平成24(ワ)31999 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年5月27日 東京地方裁判所
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判決文本文111,646 文字)

令和元年5月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第31999号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成30年9月19日判決 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して7600万8757円及びうち5921万5935円に対する平成23年6月8日から,うち664万円に対する平成24年4月27日から,うち37万5000円に対する同年7月20日から,うち662万円に対する同年11月28日から各支払済みまで年5分の割合による金員を 支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを50分し,その39を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 事実 及び理由 (目次)第1 請求・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8頁第2 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8頁 1 争いのない事実等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8頁⑴ 当事者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8頁 ⑵ 強盗殺人事件の発生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9頁⑶ 被害者方,被害者の死体の状況等・・・・・・・・・・・・・・・・・9頁⑷ 司法解剖の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9頁⑸ 本件強盗殺人事件についての捜査の開始及び原告からの聴き取り・・10頁⑹ 別件窃盗事件による逮捕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11頁 ⑺ 窃盗の余罪事件についての自白・・・・・・・・・・・・・・・・・11頁⑻ 原告の別件窃盗事件についての勾留・・・・・・・・・・・・・・・12頁⑼ 原告に対する取調べ等・・ 頁 ⑺ 窃盗の余罪事件についての自白・・・・・・・・・・・・・・・・・11頁⑻ 原告の別件窃盗事件についての勾留・・・・・・・・・・・・・・・12頁⑼ 原告に対する取調べ等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12頁⑽ AAの逮捕及び勾留・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14頁⑾ 本件強盗殺人事件での逮捕及び勾留・・・・・・・・・・・・・・・16頁 ⑿ 本件強盗殺人事件についての処分保留・・・・・・・・・・・・・・16頁⒀ 原告による再度の自白・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17頁⒁ AAの処分保留・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18頁⒂ AAによる再度の自白・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19頁⒃ 被害者方の遺留指掌紋及び毛髪・・・・・・・・・・・・・・・・・20頁 ⒄ 目撃供述等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20頁⒅ 本件強盗殺人事件についての起訴及び勾留質問・・・・・・・・・・28頁⒆ 本件起訴後に得られたACの供述・・・・・・・・・・・・・・・・28頁⒇ 確定審第一審の公判及び判決・・・・・・・・・・・・・・・・・・29頁確定審第二審の公判及び判決・・・・・・・・・・・・・・・・・・33頁 確定審上告審の決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34頁第一次再審請求審・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34頁原告の仮釈放・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34頁第二次再審請求審及び再審公判の概略・・・・・・・・・・・・・・34頁刑事補償金等の支払・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35頁 2 争点・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第二次再審請求審及び再審公判の概略・・・・・・・・・・・・・・34頁刑事補償金等の支払・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35頁 2 争点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36頁 3 当事者の主張の要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36頁第3 当裁判所の判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37頁 1 争点1(①別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留が令状主義を潜脱するものとして違法であり,これらを利用した取調べが違法であるか否か,②本件逮捕及 び本件勾留が違法であるか否か)について・・・・・・・・・・・・・・37頁 ⑴ 認定事実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37頁⑵ 原告の身柄拘束の違法性の有無について・・・・・・・・・・・・・45頁⑶ AAの身柄拘束の違法性の有無について・・・・・・・・・・・・・51頁 2 争点2(警察官による取調べに違法があるか否か)について・・・・・55頁⑴ 判断枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55頁 ⑵ 警察官による原告の取調べについての原告の主張の概要・・・・・・56頁⑶ 原告に対する取調べについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・68頁⑷ まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84頁 3 争点3(検察官による取調べに違法があるか否か)について・・・・・84頁⑴ 原告に対する取調べについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・84頁 ⑵ AAに対する取調べについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・89頁⑶ 目撃者に対する聴取・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90頁 4 争点4(代用監獄への移監〔逆送〕 ⑵ AAに対する取調べについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・89頁⑶ 目撃者に対する聴取・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90頁 4 争点4(代用監獄への移監〔逆送〕に係る検察官の同意請求が違法であるか)について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91頁 5 争点5(証拠の改ざん等に係る違法があったか否か)について・・・・91頁 ⑴ 9.20捜報について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91頁⑵ 10.15捜報について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94頁⑶ 8.30捜報について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96頁⑷ 10.22捜報及びAGの10.22員面について・・・・・・・100頁⑸ まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101頁 6 争点6(検察官による本件起訴に違法があるか否か)について・・・101頁⑴ 判断枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101頁⑵ 関係者の供述等について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102頁⑶ まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113頁 7 争点7(確定審の公判における警察官及び検察官の活動に違法があるか否か) について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114頁 ⑴ 警察官の活動について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114頁⑵ 検察官の活動について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115頁⑶ まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120頁 8 争点8(再審請求審及び再審の公判における検察官の活動に違法があるか)について・・・・・・・・・・・・・・ ・115頁⑶ まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120頁 8 争点8(再審請求審及び再審の公判における検察官の活動に違法があるか)について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121頁 9 争点9(原告に生じた損害の有無及び金額)について・・・・・・・121頁⑴ 身柄拘束期間中の損害について・・・・・・・・・・・・・・・・121頁⑵ 仮釈放後の損害について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126頁⑶ まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131頁 10 争点10(除斥期間が経過したか否か)について・・・・・・・・131頁 第4 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・132頁(略語)本判決における略語例は,本文中に記載のあるもののほか,以下のとおりとする。 1 官署の表示⑴ 最高裁判所につき,「最高裁」という。 ⑵ 東京高等裁判所につき,「東京高裁」という。 ⑶ 水戸地方裁判所土浦支部につき,「水戸地裁土浦支部」という。 ⑷ 水戸少年刑務所土浦拘置支所につき,「土浦拘置支所」という。 ⑸ 被告茨城県につき,「被告県」という。 ⑹ 茨城県警察本部につき,「茨城県警」という。 ⑺ 茨城県土浦警察署につき,「土浦署」という。 ⑻ 茨城県取手警察署につき,「取手署」という。 ⑼ 茨城県水海道警察署につき,「水海道署」という。 ⑽ 茨城県竜ヶ崎警察署につき,「竜ヶ崎署」という。 2 関係者の表示 AA につき,「AA」という。 AB につき,「被害者」という。 AC につき,「AC」という。 ⑷ AD につき,「AD」という。 ⑸ AE につき,「AE AA につき,「AA」という。 AB につき,「被害者」という。 AC につき,「AC」という。 AD につき,「AD」という。 AE につき,「AE」という。 AF につき,「AF」という。 AG につき,「AG」という。 AH につき,「AH」という。 AI につき,「AI」という。 AJ につき,「AJ」という。 AK につき,「AK」という。 AL につき,「AL」という。 AM につき,「AM」という。 AN につき,「AN」という。 AO につき,「AO」という。 AP につき,「AP」という。 AQ 検察官につき,「AQ検察官」という。 AR 検察官につき,「AR検察官」という。 AS 検察官につき,「AS検察官」という。 当時の取手署の署長AT につき,「AT署長」という。 AU 警察官につき,「AU警察官」という。 AV 警察官につき,「AV警察官」という。 AW 警察官につき,「AW警察官」という。 AX 警察官につき,「AX警察官」という。 AY 警察官につき,「AY警察官」という。 場所の表示 茨城県北相馬郡c町de番地所在のAB方につき,「被害者方」又は「本件犯行現場」という。 布佐駅から本件犯行現場までの間の利根川に架かる栄橋につき,「栄橋」という。 ALの昭和42年8月28日当時の勤務先のバー「ジュン」につき,「ジュン」という。 事件等の表示 ABを被害者とする強盗殺人事件につき「本件強盗殺人事件」といい,本件強盗殺人事件に係る 42年8月28日当時の勤務先のバー「ジュン」につき,「ジュン」という。 4 事件等の表示⑴ AB を被害者とする強盗殺人事件につき「本件強盗殺人事件」といい,本件強盗殺人事件に係る逮捕,勾留につき,それぞれ「本件逮捕」,「本件勾留」という。 ⑵ 原告が昭和42年10月10日に通常逮捕された窃盗事件(同年9月3日に 千葉県内の商店でズボン1着及びワニ皮バンド1本を窃取した事件)につき「別件窃盗事件」といい,別件窃盗事件に係る逮捕,勾留につき,それぞれ「別件窃盗事件逮捕」,「別件窃盗事件勾留」という。 ⑶ AAが同年10月16日に通常逮捕された暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等事件(同年8月29日にBC 及びBD と共同して茨城県内の路上でB E に暴行を加えた事件)につき「別件暴力行為等事件」といい,別件暴力行為等事件に係る逮捕,勾留につき,それぞれ「別件暴力行為等逮捕」,「別件暴力行為等勾留」という。 5 証拠等の表示⑴ 検察官面前調書につき,「検面調書」又は単に「供述調書」という。 ⑵ 司法警察員面前調書につき,「員面調書」又は単に「供述調書」という。 ⑶ 10月15日に原告に対して行われた本件強盗殺人事件の犯行状況等に関する質問を用いたポリグラフ検査につき,「本件ポリグラフ検査」という。 ⑷ 10月17日の警察官による原告の取調状況を録音したテープにつき,「10.17原告録音テープ」という。 ⑸ 11月2日の警察官による原告の取調状況を録音したテープにつき,「11. 2原告録音テープ」という。 ⑹ 11月3日の警察官によるAAの取調状況を録音したテープにつき,「11. 3AA録音テープ」という。 ⑺ ACに対して聴き取り捜査をした結果が記載された9月20日付け捜査報告 テープ」という。 ⑹ 11月3日の警察官によるAAの取調状況を録音したテープにつき,「11. 3AA録音テープ」という。 ⑺ ACに対して聴き取り捜査をした結果が記載された9月20日付け捜査報告書(乙503)につき,「9.20捜報」という。 ⑻ 原告が初めて本件犯行を自白した際の取調べの経緯及び内容が記載された10月15日付け捜査報告書(乙566)につき,「10.15捜報」という。 ⑼ AE に対して聴き取り捜査をした結果が記載された8月30日付け捜査報告書(乙544)につき,「8.30捜報」という。 ⑽ AGに対して聴き取り捜査をした結果が記載された10月22日付け捜査報 告書(乙528)につき,「10.22捜報」という。 ⑾ AGに係る10月22日付け員面調書(乙529)につき,「AGの10. 22員面」という。 6 刑事公判等の表示⑴ 本件強盗殺人事件に係る原告らの起訴につき,「本件起訴」という。 ⑵ 昭和43年2月15日から開始された原告らの刑事公判につき「確定審」といい,確定審のうち各審級に係る刑事公判をその審級に応じ,それぞれ「確定審第一審」,「確定審第二審」,「確定審上告審」といい,そこでの判決等をそれぞれ「確定審第一審判決」,「確定審第二審判決」,「確定審上告審決定」という。 ⑶ 原告らによる昭和58年12月23日の再審請求に基づき開始された再審請求審につき,「第一次再審請求審」という。 ⑷ 原告らによる平成13年12月6日の再審請求に基づき開始された再審請求審につき,「第二次再審請求審」という。 ⑸ 原告らに関する再審裁判につき,「再審」といい,そこでの判決を「再審判 決」という。 7 出来事の表示⑴ 本件強盗殺人事件の犯行につき,「本件犯行」という。 ⑵ 栄 という。 ⑸ 原告らに関する再審裁判につき,「再審」といい,そこでの判決を「再審判 決」という。 7 出来事の表示⑴ 本件強盗殺人事件の犯行につき,「本件犯行」という。 ⑵ 栄橋の布佐駅側たもとにある石段付近でAG,AH及びAFらが怒声をあげた原告を目撃したとされる出来事につき,「石段の一件」という。 第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して3億4178万9618円及び2億9637万0045円に対する平成28年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,茨城県内において昭和42年8月に発生した本件強盗殺人事件(いわ ゆる布川事件)について,逮捕及び勾留をされた上で公訴を提起され,有罪判決を受けて服役し,再審において無罪判決が確定した原告が,被告らに対し,検察官及び茨城県警所属の警察官による捜査,検察官による公訴の提起,検察官及び警察官の公判における活動並びに検察官の再審請求審及び再審における活動に違法があったなどと主張して,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に 基づき,連帯して,①損害賠償金総額2億9637万0045円の一部である1億9044万0415円,②上記①の損害賠償金総額に対する平成28年4月14日までの確定遅延損害金1億5134万9203円,③上記①の損害賠償金総額に対する同月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 以下,日付については,特に断らない限り,昭和42年のことを指す。また,法令用語については,原則として,現行のものを用いることとする。 1 争いのない事実等(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 当事者 原告 また,法令用語については,原則として,現行のものを用いることとする。 1 争いのない事実等(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 当事者 原告は,昭和○○年○月○○日生まれの男性であり,本件強盗殺人事件につ いて,逮捕,勾留及び起訴をされて有罪判決を受けて服役した後,再審において,無罪判決が確定した者である。 強盗殺人事件の発生AB (被害者)の近隣住民が,8月30日早朝,茨城県北相馬郡c 町de 番地に所在する被害者方において,口中にパンツを詰められ,頸 部にもパンツが巻かれた状態の被害者の死体を発見した。 被害者の死体が横たわっていた箇所の床下の木材が破損し,床が大きく落ちくぼみ,物色の痕跡があったこと等から,強盗殺人事件である疑いが生じたため,茨城県警は,同日,被害者の死体の司法解剖を実施したところ,本件強盗殺人事件の犯行時間帯は,同解剖終了時(同日午後5時1分)から45時間内 外と推定された。(乙232,236,251)⑶ 被害者方,被害者の死体の状況等8月30日から翌31日にかけて行われた被害者方の検証の結果によれば,被害者方室内は,ロッカー等が開扉されているなど物色の痕跡があり,ガラス戸が倒れ,被害者の死体が横たわっていた箇所の床下の木材が破損して床が落 ちくぼみ,便所の窓枠に取り付けられた木製の桟2本が引き抜かれているなどの状況が認められた。また,被害者の死体には,右腰の上から敷き布団が載せられ,右肩の上に白色開襟シャツが掛けられており,両足が白色ワイシャツと白色タオルで緊縛され,頸部に白木綿パンツが巻かれ,口腔内にも白木綿パンツが詰め込まれていた。(乙232) ⑷ 司法解剖の結果ア被害者の司法解剖 られており,両足が白色ワイシャツと白色タオルで緊縛され,頸部に白木綿パンツが巻かれ,口腔内にも白木綿パンツが詰め込まれていた。(乙232) ⑷ 司法解剖の結果ア被害者の司法解剖を担当した医師は,8月30日,被害者の直接の死因は「窒息死」であり,その原因は「絞殺(推定)」,「絞殺並びに衣類を口の中につめて窒息せしめた。推定」との記載がされた死体検案書(以下「本件死体検案書」という。)を作成した。(乙470) イまた,上記医師は,12月1日,「余が解剖執刀にあたる前本屍の体位は, 腐敗膨大しあたかも巨人様観を呈し」ており,「本屍の腐敗の度は人体形成を保つための極に達するものと思考さる」とした上,「頸部は一般に青銅色を呈し,項部より左前頸部にかけ圧迫状にほぼ環状なせる布様物(白色布製パンツ様物体)を認むるも結節並びに結節点を認めず,その圧迫の度合は相当強度なり。」,成傷器具の種類及び成傷方法については,「凶器の種類を 印像していないので,これを明言することは至難であるが,前記創傷(中略)がいずれも外傷をともなわない皮下出血創であるところより思考して,いずれも外部よりの本屍に対する圧迫により生じたものと思考され,特に本屍の主要死因の一つと思考される頸部に存する創傷は強度の頸部圧迫により生じたものであり,更に本屍のもつとも重たる死因と目される口腔内の異物の挿 入は口腔内全体に強力に圧迫挿入されたものであ」り,死因については,「本屍頸部に於ける絞頸を思考させる創傷並びに本屍口腔内に圧迫挿入されたる処の布様物はそのいずれか一つをもつてしても死因たる窒息死を惹起せしめられうる死因創であるが,いずれか一つを重たる死因とするかをあえて極言するならば,本屍の口腔内に圧迫挿入されたる処の異物により惹起せしめら はそのいずれか一つをもつてしても死因たる窒息死を惹起せしめられうる死因創であるが,いずれか一つを重たる死因とするかをあえて極言するならば,本屍の口腔内に圧迫挿入されたる処の異物により惹起せしめら れたる処の気管閉鎖による窒息死と推定さる。」と記載された同日付け鑑定書(以下「本件鑑定書」という。)を作成した。(乙236)⑸ 本件強盗殺人事件についての捜査の開始及び原告からの聴き取りア茨城県警は,8月30日,被害者の身辺捜査,被害者方付近の近隣住民からの聞き込み捜査,前科のある者や素行の不良な者等の捜査を開始するとと もに,被害者方の検証を実施した。(乙232,453)イ茨城県警は,被害者方付近に住んでいた当時中学生であったAIから,8月30日午後,同月28日午後7時半過ぎ頃に被害者方前に20歳代の男性2名がおり,うち1名が室内にいた被害者と立ち話をしていた旨の目撃情報を得た。(乙627) ウ茨城県警は,9月2日,栄橋付近において,バスの乗客等であった原告ほ か7名に対して8月28日当時の勤務先や出勤及び帰宅の状況等に関する聴き取り等を行ったところ,その際に原告が行った同日頃の勤務先及び出勤状況等に関する説明は虚偽であり,このことは,遅くとも10月10日頃には判明していた。(乙562,563,608)⑹ 別件窃盗事件による逮捕 原告は,10月10日,9月3日頃に千葉県柏市内の商店の従業員寝室においてズボン1着及びワニ皮バンド1本(価格合計9000円相当。なお,当時の大卒者の平均初任給の額は2万6200円であった。)を窃取した(別件窃盗事件)という被疑事実で逮捕された(別件窃盗事件逮捕)。 別件窃盗事件は,原告が,AA及びBC と共に,知人であるAPの勤務す る上記商店の従 は2万6200円であった。)を窃取した(別件窃盗事件)という被疑事実で逮捕された(別件窃盗事件逮捕)。 別件窃盗事件は,原告が,AA及びBC と共に,知人であるAPの勤務す る上記商店の従業員寝室に宿泊し,朝方に同室を出る際,原告が換金目的で窃盗に及んだものであった。(乙164,460)⑺ 窃盗の余罪事件についての自白原告は,10月10日,別件窃盗事件について自白した上,同日以降,以下のアないしコの各窃盗の余罪(以下,アないしコの各窃盗の余罪を併せて「余 罪窃盗各事件」という。)を含む窃盗の余罪についても自白した。 ア昭和41年3月13日,東京都文京区内のホテルの客室において,現金7万円を窃取した事件イ昭和41年3月28日,神奈川県相模原市内の研究所の寮において,現金9万円を窃取した事件 ウ 3月中旬頃,京都市内のホテルのガレージにおいて,自転車1台(時価約2万円相当)を窃取した事件エ 6月中旬頃,東京都台東区内の会社の更衣室において,現金1万円を窃取した事件オ 7月初旬頃,東京都渋谷区内の公営住宅の管理事務所において,現金1万 6000円を窃取した事件 カ 7月2日頃,東京都江東区内の会社事務所において,現金2万円を窃取した事件キ 7月14日,東京都台東区内の会社において,現金2万円を窃取した事件ク 7月26日,東京都台東区内の会社の社員寮において,現金7000円を窃取した事件 ケ 7月末頃,東京都江東区内の都営住宅の管理事務所において,現金1万円を窃取した事件コ 10月10日,東京都新宿区内の飲食店において,現金1万5000円を窃取した事件⑻ 原告の別件窃盗事件についての勾留 検察官は,10月12日,別件窃盗事件について勾留を請求し コ 10月10日,東京都新宿区内の飲食店において,現金1万5000円を窃取した事件⑻ 原告の別件窃盗事件についての勾留 検察官は,10月12日,別件窃盗事件について勾留を請求し,裁判官が発付した勾留状を執行して原告を取手署に勾留した(別件窃盗事件勾留)。(乙164)⑼ 原告に対する取調べ等ア茨城県警のAU警察官は,10月10日から別件窃盗事件や余罪窃盗各事 件に関する取調べを実施し,本件強盗殺人事件に関連して,同月13日午後から同月15日午前までの実質2日間にわたり,8月24日頃から同月30日頃までの原告の行動に関する取調べを行った。 イまた,茨城県警は,原告の供述の真偽を確認するとともに,原告が本件強盗殺人事件に関与した可能性の有無を判断するため,10月15日午後,原 告に対して本件強盗殺人事件の犯行状況等に関する質問を用いたポリグラフ検査(本件ポリグラフ検査)を実施することとした。 本件ポリグラフ検査の結果については,同日から同月17日まで鑑定が行われ,その鑑定の結果は,下記のとおりであった。(乙446,453)記 「第六質問表(対照質問法による検査)C・Q・T法 関係質問である質問③(・・・殺したのは誰か知っているかね)および質問⑤(・・・犯人の仲間にはいっているかね)において,心脈波および呼吸波に反応が表出したことが認められ,対照質問である質問⑧(・・・皆殺すという手紙を出しているかね)においては,ほとんど反応の表出は認められなかった。因って,右関係質問と対照質問における反応量を比較対 照すれば,関係質問における反応量がより大であるので,右関係質問における反応は,虚偽の返答により表出したものと推認しても無理はないと判断される。 (中略) おける反応量を比較対 照すれば,関係質問における反応量がより大であるので,右関係質問における反応は,虚偽の返答により表出したものと推認しても無理はないと判断される。 (中略)十一.結論 以上を総合するに,第六質問表における表出反応は,虚偽の返答により表出したものと推認されるところであり,他の六種の検査質問表における前項の反応表出状況を考察すると,各質問表とも,その表出反応は,虚偽の返答が介在したことに因る心理的動揺に起因する疑いを十分残しているが,前項に説示のとおり,反応量が希薄であること ならびに,反応表出の分岐などの傾向が認められるため,それらの反応のいづれが虚偽の返答に因り表出したものであるかを明確に推定することは困難である。」ウ AU警察官は,本件ポリグラフ検査終了後,原告の取調べを開始し,8月中旬以降の行動等を中心に聴取したところ,原告は,遅くとも10月15日 午後5時30分頃には,本件強盗殺人事件について自白を開始した。同日時点における原告の自白の概要は,以下のとおりである。(乙328)8月28日午後に取手競輪に行った後,同日午後6時40分頃我孫子駅発の下り成田線列車にAA及び知人らと一緒に乗車して同日午後7時過ぎに布佐駅に到着した。 その後,栄橋を渡って知人と別れてAAと二人きりになった際,AAと 相談して,金貸しをしている被害者方に行って翌日の取手競輪の軍資金を借りることになった。 同日午後7時半過ぎに被害者方に金を借りに行ったが断られ,一旦は諦めてその場を立ち去ったものの,やはり諦めきれずに同日午後9時頃再度被害者方に金を借りに行った。 しかし,被害者から強い口調で借金を断られ,被害者の態度にAAが怒り出し,AAが被害者の顔面を殴るな 場を立ち去ったものの,やはり諦めきれずに同日午後9時頃再度被害者方に金を借りに行った。 しかし,被害者から強い口調で借金を断られ,被害者の態度にAAが怒り出し,AAが被害者の顔面を殴るなどの暴力を振るって被害者方に上がり込み,更に被害者に暴力を振るって被害者を押し倒して馬乗りになったので,AAと一緒になって被害者を殺害してでも現金を奪おうと決意し,原告が被害者の足を白ワイシャツで縛り,AAが被害者の口中に白い布を 押し込んだ上で顔面を殴るなどした結果,被害者が死亡した。 原告は,被害者の死体を見て怖くなって逃げ,途中,後から来たAAと合流したが,AAは被害者方から盗んだ財布と財布の中の現金を見せてくれた。 帰りは成田線で我孫子駅まで戻り,常磐線に乗り換えて柏駅に行ったが, その途中の車内でAAから分け前として千円をもらった。 柏駅で列車を降りてAAとは別れ,同日夜は柏駅近くの旅館に宿泊した。 エ原告は,10月20日夜に行われたAU警察官らによる取調べにおいて,本件強盗殺人事件の犯行について否認したが,遅くとも同月22日の取調べにおいて,再度自白を開始した。(甲B30,乙569,570) ⑽ AAの逮捕及び勾留ア 8月29日頃,c 町内の路上において,通行人であったBF が殴る蹴るの暴行を加えられるという事件(別件暴力行為等事件)が発生した。 イ捜査の結果,別件暴力行為等事件の被疑者として,AA,BC 及びBDが挙げられ,8月30日,別件暴力行為等事件に係る同人らに対する逮 捕状が発付された。 BC 及びBD は,10月初め頃,AAは,同月16日,別件暴力行為等事件の被疑事実でそれぞれ逮捕された(別件暴力行為等逮捕)。(乙165,453)ウ AAは, 捕状が発付された。 BC 及びBD は,10月初め頃,AAは,同月16日,別件暴力行為等事件の被疑事実でそれぞれ逮捕された(別件暴力行為等逮捕)。(乙165,453)ウ AAは,別件暴力行為等事件の犯人であることを自白し,10月17日,検察官による勾留請求がされ,裁判官が発付した勾留状の執行により水海道 署に勾留された(別件暴力行為等勾留)。(乙165,348)エ茨城県警は,AAと共謀して本件強盗殺人事件の犯行を行った旨の原告の自白が存在したことから,10月16日夜から,AAに対する本件強盗殺人事件への関与についての取調べを開始した。 AAは,同月17日午後,原告と共に本件犯行を行った旨自白した。その 自白の概要は,以下のとおりである。(乙348)8月28日午後3時頃に原告の兄であるALのアパートである光明荘を出て,西武新宿線野方駅から列車を乗り継ぎ,同日午後4時40分頃に国鉄我孫子駅に到着した。顔見知りの通勤客が我孫子駅に来る同日午後6時頃まで同駅で時間を潰していた。我孫子駅では原告とも会い,原告は取手 競輪に行っていたと話した。原告及びAAは,同日午後6時47分発の成田線列車に乗り,同日午後7時過ぎに布佐駅で下車した。 布佐駅からは原告や他の友人らと共に利根川に架かる栄橋まで行った。 栄橋を渡ったバス停のところで他の友人と別れ,原告と二人きりになった際,原告から,翌日の取手競輪の軍資金を手に入れるため被害者から借金 をする考えだと打ち明けられた。AAは,本当は原告が競輪の軍資金以外にも兄ALの光明荘の家賃として使う金を借りる意図だろうと思ったが,自分も金を借りられればいいと考え,原告の提案に乗った。 その後,原告と一緒に被害者方に行き,原告が被害者に借金の申込みをしたが被害者 ALの光明荘の家賃として使う金を借りる意図だろうと思ったが,自分も金を借りられればいいと考え,原告の提案に乗った。 その後,原告と一緒に被害者方に行き,原告が被害者に借金の申込みをしたが被害者から拒否された。原告及びAAは,一旦は借金を諦めて栄橋 付近まで戻ったものの,原告がどうしても金を借りたいと言って被害者方 に一緒に来てくれと言ったため,再度,二人で一緒に被害者に金を借りに行くことになった。 被害者方を再度訪問し,原告が被害者方室内に入っていったところ,被害者方室内から,被害者と原告が金の貸し借りで揉めて怒鳴る声が聞こえた。AAは,それに業を煮やし被害者方室内に入った。被害者方8畳間内 では,原告が被害者の胸ぐらをつかんでいたので,AAが被害者の下腹部を蹴飛ばすと,原告も被害者の顔面を手拳で殴打し,被害者が転倒した。 被害者が助けを求めて声を上げたため,AAは被害者を黙らせるため被害者の上に馬乗りになって手で被害者の口を塞いだ。すると,原告が布を手渡してきたので,その布を被害者の口中に押し込んで声を出せないように し,その際には原告も被害者の頭を押さえ付けていた。被害者が抵抗したのでAAが被害者の足を押さえたところ,原告が布で被害者の両足の膝辺りを縛った。その後,原告が被害者の喉辺りを両手で5分ほど押さえ付けた結果,被害者が死亡したが,被害者の死に顔を見るのが嫌で,原告及びAAで協力して被害者の死体の頭部に布団を掛けて顔を隠した。 その後,被害者方室内を物色して財布を奪い,逃走した。奪った金約10万円の半分位を原告に分け前として渡した。その夜は,原告とは我孫子駅か千住駅で別れ,自分は光明荘に宿泊した。 ⑾ 本件強盗殺人事件での逮捕及び勾留原告及びAAは,10月23日,本件強盗殺人事 万円の半分位を原告に分け前として渡した。その夜は,原告とは我孫子駅か千住駅で別れ,自分は光明荘に宿泊した。 ⑾ 本件強盗殺人事件での逮捕及び勾留原告及びAAは,10月23日,本件強盗殺人事件の被疑事実により逮捕さ れたが(本件逮捕),両名とも本件逮捕後も本件犯行を認め,同月25日,原告は取手署に,AAは水海道署に,それぞれ勾留された(本件勾留)。(甲B48,49,乙166,167)⑿ 本件強盗殺人事件についての処分保留原告は,11月8日に土浦拘置支所に移監されたところ,遅くとも同月13 日のAR検察官の取調べの際には,本件犯行を否認するに至り,同日,本件強 盗殺人事件につき,処分保留で釈放された。 なお,原告は,同日,余罪窃盗各事件のうち前記⑺カの事件を除く9件の事件について起訴されたところ(前記⑺カの事件については,昭和43年1月10日に起訴された。),検察官が起訴事実について原告の勾留を求め,裁判官から勾留状が発付されたため,原告は,引き続き,土浦拘置支所において身柄 を拘束されていた。(甲A1,4,乙383,457)⒀ 原告による再度の自白ア原告は,12月1日,土浦拘置支所から取手署留置場に再度移監され(以下,拘置所から警察署の留置場への移監を「逆送」という。),AU警察官らによる取調べを受けたところ,同月4日,再び本件犯行を自白した。(乙3 46,347,457)イ AQ検察官は,12月15日以降,本件強盗殺人事件に関して原告の取調べを行ったところ,当初の数日間,原告は,本件犯行を否認し,本件犯行時には東京都内にいたなどとのアリバイ主張をしたが,同月19日には,再度,本件犯行を自白するに至った。(乙308ないし313) ウ原告が捜査の過程で最終的にした自白の 行を否認し,本件犯行時には東京都内にいたなどとのアリバイ主張をしたが,同月19日には,再度,本件犯行を自白するに至った。(乙308ないし313) ウ原告が捜査の過程で最終的にした自白の概要は,以下のとおりである。(乙308ないし313)8月28日午後7時5分に布佐駅で下車し,一人で歩いていたところ,栄橋の石段で,連れの男二人といたAFの脇を抜けた際,「元気いいな兄貴。」と言われたことから,振り向いて「何だこの野郎。」と言った。 その後,栄橋のたもとでAAと会い,お互いに金がないなどと話をしていたところ,原告が被害者を知っていたことから,相談の上,被害者に金を借りに行くことになった。 原告及びAAは,被害者方に赴き,原告が被害者に借金を申し込んだが断られ,一旦は引き返したものの,AAからもう一度金を借りに行こうと 言われ,競輪の金欲しさから,原告もこれに応じて,再度,被害者に金を 借りに行くことになった。 被害者に再度借金を申し込もうとしたが,拒絶され,その後,AAと被害者が口論となり,AAが被害者の顔面か胸の辺りを殴り,原告も興奮して被害者の足をつかんで仰向けにひっくり返すと同時に,AAが被害者の身体に馬乗りになった。ここまでやったら被害者に顔を知られているので, 殺して金を取って逃げようという気になり,AAに言われ,タオルとワイシャツで被害者の足を緊縛し,AAに言われ,パンツを使ったかははっきりしないものの,被害者の喉を押さえ付け,その時には,被害者の口中に白い布が詰められていた。 被害者が死亡したが,顔を見られているようで気持ちが悪かったため, 死体に布団をかぶせ,二人で室内を物色し,自分はロッカーから千円札を何枚か持ち出し,被害者方から逃げ出した後,AAから4万円の分 害者が死亡したが,顔を見られているようで気持ちが悪かったため, 死体に布団をかぶせ,二人で室内を物色し,自分はロッカーから千円札を何枚か持ち出し,被害者方から逃げ出した後,AAから4万円の分け前をもらった。その日の夜は二人とも兄ALのアパートに泊まった。これらの金は,翌日,取手競輪で使ってしまった。 ⒁ AAの処分保留 AAは,11月6日に土浦拘置支所に移監されたが,遅くとも同月13日のAR検察官の取調べの際には本件犯行を否認するに至り,同日,本件強盗殺人事件につき,処分保留で釈放された。(乙457)なお,AAは,同日,以下のアないしオの暴行,傷害及び恐喝事件により起訴され,検察官が起訴事実についてAAの勾留を求め,裁判官から勾留状が発 付されたため,引き続き,土浦拘置支所に身柄を拘束された。(甲A2)ア 1月3日頃,千葉県印旛郡内のパチンコ店前路上において,暴行を加えた事件イ 3月27日,茨城県稲敷郡内の飲食店付近において,暴行を加え,治療約2週間を要する打撲傷等の傷害を負わせた事件 ウ 5月8日頃,茨城県北相馬郡内のバス停留所付近において,脅迫をして, 同日及び同月9日,それぞれ現金2000円を喝取した事件エ 8月29日,千葉県東葛飾郡内の飲食店において,脅迫をして,約1000円相当の飲食物を喝取した事件オ 8月31日,茨城県北相馬郡内において,脅迫をして,9月1日,千葉県東葛飾郡内路上において,現金2500円を喝取した事件 ⒂ AAによる再度の自白ア AAは,12月1日,土浦拘置支所から土浦署に逆送され,AX警察官らの取調べを受けた。(乙377,457)イ AAは,12月13日,AQ検察官による本件強盗殺人事件に関する取調べを受けた際,当初は犯行を否認した 日,土浦拘置支所から土浦署に逆送され,AX警察官らの取調べを受けた。(乙377,457)イ AAは,12月13日,AQ検察官による本件強盗殺人事件に関する取調べを受けた際,当初は犯行を否認したが,数時間後には,本件犯行を再度自 白した。(乙316ないし321,376)ウ AAが捜査の過程で最終的にした自白の概要は,以下のとおりである。(乙316ないし321,323ないし325)8月28日午後6時47分我孫子駅発下り列車に乗車している原告を見付け,原告と話をしていたところ,ADに声を掛けられ,その後,原告と 離れ,AHとAGに話し掛けた。 同日午後7時5分頃,布佐駅で同列車から降車し,栄橋のたもとで原告と一緒になり,原告が金を借りてくるからなどと言ったことから,原告に付いて行くことになった。 原告が被害者方に入って行き,自分は道端に立っていたところ,原告が 帰って来て金を借りられなかったと告げ,栄橋のたもとに戻ったが,原告がどうしても金が欲しい様子であったので,被害者から金を借りてきたらいいのではないかと告げたところ,再度,被害者に金を借りに行くことになった。 原告が被害者方に上がり,待っていたところ,口論が始まったような声 と物音がしたので,中を見ると,原告と被害者とが揉めており,被害者の 言動に腹を立てたことから,AAが被害者の腹部を足蹴にし,原告も被害者の顔面を殴打した。その後,倒れた被害者の上にAAが馬乗りになり,原告と二人で顎を押さえるようにして被害者の口を開け,白っぽい下着のような物を口中に押し込み,さらに,被害者の足を押さえ付けた上,原告が被害者の足をタオルとワイシャツで緊縛した。被害者の手足を押さえ付 けていたところ,原告が「殺しちゃおう。」とか「やっちゃおう。」 な物を口中に押し込み,さらに,被害者の足を押さえ付けた上,原告が被害者の足をタオルとワイシャツで緊縛した。被害者の手足を押さえ付 けていたところ,原告が「殺しちゃおう。」とか「やっちゃおう。」などと言い出し,しばらくすると,被害者の体の力が抜け,原告が被害者の首に白っぽい布を巻いて両手で上から押さえ付けていた。 その後,室内を物色し,布団の間から,千円札50枚以上が入った財布を持ち出し,被害者方を立ち去った。財布は利根川に投げ捨て,奪った金 は後で数えたら10万円位あり,原告は2万円位取ってきたようだったので,半分ずつになるよう原告に4万円位を渡した。 ⒃ 被害者方の遺留指掌紋及び人毛前記⑶記載の被害者方の検証に際し,遺留指掌紋38個,人毛8本が採取されたところ,その遺留指掌紋38個のうち,5個が被害者の指紋,2個が第一 発見者らの指紋と一致し,残りの31個は対照不能であった。また,人毛8本のうち,1本は被害者の頭毛であると思料され,2本は被害者の頭毛と類似するものと思料されるが,他の5本は,原告及びAAの頭毛と類似しているとはいえず,かつ,被害者の頭毛に類似する性質を有するも判定し得えない旨の鑑定結果が得られた。 さらに,上記検証の数日後,被害者方の便所の窓の桟と認められる木材から指紋5個が採取されたところ,そのうち2個は,検証を行った警察官の指紋と一致し,残り3個は対照不能であった。(乙424ないし427,496,497)⒄ 目撃供述等 ア ADの供述 ADは,原告と同じ町内に居住して以前から顔見知りであり,AAとも本件強盗殺人事件の1,2年前頃に通勤時等に知り合った者である。 ADは,10月23日に行われた警察官による事情聴取,11月20日に行われたAR検察官によ に居住して以前から顔見知りであり,AAとも本件強盗殺人事件の1,2年前頃に通勤時等に知り合った者である。 ADは,10月23日に行われた警察官による事情聴取,11月20日に行われたAR検察官による事情聴取及び12月17日に行われたAQ検察官による事情聴取のいずれにおいても,8月28日,我孫子駅のホームで,午 後6時47分発成田行き下り列車の発車前に,ホームに立っていたAAが列車内の座席に座っていた原告と窓越しに立ち話をしているのを見掛け,AAと挨拶を交わした旨,その出来事が同日であることは,脱線事故の翌日で,当日の朝の成田線が混乱しており,会社の車を手配してもらい出勤するなどしたことから,その日の夜の出来事として記憶がある旨供述し,その内容が 調書に録取された。(乙540ないし543)イ AE の供述AE は,昭和21年頃から布佐駅駅員として出札及び改札等の業務に従事し,原告については乗客として顔に見覚えがある程度であり,AAについては数回無札(無人駅から乗車したと述べて乗車券を所持せずに運賃を払う こと)をした者として顔と姓を知っていた者である。 AE は,8月30日の警察官による聞き込みにおいて,同月28日,布佐駅で改札係として勤務していたところ,午後7時10分布佐駅着の下り列車からAAが仲間数名と降車した旨供述し,その内容を記した捜査報告書が作成された。 また,AE は,10月19日に行われた警察官による事情聴取において,8月28日午後7時10分着の下り列車が到着後出発してから,AAが布佐駅玄関脇付近で数名と立ち話をしていたのを目撃した旨,11月20日に行われたAR検察官の事情聴取において,8月28日午後7時5分着の下り列車の乗客が下車した後,AAが駅正面入口のベンチに腰掛けているのを 関脇付近で数名と立ち話をしていたのを目撃した旨,11月20日に行われたAR検察官の事情聴取において,8月28日午後7時5分着の下り列車の乗客が下車した後,AAが駅正面入口のベンチに腰掛けているのを見た 旨,11月30日に行われたAQ検察官の事情聴取において,自己の勤務状 況や脱線事故と関連付けて,布佐駅でAAを目撃したのが8月28日に間違いないと思われる旨それぞれ供述し,その内容がそれぞれ調書に録取された。 (乙544ないし547)ウ AGの供述AGは,AAとは中学校の同級生で以前から面識があり,原告のことは顔 を知っている程度であった。また,AHとは近所に住む友人で,AFとは面識はなかった。 AGは,10月22日の警察官による事情聴取において,日付ははっきり記憶していないものの,8月末頃,成田線の列車の中でAAと行き合ったことが二,三回あるとする一方で,同月28日の出来事として,同日午後6時 47分我孫子駅発下り列車にAHと乗車していたところ,AAと一緒になり,布佐駅で降車した後,栄橋の方に向かって歩いていた際,栄橋の石段を後ろから勢いよく登っていく男がいたので,AHが「力あんな。」と言ったら,その男が「何だ。」と振り返って言ったことがあった旨供述し,その内容が調書に録取された。 また,AGは,11月18日のAR検察官による事情聴取において,8月28日午後6時47分我孫子駅発下り列車にAHと乗車したことは間違いなく,そこにAAが来て何か話した記憶があるが,AAとは同列車でよく会うため,同日も,AAと同列車で会ったと断言するのは難しい旨,一応の記憶としては,同日,AAと会った後,AH,AAと3人で栄橋の方へ歩いて行 った際,原告が元気よく石段を駆け上がって行き,AHが「力あるな。」などと 列車で会ったと断言するのは難しい旨,一応の記憶としては,同日,AAと会った後,AH,AAと3人で栄橋の方へ歩いて行 った際,原告が元気よく石段を駆け上がって行き,AHが「力あるな。」などと言うと,原告が「何だ。」と怒ったという一連の出来事があったとの記憶があるが,それが同日午後7時過ぎであったかどうかははっきり言えない旨供述し,その内容が調書に録取された。 さらに,AGは,12月17日のAQ検察官による事情聴取において,8 月28日の勤め帰りの際に,我孫子駅の成田線ホームから午後6時47分発 の下り列車が出る頃,AHと一緒にいたときにAAと一緒になり,布佐駅で降車した後,栄橋の石段の途中で,後方から元気よく石段を駆け上がって行った原告に対し,AHが「力あるな。」と声を掛けたところ,原告が「何だ。」と怒りながら振り返った旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙275,528ないし530) エ AHの供述AHは,AAとは同じ中学校の1年先輩として面識があり,原告については顔を知っている程度で,AFとは面識があった。 AHは,10月20日の警察官による事情聴取において,8月28日に成田線に乗車したことはない旨供述し,その内容が調書に録取されたが,10 月22日,再度,警察官から事情聴取を受けた際には,勤務先の出勤カード等により記憶を喚起したところ,8月28日午後6時50分頃我孫子駅発の成田線で帰宅するときにAAと会ったように思う旨供述し,その内容が録取された。 AHは,12月27日のAQ検察官による事情聴取において,8月28日 午後6時47分我孫子駅発の列車の中でAAと出会った気がするが,その後,布佐駅まで一緒だったかははっきりせず,布佐駅に着いてからAGと栄橋に向かい,その際,AF 事情聴取において,8月28日 午後6時47分我孫子駅発の列車の中でAAと出会った気がするが,その後,布佐駅まで一緒だったかははっきりせず,布佐駅に着いてからAGと栄橋に向かい,その際,AFも一緒であり,石段の途中で後ろから来た小柄の男が脇を抜けて駆け上がるように登って行ったことから,「脚力あんなあ。」と声を掛けたところ,その男が振り向いて「何。」と言って先へ行ってしまい, AFに「あの野郎誰だい。」と聞いたら,「私らと同級生でAL の弟だ。」と教えてくれた旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙273,531ないし533)オ AFの供述AFは,原告とは小中学校の同級生で面識があり,AAについても学校は 違うものの氏名は知っていた者である。 AFは,10月24日の警察官による事情聴取において,8月28日午後7時5分,布佐駅で下車し,AHらと徒歩で帰宅中,栄橋の石段において,前を歩いていた人が,石段を登りきった際,栄橋の方から歩いていた人と擦れ違いざまに言い合って,振り向きながら怒ったように「馬鹿野郎。」などと言い,顔を見ると面識のある原告だと分かった旨,この出来事があったの が,脱線事故があった翌日であると記憶しており,同月28日で間違いなく,栄橋のたもとで原告に会ったのは,同日午後7時15分か20分頃だったと記憶している旨供述し,その内容が調書に録取された。 また,AFは,10月25日の警察官による事情聴取において,石段の一件につき,栄橋の方から来た人が原告と擦れ違ったというのは思い違いであ り,自分の後ろから石段を登っていたAHが「元気いいなー。」と言い終わった際,原告が石段を登りきり,振り向きながら「馬鹿野郎。」と言ったのが正しい旨従前の供述を一部訂正する供述をし,その内容が調 り,自分の後ろから石段を登っていたAHが「元気いいなー。」と言い終わった際,原告が石段を登りきり,振り向きながら「馬鹿野郎。」と言ったのが正しい旨従前の供述を一部訂正する供述をし,その内容が調書に録取された。 AFは,11月16日のAR検察官による事情聴取において,石段の一件 につき,自分の前を行く男が,栄橋の石段を登りきった辺りで,石段を下りてくる二人連れの男とすれ違い,言い合いになり,前を行く男が振り返り,「馬鹿野郎。」と叫んだ際,顔を見て,その男が原告だと分かった旨述べ,再度,当初の供述と同様の内容が調書に録取された。 AFは,12月17日のAQ検察官による事情聴取において,石段の一件 につき,原告は,栄橋の石段の上から降りて来た二人連れの男と口論となり,「馬鹿野郎。」と言いながら振り返り,自分と横に並んで一緒に登っていたAHが「元気いいなあ。」と声を掛けた旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙534ないし539)カ AIの供述 AIは,8月30日の警察官による聞き込みにおいて,同月28日午後7 時30分頃から同日午後8時頃までの間,被害者方前を自転車で通り掛かった際,被害者方道路側に男が一人立っており,もう一人別の男が部屋の中にいる被害者と話をしているのを目撃した旨,道路側に立っていた男は「年令二十二~三才の感じ,ヤセ型のようで頭髪は伸していた,服装はよく判らなかった」,被害者と話をしていた男は,「年令二十五~六才の感じ,頭髪は 伸していた,服装はよく判らなかった」旨供述し,その内容を記した捜査報告書が作成された。 また,AIは,10月16日の警察官による事情聴取において,8月28日午後7時40分頃,被害者方前を自転車で通ったとき,被害者方の玄関に向かって左角の所に,「年令二 た捜査報告書が作成された。 また,AIは,10月16日の警察官による事情聴取において,8月28日午後7時40分頃,被害者方前を自転車で通ったとき,被害者方の玄関に向かって左角の所に,「年令二十七から三十才位で,身長一メートル七十位, やせ型面長で,髪は五センチくらいに伸ばした男」がおり,被害者方勝手口の軒下にある台石の上に,「年が二十才から三十才位で身長が同じくらいでやせ型,髪が五センチ位に伸びた男」がいて,被害者と話している様子であった旨供述し,その内容が調書に録取された。 さらに,AIは,10月29日の警察官による事情聴取において,同月1 6日の事情聴取において供述した二人組の年齢,体格等は,飽くまでも見た感じで話したことであって,実際には余りよく見なかったので顔形などはよく分からないが,二人の男が被害者方前に立っていたことや,道路側に立っていた男が若くて背のすらっとした人であったことははっきり記憶している旨供述し,その内容が調書に録取された。 そして,AIは,11月8日のAR検察官による事情聴取においても,8月28日午後7時40分頃と思うが,被害者方前を通り掛かると,西南の角の所に南の方を向いて背の高い若い人が立っており,その人の身長は170センチメートルくらいと思った旨,もう一人若い人が被害者方の勝手口の踏み石の上に立っており,背丈は表に立っている人のようには大きくなかった と思う旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙280,627ないし 629)キ AJの供述AJはAIの母であり,被害者方の近所に住み,被害者に大工仕事を依頼したことがあった者である。 AJは,8月31日の警察官による聞き込みにおいて,同月28日午後7 時30分頃,被害者方の玄関ガラス戸前に「年令二十才 被害者方の近所に住み,被害者に大工仕事を依頼したことがあった者である。 AJは,8月31日の警察官による聞き込みにおいて,同月28日午後7 時30分頃,被害者方の玄関ガラス戸前に「年令二十才位,やせ型,身長一・六四米位」の男がおり,奥のガラス戸の所で,知らない男と被害者が話をしていたが,その男については人相,特徴などは不明である旨供述し,その内容を記した捜査報告書が作成された。 また,AJは,10月16日の警察官による事情聴取において,8月28 日午後7時5分頃から同日午後7時20分頃までの間,被害者方前で,被害者方玄関の西角の所に道の方を向いて「年令二十二,三才から二十五才位,丈五尺四・五寸位,中肉で面長,あごがこけており,眼鏡はかけて」おらず,「頭の毛は前側が一寸くらいの長さに伸び」た男が立っており,もう一人,顔や服装などは覚えていない男が,勝手口軒下にある土台の上に立って,家 の中にいる被害者と向き合って何か話をしている様子だった旨供述し,その内容が調書に録取された。 さらに,AJは,10月31日の警察官による事情聴取において,8月28日,被害者方前で二人の男を目撃した時間につき,正確な時間は不明であるが,従前供述した時間よりも遅くなっているのは確かであり,その旨訂正 してほしい旨申し立てるとともに,目撃した男の年令,体格等につき,現在の記憶としては,「二十歳から三十歳位までの若い人のような感じで,身体は,痩型で,背の高さは,私より一尺位高い」と思い,自分の身長はAIと同じくらいであり,AIの身長は147センチメートルである旨供述し,その内容が調書に録取された。 加えて,AJは,11月8日のAR検察官による事情聴取において,8月 28日午後7時24,25分頃だったと思うが,被害者方前を チメートルである旨供述し,その内容が調書に録取された。 加えて,AJは,11月8日のAR検察官による事情聴取において,8月 28日午後7時24,25分頃だったと思うが,被害者方前を通ったところ,被害者方の角にもたれるようにして,身長は自分より一尺くらい高い男がおり,もう一人の若い男が被害者方勝手口のガラス戸を開けて立っている被害者に向かって立っていたが,勝手口の踏み石の上には乗っておらず,被害者とは高低差があった旨供述し,その内容が調書に録取された。 そして,AJは,12月16日のAQ検察官による事情聴取において,8月28日午後7時30分前頃,被害者方勝手口で,被害者に向かって立ち話をしている男が目につき,割に小柄だと思った旨,被害者方の角口に寄り掛かって立っていたもう一人の男に気付いたが,その男は,大柄とは感じず,普通だと思った旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙619,62 3ないし626)ク AKの供述AKは,被害者方の近所に住み,被害者と面識のあった者である。 AKは,10月27日の警察官による事情聴取において,8月28日午後7時40分過ぎ頃,被害者方前を自転車で通り掛かった際,被害者方出入口 に近い所に,背のすらっとした一人の男が立っているのに気付いた旨,被害者方に至る前,顔見知りの女性と擦れ違った旨供述し,その内容が調書に録取された。また,11月1日の警察官による事情聴取において,8月28日夜,被害者方前に至る前に擦れ違った人物について,誰であったか分からない旨従前の供述を訂正する供述をし,その内容が調書に録取された。 さらに,AKは,12月17日のAQ検察官による事情聴取において,8月28日午後7時30分過ぎ頃,被害者方を自転車で通り掛かった際,入り口の柱が立っ 供述をし,その内容が調書に録取された。 さらに,AKは,12月17日のAQ検察官による事情聴取において,8月28日午後7時30分過ぎ頃,被害者方を自転車で通り掛かった際,入り口の柱が立っている脇辺りに背が高い人だなと思った男が一人立っているのを見掛けた旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙518ないし521) ケ ACの供述 ACは,被害者方の近所でクリーニング店を営んでいて被害者とは面識があり,また,原告については中学校の頃から店に出入りしていたため顔と姓を知っており,AAについても本件強盗殺人事件の数か月前から顔と姓を知っていた者である。 ACは,9月3日の警察官による聞き込みにおいて,クリーニング品の配 達のため,8月28日午後7時30分頃,バイクで家を出て,給油後,洗濯物を配達してから,布佐モータースに立ち寄り,テレビ番組を見た後布佐モータースを出て,被害者方前を通り掛かった旨述べたが,その際,不審者を目撃した旨を申し立てることはなかった旨の捜査報告書が作成された。 また,ACは,9月20日の警察官による聞き込みにおいて,ACが,上 記の経路で被害者方前を通り掛かった際の通行人等の出会った者については言葉を濁したが,「AAの仲間を捜査してみたら。」などと述べた旨の捜査報告書が作成された。(乙502,503)⒅ 本件強盗殺人事件についての起訴及び勾留質問ア原告及びAAは,12月28日,本件強盗殺人事件について水戸地裁土浦 支部に起訴された(本件起訴)。(甲A3)イ検察官が,上記公訴事実について原告及びAAの勾留を求めたところ,その勾留質問において,原告は公訴事実は間違いない旨陳述し,他方で,AAは公訴事実を否認し,8月28日に被害者方に行ったことはない旨陳述した。 上記公訴事実について原告及びAAの勾留を求めたところ,その勾留質問において,原告は公訴事実は間違いない旨陳述し,他方で,AAは公訴事実を否認し,8月28日に被害者方に行ったことはない旨陳述した。 (乙361,386) ⒆ 本件起訴後に得られたACの供述ANは,昭和43年2月29日,警察官に対し,「実はdi のクリーニング店のCU さんが家へ来て言ったのですが,AB さんのところに犯人のAA と甲の二人がいるのを見ている。これを当時言うと二人に引き合わせられたり,証人に引張り出されるので警察の人には言わなかったん だが,あの晩二人がいたのを見たことは本当だ。気付いている人は私のほかに もいますが誰も言わない様子です,と申して話しをしてくれた」と申告したため,改めてACの事情聴取が行われた。 ACは,同年3月13日のAQ検察官による事情聴取において,8月28日午後7時30分頃,バイクで自宅を出て,洗濯物を届けた後,被害者方前を通り掛かった際,被害者方角口手前の道端に背の高い男と背の低い男の二人組を 見掛けた旨,その際,ライトを点けて時速30キロメートル程度で通行していたが,背の低い方の男が振り返り,顔が見え,見たことがある顔だと分かったが,その場では名前を思い出せなかったものの,後に原告だと分かった旨,背の高い方の男は,後ろ姿だけ見て通過したが,短髪と大柄な体格から,AAらしいと思い付いた旨,その後,布佐モータースに立ち寄り,テレビ番組を見て, 同日午後8時55,56分頃,布佐モータースを出たが,その帰路にも,被害者方前を通り掛かり,被害者方の角の所に,背の高い男と背の低い男の二人組が,道の左右に分かれて立っているのを見た旨,その際は,距離があったため,二人組の見分けは付かなかった旨供述し の帰路にも,被害者方前を通り掛かり,被害者方の角の所に,背の高い男と背の低い男の二人組が,道の左右に分かれて立っているのを見た旨,その際は,距離があったため,二人組の見分けは付かなかった旨供述し,その内容が調書に録取された。(乙447,505,511,512) ⒇ 確定審第一審の公判及び判決ア公判経過の概略 原告及びAAの認否等昭和43年2月15日に開かれた確定審第一審の第1回公判期日において,原告は,余罪窃盗各事件に係る公訴事実については,いずれも認め, 本件強盗殺人事件に係る公訴事実については,「私の犯行ではありません。 私はそこへは行ったこともないし,殺したということもありません。」と述べて否認し,AAは,8件の暴行,傷害,恐喝等の公訴事実のうち1件を否認して残りを認めつつ,本件強盗殺人事件に係る公訴事実については,「自分はそこへ行ったこともないし,殺したこともありません。私の犯行 ではありません。」と述べて否認した。 また,本件強盗殺人事件発生当時のアリバイについて,原告は,8月28日午後7時頃から同日午後8時頃まで,東京都新宿区内の飲食店「養老の瀧」で飲食し,同日午後9時頃,東京都中野区内にあるバーである「ジュン」に立ち寄った後,同日午後10時頃から同日午後10時30分頃,ALが借り受けていた同区内にあるアパート光明荘に戻って宿泊していた 旨主張し,AAは,同日午後7時頃から同日午後10時30分頃まで同区内にある映画館で映画を見ていた旨主張した。(乙392,393,395,403ないし405,415)証拠調べ等の概要確定審第一審では,AD,AE ,AG,AH,AF,AI,AK及び ACの証人尋問がそれぞれ実施されたほか,原告及びAAの取調べを行 5,403ないし405,415)証拠調べ等の概要確定審第一審では,AD,AE ,AG,AH,AF,AI,AK及び ACの証人尋問がそれぞれ実施されたほか,原告及びAAの取調べを行った警察官等の証人尋問並びに原告及びAAに対する被告人質問が実施された。 証言の要旨確定審第一審におけるAD,AE ,AG,AH,AF,AI,AK及 びACの証言の要旨は,それぞれ,以下のとおりである。(乙245,247ないし249,265,266,272,273,275,280,282)① ADADは,8月28日,午後6時47分我孫子駅発成田線の列車に乗車 したが,乗車の前,ホームにいたAAが列車内にいた原告と向かい合っており,AAから「おお。」と声を掛けられた原告が,「こんばんは。」と応じた旨証言した。 ② AEAE は,同日午後7時5分頃,列車が布佐駅に到着し,大半の乗客 が降車した後,AAが改札口を出て左側にあるベンチに腰掛けていたの を駅長室の窓越しに見た旨,何人かで話している声が聞こえたが,連れがいたことは気付かなかった旨証言した。 ③ AGAGは,午後6時47分我孫子駅発成田線の列車にAHと乗車したが,その際,AAと会い,その後,布佐駅で降車し,栄橋の石段を登ってい たとき,後方から石段を登って来た男がいて,AHが「あれ力あるな。」と言ったところ,その男が振り向いて「何。」と言ったことがあり,「何。」と言った男が原告であることは,後日,AAから聞いた旨,石段の一件があったのが8月28日かどうかは分からない旨証言した一方,12月17日付け検面調書作成の際には,内容を読み聞かせられた上,間違い と言った男が原告であることは,後日,AAから聞いた旨,石段の一件があったのが8月28日かどうかは分からない旨証言した一方,12月17日付け検面調書作成の際には,内容を読み聞かせられた上,間違い ないということで署名指印した旨証言した。 上記検面調書は,確定審第一審において,刑訴法321条1項2号後段の書面として採用の上,取り調べられた。 ④ AHAHは,帰宅時,布佐駅で下車し,AG,AF,AAと一緒になった 際,栄橋の石段で,後方から後で原告と分かった男が駆けて来たので,「脚力あるな。」と言うと,その男が振り向いて「何だ。」と言ったことがあったが,それが8月28日かどうか覚えておらず,同日,鉄道で帰ったかどうかも記憶にない旨証言する一方,証言時は,日が経っているので忘れたこともあり,石段の一件につき,事情聴取時に脱線事故の 翌日の出来事である旨言ったのであれば,そうだと思う旨証言した。 AHの12月27日付け検面調書は,確定審第一審において,刑訴法321条1項2号後段の書面として採用の上,取り調べられた。 ⑤ AFAFは,8月28日の帰宅時,我孫子駅から午後6時47分発の成田 線の列車に乗車し,布佐駅で降車後,徒歩で帰宅していた際,石段を登 ろうとすると,前を歩いていた原告が,二人組の男性に「馬鹿野郎。」と言った旨証言した。 ⑥ AIAIは,同日夕方ないし夜,被害者方前を自転車で通り掛かった際,勝手場の石の上に立って被害者と話をしていた男と玄関の道路沿いの壁 の所に寄り掛かっていた男を目撃し,勝手場にいた男は,石の上に乗っていたせいか背が大きいように見え,道路沿いにいた男は中腰になって屈んでいたので背丈は分からない旨証言する と玄関の道路沿いの壁 の所に寄り掛かっていた男を目撃し,勝手場にいた男は,石の上に乗っていたせいか背が大きいように見え,道路沿いにいた男は中腰になって屈んでいたので背丈は分からない旨証言するとともに,11月8日付け検面調書作成時には,内容を読み聞かせられ確認した際,自分が言ったことと変わらず,事情聴取に際してはありのままを述べた旨証言した。 AIの上記検面調書は,確定審第一審において,刑訴法321条1項2号後段の書面として採用の上,取り調べられた。 ⑦ AKAKは,8月28日午後7時半過ぎ頃,被害者方前を自転車で通り掛かった際,入口の辺りに普通より背丈の高い人がいたような気がする旨 証言した。 ⑧ ACACは,同日午後7時半過ぎ頃,被害者方前を単車で通過するとき,被害者方の前にある溝を挟んでAAが被害者方の方に,原告が道路の方に向かい合って立っており,二人で話をしている様子であった旨,単車 が原告から2メートルくらいの距離に接近したときに手前の男が振り返ったことから原告であることが分かった旨,奥の男は道路の方を向いていたことからAAであることが分かった旨,同日午後8時頃,布佐モータースに品物を届け,30分くらいテレビ番組を見て布佐モータースを出て,被害者方の約100メートル手前にある店舗の前に来たときに, 被害者方前に背の高い男と背の低い男の二人組を見た旨証言した。 イ判決確定審第一審裁判所(水戸地裁土浦支部)は,昭和45年10月6日,原告につき窃盗,AAにつき暴行,傷害,恐喝,暴力行為等処罰ニ関スル法律違反,原告及びAAにつき本件強盗殺人事件に係る事実をそれぞれ認定した上,原告及びAAをいずれも無期懲役に処する旨の有罪判決を 原告につき窃盗,AAにつき暴行,傷害,恐喝,暴力行為等処罰ニ関スル法律違反,原告及びAAにつき本件強盗殺人事件に係る事実をそれぞれ認定した上,原告及びAAをいずれも無期懲役に処する旨の有罪判決を言い渡した。 (甲A6) 確定審第二審の公判及び判決ア公判経過の概略確定審第二審では,AF及びACの証人尋問のほか,原告及びAAを取り調べたAU警察官らの証人尋問並びに原告及びAAに対する被告人質問 が実施された。 証言の要旨AF及びACの確定審第二審における証言の要旨は,それぞれ,以下のとおりである。(乙444,445,450)① AF AFは,原告を栄橋の石段で見掛けたことは間違いないものの,それが8月28日であったことについては,日にちも経っているので覚えていない旨証言する一方,確定審第一審で証言した内容については,間違ったことを述べたと思うことはない旨証言した。 ② AC ACは,同日夜,被害者方前で,二人組の男のうち,一人が下水溝を挟んで家側に,一人が下水溝をまたいで,向かい合って立っているのを目撃し,被害者方前を単車で通過したとき,一人が振り返り,顔を見た旨,二人組を見た際,AAは分かったが,原告は名前が思い出せなかった旨,その後,布佐モータースに行き,テレビ番組を見てから,午後8 時半過ぎに帰途についた際,被害者方手前で二人組の男を見た旨証言し たが,帰途に二人組を目撃した状況については,目撃した位置や前後の行動等につき,証言を錯綜させた。 イ判決確定審第二審裁判所(東京高裁)は,昭和48年12月20日,原告及びAAの控訴をいずれも棄却した。(甲A7) 確定審上告審の決定確定審上告審裁判所(最 ,証言を錯綜させた。 イ判決確定審第二審裁判所(東京高裁)は,昭和48年12月20日,原告及びAAの控訴をいずれも棄却した。(甲A7) 確定審上告審の決定確定審上告審裁判所(最高裁第二小法廷)は,昭和53年7月3日,原告及びAAの上告をいずれも棄却した。(甲A8)第一次再審請求審原告及びAAは,昭和58年12月23日,第一次再審請求をしたが,水戸 地裁土浦支部は,昭和62年3月31日,再審請求を棄却した。 原告及びAAは,上記再審請求棄却決定に対し,即時抗告の申立てをしたが,東京高裁は,昭和63年2月22日,即時抗告を棄却した。 原告及びAAは,上記即時抗告棄却決定に対し,特別抗告の申立てをしたが,最高裁第一小法廷は,平成4年9月9日,特別抗告を棄却した。(甲A9ない し11)原告の仮釈放原告は,平成8年11月14日,仮釈放された。 第二次再審請求審及び再審公判の概略ア第二次再審請求審 原告及びAAは,平成13年12月6日,第二次再審請求をしたところ,水戸地裁土浦支部は,平成17年9月21日,再審開始を決定した。 検察官は,上記再審開始決定に対し,即時抗告の申立てをしたが,東京高裁は,平成20年7月14日,即時抗告を棄却した。 検察官は,上記即時抗告棄却決定に対し,特別抗告の申立てをしたが,最 高裁第二小法廷は,平成21年12月14日,特別抗告を棄却した。(甲A 12ないし14)イ再審公判 再審の公判経過再審では,AJの証人尋問並びに原告及びAAの被告人質問が実施された。 AJは,8月28日夜,被害者方前を通り掛かった際,二人の男がいて,一人が家の中にいる被害者と向かい合い,もう一人が家の角の柱の辺りに立って 問並びに原告及びAAの被告人質問が実施された。 AJは,8月28日夜,被害者方前を通り掛かった際,二人の男がいて,一人が家の中にいる被害者と向かい合い,もう一人が家の角の柱の辺りに立っていたが,被害者と向き合っていた男の特徴は覚えておらず,家の角に立っていた男はAAではない旨証言するとともに,家の角に立っていた人物につき,原告及びAAとは別の近所に住む第三者である旨証言した。 (乙630) 再審判決の要旨水戸地裁土浦支部は,平成23年5月24日,本件強盗殺人事件につき無罪判決を言い渡すとともに,原告については窃盗罪により,AAについては暴行,傷害,恐喝,暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪により,そ れぞれ懲役2年,3年間執行猶予の判決を言い渡した(再審判決)。再審判決は,同年6月7日の経過をもって確定した。(甲A15)刑事補償金等の支払ア原告は,平成23年8月29日,水戸地裁土浦支部に対し,刑事補償金1億3286万2500円の交付を求めて,刑事補償の請求をした。 同裁判所は,平成24年3月5日,原告が受けた昭和42年10月10日から昭和53年7月12日までの3929日間の逮捕及び勾留が刑事補償法1条1項所定の未決の抑留又は拘禁に当たり,同月13日から平成8年11月14日までの6700日間の懲役刑の執行が同条2項所定の刑の執行に当たるとして,合計1万0629日間について,同法4条1項所定の金額の上 限である1日1万2500円の割合により補償金の額を算定し,1億328 6万2500円を交付する旨決定した。 原告は,平成24年4月10日,その支払を受けた。(甲C1,弁論の全趣旨)イ原告は,平成23年12月1日,水戸地裁土浦支部に対し,相当額の無罪費用 6万2500円を交付する旨決定した。 原告は,平成24年4月10日,その支払を受けた。(甲C1,弁論の全趣旨)イ原告は,平成23年12月1日,水戸地裁土浦支部に対し,相当額の無罪費用補償金の交付を求めて,無罪費用補償の請求をした。 同裁判所は,平成24年6月15日,別紙「計算内訳書」記載のとおり,741万0370円を交付する旨決定した。 原告は,その後,その支払を受けた。(甲C2,弁論の全趣旨) 2 争点⑴ ①別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留が令状主義を潜脱するものとして 違法であり,これらを利用した取調べが違法であるか否か,②本件逮捕及び本件勾留が違法であるか否か(争点1)⑵ 警察官による取調べに違法があるか否か(争点2)⑶ 検察官による取調べに違法があるか否か(争点3)⑷ 代用監獄への移監(逆送)に係る検察官の同意請求が違法であるか否か(争 点4)⑸ 証拠の改ざん等に係る違法があるか否か(争点5)⑹ 検察官による本件起訴に違法があるか否か(争点6)⑺ 確定審の公判における警察官及び検察官の活動に違法があるか否か(争点7)⑻ 再審請求審及び再審の公判における検察官の活動に違法があるか否か(争点 8)⑼ 原告に生じた損害の有無及び金額(争点9)⑽ 除斥期間が経過したか否か(争点10)⑾ 除斥期間に係る主張が信義則違反又は権利の濫用に当たるか否か(争点11) 3 当事者の主張の要旨 別紙「当事者の主張の要旨」記載のとおり 第3 当裁判所の判断 1 争点1(①別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留が令状主義を潜脱するものとして違法であり,これらを利用した取調べが違法であるか否か,②本件逮捕及び本件勾留が違法であるか否か)について⑴ 1 争点1(①別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留が令状主義を潜脱するものとして違法であり,これらを利用した取調べが違法であるか否か,②本件逮捕及び本件勾留が違法であるか否か)について⑴ 認定事実 前記前提事実及び掲記の証拠を総合すれば,以下の事実が認められる。 アAU警察官及びAV警察官は,10月10日,「捜査下命事項」を原告の所在捜査とする捜査報告書を作成した。なお,同捜査報告書の冒頭には,本件強盗殺人事件について捜査した結果を報告するものである旨の記載があった。(乙563) 原告は,10月10日,別件窃盗事件に係る被疑事実で逮捕された(別件窃盗事件逮捕)。 イ AU警察官及びAV警察官は,10月11日,8月10日から同月末頃までの原告の行動について原告を取り調べた結果を報告する内容の捜査報告書を作成した。(甲B18) ウAU警察官は,10月12日,昭和39年頃から別件窃盗事件に至るまでの生活状況,別件窃盗事件の犯行状況及び窃盗の余罪を含む別件窃盗事件の犯行後の生活状況について原告が供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成した。(甲B51,乙460) 余罪窃盗各事件の被害者であるBIは,同日,被害届を提出し,供述録 取書の作成に応じた。(乙178,179) 余罪窃盗各事件に係る被害品を購入したBGは,同日,被害品を任意に提出し,供述録取書の作成に応じた。(乙180,182,183) 原告は,同日,別件窃盗事件に係る被疑事実で勾留された(別件窃盗事件勾留)。 エAU警察官及びAV警察官は,10月13日,8月25日から9月2日 までの行動について原告を取り調べた結果を報告する内容の捜査報告書を作成した。( 別件窃盗事件勾留)。 エAU警察官及びAV警察官は,10月13日,8月25日から9月2日 までの行動について原告を取り調べた結果を報告する内容の捜査報告書を作成した。(甲B18) 余罪窃盗各事件の被害者であるBHは,10月13日,被害届を提出した。(乙187)オ AU警察官は,10月14日,8月24日頃から同月末までの行動につい て原告を取り調べた。 AU警察官は,10月15日午前中,8月24日頃から同月末までの行動について原告を取り調べた。 原告は,10月15日午後,本件ポリグラフ検査を受けた。 AU警察官は,同日,本件ポリグラフ検査が終了した後,本件強盗殺人 事件について自白する旨の原告の供述を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙328) AU警察官及びAV警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件を自白するに際して新聞に出さないでほしい旨を述べたことなど,原告が自白をするに至るまでの様子について報告する内容の捜査報告書を作成した。(乙 566)キ原告は,10月16日,窃盗の余罪の概要のほか,本件強盗殺人事件の犯行状況を含めた8月26日から同月31日までの行動状況等を記載した上申書を作成した。(甲B11) AU警察官は,10月16日,8月初めから同月27日までの行動につ いての原告の供述を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙329) AU警察官及びAV警察官は,10月16日,前記の上申書を原告に作成させた経緯や,原告が同日の取調べにおいて本件強盗殺人事件について供述した内容を報告する捜査報告書を作成した。(乙567) 余罪窃盗各事件の被害者であるBIは, 記の上申書を原告に作成させた経緯や,原告が同日の取調べにおいて本件強盗殺人事件について供述した内容を報告する捜査報告書を作成した。(乙567) 余罪窃盗各事件の被害者であるBIは,同日,被害品の還付を受けた。 (乙184) ク原告は,10月17日,身上経歴,窃盗の余罪,8月27日までの行動,本件強盗殺人事件の犯行状況を含めた同月28日から同月31日までの行動等について供述し,その供述はテープに録音された。(乙583)ケ AU警察官は,10月18日,8月28日の行動のうち本件強盗殺人事件に至る前の原告の行動についての原告の供述を録取した供述録取書1通及び 本件強盗殺人事件の犯行状況等についての原告の供述を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙330,331)コ別件窃盗事件勾留について,10月19日,勾留延長請求がされ,勾留期間が同月30日まで延長された。(乙164)余罪窃盗各事件の被害者であるAPは,10月19日,被害届及び被害 の内容について記載した答申書を提出した。(乙185,186)サAU警察官は,10月20日,本件強盗殺人事件の犯行後から8月30日までの行動等について原告が供述したことを内容とする原告の供述録取書を作成した。(乙332) AU警察官及びAV警察官は,10月20日,原告が本件強盗殺人事件 の犯行状況等について供述したことを内容とする捜査報告書を作成した。 (乙568) AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が8月28日午後7時30分頃から高田馬場の養老乃瀧で酒を飲み,午後9時過ぎ頃に光明荘に寄った後,「ジュン」で酒を飲み,その後は光明荘に泊まったというアリバイが あるとして,本件強盗殺人事 告が8月28日午後7時30分頃から高田馬場の養老乃瀧で酒を飲み,午後9時過ぎ頃に光明荘に寄った後,「ジュン」で酒を飲み,その後は光明荘に泊まったというアリバイが あるとして,本件強盗殺人事件の犯行を否認する供述をしたことを内容とする,体裁が若干異なるほぼ同内容の捜査報告書を2通作成した。(乙569,甲B30) 余罪窃盗各事件の被害者であるBJは,10月20日,被害届及び被害の内容を記載した答申書を提出した。(乙191,192) シAU警察官は,10月21日,原告が8月31日から9月2日までの行 動について供述したことを内容とする原告の供述録取書を作成した。(乙333) 余罪窃盗各事件の被害者であるBKは,10月21日,被害届及び被害の内容について記載した答申書を提出した。(乙175,176) 上記の被害について事情を知っているCWは,同日,被害が発生した 際に原告が居たこと等が記載された答申書を提出した。(乙177)ス AU警察官及びBB警察官は,10月22日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述したことを内容とする捜査報告書を作成した。(乙570)セ原告は,10月23日,本件強盗殺人事件に係る被疑事実で逮捕された (本件逮捕)。 AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述したことを内容とする捜査報告書2通を作成した。(甲B26,乙571)余罪窃盗各事件の被害者であるBLは,同日,被害届を提出した。(乙 188)ソ AU警察官は,10月24日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙334)タ 害届を提出した。(乙 188)ソ AU警察官は,10月24日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙334)タAR検察官は,10月25日,原告が本件強盗殺人事件を犯したことを認める旨の供述をしたことを内容とする原告の弁解録取書を作成した。 (乙 306) 原告は,同日,本件強盗殺人事件に係る勾留質問において,本件強盗殺人事件を犯したことに間違いはない旨の陳述をした。(甲B48) 原告は,同日,本件強盗殺人事件に係る被疑事実で勾留された(本件勾留)。 チAU警察官は,10月26日,原告が本件強盗殺人事件を犯した後に逃 走した際の状況等について供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙335) AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が被害者方の便所の窓から逃走したときの状況等について供述したことを内容とする捜査報告書を2通作成した。(乙572,573) ツAU警察官は,10月27日,原告が同月15日及び同月20日の取調べの際に供述した本件強盗殺人事件後の行動が一部虚偽であったなどと供述した内容を録取した原告の供述録取書を2通作成した。(乙336,337) AU警察官及びBB警察官は,同月27日,原告が同月15日及び同月 20日の取調べの際に供述した本件強盗殺人事件後の行動が一部虚偽であったなどと供述したことを内容とする捜査報告書を作成した。 (乙574)テAU警察官は,10月28日,原告が8月30日及び同月31日頃の原告の行動等について供述した内容を録取した供述録取書1通並びに原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述 乙574)テAU警察官は,10月28日,原告が8月30日及び同月31日頃の原告の行動等について供述した内容を録取した供述録取書1通並びに原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述した内容を録取した供述録取 書を2通作成した。(乙338,339) AU警察官及びBB警察官は,10月28日,原告の取調べ時における態度等を記載した捜査報告書を作成した。(乙575)トAU警察官は,10月29日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況や逃走時の状況等について供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成し た。(乙340) AU警察官及びBB警察官は,同日,同日の原告の取調べ時の状況等を内容とする捜査報告書を作成した。(乙575)ナAU警察官は,10月30日,原告が本件強盗殺人事件の犯行後に逃走した後の状況等について供述したことを内容とする原告の供述録取書を作 成した。(乙341) AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件の犯行後の状況等について供述したことを内容とする捜査報告書を作成した。(乙577)ニAU警察官は,10月31日,原告が本件強盗殺人事件を犯してから逃走するまでの気持ち等について供述したことを録取した原告の供述録取書 及び原告が同月15日の取調べにおいて虚偽の供述をしたことを録取した原告の供述録取書をそれぞれ1通ずつ作成した。(乙348) AU警察官及びBB警察官は,10月31日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況について供述したことを内容とする捜査報告書及び被害者方の便所の窓の桟を外した理由等について供述したことを内容とする捜査報告 書をそれぞれ1通ずつ作成した。(乙578,5 盗殺人事件の犯行状況について供述したことを内容とする捜査報告書及び被害者方の便所の窓の桟を外した理由等について供述したことを内容とする捜査報告 書をそれぞれ1通ずつ作成した。(乙578,579)ヌAR検察官は,11月1日,原告が本件強盗殺人事件を犯したことを認める旨の供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙307) AU警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件について自白するに至っ た経緯や虚偽の供述をしていたことについて供述したことを内容とする原告の供述録取書を作成した。(乙344) AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件について自白するに至った経緯や虚偽の供述をしていたことについて供述したことを内容とする捜査報告書を作成した。(乙580) ネ AU警察官及びBB警察官は,11月2日,テープにより録音をする方法で原告の取調べをした旨の捜査報告書を作成した。(甲B31)ノAU警察官は,11月3日,原告が被害者方の状況について供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成した。(乙345) AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が被害者方の状況について供 述した旨の捜査報告書を作成した。(乙581) ハ BB警察官は,11月5日,原告が余罪窃盗各事件の犯行を認める旨の供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙294)ヒ BB警察官は,11月6日,原告が余罪窃盗各事件の犯行を認める旨の供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙295)フ AR検察官は,11月12日,原告が余罪窃盗各事件の犯行を認める旨の 供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。 をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙295)フ AR検察官は,11月12日,原告が余罪窃盗各事件の犯行を認める旨の 供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙296)ヘ AR検察官は,11月13日,原告が本件強盗殺人事件の犯行を否認する旨の供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙383)ホ AU警察官及びBB警察官は,12月1日,本件強盗殺人事件の犯行を否認した理由について原告を取り調べた際の原告の言動等を内容とする捜査報 告書を作成した。(甲B33)マ AU警察官及びBB警察官は,12月2日,本件強盗殺人事件の犯行を否認した理由について原告を取り調べた際の原告の言動等を内容とする捜査報告書を作成した。(甲B34)ミ AU警察官及びBB警察官は,12月3日,本件強盗殺人事件の犯行を否 認した理由について原告を取り調べた際の原告の言動等を内容とする捜査報告書を作成した。(甲B35)ムAU警察官は,12月4日,原告が本件強盗殺人事件の犯行を否認した理由及び再び本件強盗殺人事件の犯行を認める旨の供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙346) AU警察官及びBB警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件の犯行を否認した理由及び再び本件強盗殺人事件の犯行を認める旨の供述していることを内容とする捜査報告書を作成した。(甲B36)メ AU警察官及びAV警察官は,12月5日,原告が本件強盗殺人事件の犯行を再び認める旨の供述をしていることを内容とする捜査報告書を作成した。 (甲B37) モAU警察官は,12月8日,原告が本件強盗殺人事件の犯行を認める旨の供述をしたこと 行を再び認める旨の供述をしていることを内容とする捜査報告書を作成した。 (甲B37) モAU警察官は,12月8日,原告が本件強盗殺人事件の犯行を認める旨の供述をしたことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙347) AU警察官及びAV警察官は,同日,原告の取調べの際の状況を内容とする捜査報告書を作成した。(甲B38)ヤ AQ検察官は,12月19日,原告が本件強盗殺人事件の犯行に至る経緯, 本件強盗殺人事件の犯行状況及び本件強盗殺人事件の犯行を再び認めるに至った経緯等について供述したことを録取した原告の供述録取書を作成した。 (乙308)ユ AQ検察官は,12月21日,原告が本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述した内容を録取した原告の供述録取書,原告が虚偽の供述をしてい たこと等について供述した内容を録取した原告の供述録取書及び原告が生活状況等について供述した内容を録取した原告の供述録取書をそれぞれ1通ずつ作成した。(乙309,310,311)ヨ AQ検察官は,12月22日,原告が従前の供述で思い違いをしていた点があること等を供述した内容を録取した原告の供述録取書及び原告が被害者 方のガラス戸を外した経緯等について供述した内容を録取した原告の供述録取書をそれぞれ1通ずつ作成した。(甲B42,乙312)ラ AQ検察官は,12月25日,原告の供述とAAの供述との間に食い違いが存在した理由等について供述したことを録取した原告の供述録取書を作成した。(乙313) リ原告は,12月28日,本件強盗殺人事件について起訴された。 ル原告は,12月29日,本件強盗殺人事件に係る勾留質問において,本件強盗殺人事件を犯したことを認める 13) リ原告は,12月28日,本件強盗殺人事件について起訴された。 ル原告は,12月29日,本件強盗殺人事件に係る勾留質問において,本件強盗殺人事件を犯したことを認める旨の陳述をした。(乙361)レ AQ検察官は,昭和43年1月8日,原告が別件余罪窃盗各事件において窃取した現金等について供述した内容を録取した原告の供述録取書を作成し た。(乙304) ⑵ 原告の身柄拘束の違法性の有無についてア別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留についてある被疑事実(別件)の逮捕及び勾留が,専ら,いまだ証拠のそろっていない別の被疑事実(本件)について被疑者を取り調べる目的で,証拠のそろっている別件の逮捕,勾留に名を借り,その身柄拘束を利用して,本件につ いて逮捕,勾留して取り調べるのと同様な効果を得ることを狙いとしたものであるときは,憲法及び刑訴法の定める令状主義を実質的に潜脱するものとして,別件の逮捕及び勾留が違法となるというべきである(最高裁昭和49年(あ)第2470号同52年8月9日第二小法廷決定・刑集31巻5号821頁参照)。 以下,このような観点から,別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留の違法性の有無について検討する。 別件窃盗事件逮捕について確かに,AU警察官は,確定審第二審第11回公判期日において,別件窃盗事件逮捕の時点で,本件強盗殺人事件に関する容疑者を洗い尽くして おり,残っているのは原告しかいない状態であったとか,原告について8月28日のアリバイが立たないから窃盗の余罪で逮捕して調べようということであった旨供述しており(乙451により認定することができる。),かかる事実を踏まえると,茨城県警が,別件窃盗事件逮捕に係る逮捕状の請 のアリバイが立たないから窃盗の余罪で逮捕して調べようということであった旨供述しており(乙451により認定することができる。),かかる事実を踏まえると,茨城県警が,別件窃盗事件逮捕に係る逮捕状の請求をした時点においても,本件強盗殺人事件について原告を取り調べる 目的を有していたことがうかがわれるところである。 しかし,前記第2の1⑹のとおり,別件窃盗事件の被害額は合計9000円であり,当時の大卒者の平均初任給の額である2万6200円と比較しても,上記被害額が少額であったとはいえないし,別件窃盗事件の被害者は原告の知人であり,罪証隠滅のために原告が被害者と接触する可能性 も低かったとはいえない。また,原告は,別件窃盗事件のほか,昭和41 年3月13日から昭和42年10月10日までの間に,別件窃盗事件の同種余罪である10件にも及ぶ余罪窃盗各事件を犯していたものであり,かかる余罪が到底軽微なものとはいえないことからすれば,原告について相応の処罰が予想されるなど,逃亡のおそれも高かったものといえる。これらの事実に照らせば,別件窃盗事件逮捕をする理由と必要性は十分にあっ たものというべきである。 加えて,前記⑴アないしウにおいて認定した事実に照らすと,別件窃盗事件逮捕の期間中である10月10日から同月12日までの間は,主に,別件窃盗事件及び余罪窃盗各事件に関する捜査が行われていたものというべきである。 したがって,別件窃盗事件逮捕は,専ら,証拠のそろっている別件窃盗事件逮捕に名を借り,その身柄拘束を利用して,本件強盗殺人事件について逮捕して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認めることができない。 別件窃盗事件勾留に係る勾留請求について 原告は,別件窃盗事件につ 殺人事件について逮捕して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認めることができない。 別件窃盗事件勾留に係る勾留請求について 原告は,別件窃盗事件については,10月12日の時点において原告の詳細な自白調書が作成されていたから(乙460),別件窃盗事件勾留に係る勾留請求をする必要性はなかった旨主張する。 しかし,上記において説示したとおり,原告は,別件窃盗事件のほかに,余罪窃盗各事件を犯していたものであるところ,別件窃盗事件につき 公訴の提起をするか否かについて判断するためには,同種の余罪である余罪窃盗各事件についての捜査を継続して行う必要性があったものというべきであって,別件窃盗事件勾留請求がされた同日時点においても,別件窃盗事件に係る被疑事実で勾留をする理由及び必要性は十分にあったものというべきである。 また,10月13日から本件逮捕がされた同月23日までの期間中には, 前記件の被害者や関係者などに答申書等を作成させるなど,別件窃盗事件と同種の余罪である余罪窃盗各事件に関する捜査がされていたことが認められるのであって,別件窃盗事件勾留に係る勾留請求後の捜査の客観的な状況をみても,上記期間中において,専ら本件強盗殺人事件についてのみ捜査 がされていたものということはできない。 したがって,別件窃盗事件勾留に係る勾留請求は,専ら,証拠のそろっている別件窃盗事件勾留に名を借り,その身柄拘束を利用して,本件強盗殺人事件について勾留して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認めることができない。 なお,原告は,余罪窃盗各事件に関する取調べは11月5日及び同月6日に行われたにすぎない旨主張するが,10月16日には窃盗の余罪の概要につい いとしたものであるとは認めることができない。 なお,原告は,余罪窃盗各事件に関する取調べは11月5日及び同月6日に行われたにすぎない旨主張するが,10月16日には窃盗の余罪の概要についても記載された原告の上申書が作成され(前記,同月17日には窃盗の余罪についても言及している原告の供述がテープに録音されるなど(前記⑴ク参照),別件窃盗事件の同種余罪に関する取調べ が実施されていたことが認められる上,上記説示のとおり,原告の取調べ以外にも余罪窃盗各事件の捜査は実施されていたのであるから,原告の上記主張は採用することができない。 別件窃盗事件勾留に係る10月13日以降の身柄拘束について原告は,別件窃盗事件勾留に係る10月13日以降の身柄拘束は,別件 窃盗事件を被疑事実とする勾留の実体を失ったものである旨主張する。 確かに,前記⑴エないしセのとおり,同日から本件逮捕がされた同月23日までの期間中においては,本件強盗殺人事件の犯行状況について取調べがされ,その供述録取書も複数作成されていることが認められるのであって,本件逮捕に係る逮捕状の請求の時期は,いささか遅きに失するきら いがあるといわざるを得ない。 しかし,前記において説示したとおり,別件窃盗事件につき公訴の提起をするか否かについて判断するためには,同種の余罪である余罪窃盗各事件についての捜査を継続して行う必要性があり,実際にもその捜査が行われていた上,余罪窃盗各事件に関する原告の取調べも実施されていたものである。 このことに加え,別件窃盗事件の発生日である9月3日に近接した時期の原告の行動や生活状況については,別件窃盗事件の情状に関する事実という性質も有するところ,8月下旬から9月2日までの原告の行動や生活状 ことに加え,別件窃盗事件の発生日である9月3日に近接した時期の原告の行動や生活状況については,別件窃盗事件の情状に関する事実という性質も有するところ,8月下旬から9月2日までの原告の行動や生活状況について聴取するという方法での取調べも相当程度行われていた上(前記 期間中において作成された原告の供述録取書のうち本件強盗殺人事件の犯併せ考えると,AU警察官が確定審第二審において本件強盗殺人事件のアリバイがあるか否かを究明する目的で原告を取り調べたことをうかがわせる証言をするなど(乙454により認定することができる。),AU警察 官の主観としては本件強盗殺人事件に重点をおいて原告の取調べに当たったことがうかがわれることを踏まえてもなお,別件窃盗事件勾留に係る10月13日以降の身柄拘束は,別件窃盗事件を被疑事実とする勾留の実体を失ったものとまで認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 別件窃盗事件勾留の延長請求について原告は,別件窃盗事件の同種余罪の取調べがされたのは11月5日及び同月6日にとどまるから,10月19日に行われた別件窃盗事件勾留の延長請求は,専ら本件強盗殺人事件に関する取調べをする目的でされたものである旨主張する。 しかし,別件窃盗事件勾留の理由及び必要性が存在し,原告の取調べが 実施されていたことは,前記及びにおいて説示したとおりである上,同日以降も余罪窃盗各事件の関係者から被害届や答申書が提出されるなど(前記,余罪窃盗各事件についての捜査が継続されていたものというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。 別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留を利用した取調べについて原告は,別件窃盗事 ての捜査が継続されていたものというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。 別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留を利用した取調べについて原告は,別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留は違法であるから,かかる身柄拘束を利用して行われた取調べは違法である旨主張する。 しかし,前記ないしにおいて説示したとおり,別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留は,専ら,証拠のそろっている別件窃盗事件逮捕及び 別件窃盗事件勾留に名を借り,その身柄拘束を利用して,本件強盗殺人事件について逮捕及び勾留して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認められず,違法ということはできないから,この点に関する原告の主張は前提を欠くものであって,採用することができない。 イ本件逮捕及び本件勾留について原告は,本件強盗殺人事件に係る原告及びAAに関する逮捕状の請求当時,両名を本件強盗殺人事件の犯人に結び付ける証拠は,いずれも両名の自白しか存在しなかったところ,これらの自白はいずれも違法な身柄拘束を利用して得られたものであるから証拠能力が否定される上,原告及びAAのアリバ イ捜査が十分にされておらず,原告が本件強盗殺人事件を犯したことを疑うに足りる相当な理由を疎明する証拠が存在しないから,本件逮捕及びそれに引き続く本件勾留が国賠法1条1項の適用上違法である旨主張する。 そこで検討するに,逮捕状の請求及び勾留請求については,捜査機関が現に収集した証拠資料並びに逮捕状の請求及び勾留請求までに通常要求される 捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料等を総合勘案し,罪を犯したことを疑 うに足りる相当な理由及び逮捕ないし勾留の必要性があるという判断が合理的なものとは認められない でに通常要求される 捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料等を総合勘案し,罪を犯したことを疑 うに足りる相当な理由及び逮捕ないし勾留の必要性があるという判断が合理的なものとは認められない場合に限り,国賠法1条1項の適用上,違法になるものと解すべきである。そして,捜査の流動性,迅速性及び密行性等の諸点に鑑みれば,被疑者を逮捕ないし勾留するについて必要とされる犯罪の嫌疑の程度は,有罪判決の事実認定の際に要求されるほど高度のものである必 要はないことはもちろん,公訴の提起の際に要求されるものよりも低いもので足りると解するのが相当である。 別件窃盗事件逮捕及び別件窃盗事件勾留は,上記アにおいて説示したとおり違法ではなく,AAに関する身柄拘束についても,後記⑶において説示するとおり違法ということはできない。 また,捜査の流動性,迅速性及び密行性等の諸点に鑑みれば,被疑者からアリバイの主張がされた場合であっても,アリバイについての裏付け捜査を行わなければ逮捕状の請求及び勾留請求等をすることが許されないものということはできない。この点について,原告は,10月11日の時点において,AU警察官に対し,8月28日はALのアパートである光明荘に泊まった旨 のアリバイの供述をしていた旨主張するが,これを認めるに足りる的確な証拠はない。そして,原告が確定審第一審の裁判官に宛てて作成した昭和44年1月23日付けの上申書には,原告は10月11日の取調べでは「確かな記憶も戻らず,『泊まった様な気がするんです』とだけ」申し述べた旨の記載があることからすると(乙388により認定することができる。),確か な記憶に基づいてアリバイの主張をしていたものとはうかがわれない上,原告が,確定審第一審第24回公判期日におけるAU警察官の証人尋 ことからすると(乙388により認定することができる。),確か な記憶に基づいてアリバイの主張をしていたものとはうかがわれない上,原告が,確定審第一審第24回公判期日におけるAU警察官の証人尋問の際,8月28日は光明荘,原告の姉の千葉県に所在する家及びBN の家のいずれか以外には泊まった記憶がない旨をAU警察官による取調べの際に話したはずであると述べて,AU警察官に対する質問をしていたことを踏まえる と(乙379により認定することができる。),原告は,少なくとも同日の 宿泊先について複数の可能性がある旨の供述をしていたのであって,当初から明確な内容のアリバイの主張を行っていたものとまではいえない。これに加え,原告は,別件窃盗事件逮捕がされてから5日後という早期の段階において,重大な犯罪であって相応の処罰が予想される本件強盗殺人事件について自白していたものである。その上,本件逮捕に係る逮捕状の請求がされる までの間には,8月28日午後7時10分頃にAAが布佐駅に居た旨のAEの供述録取書が作成され(乙545により認定することができる。),本件勾留に係る勾留請求がされるまでの間には,同日の夕方に我孫子駅の成田線のホームでAAと原告が話しているのを見た旨のADの供述録取書及び同日夜に栄橋付近で原告に会った旨のAFの供述録取書が作成されており(乙 535,541により認定することができる。),原告及びAAが同日夜に被害者方に近接した場所に居たことを裏付ける証拠も存在したのである。このような状況に照らせば,かかる原告の自白の信用性を高いものと捜査機関が判断したとしても,その判断が不合理なものとはいい難い。 さらに,原告は,AAが10月16日の夜の取調べの時点からアリバイの 主張をしていたにもかかわらず,捜 白の信用性を高いものと捜査機関が判断したとしても,その判断が不合理なものとはいい難い。 さらに,原告は,AAが10月16日の夜の取調べの時点からアリバイの 主張をしていたにもかかわらず,捜査機関がAAのアリバイについての捜査を十分にしなかった旨主張するが,後記6⑵ウにおいて説示するとおり,その捜査が不十分であったとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 AAの身柄拘束の違法性の有無について AAによる本件強盗殺人事件に関する自白は, 原告による本件強盗殺人事件に関する自白を補強するものといえるから,違法な身柄拘束を利用してAAの自白を獲得する行為は,その意味において,原告との関係でも違法行為となり得るものというべきである。 そこで,以下,AAの身柄拘束の違法性について検討する。 ア 10月16日から同月23日までの身柄拘束の状況について 前記前提事実及び掲記の証拠を総合すれば,以下の事実が認められる。 AAは,10月16日,別件暴力行為等事件に係る被疑事実で逮捕された(別件暴力行為等逮捕)。 ② AW 警察官は,同日,AAが経歴や別件暴力行為等事件について供述した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。(乙459) ③ AW 警察官は,同日午後7時から午後8時30分まで及び同日午後8時40分から午後10時40分までの間,本件強盗殺人事件についてAAを取り調べた。(乙449) AAは,10月17日,別件暴力行為等事件に係る被疑事実で勾留された(別件暴力行為等勾留)。 ② AW 警察官は,同日,AAが本件強盗殺人事件の犯行を自白した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。(乙348)③ AAは,同日,本件強盗殺人事件の れた(別件暴力行為等勾留)。 ② AW 警察官は,同日,AAが本件強盗殺人事件の犯行を自白した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。(乙348)③ AAは,同日,本件強盗殺人事件の犯行を認める内容の上申書を作成した。(甲B19)④ AW 警察官は,同日,AAが本件強盗殺人事件について自白した状 況を報告する内容の捜査報告書を作成した。(乙582) AW 警察官は,10月19日,AAが本件強盗殺人事件の犯行に至る前の8月28日の行動状況について供述した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。(甲B41) ① AX警察官は,10月21日,AAが経歴や本件強盗殺人事件の犯行 前の行動状況等について供述した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。(乙349)② AX警察官及びAY警察官は,同日,AAの経歴や本件強盗殺人事件を犯す前の行動状況等についてAAを取り調べた結果を報告する内容の捜査報告書を作成した。(甲B20) ① AX警察官は,10月22日,AAが本件強盗殺人事件の犯行前の行 動状況等について供述した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。 (乙350)② AX警察官及びAY警察官は,同日,本件強盗殺人事件の犯行前の行動状況等についてAAを取り調べた結果を報告する内容の捜査報告書を作成した。(甲B21) AAは,10月23日,本件強盗殺人事件に係る被疑事実で逮捕された。 ② AX警察官は,同日,AAが本件強盗殺人事件を犯したことを認める旨の供述をしたことを内容とするAAの弁解録取書を作成した。(乙351) ③ AX警察官は,同日,AAが本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述した内容を録取したAAの供述録取 旨の供述をしたことを内容とするAAの弁解録取書を作成した。(乙351) ③ AX警察官は,同日,AAが本件強盗殺人事件の犯行状況等について供述した内容を録取したAAの供述録取書を作成した。(乙352)④ AX警察官及びAY警察官は,同日,本件強盗殺人事件の犯行状況等についてAAを取り調べたことを報告する内容の捜査報告書を作成した。 (甲B22) イ別件暴力行為等逮捕及び別件暴力行為等勾留について 別件暴力行為等逮捕に係る逮捕状の請求について確かに,AAは,10月16日午後7時から午後8時30分まで及び同日午後8時40分から午後10時40分までの間,本件強盗殺人事件について取り調べられたことが認められる(前記ア③参照)。 しかし,別件暴力行為等事件は,AAが,BC 及びBD と共に,通行人に対し,殴る蹴るの暴行を加えたというものであって,軽微な犯罪であったとはいえず,逃走のおそれも存在したことから,AAを別件暴力行為等事件の被疑事実で逮捕する必要性及び理由が十分にあったものといえる。 また,前記ア②のとおり,10月16日には,別件暴力行為等事件に ついてのAAの供述録取書が作成されるなど,別件暴力行為等逮捕の期間中である同日から同月17日までの間においては,別件暴力行為等事件についての取調べもされていたといえる。 したがって,別件暴力行為等逮捕に係る逮捕状の請求は,専ら,証拠のそろっている別件暴力行為等逮捕に名を借り,その身柄拘束を利用して, 本件強盗殺人事件について逮捕して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認めることができない。 別件暴力行為等勾留に係る勾留請求について別件暴力行為等事件は, 本件強盗殺人事件について逮捕して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認めることができない。 別件暴力行為等勾留に係る勾留請求について別件暴力行為等事件は,上記において説示したとおり,軽微な犯罪であったとはいえず,逃走のおそれも存在したことから,AAを別件暴力行 為等事件の被疑事実で勾留する必要性及び理由が十分にあったものといえる。 また,別件暴力行為等勾留がされた10月17日からAAが本件強盗殺人事件に係る被疑事実で逮捕されるまでの間には,合計4通のAAの供述録取書が作成されているが(前記ア,①参照),そのう ち,同日付けのAAの供述録取書は本件強盗殺人事件の犯行状況を内容とするものであるものの,残りの3通の内容はいずれもAAの経歴又は本件強盗殺人事件の犯行に至る前の行動状況に関するものということができる。 AAの経歴や別件暴力行為等事件が発生した8月29日に近接した時期のAAの行動状況は,本件強盗殺人事件のみならず,別件暴力行為等事件に 至るまでの経緯等に関する事情としての一面をも有するものといえるから,上記期間中においては,専ら本件強盗殺人事件に関する取調べのみがされていたものとはいうことができない。 したがって,別件暴力行為等勾留に係る勾留請求は,専ら,証拠のそろっている別件暴力行為等勾留に名を借り,その身柄拘束を利用して,本件 強盗殺人事件について勾留して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙 いとしたものであるとは認めることができない。 10月16日夜以降の身柄拘束について原告は,10月16日以降の身柄拘束は,別件暴力行為等事件の逮捕・勾留という実体を失ったものである旨主張する。 しかし,上記原告の上記主張 は採用する 10月16日夜以降の身柄拘束について原告は,10月16日以降の身柄拘束は,別件暴力行為等事件の逮捕・勾留という実体を失ったものである旨主張する。 しかし,上記原告の上記主張 は採用することができない。 別件暴力行為等逮捕及び別件暴力行為等勾留を利用した取調べについて原告は,別件暴力行為等逮捕及び別件暴力行為等勾留は違法であるから,かかる身柄拘束を利用した取調べは違法である旨主張する。 しかし,前記ないしにおいて説示したとおり,別件暴力行為等逮捕 及び別件暴力行為等勾留は,専ら,証拠のそろっている別件暴力行為等逮捕及び別件暴力行為等勾留に名を借り,その身柄拘束を利用して,本件強盗殺人事件について逮捕及び勾留して取り調べるのと同様の効果を得ることを狙いとしたものであるとは認められず,違法ということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。 ウ本件強盗殺人事件を被疑事実とするAAの逮捕及び勾留について原告は,本件強盗殺人事件を被疑事実とするAAの逮捕及び勾留は違法であり,その間のAAに対する取調べは違法である旨主張する。 しかし,前記⑵イにおいて説示したものと同様の理由で,本件強盗殺人事件を被疑事実とするAAの逮捕及び勾留は違法とはいえないから,原告の上 記主張は採用することができない。 2 争点2(警察官による取調べに違法があるか否か)について⑴ 判断枠組み任意捜査の一環としての取調べにおいては,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められ る方法ないし態様及び限度において,許容されるものと解すべきであるところ (最高裁昭和57年(あ)第301号同59年2月29日第二小法廷決定・刑集 を勘案して,社会通念上相当と認められ る方法ないし態様及び限度において,許容されるものと解すべきであるところ (最高裁昭和57年(あ)第301号同59年2月29日第二小法廷決定・刑集38巻3号479頁参照),強制,拷問,暴行,脅迫及び偽計を用いて,被疑者の自由な意思決定を阻害することは,供述の任意性を欠くものであり,被疑者に対する容疑の程度等の事情のいかんを問わず許容されないものと考えられる。 以下,警察官による取調べに違法があったか否かについて検討する。 ⑵ 警察官による原告の取調べについての原告の主張の概要原告が,警察官による原告の取調べについて違法である旨主張する出来事(ただし,長期間の取調べ,長時間の取調べ及び再逮捕・再勾留との比較による違法に関する主張を除く。)を時系列順に整理すると,その概要は以下のとおり である(なお,同様の出来事が複数日にわたって存在した等の主張がされている場合には,より早い日付の項目に記載した。)。 ア 10月12日原告が,10月12日,勾留状の余白部分についてBP警察官に尋ねたところ,BP警察官は,原告の取調べが終わらないときに何日でも調べられる ように空けてある旨を述べ,原告に強い不安感を与えた。 イ 10月13日 原告は,10月13日以降の取調べの実施場所を留置場内看守仮眠室に変更され,心理的な圧迫を受けた。 AU警察官は,同日,原告が8月28日は光明荘にAAと泊まったとア リバイの主張をすると,「もう調べてあってお前の兄さんも泊まっていないと言っている。」と虚偽の発言をし,偽計を用いて原告を自白させようとした。また,原告が,同日は,兄のアパートである光明荘,BN の家又は姉のBO の家のいずれかに泊まって の兄さんも泊まっていないと言っている。」と虚偽の発言をし,偽計を用いて原告を自白させようとした。また,原告が,同日は,兄のアパートである光明荘,BN の家又は姉のBO の家のいずれかに泊まっているのは確かである旨の供述をすると,AU警察官は,大学ノートに,兄,BN,BO と書きながら 「違う」と言って×印を付け,原告の記憶を混乱させた。 AU警察官は,原告に対し,10月13日,以下のような発言をし,本件強盗殺人事件の犯行を否認し続けた場合の不利益を強く印象付けて脅迫した。 「一日も早く自白した方が偉い人たちの感じ方も違うし,貴公には有利なんだぞ。」 「下手に突っ張ってると大変なことになるんだ,死刑だってあるんだぞ。」AU警察官は,同日,以下のような発言をし,原告に本件強盗殺人事件の自白をするように強要した。 「ABさんを殺したことを話さずに真実が話せるか,取手からどこを通ってd に行ったんだ」 「悪事千里を走る,と言って,悪いことをすればそのことはすぐ誰にでもわかっちゃうんだよ,取手で盗みに入って娘っ子を殺した奴も1年ぐらいして捕まったんだ」「ABさんも苦しかったろうなあ」「BO に泊まった29日の晩は遅くまで起きていたようだが見つかる んじゃねえかと寝られなかったんだろう」「8月31日にd に行ったというのはどんな様子かと見に行ったんだろう,それが犯人の心理というものだ」「31日にAAとタクシーでBA のところに行ったとき,ABさんの家の前で缶詰の話をしたようだが,ABさんのところに持って行っ た奴か」「流山で貴公が盗みをした時,あの部屋に人間が寝ていたらもう1人死んでたっけな」「貴公のような人間がいなかったら,ABさんも死なずに済んだよ」 ABさんのところに持って行っ た奴か」「流山で貴公が盗みをした時,あの部屋に人間が寝ていたらもう1人死んでたっけな」「貴公のような人間がいなかったら,ABさんも死なずに済んだよ」 AU警察官は,原告に対し,10月13日から同月14日にかけて,以 下のような虚偽の発言をし,偽計を用いて原告の自白を獲得しようとした。 「貴公とAAをABさんの家の前で見た人がいるんだよ」「貴公が勝手口の石台に上がってABさんと話していて,AAが道路に立っていたのを,道路を通った人が見ているんだよ,その人が道路に立っていたのがAA で石台に上がってABさんと話していたのが甲だったと断言するんだから駄目だ」 「天網恢々疎にして漏らさずと言って,誰も見ていないと思ってもどっかで人は見ているもんだ。甲もまさか見られているとは思わなかったろうな」「見られてるんだからしょうがねえだろ」ウ 10月14日 AU警察官は,10月14日,以下のような発言をし,原告に本件強盗殺人事件の自白をするように強要した。 「お前が犯人でなくてどこに犯人がいるんだ,お前のような人間がいなかったらこんな事件も起きなかったよ」AU警察官は,同日,以下のような虚偽の発言をし,偽計を用いて原告 の自白を獲得しようとした。 「貴公の母ちゃんも,やったことは仕方ないんだから一日も早く素直になって話せ,と言ってるんだぞ」「会わせられないが,言ったのは本当だから話してみろ」AU警察官は,同日,原告が空腹なので食べ物を買ってきてほしいと頼 んだのに対し,以下のような発言をし,利益誘導をして原告の自白を獲得しようとした。 「それ(原告のお金で何か買ってきてやること) 警察官は,同日,原告が空腹なので食べ物を買ってきてほしいと頼 んだのに対し,以下のような発言をし,利益誘導をして原告の自白を獲得しようとした。 「それ(原告のお金で何か買ってきてやること)はできないけれども,魚心あれば水心だ」AU警察官は,同日午後12時頃,以下のような発言をし,本件強盗殺 人事件の自白をするように強要した。 「眠らせてくれと言うのがやましい証拠で,犯人の証拠なんだ」エ 10月15日 AU警察官は,10月15日の本件ポリグラフ検査の約30分後,以下のような虚偽の発言をし,偽計を用いて原告の自白を獲得しようとした。 「貴公の言うことは全て嘘と出たよ,もう駄目だから本当のことを話し てみろ」 AU警察官は,同日,以下のような虚偽の発言をし,偽計を用いて原告の自白を獲得しようとした。 「そりゃ,お前さんが出されちゃ困るというなら,(新聞に)出さないようにするよ」 AU警察官は,同日,原告が本件強盗殺人事件を犯したという外形的な事実を認めた後,原告との間で以下のようなやり取りをし,原告の供述を誘導した。 AU「それじゃ,話をしていた時のABさんの服装を訊くがら,よく思い出してみてくれ。」 原告「(判らないので) 覚えてないですよ。」AU「家の中から出て来た時にどんな服装だったが,長袖が,半袖がぐらいおぼえてるだろ。」原告「(夏だから長袖もないだろうと) 半袖だったがな。」AU「半袖な,どんな色だった,黒が,白が。」 原告「(夏のシャツは白だろうと) 白っぽい奴でしたね。」AU「白いシャツな,じゃズボンはどんな奴だった。」原告「(判らないので) 忘れちゃったですね。」AU「色ぐらい判るだろ,黒っぽかったとが,白っ のシャツは白だろうと) 白っぽい奴でしたね。」AU「白いシャツな,じゃズボンはどんな奴だった。」原告「(判らないので) 忘れちゃったですね。」AU「色ぐらい判るだろ,黒っぽかったとが,白っぽがったとが。」原告「(夏に黒ズボンもないだろう,と) そういえば,白っぽがったがな あ。」 AU「いや,違うんじゃねえが,良く考えてみろ。」原告「(それじゃ黒なのかと) あれ,黒っぽかったんだっけがなあ。」AU「いや違うべー,覚えてるだろ他にも考えてみろ。」原告「(白も黒も違うとなると,ズボンの色としては青系統かと) 青だったかな。」 AU「そうがあ,違うんじゃねえが。」原告「(それじゃ茶系統あたりでもあるかと) はっきりしないけど,茶色っぽがったのがな。」AU「そうが,そうが,茶色な。茶色っても少し薄っぽがったんじゃねえが。」 原告「(そう言うならそうだろうと) そんな感じでしたね。」AU「それはどんなズボンだった。」原告「(判らないので) はっきり覚えてません。」AU「普段穿いているようなのが,新しいのがぐらい覚えてるだろ。」原告「(家にいるのに新しいズボンも穿くまいと) 普段着みたいでした ね。」AU「どうだ,それは作業着みたいな奴じゃないが。」原告「(薄茶の作業着というのでは,ビル清掃をしていた時に着たことのあるカーキ色の作業ズボンのことでも言ってるのだろう,と思って) そうですね,カーキ色の作業ズボンのようでした。」 オ 10月16日 AU警察官は,10月16日,以下のような発言をし,原告に自白を維持するように強要した。 「ゆうべ泊まりの看守さんに,俺はやってないなんて言ったらしいが,そんなことだから本当のことが話せないんだ」 0月16日,以下のような発言をし,原告に自白を維持するように強要した。 「ゆうべ泊まりの看守さんに,俺はやってないなんて言ったらしいが,そんなことだから本当のことが話せないんだ」 AU警察官は,同日午前中,原告との間で以下のようなやり取りをし, 原告の供述を誘導した。 AU「そのときおまえはどうしたんだ」原告「私は勝手口にいて道路の方に行った」AU「いや違うだろ。違うんじゃねえか,よく考えてみろ」「お前も一緒に家の中に入ったんじゃねえか,じゃねえど,おがし いど」「そう拗ねないで,どうせわかることだから話してみろ」 AU警察官は,同日午後,原告との間で以下のようなやり取りをし,原告の供述を誘導した。 ①AU「そうかあ,違うんじゃねえか」 「足の裏に柔らかくでこぼこした感じとか,硬がったとかぐらい覚えているだろう」「それはどんな感じだった,畳のようなんじゃながったか」「その部屋の8畳間に入るあたりに何か置いてながったか」「夏に使うもので首振るやつがあったろ」 「押し入れはどこにあったんだ」原告「右です」AU「どうだ,出入り口近くに作ってあったんじゃねえか」AU「出入り口の左側に何かなかったか」原告「タンスだったかなあ」 AU「それじゃ違うだろ,似たようなものがあっただろ」AU「(ロッカーは)1つの高さだったのか,それとも2つ積んでそれくらいになっていたのか」AU「ロッカーの窓よりには何か置いてながったか」「なんか台のようなものがあったはずだな」 AU「机の上に何か置いてながったか」 「四角い大きな箱のようなものだったけど判らないが」「木か,段ボールか」「電気製品の箱のようじゃながったか」 ったはずだな」 AU「机の上に何か置いてながったか」 「四角い大きな箱のようなものだったけど判らないが」「木か,段ボールか」「電気製品の箱のようじゃながったか」②原告「被害者をワイシャツで縛った。」AU「もう1つ何かで縛ったろ。」 原告「興奮してたのではっきりしませんが,布切れのようなもので縛ったかも知れません。」AU「それは何だった,よく考えろ。」原告「シャツだったかな。」「ズボンみたいなものだったかな。」 AU「何か細長い物があったろ。」原告「帯紐のようなものだったかな,…手拭だったかな。」AU「それに似たような物があったろ。」原告「タオルだったかな。」AU「そのタオルは普通と較べてどうだった。」 原告「(普通の物と違うような言い方なのでバスタオルでもあるのだろうと)大きいタオルでした。」③AU「縛った時のABさんの足は素足だったか。」原告「素足でした。」AU「そうかあ,良く考えてみろ。」 原告「靴下を履いていたかも知れません。」AU「その靴下はどんな色だった。」(AU警察官は,原告が当推量で「青っぽかったかな。」と答えた時に,その答えを大学ノートに書いた上で)「それは青一色だったか,それとも,色が混じってたか。」 原告「(これは柄もの靴下なのだなと思い,)黄色が混じったものだっ たかな。」カ 10月17日AU警察官は,10月17日,以下のように発言し,捜査機関のイメージに沿う供述をするように強要した。 「甲 ,いい加減に全部話したらどうだ。AAはとっくに掴まっていて, 泣いて両手をついて謝って,甲が首を絞めて殺したととっくに詳しく話しているんだぞ」キ 10月18日A した。 「甲 ,いい加減に全部話したらどうだ。AAはとっくに掴まっていて, 泣いて両手をついて謝って,甲が首を絞めて殺したととっくに詳しく話しているんだぞ」キ 10月18日AU警察官は,10月18日,以下のような発言をし,捜査機関のイメージに沿う供述をするように強要した。 「お前も金をとってきたはずだ」「言いづらいだろうが,どうせ同じことなんだから話してみろ」「お前もAAに金を見せたそうじゃないか」ク 10月20日AU警察官は,10月20日午後,原告との間で以下のようなやり取りを し,原告の供述を誘導した。 AU「(ABさんの家から逃げ出して布佐駅に行くときに)栄橋の上に何が止まっているのを見なかったか」原告「ジープが止まっていたな」AU「ジープとは違うだろ」 「その車には屋根がついていたか」ケ 10月21日 AU警察官は,10月20日の夜にアリバイの主張をし,本件強盗殺人事件の犯行を否認した原告に対し,同月21日から同月24日までの間に,以下のような発言をしたり,原告とのやり取りをするなどして,捜査機関 のイメージに沿う供述をするように強要した。 ①「AAが,お前に金を分けたと言ってるんだが,もらったんじゃねえが」「どうせ同じことなんだから話してみたらどうだ」②AU「栄橋の石段のところで何があったろ」原告「石段を駆け上がったときに怒鳴ったことですか,でもこの話は9月1日ですよ」 AU「それはおまえの勘違いだ,3人が8月28日と言ってんだから間違いない,お前1人が言うことよりも3人が言うことの方が正しいだろ」 AU警察官は,10月2 月1日ですよ」 AU「それはおまえの勘違いだ,3人が8月28日と言ってんだから間違いない,お前1人が言うことよりも3人が言うことの方が正しいだろ」 AU警察官は,10月21日から同月24日までの間に,原告との間で以下のようなやり取りをし,原告の供述を誘導した。 ①AU「首を絞めたときに何か喉にあてたろ」原告「覚えていません」AU「判んねえが,良く考えてみろ」「AAが口の中に入れた物と同じ物をあてたんじゃないが」原告 (原告は,本件逮捕に係る逮捕状の記載から,被害者の口の中 に押し込まれた物が木綿のパンツであることが分かり,以後,そのように供述を合わせた。)②AU「大きな抽斗から何か引っ張り出したろ」原告「判りません,覚えていません」AU「2つ折りになる奴で四角い物を張り出したはずだな」 原告「さあ判りませんね」AU「AAが盗ってきたのと同じ物があったろ」原告(それまでのやり取りでAAが盗ったのは財布だという話になっていたので,原告はAUが求めている答えは札入れだと分かった。) AU「その財布を持った感じは,普通だったか,それともでこぼこし た感じだったか」原告「(聞く以上は普通じゃないのだろうと考えて)そういえばでこぼこした感じでした。」AU「それは,何か彫ったような感じじゃながったか」原告(財布の色については,「黒だったかな」「青だったかな」と答 えていって,何度か答えたときに,「茶色だったかな」と正解を言うことができた。)AU「机から財布を取り出した時に何がおっことしたろ」「財布の中がらおっこったろ」コ 10月23日 AU警察官は,本件強盗殺人事件の犯行について10月22日に再度自白 た。)AU「机から財布を取り出した時に何がおっことしたろ」「財布の中がらおっこったろ」コ 10月23日 AU警察官は,本件強盗殺人事件の犯行について10月22日に再度自白した原告との間で以下のようなやり取りをし,捜査機関のイメージに沿う供述をするように強要した。 AU「我孫子駅でAAと会ったところから話してくれ」原告「ベンチに座っているとAAが来た・・・」 AU「そこで会ったのと違うだろ,我孫子で列車の表と中になってAAと話したろ」原告「それは8月31日のことですよ」AU「いや,ちゃんと見たという人がいるんだから間違いないんだ」サ 10月26日 AU警察官は,10月26日,原告との間で以下のようなやり取りをし,原告の供述を誘導した。 AU「実は28日は野方のアパートに泊まっているとお前の兄さんが言ってるけどどうなんだ」原告「今更何を言ってるんですか,兄のアパートは調べてあって違うとい ったじゃないですか。柏の旅館も裏付け捜査で間違いないと言った じゃないですか」AU「お前の兄さんが勘違いしていたんだから仕方ないじゃないか」「なぜ今まで兄さんのアパートに泊まっていたことを隠していたんだ」原告「AUさんが泊まっていないと言ったからじゃないですか」AU「そりゃ,お前も兄さんに心配や迷惑を掛けまいと思ったんだろうけ どな」シ 10月27日AU警察官は,10月27日,原告との間で以下のようなやり取りをし,原告の供述を誘導した。 AU「お前,裏の便所からでたそうじゃないか」 原告「そんな覚えはないですよ」AU「首を絞めたことを話しているんだから,こんなことは隠す必要ないだろ」 AU 。 AU「お前,裏の便所からでたそうじゃないか」 原告「そんな覚えはないですよ」AU「首を絞めたことを話しているんだから,こんなことは隠す必要ないだろ」 AU「便所に入る右側に何が積んでながったか」原告「大工道具だったかな」 AU「違うだろ」原告「本だったかな」AU「いくつかに纏めて縛った奴があったろ」「きちっとは積んでないだろ,でこぼこしてたの判んながったか」 AU「(原告が8月28日に原告の兄のアパートに泊まったことにすると, 柏でAAに1000円もらった話(乙334・10.24員面)が合わなくなるので,3万1000円もらったことに訂正したが,その訂正の理由について)細かなことを言わながったのは,裁判でひっくりかえそうと思ったんだろ。」ス 10月28日 AUは,10月27日夜にアリバイを思い出したと主張した原告に対し, 同月28日夜,以下のような虚偽の発言をし,偽計を用いて自白を維持させようとした。 「お前の言ったことは全部調べてみたが,嘘だったよ」「俺もお前が犯人じゃない方がいいと思ったんだがな。本当のことを話せや」 セ 10月29日AU警察官は,原告に対し,10月29日から11月3日までの間に,原告の供述に訂正すべき点があれば,「何で今迄黙ってたんだ。」,「2人で約束があったんじゃねえが。」と発言したり,原告がAAの供述と齟齬する供述をすると,「裁判でも無罪になると思ってたんじゃねえが。」と発言し たりするなどして,原告の供述を誘導した。 ソ 11月3日AU警察官は,原告に対し,原告が被害者方の8畳間のロッカーを鍵で開けたと作り話をし と思ってたんじゃねえが。」と発言し たりするなどして,原告の供述を誘導した。 ソ 11月3日AU警察官は,原告に対し,原告が被害者方の8畳間のロッカーを鍵で開けたと作り話をしていた件に関して,「タンス」,「玄関」,「金庫」,「上のロッカー」,「下のロッカー」等と書かれた名札がそれぞれ付されている 鍵の束を見せながら,どの鍵でロッカーを開けたのか説明するように指示し,原告の供述を誘導し,原告が鍵に刻印された番号によってロッカーの鍵を特定したかのような供述録取書を作成した。 タ 12月1日 12月1日以降の原告の取調べは,留置場内看守仮眠室で行われ,原告 は,心理的な圧迫を受けた。 原告は,同日以降の取調べにおいては,取調べ受忍義務がないことの告知を捜査機関側から受けなかった。 AU警察官は,同日以降の原告の取調べにおいて,原告が取調べに応じたくないと述べたにもかかわらず,以下のように発言し,原告に否認を続 けた場合の不利益を強く印象付けて脅迫することで,再度自白をさせよう とした。 「いやおれはお前のためを思って親切でやっているんだ,お前はもう犯人になるんだと,今までつくった調書が犯人だからどうでもいいんだ」「俺はお前のためを思ってやっている,大変なことになるぞ,多分死刑もあるぞ」 「認めればお上の何とかもお慈悲」 AU警察官は,同日以降の取調べにおいて,AR検察官に本件強盗殺人事件の犯行を否認する旨の供述をした原告に対し,以下のように発言し,再度自白するように強要した。 「検事様のところで気が変わったのはどうしてなんだ」 「お前の言うことなど検事様は信じてないよ。甲の気持ちが変わったのを直せるのはAUさ 下のように発言し,再度自白するように強要した。 「検事様のところで気が変わったのはどうしてなんだ」 「お前の言うことなど検事様は信じてないよ。甲の気持ちが変わったのを直せるのはAUさんしかいないから,どうして気持ちが変わったのかを良く見てくれって検事様に頼まれて身柄を貰ってきたんだから,どうして気持ちが変わったんだが話してみろ」チ 12月22日 AU警察官及びAV警察官は,12月22日から同月27日までの取調べにおいて,原告を留置場内看守仮眠室に入れ,「もう変な気をおこすんじゃねえぞ」,「裁判になっても本当のことを話すんだぞ」などと言い続け,再び原告が本件強盗殺人事件の犯行を否認しないよう強要した。 ⑶ 原告に対する取調べについて ア長期間及び長時間にわたる取調べ並びに再逮捕・再勾留との比較による違法原告は,再逮捕・再勾留が極めて限定的に認められているにとどまることとの比較を指摘しつつ,10月13日から11月3日までの合計22日間において,一日も欠かすことなく本件強盗殺人事件について原告の取調べがさ れたほか,原告が逆送された12月1日以降も連日取調べがされており,そ れらの取調べの時間も長時間であったと主張して,そのこと自体をもって,警察官による原告に対する取調べが国賠法上違法である旨主張する。 しかし,原告についての身柄拘束自体に違法が存しないことは,前記1において説示したとおりである。 また,本件強盗殺人事件は,人命が奪われた重大な犯罪であって,本件強 盗殺人事件の全容を解明する必要性は極めて高かったものというべきであるにもかかわらず,本件強盗殺人事件の犯行状況を直接目撃した者が存在しないため,その犯行状況を解明するためには,被疑者に対す 盗殺人事件の全容を解明する必要性は極めて高かったものというべきであるにもかかわらず,本件強盗殺人事件の犯行状況を直接目撃した者が存在しないため,その犯行状況を解明するためには,被疑者に対する取調べの期間及び時間が長期ないし長時間にわたることもやむを得ないものといわざるを得ない。 上記の観点からすれば,原告の取調べの期間自体が社会通念上相当と認められる限度を超えたものということはできないし,原告が主張する1日当たりの最長の取調べ時間は10月14日の合計715分であるが,同日の取調べの実施時刻をみると,昼食時間を避けた上,適宜休憩をしながら取調べが実施されていることが認められ(乙463,464により認定することがで きる。),原告の取調べが徹夜に及んだ等の事実が認められないことなどに照らすと,原告の取調べ時間の長さ自体が社会通念上相当と認められる限度を超えたものであるということもできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ 10月12日から原告が同月15日に自白するまでの取調べ 原告は,BP警察官が10月12日に勾留状の余白部分は原告を何日も取り調べられるように空けてある旨の発言をした旨主張する。 しかし,上記発言があったことを認めるに足りる的確な証拠はないから,原告の上記主張は採用することができない。なお,昭和43年3月9日付けの原告の手記及び昭和49年10月26日付けの原告の上告趣意書には, 上記発言があった旨の記載が存在するが(甲B6,44の3により認定す ることができる。),いずれも上記発言があったと原告が主張する10月12日から相当期間が経過しており,原告の記憶の正確性に疑問が残るほか,確定審第一審第1回公判期日である昭和43年2月15日(乙9 ることができる。),いずれも上記発言があったと原告が主張する10月12日から相当期間が経過しており,原告の記憶の正確性に疑問が残るほか,確定審第一審第1回公判期日である昭和43年2月15日(乙99により認定することができる。)の後に記載されたものであることを踏まえると,第1回公判期日を経て本件強盗殺人事件について処罰される可能性 を現実的に感じた時期以降に記載されたものといえ,原告が自己に有利な事情を誇張して記載する動機も高まっていたことがうかがわれるから,上記各記載の存在をもって上記発言があったものと認定することはできない。 原告は,10月13日以降の取調べの実施場所を留置場内看守仮眠室にしたことが,原告に対して心理的圧迫を加えるものであり,違法である旨 主張する。 しかし,上記事実のみをもって,原告が任意に供述することが困難となるものとはいえないから,原告の上記主張は採用することができない。 原告は,AU警察官が,8月28日はAAと光明荘に泊まったと供述する原告に対し,10月13日,既にALがそれを否定する供述をしている 旨の発言をしたと主張する。 原告がAU警察官に宛てて書いた11月18日付けの手紙には,「AUさん,貴方達の失敗は私が最初に二十八日は思い出せぬといった話で決めた事です。思い出せぬの当たり前でしょう。兄の家へ泊まっていないと頭から決められてはネ」との記載が存在し(甲B9により認定することがで きる。),昭和43年1月31日付けの原告の手記には,「十月十日からの調べでは,“兄の所に泊っていない”と言うAUさんの言葉が障害となって,思い出せなかったのである。」との記載が存在している(甲B44の2により認定することができる。)。上記発言があったとされる時点と比較的近接した時期 泊っていない”と言うAUさんの言葉が障害となって,思い出せなかったのである。」との記載が存在している(甲B44の2により認定することができる。)。上記発言があったとされる時点と比較的近接した時期に作成された複数の書面に,上記発言の内容に沿う記 載があることに照らすと,10月13日の時点において上記発言がされた ものと認められる。 そして,同日時点において,原告は8月28日には光明荘に泊まっていない旨の供述をALがしていたことをうかがわせる証拠はなく,かえって,10月28日付けの捜査報告書(乙552)によれば,ALは,原告とAAが8月28日夜は光明荘に泊まっていた旨述べたというのであるから, 上記AU警察官の発言は,虚偽の事実を述べたものというほかなく,かかる取調べは偽計を用いたものとして違法というべきである。 この点につき,AU警察官は,上記発言をしていない旨供述するが,AU警察官は,後記のとおり,10.17原告録音テープの存在について虚偽の証言をするなど,取調べの状況等について自己保身的な供述をしてい るものといわざるを得ないことに照らすと,この点に関するAU警察官の供述を採用することはできない。 なお,原告が確定審第一審の裁判官宛てに作成した昭和44年1月24日付けの上申書には,原告は,AU警察官による上記発言がされる前から,8月28日前後の出来事については明瞭に説明できるのに同日夕方から夜 の出来事についてのみ思い出せていない状態であって,その理由としては,AAと光明荘に泊まった出来事が2回あったことなどが考えられるという記載が存在するところであって(乙388により認定することができる。),原告の記憶喚起に支障を生じさせた唯一の原因がAU警察官による上記発言の存在であったとまでは認められないが どが考えられるという記載が存在するところであって(乙388により認定することができる。),原告の記憶喚起に支障を生じさせた唯一の原因がAU警察官による上記発言の存在であったとまでは認められないが,原告の記憶喚起に何らかの支 障を生じさせた可能性は否定できないから,この点により上記判断は左右されない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月13日に本件強盗殺人事件の犯行を認めた方が有利であるとか,犯行を否認していれば死刑もあり得る旨の発言をしたと主張する。 しかし,仮に,上記発言があったとしても,一般論としては,犯行を自 白して悔悟の念を示したことは有利な情状になり得るものであるし,強盗殺人罪の法定刑に死刑があることは事実であることからすれば,上記発言をもって,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官が, 告に本件強盗殺人事件の自白をするように強要したと主張する。 しかし,仮に,上記発言が存在したとしても,そのことのみをもっては,心理的強制により任意に供述をすることができなくなるとまではいい難い上,原告が確定審第一審の裁判官に宛てて作成した昭和44年1月24日付けの上申書には,上記発言を受けて,「私だって黙ってた訳ではありま せん。言われて口悔しい事には暴言も吐きました。」という記載があり(乙388により認定することができる。),原告がAU警察官に対して暴言を述べていたことが認められるのであって,原告が威迫されていたとは認められない。また,原告は,10月13日時点において,8月28日前後の出来事については明瞭に説明できるのに同日の出来事についてのみ説明 ができておらず(乙401により認定するこ れていたとは認められない。また,原告は,10月13日時点において,8月28日前後の出来事については明瞭に説明できるのに同日の出来事についてのみ説明 ができておらず(乙401により認定することができる。),原告がその理由について合理的な説明をしていたことを認めるに足りる証拠がない上,前記第2の1⑸ウのとおり,原告は9月2日における茨城県警による聴取調査の際にも8月28日頃の勤務先及び出勤状況等について虚偽の説明をしていたことに照らすと,それらの事実のみをもって本件強盗殺人事件の 犯人であるということができないのは当然であるけれども,8月28日の出来事について説明できないのは原告にとって不都合な事実が存在するからではないかという疑念を抱くこと自体はやむを得ないものといわざるを得ない。 したがって,仮に,上記発言が存在したとしても,社会通念上相当と認 められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということ はできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月13日から同月14日にかけて,原告とAAを被害者方付近で見たという目撃者が存在する旨の発言をしたと主張する。 原告がAU警察官及びAV警察官に宛てて作成した11月14日付けの 手紙には,「お前さんが殺さなかったらあの日にABさんと話をしたのを見たという人もいないだろう」との記載が存在する(甲B8により認定することができる。)。また,原告の手記のうち,同月23日付けの部分には「現場で見た人が居る」との記載が存在するほか,同月24日付けの部分には「自分が犯行現場に居たのを見た人が居るとか,お前達がd に行 かなければ見たと云う人も居ぬとか言われ」との記載が存在する(乙389により認定することができる。)。上記発言があったとされる時期 「自分が犯行現場に居たのを見た人が居るとか,お前達がd に行 かなければ見たと云う人も居ぬとか言われ」との記載が存在する(乙389により認定することができる。)。上記発言があったとされる時期の約1か月後という比較的近接した時期に作成された複数の書面に,上記発言の内容に沿う記載があったことに照らすと,表現に誇張がある可能性があるとはいえ,AU警察官から上記発言を受けたという原告の供述(乙41 6)の信用性は高いものということができるから,AU警察官が上記発言をしたことが認められる。 そして,上記発言がされた時期においては,被害者宅で原告を目撃した旨の供述をした者がいたことは認められないから,上記発言は,虚偽の事実を述べたものというほかなく,かかる取調べは偽計を用いたものとして 違法であるというべきである。 この点につき,AU警察官は,上記発言をしていない旨供述するが,前,この点に関するAU警察官の供述を採用することはできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月14日,「お前が犯人でな くてどこに犯人がいるんだ,お前のような人間がいなかったらこんな事件 も起きなかったよ」という発言をし,本件強盗殺人事件の自白を強要したと主張する。 しかし,上記発言をすることが適切か否かは別として,仮に,上記発言が存在したとしても,そのことのみをもっては,心理的強制により任意に供述をすることができなくなるとまではいい難いから,社会通念上相当と 認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月14日,原告の母が本件強盗殺人事件を犯してしまったことは仕方ないから早く自白するようにと言っている旨の虚偽の発言をし されたものということはできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月14日,原告の母が本件強盗殺人事件を犯してしまったことは仕方ないから早く自白するようにと言っている旨の虚偽の発言をしたと主張する。 原告が作成した11月24日付けの手記には,「お前のお袋もやって仕舞った事は仕方がない。こんな事も世間にない事でないし,今度も今度もと続けられては困るから・・・」及び「本当に母が言ったかとデカに聞いたら“当たり前だ”」との記載が存在するから(乙389により認定することができる。),上記発言があったとされる時期と比較的近接した時期に作 成された書面に上記発言の内容に沿う記載があったといえる。また,原告は,確定審第一審のAU警察官の証人尋問において,AU警察官に対し,「十四日の午後の四時ごろでしたが,お前の母ちゃんもやっちゃったことは仕方ないから早く話せと言ってると言われたことあるんですよ」と質問しており(乙379により認定することができる。),一貫して上記発言 があった旨主張している。これらに照らすと,上記発言があったことが認められる。 そして,AU警察官が,原告の母親が早く自白するように原告を諭すような発言を聴いたとは供述していないことに照らすと(乙379),原告の母親がかかる発言をしたものとは認められないから,AU警察官による 上記発言は,虚偽の事実を述べたものというほかなく,かかる取調べは偽 計を用いたものとして違法であるというべきである。 この点につき,AU警察官は,上記発言をしたことはなく,一般論として,子供を持つ母親としては警察に子供がいるというのは心配である旨のたとおりの理由で,この点に関するAU警察官の供述を採用することはで きない。 原告は,AU警察官が,空 般論として,子供を持つ母親としては警察に子供がいるというのは心配である旨のたとおりの理由で,この点に関するAU警察官の供述を採用することはで きない。 原告は,AU警察官が,空腹を訴える原告に対し,10月14日,「魚心あれば水心だ」という発言をし,利益誘導をもって原告の自白を獲得しようとした旨主張する。 しかし,その当時,原告に必要な食事を摂らせていなかったことを認め るに足りる証拠はないから,当時の原告の年齢が20歳と若年であり,世間知らずな面があり得るということを踏まえてもなお,原告が,食べ物を買い与えられるという程度の利益と,本件強盗殺人事件という重大な犯罪について自白することによって生じる大きな不利益との差を理解できなかったとは考え難い。また,原告は,確定審第一審の第24回公判期日のA U警察官の証人尋問において,「食べ物を食わしてもらったからあの調書作りに協力したということはないからどうでもいいんですよ。だけどあんた嘘をつくから。」,「あんたに食べさせてもらったからあんな調書作りに協力したということはないからとかくいうことはないですけど,とにかく,食わしてくれたことはあったでしょう。」などと質問していることに 照らせば(乙379により認定することができる。),AUの上記発言によっては虚偽の自白が誘発されなかったものと認められる。さらに,上記発言は,自白をすれば食べ物を買い与える旨明言したものではなく,そのように解釈し得る表現であるにとどまるものということもできる。 したがって,仮に,上記発言があったとしても,社会通念上相当と認め られる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということは できない。 原告は,AU警察官が,10月15日に実施された本 言があったとしても,社会通念上相当と認め られる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということは できない。 原告は,AU警察官が,10月15日に実施された本件ポリグラフ検査の30分後,本件ポリグラフ検査の結果,原告の供述は全て嘘であるという結果が出たという虚偽の発言をしたと主張する。 確かに,原告が作成した昭和43年1月12日付けの手記には,「公判 で,一つ聴いてみよう。“嘘発見器”のことを。AUさんは,俺が嘘を言ってると出たと言ったがもしあの時言った事が嘘と出たのなら,あの機会は“嘘作成機”としかいいようがない」との記載が存在するほか(乙389により認定することができる。),原告が確定審第一審第24回公判期日におけるAU警察官の証人尋問の際,「私は嘘発見器をかけられるとき 嘘発見器というものは九十八パーセントの確率であると言われたもんでこれですべてがわかるだろうと思ってたんです。それでかけてもらったのですよね。ところが三時ごろ嘘発見器の調べが終わりましたね。それから又調べを再開してそのときあんたは何と言ったか分かりますか。甲 ,お前の言ってることはすべて嘘であるぞ,お前の言ってることは嘘と出たと言 ったんじゃないですか」と質問していることが認められる上(乙379により認定することができる),原告が本件強盗殺人事件について最初に自白をしたのが本件ポリグラフ検査をした直後であったという状況をも併せ考えると,上記発言があったようにも思われる。 しかし,原告が初めて本件強盗殺人事件について自白したのは,本件ポ リグラフ検査の2時間程度後であるという状況を踏まえれば,仮に,上記発言があったとすれば,その存在が上記自白に至る極めて重要な契機となったものと考えられ,原 事件について自白したのは,本件ポ リグラフ検査の2時間程度後であるという状況を踏まえれば,仮に,上記発言があったとすれば,その存在が上記自白に至る極めて重要な契機となったものと考えられ,原告にとって極めて印象深い発言であったものと考えられる。それにもかかわらず,原告が作成した昭和43年1月12日付けの手記に上記記載があるほかは,それまでの間に,この点に関する記載 が原告の手記にあったことは認められない上,原告がAU警察官及びAV 警察官に宛てた11月14日付け及び同月18日付けの手紙にも何らこの点に関する記載がないことは(甲B8,9により認定することができる。),不自然であるといわざるを得ない。 したがって,上記発言があったものとは認められない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月15日,本件強盗殺人事件 についての記事を掲載しない旨の虚偽の発言をしたと主張する。 原告がAU警察官及びAV警察官に宛てた11月14日付けの手紙には,「私は新聞には出さないでと頼んだと思います」,「その時私の気持は新聞にさへ出なかったら自分一人さえ我慢すれば,必ず犯人が捕まる人があるんだから堪えろ堪えろと心に呟き掛けて今日まで来ました」との記載が 存在し(甲B8により認定することができる。),原告の同月18日付けの手紙には,「なぜ新聞になど発表してしまったのですか。私はAUさんが発表せぬと云うので嘘の供述をしました」との記載が存在する(甲B9により認定することができる。)。また,原告が作成した同月24日付けの原告の手記には,「デカはこの時に絶対新聞に出さぬと約束した」との 記載が存在する(乙389により認定することができる。)。さらに,原告は,12月4日の取調べにおいても「新聞にだけは世間様をはじるから には,「デカはこの時に絶対新聞に出さぬと約束した」との 記載が存在する(乙389により認定することができる。)。さらに,原告は,12月4日の取調べにおいても「新聞にだけは世間様をはじるから出さないでくれと頼んだのに新聞に出した」と供述しており(甲B36により認定することができる。),原告において,上記発言があったと一貫して主張していたことが認められる。 この点につき,AU警察官は,悪いことをすれば新聞には掲載される旨答えたと供述している(乙378により認定することができる。)。しかし,記載のとおり,取調べ状況に関するAU警察官の供述は信用性が乏しいことからすると,上記供述についても採用することができない。 また,上記各手紙,手記及び原告の取調べにおける供述を踏まえると,原 告において,原告が本件強盗殺人事件について自白した旨の新聞記事が掲 載されることに強い抵抗感があったことがうかがわれるにもかかわらず,原告が,新聞には掲載されるであろうというAU警察官の発言を聴いた直後に本件強盗殺人事件について自白したというのは不自然である上,AU警察官も原告が自白する前に新聞に掲載されることが心配である旨の発言をしたこと自体は認める旨の供述をしていることを踏まえると,AU警察 官による上記発言があったと認めるのが相当である。 そして,本件強盗殺人事件について原告が自白した旨の新聞記事が掲載されたこと(原告本人により認定することができる。)からすれば,上記発言は,虚偽の事実を述べたものというほかなく,かかる取調べは偽計を用いたものとして違法であるというべきである。 原告は,AU警察官が,10月15日に前記⑵エ記載のやり取りによって,原告の供述を誘導した旨主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを 用いたものとして違法であるというべきである。 原告は,AU警察官が,10月15日に前記⑵エ記載のやり取りによって,原告の供述を誘導した旨主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,一般的に,被疑者は,犯行状況や犯行現場の状況について積極的に供述する動機に欠ける場合もあり得る上,被疑者の記憶が後退しており,そ の記憶を喚起する必要がある場合も存在するから,誘導尋問がおよそ許されないということはできない。そして,本件においては,原告が作成した11月10日付けの手記には「俺があまり警察で演技をしすぎた失敗である」との記載が存在するほか(乙389により認定することができる。),原告が確定審第一審の担当裁判官宛てに作成した昭和44年12月22日付けの上 申書には,「調べ人の誘導に対し,私の知る事件の様子を交えて犯人らしく装い,躊躇なく答えて行ったのです。」との記載が存在するなど(乙388により認定することができる。),原告自身が,積極的に誘導尋問に応じたことがうかがわれるのであって,記憶の喚起等の目的を超えて,上記やり取りがあったとまでは認められない。 ウ 10月16日から11月3日までの取調べについて 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月16日,原告が看守に俺はやっていない旨の発言をしたことを捉えて,そんなことだから本当のことが話せないんだと発言したと主張する。 しかし,上記発言をすることが適切か否かは別として,仮に,上記発言が存在したとしても,そのことのみをもっては,心理的強制により任意に 供述をすることができなくなるとまではいい難いから,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものというこ としても,そのことのみをもっては,心理的強制により任意に 供述をすることができなくなるとまではいい難いから,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官との間で,10月16日に前記やり取りが存在し,供述を誘導されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,前記イにおいて説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月17日に前記⑵カ記載の発 言をしたと主張する。 しかし,上記発言の存在を認めるに足りる証拠はない。 また,仮に,上記発言が存在したとしても,そのことのみをもっては,心理的強制により任意に供述をすることができなくなるとまではいい難いから,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調 べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月18日に前記⑵キ記載の発言をしたと主張する。 しかし,上記発言の存在を認めるに足りる証拠はない。 また,仮に,上記発言が存在したとしても,そのことのみをもっては, 心理的強制により任意に供述をすることができなくなるとまではいい難い から,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,10月20日に前記⑵ク記載のやり取りが存在し,供述を誘導されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はな がされたものということはできない。 原告は,10月20日に前記⑵ク記載のやり取りが存在し,供述を誘導されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に上記やり取りがあったとしても,前記イにおいて説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,10月21日に前記のイメージに沿う供述を強要されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,そのことのみをもっては,心理的強制により任意に供述をすることができなくなるとまではいい難いほか,前記イにおいて説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものとい うことはできない。 原告は,10月21日から同月24日までの間に前記取りが存在し,供述を誘導されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,前記イにおいて説示したものと同様の理由で,社会通念上相当 と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,10月23日に前記⑵コ記載のやり取りが存在し,捜査機関のイメージに沿う供述を強要されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,前記において説示し たものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはでき また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,前記において説示し たものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,10月26日に前記⑵サ記載のやり取りが存在し,供述を誘導されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,前記において説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,10月27日に前記⑵シ記載のやり取りが存在し,供述を誘導されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,前記において説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,10月28日に前記⑵ス記載のやり取りが存在し,供述を誘導 されたと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,前記において説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官が,アリバイの主張をした原告に対し,10月28日に「お前の言ったことは全部調べてみたが,嘘だったよ」などと発言したと主張する。 この点について,原告は,確定審第一審第30回公判期日において,「自分はこういうアリバイがあるんだから調 に「お前の言ったことは全部調べてみたが,嘘だったよ」などと発言したと主張する。 この点について,原告は,確定審第一審第30回公判期日において,「自分はこういうアリバイがあるんだから調べてほしいと。ところが,警察の 人は,もう次の日に,君の言ってることは,でたらめだったというんです。 要するに,自分が言ったアリバイのことを調べた様子がないうちに,もう君の言ってることは嘘だと言い出したんです。AUさんが。」と供述しているところ(乙416により認定することができる。),原告の上記供述を前提とすれば,AU警察官は,原告に容易に虚偽であることが気付かれてしまう時期に上記発言をしたことになるが,そのような行動は,偽計に よって原告の自白を維持するという目的に照らして不合理なものといわざるを得ないから,AU警察官が上記発言をしたものとは考え難い。したがって,原告の上記供述は採用することができない。 その他,上記発言が存在したことを認めるに足りる的確な証拠はない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,10月29日から11月3日まで の間に前記⑵セ記載の発言をして原告を誘導したと主張する。 しかし,上記やり取りがあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,仮に,上記やり取りが存在したとしても,前記において説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AU警察官が,11月3日に前記⑵ソ記載のやり取りをして,ロッカーの鍵に関する原告の供述を誘導したと主張する。 原告の同日付けの供述録取書は,被害者宅のロッカーを154と刻印された鍵で開けた旨の記載があるところ,そのような具体的な供 載のやり取りをして,ロッカーの鍵に関する原告の供述を誘導したと主張する。 原告の同日付けの供述録取書は,被害者宅のロッカーを154と刻印された鍵で開けた旨の記載があるところ,そのような具体的な供述が,本件強盗殺人事件の発生日から長期間が経過してされたというのは,極めて不 自然であるといわざるを得ない。そして,AQ検察官は,原告が取調べにおいて,警察官からヒントを与えられたとか,鍵に札がついていたことから番号を知ったなどと供述していた旨供述しているところ(乙376により認定することができる。),かかる供述は,上記やり取りがあったことをうかがわせるものといえる。 これらの事実に照らすと,上記やり取りは存在したものと認められる。 そして,上記やり取りは,原告の記憶を喚起するという限度を超えたものというほかなく,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものとして,違法であるというべきである。 エ 12月1日から12月27日までの取調べについて 原告は,12月1日以降の取調べが留置場内看守仮眠室で行われ,心理 的な圧迫を受けたと主張する。 しかし,上記事実のみをもって,原告が任意に供述することが困難となるものとはいえないから,原告の上記主張は採用することができない。 原告は,12月1日以降の取調べについて,取調べ受忍義務が存在しないことを告知されておらず,違法である旨主張する。 被疑者は,逮捕又は勾留されている場合を除いては,出頭を拒み,又は出頭後,何時でも退去することができる旨規定されているが(刑訴法198条1項ただし書),任意の取調べの際にこのことを告知すべき義務を定めた法令は存在しないから,取調べ受忍義務が存在しないことを告知しなかった 時でも退去することができる旨規定されているが(刑訴法198条1項ただし書),任意の取調べの際にこのことを告知すべき義務を定めた法令は存在しないから,取調べ受忍義務が存在しないことを告知しなかったことをもって,直ちにその取調べが違法であるということはできな い。 もっとも,被疑者において,取調べ受忍義務が存在するものと誤信しているような事情がある場合には,取調べ受忍義務が存在しないことを告知しなかったことにより,任意に取調べがされたことに疑念が生じ得るものというべきであるが,原告がこの点を誤信していたことを認めるに足りる 証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 原告は,12月1日以降の取調べにおいて,取調べに応じたくないと述べたにもかかわらず,前記合の不利益について強く印象付けて脅迫したと主張する。 しかし,原告が取調べを拒否したことを認めるに足りる的確な証拠はな い。 また,仮に,上記発言があったとしても,同日までに原告が本件強盗殺人事件について自白し,その犯行態様等について具体的に供述した供述録取書が作成されていたこと及び強盗殺人罪の法定刑に死刑が含まれることは事実であること等に照らすと,社会通念上相当と認められる方法ないし 態様及び限度を超えた取調べがされたものということまではできない。 原告は,AU警察官が,原告に対し,12月1日以降の取調べにおいて前記するように強要したと主張する。 確かに,原告がAR検察官の取調べにおいて,本件強盗殺人事件につい て否認に転じた後,AU警察官が,同日,原告が否認に転じた理由について取り調べた旨証言していることに照らすと(乙452により認定することができる。),AU警察 おいて,本件強盗殺人事件につい て否認に転じた後,AU警察官が,同日,原告が否認に転じた理由について取り調べた旨証言していることに照らすと(乙452により認定することができる。),AU警察官が,原告に対し,本件強盗殺人事件について否認に転じた理由はなぜかを追及する趣旨の発言をしたことがうかがわれる。 しかし,原告の供述の変遷の経緯から原告の供述の信用性を検討するために自白を撤回した理由を確認することが合理的ではないとはいえないから,この点をもって,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 ⑷ まとめ 上記⑶で説示したとおり,警察官による原告の取調べには国賠法上違法なものが含まれていたものというべきであるから,警察官によるAAに対する取調べ及び目撃者に対する聴取についての違法性を論ずるまでもなく,警察官による取調べには国賠法上の違法があったものというべきである。 3 争点3(検察官による取調べに違法があるか否か)について ⑴ 原告に対する取調べについて ア長期間及び長時間にわたる取調べについて原告は,原告に対する取調べが,長期間及び長時間にわたるものであり,それ自体が国賠法上違法である旨主張する。 しかし,前記2⑶アにおいて説示したものと同様の理由で,余罪窃盗各事件についての起訴前後の取調べに関するものを含め,上記原告の主張は採用 することができない。 イ脅迫的な雰囲気及び言動を用いた取調べについて原告は,AQ検察官が,アリバイの主張をする原告に対し,12月17日頃,「このまま否認していたのでは救われないだろう」と発言し,原告に否認を続けた場合の不利益を印象付けて脅迫したと主張する。 告は,AQ検察官が,アリバイの主張をする原告に対し,12月17日頃,「このまま否認していたのでは救われないだろう」と発言し,原告に否認を続けた場合の不利益を印象付けて脅迫したと主張する。 しかし,AQ検察官は,上記発言はしておらず,「救いようがない。」と発言したにとどまる旨供述しているところであって(乙399により認定することができる。),原告主張に係る上記発言があったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,原告は,確定審第一審第14回公判期日において,上記発言があっ たことにより死刑にされると思った旨供述しているが(乙376,399により認定することができる。),上記発言自体は,抽象的なものであって,本件強盗殺人事件の犯行を否認することが原告に不利な情状になり得ることを示唆したものにとどまると理解することができるものであるから,仮に,上記発言が存在したとしても,これをもって,社会通念上相当と認められる 方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 ウ自白の強要について 原告は,AQ検察官が,原告に対し,12月13日頃,取調べ開始直後にいきなり机を拳で叩いて「この事実を認めるのか,認めないのか」と発言したと主張する。 しかし,取調べ開始直後にいきなり机を拳で叩かれたという出来事は原 告にとっても印象的なものであると考えられるから,仮に,上記出来事が存在したとすれば,原告としては,AQ検察官の証人尋問においてこの点を指摘するのが自然と考えられるが,原告は,AQ検察官の証人尋問においてこの点について何ら指摘をしていないものであって(乙376により認定することができる。),このことからすると,原告の上記主張は採用 することができ られるが,原告は,AQ検察官の証人尋問においてこの点について何ら指摘をしていないものであって(乙376により認定することができる。),このことからすると,原告の上記主張は採用 することができない。 また,仮に,「この事実を認めるのか,認めないのか」という発言が存在したとしても,原告は,本件強盗殺人事件の犯行についての供述を変遷させており,その点を明らかにする必要があったといえるから,上記発言の存在をもって,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を 超えた取調べがされたものということはできない。 原告は,AQ検察官が,原告に対し,12月15日には,別紙「当事者の主張の要旨」3(原告の主張)⑴ウ記載の発言をし,同月17日頃には,同ウ記載の発言をしたと主張する。 しかし,仮に,上記各発言があったとしても,AQ検察官としては,原 告の供述に不合理だと思われる点等があれば,疑問を投げ掛ける必要があったものというべきであるから,上記各発言の存在をもって,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 エ誘導的な取調べについて 原告は,12月12日から同月18日までの間に,別紙「当事者の主張の要旨」3(原告の主張)⑴エ記載のやり取りが存在し,AQ検察官がロッカーの鍵の番号に関する供述を誘導したと主張する。 確かに,AQ検察官が,原告に対し,束になっている鍵の中からなぜロッカーの鍵を選ぶことができたのかという点について問いただしたことは認め られる(乙376により認定することができる。)。 しかし,原告が,AQ検察官に対し,本件強盗殺人事件における自己の体験としてではなく,一般論として,「ロッカーには鍵と鍵 ことは認め られる(乙376により認定することができる。)。 しかし,原告が,AQ検察官に対し,本件強盗殺人事件における自己の体験としてではなく,一般論として,「ロッカーには鍵と鍵穴に番号が刻んであるんですよね」とだけ述べたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,原告が確定審第一審の担当裁判官宛てに作成した昭和44年12月22日付けの上申書には,「調べ人の誘導に対し,私の知る事件の様子を交えて犯人 らしく装い,躊躇なく答えて行ったのです。」との記載が存在するほか(乙388により認定することができる。),原告は,確定審第一審第30回公判期日において,AQ検察官によって録取された12月25日付けの原告の供述録取書の内容について質問された際に,「ただ,とにかく,犯人らしく装っていこうと考えてましたしね。それで,積極的に調書作成に協力したわ けです。」と供述していること等を踏まえると(乙416により認定することができる。),原告は,AQ検察官からの質問に対し,積極的に犯人らしく装うような発言をしていたことがうかがわれる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 なお,警察官が原告に対してロッカーの鍵に関して違法な供述の誘導をし たことは前記2のAQ検察官に対する供述態度に照らせば,AQ検察官がこの点に気が付かなかったことに過失があったものということもできない。 オ余罪窃盗各事件起訴後の取調べについて 再逮捕・再勾留との比較について 前記2⑶アにおいて説示したものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 取調べ受忍義務の不告知について原告は,取調べ受忍 ものと同様の理由で,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 取調べ受忍義務の不告知について原告は,取調べ受忍義務を告知されておらず,国賠法上違法である旨主 張する。 しかし,前記2記主張は採用することができない。 カ逆送後(12月1日以降)の取調べについて 原告は,原告の逆送が違法であるから,12月1日以降の原告の取調べが違法である旨主張する。 しかし,後記4において説示するとおり,原告の逆送自体が違法であるとまではいえないから,原告の上記主張は,採用することができない。 原告は,検察官が,12月18日,同月22日に予定されていた原告の余罪窃盗各事件の第1回公判期日について期日の変更を請求し,同事件の第1回公判期日を延期させたことは,検察官が本件強盗殺人事件に関する 取調べを実施することを目的としたものであり,起訴後の勾留の目的に反するものであって,かかる事実が逆送後の取調べが任意のものではなかったことを示す旨主張する。 しかし,本件訴訟において証拠として提出された余罪窃盗各事件の裁判記録に照らしても,検察官都合による期日の変更の請求であることを超え て,その具体的な理由は不明であるといわざるを得ない。 また,上記変更請求がされた当時,追起訴予定の捜査中の窃盗の余罪(余罪窃盗各事件のうち前記第2の1⑺カの事件)が存在したことが認められることを踏まえると(甲A4,乙223により認定することができる。),仮に,余罪窃盗各事件の第1回公判期日が予定どおり開かれていたとして も,即日結審しなかった可能性も十分あり得るところであって,引き続き勾留が継続され,原告に対し り認定することができる。),仮に,余罪窃盗各事件の第1回公判期日が予定どおり開かれていたとして も,即日結審しなかった可能性も十分あり得るところであって,引き続き勾留が継続され,原告に対して任意の取調べを行うことも可能であったことがうかがわれる。 さらに,余罪窃盗各事件は必要的弁護事件であったところ,同月18日の時点で弁護人が選任されていなかったことに照らすと,同月22日に第 1回公判期日を開くことは極めて困難な状況にあったことがうかがわれる ところであり,これが公判期日の変更請求の実質的な理由であった可能性も否定し得ない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑵ AAに対する取調べについてア原告は,AQ検察官が,アリバイを主張するAAに対し,「窓から窓へわ たることは不可能だ」,「お前の話は誰が信じてくれる。そんなことで助からないぞ。」,「(AR検察官に提出したノートについて)そんなものは見ていない。」と発言したと主張する。 しかし,光明荘の壁から光明荘に隣接するアパートの壁までの距離は,約2.1メートルであったことが11月25日付け捜査報告書から判明してい たところであり(乙286により認定することができる。),かかる状況を踏まえて,AQ検察官が,光明荘の窓から光明荘に隣接する隣のアパートの窓へ渡ったという出来事をアリバイとして主張するAAの供述を信用できない旨発言したとしても,致し方ないものといわざるを得ない。 また,原告とAAがいずれも自白をしていた時期もあり,8月28日に原 告とAAが被害者方に近接する地域にいた旨を供述した者が存在したこと等を踏まえると,仮に,AQ検察官がAAの供述は信用されないのではないかという趣旨の発言等をし た時期もあり,8月28日に原 告とAAが被害者方に近接する地域にいた旨を供述した者が存在したこと等を踏まえると,仮に,AQ検察官がAAの供述は信用されないのではないかという趣旨の発言等をしたとしても,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものということはできない。 イ原告は,AAの12月21日付け検面調書(乙323)の内容に照らすと, 同日におけるAAの取調時間が留置人出入簿(乙455)の記載どおり,午後1時30分から午後1時40分までの10分間であったことには疑いがある旨主張する。 確かに,AAの上記検面調書の内容に照らすと,同日の取調べが10分間であったか否かについては疑念が生じるところであり,留置人出入簿の上記 記載が誤っていることがうかがわれるというべきである。 しかし,留置人出入簿の記載が故意に改ざんされたものとまで認めるに足りる証拠はなく,このこと自体から,長時間又は深夜にわたる取調べがされるなど,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えた取調べがされたものと推認することはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,AAに対して取調べ受忍義務の告知がされておらず,国賠法上の違法がある旨主張する。 しかし,ないことを告知しなかったことをもって,直ちにその取調べが違法であるということはできず,また,AAにおいて取調べ受忍義務が存在すると誤信し ていたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,AAが,AQ検察官による取調べにおいて,腰縄がされ,片手に手錠がされた状態であった旨主張する。 確かに,上記主張に したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,AAが,AQ検察官による取調べにおいて,腰縄がされ,片手に手錠がされた状態であった旨主張する。 確かに,上記主張に沿うAAの供述が存在する(乙632により認定する ことができる。)。 しかし,AAは,確定審第一審第16回公判期日において,AQ検察官からの「私の取り調べに何か無理がありましたか」との質問に対し,「ありません」と述べていたことに照らすと(乙402により認定することができる。),AAの上記供述は採用することができない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 目撃者に対する聴取原告は,検察官による目撃者に対する聴取について暗示及び誘導があった旨主張する。 しかし,原告の主張は,目撃者らの供述の変遷があったことから直ちに暗示 及び誘導があったと主張するものであって,論理の飛躍があるものといわざる を得ない。その他,検察官による目撃者に対する聴取について暗示及び誘導があったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 4 争点4(代用監獄への移監〔逆送〕に係る検察官の同意請求が違法であるか否か)について 原告は,原告を土浦拘置支署から取手署留置場に逆送し,AAを土浦拘置支署から土浦署留置場に逆送することについて,検察官の裁判長に対する同意請求が裁量権の範囲を逸脱したものであり,それ自体が国賠法上違法である旨主張する。 しかし,本件訴訟において,検察官が,警察官による原告及びAAに対する具体的な取調べの状況を把握し,それが違法なものであるという認識を有していた ことを認めるに足りる証拠はないから,原告及びAAを逆送す 件訴訟において,検察官が,警察官による原告及びAAに対する具体的な取調べの状況を把握し,それが違法なものであるという認識を有していた ことを認めるに足りる証拠はないから,原告及びAAを逆送することについての検察官の同意請求が裁量権の範囲を逸脱したものということはできない。 したがって,原告の上記主張を採用することができない。 なお,検察官は,公益の代表者としての責務を負っているのであるから(検察庁法4条),被疑者又は被告人が,警察官から違法又は不当な取扱いを受けてい る旨申し述べている場合には,被疑者又は被告人に対する不当な圧力を加えた取調べ等がされることを未然に防ぐため,逆送することを避けることが基本的には適切であると考えられる。上記において説示したとおり,原告及びAAを逆送することについての検察官の同意請求は,国賠法上違法であるとはいえないものの,原告及びAAを逆送する合理的な理由はうかがわれないものといわざるを得ず, 客観的にみれば,不適切な行為であったとの評価は免れないというべきである。 5 争点5(証拠の改ざん等に係る違法があったか否か)について⑴ 9.20捜報についてア原告の主張の概要原告は,8月28日午後8時から同日午後9時までの間に被害者方付近で 不審者を目撃したかどうかについて,ACに対して聴き取り捜査した結果が 記載された9.20捜報が,以下の理由で,昭和43年3月9日以降に作成されたものである旨主張する。 記録の通し番号の矛盾確定審,第一次再審請求審及び第二次再審請求審を通じて,原告に対して開示されたACに関係する証拠を通し番号(この通し番号は,茨城県警 が検察官に証拠を送付する際に記入したものと考えられる。)の順に並べると下表のと 求審及び第二次再審請求審を通じて,原告に対して開示されたACに関係する証拠を通し番号(この通し番号は,茨城県警 が検察官に証拠を送付する際に記入したものと考えられる。)の順に並べると下表のとおりとなるところ,ACに関係する証拠は,作成日順に整理され,通し番号が付されている。 したがって,9.20捜報は,本来であれば9月3日付けの捜査報告書(乙502)の次に綴じられて通し番号が付されるべきであるにもかかわ らず,これまでに開示された証拠群の中では最後に綴じられており,不自然である。そして,9.20捜報の前には昭和43年3月9日付けのAOの員面調書が綴じられていることからすれば,9.20捜報が作成されたのは,昭和43年3月9日以降と考えられる。 証拠の標目作成者通し番号開示審級S42.9.3捜報(AC)(乙502)BZ ・BQ 1~31次再審請求2審S43.2.29捜報(AN)(乙505) BR4,52次再審請求1審S43.3.6捜報(AC)(乙504)BB6~121次再審請求2審S43.3.8AN員面(乙506)BS13~172次再審請求1審S43.3.8BW 員面(乙517)BS18~252次再審請求1審S43.3.8捜報(BX)(乙513)BT26,272次再審請求1審S43.3.8BX員面(乙514)BT28~302次再審請求1審通し番号31,32は未開示 S43.3.9任提(乙507)AC 2次再審請求1審S43.3.9領置(乙508)BB 2次再審請求1審 S43.3.9捜報(BY)(乙515)BB35,362次再 AC 2次再審請求1審S43.3.9領置(乙508)BB 2次再審請求1審 S43.3.9捜報(BY)(乙515)BB35,362次再審請求1審S43.3.9BY員面(乙516)BB37~392次再審請求1審S43.3.9AO員面(乙429)BT42~44確定2審S42.9.20捜報(AC)(乙503) BU ・BV 45~471次再審請求2審体裁の不自然さ取手署長の押印があるにもかかわらず,9.20捜報のみ同署長の押印がない。 内容の不自然さ9.20捜報には,ACが,通行人等については言葉を濁し,判然とし た回答は得られなかったが,その際,「AAの仲間を捜査してみたら」と発言した旨の記載があるところ,かかる記載に照らせば,更に詳しくACから事情を聴取するのが自然であるが,そのような捜査は実施されておらず,不自然である。 イ判断 警察において作成された捜査書類が必ず作成された順番どおりに検察官に送付されるとは限らないから,9.20捜報に記載された通し番号の順番の前後をもって,9.20捜報の作成時期等に疑念が生じるものということはできない。 また,9.20捜報に取手署長の押印がないことについても,単に押印を 失念した可能性もあるから,この点をもって,9.20捜報の作成時期等に疑念が生じるものということはできない。 さらに,9.20捜報には,ACが「AAの仲間を捜査してみたら」という発言をしたという記載が存在する一方で,通行人等について言葉を濁して判然とした回答をしなかったという記載も存在するところ(乙503により 認定することができる。),「AAの仲間を捜査してみたら」とい したという記載が存在する一方で,通行人等について言葉を濁して判然とした回答をしなかったという記載も存在するところ(乙503により 認定することができる。),「AAの仲間を捜査してみたら」という発言自体抽象的なものにとどまる上,上記記載に照らせば,ACが判然としない供 述をしていたことがうかがわれるのであって,捜査機関において,9月20日当時,ACのかかる発言が重要なものであると考えなかった可能性もあり得るから,当時,ACに対する詳細な事情聴取等がされていなかったとしても,そのことをもって,9.20捜報の作成時期等に疑念が生じるものということはできない。 ⑵ 10.15捜報についてア原告の主張の概要原告は,以下の理由で,10.15捜報が一部差し替えられたものである旨主張する。 契印が二重に押印されていること 10.15捜報に記載された通し番号で203丁表の上方に押印されている「AU」の契印の印影は,二重に押印されている。契印を2回押したのであれば,契印のもう一方である202丁裏の印影も同じく二重になっていなければならないはずであるが,これにはそのような形跡はなく,1回のみの押印の跡であることは明らかである。 罫紙の違い10.15捜報に記載された通し番号で202丁と203丁とでは,使用された罫紙にも違いがある。すなわち,202丁の罫紙は203丁以下数丁の罫紙と比較して,印刷されている罫が,用紙の上方に寄った位置に印刷されている。 筆記具の違い10.15捜報に記載された通し番号で203丁から209丁までの記載に係る文字は,1頁のうちに何か所も文字の一部が余分なインクのために太くなっているのに対し,202丁にはそのようなところはなく,203丁以降209丁までの文 通し番号で203丁から209丁までの記載に係る文字は,1頁のうちに何か所も文字の一部が余分なインクのために太くなっているのに対し,202丁にはそのようなところはなく,203丁以降209丁までの文字に比較すると202丁の文字はいずれも線が 細めであることから,203丁から209丁までと202丁とは,異なる ボールペンにより記載されたものと思われる。 また,210丁及び211丁は,余分にインクの出るボールペンにより記載された形跡はなく,更にまた別のボールペンにより記載されていることが分かる。 さらに,212丁は,余分にインクの出るボールペンにより記載されて いるが,213丁から216丁までは,余分にインクの出ないボールペンにより記載されている。 文字数の多さ及び文字の大きさ10.15捜報に記載された通し番号で203丁以降に比較すると,202丁の特に最後の7行については,1行当たりの文字数が多く,文字が 小さくなっている。 このことから,202丁は,後から作成したものであり,既に作成されていた203丁以降につなげるために,文字を詰め込まざるを得なかったものと考えられる。 他の捜査報告書との違い 他の捜査報告書は,「・・・状況は次のとおりです。」などとして,その次の行に「記」と記載し,更にその次の行から内容が記載されているのが通常であるのに対し,この捜査報告書には「記」との記載がない。 内容の不自然さ10.15捜報は,10月15日付けの書面であるにもかかわらず,「十 月十三日午後零時十分頃より取り調べを始める」との記載で始まっている。 イ判断原告は契印が二重にされている旨主張するが,証拠(乙566)に照らしても,顕われている契印が不鮮明であることが認められるものの,契印 り取り調べを始める」との記載で始まっている。 イ判断原告は契印が二重にされている旨主張するが,証拠(乙566)に照らしても,顕われている契印が不鮮明であることが認められるものの,契印が二重にされているとは認められない。 また,罫紙の違いについても,印刷の具合によって罫がずれることもあり 得るから,この点をもって,10.15捜報の差し替えが行われたものとは認められない。 さらに,ボールペンのインクの出具合は,筆記の仕方によっても異なるから,前記ア記載のような特徴が存在したとしても,異なるボールペンにより記載がされたものとまでは認められない。 加えて,文字数の多さや文字の大きさについても,10.15捜報は手書きで作成されているのであるから,文字数の多さや文字の大きさにばらつきがあったとしても,不自然とはいえない。 更に加えて,捜査報告書を作成するに当たり,必ず「記」という記載をしなければならないものではなく,それが省略されることもあり得るから,こ の点も不自然とはいえない。 その上,「十月十三日午後零時十分頃より取り調べを始める」との記載で始まっているからといって,その内容が特に不自然なものということもできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 8.30捜報についてア原告の主張の概要原告は,8.30捜報は,以下の理由で,8月30日当時におけるAEの供述をそのまま記載したとは考えられず,後日に作成されたものか又は改ざんされたものである旨主張する。 被害者方の住所の記載8.30捜報においては,被害者方の住所が「北相馬郡c 町大字de 番地」と記載されているところ,8月30日当時,被害者の住所の番地は,町役場で誤っ る。 被害者方の住所の記載8.30捜報においては,被害者方の住所が「北相馬郡c 町大字de 番地」と記載されているところ,8月30日当時,被害者の住所の番地は,町役場で誤って「g 番地のh」とされていたものであり,被害者方の住所の番地が「e 番地」であることが判明したのは8月 31日以降であるから,仮に,8.30捜報が同月30日に作成されたと すれば,上記のような記載になることはあり得ない。 AAの名前の記載AE は,確定審第一審の証人尋問において,AAの「苗字は知っていたが名前は分かりません」と答えていたにもかかわらず,8.30捜報には,「c 町f のAA 」を見たとAE が述べた旨の記載があり, 不自然である。 内容の不自然さ① 8.30捜報には,AE が8月28日の夕刻にAAを布佐駅で目撃した旨の記載があることからすれば,8月30日頃に本件強盗殺人事件の被疑者としてAAが浮上しないというのは不自然であるところ,別件 暴力行為等逮捕までAAが被疑者にされたという形跡がない。 ② 8.30捜報には,布佐駅のCA駅長のほかAE ら3名の駅員から聴取した内容が記載されているところ,AE 以外の2名の駅員は,8月28日夜から同月29日早朝に布佐駅から乗車した者について述べている。 それにもかかわらず,AE は,布佐駅で降車した客について述べており,しかも同月28日午後7時10分着(7時5分着の誤り)の下り列車を特定してAAの名前を挙げているところ,同月30日の時点では,犯人が同月28日午後7時5分着の列車から降車した者の中にいるとまでは到底予測できないはずであるから,AE が,上記列車のみを問題 にして,AAのみを挙げたというのは不自然である。 時点では,犯人が同月28日午後7時5分着の列車から降車した者の中にいるとまでは到底予測できないはずであるから,AE が,上記列車のみを問題 にして,AAのみを挙げたというのは不自然である。 ③ 8.30捜報には,AE が,8月28日午後7時10分着(午後7時5分着の誤り)の下り列車からAAが降車したという供述をした旨の記載があるが,AE の10月19日付け員面調書(乙545),11月20日付け検面調書(乙546)及び確定審第一審の証言内容(乙2 45)に照らすと,AE は,AAが上記列車から降車したところ自体 は目撃していなかったというべきところ,8.30捜報の記載内容は,上記AE の供述と齟齬しており,不自然である。 ④ 8.30捜報には,8月28日午前8時30分から同月29日午前8時30分までの間に布佐駅に勤務していた者として,CA駅長,AE ,CB 及びCC が挙げられている。 しかし,上記当時,「CD 」という人物は勤務していたものの,「CC 」という人物は勤務していなかった。そして,CD は,本件強盗殺人事件が発覚した同月30日に勤務していたから,警察官は,CDからも事情を聴いていたはずであるが,8.30捜報には,上記のとおり,CD の氏名が誤って記載されていたばかりか,CD から事情を 聴取したという記載も存在しない。 また,8.30捜報には,同日に布佐駅に出勤していたCE から事情を聴取したという記載も存在しない。 さらに,CA駅長,AE 及びCB は,いずれも同日は布佐駅に出勤していなかったところ,8.30捜報には,警察官が同日に上記3 人の自宅等を訪問して事情を聴取した旨の記載も存在しない。 イ判断被害者方の住所の記載について確かに,正しい被害 勤していなかったところ,8.30捜報には,警察官が同日に上記3 人の自宅等を訪問して事情を聴取した旨の記載も存在しない。 イ判断被害者方の住所の記載について確かに,正しい被害者方の住所が「北相馬郡c 町大字de 番地」である旨の捜査報告書が作成されたのは,8月31日であるが(乙2 34により認定することができる。),上記捜査報告書には,正しい被害者方の住所が判明した詳細な時期については記載されていない。 また,同月30日付けで作成された他の捜査報告書(乙477,499)においても,8.30捜報と同様に,被害者方の住所が「北相馬郡c 町大字de 番地」であると記載されていることが認められる(乙4 77,499により認定することができる。)。 以上の事実を踏まえると,被害者方の正しい住所は,同月30日時点で既に判明していたものというべきであるから,8.30捜報の被害者方の住所の記載は,不自然なものとはいえない。 AAの名前の記載について捜査報告書は,供述書又は供述録取書とは異なり,供述者にその内容に ついて確認を求めて作成されるものではないから,捜査報告書の記載と聴取内容に多少の齟齬が生じることはあり得るし,警察官が,人物の特定の便宜を図る趣旨からAAの名前についても記載したこともあり得るというべきである。 したがって,8.30捜報において,AAの名前が記載されていたとし ても,不自然なものとはいえない。 内容の不自然さについて8.30捜報には,AE が8月28日の夕刻にAAを布佐駅で目撃した旨の記載は存在するものの(乙544により認定することができる。),布佐駅にAAがいたというだけの情報では,本件強盗殺人事件との結び付 きが強くうかがわ 月28日の夕刻にAAを布佐駅で目撃した旨の記載は存在するものの(乙544により認定することができる。),布佐駅にAAがいたというだけの情報では,本件強盗殺人事件との結び付 きが強くうかがわれるものとはいえないから,AE の上記供述のみをもって,AAを本件強盗殺人事件の容疑者として直ちに捜査しなかったとしても,不自然とはいえない。 また,8.30捜報には,AE が,AA以外の人物にも言及している旨が記載されているから(乙544により認定することができる。),A E がAAについてのみ供述していたものとは認めることができない。 さらに, 捜査報告書は,供述書又は供述録取書とは異なり,供述者にその内容について確認を求めて作成されるものではないから,捜査報告書の記載と聴取内容に多少の齟齬が生じることはあり得るものというべきであり,8.30捜報の内容とAE の10月19日付け員面調書(乙545), 11月20日付け検面調書(乙546)及び確定審第一審の証言内容(乙 245)が多少齟齬していたとしても,不自然であるとはいえない。 加えて,本件強盗殺人事件が発生したと思われるのは,8月30日ではないから,同日に勤務していたCD 及びCE に事情聴取をしなかったとしても不自然であるとはいえないし,AE は,同日,警察官がAE の自宅に来た旨供述しているから(乙545により認定することがで きる。),同日付けでAE から事情聴取をしたという8.30捜報の内容も不自然であるとはいえない。 以上に照らせば,8.30捜報が後日に作成されたものか又は改ざんされたものであるとは認めることができない。 ⑷ 10.22捜報及びAGの10.22員面について ア原告の主張の概要原告は,以下の理由で,10. 日に作成されたものか又は改ざんされたものであるとは認めることができない。 ⑷ 10.22捜報及びAGの10.22員面について ア原告の主張の概要原告は,以下の理由で,10.22捜報及びAGの10.22員面が改ざんされたものである旨主張する。 AGの10.22員面の内容の不自然さAGの10.22員面の7項の第1段落及び第2段落においては,8月 末頃に帰宅途中のAAらと成田線の列車の中で行き会ったことが2,3回あったため,はっきりした記憶は忘れた旨の記載があるにもかかわらず,第3段落においては,唐突に8月28日の出来事について言及しており,不自然である。 10.22捜報及びAGの10.22員面の不自然な訂正 AGの10.22員面には,最初は「今年の八月二十八日と思います」と記載されていたにもかかわらず,「今年の八月二十八日であります」という記載に訂正されている箇所がある。また,10.22捜報にも,最初は「八月二十八日ごろと思います」と記載されていたにもかかわらず,「今年の八月二十八日であります」という記載に訂正されている箇所がある。 しかし,10.22捜報は,AGの10.22員面の後に作成されたも のと考えられるところ,AGの最終的な供述が「八月二十八日であります」というものであるとすれば,あえて,10.22捜報について上記のような訂正をする必要はないはずであって,上記訂正は,不自然である。 イ判断AGの10.22員面の7項の第3段落の記載は,「それで私が常磐線の 貨車脱線事故で遅刻した日ですから今年の八月二十八日であります」というものであって(乙529により認定することができる。),かかる文脈からすれば,ここでAGが断定的に供述したのは,列車の脱線事 貨車脱線事故で遅刻した日ですから今年の八月二十八日であります」というものであって(乙529により認定することができる。),かかる文脈からすれば,ここでAGが断定的に供述したのは,列車の脱線事故があった日付についてであるというべきである。そして,上記事故の発生日自体は客観的に明らかであったものということができるから,上記の記載が,AGの10. 22員面の7項の第1段落及び第2段落の記載と比較して不自然であるということはできない。 また,捜査報告書を作成する時期や方法等については,様々なものが考えられるところであって,AGの10.22員面と並行して作成された可能性も否定できないところであるから,上記訂正が存在したことをもって不自然 であるということはできないし,仮に,改ざんすることを意図していたとすれば,訂正印を押す方法によって内容を訂正する方法を採用し,当初に記載されていた文字を判読できる状態に残しておくということも考え難いものというべきである。 したがって,10.22捜報及びAGの10.22員面が改ざんされたも のとは認めることはできない。 ⑸ まとめ以上によれば,証拠の改ざんがあった旨の原告の主張は,採用することができない。 6 争点6(検察官による本件起訴に違法があるか否か)について ⑴ 判断枠組み 公訴の提起は,検察官が裁判所に対して犯罪の成否,刑罰権の存否につき審判を求める意思表示にほかならないのであるから,起訴時あるいは公訴追行時における検察官の心証は,その性質上,判決時における裁判官の心証と異なり,起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であ る(最高裁昭和49年 おける裁判官の心証と異なり,起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であ る(最高裁昭和49年(オ)第419号同53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁)。 以下,本件起訴に際し,各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があったものといえるか否かについて検討する。 ⑵ 関係者の供述等について ア目撃者の供述についてADの供述ADは,本件起訴がされるまでの間に,8月28日の出来事として,我孫子駅のホームにおいて,午後6時47分発成田行き下り列車の発車前に同列車内に座っていた原告とホームに立っていたAAを目撃し,AAと挨 拶を交わした旨の供述をしていた(乙540ないし543により認定することができる。)。 AE の供述AE は,本件起訴がされるまでの間に,8月28日の出来事として,午後7時5分着(ただし,一部,午後7時10分着と供述している部分が ある。)の下り列車が布佐駅に到着後出発してから,同駅入り口付近のベンチに腰掛けていたAAを目撃した旨の供述をしていた(乙544ないし547により認定することができる。)。 AF,AG及びAHの供述AF,AG及びAHは,本件起訴がされるまでの間に,8月28日の出 来事として,午後6時47分発我孫子駅発下り列車に乗り,午後7時5分 頃に布佐駅で降りた後,栄橋の石段において,原告が「馬鹿野郎」などと怒鳴ったのを目撃した旨の供述をしていた(乙273,275,528ないし539により認定することができる。)。 小括上記ないし記載の5名の目撃者は, て,原告が「馬鹿野郎」などと怒鳴ったのを目撃した旨の供述をしていた(乙273,275,528ないし539により認定することができる。)。 小括上記ないし記載の5名の目撃者は,いずれも原告及びAAと利害関 係を有していたものとはうかがわれず,あえて虚偽の供述をする動機が存在するものとは考えられなかったものといえる。また,少なくとも,上記5名の供述は,大筋で一致しており,相互にその信用性を補完していたものということもできる。 したがって,AQ検察官が,上記5名の供述から原告及びAAが,8月 28日の夕方以降,我孫子駅,布佐駅,栄橋の石段というように,被害者方に向かう一連の経路を移動していた事実が認められると判断したことが合理的でなかったとはいえない。 イ原告及びAAの自白について 原告及びAAの自白の時期 原告は,本件強盗殺人事件に関連して8月中旬以降の行動等について取調べを受けた10月13日の2日後である同月15日午後5時30分頃には,本件強盗殺人事件について自白を開始しているところ,かかる自白は,原告の主張する上記期間の取調時間及び取調時刻を前提としても,原告の供述の任意性が疑われるようなものでなかったといえる。 また,AAにおいても,同月16日夜から同月17日午後までの取調べによって自白に至ったものであるところ,上記と同様の理由により,AAの供述の任意性が疑われるようなものでなかったといえる。 原告及びAAは,上記のとおり,本件強盗殺人事件に関する取調べを受け始めてから間もない時期に強盗殺人罪という極めて重大な犯罪について 自白をしており,通常,本件強盗殺人事件の犯人でない者がこのような時 期に自白をするとは考え難いことを踏まえると 受け始めてから間もない時期に強盗殺人罪という極めて重大な犯罪について 自白をしており,通常,本件強盗殺人事件の犯人でない者がこのような時 期に自白をするとは考え難いことを踏まえると,原告及びAAの自白の信用性が高かったとAQ検察官が判断したことが不合理であるとはいえない。 なお,原告に対して警察官による違法な取調べがされていたことは,前記2において説示したとおりであるが,警察官による違法な取調べの状況等をAQ検察官が具体的に認識していたことを認めるに足りる証拠はない 上,原告は,確定審第一審第30回公判期日において,AQ検察官によって録取された12月25日付けの原告の供述録取書の内容について質問された際に,「ただ,とにかく,犯人らしく装っていこうと考えてましたしね。それで,積極的に調書作成に協力したわけです。」と供述したり,被害者を殺したということについて「検事さんの調べのときは,自分から言 いました」と供述したりしていること等を踏まえると(乙416により認定することができる。),原告は,AQ検察官に対し,積極的に本件強盗殺人事件の犯人であると装ったことが認められるから,やはり,この点に照らしても,AQ検察官が原告の供述に信用性があると判断したことが不合理であるとはいえない。 原告及びAAの自白の内容の一致原告は,10月15日に自白した当初は,AAが殴打したところ被害者が死亡した旨供述していたものの(乙328により認定することができる。),同月18日には,原告が被害者の首を押さえ付けて死亡させたことを認める旨の供述をしており(乙330により認定することができる。),AA が同月17日に自白した内容と被害者の殺害方法の点で一致している(乙348により認定することができる。)。 また,原 認める旨の供述をしており(乙330により認定することができる。),AA が同月17日に自白した内容と被害者の殺害方法の点で一致している(乙348により認定することができる。)。 また,原告及びAAは,二人で分担して被害者を殺害しており,AAが被害者に馬乗りになりパンツをその口に詰め,原告が被害者の足を縛り,被害者の首を押さえるようにして扼したという供述については特段の変遷 がなく,原告及びAAの供述の内容はおおむね一致していたものといえる。 なお,原告及びAAの自白内容は,本件犯行においていずれが主導的な立場にあったかという点については,供述が齟齬していたものの,このことは,かえって,原告及びAAの供述をそのまま録取したことをうかがわせるものと考えることもできるものといえる。 原告及びAAの自白の内容 原告及びAAが最終的にした自白の内容は,おおむね,①本件犯行当日の夕方頃,我孫子駅から布佐駅に至った原告及びAAが,利根川の堤防付近で雑談をしていた際,翌日の競輪代に困った原告が,AAにその旨を告げ,原告において以前からの知人で金貸しをしているとの風評があった被害者から金を借りることを提案した,②原告は,AAと共に,午後7時半 頃,被害者方に赴き,原告が被害者に金員の借用を申し出たが断られたため,一旦上記堤防付近まで戻ったものの,やはり諦めきれなかったことから,午後9時頃,再度被害者方に赴いて同様の申出をした,③しかし,被害者から厳しく断られたことから口論となり,被害者に暴力を振るった上で,AAにおいて,被害者の体の上に馬乗りになり,大声を出す被害者の 口の中にパンツを押し込んで口封じをし,原告において,足を動かして暴れる被害者の両足をワイシャツ及びタオルで縛った上,パンツでその首を絞 て,被害者の体の上に馬乗りになり,大声を出す被害者の 口の中にパンツを押し込んで口封じをし,原告において,足を動かして暴れる被害者の両足をワイシャツ及びタオルで縛った上,パンツでその首を絞めようとしたが長さが足りなかったことから,パンツの上から首を押さえ付けて被害者を死亡させた,④その後,原告及びAAはそれぞれ屋内を物色して現金等を奪った後,その日のうちに布佐駅から列車を乗り継ぎ, 深夜に原告の兄ALの住居である野方にある光明荘アパートに行き,強取した現金は翌日に競輪でほぼ全額を費消したというものであるところ(乙308ないし313,316ないし321,323ないし325により認定することができる。),これらの自白内容は,不自然,不合理なものとはいえない。 AAの自白の内容は,当初の段階では,犯行状況について概括的に供述 したのみであったが,その後は,犯行前後の行動を含めて詳細に供述しており,被害者から強取した現金の額(約10万円)を含めておおむね一貫していたことを踏まえると(甲B41,乙348,352ないし358により認定することができる。),AQ検察官がAAの自白の信用性が高いと判断したことは,不合理であるとはいえない。 他方,原告の自白の内容は,被害者から強取した現金の額やAAからもらった分け前の金額の点を含めて供述に変遷が多かったことが認められる(乙308ないし313,328,331,332,336,341により認定することができる。)。もっとも,原告は,自白当初,AAが殴打したために被害者が死亡した旨の供述をしていたことから(乙328によ り認定することができる。),AQ検察官において,原告が自己の関与を過少に供述する傾向がうかがわれるとして,上記原告の供述の変遷を踏まえてもなお した旨の供述をしていたことから(乙328によ り認定することができる。),AQ検察官において,原告が自己の関与を過少に供述する傾向がうかがわれるとして,上記原告の供述の変遷を踏まえてもなお,本件強盗殺人事件の犯人性に関する原告の自白に信用性があAQ検察官に対して積極的に本件強盗殺人事件の犯人であると装っていたことにも鑑みると,不合理 であるとはいえない。 小括前記ないし記載の観点からして,原告及びAAの自白の信用性が高いと判断したAQ検察官の判断が不合理であったとはいえない。 ウ原告及びAAのアリバイについて 原告は,8月28日午後7時過ぎ頃から高田馬場の「養老乃瀧」で一人で酒を飲み,同日午後8時半頃に野方にある光明荘に行き,同日午後9時過ぎ頃にALが勤める「ジュン」に行き,同日午後10時過ぎ頃に光明荘に戻ったらAAが居り,AAが腹が減ったと言うので,隣のアパートの部屋に忍び込んで缶詰を盗んだ旨のアリバイを主張していた(乙383により認定する ことができる。)。 また,AAは,同日午後6時頃まで野方のパチンコ店で遊び,その後,新井薬師まで電車に乗り,薬師東映という映画館に入り,「クレージーの黄金作戦」と北島三郎出演のヤクザものともう一つの映画を見て,同日午後10時近くに映画が終わり,光明荘に戻ったのは同日午後10時半頃で,同日午後11時か11時半頃原告が帰ってきて,隣のアパートの部屋から缶詰を盗 んできた旨のアリバイを主張していた(乙384により認定することができる。)。 しかし,原告及びAAが主張する上記各アリバイは,的確な裏付けがなく,信用性の高いと思われる前記ア記載の目撃者5名の供述内容とも齟齬していたから,AQ検察官が原告及びAAのアリバイが信用で 。)。 しかし,原告及びAAが主張する上記各アリバイは,的確な裏付けがなく,信用性の高いと思われる前記ア記載の目撃者5名の供述内容とも齟齬していたから,AQ検察官が原告及びAAのアリバイが信用できないものと判断し たことは不合理であったとまではいえない。 エ原告の主張について原告はAQ検察官の判断が不合理である旨主張するが,以下のとおり,原告が指摘する点を踏まえても,AQ検察官の判断が不合理であったとはいえない。 客観的証拠の不存在について① 盗品(財布)捜査の結果について本件強盗殺人事件に係る被害品は発見されていないものの,AAは,AQ検察官に対し,本件起訴直前の時期において,逃走中に利根川内に財布を投棄した旨の供述をしていたものである(乙316により認定す ることができる。)。仮に,財布が河川内に投棄されていたとすれば,その財布を発見することは困難であると考えられるから,財布が発見されなかったことをもって,原告及びAAの本件強盗殺人事件に関する嫌疑に大きな疑問を生じさせるものとまではいえない。 ② 毛髪鑑定結果について 確かに,被害者方における検証の際に発見された毛髪7本については, いずれも,原告及びAAの毛髪と類似しているとはいえない旨の11月24日付けの鑑定書が存在しているところであって(乙496により認定することができる。),被害者方において,原告及びAAの毛髪は発見されていない(なお,上記検証の際に発見された陰毛1本については,被害者の陰毛に類似する旨の鑑定書が作成されている〔乙497により 認定することができる。〕。)。 しかし,被害者方における検証の結果発見された上記毛髪7本について,被害者の毛髪と認められるものが1本,被害者の毛髪に類似するものが1本 いる〔乙497により 認定することができる。〕。)。 しかし,被害者方における検証の結果発見された上記毛髪7本について,被害者の毛髪と認められるものが1本,被害者の毛髪に類似するものが1本,被害者の毛髪に類似する性質を有するも判定し得られないものが5本とする11月2日付けの鑑定書が存在するところ(乙497に より認定することができる。),上記11月2日付けの鑑定書は,その記載内容に照らせば,上記5本の毛髪についても,被害者の毛髪と類似する性質を有する旨の指摘をしており,被害者の毛髪である可能性を否定したものとはいえない。そうすると,被害者方における検証の結果発見された上記毛髪7本については,被害者,原告及びAA以外の第三者 のものであることが明らかであったとはいえず,原告及びAA以外の者が被害者方に存在したことを強くうかがわせるものではないから,被害者方において原告及びAAの毛髪が発見されていないことをもって,原告及びAAの本件強盗殺人事件に関する嫌疑に大きな疑問を生じさせるものとまでとはいえない。 ③ 便所の桟の指紋の対象結果について本件強盗殺人事件の犯人が外したと思われる被害者方の窓の桟から採取された指紋5個については,そのうち3個は対照不能であり,2個は捜査関係者の指紋に符合する旨の11月22日付けの鑑定書が存在し(乙426,427により認定することができる。),上記窓の桟から採取 された指紋を含め,被害者方において,原告及びAAの指紋の存在は確 認されなかった(乙424,425により認定することができる。)。 しかし,窓の桟から採取された指紋5個のうち3個は,対照不能であったものであり,原告及びAAの指紋である可能性が否定されたものではないから,被害者方において,原告及びAAの することができる。)。 しかし,窓の桟から採取された指紋5個のうち3個は,対照不能であったものであり,原告及びAAの指紋である可能性が否定されたものではないから,被害者方において,原告及びAAの指紋と符合する指紋の存在が確認されなかったことをもって,原告及びAAの本件強盗殺人事 件に関する嫌疑に大きな疑問を生じさせるものとまでとはいえない。 原告及びAAの自白の信用性について① 犯行前に開けた被害者方の勝手口に関する供述の変遷について原告は,12月22日付け検面調書において,「AB の家の勝手口のガラス戸を向って左側の戸を開けて出入りしたように思っていまし たが,これも部屋の中のガラス戸の方からのぞいたAB の姿を見たのですからどうも左側ではなく右側のガラス戸を開けたように思い出しました」と供述しており(乙312により認定することができる。),本件犯行前に開けた勝手口のガラス戸についての供述を変遷させている。 しかし,ガラス戸の左側と右側のいずれを開けたのかについては,特 に意識的に行動したのでなければ勘違いが生じたとしても特に不自然ではない事柄であるから,上記供述の変遷をもって直ちにAQ検察官の不当な誘導があったものとはいえないし,原告の自白の信用性を疑うべき事情とまではいえない。 ② 被害者の本件鑑定書の内容について 被害者の死体解剖時における頸囲は,腐敗して膨張している状態で57センチメートルであるところ(乙236により認定することができる。),原告が本件強盗殺人事件における凶器であると主張するパンツの長さが最大67センチメートルであることを前提とすると,腐敗して膨張する前の被害者の頸囲よりもパンツが相当程度長かったことがうかがわれる が,被害者からの抵抗があったことが予想され るパンツの長さが最大67センチメートルであることを前提とすると,腐敗して膨張する前の被害者の頸囲よりもパンツが相当程度長かったことがうかがわれる が,被害者からの抵抗があったことが予想されることを踏まえると,原 告が被害者の首をパンツで絞めようとしたが長さが足らなかったために被害者を扼した旨の供述をしていたことが(乙334により認定することができる。),特段不自然であるとか,不合理であるということはできない。 また,本件鑑定書には,「兇器の種類を印像していないので,これを 明言することは至難である」と記載されている上,被害者が絞殺された旨の記載は存在しないのであって(乙236により認定することができる。),上記パンツが本件強盗殺人事件における凶器であったとか,被害者が絞殺されたものとまでは認めることができない。 この点について,本件死体検案書には,被害者の死亡の原因について 「絞殺(推定)」という記載が存在するものの(乙470により認定することができる。),本件死体検案書の記載から明らかなように,絞殺というのはあくまで推定である上,同一の医師によって本件死体検案書の作成後に本件鑑定書が作成されていることからすれば(乙236,470により認定することができる。),後者の方が相当程度熟慮した結 果を記載したものと考えられるところ,本件鑑定書には,被害者が絞殺された旨の記載は存在しないのであるから,被害者を扼した旨の上記原告の供述が客観的状況と矛盾するものということもできない。 ③ ガラス戸に関する捜査報告書(乙423)と自白の内容について原告は,ガラス戸に関する捜査報告書(乙423)と自白の内容が矛 盾している旨主張するが,一般論として,強盗殺人事件の犯人が被害者を殺害するなどの犯行に及ん 乙423)と自白の内容について原告は,ガラス戸に関する捜査報告書(乙423)と自白の内容が矛 盾している旨主張するが,一般論として,強盗殺人事件の犯人が被害者を殺害するなどの犯行に及んだ際,興奮,焦燥及び狼狽などの心理状態に陥っていた可能性が存在することから,被害者方の客観的な状況について思い違いや記憶違いが生ずることはあり得るものとして,AQ検察官が,原告及びAAの自白に信用性があると判断したことは,原告指摘 の点を考慮しても,不合理であるとはいえない。 ④ 録音テープについて本件起訴時までに11.3AA録音テープ以外のAAの録音テープや10.17原告録音テープが検察庁に送致されたことを認めるに足りる証拠はなく,AQ検察官が,上記各録音テープの内容を確認して,原告及びAAの供述の信用性を検討することができたものとはいえない。 アリバイについて原告は,原告及びAAの自白に係る布佐駅発の列車の時刻と野方駅を降りた時刻等の整合性を問題にするが,AAの自白は客観的な列車の運行状況とおおむね合致していたのであり,これと特に矛盾するとまではいえず,原告の供述も大まかな時刻を述べるものであり,これと特に矛盾するとま ではいえない。 したがって,布佐駅から光明荘までの所要時間等が,原告及びAAの本件強盗殺人事件の嫌疑を否定するものとまではいえない。 AQ検察官による供述の操作について① AG及びAHの供述について AGは,警察官及び検察官から事情聴取をされた当初は,原告とAAを目撃した日が8月28日の出来事であるか否か断定はできない旨の供述をしていたが(乙528,529,530により認定することができる。),12月17日付け検面調書において,原告とAAを目撃した日が8月28日であ 8月28日の出来事であるか否か断定はできない旨の供述をしていたが(乙528,529,530により認定することができる。),12月17日付け検面調書において,原告とAAを目撃した日が8月28日であった旨の供述をしているところ(乙275により認定 することができる。),上記AGの供述の経過に照らせば,AGの記憶がどの程度確かなものであったかについては検討の余地があるところであるが,AGとしても,8月28日に原告とAAを目撃したことを否定していたものではなく,上記12月17日付け検面調書のとおり,本件起訴直前の段階においては,8月28日の出来事である旨の供述をした ものであるから,かかるAGの供述が信用できると判断したAQ検察官 の判断が不合理であるとまではいえない。 また,AHは,12月27日付け検面調書において,初めて石段の一件について言及していることが認められるものの(乙273により認定することができる。),警察官がその点の聴取を十分にできなかった可能性もあり得るところであるから,AQ検察官がAHから直接聴取した AHの上記供述が信用できると判断したAQ検察官の判断が不合理であるとまではいえない。 なお,原告は,上記AG及びAHの供述について,その供述経過に照らし,AQ検察官による不当な働き掛けがあった旨の主張もするが,AG及びAHの供述に変遷等がみられたとしても,記憶違いや記憶の喚起 等により供述が変遷することもあり得るから,その供述経過のみをもって,AQ検察官から不当な働き掛けがあったものとは認められない。 ② AJの供述について原告は,AQ検察官がAJの供述を変遷させた旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 ③ 原告及びAAの自白についてⅰ 犯行に至る経緯(被害者方前 い。 ② AJの供述について原告は,AQ検察官がAJの供述を変遷させた旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 ③ 原告及びAAの自白についてⅰ 犯行に至る経緯(被害者方前)について被害者方のガラス戸の左側(西側)を開けたのかそれとも右側(東側)を開けたのかという点は,特に意識的に行動したのでなければ明確に記憶していなくとも特段不自然とはいえず,この点について供述 に変遷があったことのみをもって,直ちにAQ検察官が不当な誘導を行ったことによるものであるとはいえない。 ⅱ 格闘・殺害行為について原告は,12月19日付け検面調書において,被害者を殺害するためにパンツを使ったのかはっきりしない旨の供述をしているが(乙3 08により認定することができる。),これは,当初絞殺しようとし たという供述を原告が後退させたことから,その供述のまま録取せざるを得なかった可能性もあるのであって,AQ検察官があえて供述を曖昧化させるために原告を誘導したものとは認められない。 ⅲ 物色・強取について原告は,AQ検察官が被害者方における物色及び強取の様子につい て,原告及びAAの供述を変更させたと主張するが,原告とAAの供述の変遷が存在することを前提としても,そのことのみをもって,AQ検察官が原告及びAAに対して不当な働き掛けをして供述を変更させたものと認めることはできない。 ⅳ 偽装工作について 原告は,AQ検察官が被害者方のガラス戸を外した状況に関する原告及びAAの供述を変更させた旨主張するが,原告及びAAは,供述を変更した理由について一応の説明をしている上(乙313,324により認定することができる。),供述の変遷自体をもって,AQ検察官が原告及びAAに対して不当な働き掛けをして供 ,原告及びAAは,供述を変更した理由について一応の説明をしている上(乙313,324により認定することができる。),供述の変遷自体をもって,AQ検察官が原告及びAAに対して不当な働き掛けをして供述を変更させた ものと認めることはできない。 ⅴ アリバイについて原告及びAAは,AQ検察官に対し,アリバイに関する供述をいずれも撤回しているが(乙308,320により認定することができる。),AQ検察官が原告及びAAに対して不当な働き掛けをしてアリバイに 関する供述を撤回させたことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ まとめ以上によれば,AQ検察官の本件起訴時における判断が不合理なものであったということはできず,原告及びAAについて,各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があったものといえるから, 本件起訴が国賠法上違法であるとはいえない。 7 争点7(確定審の公判における警察官及び検察官の活動に違法があるか否か)について⑴ 警察官の活動についてア 10.17原告録音テープに関する偽証についてAU警察官及びAV警察官は,確定審の公判期日において,原告の取調べ を録音したテープは,11.2原告録音テープの1本のみであると繰り返し証言していたが(乙289,290,378,379により認定することができる。),第二次再審請求審において10.17原告録音テープが検察官から提出されたことに照らすと(争いがない。),上記各証言は,いずれも客観的事実と反するものであったというべきである。 そして,AU警察官及びAV警察官は,確定審の公判期日において,原告の取調べ状況や供述状況について詳細に証言しており,かつ,録音テープの存在に関する質問が繰り返し行われてい うべきである。 そして,AU警察官及びAV警察官は,確定審の公判期日において,原告の取調べ状況や供述状況について詳細に証言しており,かつ,録音テープの存在に関する質問が繰り返し行われていたことに照らすと,これらの各証言が単なる記憶違いによるものであるとは到底考えられないから,AU警察官及びAV警察官は,この点に関し,故意に虚偽の証言をしたものと認められ, かかる行為は違法であるというべきである。 なお,被告らは,AU警察官及びAV警察官には偽証をする動機がない旨主張するが,10.17原告録音テープに録音された自白の内容とその後の自白の内容は少なくない点で齟齬が存在し,また,10.17原告録音テープに編集痕があった旨の鑑定書が存在すること(甲B4により認定すること ができる。)をも併せ考えれば,10.17原告録音テープが,警察にとって不都合な証拠であった可能性は否定できないのであって,上記動機がない旨の被告らの主張を採用することはできない。 また,本件強盗殺人事件においては,原告及びAAが本件強盗殺人事件に関与したことを裏付ける客観的な証拠は存在せず,原告及びAAの供述や目 撃者等の供述の信用性が,重要な意味を持つという証拠構造であったことに 照らすと,10.17原告録音テープの存在は,原告の供述の信用性に関する裁判所の判断に影響を与えるものというべきであるから,上記の違法行為は,原告の主張する損害との間で因果関係が認められるものというべきである。 イ AA録音テープに関する偽証 AX警察官は,確定審の公判期日において,AAの取調べを録音したテープが11.3AA録音テープの1本のみであると証言したものであるが(乙290により認定することができる。),11月2日付けのAAの供述 X警察官は,確定審の公判期日において,AAの取調べを録音したテープが11.3AA録音テープの1本のみであると証言したものであるが(乙290により認定することができる。),11月2日付けのAAの供述調書において,「この前録音テープを使って調べられたときにも」と供述した旨の記載が存在することに照らすと,上記証言は,客観的事実に反したもので あるというべきである。 そして,AX警察官は,確定審の公判期日において,原告の取調べ状況や供述状況について詳細に証言していることに照らすと,証言をするに際し,捜査記録等を確認して記憶を喚起していたものと考えられ,上記証言が単なる記憶違いによるものであるとは到底考えられないから,AX警察官は,こ の点に関し,故意に虚偽の証言をしたものと認められ,かかる行為は違法であるというべきである。 ウアリバイ取調べ開始日に関する偽証原告は,AU警察官及びAW 警察官が,アリバイ取調べ開始日に関する偽証をした旨主張するが,原告の主張するアリバイ取調べ開始日を前提とし ても,別件窃盗逮捕,別件窃盗勾留,別件暴力行為等逮捕及び別件暴力行為等勾留が,いわゆる別件逮捕及び別件勾留として違法とならないことは,前記1において説示したとおりであるから,この点に関する違法は,原告の主張する損害との間で因果関係を欠くものといわざるを得ない。 ⑵ 検察官の活動について ア警察官の偽証への関与 警察官らによる前記⑴ア及びイの偽証に検察官が関与していたことを認めるに足りる証拠は存在せず,また,警察官が,その取調べに関する問題点が検察官に発覚することを恐れて,検察官に対しても虚偽の事実を述べてしまう可能性はあり得ないものではないから,原告主張の事実をもって,検察官が警察 存在せず,また,警察官が,その取調べに関する問題点が検察官に発覚することを恐れて,検察官に対しても虚偽の事実を述べてしまう可能性はあり得ないものではないから,原告主張の事実をもって,検察官が警察官の偽証に関与していたものと認めることはできない。 イ裁判所の証拠開示に関する職権発動の機会を喪失させる虚偽答弁 刑訴法1条は,「この法律は,刑事事件につき,公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ,事案の真相を明らかにし,刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」と規定し,また,検察庁法4条は,「検察官は,刑事について,公訴を行い,裁判所に法の 正当な適用を請求し,・・・公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。」と規定しているところであって,検察官は,公益の代表者として,事案の真相を明らかにする職責を負っているものというべきであるから,検察官の手持ち証拠のうち,裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白であるものについては,被告人に有利不利な証拠を問わずに法廷に 顕出すべき義務を負うものというべきである。 また,結果に影響を及ぼす可能性が明白であるとまではいえない場合であったとしても,被告人又は弁護人から,具体的に開示を請求する証拠が特定された証拠開示の申立てがあったような場合には,その重要性の程度,証拠を開示することによって生じる弊害の内容及び程度等に照らし,開示 をしない合理的理由がない場合には,検察官は,その証拠の開示義務を負うものというべきである。 なお,被告国は,証拠の開示について,裁判所の訴訟指揮権に基づき,検察官が裁判所に対する証拠開示義務を履行した結果,反射的に証拠の閲覧の利益を被告人が受けるにすぎないから,被告人には法律上保護された ,被告国は,証拠の開示について,裁判所の訴訟指揮権に基づき,検察官が裁判所に対する証拠開示義務を履行した結果,反射的に証拠の閲覧の利益を被告人が受けるにすぎないから,被告人には法律上保護された 利益は存在しない旨主張する。しかし,被告人は,刑事裁判における当事 者であって,刑事裁判の結果に最も強い利害関係を有する者というべきところ,その結果を左右する証拠の開示について,反射的な利益を有しているにとどまるとはいえないから,原告は,証拠の開示について,法律上保護された利益を有するものというべきである。 AAの弁護人は,昭和48年3月10日,確定審第二審において,検察 官に対し,以下の①ないし④の証拠の開示を求めたことが認められる。(乙7)① AI,AG,AH,AF,CF ,CG ,CH ,AC,AOの未提出,未開示供述調書及びこれらの者に関する捜査指揮書,捜査復命書,捜査報告書,その他捜査記録一切 ② 原告及びAAのアリバイに関する捜査指揮書,捜査復命書,捜査報告書その他捜査記録一切③ 目撃証人ないし参考人に関する捜査指揮書,捜査復命書,捜査報告書その他捜査記録一切(ただし,①と重複するものを除く。)④ 8月30日から10月16日まで及び11月21日から12月10日 までの原告及びAAらの取調べに関する捜査指揮書,捜査復命書,捜査報告書その他捜査記録一切これに対し,検察官は,昭和48年3月20日,上記申立てが不適法であるとした上で,AI,AG,AHの検面調書は既に取調べ済みであり,いずれの員面調書も上記検面調書と同趣旨であるため開示を受ける必要は ない,ACの検面調書は既に提出済みであり,ACの員面調書はない,その余の目撃参考人に関する供述調書,捜査報告書などは,証人として確 員面調書も上記検面調書と同趣旨であるため開示を受ける必要は ない,ACの検面調書は既に提出済みであり,ACの員面調書はない,その余の目撃参考人に関する供述調書,捜査報告書などは,証人として確定審第一審及び確定審第二審において取り調べられたことが一度もなく,その供述内容は本件と関連性,必要性も薄く,証拠価値が低いため開示を受ける必要がないなどとして,上記証拠の開示を拒絶したことが認められる。 (乙32) 以下,上記記載の事実を前提に,検察官に前記記載の義務違反があったか否かを検討する。 ① ACに関する捜査報告書本件においては,被害者宅前路上で原告及びAAを見たとするAC証言は重要な目撃証言であったというべきところ,このことを前提に,検 察官は,ACに関する捜査報告書の開示を求められたのである。そして,捜査の初期の段階において作成されたACに関する捜査報告書には,ACが原告及びAAを目撃した旨の記載は見当たらず,その段階においては,ACは被害者宅前路上で原告及びAAを目撃した旨の供述をしていなかったことがうかがわれる。そうすると,このような捜査報告書の内 容は,AC証言の信用性に影響を与え,ひいては,刑事裁判の結果に影響を与えるものというべきであるから,その開示の必要性は大きく,これを開示することによる弊害も想定し難いことに照らすと,これを開示しない合理的理由はないものというべきである。 したがって,その開示に応じなかった検察官の行為は,違法というべ きである。 ② AGの初期供述に関する証拠本件においては,栄橋石段で原告を目撃した日にちに関するAGの証言の信用性は,原告のアリバイに関する供述の信用性を判断するに当たっても影響を及ぼすものというべきところ,こ Gの初期供述に関する証拠本件においては,栄橋石段で原告を目撃した日にちに関するAGの証言の信用性は,原告のアリバイに関する供述の信用性を判断するに当たっても影響を及ぼすものというべきところ,このことを前提に,検察官 は,AGに関する供述調書及び捜査報告書の開示を特定して求められたものである。そして,AGの10.22員面,11月18日付け検面調書,10.22捜報によれば,AGが当初,原告及びAAを目撃した日につき日付の断定ができないと供述していたのであるから,上記各証拠についての開示の必要性は大きく,これらを開示することによる弊害も 想定し難いことに照らすと,これらを開示しない合理的理由はないもの というべきである。 したがって,その開示に応じなかった検察官の行為は,違法というべきである。 ③ AHの初期供述に関する証拠本件においては,原告を目撃した日にちに関するAHの証言の信用性 は,原告のアリバイに関する供述の信用性を判断するに当たっても影響を及ぼすものというべきところ,そのことを前提に,検察官は,AHに関する供述調書及び捜査報告書の開示を特定して求められたものである。 そうすると,上記各証拠についての開示の必要性は大きく,これらを開示することによる弊害も想定し難いことに照らすと,これらを開示しな い合理的理由はないものというべきである。 したがって,その開示に応じなかった検察官の行為は,違法というべきである。 ④ AIの初期供述に関する証拠本件においては,AIの目撃証言は原告及びAAの有罪を支える重要 な証拠であり,このことを前提に,検察官は,AIに関する供述調書の開示を特定して求められたものであるから,上記証拠についての開示の必要性は大きく,これを開示することに AAの有罪を支える重要 な証拠であり,このことを前提に,検察官は,AIに関する供述調書の開示を特定して求められたものであるから,上記証拠についての開示の必要性は大きく,これを開示することによる弊害も想定し難いことに照らすと,これを開示しない合理的理由はないものというべきである。 したがって,その開示に応じなかった検察官の行為は,違法というべ きである。 ⑤ AJ及びその他の目撃証言に関する証拠原告は,AJの初期供述が,原告の無罪方向の重要な証拠であり,また,有罪の証拠とされた他の目撃証言の信用性判断にも大きな影響を与える証拠であった旨主張するが,再審判決においても,AJの供述の信 用性は乏しいものとされており,結局,AJの供述の存在によって,本 件の刑事裁判の結果に影響が生じたものとはいえないから,この点に関する原告の主張は理由がない。 ⑥ ポリグラフ鑑定書原告は,本件ポリグラフ検査における検査結果を証拠として提出しなかったことが違法である旨主張するが,確定審の判決においても,結局, ポリグラフ検査の結果は,原告を有罪にする方向の証拠としては扱われていないから,上記証拠が開示されなかったことは,原告の主張する損害との間で因果関係がないものというべきである。また,AU警察官によるポリグラフ検査結果に関する偽計を用いた取調べがあったか否かという点においては,その発言の有無自体が問題となっており,そのAU 警察官の発言が真実であったか否かが問題とされていたわけではないから(本件ポリグラフ検査の結果,原告が本件強盗殺人事件について関与していたことが明白である旨の証拠は存在しない。),上記の点において,ポリグラフ検査の結果が意味を持つものということはできない。 ⑦ 件ポリグラフ検査の結果,原告が本件強盗殺人事件について関与していたことが明白である旨の証拠は存在しない。),上記の点において,ポリグラフ検査の結果が意味を持つものということはできない。 ⑦ 目録の不開示 原告は,検察官が,確定審第二審において,手持ち証拠の目録の提出を促されたにもかかわらず,それを拒否したことが違法である旨主張する。 しかし,証拠の開示を求めるに当たり,その証拠の特定をすることが必要であるとしても,ある程度概括的にその特定をすることは可能であ るというべきであって,手持ち証拠の目録がなければ証拠の開示を求めることができないものではないことに照らすと,検察官において,手持ち証拠についての目録を提出する義務を負うものとまでは認められない。 ⑶ まとめ以上によれば,確定審の公判における警察官又は検察官の活動には国賠法上 違法なものが含まれていたものというべきである。 8 争点8(再審請求審及び再審の公判における検察官の活動に違法があるか否か)について原告は,再審請求審において,検察官が弁護人らの証拠開示請求に非協力的であったことや,再審開始決定に対して即時抗告及び特別抗告を申し立てたこと,再審の公判において,弁護人請求証拠に対して不同意の意見を述べたり,原告が 本件強盗殺人事件につき有罪であることを前提に論告を行ったことが違法であるなどと主張する。 しかしながら,一般的に,検察官が,再審請求審において,有罪判決確定者の弁護人らによる証拠開示請求に協力すべき職務上の法的義務を負っているとまでは解し難く,また,検察官が,合理的な根拠に基づいて,再審開始決定に対して 即時抗告を申し立て,更に特別抗告を申し立てる行為や,再審の公判において,弁護人請求証拠に対して不同意の意見 るとまでは解し難く,また,検察官が,合理的な根拠に基づいて,再審開始決定に対して 即時抗告を申し立て,更に特別抗告を申し立てる行為や,再審の公判において,弁護人請求証拠に対して不同意の意見を述べたり,有罪を前提として論告を行う行為は,正当な職務上の行為であり,本件において,これらの点につき検察官の活動に違法があったとまでは認めることができない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 9 争点9(原告に生じた損害の有無及び金額)について⑴ 身柄拘束期間中の損害についてア逸失利益について相当因果関係の認められる期間原告は,別件窃盗逮捕がされた10月10日から本件強盗殺人事件に関 する確定審における有罪判決が昭和53年7月12日に確定するまでの3929日間及び上記判決による刑の執行を受けた6700日間の合計1万0629日間に係る逸失利益につき,被告らによる違法行為との間で相当因果関係が認められる旨主張する。 しかし,別件窃盗逮捕,別件窃盗勾留,本件逮捕及び本件勾留に係る身 柄拘束自体や本件起訴が国賠法上違法であるとは認められないことは,前 記1及び6において説示したとおりであるから,上記期間全体の逸失利益について被告らによる違法行為との間で相当因果関係がある旨の原告の主張は採用することができない。 他方で,確定審第二審の判決までの間にされた前記2及び7において説示した違法行為が存在しなければ,遅くとも,確定審第二審の判決におい ては,再審判決と同様に本件強盗殺人事件については無罪の判決が,余罪窃盗各事件については懲役2年(執行猶予3年)の判決が宣告され,直ちに原告が釈放された蓋然性が高いものというべきである。 したがっ 審判決と同様に本件強盗殺人事件については無罪の判決が,余罪窃盗各事件については懲役2年(執行猶予3年)の判決が宣告され,直ちに原告が釈放された蓋然性が高いものというべきである。 したがって,身柄拘束期間中の逸失利益のうち,被告らによる違法行為との間で相当因果関係が認められるのは,確定審第二審の判決の宣告がさ れた日の翌日である昭和48年12月21日から原告が仮釈放された平成8年11月14日までの合計8365日間に相当する部分に限られるというべきである。 算定の基準とすべき額について原告は,各年度の賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴 計・男子計による該当年齢の平均賃金を得られていた蓋然性が高い旨主張する。 しかし,原告は,入学して半年で高等学校を中退しており,その理由は勉学意欲がないというものであったこと(原告本人により認定することができる。)に照らすと,原告については,各年度の賃金センサス第1巻第 1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計による該当年齢の平均賃金を得られていた蓋然性が高いにとどまるものというべきである。 したがって,原告の身柄拘束期間中の逸失利益を算定するに当たっては,別紙「裁判所の認定額」の「①身柄拘束期間中の逸失利益」の「平均賃金」欄に各記載の金額を基準とするのが相当である(同欄の昭和49年から平 成8年までの賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男 子計の各金額は甲C10ないし32によって認定することができる。なお,昭和48年の賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計の平均賃金額は,証拠上不明であるため,甲C8によって認定することができる昭和47年の賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計 ンサス第1巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計の平均賃金額は,証拠上不明であるため,甲C8によって認定することができる昭和47年の賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計の平均賃金額と上記認定の昭和49年の賃金センサス第1 巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計の平均賃金額の平均値を平均賃金額として認定した。)。 生活費控除原告が,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間において,生活費の負担をしておらず,独身の男性であったことに照らすと, 上記期間中の逸失利益を算定するに当たり,生活費控除としてその5割を減額するのが相当である。 なお,原告は,被害者が死亡した場合に生活費控除を行うことはあるが,後遺障害による逸失利益の算定においては生活費控除は行わないことを理由に,本件においても生活費控除をするのは相当ではなく,その控除をす るとしても原告が主張する3割が相当である旨主張するが,独自の見解に基づくものであって採用することができない。 以上を前提に昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間の逸失利益を算定すると,その額は,別紙「裁判所の認定額」の「①身柄拘束期間中の逸失利益」の「元金」の「小計」欄記載の金額となる。 イ慰謝料について本件に現われた諸般の事情を考慮すると,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間に,原告が未決勾留又は刑罰の執行として身柄拘束を受けたことによる慰謝料の額は,別紙「裁判所の認定額」の「②身柄拘束期間中の慰謝料」欄記載のとおり,3000万円とするのが相当である。 ウ刑事補償給付の控除 刑事補償法5条3項は,他の法律によって損害賠償を受けるべき者 」の「②身柄拘束期間中の慰謝料」欄記載のとおり,3000万円とするのが相当である。 ウ刑事補償給付の控除 刑事補償法5条3項は,他の法律によって損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によって補償を受けた場合には,その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならないと規定するところ,これは,国賠法その他の法律に基づく損害賠償の対象となる損害のうち,刑事補償給付による填補の対象となる損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する ものについて,損益相殺的な調整を図るべき旨を定めたものと解するのが相当である。 そして,刑事補償法4条2項が,同条1項の補償金の額を定めるには,拘束の種類及びその期間の長短,本人が受けた財産上の損失,得るはずであった利益の喪失,精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察,検察及び裁判の 各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならないと規定していることに照らすと,原告が平成24年4月10日に給付を得た刑事補償の填補の対象となる損害は,前記ア及びイにおいて説示した昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間の逸失利益及び慰謝料に係る損害賠償金の元金に相当する部分と同性質であり,かつ,相互補完性がある ものと解される。他方で,損害の元金に対する遅延損害金に係る債権は,飽くまでも債務者の履行遅滞を理由とする損害賠償債権であるから,遅延損害金を債務者に支払わせることとしている目的は,刑事補償給付の目的とは明らかに異なるものであって,刑事補償給付による填補の対象となる損害が,遅延損害金と同性質であるということも,相互補完性があるということもで きない(最高裁昭和58年(オ)第128号同62年7月10日第二小法廷判決・民集41巻 給付による填補の対象となる損害が,遅延損害金と同性質であるということも,相互補完性があるということもで きない(最高裁昭和58年(オ)第128号同62年7月10日第二小法廷判決・民集41巻5号1202頁,最高裁平成20年(受)第494号,第495号同22年9月13日第一小法廷判決・民集64巻6号1626頁,最高裁平成21年(受)第1932号同22年10月15日第二小法廷判決・裁判集民事235号65頁,最高裁平成24年(受)第1478号同27年 3月4日大法廷判決・民集69巻2号178頁参照)。 したがって,原告が受給した刑事補償給付の額は,遅延損害金に充当することは許されず,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間の逸失利益及び慰謝料の元金に充当するのが相当であって,刑事補償給付の額を身柄拘束期間中の逸失利益及び慰謝料に係る遅延損害金部分に充当すべき旨の原告の主張は採用することができない。 そうすると,原告が受給した刑事補償給付のうち,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの8365日間に相当する刑事補償給付の額(1万2500円×8365日)を上記期間に相当する逸失利益及び慰謝料の元金から控除した結果は,別紙「裁判所の認定額」の「⑤刑事補償給付の控除」の「控除後の元金」欄記載のとおりであり,その元金は0円となる。 エ遅延損害金の起算日について不法行為による損害賠償債務は,「損害の発生と同時に,なんらの催告を要することなく,遅滞に陥る」ものとされているが(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照),後記10において説示するとおり,警察官や検察官の違法行為によっ て有罪判決がされ,これが確定した場合に 34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照),後記10において説示するとおり,警察官や検察官の違法行為によっ て有罪判決がされ,これが確定した場合において,有罪判決の執行として行われた刑罰による損害や有罪判決が存在することによって就労の機会が制限されたことによる損害など,有罪判決が存在することによって生じた損害については,その有罪判決自体が適法かつ有効なものである以上,その損害の性質上,再審による無罪判決が確定するまでは損害が生じたものとして取り 扱うことはできないから,本件においては,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間の逸失利益及び慰謝料に係る損害賠償債務に係る遅延損害金の起算日は,再審判決が確定した日である平成23年6月8日と解するのが相当である。このように解することは,除斥期間の起算点を再審による無罪判決が確定した時と取り扱うこととの均衡の観点からしても, 相当であるというべきである。 そうすると,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間の逸失利益及び慰謝料の合計額に対する平成23年6月8日から平成24年4月10日までの遅延損害金の額は,別紙「裁判所の認定額」の「④身柄拘束期間中の逸失利益及び慰謝料に対する遅延損害金」欄に記載された金額となる。 オ身柄拘束期間中の損害についての認容額以上によれば,身柄拘束期間中の損害については,昭和48年12月21日から平成8年11月14日までの間の逸失利益及び慰謝料の合計額に対する平成23年6月8日から平成24年4月10日までの遅延損害金に相当する別紙「裁判所の認定額」の「⑥身柄拘束期間中の損害(控除後)」欄に記 載された金額のみが損害として残存しているものとい する平成23年6月8日から平成24年4月10日までの遅延損害金に相当する別紙「裁判所の認定額」の「⑥身柄拘束期間中の損害(控除後)」欄に記 載された金額のみが損害として残存しているものというべきである。 ⑵ 仮釈放後の損害についてア逸失利益について 相当因果関係の認められる期間 法行為が存在しなければ,遅くとも,確定審第二審の判決においては,再審判決と同様に本件強盗殺人事件については無罪の判決が,余罪窃盗各事件については懲役2年(執行猶予3年)の判決が宣告され,直ちに原告が釈放された蓋然性が高いものというべきである。 そして,証拠(甲C74,原告本人)によれば,仮釈放された後におい ても,本件強盗殺人事件についての有罪判決が存在することによって,原告が社会的な偏見にさらされ,就労の機会が大きく制限されたものと認められるから,原告が仮釈放された日の翌日である平成8年11月15日から再審判決が確定した日の前日である平成23年6月7日までの間の逸失利益は,前記2及び7において説示した違法行為との間に相当因果関係の ある損害というべきである。 他方,再審判決が確定した後は,原告が社会的な偏見にさらされることはないものというべきであるから,再審判決が確定した後にも逸失利益が存在する旨の原告の主張は採用することができない。 算定の基準とすべき額各年度の賃金センサ ス第1巻第1表産業計・企業規模計・中学卒・男子計による該当年齢の平均賃金を算定の基準とすべきである。 したがって,平成8年11月15日から平成23年6月7日までの間の原告の逸失利益を算定するに当たっては,別紙「裁判所の認定額」の「⑦仮釈放後の逸失利益」の「平均賃金」欄に各記載の金額を基準とするの したがって,平成8年11月15日から平成23年6月7日までの間の原告の逸失利益を算定するに当たっては,別紙「裁判所の認定額」の「⑦仮釈放後の逸失利益」の「平均賃金」欄に各記載の金額を基準とするのが 相当である(同欄の各金額は,甲C32ないし47によって認定することができる。)。 得られた収入の控除原告が平成8年11月15日から平成23年6月7日までの間に現実に得た収入については,逸失利益から控除するのが相当である。 証拠(甲C49ないし55)によれば,平成17年から平成23年までの間の各年の原告の収入額は,別紙「裁判所の認定額」の「⑦仮釈放後の逸失利益」の「現実の収入(控除相当額)」の平成17年から平成23年までの各欄に記載されたとおりであると認定することができる(なお,平成23年については日割計算をした。)。そして,平成8年から平成16 年までの間の現実の収入額は不明であるが,その期間中の収入の額については,平成17年から平成23年までの間の各年の原告の収入額の平均額相当の収入を得られたものと認めるのが相当であり,その額は,別紙「裁判所の認定額」の「⑦仮釈放後の逸失利益」の「現実の収入(控除相当額)」の平成8年から平成16年までの各欄に記載されたとおりである(なお, 平成8年については日割計算をした。)。 仮釈放後の逸失利益についての認容額以上によれば,仮釈放後の逸失利益に係る損害賠償債務の額は,別紙「裁判所の認定額」の「⑦仮釈放後の逸失利益」の「元金」の「小計」欄記載の金額となる。 なお,前記⑴エにおいて説示したものと同様の理由で,上記損害賠償債 務についての遅延損害金の起算日は,平成23年6月8日と解するのが相当である。 イ慰謝料について 載の金額となる。 なお,前記⑴エにおいて説示したものと同様の理由で,上記損害賠償債 務についての遅延損害金の起算日は,平成23年6月8日と解するのが相当である。 イ慰謝料について本件に現われた諸般の事情を考慮すると,平成8年11月15日から平成23年6月7日までの間の慰謝料の額は,別紙「裁判所の認定額」の「⑧仮 釈放後の慰謝料」欄記載のとおり,300万円とするのが相当である。 なお,前記⑴エにおいて説示したものと同様の理由で,上記損害賠償債務についての遅延損害金の起算日は,平成23年6月8日と解するのが相当である。 ウ年金について 原告は,別件窃盗逮捕当時,無職であり,別件窃盗事件及び余罪窃盗各事件の犯行に及ぶなど,素行が不良であり,就労意欲も乏しかったこと,また,別件窃盗逮捕当時,国民年金保険料を納付していたことはうかがわれないことに照らすと,原告において,国民年金保険料を所定の期間納付し,国民年金の受給者としての資格を取得した蓋然性は,さほど高いものと認めること はできない。 したがって,年金の受給額について逸失利益が生じている旨の原告の主張は採用することができない。 エ再審判決確定までの弁護士費用等 原告が支出した費用及び無罪費用補償の支給 証拠(甲C2,64ないし68)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事 実が認められる。 ① 原告は,自ら又は妻であるCI を介して,第二次再審請求審の弁護団に対し,平成22年12月16日までの間に,その活動費用として合計190万円を支払った。 ② 原告は,弁護団に対し,平成24年4月27日,弁護士報酬として1 328万円を支払った。 ③ 水戸地裁土浦支部は,同年6月15日,原告に対し,別紙「計算内 して合計190万円を支払った。 ② 原告は,弁護団に対し,平成24年4月27日,弁護士報酬として1 328万円を支払った。 ③ 水戸地裁土浦支部は,同年6月15日,原告に対し,別紙「計算内訳書」記載のとおり,確定審及び再審公判における旅費,日当及び報酬として,無罪費用補償金741万0370円を交付する旨の決定をし,その後,原告はその支払を受けた。 ④ 原告は,弁護団に対し,同年7月20日,実費等の費用として75万円を支払った。 ⑤ 原告は,日本弁護士連合会に対し,同年9月25日,741万0370円を支払った。 相当因果関係の認められる範囲 おける違法行為との間で相当因果関係のある損害であり,このうち同⑤に係る損害に同③に係る無罪費用補償の金額を充当すべきである旨主張する。 しかるところ,原告は,日本弁護士連合会に対して支払った同⑤に係る741万0370円について,日本弁護士連合会から合計1298万72 05円の金銭的支援を受けたことを踏まえてのものであるとするが,日本弁護士連合会からの1298万7205円の金銭的支援に相当する金員について,原告が日本弁護士連合会に対して返還の合意をしていたこと等を認めるに足りる証拠はなく,原告が,日本弁護士連合会に対して上記金銭的支援に相当する金員の支払義務を負っていたものとは認められない。そ うすると,原告は,法的な義務に基づくことなく同⑤に係る金員の支払を したものであり,その実質は,原告から日本弁護士連合会に対する贈与であったと認めるのが相当であるから,同⑤に係る741万0370円の支出については,本件における違法行為と相当因果関係のある損害に当たるということができない。 また,同①,②及び④に係る支出については,詳細な費用 のが相当であるから,同⑤に係る741万0370円の支出については,本件における違法行為と相当因果関係のある損害に当たるということができない。 また,同①,②及び④に係る支出については,詳細な費用の内訳は不明 であるものの,弁護団の活動内容等に照らし,その支出には再審による無罪判決を得るために必要な費用も含まれていたものと考えられるが,原告は,同③のとおり,確定審及び再審公判における旅費,日当及び報酬として741万0370円の交付を受けており,これによって上記費用の一部について填補がされた可能性があるものといわざるを得ない。 上記の事実を踏まえ,民訴法248条の趣旨をも斟酌して検討すると,別紙「裁判所の認定額」の「⑨刑事弁護の弁護士費用」欄に記載のとおり,同①,②及び④に係る各支出の5割に相当する金額については,本件における違法行為と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。 遅延損害金の起算日について 違法行為によって得られた有罪判決の存在による損害というべきであるから,前記⑴エにおいて説示したものと同様の理由で,上記損害賠償債務についての遅延損害金については,平成23年6月8日から請求し得るものと解されるが,原告は, の支払を求め,同④については同年7月20日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めているから,上記各損害賠償債務に係る各遅延損害金については,それぞれ,原告が求める限度において認めるのが相当である。 オ本件訴訟の弁護士費用原告は,本件訴訟を弁護士に依頼して提起したものであるところ,本件事 案の内容,本件訴訟の審理経過,本件の認容額等に照らすと,前記2及び7 において説示した違法行為との間に相当因果関係のある弁護士費用としては,別紙「裁判 したものであるところ,本件事 案の内容,本件訴訟の審理経過,本件の認容額等に照らすと,前記2及び7 において説示した違法行為との間に相当因果関係のある弁護士費用としては,別紙「裁判所の認定額」の「⑩まとめ」の「番号」欄の2ないし5に対応する各「認容額」欄記載の額の合計額の約1割に相当する額(同6に対応する「認容額」欄記載の金額)と認めるのが相当である。 ⑶ まとめ 以上によれば,原告の損害額は,別紙「裁判所の認定額」の「⑩まとめ」の「合計額」欄に記載のとおりとなる。 10 争点10(除斥期間が経過したか否か)について国賠法4条が準用する民法724条後段所定の除斥期間の起算点は,「不法行為の時」と規定されており,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の 場合には,加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし,身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や,一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきであ る(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁,最高裁平成13年(オ)第1194号,第1196号,同年(受)第1172号,第1174号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁,最高裁平成16年(受)第672号,第673号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁参照)。 そして,脅迫や偽計を用いた取調べなどの国賠法上違法な行為がされたこと自体によって生じる精神的損害等については,当該違 号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁参照)。 そして,脅迫や偽計を用いた取調べなどの国賠法上違法な行為がされたこと自体によって生じる精神的損害等については,当該違法行為が行われた時に損害が発生するものといえるから,当該違法行為の時が除斥期間の起算点となると考えられるが,警察官や検察官の違法行為によって有罪判決がされ,これが確定した場合において,有罪判決の執行として行われた刑罰による損害や有罪判決が存在 することによって就労の機会が制限されたことによる損害など,有罪判決が存在 することによる損害については,その有罪判決自体が適法かつ有効なものである以上,その損害の性質上,再審による無罪判決が確定するまでは損害が生じたものとして取り扱うことはできないものと解するのが相当であるから,当該損害に関する損害賠償請求権については,再審による無罪判決が確定した時が除斥期間の起算点となるものというべきである(最高裁昭和56年(オ)第767号同5 7年10月19日第三小法廷判決・民集36巻10号2163頁参照)。なぜなら,このような場合に除斥期間の進行を認めることは,再審による無罪判決の確定までに長期間を要した冤罪の被害者にとって著しく酷であるし,また,加害者である国や公共団体としても,上記損害の性質からみて,違法行為の時から相当の期間が経過した後に損害賠償の請求を受けることを予期すべきであると考えら れるからである(前掲平成16年4月27日第三小法廷判決等参照)。そして,この理は,警察官や検察官の違法行為によってされた確定前の有罪判決が存在することを前提とする勾留(未決勾留)による損害についても同様に当てはまるものということができる。 したがって,前記9において被告らによる違法行為との間に相 行為によってされた確定前の有罪判決が存在することを前提とする勾留(未決勾留)による損害についても同様に当てはまるものということができる。 したがって,前記9において被告らによる違法行為との間に相当因果関係があ る旨説示した原告の損害に係る損害賠償請求権の除斥期間の起算点は,再審判決が確定した時である平成23年6月8日と解されるから,いまだ除斥期間は経過していないものというべきである。 以上によれば,争点11(除斥期間に係る主張が信義則違反又は権利濫用に当たるか否か)について判断するまでもなく,原告の損害賠償請求権の行使は制限 されない。 第4 結論以上の次第によれば,原告の請求は,被告らに対し,連帯して,7600万8757円及びうち5921万2237円に対する平成23年6月8日から,うち664万円に対する平成24年4月27日から,うち37万5000円に対する 同年7月20日から,うち662万円に対する同年11月28日から各支払済み まで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。なお,仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第24部 裁判長裁判官市原義孝 裁判官福田敦 裁判官佐 々 木康平 (別紙) 当事者目録は記載を省略 (別紙) 当事者目録は記載を省略

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