1 判 決 主 文1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求1 被告北海道(以下「被告道」という。)は、原告に対し、233万2400円及びこれに対する平成30年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告地方職員共済組合(以下「被告共済組合」という。)は、原告に対し、234万7760円及びこれに対する平成30年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、被告道の職員であった原告が、在職中、同性パートナーであるAが北海道職員の給与に関する条例(以下「給与条例」という。)9条2項1号の「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同号の「配偶者」に該当し、また、地方公務員等共済組合法(以下「共済組合法」という。)2条4項の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同条1項2号イの「配偶者」に該当するとして(以下、給与条例9条2項1号の規定及び共済組合法2条4項の規定を併せて「本件各規定」という。)、被告道に対し、Aを扶養親族とする扶養手当に係る届出及び寒冷地手当に係る世帯等の区分の変更の届出を行うとともに、被告共済組合に対し、Aを被扶養者とする届出を行ったが、被告道の職員の任命権者である北海道知事及び被告道の職員である組合員の組合員被扶養者証に係る事項を処理する被告共済組合の北海道支部長が、Aが原告と同性であることを理由に、上記各「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」とはいえず、上2 記各「配偶者」に該当しないとして、上記各届出に係る扶養親族又は被扶養者の認定を不可としたことはいずれも違法であると主張して、国家賠償法(以下「国 姻関係と同様の事情にある者」とはいえず、上2 記各「配偶者」に該当しないとして、上記各届出に係る扶養親族又は被扶養者の認定を不可としたことはいずれも違法であると主張して、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、被告道に対して、損害金合計233万2400円及びこれに対する不法行為の日である平成30年11月14日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告共済組合に対して、損害金合計234万7760円及びこれに対する上記同旨の遅延損害金の支払を求める事案である。 1 法令等の定め⑴ 給与条例(乙4)9条(扶養手当)1項 扶養手当は、扶養親族のある職員に対して支給する。(後略)2項 前項の「扶養親族」とは、次に掲げる者で他に生計のみちがなく主としてその職員の扶養を受けているものをいう。 1号 配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)3項 扶養手当の月額は、前項第1号(中略)に該当する扶養親族については1人につき6,500円(中略)とする。 10条1項 (前略)職員に次の各号のいずれかに掲げる事実が生じた場合においは、その職員は、直ちにその旨を任命権者に届け出なければならない。 1号 新たに扶養親族としての要件を具備するに至った者がある場合20条(寒冷地手当)1項 寒冷地手当は、毎年11月から翌年3月までの各月の初日(以下この条において「基準日」という。)において北海道に在勤する職員(常時勤務に服する職員に限る。以下この条において「支給対象職員」という。)に支給する。 3 2項 支給対象 初日(以下この条において「基準日」という。)において北海道に在勤する職員(常時勤務に服する職員に限る。以下この条において「支給対象職員」という。)に支給する。 3 2項 支給対象職員の寒冷地手当の額は、次の表に掲げる地域の区分及び基準日における職員の世帯等の区分に応じ、同表に掲げる額とする。 地域の区分世帯等の区分世帯主である職員その他の職員扶養親族のある職員その他の世帯主である職員1級地(省略)(省略)(省略)2級地23,080円 12,900円 8,700円3級地(省略)(省略)(省略)備考 (省略)5項 2項の表に掲げる地域の区分は別表第6のとおりとする。 別表第6(第20条関係)地域の区分地域1級地(省略)2級地(前略)石狩振興局管内(後略)3級地(省略)⑵ 共済組合法1条(目的)1項 この法律は、地方公務員の病気、負傷、出産、休業、災害、退職、障害若しくは死亡又はその被扶養者の病気、負傷、出産、死亡若しくは災害に関して適切な給付を行うため、相互救済を目的とする共済組合の制度を設け、その行うこれらの給付及び福祉事業に関して必要な事項を定め、もつて地方公務員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与す4 るとともに、公務の能率的運営に資することを目的とし、あわせて地方団体関係団体の職員の年金制度等に関して定めるものとする。 2条(定義)1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号 職員 常時勤務に服することを要する地方公務員(後略)2号 被扶養者 次に掲げる者(中略) おいて、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号 職員 常時勤務に服することを要する地方公務員(後略)2号 被扶養者 次に掲げる者(中略)で主として組合員(中略)の収入により生計を維持するものであつて、日本国内に住所を有するもの(中略)をいう。 イ 組合員の配偶者(後略)4項 この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。 ⑶ 国民健康保険法5条(被保険者)都道府県の区域内に住所を有する者は、当該都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険の被保険者とする。 6条(適用除外)前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険(以下「都道府県等が行う国民健康保険」という。)の被保険者としない。 3号 国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)又は地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)に基づく共済組合の組合員6号 船員保険法、国家公務員共済組合法(中略)又は地方公務員等共済組合法の規定による被扶養者2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)5 ⑴ 当事者等ア 原告は、平成7年4月1日付けで被告道の職員に採用され、平成18年5月から、北海道石狩支庁(平成22年4月1日に北海道石狩振興局に改組)に勤務し、令和元年6月21日、被告道を依願退職した(乙11)。 イ 被告道は、地方公共団体である。 ウ 被告共済組合は、共済組合法により、道府県 2年4月1日に北海道石狩振興局に改組)に勤務し、令和元年6月21日、被告道を依願退職した(乙11)。 イ 被告道は、地方公共団体である。 ウ 被告共済組合は、共済組合法により、道府県の職員(「公立学校の職員並びに都道府県教育委員会及びその所管に属する教育機関〔公立学校を除く。〕の職員」及び「道府県警察の職員」を除く。)及びその被扶養者等のための総合的社会保険事業を行うために設立された法人である。 ⑵ 原告とAの関係に関する事情ア 原告は、平成30年春ころからSNSを通じてAと連絡を取り合うようになり、同年5月5日に初めて会った後、交際を開始し、同年6月6日、札幌市パートナーシップ宣誓制度(性的マイノリティの気持ちを受け止める取組として、互いを人生のパートナーとして、日常生活において相互に協力し合うことを約束した関係であることなどを札幌市長に対して宣誓する制度。甲25)の宣誓をし(甲3)、このころには原告方で寝食を共にするようになった。 イ 原告とAは、平成30年7月16日、原告方で同居を開始し、また、パートナーシップ契約(同性婚契約)を締結した(甲4)。Aが受給していた生活保護は、原告の引き取りを理由に廃止となった(甲22)。 ウ 原告とAは、平成31年4月25日、共同名義で分譲マンションを購入して引っ越し、同マンションの入居者名簿のAの欄に「同性パートナー、主婦」と記載し、また、同マンションの所在地を本籍地とする届出を行った。 エ 原告は、原告名義のクレジットカードにつき、A用の家族カードを作成し使用させる、原告の契約している携帯電話につき、Aを家族割引の対象とする、原告が保険料を支払っている生命保険につき、Aを死亡保険金の受取人6 とするなどした。 オ 原告は、世帯主 成し使用させる、原告の契約している携帯電話につき、Aを家族割引の対象とする、原告が保険料を支払っている生命保険につき、Aを死亡保険金の受取人6 とするなどした。 オ 原告は、世帯主として、平成30年7月28日、Aの平成30年度分の国民健康保険料合計5万8280円を、令和元年6月17日、令和元年度分の国民健康保険料合計7万9840円をそれぞれ支払った(甲23の1・2、30の1・2)。 ⑶ 本件訴訟に至る経緯ア 原告は、平成30年7月19日、北海道庁電子届出システム(以下「電子届出システム」という。)を使用し、「届出の理由」欄に「札幌市のパートナーシップ宣誓制度を利用。同性パートナーとの同居を開始したため。」と記載し、「変更後の世帯区分」欄を「世帯主(扶養親族あり)」に変更して、寒冷地手当に係る世帯等の区分の変更の届出(以下「本件寒冷地手当に係る届出①」という。)を行った(甲7、8)。 電子届出システムは、被告道の総務部人事局職員事務課(以下「道職員事務課」という。)において運用されており、電子届出システムを使用しての届出は、原則として道職員事務課において受理し、任命権者(原告との関係においては北海道知事)に対する届出があったものとして、その後の事務処理が行われている。 イ 原告は、平成30年7月20日、道職員事務課等に対し、同日付の「職員手当等証明書等の送付について」と題する書面等を提出し、Aを被扶養者とする届出(以下「本件被扶養者に係る届出」という。)等を行った(甲10の1ないし4)。 被告共済組合の北海道支部は、同月23日、被告道の総務部人事局職員厚生課(以下「道職員厚生課」という。)を介して、上記書面等を受領した。 ウ 原告は、平成30年7月23日、電子届出システ 被告共済組合の北海道支部は、同月23日、被告道の総務部人事局職員厚生課(以下「道職員厚生課」という。)を介して、上記書面等を受領した。 ウ 原告は、平成30年7月23日、電子届出システムを使用し、扶養手当に係る扶養親族の届出(以下「本件扶養手当に係る届出①」という。)を行った(甲7、9)。 7 エ 被告共済組合の北海道支部の職員は、北海道支部長の権限の行使として、本件被扶養者に係る届出に対し、原告と同性であるAは共済組合法2条1項2号イの「配偶者」に当たらず、原告の被扶養者と認定することができないと判断し、平成30年7月27日、原告に対し、道職員厚生課を介して、「同性のパートナーについては、扶養親族の範囲に含まれないため、被扶養者の認定をすることができません。」と回答した(甲11)。 オ 被告道の総務部人事局人事課(以下「道人事課」という。)の職員は、平成30年11月12日、原告と面談し、現時点では、原告から提出を受けた住民票、戸籍謄本及び札幌市のパートナーシップ宣誓書受領書をもって、同性のパートナーが給与条例9条2項1号の「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)」に該当すると認定することはできない旨を伝えた(甲13)。 カ 道職員事務課は、任命権者である北海道知事の権限の行使として、平成30年11月14日、本件寒冷地手当に係る届出①及び本件扶養手当に係る届出①について、原告と同性であるAは給与条例9条2項1号の「配偶者」に当たらず、原告の扶養親族と認定することができないと判断した(乙1)。 キ 原告は、平成31年4月5日、被告道の総務部人事局長、被告共済組合の北海道支部長等に対し、「同性パートナーを被扶養者として認定し、内縁関係と同等の取扱いをする要望書の確認につ 断した(乙1)。 キ 原告は、平成31年4月5日、被告道の総務部人事局長、被告共済組合の北海道支部長等に対し、「同性パートナーを被扶養者として認定し、内縁関係と同等の取扱いをする要望書の確認について」と題する書面を提出し、令和元年10月30日までに文書で回答するよう求めた(乙10)。 ク 原告は、平成31年4月18日、電子提出システムを使用し、「届出の理由」欄に「同性パートナーとパートナーシップ契約(同性婚契約)書を交わし同居を開始、共同名義の自宅に転居するため」と記載して、Aを扶養親族とする扶養手当に係る届出(以下「本件扶養手当に係る届出②」といい、本件扶養手当に係る届出①と併せて、単に「本件扶養手当に係る届出」という。)を再度行うとともに、「届出の理由」欄に「同性パートナーと同居を開始、共8 同名義の自宅に転居する」と記載し「変更後の世帯区分」欄を「世帯主(扶養親族あり)」に変更して、Aを扶養親族とする寒冷地手当に係る世帯等の区分の変更の届出(以下「本件寒冷地手当に係る届出②」という。また、本件被扶養者に係る届出、本件扶養手当に係る届出と併せて「本件各届出」という。)を再度行った(甲16ないし19)。 ケ 道職員事務課は、任命権者である北海道知事の権限の行使として、令和元年5月20日、本件扶養手当に係る届出②及び本件寒冷地手当に係る届出②について、原告と同性であるAは給与条例9条2項1号の「配偶者」に当たらず、原告の扶養親族と認定することができないと判断した(乙1)。 コ 道人事課の給与服務担当課長は、令和元年10月30日、原告に対し、前記キの書面に関する回答として、現時点においては、同性のパートナーを給与条例における配偶者として認定することはできないとの判断に至った旨の回答を行った(乙12)。 30日、原告に対し、前記キの書面に関する回答として、現時点においては、同性のパートナーを給与条例における配偶者として認定することはできないとの判断に至った旨の回答を行った(乙12)。 また、被告共済組合の北海道支部事務長は、同日、原告に対し、前記キの書面に関する回答として、現時点では、同性パートナーを被扶養者として認定することはできないとの判断に至った旨の回答を行った(乙13)。 3 争点及び争点に対する当事者の主張⑴ 本件各届出に対して、被告らが、Aが原告と同性であることを理由に、本件各規定の「事実上婚姻と同様の事情にある者」に該当しないなどとして、扶養親族又は被扶養者の認定を不可としたことには、国賠法1条1項の違法及び過失があるといえるか。 (原告の主張)ア 本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」とはいわゆる内縁と同様の関係のものをいうと考えられるところ、一般的に、内縁が法律上の婚姻と同様の関係として保護されるためには、①婚姻意思と②夫婦共同生活の実体があることが必要とされるが、法令上の性別が同じ者同士であっても、9 法令上の性別が異なる者同士の場合と同様にこれらの要件をみたす場合はある。 それにもかかわらず、当事者の法令上の性別が同じ者同士の場合には法的保護の対象とならないとするのは、性的指向が異性に向かうか同性に向かうかによって差異を設けるものである。 そこで、このような区別取扱いが憲法14条1項の定める平等原則に反しないかが問題となるところ、性的指向は、自らの意思にかかわらず決定される個人の性質であり、性別等と同様に自らの意思によって選択・変更できない事柄であるから、内縁が認められるかどうかの判断においては、性的指向によって異なる取扱いをすることに真にやむを得ないと 決定される個人の性質であり、性別等と同様に自らの意思によって選択・変更できない事柄であるから、内縁が認められるかどうかの判断においては、性的指向によって異なる取扱いをすることに真にやむを得ないといえるほどの強い正当化事由がない限り、同性であることは阻害事由とはならない。 そして、原告とAは、婚姻の意思をもって共同生活を営み、それが対外的にも表明されていたから、原告とAとの間には、内縁関係が認められる。 イ被告道に対して扶養手当の支給及び寒冷地手当の増額支給の目的は、親族を扶養する被告道職員に対して扶養手当を支給し、寒冷地手当を増額支給することにより、その職員の生計費を補給し、家族を抱えて働く職員に安心を与えるところにある。そして、扶養手当の支給及び寒冷地手当の増額支給を受けることができる地位を内縁の配偶者を有する職員にも認めることとしたのは、扶養親族である配偶者について、必ずしも民法上の配偶者の概念と同一のものとしなければならないものではなく、被告道職員との関係において、お互いに協力して社会通念上の夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者とすることが、扶養手当の支給及び寒冷地手当の増額支給に係る上記目的に適合すると考えたことによるものと解される。 そして、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」が被告道職員と同性であるか異性であるかにかかわらず、扶養親10 族とお互いに協力して共同生活を現実に営んでいた者である以上、生計費を補給し、家族を抱えて働く職員に安心を与えるべき必要性は変わらない。 したがって、性的指向によって異なる取扱いをすることに、真にやむを得ないといえるほどの強い正当化事由は全く存在しないのであるから、扶養手当の支給と寒冷地手当の増額支給対象となる扶 い。 したがって、性的指向によって異なる取扱いをすることに、真にやむを得ないといえるほどの強い正当化事由は全く存在しないのであるから、扶養手当の支給と寒冷地手当の増額支給対象となる扶養親族のうち、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」には、当事者の性別の異同にかかわりなく、およそ事実上婚姻関係と同様の事情にある者全てが含まれると解すべきである。 被告共済組合に対して共済組合法が、組合員の「被扶養者の病気、負傷、出産、死亡若しくは災害に対して適切な給付を行う」(同法1条1項)として、組合員の被扶養者にこれら「適切な給付」を保障する趣旨は、それが「地方公務員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに、公務の能率的運営に資する」(同法1条1項)からである。そして、その「適切な給付」を受けることができる地位を「事実上婚姻関係と同様にある者」にも認めているのは、同法の「配偶者」について、必ずしも民法上の配偶者の概念と同一のものとしなければならないものではなく、組合員との関係において、お互いに協力して社会通念上の夫婦としての共同生活を現実に営んでいたものにこれらの給付をすることが共済組合の社会保障的性格や上記趣旨に適合すると考えたことによるものであると解される。 そして、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」が組合員と同性であるか異性であるかに関わらず、組合員とお互いに協力して共同生活を現実に営んでいた者である以上、その生活の安定と福祉の向上を図るべき必要性は変わらない。 したがって、性的指向によって異なる扱いをすることに、真にやむを得ないといえるほどの強い正当化事由はまったく存在しないのであるから、11 祉の向上を図るべき必要性は変わらない。 したがって、性的指向によって異なる扱いをすることに、真にやむを得ないといえるほどの強い正当化事由はまったく存在しないのであるから、11 共済組合法上の「被扶養者」として認められる「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」には、当事者の性別の異同に関わりなく、およそ事実上婚姻関係と同様の事情にある者全てが含まれると解すべきである。 ウ 被告道は地方公共団体であり、被告共済組合も地方行政の一部であるから、内縁の成立要件をみたすかどうかについては、民間企業や一般市民よりも高度の配慮を求められる立場にある。 そして、被告らが本件各届出に対する認定不可決定をした平成30年から平成31年にかけての時期において、既に多様な性の在り方を尊重し、同性カップルに対する法的保障を認め、性的指向や性自認に基づく差別を解消しようとする社会的情勢、気運が高まっていた。 これらに鑑みれば、被告らが、本件各届出を出した時点において、本件各規定の解釈にあたり、当事者の性別の異同に関わりなく、およそ事実上婚姻関係と同様の事情にある者全てが含まれると解釈することは十分可能であり、また、そのように解釈すべきであった。 したがって、被告らが憲法14条並びに本件各規定に反して本件各届出を不認定としたことには、少なくとも過失が認められる。 (被告の主張)ア本件各規定は、扶養親族又は被扶養者に当たり得る「配偶者」について、届出をしないが「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を含むと規定しており、いずれも「配偶者」、「(婚姻の)届出」及び「婚姻関係」という、いずれも私法(民法)上の概念をもってその範囲を画しているところ、法的安定性の見地等に照らし、各法令の にある者」を含むと規定しており、いずれも「配偶者」、「(婚姻の)届出」及び「婚姻関係」という、いずれも私法(民法)上の概念をもってその範囲を画しているところ、法的安定性の見地等に照らし、各法令の明文又はその趣旨から明らかな場合は別として、原則として、私法上の概念と同義に解するべきである。 このような観点から給与条例及び共済組合法をみると、いずれも「(婚姻の)届出」、「婚姻関係」について特別の規定を置いていないことから、12 これらの法令においては各概念を民法上の概念と同義に解することが合理的であるから、本件各規定にいう届出をしないが「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」は、いずれも民法の定める婚姻(法律婚)のうち、婚姻(法律婚)の届出に係る要件を欠くものの、それ以外は婚姻(法律婚)と同様の事情にある者をいうと解すべきである。 憲法24条は、1項において「両性」及び「夫婦」という文言を用い、2項において「両性の本質的平等」という文言を用いているところ、一般的に、「両性」とは両方の性、男性と女性又は2つの異なった性を意味し、「夫婦」とは夫と妻又は適法の婚姻をした男女の身分を意味するものとされていることからすると、憲法24条にいう「夫婦」や「両性」もこれと同義とみるべきであるから、憲法は「両性」の一方を欠き、当事者双方の性別が同一である場合に婚姻を成立させることを想定していないというべきである。 憲法24条2項を受けて創設された婚姻制度を規定する民法も、婚姻の当事者の呼称として「夫婦」、「夫」若しくは「妻」又は「父母」、「父」若しくは「母」という文言を用いていること、同法739条は、婚姻が、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻の効力を生ずる旨定めているところ、戸籍法74条は、 「妻」又は「父母」、「父」若しくは「母」という文言を用いていること、同法739条は、婚姻が、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻の効力を生ずる旨定めているところ、戸籍法74条は、婚姻の届出において、夫婦が称する氏その他法務省令で定める事項を届け出なければならないと定めていること等からすると、我が国の法制上、婚姻関係や夫婦の概念については、当然に男女(異性)間の関係を前提としているものであって、我が国の婚姻法秩序において、同性間の婚姻関係というものは想定されていない。 そうすると、本件各規定において、「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として位置付けられる内縁関係も、当然に男女(異性)間の関係であることが前提となるから、同性間の関係がこれに包含されると解する余地はない。 13 本件各規定と同様又は類似の規定を置く法令は多数あるところ、前記のような解釈は、これらの法令における規定の解釈とも整合するものであり、また、内縁の配偶者の権利保護が進んだ背景として、婚姻の届出がされないことにより女性の権利保護が不十分な状況になっていることの不合理性について議論がされるようになっていたことがあり、このような沿革からしても、内縁関係に同性間の関係を含むと解することはできない。 したがって、本件各規定のいう「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性間の関係の相手方が含まれると解する余地はないというべきである。 イ 他の一部の自治体の解釈、運用を根拠として被告道の扶養手当等の認定を行う職員及び被告共済組合の被扶養者の認定を行う職員が、本件各規定の対象に同性パートナーを被扶養親族と認定する職務上の法的義務があり、被告共済組合の職員には、被扶養者の届出について、組合員の同性パートナーを被扶養者 済組合の被扶養者の認定を行う職員が、本件各規定の対象に同性パートナーを被扶養親族と認定する職務上の法的義務があり、被告共済組合の職員には、被扶養者の届出について、組合員の同性パートナーを被扶養者と認定する職務上の法的義務があったということはできないというほかない。 ⑵ 損害(原告の主張)ア 被告道に対するもの 慰謝料 200万円原告は、被告道の対応によって、Aとの関係を婚姻と同等の関係とは認められないと否定され、自らの性的指向を否定されたかのような強い精神的苦痛を受け、その結果、24年間勤務した被告道の職員を辞めざるを得ない状況となった。かかる精神的損害を慰謝するに足りる金額は、200万円を下らない。 扶養手当 7万1500円原告が扶養手当に関する届出を行ったとき、原告は行政職4級であった14 のであるから、被告道が認定許可決定をしていれば、原告には月額6500円の扶養手当が支給されるはずであった。 給与条例によれば、扶養手当の始期は、職員に新たに扶養親族としての要件を具備するに至った者がある場合、その事実が生じた日の属する月の翌月である。原告とAは平成30年7月までには札幌市パートナーシップ宣誓をするなどして、扶養親族としての要件を具備するに至った。よって、原告は、平成30年8月から退職月である令和元年6月までの間、本来支給されるべき扶養手当が支給されていない。 したがって、被告道の認定不可決定によって、原告には扶養手当相当分となる7万1500円(=6500円×11か月)の損害が生じた。 寒冷地手当差額分 5万0900円原告が寒冷地手当に関する届出を行ったとき、既に原告は、被告道から、寒冷地手 なる7万1500円(=6500円×11か月)の損害が生じた。 寒冷地手当差額分 5万0900円原告が寒冷地手当に関する届出を行ったとき、既に原告は、被告道から、寒冷地手当として1万2900円が支給されていた。もっとも、被告道が認定許可決定をしていれば、寒冷地手当は2万3080円となるはずであった。寒冷地手当は、毎年11月から3月までの期間に支給されるものであり、原告が寒冷地手当の区分変更を届け出たのは平成30年7月23日のことである。よって、原告は、同年11月から平成31年3月までの合計5か月間、本来支給されるべき寒冷地手当の差額が支給されていない。 したがって、被告道の認定不可決定によって、原告には、寒冷地手当区分変更に伴う差額となる5万0900円〔=(2万3080円-1万2900円)×5か月〕の損害が生じた。 弁護士費用 21万円原告は、本件を弁護士に依頼し、本件訴訟を提起せざるを得なかった。 これによって生じた弁護士費用は、21万円を下らない。 小計 233万2400円イ 被告共済組合に対するもの15 慰謝料 200万円原告は、被告共済組合の対応によって、前記ア記載と同様の精神的損害を受けた。これを慰謝するに足りる金額は、200万円を下らない。 国民健康保険料 13万7760円原告は、被告共済組合が認定不可決定をしたため、平成30年7月28日と令和元年6月17日の2回にわたって、国民健康保険料合計13万7760円を支払わざるを得なくなった。 弁護士費用 21万円原告は、本件を弁護士に委任し、本件訴訟を提起せざるを得なかった。 これに伴って生じた弁護士費 保険料合計13万7760円を支払わざるを得なくなった。 弁護士費用 21万円原告は、本件を弁護士に委任し、本件訴訟を提起せざるを得なかった。 これに伴って生じた弁護士費用は、21万円を下らない。 小計 234万7760円(被告の主張)いずれも否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断1 争点⑴(本件各届出に対して、被告らが、Aが原告と同性であることを理由に、本件各規定の「事実上婚姻と同様の事情にある者」に該当しないなどとして、扶養親族又は被扶養者の認定を不可としたことには、国賠法1条1項の違法及び過失があるといえるか。)⑴ 国賠法1条1項の「違法」とは、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反することをいい(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁等参照)、その違法性を判断するに当たっては、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と当該行為をしたと認め得るような事情がある場合に違法となると解される(最高裁平成5年3月11日第1小法廷判決・民集47巻4号2863頁、最高裁平成11年1月21日第1小法廷判決・判例タイムズ1002号94頁参照)。 16 ⑵ 給与条例は、扶養手当については、扶養親族のある職員に対し、扶養親族の人数に応じた額を支給することとし、寒冷地手当については、支給対象職員に対して、地域や職員の世帯等の区分(扶養親族のある職員か否かで区分が異なる)に応じた額を支給することとし、その「扶養親族」につき、同条例9条2項1号において「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)」と定めている。また、共済組合法は、国民健康保険法上の被保険者から除外 とし、その「扶養親族」につき、同条例9条2項1号において「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)」と定めている。また、共済組合法は、国民健康保険法上の被保険者から除外される「被扶養者」について、「組合員の配偶者」を規定し、同「配偶者」には、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。」と定めている。 給与条例や共済組合法は、「配偶者」、「婚姻関係」等について別段の定めを置いていないことから、これらの規定は一般法である民法上の婚姻に関する概念を前提として定められているものと考えられるところ、民法上の婚姻に関する概念を前提とすると、本件各規定は、法律上の婚姻関係と同視し得る関係を有しながら婚姻の届出をしていない者を、「配偶者」と同視し得る者として「扶養親族」ないし「被扶養者」に該当することとするものであって、すなわち、婚姻の届出をできる関係であることが前提となっていると解するのが自然である。 そして、現行の民法において定められている「婚姻」は異性間に限られると解されるところ、給与条例や共済組合法において、民法とは異なって同性間の関係を含むとする明確な規定は見当たらない。 そうすると、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」には、民法上婚姻の届出をすること自体が想定されていない同性間の関係は含まれないと解することは、現行民法の定める婚姻法秩序と整合する一般的な解釈ということができる。 ⑶ 原告は、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」とは内縁と同様の関係にある者と考えられるところ、内縁が保護されるためには、①婚姻17 意思と②夫婦共同生活の実体があることが必要とされるが、同性間の関係であってもこれらの要件を満たす場合があり、その場合 様の関係にある者と考えられるところ、内縁が保護されるためには、①婚姻17 意思と②夫婦共同生活の実体があることが必要とされるが、同性間の関係であってもこれらの要件を満たす場合があり、その場合、扶養手当の支給及び寒冷地手当の増額支給の目的や、共済組合法の被扶養者に適切な給付を保障する趣旨等は、同性間の関係であっても当てはまるから、被告らは、憲法14条1項の平等原則によって、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」には同性間の関係を含むと解釈すべき職務上の法的義務を負っている旨主張する。 この点、原告も指摘するとおり、昨今、同性間の関係に対する法的保障や性的指向・性自認に対する差別禁止に関する社会的な理解が広がってきており、これを踏まえ、婚姻制度や同性間の関係に対する権利保障の在り方等について、立法論を含めて様々な議論がされるに至っているのであって、これらの議論を踏まえ、特に給与条例のような地方公共団体による条例に関して、一部の地方公共団体において、本件各規定と同様の規定ぶりであっても同性間の関係を含み得るとして、柔軟な解釈や運用を試みる例があることが認められる。 しかしながら、本件各規定は、原告主張のような「内縁関係」を要件とするものではなく、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を「配偶者」と同視し得る者として「扶養親族」ないし「被扶養者」に該当することとするものであって、前述のとおり、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性間の関係も含まれないと解するのが現行民法の定める婚姻法秩序と整合する一般的な解釈であり、また、扶養手当の支給及び寒冷地手当の増額支給の目的や、共済組合法の被扶養者に適切な給付を保障する趣旨等が、同性間の関係であっても当てはまる場合があ 法の定める婚姻法秩序と整合する一般的な解釈であり、また、扶養手当の支給及び寒冷地手当の増額支給の目的や、共済組合法の被扶養者に適切な給付を保障する趣旨等が、同性間の関係であっても当てはまる場合があるとしても、扶養手当の支給や寒冷地手当の増額支給が公的財源によって賄われ、また、共済組合法の各種給付も同様に公的財源を基盤としていること(共済組合法113条、113条の2)からすると、婚姻制度や同性間の関係に対する権利保障の在り方等について様々な議論がされている状況であることや、一部の地方公18 共団体において、本件各規定と同様の規定ぶりであっても同性間の関係を含み得るとして、柔軟な解釈や運用を試みる例があることを踏まえても、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性間の関係を含むと解釈しなければならないという職務上の注意義務を個別の公務員に課すことはできないというべきである。 2 結論よって、その余の点について判断するまでもなく原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 右 田 晃 一 裁判官 小 野 健 裁判官 小 林 遼 平
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