主文 1 A市長の甲事件原告に対する平成22年12月24日付けの下水道使用料4301万8739円の納入の通知処分を取り消す。 2 A市長の乙事件原告兼丙事件原告に対する平成22年12月24日付けの下水道使用料8916万8929円の納入の通知処分を取り消す。 3 A市長の乙事件原告兼丙事件原告に対する平成23年4月1日付けの5163万3136円の過料処分を取り消す。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件(1) 主位的請求主文第1項と同旨(2) 予備的請求A市長の甲事件原告に対する平成22年12月24日付けの下水道使用料4301万8739円の納入の通知処分のうち,1762万8342円の部分を取り消す。 2 乙事件主文第2項と同旨 3 丙事件主文第3項と同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 甲事件は,甲事件原告(以下「原告B」という。)が,A市長から平成22年12月24日付けで受けた,平成17年4月27日から平成18年12月31日までの下水道使用料4301万8739円の 納入通知処分(以下「本件通知処分1」という。)について,下水道使用料の算定方法が条例違反であり,又は,時効によって消滅した下水道使用料請求権について請求するものであって違法であるとして,その取消し(主位的には全部取消し,予備的には一部取消し)を求めた事件である。 (2) 乙事件は,乙事件原告兼丙事件原告(以下「原告C」という。)が,A市長から平成22年12月24日付けで受けた,平成19年1月1日から平成22年4月26日までの下水道使用料8916万8929円の納入通知処分(以下「本件通知処分2」という。)について,下水道使用料の算定方法が条例 年12月24日付けで受けた,平成19年1月1日から平成22年4月26日までの下水道使用料8916万8929円の納入通知処分(以下「本件通知処分2」という。)について,下水道使用料の算定方法が条例違反であり違法であるとして,その取消しを求めた事案である。 (3) 丙事件は,原告Cが,A市長から平成23年4月1日付けで受けた,平成21年6月9日から平成22年4月26日までの未払下水道使用料の2倍に相当する額である5163万3136円の過料処分(以下「本件過料処分」といい,本件通知処分1,2を併せて「本件各処分」という。)について,その取消しを求めた事案である。 2 法令の定め(1) 下水道法(以下「法」という。)の定めア公共下水道の管理者公共下水道の設置,改築,修繕,維持その他の管理は,原則として市町村が行う(法3条1項)。 イ排水設備の設置等公共下水道の供用が開始された場合においては,当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者,使用者又は占有者は,遅滞なく,その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な配水管,排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなけれ ばならない(法10条)。 ウ使用料の定め公共下水道管理者は,条例で定めるところにより,公共下水道を使用する者から使用料を徴収することができる(法20条1項)。 使用料は,①下水の量及び水質その他使用者の使用の態様に応じて妥当なものであること(同項1号),②能率的な管理の下における適正な原価をこえないものであること(同項2号),③定率又は定額をもって明確に定められていること(同項3号),及び④特定の使用者に対し不当な差別的取扱をするものではないこと(同項4号)という原則に従い定めら をこえないものであること(同項2号),③定率又は定額をもって明確に定められていること(同項3号),及び④特定の使用者に対し不当な差別的取扱をするものではないこと(同項4号)という原則に従い定められなければならない。 (2) A市下水道条例(以下「A市条例」という。)の定め(甲9,乙20,乙21の1ないし8)A市条例は,A市の公共下水道の管理及び使用について,法で定めるもののほか必要な事項を定めている(同条例1条)。 ア下水道使用料の算定基準(ア) 市は,公共下水道の使用者から別紙1の定めるところにより,使用者が排除した汚水の量(以下「汚水排除量」という。)に汚水の種類ごとに分けて定めた単価を乗じて(ただし,一般汚水については,一定の汚水排除量につき基本料金で計算する。)算定された額に100分の105を乗じて得た額を徴収し,1円未満の端数を生じたときは,これを切り捨てる(同条例15条1項,別表第1。なお,同条の文言上,「使用料」の語は上記の100分の105を乗じる前の額と乗じた後の額を二義的に意味するかのように読めるけれども,以下においては,100分の105を乗じた後の徴収額を意味するものとしてこの語を用いる。)。 月の途中において公共下水道の使用を開始し,又は休止し,若 しくは廃止した場合の使用料は,定例日を基準として当該開始後又は休止若しくは廃止までの日数に応じて徴収する(同条4項)。 定例日とは,使用料算定の基準日としてあらかじめ市長が定めた日をいう(同条2項)。 (イ) 汚水排除量は,毎使用月に使用者が排除した量について,水道水以外の水を使用した場合は,(使用水量ではなく)揚水量とし,揚水量の決定は,計測装置(同条例17条2項)を取り付けたときは,それにより測定された水量とし,それ( 使用者が排除した量について,水道水以外の水を使用した場合は,(使用水量ではなく)揚水量とし,揚水量の決定は,計測装置(同条例17条2項)を取り付けたときは,それにより測定された水量とし,それ(計測装置)がないときは,汚水の種類ごとに別紙2に定める基準により市長が認定する(同条例17条1項2号,別表第2)。 市長は,水道水以外の水の排除量を認定するため必要があると認めたときは,使用者のポンプ施設その他適当な場所に計測のための装置を取り付けることができる(同条例17条2項)。 イ汚水の種類汚水は,単価や基本料金を適用する上では一般汚水と浴場汚水とに分類され,汚水排除量を算定する上では家事汚水,団体汚水,営業汚水,工業汚水,浴場汚水,その他の汚水に分類される(別紙1,2参照)。 このうち,浴場汚水について,同条例は,「公衆浴場法(昭和23年法律第139号)の規定による浴場から排除される汚水」と定義している(同条例16条5号)。 ウ使用開始等の届出義務使用者は,(1)公共下水道の使用を開始,休止,廃止又は再開したとき,(2)使用者が変更したときは,直ちに市長に届け出なければならない(同条例10条)。 エ過料の規定 偽りその他不正の手段により使用料又は占有料の徴収を免れた者に対しては,その徴収を免れた金額の5倍に相当する金額以下の過料を科する(同条例24条2項)。 (3) A市下水道条例施行規則(以下「A市規則」という。)の定め(甲44)下水道条例第2の営業汚水及び工業汚水の種別の区分は,別紙3のとおりとする(A市規則18条,別表第2)。 (4) 公衆浴場法の定め「公衆浴場」とは,温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設である(同法 び工業汚水の種別の区分は,別紙3のとおりとする(A市規則18条,別表第2)。 (4) 公衆浴場法の定め「公衆浴場」とは,温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設である(同法1条1項)。 (5) 地方自治法,地方自治法施行令の定め金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は,時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか,5年間これを行わないときは,時効により消滅し(同法236条1項),時効の援用を要しない(同条2項)。 法令の規定により普通地方公共団体がする納入の通知は,民法153条の規定にかかわらず,時効中断の効力を有する(同法236条4項)。かかる納入の通知は,所属年度,歳入科目,納入すべき金額,納期限,納入場所及び納入の請求の事由を記載した納入通知書でこれをしなければならない(地方自治法施行令154条3項本文)。ただし,その性質上納入通知書によりがたい歳入については,口頭,掲示その他の方法によってこれをすることができる(同項但書)。 3 前提となる事実(争いのない事実のほかは,かっこ内に認定に用いた証拠等を示す。)(1) 当事者等ア原告B 原告Bは,平成14年12月22日から平成18年10月1日まで,いわゆるスーパー銭湯(入浴料金が物価統制令に基づく統制額として埼玉県の指定した額の適用を受けていない公衆浴場のことをいう。)である温泉施設「D」(以下「本件施設」という。)を運営していた会社である。 イ原告C原告Cは,原告Bの子会社であり,平成18年10月1日,原告Bから本件施設を転借してその運営を引き継ぎ,平成22年3月8日に本件施設の営業を休止するまでの間,本件施設を運営していた会社である。(営業休止日につき甲8)ウ E株式会社(以 0月1日,原告Bから本件施設を転借してその運営を引き継ぎ,平成22年3月8日に本件施設の営業を休止するまでの間,本件施設を運営していた会社である。(営業休止日につき甲8)ウ E株式会社(以下「E」という。)Eは,本件施設の建築主であり,平成14年12月21日,原告Bに本件施設を賃貸した会社である。(甲6)エ株式会社F(以下「F」という。)Fは,温泉事業の設計監理やコンサルタント業務を行っている会社であり(証人G),Eから本件施設に関する全ての設計及び工事管理の発注を受けていた。(甲58)オ H株式会社(以下「H」という。)Hは,温泉のコンサルタント業務や,温泉の掘削工事及び建物外にある揚湯設備の工事を請け負っている会社であり,Eから本件施設の揚湯設備及び水井戸揚水設備の発注を受けて施工し,Eに引き渡した。(甲57,証人I)カ A市A市は,本件施設の存するA市内の公共下水道を管理する普通地方公共団体である。 (2) 本件施設の運営に関する経緯 ア原告Bは,平成13年12月10日,E及びFとの間で,Eが所有することになる本件施設を建築し,これを原告Bが賃借することを目的とする事業の基本的事項を合意した。(甲51)これを踏まえ,Eは,Hとの間で,それぞれを工事発注者,工事請負人とする本件施設の温泉井揚湯設備及び水井戸揚水設備工事請負契約を締結し(甲57),平成14年3月6日,Fに対して,本件施設に関する全ての設計及び工事管理に関する業務を委託した(甲58)。 また,原告Bも,同年4月1日,Fに対して,本件施設の建築に必要な業務等のほか,Fが本件施設の開業日までの間,本件施設の開業準備,仕様及び運営等に関する指導,助言を行うという内容のコンサルティング業務を委託した。 同年4月1日,Fに対して,本件施設の建築に必要な業務等のほか,Fが本件施設の開業日までの間,本件施設の開業準備,仕様及び運営等に関する指導,助言を行うという内容のコンサルティング業務を委託した。(甲52,53)イ原告Bは,Eに対し,同年6月頃,Fの提案した本件施設に関する企画案を一部修正し,本件施設の浴槽の一部を「ろ過循環方式」から「掛け流し方式」とするよう指示した。(乙7の2,証人I,同G)ウ原告Bは,同年11月25日,埼玉県知事に対して,本件施設が「特殊(保養休養)その他」の公衆浴場である旨の営業許可申請を行い(乙2),その旨の許可を得た。 これに先立ち,原告BとEは,同年10月15日,A市長に対して,連名で「公共下水道への排除量は,上水道の使用量,井戸の揚水量及び温泉井戸の揚水量を計量器にて検針した量とし,その量にて下水道使用料を納付いたします。」という念書を提出していた。 (乙4)エ原告Bは,Eから完成した本件施設を賃借し,同年12月22日から本件施設の運営を開始した。その後,原告Cが,平成18年1 0月1日より本件施設の運営を引き継いだ。 なお,下水道の使用者の名義が原告Bから原告Cに変更されたのは,平成19年1月1日である。 オ原告Bは,平成17年4月27日から平成18年12月31日までの間,下水道使用料として848万2507円を支払い(甲3の1),また,原告Cは,平成19年1月1日から平成22年4月26日までの間,下水道使用料として1721万5342円を支払った(甲19の1)。これらの金額は,いずれも,本件施設の温泉水及び井戸水を汲み上げるための揚水管のうち正規の配管(以下「本管」という。)に設置された計測装置によって測定された水量を基に,A市条例に定める「一般汚水」の単価によって算定 ずれも,本件施設の温泉水及び井戸水を汲み上げるための揚水管のうち正規の配管(以下「本管」という。)に設置された計測装置によって測定された水量を基に,A市条例に定める「一般汚水」の単価によって算定されたものであった。 なお,原告らは,自社グループが経営する他のスーパー銭湯について,各地方公共団体に対し,「一般汚水」の単価で下水道使用料を支払っている。 (3) 本件処分の経緯ア被告は,新聞報道を契機にした原告らからの調査報告等により,平成22年4月19日,本件施設の温泉水及び井戸水を汲み上げるための揚水管にそれぞれ本管とは別に迂回配管(以下「本件迂回配管」という。)が存在していることを確認した。 本件迂回配管に設置されているバルブは全開の状態であり,また,計測装置は本管のみに設置され,本件迂回配管に設置されていなかったため,揚水管を通過する井戸水及び温泉水の水量のうち,本件迂回配管を通過した水量については計測されていなかった。 なお,原告Cは,この調査に先立つ同年3月8日に本件施設の運営を中止していた。 (甲8,31,乙18,27,証人J)イ A市長は,前記アの調査結果を受けて,原告Bに対して,同年4月23日付けで,「下水道不正使用に係る徴収を免れた下水道使用料の請求について(通知)」(以下「本件通知」という。)をもって未払下水道使用料の請求をし,同通知書は同月26日に原告Bに到達した。この通知書には,通知が届いた日から過去5年分の使用料を請求するが請求金額及び詳細は追って通知する旨記載されていた。(甲16,乙13)その後,原告らは,A市長に対し,同年5月11日,井戸水の使用を休止する旨のA市条例10条1項による異動届を提出した。 (乙29)ウ A市下水道課は,本件施設の営業日数や来客数等から下水道使用 その後,原告らは,A市長に対し,同年5月11日,井戸水の使用を休止する旨のA市条例10条1項による異動届を提出した。 (乙29)ウ A市下水道課は,本件施設の営業日数や来客数等から下水道使用水量を推計した上で,同年7月20日付け「下水道不正使用により支払いを免れた下水道使用料明細書」(以下「本件明細書」という。)を原告らに交付した。(甲11)原告らは,同年9月9日に同明細書の算定結果に違算等はない旨回答したものの(乙10,27),被告から正式な対応方針として①下水道使用料の請求の始期は本件施設の開業時とする,②過料の倍率は5倍とする,③刑事告訴をすることを告げられた(甲62,乙27,証人J)後,同年11月2日付け書面で,本件明細書記載の下水道使用量については不同意とする旨を回答した(乙11の2)。 そこで,被告は,K株式会社(以下「K」という。)に原告らの不正使用水量の算出を依頼したところ,Kは,同月30日,へーゼン・ウィリアムスの公式を用いて汚水排除量を算出した。(乙12)エ A市長は,Kの算出した上記汚水排除量のうち,10立方メートル又は8立方メートルを超える部分につき別紙1の「一般汚水」の 単価を乗じた額に,10立方メートル又は8立方メートルまでについての基本料金を加え,さらに100分の105を乗じて使用料を計算し,そこから既払下水道使用料を控除した上で,平成22年12月24日,原告Bに対して平成17年4月27日から平成18年12月31日までの未払下水道使用料として4301万8739円について(甲1,2,3の1),原告Cに対して平成19年1月1日から平成22年4月26日までの未払下水道使用料として8916万8929円について(甲17,18,19の1),いずれも納期限を平成23年1月24日と定め,それぞ ),原告Cに対して平成19年1月1日から平成22年4月26日までの未払下水道使用料として8916万8929円について(甲17,18,19の1),いずれも納期限を平成23年1月24日と定め,それぞれ納入通知書及び積算根拠明細書を送付した(本件通知処分1,2)。(甲1,2,3の1,甲17,18,19の1)また,A市長は,平成22年12月24日付けで,原告Cに対して,未払下水道使用料の5倍の倍率の過料を科すとの告知をした。 これに対して,同原告は,平成23年1月24日,弁明書を送付した(乙19)。それを受けて,A市長は,同原告に対して平成23年4月1日付けで,納期限を同年6月1日として,平成21年6月9日から平成22年4月26日までの間の未払下水道使用料2581万6568円の2倍に相当する5163万3136円の過料処分(本件過料処分)をした(甲25,26)。 (4) 本件訴訟提起に至る経緯ア原告B及び原告Cは,それぞれ,平成23年1月24日,本件通知処分1,2を不服として異議申立てをしたところ(甲4,20),A市長は,同年4月1日,「浴場汚水」を「入浴料金が物価統制令に基づく統制額として埼玉県の指定した額の適用を受ける公衆浴場からの排水」と解した上で,本件施設からの排水はこれに該当しないとして,異議申立てをいずれも棄却した(甲5,甲21)。 原告らは,同月4日,異議申立ての棄却決定書をそれぞれ受領した。 イ原告Bは,平成23年1月24日,本件通知処分1に関する未払下水道使用料を全額支払い(甲35),原告Cは,同日,本件通知処分2に関する未払下水道使用料を全額支払い(甲36),平成23年5月31日,本件過料処分に関する過料を全額支払った(甲37)。 ウ原告Bは,平成23年9月26日,本件通知処分 日,本件通知処分2に関する未払下水道使用料を全額支払い(甲36),平成23年5月31日,本件過料処分に関する過料を全額支払った(甲37)。 ウ原告Bは,平成23年9月26日,本件通知処分1を不服として甲事件の訴訟を提起した。 また,原告Cも,同日,本件通知処分2及び本件過料処分を不服として乙事件及び丙事件の訴訟を提起した。 (当裁判所に顕著) 3 争点(1) 下水道使用料の算定方法の違法性(2) 本件通知書が,納入通知書(地方自治法施行令154条3項)に該当し,消滅時効を中断する効力を有するか。 (3) 本件過料処分の違法性 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(下水道使用料の算定方法の違法性)について(被告の主張)ア汚水排除量の算定方法A市条例は,適法に設置された下水配管における汚水排除量を算定するために設けられた規定であり,本件のように計測装置を設ける旨の念書を提出しながら殊更違法な迂回配管を設置して不正に下水道使用料を免れた場合は,同条例の想定の範囲外である。よって,本件では,同条例を根拠として汚水排除量を算定することはで きない。 また,原告らのグループは,従前,本件施設から排水される下水は公衆浴場法の規定する公衆浴場から排出される排水ではないことを十分認識した上で,汚水排除量を来館者数や配管の口径により実使用水量を推定する方法,つまり別紙2(同条例別表第2)の「その他の汚水」の「汚水排除量認定の基準」に定める業態や使用状況等によって算定するように要望していたのである。 そこで,被告は,合理的方法により下水道使用料を算定することにし,公正な第三者であるKに原告らの下水道の不正使用水量の算出を依頼したところ,Kは,へーゼン・ウィリアムスの公式を用いて汚水排除量を算出 こで,被告は,合理的方法により下水道使用料を算定することにし,公正な第三者であるKに原告らの下水道の不正使用水量の算出を依頼したところ,Kは,へーゼン・ウィリアムスの公式を用いて汚水排除量を算出したのである。 イ本件施設の浴場部分からの汚水についての下水道使用料の算定基準行政法規の解釈においても条理の働く余地は大きく,「浴場汚水」(A市条例16条5号)とは,公衆浴場法に基づく公衆浴場であって,かつ,入浴料金が物価統制令に基づく統制額として埼玉県の指定した額の適用を受ける公衆浴場から排除される汚水であると解釈されるから,本件施設から排除されている汚水には「浴場汚水」ではなく,「一般汚水」の算定基準が適用されるべきである。このように解釈することは,何ら法令に従った行政からの逸脱となるものではない。 また,①被告以外の地方公共団体の条例は,「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」を区別して定めており,②原告BはA市長に対して計測装置によって検針した量で下水道使用料を支払う旨の念書を提出しており,③原告らは,本件施設の開業以降休業までの期間,A市条例に定める「一般汚水」の算定基準による下水道使用 料を支払い続けており,また,④原告Bは,埼玉県に対して,公衆浴場の種類を「特殊(保養休養)その他」と記載して公衆浴場許可申請をしており,埼玉県も本件施設を「その他の公衆浴場」として営業許可を与えていた。さらにいえば,⑤スーパー銭湯業界では,下水道使用料の算定にあたり,各自治体の下水道条例に定められている「一般汚水」の算定基準が用いられていることは公知の事実であり,「浴場汚水」の算定基準が用いられている例は皆無であるし,⑥原告らのグループが運営している他のスーパー銭湯では,「一般汚水」の算定基準による下水道使用料を支払ってい ていることは公知の事実であり,「浴場汚水」の算定基準が用いられている例は皆無であるし,⑥原告らのグループが運営している他のスーパー銭湯では,「一般汚水」の算定基準による下水道使用料を支払っていることから,原告らは,本件施設のようなスーパー銭湯には「浴場汚水」の算定基準が適用されないことを熟知していたといえる。 以上の点から考察しても,本件施設から排出された下水道使用料は,「一般汚水」の算定基準によって算定されるべきである。 原告らの主張は,A市条例の形式的な文理解釈を過度に強調して,上述の経緯等を無視するものであり,到底正当性を有しない。 ウそうすると,下水道料使用料は,へーゼン・ウィリアムスの公式を用いて算定された汚水排除量に別紙1に従い「一般汚水」の単価を乗じる等して,さらに100分の105を乗じた額となる。 以上の計算から,原告Bの未払下水道使用料(平成17年4月27日から平成18年12月31日までの分)は,4301万8739円となり,原告Cの未払下水道使用料(平成19年1月1日から平成22年4月26日までの分)は,8916万8929円となる。 したがって,A市長による下水道使用料の算定は違法とはいえず,これを前提とした本件通知処分1及び2は適法である。 (原告らの主張)ア汚水排除量の算定方法 本件施設では,本件迂回配管に計測装置が取り付けられていなかったため,揚水管を通過する井戸水及び温泉水は,その水量のうち一部しか計測されなかった。したがって,揚水管全体として「計測器がないとき」(A市条例17条1項2号)に該当すると考える外はない。そこで,汚水排除量は,別紙2(同条例別表第2)で定める基準によって算定されることになる。この基準によって算定すると,本件施設の浴場部分からの1か月あたりの汚水排除量 )に該当すると考える外はない。そこで,汚水排除量は,別紙2(同条例別表第2)で定める基準によって算定されることになる。この基準によって算定すると,本件施設の浴場部分からの1か月あたりの汚水排除量は748. 88立方メートル,浴場部分以外からの1か月あたりの汚水排除量は234立方メートルとなる。 なお,同条例は,24条2項で,不正に下水道使用料を免れるという事態を想定した定めを置いており,また,A市長は同条例に従って過料処分を科しているのであるから,本件が同条例の想定外であるとする被告の主張は破綻している。また,仮に本件が同条例の想定していない事態であるならば,行政は法令の不備を認めた上で侵害処分は差し控えるべきであった。 以上からすれば,A市長による汚水排除量の算定方法は,同条例に根拠がなく,本件通知処分1,2は法律による行政の原則に反して違法である。 イ本件施設の浴場部分からの汚水についての下水道使用料の算定基準A市条例16条5号は「浴場汚水」の定義を「公衆浴場法(昭和23年法律第139号)の規定による浴場から排除される汚水」と定義しているところ,本件施設の浴場部分は「公衆浴場法の規定による浴場」そのものである。そうすると,本件施設の浴場部分から排除される汚水は「浴場汚水」に該当し,その下水道使用料の算定にあたっては,別紙1(同条例別表第1)における「浴場汚水」の 算定基準が適用されるべきである。 なお,同条例16条5号の「浴場汚水」の定義は一義的に明確であり,何らの除外・限定文言も付されていないことからすれば,被告の主張する「浴場汚水」(同条例16条5号)の解釈は,条文そのものを修正するのと同視すべき行為といえ,また,公権力の行使には法律による行政の原則に基づき条理が適用されないとした裁判例との関係も 告の主張する「浴場汚水」(同条例16条5号)の解釈は,条文そのものを修正するのと同視すべき行為といえ,また,公権力の行使には法律による行政の原則に基づき条理が適用されないとした裁判例との関係も踏まえると,到底許されるものではない。そして,被告がその他反論として挙げる事情は,同条例と無関係なことを理由とするものであり,適用すべき算定基準の根拠となり得ない。 したがって,A市長は,何らの法令上の根拠なく,本件施設の浴場部分から排除される汚水に「一般汚水」の算定基準を適用しているのであるから,本件通知処分1,2は法律による行政の原理に反し違法である。 ウ月額の下水道使用料は,前記アで主張した1か月あたりの各汚水排除量を前提として,本件施設の浴場部分から排出される汚水については「浴場汚水」の単価を乗じ,浴場部分以外の部分から排出される汚水については「一般汚水」の単価を乗じる等して算定された額に100分の105を乗じた額となる。 そうすると,被告は未払があると主張する期間において原告らが支払うべき適正な(後記(2)の消滅時効の点を除く。)下水道使用料は,原告Bについて,739万0774円(平成17年4月27日から平成18年12月31日までの分)となり,原告Cについて,1463万0846円(平成19年1月1日から平成22年4月26日までの分)となる。そして,原告B及び原告Cは,それぞれ,本件通知処分1,2の時点で,上記期間における下水道使用料を過大に支払っており,未払下水道使用料は存在しない。 したがって,A市長による本件通知処分1,2は原告らに下水道使用料の未払があるという点で誤りがあり,同処分1,2はその全てが取り消されなければならない。 (2) 争点(2)(本件通知書が,納入通知書(地方自治法施行令154条3項) 1,2は原告らに下水道使用料の未払があるという点で誤りがあり,同処分1,2はその全てが取り消されなければならない。 (2) 争点(2)(本件通知書が,納入通知書(地方自治法施行令154条3項)に該当し,消滅時効を中断する効力を有するか。)について(被告の主張)地方自治法施行令154条3項本文は,納入通知書の記載事由として「所属年度,歳入科目,納入すべき金額,納期限,納入場所及び納入の請求の事由」を要求しているが,これは各項目が明確にならない場合にまで記載を強いる趣旨ではない。そして,同項但書の「その性質上」とは各項目が明確にならず,直ちに金額を確定できない場合も含まれると解される。 本件通知書により請求した時点(平成22年4月23日)では,下水道使用料は,その算定が不可能であったことから,「その性質上納入通知書によりがたい歳入」というべきであって,本件通知書は納入通知書に該当し,同日時点で時効は中断した。なお,被告が下水道使用料算定のための調査を怠っていたことはない。 A市長は,原告Bの申入れを受けて,同原告の株主総会終了後まで原告らの顛末書の提出を猶予していたのであり,原告Bが,この事情を無視してA市長が迅速に事務処理を行うべきであったと主張するのは信義則に反する。また,同原告はいったん平成22年9月9日に下水道使用料の支払を承諾しており,時効の主張をすることは信義にもとる行為といわざるを得ない。 (原告Bの主張)本件通知書には「請求金額及び詳細については,追って通知します」との記載があるのみで,地方自治法施行令154条3項本文が定める 納入通知書の記載事項は1つも記載されていない。 また,同項但書は「納入の通知」の方法を「口頭,掲示その他の方法」にしてもよいと定めるのみで,納入すべき金額すら伝えなくて 3項本文が定める 納入通知書の記載事項は1つも記載されていない。 また,同項但書は「納入の通知」の方法を「口頭,掲示その他の方法」にしてもよいと定めるのみで,納入すべき金額すら伝えなくてもよいとは定めておらず,また,通知を受けた者は納入するべき金額すら伝えられないのでは納入することはできないから,本件通知書は「納入の通知」として意味をなさない。 本件では,A市長が原告ら2社に対してのみ未払下水道使用料を請求する場合であり,かつ,原告らの住所は明確に判明しているのであるから,個別に納入通知を送付するのが適切な場合であって,また,A市長が迅速かつ的確に事務処理を行えば平成22年4月23日時点で未払下水道使用料の算定は十分に可能であった。そして,A市長はその後,納入通知書(甲2)をもって通知してきたのであるから,本件が「その性質上納入通知書によりがたい」場合でないことは明らかである。 以上より,本件通知書は納入通知書に該当せず,消滅時効の中断の効力を有しない。そうすると,本件で消滅時効が中断したのは,地方自治法施行令154条3項本文の要件を備えた納入通知書(甲2)を原告Bが受領した平成22年12月27日となり,本件通知処分1のうち,平成17年4月27日から同年12月26日までの分の未払下水道使用料に係る部分は違法である。 (3) 本件過料処分の違法性(被告の主張)ア未払下水道使用料の算定方法には前記(1)(被告の主張)のとおり条例違反はないことから,原告Cには平成21年6月9日から平成22年4月26日までの間,2581万6568円の下水道使用料の未払がある。 イ原告Bは,本件施設が「ろ過循環方式」から「掛け流し方式」に変更されたことに伴い汚水排除量が増大することから,下水道使用料の肥大を抑えて欲し 6568円の下水道使用料の未払がある。 イ原告Bは,本件施設が「ろ過循環方式」から「掛け流し方式」に変更されたことに伴い汚水排除量が増大することから,下水道使用料の肥大を抑えて欲しい旨の要望を出しており,迂回配管を設置することは本件施設に関わる者の共通認識となっていた。また,原告Bは本件施設の建築工事現場に常駐し,本件迂回配管を現認していた。よって,原告Bは,本件施設開設時から,本件迂回配管の存在を認識していたといえる。 また,Hは,平成15年7月頃,本件施設の支配人を務めていたLに対して本件施設に設置されていた計測装置による揚水量と本件施設のホームページ記載の水量との大幅な相違を指摘して本件迂回配管の存在が疑われぬような流量とするよう提言しており,また,Lからもその点に関する質問を受けていることから,Lは遅くとも同月頃には本件迂回配管の存在を認識していたといえる。そして,Lは組織上当然のこととして,原告らに対して本件迂回配管の存在を報告していたといえるから,原告らがこの時点で本件迂回配管の存在を知悉していたことは明白である。 さらに,本件迂回配管が,平成21年6月9日に掘り起こされており,原告らはこの時点で本件迂回配管を現認していることや,原告BのMが本件迂回配管に関する発言を聴取していることから,原告らが同日時点で,本件迂回配管の存在を認識していたことは明らかである。 したがって,原告らが,遅くとも平成21年6月9日の時点で,下水道使用料を不正に免れる意思を有していたことは明白である。 ウ原告らが本件迂回配管の発覚後,原因究明に協力する旨表明しておきながら,非協力的,不誠実な対応に終始したことにより,A市長における下水道使用料の算定作業が遅れたことや,原告らの悪質 性の重大さに鑑みれば,当初の 発覚後,原因究明に協力する旨表明しておきながら,非協力的,不誠実な対応に終始したことにより,A市長における下水道使用料の算定作業が遅れたことや,原告らの悪質 性の重大さに鑑みれば,当初の5倍という過料の倍率及び本件過料処分の2倍という倍率は,他の自治体の事例と比較しても相当といえる。なお,過料の倍率を5倍相当から2倍相当としたのは,原告Bの指示により本件迂回配管が施工されたことを断定することができなかったためである。 エ A市長は,原告らと十分な協議を重ねた上で本件に対処しており,原告らに対して種々理由を示した上で過料を5倍相当としていたところ,これを2倍相当に減じた経緯があり,原告らが処分の理由を明確に認識していたのは明らかであるから,本件過料処分の理由附記は十分である。 オしたがって,本件過料処分は適法である。 (原告Cの主張)ア原告Cには,本件過料処分時,未払下水道使用料は存在しなかったことから,同原告は「使用料の徴収を免れ」ておらず,本件過料処分はそれを科すための基礎的要件を欠いている。 イ本件で問われるのは原告Cの故意であるにもかかわらず,A市長は原告Bの故意を問題にして,故意の主体を意識しないままに本件過料処分をしており,同処分は不適切な行政処分といわざるを得ない。また,平成21年6月9日の会議に,原告Bから出席したNは本件施設の配管の構造等を全く知らず,NがHから単におかしな配管があるとの話を聞いても,それが「不正」な配管を意味すると理解することはできなかったし,そもそも,会議の際に下水道使用料が過少となっているという結果についての指摘は一切なく,Nはこのことを知る由もなかった。また,平成21年6月9日には堀削作業が行われておらず,Nは,鉄板で隠された本件迂回配管を確認していない。したがっ 少となっているという結果についての指摘は一切なく,Nはこのことを知る由もなかった。また,平成21年6月9日には堀削作業が行われておらず,Nは,鉄板で隠された本件迂回配管を確認していない。したがって,本件迂回配管や未払下水道使用料があるこ と等を,Nが,原告Cの責任者に報告することは不可能であった。 また,温泉掘削や揚水管工事に従事する業界で働く者にとっては,本件迂回配管を取り除いて本管のみに全ての温泉水を流したときには,本管が破損するおそれがあり,さらには流量が多すぎて計測装置が正確な水量を計測できない結果を招来するということは常識であり,このような提案をHがすることは考え難い。 以上からすれば,原告Cは,平成21年6月3日時点において,本件迂回配管によって下水道使用料を免れるとの故意を有さず,「偽りその他不正の手段」により下水道使用料を免れたとはいえない。 ウまた,A市長が過料の倍率を,当初の告知時の5倍から過料処分時の2倍に変更した理由として被告が掲げるものは,いずれも極めて不合理であり,その決定及び変更は極めて恣意的であるといわざるを得ず,本件過料処分が行政権の裁量を逸脱したものであることは明白である。また,原告Cは,他の類似事例と比較しても悪質性が格段に低いのであるから,本件においては過料を科さずとも下水道使用料の不正免脱を防止するという過料制度の目的を十分に達することができるといえ,本件過料処分はその必要がなく,本件過料処分は,比例原則に反し行政権の裁量を逸脱しているといわざるを得ない。 エ本件過料処分決定通知書には,2倍という倍率がいかなる理由に基づくかの記載がなく,理由附記の不備の違法がある。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲各証拠等によれば,以下の事実(前記前提となる事実を含む。) 知書には,2倍という倍率がいかなる理由に基づくかの記載がなく,理由附記の不備の違法がある。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲各証拠等によれば,以下の事実(前記前提となる事実を含む。)が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。なお,証拠等を付さない 事実は,当事者間に争いがない。 (1) 本件施設の構造等本件施設は,①浴場施設部分と,浴場施設部分以外の部分として,②理容サービスを提供する「O」,③リフレクソロジー及びボディケアサービスを提供する「P」,④「貸切個室」及び⑤便所部分(大便器が3個,小便器が5個,大小便兼用器が8個)があり,かかる部分で温泉水及び井戸水が使用されている。(甲11,43,47)これらのうち,浴場施設(サウナ,岩盤浴等を含む。)は,男女湯ごとに,それぞれ,湯屋わたり部分が30.15平方メートル,湯屋部分が178.62平方メートル,アロマ塩サウナ部分が15.19平方メートル,ドライサウナ部分が22.66平方メートル(甲45の1),露天風呂部分が155.1平方メートルあり(甲46),男女共用として,岩盤浴部分が115.17平方メートルあり(甲45の2),計は918.61平方メートルである。 なお,浴場施設内には,アカスリや洗髪サービスを提供する「Q」がある。 (2) 本件施設に本件迂回配管が設置された経緯ア原告らは,本件施設の工事開始後,E,H,Fらとともに,週に1度のペースで定例の会議(以下「定例会議」という。)を開催していた。定例会議では,主として,原告Bの意向が確認されていた。 (証人I,同G)。 イ Hは,平成14年6月頃,本件施設の揚湯試験を行ったところ,当初の予想を超える湯量(毎分400リットル)が涌出したため,このことを定例会議で報告した。(証人I)原告Bは (証人I,同G)。 イ Hは,平成14年6月頃,本件施設の揚湯試験を行ったところ,当初の予想を超える湯量(毎分400リットル)が涌出したため,このことを定例会議で報告した。(証人I)原告Bは,同月頃,大量の湯が湧出したことを受けて,Eに対して,本件施設の浴槽を「ろ過循環方式」から「掛け流し方式」 に変更したいという指示を出し,本件施設の浴槽の一部が「掛け流し方式」に変更された。 その際,Fは,同原告に対して,「掛け流し方式」にした場合のエネルギーコストに関するランニングコストを計算したものを提示していたが,そこには,流量や水量は記載されていたものの,下水道料金は記載されていなかった。 (乙7の2,証人G)ウその後の定例会議では,「掛け流し方式」への変更に伴って下水道代金が「ろ過循環方式」の場合より増加するという話が出ており,何らかの方法で下水道代金が低減できないかという点について議論がされた。(証人I)Hは,FのGから配管構造を工夫して欲しいと言われ,定例会議で下水道料金の問題の話が出ていたこともあり,下水道料金を低減する工夫のことであると判断して,本件迂回配管を施工することとした。(乙6の2,証人I)エ Hは,本件施設の浴場に温泉水や井戸水を供給するために,温泉水及び井戸水を汲み上げるための2本の揚水管を設置したが,これら揚水管につき,それぞれ地中に本管とは別に本件迂回配管を設けた。 そして,Hは,本件迂回配管と本管の関係を縦構造とし,本件迂回配管を本管の下部に来るよう設置した上で,本管と本件迂回配管との間に格子状に組まれた金属を置き,その上に鉄板を乗せて,砂利を敷き詰めることで,本件迂回配管及びそのバルブを砂利等により隠れる状態とした。揚水管の口径については,井戸水については,本管を50ミリメ 間に格子状に組まれた金属を置き,その上に鉄板を乗せて,砂利を敷き詰めることで,本件迂回配管及びそのバルブを砂利等により隠れる状態とした。揚水管の口径については,井戸水については,本管を50ミリメートル,本件迂回配管を75ミリメートルとし,温泉水については,本管を40ミリメートル,本 件迂回配管を65ミリメートルとした。これらの構造は,全てHが考案した。(甲23,24,乙17,証人I)本件迂回配管設置工事は,本件施設の建設工事の現場から数メートルしか離れていない場所で,覆いなどを施さず,白昼約1週間に亘って施工された。(乙23の1ないし12,証人I)オなお,Hは,「掛け流し方式」に変更されたことに伴い,Fから温泉の湧出温度を上げて欲しいという要望を受け,揚湯設備を設置する位置を,当初予定していた位置から下げ,地上から深度1000メートル付近とし,かつ,二重管という特殊な保温管を使用することとした。 この工事の変更で増額した工事費用は,原告Bの子会社である株式会社R(以下「R」という。)が支払った。 (証人I) 2 争点に関する判断(1) 争点(1)(下水道使用料の算定方法の違法性)についてア下水道使用料の規定の趣旨法は,下水道区域内では,土地の所有者,使用者又は占有者に公共下水道の使用を義務付けており(法10条),使用するか否かについての選択権を与えていない。また,法は,公共下水道管理者に公共下水道の使用者から使用料を徴収する権限を付与しており(法20条1項),地方自治法も,下水道使用料の支払を怠った者に対して滞納処分の例に従い強制徴収の手段をとることを可能としている(地方自治法231条の3第3項,附則6条3号)。このような下水道使用料の性質にかんがみ,法は,公共下水道管理者が恣意的に下水道使用 して滞納処分の例に従い強制徴収の手段をとることを可能としている(地方自治法231条の3第3項,附則6条3号)。このような下水道使用料の性質にかんがみ,法は,公共下水道管理者が恣意的に下水道使用料を算定できないようにし,公共下水道の使用者に対して不測の負担を課さないようにするため,条例で下水道使用料 の徴収について定めることを要求し(法20条1項),条例で下水道使用料を定めるにあたっての原則を定めたものと解される(同条2項)。 もっとも,法が下水道使用料の範囲及び方法等の詳細を自ら規定せず条例に委ねているところからすると,地域の実情に即するよう十分な配慮をする必要があることも,法の趣旨であると解される。 下水道使用料に関するA市条例の解釈にあたっても,このような法の趣旨を考慮する必要がある。 イ汚水排除量(A市条例17条1項2号)(ア) A市条例17条1項2号は,水道水以外の水を使用した場合の汚水排除量は揚水量により,揚水量は,計測装置(同条例17条2項)を取り付けたときは,計測装置で測定された水量とし,「それ(計測装置)がないとき」には,別紙2に定める基準により市長が認定するものとしており(前記第2の2(2)ア(イ)),汚水排除量の算定基準を上記2通りのいずれかの方法によると明確に規定している。つまり,同条例の汚水排除量の基準については,計測装置が設置されていない場合も想定した規定になっているのである。 そして,前記(1)アの趣旨から,法が,使用料について,定率又は定額をもって明確に定められること(同条例20条2項3号)及び特定の使用者に対し不当な差別的取扱をしないこと(同項4号)を要求していることからすれば,水道水以外の水の汚水排除量は,同条例17条1項2号によって一律に計算されることが予定されていると 号)及び特定の使用者に対し不当な差別的取扱をしないこと(同項4号)を要求していることからすれば,水道水以外の水の汚水排除量は,同条例17条1項2号によって一律に計算されることが予定されていると解される。 このような法及び同条例の趣旨及び文理にかんがみると,「それ(計測装置)がないとき」とは,計測装置を取り付けなかった場 合を含むことは勿論のこと,計測装置を設置していたとしても,故障等なんらかの事情で揚水量の全てを正確に測定できなかった場合も含むものと解するのが相当である。 (イ) これに対し,被告は,本件のように計測装置を設ける旨の念書を提出しながら殊更違法な迂回配管を設置して不正に隠ぺいした(前記前提となる事実(2)ウ,前記1(2)エ)汚水排除量については,A市条例の想定外のことであり,同条例17条1項2号を根拠として算定することはできず,へーゼン・ウィリアムスの公式により算定することは適法であると主張する。 しかしながら,下水道使用者が上記のような汚水排除量を不正に隠ぺいしたことによって,同条例17条1項2号の適用を否定すべき根拠は明らかでない。被告の主張は,そもそも,本件が同条例の想定外であることを論理的に説明するものではないが,仮に本件が同条例の想定外であるとしても,A市長が,条例に規定がなく,その一義的合理性も明らかでない「へーゼン・ウィリアムスの公式」を用いることにより汚水排除量を自由に算定できるとすることは,上記のような法20条1項,2項の趣旨を没却し,許されないといわざるを得ない。 したがって,被告の前記主張は採用できない。 (ウ) そうすると,本件では,本管には計測装置があるが,本件迂回配管に計測装置がなかった(前記第2の3(3)ア)ため計測装置により揚水量を全て正確に計測することができなかっ 主張は採用できない。 (ウ) そうすると,本件では,本管には計測装置があるが,本件迂回配管に計測装置がなかった(前記第2の3(3)ア)ため計測装置により揚水量を全て正確に計測することができなかったのであるから,「それ(計測装置)がないとき」にあたるものとして,汚水排除量の認定は別紙2の基準によることになる。 ウ汚水排除量の算定基準(ア) 法は,下水道使用料を条例で定める際には,定率又は定額をも って明確に定めることを要求しており(法20条2項3号),A市条例は法の定めを受けて,15条1項,別表第1により,汚水排除量を「一般汚水」と「浴場汚水」に分けた上で定額及び定率(一般汚水)又は定率(浴場汚水)をもって明確に定めている。 そして,「浴場汚水」は,同条例16条5号,別表第2の「浴場汚水」欄において,「公衆浴場法(昭和23年法律第139号)の規定による浴場から排除される汚水」と明確に定義されている(前記第2の2(2)イ,別紙2)。また,公衆浴場法の規定による公衆浴場は,「温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設」と定義されている(同法1条1項)。 そうすると,「浴場汚水」とは,特段の限定を加えることなく,「温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設から排出される汚水」を指すと解するほかはない。 (イ) この点,被告は,条理に照らすと,「浴場汚水」とは,公衆浴場法に基づく公衆浴場であって,かつ,入浴料金が物価統制令に基づく統制額として埼玉県の指定した額の適用を受ける公衆浴場から排除される汚水であると解釈すべきである旨主張する。ここでいう「条理」とは,物価統制令の適用対象となる一般公衆浴場は,公衆衛生上地域住民にとって日常生活に密着した施設であることから,下水道使用料を優遇することによ あると解釈すべきである旨主張する。ここでいう「条理」とは,物価統制令の適用対象となる一般公衆浴場は,公衆衛生上地域住民にとって日常生活に密着した施設であることから,下水道使用料を優遇することにより,入浴料金を定額に抑え,もって公衆衛生の維持を図る必要があるのに対し,本件施設のようないわゆるスーパー銭湯にはそのような必要がない,という趣旨であると解される。 しかし,前記アで述べたとおり,下水道使用料については,その性質にかんがみ,行政の恣意的運用を抑制する必要性が高く,下水道利用者に不測の負担を課さないようにするためには,汚水 排除量の算定基準の規定の解釈は,その文言から一義的に導ける範囲に留めるべきであり,A市条例が「浴場汚水」の定義について「公衆浴場法に基づく公衆浴場から排除される汚水」と明確に規定しているのであるから,それに同条例に記載すらない新たな文言を加えて適用範囲を狭めることは,同条例の文言からは到底読み取ることができず,解釈の範囲を超えているといわざるを得ない。 したがって,被告の前記主張は採用できない。 (ウ) また,被告は,①被告以外の地方公共団体の条例は,「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」を区別して定めていること,②原告Bは被告に対して計測装置によって検針した量で下水道使用料を支払う旨の念書を提出していたこと,③原告らは,「一般汚水」の算定基準による下水道使用料を支払い続けていること,④原告Bは,埼玉県に対して,公衆浴場の種類を「特殊(保養休養)その他」と記載して公衆浴場許可申請をしており,埼玉県も本件施設を「その他の公衆浴場」として営業許可を与えていること,⑤スーパー銭湯業界では,下水道使用料の算定にあたり,各自治体の下水道条例に定められている「一般汚水」の単価が用いられていることは公 本件施設を「その他の公衆浴場」として営業許可を与えていること,⑤スーパー銭湯業界では,下水道使用料の算定にあたり,各自治体の下水道条例に定められている「一般汚水」の単価が用いられていることは公知の事実であり,「浴場汚水」の単価が用いられている例は皆無であること,⑥原告らのグループが運営している他のスーパー銭湯では,「一般汚水」の算定基準による下水道使用料を支払っていることを理由に,本件施設の下水道使用料については「一般汚水」の算定基準が適用されると主張する。 しかし,前記アで述べたとおり,法は,地域の実情に沿った下水道使用料にすべく,その具体的算定基準を条例に委ねているのであり,地域によりスーパー銭湯に適用される算定基準が異なる ことは法20条1項,2項に何ら反しないし,逆に,他の地域が条例でスーパー銭湯に「一般汚水」の算定基準を適用すると定め,実際に適用していたとしても,本件施設とは適用される条例が異なる以上,A市条例の適用に影響があるものではない。したがって,上記①⑤⑥は,被告の上記主張の根拠となるものではない。 また,A市長が,同条例の規定に反して,「一般汚水」の算定基準により下水道使用料の賦課徴収を行い,原告らが従前「一般汚水」の算定基準により使用料を支払っていたとしても,かかる下水道使用料の違法な徴収が適法となるものではないことは,いうまでもないところである。したがって,上記③は,被告の主張を根拠付けるものではない。 そして,公衆浴場の許可申請手続及びその許可については,公衆浴場法2条1項等に定められているが,かかる規定は,法及びA市条例と制度趣旨が異なるため,上記④は被告の上記主張の理由とならないし,また,原告Bが被告に対して計測装置によって検針した量で下水道使用料を支払う旨の念書を提出していたこと かる規定は,法及びA市条例と制度趣旨が異なるため,上記④は被告の上記主張の理由とならないし,また,原告Bが被告に対して計測装置によって検針した量で下水道使用料を支払う旨の念書を提出していたことは,下水道使用料の算定基準と全く関係がない事柄であり,上記②も,被告の上記主張の理由にならない。 したがって,被告の主張は採用できない。 (エ) 本件施設は,温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設であり,公衆浴場法(昭和23年法律第139号)の規定による浴場そのものであるから,本件施設の浴場部分から排水される汚水についての下水道使用料の算定にあたっては,「浴場汚水」の算定基準を適用するのが相当である。 エ本件通知処分1,2の違法性前記イ,ウで判断したとおり,本件施設に係る下水道使用料につい ては,A市条例の定めるとおり,別紙2の基準によった汚水排除量を基礎に,「浴場汚水」の算定基準を適用して算定すべきであるから,これと異なる被告の算定方法は違法である。 そして,本件において,上記の正しい算定方法により算定した場合に,原告らの支払うべき下水道使用料が前記前提となる事実(2)オの既払額を超えることの証明はない。なお,原告らの主張によっても,被告の主張する支払期間に係る適正な使用料は,原告Bについて739万0774円,原告Cについて1463万0846円となり,上記既払額を大きく下回る。 したがって,本件通知処分1,2は,その全部が違法というべきである。 3 争点(3)(本件過料処分の違法性)について過料処分を科すためには,偽りその他の手段により「使用料・・の徴収を免れた」といえなければならない(A市条例24条2項,前記法令の定め(2)エ)。 本件では,前記2で判断したとおり,原告Cには下水道使用料の未 すためには,偽りその他の手段により「使用料・・の徴収を免れた」といえなければならない(A市条例24条2項,前記法令の定め(2)エ)。本件では,前記2で判断したとおり,原告Cには下水道使用料の未払があると認めるに足りず,同原告が,「使用料・・の徴収を免れた」といえないため,過料処分を科すための前提を欠いている。したがって,本件過料処分も,全部違法というほかない。 第4 結論以上の次第であり,原告B及び原告Cの請求は,いずれも全部理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官原啓一郎 裁判官鈴木拓児 裁判官今西由佳子
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