【DRY-RUN】主 文 被告が原告ら申立にかかる不利益処分審査請求事件につき昭和四三年三月八日付を もつてなした、各請求を棄却する、との裁決はこれを取消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事 実
主文 被告が原告ら申立にかかる不利益処分審査請求事件につき昭和四三年三月八日付をもつてなした、各請求を棄却する、との裁決はこれを取消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 第一、当事者双方の求める裁判(原告ら)主文と同旨の判決。 (被告)原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 との判決。 第二、当事者の主張一、請求原因(一) 原告らはいずれも山形県鶴岡市職員として、原告Aは産業部商工観光課に、同Bは税務課に、同Cは市立荘内病院医療部細菌病理科に、同Dは同病院事務部業務課に、同Eは同病院財政課に、同Fは市教育委員会管理課にそれぞれ勤務していたところ、昭和四一年一一月二〇日、訴外鶴岡市長は原告Aおよび同Cに対して一ケ月間給料日額の一〇分の五を減ずる減給処分を、同B、同Dおよび同Eに対して戒告処分を、訴外鶴岡市教育委員会は原告Fに対して戒告処分を、それぞれなした。(以下単にこれらの処分を、本件各懲戒処分と略称する。)(二) そこで原告らは昭和四二年一月二六日被告に対し、それぞれ右各懲戒処分の取消を求めて、地方公務員法(以下単に地公法と略称する)四九条の二の規定に基づく不利益処分審査請求の申立をなしたところ被告は昭和四三年三月八日原告らの請求はいずれもこれを棄却する旨の裁決(以下単に本件裁決と略称する。)をなした。 (三) 本件裁決の理由とするところは、不利益審査手続(以下単に本件審査手続と略称する。)において、原告らが、地公法三七条一項所定の争議行為を行つた事実を認める旨の陳述(自白)をなしたので、これによりその事実の存在を認定するに十分であり、従つて同条二項により原告らには、不利益処分審査請求権がないと言うのである。 (四) しかしながら本件裁決には次のような瑕疵がある。 1、事実誤認の違 これによりその事実の存在を認定するに十分であり、従つて同条二項により原告らには、不利益処分審査請求権がないと言うのである。 (四) しかしながら本件裁決には次のような瑕疵がある。 1、事実誤認の違法原告らは地公法三七条一項に該当する行為をしていないし本件審査手続において、同行為をした旨の自白もしていない。 すなわち、審査手続における昭和四二年八月八日施行の第一回及び同年一一月七日施行の第二回各口頭審理において原告らは、その意見陳述をしたが、その際本件懲戒処分の理由とされている事実を全面的に否認し、昭和四一年一〇月二一日実施された全日本自治団体労働組合の全国統一行動の趣旨目的を述べたもので、原告らにおいて地公法三七条一項所定の違反行為を行つたことを認めたものではない。斯様に、右の如き争議行為を行つたことについて原告らの自白がない以上被告は、証拠に基づいて右争議行為の存否等の事実を認定しなければならないところ、これにつき、原告らの自白があつたものとして証拠調をせず、右争議行為の事実を認定した。従つて被告には、事実認定を誤つた違法がある。 2、審理不尽の違法原告らは本件審査手続において本件各懲戒処分の違法性、不当性について主張し、かつこれを立証しようとしていたが被告は原告らにその機会を与えることなく裁決をした。従つて被告には審理不尽の違法がある。 3、最終陳述権及び証拠提出権行使の機会を与えなかつた違法鶴岡市の不利益処分についての不服申立に関する規則(昭和三八年公平委員会規則第一号)の八条五項には「公平委員会は、口頭審理を終了するに先立つて当事者に対して最終陳述をし、かつ必要な証拠を提出することができる機会を与えなければならない。」と規定されている。しかるに被告は本件審査手続において、原告らに右規定にそう権利を行使する機会を与えるこ 事者に対して最終陳述をし、かつ必要な証拠を提出することができる機会を与えなければならない。」と規定されている。しかるに被告は本件審査手続において、原告らに右規定にそう権利を行使する機会を与えることなく、突如本件審理を打切つた違法がある。 4、結審を宣告しなかつた違法被告は本件審理を終了するに際し結審の宣告をしないまま突如本件裁決に及んだ違法がある。 (五) よつて原告らは被告のなした本件裁決の取消を求める。 二、答弁請求原因に対し、(一) その(一)の事実は認。 (二) その(二)の事実は認。 (三) その(三)の事実は認。 (四) その(四)の事実中、1、その1の審査手続において被告が、原告らの自白により原告らが地公法三七条一項に該当する争議行為をした旨認定したこと及び、証拠調を実施しなかつたことは認。その余の事実は否認。 2、その2の被告が原告らに本件各懲戒処分の違法性、不当性についての主張立証の機会を与えなかつたことは認。それが審理不尽であるとの点は否認。 3、その3の原告ら主張の如き内容の規則の存在、及び原告らに最終陳述の機会等を与えなかつたことは認。 4、その4の被告が結審を宣告しなかつたことは認。 三、被告の主張地公法三七条二項によれば、地方公務員が、争議行為を行つたことにより受けた不利益処分に対して当該公務員は当初から審査請求権を有しないから、たまたま不利益処分の審査請求が受理されても、その審理中に争議行為を行つたことが判明したときはその時点で審理を打切り審査請求を棄却すべきものであるところ、原告らはいずれも昭和四二年八月八日及び同年一一月七日開催の審査手続において処分理由説明書記載の争議行為を行つたことを自白したため、被告はその事実を認定し、地公法三七条二項により原告らには不利益処分審査請求権がないものと判断して 八日及び同年一一月七日開催の審査手続において処分理由説明書記載の争議行為を行つたことを自白したため、被告はその事実を認定し、地公法三七条二項により原告らには不利益処分審査請求権がないものと判断して審理を打切り本件裁決に及んだものであつてその手続上何らの違法もない。斯様に争議行為の存否につき争いがない以上この事実に関し、更に原告らに主張立証の機会を与える必要がないことも自明のことである。なお前記(一の(四)の3)規則八条五項には「最終陳述をなしかつ必要な証拠を提出する機会を与えなければならない」と規定しており、これによると、最終陳述の後にもなお証拠調が行なわれることを予想しているから、右にいう最終陳述とは文字通り審理の最終に行なわなければならないものではなく、要は審査請求人に対し十分な意見陳述の機会を与えればよいという趣旨であるところ、本件審査手続において原告らは十分な意見陳述の機会を与えられたのであるから殊更審査手続の最後の段階に、その陳述の必要はなかつた。よつて本件裁決には何ら違法とさるべき点はない。 第三、証拠(省略) 理由 一、請求原因(一)ないし(三)の事実はすべて当事者間に争いがない。 二、本件裁決についての、違法事由の存否につき。 (一) 事実誤認の有無について(請求原因の(四)の1)本件審査手続において、被告が原告らは、地公法三七条一項所定の争議行為をなしたことを自白したものと認定したことは、当事者間に争いがない。ところで、審査手続の過程で、右の点につき自白がある場合、被告はこの点に関する証拠調べを要しないものと解するところ、ここに自白とは、ある事実をなしたというにとどまらず、右法条の法意に照らし、実質的にみて、その行為が、処分を受けるに値するに足るものであること、即ち行為によるその効果である同法所定の と解するところ、ここに自白とは、ある事実をなしたというにとどまらず、右法条の法意に照らし、実質的にみて、その行為が、処分を受けるに値するに足るものであること、即ち行為によるその効果である同法所定の責任の帰属まで認容する陳述を指すものと解するのが相当である。そこで、原告らがこの種の自白をしたか否か等について検討する。 1、審査手続における原告らの陳述の要旨。 成立につき当事者間に争いのない乙第二、三号証によれば審査手続において原告らのなした陳述は次のとおりであることが認められこれに反する証拠はない。 (1) 鶴岡市役所職員組合関係イ自治労本部の指令に基づき、昭和四一年一〇月二一日市体育館前において鶴岡市役所職員組合の職場大会が午前八時三〇分から午前九時二〇分まで行なわれた。 ロ原告ら右職員組合の執行部は、右職場大会のため市民に迷惑をかけないようにするため、その保安体制には十分配慮し、保安要員として本庁二名、衛生処理場二名、公民館各一名、給食調理場一名、保育所各二名・明治幼稚園一名、大山幼稚園二名、西郷幼稚園一名、大山養老院二名、大山支所一名、水族館一名、計三七名を配置した。 ハ右ロのうち保育園、幼稚園、養老院の場合には特に事故防止のため、その保護者らに文書を配付して協力を求め、また学校給食においては事前に団体交渉をもち簡易な献立内容にして実施するように働きかけた。 ニ午前九時三〇分前に勤務に就き得るよう配慮した。 ホ右職場大会のために市民に迷惑をかけた具体的事実はない。 (2) 鶴岡市立荘内病院職員組合関係イ自治労本部の指令に基づき、昭和四一年一〇月二一日鶴岡市立荘内病院構内西口広場において同病院職員組合の職場大会が午前八時三〇分から午前八時五五分頃まで行なわれた。 ロ当日は右職場大会が開催されない場合でも、午前八時三〇分から勤務 一年一〇月二一日鶴岡市立荘内病院構内西口広場において同病院職員組合の職場大会が午前八時三〇分から午前八時五五分頃まで行なわれた。 ロ当日は右職場大会が開催されない場合でも、午前八時三〇分から勤務に就く職員は全職員三四〇名中一三〇名程度であつた。 ハ原告ら執行部は病院が人命を預かる特殊の職場であるため、第一義的に市民に迷惑を波及させないことに配慮し、これにそう体制として食糧課、中央材料室、交換室、病棟用務員、外科病棟ほか二病棟は勤務者全員を、他の病棟についても二、三名を、また外来急患等に対処するために医師一名、看護婦三名、薬剤師一名、レントゲン技師一名、事務員一名を、その他ボイラー用務員室、教務課、西口薬局にそれぞれ一名ないし二名を、各保安要員として配置し、万全を期した結果、通常の日の場合の診療業務に比し、何らの遜色もなく、反つて急患体制をとつていたため、職場大会中に訪れた急患三名は通常の場合よりもすみやかに処置された程である。 ニその他ピケを張つて市民に迷惑をかけたことはない。 以上これを要するに原告らは、昭和四一年一〇月二一日に勤務時間内に職場大会を開催したことは事実であるが、同大会はごく短時間のものであり、かつ保安体制を十分にととのえた上でこれを実行したため、結果的に市民に迷惑をかけた具体的事実は一つもなく、従つてこれにより処分するのは不当である旨主張しているのである。 2、地公法三七条一項につき。 地公法三七条一項の本来の趣旨は、地方公務員の職務の公共性にかんがみ、同公務員の争議行為が公共性の強い公務の停廃をきたし、ひいては国民生活全体の利益を害し、国民生活にも重大な支障をもたらすおそれがあるので、これを避けるためのやむをえない措置として同公務員の争議行為を禁止したものに他ならない。ところが、同公務員の職務は、一般的にい 活全体の利益を害し、国民生活にも重大な支障をもたらすおそれがあるので、これを避けるためのやむをえない措置として同公務員の争議行為を禁止したものに他ならない。ところが、同公務員の職務は、一般的にいえば、多かれ少なかれ公共性を有するとはいえ、公共性の程度は強弱さまざまで、その争議行為が常に直ちに公務の停廃をきたし、ひいては国民生活全体の利益を害するとはいえないのみならず、ひとしく争議行為といつても、種々の態様のものがあり、きわめて短時間の同盟罷業または怠業のような単純な不作為のごときは、直ちに国民生活全体に対し、その利益を害し、かつ重大な支障をもたらすおそれがあるとは必らずしもいえない。しかして、同公務員の具体的な行為が禁止の対象たる争議行為に該当するかどうかは、争議行為を禁止することによつて保護しようとする法益と労働基本権を尊重し保障することによつて実現しようとする法益との比較考量により、両者の要請を適切に調整する見地から判断することが必要である。そしてその結果は同公務員の行為が地公法三七条一項に禁止する争議行為に該当し、しかも、その違法性の強い場合も勿論あるであろうが、争議行為の態様からいつて違法性の比較的弱い場合もあり、また実質的には、右条項にいう争議行為に該当しないと判断すべき場合もあることとなる(最高裁判所昭和四一年(あ)第四〇一号同四四年四月二日大法廷判決参照)。 3、以上、右1の原告らの陳述の要旨と、2の地公法三七条一項の趣旨とを相関的に考察する場合、原告らの右の陳述は帰するところ、原告らの右職場大会の実施は、それにより地公法上の責任を問擬される要件に該当せず、従つてそれは同法三七条一項に該当する争議行為ではないというにあり、従つて原告らはこの点を自白したものとは言い難い。 4、しかして、右2判示の如く具体的な争議行為が地公 任を問擬される要件に該当せず、従つてそれは同法三七条一項に該当する争議行為ではないというにあり、従つて原告らはこの点を自白したものとは言い難い。 4、しかして、右2判示の如く具体的な争議行為が地公法三七条一項によつて禁止の対象とされるか否かは、当該具体的事案において、争議行為を禁止することによつて保護しようとする法益と労働基本権を尊重し保護しようとする法益を比較考量の上慎重に決定されなければならないところ、右の如く本件審査手続における原告らの右陳述は地公法三七条一項に該当する争議行為の自白とは認め難く、同陳述のみで同行為を認定するには不十分であるから、被告はなお証拠調をする必要があつたものと言うべきである。しかるに原告らの右陳述をもつて争議行為の自白と解し、これのみにより原告らが地公法三七条一項所定の争議行為をなした旨認定した本件裁決にはこの点において事実誤認の違法がある。 (二) 審理不尽の違法の有無について(請求原因(四)の2)被告が本件審査手続において原告らに本件各懲戒処分の違法性、不当性についての主張、立証の機会を与えなかつたことは当事者間に争いがないところ被告は右(一)認定の経緯の如く原告らが地公法三七条一項に該当する争議行為をなしたものと認定し同法三七条二項により不利益審査請求権を有しないとして、本件審査手続を打切つたもので右争議行為の認定に誤認があるから何ら証拠調をせず、本件審査手続を打切つたことは審理不尽の違法がある。 (三) 以上、右(一)(二)認定の如く、被告のなした本件裁決には事実誤認、審理不尽の違法があり、それは本件裁決を取消すに足る瑕疵であると認めるのが相当である。 三、結論よつて、本件裁決には、右二の(一)(二)の如き、これを取消すべき違法が存在するので原告ら主張のその余の点につき判断するまでもなく、そ 決を取消すに足る瑕疵であると認めるのが相当である。 三、結論よつて、本件裁決には、右二の(一)(二)の如き、これを取消すべき違法が存在するので原告ら主張のその余の点につき判断するまでもなく、その請求は理由があるからこれを認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官藤巻● 伊藤俊光三浦宏一)
▼ クリックして全文を表示