令和3(う)97 窃盗、道路交通法違反、殺人

裁判年月日・裁判所
令和5年2月16日 仙台高等裁判所 破棄自判
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判決文本文11,987 文字)

1令和3年(う)第97号主 文原判決を破棄する。 被告人を無期懲役に処する。 原審における未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理 由第1 控訴の趣意及び事案の概要等1 控訴の趣意等本件控訴の趣意は、弁護人小野純一郎作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官葛谷茂作成の答弁書に各記載のとおりであり、当審における事実取調べの結果に基づく弁論の要旨は、同弁護人作成の弁論要旨及び同検察官作成の弁論要旨に各記載のとおりであるから、これらを引用する。論旨は、訴訟手続の法令違反、事実誤認、法令適用の誤り及び量刑不当の主張である。 2 事案の概要本件は、被告人が、①令和2年5月31日午前7時30分頃、福島県郡山市内の駐車場において、準中型貨物自動車(以下「本件トラック」ということがある。)1台(時価約40万円相当)を窃取した、②同日午前7時55分頃、同県田村郡a町の道路において、本件トラックを運転して進行中、進路前方左側を対向歩行中のA(当時55歳)及びB(当時52歳)に対し、殺意をもって、同車を時速約60~70㎞まで加速させながら進路前方左側に寄せつつ走行させて、同車左前部を両名に衝突させ、Aを路外のり面に跳ね飛ばすとともに、Bを路上に転倒させて同車前後輪でれき過し、傷害を負わせて殺害した、③上記②の日時及び場所において、同車を無免許で運転した、④上記②記載のとおり、同車を運転中、A及びBに傷害を負わせる交通事故を起こし、もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに、直ちに車両の運転を停止して、A及びBを救護する等必要な措置を講じず、かつ、事故発生の日時、場所等法 2律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった して人に傷害を負わせたのに、直ちに車両の運転を停止して、A及びBを救護する等必要な措置を講じず、かつ、事故発生の日時、場所等法 2律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとされる事案であり、原判決は上記各事実を認定した上で、被告人を死刑に処した。 第2 訴訟手続の法令違反の論旨について論旨は、ダミー人形を用いた衝突実験の映像記録を添付した捜査報告書(原審甲86、87)が刺激証拠に当たらないのに、原審がこれらの取調べ請求を却下したのは違法であるから、原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある、というのである。 上記各捜査報告書は、犯罪事実の立証や被告人の防御に必要不可欠のものではないから、これらの取調べ請求を却下した原裁判所の判断は、証拠の採否に関する裁判所の合理的な裁量を逸脱したものとは認められない。 訴訟手続の法令違反をいう論旨は理由がない。 第3 事実誤認の論旨について1 論旨は、要するに、前記第1の2の②について、被告人に殺意はなく、傷害の故意を有していたにとどまるから、殺人罪を認定した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。 2 原判決の判断原判決は、「被告人は、進路前方左側の外側線付近を歩行中の被害者らに対し、比較的重量のある本件トラックを、時速約60~70㎞まで加速させ、左側に寄せつつ進行して、その前部を被害者らに衝突させている。被告人は、その間、アクセルを踏み、途中でスピードメーターが時速60㎞と70㎞の間を示していることを確認した上、本件トラックの前部が被害者らに衝突するようにハンドルを的確に操作していた。被害者らに本件トラックを衝突させた後も、ガードレールに衝突しないようにハンドルを切って車体 を示していることを確認した上、本件トラックの前部が被害者らに衝突するようにハンドルを的確に操作していた。被害者らに本件トラックを衝突させた後も、ガードレールに衝突しないようにハンドルを切って車体を立て直し、時速40㎞程度まで減速して進行した。このような衝突態様からすると、被告人の行為は、被害者らをほぼ確実に死亡させる危険性があったと認められる。運転免許を取得してトラックを運転した経験があることに加え、前記のとおり的確な運 3転操作を行っており、相応の判断ができる状態にあったといえる被告人が、その危険性を認識できなかったとは考え難い。そうすると、被告人は、被害者らを死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら、意図的に本件トラックを被害者らに衝突させたと認められる」として、殺意を認定した。 原判決の判断に論理則、経験則等に照らして不合理な点はない。 3 所論について所論は、①被告人は、原審公判において、「人を車ではねて殺そうとまでは考えていなかったが、車で人をはねると死んでしまう可能性があることは分かっており、それでもかまわないと思った」と述べたが、これは行為当時の状況を追想ないし関知した結果から判断した意見、あるいはそのような方向への誘導に罪の意識から反発できなかった結果の供述に過ぎない、②本件犯行の動機は、刑務所から出所して間もない被告人が、新しい人間関係、なじみのない土地、未経験の解体土木作業への漠然とした不安から、犯罪を行って刑務所に戻りたいと考えたというものであって、被害者2名に対する殺人を犯せば、死刑になる可能性が大きくなるから、殺意があったとの認定は上記の犯行動機と矛盾する、③被告人は、被害者2名に本件トラックを衝突させた後、被害者らを放置してその場から走り去ったが、これは、被告人が両名の傷害の程度を 性が大きくなるから、殺意があったとの認定は上記の犯行動機と矛盾する、③被告人は、被害者2名に本件トラックを衝突させた後、被害者らを放置してその場から走り去ったが、これは、被告人が両名の傷害の程度を知らず、そのまま放置すれば間もなく死亡することが明白であるとの認識がなかったからであって、殺意を認定する根拠にはならない、④被告人は、7~8年間運転をしていなかったし、本件トラックを運転するのは本件時が初めてであったから、被害者らに本件トラックを確実に衝突させられるだけの技量があったのか疑問が残る、被害者らも正面からトラックが接近すれば、当然退避しようとするであろうし、本件の道幅は狭く、ガードレールの外側はすぐのり面になっていることからすれば、被告人が本件トラックをガードレールに接触させることなく、被害者らに衝突させることができたのは、偶然に過ぎない、被告人は、被害者らの身体のどこかに本件トラックの左前部を衝突させる意思はあったが、 4衝突の箇所が被害者の腕や肩であったとすれば、死の結果は発生しなかったと解されるから、被告人が被害者らに本件トラックを衝突させようとした行為は、死の危険性が高いとまではいえず、被告人に殺意を認定することはできない、などと主張する。 しかし、①については、原判決は、殺意の有無について、被告人の原審公判供述に依拠したのではなく、本件トラックの衝突態様及び被告人による運転状況に加え、被告人が犯行当時相応の判断ができる状態にあったことなどからこれを認定したのであって、所論の指摘を踏まえても同認定は左右されない。②については、本件トラックの衝突態様等に照らし、被告人は被害者らを死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら、意図的に本件トラックを被害者らに衝突させたと認められる以上、殺意に疑問を抱かせるような事情ではない は、本件トラックの衝突態様等に照らし、被告人は被害者らを死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら、意図的に本件トラックを被害者らに衝突させたと認められる以上、殺意に疑問を抱かせるような事情ではない。③についても、原判決は所論指摘の点を根拠として殺意を認定したものではないから失当である。④については、被告人は、被害者らに本件トラックを衝突させるまでの間に、ガードレールに接触するなどして減速してしまうといった状況を生じさせることなく本件犯行に及んでいる。本件犯行後、被告人が車体を立て直し、ガードレールに接触することなく時速40㎞程度まで減速して進行させることができた点については、被害者らとガードレールとの間は狭く、結果的にそのようにできたという側面もあるとはいえ、被告人が被害者らに比較的重量のある本件トラックを相応の速度で衝突させるという観点では十分に的確な運転操作を行ったというべきであり、所論がいうような偶然の結果ではない。 被害者らにおいて、時速約60~70㎞という相当な速度で本件トラックが減速等することなく迫ってくることはおよそ想定し難く、横にガードレールがあって動きが制限される路側帯付近を歩行していたことからすれば、退避は極めて困難である。 事実誤認をいう論旨は理由がない。 第4 法令適用の誤りの論旨について 5論旨は、原判決は、前記第1の2の②について、被害者ごとに刑法199条に該当し、1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるとして、同法54条1項前段、10条により1罪として殺人罪の刑で処断した。しかし、被害者2名は、1~2mの間隔を空けて前後になって歩いており、被告人が被害者2名に本件トラックを衝突させた時間及び場所は異なっていた。被害者2名に対する各殺人罪は併合罪の関係にあるから、原判決には判決に影響を は、1~2mの間隔を空けて前後になって歩いており、被告人が被害者2名に本件トラックを衝突させた時間及び場所は異なっていた。被害者2名に対する各殺人罪は併合罪の関係にあるから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、というのである。 被告人が被害者2名に向けて本件トラックを走行させて衝突させた行為は自然的観察の下で、社会的に見て1個の行為と評価される。同法54条1項前段、10条により1罪として殺人罪の刑で処断した原判決の法令適用に誤りはない。 法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。 第5 量刑不当の論旨について1 論旨は、被告人を死刑に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である、というのである。 2 原判決の判断原判決の量刑判断に係る説示は、大要、以下のとおりである。 本件は、無差別に狙った2名の被害者にトラックを衝突させて殺害した事件であって、犯人とは一切の関係がなく、落ち度もない不特定の一般人を標的として生命を奪い去るもので、人命軽視の程度が甚だしく、被害者が突如の犯行を回避し難い点でも罪質は極めて悪質である。日常生活の中で誰でも被害を受けかねないという不安感や恐怖感を一般に与えるものであって、社会に与える影響も大きい。被告人は、新しい人間関係、なじみのない土地及び未経験の解体土木作業への漠然とした不安から、長く刑務所に入っていたいという、極めて身勝手かつ自己中心的な動機から犯行に及んだもので厳しい非難を免れない。 経緯についても、前刑出所後、知人らから当面の生活をするには十分な金銭的援助を受けた上、被告人自身も優しそうな印象を受けていた雇用主から仕事や 6住居を与えられていた状況にありながら、実際には一度も仕事に従事することすらせずに、無関係な第三者に危害を加えるに至っていることか た上、被告人自身も優しそうな印象を受けていた雇用主から仕事や 6住居を与えられていた状況にありながら、実際には一度も仕事に従事することすらせずに、無関係な第三者に危害を加えるに至っていることからすると、酌むべき点は全くない。 被告人は、遅くとも犯行当日の午前6時頃までには、寮の駐車場にあった本件トラックを2名くらいに衝突させて逃げようという計画を立てて、その計画のとおり2名の被害者に本件トラックを衝突させており、殺害を意欲したものではなく、具体的な犯行の場所等を想定しないなど場当たり的で稚拙な面があったことは否定できないが、その計画は、鍵の在りかを知っている本件トラックを乗り出して犯行に及ぶというもので、想定した犯罪を完遂するのに十分であった。被告人は、計画段階から犯行によって人が死亡する可能性が高いことを認識しながら、計画を実行に移した点で、人命軽視の度合いの強さが表れており厳しく非難されるべきである。 被告人は、横にガードレールがあり、逃げ場のない被害者らに対して、重量約2500㎏の本件トラックを時速約60~70㎞まで加速させ、左側に寄せつつ正面から車体前部を衝突させており、その衝撃の大きさは被害者らが全身に何か所もの致死的創傷を負ったことからも明らかであり、人を死亡させる危険性が極めて高い残虐な態様というほかない。被告人には、殺害の意欲こそなかったが、2名の被害者を死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら意図的に本件犯行に及んでおり、殺意も明白である。本件犯行態様は、確実に生命を奪う残虐なものであって、被告人は、このような、被害者らを死亡させる蓋然性が高く、残虐な行為を選択し、強固な意思に基づいて実行しており、このような認識や意思決定は、これまで死刑が選択されてきた事例と殺意の点でも大きな差はない。 本件犯行により2 者らを死亡させる蓋然性が高く、残虐な行為を選択し、強固な意思に基づいて実行しており、このような認識や意思決定は、これまで死刑が選択されてきた事例と殺意の点でも大きな差はない。 本件犯行により2名の被害者の尊い生命が奪われ、被害者らは清掃ボランティアに参加して道路を歩いていただけで何らの落ち度もなく、突然理不尽に生命を奪われたもので結果は重大であり、被害者らの遺族が非常に厳しい処罰感情 7を抱いていることは当然である。 以上の事情を総合すると、被告人の刑事責任は誠に重い。被告人が事実を認め、遺族に謝罪の言葉を述べていること、遺族に対し10万円の被害弁償をしたことなどを最大限考慮しても、罪刑の均衡の見地からも、一般予防の見地からも、被告人に対しては死刑を選択することが真にやむを得ない。 3 所論は、①被告人は、被害者2名にトラックを衝突させることに関心があり、生命を奪うことには関心がなかったから、人命軽視の程度が甚だしいと評価することはできない、②刑務所に戻りたいという動機から、被害者2名にトラックを衝突させるというのは飛躍があり、被告人が理性的な判断ができない状況に陥っていたことがうかがわれる、③知り合いの社長が出所してきた被告人を雇っていれば、本件犯行に及んでいなかった可能性が高いし、被告人の自業自得の面が大きいものの、更生に向けて行動を起こしながらもそれがかなわずに身勝手な考えに結び付いたことが本件犯行の原因となっていることに斟酌の余地が全くないとまではいえないから、全てを被告人自身の責任とするのは酷であり、経緯に酌むべき点が全くないとはいえない、④被告人は、犯行場所の下見その他の準備活動、準備工作はしておらず、犯行は計画性のない場当たり的なものであった、⑤被告人がトラックを衝突させる行為は、死の危険性がある行為とはい くないとはいえない、④被告人は、犯行場所の下見その他の準備活動、準備工作はしておらず、犯行は計画性のない場当たり的なものであった、⑤被告人がトラックを衝突させる行為は、死の危険性がある行為とはいえても、死の危険性が高いとまではいえず、犯行態様が残虐であるとはいえない、被害者らの前から近づいており、被害者らには犯行を回避できる可能性も残されていた、⑥被告人は、トラックを被害者に衝突させる直前に恐ろしくて目を背けているし、被害者2名に衝突させたのは、1名ずつ2回にわたって衝突させるのは怖くてできなかったからであると述べるなど、犯罪を行うことを怖いと感じる人間性が残されており、自分の犯した犯罪を深く反省し、謝罪の言葉を述べ、できればもう一度やり直したいとも述べており、更生の意欲や可能性がある、これらの事情を考慮すれば、本件について、死刑の選択がやむを得ないとはいえないと主張する。 84 当裁判所の判断所論を踏まえ、各量刑事情について検討した上で、被告人に対し、死刑を選択することが真にやむを得ないものかどうかについて検討する。 ⑴ 罪質及び動機について本件は、無差別に被害者2名を殺害した事案であって、行為者が何ら関係のない無防備な不特定の者を殺害するという意味で、生命侵害の危険性が高く、生命軽視の度合いが大きいものである。本件の罪質が、人命軽視の程度が甚だしく、極めて悪質であって、社会に与える影響も大きいとした原判決の評価に誤りはない。 また、被告人は、新しい人間関係、なじみのない土地及び未経験の解体土木作業への漠然とした不安から、長く刑務所に入っていたいと考えて本件犯行に及んでおり、このような動機が極めて身勝手かつ自己中心的であるとの原判決の評価も首肯することができる。 もっとも、本件は、無差別的な犯行ではあ た不安から、長く刑務所に入っていたいと考えて本件犯行に及んでおり、このような動機が極めて身勝手かつ自己中心的であるとの原判決の評価も首肯することができる。 もっとも、本件は、無差別的な犯行ではあるものの、不特定の者を殺害すること自体を目的としたいわゆる無差別殺人の犯行とは異なるし、生命侵害自体から利益を得ようとした事案とも異なり、身勝手かつ自己中心的であって、漠然としたものに過ぎないものの、被告人が、上記のような不安からいわば自棄的になって、刑務所に長く入りたいなどと考え、本件トラックを2名くらいに衝突させようと考えて敢行した事案であることは念頭に置いておく必要がある。 ⑵ 計画性、犯行の態様及び殺意について被告人は、本件犯行の約2時間前までに、寮の駐車場にあった本件トラックを2名くらいに衝突させて逃げようという計画を立てたものであって、現にこれを完遂していること、鍵の在りかを知っている本件トラックを乗り出したものであることからすれば、想定した犯罪を完遂するには十分な計画性があり、また、計画段階から犯行によって人が死亡する可能性が高いことを 9認識していたとの原判決の説示は相当である。 次に、犯行態様及び殺意について、原判決が、本件は人を死亡させる危険性が極めて高い残虐な態様である、被告人は、2名の被害者を死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら意図的に本件犯行に及んでおり、明白な殺意があるとする点も首肯できる。 他方、原判決も説示するとおり、被告人は、本件において具体的な犯行の場所等を想定しておらず、本件の計画性については、犯行に相当に近い時期になって考えられたに過ぎない、場当たり的で稚拙な面がある。そして、被告人の立てた計画は、前記のとおりのものであって、人が死亡する可能性が高いことを認識した上での計画とはいえ 、犯行に相当に近い時期になって考えられたに過ぎない、場当たり的で稚拙な面がある。そして、被告人の立てた計画は、前記のとおりのものであって、人が死亡する可能性が高いことを認識した上での計画とはいえるものの、被告人としては、長く刑務所に入るのに見合う犯罪を行う事を目的とし、その目的が達成できればそれでよかったのであって、他人の殺害を企図し、生命侵害を実現するために必要な方策を検討してその段取りを立てるという意味での計画を立てたわけではない。また、原判決は、本件犯行について、確実に生命を奪う残虐なものであるとするが、本件で被害者らが本件トラックによる衝突によって受けた衝突エネルギーは、14.2m(建物の5~6階)の高さから地面に落ちた同エネルギーに相当する(原審甲96)というものであったこと、本件犯行は、一定程度離れた位置にいる被害者らに向けて自動車を走行させて衝突させるというものであって、被害者らの動きの有無及び内容、衝突する双方の部位、衝突後にれき過に至るのかどうかといった事情によっても被害の内容は相応に異なり得ること、被告人は犯行後そのまま立ち去っており、生命を危殆化する攻撃が執ように行われた事案でもないことからすれば、死亡の危険性が極めて高いとはいえるものの、被害者2名の生命侵害が確実な態様であったとまではいい難い。そして、本件は、一連の1回の運転行為による犯行であり、一度に複数名の生命を奪う危険な態様であるという評価ができる一方で、2件の殺人罪を中心とする本件の刑責を検討するに当たっては、 10殺害行為自体を2回行った事案とは異なり、両罪における行為の危険性には重なり合うところがあることや、犯行に向けられた意思決定も一連のものであることも踏まえる必要がある。以上に加え、被告人に殺害の意欲までは認められないことも併せ考慮す り、両罪における行為の危険性には重なり合うところがあることや、犯行に向けられた意思決定も一連のものであることも踏まえる必要がある。以上に加え、被告人に殺害の意欲までは認められないことも併せ考慮すると、被告人の生命軽視の度合いは甚だしいとはいえるものの、それ以上にこれが顕著であったとまではいい難い。 ⑶ 結果本件犯行により何ら落ち度のない2名の被害者の尊い生命が奪われたもので、結果は重大である、被害者らの遺族が非常に厳しい処罰感情を抱いていることは当然であるとした原判決の説示は相当である。 ⑷ その他の情状事実について本件におけるその他の情状事実としては、被告人が、事実をおおむね認め、被害者らの遺族に謝罪の言葉を述べるとともに、被害者Bの遺族に対して10万円の被害弁償をしたことを指摘することができる。 ⑸ 死刑選択の当否について死刑が他の刑罰とは異なり、被告人の生命そのものを永遠に奪い去るという、あらゆる刑罰のうちで最も冷厳で誠にやむを得ない場合に行われる究極の刑罰であることから、その適用は慎重に行われなければならず、また、このような死刑の適用に当たっては、公平性の確保にも十分に意を払わなければならない。その上で、死刑の科刑が是認されるためには、死刑の選択をやむを得ないと認めた裁判体の判断の具体的、説得的な根拠が示される必要があり、控訴審としては、第一審のこのような判断が合理的なものといえるか否かを審査することとなる(最高裁平成25年(あ)第1127号、平成27年2月3日第2小法廷決定・刑集69巻1号1頁参照)。 そして、このような観点から前記検討した量刑事情について総合して検討するに、本件は、極めて身勝手かつ自己中心的な動機から、無差別に無防備で無関係の被害者2名を殺害した事 巻1号1頁参照)。 そして、このような観点から前記検討した量刑事情について総合して検討するに、本件は、極めて身勝手かつ自己中心的な動機から、無差別に無防備で無関係の被害者2名を殺害した事案であって、その生命侵害の危険性は高 11く、生命軽視の度合いは大きいし、社会に与える影響も重大である。また、被告人は、それによって人が死亡する可能性が高いことを認識しながら、想定した犯罪を完遂するに十分な程度の計画を立ててこれに基づいて犯行に及んでおり、その態様は、人を死亡させる危険性が極めて高い残虐なものであり、被告人には明白な殺意があった。本件犯行により2名の被害者の生命が突然理不尽に奪われ、結果は重大であり、遺族らは非常に厳しい処罰感情を有している。これらの事情によれば、被告人の刑事責任は誠に重く、本件は死刑を選択することの当否を慎重に検討すべき事案である。 しかしながら、被告人は、漠然とした不安から、身勝手かつ自己中心的ではあるものの、前記のような自棄的な考えで刑務所に入りたいと考え、本件トラックを2名くらいに衝突させようとして犯行に至ったものであり、他人の生命を侵害すること自体から利益を得ようとしたわけでもなく、このような動機経緯は、死刑の当否を判断するという究極的な場面においては、斟酌の余地が全くないとまではいい切れない。そして、本件は、犯行に相当に近い時期になって考えられたに過ぎない場当たり的で稚拙な面があり、その計画内容は、殺害を企図し、生命侵害を実現するために必要な方策を検討してその段取りを立てるというものではなかったのであって、現に、犯行態様についても、死亡の危険性が極めて高いとはいえるものの、前記のとおり、被害者2名の生命侵害が確実なものであったとまではいえない。このことに、殺意としても、その意欲までは認められ って、現に、犯行態様についても、死亡の危険性が極めて高いとはいえるものの、前記のとおり、被害者2名の生命侵害が確実なものであったとまではいえない。このことに、殺意としても、その意欲までは認められず、被害者を死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら意図的に犯行に及んだという限度にとどまること、2件の殺人罪における行為の危険性及び犯行に向けた意思決定には1個の行為として重なり合うところがあることも併せ考慮すると、被告人の生命軽視の態度、姿勢は明らかではあるが、これが甚だしく顕著であるとまではいい難い。したがって、原判決による、本件の動機経緯、計画性の程度も踏まえた犯行態様についての評価は不合理であって是認することができない。 12加えて、公平性の見地から殺害された被害者が2名の場合を中心として過去の裁判例をみるに、原判決も説示するように、罪質が極めて悪質で、利欲的ないし身勝手な動機に基づく犯行であって、殺人についての高度の計画性があるような場合には死刑が宣告される事例が多い一方で、計画性が十分になくとも死刑になった事例もあり、確実に生命を奪う執よう、残忍な態様で、殺害を意欲した強固な殺意に基づく場合に死刑が宣告される事例が多い、といった傾向を看取することができるところ、本件が、無差別に無防備な2名の被害者を死亡させた、社会に与える影響も大きく、極めて悪質な事案であることを踏まえても、上記のとおり、動機経緯に斟酌の余地が全くないとまではいい切れず、また、本件における計画性は、他人の殺害を企図し、生命侵害を実現するために必要な方策を検討してその段取りを立てるという意味でのものではなく、その態様が、確実に被害者2名の生命を奪うまでの態様とはいえず、殺意としても、その意欲は認められないのであって、生命軽視の態度、姿勢が甚だしく顕著であ その段取りを立てるという意味でのものではなく、その態様が、確実に被害者2名の生命を奪うまでの態様とはいえず、殺意としても、その意欲は認められないのであって、生命軽視の態度、姿勢が甚だしく顕著であったとまではいえないことからすると、動機経緯、計画性の程度も踏まえた犯行態様等の見地において、これまで死刑に処せられた事案に匹敵するとまではいえないのであって、上記罪質及び結果の重大性を考慮しても、このことを踏まえた上でなお上記傾向を踏み出した量刑判断をすべき特別の事情も見出せない。 そうすると、原判決の量刑事情についての判断には前記のとおり是認することができない点があり、過去の裁判例との公平性の観点を踏まえても、本件の罪質、動機、態様、結果の重大性等各般の情状を併せ考察したときに、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないとまではいえないのであるから、原判決が、本件について死刑の選択をやむを得ないと認めた判断には、具体的、説得的な根拠が示されているということはできず、不合理な判断をしたものといわざるを得ない。 以上のとおりであって、量刑不当の論旨は理由があるから、原判決は破棄 13を免れない。 第6 破棄自判よって、刑事訴訟法397条1項、381条により原判決を破棄し、同法400条ただし書を適用して、被告事件について、更に次のとおり判決する。 原判決が認定した各事実に、原判決挙示の法令(科刑上の一罪の処理を含み、刑種の選択及び併合罪の処理を除く。)を適用し、刑種の選択については、前記の情状を考慮した上、各所定刑中、原判示第1、第3及び第4の罪については、いずれも懲役刑を、原判示第2の罪については、無期懲役刑をそれぞれ選択し、原判示第1、第3及び第4の各罪は原判示の各前科との関係で3犯であるから刑法59 中、原判示第1、第3及び第4の罪については、いずれも懲役刑を、原判示第2の罪については、無期懲役刑をそれぞれ選択し、原判示第1、第3及び第4の各罪は原判示の各前科との関係で3犯であるから刑法59条、56条1項、57条によりそれぞれ3犯の加重をし、以上は同法45条前段の併合罪であり、原判示第2の罪について無期懲役刑に処するから、同法46条2項本文により他の刑を科さないこととして、被告人を無期懲役に処し、同法21条を適用して原審における未決勾留日数中250日をその刑に算入し、原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。 令和5年2月17日仙台高等裁判所第1刑事部 裁判長裁判官 深 沢 茂 之 裁判官 梶 直 穂 裁判官 鏡 味 薫

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