれば,Iは,原告との委任関係上の権限に基づき,本件購入資金を管理していたと認めるのが相当であって,原告に同資金に対する認識がなかったということはできず,直ちに被告に有利な上記証拠を採用して,上記①の認定を覆すことはできない。 (5)そこで,上記(4)の権利推定を破る事情の存否について検討する。 ①この点について,被告は,前示第2の2(2)④⑤のとおり,本件購入資金の原資となった本件簿外資金は,Iが本件簿外取引で着服,隠匿した同人の個人資産であり,そうでないとしてもGの資産であって,原告に帰属するものではないとの旨を主張しており,乙11の2・4・13・14,12の1・3,21ないし23,25,28,29,45,証人Jの証言,被告本人の供述中には,これに沿う部分がある。 そして,本件簿外取引の経過及び本件簿外資金の使途は,前示1(6) 認定のとおりであって,Iは,自分が自由にできる資金を作るために本件簿外取引を開始したものであり,形成された本件簿外資金も,その相当部分が実質的にIの個人的使途に費消されている事実が認められる。 また,本件簿外資金のうち,本件売上除外によって形成された分に関しては,前示1(8)(9)認定のとおり,(a)本件部品の単価改定に関する契約書が- 34 -なく,同部品の仕入原価や製造管理コストの高騰等の事情も存在しなかったこと,(b)NとGの単価改定合意に基づきGに入金された以上の金員が,原告 (a)本件部品の単価改定に関する契約書が- 34 -なく,同部品の仕入原価や製造管理コストの高騰等の事情も存在しなかったこと,(b)NとGの単価改定合意に基づきGに入金された以上の金員が,原告に振り込まれた場合もあることなど,通常の取引では考えにくい特殊な事情が存在するのが認められる。 更に,前示1(21)のとおり,別件税務訴訟において,原告自身,本件簿外資金が自己に帰属しないものである旨を主張していた経過も認められる。 ②しかしながら,前示(2)②③に判示のとおり,私法上金員の所有権取得には,有効な取得原因の存在が不可欠であって,(a)Iが本件簿外取引によって本件簿外資金を着服し,あるいは隠匿する主観的意思を有していたとしても,そのことが,直ちにIの本件簿外資金取得を基礎づける法的原因となるものではないし,(b)本件簿外資金について,前示1(11)のような輻輳した資金の移動が繰り返されていても,それが別途有効な取得原因に当たらない限り,この点は同様といわなければならない。 したがって,本件口座(4)からの出金によって本件購入資金がIの所有に帰した旨の前示第2の2(2)④オの主張も採用できない。 ③また,本件売上除外について検討しても,前示1(15)ないし(20)認定のとおり,(a)Jは,Gの取締役であり,平成9年12月17日に代表取締役に就任しているにもかかわらず,平成9年9月下旬頃,Kから相談を受けた多額の無記名割引債券について,Gの関係者として返還を請求せず,(b)庚の請求に対し,平成11年5月19日,自分名義の貸金庫で保管していた無記名割引債券の大半を原告に返還しており,(c)別件民事訴訟(2)では,Gと原告の間に,相互に債権債務がないことを確認する趣旨の和解が成立して,Gが上記無記名割引債券の返還を求めない結果に終わって 記名割引債券の大半を原告に返還しており,(c)別件民事訴訟(2)では,Gと原告の間に,相互に債権債務がないことを確認する趣旨の和解が成立して,Gが上記無記名割引債券の返還を求めない結果に終わっているが,これらの事実を総合すると,本件売上除外については,Iが,Gの代表取締役であるとともに,原告とも黙示の委任関係にあるという地位を利用して,一種の双方代理を行ない,Gと原告との間でも,GとNが合意したと同様の本件部品の- 35 -単価改定を行ない,本件売上除外により形成された本件簿外資金を原告に帰属せしめる旨の黙示の合意を行なっており,これが,上記和解によって最終的にGに追認されて,私法上有効になったと認める余地があるというのが相当である。 更に,別件税務訴訟における原告の前示1(21)の主張は,前示1(20)認定のとおり,別件民事訴訟(1)(2)の帰趨が決せず,Gからの損害賠償請求等に敗訴する危険性が解消されない状況のもとで,原告がやむを得ずした苦汁の選択の結果だったことが窺われる。 ④そして,本件架空仕入に関しては,前示(4)の権利推定に対し,反証となるべき格別の証拠はない。 ⑤したがって,上記②ないし④の事情を考慮すれば,被告に有利な上記①の事情をもって,前示(4)の権利推定を覆すに足りる反証と認めることはできず,本件購入資金は,原告の所有と推定すべきであるから,これを対価として,原告名義で購入された本件債券は,原告が取得したと認めるのが相当であって,この認定を左右する証拠はない。 本件贈与ないし本件放棄の成否(前示第2の2(2)⑥⑦の主張について)(1)この点について,被告は,本件交付に基づく本件贈与ないし本件放棄,及びJないしKの本件債券の処分権限を主張しており,乙45,被告本人の供述中には,(a)GのFからの架空仕 ⑦の主張について)(1)この点について,被告は,本件交付に基づく本件贈与ないし本件放棄,及びJないしKの本件債券の処分権限を主張しており,乙45,被告本人の供述中には,(a)GのFからの架空仕入を起こして,Iが支払代金を着服していたことが原因となって,被告の経営するFは,昭和60年頃税務調査を受け,約1億円の法人税の申告漏れを指摘された,(b)Iの懇請で,被告は,これをFの申告漏れとして処理することを承諾したが,同社は,法人税等7700万円余り,被告個人は,所得税等1億5000万円近くを追徴された,(c)その後Iは,約束した償いを履行せず,被告もGの下請という立場から強い督促ができないまま,Iは平成9年9月6日死亡した,(d)その約1週間後にJから尋ねられたため,それまで誰にも話さなかった上記(a)(b)の経過を話したところ,- 36 -(e)同年10月1日,Jからd市のRに呼び出され,Kから本件債券を差し出されたため,Iを承継して,Gの代表取締役になるJが,上記脱税事件の償いとして贈与してくれるものと信じて,本件債券を受領したなどと,上記主張に沿う部分がある。 そして,乙1,2の1ないし4,3の1ないし3,4の1ないし3,5,11の4・14,証人Jの証言の中にも,一見これに沿うかのような部分が存在する。 (2)しかしながら,まず被告が供述等する上記(1)(a)ないし(e)の経過について検討するに,昭和60年頃,被告個人が所得税等で約1億5000万円の追徴を受けた点については,裏付けとなる客観的証拠がないが,これは,Fの法人税の納付につき,乙1,2の1ないし4,3の1ないし3,4の1ないし3,5の客観的書証が欠けることなく存在している点と対比して,不自然であって,被告の供述等の信用性に疑問を抱かせる事情にあたる。 また,乙11 つき,乙1,2の1ないし4,3の1ないし3,4の1ないし3,5の客観的書証が欠けることなく存在している点と対比して,不自然であって,被告の供述等の信用性に疑問を抱かせる事情にあたる。 また,乙11の4・14によれば,別件民事訴訟(1)において,Jは,(ア)Iが被告に迷惑をかけた話としては,平成4,5年頃,被告自身から,昭和56年頃,Iの依頼で資金を提供したのに返還されなかったなどの話を聞いた,(イ)GとFとの取引関係は,平成になる前後頃以降で,2年間の継続後,一旦取引を中断し,平成7,8年頃から取引を再開した旨を主張,供述する部分があるのであって(特に乙11の14・22頁以下),これらは,上記(1)(a)ないし(e)の被告の供述等と実質的に矛盾するといわなければならない。 以上によれば,無償行為である本件贈与ないし本件放棄の成立を裏付けるに足りる客観的事情の存在には,強い疑問があるというのが相当である。 (3)更に,JとKの処分権限の有無につき検討するに,Jは,前示1(3),2(1)のとおり,原告でIに次ぐ影響力を有していたとはいえ,その権限は,Iほど広範なものだったとは認められず,財務面で大きな権限を有していたとはいえないから,購入価格2億5000万円にものぼる本件債券を処分する財務・- 37 -経理上の権限があったとは容易に認められない。 また,Kの権限は,前示1(4),2(1)認定のとおり,事務的補助的なものに留まっていたというべきであるから,同様に本件債券の処分権限を有していたとは認めることができない。 したがって,その余の点について検討するまでもなく,被告の本件贈与及び本件放棄の抗弁には理由がないというべきである。 被告の即時取得の成否(前示第2の2(2)⑦の主張について)この点について,被告は,商法519条,小切手法21 討するまでもなく,被告の本件贈与及び本件放棄の抗弁には理由がないというべきである。 被告の即時取得の成否(前示第2の2(2)⑦の主張について)この点について,被告は,商法519条,小切手法21条に基づく即時取得の成立を主張しているが,上記法条による即時取得は,有価証券の占有を取得した原因行為が有効でない場合にまで適用されるものではなく,上記3のとおり,JないしKら本件債券の交付者が,本件債券の処分権限を有すると認められない以上,被告の上記主張は,採用することができない。 和解による請求権放棄の成否(前示第2の2(2)⑧の主張について)この点について,甲3の1・2によれば,原告は,別件民事訴訟(1)において前示第2の1(8)①の和解をするに当たり,相手方から出た,被告を含めた一括解決の提案を拒否していた経緯が認められ,この事実に照らし,被告の前示第2の2(2)⑧の主張は,容易に採用できない。 悪意の不当利得の成否等(前示第2の2(1)①の主張について)(1)上記3(3)認定のとおり,本件交付に関与したJないしKには,本件債券を処分する権限がなく,同認定の事情によれば,被告もその事実を知っていたか,あるいはこれを知らなかったことに悪意と同視すべき重大な過失があると認めるのが相当である。 したがって,被告は,法律上の原因がないことを知りながら,本件債券の交付を受けたものであって,悪意の不当利得が成立すると認められ,被告には,原告に本件債券を引き渡すとともに,本件交付を受けた平成9年10月1日から上記引渡済まで民法所定の法定利息を支払う義務があるというべきである。 - 38 -(2)そこで,被告の支払うべき法定利息について検討するに,上記不当利得が成立した本件交付の日である平成9年10月1日当時の本件債券の価額は,購入価額と同 務があるというべきである。 - 38 -(2)そこで,被告の支払うべき法定利息について検討するに,上記不当利得が成立した本件交付の日である平成9年10月1日当時の本件債券の価額は,購入価額と同額の2億5000万円と認めるのが相当であって,原告から償還期限の到来その他格別の主張はないから,被告には,民法704条に基づき,2億5000万円に対する年5分の割合の法定利息の支払義務があることとなる。 (3)これに対し,被告は,交付者の処分権限の欠缺につき善意であった旨を主張して悪意の不当利得を争い,乙45,被告本人の供述中には,これに沿う部分があるが,原告内におけるJ及びKの地位は,前示1(3)(4),2(1)判示のとおりであって,被告がJらに額面2億5000万円以上にのぼる本件債券の処分権限があったと信じていたとは容易に認め難い。 更に,上記3(2)のとおり,本件贈与ないし本件放棄の成立を裏付けるに足りる客観的事情の存在にも疑問があり,その存在をいう被告の供述には直ちに信用性が認められない。 したがって,そのほかに,被告自身,本件交付の際,本件債券について,原告の資産でもGの資産でもない「わけのわからんもの」と聞いた旨供述しており(同本人尋問調書7頁),かかる帰属先不明の財物を取得する理由があると考えていたか疑わしいことなども併せ考えれば,被告に有利な上記証拠を採用して,前示認定を左右することはできない。 結論 以上の次第で,原告の請求は,悪意の不当利得に基づき,(a)本件債券の引渡と,(b)不当利得成立の日である平成9年10月1日から上記引渡済まで2億5000万円に対する民法所定の年5分の割合による法定利息の支払及び,(c)引渡が不能のときは,2億5000万円とこれに対する平成9年10月1日から支払済まで民法所定の年5分の割合による 済まで2億5000万円に対する民法所定の年5分の割合による法定利息の支払及び,(c)引渡が不能のときは,2億5000万円とこれに対する平成9年10月1日から支払済まで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由がある。 また,訴訟費用については,民訴法64条但書を適用して,全部被告に負担さ- 39 -せることとする。 岐阜地方裁判所多治見支部裁判官夏目明徳- 40 -債券目録(1) 銘柄第723回割引興業債券券種5万円券債券番号006464枚数1枚(2) 銘柄第723回割引興業債券券種10万円券債券番号021198ないし021200枚数3枚(3) 銘柄第723回割引興業債券券種50万円券債券番号009902枚数1枚(4) 銘柄第723回割引興業債券券種1000万円券債券番号007836ないし007860枚数25枚以上いずれもP銀行発行- 41 -口座目録(1) 株式会社U銀行d支店(乙17)B株式会社内A所代表甲名義・普通預金口座口座番号360550開設平成3年1月8日解約平成7年5月18日(備考・別件税務訴訟判決のA所名義口座)(2) 株式会社U銀行k支店(乙19)T株式会社代表取締役丙名義・普通預金口座口座番号188981開設平成2年6月4日解約平成7年5月22日(備考・別件税務訴訟判決の113公表口座)(3) 株式会社U銀行f支店(乙20)H株式会社代表取締役I名義・普通預金口座口座番号266533開設平成4年12月21日解約平成6年4月4日(備考・別件税務訴訟判決のT名義口座)(4) 株式会社U銀行f支店(甲7,乙18)B株式会社名義・普通預金口座 口座口座番号266533開設平成4年12月21日解約平成6年4月4日(備考・別件税務訴訟判決のT名義口座)(4) 株式会社U銀行f支店(甲7,乙18)B株式会社名義・普通預金口座口座番号128198(備考・別件税務訴訟判決の115公表口座,原告主張の原告メイン口座)(5) 旧株式会社乙銀行h支店(甲8)B株式会社名義・普通預金口座口座番号110825- 42 -(6) 旧株式会社乙銀行h支店(甲9)B株式会社名義・普通預金口座口座番号213707(7) 株式会社U銀行i支店(甲10)B株式会社名義・普通預金口座口座番号162218開設平成6年12月12日解約平成8年2月29日(8) 株式会社U銀行i支店(甲10)B株式会社名義・普通預金口座口座番号62895開設平成8年2月29日(9) 株式会社U銀行i支店(甲6)B株式会社名義・普通預金口座口座番号177-640開設平成8年12月25日解約平成9年9月5日(10)株式会社U銀行f支店(乙11の9の1ないし3)A所代甲名義・普通預金口座口座番号140458(11)株式会社U銀行f支店(乙11の9の1)甲名義・普通預金口座口座番号127335解約平成7年12月27日
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