令和5(わ)1567 建造物侵入、強盗致傷、詐欺、窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年7月23日 千葉地方裁判所
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判決文本文3,955 文字)

令和5年(わ)第1567号等建造物侵入、強盗致傷、詐欺、窃盗被告事件令和7年7月23日千葉地方裁判所刑事第1部宣告 主文 被告人を懲役10年に処する。 未決勾留日数中400日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1(令和6年5月29日付け起訴状記載の公訴事実。以下「群馬事件」ともいう。)被告人は、共犯者A及び氏名不詳者らと共謀の上、 1 市役所職員等になりすましてキャッシュカードをだまし取ろうと考え、令和5年5月10日、市役所職員になりすました氏名不詳者が、群馬県藤岡市(住所省略)B方に電話をかけ、同人の妻C(当時80歳)に対し、保険金の戻りがあるので、キャッシュカードを信用金庫職員に預けてほしい旨うそを言い、さらに、同日、被告人が、信用金庫職員になりすましてB方を訪れ、Cをして、 電話の相手方が市役所職員であり、被告人が信用金庫職員としてキャッシュカードを預かるものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Cから同人名義のキャッシュカード1枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、 2 Cが前記のとおり誤信しているのに乗じて、同人から更にキャッシュカードをだまし取ろうと考え、同日、信用金庫職員になりすました氏名不詳者が、B 方に電話をかけ、Cに対し、他の金融機関のキャッシュカードも信用金庫職員に預けてほしい旨うそを言い、さらに、同日、被告人が、信用金庫職員になりすましてB方を訪れ、Cをして、電話の相手方が信用金庫職員であり、被告人が信用金庫職員としてキャッシュカードを預かるものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Cから同人名義のキャッシュカード1枚及びB名義のキ ャッシュカード 手方が信用金庫職員であり、被告人が信用金庫職員としてキャッシュカードを預かるものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Cから同人名義のキャッシュカード1枚及びB名義のキ ャッシュカード2枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、 3 前記第1の1及び第1の2記載の犯行によりだまし取ったキャッシュカードを使用して現金を窃取しようと考え、別表記載のとおり、同日午後1時35分頃から同日午後2時17分頃までの間、9回にわたり、同市(住所省略)a店ほか2か所において、同所に設置された現金自動預払機にC名義のb銀行のキャッシュカード1枚ほか3枚をそれぞれ挿入して各機を作動させ、株式会社c 銀行コンビニエーティーエム支店支店長Dほか1名管理の現金合計186万3000円を引き出して窃取した。 第2(令和6年2月7日付け起訴状記載の公訴事実。以下「山形事件」ともいう。)被告人は、共犯者A及び氏名不詳者らと共謀の上、市役所職員等になりすましてキャッシュカードをだまし取った上、そのキャッシュカードを使用して現金を盗も うと考え、 1 令和5年5月15日、市役所職員等になりすました氏名不詳者が、山形県酒田市(住所省略)E方に電話をかけ、同人(当時82歳)に対し、キャッシュカードを新しいものに取り替える必要があるため、E方を訪問する農協職員に古いキャッシュカードを渡してほしい旨うそを言い、さらに、同日、被告人が、 E方において、農協職員になりすまし、Eを、電話の相手方が市役所職員等であり、被告人が農協職員としてキャッシュカードを受け取るものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Eからd農業協同組合g支店に開設された同人名義の普通貯金口座に係るキャッシュカード1枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ ュカードを受け取るものと誤信させ、よって、その頃、同所において、Eからd農業協同組合g支店に開設された同人名義の普通貯金口座に係るキャッシュカード1枚の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させ、 2 同日午前10時54分頃、同市(住所省略)e店において、同所に設置された現金自動預払機に、前記第2の1のとおりだまし取った前記キャッシュカードを挿入して同機を作動させ、株式会社h銀行金融犯罪対策部長F管理の現金40万6000円を引き出して盗んだ。 第3(訴因変更後の令和5年10月13日付け起訴状記載の公訴事実。以下「千葉 事件」ともいう。) 被告人は、氏名不詳者らほか1名と共謀の上、金品強取の目的で、令和5年9月7日午後6時18分頃、千葉県習志野市(住所省略)所在の有限会社f質店店長Gが看守する同店店舗に、正面出入口から侵入し、その頃、同所において、同人(当時41歳)及び同店従業員H(当時50歳)に対し、持っていた包丁を突き付け、持っていたハンマーを振り下ろすなどの暴行脅迫を加え、同人らの反抗を抑圧した 上、G管理の腕時計等合計88点(販売価格合計3934万9900円)を強取し、その際、前記包丁の刃をHの手に接触させ、同人に全治まで約2週間を要する左母指・右中指・右母指切創の傷害を負わせた。 (補足説明)被告人は、群馬事件及び山形事件について、記憶がないと供述している。しかし、 群馬事件について、判示B方の玄関チャイムから採取した付着物から、被告人に由来すると考えて矛盾のないDNA型が検出されたことやその出現頻度、山形事件について、判示E方の玄関ドア内側から被告人の右手掌紋が採取されたこと、両事件について、各現金自動預払機から現金を引き出した人物の容姿がいずれも被告人と酷似していること、両事件 の出現頻度、山形事件について、判示E方の玄関ドア内側から被告人の右手掌紋が採取されたこと、両事件について、各現金自動預払機から現金を引き出した人物の容姿がいずれも被告人と酷似していること、両事件において運転手役を果たした証人共犯者Aが、両事件の 受取役兼引出役は被告人に間違いない旨証言したことを総合すれば、被告人が両事件の受取役兼引出役を果たした事実は、合理的疑いを超えて認定できる。 (量刑の理由)本件は、被告人が、報酬欲しさから、高齢者2名に対する特殊詐欺事件に受取役兼引出役として関与し(群馬事件及び山形事件)、更に高額な報酬を得ることを期待 して、自らSNSで「裏バイト」の求人募集に応募し、氏名不詳者らが計画した質店強盗に実行役として関与し、その際、店員に傷害を負わせた(千葉事件)という事案である。 量刑の中心となる千葉事件について見ると、本件は、指示役である氏名不詳者らが、高額商品が陳列されている質店を狙い、事前に犯行場所の下見を行った上、実 行役(包丁で店員等を脅して追い払う役と、ハンマーで陳列棚のガラスを割る役)、 運転手役、被害品の回収役など細かく役割分担をし、入念に計画した組織的犯行であったと認められる。被告人は包丁役として、店員に包丁を至近距離で執拗に突き付けるなどし、その際、包丁を店員の手指に接触させて全治まで約2週間の傷害を負わせた。本件傷害は、被告人が意図的に負わせたとは認められないものの、このような傷害を負わせることが十分にあり得る粗暴かつ危険な犯行態様であった。本 件被害品は販売価格合計約3934万円と非常に高額である上、被害者らが受けた精神的苦痛も見過ごせない。なお、本件では、被害品の一部が買取店から被害店舗に返還されているが、被告人自身が被害店舗に慰謝の措置を講じ 販売価格合計約3934万円と非常に高額である上、被害者らが受けた精神的苦痛も見過ごせない。なお、本件では、被害品の一部が買取店から被害店舗に返還されているが、被告人自身が被害店舗に慰謝の措置を講じたものではなく、この点を被告人に有利な事情とみることにも限度がある。被告人は、犯行の実行中も含め、終始指示役の指示に従う立場にあり、最終的に指示役に使い捨てられたと 認められるが、本件犯行に不可欠な役割を担った。 群馬事件及び山形事件について見ると、いずれも高齢者を標的にした組織的、計画的な犯行であり、被害額も両事件合わせて約220万円と高額で、各被害者に対する慰謝の措置は講じられていない。 加えて、被告人は、令和2年12月に詐欺罪等により懲役2年、執行猶予3年の 判決を受けており、執行猶予中であったにもかかわらず、報酬を得るために群馬事件及び山形事件に関与し、より高額な報酬を得るために積極的に千葉事件に及んでいる。金欲しさという動機に酌むべき事情は認められず、犯罪が悪質化している経過に鑑みても、被告人の規範意識の鈍麻は著しく、強い責任非難に値する。 以上の犯情を踏まえれば、被告人の責任は相応に重い。 他方で、このように被告人が金欲しさから躊躇なく安易に犯罪を繰り返した背景には、被告人の特性、すなわち、軽度知的障害を有し、注意集中が不得手で物事に直感的に飛びつきやすいなどといった点が、多少なりとも影響を与えた可能性は否定できない。さらに、被告人が、公判廷において反省の言葉を述べ、被害者への謝罪の意思を示すとともに、今後は自らの特性とも向き合っていきたい旨述べ、公判 を経て被告人に更生意欲が認められたという事情も考慮して、同種事件の量刑傾向を参考にした上で、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 主文 らの特性とも向き合っていきたい旨述べ、公判を経て被告人に更生意欲が認められたという事情も考慮して、同種事件の量刑傾向を参考にした上で、主文の刑に処するのが相当であると判断した。(求刑:懲役15年) 理由 令和7年7月31日 千葉地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官水上周 裁判官西澤恵理 裁判官佐々木佳穂

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