平成19(行ウ)3 建築確認処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成19年9月19日 名古屋地方裁判所
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判決文本文30,051 文字)

- 1 -平成19年(行ウ)第3号建築確認処分取消請求事件主文 被告が平成19年1月10日付けでダイア建設株式会社に対してした建築確認処分(中住保第1720号)を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文と同旨。 第2事案の概要本件は,名古屋市a区bc丁目に建設を予定している共同住宅(以下「本件建築物」という。)の隣地の住人である原告が,指定確認検査機関である被告において本件建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであるとして平成19年1月10日付けでダイア建設株式会社(以下「ダイア建設」という。)に対してした建築確認(中住保第1720号。以下「本件確認処分」という。)には,建築基準法(以下,単に「法」ともいう。)53条1項の建ぺい率規制違反,法55条1項の高さ規制違反及び法56条の2第1項の日影規制違反を看過した違法があるとして,その取消しを求める抗告訴訟である。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)(1) 当事者等原告は,本件建築物の建築予定地(A跡地)の東側隣接地(肩書地)に共有持分を有し,同地上に居宅を所有して居住する者である。 被告は,法6条の2第1項の規定による指定を受けた指定確認検査機関である。 ダイア建設は,株式会社K&A設計工房に委託して,本件建築物の設計及び建築確認申請をし,丸彦渡辺建設株式会社に発注して,本件建築物を建築しようとするものである。 - 2 -(2) 本件確認処分以前の事情ダイア建設は,本件建築物の建築確認を申請し,被告は,平成18年6月7日,ダイア建設に対し,本件建築物の当時の建築計画が建築基準関係規定に適合するものであるとして建築確認(中住保第1415号。以下「前件確認処分」という。)をした。なお,当時の建築計画においては 月7日,ダイア建設に対し,本件建築物の当時の建築計画が建築基準関係規定に適合するものであるとして建築確認(中住保第1415号。以下「前件確認処分」という。)をした。なお,当時の建築計画においては,工事着手予定年月日平成18年6月20日,工事完了予定年月日平成19年3月31日とされていた。 原告は,平成18年8月3日,名古屋市建築審査会に対して前件確認処分につき審査請求をし,同審査会は,同年11月28日,前件確認処分を取り消す旨の裁決をした(甲5の1・2,32の1・2)。 上記審査会が前件確認処分を取り消す旨の裁決をした理由は,本件建築物の土留さく板の一部が,建築物本体と構造上一体のものであるのみならず,土留さく板との間には最大で幅15㎝の土が挿入されているだけであり,仮に当該土留さく板による土留めがされなくても,地下室外壁のみで,建築物又は当該地盤にとって何ら支障がないから,当該土留さく板を擁壁と認めることはできず,本件建築物の一部とみるべきであるとし,当該部分の地盤面の高さは,土留さく板により形成された地面の高さではなく,土留さく板が地面と接する位置の高さをもって算定すべきであり,その結果,法55条,56条の2の各規定に適合しないというものであった。 (3) 本件確認処分その後,ダイア建設は,設計変更した上で,再び本件建築物の建築確認を申請し,被告は,平成19年1月10日,ダイア建設に対して,本件建築物の建築計画(甲1。以下「本件建築計画」という。)が建築基準関係規定に適合するものであるとして本件確認処分をした。本件建築計画の概要は,以下のとおりである。 建築場所名古屋市a区bc丁目d番地,e番地建築物の名称(仮称)B主要用途共同住宅工事種別新築- 3 -主たる建築物の構造鉄筋コンクリート造主たる建築物の階数地階を おりである。 建築場所名古屋市a区bc丁目d番地,e番地建築物の名称(仮称)B主要用途共同住宅工事種別新築- 3 -主たる建築物の構造鉄筋コンクリート造主たる建築物の階数地階を除く階数3階地階の階数1階敷地面積1631.77㎡建築面積812.07㎡建ぺい率49.77%延べ面積2296.21㎡容積率140.72%建築物の高さ9.940m工事着手予定年月日平成19年1月10日工事完了予定年月日平成19年11月30日なお,本件建築物の建築場所(以下「本件建築場所」という。)は,第1種低層住居専用地域に指定され,建ぺい率は50%,容積率は150%に制限されており,建築物の高さは10mを超えてはならないものとされている。 (4) 審査請求及び本訴提起原告は,平成19年1月25日,名古屋市建築審査会に対して本件確認処分につき審査請求をした上,本訴を提起した。 同審査会は,本訴係属中の同年4月5日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲42)。 関連法令等(1) 建ぺい率規制について法53条1項は,建築物の建築面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては,その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(建ぺい率)は,第1種低層住居専用地域内にあっては,10分の3,10分の4,10分の5又は10分の6のうち当該地域に関する都市計画において定められた数値を超えてはならない旨定めている(本件建築場所は,上記のとおり,建ぺい率の上限が10分の5と定- 4 -められている。)。 そして,建築物の建築面積の算定方法は,法92条により政令で定めるものとされ,法施行令2条1項2号は,建築面積の算定方法につき,「建築物(地階で地盤面上1メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこ 算定方法は,法92条により政令で定めるものとされ,法施行令2条1項2号は,建築面積の算定方法につき,「建築物(地階で地盤面上1メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1メートル以上突き出たものがある場合においては,その端から水平距離1メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし,国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については,その端から水平距離1メートル以内の部分の水平投影面積は,当該建築物の建築面積に算入しない。」と定めている。 (2) 高さ規制について法55条1項は,第1種低層住居専用地域内においては,建築物の高さは,10m又は12mのうち当該地域に関する都市計画において定められた建築物の高さの限度を超えてはならないと定めている(本件建築場所は,上記のとおり,建築物の高さの上限が10mと定められている。)。 そして,建築物の高さの算定方法は,法92条により政令で定めるものとされ,法施行令2条1項6号は,建築物の高さの算定方法につき,「地盤面からの高さによる。」と定め,同条2項は,地盤面とは,「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3メートルを超える場合においては,その高低差3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。」と定めている。 (3) 日影規制について法56条の2第1項,別表第4及び名古屋市中高層建築物日影規制条例(昭和52年名古屋市条例第58号)は,第1種低層住居専用地域内においては,軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物について,冬至日の真太陽時による午前8時から午後 影規制条例(昭和52年名古屋市条例第58号)は,第1種低層住居専用地域内においては,軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物について,冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間において,平均地盤面から1.5mの- 5 -高さの水平面に,敷地境界線からの水平距離が5mを超えて10m以内の範囲にあっては3時間以上,10mを超える範囲にあっては2時間以上,日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない旨定めている。 そして,法別表第4は,平均地盤面からの高さとは,「当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものとする。」と定めている(以下,平均地盤面と(2)の地盤面を併せて,「地盤面等」という。)。 争点 (1) 原告適格の有無。 (2) 本件建築計画が法53条の建ぺい率規制に違反するか否か。 (3) 本件建築計画が法55条1項の高さ規制又は法56条の2第1項の日影規制に違反するか否か。 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(原告の主張)原告は,本件建築場所の東側隣接地に共有持分を有し,同地上に木造瓦葺2階建居宅を所有して居住する者であり,本件建築物により,直接,日照阻害,通風障害,圧迫感等による所有権及び人格的利益を害される関係にある者である。日照,通風,開放空間は,健康で文化的な都市生活を確保するため,欠くことのできない生活利益であり,建築基準法及び関連法令によって保護される法的利益である。 したがって,原告は,本件確認処分により,法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者に該当するから,本件確認処分の取消しを求める本件訴えにつき原告適格を有する。 (被告の主張)原告の主張のうち,原告が本件建築場所の東側隣接地に 利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者に該当するから,本件確認処分の取消しを求める本件訴えにつき原告適格を有する。 (被告の主張)原告の主張のうち,原告が本件建築場所の東側隣接地に共有持分を有し同地上に居宅を所有していることは認め,その余は争う。 (2) 争点(2)について- 6 -(被告の主張)ア建築面積の算定について建ぺい率を算出するための建築面積とは,法施行令2条1項2号において,建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては,その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積によると規定されており,ここでいう建築物とは,法2条1号において,土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)と定義されている。 したがって,建築面積から除かれるのは,①屋根のない部分,②屋根がなく,床があっても地盤面1m以下にしかない部分,③軒,ひさし,はね出し縁等で,当該中心線から水平距離1m以上突き出ており,その端から1mまでの部分,④軒,ひさし,はね出し縁等で,当該中心線から水平距離1m以上突き出ていないもの,以上となる。 本件建築計画は,別紙図面①記載のとおり,水色部分は上記①の部分,緑色部分は上記②の部分,黄色部分は上記③の部分,ピンク色部分は上記④の部分にそれぞれ該当するとして,建築面積の算定には含めていない。 これを前提として本件建築物の建築面積を算定すると,別紙図面③記載のとおり,812.07㎡となるから,これを敷地面積1631.77㎡で除して建ぺい率を求めると49.77%となり,建ぺい率規制に適合していると認め して本件建築物の建築面積を算定すると,別紙図面③記載のとおり,812.07㎡となるから,これを敷地面積1631.77㎡で除して建ぺい率を求めると49.77%となり,建ぺい率規制に適合していると認められる。 原告は,本件建築物の中空部分(別紙図面②の水色部分。以下「本件中空部分」という。),穴部分(別紙図面②の青色部分a~j),東側階段の外周端から1m後退させた部分(別紙図面②の茶色部分),廊下の交点ないし屈曲部分(別紙図面②の赤色部分①~⑥),渡り廊下部分(別紙図面②の紫色部分)について建築面積に含めるべきである旨主張するので,以下反論する。 イ本件中空部分(別紙図面②の水色部分)について- 7 -上記のとおり,建築基準法上の建築物とは,屋根があるものを前提に規定されており,屋根がない本件中空部分は建築物ではなく,建築面積に算入されないことは明らかである。 なお,百歩譲って,中庭が「建築物」に該当するとしても,法施行令2条1項2号において,建築面積算定の対象となる建築物から「地階で地盤面上1m以下にある部分」を除くことと明記されており,地階がない中庭はもちろんのこと,地下駐車場がある本件建築物においても,地盤面上1m以下にあることは明らかであるから,本件中空部分が建築面積に算入されることはない。 ウ穴部分(別紙図面②の青色部分a~j)について(ア) 穴a~g,i,jのパイプシャフト部分(以下,併せて「本件パイプシャフト部分」という。)について建築面積は「建築物の外壁又は柱の中心線で囲まれた部分の投影面積」で算出され,外壁の中心線の外側の部分は柱であっても建築面積に算入されない。本件パイプシャフト部分は,建築物外部のいわゆる外壁であり,そこに存在する柱や壁は「建築物の外壁又は柱の中心線で囲まれた部分」には該当しない。 原告は,パイプ 分は柱であっても建築面積に算入されない。本件パイプシャフト部分は,建築物外部のいわゆる外壁であり,そこに存在する柱や壁は「建築物の外壁又は柱の中心線で囲まれた部分」には該当しない。 原告は,パイプシャフト部分は,各階において床面積に算入すべきものであることを根拠として,建築面積に算入すべきである旨主張する。しかし,原告が問題としているのは「建築面積」であり「床面積」ではないから,「床面積」に算入すべきであるからといって「建築面積」に算入すべきことにはならない。一般に,屋内配管部分としてのパイプシャフト部分は建築面積に算入すべきものがあり得るが,本件建築物においては,本件パイプシャフト部分は屋外にあって,屋外に配管がされているものにすぎず,当該部分を建築面積に算入する理由はない。なお,「パイプシャフト」とは,一般的に「屋内の配管スペース」を意味するから,本件パイプシャフト部分はこの意味のパイプシャフトには当たらない。 さらに,原告は,本件パイプシャフト部分は,いずれ各階に床を張ることにより屋根を有することになるはずである旨主張するが,設計図上,床がないとされてい- 8 -る本件建築計画について,床があるとして審査することなど許されることではなく,建築確認後床を張ったならば,それは竣工検査の際に問題とすべき事項であって,建築確認審査において問題とすべき事項ではない。 (イ) 穴hについて穴hは,建築物の外部であって「建築物の外壁又は柱の中心線で囲まれた部分」には該当しない。 原告は,穴hは,その南側廊下を建築面積から除外させる効果のみを生じさせるだけで構造強度が低下する弊害があり,建築基準法を潜脱する目的で設置されたものであると主張する。しかし,構造強度は,全体として保たれれば何も問題はなく,かかる空間を持つ建築物の建築を禁止する規定は一 だけで構造強度が低下する弊害があり,建築基準法を潜脱する目的で設置されたものであると主張する。しかし,構造強度は,全体として保たれれば何も問題はなく,かかる空間を持つ建築物の建築を禁止する規定は一切存在しない。そして,穴hが存在することを前提に建築面積を算出することは何ら違法ではない。 原告の主張は,要するに,建築物内部に屋根のない空間部分を設置することは,建築基準法の脱法行為であり,違法であると主張しているにすぎない。しかし,建築物全体をどのような構成にし,最有効利用に供するためにどのように設計するか,外階段にするか,内階段にするのか,どこに空間を設けるかはひとえに設計士の創意工夫の問題であり,違法・不当の問題ではない。建築確認は,恣意的に行うことは許されることではなく,また,わずかであっても空間は空間であり,何㎝以下のものは空間とは認めないとの基準もなく,建築基準法に定めのない独自の判断で建築確認をしないなどということは許されることではない。 (ウ) 穴i,jのスリット状の切込み部分について穴i,jのスリット状の切込み部分も,穴hと同様に建築物の外部であって「建築物の外壁又は柱の中心線で囲まれた部分」には該当しない。 原告は,同切込み部分も,穴hと同様に建築基準法を潜脱する目的で設置されたものであると主張するが,上記(イ)で述べたとおり,そうした事項は建築確認において判断すべき事項ではない。 エ東側階段の外周端から1m後退させた部分(別紙図面②の茶色部分)につ- 9 -いて東側階段は,地下部分を除いて,外壁又は柱で囲まれていない開放型の屋外階段であるから,法施行令2条1項2号かっこ書の「ひさし,はね出し縁」に該当する。 このことは,愛知県特定行政庁等連絡会が建築基準法,施行令等の取扱基準を取りまとめた愛知県建築基準法関係例規集(乙 外階段であるから,法施行令2条1項2号かっこ書の「ひさし,はね出し縁」に該当する。 このことは,愛知県特定行政庁等連絡会が建築基準法,施行令等の取扱基準を取りまとめた愛知県建築基準法関係例規集(乙13)において,外壁又は柱で囲まれていない屋外階段が「はね出しに類する」旨記載されていることからも明らかである。 原告は,屋外階段であっても外壁から離れている距離がわずかであるなら,脱法行為であり,外壁に囲まれていると解釈すべきであると主張するものと思われる。 しかし,外壁から離れていれば「外壁に囲まれている」と評価できないことは明らかであって,外壁から離れている距離が何㎝以内であれば外壁に囲まれていると評価するという基準もないし,そのような考え方もない。外壁から離れている距離がわずかであるから脱法行為であると判断して,建築面積を算定すれば,それこそ越権行為であって,そのように解釈すべき法律上の根拠はどこにもない。 オ廊下の交点ないし屈曲部分(別紙図面②の赤色部分①~⑥)について建築物の角部には,出っ張った角部(以下「出隅」という。)と,引っ込んだ角部(以下「入隅」という。)があり,出隅にひさしがある場合の建築面積の算定方法は明確であるが,入隅にひさしがある場合の建築面積の算定方法は,愛知県建築基準法関係例規集(乙13)にも明確な記載はない。 原告は,入隅にひさしがある場合の,法施行令2条1項2号かっこ書によるひさし等の端から水平距離1m後退した線とは,隅部分を含まず(別紙図面⑤の図1参照),建築面積の算定においては当該部分を算入すべきであると主張している。 しかし,愛知県建築基準法関係例規集(乙13)では,床面積の算定において入隅部分は算入しないと記載されており,被告は,名古屋市の建築主事とも協議をし,入隅における建築面積の算定方法においても,床 。 しかし,愛知県建築基準法関係例規集(乙13)では,床面積の算定において入隅部分は算入しないと記載されており,被告は,名古屋市の建築主事とも協議をし,入隅における建築面積の算定方法においても,床面積の算定方法を類推して,別紙図面⑤の図2のように考えてもよいとの結論に達した。このように,入隅の場合について,愛知県における建築面積の算定方法の基準が示されておらず,他方,床面- 10 -積の算定方法の基準が示されている場合において,建築面積の算定において床面積の算定方法を類推適用することは極めて合理的である。入隅について,床面積の算定方法の基準が示されているのに,これと異なる解釈基準をとること自体,恣意的であると非難されるであろう。 別紙図面②の赤色部分①,②(南北方向廊下の南端突き当たり部分),同赤色部分⑤,⑥(東側廊下の屈曲交点部分)は,正に入隅である。また,同赤色部分③,④は,渡り廊下の中心線で分けて考えると,入隅が背中合わせに接着した形状となっており,入隅と判断される。したがって,これらの部分は建築面積の算定から除外される。 カ渡り廊下部分(別紙図面②の紫色部分)について原告は,渡り廊下部分は,東西両端を固定されているから「はね出し縁」に該当しないと主張している。 しかし,法施行令2条1項2号は,軒,ひさし,はね出し縁のみならず,「その他これらに類するもの」についても,その端から水平距離1m後退した線によって建築面積を算定することと規定しており,屋外部分の渡り廊下が「その他これらに類するもの」に該当することは明らかである。 渡り廊下は,両端の柱により支えられており,東端には一部外壁があるが,西端は柱に支えられているだけで,外壁は存在しない。このような場合には,愛知県建築基準法関係例規集(乙18)に示されるように,外壁と支柱とを基 両端の柱により支えられており,東端には一部外壁があるが,西端は柱に支えられているだけで,外壁は存在しない。このような場合には,愛知県建築基準法関係例規集(乙18)に示されるように,外壁と支柱とを基準として左右の端からそれぞれ1m後退した線を建築面積から除外する扱いとなっている。本件建築物の渡り廊下の南北の幅は1.5mであるから,南北それぞれから1m後退した線によれば,渡り廊下部分は建築面積の算定からすべて除外される。 (原告の主張)ア建ぺい率規制の趣旨,目的について建ぺい率規制は,敷地内に空地をある程度確保することにより,通風,日照,採光,防災等の市街地の環境条件を確保するとともに,市街地において緑化や日常生- 11 -活のための空間を市街地に確保し,火災の拡大防止や避難などの防災上も重要な役割を果たしている。 このように,建ぺい率規制は,個々の建築物の構造・防火・衛生・採光等の安全確保のための技術的基準に関する単体規定(法第2章)ではなく,健全な街作りのための集団規定(街や都市において,要求される安全かつ合理的な土地利用のための建築物の秩序を確保するための基準。法第3章)であって,建ぺい率規制を充たしているか否かも,こうした観点から判断する必要がある。 イ本件中空部分(別紙図面②の水色部分)について本件建築物は,建築物内部に屋根のない本件中空部分を有しているところ,建築物内部に屋根のない空間を確保しても,建ぺい率規制の趣旨,目的は達成されない。 また,建ぺい率は敷地面積に占める建築面積の割合を規制するものであり,その建築面積は,建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によるものとされている(法施行令2条1項2号)ところ,本件中空部分は,外壁又はこれに代わる柱の中心線によって囲まれた部分の内部に存在してお 外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によるものとされている(法施行令2条1項2号)ところ,本件中空部分は,外壁又はこれに代わる柱の中心線によって囲まれた部分の内部に存在しており,かかる中空部分を建築面積から除外すべき規定は存在しない。 行政等による解釈例でも,建築面積から除外することを正当化できるのは「中庭」に限られているところ,本件中空部分は,地下駐車場が設けられており,当該部分は建築物として建築確認を受ける必要があるから,建築物の構成部分であることが明らかであって,これを建築面積から除外することを明示的に認める文書は存在しない。 ウ穴部分(別紙図面②の青色部分a~j)について(ア) 本件パイプシャフト部分についてa本件パイプシャフト部分は,給排水管・ガス管などを通す縦空間であるが,パイプシャフト部分については,最上階まで太い立管が完成するまでは床は張らず,配管類の工程が完成した時点で床を仕上げるのが通常である。 しかも,本件パイプシャフト部分は,アルコーブ(マンションの玄関前で,外壁- 12 -面から少しくぼんだ形になっている空間を指す。)等とパイプシャフトの間は一応壁が存在することになっており,それが主要構造部に該当する壁か否かは明確でないが,アルコーブ側からパイプシャフトに向けて,両開きの開き戸が設置される設計となっているから,将来この部分に床が張られる可能性は極めて高い。 さらに,愛知県建築基準法関係例規集(甲47)では,パイプシャフト部分を,各階において床面積に算入するものと記載されているように,この部分については少なくとも床があるものとみなされる。 被告は,本件パイプシャフト部分については「屋根がない」から建築面積から除外されると主張しているが,上記のとおり,当該部分は床があるものとみなされる上 ついては少なくとも床があるものとみなされる。 被告は,本件パイプシャフト部分については「屋根がない」から建築面積から除外されると主張しているが,上記のとおり,当該部分は床があるものとみなされる上,実際上も床が張られる可能性が極めて高いから,「屋根がない」ことを理由に建築面積に含めるべきでないとする被告の主張は理由がない。 b被告は,本件パイプシャフト部分は屋外の配管である旨主張するが,当該部分は,構造壁と屋内で用いられる程度の簡易な雑壁で囲まれているので,屋外にあるものではなく,建築面積に算入すべきである。 (イ) 穴hについて穴hは幅30~50㎝のスリット状の空間であるが,本件建築計画において,当該部分は「屋根がない」として建築面積から除外された上,東側階段を「持ち出し形式」の階段として建築面積から除外する役割を果たすとともに,その南面の廊下についても廊下の端から1m後退した線を建築面積算定上の中心線とみなすという役割を果たしている。 このように,穴hは,その面積自体が1.9㎡しかないにもかかわらず,これを設けることによって,階段の大部分を建築面積から除外した上,廊下についても穴h自身の面積の2.5倍以上の面積を建築面積から除外する役割を果たすものになっている。 建築物内部に穴を開けることによる建築設計上のメリットは,上記のとおり建築面積を減らすこと以外には何もなく,その一方で構造強度が低下する弊害があるこ- 13 -とは明らかであって,こうした穴hは建築基準法を潜脱する目的で設置されたものというべきであるから,穴hを建築面積から除外すべきではない。 (ウ) 穴i,jのスリット状の切込み部分について穴i,jには,パイプシャフト部分のほかに,スリット状の切込み部分が存するが,同部分も穴hと同様に,構造強度が低下するにもかかわらず,廊 きではない。 (ウ) 穴i,jのスリット状の切込み部分について穴i,jには,パイプシャフト部分のほかに,スリット状の切込み部分が存するが,同部分も穴hと同様に,構造強度が低下するにもかかわらず,廊下の北側両側をすべて建築面積から除外するという,建築基準法を潜脱する目的で設けられたものであるから,当該切込み部分を建築面積から除外すべきではない。 エ東側階段の外周端から1m後退させた部分(別紙図面②の茶色部分)について(ア) 本件建築計画では,東側階段が,屋外階段であって,法施行令2条1項2号かっこ書の「軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもの」に当たるとして,その外周端から1m後退させた部分(別紙図面②の茶色部分)を建築面積から除外している。 (イ) しかし,東側階段の東面は,建築物の外側に向いているものの,外壁中心線から突き出していないし,南面は,スリット状の幅30㎝の穴hに面し,北面及び西面は,エントランスホールとエレベーター室に直接接しているが,2階及び3階の平面図では,北面及び西面に幅15㎝程度のわずかな隙間があるにすぎない。 したがって,東側階段は,建築物の他の部分からはみ出した屋外階段ではなく,屋内階段というべきであるから,屋外階段であることを前提として,法施行令2条1項2号かっこ書を適用すべきではないし,仮に屋外階段であっても,これを「はね出し縁その他これらに類するもの」と解釈するのはそもそも文言上無理がある。 (ウ) また,東側階段の南面の穴hや,北面及び西面のわずかな隙間を作為的に設けて,無理に屋外階段とした上,これを「軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもの」とみなし,その外周端から1m後退した線で建築面積を算定することは,法令解釈の範囲を著しく逸脱したものといわざるを得ない。 オ廊下の交点ないし屈曲部分 ,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもの」とみなし,その外周端から1m後退した線で建築面積を算定することは,法令解釈の範囲を著しく逸脱したものといわざるを得ない。 オ廊下の交点ないし屈曲部分(別紙図面②の赤色部分①~⑥)について- 14 -(ア) 以下の部分は,法施行令2条1項2号かっこ書に基づいて,その端から水平距離1m後退した線で建築面積を算定するとしても,建築面積から除外することは許されない。 a中空部分東西側に存する南北方向廊下の南側突き当たり部分面積1.4㎡(0.7m×1m×2か所)(別紙図面②の赤色部分①,②)b上記廊下と渡り廊下の交点部分面積3㎡(1.5m×1m×2か所)(同赤色部分③,④)c東側廊下の屈曲交点部分面積2㎡(1m×1m×2か所)(同赤色部分⑤,⑥)(イ) 被告は,上記部分が入隅に該当するとし,法施行令2条1項2号かっこ書の「その端から水平距離1m後退した線」とは,別紙図面⑤の図2のようにとらえるべきであると主張するが,そのように解釈することはできず,同図面の図1のようにとらえるべきである。 被告は,入隅部分の解釈について,床面積に関する算定例をも根拠とするが,床面積と建築面積とは別の概念であるから,床面積に関する規定を建築面積の判断に用いることはできない。 カ渡り廊下部分(別紙図面②の紫色部分)について被告は,渡り廊下部分が法施行令2条1項2号かっこ書の「はね出し縁その他これらに類するもの」に該当するとして,建築面積から除外しているが,「はね出し」とは建築用語で「一方が固定され,他方が持ち出しになっている突き出している部分」をいうから,東西方向の渡り廊下は,一見して東西両端を固定されていることが明らかであり,「はね出し縁」類似でないことは明白である。 また,被告は,渡り廊下部分を建築面積 なっている突き出している部分」をいうから,東西方向の渡り廊下は,一見して東西両端を固定されていることが明らかであり,「はね出し縁」類似でないことは明白である。 また,被告は,渡り廊下部分を建築面積から除外することについて,愛知県建築基準法関係例規集(乙18)をも根拠とするが,被告の指摘に係る図は,建築物の外壁(の中心線)と平行な端だけでなく,これと垂直の辺からも1m後退した線によって,建築面積を算定しようとするものであって,法施行令の文理を逸脱するも- 15 -のである。支柱のないひさしであれば,外壁(の中心線)と平行方向にのみ1mの後退距離がとれるのに止まっているのに対して,支柱があれば,外壁と垂直方向にも1mの後退距離を確保して建築面積を縮小できるとするものであり,法の趣旨から見ても合理性がなく矛盾している。 さらに,本件建築物の設計者が,渡り廊下を被告主張の構造(外壁から突き出して支柱によって支持される構造)とは考えていなかったことは,渡り廊下の東西端に幅5㎝のスリットを4か所入れていることからも明らかである。 (3) 争点(3)について(被告の主張)ア法施行令2条1項6号は,建築物の高さの算定方法につき,「地盤面からの高さによる。」と定め,同条2項は,地盤面の算定方法につき,「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3メートルを超える場合においては,その高低差3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。」と定めている。 これに従って,本件建築物の地盤面等を算定すると,平均地盤面の高さは「KBM+1.08m」(「KBM」とは,道路面に指定した基準ポイント)となり,本件建築計画では平均地盤面を「KBM+1.06m」としている。 イ原告は,本件建築物において意図的な盛土がな の高さは「KBM+1.08m」(「KBM」とは,道路面に指定した基準ポイント)となり,本件建築計画では平均地盤面を「KBM+1.06m」としている。 イ原告は,本件建築物において意図的な盛土がなされている旨主張するが,法施行令2条2項によれば,盛土された地面でも,建築物が接していればそれに基づいて算出することになり,現況地盤に基づき算出するとは規定していない。建築物の敷地に高低差がある場合,盛土や切土を行って平坦にした土地を敷地とすることは通常一般的に行われていることであり,法律は,盛土の実施自体を否定していない。 なお,原告が主張するとおり,盛土が意図的に行われること自体は問題があり,したがって,盛土行為が意図的なものであるか否かを判断することも建築確認の一部であると考えられる。しかし,本件建築場所の現況についてみると,敷地の南東- 16 -部は,現況平面図に示されたとおり約5mの高低差のある斜面となっているものの,敷地の大半を占める部分(敷地の南東部及び階段並びに車庫部分を除いた部分)は,ほぼ平坦であり,平坦部の高さは,最も高いところで22.61m,最も低いところで21.00m,平均すると21.44m(KBM+1.41m)である。 本件建築計画においては,平坦な敷地を形成するために,南東部の斜面や旧階段部や旧車庫部に盛土を行うとともに,敷地全体の不陸(凹凸)について整地を行い,敷地の主たる高さを「KBM+1.50m」とする計画であり,必要な範囲を超える盛土とは認められない。 なお,本件建築場所には従前寺院があったが,その現況の地盤面等は原告宅前面道路沿いの植木の高さとほぼ同じであり(乙8の2・3),本件建築物の地盤面等の高さも上記植木の高さとほぼ同じであるから(甲41の1・2),このことからも,本件建築計画において意図的な盛土が 告宅前面道路沿いの植木の高さとほぼ同じであり(乙8の2・3),本件建築物の地盤面等の高さも上記植木の高さとほぼ同じであるから(甲41の1・2),このことからも,本件建築計画において意図的な盛土が行われていないことは明らかである。 ウ原告は,構造上・機能上,建築物本体と一体となった擁壁は,地盤面等を画する「建築物が周囲の地面と接する位置」の確定に当たって「建築物」として扱われなければならず,擁壁と地面とが接する高さに基づき地盤面等を算出すべきである旨主張する(同擁壁部分は別紙図面④の赤線部分と解される。)。 しかし,擁壁が建築物と構造上一体となっていても,建築物と擁壁の間に相応の地面が存在している場合には,当該擁壁は建築物の一部ではなく擁壁として認めるべきであり,愛知県建築基準法関係例規集(乙9)においても,擁壁が建築物と構造上一体となっていても,建築物と擁壁の間が「局部的な盛土」でなければ,盛土後に建築物が接する位置にて地盤面等を算定することとされており,この「局部的な盛土」とは,「上部の水平な平面が2m以上の広がりを持たないもの」とされている(当該部分は,平成7年5月22日付け日本建築主事会議会長事務連絡に基づいて定められたものである。)。 本件建築物の擁壁は,建築物と構造上一体となっているが,2mの離隔があるから,「建築物」には当たらないというべきである。 - 17 -エ原告は,建築面積の算定において本件中空部分を建築面積から除外するのであれば,地盤面等の算定においては,本件中空部分も計算の対象とすべきであると主張する。 しかし,建築面積の算定と地盤面等の算定とは規定が異なっており,両者を同じように解釈する根拠はない。 地盤面等については,当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さによって算定するものであり,本件中空部分は建 積の算定と地盤面等の算定とは規定が異なっており,両者を同じように解釈する根拠はない。 地盤面等については,当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さによって算定するものであり,本件中空部分は建築物の「周囲」ではないから,本件中空部分は算定の対象にはならない。 一方,建築面積については,「建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による」と規定されていて,屋根がなく外壁に囲まれておらず,建築物と評価できない本件中空部分は,やはり対象とならない。 (原告の主張)ア法55条1項の建築物の高さは,地盤面からの高さによるものとされ(法施行令2条1項6号),地盤面は「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3メートルを超える場合においては,その高低差3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう」とされている(法施行令2条2項)。また,法56条の2第1項の日影規制に関して,定められた時間以上の日影を生じさせてはならないと定められている水平面は,平均地盤面から高さ1.5mの水平面とされ,平均地盤面からの高さとは「当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいう」とされている(法別表第4)。 イ本件建築計画の地盤面等は,かつて本件建築場所に寺院が存在した当時の現況地盤面より圧倒的に高く,意図的な盛土がなされている。地盤面を嵩上げしてこれを地盤面等として建築することが適法とされるならば,日影規制や,建築物の高さ規制等につき恣意的な潜脱が可能となるから,地盤面等は,原則として,現況地盤によって算定されるべきである。 - 18 -ウ本件建築物は,その周囲に建築物本体と連接した擁壁の間に存在する建築物の構造的な空間に土を入れ込むことによって,これ 地盤面等は,原則として,現況地盤によって算定されるべきである。 - 18 -ウ本件建築物は,その周囲に建築物本体と連接した擁壁の間に存在する建築物の構造的な空間に土を入れ込むことによって,これを「周囲の地面」として,地盤面等を算定しているが,建築物たる構造物の中に土を入れることによって地盤面等を作出できるとすれば,容易に地盤面等を嵩上げして建築物の高さを低くすることが可能になり,法が規定する高さ規制を容易に潜脱できることとなる。 したがって,構造上・機能上,建築物本体と一体となった擁壁は,地盤面等を画する「建築物が周囲の地面と接する位置」の確定に当たって建築物として扱うべきであり,擁壁とその周囲の地面と接する位置をもって,地盤面等を確定すべきである。 被告は,平成7年5月22日付け日本建築主事会議会長事務連絡等に基づいて定められた愛知県建築基準法関係例規集(乙9)において,擁壁が建築物と構造上一体となっていても,上部の水平な平面が2m以上の広がりを持つ場合には,盛土後に建築物が接する位置にて地盤面等を算定することとされている旨主張するが,当該日本建築主事会議会長事務連絡が法規範性を持たないことは明らかであるし,仮に同基準に従うとしても,本件建築物の盛土部分(実際に土が露出する部分)は2mではなく1.8mしかない(擁壁の上部を含めて2mである。)。 エ建築物の中空部分を算入していないこと本件建築物の中空部分は,地盤面等より3.15m低くなっているところ,地盤面等の計算に当たってこの部分を「建築物が周囲の地面と接する位置」に算入していない。仮に中空部分を含めて地盤面等を算出すると,地盤面等は概ね1m低くなる。 本件建築計画は,建ぺい率の算定に当たっては,本件中空部分は外部空間として建築物から除外する一方,建築物の高さの算定に当たっては に中空部分を含めて地盤面等を算出すると,地盤面等は概ね1m低くなる。 本件建築計画は,建ぺい率の算定に当たっては,本件中空部分は外部空間として建築物から除外する一方,建築物の高さの算定に当たっては,本件中空部分を建築物内部に取り込み,建築物が接する周囲の地面の位置に含めないという矛盾したものとなっており,極めて恣意的なものといわざるを得ない。 オ以上によれば,本件建築物の地盤面等の算定に違法があり,本件建築計画- 19 -は,法55条1項,56条の2第1項に違反することは明らかである。 第3争点に対する判断 争点(1)について法6条の2,6条1項が規定する建築確認は,建築主が建築物の建築等の工事に着手する前に,その建築計画が建築基準関係規定に適合していることを公権的に確認する行為であって,それを受けなければ当該工事をすることができないという法的効果が付与されており(同条6項),建築基準関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的とした処分である。そして,建築基準法は,建築物の容積率(52条),建ぺい率(53条),高さ(55条,56条,56条の2等)等に関する規制を定めているところ,これらの規定は,建築密度,建築物の規模等を規制することにより,建築物の敷地上に適度な空間を確保し,もって,当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つとともに,当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,隣接する建築物等に延焼するなどの危険を抑制することを目的とするものと解される。 上記各規定の趣旨・目的や,各規定が建築確認を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に加え,建築基準法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものであること(法 建築確認を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に加え,建築基準法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものであること(法1条)にかんがみれば,法6条の2,6条1項は,建築確認に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物により日照,通風,採光,安全を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の生命・身体の安全,健康をも個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当である。 そうすると,建築確認に係る建築物により日照,通風,採光,安全を阻害される周辺の他の建築物の居住者は,当該建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。 これを本件についてみると,原告が本件建築場所の東側隣接地に共有持分を有し- 20 -同地上に居宅を所有し居住していることは,当事者間に争いがないところ,原告が居住する建物は,本件建築物が建築されることにより,日照,通風,採光,安全を阻害されるおそれがあるから,原告は,本件建築物に係る建築確認の取消しを求める本件訴えについて原告適格を有するものと認められる。 争点(2)について(1) 建ぺい率は,建築物の建築面積の敷地面積に対する割合であり(法53条1項),建築面積は,建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては,その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積によって求められる(法施行令2条1項2号)。また,建築物とは,法2条1号で「土地に定着する工 m以上突き出たものがある場合においては,その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積によって求められる(法施行令2条1項2号)。また,建築物とは,法2条1号で「土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)」と定義されている。 これらの規定からすれば,建築面積は,屋根及び柱若しくは壁を有する土地に定着する工作物(建築物)の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によって算定することを基本とし,軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては,その端から水平距離1m後退した線によって囲まれた部分の水平投影面積を含めて算定することとしたものと解される。 そして,建築基準法が建ぺい率規制を設けている趣旨は,前記のとおり,敷地面積に対する建築面積の割合を一定の値に制限することにより,建築物の敷地内に空地を確保し,当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つとともに,当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,隣接する建築物等に延焼するなどの危険を抑制することを目的とするものと解されるところ,法53条は,敷地の用途地域の指定に応じて建ぺい率の規制値を定め,その規制値を超えることを禁止しているにとどまり,上記の目的である日照,通風,採光,- 21 -防災等が実質的に確保されているか否かまでの審査を求めてはいない。そうすると,建築基準法が定める建ぺい率規制は,法及び施行令の基準に基づく規制を建築物に課することによって,結果的に,当該建築物及びこれに隣接する建築物の日照,通風,採光,防災等の確保を図る趣旨のものと解される。 したがって,建築主事又は指定確認検査機関が建築確認を づく規制を建築物に課することによって,結果的に,当該建築物及びこれに隣接する建築物の日照,通風,採光,防災等の確保を図る趣旨のものと解される。 したがって,建築主事又は指定確認検査機関が建築確認を行う際には,建築基準法及び施行令の規定に従って建築面積を求めた上,それに基づいて建ぺい率を算出し,その値が規制値を超えるものでなければ建築確認をすべきであって,それ以上に,当該建築物が日照,通風,採光,防災等に及ぼす影響を個々的に審査した上,環境に及ぼす影響の内容,程度等について実質的な判断をして建築確認を拒否することは許されないものと解される。もっとも,法及び施行令が定める建築面積の算定方法に関する規定について,その解釈が文言上明らかでない場合には,建ぺい率規制の上記趣旨,目的に照らして判断すべきことは当然である。 以下,原告が建築面積に含めるべきであると主張する部分について順に検討する。 (2) 本件中空部分(別紙図面②の水色部分)について本件中空部分は,南北方向14.3m,東西方向10.8mの屋根のない中庭状の空間であり(乙6),同部分には地下駐車場が設けられて駐車場の床の高さは平均地盤面より2.86m低くなっており,同駐車場についても屋根が設けられていない(乙5の16)。したがって,当該部分は,建築物(屋根及び柱若しくは壁を有する土地に定着する工作物)自体が存在しない部分であるから,建築面積に算入されない部分であると認められる。 中庭部分が建築面積に算入されないことは,建築基準法施行規則(ただし,平成17年国土交通省令第59号による改正前のもの)別記71号様式において,「建築物の内側に中庭などの建築面積に算入されない部分を有する建築物については,次のように必要な事項を記録して下さい」と,中庭部分を建築面積に算入しないことを前提とした記載 別記71号様式において,「建築物の内側に中庭などの建築面積に算入されない部分を有する建築物については,次のように必要な事項を記録して下さい」と,中庭部分を建築面積に算入しないことを前提とした記載をしていることからも明らかというべきである。 原告は,建築物内部に屋根のない空間を確保しても,建ぺい率規制の趣旨,目的- 22 -は達成されない旨主張するが,既に述べたとおり,建ぺい率規制に適合するか否かを審査する際には,法及び施行令の規定に従って本件建築物の建築面積を求めた上,それに基づいて建ぺい率を算出し,その値が建築基準法の規制値を超えるものか否かを判断すべきものであって,それ以上に,日照,通風,採光,防災等に及ぼす影響を実質的に判断すべきものではないから,原告の主張は理由がない。 (3) 中空部分以外の穴部分(別紙図面②の青色部分a~j)についてア本件パイプシャフト部分について(ア) 本件パイプシャフト部分は,給排水管・ガス管などを通す縦空間であり,設計図面(乙5の3~5の6)上は,「吹抜」と表示されており床を張らないことが前提となっている。もっとも,設計図面(乙5の3,4,21,22等)によれば,本件パイプシャフト部分は,いずれも建築物を支える柱及び梁で囲まれた領域の内部に存し,各階には本件パイプシャフト部分の外側にアルコーブないし廊下が設けられて,鉄筋コンクリート造の外壁ではないものの一定の部材で遮へいされ,アルコーブ側又は廊下側から両開きの開き戸が設置される設計となっている。 (イ) 被告は,本件パイプシャフト部分は,建築物の外部である旨主張しており,この趣旨は,当該部分は,本件各居室を取り囲む鉄筋コンクリート造の外壁の外側に存していることを指摘しているものと解される。確かに,コンクリート造の外壁に囲まれた部分に限定して建築面積 主張しており,この趣旨は,当該部分は,本件各居室を取り囲む鉄筋コンクリート造の外壁の外側に存していることを指摘しているものと解される。確かに,コンクリート造の外壁に囲まれた部分に限定して建築面積をとらえれば,本件パイプシャフト部分は建築面積には含まれないことになるが,上記のとおり,本件パイプシャフト部分は,建築物を支える柱及び梁で囲まれた領域の内部に存し,一定の部材で遮へいされ,しかも,その外側に面して廊下ないしアルコーブが設けられており,この廊下ないしアルコーブはその全部ないし一部が建築面積に含まれるのであるから(別紙図面①参照),当該部分を本件建築物の外部に存するものと評価することはできない。 そして,図面上は,床を張らない設計となっているが,建築物の内部に中庭を構成する程度の空間があればともかく,パイプシャフトのための比較的狭い吹抜け空間が設けられている場合には,そうした部分は建築物を構成する一部分と評価する- 23 -のが相当であって,当該部分を建築物に該当しない空間として,建築面積から除外すべきではない。 愛知県建築基準法関係例規集(甲47)では,パイプシャフトやダクトスペースは,吹抜けであっても床面積に算入するものと記載されているところ,床面積と建築面積とを同一に解さなければならない必然性はないものの,愛知県の上記取扱基準は,建築物内部の比較的狭い吹抜け空間については建築物に含めるという考え方を基礎とするものということができるから,こうした取扱基準が存することからしても,本件パイプシャフト部分を建築面積の算定に含めるとすることは合理的といえる。 (ウ) そうすると,本件パイプシャフト部分は,建築面積に含めるべき部分というべきであり,その面積は,穴a~dが6.8㎡(1m×1.7m×4か所),穴eが2㎡(1m×2m),穴fが 理的といえる。 (ウ) そうすると,本件パイプシャフト部分は,建築面積に含めるべき部分というべきであり,その面積は,穴a~dが6.8㎡(1m×1.7m×4か所),穴eが2㎡(1m×2m),穴fが2.3㎡(1m×2.3m),穴gが1.7㎡(1m×1.7m),穴i,jのパイプシャフト部分が2.1㎡(0.6m×1. 75m×2か所)であるから(乙5の13,乙6),それらの合計は14.9㎡となる。 イ穴hについて穴hは,屋根がないのみならず,外壁又はこれに代わる柱で囲まれてもいないから,建築面積に含めるべき部分とはいえないことは明らかである。 原告は,建築物内部に穴を開けることによる建築設計上のメリットは,上記のとおり建築面積を減らすこと以外には何もない一方,構造強度が低下する弊害があることは明らかであって,こうした穴hは建築基準法を潜脱する目的で設置されたものというべきであると主張するが,既に述べたとおり,建築確認においては,穴hがどのような設計思想で設けられたか否かについてまで考慮して判断すべきではない上,本件各証拠に照らしても,穴hが,原告が主張するような建築基準法を潜脱する目的で設けられたものであると直ちに認めることもできない。 したがって,穴hを建築面積に含めるべきであるとする原告の主張は理由がない。 - 24 -ウ穴i,jのスリット状の切込み部分について原告は,同切込み部分が,構造強度が低下するにもかかわらず,廊下の北側両側をすべて建築面積から除外するという,建築基準法を潜脱する目的で設けられた部分であるから,建築面積から除外すべきではない旨主張する。 しかし,当該切込み部分は,穴hと同様に,屋根がないのみならず,外壁又はこれに代わる柱で囲まれてもいないから,建築面積に含めるべき部分といえないことは明らかである。また,建築確認に ない旨主張する。 しかし,当該切込み部分は,穴hと同様に,屋根がないのみならず,外壁又はこれに代わる柱で囲まれてもいないから,建築面積に含めるべき部分といえないことは明らかである。また,建築確認においては,当該切込み部分がどのような設計思想で設けられたか否かについてまで考慮して判断すべきではない上,本件各証拠に照らしても,当該切込み部分が,原告が主張するような建築基準法を潜脱する目的で設けられたものであると直ちに認めることもできない。 したがって,穴i,jのスリット状の切込み部分を建築面積に含めるべきであるとする原告の主張は理由がない。 (4) 東側階段の外周端から1m後退させた部分(別紙図面②の茶色部分)についてア本件建築計画では,東側階段は,地下部分を除いて,外壁又は柱で囲まれていない開放型の屋外階段であるから,法施行令2条1項2号かっこ書の「ひさし,はね出し縁」に該当するとして,その外周端から1m後退させた部分を建築面積から除外している。 ところで,法施行令2条1項2号は,建築面積を建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によって算定するものとし,軒,ひさし,はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては,その端から水平距離1m後退した線によって囲まれた部分の水平投影面積によって算定する旨規定しているところ,当該規定の趣旨は,建築面積は,基本的には建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた水平投影面積によることとし,軒,ひさし,はね出し縁等のように,一方が建築物に固定され,他方が開放空間に突き出しているような構造部分については,建築物を構- 25 -成する部分ではあるが,その開放的な構造から,日照,通風,採光,防災等の環境に与える影響が少ない が建築物に固定され,他方が開放空間に突き出しているような構造部分については,建築物を構- 25 -成する部分ではあるが,その開放的な構造から,日照,通風,採光,防災等の環境に与える影響が少ないため,その端から水平距離1m後退した線までの部分を建築面積に含めないこととしたものと解される。このように,法施行令2条1項2号かっこ書が,軒,ひさし,はね出し縁等の開放性に着目したものと解すべきことは,法施行令2条1項2号ただし書が,国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物等について,その端から水平距離1m以内の部分の水平投影面積を建築面積に算入しないものとしていることに照らしても明らかである。 イ屋外階段についての基準等(ア) 愛知県建築基準法関係例規集(乙13)では,屋外階段が外壁又は柱で囲まれている場合には,外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分を建築面積に算入し,はね出しに類するもので外壁又はこれに代わる柱の中心線から水平距離1m以上突き出た場合は,その先端から水平距離1m後退した線で囲まれた部分を建築面積に算入するものとされている。 (イ) 平成14年度日本建築行政会議全国会議における部会検討結果報告(乙14)では,外周部分が外壁又は柱で囲まれておらず,中心部分で階段を支えている構造の屋外階段について,外周の四方からそれぞれ1m後退した線で囲まれた部分を建築面積に算入する旨が記載されている。 (ウ) 横浜市建築基準法取扱基準(甲46,乙15)においては,持ち出し形式の吹きさらしの片廊下,バルコニー,ベランダ及びこれらに形態の類似する屋外階段は,「はね出し縁その他これらに類するもの」に該当するものとし,ただし,外気に開放された部分の高さが1.1m未満である場合又は天井の高さの2分の1未満である場合は,当該部分 に形態の類似する屋外階段は,「はね出し縁その他これらに類するもの」に該当するものとし,ただし,外気に開放された部分の高さが1.1m未満である場合又は天井の高さの2分の1未満である場合は,当該部分に設けられた手すりその他これに代わるものを外壁とみなすものとしている。 (エ) 以上のとおり,各自治体等が定めた取扱基準によれば,外部階段については,「はね出し縁その他これらに類するもの」として,水平距離1m以上突き出ている場合には,法施行令2条1項2号かっこ書の1m後退を認めるという取扱いが- 26 -されており,横浜市においては,外部階段に当たるか否かについては,外気に開放された部分の高さ及びその高さと天井までの高さとの割合によって判断している。 これらの取扱基準は,外壁や柱に囲まれておらず,外部への開放性を備えた構造を有する階段については,その階段部分自体が,はね出し縁などのように一方が建築物に固定され,他方が開放空間に突き出しているものと同視することができるため,法施行令2条1項2号かっこ書の1m後退の適用を認めたものと解することができ,こうした取扱基準自体は,建築基準法が建ぺい率を定めた趣旨に適合するものということができる。 ウ本件建築物の東側階段は,手すりの高さが1.331m,手すり上端から天井までの高さが1.397m,天井の高さが2.728m(1.397m+1. 331m)であり(乙16),手すり上端から天井までの間に設けられた空間は,その上下方向の間隔については,十分な開放性を備えているということができる。 しかし,東側階段の北側及び西側は,壁芯間の距離で25㎝(実際の空間幅で15㎝程度)のわずかな間隔を置いて,本件建築物の外壁がその全面を覆うような位置に存しているから(乙6),北側及び西側に面した部分は,十分な開放性を有してい は,壁芯間の距離で25㎝(実際の空間幅で15㎝程度)のわずかな間隔を置いて,本件建築物の外壁がその全面を覆うような位置に存しているから(乙6),北側及び西側に面した部分は,十分な開放性を有しているものと到底いうことができない。上記イ記載の各自治体等の各取扱基準も,階段と建築物の外壁がこうしたわずかな空間を隔てているにとどまる場合についてまで,はね出し縁類似のものと認めることを許容しているものとは解されない。 一方,東側階段の南側は,壁芯間の距離で40㎝(実際の空間幅で30㎝程度)の幅のスリット状の穴hが設けられ,その穴hの南側は本件建築物の各階に設けられた廊下となっており,その廊下自体は一方が建築物に固定され,他方が突き出している構造になっているから(乙6),東側階段の南側と廊下で構成されている空間は,十分な開放性を有しているということができる。 また,東側階段の東側は外部空間になっているので,東側に面した部分が十分な開放性を有していることは明らかである。 エそうすると,東側階段は,東側及び南側については,十分な開放性を備え- 27 -ており,はね出し縁ないしこれらに類する構造を有すると認めることができるものの,北側及び西側については,十分な開放性が認められず,はね出し縁ないしこれらに類する構造を有しているとは認めることができないから,上記手すりを外壁とみなすべきであって,法施行令2条1項2号かっこ書による水平距離1mの後退は,東側階段の東側及び南側についてのみ認められるべきである。 本件建築計画においては,東側階段の東西南北すべてに面する部分で法施行令2条1項2号かっこ書の適用を前提としているところ,別紙図面⑥の赤色枠で囲まれた4.4㎡(1m×3.45m+1m×0.95m)の部分については,その適用は認められず,建築面積に含めるべき で法施行令2条1項2号かっこ書の適用を前提としているところ,別紙図面⑥の赤色枠で囲まれた4.4㎡(1m×3.45m+1m×0.95m)の部分については,その適用は認められず,建築面積に含めるべきである。 (5) 廊下の交点ないし屈曲部分(別紙図面②の赤色部分①~⑥)について当該ひさし等が,建築物の引っ込んだ角部(入隅)に設けられている場合,法施行令2条1項2号かっこ書をどのように適用するかについて,原告は別紙図面⑤の図1のとおり,被告は同図2のとおりに扱うべきであると主張している。 そこで,検討するに,入隅にひさし等が設けられている場合,その入隅部分も開放空間に突き出していると評価することが可能であるし,その部分も日照,通風,採光,防災等の環境に与える影響が少ないといえるから,当該部分についても1m後退した範囲について建築面積から除外することを認めても,建築基準法が建ぺい率を規制する趣旨に反するということはできない。 なお,本件で提出された各自治体の取扱基準中には,建築面積の算定についてこの点を明確に記載したものは見当たらないが,床面積の算定については,愛知県建築基準法関係例規集(乙13)において,入隅に吹きさらしの廊下が設けられている場合,その入隅部分は床面積に算入しないと記載されており,建築面積と床面積は,建ぺい率と容積率という異なった要件の算定の基礎となるものではあるが,入隅部分にはね出し構造の廊下が設けられている場合に,その入隅部分を他の廊下部分と同様に扱うか否かという点で共通の問題ととらえることができるから,上記記載は,建築面積の算定においても入隅部分について1mの後退を認める趣旨のもの- 28 -と解することができる。 そうすると,別紙図面②の赤色部分①,②,⑤,⑥は,入隅部分として建築面積から除外することが許されるし,ま においても入隅部分について1mの後退を認める趣旨のもの- 28 -と解することができる。 そうすると,別紙図面②の赤色部分①,②,⑤,⑥は,入隅部分として建築面積から除外することが許されるし,また,同赤色部分③,④は,渡り廊下の中心線で分けて考えると,入隅が背中合わせに接着した形状ととらえることができるから,当該部分についても入隅部分として建築面積から除外すべきである。 (6) 渡り廊下部分(別紙図面②の紫色部分)部分について原告は,渡り廊下部分は,東西両端を固定されているから,法施行令2条1項2号の「はね出し縁その他これらに類するもの」に該当しないと主張する。 しかし,法施行令2条1項2号は,軒,ひさし,はね出し縁のみならず,「その他これらに類するもの」についても,その端から水平距離1m後退した線によって建築面積を算定することと規定しており,本件建築物の渡り廊下は,その東西の端は柱又は一部外壁によって支えられているものの,東西に渡された廊下部分には外壁は存在しないから,中庭の開放空間における開放性をほぼ維持しているものということができる(乙6)。したがって,渡り廊下部分は,法施行令2条1項2号の「はね出し縁ないしその他これらに類するもの」に該当するというべきである。 そして,愛知県建築基準法関係例規集(乙18)は,外壁と支柱によって支えられたひさしについて,その左右の端からそれぞれ1m後退した線を建築面積から除外するものとしているが,このように突き出したひさしについては,前方(壁面から外方に向かう方向)において開放空間に突き出していると評価することができるのみならず,その左右方向においても開放空間に突き出していると評価することができるから,前方及び左右方向から1m後退した線によって建築面積を算定することは合理的な取扱いということができ ことができるのみならず,その左右方向においても開放空間に突き出していると評価することができるから,前方及び左右方向から1m後退した線によって建築面積を算定することは合理的な取扱いということができる。 そうすると,本件の渡り廊下のように,東西の端が柱ないし外壁に支えられているのみで,東西に渡された廊下部分には何ら柱ないし外壁による支えがない場合においては,渡り廊下の中心線から南方及び北方それぞれに開放空間に突き出していると評価できるから,南方及び北方それぞれから1m後退した線によって建築面積- 29 -を算定すべきものと解される。 本件建築物の渡り廊下は幅1.5mであるから(乙6),南方及び北方それぞれから1m後退した線によって建築面積を算定すると,1.5m幅すべてについて建築面積から除外すべきである。 (7) 以上によれば,本件建築物の建築面積は,本件建築計画の建築面積(812. 07㎡)に,本件パイプシャフト部分の合計面積14.9㎡と,東側階段部分の面積4.4㎡を加算した831.37㎡と算定すべきである。 そうすると,本件建築物の建ぺい率は,50.95%(831.37㎡÷1631.77㎡)となり,建ぺい率の規制値50%を超える違法なものと認められる。 争点(3)について(1) 法55条1項による高さ規制において,建築物の高さは地盤面からの高さによるとされ(法施行令2条1項6号),この関係における地盤面とは,建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3mを超える場合においては,その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいうとされている(法施行令2条2項)。 また,法56条の2第1項による日影規制において,第1種低層住居専用地域内にあっては,平均地盤面から1.5mの高さの水平面を基準 との平均の高さにおける水平面をいうとされている(法施行令2条2項)。 また,法56条の2第1項による日影規制において,第1種低層住居専用地域内にあっては,平均地盤面から1.5mの高さの水平面を基準とした日影時間の規制を定めているところ,平均地盤面からの高さとは,当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうとされている(法別表第4)。 そうすると,法55条1項の高さ規制及び法56条の2第1項の日影規制は,それぞれ「建築物が周囲の地面と接する位置」を基準として組み立てられているため,建築物の周囲に意図的に盛土をすることによって当該建築物が「周囲の地面と接する位置」を上昇させたとすれば,それらの規制が容易に潜脱されることになり得ることから,原告は,本件建築物においては意図的な盛土がされており,周囲に設けられた擁壁とその周囲の地面と接する位置をもって,地盤面等を確定すべきである旨主張している。 - 30 -(2) 建築基準法は,建築予定地に盛土がされる場合のあることを予定しているものの(法19条2項),建築予定地における盛土を規制する具体的な規定は置いておらず,また,盛土がされた場合の「建築物が周囲の地面と接する位置」についての特則等も置いていないところ,「建築物が周囲の地面と接する位置」という文言からすれば,その意義は,建築物が完成時において物理的に周囲の地表面と接する位置をいうものと解するのが自然である。 そうすると,建築確認の審査においては,特段の事情のない限り,建築物が完成時において当該盛土が行われた後の地表面と物理的に接する位置をもって「建築物が周囲の地面と接する位置」と認定すべきものと解されるが,上記のとおり,意図的な盛土を放置することは法55条1項の高さ規制及び法56条の2第1項の日影規制が容易に 物理的に接する位置をもって「建築物が周囲の地面と接する位置」と認定すべきものと解されるが,上記のとおり,意図的な盛土を放置することは法55条1項の高さ規制及び法56条の2第1項の日影規制が容易に潜脱されることになり得るから,盛土が,他に合理的な理由もなく,専ら若しくは主として上記規制の潜脱を目的として行われる部分を含むときには,当該盛土部分がないものとして「建築物が周囲の地面と接する位置」を認定すべきである。 (3) 愛知県建築基準法関係例規集(乙9)は,盛土後に建築物が接する位置を「建築物が周囲の地面と接する位置」とするとし,ただし,敷地の衛生上,安全上必要な範囲を超える盛土又は局部的な盛土がされる場合においては,当該盛土後に建築物が接する位置以外の適切と考えられる位置を「接する位置」として設定するものとしている。そして,「局部的な盛土」について,フラワーポットなど意匠的に設けられる小規模なもの又は容易に撤去可能なものや,上部の水平な面が2m以上の広がりを持たないもの(ただし,隣地境界線又は道路境界線まで,それぞれ隣地又は道路の高さと同程度まで盛土をした場合は,水平な面の広がりが小規模であっても,盛土後の地盤面を「周囲の地面と接する位置」とする。)に該当するものをいうとされている。 また,横浜市建築基準法取扱基準(乙15)においても,同様の記載があり,その説明図においては,建築物の外壁から擁壁の外端までの距離が2m以上であるこ- 31 -とが求められている。 愛知県や横浜市におけるこうした取扱基準は,上記(2)の見地からも合理的なものと考えられる。 (4) 本件建築物は,別紙図面④の赤線部分に建築物と一体となった擁壁が設けられ,その間に盛土がされており,本件建築計画において,当該部分は,盛土後の地盤面等を「周囲の地面と接する位置」 えられる。 (4) 本件建築物は,別紙図面④の赤線部分に建築物と一体となった擁壁が設けられ,その間に盛土がされており,本件建築計画において,当該部分は,盛土後の地盤面等を「周囲の地面と接する位置」として「KBM+1.50m」と算出している(乙2,4,5の16)。 そして,この部分は,建築物の外壁から擁壁の外端までの距離が2mであるから(乙5の3),盛土後の地盤面を「周囲の地面と接する位置」として地盤面の高さを算出することは,上記愛知県や横浜市における取扱基準にも適合している。 (5) また,原告は,本件建築物の地盤面等は,かつて計画地に寺院が存在した当時の現況地盤面より圧倒的に高いことを理由に,意図的な盛土がされている旨主張する。 しかし,従前の寺院の現況地盤面は,原告宅前面道路沿いの植木の高さとほぼ同じであり(乙8の1ないし3),本件建築物の地盤面等の高さも上記植木の高さとほぼ同じであるから(甲41の1・2),本件建築物の地盤面等が寺院が存在した当時の現況地盤面より圧倒的に高いとはいえず,本件建築物を建築する際に,意図的に盛土がされたものとは直ちに認めることができない。 また,現況地盤面の平坦部は,最も高いところで22.61m(KBM+2.58m),最も低いところで21.00m(KBM+0.97m),平均すると21. 44m(KBM+1.41m)であるが(乙3),上記のとおり,別紙図面④の擁壁部の地盤面等の高さが「KBM+1.50m」である上,本件建築計画では地盤面等を「KBM+1.06m」としているのであるから(乙5の11・12),本件建築物が他に合理的な理由もなく,専ら若しくは主として高さ規制ないし日影規制の潜脱を目的として意図的に盛土をしたものと認めることはできない。 (6) さらに,原告は,地盤面等の算定に際し「建築物が周囲の地面と 他に合理的な理由もなく,専ら若しくは主として高さ規制ないし日影規制の潜脱を目的として意図的に盛土をしたものと認めることはできない。 (6) さらに,原告は,地盤面等の算定に際し「建築物が周囲の地面と接する位- 32 -置」を算入する際,本件建築物の中空部分をも含めるべきであると主張するが,本件建築物の中空部分は,「建築物の周囲」ではないことが明らかであるから,原告の主張は理由がない。 (7) 以上によれば,本件建築物の地盤面等の算定は適法になされていると認められ,本件建築計画は,法55条1項の高さ規制及び法56条の2第1項の日影規制に適合するものと認められる。 結論 以上によれば,本件確認処分は,本件建築物の建ぺい率が50.95%で,建ぺい率の上限50%を超えることを看過した点で違法なものであるから,これを取り消すこととし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官

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