主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は、原告1及び原告2に対し、各100万円及びこれに対する令和元年10月9日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告3、原告4、原告5及び原告6に対し、各100万円及びこれに対する令和3年3月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は、同性の者との婚姻届を提出したが受理されなかった原告らが、同性同士の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定は、同性同士の婚姻が認められない法的状態を生じさせており、憲法13条、14条1項及び24条に違反するにも関わらず、 被告が必要な立法措置を怠ったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張して、被告に対し、慰謝料100万円及びこれに対する各訴状送達の日(原告1及び2は令和元年10月9日、原告3ないし6は令和3年3月8日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 性的指向性的指向とは、人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念をいい、恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛、同性に向かう同性愛、男女両方 に向かう両性愛を指す(以下、性的指向が異性愛である者を「異性愛者」、性 ういう対象に向かうのかを示す概念をいい、恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛、同性に向かう同性愛、男女両方 に向かう両性愛を指す(以下、性的指向が異性愛である者を「異性愛者」、性 的指向が同性愛である者を「同性愛者」という。)。また、性自認とは、自分の性をどのように認識しているのか、どのような性のアイデンティティを自分の感覚として持っているかを示す概念であり、身体の性と性自認が一致しない者をトランスジェンダーという。 (2)ア原告1及び原告2は、いずれも男性であり、かつ同性愛者であり、居住地 において共同生活を営んでいる。原告1及び原告2は、平成30年6月、福岡市が運用を開始していた「パートナーシップ宣誓制度」を利用し、パートナーシップ関係にあることを宣誓し、宣誓書受領証の交付を受けた(甲B1、2の1・2)。 原告1及び原告2は、令和元年7月5日、居住地において婚姻届を提出し たが、両者が同性であることを理由に不受理とされた(甲B3)。 イ原告3及び原告4は、いずれも男性であり、かつ同性愛者であり、居住地において共同生活を営んでいる。原告3及び原告4は、令和2年3月、熊本市が運用を開始していた「パートナーシップ宣誓制度」を利用し、パートナーシップ関係にあることを宣誓し、宣誓書受領証の交付を受けた(甲C1)。 原告3及び原告4は、令和2年3月4日、居住地において婚姻届を提出したが、両者が同性であることを理由に不受理とされた(甲C2)。 ウ原告5及び原告6は、いずれも女性であり、かつ同性愛者であり、居住地において共同生活を営んでいる。原告5及び原告6は、令和2年3月、福岡市が運用を開始していた「パートナーシップ宣誓制度」を利用し、パートナ ーシップ関係にあることを宣 つ同性愛者であり、居住地において共同生活を営んでいる。原告5及び原告6は、令和2年3月、福岡市が運用を開始していた「パートナーシップ宣誓制度」を利用し、パートナ ーシップ関係にあることを宣誓し、宣誓書受領証の交付を受けた(甲D4)。 原告5及び原告6は、同年8月12日、居住地において婚姻届を提出したが、両者が同性であることを理由に不受理とされた(甲D5)。 (3) 法律の定め民法は婚姻届の受理要件として、婚姻成立の実質的要件(民法731条~7 36条)を満たしていること、民法739条2項やその他の法令の規定(戸籍 法や戸籍法施行規則等)に違反していないことを定めており、民法及び戸籍法には、婚姻当事者が異性同士でなければならないという規定は明示的には存在しない。 他方で、民法739条1項は、婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずるとし、戸籍法74条1号は、婚姻をしよう とする者は、夫婦が称する氏を届け出なければならない旨規定していること等に照らし、現在の婚姻制度として、同性同士の婚姻の届出は、不適法とされる。 (以下、同性同士の婚姻を不適法とする民法及び戸籍法の諸規定を総称して、「本件諸規定」という。) 2 争点及び争点に対する当事者の主張の要旨 本件の争点は次のとおりであり、争点に対する当事者の主張の要旨は、別紙2のとおりである。なお、同別紙で定義した用語は、本文においても用いる。 (1) 本件諸規定が憲法13条、14条1項又は24条に違反しているか。 (2) 本件諸規定を改廃しないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法であるか。 (3) 原告らの損害の発生及び数額(4) 原告6につき、国家賠償法6条所定 いるか。 (2) 本件諸規定を改廃しないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法であるか。 (3) 原告らの損害の発生及び数額(4) 原告6につき、国家賠償法6条所定の相互保証があるか。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実等当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以 下の事実が認められる。 (1) 性的指向及び同性愛等に関する知見ア現在の性的指向に関する知見性的指向の形成原因については不明確であるものの、精神衛生に関わる専門家の間では、ほとんどの場合、性的指向は、人生の初期か出生前に決定さ れ、選択するものではないと考えられている。また、精神疾患と性的指向は 無関係であり、自己の意思や精神医学的な療法によって性的指向が変わることはないとされている(甲A2、3、466の1・2、542、弁論の全趣旨)。 イ同性愛に関する知見の変遷(ア) 欧米には、キリスト教的価値観の下、同性愛的関係を否定する考え方が あり、19世紀後半に自らを同性愛者と考える人々が現れるようになると、これを処罰する又は病気として医療の対象とするようになった。この頃、ドイツの精神科医らにより同性愛の病理化を提唱する文献が執筆された。 (甲A358・78~84頁)アメリカ精神医学会が公刊した精神疾患の診断マニュアル(Diagnostic andStatisticalManualofMentalDisorders、以下「DSM」という。)のうち、1952年(昭和27年)に公刊したDSM-Ⅰでは、「同性愛」を「性的逸脱」の一つの診断名と位置づけ、「社会病質パーソナリティ障害」の大分類の下に分類した。1968年(昭和43年)に公 。)のうち、1952年(昭和27年)に公刊したDSM-Ⅰでは、「同性愛」を「性的逸脱」の一つの診断名と位置づけ、「社会病質パーソナリティ障害」の大分類の下に分類した。1968年(昭和43年)に公刊したDSM-Ⅱでは、「パーソナリティ障害及びその他の非精神病性精神障害」と いう大分類の下に「性的逸脱」という小分類があり、その中に「同性愛」という項目が分類されている。世界保健機関(以下「WHO」という。)が1975年(昭和50年)に出した疾病分類(InternationalClassificationofDiseases、以下「ICD」という。)の第9版(ICD-9)では「性的逸脱及び障害」の項の1つに「同性愛」という分類名が挙げられ ていた。(甲A377)(イ) 1970年代初頭から、同性愛の病理化に対する実証的研究による疑義及びこれを根拠とした同性愛者らの運動により、同性愛の脱病理化が進められた。アメリカ精神医学会は、1973年(昭和48年)、DSMの同性愛の項目を削除することを決定したものの、DSM-Ⅱでは新たに「性 指向障害」という診断名が掲載され、1980年(昭和55年)に公刊し たDSM-Ⅲにおいて、「性指向障害」を自我違和性(異質性)同性愛という限定的な概念に改め、1987年(昭和62年)に公刊したDSM-Ⅲ-Rにおいて、「自我違和性(異質性)同性愛」という名称も削除され、同性愛を「正常範囲内の差異」だとする見方をとるようになった。WHOは、1992年(平成4年)、ICD-10以降において、「同性愛」の 分類名を削除し、自我違和的性指向という分類名が用いられ、「性指向自体は障害と考えられるべきではない」と明記された。 今日、同性愛それ自体は病気ではないという見方は、精神医学及び 「同性愛」の 分類名を削除し、自我違和的性指向という分類名が用いられ、「性指向自体は障害と考えられるべきではない」と明記された。 今日、同性愛それ自体は病気ではないという見方は、精神医学及び心理学の専門家の一般的見解である。 (以上につき、甲A359、377、379の1・2、382の1・2、 383の1・2、384、385の1・2)ウ我が国における同性愛に関する知見(ア) 明治時代以前我が国においては、明治以前より、男色又は衆道と呼ばれる男性同士の性的な結びつきが行われ、江戸時代には少年による売春が広がり当時の幕 府が男色を規制したが、欧米と異なり、男性間の性的接触そのものを違法なものとして取り締まることを目的とするものではなかった(甲A358・94~96頁)。 (イ) 明治初頭明治政府は、明治維新後、文明開化を掲げ、社会の変革に取り組み、文 明にふさわしい性の価値観が示された。この価値観はすぐに浸透したわけではなかったが、明治5年、日本では中世から鶏姦(男性同士の性行為を指す。)が行われてきたが、西洋においては鶏姦が不自然の罪と呼ばれていることからこれを禁止する鶏姦条例が制定され、翌年には法律で禁止された(明治15年に刑罰ではなく慣習によって処すべきといった意見から 鶏姦を罪とする法律は廃止された。)。(甲A205・5頁、358・9 7~99頁)明治24年、同性愛の病理化を提唱するドイツの精神学者の文献(前記イ(ア))の翻訳が『裁判医学会雑誌』に翻訳連載され始め、明治27年には、この連載をもとに『色情狂編』として翻訳本が出版された(甲A360、361)。また、明治39年、同性愛を精神病とした『新撰精神病學』が 出版された(甲A362)。これらの文献では、 27年には、この連載をもとに『色情狂編』として翻訳本が出版された(甲A360、361)。また、明治39年、同性愛を精神病とした『新撰精神病學』が 出版された(甲A362)。これらの文献では、同性愛が病理的な色情として紹介され、その治療法として、催眠術、臭素剤の投与、身体的労働、冷水浴及び境遇の変化等が挙げられた(甲A361、362)。 (ウ) 大正から平成まで大正時代には、西洋の性科学が翻訳書を通して浸透するとともに、性欲 学についての書籍が執筆されるようになった。大正2年、『色情狂編』は、『変態性欲心理』というタイトルで一般大衆向けに出版され、我が国でも大きな影響力を有するようになり、同性愛を変態性欲として精神病とみなす性雑誌が多く発刊された。(甲A205)同性愛を変態性欲とする知見は我が国でも定着し、広辞苑は昭和44年 出版の第2版から昭和58年出版の第3版まで同性愛を「同性を愛し、同性に性欲を感ずる異常性欲の一種」と記述した(甲A358・105頁、370の1)。 (エ) 平成以降前記イ(イ)の欧米の脱病理化の動きを経て、厚生省(当時)は、平成7年、 前記ア(イ)の性的指向単独では障害とはみなされないものとするWHOのICD-10を採用した。これを受けた日本精神神経学会も、同年、ICD-10を採用することを明らかにした。(甲A205・46頁、385の1・2)(2) 婚姻制度の変遷と同性婚についての検討の有無 ア婚姻制度は、男女の性的結合関係による種の保存を規範によって統制しよ うとするところに生まれ、それぞれの時代、社会には、それぞれの要請を実現するための婚姻制度があった。 欧米の婚姻制度の前提には聖書の婚姻観があり、10世紀以降教会が よって統制しよ うとするところに生まれ、それぞれの時代、社会には、それぞれの要請を実現するための婚姻制度があった。 欧米の婚姻制度の前提には聖書の婚姻観があり、10世紀以降教会が婚姻をサクラメントとして独占していたが、宗教改革と絶対王権の整備に伴い、国家が婚姻の成立を把握する民事婚思想が台頭し、以降民事婚が婚姻の方式 の中核を占めるようになった。近代市民社会では、すべての人は平等な資格が与えられ、人間の社会的関係は、自由な意思主体者間の契約的関係となったことから、婚姻も当事者の合意という契約的成立要件が与えられる一方で、婚姻の内容はあらかじめ法によって定められるという制度としての婚姻は残存した。 (以上につき、乙2)イ日本における婚姻制度とその要件(ア) 民法制定以前明治初年頃、婚姻の実質的要件は、慣習に委ねられ、統一的な実体法は存在しなかったところ、我が国最初の民法典として公布された明治23年 法律第98号(旧民法)の人事編において初めて統一的な実質的要件が定められ、旧民法は施行に至らなかったものの、明治31年法律第9号の民法(以下「明治民法」という。)に受け継がれた。旧民法人事編の草案段階では、イタリア民法に倣い、「身体ノ不能力」を婚姻の目的である子孫を生殖する結果を得ないものとして婚姻の無効原因に加えようとする意 見もあったが、結局そのような意見は採用に至らなかった。(甲A209、乙1)また、当時の学説においては、婚姻の目的は心の和合や夫婦の共同生活であり、必ずしも子を得ることを目的としないという考えがあった(甲A211、213)。 (イ) 明治民法制定時 明治民法「第4編親族」は、明治31年7月16日に施行された(甲A20 得ることを目的としないという考えがあった(甲A211、213)。 (イ) 明治民法制定時 明治民法「第4編親族」は、明治31年7月16日に施行された(甲A209)。 明治民法における婚姻は、我が国の従来の婚姻に関する慣習を前提としつつ、弊害や不明瞭な部分を法律によって補正することを目的とした(乙3)。明治政府は、婚姻制度の近代化のために妾制度や封建的身分制度を 廃止したものの、国民の把握と統制の手段である戸籍制度を民法上の家族として構成し、婚姻に戸主や親の同意を必要とするなど家による統制を維持した(甲A214)。この際の婚姻は男女間のものであることが前提とされていた(乙4、5)。 当時の学説においても、婚姻は夫婦の共同生活を目的とするもので、必 ずしも子を得ることを目的としないという考えがあった(乙4)。また、律令制度以来の離婚法では「無子」が棄妻の一事由とされていたが、明治民法においては、生殖能力を有しないことや生殖しないことをもって婚姻障害事由や婚姻取消・無効事由・離婚事由として規定されることはなかった(甲A209、210、553)。 (ウ) 日本国憲法(昭和22年5月3日施行)制定時明治23年施行の大日本帝国憲法は、婚姻に関する規定を置いていなかったが、これを改正する形で制定された現行の憲法(日本国憲法)では、日本軍国主義の温床とみなされた「家」制度を解体して、家族関係に個人の尊厳(自由)と平等を確立するため、婚姻に関する憲法24条の規定が 置かれた(甲A136)。 憲法24条の起草過程において、その原案を作成した連合軍総司令部(GHQ)民生部のベアテ・シロタ・ゴードンは、女性の地位向上と家族の保護のために詳細な条文を起草し、その草案には、「・・・ 6)。 憲法24条の起草過程において、その原案を作成した連合軍総司令部(GHQ)民生部のベアテ・シロタ・ゴードンは、女性の地位向上と家族の保護のために詳細な条文を起草し、その草案には、「・・・婚姻と家庭とは、両性(原文ではbothsexes)が法律的にも社会的にも平等であるこ とは当然であるとの考えに基礎をおき、親の強制ではなく相互の合意に基 づき、かつ男性の支配(原文ではmaledomination)ではなく、両性の協力(原文ではcooperation)に基づくべきことを、ここに定める。・・」という文言があった(甲A135、136)。日本政府は、家族関係についての条項を憲法に規定することに消極的な姿勢を示し、一旦は婚姻に関する条項に限定しようとしたが、最終的に現在の憲法24条2項に当たる条 項が復活された(甲A136)。その後の修正過程における日本側の「婚姻ハ男女相互ノ合意ニ基キテノミ成立シ」という文言を経て、最終的に大日本帝国憲法改正案22条「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚及 び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」とされ、帝国議会の議論を経て、現在の憲法24条として制定された。 当該改正の目的は、婚姻の自由と夫婦関係における平等の確保を目指したものとされ、その起草過程や帝国議会での審議において、同性婚につい て何らの議論がなされた形跡はない。 (以上につき、前掲証拠のほか、甲A137、214、乙21、弁論の全趣旨)(エ) 昭和22年の民法改正時日本国憲法の制 いて、同性婚につい て何らの議論がなされた形跡はない。 (以上につき、前掲証拠のほか、甲A137、214、乙21、弁論の全趣旨)(エ) 昭和22年の民法改正時日本国憲法の制定に伴い、明治民法は、昭和22年に全面的に改正され た(昭和22年法律第222号)。当該改正の提案理由は、日本国憲法13条、14条及び24条の制定に対し、明治民法の特に親族編、相続編において、当該基本原則に抵触する幾多の規定があるので、これを改正する必要があることと説明され、上記基本原則に反する戸主制度等が撤廃された。同改正に係る国会審議において、同性婚について言及された形跡はな い。(乙6、7) また、当時の学説では、婚姻意思は、その社会の通念において婚姻とみられる生活共同体を形成しようとする意思という意味で、同性婚に向けられた意思は婚姻意思に当たらず、同性婚は無効であるという考えがあった(乙9、10)。 (3) 諸外国及び地域における同性婚等に関する状況 ア同性間の人的結合関係に関する諸制度(甲A10)(ア) 登録パートナーシップ制度欧米でも、前記(1)のとおり、キリスト教的価値観及び医学上の知見から同性愛自体が否定されていたが、知見の変化により制度にも変化が生じた。1989年(平成元年)、デンマークにおいて登録パートナーシ ップ制度が誕生し、同様に同性カップルを法的に保護するための法制度(国により名称や具体的な内容は異なるものの、以下総称して「登録パートナーシップ制度」と呼ぶことがある。)の整備がヨーロッパ諸国を中心に広がった。 登録パートナーシップ制度は、一般的に、婚姻とほとんど同じ法的効 果を同性カップルに与えるものであるが、あくまで婚姻とは別のものと がある。)の整備がヨーロッパ諸国を中心に広がった。 登録パートナーシップ制度は、一般的に、婚姻とほとんど同じ法的効 果を同性カップルに与えるものであるが、あくまで婚姻とは別のものと整理され、異性カップルにも利用を認める国もあるものの、多くの国は同性カップルのみを対象としている。また、当該制度は独立した規定によるもの、婚姻の規定を準用するもの又はその中間に分類でき、独立した規定による制度は婚姻に比べると保護の範囲が限定されており、国に よって、保護の範囲が異なっている。 (イ) 法定同棲・PACS等婚姻や登録パートナーシップ制度では、財産法・身分法・社会保障法・税法等の広範囲にわたる法的な権利及び義務がパッケージとなっているが、このような強力な法的効果を望まないカップルについて、一定の 同棲関係に対して、主に財産法上の法的効果を与える法定同棲(ベルギ ー、スウェーデン)、当事者の契約によって権利及び義務を設定し公的機関に登録することで、第三者や国に対してカップルであることを対抗することができるようになるPACS(フランス)等の法制度を用意する国もあり、これらの諸制度は、異性カップルか同性カップルかを問わず利用することができる。 (ウ) 同性婚婚姻は、従来異性間においてなされるものであったが、2000年(平成12年)にオランダが同性間の婚姻を容認して以来、同性間の婚姻を容認する国は着実に増加している。ただし、国によっては同性婚カップルと異性婚カップルとで一部異なる法的取扱いを行っており、その主な ものとして嫡出推定規定の適用の有無、養子縁組の可否、生殖補助医療利用の可否等が挙げられる。 イ同性間の人的結合、特に同性婚に関する各国・地域の対 異なる法的取扱いを行っており、その主な ものとして嫡出推定規定の適用の有無、養子縁組の可否、生殖補助医療利用の可否等が挙げられる。 イ同性間の人的結合、特に同性婚に関する各国・地域の対応(ア) 次の各国・地域は、次に掲げる年(断りのない限り法律の制定年又は裁判所がこれを容認する判断をした年)に同性婚の制度を導入した。2 022年(令和4年)10月時点における世界人口に占める同性婚を認める国の割合は約17%、世界GDPに占める同性婚を認める国の割合は約52%である。(甲A10~13、109、300、453~455、557~559)2000年(平成12年) オランダ 2003年(平成15年) ベルギー2005年(平成17年) スペイン及びカナダ2006年(平成18年) 南アフリカ2008年(平成20年) ノルウェー2009年(平成21年) スウェーデン 2010年(平成22年) ポルトガル、アイスランド及びアルゼン チン2012年(平成24年) デンマーク2013年(平成25年) ウルグアイ、ニュージーランド、フランス、ブラジル及び英国(イングランド及びウェールズ) 2014年(平成26年) ルクセンブルク2015年(平成27年) 米国、アイルランド及びフィンランド2016年(平成28年) コロンビア(ただし施行年)2017年(平成29年) マルタ、ドイツ、オーストリア及びオーストラリア 2018年(平成30年) コスタリカ2019年(令和1年) 英国(北アイルランド)及びエクアドル(ただし施行年)、台湾 イツ、オーストリア及びオーストラリア 2018年(平成30年) コスタリカ2019年(令和1年) 英国(北アイルランド)及びエクアドル(ただし施行年)、台湾2021年(令和3年) スイス及びチリ2022年(令和4年) スロベニア及びキューバ (イ) 以下の各国・地域の最高裁判所に当たる司法機関で、同性間の婚姻を認める法律の規定を合憲とする司法判断等又は同性間の婚姻を認めない法令を違憲とする司法判断等が示された。 カナダ(平成16年)及びスペイン(平成24年)で、同性間の婚姻を認める法律の規定を合憲とする司法判断等が示された(甲A11)。 南アフリカ(平成18年)、米国(平成27年)、コロンビア(平成28年)、オーストリア(平成29年)、台湾(平成29年)、コスタリカ(平成30年)及びスロベニア(令和4年)で、同性間の婚姻を認めない法令を違憲とする司法判断等が示された。(甲A11、12、14、16の1・2、327、558) (ウ) 他方、ロシアでは、1993年(平成5年)の刑法典改正によって同 性愛行為が処罰対象から外されたが、2013年(平成25年)、連邦レベルの規制として「伝統的な家族関係を否定する情報から未成年者を保護するために連邦法「健康及び発達に害を及ぼし得る情報から未成年者を保護する法律」第5条及びその他個別の連邦法を改正する法律」が成立し、未成年者に対する同性愛の宣伝行為が禁止された。憲法裁判所 は、2014年(平成26年)、非伝統的な性的関係の宣伝行為の禁止は憲法に違反しないと判断した。 ベトナムでは、2014年(平成26年)に改正婚姻家族法が成立し、婚姻の禁止事項から同性婚が除かれる一 14年(平成26年)、非伝統的な性的関係の宣伝行為の禁止は憲法に違反しないと判断した。 ベトナムでは、2014年(平成26年)に改正婚姻家族法が成立し、婚姻の禁止事項から同性婚が除かれる一方で、「国家は同性者同士の婚姻を認めない。」と明記した。 イタリアでは、憲法裁判所が、2010年(平成22年)に、同性婚を認めていない民法の規定は憲法に違反しないと判断する一方で、2014年(平成26年)、同性の当事者間の権利及び義務を適切に定めた婚姻とは別の形式が同国に存在しないことは違憲であると判断した。また、ヨーロッパ人権裁判所は、同性カップルの承認及び保護のための法 的枠組みを提供しないことはヨーロッパ人権条約8条違反に当たると判断した。このような判断を受けて、2016年(平成28年)にイタリアにおける登録パートナーシップ制度が法制化された。当該制度の利用による法的権利義務は、基本的に婚姻に関する規定が準用されているが、貞操義務の有無や養子縁組に関する規定の有無といった違いもある。 韓国では、2016年(平成28年)、ソウル西部地方法院が、同性婚の可否について、一般国民の意見の収斂等を経て国会の立法的決断によって解決されるべきであって、司法による新しい解釈又は類推解釈を通じて解決できる問題ではないと判断した。 (以上につき、甲A10) ウ国連等の動きについて(甲A467) ヨーロッパ人権裁判所が、1981年(昭和56年)に北アイルランドのソドミー法(同性愛者の性行為を刑罰で禁止する法律)がヨーロッパ人権条約第8条の私生活の尊重を受ける権利に反すると判断した後、同裁判所でソドミー法が同条を侵害するという判例が確立された。国連自由権規約人権委員会は、1994 為を刑罰で禁止する法律)がヨーロッパ人権条約第8条の私生活の尊重を受ける権利に反すると判断した後、同裁判所でソドミー法が同条を侵害するという判例が確立された。国連自由権規約人権委員会は、1994年(平成6年)、ソドミー法の自由 権規約適合性の判断において、自由権規約2条1項(差別なき権利の享有)及び26条(法の下の平等)の差別禁止分類としての「性(sex)」又は「その他の地位(otherstatus)」に性的指向の概念が含まれるとの解釈を示し、2003年(平成15年)や2007年(平成19年)には同性同士のパートナー関係に、少なくとも事実婚と同等の保障をし ないことは、性的指向に基づく差別という解釈を示した。 このようなヨーロッパ人権条約の解釈、その後の国際人権の専門家による同性愛の権利内容の定式化や各国による同性愛を人権課題とする共同声明等の動きも受けて、国連人権理事会は、2011年(平成23年)、「人権、性的指向及び性自認」の決議を採択した(甲A392の 1・2)。同決議は、世界のあらゆる地域での、性的指向及び性自認を理由とした暴力や差別に重大な懸念を表明し、人権高等弁務官に対し、差別的な法律や法の運用、性的指向や性自認を理由とする個人に対する暴力について、同年12月までに、全世界的な調査を行うことを要請し、その報告を受け討議するためのパネルを開催すること、この問題に引き 続き取り組むことを謳っている。 (4) 我が国における同性愛者への対応等に関する状況ア政府・地方公共団体の対応(ア) 政府の対応平成12年、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律が成立し、同 法に基づく基本計画や啓発活動強調事項の中には、性的指向を理由とす る偏見と差別を無くす 政府の対応平成12年、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律が成立し、同 法に基づく基本計画や啓発活動強調事項の中には、性的指向を理由とす る偏見と差別を無くすことが掲げられた(甲A17、18)。それ以降、政府は、男女共同参画社会法に基づく基本計画(平成22年、27年、令和2年)、自殺対策基本法に基づく自殺総合対策大綱等(平成24年、29年、令和4年)、文部科学省発出の教育に係る通知(平成27年、28年)、男女雇用機会均等法に基づく指針(平成28年)、労働施策 総合推進法に基づく告示(令和2年)等において、性的指向・性自認に関する理解とこれに基づく差別等の禁止を推奨してきた(甲A184、395、397、398、400、555、弁論の全趣旨)。また、政府は、平成23年、前記(3)ウの「人権、性的指向及び性自認」の決議に賛成している(甲A392の1・2)。 (イ) 地方自治体の対応諸外国の動向を受けて、地方自治体の中で同性婚の容認を求める声が揚がり、平成27年の東京都渋谷区での導入を皮切りにパートナーシップ認定制度(以下、各種違いはあるものの、我が国の地方自治体が導入する同制度を総称して、「パートナーシップ制度」と呼ぶ。)の導入が 広がった。同制度は、各地方自治体により目的、効果、形式等が異なるものであるが、人権や個人の尊厳の尊重、多様な生き方の承認及び安心して暮らせる社会やまちづくりを主な目的として、同性カップルを公的に認定するための制度であり、登録パートナーシップ制度とは異なり、法的効果を生じさせるものではない。地方自治体によっては、地方公共 団体間での相互利用を可能とする例や同性パートナーの子を含めたファミリーシップ証明も可能とする例もあり、制度を利用す 異なり、法的効果を生じさせるものではない。地方自治体によっては、地方公共 団体間での相互利用を可能とする例や同性パートナーの子を含めたファミリーシップ証明も可能とする例もあり、制度を利用することで市営住宅の申込み等一部の行政サービスの対象となるところもある。(甲A10、164、393、394、601、602、604)令和4年11月1日時点で、パートナーシップ制度を導入した地方自 治体の累計数は242、日本の総人口に対する導入自治体の人口カバー 率は62.1%である(弁論の全趣旨)。 全国20の指定都市の市長による指定都市市長会は、平成30年、各公共団体のパートナーシップ制度の広がりの状況も踏まえて、国がパートナーシップ制度を含めた性的少数者への理解促進や自治体の取組を促進するような支援を行うことが必要といった内容の国への要請を採 択した(甲A44、45)。 (ウ) 国会での議論平成21年、衆議院法務委員会において、外国で同性婚を可能とする証明書を法務省が発行することについて質問が行われ(甲A55)、平成25年に同性パートナーの在留資格について質問が行われ(甲A5 6)、平成27年には、参議院本会議において同性婚と憲法の関係についての質問が行われた(甲A57)。このうち、平成27年の質問に対し、当時の内閣総理大臣は、憲法24条は、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立すると定めており、現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていないこと、同性婚を認めるために 憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要すると答弁した(甲A57)。 野党は、令和元年6月3日、同性婚を可能とするために必要な法整備を行い婚姻の平 を検討すべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要すると答弁した(甲A57)。 野党は、令和元年6月3日、同性婚を可能とするために必要な法整備を行い婚姻の平等を実現するための民法の一部を改正する法律案を国会に提出したが、審議がされないまま令和3年10月14日、衆議院の 解散により廃案となった。上記以降、国会の委員会又は本会議において、同性婚及び同性愛カップルの法的保護に関する質疑は行われているものの、これらに対する政府の答弁は概要上記のものから変わっていない(甲A58~63、69~71、83~88、110~112、267~291、405、424~426、636、637、639~653)。 イ同性婚に関する意識調査 (ア) 平成27年河口和也広島修道大学教授(以下「河口教授」という。)を研究代表者とするグループが、全国の20歳から79歳の男女に対して行った調査(有効回答者1259名)によれば、「同性どうしの結婚を法で認めること」について、賛成が14.8%、やや賛成が36.4%、やや反 対が25.3%、反対が16.0%、無回答が7.5%であった。このうち、20~30代の72.3%、40~50代の55.1%は賛成又はやや賛成と回答したが、60~70代は32.3%が賛成又はやや賛成と回答し、56.2%は反対又はやや反対と回答した。(甲A74・152、155頁)。 毎日新聞社が、有権者に対して行った世論調査(有効回答者1018名)では「同性婚」について「賛成」が44%、「反対」が39%、「無回答」が17%であった(甲A75)。 朝日新聞社が行った世論調査では、「男性同士、女性同士の結婚を法律で認めるべきだと思いますか」について について「賛成」が44%、「反対」が39%、「無回答」が17%であった(甲A75)。 朝日新聞社が行った世論調査では、「男性同士、女性同士の結婚を法律で認めるべきだと思いますか」について、「認めるべきだ」が41%、 「認めるべきではない」が37%であった(甲A266)。 (イ) 平成29年NHKが、全国18歳以上の国民に対して行った世論調査(有効回答者2643名)では、「男性どうし、女性どうしが結婚することを認めるべきだ」について、「そう思う」が50.9%、「そうは思わない」 が40.7%、「わからない、無回答」が8.4%であった(甲A76、77)。 朝日新聞社が、有権者に対して行った世論調査では、同性婚を法律で認めるべきが49%、認めるべきでないが39%であった。このうち、18~29歳、30代では「認めるべきだ」が7割を超えているのに対 し、60代では「認めるべきだ」「認めるべきではない」がともに42 %と拮抗、70歳以上では「認めるべきだ」が24%、「認めるべきではない」が63%となった。(甲A78、79)(ウ) 平成30年国立社会保障・人口問題研究所が、全国の配偶者のいる女性に対して行った全国家庭動向調査(有効回答者6142名)によれば、「男性ど うしや、女性どうしの結婚(同性婚)を法律で認めるべきだ」について「まったく賛成」が20.3%、「どちらかといえば賛成」が49.2%、「どちらかといえば反対」が22.2%、「まったく反対」が8. 3%であった(甲A104・72頁)。 (エ) 令和元年 河口教授を研究代表者とするグループが、全国の20歳から79歳の男女に対して行った調査(有効回答者2632名)によれば、「同性 った(甲A104・72頁)。 (エ) 令和元年 河口教授を研究代表者とするグループが、全国の20歳から79歳の男女に対して行った調査(有効回答者2632名)によれば、「同性どうしの結婚を法で認めること」について((ア)と同様の質問)、賛成が25.8%、やや賛成が39.0%、やや反対が19.4%、反対が10. 6%、無回答が5.2%であった。このうち、20~30代の81%、 40~50代の74%は賛成又はやや賛成と回答したが、60~70代は47.2%が賛成又はやや賛成と回答し、43.4%は反対又はやや反対と回答した。(甲A170)日高庸晴宝塚大学看護学部教授が、性的少数者に対して行ったオンライン調査(有効回答者1万769名)によれば、対象者全体の60.4 %が異性婚と同じ法律婚の同性間への適用を望んでいると回答した(甲A172)。 「働き方と暮らしの多様性と共生」研究チームが、18~59歳の大阪市民に対して行ったアンケート(有効回答者4285名)によれば、「同性カップルが法的に結婚できる制度」に「賛成」が51.5%、「や や賛成」が31.3%、「やや反対」が8.9%、「反対」が6.8% であった(甲A105・54頁)。 (オ) 令和2年朝日新聞社が、全国の有権者に対して行った調査(有効回答者2053名)によれば、同性婚について、「賛成」又は「どちらかと言えば賛成」が46%、「どちらとも言えない」が31%、「反対」又は「どち らかと言えば反対」が23%であり、平成17年の有権者を対象として行った調査と比較すると賛成意見が14%増加した。このうち、与党である自由民主党支持層でも「賛成」又は「どちらかと言えば賛成」が41%、「反対」又は「どちら %であり、平成17年の有権者を対象として行った調査と比較すると賛成意見が14%増加した。このうち、与党である自由民主党支持層でも「賛成」又は「どちらかと言えば賛成」が41%、「反対」又は「どちらかと言えば反対」が29%であった。(甲A171) (カ) 令和3年朝日新聞社が、全国の有権者に対して行った世論調査(有効回答者1564名)では、「男性同士、女性同士の結婚を法律で認めるべきだと思いますか」について((ア)と同様の質問)、「認めるべきだ」が65%、「認めるべきでない」が22%であった。このうち、18~29歳、3 0代では「認めるべきだ」が8割を超え、60代では「認めるべきだ」が66%、70歳以上では「認めるべきだ」が37%、「認めるべきではない」が41%となった。(甲A266、409)NHKが、全国18歳以上の者に対して行った世論調査(有効回答者1508名)では、男性同士、女性同士の結婚も認めるべきだという意 見について、「賛成」が27.9%、「どちらかといえば、賛成」が28.8%、「どちらかといえば、反対」が18.6%、「反対」が18%であった(甲A624の1・2)。 (キ) 令和4年毎日新聞社が、全国の有権者に対して行った世論調査(有効回答者1 315名)では、同性婚を法的に認めるべきかどうかについて、「認め るべきだ」が46%、「どちらともいえない」が37%、「認める必要はない」が16%であった(甲A625の1・2)。 ウ性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年法律第111号、平成16年7月16日施行)3条1項は,性同一性障害者につき 性別の取扱いの変更の審判が 取扱いの特例に関する法律性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年法律第111号、平成16年7月16日施行)3条1項は,性同一性障害者につき 性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として、「現に婚姻をしていないこと(同項2号)を定めているところ、最高裁判所は、同規定について、現に婚姻をしている者について性別の取扱いの変更を認めた場合、異性間においてのみ婚姻が認められている現在の婚姻秩序に混乱を生じかねない等の配慮に基づくものとして、合理性を欠くものとはいえない から、国会の裁量権の範囲を逸脱するものということはできず、憲法13条、14条1項、24条に反するものとはいえないと判断した(同裁判所令和元年(ク)第791号同2年3月11日第二小法廷決定)。 エ婚姻に関する意識調査(ア) 内閣府の平成17年版国民生活白書によれば、18~40歳の未婚者 に対しての「自分の一生を通じて考えた場合、あなたの結婚に対するお考えは、次のうちどちらですか」という質問に対し、「いずれ結婚するつもり」と回答した割合は、昭和57年から平成14年までの毎年全ての調査で9割を超えており、同年の調査では、「結婚している友人は幸せそうだと思うか」という質問に対し、「当てはまる」と回答した割合 はいずれの世代でも5割を超えていた(甲A301・16頁)。 (イ) 厚生労働省の平成25年版厚生労働白書によれば、世論調査において、「人は結婚するのが当たり前だ」と回答した割合は平成20年時点で約35%であり、平成3年と比較すると約10%低下しており、「必ずしも結婚する必要はない」という考え方への賛成が増加する一方で、未婚 者に対しての生涯の結婚意思の質問に対し、「いずれ結婚するつもり」 と比較すると約10%低下しており、「必ずしも結婚する必要はない」という考え方への賛成が増加する一方で、未婚 者に対しての生涯の結婚意思の質問に対し、「いずれ結婚するつもり」 と回答した割合は、昭和57年から平成22年までの毎年全ての調査で90%を超えていた(甲A303・59、66頁)。 (ウ) 内閣府の平成26年度結婚・家族形成に関する意識調査によれば、20歳~39歳の未婚・既婚の男女に対しての「あなたは結婚についてどのようにお考えですか」という質問について、「必ずした方が良い」が 14%、「できればした方が良い」が54.1%、「無理してしなくても良い」が29.3%、「しなくて良い」が1.7%、「無回答」が0. 9%であった(甲A304・35頁)。 このうち、結婚を希望する未婚の者に対する「結婚したい理由」は、「家族を持ちたい」、「子供が欲しい」がいずれも70.0%、「好き な人と一緒にいたい」が68.9%、「老後に一人でいたくない」が49.3%、「両親や親戚を安心させたい」が49%であった(甲A304・43頁)。 (エ) 国立社会保障・人口問題研究所の平成27年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)によれば、18~34歳の未婚者 に対しての、「自分の一生を通じて考えた場合、あなたの結婚に対するお考えは、次のうちどちらですか」について、「いずれ結婚するつもり」が男性85.7%、女性89.3%であった。また、「結婚に利点がある」と回答したものは、男性が64.3%、女性が77.8%であり、具体的な利点としては「自分の子どもや家族をもてる」と回答した者が 男性35.8%、女性49.8%で最も多かった(甲A305)。 オ令和元年の婚姻に関する統計政府 .8%であり、具体的な利点としては「自分の子どもや家族をもてる」と回答した者が 男性35.8%、女性49.8%で最も多かった(甲A305)。 オ令和元年の婚姻に関する統計政府の調査、国立社会保障・人口問題研究所の資料等によれば、令和元年の我が国の婚姻に関する状況として、以下の事実が認められる。 (ア) 婚姻件数は59万9007組、婚姻率(年間婚姻件数を総人口で除し た上で1000を乗じた割合)は4.8%であり、婚姻件数100万組 以上、婚姻率10%以上であった昭和47年をピークに減少傾向にある(甲A306、309の4)。 (イ) 合計特殊出生率(15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は、1.36%となり、昭和48年の2.14%から低下傾向にある(甲A308)。 全世帯のうち、児童のいる世帯が占める割合は21.7%であり、昭和61年の46.2%から年々減少している(甲A307・7頁)。 また、嫡出でない子の出生割合は約2.3%である(甲A309の3)。 カ各国、各団体の動向等(ア) 国連自由権規約委員会又は社会権規約委員会は、平成20年10月、 平成25年5月、平成26年8月及び令和4年11月、日本に対して発出した総括所見等において、同性カップルの人権状況について懸念を示し、同性カップルの権利保障について具体的施策を求める趣旨の勧告を行った。うち、令和4年11月に国連自由権規約委員会が発出した総括所見では、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル及びトランスジェンダー の人々が、特に公営住宅、戸籍の性別変更、法律的な結婚へのアクセス及び矯正施設での処遇において、差別的な扱いに直面していることを示す報告に懸念を抱いている(自 クシャル及びトランスジェンダー の人々が、特に公営住宅、戸籍の性別変更、法律的な結婚へのアクセス及び矯正施設での処遇において、差別的な扱いに直面していることを示す報告に懸念を抱いている(自由権規約第2条及び26条)と述べ、締結国が行うべきことの1つとして同性カップルが公営住宅へのアクセスや同性婚を含め、規約に規定された全ての権利を締約国の領域の全て で享受できるようにすると述べている(甲A80の1~82の2、560の1・2)。 (イ) 在日アメリカ商工会議所は、2018年(平成30年)9月、日本政府に対し、同性カップルにも婚姻の権利を認めるように提言し、同意見書について、令和4年11月までに、在日オーストラリア・ニュージー ランド商工会議所、在日英国商工会議所、在日カナダ商工会議所、在日 デンマーク商工会議所、在日アイルランド商工会議所、在日ベルギー・ルクセンブルグ商工会議所、欧州ビジネス協会及び多数の日本企業、法律事務所等が賛同している(甲A53、54、614)。 (ウ) 日本弁護士連合会は、令和元年、国は同性婚を認め、これに関連する法令の改正を速やかに行うべきであるとの内容の意見書を取りまとめ、 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣及び法務大臣に提出した(甲A48、49)。各地の弁護士会連合会、弁護士会でも令和4年11月までに5弁護士会連合会、15弁護士会等から同性婚の実現を要請する意見書、会長声明、宣言等が発出されている(甲A46、47、103、226~232、292~296、450~452、541、621、 622)。 2 争点(1)(本件諸規定が憲法13条、14条1項又は24条に違反しているか。)について(1) 婚姻の本質は、両当事者が永続的な精神的及 450~452、541、621、 622)。 2 争点(1)(本件諸規定が憲法13条、14条1項又は24条に違反しているか。)について(1) 婚姻の本質は、両当事者が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるところ(最高裁判所昭和61年 (オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)、婚姻は、①両当事者が上記意思を持って共同生活を開始することを、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生じ(民法739条1項)、②民法は、親族関係(725条)、共同親権(818条)、配偶者の遺留分を含む相続権(890条、900条1号ないし3号及び1042条)、 離婚時の財産分与(768条)、配偶者居住権(1028条)のほか、夫婦同氏の原則(750条)、夫婦の同居、協力及び扶助の義務(752条)、夫婦間の契約の取消権(754条)、夫婦の財産関係(755条)、夫婦財産契約の対抗要件(756条)、婚姻費用の分担(760条)、日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)、夫婦間における財産の帰属(762条)等の夫 婦間の権利義務を発生させる。また、婚姻により、③戸籍制度による家族関係 の公的認証(戸籍法6条)が与えられるとともに、これを基礎として、④所得税・住民税の配偶者控除(所得税法2条、83条、83条の2、地方税法34条)、相続税の軽減(相続税法19条の2)、配偶者としての在留資格の付与(出入国管理及び難民認定法2条の2)、遺族年金の付与(国民年金法37条、厚生年金保険法59条)、犯罪被害者給付制度における遺族給付金の支給(犯 罪被害者等の給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号)等の利益、配偶者から 与(国民年金法37条、厚生年金保険法59条)、犯罪被害者給付制度における遺族給付金の支給(犯 罪被害者等の給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号)等の利益、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律による保護、裁判における証言拒否特権(民事訴訟法196条、刑事訴訟法147条)等の各種権利が与えられる。 以上によれば、現行法上、婚姻とは、当事者が永続的な精神的及び肉体的結 合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことを市町村長に届け出(上記①)、市町村長がこれを受理することで、当事者間に各種の法的権利義務を伴う身分を発生させ(上記②)、身分関係を公証し(上記③)、これに公的な保護が与えられる(上記④)制度であると認められる。 (2) 本件諸規定は憲法24条1項に違反するか ア原告らは、今日の社会状況の変化や憲法24条1項の趣旨を踏まえれば、同性愛者の婚姻の自由も保障されるから、同性カップルの婚姻を認めない本件諸規定は、婚姻の自由を侵害するものであり、同項に違反すると主張する。 婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自 由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであり、婚姻により与えられる重要な法律上の効果や国民の法律婚尊重の意識等を考慮すると、憲法24条1項の規定の趣旨に照らして尊重されるべき利益であることが認められる(最高裁判所平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。 そこで、憲法24条1項が同性愛者間の婚姻の自由を保障するものとい えるか否かについて検討すると、憲法24条1項の「両性」及び「夫婦」という文言からは、同条が男女の婚姻 そこで、憲法24条1項が同性愛者間の婚姻の自由を保障するものとい えるか否かについて検討すると、憲法24条1項の「両性」及び「夫婦」という文言からは、同条が男女の婚姻を想定しているものと解さざるを得ない。その制定過程を検討しても、前記1(2)のとおり、日本国憲法制定時の憲法24条の主な目的は、家族関係における自由と平等の実現、その中でも戸主制度の廃止による女性の地位向上と家族の保護であり、同性婚に ついて議論が行われておらず、その起草過程においても「男女」及び「両性」という文言が現れていること、これを受けた昭和22年の民法改正時における国会審議においても同性婚について言及された形跡が認められないことからすると、憲法24条1項の制定時において同性婚は想定されていなかったものと認められ、当該規定は同性婚を禁止する趣旨であると はいえないものの、同条でいう「婚姻」は異性間の婚姻を指し、同性婚を含むものではないと解するのが相当である。そして、前記のとおり、婚姻は、自己が永続的な精神的及び肉体的結合の相手として選んだ者との間の共同生活について(上記①)、国がこれを公証するものであり、上記②~④のとおり、当事者の意思を前提に各種法律によりその要件が定められ、 これを満たしたときに一律に権利義務が発生する法律上の制度であり、当事者の意思のみによってその要件や効果を決定できるものではないことからすれば、婚姻の自由が憲法上尊重すべき利益であるとしても、これを超えて憲法上の権利と構成するのは困難である。 イ原告らは、憲法24条1項の「婚姻」には同条項の拡張解釈ないし類推 適用により同性婚を含むものと解されると主張する。 確 これを超えて憲法上の権利と構成するのは困難である。 イ原告らは、憲法24条1項の「婚姻」には同条項の拡張解釈ないし類推 適用により同性婚を含むものと解されると主張する。 確かに婚姻についての社会通念や国民の意識、価値観は変遷し得るものであり、こうした社会通念等の変遷により同性婚が異性婚と異ならない実態と国民の社会的承認がある場合には、同性婚は「婚姻」に含まれると解する余地があると言い得る。上記認定事実によれば、諸外国において同性 婚を法制度化している国が相当数あり、わが国においても多くの地方自治 体においてパートナーシップ制度が導入される等同性婚について異性婚と同じく法的保護を与えようという動きや同性愛に対する偏見を除去しようとする動きがあることが認められる。しかし、我が国における世論調査の結果等によれば、同性婚の導入に反対の意見を有する者が60歳以上の年齢層においては肯定的な意見と拮抗していることをはじめ、全体的に 依然相当数おり、同性婚に対する価値観の対立が存するところである。そして、このような反対の意見の中には婚姻は依然として男女間の人的結合であるとのこれまでの伝統的な理解に基づくものと考えられるのであって、婚姻についての社会通念や価値観が変遷しつつあるとは言い得るものの、同性婚が異性婚と変わらない社会的承認が得られているとまでは認め 難いところである。 したがって、同性婚を憲法24条1項の「婚姻」に含むと解釈することは少なくとも現時点においては困難であり、原告らの上記主張を採用することができない。 ウ以上により、憲法制定当時と比べて、同性愛者に対する知見や国民の意 識・社会状況が変化して は少なくとも現時点においては困難であり、原告らの上記主張を採用することができない。 ウ以上により、憲法制定当時と比べて、同性愛者に対する知見や国民の意 識・社会状況が変化していること(前記1(1)、(3)及び(4))を考慮しても、前記文理を越えて、憲法24条1項が同性愛者の婚姻の自由を保障していると解することはできない。 よって、本件諸規定は憲法24条1項に違反するということはできない。 (3) 本件諸規定は憲法13条1項に違反するか 原告らは、同性カップルの婚姻を認めない本件諸規定は、同性カップルの婚姻の自由を侵害し、家族の形成という人格的自律権を侵害するものであり、憲法13条に違反すると主張する。 上記のとおり、婚姻は、相手方又は行政機関等との間で、有効となる種々の権利義務を発生させる(上記②、④)ものであり、婚姻の有無ひいては婚姻制 度を利用できるか否かは、その者の権利義務に影響を与えるものである。また、 婚姻は、自己が永続的な精神的及び肉体的結合の相手として選んだ者との間の共同生活について(上記①)、国がこれを公証するものであるが(上記③)、このように永続的な精神的及び肉体的結合の相手を選び、家族として公証する制度は、基本的には現行法上婚姻制度しか存在しない。我が国では、家族を基本的な生活の単位として様々な制度が組み立てられており、上記②④で記載し た公的な権利関係に留まらず、私的な関係においても家族であることが公証されることで種々の便益を得られる仕組みが多数存在する(例えば、医療における家族への説明や同意権、不動産購入、賃貸借又は保険等の各種契約の審査における家族状況の確認、家族を共同名義人や保険等の便益の受取人に指定できること、職場の異動等における 在する(例えば、医療における家族への説明や同意権、不動産購入、賃貸借又は保険等の各種契約の審査における家族状況の確認、家族を共同名義人や保険等の便益の受取人に指定できること、職場の異動等における家族の状況への配慮、同じ墓の利用の可否等の 冠婚葬祭への参加。以上につき甲A554、原告ら本人)。このような公的にもたらされるわけではない事実上の利益も、公証(上記③)の効果として一律に発生するものであり、これを発生させる基本的な単位であるはずの婚姻ができず、その効果を自らの意思で発生させられないことは看過しがたい不利益であると認められる(以下、婚姻の効果である公証により受けられるようになる 社会生活における各種便益を総称して「公証の利益」という。)。以上からすれば、婚姻制度を利用できるか否かはその者の生涯にわたって影響を及ぼす事項であり、国民の意識における婚姻の重要性(前記1(4)エ)も併せ鑑みれば、婚姻をするかしないか及び誰とするかを自己の意思で決定することは同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益と認められる。 しかしながら、上記②~④のとおり、婚姻とは当事者の意思を前提に各種法律によりその要件が定められ、これを満たしたときに一律に権利義務が発生する法律上の制度であり、当事者の意思のみによってその要件や効果を決定できるものではなく、婚姻を基礎とした家族の形成も当事者の意思によりその要件や効果が全て定まるものではない。このように婚姻に関して、法律により要件 が定められている理由は、婚姻自体が国家によって一定の関係に権利義務を発 生させる制度であることからの当然の帰結であって、同性愛者の婚姻の自由や婚姻による家族の形成という人格的自律権が憲法13条によって保障されている憲法上の権利とまで解する 権利義務を発 生させる制度であることからの当然の帰結であって、同性愛者の婚姻の自由や婚姻による家族の形成という人格的自律権が憲法13条によって保障されている憲法上の権利とまで解することはできない。したがって本件諸規定は憲法13条に違反しない。 (4) 本件諸規定は憲法14条1項に反するか ア憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解される(最高裁判所判所昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、同裁判所昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑 集27巻3号265頁、同裁判所平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。 そして、憲法24条2項は、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的に国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであ るとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものであるから、婚姻及び家族に関する事項についての区別取扱いについては、立法府に与えられた上記の裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、当該区別は、憲法14条1項に違反するものと解される(最高裁判所平成25年(オ)第1079号同 27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。 イ本件諸規定による区別取扱いの有無について前記第2の1(3)のとおり、本件諸規定の下では同性間の婚 9号同 27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。 イ本件諸規定による区別取扱いの有無について前記第2の1(3)のとおり、本件諸規定の下では同性間の婚姻は認められておらず、その結果、同性愛者は婚姻制度を利用することができないのであるから、本件諸規定は、同性愛者と異性愛者の間において性的指向に基 づく区別取扱いをするものと解される。 原告らは、本件諸規定は性別に基づく区別取扱いであるとも主張する。 しかし、本件諸規定の下では男性も女性もそれぞれ異性とは婚姻することができ、同性とは婚姻することができないのであって、男性か女性のどちらか一方につき性別を理由に区別取扱いをするものではない。よって、原告らの上記主張は採用することができない。 被告は、本件諸規定の下では、同性愛者も異性と婚姻することができるのだから区別取扱いは生じていない、本件諸規定は、性的指向について中立的な規定であり、その結果同性愛者と異性愛者との間に性的指向による差異が生じているとしても事実上の結果ないし間接的結果に過ぎないから区別取扱いとはいえない旨主張する。しかし、前記のとおり、婚姻の本 質は、両当事者が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるところ、性的指向は人の恋愛・性愛の対象に関わるもので前記精神的及び肉体的結合の対象を定めるものであるから、同性愛者が異性と婚姻することができるとしても、そのような婚姻は、婚姻の本質を有さないものであり、同性愛者は異性に対して恋愛・ 性愛の対象が向かない以上、婚姻制度を利用することができないことになる。よって、同性同士の婚姻を認めない本件諸規定は、同性愛者が婚姻制度を利用できないという区別取扱いがあり、 に対して恋愛・ 性愛の対象が向かない以上、婚姻制度を利用することができないことになる。よって、同性同士の婚姻を認めない本件諸規定は、同性愛者が婚姻制度を利用できないという区別取扱いがあり、性的指向が婚姻の本質と結びついている以上、その結果は決して事実上ないし間接的なものということはできないから、被告の上記主張はいずれも採用することができない。 以上のとおり、本件諸規定は性的指向に基づく区別取扱いをするものであるところ、前記第2の1(1)及び前記1(1)のとおり、ほとんどの場合性的指向は人生の初期か出生前に本人の意思とは関わりなく定まっており、性的指向を自己の意思や精神医学的療法で変えることは困難であることは、医学的に明らかになっており、このような本人にとって自ら選択ない し修正の余地のない事柄をもって婚姻の要件に関して区別を生じさせる ことに合理的な理由があるか否かについては慎重に検討することが必要である。 ウ本件諸規定による区別取扱いの合理性の有無について(ア) 本件諸規定の下では原告らは婚姻をすることができない結果、相手方又は行政機関等との間で、生涯有効となる種々の権利義務を発生させる ことができず(上記②、④)、私的な関係でも公証の利益を得られないものであるところ(上記③)、このような効果は婚姻によってしか発生させることができず、国民の意識における婚姻の重要性(前記1(4)エ)も併せ鑑みれば、原告らは婚姻制度を利用できずこれらを享受する機会を得られないことで重大な不利益を被っているといえる。 被告は、上記不利益は緩和ないし免除可能であると主張する。確かに、上記②について、相互の権利義務の定め、離婚の際の財産分与や相続に関する当事者に 益を被っているといえる。 被告は、上記不利益は緩和ないし免除可能であると主張する。確かに、上記②について、相互の権利義務の定め、離婚の際の財産分与や相続に関する当事者による契約等により一定の緩和が可能となるが、各手続を行う経済的負担や相続の際の遺留分侵害請求等はなお残存する。また、前記1(4)アのとおり、今日多くの地方自治体がパートナーシップ制度を 導入しているものの、これは諸外国の登録パートナーシップ制度と異なり、法的効果を発生させるものではなく、婚姻における上記②、④の機能を代替するものではない。パートナーシップ制度は、自治体による公証として上記③の役割を期待され得るものの、現在のところ、具体的な活用例は少なく、その効果も自治体や場面によって様々と認められる (甲A202、原告ら本人)ことからすれば、上記③の機能を代替するものとまではいい難い。更に、同性愛者らは婚姻ができなくとも、永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことは妨げられない(上記①)ものの、権利義務の発生(上記②、④)や当該共同生活が国により公証される公証の利益(上記③)が、そ の者の社会生活において重要であることは前記のとおりであり、これは 婚姻によらない共同生活では解消されないから、上記不利益は緩和ないし免除されているとはいえない(なお、異性間の事実婚の場合は、当事者が自らの意思により婚姻による公証の利益等を放棄しているから、同性カップルが婚姻できない不利益を事実婚の場合と同様に理解することはできない。)。被告の上記主張は採用することができない。 (イ) しかしながら、前記のとおり、憲法24条1項にいう「婚姻」は異性間の婚姻を指し、異性間の婚姻の自由は に理解することはできない。)。被告の上記主張は採用することができない。 (イ) しかしながら、前記のとおり、憲法24条1項にいう「婚姻」は異性間の婚姻を指し、異性間の婚姻の自由は尊重されるべきものと解され、同条2項においては、異性間の婚姻についての立法を要請しているものと解することができる。そして、前記1(2)のとおり、本件諸規定を含む現行の婚姻制度は、明治民法で初めて定められた婚姻制度を基礎として、 これに憲法24条の要請を受けて、戸主制度等を廃止する等の修正を経たものであるが、旧民法から現行民法制定当時までの学説の理解(前記1(2)イ)や現行民法の嫡出推定、親子関係に係る規律の存在からすれば、当時の婚姻制度の目的は、婚姻の法的効果や戸籍制度との関係上、その要件を明確にする必要があるところ、その範囲を生物学的に生殖可能な 組合せに限定することで、国が一対の男女(夫婦)の間の生殖とその子の養育を保護することにあったと認められる。このような、生殖とその子の養育の保護という目的は現在においても重要なものであるし、婚姻は男女によるものであるという当時の社会通念もまた、変遷しつつあるものの、現在においてもなお失われているということはできないのは前 記のとおりである。そうすると、憲法24条2項の異性婚の立法の要請に従って定められた本件諸規定は憲法のこうした要請に基づくものということができるから、本件諸規定の区別取扱いについては合理的な根拠が存するものと認められる。 したがって、本件諸規定が婚姻を異性間のものに限り同性間の婚姻を 認めていないことが性的指向による区別取扱いに当たりその合理性に は慎重な判断を要するとしても、立法裁量の範囲を超えるものとして、憲法14条1項に違反するとは り同性間の婚姻を 認めていないことが性的指向による区別取扱いに当たりその合理性に は慎重な判断を要するとしても、立法裁量の範囲を超えるものとして、憲法14条1項に違反するとはいえない。 (ウ) 原告らは、本件諸規定による別異の取扱いは憲法14条1項後段列挙事由(「性別」又は「社会的身分」)に基づくものであり、上記区別取扱いに合理的根拠が認められるか否かの審査は厳格に行われるべき であり、同性愛者の不利益は甚大であることや、婚姻制度の目的が共同生活の保護にあることなどからすれば、上記区別取扱いに合理的理由が存在しないことは明らかである旨主張する。 しかしながら、前記のとおり、憲法24条1項の「婚姻」は異性間の婚姻を指し、同条2項が異性間の婚姻について法律婚制度の構築を要請 している一方、同性間の婚姻については、前述のとおり憲法24条1項による保護が及ばず、異性間の婚姻と同等の保護をしているとは解されないことからすれば、同性愛者の不利益の程度や婚姻制度の目的の一つが共同生活の保護にあると考えられることを考慮しても、本件諸規定が婚姻を異性間のものに限り同性間の婚姻を認めていないことが立法裁 量の範囲を超え、憲法14条1項に違反するとはいい難い。 原告らの上記主張は採用することができない。 (5) 本件諸規定は憲法24条2項に反するかア前記のとおり、憲法24条2項は、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねると ともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものである。そうすると、本件諸規定が憲法24条2項にも適合 ともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものである。そうすると、本件諸規定が憲法24条2項にも適合するものとして是認されるか否かは、当該規定の趣旨や同規定に係る制度を採用することによる影響につき検討し、当該規定が個人の尊厳と両性の本質的 平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量を超えるものと見ざ るを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべきものとするのが相当である。 前記2(1)のとおり、同性カップルの人的結合に関する事項は、憲法24条1項に基づく婚姻の自由は認められないものの、同性間の永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む意思 を婚姻及び家族に関する諸規定に照らしてどのように扱うべきかという問題であるから、同条2項の「婚姻及び家族に関するその他の事項」に該当するものということができる。そして、前記1(2)の起草過程のとおり憲法24条の根底にあった理念の一つは、個人の尊厳であり、これは異性愛者であっても同性愛者であっても変わりなく尊重されるべきものである から、同性カップルに関する事項についても、国会の立法裁量が与えられると同時に、憲法24条2項の裁量の限界にも画されると解するべきである。 これに対し、被告は、憲法24条2項も同条1項と同じく「両性」との文言が存すること等から、婚姻が異性間の人的結合を対象とするものであ ることを前提として、これを具体化する制度の整備を立法府に要請している規定と理解すべきである旨主張する。しかし、同性カップルも異性カップルと変わらない人的結合関係にあるということができるし、 前提として、これを具体化する制度の整備を立法府に要請している規定と理解すべきである旨主張する。しかし、同性カップルも異性カップルと変わらない人的結合関係にあるということができるし、前記のとおり「婚姻」を異性婚に限ると理解するとしても、婚姻と並んで「家族に関するその他の事項」が対象となっていること、「家族」の概念については 憲法24条の制定過程からすれば夫婦及びその子の総体を中心とする概念であると理解されるものの、他方で前記のとおり婚姻、家族の形態が多様化し、これに伴い婚姻、家族の在り方に対する国民の意識が多様化している現在においてはこれに限定される必要はなく、同性カップルを「婚姻及び家族に関するその他の事項」に含めることは文言上自然であるし、上 記憲法24条2項の裁量の限界を画するものとして「両性の本質的平等」 と併せて「個人の尊厳」が挙げられているところ、個人の尊厳については同性愛者も異性愛者と変わらず尊重されるべきことは前記のとおりである。被告の上記主張は採用することができない。 イそこで検討するに、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代にお ける夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断によって定められるべきである。特に、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益や実質的平等は、その内容として多様なものが考えられ、それらの実現の在り方は、その時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決められるべきものである(最高裁判所 平成26年第1023号同27年12月16日 えられ、それらの実現の在り方は、その時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決められるべきものである(最高裁判所 平成26年第1023号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2586頁参照)。 本件諸規定の下では、原告らは婚姻制度を利用できずこれによりもたらされる権利利益を享受する機会を得られず、法的に家族として承認されないことで重大な不利益を被っており、このような不利益は個人の尊厳に照 らして人格的利益を侵害するものとして到底看過することができないものである。すなわち、婚姻は家族の単位の1つであり、前記のとおり、永続的な精神的及び肉体的結合の相手を選び、公証する制度は、基本的には現行法上婚姻制度のみであるところ、同性カップルが婚姻制度を利用できず、公証の利益も得られないことは、同性カップルを法的に家族として承 認しないことを意味するものである。そして、前記のとおり、婚姻制度を利用できるか否かはその者の生涯にわたって影響を及ぼす事項であり、国民の意識における婚姻の重要性(前記1(4)エ)も併せ鑑みれば、婚姻をするかしないか及び誰と婚姻して家族を形成するかを自己の意思で決定することは同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益であると認めら れるところ、原告らが婚姻制度を利用できない不利益は前記のとおり憲法 13条に反するとまでは言えないものの、上記人格的利益を侵害されている事態に至っているといえる。 また、本件諸規定の基となった旧民法や明治民法制定時における学説にも、婚姻について必ずしも子を得ることを目的としないとの理解が存在し、明治民法の起草過程における議論の結果、生殖能力を有しないことを婚姻 障害事由等にしていないこと( 治民法制定時における学説にも、婚姻について必ずしも子を得ることを目的としないとの理解が存在し、明治民法の起草過程における議論の結果、生殖能力を有しないことを婚姻 障害事由等にしていないこと(前記1(2)イ)からすれば、本件諸規定を含む婚姻制度の目的には婚姻相手との共同生活の保護にもあったものと認められる。また、前記1(4)エのとおり、平成26年段階の結婚を希望する未婚の者に対する意識調査において、国民の婚姻制度を用いる理由は、子を持つことと同様又はそれ以上の比率で、婚姻相手と一緒にいること、家 族となることにあると認められることから婚姻制度の目的において、婚姻相手との共同生活の保護という側面が強くなってきていると認められる。 加えて、今日、婚姻件数、婚姻率、合計特殊出生率及び子のいる世帯の割合は本件諸規定の立法時に比べて大きく低下しており(前記1(4)オ)、婚姻は全ての者が行うものではなく、各人が、生涯を共に過ごす者を選び、 公認された家族を作るという人生における自己決定の尊重と保護という側面が強くなってきているといえ、婚姻及び家族の実態やその在り方に対する国民の意識が変遷しているということができる。 前記のとおり、婚姻は男女によるものという社会通念は現在においてもなお失われていないものの、今日変わりつつある。すなわち、前記1(1)~ (3)のとおり、本件諸規定の立法過程に影響を与えた諸外国の状況が変化してきている。欧米ではキリスト教的価値観及び医学上の知見から同性愛自体が否定されていたが、家族の在り方及び前記知見の変化によりこれを国家的に認める動きが生じ、平成12年以降同性婚の制度を導入する国は増加する状況にある。また、前記1(1)のとおり、我が国にも影響を与えた 同性愛者を精神病として病理化する知 変化によりこれを国家的に認める動きが生じ、平成12年以降同性婚の制度を導入する国は増加する状況にある。また、前記1(1)のとおり、我が国にも影響を与えた 同性愛者を精神病として病理化する知見は、今日では誤りであったことが 明白となっている。国際連合は、平成23年、国連人権規約として1966年に採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約を根拠に、今日、性的指向に基づく差別は禁止されていることを決議し(前記1(3)ウ)、我が国に対しても前記1(4)カのとおり、平成20年以降、自由権規約委員会、社会権規約委 員会から、同性カップルの権利についての懸念と勧告が度々表明されている。これらは、同性カップルにも異性カップルと同様の婚姻の意思(上記①)を有することができ、同等の権利を与えるべきという動きが世界の潮流となっているものと評価することができる。 我が国においても、政府は、平成22年以降、性的指向に基づく差別を 禁止する措置を様々な分野で宣言し、地方自治体は、平成27年以降、人権保障、多様性の尊重及び安心して暮らせる社会づくりの目的でパートナーシップ制度を導入し始め、令和4年11月時点の導入自治体の人口カバー率は62.1%であるし、国会でも平成27年以降、同性婚の可否に関する質疑が度々行われている(前記1(4)ア)。国民の意識においても、平 成27年段階で、同性婚に賛成する者の数は50%前後で、反対派をわずかに上回っていたが、賛成派の割合は年々増加し、平成30年の時点で60%を超えるようになり、その後も増加を続けている(前記1(4)イ)。同性婚の実現への支持を表明する企業団体、弁護士会は増加し続けている(前記1(4)カ)。これらのことから、我が 成30年の時点で60%を超えるようになり、その後も増加を続けている(前記1(4)イ)。同性婚の実現への支持を表明する企業団体、弁護士会は増加し続けている(前記1(4)カ)。これらのことから、我が国でも婚姻は異性のものという 社会通念に疑義が示され、同性婚に対する国民の理解も相当程度浸透されているものと認められる。 以上のとおり、本件諸規定の下で原告ら同性カップルは婚姻制度を利用することによって得られる利益を一切享受できず法的に家族と承認されないという重大な不利益を被っていること、婚姻制度は異性婚を前提とす るとはいえ、その実態が変遷しつつあること、婚姻に対する社会通念もま た変遷し、同性婚に対する社会的承認がいまだ十分には得られていないとはいえ、国民の理解が相当程度浸透されていることに照らすと、本件諸規定の立法事実が相当程度変遷したものと言わざるを得ず、同性カップルに婚姻制度の利用によって得られる利益を一切認めず、自らの選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない本件諸規定はもはや個人の尊厳に 立脚すべきものとする憲法24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない。 ウしかしながら、前記のとおり婚姻をするかしないか及び誰とするかを自己の意思で決定することは同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益ではあるものの、憲法上直接保障された権利とまではいえず、その実現 の在り方はその時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決せられるものである。そして、憲法24条2項は「婚姻及び家族に関するその他の事項」について立法府の合理的裁量を認めているところ、上述の同性愛者らの重大な不利 の状況、家族の在り方等との関係において決せられるものである。そして、憲法24条2項は「婚姻及び家族に関するその他の事項」について立法府の合理的裁量を認めているところ、上述の同性愛者らの重大な不利益を解消し、自己決定を尊重する制度の在り方については、様々な考慮をする必要がある。上記①~④ の婚姻の特徴を満たす法的制度としては、婚姻制度を適用する以外にも、前記1(3)アのとおり、諸外国で制度化されてきた同性間の人的結合に関する制度が複数あり、婚姻とほとんど同じ法的効果を同性カップルに与える登録パートナーシップ制度は、同性間の人的結合に法的権利義務や公証の利益を与えるものとして、その内容次第では婚姻制度の代替となり得るも のであり、同性婚についてこのような婚姻制度と異なる制度を設けるか否かについても立法府における議論に委ねることが相当である。また、同性間の人的結合においては、生物学上の親子と戸籍上の親子が一致せず、これを前提にした規定が必要となること等から、嫡出推定の有無、養子縁組の可否、生殖補助医療の可否については、現行の婚姻制度と異なるものと する余地があり、このような制度設計や枠組みの在り方については、我が 国の伝統や国民感情を含めた社会的状況における種々の要因を踏まえつつ、さらに、子の福祉等にも配慮するといった様々な検討・調整が避けられず、立法府における検討や対応に委ねざるを得ない。 また、前記のとおり、我が国において、国会で同性婚に関する質疑が行われ、地方自治体によるパートナーシップ制度が初めて導入され、同性婚 に関する各種意識調査が開始されたのはいずれも平成27年以降であり、この頃に初めて同性婚に関する問題が我が国で本格的に議論され始めたものと認められる。近時の調査によっても、20代や れ、同性婚 に関する各種意識調査が開始されたのはいずれも平成27年以降であり、この頃に初めて同性婚に関する問題が我が国で本格的に議論され始めたものと認められる。近時の調査によっても、20代や30代など若年層においては、同性婚又は同性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な意見が多数を占めるものの、前記のとおり60歳以上の年齢層においては肯 定的な意見と否定的な意見が拮抗しており、国民意識として同性婚又は同性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な意見が多くなったのは、比較的近時のことであると認められる。そうすると、立法府による今後の検討や対応に委ねることが必ずしも不合理であるとまでは言えない。 以上によれば、同性間の婚姻を認めていない本件諸規定が立法府たる国 会の裁量権の範囲を逸脱したものとして憲法24条2項に反するとまでは認めることができない。 3 争点(2)(本件諸規定を改廃しないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法であるか。)について(1) 国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が 個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるところ、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり、立法の内容の違憲 性の問題とは区別されるべきものである。そして、上記行動についての評価 は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって、仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、それゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が 動についての評価 は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって、仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、それゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに同項の適用上違法の評価を受けるものではない。 もっとも、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利・利益を 合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあると いうべきである。(最高裁判所昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、同裁判所平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁、同裁判所令和2年(行ツ)第255号、同年(行ヒ)第290号、第291号、第292号同4年 5月25日大法廷判決民集76巻4号711頁参照)(2) そこで、本件諸規定を改廃しないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるかについて検討すると、前記2のとおり、本件諸規定は憲法13条、14条1項及び24条に反するものではなく、原告らの主張は前提を欠くものである。 前記のとおり、同性カップルに婚姻制度によって得られる利益を一切認めていない本件諸規定は、憲法24条2項に反する状態にあり、立法者としてはこの状態を解消する措置に着手すべきとはいえるものの、前記のとおり、この方法は多種多様な選択肢があり、上記の状態 利益を一切認めていない本件諸規定は、憲法24条2項に反する状態にあり、立法者としてはこの状態を解消する措置に着手すべきとはいえるものの、前記のとおり、この方法は多種多様な選択肢があり、上記の状態にあることから原告らが主張する同性間の婚姻を可能とする立法措置を講ずべき義務が直ちに生ずるも のとは認められない。 したがって、本件諸規定を改廃していないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきである。 第4 結論以上のとおりであって、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの請求にはいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のと おり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官上田洋幸 裁判官橋口佳典 裁判官馬渡万紀子
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