昭和22(れ)222 食糧管理法違反、物価統制令違反

裁判年月日・裁判所
昭和23年4月8日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  被告人A弁護人吾野金一郎上告趣意について。  しかし、原判決は、食糧管理法及び物価統制令違反の連続した想像的数罪を認定

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判決文本文5,385 文字)

主    文      本件上告を棄却する。          理    由  被告人A弁護人吾野金一郎上告趣意について。  しかし、原判決は、食糧管理法及び物価統制令違反の連続した想像的数罪を認定 し、法律の適用にあたり所論のように刑法第五四条第一項前段、第五五条、第一〇 条を適用して、食糧管理法第三一条(昭和二二年一二月三〇日の改正前の規定、以 下同じ。) の所定刑と物価統制令第三三条の所定刑とを対照し、犯情により前者 の刑を重しとし、これに従つて処断したものである。所論のごとく、前者の法定刑 は、一〇年以下の懲役又は五万円以下の罰金であり、後者の法定刑は、一〇年以下 の懲役又は一〇万円以下の罰金である。そして共に懲役と罰金の選択刑又は併科刑 であつて、懲役は長期及び短期が同じである。両者の異る主要点は、ただ罰金の多 額について、前者は五万円であり後者は一〇万円である一点に帰着するのである。  そこで、刑法第五四条第一項において、一個の行為にして数個の罪名に触れると きは、その最も重き刑をもつて処断する旨を規定している重き刑という意味は、刑 を抽象的に比較対照して数個の罪名に科せられた数個の法定刑の中最も重い法定刑 を指すものであつて、具体的に判断せられるいわゆる処断刑の軽重によるべきもの でないことは明かである。そして、主刑の軽重については、刑法第一〇条に規定さ れている。(一)まず主刑の軽重は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の順序 によるものとし原則としては刑種によつて軽重を定めている。しかし、例外として (二)無期禁錮は有期懲役より重いとせられ、(三)有期禁錮の長期が、有期懲役 の長期の二倍を超えるときは、禁錮をもつて重いとせられている。次に、同種の刑 の軽重については、(イ)長期の長いもの又は多額の多いものをもつて重いとせら れ、(ロ)長期又は多額の同じもの 期が、有期懲役 の長期の二倍を超えるときは、禁錮をもつて重いとせられている。次に、同種の刑 の軽重については、(イ)長期の長いもの又は多額の多いものをもつて重いとせら れ、(ロ)長期又は多額の同じものは、その短期の長いもの又は寡額の多いものを - 1 - もつて重いとせられ、(ハ)二個以上の死刑の場合、同種の刑で長期も短期も同じ 場合又は多額も寡額も同じ場合には、犯情により刑の軽重を定めるものとされてい る。従つて、単独刑については、異種の場合においても、同種の場合においても、 すべて前述する刑法第一〇条の規定によつて、残る隈なく完全に軽重を対照決定す ることが容易にできる訳である。しかし、ここに問題となるのは、併科刑又は選択 刑について、刑の軽重を対照する場合である。すなわち、一つの併科刑を他の併科 刑、選択刑若しくは単独刑と対照する場合又は一つの選択刑を他の選択刑、併科刑 若しくは単独刑と対照する場合においては、いかなる方法によるべきかという問題 である。しかるに、刑法第一〇条はこの問題について直接的な規定をしていない。 そこで同条の解釈としては、(一)併科刑又は選択刑の場合には、その中にて重い 刑のみについて対照をすべきであるという考え方と、(二)二個以上の主刑の全体 について対照をすべきであるという考え方とが生ずるのである。前者はいわば重点 的対照主義であり、後者は全対的対照主義である。今本件の場合を例にとれば、前 説では、軽い罰金刑を度外視して重い懲役刑のみについて対照すべきであり、その 懲役は長期も短期も同じであるから、刑法第一〇条第三項に従い犯情により刑の軽 重を定むべきこととなる。これに反して後説では、懲役が長期も短期も同じである から、さらに罰金の法定刑をまず多額につき対照して、多額一〇万円の物価統制令 違反罪の刑を重いとし、これをもつて処断すべきこととな 定むべきこととなる。これに反して後説では、懲役が長期も短期も同じである から、さらに罰金の法定刑をまず多額につき対照して、多額一〇万円の物価統制令 違反罪の刑を重いとし、これをもつて処断すべきこととなる。思うに、(い)刑法 第一〇条第一項本文においては、刑の軽重を刑種を標準として定めているが、これ は一応の標準であつて無期禁錮は禁錮ではあるが有期懲役より重いとせられ又有期 懲役の長期の二倍を超える長期を有する有期禁錮は、禁錮ではあるが有期懲役より 重いとせられている。すなわち、刑の軽重を定めるには、刑の種類のみによるばか りでなく、刑の量もまた考慮に入れられていることが十分窺い知られるのである。 又(ろ)同条第二項によれば、同種の自由刑については長期の長いものを重いとし、 - 2 - 長期の同じものは短期の長いものを重いとせられている。すなわち、自由刑の軽重 を定めるには、重い長期のみによる重点主義ばかりでなく、短期もまた考慮の中に 取り入れられ、刑全体として対照せられている。(は)同様に、同種の金刑につい ても多額の多いものを重いとし、多額の同じものは寡額の多いものを重いとせられ ている。すなわち、金刑の軽重を定めるには、重い多額のみによる重点主義ばかり でなく、寡額もまた考慮の中に取り入れられ、この場合も刑全体として対照せられ ている。従つて刑法第一〇条がかくのごとく刑の軽重を定めるに単独刑全体として 比較対照する主義に立つているところから推理すれば併科刑又は選択刑の場合にお いても同様にまずその中の重い刑について対照し、重い刑が全く同じであるならば、 さらに順次軽い刑について対照すべきであるとする全体的対照説が刑法第一〇条の 解釈としてはむしろ常識的であり、合理的であり、動かぬところであると言わねば ならぬ。されば、刑法第一〇条の解釈として直ちに併科刑又は選択刑の場合 いて対照すべきであるとする全体的対照説が刑法第一〇条の 解釈としてはむしろ常識的であり、合理的であり、動かぬところであると言わねば ならぬ。されば、刑法第一〇条の解釈として直ちに併科刑又は選択刑の場合におい て、その中で重い刑のみについて対照すべきであると主張する斎藤裁判官の説には たやすく賛同することができない。  ところが、ここに特に注視すべきは、刑法施行法第三条の規定の存在である。同 条第三項においては「一罪ニ付、二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ、又ハ二個以上 ノ主刑中其一個ヲ科ス可キトキハ、其中ニテ重キ刑ノミニ付キ対照ヲ為ス可シ。」 と明定している。 この規定は、おそらく刑法施行前に犯した旧刑法の罪につき、 刑法施行後裁判をなす場合に、「犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ変更アリタルトキハ、其 ノ軽キモノヲ適用ス」とある刑法第六条の規定の運用上、常に新旧刑法の法定刑の 軽重を比較対照する必要性に基き、これを主眼として制定せられたものではあろう が、それと同時に、「一個ノ行為ニシテ数個ノ罪名ニ触レ、又ハ犯罪ノ手段若クハ 結果タル行為ニシテ他ノ罪名ニ触ルルトキハ、其最モ重キ刑ヲ以テ処断ス」とある 刑法第五四条第一項の規定の運用上、法定刑の軽重を比較対照する必要のある場合 - 3 - にも、前記施行法の規定、少くともその規定の精神は適用を見るものと解すべきで ある。けだし、同条項は、併科刑又は選択刑の場合に、刑の軽重を定むるための対 照手続を規定したものであり、その表現は広く一般的であつて特に新旧刑法の刑の 対照のみに限定したものではないからである。又同条項は、刑法施行法であるとい う点から、その内容は性質上経過的規定に過ぎないと説く者があるかも知れないが、 これは当らない。必ずしも常に施行法中の総ての規定が、性質上当然経過的規定で あるとは言い得ない。施行法中の規定で、当然本法中に置 ら、その内容は性質上経過的規定に過ぎないと説く者があるかも知れないが、 これは当らない。必ずしも常に施行法中の総ての規定が、性質上当然経過的規定で あるとは言い得ない。施行法中の規定で、当然本法中に置かるべきものも往々現実 に存するからである。例えば、民法施行法第四条、第五条、商法施行法第一一七条、 商法中改正法律施行法第三条のごときは、その適例であると言うことができる。要 するに、刑法施行法第三条第三項の規定は、一般的に併科刑又は選択刑の場合に、 刑の軽重を定める重点的対照方法を規定したものと解すべきである。これは一に運 用上の簡明と便宜に主眼を置いて重点的に定められたものと見るべきであろう。  さて本件において、原判決が、上記食糧管理法第三一条の法定刑と物価統制令第 三三条の法定刑を対照するに当り、刑法施行法第三条の適用を明示しなかつた瑕疵 はあるが、結局併科刑又は選択刑の軽い刑種の罰金を度外視しこれを不問に附して、 重い刑種の懲役のみを対照比較し、その長期も短期も同じであるから刑法第一〇条 第三項を適用し自由裁量によつて犯情により食糧管理法違反罪の法定刑に従い処断 したのは、固より適法であつて所論のごとき違法は、毫も存在しない。又論旨は、 懲役及び罰金の併科を不相当なりとし罰金刑のみをもつて処断すべしと主張してい るが、量刑は事実審である原審の自由裁量権に属し、量刑の不当を非難するのは上 告適法の理由とならない。されば論旨は何れも理由なきものである。少数意見  理由に関する裁判官斎藤悠輔の少数意見は次のとおりである。  元来刑の軽重については刑法第一〇条に規定を設けているから、同法第五四条第 一項前段の適用上「其最モ重キ刑」を決定するにも右第一〇条によるべきこという - 4 - を俟たない。今同条を見るに、その第一項には主刑の軽重は前条記載の順序に依る 云々とあり、そ から、同法第五四条第 一項前段の適用上「其最モ重キ刑」を決定するにも右第一〇条によるべきこという - 4 - を俟たない。今同条を見るに、その第一項には主刑の軽重は前条記載の順序に依る 云々とあり、その前条には死刑、懲役、禁錮、罰金拘留及び科料と記載してあつて、 右第一項但書に禁錮と懲役との間に限り特に例外を認めているに過ぎないから、刑 の軽重は右但書の場合を除き原則として前記順序の刑の種類によるべきものとした こと明白である。それ故前記刑法第五四条第一項の最も重い刑を定めるに当つても 先づ最も重い種類の刑を比較刑とすべきものであるから比較すべき数個の法条が夫 々二種以上の法定刑を併科的又は選択的に規定してある場合でも先づ夫々各法条中 の軽き種類の刑を除外して専らその最も重い種類の刑を採りその最も重い種類の刑 を比較対照して軽重を定むべきである。そしてこの事はすでに刑法施行法第三条第 三項において「一罪ニ付キ二個以上ノ主刑ヲ併科ス可キトキ又ハ二個以上ノ主刑中 其一個ヲ科ス可キトキハ其中ニテ重キ刑ノミニ付キ対照ヲ為ス可シ」と規定してそ の趣旨を明らかにしているのである(なお刑訴第二八二条参照)。  次にその比較刑が同一種類の刑である場合には更らに前記刑法第一〇条の第二、 三項によるべきである。この規定によれば同一種類の刑の軽重は原則として長期又 は多額を標準とし、長期又は多額の同じきものは短期又は寡額を標準として決定す べく、二個以上の死刑その他同種同量の刑の場合には「犯情ニ依リ其軽重ヲ定ム」 べきものとしている。その犯情により軽重を定めるとは或る学者の非難するように 刑の軽重を定めるのに犯情の軽重に依るべしとの奇怪な意味ではなく、裁判官に対 し犯情により同種同量の法定刑のいずれを重しとし、いずれを軽しとするかの自由 選定権を与える趣旨であるから前記刑法第五四条第一項の最も重 定めるのに犯情の軽重に依るべしとの奇怪な意味ではなく、裁判官に対 し犯情により同種同量の法定刑のいずれを重しとし、いずれを軽しとするかの自由 選定権を与える趣旨であるから前記刑法第五四条第一項の最も重い刑を定めるに当 り各同一法条に二種以上の法定刑を併科的又は選択的に規定してある場合にその最 も重い種類の比較刑がいずれも同種同量の刑であるときは犯情によりそのいずれの 法条の刑を重しとするかを自由に選定する権限を与えたものといわざるを得ない。 この場合に右選定権を排除して更らに併科刑又は選択刑の軽重によるを自然的条理 - 5 - とする説は結局量と質とを混同するもので同質のものに異質のものを附加するも同 質の量に何等の影響を及ぼさないことを見誤つたもので刑法第一〇条第三項に違反 するものである。  よつて、刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。  この判決の主文は裁判官全員の一致した意見であり、理由は裁判官真野毅、同岩 松三郎の多数意見による。  検察官安平政吉関与   昭和二三年四月八日      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔             裁判官    真   野       毅             裁判官    岩   松   三   郎 - 6 -

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