平成22(ワ)42637 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年8月30日 東京地方裁判所
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判決文本文123,795 文字)

平成25年8月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第42637号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年5月20日判決英国グロスタシャー州 <以下略>原告レニショウパブリックリミテッドカンパニー(以下「原告レニショウ」という。)英国グロスタシャー州 <以下略>原告レニショウトランスデューサシステムズリミテッド(以下「原告RTS」という。)上記2名訴訟代理人弁護士上山浩同中川直政同訴訟代理人弁理士谷義一同新開正史同訴訟復代理人弁理士窪田郁大同補佐人弁理士梅田幸秀大阪市北区<以下略>被告ナノフォトン株式会社同訴訟代理人弁護士生田哲郎同森本晋同佐野辰巳同中所昌司同訴訟代理人弁理士小野尚純同奥貫 同中所昌司同訴訟代理人弁理士小野尚純同奥貫佐知子 同補佐人弁理士松本雅利 目次主文.................................................. 5事実及び理由.................................................. 5第1 請求.............................................................. 5第2 事案の概要........................................................ 5 1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)........ 5 2 争点............................................................... 12 3 争点に関する当事者の主張........................................... 13 被告製品(ライン照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点1)................................................................... 13ア 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)......................... 13イライン照明における「第二の ............................ 13ア 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)......................... 13イライン照明における「第二の次元」の「共焦点作用」(構成要件G-2)の有無(争点1-2)................................................... 15ウ被告製品(ライン照明モード)の構成要件充足性(争点1-3)....... 29 被告製品(スポット照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点2)................................................................... 33 被告製品が本件発明8~10及び13の技術的範囲に属するか(争点3). 39 本件発明7に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点4)............................................................. 42ア乙30号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-1)........... 42イ乙31号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-2)........... 49ウ乙18号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-3)........... 55エ乙7号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-4)............. 65オ乙16号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-5)........... 75カ明確性要件違反の有無(争点4-6)............................... 99 本件発明8~10及び13に係る特許が特許無効審判によ )........... 75カ明確性要件違反の有無(争点4-6)............................... 99 本件発明8~10及び13に係る特許が特許無効審判により無効にされるべき ものであるか(争点5)................................................ 100 損害額(争点6).................................................. 102第3 当裁判所の判断.................................................. 103 1 被告製品(ライン照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点1)について.......................................................... 103 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)について................ 103 ライン照明における「第二の次元」の「共焦点作用」の有無(争点1-2)について............................................................ 112 被告製品(ライン照明モード)の構成要件充足性(争点1-3)について112 2 被告製品(スポット照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点2)について.......................................................... 113 3 被告製品が本件発明8~10及び13の技術的範囲に属するか(争点3)について....................................... ............... 113 3 被告製品が本件発明8~10及び13の技術的範囲に属するか(争点3)について.................................................................. 118 4 本件発明7に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点4)について.................................................... 119 乙30号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-1)について.. 119 乙31号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-2)について.. 124 乙18号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-3)について.. 127 乙7号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-4)について.... 132 乙16号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-5)について.. 136 明確性要件違反の有無(争点4-6)について...................... 146 小括............................................................ 147 5 本件発明8~10及び13に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点5)について........................................ 147 6 まとめ............................................................ 149 7 結論.............................................................. ............................ 149 7 結論.............................................................. 149 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告レニショウに対し,金3億3600万円及びこれに対する平成22年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告RTSに対し,金8000万円及びこれに対する平成22年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要発明の名称を「共焦点分光分析」とする特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者及び前特許権者である原告らが,被告に対し,被告の製造販売に係る別紙物件目録記載の製品(以下,併せて「被告製品」という。)が本件特許権を侵害する旨主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として,原告レニショウにつき3億3600万円及び原告RTSにつき8000万円(いずれも附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成22年12月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告レニショウは,ラマン分光測定装置,計測装置,ヘルスケア製品等の製造販売を業として行う株式会社(英国法人)である。原告RTSは,原告レニショウの子会社(英国法人)である。 被告は,理化学機器の製造及 は,ラマン分光測定装置,計測装置,ヘルスケア製品等の製造販売を業として行う株式会社(英国法人)である。原告RTSは,原告レニショウの子会社(英国法人)である。 被告は,理化学機器の製造及び販売を業として行う株式会社である。被告は,業として被告製品を製造販売している。 (2) 本件特許権原告RTSは,平成22年10月26日,原告レニショウに対し,本件特許権を譲渡した。本件特許権は,次のとおりである(本件特許権に係る特許公報〔甲2〕を末尾に添付し,これを「本件明細書」という。)。 発明の名称共焦点分光分析出願番号特願平4-511305出願日平成4年6月8日優先権主張番号 9112343.0優先日平成3年6月8日優先権主張番号 9124397.2優先日平成3年11月16日登録日平成14年12月6日特許番号特許第3377209号(3) 本件明細書の訂正原告レニショウは,平成24年7月3日,下記の訂正事項1及び2のとおり,本件明細書の訂正を求める訂正審判を請求し,特許庁は,同年9月11日,上記訂正を認める旨の審決をした。 記(訂正事項1)特許請求の範囲の請求項7において「…形成されていることを特徴とする分光分析装置。」とあるのを,「形成されており,前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず, 前記サンプル おいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず, 前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ,前記光検出器は電荷結合素子であることを特徴とする分光分析装置。」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~13も同様に訂正する)。 (訂正事項2)本件明細書の「本発明,また,この方法を実施する装置を提供する。」(5欄5~6行)を,「また,本発明は,サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,前記スペクトルを分析する手段と,光検出器と,前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とを具備する分光分析装置であって,前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし,前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され,前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されており,前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず,前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ,前記光検出器は電荷結合素子であることを特徴と 後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず,前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ,前記光検出器は電荷結合素子であることを特徴とする分光分析装置を提供する。」と訂正する。 (4) 本件に関する特許請求の範囲本件に関する特許請求の範囲は,請求項7~10及び13(訂正後のものである。以下同じ。)であり,その記載は以下のとおりである(以下,請求項7~10及び13に係る特許発明をそれぞれ「本件発明7」などといい, 併せて「本件発明」という。)。 「【請求項7】サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,前記スペクトルを分析する手段と,光検出器と,前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とを具備する分光分析装置であって,前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし,前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され,前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されており,前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず,前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光す 記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず,前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ,前記光検出器は電荷結合素子であることを特徴とする分光分析装置。」「【請求項8】前記光検出器の前記所与の領域が細長いことを特徴とする請求項7に記載の分光分析装置。」「【請求項9】前記光検出器の前記所与の領域が前記スリットを横切る方向に延在していることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の分光分析装置。」 「【請求項10】前記光検出器はピクセルのアレイを備えたことを特徴とする請求項7から請求項9の何れかに記載の分光分析装置。」「【請求項13】前記スペクトルがラマン散乱光のスペクトルであることを特徴とする請求項7から請求項12の何れかに記載の分光分析装置。」(5) 本件発明の構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下「構成要件A」などという。)。 ア本件発明7A サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,B 前記スペクトルを分析する手段と,C 光検出器と,D 前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とE を具備する分光分析装置であって,F 前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし,G-1 前記光検出器の前記所 い手段とE を具備する分光分析装置であって,F 前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし,G-1 前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され,G-2 前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されており,① 前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず, ② 前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ,③ 前記光検出器は電荷結合素子であることH を特徴とする分光分析装置。 イ本件発明8I 前記光検出器の前記所与の領域が細長いことJ を特徴とする請求項7に記載の分光分析装置。 ウ本件発明9K 前記光検出器の前記所与の領域が前記スリットを横切る方向に延在していることL を特徴とする請求項7または請求項8に記載の分光分析装置。 エ本件発明10M 前記光検出器はピクセルのアレイを備えたことN を特徴とする請求項7から請求項9の何れかに記載の分光分析装置。 オ本件発明13O 前記スペクトルがラマン散乱光のスペクトルであることP を特徴とする請求項7から請求項12の何れかに記載の分光分析装置。 (6) 本件発明の技術分野本件発明の技術分野 O 前記スペクトルがラマン散乱光のスペクトルであることP を特徴とする請求項7から請求項12の何れかに記載の分光分析装置。 (6) 本件発明の技術分野本件発明の技術分野は,「例えばラマン効果を利用してサンプルを分析するのに分光分析が使用される装置および方法に関する」(本件明細書3欄44~46行)ものである。 ラマン効果(ラマン散乱)とは,物質に光を照射すると観測される散乱光のうち,照射した光とは異なる波長(色)の散乱光が含まれる現象をいう。 ラマン散乱光は,このような異なる波長の散乱光をいい,特定の分子構造から決まった波長の光が散乱されるため,ラマン散乱光を調べると物質の分子構造が分かる(乙6,12)。 (7) 被告製品の概要ア被告製品は,ラマン分光分析装置(ラマン顕微鏡)であり,サンプルに対してライン照明(ライン状のレーザ光)又はスポット照明(スポット状のレーザ光)を照射する(以下,照射するレーザ光に応じて「ライン照明モード」「スポット照明モード」という。)。被告製品のうち,「RAMANplus」(別紙物件目録記載2の製品)は,「RAMAN-11」(同目録記載1の製品)に表面形状測定機能を追加したものであり,本件発明との関係では両製品の構成に異なるところはない。 イ被告製品は,概略,①サンプルの測定しようとする面(所与の面)に光を照射して散乱光を得る手段,②前記散乱光を分光する回折格子,③1340行×400列の画素を有する冷却CCD(電荷結合素子)光検出器,④前記回折格子により分光された前記散乱光を前記光検出器に合焦させる手段をそれぞれ有し,前記サンプルの所与の面からの前記散乱光は,スリットを通過し,前記光検出器に合焦させられ,前記サンプルの所与の面以外から 格子により分光された前記散乱光を前記光検出器に合焦させる手段をそれぞれ有し,前記サンプルの所与の面からの前記散乱光は,スリットを通過し,前記光検出器に合焦させられ,前記サンプルの所与の面以外からの前記散乱光は,前記光検出器上には合焦せず,⑤光検出器はピクセルのアレイを備え,⑥散乱光のスペクトルはラマン散乱光のスペクトルである。 ウライン照明モードにおける被告製品の構成は,別紙被告製品の構成(ライン照明モード)記載のとおりである(甲7,乙6)。 (8) 本件発明7と被告製品との対比ア構成要件A及びBの「スペクトル」は,「ある波長範囲をもった散乱光」を意味し,他方,構成要件Dの「スペクトル」は,「分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分」との記載があることから,「波長成分ごとに(分析ないし)分光された後の光」を意味する。また,構成要件B及びDの「分析」は,光を波長成分ごとに分ける「分光」と同義である。 イ被告製品は,「ある波長範囲をもった散乱光」の意味での「スペクト ル」を400本のスペクトルに分光して周波数成分ごとに分ける手段を備えるから,構成要件Bを充足する。 被告製品は,冷却CCD(電荷結合素子)光検出器を備えるから,構成要件C及びG-2③を充足する。 被告製品は,サンプルに光を照射する対物レンズは,当該サンプルからの散乱光の集光も行うから,構成要件G-2②を充足する。 ウ被告製品(スポット照明モード)では,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光は,スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれてスリットを通過し,他の面の散乱光は,スリットにおいて焦点を結んでいないから,構成要件G-2①を充足する。 エ被告製品は,構成要件Hの分光分析装置である。 ポットとしての焦点に絞り込まれてスリットを通過し,他の面の散乱光は,スリットにおいて焦点を結んでいないから,構成要件G-2①を充足する。 エ被告製品は,構成要件Hの分光分析装置である。 2 争点(1) 被告製品(ライン照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点1)ア 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)イライン照明における「第二の次元」の「共焦点作用」(構成要件G-2)の有無(争点1-2)ウ被告製品(ライン照明モード)の構成要件充足性(争点1-3)(2) 被告製品(スポット照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点2)(3) 被告製品が本件発明8~10及び13の技術的範囲に属するか(争点3)(4) 本件発明7に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点4)ア乙30号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-1)イ乙31号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-2) ウ乙18号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-3)エ乙7号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-4)オ乙16号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-5)カ明確性要件違反の有無(争点4-6)(5) 本件発明8~10及び13に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点5)(6) 損害額(争点6) 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告製品(ライン照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点1)ア 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)(原告らの主張)本件明細書には,構成要件Aの「サンプルに光を ライン照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点1)ア 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)(原告らの主張)本件明細書には,構成要件Aの「サンプルに光を照射して」の「光」を「スポット照明」に限定する趣旨の記載はなく,後記イのとおり,本件発明の技術的思想はスポット照明のみならずライン照明も含んでいる。 (被告の主張)(ア) 本件明細書では,以下のとおり,スポット照明を前提とした記載,ないしスポット照明を前提とすることによって初めて技術的に意味が通じる記載があるから,構成要件Aの「サンプルに光を照射して」の「光」は,スポット照明と解すべきである。 (イ) 本件明細書5欄25~30行には,第1の実施例について,「このレンズはこのレーザビームをサンプル18上の焦点19におけるスポットに焦点を結ばせる。光はこの照射されたスポットでサンプルにより散乱され,」とある。これは,サンプルに対してスポット照明により光を照射することを意味する。そして,第2の実施例(6欄49行~8欄29行)の構成は,空間フィルタ14以外は,基本的には第1の実施例の 構成と同様であるから,第2の実施例についてもスポット照明が前提とされている。そして,本件発明をサポートする実施態様は第2の実施例しかないから,構成要件Aの「サンプルに光を照射して」の「光」は,第2の実施態様と同じスポット照明に限定されると解される。 本件明細書7欄34~36行には,第2の実施例でスリットを用いる構成の,ピンホールを用いる場合に対する利点として,整列が容易である点が記載されている。確かに,スポット照明の場合には,サンプル上の測定すべき所与の面のスポット照明の当てられた点と,ピンホールとを合焦させなければなら 用いる場合に対する利点として,整列が容易である点が記載されている。確かに,スポット照明の場合には,サンプル上の測定すべき所与の面のスポット照明の当てられた点と,ピンホールとを合焦させなければならないため,光学的な「整列」(配置設定,アライメント)が困難であるのに対して,スリットを用いた場合には,サンプル上の点と,スリット上のいずれかの点を合焦させればよいため,光学的な「整列」がより容易となる。しかし,ライン照明においては,サンプル上のライン状の領域と,スリットのラインを合焦させなくてはならないため,本件明細書で記載されるような「整列が容易になる」という利点は生じない。スリットの利点に関する記載は,スポット照明を前提として初めて意味が通じるものである。 本件明細書7欄25~33行等に記載されるとおり,第2の実施例では,コンピュータのプログラムにより,CCDの読取領域を一部(「所与の領域」)に限定することで,第二の次元の共焦点作用が得られるとされている(構成要件G-2)。しかしながら,後記イのとおり,ライン照明を用いた場合には,サンプル上の所与の面以外の「他の面」からのラマン散乱光も,スポットではなくライン状の領域から同時に発生し,重畳的にCCDに到達する。そのため,CCDの読取領域を「所与の領域」に限定したとしても,他の面からの光を排除することはできず,第二の次元の共焦点作用(構成要件G-2)は得られない。二次元共焦点作用に関する記載もスポット照明を前提として初めて意味が通じるもの である。 イライン照明における「第二の次元」の「共焦点作用」(構成要件G-2)の有無(争点1-2)(原告らの主張)(ア) ライン照明は,共焦点系においては従前から広く採用されている技法であり,共焦点作用 ける「第二の次元」の「共焦点作用」(構成要件G-2)の有無(争点1-2)(原告らの主張)(ア) ライン照明は,共焦点系においては従前から広く採用されている技法であり,共焦点作用が得られることは周知である。 例えば,特開2000-275027公報(甲8)は,スリット光源すなわちライン照明を用いた共焦点光学系に関する発明であるが,「スリット共焦点はスポットでなくスリットを物体に投影してスリットで受ける形の共焦点光学系であり,スリットの長手方向は共焦点の効果は弱いが高速検出が可能な特徴をもつ」(【0006】),「スリット共焦点画像を得ることができる」(【0007】)と記載されている。 また,特開平5-332733公報(甲9)も,線状照明すなわちライン照明を用いた共焦点光学系に関する発明であるが,「物体上の線状照明とリニアセンサは,共焦点系を形成する。正式な共焦点系は照明,検出ともに点であるので,この系は,厳密な共焦点系ではないが,この形式でも,十分に共焦点系としての効果がある」(【0041】)と記載されている。 ライン照明と共焦点用スリットを用いた共焦点光学系においては,ピンホールを用いた場合に比べれば共焦点の効果は相対的に弱いものの,十分な共焦点系としての効果が得られるのである。 (イ) 別紙被告参考図5(b)に図示されているように,CCD面での光の強度は,中心部分からずれるにしたがって減少する。そのため,CCDの特定の1列(CCD面上の横に延びる細長い領域)で読み出される信号は,サンプルの特定の位置からの反射光の強度が最も大きく,サンプルのその他の位置からの反射光も含まれるもののその強度は相対的にか なり小さい。 したがって,ピンホールを用いた場 は,サンプルの特定の位置からの反射光の強度が最も大きく,サンプルのその他の位置からの反射光も含まれるもののその強度は相対的にか なり小さい。 したがって,ピンホールを用いた場合に比較すれば,サンプルの他の位置からの反射光の分量が相対的に大きくなり,共焦点の効果は多少弱くなるものの(甲8【0006】),サンプルの他の位置からの反射光の強度は中心からずれるにしたがって急速に減少することから,実用上十分に共焦点系としての効果が得られ(甲9【0041】),スリット共焦点画像を得ることができる(甲8【0007】)。 (ウ) 本件明細書においては,「完全な(二次元)共焦点作用」には2つの場合がある。 第1は,本件明細書6欄29~30行の「完全な共焦点作用」である。 これは,6欄18~26行の「CCDをコンピュータと組み合わせると,このように,従来の空間フィルタにおけるピンホールと同じ効果を与える。レンズ16がサンプルの表面に焦点を結ぶと,サンプル内の表面の背後から散乱された光をフィルタリングして取り除くことができ,表面自体の分析も行うことができる。あるいは,レンズ16を故意にサンプル内の点に焦点を結ばせて表面から散乱された光をフィルタリングして取り除くことができる。このように,余分の空間フィルタを使用しないでも共焦点作用が達成されていた。」を受けての記載である。6欄18~26行の部分は,非分散性エレメントを用いる場合には,ピンホールを用いる代わりに,第2図のCCD面の読取範囲を横方向と縦方向の両方で限定し,影を付けられたピクセル42のみを読み取ることで,ピンホールと同様の効果が得られることを述べている。 したがって,この文脈から,本件明細書6欄29~30行の「完全な共焦点作用」とは,非分 を付けられたピクセル42のみを読み取ることで,ピンホールと同様の効果が得られることを述べている。 したがって,この文脈から,本件明細書6欄29~30行の「完全な共焦点作用」とは,非分散性エレメントを用いる場合について,ピンホール(及びスリット)を用いることなく,第2図のCCDの読取範囲を横方向と縦方向の両方で限定することにより得られる作用を指している ことが明らかである。 第2は,本件明細書7欄32~33行及び8欄31~32行の「完全な(二次元)共焦点作用」である。7欄32~33行の「完全な二次元共焦点作用」は,7欄15行以下の記載を受けてのものであり,分散性エレメントを用いる場合について,スリット30による一次元空間フィルタリングと,第5図のCCDの読取範囲を線44間に制限することにより得られる作用を指していることが明らかである。8欄31~32行の「完全な共焦点作用」もこれと同義で用いられている。 なお,特許請求の範囲の記載においては,スリット30による一次元空間フィルタリングに関して「第一の次元」と呼んでおり(構成要件F),CCDの読取範囲を線44間に制限することに関して「第二の次元」と呼んでいる(構成要件G-2)。 次に,「部分的共焦点作用」は,本件明細書6欄32,39及び46行の3か所に記載がある。これらはいずれも,分散性エレメントを用いる場合において,スリット30は用いず,第5図のCCDの読取範囲を線44間に制限することにより得られる作用のことを指している。つまり,上記の「第一の次元」の空間フィルタリングは用いず,「第二の次元」の空間フィルタリングのみを用いた場合の作用を「部分的共焦点作用」と呼んでいるのである。 (エ) 共焦点作用とは,サンプルの所与 の「第一の次元」の空間フィルタリングは用いず,「第二の次元」の空間フィルタリングのみを用いた場合の作用を「部分的共焦点作用」と呼んでいるのである。 (エ) 共焦点作用とは,サンプルの所与の面の特定の点からの光を取得する際に,レンズを利用して,サンプルの所与の面の特定の点からの光をある領域に集中させる一方,サンプルの他の面からの光を拡散させ,前記領域の辺りのみを読み取ることにより,読取領域外に存在する拡散されたサンプルの他の面からの光を排除する(読み取らないようにする)ことである。 ここで,サンプルの所与の面の特定の点からの光が集中している領域 は,エアリーディスク(より正確には,エアリーディスクのイメージ)と呼ばれる領域である。すなわち,レンズでサンプルに光を集中させたとしても,実際には,サンプルにおけるその光の集中された領域は完全な点にはならず,一定の広がりをもった領域となる(回折により制限されるため)。この領域(エアリーディスク)は,光軸(光が進む方向)に垂直な方向に半径r=0.61λ/NAの広がりを有している(λは光の波長,NAはレンズの開口数)。 ピンホール面においても,エアリーディスク(より正確には,エアリーディスクのイメージ)が形成される。このエアリーディスクは,半径R=r×M=(0.61λ/NA)×Mの広がりを有する(rはサンプルにおけるエアリーディスクの半径,Mはレンズの倍率)。 ピンホールの大きさを,エアリーディスクの直径(R×2)を超えてさらに大きくしていった場合,ピンホールを通過するサンプルの他の面からの光が増えることはあっても,ピンホールを通過するサンプルの所与の面の特定の点からの光が増えることはほとんどない(当該光の大部分がエアリーディスクに集中し ,ピンホールを通過するサンプルの他の面からの光が増えることはあっても,ピンホールを通過するサンプルの所与の面の特定の点からの光が増えることはほとんどない(当該光の大部分がエアリーディスクに集中しているため)。 よって,ピンホールの大きさをエアリーディスクの大きさ(直径)よりも遥かに大きくした場合には,サンプルの所与の面の特定の点からの光を集中させた意味がなくなってしまうのであり,もはや共焦点作用がもたらされるとはいえない。また,共焦点作用を意識した当業者がピンホールの大きさをエアリーディスクの大きさよりも遥かに大きくすることは考えられない。 以上のように,共焦点作用を意識した当業者であれば,ピンホールの大きさを,エアリーディスクの大きさを考慮して設計するはずであるが,ピンホールの大きさは,必ずしもエアリーディスクの大きさまたはその値未満に設計されるわけではない。なぜなら,例えば,ピンホールの大 きさを小さくすると,光検出器で受光する光の量がその分小さくなるので,場合によっては,光軸方向(Z軸方向)の分解能をある程度犠牲にして,ピンホールの大きさをエアリーディスクの大きさよりも大きくし,光検出器で受光する光の量を増大させることもあるからである。 例えば,甲13(特開2007-133419公報)の【0005】【0038】には,ピンホールサイズによって分解能や検出光量が変化すること,実施形態ではエアリーディスクサイズをもって最適のピンホールサイズとする旨の記載がある。甲14(特開2006-153851公報)の【0015】【0016】【0040】には,分解能等の観点から,ピンホールの直径はエアリーディスク径の3倍以下にすることが好ましく,1倍以下にすることがさらに好ましい旨の記載がある。甲 1公報)の【0015】【0016】【0040】には,分解能等の観点から,ピンホールの直径はエアリーディスク径の3倍以下にすることが好ましく,1倍以下にすることがさらに好ましい旨の記載がある。甲15(特開2006-153763公報)の【0038】~【0042】【0052】には,解像力が高い状態で使用するには,ピンホールの大きさをエアリーディスク径の0.5~1倍にすることが望ましく,信号光が特に微弱なときには,ピンホールの大きさをエアリーディスク径の1~5倍もしくは10倍にすることが望ましい旨の記載がある。甲16(特開2002-150592公報)の【0005】【0025】【0034】【0036】には,媒体厚さ方向のセクショニング性能を考慮して,通常,ピンホール径やスリット幅は,エアリーディスク領域のみを検出するように設定すること,実施形態では,スリット幅や光検出器の一辺をエアリーディスク径の2倍以下に設定することが記載されている。 以上の説明は,ピンホールを用いて共焦点作用をもたらす場合のピンホールの大きさについて説明したが,スリットや光検出器(CCD等)の所与の領域を用いて共焦点作用をもたらす場合のスリットの幅や所与の領域の幅についても同様である。 被告製品について検討すると,乙6号証では,図3-2を用いて共焦点作用を説明し,図3-10でピンホールをスリットやCCDの所与の領域で置換できることを説明し,図4-1から図4-3において,被告製品がスリット及びCCDの所与の領域を用いていることを説明している。図3-2では,ほぼエアリーディスクのみを読み出すようにピンホールの大きさが設定されている。 これらのことから考えて,被告製品のスリットの幅及びCCDの所与の領域の幅は,上記のエアリ 。図3-2では,ほぼエアリーディスクのみを読み出すようにピンホールの大きさが設定されている。 これらのことから考えて,被告製品のスリットの幅及びCCDの所与の領域の幅は,上記のエアリーディスクを考慮して,第一及び第二の次元での共焦点作用をもたらすように設計されていることが明らかである。 (オ) 別紙被告参考図5(a)は,ライン照明を用いた場合に,サンプルにおいて,合焦している所与の面の5点(青色の5つの頂点の部分)と,合焦していない他の面の5点(赤色の5つの頂点の部分)に注目したものである。そして,別紙被告参考図7の右図は,CCD面での光の強度を示している。 これに対して,スポット照明を用いた場合には,別紙被告参考図5(a)において,所与の面及び他の面のそれぞれにつき,5つの点のうちの真中の1つ(「3」の点)のみが照明されることになる。よって,CCD面での光の強度は,別紙原告参考図1のようになる。 本件明細書にはスポット照明を用いた場合の実施例が記載されているが,本件明細書の第2図,第3図及び第5図を参照して説明されている第二の次元での共焦点作用とは,以下の内容である。すなわち,別紙原告参考図2において,線PP間の領域で光を読み取ると,所望の光(青色の線内の光)のほかに,不要な光(赤色の線内の光)も読み取ってしまうことになる。そこで,別紙原告参考図3に示すように,より狭い領域である線QQ間の領域(所望の光が集まっている領域)で光を読み取るようにして,不要な光の一部であるL1及びL2を読み取らないよう にし,Z方向(光の進む方向)の空間分解能を向上させている。これが本件明細書で説明している第二の次元での共焦点作用である。 ここで,ライン照明の場合に戻って考えると,別 いよう にし,Z方向(光の進む方向)の空間分解能を向上させている。これが本件明細書で説明している第二の次元での共焦点作用である。 ここで,ライン照明の場合に戻って考えると,別紙原告参考図4のように,線PP間の領域で光を読み取れば,やはり不要な光の一部であるL1及びL2を読み取ってしまう。これに対し,別紙原告参考図5のように,線QQ間の領域で光を読み取れば,不要な光の一部であるL1及びL2を読み取らない。 よって,ライン照明の場合でも,スポット照明の場合と同様に,不要な光の一部であるL1及びL2を読み取らないという効果,すなわち,第二の次元での共焦点作用を奏している。 この点について,被告は,ライン照明の場合,別紙原告参考図6に示すように,不要な光の一部であるL3~L6を読み取ってしまうから,第二の次元での共焦点作用を奏しないと主張している。しかしながら,L3~L6を読み取ってしまうとしても,L1及びL2を読み取らないようにして,Z方向の空間分解能を向上させていることには変わりはなく,第二の次元での共焦点作用を奏しているといえる。 また,被告は,不要な光L3~L6が加わるから,第二の次元の共焦点作用が打ち消されると主張しているようにも思われる。すなわち,不要な光L3~L6が,排除された光L1及びL2に置き換わり,L1及びL2を排除した利益が打ち消されると主張しているようにも思われる。 しかしながら,被告は,(a)スポット照明であって,スリットを用い,線QQ間のみを読み取る場合と,(b)ライン照明であって,スリットを用い,線QQ間のみを読み取る場合とを比較している。スポット照明である(a)の場合,点3のみが照明され,光L1及びL2のみが排除される。ライン照明であ る場合と,(b)ライン照明であって,スリットを用い,線QQ間のみを読み取る場合とを比較している。スポット照明である(a)の場合,点3のみが照明され,光L1及びL2のみが排除される。ライン照明である(b)の場合,光L1及びL2が排除されるが,光L3~L6が加わる。よって,ライン照明の場合の共焦点作用は,スポ ット照明の場合の共焦点作用よりも弱い。 しかしながら,これは正しい比較ではない。これはスポット照明とライン照明を比較しているのであって,本来比較すべきもの同士を比較していない。ライン照明において線QQ間のみを読み取ることによって第二の次元の共焦点作用を奏するか否かを決定するためには,(b)の場合と次の(c)の場合とを比較しなければならない。(b)の場合とは,上述のとおりライン照明であって,スリットを用い,線QQ間のみを読み取る場合であり,(c)の場合とは,ライン照明であって,スリットを用い,より間隔の広い線PP間を読み取る場合である。この比較が,ライン照明に関して,本件発明を用いた場合と用いなかった場合との比較である。 別紙原告参考図7がこれを表している。 (c)のライン照明の場合,線PP間の光がすべて読み取られる。これには,光L1~L6が含まれる(別紙原告参考図6参照)。ただし,これには,別紙原告参考図7において赤の斜線領域で示した光L7~L12も含まれる。これに対し,(b)のライン照明の場合,CCDの読取範囲を線QQ間に制限することによって,光L1及びL2のみならず,光L7~L12も排除される。 このように,不要な光L1及びL2並びにL7~L12が排除されるのであるから,線PP間ではなく,線QQ間のみを読み取ることは,共焦点作用をもたらすといえる。すなわち,読み取られる光にL3~ このように,不要な光L1及びL2並びにL7~L12が排除されるのであるから,線PP間ではなく,線QQ間のみを読み取ることは,共焦点作用をもたらすといえる。すなわち,読み取られる光にL3~L6が含まれるとしても,第二の次元の共焦点作用がもたらされる。 (カ) ライン照明の焦点はサンプルの所与の面に合わされているが,その前後(左右)ではライン照明は放射状に広がっている。そのため,ライン照明の軸以外の点からも散乱光が発生する。これが斜方寄与である。 斜方寄与による散乱光もスリットの開口部を通過するから,スリットを通過してCCDに届いた散乱光は,斜方寄与による散乱光もかなりの程 度含まれている。そのため,斜方寄与による散乱光を効果的に排除しないと,十分な共焦点効果が得られない。被告の主張は,この斜方寄与を考慮せず,実際の物理現象を単純化しすぎている。 (キ) 被告の主張は,サンプルの組成が,所与の面上の点1~5,さらにはZ軸方向の他の面の対応する点のすべてが「完全に均一」な場合を前提とするものである。このような場合にのみ,各点から生ずるラマン散乱光は同様となるからである。 しかしながら,実際のサンプルにおいては,このような状況はあり得ない。細胞やシリコンウェハのように,現実世界のサンプルは,それぞれの位置の組成が異なる。それは,所与の面上の異なる点だけでなく,深度方向の異なる点の組成も同様である。このことは,被告製品のブローシャである甲3号証5~7頁に掲載されている実際のサンプルの画像に具体例が示されている。完全に均質なサンプルは現実には存在せず,観念上の産物にすぎない。 また,そもそもラマン共焦点顕微鏡は,サンプルのそれぞれの部分がどのような組成からなるかを分析するために用いら ている。完全に均質なサンプルは現実には存在せず,観念上の産物にすぎない。 また,そもそもラマン共焦点顕微鏡は,サンプルのそれぞれの部分がどのような組成からなるかを分析するために用いられるのだから,完全に均質なサンプルを前提とする議論は無意味である。 (被告の主張)(ア) 本件明細書には,構成要件D及びGの「所与の領域」の直接かつ具体的な定義はなく,「所与の領域」を設定する具体的な方法は記載されていない。 他方で,構成要件G-2には「前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている」と記載されており,「第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている」との抽象的・機能的な表現で「所与の領域」が定義されている。 また,本件発明に対応する実施態様は,第2の実施例のみであり,第 2の実施例では,「所与の領域」を確定するための方法又は条件を何ら記載することなく,2本の線44の間の細長い領域を所与の領域としている。 以上から,構成要件D及びGにおける「所与の領域」とは,「第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている」領域のことであって,具体的には,スポット照明を前提として散乱光を受光する検出器の全画素列のうちの第二の次元で共焦点作用がもたらされるように形成された少数列の画素列,例えば,本件明細書の実施例の2本の線44の間の細長い領域に相当する部分をいうものと解される。 (イ) 構成要件G-2の「第二の次元の共焦点作用」とは,別紙被告参考図1のようなCCD面上に到達したラマン散乱光のうち,別紙被告参考図2のように,一部の領域のピクセルのデータのみを検出することによって,他の面からのラマン散乱光の一部を検出処 用」とは,別紙被告参考図1のようなCCD面上に到達したラマン散乱光のうち,別紙被告参考図2のように,一部の領域のピクセルのデータのみを検出することによって,他の面からのラマン散乱光の一部を検出処理の上でカットする作用と解される。 そして,本件発明7の「第二の次元の共焦点作用」についての説明図が別紙被告参考図3であり,スポット照明においては,他の面からの光もスポットからしか発生しないため,CCD面に到達する当該他の面からの光も当該他の面上の当該スポットから発生した光に限られる(別紙被告参考図3(c)「断面図(B面)」の右端の「CCD面上の光強度」の部分の赤い点線の緩やかなピーク)。そのため,コンピュータのプログラムにより,CCDの読取領域を一部(「所与の領域」)に限定することで,他の面からの光の一部をカットすることができる(第二の次元の共焦点作用)。 (ウ) しかしながら,サンプルの照射にライン照明を用いた場合には,サンプルの他の面からの散乱光は,ライン状の領域から発生する(別紙被告参考図4(c)「断面図(B面)」)。そして,CCD面に到達する当 該他の面からの光も,当該他の面上の当該ライン状の領域から発生した光となる。このことは,別紙被告参考図4(c)「断面図(B面)」では,一番右の赤い緩やかな2つ受光強度のピークで表わされている(別紙被告参考図4(c)では,見やすさの点からCCD上の2つの受光強度ピークしか描かれていないが,実際はY方向に無数の受光強度ピークが重なることになる。)。 このように,ライン照明の場合には,CCD面上に,他の面からの光が重畳的に到達する。そのため,CCDの読取領域を一部(「所与の領域」)に限定したとしても,他の面からの光はカットされず,したがって,第二の次 に,ライン照明の場合には,CCD面上に,他の面からの光が重畳的に到達する。そのため,CCDの読取領域を一部(「所与の領域」)に限定したとしても,他の面からの光はカットされず,したがって,第二の次元の共焦点作用は得られない。このことを説明した図が別紙被告参考図5であり,CCD面上の光の強度を付加した図が別紙被告参考図6~9である。 (エ) 「共焦点」とは,光源と光検出器が対物レンズに対して光学的に共役の位置関係にあることをいう。共焦点作用は,光源のXY平面での広がりを制限するとともに,光検出器側でもXY平面での広がりを制限することによって,主としてZ方向の分解能が向上する作用である。 典型的な共焦点レーザー顕微鏡では,レーザー光源をスポット照明とし,光検出器の前にピンホールを置くことによって,Z方向の分解能を向上させている(乙6・12頁図3-2参照)。すなわち,光源側でスポット照明によってX方向とY方向の双方で狭く制限し,光検出器側でピンホールによってX方向とY方向の双方で狭く制限することによって,Z方向の分解能を向上させ,共焦点作用を得ている。 本件明細書では,光源がスポット照明であることを前提としているため,光源側でX方向のみならずY方向でも制限されていることが自明であり,光源側の制限は格別に論ぜられず,光検出器側の制限のみを議論されている。また,本件明細書では,ピンホールにより光検出器側でX 方向及びY方向の双方で光をカットしている場合を「完全な共焦点作用」,「完全な二次元共焦点作用」と称し,Y方向に延びたスリットにより光検出器側でX方向のみで光をカットしている場合を「部分的な共焦点作用」又は「第一の次元の共焦点作用」と称している(乙6・17~22頁参照)。 光源と光検 Y方向に延びたスリットにより光検出器側でX方向のみで光をカットしている場合を「部分的な共焦点作用」又は「第一の次元の共焦点作用」と称している(乙6・17~22頁参照)。 光源と光検出器が共役であることを考慮して,光源側と検出器側を一方向,または二方向で制限する場合に区分けして得られる共焦点作用を,表にまとめると,次のようになる。 光源光検出器二方向とも制限(スポット照明)一方向のみ制限(ライン照明)制限なし(全面照明)二方向とも制限(ピンホール)(スリット+所与の領域)(スリット+制限された領域)完全完全完全完全な二次元共焦点作二次元共焦点作二次元共焦点作二次元共焦点作用部分的部分的部分的部分的な共焦点作用共焦点作用共焦点作用共焦点作用(第一第一第一第一の次元次元次元次元の共焦共焦共焦共焦点作用点作用点作用点作用と同等同等同等同等)共焦点作用なし一方向のみ制限(スリットのみ)(所与の領域のみ)部分的部分的部分的部分的な共焦点作用共焦点作用共焦点作用共焦点作用(第一第一第一第一の次元次元次元次元の共焦点共焦点共焦点共焦点作用作用作用作用)画像が得られない 画像が得られない 制限なし共焦点作用なし画像が得られない画像が得られない本件発明7,被告製品,甲8,9,乙7,11号証に記載の発明において得られる「共焦点作用」を,それぞれ上記の表に当てはめると,次のようになる。 光源光検出器二方向とも制限(スポット照明)一方向のみ制限(ライン照明)制限なし(全面照明) れぞれ上記の表に当てはめると,次のようになる。 光源光検出器二方向とも制限(スポット照明)一方向のみ制限(ライン照明)制限なし(全面照明) 二方向とも制限(ピンホール)又は(スリット+所与の領域)(スリット+制限された領域)・本件発明本件発明本件発明本件発明7・乙7・被告製品被告製品被告製品被告製品(ラインラインラインライン照明モードモードモードモード)・乙11 ・甲8・甲9 一方向のみ制限(スリットのみ)・被告製品被告製品被告製品被告製品(スポッスポッスポッスポット照明照明照明照明モードモードモードモード) 制限なし 以上のとおり,被告製品,甲8,9,乙7,11号証に記載の発明は,いずれも部分的な「共焦点作用」が得られるが,これらは本件発明7における「完全な共焦点作用」とは異なるものである。 (オ) 原告らは,特許公開公報(甲8,9)の記載を挙げて,ライン照明と共焦点用スリットを用いた共焦点光学系においては,ピンホールを用いた場合に比べれば共焦点の効果は相対的に弱いものの,十分な共焦点系としての効果が得られると主張している。 しかしながら,原告らの主張は,ライン照明を用いた場合に「第一の次元の共焦点作用と同等な作用」が生じることを論じたものにすぎない。 「スリットの長手方向の共焦点の効果は弱い」(甲8【0006】)との記載や,「この系は,厳密な共焦点系ではない」(甲9【0041】)との記載から明らかなとおり,甲8,9に記載されている共焦点作用は,本件明細書にいう「完全な共焦点作用」や,第一の次元の共焦点作用に加えて, 「この系は,厳密な共焦点系ではない」(甲9【0041】)との記載から明らかなとおり,甲8,9に記載されている共焦点作用は,本件明細書にいう「完全な共焦点作用」や,第一の次元の共焦点作用に加えて,更に「第二の次元の共焦点作用」を有する場合ではなく,「第一の次元の共焦点作用」と同等な作用であるにすぎない。 したがって,「第一の次元の共焦点作用」しか有さない構成と,これ に加えて「第二の次元の共焦点作用」とを有する構成を混同している原告らの主張は誤りである。 (カ) 原告らは,別紙原告参考図7に関し,線PP間と線QQ間を読み出す場合には,例えば線QQを読み出した場合にはL1とL2が排除されるので,Z方向の空間分解能を向上させているため,第二の次元の共焦点作用も奏していると主張している。 しかし,ライン照明の場合に線PP間を読み出してしまうと,Y方向に拡がった領域を空間分解せずに測定することになる。すなわち,読み出し幅を変えるとXY面内の分解能が変化してしまうから,線PP間の読み出しと線QQ間の読み出しとの比較自体が無意味である。 また,仮に線PP間の読み取りと線QQ間の読み取りを比較しても,線QQ間の読み取りの方がZ方向の分解能が向上しているとはいえない。 共焦点作用によって,サンプルの深さ方向(Z方向)の分解能が向上するか否かは,サンプルの所与の面からの散乱光の光検出器の出力量(強度)と,サンプルの他の面からの散乱光の光検出器の出力量(強度)との比率を考えると,理解しやすい。別紙被告参考図10で,線PP間を読み取ると,検出される光の量は,右上の四角で囲んだ部分のように,サンプルの所与の面の5点からの光と,サンプルの他の面の5点からの光の全部の合計量となる。これに対して,線QQ間を読 0で,線PP間を読み取ると,検出される光の量は,右上の四角で囲んだ部分のように,サンプルの所与の面の5点からの光と,サンプルの他の面の5点からの光の全部の合計量となる。これに対して,線QQ間を読み取ると,ライン照明ではサンプルのライン状の領域(別紙被告参考図10の例ではサンプルの5点)からの光が重なって到達するため,検出される光の合計量は,参考図の左下の四角で囲んだ部分のように,サンプルの所与の面の1点からの光と,サンプルの他の面の1点からの光の合計量に等しくなる。したがって,線PP間と線QQ間とを検出する場合,所与の面からの光の強度と他の面からの光の強度との比率は,変わりがない。 (キ) 原告らは,均質なサンプルを前提とした議論は誤りであると主張し ている。しかしながら,XY方向に均質な平面状のサンプルに対して,奥行き方向の位置を分解できるかどうかが,共焦点でない通常の光学系と共焦点光学系を区別する重要な特徴である。すなわち,薄膜や板などの,XY面方向に均質なサンプルであっても,その深さ方向の分布を観察することができることが,共焦点顕微鏡のメリットである。 この点について,「超解像の光学」(乙13)の4行目以下にも,「これは,従来の顕微鏡では,たとえば,光軸方向(注:Z方向)のみに構造の変化をもつ試料に対してはまったく分解をもたないことを意味しており,面内方向に構造を有さない蛍光膜を一様照明落射蛍光顕微鏡で観察した場合,試料の位置(Z方向)も厚みも知ることはできない. それに対して共焦点光学系は,光軸方向のみに構造の変化をもつ試料に対しても分解をもつことを示している。」と記載されている(本件特許権の優先日前の文献として乙21~23)。 したがって,共焦点作用の有無を議論する以上,XY面方 に構造の変化をもつ試料に対しても分解をもつことを示している。」と記載されている(本件特許権の優先日前の文献として乙21~23)。 したがって,共焦点作用の有無を議論する以上,XY面方向で均質なサンプルを用いることは当然の前提とされ,一般的である。実際に,例えば,技術説明書(乙6)の29頁に引用した論文(Sheppard,JournalofModernOptics, 1988)の図12では,面リフレクター(planereflector),すなわち,XY方向に分布を持たない平面状の反射体の測定結果に基づいて,Z方向の分解能の議論がされている。原告らの主張とは異なり,共焦点光学系のZ方向の分解能の議論をする場合に,XY方向に均質なサンプルを使用することは,広く行われている手法である。 ウ被告製品(ライン照明モード)の構成要件充足性(争点1-3)(原告らの主張)(ア) 上記ア(原告らの主張)のとおり,構成要件Aの「サンプルに光を照射して」の「光」には,スポット照明のみならずライン照明も含まれ る。そして,被告製品(ライン照明モード)は,ライン照明を用いてサンプルに光を照射しているから,構成要件Aを充足する。 (イ) 上記イ(原告らの主張)のとおり,ライン照明においても第二の次元の共焦点作用は生じるのであり,被告製品も,サンプルの所与の面から散乱された光を,光検出器の第二の次元で共焦点作用がもたらされるように形成された少数列の画素列に合焦させるようになっている。 被告製品においては,「短辺の400画素の方向がサンプル上のライン照明された400地点の位置座標に対応し,長辺の1340画素の方向は分光された光の各周波数に対応する」(答弁書5頁)の記載から明らかなとおり においては,「短辺の400画素の方向がサンプル上のライン照明された400地点の位置座標に対応し,長辺の1340画素の方向は分光された光の各周波数に対応する」(答弁書5頁)の記載から明らかなとおり,サンプルの個々の点(すなわち位置座標)は冷却CCDの特定の1列の画素(ピクセル)に対応付けられている。したがって,サンプルの所与の面上の個々の点は,それぞれの点に対応付けられている特定の画素列(1列1340画素からなる)に合焦させられている。 以上のとおり,被告製品(ライン照明モード)は,構成要件Dを充足する。 (ウ) 被告製品(ライン照明モード)では,サンプルから散乱された光がスリットを通過して検出器に入力される。当該スリットは,「スリットを備えた一次元空間フィルタ」に相当し,「第一の次元で共焦点作用」をもたらすから,被告製品(ライン照明モード)は,構成要件Fを充足する。 (エ) 上記イ(原告らの主張)のとおり,被告製品(ライン照明モード)は,十分な共焦点作用が得られているから,構成要件G-1及びG-2を充足する。 (オ) 被告製品(ライン照明モード)では,サンプルの所与の面において,光がライン状に照射される。このライン状の光(別紙被告参考図5(a)では緑色の線で示されている)は,スポット(点)状の光の集合という ことができる。ここで,スポット状の光の各々は合焦されている。別紙被告参考図5(a)では,これらのスポット状の光のうちの5つが示されている。そして,当該5つのスポット状の光の箇所(焦点1~5)から発せられる散乱光は,別紙被告参考図5(b)に示すスリット(面)において,スポットとしての焦点1~5にそれぞれ絞り込まれて,当該スリットを通過する。 よって,被告製品(ライン 5)から発せられる散乱光は,別紙被告参考図5(b)に示すスリット(面)において,スポットとしての焦点1~5にそれぞれ絞り込まれて,当該スリットを通過する。 よって,被告製品(ライン照明モード)において,サンプルの所与の面の焦点(別紙被告参考図5(a)の焦点3)からの散乱光は,スリットにおいてスポットとしての焦点(別紙被告参考図5(b)の焦点3)に絞り込まれて当該スリットを通過するということができる。一方,サンプルの所与の面の焦点の前または後で散乱される光は,スリットにおいて焦点を結ばない(別紙被告参考図5(a)及び(b)ではこの様子が赤色の点線で示されている。)。 したがって,被告製品(ライン照明モード)は,構成要件G-2①を充足する。 (カ) 被告製品においては,顕微鏡の対物レンズを照射及び集光の双方に使用しているおり,「前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ」ているから,被告製品(ライン照明モード)は,構成要件G-2②を充足する。 (キ) 被告製品のブローシャ(甲3)の12頁には,「RAMAN-11主な仕様」という表が記載されており,その中には「電子冷却CCD検出器」と記載されている。乙6号証25頁図4-2(a)を見ても,「CCD面」と記載されており,CCDが使用されていることが分かる。 したがって,被告製品の「光検出器」は電化結合素子(CCD)であり,被告製品(ライン照明モード)は構成要件G-2③を充足する。 (ク) 原告らは,分光器の回折格子の直前に配置されているスリットであ っても,その幅によって共焦点作用(本件発明7にいう「第一の次元の共焦点作用」)をもたらす場合ともたらさない場合があると主 ク) 原告らは,分光器の回折格子の直前に配置されているスリットであ っても,その幅によって共焦点作用(本件発明7にいう「第一の次元の共焦点作用」)をもたらす場合ともたらさない場合があると主張し,乙7号証にはスリットの幅が共焦点作用をもたらすような幅であることの記載がないから,構成要件Fが開示されているとはいえないと主張するものである。 被告も,被告製品のスリットにより「第一の次元の共焦点作用」がもたらされることを認めており,スリットの幅は共焦点作用をもたらす幅であることに争いはない。 したがって,被告の構成要件Fについての予備的主張は理由がない。 (被告の主張)(ア) 上記ア(被告の主張)のとおり,構成要件Aの「サンプルに光を照射して」の「光」は,スポット照明に解すべきであるから,被告製品(ライン照明モード)は構成要件Aを充足しない。 (イ) 上記イ(被告の主張)のとおり,ライン照明では,原理的に第二の次元の共焦点作用はもたらされない。被告製品(ライン照明モード)は,第二の次元の共焦点作用がもたらされるような「所与の領域」が存在しないから,構成要件D及びGを充足しない。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)のとおり,被告製品は,構成要件A及びDを充足しないので,構成要件Eを充足しない。 (エ) 原告らの主張(ウ)は認める。 被告は,分光器の回折格子の直前に配置されている「入口スリット」も,構成要件Fの「スリット」に含まれ得ると解し,被告製品には「入口スリット」と空間フィルターとを兼ねたスリットが分光器の回折格子の直前に1つ設けられていることから,被告製品の構成要件Fの充足性を認めたものである。 しかし,原告らは,分光器の回折格子の直前に配 と空間フィルターとを兼ねたスリットが分光器の回折格子の直前に1つ設けられていることから,被告製品の構成要件Fの充足性を認めたものである。 しかし,原告らは,分光器の回折格子の直前に配置されているスリッ トは,「入口スリット」であって,構成要件Fの「スリット」ではない旨主張している。仮に,原告らの主張のとおりであれば,被告製品には「入口スリット」しか設けられておらず,構成要件Fの「スリット」は存在しないから,構成要件Fの充足性について「認める」とした主張は,真実に反しかつ錯誤による主張であり,これを撤回する。 (オ) 被告製品(ライン照明モード)では,スリット面でもスポットではなくライン状の光であるため,「前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過」するとはいえない。よって,被告製品のライン照明モードは,構成要件G-2①を充足しない。 別紙被告参考図5は,ライン照明では第二の次元の共焦点作用が原理的に生じ得ないことを,数式を使わずに直感的に理解できるように説明するために作成した模式図にすぎず,当該文脈を無視して,あたかも被告が自白をしたかのように図面を流用することは許されない。実際には,ライン照明がライン状に連続したものであって,上記模式図のように断続的なスポットで表わされるものではない。 (カ) 上記とおり,被告製品は,構成要件A,D,(F)及びGを充足しないので,構成要件Hを充足しない。 (2) 被告製品(スポット照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点2)(原告らの主張)ア被告製品は,スポット照明を用いる場合にも,ライン照明の場合と同様,ピンホールではなくスリットを使用していることが明らかである。したがって,被 するか(争点2)(原告らの主張)ア被告製品は,スポット照明を用いる場合にも,ライン照明の場合と同様,ピンホールではなくスリットを使用していることが明らかである。したがって,被告製品は,スポット照明を用いる場合にも,本件発明7の構成要件のすべてを充足する。 イ被告は,本件明細書の実施例の記載から,第5図の線46同士の間の領域は176μm以下であり,読取領域の幅が220μmである被告製品は, 構成要件G―2を充足しないと主張する。しかし,本件明細書の記載は,あくまで一実施例に関する記載にすぎず,第二の次元の共焦点作用がもたらされるか否かの一般的な閾値が176μmであることを述べたものではない。 CCDの読み取り幅が共焦点作用をもたらすといえるか否かは,当該読み取り幅とエアリーディスクの大きさ(直径)との関係に依存する。被告製品のレンズの開口数,倍率等の情報は開示されていないが,それらの値を適宜設定すれば,CCDの読み取り幅が220μmの場合でも第二の次元の共焦点作用をもたらすことができる。単にCCDの所与の領域の幅だけで共焦点作用の有無が決定されるわけではない。 ウエアリーディスクの読取領域の幅の領域の0.5~10倍の範囲にあれば,共焦点作用がもたらされるといえる(甲13~甲16)。 エアリーディスクの直径の典型値が「30μm程度」であることは被告も自認しているところ(乙12のスライド46頁),220μmと30μmの比は約7倍であるから,上記の数値範囲に含まれている。 エ被告製品において選択可能な対物レンズの種類やレーザー光の波長の組み合わせによって,エアリーディスクのサイズが220μmにより近い数値となる場合もある。 被告は,λ=532nm,NA エ被告製品において選択可能な対物レンズの種類やレーザー光の波長の組み合わせによって,エアリーディスクのサイズが220μmにより近い数値となる場合もある。 被告は,λ=532nm,NA=0.45,M=20の場合を前提に,エアリーディスクの直径dを以下の計算式により計算している(乙12・46頁)。 d=1.22λ/NA×Mλ:波長,NA:開口数,M:対物レンズの倍率しかし,甲3号証(被告製品説明書)の最終頁にレーザーの標準波長として,532nmの他に785nmも選択可能であることが記載されている。また,「レーザー波長は各種搭載可能。ユーザーの要望に対応」と記 載されていることから明らかなように,より長波長のレーザーも選択可能である。甲3号証8頁の画面には,対物レンズの倍率100倍で,開口数0.9のものが表示されている。 この数値の組み合わせでエアリーディスクの直径を計算すると約106μmであり,CCDの読取領域の幅220μmはその2倍に当たる。したがって,甲13~16号証の記載に照らせば,この場合に被告製品において第二の次元の共焦点作用がもたらされていることは明らかである。 また,NAが0.45でその他の条件は上記と同様の場合には,エアリーディスクの直径は212μmであり,CCDの読取領域の幅220μmとほぼ等しくなるから,この場合にも第二の次元の共焦点作用がもたらされていることは明らかである。 (被告の主張)ア被告製品(スポット照明モード)において,入口スリットを兼ねたスリットが用いられていることは認める。この入口スリットを兼ねたスリットが構成要件Fを充足するか否かは,ライン照明モードの主張と同様である。 イ被告製品( ド)において,入口スリットを兼ねたスリットが用いられていることは認める。この入口スリットを兼ねたスリットが構成要件Fを充足するか否かは,ライン照明モードの主張と同様である。 イ被告製品(スポット照明モード)では,CCD面上の垂直方向の幅220μmの領域で検出を行うように設計されている。具体的には,スポット照明モードでは,垂直方向の幅220μm,水平方向の長さ約26.8mmの範囲でCCDからの信号を採取している。このように,被告製品においては,CCDの読取領域の幅が220μmと大きいため,第二の次元の共焦点作用が生じない。 第二の次元の共焦点作用を生じさせるためには,「サンプルの他の面から散乱する光」を検出しないようにするために,CCDの読取領域の幅を狭くすることが必要である。このCCDの読取領域に関して,本件明細書には一切定義はなく,次の7欄21~33行に記載されているのみである。 「スリット30は一次元空間フィルタリングのみを提供し,ラマンバンド 28のそれぞれが第5図の水平方向に空間的にフィルタリングされるようにしていることが認められるであろう。しかしながら,焦点19の外側からの若干の光が依然としてスリット30を通過し第3図の影を付けた領域に対応する第5図の領域において受領されることがある。これを克服するには,コンピュータ25を第3図の実施例におけると同様にプログラムして,線44同士の間にあるピクセルからのデータだけを処理し,線46同士の間にある他のピクセルを排除する。これにより,垂直方向における空間フィルタリングが得られ,スリット30により与えられる水平空間フィルタリングと一緒に,完全な二次元共焦点作用が達成される。」本件明細書におけるCCDの読取領域の幅に関する唯一の記載であ 間フィルタリングが得られ,スリット30により与えられる水平空間フィルタリングと一緒に,完全な二次元共焦点作用が達成される。」本件明細書におけるCCDの読取領域の幅に関する唯一の記載である実施例においては,第5図の線44同士の間にある,CCD上の幅2ピクセルからのデータだけを処理することとされている。そして,本件明細書6欄7~8行には,「ピクセルのピッチは典型的には22μm以下でよい。」と記載されている。 このように,本件明細書の唯一の記載である実施例においては,第二の次元の共焦点作用を生じさせるためのCCDの読取領域として,22μm以下×2ピクセル=44μm以下の幅の領域が記載されている。そして,本件明細書において,排除するべきサンプルの他の面からの光は,第5図の線46同士の間の領域に入射するとされており,当該線46同士の間の領域は,22μm以下×8ピクセル=176μm以下の幅の領域である。 これに対して,被告製品の読取領域の幅は,220μmであり,サンプルの他の面からの散乱光が入射するとされる線46同士の間の領域の幅(176μm以下)よりも大きいことになる。 よって,本件明細書の実施例等の記載に鑑みても,CCDの読取領域の幅が220μmと大きい被告製品においては,サンプルの所与の面から散乱された光のみならず,サンプルの他の面から散乱された光をも検出して いるから,第二の次元の共焦点作用は生じない。被告製品では,幅220μmでデータを検出する場合,垂直方向(第二の次元)における空間フィルタリングがもたらされず,本件明細書7欄30~33行にいう完全な二次元共焦点作用が達成されない。 したがって,被告製品(スポット照明)では,「第二の次元の共焦点作用」がもたらされないから タリングがもたらされず,本件明細書7欄30~33行にいう完全な二次元共焦点作用が達成されない。 したがって,被告製品(スポット照明)では,「第二の次元の共焦点作用」がもたらされないから,構成要件G-2を充足しない。 ウ本件発明7における「第一の次元の共焦点作用」及び「第二の次元の共焦点作用」が得られるというのは,「何らかの」共焦点作用が得られれば良いのではなく,実用的な分解能が得られる程度の共焦点作用を奏することを意味している。 なぜならば,本件明細書8欄7-13行には「空間フィルタとして動作するためには,スリット30の幅は非常に小さく,典型的には10μm以下でなければならない。最大値は50μmになろう。このように,スリット30は,十分量の光を集めるために例えば最低200μmのようにずっと大きな従来のモノクロメータに普通に設けられている入口スリット,出口スリットと混同されるべきでない。」と記載され,200μmのスリットでは空間フィルタとして動作しないとしているが,200μmのスリットでも,理論的には「何らかの」共焦点作用が得られるからである。すなわち,本件発明7において,「第一の次元の共焦点作用」,「第二の次元の共焦点作用」が得られるというのは,200μmのスリットによって生じる共焦点作用よりも十分に大きい作用が得られることを意味している。 本件発明7の特徴は,「従来技術のピンホール」をスリットと検出器の読出領域の二つの次元の制限で代替することにあるから,「200μmのスリット幅」と「200μmの読出領域幅」では,本件発明の効果を議論する上で区別する必要はない。 被告製品(スポット照明モード)では,220μmの読出領域幅を有し ており,そのような幅広い読出領域では,本件明細書で「空間 は,本件発明の効果を議論する上で区別する必要はない。 被告製品(スポット照明モード)では,220μmの読出領域幅を有し ており,そのような幅広い読出領域では,本件明細書で「空間フィルタとして動作しない」とされている200μmのスリットによる共焦点作用と同程度しか得られないから,「第二の次元の共焦点作用」は奏さない。 なお,甲15号証で,「エアリーディスク径の1~5倍もしくは10倍にすることが好ましい」という記載がある。しかし,この意味は,エアリーディスク径の10倍でも「何らかの」共焦点作用が得られるという意味でしかなく,本件発明7における点光源とピンホールの構成の代替とする「完全な二次元共焦点作用」が得られるという意味とは,全く異なるものである。 エピンホールを採用した場合と同様な実用的な分解能が得られる程度の共焦点作用は,読取領域の幅(ないしピンホール径)が,エアリーディスクの直径以下でなければ生じない。 被告製品(スポット照明モード)におけるCCDの読取領域の幅は,220μmに固定されている。他方,被告製品におけるエアリーディスクの直径は,原告の計算(対物レンズの倍率100倍,開口数0.9)を前提としても最大でも約106μmである。 また,被告製品において検出し得るラマン散乱光の波長は,光検出器の制約により,最も大きい場合でも1075nmである(乙27)。仮に,被告製品において検出し得るラマン散乱光の波長の最大値を用いて計算した場合であっても,エアリーディスクの直径(スリット位置におけるエアリーディスク)は,最大でも約146μmである。 d=1.22λ/NA×M =1.22×1.075(μm)/0.9×100 =約146(μm) 位置におけるエアリーディスク)は,最大でも約146μmである。 d=1.22λ/NA×M =1.22×1.075(μm)/0.9×100 =約146(μm)よって,被告製品におけるCCDの読取領域の幅(220μm)は,エアリーディスクの直径の最大値(146μm)よりも大きく,その約1. 5倍である。 したがって,被告製品(スポット照明モード)においては,第二の次元の共焦点作用が生じていない。 オ原告らは,被告製品において,波長λ=785nm,倍率M=100倍,開口数NA=0.45の場合に,エアリーディスク径dは,212μmと計算される旨主張する。 しかし,NA(開口数)が0.45で倍率が100倍のレンズは,被告製品の仕様として想定されていない。被告は,このようなレンズを販売していないし,ユーザーに対してその使用を推奨するようなことも一切していない。原告らの主張するNAの小さなレンズは,集光効率が低く,感度の低下をもたらし,実用的でないためである。 したがって,被告製品において,原告らが主張するような条件のレンズが使用されることはないため,原告らの計算のようにエアリーディスク径dが212μmとなることはない。 (3) 被告製品が本件発明8~10及び13の技術的範囲に属するか(争点3)(原告らの主張)ア本件発明8(ア) 別紙原告参考図8は,被告製品の「RAMAN-11」(別紙物件目録記載1の製品)の英語版ブローシャである甲7号証11頁中段の図の一部を拡大したものである。 別紙原告参考図8の青線で囲った部分が,400本のスペクトルのうちの1本のスペクトルを検出する領域,すなわち「前記光検出器の前記 ある甲7号証11頁中段の図の一部を拡大したものである。 別紙原告参考図8の青線で囲った部分が,400本のスペクトルのうちの1本のスペクトルを検出する領域,すなわち「前記光検出器の前記所与の領域」に当たる。当該領域の形状は,別紙原告参考図8から明らかなように細長い形状をしている。 よって,被告製品は構成要件Iを充足する。 (イ) 被告製品は,本件発明7(請求項7)の構成要件をすべて充足しているから,構成要件Jを充足する。 (ウ) 以上のとおり,被告製品は,本件発明8の構成要件のすべてを充足する。 イ本件発明9(ア) 別紙原告参考図8のとおり,青線で囲まれた領域すなわち「前記光検出器の前記所与の領域」は,スリットと直交する方向に細長く延びているから,「前記スリットを横切る方向に延在している」。 よって,被告製品は構成要件Kを充足する。 (イ) 被告製品は,本件発明7及び8(請求項7及び8)のいずれについても構成要件をすべて充足しているから,構成要件Lを充足する。 (ウ) 以上のとおり,被告製品は,本件発明9の構成要件のすべてを充足する。 ウ本件発明10(ア) 別紙原告参考図8には複数の縦・横の白線が描かれている。この白線で囲まれた長方形の領域の個々が冷却CCDの個々のピクセルを表している。そして,同図から明らかなように,当該ピクセルは所定の位置に配列して備えられているから,当該構造は「ピクセルのアレイ」に該当する。 よって,被告製品は構成要件Mを充足する。 (イ) 被告製品は,本件発明7~9(請求項7~9)のいずれについても構成要件をすべて充足しているから,構成要件Nを充足する。 よって,被告製品は構成要件Mを充足する。 (イ) 被告製品は,本件発明7~9(請求項7~9)のいずれについても構成要件をすべて充足しているから,構成要件Nを充足する。 (ウ) 以上のとおり,被告製品は,本件発明10の構成要件のすべてを充足する。 エ本件発明13(ア) 被告製品のスペクトルはラマン散乱光のスペクトルであるから,被 告製品は構成要件Oを充足する。 (イ) 被告製品は,本件発明7~10(請求項7~10)のいずれについても構成要件をすべて充足しているから,構成要件Pを充足する。 (ウ) 以上のとおり,被告製品は,本件発明13の構成要件のすべてを充足する。 (被告の主張)ア本件発明8について(ア) 原告らの主張ア(ア)のうち,別紙原告参考図8は,被告製品の「RAMAN-11」(別紙物件目録記載1の製品)の英語版ブローシャである甲7号証11頁中段の図の一部を拡大したものであること,図の青線で囲った部分が細長い形状をしていることは認め,その余は否認ないし争う。同ア(イ)及び(ウ)は否認ないし争う。 (イ) 本件発明における「所与の領域」とは,構成要件G-2の「前記所与の領域」と「前記」なる文言が使用されていることにより,第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている領域のことをいう。しかるに,被告製品(ライン照明モード)においては,図の青線で囲った部分で,第二の次元の共焦点作用はもたらされないから,図の青線で囲った部分は,「所与の領域」に当たらない。 イ本件発明9について原告らの主張イ(ア)のうち,図の青線で囲まれた領域がスリットと直交する方向に細長く延びていることは認めるが,その余は否認ないし 所与の領域」に当たらない。 イ本件発明9について原告らの主張イ(ア)のうち,図の青線で囲まれた領域がスリットと直交する方向に細長く延びていることは認めるが,その余は否認ないし争う。 同イ(イ)及び(ウ)は否認ないし争う。 ウ本件発明10について原告らの主張ウ(ア)は認める。同ウ(イ)及び(ウ)は否認ないし争う。 エ本件発明13について原告らの主張エ(ア)は認める。同ウ(イ)及び(ウ)は否認ないし争う。 (4) 本件発明7に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点4)ア乙30号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-1)(被告の主張)(ア) 本件発明7は,乙30号証(NATUREVol.347 20 SEPTEMBER 1990)に記載された発明(以下「乙30発明」という。)に,乙18号証に記載された発明(以下「乙18発明」という。)を適用することによって,当業者が容易に発明できたものである。 (イ) 本件発明7と乙30発明とを構成要件ごとに対比すると,次のとおりである。 a 乙30号証(302頁)の図(別紙乙30号証の図参照)には,サンプル(左下の平板)にレーザー光を照射して,散乱光を得る手段が記載されているから,構成要件Aと同一である。 b 乙30号証の図には,右端に「Grating」(回折格子)があり,スペクトルを分析する手段が記載されているから,構成要件Bと同一である。 c 乙30号証の図には,右下に「Charge-coupled-devicecamera」(CCDカメラ)が記載されているから,構成要件Cと同一である。 d 乙30号証の図には,右端のGr c 乙30号証の図には,右下に「Charge-coupled-devicecamera」(CCDカメラ)が記載されているから,構成要件Cと同一である。 d 乙30号証の図には,右端のGrating(回折格子)からの光をM(concave)(凹面鏡)によって,CCDカメラに合焦させている。サンプルの所与の面からの散乱光が光検出器に焦点が合っているならば,必然的にサンプルの他の面からの散乱光は焦点が合っていないことになるから,「前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段」である点では,構成要件Dと同一である。 他方で,乙30号証の図では,「所与の領域」に合焦させることが明記されていない点で,構成要件Dと相違する。 e 乙30号証の図には,分光分析装置が記載されているから,構成要件Eと同一である。 f 本件発明7は,スリットを備えた一次元空間フィルタを通過させるのに対し,乙30発明ではピンホールを通過させる点で,構成要件Fと相違する。 g 乙30号証の図では,「所与の領域」が明記されていない点で,構成要件G-1及びG-2と相違する。 乙30号証の図では,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光は,空間フィルタにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記空間フィルタを通過し,サンプルの所与の面の焦点の前または後で散乱される光は,前記空間フィルタにおいて焦点を結ばない点では,構成要件G-2①と同一である。他方で,本件発明7は空間フィルタがスリットであるのに対し,乙30発明は空間フィルタがピンホールである点で相違する。 記空間フィルタにおいて焦点を結ばない点では,構成要件G-2①と同一である。他方で,本件発明7は空間フィルタがスリットであるのに対し,乙30発明は空間フィルタがピンホールである点で相違する。 乙30号証の図では,サンプルに光を照射するのと,サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられているから,構成要件G-2②と同一である。 乙30号証の図では,光検出器としてCCDカメラが記載されており,構成要件G-2③と同一である。 h 乙30号証の図には,分光分析装置が記載されているから,構成要件Hと同一である。 (ウ)a 本件発明7と乙30発明は,構成要件D,F,G-1,G-2及びG-2①で相違点があるが,いずれも共焦点作用をピンホールで実現するか,スリットとそれと直交する光検出器の所与の領域(の読み 取り)とで実現するかの相違によって生じた相違点である。そして,前記相違点は,乙18発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 b 乙18号証には,本件発明7と全く同様に,スポット照明とピンホールの位置合わせの調整作業の困難性を解決すべき発明の課題として明示し,これをスポット照明と直交する2つのスリットの構成で置き換えた発明が記載されている。 乙18号証の第2図(別紙乙18号証の第2図参照)から明らかなように,乙18号証にはスポット照明とピンホールに代えて,スポット照明と2つの直交するスリットで2次元の共焦点作用を奏することが記載されている。 また,乙18号証2頁左上欄5~9行には,「位置合わせをして,この微小なピンホールに光を入射させるのが難しい。本発明の目的は,微小なピンホールに替わる,位置合わせ容易な機構を具備した共焦 また,乙18号証2頁左上欄5~9行には,「位置合わせをして,この微小なピンホールに光を入射させるのが難しい。本発明の目的は,微小なピンホールに替わる,位置合わせ容易な機構を具備した共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡を提供することにある。」と記載されており,本件発明7によって解決される課題は,乙18号証によって解決できることが記載されている。 そして,本件発明7は,乙18号証の2つめのスリットを「光検出器の所与の領域」に置き換えたものにすぎない。光検出器で検出する光を,スリットすなわちハードウェアによって限定するか,「所与の領域(の読み取り)」すなわちソフトウェアによって限定するかは,構成上,本質的な違いではないし,第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすという作用効果も同じであるから,2つめのスリットを「所与の領域」に置き換えることには,何ら創作性を要せず,当業者が容易に想到できたものである。 したがって,当業者は,乙30発明に,乙18発明を組み合わせる ことにより,乙30発明のピンホールを2つの直交するスリットに置き換え,さらに,2つ目のスリットを光検出器の所与の領域に置き換えることは,容易に想到できたといえる。 c 構成要件D,G-1及びG-2に関する相違点の容易想到性と同様に,構成要件F及びG-2①についても,当業者は,乙30発明に乙18発明を組み合わせることにより,乙30発明のピンホールを2つの直交するスリットに置き換えることを容易に想到できたといえる。 (エ) 原告らは,乙30号証の図を簡略化すると別紙原告参考図9-1になるとした上で,乙18発明を乙30発明に適用しても,別紙原告参考図9-2のように,第2のスリット82とCCDカメラとが離れて配置 (エ) 原告らは,乙30号証の図を簡略化すると別紙原告参考図9-1になるとした上で,乙18発明を乙30発明に適用しても,別紙原告参考図9-2のように,第2のスリット82とCCDカメラとが離れて配置されることになるから,本件発明7のように,スリット82をCCDカメラの所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えることが容易に想到できたとはいえない旨主張する。 しかしながら,乙30号証の図には,ピンホールからの光をCCDカメラに集光するために,レンズ及び凹面鏡が配置されている。Chevron-typebandpassfilterとビーム径を調整している2枚のレンズを省略して,乙30号証の図を模式図化すると,別紙被告参考図11-1のとおりになる。ここで,回折格子は共焦点作用とは無関係であるから,共焦点作用に関与する要素に着目して乙30号証の図をブロック図で簡略化すると別紙被告参考図11-2のようになる。これに,乙18発明を組み合わせると,別紙被告参考図11-3のようになる。 別紙原告参考図9-2では,回折格子からの光をCCDカメラに集光するために,更にレンズを設ける必要が生じるから,原告ら主張の光学系を,共焦点作用と関係のある要素(光を屈折させる要素)のブロック図で表すと,別紙被告参考図11-4のようになる。このように,原告らの主張のとおり光学系を設置すると,別紙被告参考図11-3と比べ て,レンズを余分に設ける必要がある。しかし,レンズを余分に設けることは,光の損失の原因になる。また,現実のレンズでは,観念上のレンズとは異なり,どれほど精密に加工しても必ず収差があるから,レンズを余分に設けることは分解能低下の原因になる。そのため,当業者であれば,余分なレンズを含むような光 た,現実のレンズでは,観念上のレンズとは異なり,どれほど精密に加工しても必ず収差があるから,レンズを余分に設けることは分解能低下の原因になる。そのため,当業者であれば,余分なレンズを含むような光学系を組むことは考えない。したがって,当業者が乙30発明に乙18発明を組み合わせるときには,原告らの主張するような別紙被告参考図11-4の光学系は想到せず,別紙被告参考図11-3の光学系を想到することになる。 そして,別紙被告参考図11-5のように,スリットをCCDカメラの読取領域の制限に置き換えることは当業者が容易に想到できたことである。 (原告らの主張)(ア) 第一に,当業者が乙18発明を乙30発明に適用する動機付けはなく,かかる適用は当業者が容易に想到し得たことではない。 乙30発明は,分光分析を行うことを前提とした発明であるのに対し,乙18発明は,分光分析を行うことを前提としない発明である。実際,乙18号証をみても,分光に関しては記載も示唆もない。このように,乙30発明と乙18発明とは,その前提が大きく異なり,当業者が乙18発明を乙30発明に適用する動機付けはない。 また,かかる前提の相違があるため,仮に,乙18発明を乙30発明に適用しようとしても,乙18発明の構成要素(例えば,乙18の第1図及び第2図に示されたスリット81,レンズ34及びスリット82)を乙30発明のいずれの箇所に配置すべきかが不明である。よって,この観点からも,当業者が乙18発明を乙30発明に適用する動機付けはない。 被告は,乙18号証には,本件発明7が解決する課題と同様な課題が 記載されていると指摘している。しかし,問題は,乙18発明を乙30発明に適用することが容易に想到し得たかである 被告は,乙18号証には,本件発明7が解決する課題と同様な課題が 記載されていると指摘している。しかし,問題は,乙18発明を乙30発明に適用することが容易に想到し得たかであるから,本件発明7と乙18発明との関係を指摘しても意味はない。仮に,乙18号証に,本件発明7が解決する課題と同様な課題が記載されていたとしても,乙18発明を乙30発明に適用する動機付けにはならない。 (イ) 第二に,仮に,乙18発明を乙30発明に適用する動機付けがあり,かかる適用が容易に想到し得たことであったとしても,最終的に得られる発明は,少なくとも本件発明7の構成要件D,G-1及びG-2を満たさない。 乙30発明では,別紙原告参考図9-1(乙30号証の図を簡略化して図示したもの)に示すように,物体からの散乱光は,ピンホールを通過し,回折格子で反射され,CCDカメラで検出される。一方,乙18発明は,ピンホールの代わりに,2個のスリット及びレンズ,つまり乙18号証の第1図(別紙乙18号証の第1図参照)及び第2図に示されたスリット81,レンズ34及びスリット82のセットを用いる発明である。 したがって,乙18発明を乙30発明に適用したとすれば,別紙原告参考図9-1のピンホールの部分に,スリット81,レンズ34及びスリット82のセットを当てはめた構成になると考えるのが自然である。 かかる適用により当業者が想到し得た構成が仮にあるとしても,それはせいぜい別紙原告参考図9-2に示すような構成である。 このように,スリット82とCCDカメラとは離れて配置されるのであるから,スリット82をCCDカメラの所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えることが容易に想到できたとは考えられ ,スリット82とCCDカメラとは離れて配置されるのであるから,スリット82をCCDカメラの所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えることが容易に想到できたとは考えられない。 (ウ) 第三に,仮に,当業者が乙18発明を乙30発明に適用して別紙原 告参考図9-3に示すような構成を容易に想到し得たとしても,最終的に得られる発明は,少なくとも本件発明7の構成要件D,G-1及びG-2を満たさない。 被告は,別紙原告参考図9-3において,スリット82をCCDカメラの所与の領域に置き換えることは当業者が容易に想到し得たことであると主張している。 しかしながら,CCDカメラ等の光検出器にかかる領域を設けることや,スリットを光検出器のかかる領域に置き換えることについては,乙30号証及び乙18号証のいずれにも記載も示唆もない。乙18発明の2つのスリットのうちの1つを光検出器の所与の領域に置き換えて,光検出器のかかる領域と残ったもう1つのスリットとを使用すること,すなわち,2つの異なる原理に基づく手段の組み合わせにより二次元の共焦点作用をもたらすことが公知であることを示す証拠は示されていないし,自明の事項ではない。 被告は,「光検出器で検出する光を,スリットすなわちハードウェアによって限定するか,『所与の領域(の読み取り)』すなわちソフトウェアによって限定するかは,構成上,本質的な違いではないし,第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすという作用効果も同じであるから,2つめのスリットを『所与の領域』に置き換えることには,何ら創作性を要せず,当業者が容易に想到できたものである。」と主張しているが,これは後知恵そのものである。また,乙18発明は,ピンホールの代 ,2つめのスリットを『所与の領域』に置き換えることには,何ら創作性を要せず,当業者が容易に想到できたものである。」と主張しているが,これは後知恵そのものである。また,乙18発明は,ピンホールの代わりに,2個のスリット及びレンズ,つまり乙18号証の第1図及び第2図に示されたスリット81,レンズ34及びスリット82のセットを用いる発明であり,スリット81,レンズ34及びスリット82を必須の構成とするものである。よって,スリット81を残して,スリット82を除去したり,他の手段に変更したりすることについては 阻害要因があるというべきである。また,スリット82を除去したり,他の手段に変更したりすることについては,乙18号証には記載も示唆もないのであるから,かかる除去や変更を行う動機付けはない。 (エ) 被告は,乙30号証の図をブロック図で簡略化すると,別紙被告参考図11-2のようになり,乙30発明に乙18発明を組み合わせると,別紙被告参考図11-4に示すような構成ではなく,別紙被告参考図11-3に示すような構成になると主張している。 しかしながら,乙18号証の〔問題点を解決するための手段〕には,「2個のスリットとレンズとを使用して,ピンホールの役割をする光学系を構成する」と記載されている(2頁左上欄11~13行)から,乙30発明に乙18発明を組み合わせたとすれば,乙18発明の2個のスリット及びレンズは,乙30発明のピンホールの位置に配置されると考えるのが自然である。 また,別紙被告参考図11-3には,「(乙30に元からある)レンズ(レンズ+凹面鏡)」と記載されたレンズがあるが,これは,乙30発明に元からあるレンズと,乙18発明のレンズとを1つにまとめたものである。しかし,乙30発明に元からあるレン 30に元からある)レンズ(レンズ+凹面鏡)」と記載されたレンズがあるが,これは,乙30発明に元からあるレンズと,乙18発明のレンズとを1つにまとめたものである。しかし,乙30発明に元からあるレンズと,乙18発明のレンズという別個のレンズを1つにまとめるなどという発想は,乙30号証及び乙18号証をみても記載も示唆もない。 したがって,乙30発明に乙18発明を組み合わせることにより当業者が想到し得た構成があるとしても,それはせいぜい別紙被告参考図11-4に示したような構成である。 イ乙31号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-2)(被告の主張)(ア) 本件発明7は,乙31号証(JOURNALOFRAMANSPECTROSCOPY,Vol.22 217-225(1991))に記載された発明(以下「乙31発明」とい う。)に,乙18発明を適用することによって,当業者が容易に発明できたものであり,進歩性を欠如する。 乙31号証は,その出版社のウェブサイト(乙32)に「April1991」(1991年4月),「Issue 4」と記載があることから明らかなとおり,本件特許権の優先日前の1991年4月に発行された文献である。また,乙33号証は,1991年5月22日に,科学技術振興機構が乙31号証を受け入れたことの証明書であり,乙31号証が優先日前に発行された文献であることは明らかである。 (イ) そして,乙31号証の219頁下には,乙30号証の図と同様な図が記載されている(別紙乙31号証の図参照)。本件発明7と乙31発明とを構成要件毎に対比すると,次のとおりである。 a 乙31号証の図には,サンプル(左下の平板)にレーザー光を照射して,散乱光を得る手段が記載さ 31号証の図参照)。本件発明7と乙31発明とを構成要件毎に対比すると,次のとおりである。 a 乙31号証の図には,サンプル(左下の平板)にレーザー光を照射して,散乱光を得る手段が記載されているから,構成要件Aと同一である。 b 乙31号証の図には,右端に「grating」(回折格子)があり,スペクトルを分析する手段が記載されているから,構成要件Bと同一である。 c 乙31号証の図には,右下に「CCD-camera」(CCDカメラ)が記載されているから,構成要件Cと同一である。 d 乙31号証の図には,右端のgrating(回折格子)からの光をM(concave)(凹面鏡)によって,CCDカメラに合焦させている。サンプルの所与の面からの散乱光が光検出器に焦点が合っているならば,必然的にサンプルの他の面からの散乱光は焦点が合っていないことになるから,「前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光 検出器に合焦させない手段」である点では,構成要件Dと同一である。 他方で,乙31号証の図では,「所与の領域」に合焦させることが明記されていない点で相違する。 e 乙31号証の図には,分光分析装置が記載されているから,構成要件Eと同一である。 f 本件発明7は,スリットを備えた一次元空間フィルタを通過させるのに対し,乙31発明ではピンホールを通過させる点で,構成要件Fと相違する。 g 乙31号証の図では,「所与の領域」が明記されていない点で,構成要件G-1及びG-2と相違する。 乙31号証の図では,サンプルの所与の面の焦点からの 件Fと相違する。 g 乙31号証の図では,「所与の領域」が明記されていない点で,構成要件G-1及びG-2と相違する。 乙31号証の図では,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光は,空間フィルタにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記空間フィルタを通過し,サンプルの所与の面の焦点の前または後で散乱される光は,前記空間フィルタにおいて焦点を結ばない点では,構成要件G-2①と同一である。他方で,本件発明7は空間フィルタがスリットであるのに対し,乙31発明は空間フィルタがピンホールである点で相違する。 乙31号証の図では,サンプルに光を照射するのと,サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられているから,構成要件G-2②と同一である。 乙31号証の図では,光検出器としてCCDカメラが記載されているから,構成要件G-2③と同一である。 h 乙31号証の図には,分光分析装置が記載されているから,構成要件Hと同一である。 (ウ) 本件発明7と乙31発明は,構成要件D,F,G-1,G-2及びG-2①で相違点があるが,いずれも共焦点作用をピンホールで実現す るか,スリットとそれと直交する光検出器の所与の領域(の読み取り)とで実現するかの相違によって生じた相違点である。そして,前記相違点は,乙18発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 乙30号証を主引例とする場合について述べたとおり,乙18号証には,本件発明7と全く同様に,スポット照明とピンホールの位置合わせの調整作業の困難性を解決すべき発明の課題として明示し,これをスポット照明と直交する2つのスリットの構成で置き換えた発明が記載されている。また,乙31号証には,更なる改 照明とピンホールの位置合わせの調整作業の困難性を解決すべき発明の課題として明示し,これをスポット照明と直交する2つのスリットの構成で置き換えた発明が記載されている。また,乙31号証には,更なる改良の可能性として,ピンホールを(1つの)スリットに置き換えることが記載されている(抄訳2頁26~30行)。 そして,本件発明7では,乙18発明の2つめのスリットを「光検出器の所与の領域」に置き換えたものにすぎない。光検出器で検出する光を,スリットすなわちハードウェアによって限定するか,「所与の領域(の読み取り)」すなわちソフトウェアによって限定するかは,構成上,本質的な違いではないし,第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすという作用効果も同じである。 しかも,乙31号証には,「宇宙線事象検出(cosmicrayevent)の可能性を最小化するため,分光方向に対して垂直方向には,最小限のピクセルだけを使うべきである。凹面鏡で光軸外に集光されることにより生じる非点収差を補正するために,CCDカメラの前に円柱レンズ(図1に図示されない)が用いられた。この方法により,すべてのラマン信号が10ピクセル(分光方向に対して垂直方向,90%の信号は5ピクセル)以内に含まれる。これらの(ビニングされた)ピクセルのみが読みだされるので,宇宙線事象はほとんど検出されない。」と記載されている(抄訳2頁6~11行)。乙31発明で光検出器として用いられている液体窒素冷却低速走査CCDカメラは,WrightInstruments, EEV P 8603 CCDchipであり(抄訳1頁26~27行),この1ピクセルのサイズは22μmであるから(乙34~36),乙31号証には,CCDの読取領域の幅を220μmに制限す EV P 8603 CCDchipであり(抄訳1頁26~27行),この1ピクセルのサイズは22μmであるから(乙34~36),乙31号証には,CCDの読取領域の幅を220μmに制限することが開示されているといえる。この220μmの幅は,「光検出器の読取領域の幅がスポット径ないしエアリーディスク径の10倍でも共焦点作用が生じる」という原告らの主張を仮に前提とすると,第二の次元の共焦点作用が生じ得る幅であるといえる。 したがって,2つめのスリットを「所与の領域」に置き換えることには,何ら創作性を要せず,当業者が容易に想到できたものである。 (エ) 上記ア(被告の主張)(エ)と同じ(ただし,「乙30号証」「乙30発明」はそれぞれ「乙31号証」「乙31発明」に読み替える。)。 (原告らの主張)(ア) 第一に,当業者が乙18発明を乙31発明に適用する動機付けはなく,かかる適用は当業者が容易に想到し得たことではない。 その内容は,「乙30発明」を「乙31発明」と読み替えるほかは,上記ア(原告らの主張)(ア)と同様である。 (イ) 第二に,仮に,乙18発明を乙31発明に適用する動機付けがあり,かかる適用が容易に想到し得たことであったとしても,最終的に得られる発明は,少なくとも本件発明7の構成要件D,G-1及びG-2を満たさない。 その内容は,「乙30号証」「乙30発明」をそれぞれ「乙31号証」「乙31発明」と読み替えるほかは,上記ア(原告らの主張)(イ)と同様である。 (ウ) 第三に,仮に,当業者が乙18発明を乙31発明に適用して別紙原告参考図9-3に示すような構成を容易に想到し得たとしても,最終的に得られる発明は,少なくとも本件発明7の構成要件D,G (ウ) 第三に,仮に,当業者が乙18発明を乙31発明に適用して別紙原告参考図9-3に示すような構成を容易に想到し得たとしても,最終的に得られる発明は,少なくとも本件発明7の構成要件D,G-1及びG -2を満たさない。 その内容は,「乙30発明」を「乙31発明」と読み替えるほかは,上記ア(原告らの主張)(ウ)と同様である。 (エ) 被告は,乙31号証抄訳2頁26~30行には,更なる改良の可能性として,ピンホールを(1つの)スリットに置き換えることが記載されており,上記記載が乙18発明を乙31発明に適用する動機付けになると主張している。 上記記載では,ライン照明を用いることを前提として,1つのスリットを用いている。これに対し,乙18発明では,ライン照明ではなく,スポット照明を用いており,また,ピンホールの代わりに,1つのスリットを用いるのではなく,2つのスリットを用いている。 このように,上記記載と乙18発明とでは,その構成が大きく異なるから,上記記載があるからといって,それが乙18発明を乙31発明に適用する動機付けになるわけではない。 (オ) 被告は,乙31号証抄訳2頁6~11行の記載に基づき,乙31号証には,CCDの読取領域の幅を220µmに制限することが開示されており,光検出器の読取領域の幅がスポット径ないしエアリーディスク径の10倍でも共焦点作用が生じるという原告らの主張を仮に前提とすると,第二の次元の共焦点作用が生じ得る幅であるといえると主張している。 しかしながら,仮に,乙31発明のCCDの読取領域の幅が220µmであったとしても,当該幅により共焦点作用が生じるか否かは,当該幅とエアリーディスク径との関係に依存するのであるから,当該幅が しかしながら,仮に,乙31発明のCCDの読取領域の幅が220µmであったとしても,当該幅により共焦点作用が生じるか否かは,当該幅とエアリーディスク径との関係に依存するのであるから,当該幅が220µmであることのみから,共焦点作用が生じるということはできない。 また,乙31号証には,CCDの読取領域の幅の制限によりノイズ (宇宙線事象のノイズ)を低減することについては記載があるが,CCDの読取領域の幅(の制限)により第二の次元の共焦点作用をもたらすことについては記載も示唆もない。 さらに,乙31発明では,ピンホールが第一及び第二の次元の共焦点作用をもたらしている。乙31号証225頁左欄7~9行(抄訳2頁28~29行)には,「ピンホールはこの場合スリットに置き換えられる。 しかし深さ方向分解能は低下する。」と記載されている。これは,ピンホールをスリットに置き換えると,第一の次元の共焦点作用のみとなってしまうからである。このことは,CCDの読取領域の幅によっては第二の次元の共焦点作用がもたらされていないことを意味する。 よって,乙31発明において,CCDの読取領域の幅(の制限)により第二の次元の共焦点作用がもたらされるとはいえないし,当業者は,CCDの読取領域の幅(の制限)により第二の次元の共焦点作用がもたらされるとは認識しない。 したがって,仮に,乙31発明のCCDの読取領域の幅が220µmであったとしても,乙18号証の2つめのスリットを光検出器の「所与の領域」(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えることの動機付けにはならない。 ウ乙18号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-3)(被告の主張)(ア) 乙18発明は,ス たらすような制限された読取領域)に置き換えることの動機付けにはならない。 ウ乙18号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-3)(被告の主張)(ア) 乙18発明は,スポット照明とピンホールで実現される共焦点顕微鏡において,スポット照明とピンホールの位置合わせの調整作業の困難性を解決すべき発明の課題として明示し,これをスポット照明と直交する2つのスリットの構成で置き換えた発明である。 (イ) 乙18発明と本件発明7を対比すると,以下のとおりとなる。 a 構成要件Aに対応する記載 乙18号証2頁右上欄13行目以下には,「レーザ1から出射したレーザ光2をレンズ31で絞りポイントソースとする。…試料4は,レンズ32によるポイントソースの像面に置く。試料4を透過したレーザ光をレンズ33で集光し,スリット81上へ絞り込む。」とあるから,サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段が記載されている。 b 構成要件Bに対応する記載乙18号証には,前記スペクトルを分析する手段は,記載されていない。 c 構成要件Cに対応する記載乙18号証の第1図及び第2図には,光検出器6が記載されている。 d 構成要件Dに対応する記載構成要件D及びGにおける「所与の領域」とは,「第二の次元の共焦点作用をもたらすように形成されている」領域であると解される。 そして,乙18発明では,後記のとおり,第2のスリット82により,第二の次元の共焦点作用が生じている。また,乙18号証2頁右上欄16行目以下には,「試料4は,レンズ32によるポイントソースの像面に置く。」と記載されている。さらに,2頁左下欄10 ット82により,第二の次元の共焦点作用が生じている。また,乙18号証2頁右上欄16行目以下には,「試料4は,レンズ32によるポイントソースの像面に置く。」と記載されている。さらに,2頁左下欄10行目以下には,「スリット82も光検出器6の出力が最大になる位置に合わせられるように,ステージ73により移動できる。」記載されている。また,乙18号証の第1図では,レーザ光が,試料4及びスリット82において合焦していることが記載されている。 よって,乙18号証には,前記スペクトルの少なくとも一つの成分をスリット82に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記スリット82の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段が記載されている。 ただし,乙18号証では,第2のスリット82によって第二の次元の共焦点作用が生じているため,光検出器上ではなく,スリット82上に所与の領域が存在する。 e 構成要件Eに対応する記載乙18号証1頁右下欄1行目には,共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡が記載されている。 f 構成要件Fに対応する記載乙18号証2頁左上欄2行目には,「共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡におけるピンホール5の役割は分解能を挙げることであり」と記載されている。また,2頁左下欄7行目以下には,「スリット81の調整は,スリット82をはずした状態で行い,光検出器6の出力が最大になるようにする。」と記載されている。さらに,第1図には,試料4とスリット81が合焦していることが記載されている。 よって,乙18号証には,前記光はスリット81を備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたら 第1図には,試料4とスリット81が合焦していることが記載されている。 よって,乙18号証には,前記光はスリット81を備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらすことが記載されている。 g 構成要件G-1及びG-2に対応する記載乙18号証には,第2のスリット82の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して通過され,前記光検出器で検出されることが記載されている。 乙18号証2頁右上欄4行目以下には,「スリット81の方向と交差するように,スリット82を光検出器6の前に置き,光検出器6の出力が最大になるように,スリット82を調整する」と記載されている。また,第1図には,試料4とスリット82が合焦していることが記載されている。さらに,第2図には,第1のスリット81と第2のスリット82が,直交するように配置されることが記載されている。 また,乙18号証2頁左下欄19行目以下には,発明の効果として,「本発明によれば,共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡におけるピンホールの位置合わせを必要とせず,その代わりに,2個のスリットの位置合せをすることになる。スリットの位置合せは一次元方向だけなので,ピンホールの位置合せと比べて非常に容易になる。」と記載されている。すなわち,乙18号証には,ピンホールによる共焦点作用と同様の作用が,2つのスリットによってもたらされることが記載されている。 よって,乙18号証には,前記所与の領域が,前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されていることが記載されている。 h 構成要件Hに対応する記載乙18号証には 証には,前記所与の領域が,前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されていることが記載されている。 h 構成要件Hに対応する記載乙18号証には,共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡が記載されている。 (ウ) 本件発明7と乙18発明との相違点は,次の4点である。 (相違点1)本件発明7は,スペクトルを分析する手段を有する分光分析装置である(構成要件B,E,H)のに対して,乙18発明は,その構成を有していない点。 (相違点2)本件発明7は,光検出器の所与の領域のみの読出しによって第二の次元の共焦点作用を生じさせている(構成要件D,G-1)のに対して,乙18発明は,第2のスリット82によって第二の次元の共焦点作用を生じさせている点。 (相違点3)本件発明7は,サンプルに光を照射するのと,サンプルからの散乱光 を集光するのとに同一のレンズが用いられているのに対し,乙18発明は異なるレンズが用いられている点。 (相違点4)本件発明7は,光検出器がCCDに限定されているのに対し,乙18発明では限定されていない点。 (エ)(相違点1について)レーザー顕微鏡において,光を波長成分ごとに分ける分光を行い,スペクトルを分析することは,乙7,11号証等に記載のとおり,周知な技術であり,本件明細書の「背景技術」の欄にも記載のとおりである。 したがって,当業者にとって,引用発明に,スペクトルを分析する分光手段を付加することは,その測定の目的に応じて,容易に想到し得るものであった。 (相違点2について)乙18号証の第1図,第2図で って,引用発明に,スペクトルを分析する分光手段を付加することは,その測定の目的に応じて,容易に想到し得るものであった。 (相違点2について)乙18号証の第1図,第2図では,光検出器上に,又は光検出器に非常に近接して,第2のスリットが描かれている。これは,スリットを,光検出器の読取領域の制限に置き換えることを示す,又は少なくとも示唆するものである。そして,本件発明7では,乙18発明の2つめのスリットを「光検出器の所与の領域(の読み取り)」に置き換えたものにすぎない。光検出器で検出する光を,スリットすなわちハードウェアによって限定するか,「所与の領域(の読み取り)」すなわちソフトウェアで限定するかは本質的な違いではないから(乙8~10によれば,従来のピンホールを光検出器の微小領域に置き換えることは周知技術であった。),スリットを「所与の領域」に置き換えることは,何ら創作性を要せず,当業者が容易に想到できたものである。 したがって,相違点2は当業者が容易に想到できたものである。 (相違点3及び4について) 相違点3,4は乙30号証に記載されており,乙18発明に乙30発明を適用することにより当業者が容易に想到できたものである。 よって,本件発明7は,乙18発明に,乙30発明を適用することによって,当業者が容易に発明できたものである。 (オ) 原告らは,相違点1について,乙7号証や乙11号証の分光手段によって分光されたスペクトルを,光検出器を用いて処理するためには,受光面が複数の領域に分かれており,各領域における受光量を別個に出力するタイプの光検出器を用いる必要があるにもかかわらず,乙18発明の光検出器は,受光面の全領域の受光量を一括して出力するタ めには,受光面が複数の領域に分かれており,各領域における受光量を別個に出力するタイプの光検出器を用いる必要があるにもかかわらず,乙18発明の光検出器は,受光面の全領域の受光量を一括して出力するタイプのものであると主張する。 しかし,乙18発明の光検出器は,必ずしも受光面の全領域の受光量を一括して出力するタイプに限定されているわけではない。また,共焦点作用を生じさせるために複数の画素が1列に並んだ検出器を,スリットを兼ねた検出器として用いることが既に知られていた。例えば,甲8号証には,CCDラインセンサーを用いた共焦点光学系が開示されており,その【0035】には「1次元配列型検出器10はそれ自体がスリット開口である」との記載がある。 したがって,乙18発明の光検出器が,複数の画素が1列に並んだ検出器である可能性が十分にある。 また,仮に乙18発明の光検出器が受光面の全領域の受光量を一括して出力するタイプであったとしても,一般的な分光手段であるポリクロメータは,「スリット」-「レンズ(凹面鏡)」-「回折格子」-「レンズ(凹面鏡)」-「分割された検出器」で構成されているのであるから,乙18発明に分光手段を付加するに当たって,光検出器を受光面が複数の領域に分かれており,各領域における受光量を別個に出力するタイプに変更することは,当業者が当然にすべきことである。 (原告らの主張)(ア) 被告は,相違点1について,スペクトルを分析する分光手段が周知であったことのみを理由として,かかる手段を乙18発明に付加することが容易に想到できたと主張する。 しかしながら,ある手段が周知であったとしても,そのことのみを理由として,その手段を他の発明に付加することが容易に想到できた 段を乙18発明に付加することが容易に想到できたと主張する。 しかしながら,ある手段が周知であったとしても,そのことのみを理由として,その手段を他の発明に付加することが容易に想到できたとはいえない。かかる付加が容易に想到できたといえるためには,それなりの動機付けが必要である。ところが,乙18号証,乙7号証,乙11号証等をみても,スペクトルを分析する分光手段を乙18発明に付加することを動機付ける記載は見当たらない。 したがって,スペクトルを分析する分光手段を乙18発明に付加することは,当業者が容易に想到できたとはいえない。 また,乙18発明は,2つのスリット(乙18の第1図や第2図に示されたスリット81及び82)を用いて共焦点作用をもたらすものである。これに対し,被告がスペクトルを分析する分光手段が周知であった根拠として指摘する乙7号証や乙11号証に記載された発明は,いずれも2つのスリットを用いて共焦点作用をもたらすものではない。 さらに,乙7号証や乙11号証の分光手段によって分光されたスペクトルを,光検出器を用いて処理するためには,受光面が複数の領域に分かれており,各領域における受光量を別個に出力するタイプの光検出器を用いる必要があるにもかかわらず,乙18発明の光検出器は,受光面の全領域の受光量を一括して出力するタイプのものである。乙18発明の光検出器では,乙7号証や乙11号証の分光手段を付加したとしても,分光されたスペクトルを,光検出器を用いて処理することができない。 したがって,これらの観点からも,乙18発明において,スペクトルを分析する分光手段を付加する動機付けはなく,かかる付加は当業者が 容易に想到できたとはいえない。 (イ) 被告は,相違点2 って,これらの観点からも,乙18発明において,スペクトルを分析する分光手段を付加する動機付けはなく,かかる付加は当業者が 容易に想到できたとはいえない。 (イ) 被告は,相違点2について,乙18発明において,2つ目のスリットを光検出器の所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えることは容易に想到できたと主張する。 しかしながら,光検出器にかかる領域を設けることや,スリットを光検出器のかかる領域に置き換えることについては,乙18号証には記載も示唆もない。乙18発明の2つのスリットのうちの1つを光検出器の所与の領域に置き換えて,光検出器のかかる領域と残ったもう1つのスリットとを使用すること,すなわち,2つの異なる原理に基づく手段の組み合わせにより二次元の共焦点作用をもたらすことが公知であることを示す証拠は示されていないし,自明の事項ではない。 したがって,乙18発明において,2つ目のスリットを光検出器の所与の領域に置き換えることは,当業者が容易に想到できたとはいえない。 また,乙8~10号証は,ピンホールを光検出器の微小領域に置き換える技術は開示しているかもしれないが,2つのスリットのうちの1つのみを光検出器の所与の領域に置き換えることを開示していないことはもちろん,スリットを光検出器のかかる領域に置き換えることすら開示していない。上記技術は,二次元の共焦点作用をもたらすピンホールの代替技術であって,一次元の共焦点作用をもたらすスリットの代替技術ではないから,乙18発明の2つ目のスリット(一次元の共焦点作用をもたらすスリット)に対して,上記技術を適用する動機付けはない。 したがって,乙8~10号証を考慮したとしても,乙18発明において,2つ目 8発明の2つ目のスリット(一次元の共焦点作用をもたらすスリット)に対して,上記技術を適用する動機付けはない。 したがって,乙8~10号証を考慮したとしても,乙18発明において,2つ目のスリットを光検出器の所与の領域に置き換えることは,当業者が容易に想到できたとはいえない。 さらに,乙18発明は,ピンホールの代わりに,2個のスリット及びレンズを用いる発明であり,スリット81,レンズ34及びスリット8 2を必須の構成とするものであるから,スリット81を残して,スリット82を除去したり,他の手段に変更したりすることについては阻害要因があるというべきである。スリット82を除去したり,他の手段に変更したりすることについては,乙18号証には記載も示唆もないのであるから,かかる除去や変更を行う動機付けはない。乙18発明において,2つ目のスリットを光検出器の所与の領域に置き換えるには,乙18発明の複雑な改変が必要となるのであって,かかる複雑な改変を行うことが当業者にとって容易に想到できたこととは考えられない。 したがって,この観点からも,乙18発明において,2つ目のスリットを光検出器の所与の領域に置き換えることは,当業者が容易に想到できたとはいえない。 仮に,乙18発明において,相違点1に係る構成,すなわちスペクトルを分析する分光手段を付加した場合,当該分光手段は,2つのスリット(スリット81及び82)と,光検出器6との間に配置されることになる。このように,スリット82と光検出器6とは離れて配置される。 この配置からみて,スリット82を光検出器6の所与の領域に置き換えることが当業者にとって容易に想到できたこととは考えられない。 したがって,この観点からも,乙18発明において,2 れる。 この配置からみて,スリット82を光検出器6の所与の領域に置き換えることが当業者にとって容易に想到できたこととは考えられない。 したがって,この観点からも,乙18発明において,2つ目のスリット(スリット82)を光検出器(光検出器6)の所与の領域に置き換えることは,当業者が容易に想到できたとはいえない。 (ウ) 被告は,相違点3及び4について,乙30号証に記載されており,乙18発明に乙30発明を適用することにより当業者が容易に想到できたと主張する。 しかしながら,相違点3及び4に係る構成が文献に記載されていたとしても,そのことのみを理由として,その構成を他の発明に適用することが容易に想到できたとはいえない。かかる適用が容易に想到できたと いえるためには,それなりの動機付けが必要である。ところが,乙18号証及び乙30号証をみても,かかる構成を乙18発明に適用することを動機付ける記載は見当たらない。 したがって,相違点3及び4に係る構成を乙18発明に適用することは,当業者が容易に想到できたこととはいえない。 (エ) 被告は,相違点1について,乙18発明の光検出器は,複数の画素が1列に並んだ検出器である可能性が十分にあると主張している。 しかしながら,乙18発明において,複数の画素が1列に並んだ検出器を使用する必要性は全くなく,かかる検出器が使用されている可能性があると考えるのは不自然である。また,乙18発明において,スリット82を調整する前の段階では,光が光検出器6の受光面のどの部分に到達するのかはわからないのであり,スリット82を調整する際には,光検出器6は,受光面の全領域の受光量を一括して出力しているものと考えられる。仮に,乙18発明において,複数の画 の受光面のどの部分に到達するのかはわからないのであり,スリット82を調整する際には,光検出器6は,受光面の全領域の受光量を一括して出力しているものと考えられる。仮に,乙18発明において,複数の画素が1列に並んだ検出器を使用しているのであれば,各画素での受光量をすべて足し合わせた上で出力を行うという余計な処理を行うことになる。 また,被告は,仮に乙18発明の光検出器が受光面の全領域の受光量を一括して出力するタイプであったとしても,乙18発明に分光手段を付加するに当たって,光検出器を受光面が複数の領域に分かれており,各領域における受光量を別個に出力するタイプに変更することは,当業者が当然にすべきことであると主張している。 乙18発明に分光手段を付加し,かつ,光検出器を受光面が複数の領域に分かれており,各領域における受光量を別個に出力するタイプに変更した場合に,スリット82の調整処理と分光処理とを両立させるためには,スリット82の調整処理の際には,各画素での受光量をすべて足し合わせた上で出力を行い,分光処理の際には,各画素での受光量を 別々に出力しなければならない。しかしながら,処理ごとに各画素の受光量の出力の仕方をこのように変えることは,乙18号証及び被告が分光出段が記載されていると指摘する文献(乙7,11)のいずれにも記載されておらず,当業者が容易に想到し得たことではない。 エ乙7号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-4)(被告の主張)(ア) 本件発明は,乙7号証に記載された発明(以下「乙7発明という。)と乙8~10号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 乙7号証(赤外・ラマン・振動[Ⅱ])は,本件特許権の優先日前 発明(以下「乙7発明という。)と乙8~10号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 乙7号証(赤外・ラマン・振動[Ⅱ])は,本件特許権の優先日前である昭和58年8月31日に頒布された刊行物である。 (イ) 乙7発明を本件発明7と対比すると,以下のとおりである。 a 構成要件Aに対応する記載乙7号証134頁左欄9~15行には「試料は光学顕微鏡の水平な試料台上に置き,白色光でスコープ上に投影される像(最高×1000)を観察し,分析個所を中央の定位置へX-Y可動ステージを用いて移動し,レーザー光に切り換えて照射する。同じ対物レンズを用いてレーザービームは1μm(×100)まで絞ることができる。ラマン散乱もこの対物レンズで180°の方向に集光され,」と記載されているから,「サンプルに光を照射して散乱光(のスペクトル)を得る手段」が記載されている。また,「レーザービームは1μm(×100)まで絞る」のごとくレーザービームの大きさが1つの数値で表現されていることから,この光照射はスポット照明であることを示唆している。 また,乙7号証(136頁)の図3(別紙乙7号証の図3参照)には,図の上方中央付近から,レーザ光(LASER)が入射し,ミラーに より左上方のサンプル(SAMPLE)に当該光が照射されることが記載されている。そして,当該サンプルの左側には,横軸をνとし,縦軸をIとするラマン散乱スペクトルを示唆するグラフが描かれているから,「サンプルにスポット光を照射して散乱光(のスペクトル)を得る手段」が記載されている。 b 構成要件Bに対応する記載乙7号証134頁左欄14~16行に「ラマン散乱もこの対物レン プルにスポット光を照射して散乱光(のスペクトル)を得る手段」が記載されている。 b 構成要件Bに対応する記載乙7号証134頁左欄14~16行に「ラマン散乱もこの対物レンズで180°の方向に集光され,ビームスプリッタを通して分光器に導かれる。」と記載されているから,「ラマン散乱光を分光する手段」が記載されている。 また,乙7号証の図3には,右上に,回折格子を示唆する,多数の刻みが描かれた格子が描かれている。回折格子は分光手段の代表例であるから,「ラマン散乱光を分光する手段」が記載されている。 c 構成要件Cに対応する記載乙7号証134頁右欄6~7行に「分光された光は普通は光電子増倍管あるいは光子計数方式を用いて検出する。」と記載され,同欄第16~17行に「マルチチャンネル検出器もMOLEでは用いられている。」と記載されているから,「光検出器」が記載されている。 また,乙7号証135頁右欄13~17行に,「図3にダイオード・マトリックス…を用いて,試料視野を少なくとも100×100の部分に分割した104個のユニットのスペクトルおよび位置の情報を比較的速い時間で得る方法を示した。」と記載され,図3の中央付近にダイオード・マトリックス(DIODEMATRIX)が描かれているから,「光検出器」が記載されている。 d 構成要件Dに対応する記載乙7号証の図3には,サンプル(SAMPLE:上段左)からのラマン散 乱光が,スリット(SLIT:上段右から2番目),回折格子(上段右)を経て,ダイオードマトリックス(DIODEMATRIX:2段目左)又は横一列又は縦一列のリニアダイオードアレイ(LINEARDIODEARRAYS IT:上段右から2番目),回折格子(上段右)を経て,ダイオードマトリックス(DIODEMATRIX:2段目左)又は横一列又は縦一列のリニアダイオードアレイ(LINEARDIODEARRAYS:中央及び右下)に通っているから,「分光されたラマン散乱光が光検出器に通っている」構成が記載されている。 また,乙7号証135頁右欄28~29行に「図4にこのアイデアを製品化したMicrodil 28の概念図を示した」と記載されていることから,136頁の図4は,同頁の図3に記載のアイデアを製品化した装置の概念図であることが明らかである。そして,図4から,サンプルの所与の面(左端中央付近の平行四辺形で描かれている面)と光検出器の検出面(右端中央付近の「IMAGEINTENSIFIER」の面)とが合焦していることが明らかである。 さらに,光検出器の検出面とサンプルの所与の面とが合焦しているということは,必然的に,光検出器の当該面とサンプルの他の面とは合焦していないことになる。 したがって,乙7号証の記載は,「前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段を有する」ことを示唆している。 e 構成要件Eに対応する記載乙7号証には,分光分析装置が記載されている。 f 構成要件Fに対応する記載乙7号証137頁右欄10~15行には,「図6にその方法を示した。これは光路中の試料の像が焦点を結ぶ適当な位置にアパーチャーを置くことで,図のa,bに示したように焦点からずれた場所からの光を除くことができる。モノチャンネルモードの場合スリットもこのアパーチャーと同じ役割をするが,この場合には分解能に異方性を生 じてしまう。」と記載さ に示したように焦点からずれた場所からの光を除くことができる。モノチャンネルモードの場合スリットもこのアパーチャーと同じ役割をするが,この場合には分解能に異方性を生 じてしまう。」と記載されている。かかる記載は,アパーチャー(すなわちピンホール)を用いた場合には,一次の次元の共焦点作用と共に二次の次元の共焦点作用がもたらされるが,スリットを用いた場合には異方性,すなわち第一の次元の共焦点作用しかもたらされないことを意味する。そして,図3には,サンプルからのラマン散乱光が,Y方向に開口部が延びるスリットを経て回折格子に通る構成の装置が記載されている。 したがって,乙7号証137頁右欄10~15行の記載を考慮すれば,図3には,「スリットを備えた1次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらす」ことが記載されている。 g 構成要件G-1及びG-2に対応する記載上記dのとおり,乙7号証には「サンプルの所与の面と光検出器の細長い領域とが合焦していること」,すなわち,(サンプルの)所与の面からのラマン散乱光は「光検出器の細長い領域」で受けており,当該散乱光は「光検出器の細長い領域」以外では受けていないことが示唆されている。しかし,光検出器の細長い領域が,本件発明7の「(光検出器の)所与の領域」すなわち「第二の次元の共焦点作用をもたらすように形成された領域」であることは明示されていない。 上記dのとおり,同証は「サンプルの所与の面と光検出器の横方向(=スリットを横切る方向)に細長い領域とが合焦していること」を示唆しているが,当該細長い領域によって第二の次元の共焦点作用がもたらすことまでは明示されていない。 h 構成要件Hに対応する記載乙7号 長い領域とが合焦していること」を示唆しているが,当該細長い領域によって第二の次元の共焦点作用がもたらすことまでは明示されていない。 h 構成要件Hに対応する記載乙7号証には,分光分析装置が記載されている。 (ウ) 本件発明7と乙7発明とは,上記(イ)a~f及びhで一致する。他方で,本件発明7と乙7発明とは,次の点で形式的に相違する。 構成要件G-1では,「前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され」と規定されているのに対し,乙7号証では「光検出器の細長い領域」が本件発明7における「所与の領域」(=第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている領域)であることが明示されていないこと。 構成要件G-2では,「第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている」と規定されているのに対し,乙7号証には第二の次元で共焦点作用をもたらすことが明示されていないこと。 (エ) 上記相違点は,優先日前の周知技術(例えば乙8~10)に照らせば,実質的な相違ではない又は当業者が容易に想到できたものにすぎない。 a 乙8号証(特開昭61-272714号公報)には,ピーク値型の光検出器で一番明るい時の光量のみを検出することによって,従来のピンホールを用いた場合のように,共焦点光学系を構成できることが記載されている。 b 乙9号証(特開平2-267512号公報)には,従来のピンホールを用いた共焦点走査型顕微鏡では,「形成された反射光像等及びピンホールは小さいので,両者の位置合わせ非常に困難なものとなる。 本発明の目的は,このような位置合わせの困難さを解消することにある。」と記載され,従来のピンホー 微鏡では,「形成された反射光像等及びピンホールは小さいので,両者の位置合わせ非常に困難なものとなる。 本発明の目的は,このような位置合わせの困難さを解消することにある。」と記載され,従来のピンホールに代えて,撮影素子(本件発明7の光検出器に相当する)の光強度の強い中心部の信号のみを使用することによって共焦点光学系を構成できることが記載されている。 c 乙10号証(特開平3-33711号公報)には,従来のピンホールに代えて,集光された光ビームのスポットサイズ以下の大きさの画素を面上に有した前記受光部により,対応する試料上の走査点の情報のみを得るように,前記光電変換アレイを駆動する駆動手段を有する 光検出器によって,共焦点光学系を構成できることが記載されている。 d 乙7号証の図3では,横一列(=スリットを横切る方向)のリニアダイオードアレイでサンプルからのラマン散乱光を受けることが記載されている。そして,上記周知技術に照らせば,図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域は,第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成された領域と実質的に同じと考えられる。 仮に同一ではないとしても,乙8~10号証に記載された「光検出器の単一ピクセルまたは微小領域のみを使用することによって,共焦点作用が実現される」ことに鑑みて,乙7号証のリニアダイオードアレイの領域を適宜設定することは,当業者が容易に行うことができたことである。 (オ) そして,構成要件G-2①~③については,以下のとおり,乙7号証に記載されているか,又は乙7号証及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 a 乙7号証134頁左欄第9~15行には「試料は光学顕微鏡の水平な試料台上に置き,白色光でスコープ されているか,又は乙7号証及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 a 乙7号証134頁左欄第9~15行には「試料は光学顕微鏡の水平な試料台上に置き,白色光でスコープ上に投影される像(最高×1000)を観察し,分析個所を中央の定位置へX-Y可動ステージを用いて移動し,レーザー光に切り換えて照射する。同じ対物レンズを用いてレーザービームは1μm(×100)まで絞ることができる。ラマン散乱もこの対物レンズで180°の方向に集光され,」と記載されている。ここで,「レーザービームは1μm(×100)まで絞る」のごとくレーザービームの大きさが1つの数値で表現されていることから,この光照射はスポット照明であることが判る。そして,図3には,図の上方中央付近から,レーザー光(LASER)が入射し,ミラーにより左上方のサンプル(SAMPLE)に当該光が照射され,サンプルから散乱された光がミラーを透過し,レンズで集光されて,スリッ ト(SLIT)を通過している。すなわち,乙7号証では,サンプルにスポット照明して得られた散乱光を集光してスリットを通過している。 また,乙7号証には,スリットにおいて焦点を結んでいることが明記されていないが,レンズで集光してスリットを通過させる光学系で,スリットに焦点を合わせるのは当業者が当然に用いる手法である。 したがって,構成要件G-2①は,乙7号証に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 b 乙7号証の図3では,サンプルに光を照射するのと,サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられているから,構成要件G-2②が記載されている。 c 乙7号証の図3では,検出器としてダイオード・マトリックスあるいはリニア・ダイオード・アレイが 光を集光するのとに同一のレンズが用いられているから,構成要件G-2②が記載されている。 c 乙7号証の図3では,検出器としてダイオード・マトリックスあるいはリニア・ダイオード・アレイが用いられているが,光検出器として電荷結合素子(CCD)を用いることは単なる設計事項にすぎない(例えば乙30)。 したがって,乙7号証のダイオード・マトリックスあるいはダイオード・アレイをCCDとすることは当業者が容易に行うことができたものである。 (原告らの主張)(ア) 乙7発明(135頁右欄10行~末行並びに図3及び4に記載されたDelhayeの発表した装置及びそれに関連する製品“Microdil 28”のもの)を主引用発明とした場合,少なくとも構成要件F,G-1及びG-2が乙7発明に備わっているということはできない。また,乙7発明以外に関する記載や他の先行技術を考慮しても,それらの構成要件を乙7発明に取り入れることが当業者にとって容易であるとはいえない。 (イ)a 被告は,乙7号証の図3のスリット(SLIT)が構成要件Fの「スリット」に該当すると主張している。 しかしながら,乙7号証の図3のスリットは,分光器の回折格子(乙7の図3の右上に描かれている物体)の直前に配置されていることから,分光器の従来の入口スリットにすぎないと考えられる。分光器に入口スリットが用いられることは周知であり,構成要件Fの「スリット」をモノクロメータの入口スリットと混同すべきでないことについては,本件明細書8欄7~13行で指摘しているとおりである。 また,乙7号証には,図3のスリットが共焦点作用をもたらすことについて記載も示唆もない。さらに,スリットが共焦点作用をもたらすためには, 書8欄7~13行で指摘しているとおりである。 また,乙7号証には,図3のスリットが共焦点作用をもたらすことについて記載も示唆もない。さらに,スリットが共焦点作用をもたらすためには,当該スリットの幅が重要であるところ,乙7号証には幅に関する記載も示唆もない。共焦点作用をもたらすためには,スリットの幅が適切な範囲にあることが必要である。 したがって,スリットが乙7号証の図3に記載されているからといって,構成要件Fが記載されているということはできない。 b 被告は,乙7号証137頁右欄10~15行の記載を考慮すれば,図3には,スリットを備えた1次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらすことが記載されていると主張する。 しかし,上記記載は,乙7号証の異なる発明(137頁左欄13行~右欄22行に記載の発明)に関するものである。 また,乙7号証137頁右欄10~15行には,「モノチャンネルモードの場合スリットもこのアパーチャーと同じ役割をするが,この場合には分解能に異方性を生じてしまう。」と記載されている。この記載の解釈としては,「モノチャンネルモードの場合にはスリットはアパーチャーと同じ役割をするが,マルチチャンネルモードの場合にはスリットはアパーチャーと同じ役割をしない」と解釈するのが自然である。ここで,モノチャンネルモードとは,一時に一つの波長のみを検出するモードをいい,マルチチャンネルモードとは,一時に複数 の波長を検出するモードをいう。 乙7発明(図3及び図4に記載された装置ないし製品)は,マルチチャンネル(モード)に関するものである。このことは,図3及び図4の題目に「マルチチャンネル検出器」と記載されていることから明らかで 乙7発明(図3及び図4に記載された装置ないし製品)は,マルチチャンネル(モード)に関するものである。このことは,図3及び図4の題目に「マルチチャンネル検出器」と記載されていることから明らかである。 したがって,乙7号証137頁右欄10~15行に記載されたスリット技術を,乙7発明に適用する(取り入れる)動機付けはない。 また,上記のように,乙7号証137頁右欄10~15行の記載からは,マルチチャンネルモードの場合にはスリットはアパーチャーと同じ役割をしないと考えられ,上記スリット技術を,マルチチャンネル(モード)に関する乙7発明に適用してもうまくいかないと考えられるから,かかる適用には阻害事由もある。 (ウ)a 被告は,構成要件G-1,G-2に関し,周知技術に照らせば,乙7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域は,第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成された領域と実質的に同じと考えられると主張する。 しかしながら,「乙7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域」と,乙8~10号証の領域とは別物であるから,仮に後者が第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成された領域であったとしても,前者が第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成された領域であるとはいえない。 また,被告は,乙8~10号証の領域が「乙7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域」に対応すると考えているものと思われる。しかしながら,乙8~10号証の領域は,二次元の縦横に並べられた素子のうちの1つであり,「乙7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域」のような横一列のものとは 大きく異なる。 以上のように,「乙7号 元の縦横に並べられた素子のうちの1つであり,「乙7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域」のような横一列のものとは 大きく異なる。 以上のように,「乙7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域」が,第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成された領域と実質的に同じであるということはできない。 b 被告は,乙8~10号証に記載された「光検出器の単一ピクセルまたは微小領域のみを使用することによって,共焦点作用が実現される」ことに鑑みて,乙7号証のリニアダイオードアレイの領域を適宜設定することは,当業者が容易に行うことができたことであると主張する。 ここで被告が指摘する乙8~10号証に記載された「光検出器の単一ピクセルまたは微小領域」とは,上記の乙8号証の「光検出器エレメント32」,乙9号証の「撮像素子の光強度の強い中心部」及び乙10号証の「2次元光電変換素子(アレイ)の画素」を指すものと考えられる。 乙8~10号証に記載された発明は,これらの領域を用いることにより,従来のピンホールに代えて,共焦点光学系を構成するものである。しかしながら,乙7発明では,ピンホールは用いられていないから,ピンホールの代替技術である乙8~10号証の技術を,ピンホールを用いない乙7発明に適用する(取り入れる)動機付けはないといえる。 また,乙8~10号証の領域は,二次元の縦横に並べられた素子のうちの1つであり,「乙第7号証の図3における横一列のリニアダイオードアレイの領域」のような横一列のものとは大きく異なる。 よって,乙8~10号証の技術を乙7発明に適用して,乙7発明が構成要件G-1及びG-2を備えるようにすることが容易であるとい オードアレイの領域」のような横一列のものとは大きく異なる。 よって,乙8~10号証の技術を乙7発明に適用して,乙7発明が構成要件G-1及びG-2を備えるようにすることが容易であるということはできない。 (エ) 被告は,構成要件G-2③について,電荷結合素子(CCD)が乙30号証に記載されていると指摘している。 しかしながら,電荷結合素子が文献(乙30)に記載されていたとしても,そのことのみを理由として,電荷結合素子を乙7発明に適用することが容易に想到できたとはいえない。かかる適用が容易に想到できたといえるためには,それなりの動機付けが必要である。ところが,乙7号証及び乙30号証をみても,電荷結合素子を乙7発明に適用することを動機付ける記載は見当たらない。 したがって,電荷結合素子を乙7発明に適用することは,当業者が容易に想到できたとはいえない。 オ乙16号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-5)(被告の主張)(ア) 乙16号証(高感度ラマン分光法の最近の動向と半導体超薄膜への応用)は,本件特許権の優先日前である平成2年に発行された論文である(乙17)。 (イ) 本件発明7と乙16号証に記載された発明(以下「乙16発明」という。)を対比すると,以下のとおりである。 a 構成要件Aに対応する記載乙16号証6頁31行目以下には,「図2の(a)と(b)は,Ar+レーザの515nm線による励起で,シリコン(100)ウェーハの520cm-1付近のピーク測定を行った時の,PS-PMTの二次元画像である。」と記載されている(図2につき別紙乙16号証の図2参照)。 したがって,乙16号証には,「サンプルに光を照射し cm-1付近のピーク測定を行った時の,PS-PMTの二次元画像である。」と記載されている(図2につき別紙乙16号証の図2参照)。 したがって,乙16号証には,「サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段」が記載されている。 b 構成要件Bに対応する記載 乙16号証5頁24行目以下には,「図1に我々の使用している分光光学系の概略を示す。トリプル・ポリクロメータ分光器としてはDilor社のモデルXYを使用した。」と記載されている。また,7頁には,図1(別紙乙16号証の図1参照)が掲載されている。 したがって,乙16号証には,「前記スペクトルを分析する手段」が記載されている。 c 構成要件Cに対応する記載乙16号証5頁31行目以下には,「検出器としては,ストレート側にIPDA検出器(Dilor社のゴールドモデル)を,サイド側に切り換え用の反射鏡を使ってPS-PMT(ITT社のモデルF4146M)を設置した。」と記載されている。 したがって,乙16号証には,「光検出器」が記載されている。 d 構成要件Dに対応する記載光検出器の画像である,図2(a)及び(b)において,散乱光は,微小なスポットになっている。 よって,乙16号証には,「前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段」が記載されている。 e 構成要件Eに対応する記載乙16号証の図1のように,乙16発明は「分光分析装置」である。 f 構成 た光を前記光検出器に合焦させない手段」が記載されている。 e 構成要件Eに対応する記載乙16号証の図1のように,乙16発明は「分光分析装置」である。 f 構成要件Fに対応する記載乙16号証6頁36行目には,「入射スリットの幅100μm」と記載されている。また,6頁35行目には,「Y方向への信号の広がりは3-4ピクセル」とあり,6ページの9行目には「検出器のピクセル・サイズ25μm」と記載されている。 よって,散乱光の広がり(スポットサイズ)は,75μmから100μmである。 g-1 構成要件G-1に対応する記載乙16号証6頁37行目以下には,「図2の(c)は,(b)のデータを用いてY方向に5ピクセルずつ加算して得たラマン・スペクトルである。」と記載されている。また,図2の下の説明文にも,「(c)は5ピクセルを加算して得られたスペクトル。」と記載されている。 よって,乙16号証には,前記光検出器の前記5ピクセルで受ける光が,前記5ピクセル外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出されることが記載されている。 g-2 構成要件G-2に対応する記載乙16号証6頁35行目には,「Y方向への信号の広がりは3-4ピクセル」とあり,また,6頁9行目には「検出器のピクセル・サイズ25μm」と記載されている。 よって,散乱光の広がり(スポットサイズ)は,75μmから100μmである。 また,図2(c)の5ピクセルの幅は,125μmである。 g-2① 構成要件G-2①に対応する記載乙16号証6頁36行目には,「入射スリットの幅100μm」と また,図2(c)の5ピクセルの幅は,125μmである。 g-2① 構成要件G-2①に対応する記載乙16号証6頁36行目には,「入射スリットの幅100μm」と記載されている。また,6頁35行目には,「Y方向への信号の広がりは3-4ピクセル」とあり,6頁9行目には「検出器のピクセル・サイズ25μm」と記載されている。 よって,散乱光の広がり(スポットサイズ)は,75μmから100μmである。 g-2③ 構成要件G-2③に対応する記載乙16号証5頁31行目以下には,「検出器としては,ストレート 側にIPDA検出器(Dilor社のゴールドモデル)を,サイド側に切り換え用の反射鏡を使ってPS-PMT(ITT社のモデルF4146M)を設置した。」と記載されている。 ここで,「PS-PMT」は,PositionSensitivePhoto-MultiplierTubesの略で,すなわち位置検出型光電子増倍管である。 h 構成要件Hに対応する記載乙16号証の図1のように,乙16発明は「分光分析装置」である。 (ウ) 本件発明7と乙16発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点)「サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,前記スペクトルを分析する手段と,光検出器と,前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とを具備する分光分析装置。」 通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とを具備する分光分析装置。」(相違点1)本件発明7では「前記光はスリット30を備えた一次元空間フィルタ31を通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし」(構成要件F),「前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリット30を通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず」(構成要件G-2①)であるのに対して,乙16発明ではそのような構成が明記されていない点。 (相違点2)本件発明7では「前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されて」(構成要件G-2)いるのに対し,乙16発明ではそのような構成か否か不明である点。 (相違点3)本件発明7では「サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられ」(構成要件G-2②)ているのに対し,乙16発明では「単色レーザから集光レンズとビーム入射用小ミラー(または小プリズム)を経て試料に至る照射光学系」である点。 (相違点4)「光検出器」について,本件発明7では「電荷結合素子である」(構成要件G-2③)のに対し,乙16発明では「マイクロ・チャンネルプレートおよびその後段の二次元の位置検出機構を有し,高エネルギー粒子線などによるパルス・ノイズの影響をうけないフォトン・カウンティング用の低雑音光電子増倍管」としての「位置検出 イクロ・チャンネルプレートおよびその後段の二次元の位置検出機構を有し,高エネルギー粒子線などによるパルス・ノイズの影響をうけないフォトン・カウンティング用の低雑音光電子増倍管」としての「位置検出型光電子増倍管」である点。 (エ) 本件発明7は,乙16発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。 a 相違点1について(a) 乙16発明は,文献に記載された数値から,エアリーディスク径の最小値を計算することができる。乙16号証7頁8行以下には,サンプルからスリットまでの倍率Mは100倍であること,6頁31行には,光源の波長は515nmであることが記載されている。 よって,入射スリットの位置における,エアリーディスク径の最小値dminは,以下のとおりである。 dmin=(1.22λ/NA)×M=(1.22×0.515/1)×100=63[μm]乙16発明の入射スリット位置におけるエアリーディスク径は,63μm以上である。ここで,入射スリットの幅は100μmなので(6頁36行),入射スリット幅は,エアリーディスク径の1. 6倍以下である。 したがって,「ピンホール径,スリット幅又は検出器の読取幅がエアリーディスク径の10倍以下であれば共焦点作用が生じ得る」という原告の主張を前提とすれば,乙16発明においても,入射スリット位置において第一の次元の共焦点作用(構成要件F)が生じている。 (b) 乙38号証(「赤外・ラマン・顕微分光法講習会」のテキスト)は,遅くとも,本件特許権の優先日前である平成3年1月22日に刊行された刊行物である。 乙38号証76頁6~9行には,「共焦点顕微鏡は検出器に微 マン・顕微分光法講習会」のテキスト)は,遅くとも,本件特許権の優先日前である平成3年1月22日に刊行された刊行物である。 乙38号証76頁6~9行には,「共焦点顕微鏡は検出器に微小なピンホールかスリットを必要とし,回折格子分光器もまた微細なスリットを入射部に必要とするのであるから,この2つの光学系はそのまま結合してメリットを相乗してくれる」と記載されている。 乙38号証には,共焦点作用を生じさせるためのスリットと回折格子分光器の入射部に設ける入射スリットとを「結合」し,1つのスリットによって兼用させること,すなわち入射スリットによって第一の次元の共焦点作用を生じさせることを開示ないし示唆している。 しかも,乙38号証のテキストが使用された「赤外・ラマン・顕微分光法講習会」は,ラマン顕微鏡についての初心者をも対象としたものであり,そのテキストに記載された事項は,当時において,既に当該技術分野では基礎的な事項であり,周知技術であった。 したがって,当業者には,「入射スリット」と「一次元空間フィルタ」を兼用させる合理的な動機があり,相違点1の前段の「前記光はスリット30を備えた一次元空間フィルタ31を通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし」(構成要件F)という構成を容易に想到し得たものである。 (c) また,入射スリットであれ,第一の次元の共焦点作用をもたらすためのスリットであれ,分光分析装置に用いられるものであれば,観測したい面と当該スリットとが焦点が合うように位置合わせをするのは当然である。 したがって,当業者は,相違点1の後段の「前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリ せをするのは当然である。 したがって,当業者は,相違点1の後段の「前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリット30を通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばず」(構成要件G-2①)という構成を容易に想到し得たものである。 b 相違点2について(a) 乙16発明において,入射スリットの位置から検出器の位置までの倍率は1.2倍であるから,検出器の位置でのエアリーディスク径の最小値dminは,以下のとおりである。 dmin=63[μm]×1.2=76[μm]乙16発明の検出器の位置におけるエアリーディスク径は,76μm以上である。ここで,検出器の読取領域の幅は,5ピクセルすなわち125μmなので(6頁9行目,7頁1行目),エアリーディスク径の1.7倍以下である。 したがって,「ピンホール径,スリット幅又は検出器の読取幅がエアリーディスク径の10倍以下であれば共焦点作用が生じ得る」 という原告の主張を前提とすれば,乙16発明においても,検出器の位置において第二の次元の共焦点作用(構成要件G-2)が生じている。 (b) 相違点1について述べたように,乙16発明に乙38号証を組み合わせることにより,入射スリットの幅を十分に狭くして第一の次元の共焦点作用を生じさせることは,当業者が容易に想到し得たことである。さらに,乙18号証において開示されているように,第1スリットと直交する第2スリットを設けることで,第1スリットによる第一の次元の共焦点作用と直交する方向からの,第二の次元の共焦点作用を とである。さらに,乙18号証において開示されているように,第1スリットと直交する第2スリットを設けることで,第1スリットによる第一の次元の共焦点作用と直交する方向からの,第二の次元の共焦点作用を得ることも,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,乙10号証5頁左下欄6行~右下欄4行記載のとおり,スリットに代えて,光検出器の読取領域の制限によって,共焦点作用を得るということは,周知技術であった。また,乙8~10号証には,ピンホールに代えて,光検出器の読取領域の制限によって,共焦点作用が得られるという周知技術が記載されているから,直交する2つのスリットの内,第2スリットによる共焦点作用を,光検出器の読取領域の制限に置き換えることは,当業者にとって容易であった。 したがって,乙16発明に,乙38号証,乙18号証,乙8~10号証を組み合わせて,相違点2を想到することは容易であった。 c 相違点3についてラマン分光装置において,「サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられている照射系」を採用することは,本件特許権の優先日前に周知の事項であるといえる。 そして,乙16発明において,その「単色レーザから集光レンズとビーム入射用小ミラー(または小プリズム)を経て試料に至る照射光学系」を上記周知の「サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられている照射系」に置換することには,何ら阻害要因がなく,構成を簡単化するという十分なる動機付けが存在するといえる。 そうすると,乙16発明において,相違点3の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえ には,何ら阻害要因がなく,構成を簡単化するという十分なる動機付けが存在するといえる。 そうすると,乙16発明において,相違点3の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。 d 相違点4について乙16号証4頁5~8行には,「今回我々は超微弱信号の検出を目的としているので,以上の理由によりPS-PMTを採用することにした。但し,量子効率の絶対値や赤外域の感度などを重んじるならばCCD検出器の方が優れているなど,目的によって選択はことなってくることを注意しておく。」と記載されている。 このことから,乙16発明において,その「位置検出光電子倍増管」の替わりに「CCD検出器」を採用することには,十分な動機付けが存在しているといえ,また置換に何ら困難性もない。 そうすると,乙16発明において,相違点4の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。 (オ) 原告らの構成要件Dに係る主張について原告らは,構成要件Dの「サンプルの他の面から散乱された光」及び「サンプルの他の面から散乱された光を光検出器に合焦させない」ことが,乙16号証に開示されていない旨主張する。 しかし,乙16発明は,ラマン顕微鏡に関するものであるから,「サンプルの所与の面からの散乱された光」のみならず,「サンプルの他の面から散乱された光」も生じ得ることは技術常識であるので,当業者に とっては記載されているに等しい事項である。さらに,光学系においては,原則として,ある1つの面に対しては,1つの合焦面が対応することは技術常識であるから,「サンプルの所与の面から散乱された光(が)前記光検出器の所与の領域に合焦」している場合には,「サンプルの他 は,原則として,ある1つの面に対しては,1つの合焦面が対応することは技術常識であるから,「サンプルの所与の面から散乱された光(が)前記光検出器の所与の領域に合焦」している場合には,「サンプルの他の面から散乱された光(が)前記光検出器に合焦」しないことは,当然のことにすぎない。 したがって,構成要件Dは,乙16号証に,少なくとも記載されているに等しい事項である。 (カ) 原告らの相違点1(構成要件F)に係る主張についてa 原告らは,被告のエアリーディスク径の計算について,入射スリットの位置におけるエアリーディスク径(別紙原告参考図10-1及び2のAD2)の大きさを求めるものではない旨主張する。 被告が算出したのは,光源の波長(原告のいうλ1)を用いて計算した,入射スリットの位置におけるエアリーディスク径(原告のいうAD2)の最小値dminである。サンプルから発生するラマン散乱光の波長λ2がλ1と異なることを考慮しても,乙16発明のエアリーディスクの直径(AD2)の最小値は63μmであるため,入射スリット(100μm)の位置において,第一の次元の共焦点作用が生じている。 被告の計算においては,波長λとして,光源の波長515nm(原告のいうλ1)を用いた。ラマン散乱においては,入射光よりも波長が長いラマン散乱光(ストークス散乱)と,入射光よりも波長が短いラマン散乱光(アンチストークス散乱)とが発生する(乙6・5頁)。 そして,通常は,ストークス散乱光の方がアンチストークス散乱光よりも強度が強いため,ラマン分光分析の実験においては,強度の強いストークス散乱光のみを用いる。実際に,乙16発明において検出さ れているラマン散乱光もストークス散乱光である。 も強度が強いため,ラマン分光分析の実験においては,強度の強いストークス散乱光のみを用いる。実際に,乙16発明において検出さ れているラマン散乱光もストークス散乱光である。 乙16発明のように,ラマン散乱光がストークス散乱光である場合には,散乱光の波長λ2は,光源の波長λ1よりも長い(λ2>λ1)。 したがって,被告の計算式において,λ2を用いてAD2を計算したとしても,その最小値dminが63μmである,という結論は変わらない。 b レンズの開口数NAには,正確には,レンズの物体側(サンプル側)の開口数NA物体側と,レンズの像側(光検出器側)の開口数NA像側がある。NA物体側,NA像側及びレンズの倍率Mは,以下のような関係にある(乙28。甲20・97頁4-28式と4-29式からも容易に導くことができる。)NA物体側=NA像側×Mしたがって,エアリーディスク径AD2は,NA物体側又はNA像側を用いて,以下のように記載される。 AD2=1.22×λ/NA像側=(1.22×λ/NA物体側)×Mすなわち,レンズの開口数として,レンズの物体側の開口数NA物体側を用いて表記するか,レンズの像側の開口数NA像側を用いて表記するかによって,計算式中の「×M」の有無が定まる。甲20号証96頁13行に,「像側の開口数を(NA)imgとすると,」と記載されているのも,この趣旨である。 また,被告は,エアリーディスク径の最小値dminの計算において,上記のNA物体側を用いた計算式を使い,かつ,NA物体側として,空気中での最大値1を用いて計算した。その理由は,乙16発明のレンズの倍 た,被告は,エアリーディスク径の最小値dminの計算において,上記のNA物体側を用いた計算式を使い,かつ,NA物体側として,空気中での最大値1を用いて計算した。その理由は,乙16発明のレンズの倍率Mは100倍であるから,NA物体側=NA像側×100であり, NA物体側の方がNA像側よりも大きい。そして,NA物体側及びNA像側は,空気中ではいずれも1を超えないが,NA像側は,大きい方のNA物体側が1を超えないという条件に制約されるため,NA物体側が1の場合の次式がスリットにおけるエアリーディスク径(AD2)の最小値である。 dmin=(1.22×λ/NA物体側(最大値))×M=(1.22×λ/1)×M被告は,上式を用いて,エアリーディスク径(AD2)の最小値dminが63μmであるという計算を行ったのである。 c 原告らは,乙38号証のスリットの位置における,試料の所与の面の焦点からの光が一点に集光されているのに対し,乙16号証のスリットの位置における,試料の所与の面の焦点からの光は線状になっているため,これらを組み合わせることができない旨主張する。 まず,乙16発明においては,スリットで,光は線状にはなっていない。この点,シリンドリカルレンズの焦点距離が短い場合には,光の形状は,若干楕円状になりうる。しかしながら,乙16発明においてシリンドリカルレンズは,非点収差を補正するためのものであるため,対物レンズからの光をスリットに集光している凸レンズと比べると,焦点距離が長く光を屈折させる力が弱いレンズが用いられたはずである。このような場合,スリットにおける光の形状は,シリンドリカルレンズの有無によってほとんど変形せず,線状ないし楕円状とい と比べると,焦点距離が長く光を屈折させる力が弱いレンズが用いられたはずである。このような場合,スリットにおける光の形状は,シリンドリカルレンズの有無によってほとんど変形せず,線状ないし楕円状というよりは点状とみなせるものであったと考えられる。 さらに,乙16発明において,シリンドリカルレンズは,焦点であるスリットの真近に置かれている。そして,このように焦点に近い位置に置かれたレンズは,焦点の形状をほとんど変化させない。この点からも,スリットにおける光の形状は点状であったといえる。 仮に,乙16号証において焦点距離の短いシリンドリカルレンズが使われており,スリットにおける光のスポットが,若干楕円状になっていたとしても,スリットの幅方向(短辺方向)には焦点を結んでいるので,スリットによる第一の次元の共焦点作用は生じることになる。 スリットで生じる第一の次元の共焦点作用(構成要件F)は,スリットの幅方向(短辺方向)に生じるものであって,この方向には,シリンドリカルレンズによる光の広がりはない。 したがって,仮に,乙16号証において焦点距離の短いシリンドリカルレンズが使われており,スリットにおける光のスポットが,若干楕円状になっていたとしても,第一の次元の共焦点作用(構成要件F)は奏することになるので,乙16発明と乙38号証に記載の発明を組み合わせて構成要件Fを想到することは,当業者にとって容易に行うことができたものである。 (キ) 原告らの相違点1(構成要件G-2①)に係る主張について原告らは,乙16発明においては,シリンドリカルレンズが用いられているため,散乱光は,入射スリットの位置において線状になっているから,当業者は構成要件G-2①を想到できなかった旨主 て原告らは,乙16発明においては,シリンドリカルレンズが用いられているため,散乱光は,入射スリットの位置において線状になっているから,当業者は構成要件G-2①を想到できなかった旨主張する。 しかしながら,そもそも,上記(カ)で述べたとおり,乙16発明においては,スリットで,光は線状にはなっていない。 確かに,乙16号証では,非点収差補正をするために,シリンドリカルレンズを,スリットの手前に配置している。しかしながら,非点収差補正をするという目的のためには,シリンドリカルレンズは,必ずしもスリットの手前に配置する必要はなく,例えば,スリットの後ろの光検出器の手前に配置しても同様の効果が得られる。 このことは,例えば,乙31号証に,「凹面鏡で光軸外に集光されることにより生じる非点収差を補正するために,CCDカメラの前に円柱 レンズ(図1に図示されない)が用いられた。」(「円柱レンズ」はcylindricallensの訳で,シリンドリカルレンズのこと)と記載されているとおりである(乙31訳文2頁7~9行,英文220頁左欄の31~34行)。 以上のとおり,乙16発明から,構成要件G-2①を想到することは,当業者にとって容易に行うことができたものである。 (ク) 原告らの相違点2に係る主張についてa 原告らは,乙10号証に記載された発明(以下「乙10発明」という。)の2次元マトリックススイッチは,いずれも主走査方向において異なる位置に到達した光を区別することができないのであるから,当業者が乙10発明を乙16発明に適用する動機付けはないと主張する。 しかしながら,2次元アレイの光検出器は,当時の当業者にとって周知であったのであるか ことができないのであるから,当業者が乙10発明を乙16発明に適用する動機付けはないと主張する。 しかしながら,2次元アレイの光検出器は,当時の当業者にとって周知であったのであるから,これを用いて「主走査方向において異なる位置に到達した光を区別すること」は容易であった。 したがって,原告らの主張する事由は,何ら阻害要因にならない。 b 原告らは,乙16発明と乙18発明とを組み合わせることには,阻害要因が存在するか,あるいは動機付けがない旨主張する。 しかしながら,上述した以外に,次のように,動機付けがあるといえる。乙16発明には,スリットの前にシリンドリカルレンズが配置されている。この点,当時の顕微ラマン分光装置では,分光器の非点収差を補正しないままの装置が多く,このような装置では,光検出器における第二の次元の方向については焦点が合っていないため,乙18号証と組み合わせようとしても,第二の次元の共焦点作用を生じさせることが困難であった。 これに対し,乙16発明においては,シリンドリカルレンズによっ て非点収差が補正されているために,光検出器における第二の次元の方向についても焦点が合っていることから,乙18発明と組み合わせて,より効果的に第二の次元の共焦点作用を生じさせることが容易な構成となっている。 (ケ) 原告らの相違点3に係る主張について原告らは,乙16発明について,「サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズを用い」る構成(構成要件G-2②)とするならば,ミラーによって散乱光がブロックされてしまうため,微弱なラマン散乱光を検出する,ラマン顕微鏡おいては,組合せの動機付けがないか,あるいは 同一のレンズを用い」る構成(構成要件G-2②)とするならば,ミラーによって散乱光がブロックされてしまうため,微弱なラマン散乱光を検出する,ラマン顕微鏡おいては,組合せの動機付けがないか,あるいは阻害要因が存在する旨主張する。 しかしながら,照明と散乱光の集光に同じレンズを用いることで,かえって顕微鏡をより高感度にできるため,このような変更には十分な動機付けがある。すなわち,同じレンズを用いる場合には,レンズと試料の間にミラーが必要ないため,レンズと試料との間の距離を近づけて,NA(開口数)を大きくすることができるので,より効率良く試料からの光を集めることができる。 また,同じレンズを用いる場合には,ミラーへの入射光は平行光にすることができる。ダイクロイックミラー(試料に照射されるレーザーの波長と同一波長であるレイリー散乱光を反射し,ラマン散乱光を透過する)を用いる場合を考えると,平行光に対しては,収束(発散)光に対するよりも,散乱光の透過率をより高くすることができるため,高感度化が可能である。 さらに,微弱なラマン散乱光を高感度に検出しようとした場合,信号となるラマン散乱光を効率良く検出することに加えて,ノイズとなる試料からのレイリー散乱光を遮断することが重要である。ダイクロイック ミラーを用いる場合,レイリー散乱光はダイクロイックミラーによって反射されるため検出器に到達せず,より高感度なラマン測定が可能である。 以上のとおり,構成要件G-2②の構成であっても,実用的なラマン顕微鏡の構成として何ら問題はなく,このことは,当業者にとって明らかであった。実際,乙30発明や乙31発明には,構成要件G-2②の構成が採用されている。 (原告らの主張)(ア) 構 顕微鏡の構成として何ら問題はなく,このことは,当業者にとって明らかであった。実際,乙30発明や乙31発明には,構成要件G-2②の構成が採用されている。 (原告らの主張)(ア) 構成要件Dについて,被告は,構成要件Dが本件発明7と乙16発明との一致点であると主張している。 しかしながら,乙16発明は共焦点作用に関するものではなく,乙16号証にはサンプルの他の面から散乱された光についての記載はない。 図1をみても,試料(サンプル)の表面からの散乱光がレンズを通ってトリプル・ポリクロメータに到達することが記載されているのみである。 乙16号証には,共焦点作用によって区別すべき他の面からの光(奥行方向の別の面からの光)が存在しないのである。 したがって,乙16号証は,「サンプルの他の面から散乱された光」を開示していないし,「サンプルの他の面から散乱された光を光検出器に合焦させない」ことも開示していない。 (イ) 相違点1(構成要件F)についてa 乙16発明における光の進行は,別紙原告参考図10-1及び2に示すような進行となる。 被告は,乙16発明の入射スリットの位置におけるエアリーディスク径の最小値dminを,以下の計算式により算出し,この値が入射スリットの幅に近いから,入射スリットの位置において第一の次元の共 焦点作用が生じていると主張している。 dmin=(1.22λ/NA)×M=(1.22×0.515/1)×100=63[µm]ここで,λ=0.515は光源の波長であるから,別紙原告参考図10-1及び2のAD1の計算式のλ1に相当する。よって,上記dminの計算式の(1.22λ/NA)は,別紙原告参考 m]ここで,λ=0.515は光源の波長であるから,別紙原告参考図10-1及び2のAD1の計算式のλ1に相当する。よって,上記dminの計算式の(1.22λ/NA)は,別紙原告参考図10-1及び2におけるAD1に相当すると考えられる。 以上から明らかなように,本来は入射スリットの位置におけるエアリーディスク径すなわち別紙原告参考図10-1及び2のAD2の大きさを求めなければならないのに,被告が計算しているのはAD1であってAD2ではない。 また,被告の計算式では,倍率Mも用いられている。倍率Mは,サンプルからスリットまでの倍率であるから,別紙原告参考図10-1及び2におけるレンズ2の倍率に相当すると考えられる。 したがって,上記dminの計算式の(1.22λ/NA)×Mは,別紙原告参考図10-1及び2における明るい領域2の大きさを意味するものであると考えられる。 したがって,被告の計算式にいうdmin=63μmという数値は,エアリーディスクAD2ではなく,明るい領域2の大きさの最小値を表していることになる。 しかしながら,入射スリットが共焦点作用をもたらすか否かは,入射スリットの幅とAD2との大小関係に依存するのであって,入射スリットの幅と明るい領域2の大きさとの大小関係に依存するのではない。入射スリットの幅がAD2よりもはるかに大きい場合には,当該入射スリットが共焦点作用をもたらすとはいえない。 b 乙38号証をみると,共焦点走査顕微鏡について説明する図1(b) や図3では,点光源から発せられた光が試料の一点に集光され,さらに当該試料の一点から発せられた光が検出器の一点に集光されているから,試料の所与の面の焦点からの光は ついて説明する図1(b) や図3では,点光源から発せられた光が試料の一点に集光され,さらに当該試料の一点から発せられた光が検出器の一点に集光されているから,試料の所与の面の焦点からの光は,スリットが配置される位置(検出器の位置)において,一点に集光されている。 これに対し,乙16発明では,試料の所与の面の焦点からの光(散乱光)は,分光器(トリプル・ポリクロメータ)の入射スリットの位置において,点状にはならず,線状になっている。これは,乙16発明が分光器によって生じる非点収差を補正するために,入射スリットの手前にシリンドリカル・レンズを意図的に導入しているからである。 したがって,乙38号証のスリットの位置における,試料の所与の面の焦点からの光(一点に集光されているもの)を,乙16発明のスリットの位置における,試料の所与の面の焦点からの光(線状になっているもの)と組み合わせることはできない。よって,乙16発明と乙38号証の記載とを組み合わせて,乙16発明において,分光器の入射スリットによって共焦点作用を生じさせることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 c なお,被告は,乙38号証の記載事項について,当時において,既に当該技術分野では基礎的な事項であり,周知技術であったと主張している。 しかしながら,ある1つの講習会のテキストにある事項が記載されているからといって,その事項が周知技術であったとはいえない。また,被告は,当該講習会に「基礎」,「平易」等の用語が使用されていることを指摘しているが,仮に当該講習会がそのようなものであったとしても,そのテキストに記載されている事項のすべてが周知技術であったとはいえない。さらに,上記記載事項の前後を見ると, が使用されていることを指摘しているが,仮に当該講習会がそのようなものであったとしても,そのテキストに記載されている事項のすべてが周知技術であったとはいえない。さらに,上記記載事項の前後を見ると,「現在でもなお,レーザー走査顕微鏡に分光器を付けた”製品”を,筆者 は知らない。共焦点走査顕微鏡は検出器に微小なピンホールかスリットを必要とし,回折格子分光器もまた微細なスリットを入射部に必要とするのであるから,この2つの光学系はそのまま結合してメリットを相乗してくれるのに,まだ,理解がそこまで進んでいないようである。」と記載されている(乙38・76頁5~9行)。この記載からは,上記記載事項が周知技術ではなかったことがうかがわれる。 (ウ) 相違点1(構成要件G-2①)についてa 乙16発明では,分光器(トリプル・ポリクロメータ)によって生じる非点収差を補正するために,入射スリットの手前にシリンドリカル・レンズを意図的に導入しており,試料の所与の面の焦点からの散乱光は,分光器の入射スリットの位置において,点状にはならず,線状になっている。 仮に,乙16発明において,試料の所与の面の焦点からの散乱光を入射スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込むように変更した場合(これはシリンドリカル・レンズを除去ないし無効化することを意味する)には,分光器によって生じる非点収差を補正するという乙16発明の目的が達成できなくなってしまう。 よって,かかる変更には,動機付けがないか,あるいは阻害要因が存在すると考えられ,乙16発明において,試料の所与の面の焦点からの散乱光を入射スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込むようにすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 在すると考えられ,乙16発明において,試料の所与の面の焦点からの散乱光を入射スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込むようにすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 b 被告は,乙31号証の記載を考慮すると,乙16発明において,シリドリカル・レンズ(非点収差補正光学系)は,必ずしもスリットの手前に配置する必要はなく,例えば,スリットの後ろの光検出器の手前に配置しても,同様の効果が得られるのであり,このことは自明で あったと主張する。 しかしながら,①被告の指摘するような配置を行った場合には,非点収差補正光学系の調整ができなくなる,②被告の指摘する位置はトリプル・ポリクロメータの内部であるが,当業者がトリプル・ポリクロメータの内部に非点収差補正光学系を配置しようとは考えられない,③乙31号証の技術は宇宙線事象検出の可能性を最小化するための技術であるが,乙16発明が用いるPS-PMTでは宇宙線事象検出の可能性を最小化する必要はなく,乙16発明に対して上記技術を適用する動機付けはない,④乙16発明では,非点収差補正光学系を検出器の前に配置する必要性はなく,乙16発明に対して乙31号証の技術を適用する動機付けはないから,乙31号証の記載を考慮したとしても,乙16発明において,被告の指摘する位置に非点収差補正光学系を配置することが当業者にとって容易に想到し得ることであったとはいえない。 (エ) 相違点2についてa 被告は,乙18発明の第2スリット(スリット82)に注目して,これを取り出し,乙16発明において,当該スリットを入射スリットとは直交する方向に設けることは当業者が容易に想到し得たことであると主張しているものと思われる。 しかしな に注目して,これを取り出し,乙16発明において,当該スリットを入射スリットとは直交する方向に設けることは当業者が容易に想到し得たことであると主張しているものと思われる。 しかしながら,第一に,当業者が乙18発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 乙16号証には,共焦点に関しては記載も示唆もないから,当業者が,乙16発明と共焦点に関する乙18発明とを結び付ける動機付けはなく,乙18発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 また,乙18発明は,乙18号証の〔問題点を解決するための手段〕に,「2個のスリットとレンズとを使用して,ピンホールの役割 をする光学系を構成する」と記載されている(2頁左上欄11~13行)ことから分かるように,ピンホールの代わりに,2個のスリット及びレンズ(乙18の第1図及び第2図に示されたスリット81,レンズ34,及びスリット82のセット)を用いる発明,すなわち,ピンホールの代替手段を提供する発明である。しかしながら,乙16発明では,ピンホールは用いられていないから,この観点からも,当業者が乙18発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 さらに,乙16発明は,分光分析を行うことを前提とした発明であるのに対し,乙18発明は,分光分析を行うことを前提としない発明である。実際,乙18号証をみても,分光に関しては記載も示唆もない。また,上述のように,乙16発明では,試料の所与の面の焦点からの光は,分光器の入射スリットの位置において,点状にはならず,線状になっている。これに対し,乙18発明では,乙18号証の第2図を見て分かるように,被告が乙16発明の入射スリットに対応すると主張する第1スリット(スリット81)の位置において,試料の所与の面の焦点 になっている。これに対し,乙18発明では,乙18号証の第2図を見て分かるように,被告が乙16発明の入射スリットに対応すると主張する第1スリット(スリット81)の位置において,試料の所与の面の焦点からの光は一点に集光されている。このように,乙16発明と乙18発明とでは,その状況が大きく異なり,この観点からも,当業者が乙18発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 第二に,乙18発明からスリット82のみを取り出して,これを乙16発明に適用することについては,阻害要因が存在するか,あるいは動機付けがないと考えられる。 上述のように,乙18発明は,ピンホールの代わりに,2個のスリット及びレンズ(スリット81,レンズ34及びスリット82のセット)を用いる発明である。つまりスリット81,レンズ34及びスリット82を必須の構成とするものであるから,この中からスリット82のみを取り出して,乙16発明に適用することについては阻害要因 があるというべきである。また,スリット82のみを取り出すことについては,乙18号証には記載も示唆もないのであるから,かかる取り出しを行う動機付けはない。 また,スリット82は光検出器6(乙18の第1図及び第2図参照)とも協働しているから,スリット82を光検出器6から分離することについても,阻害要因が存在するか,あるいは動機付けがないと考えられる。 b 被告は,乙18発明を乙16発明に適用することにより,乙16発明において,入射スリットとは直交する方向にスリットを設けることは当業者が容易に想到し得たと主張し,これに加えて,次に,乙10発明を乙16発明に適用することにより,そのスリットに代えて,光検出器の読取領域の制限によって共焦点作用を得ることも当業者が 設けることは当業者が容易に想到し得たと主張し,これに加えて,次に,乙10発明を乙16発明に適用することにより,そのスリットに代えて,光検出器の読取領域の制限によって共焦点作用を得ることも当業者が容易に想到し得たと主張していると思われる。 しかしながら,第一に,当業者が乙10発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 乙16号証には,共焦点に関しては記載も示唆もないから,当業者が,乙16発明と共焦点に関する乙10発明とを結び付ける動機付けはなく,乙10発明を乙16発明に適用する動機付けはない。また,乙16発明は,分光分析を行うことを前提とした発明であるのに対し,乙10発明は,分光分析を行うことを前提としない発明である。実際,乙10号証をみても,分光に関しては記載も示唆もない。このように,乙16発明と乙10発明とでは,その状況が大きく異なり,この観点からも,当業者が乙10発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 また,乙10発明の2次元マトリックススイッチは,いずれも主走査方向において異なる位置に到達した光を区別することができない。 よって,乙16発明において,位置検出型光電子増倍管の代わりに, これらの2次元マトリックススイッチを採用すれば,せっかく分光器(トリプル・ポリクロメータ)で分光した光を区別することができなくなってしまう。したがって,この観点からも,当業者が乙10発明を乙16発明に適用する動機付けはない。 第二に,被告の示す証拠からは,被告の主張が成り立つとは考えられない。2つのスリットのうちの1つを光検出器の所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えて,光検出器のかかる領域と残ったもう1つのスリットとを使用すること,すなわち られない。2つのスリットのうちの1つを光検出器の所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えて,光検出器のかかる領域と残ったもう1つのスリットとを使用すること,すなわち,2つの異なる原理に基づく手段の組み合わせにより二次元の共焦点作用をもたらすことが公知であることを示す証拠は示されていないし,自明の事項ではない。 c 被告は,乙18発明を乙16発明に適用することにより,乙16発明において,入射スリットとは直交する方向にスリットを設けることは当業者が容易に想到し得たと主張しているので,次に,乙8~10の技術(ピンホールに代えて,光検出器の読取領域の制限によって,共焦点作用が得られるという技術)を乙16発明に適用することにより,そのスリットに代えて,光検出器の読取領域の制限によって共焦点作用を得ることも当業者が容易に想到し得たと主張していると思われる。 しかしながら,第一に,当業者が乙8~10号証の技術を乙16発明に適用する動機付けはない。 乙16号証には,共焦点に関しては記載も示唆もないから,当業者が,乙16発明と共焦点に関する乙8~10号証の技術とを結び付ける動機付けはなく,上記技術を乙16発明に適用する動機付けはない。 上記技術はピンホールの代替技術であるが,乙16発明ではピンホールは用いられていないから,この観点からも,当業者が上記技術を乙 16発明に適用する動機付けはない。 また,乙16発明は,分光分析を行うことを前提とした発明であるのに対し,乙8~10号証の技術は,分光分析を行うことを前提としない技術である。実際,乙8~乙10号証をみても,分光に関しては記載も示唆もない。このように,乙16発明と上記技術とでは,その状況が大きく異なり 乙8~10号証の技術は,分光分析を行うことを前提としない技術である。実際,乙8~乙10号証をみても,分光に関しては記載も示唆もない。このように,乙16発明と上記技術とでは,その状況が大きく異なり,この観点からも,当業者が上記技術を乙16発明に適用する動機付けはない。 さらに,乙8~10号証の技術は,ピンホールに代えて,二次元の縦横に並べられた素子のうちの1つを用いるものである。この1つの素子によって,分光された光を区別することはできないから,仮に,乙16発明において,位置検出型光電子増倍管の代わりに,乙8~10号証の光検出器を採用すれば,せっかく分光器(トリプル・ポリクロメータ)で分光した光を区別することができなくなってしまう。したがって,この観点からも,当業者が上記技術を乙16発明に適用する動機付けはない。 第二に,被告の示す証拠からは,被告の上記主張が成り立つとは考えられない。 2つのスリットのうちの1つを光検出器の所与の領域(共焦点作用をもたらすような制限された読取領域)に置き換えて,光検出器のかかる領域と残ったもう1つのスリットとを使用すること,すなわち,2つの異なる原理に基づく手段の組み合わせにより二次元の共焦点作用をもたらすことが公知であることを示す証拠は示されていないし,自明の事項ではない。 (オ) 相違点3について乙16発明は,極限的な微弱光の高感度ラマン分光を実現するための装置であるから(乙16・5頁22行参照),当業者であれば,乙16 号証の図1の試料にレーザを照射するミラーを,ハーフミラー,ダイクロイックフィルタ,ビームスプリッタ等にして,試料からの散乱光をなるべくブロックしないようにすることは考えつくかもしれない。しかし,ハー の図1の試料にレーザを照射するミラーを,ハーフミラー,ダイクロイックフィルタ,ビームスプリッタ等にして,試料からの散乱光をなるべくブロックしないようにすることは考えつくかもしれない。しかし,ハーフミラー等であっても,散乱光をすべて透過させることができるわけではない。 ここで,仮に,試料にレーザを照射するのと,当該試料からの散乱光を集光するのとに同一のレンズを用いるようにしたとすると,散乱光がミラーによってある程度ブロックされることになるから,乙16発明の目的(極限的な微弱光の高感度ラマン分光の実現)を考慮すれば,このような変形を行うことについては,動機付けがないか,あるいは阻害要因が存在すると考えられる。 したがって,乙16発明において,相違点3に係る構成にすることは,当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 (カ) 相違点4について超微弱信号の検出以外の目的でCCD検出器を用いることがあるとしても,かかる目的の場合には乙16発明を用いる必要はないのであるから,乙16発明においてCCD検出器を用いる動機付けはない。 したがって,乙16発明において,相違点4に係る構成にすることは,当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 カ明確性要件違反の有無(争点4-6)(被告の主張)本件発明7(請求項7)には,構成要件D,G-1及びG-2において,「所与の領域」との記載がある。この「所与の領域」はサンプルの所与の面から散乱された光が合焦される領域であり(構成要件D),当該「所与の領域」で受ける光が,「所与の領域」外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され(構成要件G-1),かつ,「所与の領域」は, 第一の される領域であり(構成要件D),当該「所与の領域」で受ける光が,「所与の領域」外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され(構成要件G-1),かつ,「所与の領域」は, 第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている。しかしながら,このような「所与の領域」が具体的にどのような範囲であるかについては,特許請求の範囲の記載において明確ではない。 この点,原告RTSは,拒絶理由通知書に対する意見書(乙2)3頁24~25行において「光検出器の細長い領域(実施例における2本の線44の間の部分)」,同頁26行目において「光検出器の所与の領域,つまり細長い領域」と主張している。そして,本件明細書の「実施例における2本の線44の間の部分」とは,本件明細書の本件発明7に対応する実施例(第2の実施例)においては幅が2ピクセルの細長い領域であるが,その位置及び幅をどのように定めるかについては何ら記載がない。 以上のように,第二の次元で共焦点作用をもたらす領域は,一義的に確定できるものではない。「所与の領域」は,サンプルの他の面からの光をカットする程度(第二の次元の共焦点作用をもたらす程度),検出する受光量の程度,暗電流によるノイズの程度等の条件によって異なってしかるべきであるが,「所与の領域」は,本件明細書の記載及び出願当時の当業者の技術常識を参酌しても,不明確であるといわざるを得ない。 したがって,本件発明7(請求項7)は,平成6年改正前特許法36条5項2号の要件を具備しない。 (原告らの主張)本件明細書6欄2~45行及び第2図,並びに7欄24~33行,第3図及び第5図等には,「所与の領域」の決定に関連する具体的な記載がある。本件発明7を実施する場合,当業者で 原告らの主張)本件明細書6欄2~45行及び第2図,並びに7欄24~33行,第3図及び第5図等には,「所与の領域」の決定に関連する具体的な記載がある。本件発明7を実施する場合,当業者であれば,当該記載を参照して,「所与の領域」を適宜決定することができるから,明確性要件違反はない。 (5) 本件発明8~10及び13に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点5)(被告の主張) ア進歩性欠如本件発明8~10及び13は,以下のとおり,進歩性が欠如する。 (ア) 本件発明7は,乙30号証,乙31号証,乙18号証,乙7号証又は乙16号証に基づいて,容易に発明することができたから,進歩性が欠如する。 (イ) 乙7号証の図3には,リニアダイオードアレイを光検出器として用いる発明が記載されており,これは細長い領域に該当する。また,乙16発明の前記光検出器の前記所与の領域(幅5ピクセルの領域)は細長い(本件発明8の構成要件I)。 乙7号証の図3には,横方向(スリットを横切る方向)に延在したリニアダイオードアレイが記載されている。また,乙16発明の前記光検出器の前記所与の領域(幅5ピクセルの領域)は,図2(a)及び(b)の左右方向(X方向)に延在している。これに対して,乙16号証4頁19行には,スリットの長さ方向は,Y方向であるとされている。よって,乙16号証には,「前記光検出器の前記所与の領域が前記スリットを横切る方向に延在していること」が記載されている(本件発明9の構成要件K)。 乙7号証の図3には,横一列に並んだリニアダイオードアレイが記載されており,これはピクセルのアレイと実質的な相違はない。また,乙16号証6頁1行には, る(本件発明9の構成要件K)。 乙7号証の図3には,横一列に並んだリニアダイオードアレイが記載されており,これはピクセルのアレイと実質的な相違はない。また,乙16号証6頁1行には,「25μm角の各ピクセルあたりで」と記載されているから,乙16号証には「前記光検出器は,ピクセルのアレイを備えたこと」が記載されている(本件発明10の構成要件M)。 乙7号証の主題はラマンマイクロプローブである。また,乙16号証7頁の図2の説明文には,「515nm励起によるシリコン(100)のラマン信号とAr+プラズマ発光。」と記載されているから,乙16号証には,「前記スペクトルがラマン散乱光のスペクトルであること」 が記載されている(本件発明13の構成要件O)。 以上のとおり,本件発明8~10及び13の構成は格別の技術的意義を有さない,単なる設計事項の構成である。本件発明7が上記(ア)のとおり進歩性を欠如する以上,これに単なる設計事項を加えたにすぎない本件発明8~10及び13も進歩性を欠如する。 イ明確性要件違反本件発明7と同様に,「所与の領域」は,本件明細書の記載及び出願当時の当業者の技術常識を参酌しても,不明確であるといわざるを得ない。 したがって,本件発明8~10及び13は,平成6年改正前特許法36条5項2号の要件を具備しない。 (原告らの主張)ア進歩性欠如について本件発明7は当業者が容易に想到し得たものとはいえないから,本件発明8~10及び13も当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ明確性要件違反について本件発明7の「所与の領域」は不明確であるとはいえず,平成6年改正前特許法36条5項2号の要件を具備する。 も当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 イ明確性要件違反について本件発明7の「所与の領域」は不明確であるとはいえず,平成6年改正前特許法36条5項2号の要件を具備する。 したがって,本件発明8~10及び13も,平成6年改正前特許法36条5項2号の要件を具備する。 (6) 損害額(争点6)(原告らの主張)被告は,遅くとも平成20年1月以降,被告製品の製造・販売を行っており,本件訴訟提起までの被告製品の売上げは8億円を下らない。 本件発明の実施料相当額の料率は10%を下回らないから,原告RTSは,被告による本件特許権の侵害により,少なくとも8000万円の損害を被った。 また,原告RTSは,平成22年10月26日の本件特許権の譲渡の前後を 通じて,原告レニショウの子会社である。原告RTSは本件発明を実施しておらず,当該譲渡日以前において本件発明を適法に実施できたのは原告レニショウのみであった。したがって,被告の侵害行為がなければ,原告レニショウは,被告が譲渡した侵害品の数量と同じ数量を販売することができたというべきであるから,被告による本件特許権の侵害により,少なくとも3億3600万円の損害を被った。 (被告の主張)原告らの主張は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 被告製品(ライン照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点1)について(1) 「光」(構成要件A)の意義(争点1-1)についてア構成要件Aにおける「光」の意義については,これをスポット照明に限定せずライン照明も含まれるとする原告らの主張と,スポット照明に限定されるとする被告の主張が対立している。すなわち,構成要件Aの「光」にスポット照明が含ま 」の意義については,これをスポット照明に限定せずライン照明も含まれるとする原告らの主張と,スポット照明に限定されるとする被告の主張が対立している。すなわち,構成要件Aの「光」にスポット照明が含まれることは原告,被告間に争いはなく,ライン照明が含まれるか否かが,構成要件Aの「光」の意義についての争点である。 構成要件Aの「光」の意義については,本件発明の特許請求の範囲や明細書の発明の詳細な説明の記載をみても,それを直接に明らかにする記載はない。 被告は,本件発明7における唯一の実施例である第2の実施例が従来技術における第1の実施例についてのスポット照明についての記載を前提としているから,構成要件Aの「光」はスポット照明に限定されると主張するが,実施例においてスポット照明についての説明があるからといって,そこから直ちに構成要件Aの「光」がスポット照明であることを導き出すことはできないものというべきである。 イそこで,本件発明7の技術的意義について検討する。 (ア) 本件発明7は,例えば,ラマン効果を利用してサンプルを分析するのに分光分析が使用される装置に関するものである(本件明細書の「技術分野」3欄44~46行)。物質をある波長の励起光で照明したときに散乱される光のほとんどは,励起光と同じ波長の光である(レイリー散乱光)。しかし,一部の散乱光は,その物質を構成する分子の振動に応じて,波長が変化する。ラマン散乱光とは,このように物質に励起光が照射されたときに発生する,励起光とは異なる波長をもった散乱光をいう(乙6)。分子種が異なると特徴的ラマンスペクトルが異なるため,サンプル中に存在する分子種の分析に使用することができる(本件明細書の「背景技術」4欄1~3行)。 分光分析 散乱光をいう(乙6)。分子種が異なると特徴的ラマンスペクトルが異なるため,サンプル中に存在する分子種の分析に使用することができる(本件明細書の「背景技術」4欄1~3行)。 分光分析に係る従来技術では,サンプルの一定の面(要求された面)から散乱された光はピンホールにおいて緊密に焦点を絞られて通過し,他の面からの光は焦点がそれほど緊密に絞られず遮断されることにより,一段階の共焦点作用でラマン分光分析を行っていたが,散乱された光を非常に小さなピンホール上に緊密に焦点合わせすることが難しかった(本件明細書の「背景技術」4欄19~34行)。 そこで,本件発明7では,共焦点作用を二段階に分け,第一の次元の共焦点作用は,ピンホールの代わりにスリットを用いることにより焦点合わせを容易にし,サンプルの所与の面から散乱された光を光検出器の所与の領域に合焦させ,他の面から散乱された光を光検出器に合焦させないようにした。そして,第一の次元の共焦点作用が不十分な点について,光検出器の所与の領域で受ける光が,所与の領域外で受ける光を含まずに,又はこの光と分離して検出され,所与の領域は,第一の次元を横切るように形成することにより,第二の次元で共焦点作用をもたらすようにして,共焦点作用が十分に生じるようにしたものである(本件明 細書の「発明の開示」4欄44行~5欄4行)。 (イ) ここで,上記共焦点作用について検討する。 原告らは,共焦点作用とは,サンプルの所与の面の特定の点からの光を取得する際に,レンズを利用して,サンプルの所与の面の特定の点からの光をある領域に集中させる一方,サンプルの他の面からの光を拡散させ,前記領域の辺りのみを読み取ることにより,読取領域外に存在する拡散されたサンプルの他の面から て,サンプルの所与の面の特定の点からの光をある領域に集中させる一方,サンプルの他の面からの光を拡散させ,前記領域の辺りのみを読み取ることにより,読取領域外に存在する拡散されたサンプルの他の面からの光を排除することで,Z軸方向(光軸方向)での分解能を向上させる作用である旨主張する。 他方で,被告は,共焦点作用は,光源のXY平面での広がりを制限するとともに,光検出器側でもXY平面での広がりを制限することによって,主としてZ方向の分解能が向上する作用である旨主張する。 このように,両者の共焦点作用の意義を比較すると,光源側の制約(構成要件Aの「光」の意義)については争いがあるものの,光検出器側においてXY両方向の広がりを制限することによってZ軸方向(光軸方向)の分解能が向上するという点では当事者間に争いがないものと解される。そして,これは,本件明細書の「そのような技術を共焦点法で使用してサンプルの一定の面から散乱された光のみを分析することも可能である。」(4欄22~24行),「CCDをコンピュータと組み合わせると,このように,従来の空間フィルタにおけるピンホールと同じ効果を与える。レンズ16がサンプルの表面に焦点を結ぶと,サンプル内の表面の背後から散乱された光をフィルタリングして取り除くことができ,表面自体の分析も行うことができる。あるいは,レンズ16を故意にサンプル内の点に焦点を結ばせて表面から散乱された光をフィルタリングして取り除くことができる。このように,余分の空間フィルタを使用しないでも共焦点作用が達成されていた。」(6欄18~26行)等の記載にも沿うものである。 そうすると,共焦点作用は,少なくともZ軸方向(光軸方向)の分解能が向上する作用であるといえる。 (ウ) た。」(6欄18~26行)等の記載にも沿うものである。 そうすると,共焦点作用は,少なくともZ軸方向(光軸方向)の分解能が向上する作用であるといえる。 (ウ) ところで,本件明細書においては,共焦点作用について,「第一の次元での共焦点作用」又は「部分的共焦点作用」と「第一及び第二の次元での共焦点作用」又は「完全な共焦点作用」とを区別している。 この点について,発明の詳細な説明においては,「発明の開示」において,「前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし,前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され,前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されていることを特徴とする」(4欄47行~5欄3行)とされ,実施例に関する記載においては,「第3図の構成が部分的共焦点作用のみを発揮する理由は,CCDとコンピュータにより提供される空間フィルタリングが一次元でのみ起こり,二次元では起きないからである。これは,第1図のものと同じエレメントに空間フィルタ14を加えた第4図の実施例を使用することにより克服できる。…スリット30は一次元空間フィルタリングのみを提供し,ラマンバンド28のそれぞれが第5図の水平方向に空間的にフィルタリングされるようにしていることが認められるであろう。しかしながら,焦点19の外側からの若干の光が依然としてスリット30を通過し第3図の影を付けた領域に対応する第5図の領域において受領されることがある。 これを克服するには,コンピュータ25を第3図の実施例におけると同様にプログラムして,線44同士の間にあるピクセルからのデータだけを処理し, 領域に対応する第5図の領域において受領されることがある。 これを克服するには,コンピュータ25を第3図の実施例におけると同様にプログラムして,線44同士の間にあるピクセルからのデータだけを処理し,線46同士の間にある他のピクセルを排除する。これにより,垂直方向における空間フィルタリングが得られ,スリット30により与えられる水平空間フィルタリングと一緒に,完全な二次元共焦点作用が 達成される。」(6欄46行~7欄33行)とされている。 以上によれば,本件発明7は,焦点合わせの困難なピンホールを使用しない共焦点作用の技術において,Z軸方向の分解能向上のために,単にCCDとコンピュータの組合せによる一次元空間フィルタリングを行うのみ(例えば,第1図の従来技術による部分的共焦点作用)ではなく,これにスリットによる空間フィルタリングを組み合わせることにより二次元の空間フィルタリングを行い,これによって完全な共焦点作用を達成しようとするものである。 原告らは,完全な共焦点作用については,非分散性エレメントを用いる場合と分散性エレメントを用いる場合の2つに分け,部分的共焦点作用は分散性エレメントを用いる場合であるとするが,本件明細書において,そのような明確な区別をしているとみるだけの根拠に乏しく,いずれのエレメントを用いる場合においても,完全な共焦点作用と部分的な共焦点作用が生じるものと解するのが相当である。 このような,本件発明7の技術的意義及び他に特許請求の範囲や発明の詳細な説明において「光」の意義を明らかにするような記載がないことに照らせば,構成要件Aの「光」の意義については,本件発明7の技術的意義を達成できるような光であるか否か,言い換えれば,本件発明7の構成を備えた装置において,第一及び らかにするような記載がないことに照らせば,構成要件Aの「光」の意義については,本件発明7の技術的意義を達成できるような光であるか否か,言い換えれば,本件発明7の構成を備えた装置において,第一及び第二の次元での共焦点作用をもたらす光といえるか否かという観点から検討するのが相当である。 ウそこで,ライン照明が第一及び第二の次元での共焦点作用をもたらす光といえるか否かについて検討する。 (ア) 原告らは,ライン照明の場合に,別紙原告参考図4のように,線PP間の領域で光を読み取れば,不要な光の一部であるL1及びL2を読み取ってしまうのに対し,別紙原告参考図5のように,線QQ間の領域で光を読み取れば,不要な光の一部であるL1及びL2を読み取らない のであって,L3~L6を読み取ってしまうとしても,L1及びL2を読み取らないようにして,Z方向の空間分解能を向上させているから,第二の次元での共焦点作用を奏している旨主張する。 これに対し,被告は,読み出し幅を変えるとXY面内の分解能が変化してしまうから,線PP間の読み出しと線QQ間の読み出しとの比較自体が無意味であり,仮に線PP間の読み取りと線QQ間の読み取りを比較しても,線QQ間の読み取りの方がZ方向の分解能が向上しているとはいえない旨主張する。 (イ) そこで検討するに,原告らの主張は,本件明細書の第5図の場合のように線44間の領域を読み取ることにより,第二の次元の共焦点作用が生じるのと同様であるとするものと解される。確かに,本件明細書には,「第5図は,CCDを第4図の実施例で使用したときの第2図および第3図に対応する平面図である。…線44同士の間にあるピクセルからのデータだけを処理し,線46同士の間にある他のピクセルを排除する。これにより は,CCDを第4図の実施例で使用したときの第2図および第3図に対応する平面図である。…線44同士の間にあるピクセルからのデータだけを処理し,線46同士の間にある他のピクセルを排除する。これにより,垂直方向における空間フィルタリングが得られ,スリット30により与えられる水平空間フィルタリングと一緒に,完全な二次元共焦点作用が達成される。」(7欄15~33行)と記載されている。しかし,第4図の実施例は,「このレンズはこのレーザービームをサンプル18上の焦点19におけるスポットに焦点を結ばせる。」(5欄25~27行)とする従来技術についての第1の実施例を前提としているものと解される。したがって,このようなスポット照明の場合には,線44間と線46間の読み取りの際にXY面内分解能は変化していないと解される。 スポット照明の場合には試料のスポット光が照射された点から出たラマン散乱光のみがCCDに到達するのであるから,線44間の領域を読み取ることにより,Z軸方向の分解能が高くなり,第二の次元の共焦点 作用が生じるものと解される。 しかし,ライン照明の場合には,これと同様ということはできない。 線PP間を読み取るということは,線PP間に到達した光全てを一括して1データとして読み取るということであって,線PP間に到達した光を検出器の各画素位置ごとに分解してデータを読み取るのではないことを意味し,これは線QQについても同様であると解される(原告らの実験である甲18別紙2の1頁14~16行参照)。そうすると,ライン照明の場合には,たとえ線QQ間を読み取ったとしても,原告参考図6のように,他の点からの光が含まれており,Z軸方向の分解能が高まるとはいえない。 以上のとおり,原理的にみて,ライン照明の場合にお には,たとえ線QQ間を読み取ったとしても,原告参考図6のように,他の点からの光が含まれており,Z軸方向の分解能が高まるとはいえない。 以上のとおり,原理的にみて,ライン照明の場合においては,QQ間のデータを読み取ったとしても,第二の次元の共焦点作用は生じないものというべきである。 原告らは,被告の主張は斜方寄与を考慮せず,実際の物理現象を単純化しすぎていると主張する。しかし,斜方寄与による散乱光は,他の面上の位置からの散乱光発生の要因となってZ軸方向の分解能の低下をもたらすとともに,他方,所与の面上の位置からの散乱光発生の要因ともなってZ軸方向の分解能向上をもたらすと考えられる。両者の関係は一概に決定することはできず,この主張によって上記の判断を覆すに足りるものとはいえない。 エさらに,念のため,現実にライン照明とスポット照明を比較した実験結果についても参照する。 (ア) 実験の前提としてのサンプルの態様について,原告らは,共焦点作用の有無の判定に使用するサンプルについて,完全に均質なサンプルは現実には存在せず,観念上の産物にすぎない旨主張するのに対し,被告は,XY方向に均質な平面状のサンプルに対して,奥行き方向の位置を 分解できるかどうかが,共焦点でない通常の光学系と共焦点光学系を区別する重要な特徴である旨主張する。 本件明細書の特許請求の範囲や発明の詳細な説明にはサンプルの態様について特に記載はないから,一般的な技術的見地から検討すべきものと解される。 そこで検討するに,乙21号証(光学第18巻8号〔1989年8月〕)には,「これまでの蛍光顕微鏡では,上方から観察している限りその存在が見えなかった,薄膜や板など,面方向に構造を持たない蛍光資料も そこで検討するに,乙21号証(光学第18巻8号〔1989年8月〕)には,「これまでの蛍光顕微鏡では,上方から観察している限りその存在が見えなかった,薄膜や板など,面方向に構造を持たない蛍光資料も,共焦点走査顕微鏡では,その存在及び奥行き方向の分布が観察できる。」(8頁右欄下から4~8行)と記載されている。また,乙22号証(第4回レーザ顕微鏡研究会1989・10・16)には,「本研究では,平面状のフォトレジストからの蛍光を検出する実験を行う。 したがって,インコヒーレントな光学系における計算を,平面状の蛍光膜について行う。」(14頁左欄11~13行)と記載され,「光軸に対して垂直な面内の無限小の薄さの蛍光膜を観測物体としたとき,その物体は o(x-xS’, y-yS’, z-zS)=ICδ(z-zS)(4)と表わされる,δ及びICはデルタ関数及び定数を表わす。」(14頁右欄9~12行)と記載されており,x,y及びzの関数であった式(4)の左辺を,zのみの関数である右辺に置き換えているから,XY方向に均質なサンプルを前提として議論しているものと解される。さらに,乙23号証(JOURNALOFMODERNOPTICS,1988,VOL.35,NO.7)には,「図12のとおり,合焦面から外れたピンボケの位置に配置した平面反射板からの信号の変化を測定することによって,光学的な断面分解能の検討を行った。」(1180頁「7.実験結果」第2段落)と記載されており,XY方向に均質なサンプルである平面反射板を使用した検討を行っている。 以上に照らすと,XY方向(XY面内)に均質(一様)なサンプルに 対してZ軸方向の分解能を有することが共焦点作用の重要な特徴であると認められるから,共焦点作用の有無を判定するには,XY方向に均質 照らすと,XY方向(XY面内)に均質(一様)なサンプルに 対してZ軸方向の分解能を有することが共焦点作用の重要な特徴であると認められるから,共焦点作用の有無を判定するには,XY方向に均質なサンプルを使用した実験結果を採用するのが相当である。 (イ) そこで,当事者の実験結果(甲18,乙20)をみるに,その結果をまとめると,以下のとおりである。FWHM(FullWidthatHalfMaximum 半値全幅)は,Z軸方向の解像度を示す指標であり,値が小さいほど解像度が大きいことを示すものである。 原告ら(甲18)被告(乙20) 実験2実験3実験4実験5実験5の追試サンプル非一様一様一様一様一様フォーカスラインスポットスポットラインライン波長633nm633nm633nm633nm532nm共焦点配置スリット+検出器領域スリット+検出器領域スリット+検出器領域スリット+検出器領域スリット+検出器領域スリット幅20μm20μm20μm20μm20μm対物レンズx100(NA 不明)x100(NA 不明)x50(NA 不明)x50(NA 不明)x50(NA0.8)ピクセル不明不明不明不明20μm結果列数 FWHM2.332.733.043.84列数 FWHM1.391.65 2.12列数 FWHM4.094.404.725.094.12列数 FWHM 1.391.65 2.12列数 FWHM4.094.404.725.094.12列数 FWHM5.395.805.905.805.46列数 FWHM2.06-2.092.082.082.08 原告らの実験3及び4によれば,スポット照明では,検出器の列数が少なくなると,FWHMの数値が小さくなり解像度が上がっている。他方で,原告らの実験5によれば,一様なサンプルを用いたライン照明で は,検出器の列数を3から1にするとFWHMが小さくなっているが,列数を7から5及び5から3にする過程ではFWHMが小さくなっているとはいえないから,原告らの実験によっても,一様なサンプルを用いたライン照明において共焦点作用が生じるとはいい難い。 オ以上のとおり,原理的には,ライン照明では,光検出器における所与の領域は,サンプルの所与の面からの光だけでなく,他の面からの光も相当量受光するから,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じないものと解されるし,実験の結果からみても,ライン照明において「第二の次元」の「共焦点作用」が生じるとは認められない。そして,その他ライン照明において共焦点作用が生じることを認めるに足りる証拠はない。 カ以上を踏まえて,構成要件Aの「光」の意義について検討するに,上記オのとおり,ライン照明において「第二の次元」の「共焦点作用」が生じるとは認められない。 そうすると,構成要件Aの「光」は,スポット照明を意味すると解するのが相当である。 (2) ライン照明における「第二の次元」の「共焦点作用」の有無(争点1-2)につ 認められない。 そうすると,構成要件Aの「光」は,スポット照明を意味すると解するのが相当である。 (2) ライン照明における「第二の次元」の「共焦点作用」の有無(争点1-2)について上記(1)の検討結果によれば,ライン照明において,「第二の次元」の「共焦点作用」は生じない。 (3) 被告製品(ライン照明モード)の構成要件充足性(争点1-3)について上記(1)のとおり,構成要件Aの「光」は,スポット照明を意味するから,被告製品(ライン照明モード)は,構成要件Aを充足しない。 また,ライン照明においては「第二の次元」の「共焦点作用」が生じない。 そして,本件発明7の「所与の領域」は,「第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されていることを特徴とする」(本件明 細書5欄1~3行)ところ,被告製品(ライン照明モード)は,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じないから,そのような作用をもたらすように形成される「所与の領域」が存在せず,構成要件D,G-1及びG-2を充足しない。 したがって,被告製品(ライン照明モード)は,本件発明7の技術的範囲に属しない。 2 被告製品(スポット照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するか(争点2)について(1) まず,被告製品(スポット照明モード)において「第二の次元」の「共焦点作用」(構成要件G-2)が生じるか否かを検討する。 ア被告は,被告製品(スポット照明モード)では,CCDの読取領域の幅は,220μmであり,これは本件明細書の実施例におけるCCDの読取領域44μm以下よりも大きく,また,本件明細書の実施例の記載において,200μmのスリットは空間フィルタとして動作しないと記載されているから mであり,これは本件明細書の実施例におけるCCDの読取領域44μm以下よりも大きく,また,本件明細書の実施例の記載において,200μmのスリットは空間フィルタとして動作しないと記載されているから,読出領域幅についても同様に200μmの幅では本件発明7の効果を奏しないと主張する。しかし,被告が主張するのはいずれも実施例についての記載であって,本件発明7の技術的意義から被告が主張するような数値が導かれるものではない。Z軸方向の分解能を向上させるという本件発明7の共焦点作用の技術的意義に基づいて検討されるべきである。 被告は,CCDの読取領域の幅(220μm)は,エアリーディスクの直径(スリット位置におけるもの)の最大値(146μm)よりも大きく,約1.5倍であるから,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じないと主張する(ただし,上記最大値の主張は,被告製品に搭載されていない1075nmの光源を前提とする主張である〔乙27参照〕。)。 そこで検討するに,甲21号証(公開特許公報〔平2-247605〕平成2年10月3日公開)には,「第6図より,検出器の面積を,その半 径がエアリディスクと同じ,または,エアリディスクの2倍まで広げた場合,…3次元分解能をもっていることがわかる。このような光学系は,一様照明落射型蛍光顕微鏡が全く分解をもたなかったz方向のみに構造の変化をもつ試料に対しても分解をもつ。」(5頁左上欄6~12行),甲22号証(Vol.8,No1/January 1991/J.Opt.Soc.Am.A)には,「エアリーディスクより2倍広い検出器を有する顕微鏡も,2μmの分解能で長さ方向の構造を分解することができる。」(172頁右欄下から12~10行)と記載されている。 また,甲24号証(HAND リーディスクより2倍広い検出器を有する顕微鏡も,2μmの分解能で長さ方向の構造を分解することができる。」(172頁右欄下から12~10行)と記載されている。 また,甲24号証(HANDBOOKOFBIOLOGICALCONFOCALMICROSCOPYREVISEDEDITION〔「<C>1990,1989 PlenumPress」の記載に照らすと,本件特許権の優先日前に頒布された刊行物と認められる。〕)には,図4「ピンホールの大きさの関数としての反射における軸方向の共焦点応答」において(別紙甲24号証の図4参照),検出ピンホールの大きさが回折限界エアリー分布のFWHMの単位で示されている。そして,甲20号証には,エアリーディスクの直径1.22λ/NA像側と記載され(96頁4-27式),NA物体側=NA像側×Mであることも認められるから(97頁4-28式と4-29式から求められる。),エアリーディスクの直径d=(1.22×λ/NA物体側)×Mである(λ:波長,NA:開口数,M:対物レンズの倍率)。乙29号証には,△x(FWHM)=0.51×λ/NAと記載され,このNAはNA像側であると解されるから,エアリーディスクのFWHMの大きさは(0.51×λ/NA物体側)×Mである。これをエアリーディスクの直径と比較すると,エアリーディスクの直径は,そのFWHMの大きさの約2.4倍(1.22/0.51=2.392)であると認められる。甲24号証の図4では,ピンホール直径6は,FWHMを1とした場合の関数として表現されているから,ピンホールの大きさがエアリーディスクの直径の2.5倍(6/2.4=2.5)まで は,共焦点作用を有するものとして示されていると認めるのが相当である。 以上に照らすと,読取領 ,ピンホールの大きさがエアリーディスクの直径の2.5倍(6/2.4=2.5)まで は,共焦点作用を有するものとして示されていると認めるのが相当である。 以上に照らすと,読取領域の幅がエアリーディスクの直径の2.5倍までであれば,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じると認めるのが相当である。 イそして,証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品(スポット照明モード)は,波長785nm,開口数0.9,対物レンズの倍率100倍が選択可能であることが認められる。 上記の数値を,エアリーディスクの直径d=(1.22×λ/NA物体側)×Mに当てはめると,エアリーディスクの直径は106μmであるから,CCDの読取領域の幅220μmはエアリーディスクの直径の2.5倍以内の約2.08倍となる。 そうすると,被告製品(スポット照明モード)では,波長785nm,開口数0.9,対物レンズの倍率100倍の設定(以下「本件設定」という。)の場合において,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じると認められる。 原告らは,被告製品(スポット照明モード)では,波長785nm,開口数0.45,対物レンズの倍率100倍の設定も可能である旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 (2) 以上に基づいて,被告製品(スポット照明モード)が本件発明7の技術的範囲に属するかを検討する。 ア構成要件Aの「光」は,スポット照明を意味し(前記1(1)),被告製品(スポット照明モード)は,サンプルの測定しようとする面(所与の面)に光を照射して散乱光を得る手段を有するから(前提事実(7)イ),構成要件Aを充足する。 イ被告製品(スポット照明モード)は,「ある波長範囲をもった散乱光」の意味での「 する面(所与の面)に光を照射して散乱光を得る手段を有するから(前提事実(7)イ),構成要件Aを充足する。 イ被告製品(スポット照明モード)は,「ある波長範囲をもった散乱光」の意味での「スペクトル」を400本のスペクトルに分光して周波数成分 ごとに分ける手段を備えるから,構成要件Bを充足する(前提事実(8)イ)。 ウ被告製品(スポット照明モード)は,冷却CCD(電荷結合素子)光検出器を備えるから,構成要件C及びG-2③を充足する(前提事実(8)イ)。 エ被告製品(スポット照明モード)は,回折格子により分光された散乱光を光検出器に合焦させる手段をそれぞれ有し,サンプルの所与の面からの散乱光は,スリットを通過し,光検出器に合焦させられ,サンプルの所与の面以外からの散乱光は,光検出器上には合焦しない(前提事実(7)イ)。 そして,上記(1)のとおり,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じるから,第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている「所与の領域」を有すると認められる。 以上のとおり,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,構成要件Dを充足する。 オ上記ア~エのとおり,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,構成要件A~Dを充足する分光分析装置である(甲3,4)から,構成要件Eを充足する。 カ被告製品(スポット照明モード)では,サンプルの所与の面からの散乱光は,スリットを通過し(前提事実(8)ウ),当該スリットが「第一の次元で共焦点作用」をもたらしているものであることは争いがない。 そうすると,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,構成要件 前提事実(8)ウ),当該スリットが「第一の次元で共焦点作用」をもたらしているものであることは争いがない。 そうすると,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,構成要件Fを充足する。 キ被告製品(スポット照明モード)は,上記エのとおり,本件設定の場合において,「所与の領域」を有しており,また,光検出器が所与の領域外で受ける光を含まずに,または分離して検出できるものと認められるから, 構成要件G-1を充足する。 ク被告製品(スポット照明モード)は,上記エのとおり,本件設定の場合において,「第二の次元」の「共焦点作用」が生じ,「所与の領域」を有している。また,被告製品(スポット照明モード)のCCDの読取領域は,スリットと直交する方向に細長く延びているから(乙12のスライド44,弁論の全趣旨),被告製品(スポット照明モード)の「所与の領域」は「第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている」と認められる。 したがって,被告製品(スポット照明モード)は,構成要件G-2を充足する。 ケ被告製品(スポット照明モード)では,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光は,スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれてスリットを通過し,他の面の散乱光は,スリットにおいて焦点を結んでいないから,構成要件G-2①を充足する(前提事実(8)ウ)。 コ被告製品(スポット照明モード)は,サンプルに光を照射する対物レンズは,当該サンプルからの散乱光の集光も行うから,構成要件G-2②を充足する(前提事実(8)イ)。 サ被告製品(スポット照明モード)は,分光分析装置であり(前提事実(8)エ),構成要件A~G-2の特徴を備えるから,構成要件Hを充足する 構成要件G-2②を充足する(前提事実(8)イ)。 サ被告製品(スポット照明モード)は,分光分析装置であり(前提事実(8)エ),構成要件A~G-2の特徴を備えるから,構成要件Hを充足する。 シしたがって,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明7に係る構成要件をすべて充足する。 (3) 以上のとおり,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明7の技術的範囲に属する。 3 被告製品が本件発明8~10及び13の技術的範囲に属するか(争点3)について(1) 被告製品について前記1のとおり,被告製品(ライン照明モード)は,本件発明7の技術的範囲に属しないから,本件発明7の従属項である本件発明8~10及び13の技術的範囲に属しない。 他方で,被告製品(スポット照明モード)は,前記2のとおり,本件設定の場合において,本件発明7の技術的範囲に属するから,以下では,これを前提として検討する。 (2) 本件発明8の技術的範囲に属するかについて弁論の全趣旨によれば,被告製品(スポット照明モード)では,垂直方向の幅220μm,水平方向の長さ約26.8mmの範囲でCCDからの信号を採取していることが認められるから,被告製品(スポット照明モード)は,構成要件Iを充足する。そして,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明7の技術的範囲に属するから,その限度で,構成要件Jを充足する。 したがって,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明8の技術的範囲に属する。 (3) 本件発明9の技術的範囲に属するかについて上記(2)及び前記2(2)クのとおり,被告製品(ス スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明8の技術的範囲に属する。 (3) 本件発明9の技術的範囲に属するかについて上記(2)及び前記2(2)クのとおり,被告製品(スポット照明モード)では,垂直方向の幅220μm,水平方向の長さ約26.8mmの範囲でCCDからの信号を採取していること,CCDの読取領域は,スリットと直交する方向に細長く延びていることが認められるから,被告製品(スポット照明モード)は,構成要件Kを充足する。そして,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明7の技術的範囲に属するから,その限度で,構成要件Lを充足する。 したがって,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明9の技術的範囲に属する。 (4) 本件発明10の技術的範囲に属するかについて被告製品(スポット照明モード)が構成要件Mを充足することは当事者間に争いがない。そして,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明7の技術的範囲に属するから,その限度で,構成要件Nを充足する。 したがって,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明10の技術的範囲に属する。 (5) 本件発明13の技術的範囲に属するかについて被告製品(スポット照明モード)が構成要件Oを充足することは当事者間に争いがない。そして,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明7及び10の技術的範囲に属するから,その限度で,構成要件Pを充足する。 したがって,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明13の技術的範囲に属する。 (6) 小括以上の るから,その限度で,構成要件Pを充足する。 したがって,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明13の技術的範囲に属する。 (6) 小括以上のとおり,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明8~10及び13の技術的範囲に属する。 4 本件発明7に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点4)について(1) 乙30号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-1)についてア乙30号証(NATUREVol.347 20 SEPTEMBER 1990)は,本件特許権の優先日前である平成2年(1990年)9月ころ頒布された刊行物であると認められる。 乙30号証には,以下の発明(乙30発明)が記載されていると認めら れる。 「DCM色素レーザーからの波長660nmのレーザー光を,高開口数の顕微鏡対物レンズを用いて分析対象の物体に集光し,物体により散乱された光が同じ対物レンズにより集められ,共焦点検出を可能とするピンホールを通して,分光器に導入され,レーザーの集光サイズは0.5μmよりも小さく,直径100μmのピンホールにより深さ分解能は1.3μmとなり,前記分光器は,シェブロン型誘導体バンドパスフィルタセットと,波長分散ステージからなり,信号の検出には液体窒素冷却CCDカメラが用いられる共焦点ラマン顕微鏡。」イ本件発明7は,前提事実(5)アのとおりであるから,これを乙30発明と対比すると,本件発明7と乙30発明は,以下の点で一致する。 「A サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段(乙30発明の「DCM色素レーザーからの…同じ対物レンズにより集められ」)と, 発明7と乙30発明は,以下の点で一致する。 「A サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段(乙30発明の「DCM色素レーザーからの…同じ対物レンズにより集められ」)と,B 前記スペクトルを分析する手段(乙30発明の「分光器」)と,C 光検出器(乙30発明の「液体窒素冷却CCDカメラ」)と,D’前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ(本件発明7は,光検出器の「所与の領域」に合焦させるものであるが,乙30発明とは光検出器に合焦させるという点では一致する。)前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段(乙30発明の「ピンホール」は共焦点検出を可能とするから,光検出器に合焦させない手段が存在することは自明である。)とE を具備する分光分析装置(乙30発明の「共焦点ラマン顕微鏡」)であって,F’前記光は空間フィルタ(乙30発明の「共焦点検出を可能とするピンホール」)を通過して共焦点作用をもたらし, G-2①’前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記空間フィルタにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記空間フィルタを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前又は後で散乱される光は,前記空間フィルタにおいて焦点を結ばず(乙30発明の「ピンホール」は共焦点検出を可能とするから,サンプルの所与の面の焦点の前又は後で散乱される光は空間フィルタにおいて焦点を結ばないことは自明である。また,乙30号証には,あえて収差をつけるような記載がないから,サンプルの所与の面からの散乱光が「スポットとしての焦点」に絞り込まれるこ れる光は空間フィルタにおいて焦点を結ばないことは自明である。また,乙30号証には,あえて収差をつけるような記載がないから,サンプルの所与の面からの散乱光が「スポットとしての焦点」に絞り込まれることが認められる。),② 前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズ(乙30発明の「顕微鏡対物レンズ」)が用いられ,③ 前記光検出器は電荷結合素子(乙30発明の「液体窒素冷却CCDカメラ」)であるH 分光分析装置。」他方で,以下の点で相違する。 【相違点1】「空間フィルタ」が,本件発明7では「第一の次元で共焦点作用をもたら」すための「スリットを備えた一次元空間フィルタ」である(構成要件F及びG-2①)のに対して,乙30発明では「共焦点検出を可能とするピンホール」である点。 【相違点2】サンプルの所与の面から散乱された光が光検出器上で合焦される領域が,本件発明7では「所与の領域」であって,「前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出さ れ,」,「前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されて」いる(構成要件D,G-1及びG-2)のに対し,乙30発明ではそのような構成になっていない点。 ウ副引例である乙18号証について検討するに,乙18号証は,本件特許権の優先日前である昭和63年6月3日に公開された公開特許公報(昭63-131115)であると認められる。 乙18号証には,共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡におけるピンホールの位置合わせが困難であるとの課題を解決するために,微小なピンホールに替わる位 3-131115)であると認められる。 乙18号証には,共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡におけるピンホールの位置合わせが困難であるとの課題を解決するために,微小なピンホールに替わる位置合わせの容易な機構を具備した共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡を提供することを目的とするものであって(2頁左上欄2~9行),互いに交叉する2個のスリットとレンズとを使用してピンホールの役割をする光学系を構成し(特許請求の範囲,2頁左上欄11~13行),スリットの位置調整は,一方向の動きだけで済むのでピンホールの位置調整よりも容易であり,2個のスリットを調整することで目的が達成されること(2頁左上欄13~16行)が記載されている。 そこで,乙30発明に乙18号証を組み合わせることができるかを検討するに,乙30発明は,共焦点ピンホールが用いられているものであるから,乙18号証と同様に,ピンホールの位置調整の困難さという課題が存在すると認められる。そして,乙30発明と乙18号証は,共焦点光学系の技術分野において一致するから,当該技術分野の当業者であれば,乙30発明において,ピンホールの位置調整の困難さという課題を認識できるといえるのであって,上記課題を解決するために,乙18号証を採用する動機付けはあったと認められる。 しかしながら,乙18号証は,互いに交叉する2個のスリットとレンズとを使用してピンホールの役割をする光学系を構成するものであるから,乙30発明に乙18号証を組み合わせた場合には,乙30発明のピンホー ルを,互いに交叉する2個のスリットとレンズに置換することが容易想到であったことは認められる。しかし,乙30発明にも乙18発明にも,光検出器の読取領域を制限することによって共焦点作用を生じさせることを課題とす 交叉する2個のスリットとレンズに置換することが容易想到であったことは認められる。しかし,乙30発明にも乙18発明にも,光検出器の読取領域を制限することによって共焦点作用を生じさせることを課題とする旨の記載はなく,光検出器の読取領域の制限によって第二の次元の共焦点作用を得ることの動機付けも示唆もなく,乙30発明と乙18発明を組み合わせることによって,光検出器の読取領域の制限によって第二の次元の共焦点作用を得ることまでもが容易想到であったとは認められない。 したがって,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったことは認められるが,相違点2に係る構成が当業者にとって容易想到であったとは認められない。 エこれに対し,被告は,乙30発明と乙18号証を組み合わせることにより得られる構成について,乙30発明の「ピンホール」を乙18号証の「スリット-レンズ-スリット」に置き換えるとすれば,「スリット-レンズ-スリット-レンズ(=レンズ+凹面鏡)-CCDカメラ」となるが,当業者はレンズを余分に設けることを考えないから,乙18号証の両スリット間のレンズの代わりに,乙30のレンズ(=レンズ+凹面鏡)を用いることとして,「スリット-レンズ(=レンズ+凹面鏡)-スリット-CCDカメラ」という構成を想到するなどと主張する。 しかしながら,乙18号証の両スリットの間に設けられたレンズは,ピンホールの役割をする光学系を構成するために必要なものであると解されるから,乙18号証の両スリットの間に設けられたレンズの代わりに,乙18号証の第1のスリットと第2のスリットとの間に乙30発明のレンズ(=レンズ+凹面鏡)を設けることが当業者にとって容易想到であったとは認められない。 したがって,被告の主張は理由がない。 第1のスリットと第2のスリットとの間に乙30発明のレンズ(=レンズ+凹面鏡)を設けることが当業者にとって容易想到であったとは認められない。 したがって,被告の主張は理由がない。 オ以上のとおり,乙30号証を主引例とする進歩性欠如は認められない。 (2) 乙31号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-2)についてア乙31号証(JOURNALOFRAMANSPECTROSCOPY, Vol.22 217-225(1991))は,本件特許権の優先日前の平成3年(1991年)4月ころ頒布された刊行物であることが認められる(乙32,33)。また,乙31号証と乙30号証の著作者は同じであり,乙31号証と乙30号証の記載内容はほぼ同じである。 乙31号証には,以下の発明(乙31発明)が記載されていると認められる。 「DCM色素レーザーからの波長660nmのレーザー光を,高倍率の対物レンズを用いて分析対象の物体に集光し,物体により散乱された光が同じ対物レンズにより集められ,共焦点検出を可能とするピンホールを通して,分光器に導入され,レーザーの焦点における強度の半値幅は0.5μmよりも小さく,前記分光器は,シェブロン型バンドパスフィルタセットと,ルールドグレーティングからなり,信号の検出には液体窒素冷却低速走査CCDカメラが用いられ,宇宙線事象検出の可能性を最小化するため,分光方向に対して垂直方向には,最小限のピクセルだけを使う共焦点ラマン顕微分光器。」イ本件発明7は,前提事実(5)アのとおりであるから,これを乙31発明と対比すると,本件発明7と乙30発明は,以下の点で一致する。 「A サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段(乙31発明の「D 提事実(5)アのとおりであるから,これを乙31発明と対比すると,本件発明7と乙30発明は,以下の点で一致する。 「A サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段(乙31発明の「DCM色素レーザーからの…同じ対物レンズにより集められ」)と,B 前記スペクトルを分析する手段(乙31発明の「分光器」)と,C 光検出器(乙31発明の「液体窒素冷却低速走査CCDカメラ」)と, D’前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ(本件発明7は,光検出器の「所与の領域」であるが,乙31発明とは光検出器に合焦させるという点では一致する。)前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段(乙31発明の「ピンホール」は共焦点検出を可能とするから,光検出器に合焦させない手段が存在することは自明である。)とE を具備する分光分析装置(乙31発明の「共焦点ラマン顕微分光器」)であって,F’前記光は空間フィルタ(乙31発明の「共焦点検出を可能とするピンホール」)を通過して共焦点作用をもたらし,G-2①’前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記空間フィルタにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記空間フィルタを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記空間フィルタにおいて焦点を結ばず(乙31発明の「ピンホール」は共焦点検出を可能とするから,サンプルの所与の面の焦点の前又は後で散乱される光は空間フィルタにおいて焦点を結ばないことは自明である。また,乙31号証には,あえて収差をつけるような記 「ピンホール」は共焦点検出を可能とするから,サンプルの所与の面の焦点の前又は後で散乱される光は空間フィルタにおいて焦点を結ばないことは自明である。また,乙31号証には,あえて収差をつけるような記載がないから,サンプルの所与の面からの散乱光が「スポットとしての焦点」に絞り込まれることが認められる。),② 前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズ(乙31発明の「対物レンズ」)が用いられ,③ 前記光検出器は電荷結合素子(乙31発明の「液体窒素冷却低速 走査CCDカメラ」)であるH 分光分析装置。」他方で,以下の点で相違する。 【相違点1】「空間フィルタ」が,本件発明7では「第一の次元で共焦点作用をもたら」すための「スリットを備えた一次元空間フィルタ」である(構成要件F及びG-2①)のに対して,乙31発明では「共焦点検出を可能とするピンホール」である点。 【相違点2】サンプルの所与の面から散乱された光が光検出器上で合焦される領域が,本件発明7では「所与の領域」であって,「前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され,」,「前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されて」いる(構成要件D,G-1及びG-2)のに対し,乙31発明ではそのような構成になっていない点。 ウ以上のとおり,本件発明7と乙31発明の相違点は,本件発明7と乙30発明の相違点と同じである。 そして,上記(1)ウと同様に,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったことは認められるが,相違点2に係る構成が当 発明の相違点は,本件発明7と乙30発明の相違点と同じである。 そして,上記(1)ウと同様に,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったことは認められるが,相違点2に係る構成が当業者にとって容易想到であったとは認められないし,上記(1)エと同様に,被告の主張は理由がない(ただし,「乙30発明」は「乙31発明」と読み替える。)。 エ被告は,乙31号証には,更なる改良の可能性としてピンホールを(1つの)スリットに置き換えることが記載されていることを挙げて,上記各相違点は,乙18号証に基づいて容易想到である旨主張する。しかしながら,乙31号証には,ピンホールをスリットに置き換えた形態ではライン 照明が用いられることが記載されており,ライン照明について記載のない乙18号証を組み合わせることの動機付けとはならないし,上記ウのとおり,乙18号証を組み合わせても,相違点2に係る構成が当業者にとって容易想到であったとは認められない。 また,被告は,乙31号証のCCDの読み取り幅が220μmであるとして,エアリーディスク径の10倍でも共焦点作用が生じるとの原告らの主張を前提とすると,第二の次元の共焦点作用が生じ得る幅といえる旨主張する。しかしながら,乙31号証のCCD上に形成されるエアリーディスク径は不明であるから,被告の主張は理由がない。 オ以上のとおり,乙31号証を主引例とする進歩性欠如は認められない。 (3) 乙18号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-3)についてア乙18号証は,本件特許権の優先日前である昭和63年6月3日に公開された公開特許公報(昭63-131115)であると認められる。 乙18号証には,以下の発明(乙18発明)が記載されていることが認 証は,本件特許権の優先日前である昭和63年6月3日に公開された公開特許公報(昭63-131115)であると認められる。 乙18号証には,以下の発明(乙18発明)が記載されていることが認められる。 「レーザと,該レーザにより出射されたレーザ光を収束させポイントソースとするための第1のレンズと,このレーザ光を再び収束し,試料をポイントソースの像面に置くための第2のレンズと,試料を透過したレーザ光を収束するための第3のレンズと,該第3のレンズによる試料4の像面に位置し移動可能とした第1のスリットと,該第1のスリットを通過したレーザ光を収束するための第4のレンズと,該第4のレンズによる上記第1のスリットの像面に位置し,上記第1のスリットの方向と交叉しかつ移動可能とした第2のスリットと,該第2のスリットを透過したレーザ光を検出する光検出器からなる共焦点タイプの走査レーザ顕微鏡。」イ本件発明7は,前提事実(5)アのとおりであるから,これを乙18発明と対比すると,本件発明7と乙18発明は,以下の点で一致する。 「A’サンプルに光を照射して散乱光を得る手段と(乙18発明の「レーザ」「第1のレンズ」「第2のレンズ」「サンプル」等),C 光検出器と(乙18発明の「光検出器6」),D’前記散乱光を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を所与の領域(乙18発明の「第2のスリット」上の領域)に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段と(乙18発明の「第3のレンズ」「第1のスリット」「第4のレンズ」「第2のスリット」)E’を具備する装置であって,F 前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一 乙18発明の「第3のレンズ」「第1のスリット」「第4のレンズ」「第2のスリット」)E’を具備する装置であって,F 前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし(乙18発明の「第1のスリット」),G-2前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成され(乙18発明の「第2のスリット」上の領域),① 前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリット(乙18発明の「第1のスリット」)においてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばない,H’光学装置。」他方,以下の点で相違する。 【相違点1】本件発明7が,スペクトルを分析する手段(構成要件B)を有する分光分析装置(構成要件E及びH)であって,得られた散乱光が散乱光のスペクトル(構成要件A)であり,光検出器に通される光が分析された スペクトルの少なくとも一つの成分である(構成要件D)のに対し,乙18発明は走査レーザ顕微鏡である点。 【相違点2】本件発明7は,「所与の領域」が光検出器の「所与の領域」であって(構成要件D及びG-1),光検出器の所与の領域外で受ける光が存在(構成要件G-1)して,光検出器の所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出されるのに対し,乙18発明は,「所与の領域」が第2のスリットの「所与の領域」であって,光検出器の所与の領域外で受ける光が存在しない点(本件発明7は,光 ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出されるのに対し,乙18発明は,「所与の領域」が第2のスリットの「所与の領域」であって,光検出器の所与の領域外で受ける光が存在しない点(本件発明7は,光検出器の所与の領域の読み出し制限によって第二の次元の共焦点作用を生じさせているのに対して,乙18発明は,第2のスリット82によって第二の次元の共焦点作用を生じさせている点)。 【相違点3】本件発明7は,前記サンプルに光を照射するのと前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられている(構成要件G-2②)のに対し,乙18発明は,そのような構成になっていない点。 【相違点4】本件発明の光検出器は電荷結合素子である(構成要件G-2③)のに対し,乙18発明の光検出器はそのような構成であるかが不明である点。 ウそこで,相違点について検討する。 (ア) 被告は,相違点1について,乙7,11号証をもって,レーザ顕微鏡において分光を行いスペクトルを分析することは周知であると主張する。 乙7号証は,「赤外・ラマン・振動[Ⅱ]と題する昭和58年8月31日発行の書籍である。同書中の「ラマンマイクロプローブ」と題する項目には,「マイクロアナリシスの最も伝統的なものは光学顕微鏡,電 子顕微鏡による形態観察である。1960年代に入ってこれに加えて元素分析を行うEPMA,SAM,SIMSが行われようになった。…市販の代表的なラマンマイクロプローブであり筆者らが現在使用しているMOLE(MolecularOpticalLaserExaminer)を例にして説明する。 …試料は光学顕微鏡の水平な試料台上に置き,白色光でスコープ上に投影される像(最高×100)を観察 るMOLE(MolecularOpticalLaserExaminer)を例にして説明する。 …試料は光学顕微鏡の水平な試料台上に置き,白色光でスコープ上に投影される像(最高×100)を観察し,分析箇所を中央の定位置へX-Y可動ステージを用いて移動し,レーザー光に切り替えて照射する。…ラマン散乱もこの対物レンズで180°の方向に集光され,ビームスプリッターを通して分光器に導かれる。…分光された光は普通は電子増倍管あるいは光子計数方式を用いて検出する。ルーチン的なμmオーダーの超微粒子のスペクトルのダイナミックレンジは10~104counts/secのオーダーである。」(133頁左欄~134頁右欄)との記載がある。これによれば,レーザ顕微鏡において分光分析をすることは周知技術であったことが認められる。もっとも,乙18発明は共焦点タイプのレーザ顕微鏡であるから,これに上記周知技術を組み合わせることが容易であったというためには,その共焦点機能を維持しつつ組み合わせることが容易でなければならない。しかしながら,乙7,11号証をみても,共焦点系であるとの明記がない(スリットが共焦点作用を有することが明らかではない。)から,共焦点機能を維持しながら,乙18号証に上記周知技術を組み合わせる態様は明らかではないというべきである。 そうすると,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったとは認められない。 仮に,乙18発明の共焦点機能を維持しながら,乙18発明に上記周知技術を組み合わせることを検討すると,第2のスリット82の後ろに分光手段を配置することが想定される。 しかしながら,このような態様を想定すると,被告の主張において,「所与の領域」を形成する第2のスリットの位置が光検出器から 82の後ろに分光手段を配置することが想定される。 しかしながら,このような態様を想定すると,被告の主張において,「所与の領域」を形成する第2のスリットの位置が光検出器から離れることになるから,第2のスリットによる第二の次元での共焦点作用を光検出器に代替させるという考え方が一層想定しづらくなり,相違点2に係る構成が容易想到であったとは認められないことになると解される。 (イ) また,相違点2については,乙18号証には,光検出器に共焦点作用をもたらすような制限された読取領域を設けることや,スリットを光検出器のかかる領域に置き換えることについては記載も示唆もないから,相違点2に係る構成が当業者にとって容易想到であったとは認められない。 これに対し,被告は,乙18号証の第1図,第2図では,光検出器上に,又は光検出器に非常に近接して,第2のスリットが描かれているから,スリットを光検出器の読取領域の制限に置き換えることを示す,又は少なくとも示唆するものである旨主張するが,それを裏付ける根拠は見当たらないから,被告の主張は理由がない。 (ウ) 相違点3については,共焦点光学系において,乙18発明のような透過型の光学系(2頁右上欄18~19行「試料4を透過したレーザ光」)と,乙30号証のような反射型の光学系とは適宜選択することができるといえるから,乙18号証を反射型の光学系として構成し,相違点3の構成にすることは当業者にとって容易想到であったと認められる。 また,相違点4については,乙30号証に照らせば,光学装置(走査レーザ顕微鏡)である乙18発明に光検出器としてCCDを用いることは,当業者にとって容易想到であったと認められる。 (エ) 以上のとおり,相違点3及び4に係 0号証に照らせば,光学装置(走査レーザ顕微鏡)である乙18発明に光検出器としてCCDを用いることは,当業者にとって容易想到であったと認められる。 (エ) 以上のとおり,相違点3及び4に係る構成は当業者にとって容易想到であったと認められるが,相違点1及び2に係る構成は当業者にとって容易想到であったとは認められないから,乙18号証を主引例とする 進歩性欠如は認められない。 (4) 乙7号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-4)についてア乙7号証(赤外・ラマン・振動[Ⅱ])は,上記(3)ウ(ア)のとおり,本件特許権の優先日前の昭和58年8月31日ころ頒布された刊行物であると認められる。 (ア) 乙7号証には,次の記載がある。 「試料は光学顕微鏡の水平な試料台上に置き,白色光でスコープ上に投影される像(最高×100)を観察し,分析箇所を中央の定位置へX-Y可動ステージを用いて移動し,レーザー光に切替えて照射する。同じ対物レンズを用いてレーザービームは1μm(×100)まで絞ることができる。ラマン散乱もこの対物レンズで180°の方向に集光され,ビームスプリッタを通して分光器に導かれる。」(134頁左欄9~16頁)136頁の図3(別紙乙7号証の図3参照)には,レーザー光が照射されたサンプルの左側に,横軸をv,縦軸をIとするラマン散乱スペクトルとみられるグラフが描かれている。 「図3にダイオード・マトリックスあるいはリニア・ダイオード・アレイを用いて,試料視野を少なくとも100×100の部分に分割した104個のユニットのスペクトルおよび位置の情報を比較的速い時間で得る方法を示した。」(135頁右欄13~17行)136頁の図3には,サンプルから くとも100×100の部分に分割した104個のユニットのスペクトルおよび位置の情報を比較的速い時間で得る方法を示した。」(135頁右欄13~17行)136頁の図3には,サンプルからのラマン散乱光が,スリット,回折格子を経て,ダイオードマトリックス又はリニアマトリックスに達することが記載されている。 136頁の図では,サンプルにレーザー光を照射するのと,サンプルからの散乱光を集光するのに同一のレンズが用いられている。 (イ) 以上によれば,乙7号証には,以下の発明(乙7発明)が記載され ていると認められる。 「サンプルにスポット光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,前記スペクトルを分析する手段と,ダイオードマトリックス又はリニアダイオードアレイからなる光検出器と,前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とを具備するラマンスペクトル測定装置であって,前記光はスリットを通過し,前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられる,ラマンスペクトル測定装置。」イ本件発明7は,前提事実(5)アのとおりであるから,これを乙7発明と対比すると,本件発明7と乙7発明は,以下の点で一致する。 「A サンプルにスポット光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,B 前記スペクトルを分析する手段と,C 光検出器と(乙7発明の「ダイオードマトリックス又はリニアダイオードアレイからなる光検出器」),D’前記分析されたスペクトル B 前記スペクトルを分析する手段と,C 光検出器と(乙7発明の「ダイオードマトリックス又はリニアダイオードアレイからなる光検出器」),D’前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段とE を具備する分光分析装置(乙7発明の「ラマンスペクトル測定装置」)であって,F’前記光はスリットを通過し,G-2② 前記サンプルに光を照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられる, H 分光分析装置(乙7発明の「ラマンスペクトル測定装置」)。」他方で,以下の点で相違する。 【相違点1】本件発明7においては,前記光はスリットを備えた一次元空間フィルタを通過して第一の次元で共焦点作用をもたらし(構成要件F),前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばない(構成要件G-2①)のに対し,乙7発明では,前記光はスリットを通過しているにすぎない点。 【相違点2】本件発明7においては,前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され(構成要件G-1),前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されており(構成要件G-2),前記光検出器の「所 る光を含まずに,またはこの光と分離して検出され(構成要件G-1),前記所与の領域は前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されており(構成要件G-2),前記光検出器の「所与の領域」に所与の面から散乱された光を合焦させている(構成要件D)のに対し,乙7発明では,そのように構成されていない点。 【相違点3】本件発明7においては,前記光検出器は電荷結合素子である(構成要件)のに対し,乙7発明では,ダイオードマトリックス又はリニアダイオードアレイからなる光検出器である点。 ウそこで,相違点について検討する。 (ア) 被告は,相違点1について,乙7号証に記載されているとして一致点である旨主張するが,乙7号証には,乙7発明におけるスリットが共焦点作用と関連付けて記載されている箇所は存在しないから,当該スリ ットが第一の次元の共焦点作用をもたらすものとは認められない。 また,乙7号証137頁右欄13~15行には,「モノチャンネルモードの場合スリットもアパーチャーと同じ役割をするが,この場合は分解能に異方性を生じてしまう。」との記載があるが,乙7発明のスリットは,マルチチャンネルモード(特定の波長の光だけを取り出す用途には使用できない)で用いられており(図3,4の表題において「マルチチャンネル検出器」とされている。),当該スリットへの適用可能性を肯定した記載であるとはいえない。 したがって,乙7号証に相違点1に係る構成が記載されているとは認められないし,また,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったことを認めるに足りる証拠もない。 (イ) また,相違点2については,上記(ア)のとおり,乙7発明におけるスリットが第一の次元の共焦点 た,相違点1に係る構成が当業者にとって容易想到であったことを認めるに足りる証拠もない。 (イ) また,相違点2については,上記(ア)のとおり,乙7発明におけるスリットが第一の次元の共焦点作用をもたらすものとは認められないから,第二の次元の共焦点作用が不足しているとの課題を当業者が認識できたとはいい難い。そうすると,乙8~10号証によって,従来のピンホールを光検出器に置き換えることによって同様な共焦点作用を生じさせることができるという周知技術が認められても,これを乙7発明に適用する動機付けがあるとは認められない。 そうすると,相違点2に係る構成が当業者にとって容易想到であったとは認められない。 (ウ) 他方で,相違点3については,乙30号証には,検出器は電荷結合素子である分光分析装置(乙30発明)が開示されており,これを分光分析装置である乙7発明に組み合わせることは当業者にとって容易想到であったと認められる。 (エ) 以上のとおり,相違点3に係る構成は当業者にとって容易想到であったと認められるが,相違点1及び2に係る構成は当業者にとって容易 想到であったとは認められないから,乙7号証を主引例とする進歩性欠如は認められない。 (5) 乙16号証を主引例とする進歩性欠如の有無(争点4-5)についてア乙16号証(高感度ラマン分光法の最近の動向と半導体超薄膜への応用)は,本件特許権の優先日前である平成2年に発行された論文であると認められる(乙17)。 乙16号証には,図1記載の高感度ラマン分光光学系を用いて,Ar+レーザの515nm線による励起で,シリコン(100)ウェーハの520cm-1付近のピークの測定を行った例(図2)が記載されている。これを乙16発明として 載の高感度ラマン分光光学系を用いて,Ar+レーザの515nm線による励起で,シリコン(100)ウェーハの520cm-1付近のピークの測定を行った例(図2)が記載されている。これを乙16発明として特定すると,乙16発明は,以下のとおりであると認められる。 「a 試料にAr+レーザの515nm線のスポット光(図2で検出光がスポット状になっていることから明らかである。)を照射して散乱光を得る手段(図1,6頁23行,6頁下から7行)と,b 前記散乱光を分光するトリプル・ポリクロメータ分光器を含む分光光学系(図1,5頁下から14~13行)と,c 25μm角の各ピクセルを有するPS-PMT(5頁下から7~5行,6頁1行,6頁下から6行)と,d 前記分光されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記PS-PMTに通し(図1,図2,5頁8~9行),前記試料からの散乱光を前記PS-PMTに合焦させる手段と(5頁1行の「Y方向での像の広がりを抑える」の記載からPS-PMT上で散乱光の像が形成されていることが前提となっていることや,図2では微小スポット光になっていることから,合焦関係が認められる。),e を具備する超高感度ラマン分光装置(図1のタイトル)であって,f 試料からの散乱光は100μm(検出器位置では125μmに相当) の幅の入射スリットを通過し(6頁下から2行~1行),前記PS-PMTのY方向への信号の広がりが3~4ピクセルすなわち100μm以下であって(6頁下から3~2行),g-1前記PS-PMTのY方向の5ピクセルの領域で受ける光が,前記領域外で受ける光と分離して検出され(6頁末行~7頁2行,図2の説明文),g-2 g-1前記PS-PMTのY方向の5ピクセルの領域で受ける光が,前記領域外で受ける光と分離して検出され(6頁末行~7頁2行,図2の説明文),g-2前記PS-PMTの前記領域が前記入射スリットを横切る方向に延在しており(4頁19行,図2)① 前記試料に照射されたスポット光からの散乱光は,前記入射スリットにおいて,入射スリットの手前に導入されたシリンドリカル・レンズの光学系を介して入射スリットの幅方向において焦点に絞り込まれて前記入射スリットを通過するものであって,前記シリンドリカル・レンズの光学系の働きにより,回折格子(グレーティング)を使用した分光器で使われている球面鏡のような反射型光学素子により生じる,前記PS-PMT上での非点収差の補正が行われるものであり(図1,4頁10~12行,6頁3~9行),② 前記試料からの散乱光を集光するレンズは,前記試料にスポット光を照射するのに用いられておらず(図1),③ 前記PS-PMTが光検出器として用いられている,h 超高感度ラマン分光装置。」イ本件発明7と乙16発明とを対比すると,乙16発明の「試料」は本件発明7の「サンプル」に相当し,以下同様に,「スポット光」は「光」に,「散乱光」は「散乱光のスペクトル」に,「前記散乱光を分光する…分光光学系」は「前記スペクトルを分析する手段」に,「25μm角の…PS -PMT」は「光検出器」に,「超高感度ラマン分光装置」は「分光分析装置」に,「入射スリット」は「スリット」にそれぞれ相当する。 乙16発明のd,f及びg-1に照らすと,乙16発明は,前記試料からの散乱光を前記PS-PMTのY方向の5ピクセルの領域に合焦させている 入射スリット」は「スリット」にそれぞれ相当する。 乙16発明のd,f及びg-1に照らすと,乙16発明は,前記試料からの散乱光を前記PS-PMTのY方向の5ピクセルの領域に合焦させているから,構成要件Dの「前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ」とは,「前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所定の領域に合焦させ」ている点で一致し,構成要件G-1の「前記光検出器の前記所与の領域で受ける光が,前記所与の領域外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され」とは,「前記光検出器の前記所定の領域で受ける光が,前記所定の領域外で受ける光と分離して検出され」る点で一致する(ここでは「所与の領域」と「所定の領域」は区別して用いている。以下同じ。)。 そうすると,本件発明7と乙16発明は,以下の点で一致する。 「A サンプルに光を照射して散乱光のスペクトルを得る手段と,B 前記スペクトルを分析する手段と,C 光検出器と,D’前記分析されたスペクトルの少なくとも一つの成分を前記光検出器に通し,前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所定の領域に合焦させる手段とE を具備する分光分析装置であって,F’前記光はスリットを通過し,G-1’前記光検出器の前記所定の領域で受ける光が,前記所定の領域外で受ける光と分離して検出される,H 分光分析装置。」他方で,以下の点で相違する。 【相違点1】構成要件Dについて,上記のD’の手段が,本件発明7では「前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手 方で,以下の点で相違する。 【相違点1】構成要件Dについて,上記のD’の手段が,本件発明7では「前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段」でもあるのに対し,乙16発明ではその旨の明記がない点。 【相違点2】構成要件Fについて,上記のF’のスリットが,本件発明7では一次元空間フィルタであって,第一の次元で共焦点作用をもたらすのに対し,乙16発明ではそうであるのか不明である点。 【相違点3】構成要件G-1及びG-2について,本件発明7では,「所定の領域」が前記第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成され,それによって「所与の領域」と評価されているのに対し,乙16発明ではその旨の明記がない点。 【相違点4】構成要件G-2①について,本件発明7では,前記サンプルの前記所与の面の焦点からの散乱光は,前記スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて前記スリットを通過し,前記サンプルの前記所与の面の前記焦点の前または後で散乱される光は,前記スリットにおいて焦点を結ばないのに対し,乙16発明ではそのような構成であるかが不明である点。 【相違点5】構成要件G-2②について,本件発明7では,前記サンプルに照射するのと,前記サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズが用いられているのに対し,乙16発明ではそのような構成ではない点。 【相違点6】構成要件G-2③について,本件発明7では光検出器が電荷結合素子であるのに対し,乙16発明ではPS-PMTである点。 ウそこで,相違点について検討する。 (ア) 相違点1について ついて,本件発明7では光検出器が電荷結合素子であるのに対し,乙16発明ではPS-PMTである点。 ウそこで,相違点について検討する。 (ア) 相違点1について原告らは,乙16発明は共焦点作用に関するものではなく,乙16号証にはサンプルの他の面から散乱された光についての記載はないなどと主張する。 しかしながら,乙16号証1頁11~12行(表題行を含めて算出)には,「固体・液体・気体など形状や大きさを問わない。」と記載されているから,厚さのある試料(「他の面」が観念できる試料)をも測定対象としていることが明らかである。 また,本件発明7においても,サンプルとして超薄膜を用いた場合は,上記のD’の手段が「前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段」であるとはいえなくなるから,相違点1は,分光分析装置の構成としての相違ではなく,分光分析装置に用いられるサンプルによって生じる相違であるにすぎない。 したがって,相違点1は,実質的な相違点ではない。 (イ) 相違点2について前記2(1)のとおり,エアリーディスク径(直径)d=(1.22×λ/NA物体側)×M(λ:波長,NA:開口数,M:対物レンズの倍率)である。 乙16号証7頁8行以下には,サンプルからスリットまでの倍率Mは100倍であることが記載されているから,Ar+レーザの515nm線のスリット上でのエアリーディスク径の最小値dminは,以下のとおり,63μmである(NA物体側は空気中では1を超えない。)。 dmin=(1.22×λ/NA物体側〔最大値〕)×M=(1.22×0.515/1)×100 3μmである(NA物体側は空気中では1を超えない。)。 dmin=(1.22×λ/NA物体側〔最大値〕)×M=(1.22×0.515/1)×100=63[μm] また,ラマン散乱光(ストーク散乱光)の波長は光源光の波長よりも長いから(弁論の全趣旨。被告第8準備書面4頁),ラマン散乱光によって形成されるスリット上でのエアリーディスク径の最小値はdminよりも大きくなる。他方,乙16発明のスリット幅は100μmであるから,スリット幅とラマン散乱光によってスリット上で形成されるエアリーディスク径との比は1.59(100/63)よりも大きくなることはない。 そして,前記2(1)に照らすと,スリット幅がエアリーディスクの大きさの2.5倍までの場合は共焦点作用を有すると認められる。そうすると,乙16発明の「スリット」は第一の次元での共焦点作用をもたらすものと認められるから,相違点2は実質的な相違点ではない。 原告らは,λ=0.515は光源の波長であるから,上記計算式のうちの(1.22λ/NA)は,別紙原告参考図10-1及び2のAD1を求めたものであり,また,倍率Mはサンプルからスリットまでの倍率であるから,上記計算式の(1.22λ/NA)×Mは,スリット上のエアリーディスク径AD2ではなく,明るい領域2の大きさを求めたものであると主張する。 確かに,上記計算式は光源の波長から算出しているものであるが,算出の目的はエアリーディスクの最小値を求めるものであり,ラマン散乱光の波長が光源光の波長よりも長い以上,光源光の波長により算出する値がラマン散乱光の波長により算出した値よりも大きいということはなく,最小値を求めるという目的は 最小値を求めるものであり,ラマン散乱光の波長が光源光の波長よりも長い以上,光源光の波長により算出する値がラマン散乱光の波長により算出した値よりも大きいということはなく,最小値を求めるという目的は達することができる。 また,倍率Mは乙16号証に開示された数値に基づいて100としたものである。原告らは,(1.22λ/NA)×Mは明るい領域2の大きさを求めたものであると主張する。しかし,前記2(1)のとおり,レンズの物体側の開口数NA物体側と像側の開口数NA像側との間には,N A物体側=NA像側×Mの関係があることに照らせば,(1.22λ/NA)×MによりAD2を求めることができるから,原告らの主張は採用できない。 (ウ) 相違点3について乙16発明において,入射スリットの位置から検出器の位置までの倍率は1.2倍であるから(弁論の全趣旨。被告第5準備書面9,10頁),Ar+レーザの515nm線の検出器上でのエアリーディスク径の最小値dminは63μm×1.2=76μmである。 また,前記(イ)のとおり,ラマン散乱光(ストーク散乱光)の波長は光源光の波長よりも長いから,ラマン散乱光によって形成される検出器上でのエアリーディスク径の最小値はdminよりも大きくなる。他方,乙16発明の読み取り幅は25μm×5ピクセル=125μmであるから,読み取り幅とラマン散乱光によって検出器上で形成されるエアリーディスク径との比は1.64(125/76)よりも大きくなることはない。 そして,前記2(1)に照らすと,光検出器の読み取り幅がエアリーディスクの大きさの2.5倍までの場合は共焦点作用を有すると認められる。 そうすると,乙16発明は,第二の次元での共焦点作用を有し 前記2(1)に照らすと,光検出器の読み取り幅がエアリーディスクの大きさの2.5倍までの場合は共焦点作用を有すると認められる。 そうすると,乙16発明は,第二の次元での共焦点作用を有していると認められる。 そして,PS-PMTのY方向の5ピクセルの領域は入射スリットを横切る方向に延在しているから(上記アの乙16発明の認定参照),乙16発明の「所与の領域」は「第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されて」いると認められる。 そうすると,相違点3は実質的な相違点ではない。 以上のとおり,相違点1~3は実質的相違点ではないのであって,実 質的な相違点として検討されるべきは,以下の相違点4~6である。 (エ) 相違点4について乙16発明では,前記試料に照射されたスポット光からの散乱光は,前記入射スリットにおいて,入射スリットの手前に導入されたシリンドリカル・レンズの光学系を介して入射スリットの幅方向において焦点に絞り込まれて前記入射スリットを通過するものである。これは,回折格子(グレーティング)を使用した分光器で使われている球面鏡のような反射型光学素子により生じる前記PS-PMT上での非点収差を,シリンドリカル・レンズにより補正するものである(上記アの乙16発明の認定を参照)。すなわち,「シリンドリカル・レンズ」の光学系によって,入射スリットにおいて,あえて非点収差を与え,この非点収差によって分光器により生じる非点収差を解消するものであると解される。 このように,入射スリットの手前にシリンドリカル・レンズが存在する限りは,それによって非点収差が与えられることにより,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光がスリットにおいてスポ れる。 このように,入射スリットの手前にシリンドリカル・レンズが存在する限りは,それによって非点収差が与えられることにより,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光がスリットにおいてスポットとして焦点に絞り込まれることにはならないものと考えられる。 しかし,乙31号証には,「凹面鏡で光軸外に集光されることにより生じる非点収差を補正するために,CCDカメラの前に円柱レンズ(図1に図示されない)が用いられた。」(訳文2頁7~9行)と記載されている(「円柱レンズ」はcylindricallensの訳)。そして,乙16発明において設けられた「シリンドリカル・レンズ」は,球面鏡のような反射型光学素子により発生する非点収差の補正を行うものであるから,乙31号証の「円柱レンズ」は,乙16発明の「シリンドリカル・レンズ」と機能が同一であると認められる。 そうすると,乙16発明の「シリンドリカル・レンズ」の位置を,乙31号証のように単に光検出器の前に移動させることは当業者にとって 設計的事項というべきものであり,そのように構成したことによる格別の効果も存在しない。 そして,「シリンドリカル・レンズ」の位置を乙31号証のように光検出器の前に移動させることによって,乙16発明において,サンプルの所与の面の焦点からの散乱光は,入射スリットにおいてスポットとしての焦点に絞り込まれて入射スリットを通過し,サンプルの所与の面の焦点の前または後で散乱される光は,入射スリットにおいて焦点を結ばないことになる。 なお,シリンドリカル・レンズが光検出器の前に置かれ,そこで非点収差が与えられるとしても,これはそれによって分光器によって生じた非点収差を解消するためのものであるから,「前記サンプルの所 なお,シリンドリカル・レンズが光検出器の前に置かれ,そこで非点収差が与えられるとしても,これはそれによって分光器によって生じた非点収差を解消するためのものであるから,「前記サンプルの所与の面から散乱された光を前記光検出器の所与の領域に合焦させ前記サンプルの他の面から散乱された光を前記光検出器に合焦させない手段」という構成要件Dの構成が阻害されるものではない。 したがって,相違点4に係る構成は,当業者にとって容易想到であったと認められる。 (オ) 相違点5について乙30,31号証によれば,ラマン分光装置において,サンプルに光を照射するのと,サンプルからの散乱光を集光するのとに同一のレンズを用いることは,周知技術であったと認められるから,相違点5に係る構成は当業者にとって容易想到であったと認められる。 これに対し,原告らは,乙16発明は,極限的な微弱光の高感度ラマン分光を実現するための装置であり,試料にレーザを照射するのと,当該試料からの散乱光を集光するのとに同一のレンズを用いるようにしたとすると,散乱光がミラーによってある程度ブロックされることになるなどとして,構成要件G-2②の構成は容易想到ではない旨主張する。 しかしながら,ラマン分光装置は,乙16発明に限らず,一般に微弱光を対象としているが,乙30,31号証において,ミラーを用いた構成は採用されていないから,ミラーが極限的な微弱光の高感度ラマン分光を実現するために必須の構成であるとはいえない。原告らの主張は,乙16号証の図1に記載があるミラーを前提とするが,上記のとおり,ラマン分光装置においてミラーが必須の構成ではないから,当該主張は採用できない。 (カ) 相違点6について 張は,乙16号証の図1に記載があるミラーを前提とするが,上記のとおり,ラマン分光装置においてミラーが必須の構成ではないから,当該主張は採用できない。 (カ) 相違点6について乙16発明では,光検出器としてPS-PMT検出器が用いられているが,これは,CCDのようなアナログ検出器とは異なり,PS-PMTがデジタル検出器であり,宇宙線ノイズが入ったとしても,そのエネルギーに比例した応答がされるわけではなく,1カウントと数えられるだけであるため,超微弱信号の検出の目的に沿っているからである(乙16・3頁下から9行~4頁6行)。 回折格子(グレーティング)を使用した分光器では反射型光学素子を使わざるを得ないので非点収差が発生し,二次元検出器上でY方向への像の広がりが大きくなってしまうので,Y方向に信号を積算して(ビンニング),X方向の一次元検出器に変換して使用する。乙16発明では,ビンニングによりノイズを大量に取り込んでしまうと感度が低下するという問題が発生するために,非点収差を補正して,ビンニングされる素子の数をできるだけ減らすことによりノイズの取り込みを抑えるものである(乙16・4頁10行~5頁2行)。ビンニングされる素子の数をできるだけ減らすことによりノイズの取り込みを抑えるという効果は,「PS-PMT検出器の場合により顕著である。」(乙16・4頁下から4~3行)とされているが,CCDの場合にこの効果が生じないとされているわけではない。 そして,乙16号証には,量子効率の絶対値や赤外域の感度などを重んじるならばCCD検出器の方が優れているなど,目的によって選択は異なってくることが記載されている(4頁6~8行)。 以上に照らすと,乙16発明において,PS-P や赤外域の感度などを重んじるならばCCD検出器の方が優れているなど,目的によって選択は異なってくることが記載されている(4頁6~8行)。 以上に照らすと,乙16発明において,PS-PMTに代えて,CCD検出器を採用することは当業者にとって容易に想到できることであったと認められる。 これに対し,原告らは,超微弱信号の検出以外の目的でCCD検出器を用いることがあるとしても,かかる目的の場合は乙16発明を用いる必要はないから,乙16発明においてCCD検出器を用いる動機付けはないなどと主張する。しかしながら,PS-PMTを用いた乙16発明が超微弱信号の検出で有利であるとしても,上記のとおりCCD検出器の方が優れている部分もあるのであるから,他の目的のために,検出器をCCDに置換することが考えられるのであって,原告らの主張は採用できない。 (キ) 以上のとおり,相違点1~3は実質的な相違点ではなく,相違点4~6に係る構成は当業者にとって容易想到であったと認められるから,本件発明7は進歩性が欠如する。 (6) 明確性要件違反の有無(争点4-6)について被告は,本件発明7(請求項7)の「所与の領域」(構成要件D,G-1及びG-2)について,不明確である旨主張する。 しかしながら,「所与の領域」とは,サンプルの所与の面から散乱された光が合焦される領域であり(構成要件D),当該「所与の領域」で受ける光が,「所与の領域」外で受ける光を含まずに,またはこの光と分離して検出され(構成要件G-1),かつ,「所与の領域」は,第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている(構成要件G-2)ものと解される。 以上のとおり,「所与の領域」について,不明確な点は 「所与の領域」は,第一の次元を横切る第二の次元で共焦点作用をもたらすように形成されている(構成要件G-2)ものと解される。 以上のとおり,「所与の領域」について,不明確な点は存在しないから,被告の主張は理由がない。 (7) 小括本件発明7は,乙16号証に基づいて,進歩性が欠如するから,本件発明7に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。 5 本件発明8~10及び13に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点5)について(1) 進歩性欠如についてア被告は,本件発明8~10及び13の構成は格別の技術的意義を有さない,単なる設計事項の構成であるとして,本件発明7の進歩性に関する主引用発明である乙30発明,乙31発明,乙18発明,乙7発明に,これらの限定を付加することは,当業者が容易に想到し得るものであったと主張する。 しかしながら,前記4のとおり,本件発明7について,乙30号証,乙31号証,乙18号証又は乙7号証を主引例とする進歩性欠如は認められないから,被告の主張は理由がない。 イそこで,乙16号証を主引例とする進歩性欠如について検討する。 (ア) 本件発明8について乙16発明におけるPS-PMTのY方向の5ピクセルの領域は細長いことが明らかであるから,乙16号証には構成要件Iが開示されていると認められる。 そして,前記4(5)のとおり,本件発明7は,乙16号証に基づいて,容易想到であったと認められるから,構成要件Jも同様である。 そうすると,本件発明8は,乙16号証に基づいて,容易想到であったから,進歩性が欠如する。 (イ) 本件発明9について, められるから,構成要件Jも同様である。 そうすると,本件発明8は,乙16号証に基づいて,容易想到であったから,進歩性が欠如する。 (イ) 本件発明9について, 乙16号証4頁18~20行では,スリットの長さ方向がY方向とされるとともに,光の分散方向(=回折方向)がX方向とされることが記載されており,このX方向が,PS-PMTのY方向の5ピクセルの細長い領域の長手方向であることが明らかであるから,乙16号証には構成要件Kが開示されていると認められる。 そして,前記4(5)及び上記(ア)のとおり,本件発明7及び8は,乙16号証に基づいて,容易想到であったと認められるから,構成要件Lも同様である。 そうすると,本件発明9は,乙16号証に基づいて,容易想到であったから,進歩性が欠如する。 (ウ) 本件発明10について乙16発明におけるPS-PMTはピクセルのアレイを備えたものであることが明らかであるから,乙16号証には構成要件Mが開示されていると認められる。 そして,前記4(5),上記(ア)及び(イ)のとおり,本件発明7~9は,乙16号証に基づいて,容易想到であったと認められるから,構成要件Nも同様である。 そうすると,本件発明10は,乙16号証に基づいて,容易想到であったから,進歩性が欠如する。 (エ) 本件発明13について乙16発明は超高感度ラマン分光装置に係るものであるから,乙16号証には構成要件Oが開示されていると認められる。 そして,前記4(5)及び上記(ア)~(ウ)のとおり,本件発明7~10は,乙16号証に基づいて,容易想到であったと認められるから,構成要件Pも同様であ Oが開示されていると認められる。 そして,前記4(5)及び上記(ア)~(ウ)のとおり,本件発明7~10は,乙16号証に基づいて,容易想到であったと認められるから,構成要件Pも同様である(本件発明13のうち請求項11及び12を引用する部分は,原告が請求項11,12に基づく請求をしていない以上,判 断の対象とならないものである。)。 そうすると,本件発明13は,乙16号証に基づいて,容易想到であったから,進歩性が欠如する。 (2) 明確性要件違反について被告は,本件発明7と同様に,「所与の領域」は,本件明細書の記載及び出願当時の当業者の技術常識を参酌しても,不明確であるといわざるを得ないと主張するが,前記4(6)のとおり,「所与の領域」について,不明確な点は存在しないから,被告の主張は理由がない。 (3) 小括本件発明8~10及び13は,乙16号証に基づいて,進歩性が欠如するから,本件発明8~10及び13に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。 6 まとめ以上のとおり,被告製品(ライン照明モード)は,本件発明の技術的範囲に属さず,被告製品(スポット照明モード)は,本件設定の場合において,本件発明の技術的範囲に属するが,本件発明に係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告らの請求はいずれも理由がない。 7 結論よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官西村康夫

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