平成25(ワ)2188 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年3月18日 札幌地方裁判所
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判決文本文22,757 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,2億0239万5360円及びうち1億8590万9472円に対する平成26年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,補助参加によって生じた費用は原告補助参加人の負担とし,その余を7分し,その6を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決の第1項は仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,12億4688万9475円及びこれに対する平成23年3月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,東日本大震災に伴い福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)から放射性物質が放出される事故により福島県内における5店舗の閉店等を余儀なくされた原告が,福島第一原発を設置,運転していた被告に対し,原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)3条1項本文に基づき,原子力損害として,①休業損害7077万3163円,②9年分(上記事故の10年後まで)の逸失利益10億0608万2962円,③違約金損害7195万1734円,④有形固定資産の損害4808万1616円及び弁護士費用5000万円の合計12億4688万9475円及びこれに対する上記事故発生日である平成23年3月11日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 争いのない事実等 (1) 当事者ア被告は,電気事業を目的とする会社であり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)23条1項の許可を受けた,原賠法2 等 (1) 当事者ア被告は,電気事業を目的とする会社であり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)23条1項の許可を受けた,原賠法2条3項の原子力事業者である。被告は,平成23年3月11日当時,福島県双葉郡a町bc番地に福島第一原発を設置し,運転していた。 イ原告は,医薬品,化粧品,洗剤,日用雑貨の販売等を目的とする会社であり,平成23年3月11日当時,福島県内における別紙1-1~1-5の5店舗のドラッグストア(以下「本件5店舗」という。)を経営していた。本件5店舗は,いずれも福島第一原発から半径20㎞圏内にあった。 ウ原告補助参加人(以下単に「補助参加人」という。)は,d店の店舗である建物(以下「本件建物」という。)を所有している会社であり,平成19年5月17日,原告との間で,本件建物につき,期間20年の定期建物賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結していた(甲20)。 (2) 事故の発生ア平成23年3月11日,東日本大震災が発生し,これに伴い,福島第一原発から放射性物質が放出される事故(以下「本件事故」という。)が発生した。 同日,原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき,原子力災害対策本部が設置された上(同本部は,内閣総理大臣が原子力緊急事態宣言をしたときに,当該原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策等を推進するために設置される。同法16条1項),同月12日までに,福島第一原発から半径20㎞圏内の区域に避難指示が発出され,同年4月21日,この区域は,同法28条2項により読み替えて適用される災害対 策基本法(昭和36年法律第223号)63条1項の警戒区域に設定する指示が発出され,立入制限等が行 出され,同年4月21日,この区域は,同法28条2項により読み替えて適用される災害対 策基本法(昭和36年法律第223号)63条1項の警戒区域に設定する指示が発出され,立入制限等が行われる区域とされた。 イ本件5店舗は,本件事故により,休業を余儀なくされた上,営業再開の目途が立たないまま,遅くとも平成24年2月29日までに,原告において閉店することが決定された(甲9)。 本件5店舗の所在地付近は,平成27年8月7日の時点でも,原子力災害対策特別措置法に基づき,緊急事態応急対策を実施すべき区域とされ,避難指示解除準備区域又は帰宅困難区域とされている(甲59)。 (3) 直接請求と合意ア原告は,平成24年6月9日,被告に対し,本件事故につき,平成23年3月11日から同年8月31日までの逸失利益と,検査費用(物)以外の追加的費用の賠償金を請求した。この請求書(乙19の1。以下「本件請求書」という。)には,確認事項として,「原子力発電所の事故によらない損害が含まれていると認められる場合には,当該部分について精算または一定の統計データ等を利用して請求金額の修正をさせていただきます。」と記載されていた。 イ原告及び被告は,平成24年8月22日,上記アの請求につき,算定額を3億8817万3303円とする合意をした(以下「本件合意」という。 ただし,本件合意の内容には争いがある。)。その内訳は,対象期間を上記アの期間とし,①本件5店舗に他の4店舗(e店,f店,g店及びh店)を加えた合計9店舗の逸失利益として1億5098万3272円,②避難指示区域内において管理不能となった商品在庫に係る賠償金及び従業員の避難移転費用を,追加的費用として2億3719万0031円とするものであった(乙19の2)。 なお,本件5店舗以外の 2円,②避難指示区域内において管理不能となった商品在庫に係る賠償金及び従業員の避難移転費用を,追加的費用として2億3719万0031円とするものであった(乙19の2)。 なお,本件5店舗以外の上記4店舗は,閉店していない。 ウ被告は,平成24年8月30日,原告に対し,上記イの3億8817万3303円を支払った。 エ被告は,平成26年5月16日の本件第2回弁論準備手続期日において,原告に対し,上記逸失利益として支払った1億5098万3272円については過払に当たるとして,他の賠償義務との精算を求める旨の意思表示をした。 2 争点(1) 本件事故により原告が被った損害の額(2) 損益相殺の可否及び額(3) 本件合意の内容・過払の有無及び額 3 争点(1)(本件事故により原告が被った損害の額)に関する当事者の主張【原告の主張(補助参加人の主張を含む。以下同じ。)】(1) 休業損害 7077万3163円本件5店舗の本件事故前の1年間(平成22年3月1日から平成23年2月28日まで)の営業利益は,別紙1-1~1-5のとおりであるから,平成23年9月1日から平成24年2月29日まで6か月分の休業損害は,別紙1-6のとおり,合計7077万3163円となる。 (2) 逸失利益 10億0608万2962円本件5店舗は閉鎖を余儀なくされ,現に,それまで得ていた収益を得ることができなくなり,その後現在に至るまで所在した市町村では未だに住民が戻れない状態が継続し,損害の軽減や回避をしようとしてもできない状態となっている。 原告及びグループ各社の賃貸物件の営業中の店舗の継続期間の平均は7. 842年であり,直近2期(平成25年6月から平成26年5月まで及び平成 の軽減や回避をしようとしてもできない状態となっている。 原告及びグループ各社の賃貸物件の営業中の店舗の継続期間の平均は7. 842年であり,直近2期(平成25年6月から平成26年5月まで及び平成24年6月から平成25年5月まで)の間に閉店した店舗の存続期間の平 均は13.516年である。 したがって,本件5店舗は,本件事故がなければ,少なくとも本件事故後10年間は営業を継続したから,その間の逸失利益は,別紙1-6のとおり,合計10億0608万2962円となる。 (3) その他の損害ア d店における違約金損害 7195万1734円d店について,本件賃貸借契約が解除されれば,補助参加人から,7195万1734円(平成26年4月30日支払の前提)の損害金の支払を求められることになるから,これが原告の損害となる。 また,本件賃貸借契約(甲20)が解除されなくても,本件事故により本件建物を現状のまま使用できなくなったことは本件建物の滅失又は毀損に等しいから,原告は,支払期未到来の賃料を基礎として算出される規定損害金の支払義務を負い(19条1項),同額の損害を被っている。 さらに,本件賃貸借契約は,実質的には,本件建物を目的とした,いわゆるファイナンスリース契約である。このことは,借主である原告が保守・修繕義務を負っていること(11条),貸主である補助参加人が瑕疵担保責任を負っていないこと(19条3,4項),中途解約が原則認められていないこと(17条)からも明らかである。原告は,リース会社である補助参加人から,本件建物の購入費用相当額についての与信を受けているに等しく,原告が補助参加人に対して毎月支払う金員は,名目は賃料でも,実質はリース料である。したがって,原告は,本件建物を利用できるか否かにか ら,本件建物の購入費用相当額についての与信を受けているに等しく,原告が補助参加人に対して毎月支払う金員は,名目は賃料でも,実質はリース料である。したがって,原告は,本件建物を利用できるか否かにかかわらず,本件賃貸借契約に基づく賃料を支払う義務を負い,本件賃貸借契約が解除されなくても,既に支払期が到来している平成23年4月分から平成27年12月分までの賃料だけで,請求額(7195万1734円)を超える7522万1733円の債務を負い,同額の損害を 被っている。 なお,本件賃貸借契約においては,本件建物が原告に帰責事由なくして滅失・毀損した場合でも,これにより契約が終了したか否かに応じて,借主である原告は貸主である補助参加人に対して規定損害金あるいは賃料を支払う義務がある旨の特約があり(19条),これは,危険負担における債務者主義の適用除外,債権者主義の採用を内容とするものにほかならない。建物自体が滅失・毀損し,建物の使用が物理的に不可能となっている場合ですら原告には上記支払義務があるのであるから,仮に被告が主張するように滅失・毀損の状態に至っていないのであれば,なおさら賃料の支払義務は免れない。 イ有形固定資産の損害 4808万1616円本件事故により本件5店舗の建物,附属設備,構築物,器具・備品について被害を被ったが,その金額(簿価)は,別紙1-6のとおり,合計4808万1616円である。 (4) 弁護士費用 5000万円本訴の提起及び遂行のための弁護士費用として5000万円が本件事故と因果関係のある損害である。 【被告の認否・反論】原告の主張は,いずれも否認し,争う。 (1) 原告の主張(1)(休業損害)及び(2)(逸失利益)についてア以下のとお と因果関係のある損害である。 【被告の認否・反論】原告の主張は,いずれも否認し,争う。 (1) 原告の主張(1)(休業損害)及び(2)(逸失利益)についてア以下のとおり,本件においては,逸失利益の算定の基礎となる収益及び費用を本件5店舗のみに着目して算定すべきではなく,原告の小売業全体における営業利益を基準に検討すべきであり,このような観点からすれば,原告の営業損害(休業損害及び逸失利益)の賠償請求には理由がない。 すなわち,①原告は,持株会社である株式会社ツルハホールディングス の子会社であり,本件事故当時,グループ全体で,北海道・東北・関東・中部・関西地区等全国に950店舗を超える(原告単体でも約700店舗に上る)ドラッグストア等を展開し,小売販売事業を営んでいた。そして,②本件事故に起因する政府による避難等の指示により,原告が本件5店舗について営業休止を余儀なくされるとともに,これと併せて,避難等対象区域内の住民も避難を余儀なくされ,16万人に及ぶ住民が従前の居住エリアから同エリア外に移動し,本件5店舗付近に居住するほとんどの避難者も,本件事故後に原告の店舗の所在する地域に避難し,多くの避難者が原告の店舗を利用し得る状況となった。③原告の店舗数は本件事故前後を通じて増加傾向にあったから,原告は需要者(避難者)の場所的移動を踏まえた店舗展開を行うことなども可能であった。現に,原告は,東日本大震災以降,避難者が比較的多い地域である福島県郡山市に4店舗,いわき市に2店舗,福島市に1店舗,喜多方市に1店舗など福島県内に合計11店舗の新規店舗を出店しており,本件事故後の需要者(避難者)の場所的移動を踏まえた事業活動を行っている。④本件事故後は原告が取り扱っているような生活資材への需要は平常時 1店舗など福島県内に合計11店舗の新規店舗を出店しており,本件事故後の需要者(避難者)の場所的移動を踏まえた事業活動を行っている。④本件事故後は原告が取り扱っているような生活資材への需要は平常時に増して大きく,本件事故は原告の事業全体の売上増加要因となっているとも考えられる。⑤本件5店舗の閉鎖にもかかわらず,原告の小売業全体の営業利益は,平成22年5月期(86億6972万3944円。なお,平成21年5月期は91億4201万6888円であり,平成22年5月期は減益であった。)と比較して,平成23年5月期(112億9360万7007円)には約26億円(130.2%),平成24年5月期(133億5373万8080円)には約46億円(154.0%),平成25年5月期(149億8300万3334円)には約63億円(172.8%)も増加している。このように,原告の小売業全体における営業利益は,本件事故後に大きく増加しており, 原告に本件事故後の営業損害の発生は認められない。原告は,全国のみならず,本件事故の影響を最も受けたと解される福島県内に限ってみても継続的に増収を達成し,本件事故前後を通じて福島県内におけるシェアを失っているとも認められず,福島県内の原告の事業に限ってみても,本件事故によって原告に売上の減少が招来されたとの基本的関係を認めることができない。 イ仮に,本件事故による営業損害の発生が認められるとしても,本件事故と相当因果関係のある営業損害が,本件事故後10年間に及んで認められるとは解されない。 すなわち,原子力損害賠償紛争審査会が定めた「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)にも記載があるように,一般論として,本件事 力損害賠償紛争審査会が定めた「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)にも記載があるように,一般論として,本件事故により営業休止を余儀なくされる場合であっても,「事業拠点の移転や転業等の可能性があるため,賠償対象となるべき期間には一定の限度がある」のであり,その終期は「従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日」である(中間指針25頁)。そして,「被害者の側においても,本件事故による損害を可能な限り回避し又は減少させる措置を執ることが期待されて」おり,「当該措置を怠った場合には,損害賠償が制限されることがあり得る」のである(中間指針4頁)。 この点,公共用地の取得に伴う損失補償基準においては,営業廃止に伴い転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額として,従来の営業利益の2年分(被補償者が高齢であること等により円滑な転業が特に困難と認められる場合においては3年分)とされている(同細則第26の6項)。 最高裁判所平成21年1月19日第二小法廷判決・民集63巻1号97頁は,カラオケ店が浸水事故により営業不能となった事案において,約4 年6か月分の営業利益の賠償義務を認めた原判決を破棄し,カラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を採ることができたと解される時期(事故から1年7か月後)以降における営業利益相当の損害の全てについて賠償を認めなかった。過去の裁判例について,相当因果関係が認められた期間に着目すると,個人の後遺障害が影響した特殊な事例を除けば,長いものでも3年分に限られている。 原告は,平成23年3月時点において,全国に943店舗,福島県内にも本件5店舗を除いて54店舗を た期間に着目すると,個人の後遺障害が影響した特殊な事例を除けば,長いものでも3年分に限られている。 原告は,平成23年3月時点において,全国に943店舗,福島県内にも本件5店舗を除いて54店舗を有する大企業であり,避難者の多くが原告の店舗の所在する地域に避難している事実からすれば,そもそも避難や転業の必要性を観念する必要があるのか疑問である上,仮に,その必要があるとしても,必要な準備期間は2年を大きく下回るというべきであるし,ドラッグストアという業種上,常にスクラップアンドビルドが想定されるのであるから,必要な準備期間は,より短期間であると考えられる。 (2) 原告の主張(3)ア(d店における違約金損害)について本件賃貸借契約が解除されたとの主張立証はないから,本件賃貸借契約の解除を前提とする主張は,前提を欠き,失当である。なお,原告が,違約金を出捐したとの主張立証もない。 また,本件事故やその後の政府による避難指示によって本件建物が滅失又は毀損したという事実は認められない。 さらに,本件賃貸借契約は,本件事故に伴う政府による避難指示によって,賃貸人及び賃借人の帰責事由なく,当該建物を使用収益させる賃貸人の債務が履行不能になったものと解される。したがって,原告が補助参加人に対して上記違約金を支払わなければならない理由はなく,原告には上記損害は発生していない。本件賃貸借契約(甲20)のいかなる規定を見ても,賃借人の責めに帰すべき事由に基づかずに事実上使用収益ができない状態に至った 場合においても賃借人が賃料の支払義務を負う旨を定めた規定(民法上の危険負担の原則を排除する特約)は存在しない。なお,実際にも,今日に至るまで,原告は賃料を補助参加人に支払っていないと思われる。 (3) 原告の 人が賃料の支払義務を負う旨を定めた規定(民法上の危険負担の原則を排除する特約)は存在しない。なお,実際にも,今日に至るまで,原告は賃料を補助参加人に支払っていないと思われる。 (3) 原告の主張(3)イ(有形固定資産の損害)について4422万6543円の限度で認める。その内訳は,別紙2-1のとおりである。 4 争点(2)(損益相殺の可否及び額)に関する当事者の主張【被告の主張】(1) 福島県内の原告店舗においては,本件事故後,全国的な傾向を上回る水準で売上高が増加しており,本件事故と上記売上高の増加との間には相当因果関係がある。すなわち,本件5店舗が所在する①a町,②i町,③j町,④南相馬市及び⑤本件5店舗から4㎞ないし6㎞程度の距離に所在するk町(以下「本件5店舗区域」という。)から福島県内への避難者に限っても4万3504名に上るのであり,他の避難指示等対象区域からの避難者も含めると,県内の避難者数は約9万7000人に上る。そして,特に郡山市周辺地域といわき市周辺地域において売上高及び来店客数の増加傾向が顕著であり,本件5店舗区域からの避難者が相対的に少ない南相馬市周辺地域において増加傾向は認められない。すなわち,本件5店舗区域からの避難者数が多い地域ほど,原告の店舗における売上高が増加するという相関関係が認められる。本件事故後の福島県内の売上高の増加は,本件事故とこれに伴う避難指示等によって生じた人口移動及び避難に付随する生活用品の需要の増加によって,本件5店舗以外の店舗の需要が増加したことにあると推認されるから,損益相殺の関係が成立する。 (2) 平成23年3月から平成24年2月までの福島県内の売上高(161億3280万円)の対前年比は,112.2%であり,同時期の全国の売上高 から,損益相殺の関係が成立する。 (2) 平成23年3月から平成24年2月までの福島県内の売上高(161億3280万円)の対前年比は,112.2%であり,同時期の全国の売上高 (3110億4661万4000円)の前年比106.4%と比較して5. 8%高くなっている。そのため,福島県内で本件事故その他の東日本大震災に起因して増加した売上高は,9億3570万2400円(上記161億3280万円に5.8%を乗じたもの)と推認される。これに,営業利益率として本件5店舗の平成22年3月から平成23年2月までの営業利益率7. 9%を乗じると7392万0490円となる。 もっとも,上記9万7000人の避難者には本件事故直前に発生した地震や津波による避難者も含まれると考えられる。この点,厳密な統計はないものの,避難者を対象とした自宅の被災状況に関するアンケート調査(乙16)によれば,地震や津波による避難者の割合は,多めに見積もったとしても25%を超えることはないというべきである。そうすると,本件事故が原告の営業利益の増加に寄与した割合は75%を下らず,平成23年3月から平成24年2月まで,本件事故による避難者の移動によって生じた営業利益の増加は,上記7392万0490円に75%を乗じた5544万0367円(①)というべきである。同様に,平成24年3月から平成25年2月まで及び同年3月から平成26年2月までについて計算すると,別紙2-2のとおり,それぞれ,1億8367万9802円(②)及び1億9316万2960円(③)となる。 以上より,被告は,合計4億3228万3130円(①~③の和)について,損益相殺の抗弁を主張する(なお,例えば,本件事故の寄与度を75%ではなく50%と仮定しても,損益相殺の額は,合計2億8818万87 より,被告は,合計4億3228万3130円(①~③の和)について,損益相殺の抗弁を主張する(なお,例えば,本件事故の寄与度を75%ではなく50%と仮定しても,損益相殺の額は,合計2億8818万8753円となる。)。 【原告の認否・反論】(1) 損益相殺について,判例では,損害と利益との間に法的同質性があるか否かあるいは相互補完性があるか否かが問われており(最高裁判所平成5年3 月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁,最高裁判所昭和62年7月10日第二小法廷判決・民集41巻5号1202頁),このような判断基準によって実質的に問題とされていることは,被害者の得た利益が被害者の被った損害を填補する関係にあるかないかということと解釈されている。福島県内の他店舗の売上が増加したとしても,上記の意味での法的同質性がないことは明らかである。 (2) 被告の主張は,推論に推論を重ねたものであって,相当因果関係があるとは到底いえない。 ア平成24年5月期及び平成25年5月期の売上を見ると,福島県の前年比は,全社に比べて大きい数字となっている。しかし,同様に宮城県の数字も全社に比べて大きい数字となっている。ここから推測されるのは,東日本大震災によって,日用品や医薬品の需要が高まったということであり,福島県の売上比率が高くなっているのは,宮城県同様,本件事故による影響ではなく,東日本大震災の被害により市民の需要が高まったからである。 イ福島県の人口は209万8835人(平成24年4月1日時点)であり,本件5店舗区域から福島県内への避難者(被告によれば4万3504人)の割合はわずか2%にすぎず,この数字からは,福島県内の店舗の売上高が10%以上の増加をしたことは全く説明できない。本件5店舗区域からの人口移動が原告の他 内への避難者(被告によれば4万3504人)の割合はわずか2%にすぎず,この数字からは,福島県内の店舗の売上高が10%以上の増加をしたことは全く説明できない。本件5店舗区域からの人口移動が原告の他店舗の来店客数や売上高に全く影響していないとまではいえないけれども,そこに比例的関係を見出すのは無理というべきである。 平成23年5月期と平成24年5月期における福島県の店舗の売上高の平均増加率は,1.1398である。これに対し,被告が本件5店舗区域から福島県内への避難者のうちの70%の避難先とする4都市の店舗の平均増加率は,福島市1.0606,会津若松市1.2549,郡山市1. 1328,いわき市1.2333であり,会津若松市といわき市は平均を上回っているが,福島市と郡山市は平均を下回っている。このことは,人口の移動と,売上高の増加との間に明確な相関関係が認められないことを端的に物語っている。なお,出店が後であるほど増加率が高くなっており,新規店については,震災や本件事故がなくても毎年売上は増加する。 上記と同じ期の福島県の客数の平均増加率は,1.0741である。これに対し,上記4都市の平均増加率は,福島市1.0235,会津若松市1.1164,郡山市1.0761,いわき市1.1470であり,福島市は平均を下回り,郡山市はほぼ同値であり,会津若松市といわき市は平均を上回っている。ここでも,人口の移動と客数の増加との間に明確な相関関係が認められない。 ウ被告が主張の根拠とする自宅の被災状況に関するアンケート調査からは,自宅が破損した人の割合がある程度分かるだけで,それ以上は推測にすぎない。 5 争点(3)(本件合意の内容・過払の有無及び額)に関する当事者の主張【被告の主張】(1) 本件合 自宅が破損した人の割合がある程度分かるだけで,それ以上は推測にすぎない。 5 争点(3)(本件合意の内容・過払の有無及び額)に関する当事者の主張【被告の主張】(1) 本件合意においては,直接請求の手続で,本件事故との相当因果関係を欠く損害を誤って賠償した場合に,賠償金の返還や他の賠償義務との精算処理を行う旨を必ず確認の上で署名押印してもらっている。このような条件は,極めて多数かつ多種多様な請求がある中で,非常に限られた時間や資料により早期かつ適正な賠償を実現するために欠かすことができないものであり,かつ,法的にも有効である。したがって,仮に,被告が支払った賠償金の全部又は一部に過払があった場合,本件合意に基づき,被告は原告に対して,当該過払分につき,その返還又は他の賠償義務との精算を求めることができる。 (2) 被告が既に原告に支払った逸失利益名目の賠償金(1億5098万3272円)の全てが,過払に当たる。 【原告の反論】(1) 被告が主張するような請求段階での修正,本件合意後の精算といったことは,被告が作成した本件合意書には一切書かれていない。 原告は,平成23年12月8日付けで,被告に対し,同年3月11日から同年8月31日までの損害について,7億7427万7505円を請求し,さらに,平成24年6月9日,被告に対し,7億6104万0931円(乙19の1の2枚目の取消線で訂正する前の金額)を請求したが,その際の本件請求書に,「原子力発電所の事故によらない損害が含まれていると認められる場合には・・・請求金額の修正をさせていただきます。」と記載されていた。これに対し,原告は,被告から,原告の請求のうち認めるもの,修正するもの,留保するものが記載された「ご請求いただいた金額からの る場合には・・・請求金額の修正をさせていただきます。」と記載されていた。これに対し,原告は,被告から,原告の請求のうち認めるもの,修正するもの,留保するものが記載された「ご請求いただいた金額からの変更点のお知らせ」と題する文書のほか,その結果に基づく「お支払い明細書」及び本件合意書の書式の送付を受けた。そこで,原告は,これに合意することとし,本件合意書に記名捺印して被告に送付したのである。したがって,被告が「お支払い明細書」で賠償項目として認めた同年3月11日から同年8月31日までの逸失利益,追加的費用について,和解(民法695条)が成立している。 (2) 被告が既に原告に支払った逸失利益名目の賠償金に,過払はない。 直接請求の手続において,被告が提示した算定方法を受け入れ,被害者はそれに従って計算した上で合意したにもかかわらず,被告自らが,合意した後も修正等の留保があり得るなどと主張するのであれば,他の全ての被害者との「合意」も合意ではないことになろう。そのようなことは,信義に反すること甚だしく,全く許されない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件事故により原告が被った損害の額)について(1) 休業損害について証拠(甲14~甲18)及び弁論の全趣旨によれば,本件5店舗の本件事故前の1年間(平成22年3月1日から平成23年2月28日まで)の営業利益は,別紙1-1~1-5のとおりであると認められる。また,前記争いのない事実等(2)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件事故により,本件事故日である平成23年3月11日から平成24年2月29日までの間,本件5店舗の休業を余儀なくされたのであり,本件事故がなければ,営業利益を得たと認められる。そうすると,平成23年9月1日から平 件事故日である平成23年3月11日から平成24年2月29日までの間,本件5店舗の休業を余儀なくされたのであり,本件事故がなければ,営業利益を得たと認められる。そうすると,平成23年9月1日から平成24年2月29日まで6か月分の休業損害は,別紙1-6のとおり,合計7077万3163円の損害であると認められる。 他方,証拠(乙2から乙5まで)及び弁論の全趣旨によれば,原告の小売業全体の売上高について,平成22年5月期(約2097億円)と比較して,平成23年5月期(約2217億円)には約119億円(105.7%),平成24年5月期(約2397億円)には約299億円(114.3%),平成25年5月期(約2544億円)には約447億円(121.3%)と,本件事故後に大きく増加し,これに沿って営業利益も,本件事故後に大きく増加していることが認められる。後記2のとおり,本件5店舗において失われた売上と原告の小売業全体において増加した売上との間には,一定の重なりがあることが推認できるものの,本件全証拠によるも,後者が前者の全てを包摂しているとまでは認められない。 したがって,原告の小売業全体の利益が増加しているからといって,本件5店舗に関する本件事故に伴う営業損害の全てを否定すべきことにはならない。 (2) 逸失利益についてア前記認定によれば,本件5店舗の閉店は本件事故によるのであり,原告は,本件事故がなければ,平成24年2月29日以降も本件5店舗の営業を継続していたことが推認されるから,原告は,上記(1)と同等と考えられる営業利益を,一定期間分失ったことが認められる。 ところで,原告の持株会社である株式会社ツルハホールディングスの四半期報告書(平成27年9月29日関東財務局長に提出したもの)(乙25の1)に れる営業利益を,一定期間分失ったことが認められる。 ところで,原告の持株会社である株式会社ツルハホールディングスの四半期報告書(平成27年9月29日関東財務局長に提出したもの)(乙25の1)に「ドラッグストア業界においては,競合他社の出店や価格競争が引き続き激化しているほか,生き残りをかけた企業の統合・再編への動きがさらに強まっており,厳しい経営環境が続いております。」,「店舗展開につきましては,ドミナント戦略に基づく地域集中出店および既存店舗のスクラップアンドビルドを推進したことにより,期首より31店舗の新規出店と10店舗の閉店を実施し,当第1四半期末のグループ店舗数は直営店で1404店となりました。」との記載がされていることに照らし,原告においては,ある店舗(ドラッグストア)における損失と別の店舗における収益が連関しながら事業が行われていたこと,すなわち,原告においては,ある店舗において営業休止を余儀なくされ損失を被ったとしても,別の店舗において収益を上げることによって,損失の回避若しくは軽減又は逆に売上増を達成することができ,しかも,そうしたことが原告の事業の常態であったと認められる。そうすると,原告は,何らかの事由によって特定の店舗が営業休止を余儀なくされたとしても,機動的に別の店舗の収益をもってその損失を補うことが可能であったのであるから,事故がなければ特定の店舗が実際に営業を継続したであろう期間の全てにわたって,収益を上げられなくなり,損失を被ったというべき関係にはなかったと認められる。したがって,被告が賠償責任を負うべき本件5店舗の逸失利益 の期間は,本件事故がなければ本件5店舗が実際に継続したであろう期間の全てに及ぶと考えなければならないわけではなく,相当な範囲に限られるというべきである。 件5店舗の逸失利益 の期間は,本件事故がなければ本件5店舗が実際に継続したであろう期間の全てに及ぶと考えなければならないわけではなく,相当な範囲に限られるというべきである。 そして,①公共用地の取得に伴う損失補償基準において,営業廃止に伴い転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額として,従来の営業利益の2年分,被補償者が高齢であること等により円滑な転業が特に困難と認められる場合においても3年分とされていること(同細則第26の6),②原告において,3年程度で閉店に至る店舗が複数存在していたこと(甲31)に照らせば,法的に相当因果関係の認められる期間としては,営業休止を余儀なくされた時から2年と認めるのが相当である(そうすると,原告については,本件事故から約1年分は休業損害として,その後の2年分は逸失利益として,合計3年分の営業利益の賠償が認められることになる。)。 なお,被告は,平成27年6月17日付けで,プレスリリース「法人さまおよび個人事業主さまに対する新たな営業損害賠償等に係るお取り扱いについて」(乙17)において,避難指示区域において事業を営んでいた法人等のうち,避難指示等に伴い,本件事故から4年を経過した同年3月以降も被害の継続が認められる法人等に対し,本件事故との相当因果関係が認められる減収相当分として,直近の減収等に基づく年間喪失利益の2倍を一括して支払う旨を公表したことが認められる。しかし,これは,原則として中小法人(資本金等の額が1億円以下の法人)を対象とするものであり,原告は,資本の額が42億円余りであるから(甲3),原則として対象とならないし,上記認定説示に照らしても,例外となるような事情は認められない。 イそうすると,被告が賠償責任を負うべき本件5店舗の逸失利益は,平成 余りであるから(甲3),原則として対象とならないし,上記認定説示に照らしても,例外となるような事情は認められない。 イそうすると,被告が賠償責任を負うべき本件5店舗の逸失利益は,平成 23年3月11日から平成24年2月29日までの約半年分の営業損失である7077万3163円の2倍の額を基礎とし,2年のライプニッツ係数1.8594を用いて中間利息を控除すると,次の計算式のとおり,2億6319万1238円となる(小数点以下切捨て)。 (計算式)(70,773,163×2)×1.8594≒263,191,238なお,既に上記2年は経過しているものの,原告は,平成24年2月29日までに本件5店舗が閉店したことから,その時点で将来得べかりし利益を喪失したとして,その時点からの逸失利益を主張している(過去の休業損害を主張しているのではない。)のであるから,原告の主張(別紙1-6)に従って,中間利息を控除するのが相当である。 (3) その他の損害(弁護士費用を除く。)についてア d店における違約金損害についてまず,本件全証拠によるも,本件賃貸借契約が解除されたこと又は解除される蓋然性が高いことを認めるに足りない。 次に,現在,本件建物の所在地である福島県南相馬市d区は避難指示解除準備区域等に指定され,帰還促進を図るため,生活必需品等を販売する仮設店舗を整備し開設する事業が進められ,既に52の事業所が再開していると認められること(乙28)に照らせば,現在,原告が本件建物を使用できないことが,本件建物の滅失又は毀損に当たるとはいえない。 さらに,前記認定によれば,補助参加人が原告に対して本件建物を使用収益させる義務は,本件事故という当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行 件建物の滅失又は毀損に当たるとはいえない。 さらに,前記認定によれば,補助参加人が原告に対して本件建物を使用収益させる義務は,本件事故という当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行できなくなったと認められるから,原告は,上記賃料を支払う義務を負わない(民法536条1項)。この点,本件賃貸借契約(甲20)においては,既経過賃貸借期間に係る未払賃料等本契約に基づく一切の債務について不履行がない場合には,未経過賃貸借期間に係る 未払賃料を負担することなく,敷金返還請求権を放棄することで中途解約すること等も認められているから(17条),原告が補助参加人に対して毎月支払う金員が,実質はリース料であるとまでは認められない。また,事由の如何を問わず,本件建物の滅失又は毀損等の場合に,規定損害金を支払わなければならない(19条1項)ことも,建物の使用が物理的に不可能となっている場合のことであって,本件事故により,立入制限等が行われた結果,建物の使用が不可能となった場合というのは,正に,契約に定めのない事項及び疑義の生じた事項であるから(25条),上記民法の規定と異なる合意がされているとは認められない。 したがって,d店における違約金損害の発生は認められない。 イ有形固定資産の損害について被告が自認している別紙2-1の4422万6543円の限度で損害及びその額が認められ,本件全証拠によるも,その余を認めるに足りない。 2 争点(2)(損益相殺の可否及び額)について(1) 前記のとおり,原告の小売業全体の売上高は,平成22年5月期(約2097億円)と比較して,平成23年5月期(約2217億円)には約119億円(105.7%),平成24年5月期(約2397億円)には約299億円(114.3%),平成 上高は,平成22年5月期(約2097億円)と比較して,平成23年5月期(約2217億円)には約119億円(105.7%),平成24年5月期(約2397億円)には約299億円(114.3%),平成25年5月期(約2544億円)には約447億円(121.3%)と,本件事故後に大きく増加し,これに沿って営業利益も,本件事故後に大きく増加していることが認められる。このことから,本件5店舗について原告が被った損害が発生しなかったことにはならないとしても(前記1(1)),不法行為と同一の原因によって被害者が第三者に対して損害と同質性を有する利益を内容とする債権を取得し,当該債権が現実に履行されたとき又はこれと同視し得る程度にその存続及び履行が確実であるときは,これを加害者の賠償すべき損害額から控除すべきと解されるから (最高裁判所平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁参照),本件事故後の原告の小売業全体の営業利益の増加のうち,損益相殺の対象として相当なものがあれば,これを被告の賠償すべき休業損害及び逸失利益から控除すべきであると解される。 (2) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,①東日本大震災に伴う避難の状況につき,本件5店舗区域からの避難者のうち約3分の2(約63.2%)が福島県内への避難者であり,その避難者の9割程度が原告の店舗の所在する市町村に避難していること(乙8の1~乙12の3),他の区域からも含めた福島県内への避難者は9万7581人に上ること(乙13)が認められる。 また,②平成23年3月から平成24年2月までの福島県内の売上高(161億3280万円)の対平成22年比は,112.2%であり,同時期の全国の売上高(3110億4661万4000円)の対平成22年比106. 4%と比較して5.8%高くな 月までの福島県内の売上高(161億3280万円)の対平成22年比は,112.2%であり,同時期の全国の売上高(3110億4661万4000円)の対平成22年比106. 4%と比較して5.8%高くなっているほか,平成24年3月から平成25年2月までの福島県内の売上高の対平成22年比は,同時期の全国の売上高と比較して16.5%,平成25年3月から平成26年2月までの福島県内の売上高の対平成22年比は,同時期の全国の売上高と比較して16.4%高くなっており,本件事故あるいは東日本大震災後,原告の福島県内の売上高が大きく増加していることが認められる。上記①及び②からすると,本件事故後の福島県内の売上高ひいては営業利益の増加は,本件事故に伴う避難指示等によって生じた人口移動の結果か,本件事故あるいは東日本大震災の被害による生活用品の需要の増加の結果によるものと推認するのが相当である。そうすると,本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分は,損益相殺の対象となり得ると認められる。 他方,証拠(甲35から甲41まで)及び弁論の全趣旨によれば,③原告における全社の売上は,平成24年5月期で前年比107.2%,平成25 年5月期で106.8%,平成26年5月期で108.0%であるのに対し,宮城県の売上は,順に122.4%,112.5%,105.2%,福島県の売上は,順に119.6%,111.6%,104.3%となっており,宮城県の売上は福島県のそれ以上に大きくなっていることも認められる。もっとも,弁論の全趣旨によれば,④宮城県と福島県における東日本大震災の被害の状況を見ると,死者数は,宮城県で1万0449人であるのに対し,福島県では3057人と29.26%となっており,同様に,行方不明者数は17.4%, れば,④宮城県と福島県における東日本大震災の被害の状況を見ると,死者数は,宮城県で1万0449人であるのに対し,福島県では3057人と29.26%となっており,同様に,行方不明者数は17.4%,重軽傷者数は4.39%,浸水範囲面積は34.25%,推定浸水域に係る人口は21.48%,推定浸水域に係る世帯数は19.57%,全壊住家数は25.56%,半壊住家数は47.08%と,いずれの点で見ても,宮城県の方が数倍程度大きく,他方で,避難者数は,宮城県が7538人であるのに対し,福島県で5万2277人と693.51%と,福島県の方がはるかに大きくなっていることが認められる。このように,福島県の売上比率が宮城県のそれと同様に高くなっているのに対し,東日本大震災の被害は宮城県の方が数倍程度大きく,他方,避難者数は福島県の方がはるかに大きくなっていることに照らせば,本件事故後の福島県の売上高の増加は,単に東日本大震災の被害による生活用品の需要の増加の結果ではなく,本件事故に伴う避難指示等によって生じた人口移動の結果,あるいは本件事故の被害による生活用品の需要の増加の結果によるところが小さくないと推認するのが相当である。 ところで,⑤避難者を対象とした自宅の被災状況に関するアンケート調査(乙16)では,本件事故直前に発生した地震や津波による避難者の割合が25%,本件事故による避難者の割合が75%であることを一応うかがわせる内容となっている。また,上記(2)のとおり,東日本大震災の被害は宮城県の方が数倍程度大きいにもかかわらず,避難者数は福島県の方がはるかに 大きくなっていることに照らせば,本件事故後の福島県の売上高の増加は,本件事故に伴う避難指示等によって生じた人口移動の結果,あるいは本件事故の被害による生活用品の需要の増加 るかに 大きくなっていることに照らせば,本件事故後の福島県の売上高の増加は,本件事故に伴う避難指示等によって生じた人口移動の結果,あるいは本件事故の被害による生活用品の需要の増加の結果によるところが小さくないとは考えられる。しかし,上記アンケート調査のみをもって人口移動の原因の割合の詳細までは明らかにはし難いし,そもそも,本件事故後の福島県の売上高の増加が全て上記人口移動の結果によるものであり,しかも,その人口移動の75%が本件事故によるものなどと截然と区別できるものではなく,その割合を明確に認定するのは,事柄の性質上も,著しく困難である。 (3) 以上によれば,ⅰ本件事故後の福島県の売上高の増加は,単に東日本大震災の被害による生活用品の需要の増加の結果ではなく,本件事故に伴う避難指示等によって生じた人口移動の結果,あるいは本件事故の被害による生活用品の需要の増加の結果によるところが小さくないと推認されること,ⅱその人口移動の原因の割合は必ずしも明らかではないものの,本件事故にかかわらない避難者の割合も小さくないと考えられること,ⅲこれらを截然と区別して認定するのは,事柄の性質上,著しく困難である一方,立証責任の分配のみで判断するのは当事者間の衡平を欠くことが認められ,これらを総合して考慮すると,本件事故に伴う避難指示等によって生じた人口移動の結果,あるいは本件事故の被害による生活用品の需要の増加の結果によって生じた営業利益の増加の割合は,どれほど少なく見積もっても,上記アンケートからうかがわれる75%の半分に相当する37.5%は存在すると認めるのが相当である。 そうすると,本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分のうちの更に37.5%は,損益相殺の対象となると認められる。 (4) 上 .5%は存在すると認めるのが相当である。 そうすると,本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分のうちの更に37.5%は,損益相殺の対象となると認められる。 (4) 上記(2)のとおり,平成23年3月から平成24年2月までの福島県内の売上高(161億3280万円)の対前年比は,112.2%であり,同時 期の全国の売上高(3110億4661万4000円)の前年比106. 4%と比較して5.8%高くなっているから,本件事故後の福島県内の売上高の増加のうち全国水準以上の分は,9億3570万2400円(上記161億3280万円に5.8%を乗じたもの)と認められる。これに,営業利益率として本件5店舗の平成22年3月から平成23年2月までの営業利益率7.9%を乗じると7392万0490円となり(別紙2の2の②のH欄),さらに,37.5%を乗じ,半年分として2分すると,平成23年9月から平成24年2月までの,本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分の更に37.5%は,1386万0091円(別紙2の2の②のJ欄の額の4分の1)(①)と認められる。同様に,平成24年3月から平成25年2月まで,同年3月から平成26年2月までのそれは,それぞれ,9183万9901円(別紙2の2の②のJ欄の額の2分の1)(②),9658万1480円(同)(③)と認められる。 以上によれば,被告は,本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分の更に37.5%として,合計2億0228万1472円(①~③の和)について,損益相殺の抗弁を主張することができる。 これを,被告の賠償すべき休業損害7077万3163円と逸失利益2億6319万1238円の合計3億3396万4401円から控除すると,被告の賠償すべ ついて,損益相殺の抗弁を主張することができる。 これを,被告の賠償すべき休業損害7077万3163円と逸失利益2億6319万1238円の合計3億3396万4401円から控除すると,被告の賠償すべき休業損害及び逸失利益の合計は,1億3168万2929円となる。 3 争点(3)(本件合意の内容・過払の有無及び額)について(1) 前記争いのない事実等,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 原告は,平成23年12月8日,被告に対し,同年3月11日から同年8月31日までの損害として,7億7427万7505円を請求し(甲54), さらに,平成24年6月9日,被告に対し,7億6104万0931円(乙19の1の2枚目の取消線で訂正する前の金額)を請求した。その際の本件請求書(乙19の1)には,「原子力発電所の事故によらない損害が含まれていると認められる場合には,当該部分について精算または一定の統計データ等を利用して請求金額の修正をさせていただきます。」と記載されていた。 これに対し,原告は,被告から,原告の請求金額,被告による算定額等,差異,差異理由が記載された「ご請求いただいた金額からの変更点のお知らせ」と題する文書(甲58の4~6枚目)のほか,その結果に基づく「お支払い明細書」(甲58の3枚目)及び本件合意書の書式の送付を受けた。そこで,原告は,これに合意することとし,本件合意書(乙19の2)に記名捺印して被告に送付した。こうして,原告及び被告は,同年8月22日,上記請求につき,3億8817万3303円とする合意(本件合意)をした。 (2) 上記認定事実によれば,本件請求書の記載どおり,本件合意には,原子力発電所の事故によらない損害が含まれていると認められる場合,すなわち,本件事故との相当 円とする合意(本件合意)をした。 (2) 上記認定事実によれば,本件請求書の記載どおり,本件合意には,原子力発電所の事故によらない損害が含まれていると認められる場合,すなわち,本件事故との相当因果関係を欠く損害を誤って賠償した場合には,当該部分について精算をする旨の合意が含まれていたと認められる。そうすると,仮に,被告が支払った賠償金の全部又は一部に過払があった場合には,本件合意に基づき,被告は原告に対して,当該過払分につき,他の賠償義務との精算を求めることができるというべきである。 (3) 次に,弁論の全趣旨によれば,直接請求の手続においては,①原告の全事業所の売上高に所要の調整(売上原価及び販管費の控除)を加える,②上記①に事業所割合(対象となる事業所の売上が全事業所の売上に占める割合)を乗じて,「対象となる事業所に係る逸失利益計算の基礎額」を算定する,③「対象となる事業所に係る逸失利益計算の基礎額」に所要の調整(給与・賞与及び地代家賃の加算)を加える,④上記③に対象となる事業所の売上減 少率を乗じて対象となる事業所分の逸失利益とする(なお,上記事業所割合は,本来1.44%となるけれども,小数点以下が切り上げられ,2%として扱われた。)という算定方法によって,対象期間を平成23年3月11日から同年8月31日までとして,本件5店舗に他の4店舗を加えた合計9店舗の逸失利益が算定されたことが認められ,確かに,本件における原告の主張や当裁判所の判断とは異なる算定方法が採られたことが認められる。 しかし,だからといって,直ちに,直接賠償の手続において取られた上記算定方法が誤りであり,本件事故との相当因果関係を欠く損害が賠償されたことにはならないし,他に上記算定方法自体が不合理と認めるに足りる主張立証もない。なお, ちに,直接賠償の手続において取られた上記算定方法が誤りであり,本件事故との相当因果関係を欠く損害が賠償されたことにはならないし,他に上記算定方法自体が不合理と認めるに足りる主張立証もない。なお,上記小数点以下の切上げによって賠償額が増大したとしても,それだけでは,増大した賠償額が過払であったとは認められない。 もっとも,上記算定方法においては,損益相殺はされていないから,損益相殺がされるべき額は,過払であったと認められる。そして,その額は,上記2のとおり,本件事故後の福島県内の営業利益の増加のうち全国水準以上の分の更に37.5%と認められ,その具体的な額は,平成23年3月11日から同年8月31日までのそれであるから,1386万0091円(平成23年3月1日から同年8月31日までのそれは,同年9月1日から平成24年2月29日までのそれと同額と認められる。)に184(平成23年3月1日から同年8月31日までの日数)分の174(平成23年3月11日から同年8月31日までの日数)を乗じた1310万6825円と認められる。 (4) 被告が,平成26年5月16日の本件第2回弁論準備手続期日において,原告に対し,逸失利益として支払った1億5098万3272円については過払に当たるとして,他の賠償義務との精算を求める旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。したがって,被告は,上記1310万6825 円について,精算を求める旨の抗弁を主張することができる。なお,この主張が信義則違反に当たると認めるに足りる事情の主張立証はない。 4 まとめ(1) 休業損害及び逸失利益の合計(損益相殺後のもの)1億3168万2929円と有形固定資産の損害4422万6543円との合計は1億7590万9472円である。 本件事案の内容,認 まとめ(1) 休業損害及び逸失利益の合計(損益相殺後のもの)1億3168万2929円と有形固定資産の損害4422万6543円との合計は1億7590万9472円である。 本件事案の内容,認容額等諸般の事情に照らすと,原告が被告に対して請求し得る弁護士費用としての損害は1000万円が相当と認められる。 そうすると,賠償額の合計は,1億8590万9472円となる。 (2) 上記3の過払の額(1310万6825円)は,民法491条に従い,上記賠償額の合計(1億8590万9472円)に対する遅延損害金から充当される。そうすると,平成23年3月11日から,被告が精算の意思表示をした平成26年5月16日まで(3年と67日)の確定遅延損害金(民法所定年5分の割合による。以下同じ。)の額は,次の計算式のとおり,2959万2713円である(小数点以下切捨て)から,上記確定遅延損害金の残額は,1648万5888円となる。 (計算式)185,909,472×(3+67/365)×0.05≒29,592,713 5 結論以上によれば,原告の請求は,①損害金元本1億8590万9472円と,②上記①に対する平成23年3月11日から平成26年5月16日までの確定遅延損害金の残額1648万5888円(①と②の合計は2億0239万5360円),③上記①に対する平成26年5月17日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官本田晃 裁判官榎本光宏 裁判官山 裁判長 裁判官本田晃 裁判官榎本光宏 裁判官山田雅秋

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