平成22(ネ)10086 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成23年8月9日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成20(ワ)36307
ファイル
hanrei-pdf-81550.txt

キーワード

判決文本文28,783 文字)

平成23年8月9日判決言渡 平成22年(ネ)第10086号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審東京地方裁判所平成20年(ワ)第36307号)口頭弁論終結日平成23年5月30日判決 控訴人株式会社アイワ 訴訟代理人弁護士鮫島正洋 同高見憲 同大矢和徳 同石川智太郎 訴訟復代理人弁護士柳下彰彦 補佐人弁理士樋口武尚 被控訴人太陽工業株式会社 訴訟代理人弁護士伊藤真 同平井佑希 訴訟代理人弁理士村松義人 同鈴木正剛 補佐人弁理士栗下清治 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の当審で拡張した請求を棄却する。 3 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、別紙物件目録記載の製品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸入し、輸出し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,別紙物件目録記載の製品を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸入し,輸出し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡若しくは貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。 3 被控訴人は,控訴人に対し,1億円及びこれに対する平成23年2月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 5 仮執行宣言第2 事案の概要及び当事者の主張等 1 事案の概要(以下,控訴人(原審原告)を「原告」と,被控訴人(原審被告)を「被告」といい,原審において用いられた略語は,当審においてもそのまま用いることとする。)原告は,発明の名称を「空気浄化用シートおよびその製造方法」とする本件特許権の特許権者であるところ,原審において,被告が被告製品を製造,販売等する行為が本件特許権を侵害するものであると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告製品の製造,譲渡等の差止めを求めて,訴訟を提起した。 原審は,被告製品は,本件発明の構成要件Cを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められないとして,原告の請求を棄却した。そこで,原告は,これを不服として本件控訴を提起すると共に,当審において,特許法102条3項に基づき,本件特許権侵害による損害賠償金14億1510万円の内金1億円及びこれに対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成23年2月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求を追加した。 2 争いのない事実等 原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」「2 争いのない事実等」(原判決2頁9行目ないし8頁25行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 加した。 2 争いのない事実等 原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」「2 争いのない事実等」(原判決2頁9行目ないし8頁25行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点(1) 構成要件Cの充足性(2) 構成要件Dの充足性(3) 均等侵害(当審における新たな主張) 4 争点に関する当事者の主張次のとおり当審における主張を追加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に関する当事者の主張」(原判決9頁3行目ないし40頁5行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 (原告の主張)(1) 争点(1)(構成要件Cの充足性)についてア被告製品の最外層にPTFEが存在するという点について(ア) 熱処理品のSEM観察一般に,PTFEの薄膜をその融点(327℃)を大幅に超える温度(例えば,350ないし370℃)まで加熱した後,徐冷する処理(以下「熱処理」という。)を行うと,紡錘形状が表面に現れることが知られている。PTFE分散液をガラス上にスプレー塗布したもの,PTFE粒子を圧縮成形して得られたシート及びPTFEの水分散液をアルミニウム板上に噴霧して乾燥したPTFEフィルムを熱処理したところ,その写真には,先が尖った細長い輪郭と,内部に長さ方向に沿った数本の筋及び幅方向に並ぶ筋とを有する紡錘形状を確認できた。これに対し,FEPを熱処理しても,上述した紡錘形状が表面に現れることはない。 被告製品に対し,室温から370℃に約10分間で上昇させ,ついで,335℃まで約10分間で降下させ,さらに,326℃まで約10分間で降下させ,326℃で約60分間保持し,ついで,309℃まで約20分間で降下させ,309℃で約30分間保持し,その後,約40分間で室温まで温度を降下させる方法による熱 さらに,326℃まで約10分間で降下させ,326℃で約60分間保持し,ついで,309℃まで約20分間で降下させ,309℃で約30分間保持し,その後,約40分間で室温まで温度を降下させる方法による熱処 理を行い,最外層をSEMにより観察して写真撮影を行った。このSEM写真(甲60の図2及び3)では,上記と同じ特徴を有する紡錘形状が確認できた。 被告製品は,中興化成工業(株)製「チューコーフロースカイトップ」のFEP層に,フッ素樹脂を含有する最外層を設けたものであるが,原告が,チューコーフロースカイトップを同様に熱処理し,その前後の表面のSEM写真を撮影したところ,これらのSEM写真(甲60の図6ないし10)によると,チューコーフロースカイトップの表面には,熱処理前も熱処理後も,紡錘形状が見られない。 以上のとおり,被告製品の最外層には,PTFEが存在する。 (イ) 化学分析aTEM-ED分析被告製品を前記(ア)と同様の方法で熱処理し,その後,デタッチメントレプリケーション(DR)法により,被告製品の最外層の表面に存在する紡錘形状の結晶を分離した。具体的には,熱処理された被告製品の最外層の表面に,DR法のための前処理を行った後,コロジオン溶液としてニトロセルロースのイソアミルアセテート溶液(濃度10質量%)を滴下して試料表面を被覆させ,室温で1ないし2日自然乾燥させてコロジオン溶液を固体(レプリカ)とした後,はく離させ,コロジオン(レプリカ)の下側に厚さ約50nmの非晶性炭素膜を蒸着法により形成させた後,イソアミルアセテートを用いてコロジオンを溶解させて除去した。このようにして分離された紡錘形状の結晶を含む試料を,TEMで観察し,電子線を照射して,電子線回折パターンを得た。甲70は,上記の方法によるTEM-ED分析の実 用いてコロジオンを溶解させて除去した。このようにして分離された紡錘形状の結晶を含む試料を,TEMで観察し,電子線を照射して,電子線回折パターンを得た。甲70は,上記の方法によるTEM-ED分析の実験報告書である。 電子線回析パターンから分析対象となった紡錘形状の結晶系及び面間隔を導出したところ,紡錘形状結晶は室温において六方晶系で,その面間隔は0.492nmであることが判明した。 他方,後記のとおり,WAXS(広角X線散乱)分析によると,PTFE及びF EPの室温における面間隔は,それぞれ0.492nm,0.500nmであった。 紡錘形状の結晶の面間隔は,PTFEの面間隔と一致し,FEPの面間隔とは有意差がある。 したがって,紡錘形状の結晶はPTFEの結晶であるといえ,被告製品の最外層にはPTFEが存在している。 bDSC測定被告は,原告が行ったDSC測定において採取した被告製品のサンプルにはFEPの層の下にあるPTFEの層が混入している旨主張する。 そこで,改めて,被告製品を設定温度303℃に設定されたホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら302℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で被告製品の分析用サンプルを採取した。 このサンプルに対し,30℃/分という昇温速度でDSC測定を行った結果を記載したDSCチャート(甲85の図1)によると,326℃付近にPTFE由来のピークが検出された。したがって,原告がこれまで行ってきたDSC測定には問題はない。 cTMDSC測定(a) 以下のサンプルについて,TMDSC(温度変調示差走査熱量測定)を行った。 サンプル① PTFEサンプル② がこれまで行ってきたDSC測定には問題はない。 cTMDSC測定(a) 以下のサンプルについて,TMDSC(温度変調示差走査熱量測定)を行った。 サンプル① PTFEサンプル② FEPサンプル③ PTFE/FEP混合物(固形分濃度が質量比でPTFE:FEP=2:8)サンプル④ 被告製品被告製品をホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら300℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中 間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で,サンプルを採取した。採取したサンプルは,最外層とその下にある溶融したFEP層のみによるものである。 サンプル⑤ チューコーフロースカイトップチューコーフロースカイトップをホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら306℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で,サンプルを採取した。採取したサンプルは,最も表面にある溶融したFEP層のみによるものである。 (b) 測定結果甲65は,各サンプルのTMDSC測定結果の報告書であり,サンプル③及び④の測定結果を示したTMDSCチャートは,図3及び4(別紙1)のとおりである。 サンプル① 可逆熱流(ReversingHeatFlow)の曲線において,327℃付近にPTFEの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 サンプル② 可逆熱流の曲線において,327℃付近のPTFE由来のピークが見られず,257℃付近にFEPの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 サンプル③ 可逆熱流の曲線において,328℃付近のPTFE由来 熱流の曲線において,327℃付近のPTFE由来のピークが見られず,257℃付近にFEPの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 サンプル③ 可逆熱流の曲線において,328℃付近のPTFE由来のピーク及び249℃付近のFEP由来のピークが見られる。 サンプル④ 可逆熱流の曲線において,323℃付近のPTFE由来のピーク及び254℃付近のFEP由来のピークが見られる。 なお,非可逆熱流(Non-ReversingHeatFlow)の曲線においては,シリコーン系材料に由来すると考えられる315℃付近を中心とする大きなピークがあり,全熱流(HeatFlow)では,PTFEの結晶の融解による熱吸収は,極めて微小な「肩」として現れているだけである。これが,DSC測定の結果(甲29)において,PTFE由来のピークが極めて小さく現れた理由である。 サンプル⑤ 可逆熱流の曲線において,327℃付近のPTFE由来のピークが見られず,255℃付近のFEP由来のピークが見られる。 (c) 被告製品は,最外層及びその下にあるFEP層を測定したものであり,被告製品の最外層にはPTFEが存在することが示された。なお,チューコーフロースカイトップでは,PTFE由来のピークが見られず,これは測定用サンプル採取の際にPTFE層が混入しなかったことを示すものである。したがって,同様の方法で採取した被告製品のサンプルにも,3番目の層であるPTFE層が混入していないことが確認できる。また,被告製品のサンプル採取に用いたホットプレートは,サンプル表面温度を301℃とした場合,サンプルを取り去った部分の表面温度が332℃であり,この結果から,被告製品の2番目の層と3番目の層との境界付近の温度は302℃にも満たなかったこととなり,これはPTFEの融 を301℃とした場合,サンプルを取り去った部分の表面温度が332℃であり,この結果から,被告製品の2番目の層と3番目の層との境界付近の温度は302℃にも満たなかったこととなり,これはPTFEの融点(327℃)よりも低い。したがって,サンプルに3番目の層のPTFEが混入した可能性はない。 dWAXS分析被告製品からサンプルを採取して,WAXS(広角X線散乱)分析を行った。甲72は,その実験報告書である。 被告製品をホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら300℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で被告製品のサンプルを採取した。採取したサンプルは,最外層とその下にある溶融したFEP層のみによるものである。 比較対象として,チューコーフロースカイトップをホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら306℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法でチューコーフロースカイトップの分析用サンプルを採取した。採取したサンプルは,溶融したFEP層のみを含む。 測定温度をFEPの融点(270℃)より高い290℃として,各サンプルにつきWAXS分析を行ったところ,被告製品(everfine)は12.2nm-1付近に回折ピークがあったのに対し,チューコーフロースカイトップ(skytop)はピークがなかった。290℃におけるPTFE結晶の回折ピークは既存のデータベースに存在しないが,①PTFEの室温における回折ピークは12.77nm-1であり,290℃という高温下ではこれがPTFE結晶格子の熱膨張により低い方 おけるPTFE結晶の回折ピークは既存のデータベースに存在しないが,①PTFEの室温における回折ピークは12.77nm-1であり,290℃という高温下ではこれがPTFE結晶格子の熱膨張により低い方にシフトすると考えられること,②被告製品に含まれる可能性がある物質の中で290℃という高温下で結晶として存在するのはPTFEしか考えられないことから,被告製品に見られるピークはPTFEのものであるということができる。 したがって,被告製品の最外層にはPTFEが存在する。 e 硝酸銀試験PTFEの水分散液やPTFE及びFEPの混合水分散液に酸化チタン粒子を分散させたものを塗布して乾燥させたものは光触媒反応を生じるのに対し,FEPの水分散液に酸化チタン粒子を分散させたものを塗布して乾燥させたものは光触媒反応を生じない。後記(2)アのとおり,被告製品は光触媒反応を生じたから,被告製品の最外層にはPTFEが存在するということができる。 (ウ) 被告作成の文書等の記載被告は,以下の文書において,被告製品の最外層にPTFEを使用していることを明示している。 a 守山駅西口広場再整備確認及び質問事項解答書被告は,守山市によるJR西日本守山駅西口広場再整備に伴うシェルター選考の際に,守山市に対し,「守山駅西口広場再整備確認及び質問事項解答書」(甲76)を提出した。 被告は,同書面おいて,シェルターに用いる「膜材」(被告製品)について,「屋根に使用する膜材はガラス繊維に四フッ化エチレン樹脂をコーティングしており,高い防汚性能を有しております。」「耐汚性は,前述のように四フッ化エチレン樹脂 をコーティングしていますので,汚れがつきにくく,また汚れた場合でも水洗いで洗浄が可能です。」と解答している。そして,「コーティング」とは,「物体の 耐汚性は,前述のように四フッ化エチレン樹脂 をコーティングしていますので,汚れがつきにくく,また汚れた場合でも水洗いで洗浄が可能です。」と解答している。そして,「コーティング」とは,「物体の表面に薄膜を付着させておおうこと。」であり(大辞泉増補・新装版(甲77)926頁「コーティング」の項),また,膜材が耐汚性を発揮するためには防汚性能を持つ材料(PTFE)が外部と接する最外層に存在しなければならないから,被告は被告製品の最外層がPTFEであることを自ら認めていることとなる。 b 守山駅西口広場シェルターデザインに関する選考審査の資料・質問事項集計表守山市は,上記選考の際に,被告から上記「守山駅西口広場再整備確認及び質問事項解答書」の提出を受けて,「守山駅西口広場シェルターデザインに関する選考審査の資料・質問事項集計表」(甲78)を作成した。同書面の「③太陽工業株式会社」の欄には,上記aで抜粋した記載と同様の内容が記載されている。したがって,守山市は,被告の「守山駅西口広場再整備確認及び質問事項解答書」における「解答」に基づき,選考審査し,被告製品の使用を決定したことが明らかである。 このように,守山市に被告製品が採用された経過にかんがみても,被告製品の最外層にPTFEが存在していないとすることは極めて不自然である。 c リーフレット被告の「酸化チタン光触媒×膜構造」と題するリーフレット(甲79)には,「膜材エバーファインコート(A種膜材)」に関し,「耐候性」について「コーティング材の四フッ化エチレン樹脂は,紫外線の影響をほとんど受けず,物性面における劣化や褪色がなく熱に対しても強い。」という記載があり,さらに,「ガラスクロス平織」を内部に含む「ガラスビーズ混入四フッ化エチレン樹脂(PTFE)」の上に,「酸化チ をほとんど受けず,物性面における劣化や褪色がなく熱に対しても強い。」という記載があり,さらに,「ガラスクロス平織」を内部に含む「ガラスビーズ混入四フッ化エチレン樹脂(PTFE)」の上に,「酸化チタン(TiO2)光触媒コーティング」が設けられていることが図示されている。上記記載中の「コーティング材の四フッ化エチレン樹脂」というのは,「酸化チタン(TiO2)光触媒コーティング」にPTFEが用いられていることを示すものである。 したがって,被告は被告製品の最外層にPTFEが用いられていることを自ら認めている。 d 技術調査レポート経済産業省産業技術環境局技術調査室発行の「技術調査レポート(技術動向編)第2号酸化チタン光触媒に関する産業の現状と課題」(甲80)には,被告製品である「PTFE膜材料」について,最外層が「PTFE+酸化チタン」であることが図示されている。被告製品の最外層がPTFEであることは,経済産業省にも認められた事実である。 (エ) なお,被告製品の最外層がPTFEを含有し,PTFE微粒子が連通した隙間のある多孔質を形成し,PTFE微粒子の隙間間に光触媒が保持されている限り,構成要件Cを充足するのであって,その量は基本的に問題とならない。 イ被告製品の最外層においてPTFE微粒子の隙間間に酸化チタン(TiO2)粒子が保持されているという点について(ア) SEM-EDX分析予め,被告製品の裏面(最外層表面と反対側の面)からメスで切れ込みを途中まで入れた後,液体窒素を使用して凍結させ,引き続き液体窒素中で割断して,分析用サンプルの最外層断面を形成した。SEM-EDX分析の結果を示すSEM-EDX写真(甲81の図2(別紙2はその一部を抜粋したものである))によると,黒く見える部分(孔)の周囲から内部 断して,分析用サンプルの最外層断面を形成した。SEM-EDX分析の結果を示すSEM-EDX写真(甲81の図2(別紙2はその一部を抜粋したものである))によると,黒く見える部分(孔)の周囲から内部にかけて酸素原子にかかる赤いドットが存在しているから(別紙2の青い枠の部分),最外層における隙間には酸化チタン粒子が保持されていることが確認できる。 (イ) 高倍率SEM観察以下の試料について,高倍率SEM観察を行った。 サンプル①(被告製品の最外層)被告製品の最外層に軽度にイオンエッチング処理を施し,最外層の最表面をDR法により取り去ったものである(ただし,最外層の大部分は残る。)。 サンプル②(被告製品の最外層からフッ素樹脂を除去したもの)被告製品の最外層に強度にイオンエッチング処理を施し,最外層のフッ素樹脂を取り去ったものである。 サンプル②のSEM写真(甲82図2)との比較などから,サンプル①のSEM写真(甲82の図1(別紙3))の白い粒子(○A)はTiO2粒子,グレーの粒子(○B)はPTFE,グレーの不定形物質(○C)はFEPである可能性が高い。したがって,PTFEが多孔質状態を形成し,黒い隙間(孔)の周囲にTiO2粒子が多く存在しており,TiO2粒子はPTFE微粒子の隙間間に保持されているといえる。 (ウ) PTFE及びFEPの含有比を変えたサンプルのSEM観察アルミニウム板を,PTFEの水分散液,FEPの水分散液又はPTFE及びFEPの混合水分散液(PTFE/FEP(質量比)を変えて数種用意した。)にTiO2粒子を分散させたもの(PTFE及びFEPの合計/TiO2=70/30(質量比))に浸漬,乾燥させたサンプル①ないし⑧,及び被告製品をSEM観察に供した。 フッ素樹脂がFEPのみである にTiO2粒子を分散させたもの(PTFE及びFEPの合計/TiO2=70/30(質量比))に浸漬,乾燥させたサンプル①ないし⑧,及び被告製品をSEM観察に供した。 フッ素樹脂がFEPのみである場合は,TiO2の凝集した二次粒子がFEPに完全に被覆されていたが,PTFEの含有量が多くなるに従って,PTFE微粒子が多孔質状態を形成してFEPから露出し,TiO2粒子が隙間や表面に付着していく。被告製品の最外層のSEM写真と対比すると,被告製品は明らかにフッ素樹脂がFEPのみである場合とは異なり,PTFEをある程度含有するものと近い。 したがって,被告製品の最外層においてPTFE微粒子が多孔質状となっており,PTFE微粒子が形成する隙間間にTiO2粒子が保持されているといえる。 (2) 争点(2)(構成要件Dの充足性)についてア硝酸銀試験以下の試験体について,硝酸銀試験を行った。 試験体① 被告製品試験体② PTFE:TiO2=70:30 試験体③ FEP:TiO2=70:30試験体④ PTFE:FEP:TiO2=35:35:30予め,上記各試験体に,紫外線ランプ(ブラックライト)2本で3時間紫外線を照射することにより,前処理を行った後,0.1mol/L硝酸銀水溶液に浸し,紫外線ランプで,3分間,約30cmの距離で紫外線を照射した。 その結果,試験体①,②及び④はいずれも褐色に変化し,光触媒反応を生じたが,試験体③は色が変化せず,光触媒反応が生じなかった。 したがって,被告製品は,光触媒反応による空気浄化性能を有する。 イ被告作成のパンフレットの記載被告のパンフレット「MakMax」(甲84)には,「酸化チタン光触媒を含有したフッ素樹脂膜材料」が「周辺の空気を浄化する働きがある」旨記載されており,同 。 イ被告作成のパンフレットの記載被告のパンフレット「MakMax」(甲84)には,「酸化チタン光触媒を含有したフッ素樹脂膜材料」が「周辺の空気を浄化する働きがある」旨記載されており,同パンフレットにおいて「酸化チタン光触媒を含有したフッ素樹脂膜材料」はいわゆる「A種膜材料」のみであり,これは被告製品のことである。 したがって,上記パンフレットにおいて,被告は,被告製品が空気浄化性能を有することを認めており,「空気浄化用シート」に該当する。 (3) 争点(3)(均等侵害)についてア仮に,被告製品が,「PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)が連通した隙間のある多孔質状に付着されているとともに」,「前記PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)の隙間間にTiO2粒子が保持されている」という構成を有するとした場合,以下のとおり,被告製品は本件発明と均等であり,被告製品は本件発明の技術的範囲に属する。 イ被告製品が上記のとおりである場合,本件発明の構成要件B及びCにおける「PTFE微粒子」が被告製品においては「PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)」となっている点で相違する。 本件特許発明は,酸化チタン等の光触媒微粒子が持つ光触媒作用を利用して空気 中の窒素酸化物等を分解するなどした空気浄化用シートであって,本件特許発明の課題は,光触媒微粒子が外気と接触するのが妨げられず,十分な光触媒作用が得られ,耐久性に優れ,しかも室内用品あるいはその他の物品に幅広く利用できる空気浄化用シートを提供することである。そして,この課題を解決するための解決手段を基礎付ける技術的思想は,光触媒微粒子が空気とよく接触して十分に光触媒作用(光分 るいはその他の物品に幅広く利用できる空気浄化用シートを提供することである。そして,この課題を解決するための解決手段を基礎付ける技術的思想は,光触媒微粒子が空気とよく接触して十分に光触媒作用(光分解反応)を奏させるべく,光触媒微粒子を多孔質によって保持することにある。 したがって,この多孔質を構成する物質が,「PTFE微粒子」であるか,「PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)」であるかは,解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分ではない。 ウ被告製品は,最外層が多孔質であり,光触媒微粒子であるTiO2粒子が持つ光触媒作用を利用して空気中の窒素酸化物等を分解する効果を奏する。また,被告製品は,最外層にフッ素樹脂を用いているから,耐久性に優れる。 以上より,本件発明における「PTFE微粒子」を被告製品における「PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)」に置き換えても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。 エ従来,被告製品のような膜材料にフッ素樹脂としてPTFEやFEPを用いること及びこれらがよく似た特性(耐薬品性等)を有していることはいずれも周知であるから,当業者が被告製品の製造等の時点において,上記のように置き換えることは容易であった。 オ被告製品の構成は,本件発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではない。 (被告の反論)(1) 争点(1)(構成要件Cの充足性)についてア SEM観察(ア)a 被告製品と同様に,最外層にフッ素樹脂としてはFEPのみを含み,PT FEを含まない膜材Aを,液体窒素に浸して冷却した後,液体窒素中で割断し,その断面をSEM観察したとこ M観察(ア)a 被告製品と同様に,最外層にフッ素樹脂としてはFEPのみを含み,PT FEを含まない膜材Aを,液体窒素に浸して冷却した後,液体窒素中で割断し,その断面をSEM観察したところ,原告が多孔質状であると主張しているのと同様の外観を呈している写真(乙56)が得られた。 また,被告も被告製品を凍結割断した後の断面のSEM観察を行ったが,被告製品の最外層は,PTFEを含まない膜材Aの最外層と同様の外観,形状を呈している。 FEP単体の場合に多孔質状にならないということは,FEPに酸化チタンや界面活性剤を混合して塗布・焼成した場合に多孔質状にならないということをも意味するものではない。 したがって,多孔質状であるからPTFEが含まれているという原告の主張は失当である。 b 仮に,化学分析に関して原告の実験結果を尊重するとしても,被告製品の最外層に含まれるPTFEは微量であり,原告が主張するように大量のPTFEがSEM写真等において観察されるはずはなく,被告製品の最外層において,PTFE微粒子が連通した隙間のある多孔質状に付着されていること,及びPTFE微粒子の隙間間に酸化チタン粒子が保持されていることについての立証はない。 (イ) 熱処理品のSEM観察熱処理を施した膜材の表面観察(結晶の観察)という分析手法は,膜材のありのままの表面を観察するのではなく,いわば熱変性した後の表面層を観察するものであり,それにより変性前の被告製品の最外層にPTFEが含まれているということの立証にはならない。 最外層にフッ素樹脂としてはFEPのみを含み,PTFEを含まない膜材A,被告製品,最外層がFEP100%であり,酸化チタンを含まないチューコーフロースカイトップFGT600について,原告とほぼ同じ方法で熱処理を行った後,複数箇所 のみを含み,PTFEを含まない膜材A,被告製品,最外層がFEP100%であり,酸化チタンを含まないチューコーフロースカイトップFGT600について,原告とほぼ同じ方法で熱処理を行った後,複数箇所でSEM観察を行った。いずれも,観察部位によって,多種多様な外観・形状が観察され,原告がPTFEであると主張する結晶が観察された部位も,これが 観察されなかった部位も存在した。上記結晶が観察された部位についても,結晶が薄い膜に覆われたような部位から,むき出しになっている部位,最外層の上に乗っているような部位まで様々であった。このように,同じ1枚の膜材の上でも撮影する部位によって結果が多様となる実験の結果により物質の同定を行うことは,到底不可能である。また,被告製品の表面に結晶が観察されたということから,被告製品の最外層がPTFEを含むということにはならない。 (ウ) SEM-EDX分析原告は,SEM-EDX分析の結果を示す写真(甲81の図2(別紙2))を提出するが,SEM写真に赤いドットポイント(レッドポイント)を合成しただけのものであり,当該レッドポイントの箇所にTiO2が存在することを示すものではない。 (エ) 高倍率SEM観察原告が提出する高倍率SEM写真(甲82の図1(別紙3))の○AがTiO2粒子,○BがPTFE微粒子,○CがFEPであるという根拠はなく,仮に,同写真の○AがTiO2粒子,○BがPTFE微粒子,○CがFEPであったとしても,PTFE微粒子は複数がまとまってダマになっているか,又はRTFE微粒子の間はFEPで埋められているように見えるのであって,PTFE微粒子間に特に隙間は見られない。 イ化学分析(ア) DSC分析及びTMDSC分析a 被告は,以下の膜材について,TMDSC分析を行っ FEPで埋められているように見えるのであって,PTFE微粒子間に特に隙間は見られない。 イ化学分析(ア) DSC分析及びTMDSC分析a 被告は,以下の膜材について,TMDSC分析を行った。 膜材A(FEP:PTFE:TiO2=80:0:20)膜材B(FEP:PTFE:TiO2=77:3:20)膜材C(FEP:PTFE:TiO2=0:80:20)膜材D 被告製品なお,いずれもシリコーン系界面活性剤が使用されている。 サンプルの採取方法は,ホットプレートの設定温度を310℃以下(FEPの融 点である275℃とPTFEの融点である327℃の間)として,被告製品を熱し,金属製の薬さじの丸い部分で被告製品の最外層を擦り取るという方法である。 TMDSC分析の結果は,分析結果報告書(乙57)記載のとおりであり,膜材A及びDからは,PTFEは検出されなかった。 b 原告は,新たに行ったDSC分析では,ホットプレートの設定温度を303℃にしてサンプルを採取したと主張するが,甲74からは,ホットプレートを何度に設定していたのかは明らかではなく,擦り取る時点で膜材の表面温度が何度になっていたのかも不明である。 また,DSC分析,TMDSC分析の結果PTFEが検出されたとしても,酸化チタン粒子を含有していないFEP単体の層とPTFEの層との境界付近である測定位置(最外層中間部からの深さ)が10μmより深い部分では,FEPにPTFEが数%ないし数十%程度混入しており,FEP層とPTFE層が完全に別の層として分離しているわけでないことから,それがFEP層とPTFE層の境界付近に存在するPTFEに由来するものである可能性は十分にある。 さらに,融点以下の温度下のPTFEも,金属製の器具で擦れば,その力加減次第では,削り取 ことから,それがFEP層とPTFE層の境界付近に存在するPTFEに由来するものである可能性は十分にある。 さらに,融点以下の温度下のPTFEも,金属製の器具で擦れば,その力加減次第では,削り取られてしまう。 したがって,原告が行ったDSC分析,TMDSC分析の結果PTFEが検出されたとしても,被告製品の最外層にPTFEが存在するということが立証されたとはいえない。 c 仮に,原告のTMDSCの測定結果を前提としたとしても,検出されたPTFEはごく微量であり,そのような微量のPTFEが,「連通した隙間のある多孔質状に付着されていること」及び「PTFE微粒子の隙間間にTiO2粒子が保持されていること」についての立証はない。 (イ) WAXS分析WAXS分析におけるサンプルも,ホットプレートの設定温度を400℃にして採取したものであり,FEP層の下にあるPTFE層のPTFEが混入する危険は 高く,このサンプルからPTFEが検出されたとしても,被告製品の最外層にPTFEが含まれていることの立証にはならない。 被告も,前記(ア)aの膜材AないしCと被告製品について,WAXD(WAXS)測定を行った。測定用のサンプルは,FEPの融点(275℃)とPTFEの融点(327℃)の間である300℃に設定したホットプレートで膜材を熱し,ステンレス製の丸さじで最表層と第2層のFEP層を擦り取るという方法で採取した。乙62はその報告書であるが,DSC測定の結果と同様,最外層にフッ素樹脂として3%のPTFEを含む膜材BにおいてもPTFEのピークが検出されたところ,膜材Aや被告製品についてはPTFEのピークが検出されなかった。 (ウ) 硝酸銀試験原告は,硝酸銀試験により,被告製品は光触媒反応が生じるが,FEPに酸化チタンを分散させた 検出されたところ,膜材Aや被告製品についてはPTFEのピークが検出されなかった。 (ウ) 硝酸銀試験原告は,硝酸銀試験により,被告製品は光触媒反応が生じるが,FEPに酸化チタンを分散させたものを塗布・焼成しても光触媒反応が生じない旨主張する。しかし,塗布・焼成後の形状は界面活性剤等の有無や塗布・焼成の条件によって変化し,それにより最外層におけるTiO2粒子の状態(分布や保持状態)も異なり,照射する紫外線の量,FEPとTiO2の分散液の固形分濃度,TiO2の種類(粒径・光触媒反応の活性の違い)によっても,光触媒反応の強さが異なる。 FEPとTiO2を配合した試料について,約1000μW/cm2(約1mW/cm2)の強度の紫外線を照射したところ,色相変化が見られた。したがって,FEPに酸化チタンを配合した場合でも光触媒反応は生じている。 (2) 争点(3)(均等侵害)についてア原告が控訴審の第2回口頭弁論期日に至って均等侵害の主張を行うのは,時機に後れた攻撃防御方法であり,却下されるべきである。 イ被告製品の最外層にはPTFEは含まれておらず,被告製品の最外層のフッ素樹脂を,PTFEからPTFE及びFEPからなるフッ素樹脂に置き換えたものでも均等侵害が成立するという原告の均等論の主張は,その前提が認められない。 また,被告製品の最外層が多孔質状となっていることの立証もない。 ウ仮に,被告製品の最外層にPTFEが存在するとしても,以下の理由により原告の均等の主張は認められない。 本件発明においてフッ素樹脂はPTFEに限定されており,この点は,多孔質状の形状を得るという本件発明の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であり,本件発明の本質的部分である。 本件発明における「多孔質状」になるか否かの 限定されており,この点は,多孔質状の形状を得るという本件発明の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であり,本件発明の本質的部分である。 本件発明における「多孔質状」になるか否かの点で重要なのは溶融粘度であり,FEPとPTFEとでは溶融粘度が大きく異なるというのは,当業者の認識としては常識である。したがって,多孔質状とするために用いる「PTFE」を「PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂」に置き換えることは,当業者の常識に反するものであって,置換可能ないし容易ではない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,本件控訴は理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」(原判決40頁6行目ないし63頁8行目)記載のとおりであるから,これを引用する。 1 争点(1)(構成要件Cの充足性)について(1) 「前記ポリテトラフルオロエチレン微粒子の隙間間に光触媒粒子が保持されている」(構成要件C)の意義について本件明細書の「発明の詳細な説明」欄には,以下のような記載がある。 「この発明は,光の存在下で空気中の不純物や細菌などを分解あるいは殺菌することのできる空気浄化用シートであって,特にガラス繊維織物のガラス繊維の周囲にポリテトラフルオロエチレン微粒子が連通した隙間のある多孔質状に付着されているとともに,前記ポリテトラフルオロエチレン微粒子の隙間間に光触媒粒子が保持されていることを特徴とする(【0001】)」「この発明で使用される水性分散液中のポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと記す。)微粒子の粒度は,特に限定されるものではないが,前記水性分散液中での分散が良好になされ,しかも塗布 後の焼成により,前記光触媒微粒子をPTFE微粒子 ラフルオロエチレン(以下PTFEと記す。)微粒子の粒度は,特に限定されるものではないが,前記水性分散液中での分散が良好になされ,しかも塗布 後の焼成により,前記光触媒微粒子をPTFE微粒子間に保持できるよう,通常0. 3ミクロン以下のもの,特には0.2ミクロン程度が好適である。(【0008】)」「その後の焼成は,前記PTFE微粒子を結合させてガラス繊維周囲に多孔質状に付着させるとともに,そのPTFE微粒子間に前記光触媒微粒子を保持するためになされる。この焼成温度は,ガラス繊維が溶融する温度以下で,かつPTFE微粒子どうしが結合する温度とされ,通常350~450℃程度でなされる。この焼成工程の終了により,所望の空気浄化用シートが得られる。(【0013】)」「この発明の空気浄化用シートにあっては,ガラス繊維に多孔質状に付着したPTFE微粒子が,その粒子間に微細な連通孔を形成し,その粒子間に光触媒微粒子が保持される。 そのため,前記空気浄化用シートに当たる光はPTFE微粒子間を通って光触媒微粒子に至り,その光触媒微粒子の光分解反応を活性化させる。また前記空気浄化用シート付近の空気も自然対流などにより前記PTFE微粒子間を通って光触媒微粒子に至り,その光分解反応により悪臭などが分解される。(【0015】)」「この図に示すように,この発明の・・・空気浄化用シートは,ガラス繊維織物11を構成するガラス繊維12の周囲にPTFE微粒子13が付着している。そのPTFE微粒子13は互いに結合して,PTFE微粒子13間に連通した隙間のある多孔質状となっており,前記隙間に酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子からなる光触媒微粒子14が保持されている。」(段落【0019】)また,PTFEは融点が327℃と高く,溶融粘度が1011~1013(340℃~3 前記隙間に酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子からなる光触媒微粒子14が保持されている。」(段落【0019】)また,PTFEは融点が327℃と高く,溶融粘度が1011~1013(340℃~380℃)ポアズであり,融点以上でも極めて高い溶融粘度を示し,流動せず,普通は成形品中に微細な空孔(ボイド)を残しやすいという性質を有する。 本件発明は,周辺の空気の浄化を目的とした空気浄化用シートに係る発明であり,PTFEは融点以上でも極めて高い溶融粘度を示し,細微な空孔を残しやすいという特質を利用して,PTFE微粒子同士を,光や周辺の空気がPTFE微粒子間の隙間を通って光触媒粒子に至るような連通した隙間を形成するように多孔質状に付着させ,この連通した隙間間に光触媒粒子を保持させることにより,光や周辺の空 気がこの隙間間を通って光触媒に至り,効率的に周辺の空気の浄化が行われるという構成を採用したことに特徴を有する発明であると解することができる。 以上によれば,「前記ポリテトラフルオロエチレン微粒子の隙間間に光触媒粒子が保持されている」(構成要件C)は,PTFE微粒子同士が多孔質状に付着することによって形成され,光や空気を通すよう連通する隙間の間に,光触媒粒子が保持されていることを意味すると解すべきである。 (2) 被告製品の構造について本件全証拠によっても,被告製品が構成要件Cを充足していることを示すものはない。 ア被告製品の構造に係る原告の主張について(その1)原告は,①SEMを用いて撮影した被告製品の写真(甲20の1の写真6(原判決別添8,9))の4がPTFE微粒子,5が隙間,9がTiO2粒子である,②高倍率SEM写真(甲82の図1(別紙3))における○AがTiO2粒子,○BがPTFE微粒子,○CがFEPである, 判決別添8,9))の4がPTFE微粒子,5が隙間,9がTiO2粒子である,②高倍率SEM写真(甲82の図1(別紙3))における○AがTiO2粒子,○BがPTFE微粒子,○CがFEPである,③SEM-EDX分析の結果を示す写真(甲81の図2(別紙2))の赤いドットはTiO2粒子に由来する酸素原子(O)であり,黒く見える部分(孔)の周囲から内部にかけて赤いドットが存在することを前提に,被告製品の最外層におけるPTFE微粒子が形成する隙間にTiO2粒子が保持されていることが確認できると主張する。また,原告は,SEM写真(甲20の1の写真6,8及び9)から,被告製品の最外層は連通した隙間のある多孔質状の層であると主張する。 しかし,原告の上記主張は,以下のとおり失当である。 すなわち,SEM写真(甲20の1の写真6(原判決別添8,9))において,4がPTFE微粒子であり,9がTiO2粒子であることを確認することはできず,また,高倍率SEM写真(甲82の図1(別紙3))において,○AがTiO2粒子,○BがPTFE微粒子であることを確認することはできない。したがって,これらの写真から,PTFE微粒子同士が連通した隙間を形成していることを確認すること はできない。 また,SEM-EDX分析の結果を示す写真(甲81の図2(別紙2))からも,PTFE微粒子同士が連通した隙間を形成していることを確認することはできず,仮に,同写真の赤いドットが全てTiO2粒子に由来するものであるとしても,これが上記の隙間間に保持されていることを確認することはできない。 以上のとおり,上記各写真から,仮に被告製品には隙間が存在するとしても,PTFE微粒子同士が多孔質状に付着することによって形成された隙間であること,それが周辺の空気を通すような連通した できない。 以上のとおり,上記各写真から,仮に被告製品には隙間が存在するとしても,PTFE微粒子同士が多孔質状に付着することによって形成された隙間であること,それが周辺の空気を通すような連通した隙間であること,PTFE微粒子が形成している連通した隙間に光触媒粒子が保持されていることを確認することはできない。 したがって,被告製品は,構成要件Cを充足しない。 イ被告製品の構造に係る原告の主張について(その2)(ア) 原告は,構成要件Cにおける「PTFE微粒子の隙間」は「PTFE微粒子とFEP等の混合物が形成する隙間」を含み,その場合,PTFE微粒子の量は問題とならないという前提で,被告製品の最外層は,PTFEとFEP等との混合物ではあるが,PTFEの本来の特徴である成形品中の微細な空孔(ボイド)が確認できると主張する。 しかし,以下のとおり,PTFEとFEPの溶融粘度の相違等に照らすならば,原告の主張を前提として,被告製品が構成要件Cを充足すると判断することはできない。 本件発明が構成要件Cを採用したのは,光触媒粒子を保持する連通した隙間を形成するために,PTFEには,素材として,融点以上でも極めて高い溶融粘度を示し,成形品中に微細な空孔(ボイド)を残しやすいという特質がある点に着目したからに他ならないと解される。 すなわち,PTFEと異なり,FEPは融点が270℃と低く,また溶融粘度が(4×104~105)(380℃)ポアズと低く,融点を超えると芯を残さずに溶解する。前記「発明の詳細な説明」中に記載されているように,本件発明に係る空 気浄化用シートの形成過程において,PTFE微粒子同士を結合させて付着させるために,PTFEの融点より高い350~450℃程度に焼成した際,FEPが混在している場合には,FEPが融解 る空 気浄化用シートの形成過程において,PTFE微粒子同士を結合させて付着させるために,PTFEの融点より高い350~450℃程度に焼成した際,FEPが混在している場合には,FEPが融解し,PTFE微粒子間の隙間に流入すると考えられる。そうすると,仮に,構成要件Cにおける「PTFE微粒子」が「PTFE微粒子とFEP等の混合物」である場合を排除しないと解釈したとしても,FEPが融解した後に,光や空気が通るように,PTFE微粒子同士の結合による連通した隙間が一定程度は残存することを要するのであって,そのためには,相当量のPTFEが存在することは必須であると解すべきである。 原告は,TiO2の固形分質量比を30とし,PTFEとFEPの含有比を変えた混合液(PTFEとFEPの固形分質量比は合計70とする)にアルミニウム板を浸漬し,これを引き上げて乾燥させ,350℃で5分間加熱した後冷却して得たサンプルについてSEM観察を行っている。その結果によると,PTFE:FEP:TiO2=21:49:30の場合には,TiO2粒子及びPTFE微粒子を水飴状のFEPが被覆し,いくつかのPTFE微粒子が露出していることが確認できる。 PTFE:FEP:TiO2=28:42:30の場合には,TiO2粒子及びPTFE微粒子を水飴状のFEPが被覆し,PTFE微粒子が露出している部分も多いという状態を確認できるが,SEM写真からは,PTFE微粒子が連通した隙間を形成していることは認められない。PTFE:FEP:TiO2=35:35:30の場合には,TiO2粒子及びPTFE微粒子は多くが露出しているが,一部水飴状のFEPが被覆しており,SEM写真からは,一応連通した隙間が形成されているのではないかとうかがわれる。PTFE:FEP:TiO2=56:14:30の場 FE微粒子は多くが露出しているが,一部水飴状のFEPが被覆しており,SEM写真からは,一応連通した隙間が形成されているのではないかとうかがわれる。PTFE:FEP:TiO2=56:14:30の場合には,一部水飴状のFEPが付着しているが,PTFE微粒子同士が連通した隙間を形成して,多孔質状に結合していると認められる。(甲83)このSEM観察の結果を斟酌すると,TiO2の含有割合や焼成の方法等によって,粒子の結合状態等は変わりうるとは考えられるものの,相当量のPTFEが存在するといえるためには,少なくともFEPと同量かそれ以上のPTFEが存在す ることを要すると解するのが合理的である。 (イ) 各種化学分析等の結果について上記の点を前提にすると,次のとおり,化学分析等によって,被告製品の最外層に相当量のPTFEが存在すると認めることはできない。 aDSC測定原告は,当審において,サンプルの採取方法を,設定温度を303℃に設定したホットプレートに被告製品を載せ,被告製品の表面温度を非接触赤外線表面温度計で測定しながら302℃になるように加熱して,表面をへらで剥がすという方法に変えた上で,DSC測定を行ったとして,その結果を記載した陳述書(甲85)を提出する。 被告製品のサンプルに対するDSC測定の結果を示すDSCチャートによると,326℃付近に熱吸収のピークが認められる(甲85)。この温度は,PTFEの融点に近く,被告製品に,他に326℃付近に融点あるいは移転点などを持つ物質が含まれていると認めるに足る証拠もないことから,PTFEの結晶の融解による熱吸収のピークであると認められる。 しかし,326℃付近のピークは,約250℃付近に認められるFEPの結晶の融解による熱吸収のピークの大きさと比較すると,極めて小さい(甲 TFEの結晶の融解による熱吸収のピークであると認められる。 しかし,326℃付近のピークは,約250℃付近に認められるFEPの結晶の融解による熱吸収のピークの大きさと比較すると,極めて小さい(甲85)。原告が原審で行ったDSC分析において,PTFE:FEP:TiO2=20:80:15からなる試料の場合,FEPに由来する融解熱量の測定値が「6.36mJ/mg」(吸熱ピーク249.7℃)であるのに対し,PTFEに由来する融解熱量の測定値が「9.57mJ/mg」(吸熱ピーク326.8℃)であったのと対比しても(甲29),PTFE由来の融解熱量とFEP由来の融解熱量との差は,極めて大きいといえる。 これらの測定結果に照らすと,サンプル中にPFTEは極少量しか存在しないと解される。上記の方法で採取したサンプルが,被告製品の最外層とその下のFEP層しか含んでおらず,PTFEは被告製品の最外層に含まれていると仮定し,さら に,FEP層のFEPによりPTFEの存在分率が希釈されるという点を考慮したとしても,上記陳述書(甲85)記載のDSC測定の結果から,被告製品の最外層に相当量のPTFEが含まれていると認めることはできない。 bTMDSC測定(a) 原告は,当審において,以下のサンプルにつき,TMDSC測定を行った(甲65)。 サンプル① PTFEサンプル② FEPサンプル③ PTFE/FEP混合物(固形分濃度が質量比でPTFE:FEP=2:8)サンプル④ 被告製品被告製品(0.8mm厚)をホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら300℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で採取されたサンプル 触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら300℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で採取されたサンプルサンプル⑤ チューコーフロースカイトップチューコーフロースカイトップをホットプレートに載せて,非接触赤外線表面温度計で表面温度を測定しながら306℃(PTFEの融点(327℃)とFEPの融点(270℃)の中間温度)になるように加熱し,その状態で表面をヘラで剥がすという方法で採取したサンプル(b) 測定結果測定の結果得られたTMDSCチャートは,以下のとおりであり,このうちサンプル③及び④のTMDSCチャートは別紙1のとおりである(甲65)。 サンプル① 可逆熱流の曲線において,327℃付近にPTFEの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 サンプル② 可逆熱流の曲線において,327℃付近のPTFE由来のピークが 見られず,257℃付近にFEPの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 サンプル③ 可逆熱流の曲線において,328℃付近と249℃付近に熱吸収のピークが見られる。 サンプル④ 可逆熱流の曲線において,323℃付近及び254℃付近に熱吸収のピークが見られる。 なお,非可逆熱流(Non-ReversingHeatFlow)の曲線においては,シリコーン系材料に由来すると考えられる315℃付近を中心とする大きなピークが見られる。 サンプル⑤ 可逆熱流の曲線において,327℃付近のPTFE由来のピークが見られず,255℃付近にFEPの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 (c) サンプル①及び②の測定結果からすると,サンプル③の249℃付近のピーク及びサンプル④の254℃付近のピークはFE られず,255℃付近にFEPの結晶の融解による熱吸収のピークが見られる。 (c) サンプル①及び②の測定結果からすると,サンプル③の249℃付近のピーク及びサンプル④の254℃付近のピークはFEPの結晶の融解による熱吸収のピークであり,サンプル③の328℃付近のピーク及びサンプル④の323℃付近のピークは,PTFEの結晶の融解による熱吸収のピークであると認められる。 しかし,サンプル④を採取するに当たり,ホットプレートをPTFEの融点(327℃)よりも高温である400℃に設定しており(甲73),FEP層の下のPTFE層が融解され,サンプル採取の際,このPTFE層のPTFEが含まれている可能性も否定できない。 仮に,サンプル④には被告製品の最外層及びその下のFEP層しか含まれていないとしても,PTFEの融解熱量の測定値が,サンプル③では「0.8J/g」であるのに対し,サンプル④では「0.2032J/g」と非常に小さい。 上記測定結果からすると,被告製品の最外層にPTFEが含まれており,さらに,FEP層のFEPによりPTFEの存在分率が希釈されるという点を考慮しても,PTFEの含有量は,極めて少ないというべきである。 したがって,上記の測定結果から,被告製品の最外層に相当量のPTFEが存在 すると認めることはできない。 cWAXS分析(a) 原告は,当審において,以下の各サンプルに対しWAXS分析を行った(甲72)。 サンプル① PTFE/TiO2混合物サンプル② FEP/TiO2混合物サンプル③ 被告製品サンプルの採取方法は前記b(a)サンプル④(被告製品)の採取方法と同じサンプル④ チューコーフロースカイトップサンプルの採取方法は前記b(a)サンプル⑤(チューコーフロースカイトップ)の採取方法と同じ 採取方法は前記b(a)サンプル④(被告製品)の採取方法と同じサンプル④ チューコーフロースカイトップサンプルの採取方法は前記b(a)サンプル⑤(チューコーフロースカイトップ)の採取方法と同じ(b) 測定結果サンプル①と②に対し室温測定を行ったところ,回折ピークはサンプル①が12. 77nm-1,サンプル②が12.48nm-1であった。また,サンプル③と④に対し290℃で測定したところ,サンプル③は12.2nm-1付近に回折ピークが認められたが,サンプル④については結晶の存在を示すような回折ピークは認められなかった。(甲72)(c) サンプル①については290℃での測定結果はないが,290℃という高温の状態では,PTFE結晶格子の熱膨張により回折ピークが低い方にシフトすると考えられること,FEPの融点は270℃であることから,290℃ではFEPは溶解していると考えられ,290℃においてサンプル③にPTFE以外の結晶が存在するとも認められないことからすると(甲72),サンプル③における回折ピークはPTFEに由来するものであるといえる。 しかし,サンプル③を採取するに当たり,ホットプレートをPTFEの融点(327℃)よりも高温である400℃に設定しているため(甲73),FEP層の下のPTFE層が融解され,サンプル採取の際,PTFE層のPTFEが含まれている 可能性も否定できない。 また,被告が,膜材B(最表層の組成がFEP:PTFE:TiO2=77:3:20のもの),膜材C(最表層の組成がPTFE:TiO2=80:20のもの)と共に,設定温度を300℃としたホットプレートに被告製品を載せ,非接触温度計を用いて表面温度が300℃になっていることを確認して,ステンレス製のスプーンで被告製品の表層を擦って採取した試料につい と共に,設定温度を300℃としたホットプレートに被告製品を載せ,非接触温度計を用いて表面温度が300℃になっていることを確認して,ステンレス製のスプーンで被告製品の表層を擦って採取した試料について,290℃でWAXD測定を行ったところ,膜材B及びCについては,それぞれ,12.59nm-1,12.66nm-1付近に,PTFEに由来するピークが認められたのに対し,被告製品からはPTFEに由来するピークが認められない。 以上によると,原告が行ったWAXS分析結果から,被告製品の最外層にPTFEが存在するとは認め難い。 さらに,仮に,原告が行ったWAXS分析結果の方が正確であり,被告製品の最外層にPTFEが存在するとしても,実験報告書(甲72)によれば,回折ピーク面積のスペクトル全面積に対する比率から,サンプル③中のPTFE結晶部分の存在量は5.1%であるという算出結果が示されている。この算出結果からすると,サンプル③には,最外層とその下のFEP層が含まれており,これによりPTFEの存在分率が希釈されること,PTFE微粒子には非結晶のものが存在する可能性があることを斟酌しても,被告製品の最外層に相当量のPTFEが存在するとまでは認められない。 d 硝酸銀試験原告は,当審において,以下の試験体について,約30cmの距離で3分間紫外線ランプを照射する方法で,硝酸銀試験を行った(甲75)。 試験体① 被告製品試験体② PTFE:TiO2=70:30試験体③ FEP:TiO2=70:30試験体④ PTFE:FEP:TiO2=35:35:30 試験体②ないし④は,PTFE,FEP,TiO2の各分散液をそれぞれの固形分重量比で調合し,これにアルミニウム板を浸漬し,引き上げたアルミニウム板を乾燥させてから,350℃で5分間加熱 試験体②ないし④は,PTFE,FEP,TiO2の各分散液をそれぞれの固形分重量比で調合し,これにアルミニウム板を浸漬し,引き上げたアルミニウム板を乾燥させてから,350℃で5分間加熱し,冷却したものである(甲75)。 陳述書(甲75)には,上記試験の結果,試験体①,②及び④からは光触媒反応が認められたが,試験体③からは光触媒反応が認められなかったと記載されている。 一方,被告も,FEPとTiO2を混合した試験液に浸漬したアルミニウム板を乾燥,焼成して作製した試料に対し硝酸銀試験を行ったが,実験報告書(乙63)には,試料に光触媒反応が生じたことが確認できたこと,紫外線の照射時間,試験液中の固形分割合,TiO2の種類によって,光触媒反応の程度は相違する旨が記載されている。 以上によると,PTFEが存在しない限り光触媒反応は生じないものではないから,被告製品に光触媒反応が認められたことをもって,被告製品の最外層にPTFEが存在すると認めることはできない。 e ラマン分光分析原告は,二つの物質のラマンスペクトルが重複している場合に,微分することにより明確に分離することができることは周知であり,ラマンスペクトルの「肩」が小さいものであっても,微分することにより,二つの物質のスペクトルが合成されていることが明確になるとして,A博士作成の見解書(甲41)には,被告製品のラマンスペクトルを微分すると,FEPのスペクトルのピークの他に,PTFEのスペクトルのピークが存在することが示されていると主張する。 上記見解書には,株式会社東レリサーチセンターのラマン分光分析の結果報告書(甲46)記載のラマンスペクトルを微分すると,被告製品の最外層にはPTFEが少なくとも30%以上存在すると推定されると記載されている。この見解は,上記 リサーチセンターのラマン分光分析の結果報告書(甲46)記載のラマンスペクトルを微分すると,被告製品の最外層にはPTFEが少なくとも30%以上存在すると推定されると記載されている。この見解は,上記結果報告書(甲46)や株式会社東レリサーチセンターのラマン分光分析の結果報告書(甲26)の記載とも相反すること等に照らすならば,上記見解書の記載に信を措くことはできない。また,上記見解書によってもなお,被告製品の最外層に 「相当量のPTFEが存在すること」を認定できるものともいえない。 f 熱処理品のSEM観察原告は,当審において,被告製品及びチューコーフロースカイトップに熱処理を行った後,SEM観察を行った。熱処理の方法は,室温から370℃に約10分間で上昇させ,ついで,335℃まで約10分間で降下させ,さらに,326℃まで約10分間で降下させ,326℃で約60分間保持し,ついで,309℃まで約20分間で降下させ,309℃で約30分間保持し,その後,約40分間で室温まで温度を降下させるというものである。(甲60)被告製品のSEM写真によれば,表面に縦縞の入った紡錘形粒子が観察され,PTFEフィルムを同様に熱処理した後のSEM写真においても,同様の縦縞の入った紡錘形粒子が観察されることや,文献などから,被告製品に認められる紡錘形粒子はPTFEであると認められる(甲60,61)。また,原告は,上記熱処理を行った被告製品の最表面にイオンエッチング処理を行った上で,DR法により試料を採取し,この試料に対しTEM-ED分析を行っており,この分析結果から得られた電子線回析パターンから,試料に見られる紡錘形や円板状の結晶は,PTFEであるということができる(甲70)。 しかし,上記の熱処理においては,FEPの融点である270℃を超える370 果から得られた電子線回析パターンから,試料に見られる紡錘形や円板状の結晶は,PTFEであるということができる(甲70)。 しかし,上記の熱処理においては,FEPの融点である270℃を超える370℃まで加熱していることから,最外層やFEP層が溶融して,その下にあるPTFE層に存在するPTFEの隙間に流入するなどして,PTFEが最外層の表面に露出している可能性もある。チューコーフロースカイトップのSEM写真でも,PTFE層のPTFEがかなり表面近くに観察される部分がある(甲60)。また,被告が,被告製品やチューコーフロースカイトップに原告と同様の熱処理を行った後のSEM写真では,部位によって紡錘形粒子の現れ方が様々であることが認められる(乙60)。 以上によると,被告製品の表面に紡錘形粒子や円板状の結晶が観察されることから,直ちに,被告製品の最外層にPTFEが存在するという結論を導くことはでき ない。 さらに,被告製品の表面に観察される紡錘形粒子や円板状の結晶が最外層に存在するPTFEであるとしても,SEM写真(甲60の図2及び3)からは,PTFE微粒子同士が結合して連通した隙間のある多孔質の構造を形成できるほどにPTFE微粒子が存在するとは認められない。 gSEM観察原告は,SEM写真(甲20の1の写真6(原判決別添8,9))や高倍率SEM写真(甲82の図1(別紙3))などから,被告製品の最外層は多孔質状であることが確認でき,したがって,被告製品の最外層にはPTFEが含まれており,多孔質状に付着しているといえる旨主張する。 しかし,前記のとおり,上記各写真からは,PTFEを特定することは困難である上,上記の各分析結果などから被告製品の最外層に相当量のPTFEが存在と認められない以上,上記各写真から,被告製品の最外層 しかし,前記のとおり,上記各写真からは,PTFEを特定することは困難である上,上記の各分析結果などから被告製品の最外層に相当量のPTFEが存在と認められない以上,上記各写真から,被告製品の最外層に相当量のPTFEが存在し,これらが結合して連通した隙間を形成していると認めることもできない。 (ウ) 被告作成の文書等の記載原告は,当審において新たに,情報公開請求により公開された被告作成の「守山駅西口広場再整備確認及び質問事項解答書」(甲76)及び守山市作成の「守山駅西口広場シェルターデザインに関する選考審査の資料・質問事項集計表」(甲78),被告の「酸化チタン光触媒×膜構造」と題するリーフレット(甲79),経済産業省産業技術環境局技術調査室発行の「技術調査レポート(技術動向編)第2号酸化チタン光触媒に関する産業の現状と課題」(甲80)などを証拠として提出し,被告製品の最外層にはPTFEが存在すると主張する。しかし,仮に,被告製品の最外層にPTFEが存在するとしても,上記各証拠から,相当量のPTFEが存在すると認めることはできない。 (3) 小括以上のとおり,被告製品は構成要件Cを充足しない。 2 争点(3)(均等論)について原告は,被告製品が,「PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)が連通した隙間のある多孔質状に付着されているとともに」,「前記PTFE及びFEPからなるフッ素樹脂(一部が微粒子状となっているもの)の隙間間にTiO2粒子が保持されている」という構成を有する場合,被告製品は本件発明と均等である旨主張する。 しかし,原告の主張は,採用の限りでない。すなわち,当裁判所は,構成要件Cを,被告製品における構成要件Cと異なる部分に置換することが可能であったこと(均等侵害が成立 件発明と均等である旨主張する。 しかし,原告の主張は,採用の限りでない。すなわち,当裁判所は,構成要件Cを,被告製品における構成要件Cと異なる部分に置換することが可能であったこと(均等侵害が成立するための第2要件),被告製品における構成要件Cと異なる部分に置換することが容易であったこと(均等侵害が成立するための第3要件)をいずれも,充足しないものと判断する。 本件発明は,PTFEは融点以上でも極めて高い溶融粘度を示し,細微な空孔を残しやすいという特質を利用して,PTFE微粒子同士を,光や周辺の空気がPTFE微粒子間の隙間を通って光触媒粒子に至るような連通した隙間を形成するように多孔質状に付着させ,この連通した隙間間に光触媒粒子を保持させることによって,光や周辺の空気がこの隙間間を通って光触媒に至り,効率的に周辺の空気の浄化が行われることを目的として,構成要件Cの「PTFE微粒子の隙間間に光触媒粒子が保持されている」ことを要件とした発明である。 他方,被告製品はその構造が必ずしも明らかでないので,原告の均等の主張は,その主張自体採用できないが,その点はさておき,仮に,被告製品が,「『FEP』と,『PTFEが含まれているが,相当量には至らない程度のPTFE』を含むフッ素樹脂」からなるとした場合に,構成要件Cを,そのような構造に置き換えても,本件発明の課題解決を実現し得ること,あるいは,本件発明の作用効果を発揮し得ることを,立証できていない。 以上のとおりであって,本件発明の構成要件Cを被告製品の構造に置き換えることによって,前記の本件発明の課題解決と同様の課題解決を実現できたことを認定 することはできない(すなわち,置換可能性を認めることはできない)。また,本件全証拠によっても,本件発明の構成要件Cを被告製品の構造に置き換える 題解決と同様の課題解決を実現できたことを認定 することはできない(すなわち,置換可能性を認めることはできない)。また,本件全証拠によっても,本件発明の構成要件Cを被告製品の構造に置き換えることが容易であったことを認定することはできない(すなわち,置換容易性を認めることもできない。)。 したがって,被告製品は本件発明と均等であるということはできない。 3 結論以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件各請求はいずれも理由がない。よって,原告の差止請求を棄却した原判決は正当であって,本件控訴は理由がないから棄却し,当審において追加した損害賠償請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官知野明は差し支えのため署名押印できない。 裁判長裁判官飯村敏明 別紙物件目録 「エバーファインコート」,「酸化チタン光触媒A種膜材」,「A種膜(片側酸化チタン)」,「PTFE酸化チタン光触媒」の商品名の製品 別紙1 サンプル③(PTFE/FEP混合物)のTMDSCチャート(甲65の図3) サンプル④(被告製品)のTMDSCチャート(甲65の図4) 別紙 ンプル③(PTFE/FEP混合物)のTMDSCチャート(甲65の図3) サンプル④(被告製品)のTMDSCチャート(甲65の図4) 別紙2 甲81の図2(一部抜粋) 別紙3 サンプル①の高倍率SEM写真(甲82の図1) 甲82図1(図中赤い線分の長さは1μm=1000nm) ○ATiO2 ○CFEP ○BPTFE

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る