主文 1 被告は,原告に対し,1億2169万1615円及びこれに対する平成8年12月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 原告主文と同旨 2 被告(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 原告は,商品取引所法に定める商品取引員である。 被告は,A株式会社等のオーナー社長で,手広く営業活動をし,資産を有しているとともに,原告に委託して商品先物取引をする以前から,他の商品取引員に委託して商品先物取引をしていた者である。 (2) 被告は,原告に委託して,別紙「取引商品及び期間表」のとおり(ただし,B名義分を除く。),C,D及びE(以下,一括して「Cら3名」という。)の他人名義を用いて,同表記載の商品について,同表記載の期間,別紙「被告統一取引目録」(同目録の銘柄欄の「中部乾繭」は「豊橋乾繭取引所での乾繭」の,「中部小豆」は「名古屋穀物砂糖取引所での小豆」の,「東京粗糖」は「東京砂糖取引所での粗糖」の各略語である。)記載のとおり先物取引をした(以下「本件取引」という。)。 (3) 本件取引のCら3名の名義別の損益は,別紙「各使用名義別口座における損金明細表」記載のとおり(ただし,B名義分を除く。本件取引の個別の明細は別紙「被告統一取引目録」に記載のとおり)であったから,本件取引による被告の損金は,本件取引が終了した平成7年2月28日において,合計1億2169万1615円であった。 (4) 原告は,平成8年12月20日被告に到達した書面で,被告に対し,上記1億2169万1615円の支払を催告した。 (5) よって, 7年2月28日において,合計1億2169万1615円であった。 (4) 原告は,平成8年12月20日被告に到達した書面で,被告に対し,上記1億2169万1615円の支払を催告した。 (5) よって,原告は,被告に対し,本件取引による損金1億2169万1615円及びこれに対する上記(4)の支払催告をした日の翌日である平成8年12月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否及び被告の主張(1) 請求原因(1)の事実は,認める。 (2) 同(2)の事実は,知らない。 被告は,原告に本件取引を一任していたため,本件取引の内容及びその結果としての損益を知らない。 ただし,別紙「被告統一取引目録」が,原告が被告の借名口座であると主張するCら3名名義の取引に関する各「委託者別先物取引勘定元帳」の記載(C名義分については甲1の1,D名義分については甲2の1,E名義分については甲4の1)を取引決済日順に記載したものであることは認める。しかし,そもそも,Cら3名名義の各「委託者別先物取引勘定元帳」が被告の取引として実行されたものであるかどうか被告には不明であるから,別紙「被告統一取引目録」記載の取引である本件取引が被告の取引として実行されたものであるかどうかも被告には不明である。 (3) 同(3)は争う。 3 被告の主張(1) 本件取引は,商品先物取引についての知識をほとんど有しなかった被告が,原告豊橋営業所長であったF(以下「F」という。)から,「損はさせない。」との約束の下に勧誘されたため,同約束の下にFに取引を一任する方法で,Fの決めた他人名義で開始された,業務上のいわゆる「お任せ取引」であり,取引明細の通知もすべてその名義人のところに送付され,被告には回付されていない。そして,Fは,損が生 にFに取引を一任する方法で,Fの決めた他人名義で開始された,業務上のいわゆる「お任せ取引」であり,取引明細の通知もすべてその名義人のところに送付され,被告には回付されていない。そして,Fは,損が生じたことを報告するにあたっては,「この損は必ず取り返す。」と断言し,被告に実害を生じさせない旨固く約束していた。 上記のとおり,被告は,単に本件取引の資金をFに提供したにすぎず,その運用は,取引名義の選定も含めてすべて同人が行った「お任せ取引」であったから,本件取引によって生じた損失は,原告に帰属するのであり,被告に帰属するものではなく,被告は本件取引による損金支払義務を負わない。 (2) 仮に本件取引の損失が被告に帰属するとしても,次の事情があったから,原告が被告にその支払を請求することは信義則に反し,また,権利の濫用であって,許されない。 すなわち,被告は,原告豊橋営業所長であったFを信頼し,同人が同営業所長の立場を最大限活用して商品先物取引を行ってくれるため,損失が生じることはないものと信じ,万一損失が生じても,商品先物取引の基本原則ないし常識に従って直ちに建玉を中止し,取引を中止してくれるものと信じていた。ところが,Fは,損失が生じた当初,その報告をするにあたって,いつも「この損は必ず取り返す」と断言し,発生した差損金はFがその後の取引によって回復するので,被告に実害を発生させない旨約束していた。したがって,その後の差損金の増加は,Fが原告豊橋営業所の業務として原告の責任と計算において行った取引の失敗により発生させたものであって,その支払を被告に求めることは,Fが上記約束の下にした「お任せ取引」という関係取締法規に違反する不正な業務執行の結果の責任を被告に負担させることにほかならず,信義則に反して権利を濫用するものとして,到底許されない。 めることは,Fが上記約束の下にした「お任せ取引」という関係取締法規に違反する不正な業務執行の結果の責任を被告に負担させることにほかならず,信義則に反して権利を濫用するものとして,到底許されない。 4 被告の主張に対する認否否認する。 他人名義の使用は被告の依頼によるものであり,本件取引はいずれも被告の注文によるものである。また,売買報告書,追加証拠金等の請求などすべて被告に対して文書で送付されており,被告はこれを理解して証拠金を原告に入金し,また,損金を支払ったりしていた。 理由 1 請求原因(1)について同事実は,当事者間に争いがない。 2 請求原因(2)ないし(4)について(1) 証拠(甲1ないし4の各1及び2,甲10の1ないし3,甲11,18,甲20の1ないし6,証人F,証人G,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(2)及び(3)の事実を認めることができる。 被告は,Cら3名名義の各「委託者別先物取引勘定元帳」記載の取引が被告の取引として実行されたものであるかどうか不明である旨主張する。しかし,上記証拠によれば,これら名義で原告に開設された取引口座は,Fが,被告に対して商品先物取引を勧誘した際,被告から,税金対策上他人名義で取引口座を開設して取引をすることを要請されたため,原告の従業員の親族やFの友人らの名義を借用して,被告のための口座として開設した,いわゆる借名口座であり,そのことは,Fから被告に知らされていたこと,そして,被告が上記取引のために差し入れた証拠金はもとより,被告に対する益金出金や被告からの損金入金は,すべてこれら借名口座の入出金等として処理され,上記取引の手数料,損益の清算もこれら借名口座でされていることが認められるから,これら借名口座にかかる上記各「委託者別先物取引勘定元帳」 らの損金入金は,すべてこれら借名口座の入出金等として処理され,上記取引の手数料,損益の清算もこれら借名口座でされていることが認められるから,これら借名口座にかかる上記各「委託者別先物取引勘定元帳」記載の取引は,被告のために行われた取引であり,したがって,上記各「委託者別先物取引勘定元帳」に基づいて作成された別紙「被告統一取引目録」記載の取引である本件取引は,被告のための取引として現実に実行されたものであるということができ,被告の上記主張は到底採用できない。 したがって,本件取引による被告の損失は合計1億2169万1615円であったものである。 (2) そして,請求原因(4)の事実につき,被告は争うことを明らかにしないから,これを自白したものとみなす。 3 被告の主張について被告は,本件取引は他人名義を使用しての原告による一任売買取引であり,また,原告の担当者は,被告に対し,損はさせない旨を約束していたから,本件取引による損失は被告に帰属しないし,仮にこれが被告に帰属するとしても,原告の被告に対する損金請求は信義則に反し,権利の濫用である旨主張する。 (1) 証拠(上記2(1)冒頭掲記の証拠,甲5,甲12ないし14の各1及び2,甲15ないし17,19,乙1。甲6の1ないし3及び甲21の1ないし4の存在)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア被告は,愛知県豊橋市にあるビル賃貸業等を目的とするH株式会社の代表取締役であり,他に3店の飲食店を経営している者である。 そして,被告は,昭和60年頃から,I株式会社などの商品取引会社を利用して相当大量の商品先物取引を行っていたため,その存在は,同市の他の商品取引員にも知られていた。 イ原告の豊橋営業所長であったFは,平成元年6月頃,被告方を訪れ,商品取引の勧誘をしたところ 利用して相当大量の商品先物取引を行っていたため,その存在は,同市の他の商品取引員にも知られていた。 イ原告の豊橋営業所長であったFは,平成元年6月頃,被告方を訪れ,商品取引の勧誘をしたところ,被告は,税金対策上,他人名義で口座を開設してもらえるなら原告と取引をしてもよいとのことであったため,Fは,これを了承し,原告の従業員の親族であるJの名を使って被告のための取引口座(いわゆる借名口座)を開設し,被告は,原告に委託して同口座を使って商品先物取引を行うようになった。 そして,Fは,被告の税金対策に協力するため,被告の取引のために開設した借名口座に利益が出ると,その借名口座を閉じ,Fの友人等の名を使って被告のための借名口座を開設することを繰り返していたものであり,Cら3名及びB(以下,この4名を一括して「Cら4名」という。)名義の借名口座も同様の目的でFによって開設されたものであって,Fは,被告のために開設された借名口座についてはその都度被告に伝えるとともに,当初からではないにしても,被告がCら4名名義等の借名名義を使って商品先物取引を行っていることは上司に報告し,原告においてもそのことを承知していた。 ウ本件取引のうちC名義口座での取引は平成2年4月12日から,D名義口座での取引は平成3年2月21日から,それぞれ開始され,B名義口座での取引は平成5年6月1日から開始されたが,被告による上記各名義口座を含む借名名義口座での取引は,平成5年6月頃までは,個々の取引で損失が生じることがあっても,概ね順調に推移し,平成5年7月22日にはE名義口座での取引も開始された。 本件取引及びB名義口座での取引(以下,一括して「本件取引等」という。)で取引の対象となった商品は,主として名古屋穀物砂糖取引所での小豆,豊橋乾繭取引所での乾繭であった。 エ の取引も開始された。 本件取引及びB名義口座での取引(以下,一括して「本件取引等」という。)で取引の対象となった商品は,主として名古屋穀物砂糖取引所での小豆,豊橋乾繭取引所での乾繭であった。 エところが,同年7月ないし8月から,小豆及び乾繭の相場が激しく変動し,被告の建玉に反する結果となって,被告の損失が累積する状況となったが,その頃以降のCら4名名義でされていた本件取引等の損益等の状況とこれに対する原告及び被告の対応は次のとおりであった。すなわち,(ア) 同年7月30日時点において,売買差益が合計約3536万円であったが,建玉値洗で約9000万円の損失が見込まれた。そして,同時点では,なお原告が被告から預託を受けている証拠金1億0050万円及び売買差損から建玉値洗を差し引いて仮計算した清算金(いわゆる有効残)は約4469万円であったが,同年8月31日時点では,売買差益が合計約1312万円であったものの,建玉値洗で約1億6082万円の損失が見込まれ,預託証拠金1億1150万円及び売買差益から建玉値洗を差し引いた有効残も約3620万円の損失であった。 (イ) そのため,被告は,原告からの求めに応じて現金や有価証券をもって追証(追加証拠金)を原告に差し入れたが,それでも必要な追証に不足なため,原告は,Fを通じて,被告に対し,必要な追証の差入れがない場合には建玉の処分して取引を終了させることもやむを得ないとして善処方を申し入れ,同年9月15日,原告のK専務取締役(以下「K専務」という。)及びFが,被告方において,被告と話し合ったところ,被告が,金地金18キログラムを現金化するなどして追証を入れるほか,それでも不足する追証の差入れを猶予してもらうための担保として,被告が経営するH株式会社所有の不動産の権利書を渡すことで,取引を継続することと 金18キログラムを現金化するなどして追証を入れるほか,それでも不足する追証の差入れを猶予してもらうための担保として,被告が経営するH株式会社所有の不動産の権利書を渡すことで,取引を継続することとなった。 そして,被告は,同月21日から同年10月29日までに順次追証を入れ,被告の預託証拠金総額は2億5500万円に達した。 (ウ) しかし,被告の追加証拠金等の差入れにもかかわらず,売買差損の発生とその増加,建玉値洗損の増大により,同年9月30日時点での売買差損が約1億3009万円で,有効残損失が約5007万円であり,同年10月29日時点での売買差損が約2億5306万円,有効残損失が1億5943万円と増加していき,それに伴って被告が差し入れることを必要とする追証も増大していったが,被告は,これを調達して原告に差し入れることができなかった。 (エ) そこで,同年11月16日,被告の知人の会社の事務所において,原告側からは代表取締役社長L,本社管理部長M(以下「M」という。)及びF,被告側からは被告及び被告の代理人としてI株式会社の外務員で,被告の担当者であったG(以下「G」という。)が出席して,それまでに生じた損失の処理,建玉の処分等について話し合ったが,被告は,上記話合い中は席を外し,原告との話合いをすべてGに委ねた。なお,同日現在において,被告が原告に委託して行っていた,Cら4名名義口座でされている本件取引等を含む全取引による有効残損失は1億2000万円を超えていた。 上記話合いの結果,原告とGは,同日の大引値段より500円上の値段になったときは,小豆の売り建玉を手仕舞すること,同日現在の小豆30枚の買い建玉を同月17日前場1節で手仕舞すること,買い建玉をしていた乾繭については,12月,1月現月のものは成り行きに仕切り注文を出していくこと等の 豆の売り建玉を手仕舞すること,同日現在の小豆30枚の買い建玉を同月17日前場1節で手仕舞すること,買い建玉をしていた乾繭については,12月,1月現月のものは成り行きに仕切り注文を出していくこと等の建玉の処分について合意したほか,同年12月5日には,被告が上記有効残損失分として2000万円を入金するものとするが,同日までの上記有効残が1億2000万円を下回ったときには,上記入金を見合わすことができること等の損失処理についても合意した。 そして,その場で,Mが上記話合いの結果を取りまとめた覚書(甲11)を起案し,被告は,Gから,その内容の説明を受けて,その内容を理解した上,これに署名して原告に交付した。 (オ) しかし,その後も,被告が原告に委託して行った取引の売買差損及び建玉値洗損は増加し,同年12月3日時点では,被告が原告に委託して行っていた,Cら4名名義口座でされている本件取引等を含む全取引(Cら4名名義口座でされている本件取引等に,N,O及びP名義での取引)による売買差損が約4億6746万円,建玉値洗損が約5158万円,有効残損失が約2億1199万円であり,上記売買差損から預託証拠金を差し引いた後の損失だけでも約1億6000万円になったが,被告は,同月6日,Fから,上記内容を記載された原告作成の同月3日付「顧客管理表及集計表」等(甲10の1ないし3)を示されて,これ(甲10の1)に,その内容に間違いないことを確認した旨記載して署名押印して同人に交付した。 (カ) 以上の経過をとって,本件取引等のうちC名義口座での建玉は平成6年3月3日に,D名義口座での建玉は同月4日に,B名義口座での建玉は平成5年11月25日に,E名義口座での建玉は同年12月14日に,それぞれ,すべて手仕舞され,各手仕舞後の被告からの損金入金等もあった結果,平成6年4 義口座での建玉は同月4日に,B名義口座での建玉は平成5年11月25日に,E名義口座での建玉は同年12月14日に,それぞれ,すべて手仕舞され,各手仕舞後の被告からの損金入金等もあった結果,平成6年4月末時点において,本件取引等のうちC名義口座での損失が3627万2130円,D名義口座での損失が8823万4532円,B名義口座での損失が4460万8876円,E名義口座での損益が0となり,本件取引等による損失の合計額は1億6911万5538円であった。 オところで,平成6年8月頃なって,原告のK専務及び被告が上記損失1億6911万5538円の処理について話し合った結果,被告は,K専務から,同人が商品先物取引のエキスパートであるとして,その助言に従って同取引を再開し,その利益で上記損失を取り戻すことを勧められるとともに,既存の上記損失について,C名義口座,D名義口座及びB名義口座での各損失を順次処理していくことにし,そのための方法としてB名義口座での損失分につきその半金を入金してもらえば,残り半金の支払を免除してもよい旨提案されたため,K専務の助言に従って取引することでの損失の取戻しに期待する一方,C名義口座及びD名義口座での損失分の半額免除にも期待して,上記提案を承諾した。 そして,被告は,B名義口座での損失分の半金分であるとして,同年8月から11月にかけて毎月各500万円ずつの合計2000万円を支払うとともに,新規取引の証拠金等として,同年9月8日から平成7年2月6日までにかけて合計2070万円を交付等したところ,原告は,上記2000万円及び上記2070万円のうち310万円についてはこれをC名義口座での損失分に充当する処理をし(その結果,同口座の損失残は1317万2130円となった。),上記2070万円のうち1760万円をE名義口座の証拠 2070万円のうち310万円についてはこれをC名義口座での損失分に充当する処理をし(その結果,同口座の損失残は1317万2130円となった。),上記2070万円のうち1760万円をE名義口座の証拠金として受け入れる処理をした。 カ K専務は,被告が同専務の提案を承諾して入金を開始したため,被告に対し,乾繭相場の値上がりを見込んでの買い建玉を勧め,被告は,これに従って,平成6年9月7日から,E名義口座での乾繭の取引を再開し,その買い建玉をしたが,同相場はK専務の助言どおりとならなかったため,損失を生じ,追拠の差入れに追われる状態となり,平成7年2月28日全部の建玉を仕切って,再開された同口座での取引は終了し,その結果,3788万4953円の売買差損が生じ,証拠金の振替えによっても2028万4953円の損失が残った。 キなお,原告は,平成7年3月31日,本件取引のうちB名義口座での損失分4460万8876円について,全額貸倒損失処理をした。 (2) 被告は,本件取引が原告による一任売買取引である旨主張し,被告の供述及びその陳述書(乙1。以下,同陳述書の陳述記載と被告の供述とを併せて「被告の供述等」という。)には,同主張に沿う部分がある。 しかし,証拠(甲18,証人F,証人G)によれば,被告を担当していたFは,ほとんど毎日のように,被告に電話連絡等して,相場の状況を知らせ,自己の相場感に従って被告に助言して,取引の注文を勧誘をし,被告は,ほとんどの場合Fの助言を容れてFに自己の注文を伝え,Fは,これを受けて本件取引を実行し,その結果を常に被告の知らせていたものであり,このような状況は,被告が,上記(1)カのとおりK専務の助言に従ってE名義口座での取引を再開した後も概ね同様であったこと,また,被告は,上記(1)エの(イ)の平成5年9月15日 せていたものであり,このような状況は,被告が,上記(1)カのとおりK専務の助言に従ってE名義口座での取引を再開した後も概ね同様であったこと,また,被告は,上記(1)エの(イ)の平成5年9月15日の話合い,同(エ)の同年11月16日の話合い,同(オ)の12月6日の取引状況の確認及び同オの話合いのときのいずれの場合でも,Fらの助言に従って取引をしたが損失が生じたことに不満を述べることはあっても,本件取引が被告の知らないうちにされたものであるとか,本件取引により生じた損失は原告が負担する約束であって,被告には支払義務がないとかの抗議や苦情を述べたことはなかったことが認められる(かえって,被告も,本件取引のうち平成5年11月中旬頃までの取引については,Fから報告等を受けて承知していた旨供述している。)。 したがって,本件取引が原告の担当者による一任取引である旨の被告の主張は到底採用できない。 (3) 被告は,原告の担当者が,被告に対し,損はさせない旨を約束していた旨主張し,被告の供述等には同主張に沿う部分も一部ある。 アしかし,上記(1)エの各事実によれば,被告は,本件取引による損失が自己に帰属すること及びこれを支払う義務のあることを承認していたことが明らかであり,被告の主張に沿う被告の供述等は,これら事実及び証拠(甲18,証人F)に照らして到底信用し難く,他に同主張を認めるに足りる証拠はない。 イなお,被告は,上記(1)カの話合いにおいて,約1億6000万円の損失について,K専務が,半額を免除し,残り半額は,原告において取引継続により利益を生じさせ,それによって損失補填して被告に負担を求めない旨確約した旨供述し,あたかも,被告が約1億6000万円の損失について実質的には何らの負担も負わない旨の合意が成立したかのような供述をする。 しかし せ,それによって損失補填して被告に負担を求めない旨確約した旨供述し,あたかも,被告が約1億6000万円の損失について実質的には何らの負担も負わない旨の合意が成立したかのような供述をする。 しかし,被告の上記供述は,原告の専務取締役の立場にある者が,本件取引等による被告の1億6000万円余もの損失につき,その半額を免除した上,残り半額についても,被告が顧客として商品先物取引を継続することだけで,商品先物取引において必ず利益が生ずることなど誰にも保証できるものではないにもかかわらず,その利益で損失を補填して被告に負担を求めないなどいう経済的に不合理な内容の約束をしたというものであって,その内容に照らし,客観的な裏付けなくしてはたやすく措信し難いものである上,被告の陳述書(乙1)での陳述記載は,K専務は,約1億6000万円の損失の半額を支払ってくれれば,残りの半額の8000万円は,被告が顧客として取引を継続してくれれば,原告が負担する旨(あるいは,同取引による利益から埋め合わせて被告に負担を求めない旨)約束したと陳述しているのであって,被告の上記供述と重要な点において相違していることも併せ考えると,到底措信し難いというほかない。 もっとも,証拠(甲18,証人F,被告本人)によれば,K専務は,上記(1)カの話合いの際,本件取引等の中止により固定化し,未払となっている被告の損失1億6000万円余の回収を図る立場から,被告に対し,このままでは上記損失は減ることはないが,自分の助言に従って,商品先物取引を継続することにより,利益を出せば,その利益で上記損失の穴埋めができるようになる旨述べて,取引の再開を説得し,被告が,上記のようなK専務の説得を受けて,E名義での取引再開を決意したことが認められるが,K専務の上記説得も,あくまで,K専務の指導なり助言の 穴埋めができるようになる旨述べて,取引の再開を説得し,被告が,上記のようなK専務の説得を受けて,E名義での取引再開を決意したことが認められるが,K専務の上記説得も,あくまで,K専務の指導なり助言の下での今後の取引による利益に期待して,本件取引等の中止により固定化している1億6000万円余の損失の解消を図るという趣旨のものであったのであり,当然のことながら,再開後の取引の利益を保証したり,損失の原告負担をいう趣旨ではなかった(そもそも,被告は,会社の経営者であって,経済にも相当に明るい上,本件取引等の前にI株式会社を受託者として行っていた商品先物取引でも相当の損失を被って,その負担をした経験があり(被告の供述),また,本件取引等でも,上記(1)カの話合いの当時,既に1億6000万円余もの損失を被り,しかも,商品先物取引がまさに投機であって,相場の値動きのいかんによっては3日で1億円の損失を被ることもある危険性の高いものであることの認識もあった(被告の供述)のであるから,仮にK専務が今後の取引による利益のみに言及して,被告に損をさせないとか,その利益で既存の損失を取り戻すとか述べたとしても,そのような言葉を信用して本件取引を再開したなどいうことは到底考え難い。)。 (4) ところで,本件取引は,上記(1)で認定したとおり,他人名義を使用しての借名取引であったが,これは,被告が税金対策のためとして原告に要請し,原告がこれに応じた結果であるから,本件取引が借名取引であることをもって,原告が本件取引により生じた損失の負担を被告に求めることが信義則に反するとか,権利の濫用となるものでないことは明らかである。 そして,他に原告の本件請求が信義則に反するとの事情や権利の濫用にあたるとの事情を認めるに足りる証拠はない。 (5) 以上のとおりであって,本件取 か,権利の濫用となるものでないことは明らかである。 そして,他に原告の本件請求が信義則に反するとの事情や権利の濫用にあたるとの事情を認めるに足りる証拠はない。 (5) 以上のとおりであって,本件取引が被告の原告に対する一任売買取引であるとの事実及び原告の担当者が,被告に対し,損はさせない旨の約束をしたとの事実は,これを認めることはできないのであり,また,原告が本件取引による損失の負担を被告に求めることが信義則に反し,権利濫用にあたるということもできない。 したがって,被告の主張は採用できない。 4 結論上述のとおりであるから,原告は,被告に対し,本件取引による損金1億2169万1615円及びこれに対する支払催告をした日の翌日である平成8年12月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 よって,原告の請求は理由があるのでこれを認容し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,仮執行の宣言につき同法259条1項を各適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第5部裁判官長門栄吉(別紙は全て省略)
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