主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が控訴人に対し平成19年2月14日付けでした換地処分を取り消す。 第2事案の概要 本件は,土地区画整理法に基づく仮換地の指定後に定期借地権ないし事業用借地権の設定を受け仮換地においてテーマパーク事業等を営んでいた控訴人に対し,当該土地区画整理事業の施行者である被控訴人が,当該仮換地を借地権の目的となるべき宅地とした上,7188万4924円の清算金を交付し,合計6億9457万9419円の清算金を徴収する旨の換地処分(以下「本件換地処分」という。)をしたため,控訴人が本件換地処分の取消しを求めた事案である。 原審は,換地処分を控訴人に対してすることは違法ではなく,本件換地処分における清算金の金額も土地区画整理法94条に反しないとして,請求を棄却したところ,控訴人は,これを不服として控訴した。 法令の定め及び前提事実は,原判決「第2事案の概要」の2,3に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点及び争点に関する当事者の主張は,下記(1)ないし(8)のとおり,当審における当事者の主張を付加・補充するほか,原判決「第2事案の概要」の4に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)7頁13行目「いうべきである。」の次に,以下のとおり加える。 「しかも,当該賃貸借契約は債権契約であり,その契約の解釈においては 当事者の意思が尊重されるべきであるから,仮換地を対象とする旨の当事者の明示の意思表示に反してこれを従前の土地の賃貸借契約と解することはできない。そうでないと,賃借人にとって使用収益する目的物が重要であるにもかかわらず,仮換地と異なる土地に換地された場合にも,賃借人は賃貸 意思表示に反してこれを従前の土地の賃貸借契約と解することはできない。そうでないと,賃借人にとって使用収益する目的物が重要であるにもかかわらず,仮換地と異なる土地に換地された場合にも,賃借人は賃貸借契約を解除することができず,また,仮換地の一部について賃貸借契約が締結された場合に従前の土地のどの部分か特定できず無効となるなど,著しく不当な結論となる。」(2)8頁14行目「できないから,」の次に「従前の宅地についての借地権割合を観念することはできず,」を加える。 (3)9頁7行目末尾に続き,次のとおり加える。 「そうでないと,仮換地の位置,面積等に着目して締結された賃貸借契約であるにもかかわらず,施行者においてこれと異なる土地につき仮権利指定ができることになり,賃借人にとって著しく不当な結論となる。 エ仮に,原判決のとおり,仮換地指定後に仮換地自体に着目して建物の所有を目的とする賃借権を設定する旨の契約を締結した場合,特段の事情がない限り,従前の宅地について賃借権を設定する旨の契約であると解したとしても,本件では,①半永久的な存続を予定していない定期借地権ないし事業用借地権であり,②テーマパークの敷地を確保するためにその敷地となることが予定されていた土地を賃借したのであって,従前の土地と無関係であり,③通常なされない賃借権設定登記がなされており,上記特段の事情がある。」(4)9頁21行目「他方で,」の次に,以下のとおり加える。 「土地区画整理法は,事業の円滑な施行に必要な範囲で,一時的に従前の宅地について私権の行使,具体的には,その使用収益権限を制約するものであって,従前の土地所有権者の地上権・賃借権の設定権限を奪うものではないから,」 (5)9頁25行目末尾に続き改行して,次のとおり加える。 「また,控訴人は,仮換地に賃借 益権限を制約するものであって,従前の土地所有権者の地上権・賃借権の設定権限を奪うものではないから,」 (5)9頁25行目末尾に続き改行して,次のとおり加える。 「また,控訴人は,仮換地に賃借権を設定したと解すべき特段の事情があると主張するが,土地区画整理法は,建物所有を目的とする賃借権と地上権を絶えず並列的に規定し同様に扱っていることから,原則として両者を同様に取扱うべきであり,仮換地に地上権を設定できないのと同様に,建物所有目的の賃借権も仮換地に設定できないと解すべきであること,仮換地の賃借権と解釈すれば,従前の土地についての賃借権設定登記が対抗要件として効力を生じないこと,仮換地とは異なる換地処分がなされた場合であっても,売主の担保責任に関する民法の規定を類推適用することによって合理的解決を図ることは可能であること,これらによれば,本件賃貸借契約も従前の土地についての賃貸借契約であると解するのが合理的である。」(6)10頁21行目「原告」の前に,次のとおり加える。 「定期借地権等付き建物は,権利金ないし保証金の額に建物の現在価格を加えた価格で取引されているところ,」(7)12頁11行目末尾に続き改行して,次のとおり加える。 「エ仮に,定期借地権者等も清算金の徴収対象となるとしても,普通借地権と異なり,残存期間を考慮した評価をすべきであり,事業用借地権も定期借地権と異なる評価がなされるべきである。この点,平成10年8月25日付国税庁長官通達が定める定期借地権の底地の評価手法が,参考となり得る。これによれば,定期借地権の価額は,[課税時期における自用地としての価額×(1-底地割合)×逓減率]によって求めるとされており,それによって算定すれば,本件一般定期借地権設定対価の更地価格に対する割合は30.5パーセントであり, [課税時期における自用地としての価額×(1-底地割合)×逓減率]によって求めるとされており,それによって算定すれば,本件一般定期借地権設定対価の更地価格に対する割合は30.5パーセントであり,本件事業用借地権設定対価の更地価格に対する割合は14.6パーセントとなる(甲22の1・2。以下「A意見書」という。)。 また,仮換地であることを捨象して,定期借地権等の底地に対する割合を求めると,定期借地権は25パーセント,事業用借地権は10パーセントとなる(甲21。以下「B意見書」という。)。 これらによれば,本件定期借地権等の割合を50パーセントとして清算金の金額を算出した本件換地処分は明らかに不合理であり違法である。」(8)13頁22行目「見込まれている。」の次に,以下のとおり加える。 「また,定期借地権の評価方法,とりわけ,土地区画整理事業における定期借地権については,それに依拠しなければ明らかに不合理で違法となるような確たる評価方法は存在していない。しかも,A意見書が引用する様々な評価方法によって定期借地権を評価するには,施行地区内の定期借地権について,契約内容等に係る詳細な各種の情報(権利金や保証金の額,地代の額,土地価格,借地権者の財務諸表等)を得る必要があるが,施行者には,法及び法令上,土地所有者及び借地権者に対し,これらの情報を提出させる権限はなく,任意の提供を求め,これに応じる者がいたとしても,応じない者と異なる評価を行うことも認められず,また,多大な鑑定費用と時間を要することになる。」第3当裁判所の判断 当裁判所も,仮換地の指定後に当該仮換地に着目して賃借権の設定を受け,その登記を経由した控訴人に対し,換地を定めた上で徴収及び交付すべき清算金の金額を定めて換地処分をしたことが土地区画整理法に違反し違法とはいえ 仮換地の指定後に当該仮換地に着目して賃借権の設定を受け,その登記を経由した控訴人に対し,換地を定めた上で徴収及び交付すべき清算金の金額を定めて換地処分をしたことが土地区画整理法に違反し違法とはいえず,定めた清算金の金額も同法94条に違反するとはいえないと判断する。 その理由は,次のとおり補足するほか,原判決「第3当裁判所の判断」の1,2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)15頁8行目末尾に続き改行して,次のとおり加える。 「この点について,控訴人は,売買契約の場合は,仮換地に着目したもの であっても,売買契約が交換価値の移転を主な目的としているから,従前の宅地の売買契約であると構成できるが,賃貸借契約の場合は,土地を使用させることを目的とするから,従前の宅地につき賃借権を設定できず,これを従前の宅地の賃貸借契約と解することは当事者の合理的意思に反すると主張する。確かに,賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを内容としており,目的物の引き渡しがその前提となっているため,仮換地の使用収益(ひいては仮換地の賃貸借契約)が当然に従前の宅地の使用収益(ひいては従前の宅地の賃貸借契約)とみなされるわけではない。しかしながら,仮換地に着目してなされた売買契約も従前の宅地について処分の効果が生ずるとともに,従前の宅地の所有権に基づいて仮換地を使用収益する権能を認める合意があったと解されるところ(最高裁昭和43年9月24日判決・民集22巻9号1959頁),賃貸借契約のうち特に長期間の使用収益を予定する建物所有を目的とする賃貸借契約について,仮に,それらが仮換地についての使用収益権のみを対象とするとすれば,従前の宅地の土地所有権に基づいて仮換地を使用収益する権限を有する者との間で齟齬が生じ,困難な問題が生ずる する賃貸借契約について,仮に,それらが仮換地についての使用収益権のみを対象とするとすれば,従前の宅地の土地所有権に基づいて仮換地を使用収益する権限を有する者との間で齟齬が生じ,困難な問題が生ずる上,従前の宅地に賃借権設定登記を経由しても対抗力が生ずると言えるかについて疑義が生ずる。土地区画整理法85条1項が,施行地区内の宅地について所有権以外の権利を有することとなった者は,権利の申告をすることができ,同法129条が,施行地区内の宅地について権利を有する者の変更(使用収益権者の変更を含むと解される。)があった場合においては,あらためて仮換地の指定等の処分を要しない旨を定めていることからすれば,仮換地に着目して仮換地指定後に設定された賃貸借契約のうち,少なくとも,建物所有を目的とする賃借権については,その合意によって,特段の事情のない限り,従前の宅地についての賃借権を取得し,その結果,仮換地の使用収益権も取得すると解するのが相当である(最高裁昭和45年12月 18日判決・民集24巻13号2118頁参照)。なお,この点について,控訴人は,仮換地と異なる土地に換地・仮権利指定がされた場合や仮換地の一部について賃貸借契約が締結された場合に従前の宅地のどの部分か特定できず,不都合が生ずると主張するが,前者については,瑕疵担保責任を準用して合理的解決を図ることが可能であるし,後者については,契約において従前の宅地のどの部分かを具体的に特定する必要があるとは必ずしもいえない(前掲最高裁昭和43年9月24日判決参照)。 さらに,控訴人は,本件において,従前地についての賃借権を取得しない特段の事情があると主張するが,上記のとおり,控訴人が主張する事情は,いずれも仮換地について賃借権を取得すると解すべき事由に当たらず,控訴人の主張は採用できない。」 前地についての賃借権を取得しない特段の事情があると主張するが,上記のとおり,控訴人が主張する事情は,いずれも仮換地について賃借権を取得すると解すべき事由に当たらず,控訴人の主張は採用できない。」(2)17頁15行目「設定を受けた者」の次に,「,とりわけ区画整理事業の終了後まで使用収益を継続することが予想される建物所有目的の賃借権等の賃借権者」を加える。 (3)17頁16行目末尾に続き改行して,次のとおり加える。 「さらに,清算金は,従前の宅地及び換地の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等を総合的に考慮して算定することが予定されているが,従前の宅地と換地の位置等の状況を総合的に考慮して算定された清算金の総額に,仮換地の借地権の割合を乗ずることによって,賃借権者に対し徴収又は交付すべき清算金の金額を定めることは可能であり,その際,従前の宅地に対する借地権割合を求める必要はない。」(4)21頁1行目末尾に続き,次のとおり加える。 「また,平成10年8月25日付国税庁長官通達は,定期借地権の評価について,課税時期における自用地としての価額×(1-底地割合)×逓減率によって算定すると定めており,これは,定期借地権等については,評価時点における残存期間に応じて評価額を逓減させるべきであるという考え 方に基づいている。」(5)21頁15行目「12,」の次に「23,」を加え,同頁25行目「設定されて」の次に「おり,その融資は,いずれも存続期間内に返済することが予定されて」を加える。 (6)22頁11行目「推認される。」の次に,以下のとおり加える。 「控訴人は,この点に関し,本件定期借地権については50年の期間を定めており,その点を考慮すべきである旨を主張するが,前記のとおり,テーマパークの底地として一体利用されていることを考慮すれば える。 「控訴人は,この点に関し,本件定期借地権については50年の期間を定めており,その点を考慮すべきである旨を主張するが,前記のとおり,テーマパークの底地として一体利用されていることを考慮すれば,存続期間が30年間であって正当事由がなければ更新を拒絶できない普通借地権と比べた場合に,どちらがより安定した権利であるかは一概には決められない。」(7)22頁19行目「明らかというべきである。」の次に,以下のとおり加える。 「さらに,本件土地区画整理事業によって,本件定期借地権等を有する控訴人は,利用増進の利益を享受しているから,それが,普通賃借権ではなく定期借地権等であることを理由に清算金の負担を免れるというのは著しく衡平を欠くことになる。しかも,定期借地権等は平成11年法律第153号により創設された制度であり,その評価方法,とりわけ,迅速処理を要する土地区画整理事業における定期借地権や事業用借地権の評価方法は,確立されているとは言い難い。」 結論 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官永井ユタカ裁判官楠本新裁判官舟橋恭子
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