令和2(ネ)10049 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和3年4月15日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成30(ワ)21448
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判決文本文17,434 文字)

令和3年4月15日判決言渡 令和2年(ネ)第10049号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第21448号) 口頭弁論終結日令和3年1月19日 判決 控訴人株式会社コプロス 同訴訟代理人弁護士神邊健司 同補佐人弁理士加藤久 被控訴人株式会社スミテックエンジニアリング(以下「被控訴人スミテック」という。) 被控訴人大善建設株式会社(以下「被控訴人大善」という。) 被控訴人両名訴訟代理人弁護士利光洋 同訴訟代理人弁理士松尾憲一郎 同補佐人弁理士今中崇之 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らは,原判決別紙物件目録記載の立坑構築機を譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被控訴人大善は,原判決別紙物件目録記載の立坑構築機を使用してはならない。 4 被控訴人スミテックは,原判決別紙物件目録記載の立坑構築機を廃棄せよ。 5 被控訴人大善は,原判決別紙物件目録記載の立坑構築機を廃棄せよ。 6 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1億2375万0051円及びこれに対する平成30年7月26日からの遅延損害金を支払え。 の立坑構築機を廃棄せよ。 5 被控訴人大善は,原判決別紙物件目録記載の立坑構築機を廃棄せよ。 6 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1億2375万0051円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員 を支払え。 7 被控訴人大善は,控訴人に対し,531万3600円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原判決に同じ。) 1 事案の概要本件は,名称を「立坑構築機」とする発明についての特許(特許第3694724号)に係る特許権を有する控訴人が,被控訴人らに対し,原判決別紙物件目録記載の立坑構築機(被告製品)が上記特許のうち請求項1に係る特許発明(本件発明)の技術的範囲に属すると主張して,①被控訴人らが被告製品を 譲渡等することにより,あるいは,被控訴人大善が被告製品を使用することにより,本件特許権を侵害するおそれがあるとして,特許法100条1項に基づき,被控訴人らに対し被告製品の譲渡,貸渡し等の差止めを,被控訴人大善に対し被告製品の使用の差止めをそれぞれ求め,また,同条2項に基づき,被控訴人らそれぞれに対し,被告製品の廃棄を求めるとともに,②被告製品の譲渡 により本件特許権を侵害したとして,被控訴人らに対し,民法709条,同法 719条1項に基づき,連帯して,1億2375万0051円(特許法102条2項の推定による場合は4931万2800円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年7月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,③被控訴人大善が被告製品の使用により本件特許権を 状送達の日の翌日である平成30年7月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,③被控訴人大善が被告製品の使用により本件特許権を侵害したとして,民法7 09条及び特許法102条2項に基づき,2332万円及びこれに対する平成30年7月26日から支払済みまで上記年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,被告製品は本件発明の技術的範囲に属さず,本件特許権の侵害(文言侵害)が成立しない上,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきも のであって,特許法104条の3第1項の規定により,控訴人は,被控訴人らに対し,本件特許権を行使することができないから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がないとして,これらを棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴を提起した。 なお,控訴人は,上記③の請求について,当審において,請求額を531万 3600円及びこれに対する遅延損害金に減縮し,被控訴人大善は,この請求の減縮に同意した。 2 「前提事実」,「争点」及び「争点に関する当事者の主張」は, 原判決20頁16行目冒頭から21行目末尾までを「被控訴人大善が,被告製品を七軒町雨水幹線築造工事において使用したことにより受けた利益の額は531万3 600円であり,同額は特許法102条2項に基づき控訴人の損害と推定される。」と改め,後記3及び4のとおり,当審における当事者の補充主張及び新たな主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における補充主張 (1) 争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との文言の充足性(被 判決の「事実及び理由」第2の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における補充主張 (1) 争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との文言の充足性(被 告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないとしても,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」とは,被告製品のような,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成を排斥しておらず,被告製品は上記文言を充足するとい えるか否か))についてア控訴人の主張原判決は,構成要件E「両端部を各々接続して」を「両端部を各々隙間なく接続して」の趣旨と解釈するが,以下のとおり誤りである。 第一に,「接続」の意味を,一般的な辞書類でみると,広辞苑第7版で は,「つなぐこと。つながること。続けること。続くこと。」とされ,Goo辞書(甲28)では,「1 二つ以上のものがつながること。また,つなぐこと。」,Weblio辞書(甲29)では,「①つなぐこと。つながること。 」とされているところ,機械の分野では,「接続」する,すなわち「つなぐ」場合には,高圧の液体や気体を搬送するためのパイプの接 続の場合,鉄道レールの接続の場合など,様々な態様があり,「接続」の文言は,一義的に「密着状態で隙間なく接続されている」ものだけに限定して使用されているわけではない。本件発明において「円弧状ベアリング片」を「接続」する目的は,「円弧状ベアリング片」を接続することによって「環状の歯車付ベアリングを構成する」ことであるが,「環状の歯車 付ベアリング」がベアリングとしての機能を発揮するためには,使用時に転動体が内輪と外輪の間 ベアリング片」を接続することによって「環状の歯車付ベアリングを構成する」ことであるが,「環状の歯車 付ベアリング」がベアリングとしての機能を発揮するためには,使用時に転動体が内輪と外輪の間を支障なく360度スムーズに回転移動することが必要であるものの,そのために,組み合わされた「円弧状ベアリング片」の端部に転動体の移動に支障をきたさない程度の多少の隙間があっても何ら支障はない。ベアリングの転動体がこぼれ落ちないようにすること が本件発明の解決課題であるとすれば,セグメント片の両端部を密着させ なくとも,接続面の隙間を転動体がこぼれ落ちない程度に狭くすることでも十分に達成することができる。 第二に,本件発明の立坑構築機のように,複数の部材(パーツ)を組み立てて一つのまとまりのある物を構成する場合には,一つ一つのパーツ自体の加工(製造)誤差と組立に伴う誤差が必ず生じ,製品はその誤差を考 慮した設計となっている。被告製品の歯車付きベアリングの図面である甲第6号証の3(以下,書証については単に「甲6の3」などと略記する。)においても,図の2か所の寸法に公差が記載されているし,円弧状ベアリング片を組み立て「歯車付き環状ベアリング」を構成した場合,隙間なしで設計したものであっても,必ず数ミリ程度の隙間が生じるものである。 したがって,本件発明の「接続」は,組み立て後,ベアリングとしての機能を奏するように接続すれば足り,「1mm程度の隙間があるものを権利範囲に含まない」と限定することは,およそ全ての装置を権利範囲外のものとすることであり,技術常識上ありえない。この点につき,被控訴人らは,被告製品の「隙間」について設計時からの計算により設けたものであ り,偶発的にできたものではない旨主張する。しかし,仮に,予め予 ることであり,技術常識上ありえない。この点につき,被控訴人らは,被告製品の「隙間」について設計時からの計算により設けたものであ り,偶発的にできたものではない旨主張する。しかし,仮に,予め予定されていたものであったとしても,構成要件Eを充足することは変わらない上,被控訴人らが主張するように「隙間」が重要な技術的意義を有するものであれば,その設計図書に明示されていなければならないが,甲6の3には,この点について何の表示もない。 イ被控訴人らの主張本件明細書(甲5)において,【従来の技術】に関して【0004】には「円弧状歯車片79,80を隙間をあけて対向配置している。」とあり,【発明が解決しようとする課題】として【0006】には「使用時に各両端部を当接させず,その間に隙間85,86を有して配置されている。」, 【0007】には「ベアリングを部分的に切断し,端部を当接させない状 態で回転させると,内部の転動体が端部からこぼれ落ちてしまうので」,【0008】には「円弧状歯車片79,80が隙間85,86を移動するときには・・・端部が隙間85,86を通過する度に回転状態が不安定になるという問題があった。」とされており,これらの問題を解決するため【課題を解決するための手段】として【0011】には「円弧状ベアリン グは隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成し,」とあり,【発明の実施の形態】として【0020】には「円弧状ベアリング片21,22は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリング2を構成する。」,【0024】には「円弧状ベアリング片21,22の両端部を当接させる。」,【0027】には「分割内輪部23の端部同士と,分割 外輪部24の端部同士・・・をボルト等を用いて締結 を構成する。」,【0024】には「円弧状ベアリング片21,22の両端部を当接させる。」,【0027】には「分割内輪部23の端部同士と,分割 外輪部24の端部同士・・・をボルト等を用いて締結固定することも可能である。」等とあるのであって,本件特許における「接続」が「円弧状のベアリング片」の「各々の両端部を」「隙間なく接続」することを指し,この「隙間なく」が一切の隙間を許容しないことは明白である。 そして,被告製品においては,客観的に隙間(クリアランス)が存在す るのであるから,その隙間(クリアランス)の程度いかんによらず,被告製品が本件発明の構成要件Eを充足することはない。 控訴人は,甲6の3の図面にクリアランスの記載がないと主張するが,同図面は,被控訴人スミテック作成に係るものではなく,部品会社作成に係るものである。 ⑵ 争点2-4(乙2発明に乙20発明を適用することに基づく進歩性欠如の有無)についてア控訴人の主張(ア) 本件発明の対象である「立坑構築機」は,工場に設置されるような大型装置とは異なり,頻繁に移動を伴う性質のものであり,しかも,工事 現場は,一般に,クレーン等も設置し難いような作業条件の悪いところ が多い。そのような条件の中で,作業現場毎に分解,組み立てを繰り返し頻繁に行わねばならず,いかに迅速・正確・安全に分解と組み立てができるかが,一般の装置にはない解決課題となる。 本件発明は,このような特殊な事情下で,迅速・正確・安全に大型立坑構築機の分解組み立てが可能な技術を提供したことに実質的価値があ り,本件の技術思想は,単に大きな装置を分解して搬送可能な大きさのものにしただけではなく,この種の立坑構築機で搬送時に一番支障となる「環状ベアリングを 可能な技術を提供したことに実質的価値があ り,本件の技術思想は,単に大きな装置を分解して搬送可能な大きさのものにしただけではなく,この種の立坑構築機で搬送時に一番支障となる「環状ベアリングを円弧状ベアリング片のまま周方向に分割可能なもの」として搬送できる大きさとし,かつその上で,搬送の障害とはならない部品については,次の現場での組み立てが迅速・正確・安全にでき るよう,必要以上に分割,分解することなく,可能な限り組み立て後の状況を維持するよう「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する円弧状ベアリング片を備え」た構成としたことにある。 (イ) 乙20公報の特許請求の範囲には「前記外輪セグメントと内輪セグ メントのいずれか一方を軸方向に分割して第1分割輪と第2分割輪を形成し」と記載されており,また乙20公報の84頁上右側3行目には「軸受セグメントを円形に組み合わせて転がり軸受を形成するため,軸受セグメントは軸方向に分解可能であり,破損による軸受セグメントの取替えも容易である」と記載されている。 このように,乙20発明において複数の軸受セグメントを組み立て環状とされた転がり軸受を周方向に分割するには,本件発明のように「内輪と外輪と転動体」を一体のまま,しかも把持機構に備えられたままで周方向に分割することはできず,外輪セグメントと内輪セグメントのいずれか一方を軸方向に分割して第1分割輪と第2分割輪に分割する作業 が必要となるので,次の現場で組み立てるに当たって,分割された第1 分割輪と第2分割輪を再度組み立て直し,軸受セグメントを組み立てる必要が生じる。 また,乙20発明では,組み立て使用された転がり軸受を分解する際には,軸受セグメントをばらばらにする必要があり,円 分割輪と第2分割輪を再度組み立て直し,軸受セグメントを組み立てる必要が生じる。 また,乙20発明では,組み立て使用された転がり軸受を分解する際には,軸受セグメントをばらばらにする必要があり,円弧状ベアリング片を構成する「内輪,外輪,転動体」を一体のまま周方向に分割する本 件発明の構成要件Eにかかる構成は,記載も示唆もない。なお,乙20発明の「転動体を含む保持器」に代えて,ベアリングの転動体として一般に使用されている鋼球を使用すれば,円弧状ベアリング片につき,内輪と外輪と転動体をばらばらに分解することなく一体のまま分割することも考えられるとしても,乙20発明にはそのような技術思想自体が存 在しないから,建設現場での分解,組み立てを容易にするためという目的をもって,乙20発明の「転動体を含む保持器」に代え「鋼球」とすることは,本件特許出願当時,当業者にとって容易なことではない。 (ウ) 原判決は,乙2公報に旋回ベアリング自体を分割することが一切記載されていないとしても,主引用発明である乙2発明と副引用発明であ る乙20発明の技術分野の関連性,課題の共通性,作用,機能の共通性から,当業者において,両者を組み合わせる動機付けがあると判断する。 しかし,乙2発明においては,昇降フレームについては,旋回ベアリングの取付座を分断するように分割する一方,旋回ベアリング自体を分割することは一切記載されておらず,その示唆もない。乙2発明におい て,装置の搬送を容易にする目的をもって,昇降フレームを分割するという考えがある以上,同様に搬送を容易にするために搬送に支障となる大型旋回ベアリングも分割する発想に至ることは当然であるのに,乙2発明では,旋回ベアリングはそのままの状態であることを考えると,これは,旋回ベアリング6自体を 搬送を容易にするために搬送に支障となる大型旋回ベアリングも分割する発想に至ることは当然であるのに,乙2発明では,旋回ベアリングはそのままの状態であることを考えると,これは,旋回ベアリング6自体を分割することはできない,しない方がよ い,との思想があることが容易に理解される。 一方,乙20発明には,乙2発明のこの思想とは相反する「軸受ベアリングを分割する」という思想があり,両者の技術思想は相反するから,乙2発明に乙20発明を組み合わせることに動機付けがないばかりか,両発明を組み合わせることに阻害要因がある。また,乙2発明に乙20発明を組み合わせて,装置として機能させるためには,乙2発明の回転 リング7の構成自体を大きく改変する必要が生ずるところ,「環状ベアリングを搬送できる大きさとし,かつその上で,搬送に障害とはならない部品については,次の現場での組み立てが迅速・正確・安全にできるよう,必要以上に分割,分解することなく,可能な限り組み立て後の状況を維持する」という解決課題の認識がない乙2発明と乙20発明をい くら組み合わせても,上記課題をもって,本件発明にたどり着くことはあり得ないから, 大きな改変をしてまで乙20発明を乙2発明と組み合わせることには明らかな阻害要因がある。 (エ) 顕著な作用効果本件発明は,構成要件Eを備えることで,「現場で使用後,次の現場 や修理のための工場への搬送のために,歯車付環状ベアリングを周方向に分解した後も,円弧状ベアリング片は,ベアリング片を構成する内輪,外輪,転動体にバラバラに分解することなく,一体のままで把持機構が備える構造となり,作業がし難い建設現場で,搬送のための分解が容易になるだけではなく,次の現場での組み立て時には,内輪と外輪と転動 輪,転動体にバラバラに分解することなく,一体のままで把持機構が備える構造となり,作業がし難い建設現場で,搬送のための分解が容易になるだけではなく,次の現場での組み立て時には,内輪と外輪と転動 体が一体のまま,その一体となった「円弧状ベアリング片」の端部を接続するだけで,迅速正確に,歯車付環状ベアリングを構成する(組み立てる)ことができる」という,単に乙2発明と乙20発明とを組み合わせただけでは到底期待することができない顕著な作用効果を奏するものであり,このような場合には,本件発明は乙2発明と乙20発明から当 業者が容易に想到できたものではないと解すべきである。 イ被控訴人らの主張(ア) 控訴人は,本件発明において,いかに迅速・正確・安全に分解と組み立てができるかが,一般の装置にはない解決課題となると主張するが,本件明細書においては,そのような記載はない。 乙20公報についても,「軸受セグメントを円形に組み合わせて転が り軸受を形成するため,軸受セグメントは軸方向に分解可能であり,破損による軸受セグメントの取替えも容易である」との記載があるにすぎず,あくまで「分解可能」なだけであり,分解・解体について控訴人の主張するような記載はない。 (イ) 主引用発明と副引用発明を組み合わせる場合において,当該発明の 実施を行うためには,主引用発明の実施例から多少なりの構造上の改変が必要となるのは当然のことである。また,進歩性の判断は,あくまで技術的思想をもって行うものであって,実際の装置の構造の改変の有無等は問題にならない。本件における主引用発明(乙2発明)と副引用発明(乙20発明)は,技術分野の関連性,課題の共通性,作用・機能の 共通性もあり,組み合わせる動機付けが 装置の構造の改変の有無等は問題にならない。本件における主引用発明(乙2発明)と副引用発明(乙20発明)は,技術分野の関連性,課題の共通性,作用・機能の 共通性もあり,組み合わせる動機付けがある。 4 当審における新たな主張(均等論)⑴ 控訴人の主張仮に,被告製品において「それぞれの両端部に1mm程度の隙間がある」点が本件発明の構成要件Eとの相違点であるとしても,このような相違点は, 以下のとおり均等である。 ア本件発明の効果を発揮するために必要なことは,円弧状ベアリングを組み立てて構成する「歯車付環状ベアリング」が,組み立てによってベアリングとしての本来の機能を何ら支障なく発揮できるようにすることであって,「隙間なく接続」することは必須条件ではなく,本件発明の本質的 部分とはいえないから,被告製品の相違点は,均等の第1要件を充足して いる。 イ本件発明における「隙間がないもの」を「被告製品程度の隙間があるもの」に置き換えたとしても,組み立てられた「歯車付環状ベアリング」としての機能に何ら支障はなく,隙間の無い「歯車付環状ベアリング」と全く同じ作用効果を奏するから,被告製品の相違点は,均等の第2要件を充 足している。 ウ本件発明のように,複数の部品を組み合わせて構成される物,特に,大きな荷重が作用する物において,設計時に隙間が空かない設計であっても,組み立て時又は使用時に「隙間」が空くことは技術常識であって,「隙間の無い接続」を「1mm程度の隙間」に置き換えることは容易であるから, 被告製品の相違点は,均等の第3要件を充足している。 エ本件特許に関する特許無効審判の審決の取消を求めた審決取消請求事件(知的財産高等裁判所令和元年(行ケ)第10102号)に であるから, 被告製品の相違点は,均等の第3要件を充足している。 エ本件特許に関する特許無効審判の審決の取消を求めた審決取消請求事件(知的財産高等裁判所令和元年(行ケ)第10102号)においては,無効2018-800120号事件における「本件審判の請求は,成り立たない」との審決が維持され,「原告らの請求を棄却する」との判断がされ た。したがって,被告製品は,特許発明の特許出願時点における公知技術と同一ではなく,また当業者がその公知技術から出願時に容易に推考できたものではないから,被告製品の相違点は,均等の第4要件を充足している。 オ本件特許の出願手続において,「ベアリングとしての機能に何ら支障の 無い1mm程度の隙間のあるもの」を特許請求の範囲から意識的に除外した事実は一切ないから,被告製品の相違点は,均等の第5要件を充足している。 ⑵ 被控訴人らの反論本件明細書によれば,本件発明は,従来技術の課題として,「しかしなが ら,この従来の装置においては,円弧状歯車片79,80は,使用時に各両 端部を当接させず,その間に隙間85,86を有して配置されている。」(【0006】),「内輪と外輪の間に多数の転動体を有するベアリングは,支持部材として一般的なものであるが,ベアリングを部分的に切断し,端部を当接させない状態で回転させると,内部の転動体が端部からこぼれ落ちてしまうので,使用することができない。」(【0007】),「円弧状歯車片7 9,80が隙間85,86を移動するときにはガイドがない状態になるので,円弧状歯車片79,80の端部が隙間85,86を通過する度に回転状態が不安定になるという問題があった。」(【0008】)と設定した上で,それを解決する手段として「円弧状ベアリン ない状態になるので,円弧状歯車片79,80の端部が隙間85,86を通過する度に回転状態が不安定になるという問題があった。」(【0008】)と設定した上で,それを解決する手段として「円弧状ベアリングは隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成」(【0011】)するのであるから,本件発明におい て,「円弧状ベアリング片」の「各々の両端部を隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成」することが,「特許発明の本質的部分」に該当することは明らかである。 控訴人の均等論の要件に関するその他の主張も,明細書に根拠がないか,意味不明のものにすぎない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被告製品は本件発明の技術的範囲に属するが,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであって,特許法104条の3第1項の規定により,控訴人は,被控訴人らに対し,本件特許権を行使することができず,結局,控訴人の請求にはいずれも理由がないものと判断する。その理由は 以下のとおりである。 2 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について⑴ 本件明細書の記載については,原判決22頁19行目の末尾に行を改めて以下のとおり加えるほかは,原判決第3の1⑴に記載のとおりであるから,これを引用する。 「【0008】また,円弧状歯車片79,80が隙間85,86を移動すると きにはガイドがない状態になるので,円弧状歯車片79,80の端部が隙間85,86を通過する度に回転状態が不安定になるという問題があった。」⑵ ⑴によれば,本件明細書には,以下のような開示がある。 ア鋼管等を回転して圧入する立坑構築機の輸送について,道路交通法上運搬物の幅を3200mm以内に収めなければならず,立坑構築機の外形を ⑴によれば,本件明細書には,以下のような開示がある。 ア鋼管等を回転して圧入する立坑構築機の輸送について,道路交通法上運搬物の幅を3200mm以内に収めなければならず,立坑構築機の外形を これに合わせようとすると鋼管等の直径を2500mm以下にする必要があるが,これを超える直径の鋼管等が要求される場合もあり,従来は,上下の各フレームはコ字状で,回転体は,中心角が180度より小さい円弧状歯車片を隙間をあけて対向配置し,幅方向に縮幅して運搬時の幅を狭くすることが行われていた(【0002】ないし【0005】)。 イしかしながら,この従来の装置においては,装置の使用時に,円弧状歯車片は上,下フレームに対して相対的に回動することになるが,ベアリングを部分的に切断し,端部を当接させない状態で回転させると,内部の転動体が端部からこぼれ落ちてしまうので,使用することができず,特殊なガイドを用いて保持するとすれば,装置が複雑になり,また,円弧状歯車 片が隙間を移動するときにガイドがない状態になるので,その度に回転状態が不安定になるという問題があった(【0006】ないし【0008】)。 そこで,「本発明」は,幅方向の寸法を狭くすることができ,標準的なベアリングを用いて回転を安定させることができる立坑構築機を提供することを課題とする(【0009】)。 ウ前記課題を解決するため,「本発明」の立坑構築機は,ベースフレームに昇降且つ回動可能に支持され,円筒状部材の外周部に着脱される把持機構と,この把持機構を駆動する回転駆動装置とを備えた立坑構築機において,前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,前記把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリン グを構成する複数に分 装置とを備えた立坑構築機において,前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,前記把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリン グを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えている(【001 0】)。 エ 「本発明」では,円弧状ベアリングは隙間なく接続して環状の歯車付ベアリングを構成し,内輪及び外輪の間に配置された転動体がこぼれ落ちない構造になっているので,左右の分割保持フレームにそれぞれ設けられた円弧状ベアリング片の高さを段違いに配置して,分割により幅方向の寸法 を一挙に狭くすることで運搬の便宜を図るとともに,標準的なベアリングを使用して装置を安価にし,回転を安定させることができる(【0011】,【0026】,【0028】)。 ⑶ 被告製品が本件発明の構成要件Eを充足するか被告製品が本件発明の構成要件AないしD,Fを充足することは争いがな く,被告製品が本件発明の構成要件Eを充足するかが問題となる。 ア争点1-1(構成要件Eの「把持機構は,(中略)円弧状ベアリング片を備えている」との文言の充足性。上記「把持機構」は,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングと一体化したバンド部材と解すべきではなく,そのような一体化したバンド部材を備えないとしても, 被告製品は上記文言を充足するといえるか否か)について(ア) 本件発明において,「把持機構」を歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングと一体化したバンド部材と特定する記載は,特許請求の範囲にも,本件明細書にもない。また,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングとバンド部材が一体化していな ければ把持機能を有しないともいえない。歯車付の円弧 記載は,特許請求の範囲にも,本件明細書にもない。また,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングとバンド部材が一体化していな ければ把持機能を有しないともいえない。歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングとバンド部材がその組み合わせにより把持機能を果たすのであれば,「把持機構」に当たると解される。 したがって,本件発明における「把持機構」は,歯車付の円弧状ベアリング片ないし環状の歯車付ベアリングと一体化したバンド部材と解す べきとはいえない。 (イ) 引用に係る原判決第2の1⑷イによれば,被告製品において,①バンド部材50は,回転リングの上方に備え付けられており,締め付けシリンダー13により,締め付けられることで円筒状ケーシングを掴む第1バンド部材50-1(可動バンド),第2バンド部材50-2(可動バンド),及び回転リング51と接続された第3バンド部材50-3(固定 バンド),第4バンド部材50-4(固定バンド)の4つのバンド部材から構成され(構成e-1),②第3バンド部材50-3は回転リング部材51-3と接続され,第4バンド部材50-4は回転リング部材51-4と接続され,第1バンド部材50-1と第3バンド部材50-3がそれぞれの端面で接続され,第2バンド部材50-2と第4バンド部材5 0-4がそれぞれの端面で接続され,第1バンド部材50-1と第2バンド部材50-2が締め付けシリンダー13を介して接続されることで,一つの環状のバンド部材を構成し(構成e-2),③外歯部26が備えつけられた分割外輪部24,分割内輪部23及びボール25から構成される「円弧状部材36,37」は,それぞれの分割外輪部24が上記「回 転リング部材51-3」及び「回転リング部 外歯部26が備えつけられた分割外輪部24,分割内輪部23及びボール25から構成される「円弧状部材36,37」は,それぞれの分割外輪部24が上記「回 転リング部材51-3」及び「回転リング部材51-4」に接続されている(構成e-3)ものである。 そうすると,被告製品は,把持機能を有するバンド部材が円弧状ベアリングと接続し,全体として把持機構を構成するものといえるから,構成要件Eの「把持機構は,(中略)円弧状ベアリング片を備えている」を 充足するものと認められる。 イ争点1-2(構成要件Eの「両端部を各々接続して」との文言の充足性(被告製品は,そもそも円弧状ベアリング片間に隙間(クリアランス)が設けられている構成ではなく,仮にそうでないとしても,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構 成する」とは,被告製品のような,円弧状ベアリング片間に隙間(クリア ランス)が設けられている構成を排斥しておらず,被告製品は上記文言を充足するといえるか否か))について(ア) 被告製品の構成について被告製品の構成については,原判決の第3の1⑵アに記載のとおりであるから,これを引用する。 上記構成によれば,環状の歯車付ベアリングを構成したときに,2つある分割内輪部23の間に,被告製品LMV-4000DZRではフロント側で0.8mm以上,バック側で0.4mm以上の隙間が,被告製品LMV-5000DZRではフロント側で0.2mm以上,バック側で0.1mm以上の隙間がそれぞれ生じ,また,2つある分割外輪部2 4の間に,被告製品LMV-4000DZRではフロント側で2.1mm以上,バック側で0.8mm以上の隙間が,被告製品LMV-5000DZRではフロント側 ぞれ生じ,また,2つある分割外輪部2 4の間に,被告製品LMV-4000DZRではフロント側で2.1mm以上,バック側で0.8mm以上の隙間が,被告製品LMV-5000DZRではフロント側で1.1mm,バック側で1.3mm以上の隙間がそれぞれ生じる。 したがって,被告製品は,円弧状ベアリング片間に隙間(クリアラン ス)が客観的に存在する構成であるということができる。 (イ) 構成要件Eへの被告製品の充足性について従前技術においては,ベアリングを部分的に切断し,端部を当接させない状態で回転させると,内部の転動体が端部からこぼれ落ちてしまうので,使用することができなかったという問題があったところ,本件発 明は,この課題を解決するため,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」との構成を採用したものと解される(前記⑵)。 「接続」とは「つなぐこと。つながること。続けること。続くこと。」を意味するものである(広辞苑第7版)が,接続部に一切の隙間が存在 しないことを一義的に意味するものではないと解されるし,本件発明の 課題に照らせば,環状の歯車付ベアリングを構成する際,内部の転動体が端部がこぼれ落ちるほどの隙間がなく,環状の歯車付ベアリングとしての機能を果たすのに支障がないものであれば,課題を解決することができるのであるから,構成要件Eの「把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する」との構成を充足する と認めるに妨げないというべきである。 証拠(乙11ないし14)によれば,被告製品においては,転動体(ボール)は,円弧状ベアリング片間の隙間(クリアランス)より十分大きく,円弧状ベアリングは,転動体が脱落することなく いうべきである。 証拠(乙11ないし14)によれば,被告製品においては,転動体(ボール)は,円弧状ベアリング片間の隙間(クリアランス)より十分大きく,円弧状ベアリングは,転動体が脱落することなく,本来の機能を果しているといえる。そうすると,被告製品における前記(ア)認定の隙間 は,その存在により転動体の脱落を招いていた従来技術における「隙間」(【0006】,【0007】)には当たらず,被告製品の円弧状ベアリング片は,それぞれの両端面を「接続する」ものであると認められるから,被告製品は,構成要件Eを充足する。 したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属することになる。 3 争点2(本件特許の無効の抗弁の成否)について⑴ 当裁判所も,本件特許は当業者が乙2発明に乙20発明を適用することに基づいて容易に発明することができたもの(特許法29条2項)であるから,特許無効審判により無効にされるべきもの(同法123条1項2号)であると判断する。 その理由は,後記⑵のとおり控訴人の当審における補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の第3の2に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑵ 当審における控訴人の補充主張に対する判断ア控訴人は,前記第2の3⑵ア(ア)のとおり,本件発明の技術思想は,単に 大きな装置を分解して搬送可能な大きさのものにしただけではない旨主 張する。 しかし,本件発明の課題は,前記2⑵ア及びイのとおり,輸送の便宜のために幅方向の寸法を狭くすることができるようにしつつ,標準的なベアリングを用いて回転を安定させることができる立坑構築機を提供することであって,本件明細書には,解体や組み立ての迅速性等といった控訴人 主張の課題に関する記載はないから,控訴 しつつ,標準的なベアリングを用いて回転を安定させることができる立坑構築機を提供することであって,本件明細書には,解体や組み立ての迅速性等といった控訴人 主張の課題に関する記載はないから,控訴人の主張は採用できない。 イ控訴人は,前記第2の3⑵ア(イ)のとおり,乙20公報には,本件相違点に係る構成は,記載も示唆もされていないと主張する。 しかし,乙20公報には,「内輪セグメント3と外輪セグメント4との間に組込まれた上記の各保持器9,11,13は,・・・第5図に示す保持器 11のように,周方向に複数に分割されたものであってもよい。」(83頁左上欄1行~6行)との記載があり,長尺物の転動体を用いる必要はないことが示唆されているところ,ベアリングの転動体として鋼球が一般に使用されていることは控訴人も認めるとおりであり,鋼球等を用いれば,組み立て使用された転がり軸受を分解する際に,軸受セグメントをばらばら にする必要があるということはできない。乙20発明は,トンネル掘削機のカッタヘッド等を回転自在に支持する大形転がり軸受という技術分野において,大形転がり軸受の内輪及び外輪が削り出しによって形成された環状のものであった従来技術では,転がり軸受が超大型化すると,その転がり軸受を輸送することができなくなるという技術的課題があったのを 解決するため,大形転がり軸受を周方向に分割して複数の軸受セグメントとするという技術的思想を採用したものであり,当該技術思想は,本件相違点に相当する構成を開示するものというべきである。したがって,控訴人の主張は採用することができない。 ウ判決の主引用発明(乙2発明)への副引用発明(乙20発明)の組み合 わせの可否の判断に誤りがあるとする点について 前記第 控訴人の主張は採用することができない。 ウ判決の主引用発明(乙2発明)への副引用発明(乙20発明)の組み合 わせの可否の判断に誤りがあるとする点について 前記第2の3⑵ア(ウ)において,控訴人は,乙2発明と乙20発明の技術思想は相反するから,乙2発明に乙20発明を組み合わせることに動機付けがないばかりか,阻害要因がある旨主張する。 しかし,主引用発明である乙2発明と副引用発明である乙20発明の両者には,技術分野の関連性,課題の共通性,作用,機能の共通性があ ることは引用に係る原判決第3の2⑶エ(ア)において説示するとおりであり,当業者において,両者を組み合わせる動機付けがある。そもそも控訴人が自認するように,乙2発明において,装置の搬送を容易にする目的をもって,昇降フレームを分割するという考えがある以上,同様に搬送を容易にするために搬送に支障となる大型旋回ベアリングも分割す る発想に至ることは当然であるとした場合,旋回ベアリングの分割につき記載がないことをもって直ちに,乙2発明には旋回ベアリング6自体を分割することはできない,しない方がよいとの思想があると解することはできず,むしろ旋回ベアリングの分割に支障があることを示唆する記載がない以上は,旋回ベアリングについても,それぞれの両端部を各々 接続して旋回ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片とすることに阻害要因はないというべきである。したがって,控訴人の主張は採用することができない。 次に,控訴人は,乙2発明に乙20発明を組み合わせて装置として機能させるためには,乙2発明の回転リングの構成自体を大きく改変する 必要が生ずるから,明らかな阻害要因があると主張する。 しかし,主引用発明に副引用発明 に乙20発明を組み合わせて装置として機能させるためには,乙2発明の回転リングの構成自体を大きく改変する 必要が生ずるから,明らかな阻害要因があると主張する。 しかし,主引用発明に副引用発明を適用する過程において,一定の改変は不可避であるばかりでなく,本件発明において,歯車付ベアリング以外のものを分割することは構成要件とはなっておらず,回転リングを分割するかどうかは設計事項というべきであり,乙2発明に乙20発明 を適用するに際して,重量の重いベアリングのみを分割することでも足 りるから,回転リングの構成自体を大きく改変する必要があるという控訴人の主張は,その前提を欠くものである。 エ顕著な作用効果について控訴人は,前記第2の3⑵ア(エ)のとおり,本件発明は,構成要件Eを備えることで,単に乙2発明と乙20発明とを組み合わせただけでは到底期 待することができない顕著な作用効果を奏すると主張する。 しかし,控訴人が主張する作用効果は本件明細書に記載のないものであるし,仮にそのような作用効果があるとしても,主引用発明(乙2発明)の環状の歯車付ベアリングを複数に分割された円弧状ベアリング片としたときに,上記の作用効果を奏することは当業者が予測できる範囲内のも のである。 (3) 小括以上によれば,本件発明は進歩性を欠くので,本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものであり,特許法104条の3第1項の規定により,控訴人は,被控訴人らに対し,本件特許権を行使することはできない。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求はいずれも理由がないから,控訴人の請求をい ない。 主文 以上によれば,控訴人の請求はいずれも理由がないから,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は結論において相当である。 したがって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 本吉弘行 裁判官 岡山忠広

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