平成25年(ワ)第14002号特許権に基づく損害賠償請求権等不存在確認請求事件判決東京都港区〈以下略〉原告株式会社アルティス同訴訟代理人弁護士小野塚格同玉城光博同渡部香菜子同荻野聡之東京都新宿区〈以下略〉被告株式会社オズ山形市〈以下略〉被告 Y両名訴訟代理人弁護士山岸純 主文 1 原告が別紙物件目録記載の物件を使用したことについて,各被告が原告に対して,別紙権利目録記載の特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことを確認する。 2 被告Yが原告に対して,原告の特別清算手続(当庁平成24年(ヒ)第2076号特別清算事件)において平成24年12月13日付け「債権申出書」により申し出た「株主権侵害による損害」に係る損害賠償請求権を有しないことを確認する。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は,清算中の会社である原告が,その特別清算手続において債権者として債権申出をした被告らに対して,被告らの申し出た各債権が存在しないことの確認を求める事案である。 2 前提事実(証拠等〈略〉を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告原告は,平成17年10月1日に,当時休眠状態にあった有限会社植物栽培研究所を株式会社に組織変更するとともに,商号を現在の「株式会社 は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告原告は,平成17年10月1日に,当時休眠状態にあった有限会社植物栽培研究所を株式会社に組織変更するとともに,商号を現在の「株式会社アルティス」に変更した株式会社である。 原告の発行済株式の約95.93%(3774株)は,現在オリンパス株式会社(以下「オリンパス」という。)が保有している。 原告は,主たる事業として,産業廃棄物の収集・処理業,感染性医療廃棄物処理装置等の開発・製造販売業を行っていたが,平成24年11月9日付けで解散し,同月27日に特別清算開始の申立てを行った。原告は,同年12月13日,当庁において特別清算開始決定を受け(当庁平成24年(ヒ)第2076号特別清算事件。以下,この特別清算手続を「本件特別清算手続」という。),現在,特別清算手続中である。 イ被告ら被告株式会社オズ(以下「被告会社」という。)は,平成8年8月5日に設立され,感染性医療廃棄物処理装置及び処理機械の開発並びに製造・販売等を目的とする株式会社である。 被告Yは,被告会社の代表取締役である。 (2) 被告Yの特許権ア被告Yは,別紙権利目録記載の特許権(以下,この特許権を「本件特許権」といい,同特許権に係る発明を「本件発明」という。)の特許権者で ある。 イ本件特許権の特許請求の範囲(請求項の数11)の記載は,別紙特許公報の写し〈略〉の各該当項に記載のとおりである。 (3) 被告らによる債権申出ア被告会社は,本件特別清算手続において,原告に対し,平成24年12月13日付け「債権申出書」を提出して,債権申出を行った。同債権申出書には,次の内容の記載がある(以下,被告会社が申し出たこの債権を「被告会社申出債権」という。)。 債 対し,平成24年12月13日付け「債権申出書」を提出して,債権申出を行った。同債権申出書には,次の内容の記載がある(以下,被告会社が申し出たこの債権を「被告会社申出債権」という。)。 債権額:少なくとも4200万円債権の内容及び原因:原告が被告会社の特許権を侵害し,「プラスチック処理装置」を製造し,使用したことによって,被告会社が被った損害。原告は,少なくとも6台を製造し,使用しているが,これらの価格は1台当たり700万円を下ることがないため,合計4200万円の損害が発生している。 イ被告Yは,本件特別清算手続において,原告に対し,平成24年12月13日付け「債権申出書」を提出して,二つの債権の申出を行った。同債権申出書には,次の内容の記載がある(以下,被告Yが申し出た後記①及び②の各債権を,それぞれ「被告Y申出債権①」及び「被告Y申出債権②」という。)。 ① 特許権侵害による損害債権額:少なくとも4200万円債権の内容及び原因:原告が被告Yの特許権を侵害し,「プラスチック処理装置」を製造し,使用したことによって,被告Yが被った損害。原告は,少なくとも6台を製造し,使用しているが,これらの価格は1台当たり 700万円を下ることがないため,合計4200万円の損害が発生している。 ② 株主権侵害による損害債権額:少なくとも57億6000万円債権の内容及び原因:当時のオリンパスの取締役会の指示により,原告設立時にA,B,C及びDと被告Yとの間でなされた約束により,被告Yは原告株式の20%を取得しているはずであるが,被告Yを原告株主として扱わず,排除したことにより,原告株式の20%に相当する分の損害が発生している。先般オリンパスが原告株式を れた約束により,被告Yは原告株式の20%を取得しているはずであるが,被告Yを原告株主として扱わず,排除したことにより,原告株式の20%に相当する分の損害が発生している。先般オリンパスが原告株式を購入した際の金額が約288億円であることから,その20%に相当する57億6000万円が損害となる。 ウ被告会社申出債権及び被告Y申出債権①は,いずれも特許権侵害に基づく損害に係る債権であるところ,本件訴訟において,被告らは,本件発明の実施品であるプラスチックス処理装置「Eco・Angel4000W滅菌機」(以下「被告装置」という。)を模造した装置を,原告がオリンパスから譲り受けて,原告保有のトラックに搭載して事業に供して使用したとして,本件特許権の侵害を主張している。 3 争点(1) 被告Y申出債権①の存否及びその額(2) 被告Y申出債権②の存否及びその額(3) 被告会社申出債権の存否及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告Y申出債権①の存否及びその額)について〔被告Yの主張〕被告Yは,原告の本件特別清算手続において,被告Y申出債権①として,特 許権侵害による損害について4200万円の債権を申し出た。 被告らが,原告の使用により本件特許権が侵害されたと主張する製品は,別紙物件目録記載1ないし3の3台のトラック(以下,順に「本件トラック1」,「本件トラック2」及び「本件トラック3」といい,これら3台のトラックを併せて「本件各トラック」という。)に搭載された「医療系廃棄物を植物油で融解滅菌して処理する機械」である。なお,被告らは,原告が使用を認めている株式会社興伸(以下「興伸」という。)及びエコマテリアル株式会社(以下「エコマテリアル」という。)から購入した2 物を植物油で融解滅菌して処理する機械」である。なお,被告らは,原告が使用を認めている株式会社興伸(以下「興伸」という。)及びエコマテリアル株式会社(以下「エコマテリアル」という。)から購入した2台のプラスチックス処理装置を侵害品と主張しているのではない。 証拠の偏在的状況から,被告らとしては,原告による本件特許権の侵害を立証することが著しく困難であるが,少なくとも平成24年8月3日時点において,原告が,本件発明の技術的範囲に属する機械を使用していたことは明らかである。 〔原告の主張〕被告らが本件特許権の侵害品である「医療系廃棄物を植物油で融解滅菌して処理する機械」が搭載されたと主張する本件各トラックに関して調査したところ,本件各トラックは,いずれも平成18年6月29日以降に新規登録されて原告にリースされた車両であって,模造品(侵害品)の設置時期としてBが供述する平成18年3月頃には,まだ原告にリースされておらず,原告が使用できる状況にはなかった。 また,本件トラック1及び2は,産業廃棄物の収集運搬車両として使用されていたものであり,滅菌処理装置を搭載して特別管理産業廃棄物処分業に使用されたことはない。一方,本件トラック3に本件発明の実施品ではないヒートブロー方式の滅菌処理装置が搭載されたことはあるが,当該滅菌処理装置は平成20年9月に取り外され,それ以降,本件トラック3は,滅菌処理装置を搭載せず,産業廃棄物の収集運搬車両として使用された。 したがって,平成24年8月3日時点において,本件トラック1ないし3に「医療系廃棄物を植物油で融解滅菌して処理する機械」が搭載されていたとする被告らの主張は,客観的な根拠に基づかない単なる推測にすぎない。 なお,本件特許権の設定登録日は平成22年6月11日であ 「医療系廃棄物を植物油で融解滅菌して処理する機械」が搭載されていたとする被告らの主張は,客観的な根拠に基づかない単なる推測にすぎない。 なお,本件特許権の設定登録日は平成22年6月11日であるが,同日以降に原告が使用したプラスチックス処理装置は,興伸及びエコマテリアルから購入した2台のみであるが,これらはいずれも本件発明の実施品ではない。 2 争点(2)(被告Y申出債権②の存否及びその額)について〔被告Yの主張〕株式会社グローバル・カンパニー(以下「グローバル・カンパニー」という。)の代表取締役であったCは,原告の完全親会社であるオリンパスの粉飾事件における指南役でもあったが,平成17年,被告Yに対して,被告会社が開発したプラスチックス処理装置に係る事業にオリンパスとして出資したいとの話を持ちかけ,同年7月には,オリンパスの指示を受けて,原告においてプラスチックス処理装置の製造・販売を行うこととして,被告Yとの間で,原告株式の20%以上を被告Yに割り当てることを合意した(以下,被告Yが主張する原告株式の割当てに関する合意を「本件合意」という。)。被告Yは,本件合意に基づき,オリンパス及びCとの関係で,少なくとも原告株式の20%を取得することができる地位を得た。そして,原告は,本件合意を認識し,明示ないし黙示に承諾していた。 そうであるにもかかわらず,原告は,発行済株式の95.93%をオリンパスに約288億円で譲渡した。あるいは,原告は,第三者からオリンパスへの原告株式の譲渡が原告の清算を目的としたものであって,それが不可逆的に被告Yの株式取得を不可能ならしめるものであることを理解しながら,漫然と上記株式譲渡を承認し,さらに,その後被告Yに新株の割当てを行わないまま,本件特別清算手続を開始した。 この結果,被 可逆的に被告Yの株式取得を不可能ならしめるものであることを理解しながら,漫然と上記株式譲渡を承認し,さらに,その後被告Yに新株の割当てを行わないまま,本件特別清算手続を開始した。 この結果,被告Yは原告株式の20%を取得することができる地位を侵害さ れ,少なくとも原告株式20%分に相当する損害,すなわち,オリンパスが原告株式95.93%を取得した際の対価約288億円の20%である約57億6000万円の損害を受けた。 よって,被告Yは,原告に対し,少なくとも57億6000万円の損害賠償請求権を有している。 〔原告の主張〕被告Yが原告の20%以上の株式を取得する旨の合意の存在及びその合意についての原告の認識・承諾は否認する。被告Yが合意の根拠とする書証(略)は,その作成者が不明であるか,その信用性が低いものであり,しかも,これらの証拠は上記合意の根拠となるものではない。 また,オリンパスは,現在原告の発行済株式の95.93%を保有しているが,同株式は,原告がオリンパスに譲渡したものではなく,オリンパスが原告以外の者から取得したものである。 仮に本件合意が存在するとしても,被告Yがオリンパスの保有している株式を取得したり,原告から株式の追加発行を受けたりすることにより,原告の発行済株式の20%以上を取得することは可能であるし,第三者からオリンパスへの原告株式の譲渡を原告が承認したことや,原告が本件特別清算手続を開始したことによって,不可逆的に被告Yの株式取得が不可能になったということはないから,被告Yの権利が侵害された事実はない。しかも,本件合意は,C又は同人を代表者とするグローバル・カンパニーと被告Yとの間の合意であるところ,かかる合意は当事者を拘束するのみであるから,原告がこれに拘束され の権利が侵害された事実はない。しかも,本件合意は,C又は同人を代表者とするグローバル・カンパニーと被告Yとの間の合意であるところ,かかる合意は当事者を拘束するのみであるから,原告がこれに拘束されることはない。 さらに,非上場株式である原告の株式譲渡価格は相対取引により個別に決定されるから,オリンパスによる原告株式の取得価格を基準に被告Yの損害が算定されることにはならない。被告Yによる原告株式の取得時期や価格が決まっておらず,しかも,原告株式の価値は債務超過状態にある原告の純資産額を元 に算定されるべきであるから,被告Yが原告株式を取得できなかったことによる損害は存在しない。 よって,被告Yの原告に対する「株主権侵害」に係る損害賠償請求権(被告Y申出債権②)は成り立たない。 3 争点(3)(被告会社申出債権の存否及びその額)について〔被告会社の主張〕被告会社は,原告の本件特別清算手続において,被告会社申出債権として,特許権侵害による損害について4200万円の債権を申し出た。 被告らが,原告の使用により本件特許権が侵害されたと主張する製品は,本件各トラックに搭載された「医療系廃棄物を植物油で融解滅菌して処理する機械」である。なお,被告らは,原告が使用を認めている興伸及びエコマテリアルから購入した2台のプラスチックス処理装置を侵害品と主張しているのではない。 証拠の偏在的状況から,被告らとしては,原告による本件特許権の侵害を立証することが著しく困難であるが,少なくとも平成24年8月3日時点において,原告が,本件発明の技術的範囲に属する機械を使用していたことは明らかである。 〔原告の主張〕被告会社は,そもそも本件特許権の権利者ではないから,原告に対して,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還 技術的範囲に属する機械を使用していたことは明らかである。 〔原告の主張〕被告会社は,そもそも本件特許権の権利者ではないから,原告に対して,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことは当然である。 また,原告が本件特許権を侵害した事実がないことは,前記1〔原告の主張〕のとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2,2の前提事実並びに後掲各証拠〈略〉及び弁論の全趣旨によれば, 以下の事実が認められる。 (1) 本件特許権及び被告らの事業本件特許権は,平成12年12月19日に,被告Yを発明者兼出願人として特許出願され,平成22年6月11日に設定登録された。本件発明は,「プラスチックス処理装置及び処理方法」に関する発明であり,本件発明に係る装置は,プラスチックスを加熱した植物油によって溶融して液相化した後,冷却して固相プラスチックスとして回収するように構成したプラスチックス処理装置であって,電気加熱による植物油の加熱制御手段を備えたプラスチックス用の溶融処理槽を少なくとも2槽以上設けて,これら各溶融処理槽の間に必要に応じて植物油を相互に移動することができる連通手段を設けるように構成し,これによって,加熱した植物油にプラスチックスを入れて液相化する処理作業を簡単な操作によって確実に行うことができるとともに,低コストにて植物油の混入率が低くて高品質な固相プラスチックスを得ることができるようにしたものである(段落【0007】,【0008】)。 本件特許権の設定登録以後,その特許権者は被告Yであり,被告会社が特許権者となったことはない。 被告会社は,平成17年4月頃,感染性医療廃棄物処理装置等を主体とした事業展開を開始し,医療施設から排出される注射 以後,その特許権者は被告Yであり,被告会社が特許権者となったことはない。 被告会社は,平成17年4月頃,感染性医療廃棄物処理装置等を主体とした事業展開を開始し,医療施設から排出される注射器や点滴用具などの感染性医療廃棄物を溶融滅菌するための装置である被告装置等を製造していた。 なお,被告装置は,滅菌機の種類としては,加熱した植物油を用いるいわゆるオイル方式に属するものであった。 (2) 原告の設立に至る経緯オリンパスは,平成12年3月に設立された事業投資ファンドGCNVV(「G.C. NewVisionVentures, L.P.」の略称)を通じて,ベンチャー企業に投資し,新規事業の展開を図っていたところ,GCNVVの実質的な運営者は,Cが代表者を務めるグローバル・カンパニーであった。 平成17年5月頃,グローバル・カンパニーからの申出により,同社が被告会社の感染性医療廃棄物処理装置に関する事業に投資をすることとなり,被告会社は,グローバル・カンパニーの出資によって増資し,また,グローバル・カンパニーの関連投資ファンドであるNeo(「NeoStrategicVenture, L.P.」の略称)から1億円の事業資金を借り入れた。グローバル・カンパニーの上記出資に当たって,当事者間では,被告会社における被告Yの株式持分を20%以上に維持することが合意された。 同年7月頃,グローバル・カンパニーは,感染性医療廃棄物処理装置に関する事業を,被告会社ではなく,当時休眠会社であった有限会社植物栽培研究所を買収して,同社を通じて行うこととし,同年10月1日,同社を組織変更して,原告を設立した。その際,当時オリンパスの八王子事業所の総務部長であったAが原告の代表取締役に,Cが取締役に,Cの知人 究所を買収して,同社を通じて行うこととし,同年10月1日,同社を組織変更して,原告を設立した。その際,当時オリンパスの八王子事業所の総務部長であったAが原告の代表取締役に,Cが取締役に,Cの知人であり当時コンサルタント業を営んでいたBが執行役員兼副社長に,それぞれ就任した(なお,Bは,平成18年8月に原告を退社した。)。 平成17年10月12日頃,グローバル・カンパニー,被告会社及び被告Yは,同日付け覚書(以下「本件覚書」という。)を締結した。ここでは,一定の条件を前提として,グローバル・カンパニーが,被告Y又はその親族の原告株式の持分が原則として20%を維持するように配慮することが定められた。 しかし,その後,被告Y又はその親族が原告株式を取得することはなかった。 (3) 原告株式の移転についてGCNVVによる原告を含むベンチャー企業への投資は,オリンパスの新規事業展開を目的とするものであったが,一方で,当時オリンパスがファンド投資において抱えていた損失を解消するための枠組みに用いることも計画されていた。その損失解消の枠組みは,①Neo等のファンドがベンチャー 企業の新株を安い価格で引き受ける,②オリンパスが,Neo等のファンドからベンチャー企業の株式を著しく高い価格で購入する,③Neo等のファンドが得た多額の株式売却益について,含み損を抱える他のファンドに資金を環流させて利益を移転するなどして,他のファンドの損失の一部を解消する,④オリンパスは,ベンチャー企業の実際の企業価値と高値で購入した株式の価格との差額をのれんとして計上し,のれんを順次償却し,又は減損処理する,⑤これによって,オリンパスが抱える含み損がのれんに姿を変えて計上されることになり,公表上で処理できることになる,というものであっ との差額をのれんとして計上し,のれんを順次償却し,又は減損処理する,⑤これによって,オリンパスが抱える含み損がのれんに姿を変えて計上されることになり,公表上で処理できることになる,というものであった。 原告がグローバル・カンパニーに買収された当時,同社が原告の全株式(60株)を保有していたが,その後平成17年12月に,原告は,Neoから約1億4700万円の出資を受けて,2940株の新株を発行した。平成18年3月,Neoは,上記原告株式のうち760株をGCNVVに対して約44億0040万円で売却し,また,うち530株を同社の関連投資ファンドであるDD(「DynamicDragon Ⅱ SPC」の略称)に対して約29億5210万円で売却した。GCNVVは,このほか,平成18年4月から平成19年3月までの間に原告株式720株を取得した。オリンパスは,平成19年9月頃,GCNVVとの契約を解約し,これにより,当時GCNVVが保有していた原告株式(計1480株)をその取得簿価で引き取った。また,オリンパスは,平成20年3月頃,Neoが保有していた原告株式1650株及びDDが保有していた原告株式530株を,合計約237億1500万円で買い取った。 オリンパスは,主に上記のように原告株式を取得して,原告株式3774株(発行済株式総数3934株の約95.93%に相当。なお,原告の発行可能株式総数は1万株。)を保有するに至った。 オリンパスは,上記のとおり,原告の株式を著しい高値で買い取ったほか, 同様のやり方で他の国内2社の株式も著しい高値で買い取った。他方で,Neoらが株式売却により得た資金は,複数のファンドに資金移動され,損失を抱えるファンドの損失解消を行いながら,最終的にオリンパスに環流された。これにより,オリンパスの隠 高値で買い取った。他方で,Neoらが株式売却により得た資金は,複数のファンドに資金移動され,損失を抱えるファンドの損失解消を行いながら,最終的にオリンパスに環流された。これにより,オリンパスの隠れた損失の一部が填補されるとともに,隠れた損失は,オリンパスの決算書上,原告及び上記2社ののれんとして資産計上されることとなった。そして,オリンパスは,平成21年3月期にこの3社について557億円の減損処理を行うなどして,隠れていた損失の一部の最終処理を行った。 しかし,その後,オリンパスの損失処理が表面化し,粉飾決算事件として問題となり,平成23年12月6日,オリンパスの第三者委員会は,これらの経緯についての調査報告書を作成した。 Cは,このオリンパスの粉飾決算に関連して金融商品取引法違反等で逮捕,起訴され,その後,平成25年6月に組織犯罪処罰法違反等で再逮捕された。 (4) 原告の事業及び本件各トラックについてア原告は,平成17年10月の設立の頃,被告会社から,被告装置1台を購入し,その後,平成18年春過ぎ頃までの間に,被告装置に少なくとも類似する装置を,オリンパス岡谷工場で少なくとも1台製造し,このほかに5台程度を取得して,保有するに至った。 イ本件トラック1は,平成18年11月20日に新規登録され,その所有者であるリース会社から原告にリースされた。原告は,平成19年7月頃から本件トラック1を産業廃棄物の収集運搬車両として使用していたが,平成24年8月に一旦同トラックの所有権を取得した上,同年9月19日にこれを売却した。 本件トラック2は,平成18年6月29日に新規登録され(ただし,当時の登録番号は「秋田800さ****」。),その所有者であるリース会社から原告にリースされた。原告は,平成20年9月頃から本件トラッ 本件トラック2は,平成18年6月29日に新規登録され(ただし,当時の登録番号は「秋田800さ****」。),その所有者であるリース会社から原告にリースされた。原告は,平成20年9月頃から本件トラッ ク2を産業廃棄物の収集運搬車両として使用していたが,平成24年8月に一旦同トラックの所有権を取得した上,同月,これを売却した。 本件トラック3は,平成18年8月18日に新規登録され(ただし,当時の登録番号は「秋田800さ****」。),その所有者であるリース会社から原告にリースされた。その後,原告は,本件トラック3にヒートブロー方式溶融滅菌処理装置を搭載し,移動式溶融滅菌施設として廃棄物処分業に使用していたが,平成20年9月頃,同装置を取り外し,その後は産業廃棄物の収集運搬車両として使用していた。原告は,平成24年8月に一旦本件トラック3の所有権を取得した上,同月,これを売却した。 ウオリンパスは,平成24年4月,連結子会社である原告の事業から撤退し,原告を解散させることを発表した。 原告は,同年6月末日をもってその事業を終了し,その後解散して本件特別清算手続に入った。 2 争点(1)(被告Y申出債権①の存否及びその額)について(1) 被告Yは,被告Y申出債権①について,原告が,プラスチックス処理装置である被告装置を模造した装置をオリンパスから譲り受けて使用することが本件特許権の侵害に当たり,その装置は,少なくとも平成24年8月3日当時に本件各トラックに搭載されていたと主張する。 (2) しかし,被告Yは,上記のとおり,本件各トラックに搭載された装置が被告装置を模造したものであり,それが本件特許権の侵害品であると主張するのみで,本件各トラックにいかなる装置が搭載されていたかや,その搭載されていた装置の構 とおり,本件各トラックに搭載された装置が被告装置を模造したものであり,それが本件特許権の侵害品であると主張するのみで,本件各トラックにいかなる装置が搭載されていたかや,その搭載されていた装置の構成を何ら具体的に主張していない。 この点に関して当時原告の執行役員兼副社長であったBは,その陳述書及び宣誓供述書において,平成18年春過ぎ頃までに,被告装置を無断でコピーした装置数台が原告に納品されて,トラックに設置され,当該コピー品が本件発明の内容と酷似していたと述べており,上記宣誓供述書には,原告の 工場に当該コピー品1台が納入されて,トラックに設置された際に撮影されたものとされる写真が添付されている。また,当時原告の代表者であったAも,平成17年2月頃から平成18年5月頃の間に,原告が被告装置と少なくとも形が類似するプラスチックス処理装置の試作機6台を発注し,これらを取得したと証言する。 しかし,B及びAの上記陳述等によっても,平成18年当時原告が使用していた装置の具体的構成は全く明らかでないから,それが本件発明の技術的範囲に属するものであったと認めることはできない。また,仮に当時原告が本件発明の技術的範囲に属する装置を取得して,使用していた事実があったとしても,本件特許権が設定登録されたのは平成22年6月11日であるから,平成18年当時の原告の行為が本件特許権の侵害に当たるということはできない。そして,前記1(2)のとおり,Bは,平成18年8月に原告を退社しているから,Bの上記陳述及び供述が,本件特許権の設定登録日以降の原告による装置の使用の事実を基礎付けるものとはいえない。また,証拠(略)によれば,Aが証言するプラスチックス処理装置6台についても,平成19年6月21日までに全て廃棄されたことがうかがわれるから 原告による装置の使用の事実を基礎付けるものとはいえない。また,証拠(略)によれば,Aが証言するプラスチックス処理装置6台についても,平成19年6月21日までに全て廃棄されたことがうかがわれるから,本件特許権の設定登録当時又はそれ以後に原告がそれらの装置を使用していたとの事実は認められない。 この点に関して被告Yは,少なくとも平成24年8月3日時点において原告が本件発明の技術的範囲に属する機械を本件各トラックに搭載して使用していたことは明らかであると主張する。 しかし,被告Yの上記主張を裏付けるに足りる的確な証拠は存在せず,かえって,前記1(4)イのとおり,本件各トラックは,いずれも平成18年6月末以降に新規登録された車両であり,それ以前に原告が使用したことはないと認められ,また,その後も,プラスチックス溶融滅菌処理装置が搭載された事実がないか,搭載されたことがあっても本件発明に係る装置(オイル方 式)とは異なるタイプ(ヒートブロー方式)のものであり,さらに,本件各トラックは,いずれも平成20年9月以降は,産業廃棄物の収集運搬車両として使用され,プラスチックス溶融滅菌処理装置を搭載していなかったものと認められるのであるから,原告が,本件特許権の設定登録日である平成22年6月11日以降に,本件各トラックに本件発明の実施品を搭載して使用していたと認めることはできない。 (3) そうすると,原告が本件各トラックに搭載した処理装置に関連して本件特許権を侵害したものということはできない。 したがって,被告Yが原告に対し,本件特許権に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するものとは認められない。 3 争点(2)(被告Y申出債権②の存否及びその額)について(1) 前記1(2)及び(3)によれば,グロー 特許権に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するものとは認められない。 3 争点(2)(被告Y申出債権②の存否及びその額)について(1) 前記1(2)及び(3)によれば,グローバル・カンパニーと被告らとの間では,原告の設立に当たって,グローバル・カンパニーが,被告Y又はその親族の保有する原告株式の持分を20%以上とするよう配慮する旨合意されたこと,その後,原告からグローバル・カンパニーの関連投資ファンドに対して新株が発行されたこと,それらの株式は複数の投資ファンドを経て,最終的にはオリンパスに譲渡されたこと,現在オリンパスが原告の発行済株式の約95. 93%を保有していること,他方,これまで被告Y又はその親族が原告株式を保有したことがないこと,がそれぞれ認められる。 この点に関して被告Yは,グローバル・カンパニーの代表者であるC及びオリンパスとの関係で,本件合意に基づいて,被告Yが少なくとも原告株式の20%を取得することができる地位を得ており,原告も本件合意を承諾していたにもかかわらず,原告がその発行済株式の95.93%をオリンパスに譲渡したこと,又は,原告が,第三者からオリンパスへの原告株式の譲渡が原告の清算を目的としたものであり,それが不可逆的に被告Yの株式取得を不可能ならしめるものであることを理解しながら,漫然とその株式譲渡を 承認し,さらに,被告Yに新株の割当てを行わないまま本件特別清算手続を開始したことによって,被告Yの原告株式20%を取得することができる地位が侵害され,その結果,被告Yが原告株式20%に相当する約57億6000万円の損害を被ったと主張しており,原告の上記行為が債権侵害の不法行為に当たると主張するものであると解される。 (2) この点,まず,前記1(3)のとおり 告株式20%に相当する約57億6000万円の損害を被ったと主張しており,原告の上記行為が債権侵害の不法行為に当たると主張するものであると解される。 (2) この点,まず,前記1(3)のとおり,オリンパスは,原告株式の約95.93%を投資ファンドを通じて取得したものであるから,原告が発行済株式の95.93%をオリンパスに譲渡したとの事実は認められない。また,オリンパスの損失解消の枠組みは,投資ファンドの保有する株式を高値で買い取ることで投資ファンドの抱える損失を解消しつつ,それを表立って処理できるのれんに振り替えることで目的が達成されており,そののれんは,順次償却され,あるいは減損処理されることが予定されていたのであるから,上記株式買取りが原告の清算を目的としたものであったとは認められない。さらに,原告が本件特別清算手続を開始する以前に,オリンパスの粉飾決算が表面化して問題とされていたことからすれば,本件特別清算手続の開始が被告Yの株式取得を妨げるためにされたものであるとも認められない。 そうすると,被告が債権侵害の前提として主張する前記(1)の事実は,いずれも認めることができない。 (3) 次に,被告Yが「原告株式を取得することができる地位」の侵害を主張する点については,そもそもかかる「地位」が,法律上いかなる権利ないし利益を指すものであるかが明らかでない。 本件合意に関する本件覚書には,グローバル・カンパニーが被告Y又はその親族の保有する原告株式の持分を20%以上に維持するように配慮することが記載されているのみであって,被告Y又はその親族が,いつ,誰から,いくらで原告株式の20%を取得するのかなど,被告Y又はその親族の具体的な権利内容は何ら記載されておらず,さらに,オリンパスの役員により作 であって,被告Y又はその親族が,いつ,誰から,いくらで原告株式の20%を取得するのかなど,被告Y又はその親族の具体的な権利内容は何ら記載されておらず,さらに,オリンパスの役員により作 成されたと被告らが主張するメモ(甲13)においても,「Y社長と約束した20%シェアの確保については,きちんと履行すべしという考えは十分理解し,わかっている。」と記載されているのみであり,ここから,被告Yとグローバル・カンパニー又はC,あるいはオリンパスとの間の具体的な合意内容を読み取ることはできない。 加えて,被告Yの本人兼代表者尋問の結果によっても,被告Yの原告株式の取得について,いつ誰から譲渡を受けるかなどは何ら具体的に合意されていなかったことが認められる。 そうすると,本件合意に基づいて,被告Yがグローバル・カンパニー又はC,あるいはオリンパスに対して,原告株式の取得に関して何らかの債権を有するとしても,その債権の内容は何ら具体的なものではなく,せいぜい,本件覚書に記載されているように,原告株式の取得について一定の配慮を求めることができるという程度のものにすぎなかったといわざるを得ない。 したがって,本件覚書締結後の事情により,被告Yが原告株式の20%を取得することができなくなったとしても,それによって,被告Yのグローバル・カンパニー又はC,ないしはオリンパスに対する具体的な権利が侵害されたと認めることはできない。 (4) また,被告Yは,原告株式の20%を取得できなかったことによって約57億6000万円の損害を被ったと主張するところ,被告Yが原告株式の20%を取得できなかったことにより何らかの権利を侵害されたと仮定したとしても,それによって被告Yに上記損害が生じたと認めることはできない。 すなわち,前 被ったと主張するところ,被告Yが原告株式の20%を取得できなかったことにより何らかの権利を侵害されたと仮定したとしても,それによって被告Yに上記損害が生じたと認めることはできない。 すなわち,前記第2,2(1)アのとおり,原告は平成24年12月13日に特別清算開始決定を受けて,特別清算手続中であるから,仮に被告Yが原告株式を取得し,保有していたとしても,現時点で当該株式に財産的価値があるとは考えられない。また,仮に現時点で当該株式に幾ばくかの価値があり得るとしても,そもそも被告Yの権利内容として,当該株式の取得価格が定 められていない以上,被告Yが当該株式を取得できなかったことによって当該株式の現在価値に相当する損害を受けていると認めることもできない。 この点,被告Yの上記主張を善解すれば,オリンパスが原告株式の約95. 93%を約288億円で取得したことからすれば,被告Yが原告株式の20%を取得していれば,原告の特別清算手続の開始前に,オリンパスが被告Yの保有株式を上記取得価格の20%に相当する約57億6000万円で購入したはずであると主張するものとも解される。 しかし,かかる主張は,被告Yが原告株式を無償又は安値で取得し,かつ,当該株式をオリンパスに高値で売却できることが前提条件となるところ,前記(3)のとおり,本件合意は,せいぜい被告Y又はその親族による原告株式の保有割合を20%以上とするよう配慮すべきことを定めたものにすぎず,被告Y又はその親族による原告株式の取得価格やその売却価格を保証したものではないのであるから,被告Yの主張の上記前提条件は,被告Yの単なる期待にすぎず,本件合意に基づく権利の内容ということはできない。 また,前記1(3)のとおり,オリンパスは,投資ファンドの抱える損失解消の のであるから,被告Yの主張の上記前提条件は,被告Yの単なる期待にすぎず,本件合意に基づく権利の内容ということはできない。 また,前記1(3)のとおり,オリンパスは,投資ファンドの抱える損失解消の枠組みの一つとして原告株式を利用したのであり,その目的のためには,Neo等のファンドの保有する原告株式を当該ファンドの取得価格を著しく超える高値で買い取ることが必要であったとは認められるが,被告Yの保有する原告株式を高値で買い取るべき理由があったと認めることはできないから,被告Yが上記期待を抱くことが合理的であるといえるような客観的状況が存在したとも認められない。 (5) 以上によれば,原告の行為によって本件合意に基づく被告Yの債権が侵害されたこと及びそれによって被告Yが損害を被ったことは,いずれも認めることができないから,被告Yが原告に対し,債権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(被告Y申出債権②)を有するものとは認められない。 4 争点(3)(被告会社申出債権の存否及びその額)について 被告会社は,本件特許権の侵害に基づき,原告に対して,4200万円の債権を有する旨主張する。 しかし,前記1(1)のとおり,本件特許権の権利者は,被告Yであり,被告会社ではないと認められるところ,被告会社は,原告に対して本件特許権に基づく損害賠償その他の請求権を有することの具体的根拠を何ら主張していない。 また,前記2のとおり,原告が本件各トラックに搭載した処理装置に関連して本件特許権を侵害したものと認めることもできない。 したがって,被告会社が原告に対し,本件特許権に基づいて,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するものとは認められない。 5 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるから したがって,被告会社が原告に対し,本件特許権に基づいて,損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するものとは認められない。 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 足立拓人 別紙物件目録 下記3台のトラックに搭載された処理装置記 1 自動車登録番号:「秋田100さ****」 2 自動車登録番号:「秋田100さ****」 3 自動車登録番号:「秋田100さ****」 別紙権利目録 特許番号 特許第4527274号 発明の名称 プラスチックス処理装置及び処理方法 出願日 平成12年12月19日 公開日 平成14年7月5日 登録日 平成22年6月11日 発明者 被告Y
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