- 1 - 主 文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,130万円及びこれに対する平成30 年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 5 4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを5分し,その3を控訴人 の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 控訴の趣旨 10 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,300万円及びこれに対する平成30年1月2 2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(以下,略語は特に定めない限り原判決の表記に従う。) 1 本件は,控訴人(▲▲▲▲年生)が,被控訴人に対し,被控訴人が控訴人を 15 在日韓国・朝鮮人であることを理由に著しく侮辱するなど不当に差別的な内容 の記事(本件記事)を被控訴人の開設したブログ(本件ブログ)に投稿したこ と(本件投稿行為)により,控訴人の名誉を毀損し侮辱してその人格権を侵害 したなどと主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料等の合 計300万円及びこれに対する不法行為の日(本件投稿行為をした日)である 20 平成30年1月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 害金(法定利率につき,平成29年法律第44号による改正前の民法の規定に よる。以下同じ。)の支払を求める事案である。 2 原審は,本件投稿行為は,控訴人に対する名誉毀損とはならないものの,著 しい侮辱,中傷であるとして,控訴人の請求につき,慰謝料等の合計91万円 25 及びこれに対する同日か を求める事案である。 2 原審は,本件投稿行為は,控訴人に対する名誉毀損とはならないものの,著 しい侮辱,中傷であるとして,控訴人の請求につき,慰謝料等の合計91万円 25 及びこれに対する同日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支 - 2 - 払を求める限度で認容し,その余を棄却する判決(原判決)をしたところ,控 訴人が,原判決を不服として,本件控訴を提起した。 3 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次の 4のとおり当審において当事者が敷衍又は追加した主張を付け加えるほか, 原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「1」から「3」まで 5 に各記載のとおりであるから,これを引用する。 4 当審において当事者が敷衍又は追加した主張 ⑴ 本件各記載による名誉毀損の成否について(原判決の争点1) ア 控訴人の主張 ある表現における事実の摘示又は意見ないし論評が人の社会的評価を 10 低下させるものであるかどうかは,当該表現についての一般の読者の普 通の注意と読み方を基準としてその意味内容を解釈し判断すべきである ところ,本件では,被控訴人が開設した本件ブログにおける記載内容が 問題となっているのであるから,ここでいう「一般の読者」としては, 本件ブログの読者層が想定されるべきである。そして,本件ブログは韓 15 国,朝鮮を誹謗中傷し排外的な内容の記事が主に掲載されたブログで あって,本件ブログの読者層には韓国,朝鮮を忌み嫌い排外思想を有す る人物が多く集まるという事情があるから,本件各記載が控訴人の社会 的評価を低下させるものであるか否かを判断するに当たっての「一般の 読者」としても,本件ブログの特殊性及び上記の事情を考慮すべきであっ 20 て,一般人を基準にして判断すべきではない。 社会 的評価を低下させるものであるか否かを判断するに当たっての「一般の 読者」としても,本件ブログの特殊性及び上記の事情を考慮すべきであっ 20 て,一般人を基準にして判断すべきではない。 本件記載1における「成り済ます」,「通名などと言う『在日専用の犯 罪用氏名』」という表現は,控訴人が犯罪を容易に行うため通名を用いて 日本人でないのに日本人になり切った風にしているとの事実を摘示する ものであり,控訴人が自己の正体を隠して他人を偽る不誠実な人間であ 25 るとの印象を社会に与える。また,本件記載2における「悪性外来寄生 - 3 - 生物種」との表現は,単なる侮辱表現ではなく,「在日韓国・朝鮮人は, 日本人に望まれもしないのに,日本社会で生活し,日本人にすがり,日 本人の利益を食い物にしたりして,日本社会に害をもたらす民族である」 との事実を摘示するとともに,この事実を前提に控訴人の悪性を強調す る意見ないし論評を公表したものと解される。したがって,いずれの表 5 現も,控訴人の社会的評価を低下させるものというべきである。 イ 被控訴人の主張 名誉毀損として保護されるべきは,控訴人の外部的名誉すなわち社会 的評価であるところ,控訴人の社会的評価を決し得るのは控訴人を取り 巻く社会的環境であって,本件ブログの読者のみではない。したがって, 10 一般の読者として想定されるべきは,控訴人の社会的評価を決し得るい わゆる通常の常識的な意識と思想を有する人であって,控訴人が主張す るような韓国,朝鮮を忌み嫌い排外思想を有する人物を想定すべきでは ない。また,そのような偏った排外思想を有する人物は,控訴人が自ら 明らかにしている在日韓国,朝鮮人ないしその子孫であるという一事を 15 もって控訴人に対する社会的評価を低下させるのであるから,本件各記 載は ,そのような偏った排外思想を有する人物は,控訴人が自ら 明らかにしている在日韓国,朝鮮人ないしその子孫であるという一事を 15 もって控訴人に対する社会的評価を低下させるのであるから,本件各記 載はおよそ関係がないというべきである。 一般の読者として,通常の常識的な知識と思想を有する人物を前提と すれば,本件記載1における「成り済ます」との表現及び本件記載2に おける「悪性外来寄生生物種」との表現によって控訴人の社会的評価が 20 低下することはあり得ない。すなわち,「成り済ます」との表現について は,本件記事で引用されている本件配信記事によれば,控訴人が韓国籍 と日本籍を持つ日本人であることが分かるようになっているから,本件 記載1を読んだ一般の読者において控訴人が日本人ではないとの印象を 受けることはない。また,「悪性外来寄生生物種」との表現は,何らの具 25 体的根拠の摘示もない抽象的な誹謗中傷,質の低い悪口の域を出ないも - 4 - のにすぎず,一般の読者の控訴人に対する社会的評価を低下させるよう なものではない。 ⑵ 慰謝料等の額について(原判決の争点3) ア 控訴人の主張 本件投稿行為は,控訴人の名誉感情を害するのみならず,控訴人の個人 5 の尊厳をはじめ憲法13条及び憲法14条が保障する人格権を侵害し,特 定の属性を持つ集団の構成員である控訴人の人間としての地位を否定する 不当な差別的言動であって,単なる名誉毀損よりも不利益が大きい。 このような本件投稿行為の違法性の大きさ,悪質性を考慮すれば,慰謝 料としては少なくとも200万円が認められるべきであり,弁護士費用と 10 しては100万円が認められるべきである。 イ 被控訴人の主張 控訴人の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件投稿行為 認められるべきであり,弁護士費用と 10 しては100万円が認められるべきである。 イ 被控訴人の主張 控訴人の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件投稿行為による不法行為の成否については,原審と同じく, 15 控訴人に対する名誉毀損とはならず,名誉感情の侵害による不法行為が成立す るものと判断するが,被控訴人が控訴人に対して支払うべき損害賠償額につい ては,原審と異なり,控訴人の請求は,130万円及びこれに対する平成30 年1月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める 限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。その理由は,次のと 20 おり原判決を補正し,次の2のとおり,当審において当事者が敷衍又は追加し た主張に対する当裁判所の判断を付け加えるほか,原判決の「事実及び理由」 中の「第3 当裁判所の判断」の「1」から「3」までに記載のとおりである から,これを引用する。 (原判決の補正) 25 ⑴ 原判決14頁17行目の「印象を与える」を「事実を摘示し,そのような - 5 - 印象を与えるもの」に改める。 ⑵ 原判決16頁25行目の「反する」の次に「差別的言動及び」を加える。 ⑶ 原判決18頁13行目冒頭から21行目末尾までを次のとおり改める。 「ウ そうすると,被控訴人が,控訴人代理人から通知を受け取ってから間 もなく,控訴人に対し,控訴人を侮辱する内容の本件記事を作成して本 5 件ブログに投稿したことにつき反省と謝罪の意思を示す文書を被控訴人 代理人を通じて送付し(前提事実⑷イ),本件記事を含む本件ブログを 非公開にしたこと(甲15,乙1,弁論の全趣旨)等の事情を考慮して も,本件投稿行為により控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料額と しては100万円が相当であるという イ),本件記事を含む本件ブログを 非公開にしたこと(甲15,乙1,弁論の全趣旨)等の事情を考慮して も,本件投稿行為により控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料額と しては100万円が相当であるというべきである。」 10 ⑷ 原判決19頁25行目冒頭から20頁4行目末尾までを次のとおり改め る。 「 そうすると,本件訴訟において得られるべき経済的利益が り100万円であるので,これを考慮し,本件ブログに係るブログサイトの 運営会社及び経由プロバイダに対する発信者情報開示に関する交渉,仮処分 15 の申立手続等に要した費用相当の損害として,20万円をもって本件投稿行 為と相当因果関係のある損害であると認める。」 原判決20頁7行目の「7万円」を「10万円」に改める。 2 当審において当事者が敷衍又は追加した主張について ⑴ 本件各記載による名誉毀損の成否について 20 ア 控訴人は,本件各記載が控訴人の社会的評価を低下させるものであるか 否かを判断するに当たっての「一般の読者」としては,一般人ではなく本 件ブログの読者層を基準とすべきであり,その読者層には韓国,朝鮮を忌 み嫌い排外思想を有する人物が多いという特殊事情を考慮すべきであると 主張する。 25 また,控訴人は,本件各記載における表現について,その内容からして, - 6 - いずれも事実を摘示するもので,控訴人の社会的評価を低下させるなどと 主張する。 イ しかしながら,名誉毀損とは,事実の摘示又は意見ないし論評の表明が 人の社会的評価を低下させることをいうのであって,それは,一般の読者, すなわち不特定多数の読者を基準として客観的に判断すべきものであり, 5 本件ブログの読者として想定される特定の考え方を有する者のみを基準に 判断すべきものではない。したがって,この点に関する上記 , すなわち不特定多数の読者を基準として客観的に判断すべきものであり, 5 本件ブログの読者として想定される特定の考え方を有する者のみを基準に 判断すべきものではない。したがって,この点に関する上記の控訴人の主 張は採用できない。 ウ また,一般の読者の通常の読み方からすれば,控訴人の指摘する本件各 記事における各表現は,その記載自体からみて,いずれも事実を摘示する 10 ものとは解されず,事実を前提とする意見又は論評の表明であると解する こともできないのであって,この点においても,控訴人の社会的評価を低 下させるとはいえない。もとより,上記各表現は,著しく差別的,侮蔑的 であり,悪意に満ちたものであって,控訴人の名誉感情を著しく害するも のであることが明らかであるが,そのような表現であることにより控訴人 15 の社会的評価を低下させるとはいえない。 ⑵ 慰謝料等の額について ア 控訴人は,本件投稿行為が控訴人の名誉感情を害するのみならず,控訴 人の個人の尊厳や人格権を侵害し,控訴人の人間としての地位を否定する 不当な差別的言動であって,本件投稿行為の違法性の大きさ,悪質性を考 20 慮すれば,慰謝料としては少なくとも200万円が認められるべきであり, 弁護士費用としては100万円が認められるべきである旨主張する。 イ そこで検討するに,本件各記載における表現は,著しく差別的,侮蔑的 であるばかりでなく,その読者に対し,差別的・侮蔑的言動を煽るものと なっており,控訴人の名誉感情を著しく害し,その個人としての尊厳や人 25 格を損なうものであって,本件投稿行為は極めて悪質であるというほかな - 7 - い。しかも,本件記事は,不特定多数の第三者が極めて容易に閲覧するこ とができるインターネット上に投稿されており,本件記事が投稿された当 時,控訴人 稿行為は極めて悪質であるというほかな - 7 - い。しかも,本件記事は,不特定多数の第三者が極めて容易に閲覧するこ とができるインターネット上に投稿されており,本件記事が投稿された当 時,控訴人が▲▲▲年生という多感な時期にあったことからすれば,本件 投稿行為が控訴人に与えた精神的苦痛は多大であり,その成長にも悪影響 を及ぼしかねないものであったということができ,これも,本件投稿行為 5 の悪質性に関する重要な要素であるというべきである。 ウ そうすると,前記のとおり補正の上引用する原判決の判示するような被 控訴人の対応は,控訴人の被害の拡大をある程度防止する効果はあるもの の,上記イのような本件投稿行為によりいったん生じた被害をさほど軽減 するものとはいえず,控訴人の対応を考慮しても,控訴人が受けた精神的 10 苦痛に対する慰謝料額は100万円とするのが相当である。 そして,このほか,前記のとおり補正の上引用する原判決の判示のとお り,本件投稿行為と相当因果関係のある損害として,発信者情報開示関連 費用相当の損害20万円並びに本件訴えの提起及び訴訟追行に係る弁護 士費用相当の損害10万円を認めるのが相当である。 15 したがって,被控訴人が控訴人に対して支払うべき損害賠償額は,慰謝 料100万円,発信者情報開示関連費用相当損害の賠償20万円及び弁護 士費用相当損害の賠償10万円の合計130万円となる。 第4 結論 以上によれば,控訴人の請求は,130万円及びこれに対する平成30年1 20 月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度 で理由があるところ,これと異なる原判決は一部失当であって,本件控訴は一 部理由がある。 よって,原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 25 を求める限度 で理由があるところ,これと異なる原判決は一部失当であって,本件控訴は一 部理由がある。 よって,原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 25 東京高等裁判所第22民事部 - 8 - 裁判長裁判官 白 井 幸 夫 5 裁判官 寺 本 昌 広 裁判官 伊 藤 一 夫 10
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