- 1 - 主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 京都地方検察庁で保管中の液体1本(領置番号省略)、麻薬水溶液76. 868グラム(前同)及び同水溶液3本(前同)をいずれも没収する。 被告人が株式会社A銀行に対して有する被告人名義の通常貯金債権(記号番号省略)のうち5000円に相当する部分及びこれに対する令和2年2月27日からの利息債権をいずれも没収する。 被告人から金6000円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【罪となるべき事実】第1(令和2年4月7日付け起訴状関係)被告人は、 1 Bが、みだりに、令和元年7月16日から同月17日までの間、京都府京田辺市CD番地EF号当時の同人方居室において、後記の「Medi-Tea」と称するものを用い、3-[2-(ジメチルアミノ)エチル]インドール(別名DMT。以下、単に「DMT」という。)又はその塩類(以下「DMT等」という。)を含有するアカシア・コンフサ根樹皮、クエン酸等に熱湯を加え、攪拌し、ろ過する等して、麻薬であるDMT等を含有する水溶液約600ミリリットルを製造し、 2 前記Bが、法定の除外事由がないのに、同月23日頃、前記当時の同人方居室において、前記のとおり製造した麻薬であるDMT等を含有する水溶液の一部を飲用し、もって麻薬を施用するに先立ち、それぞれの情を知りながら、被告人が運営するインターネットサイト「薬草協会」を通じて前記アカシア・コンフサ根樹皮の粉末にクエン酸、砂糖等 - 2 - を混ぜた「Medi-Tea」と称するもの1 袋の購入申込みをした前記Bに対し、同月4日頃、前記「Medi-Tea」と称するもの1 袋を、DMT等を含有する水溶液を製造する方法等 - 2 - を混ぜた「Medi-Tea」と称するもの1 袋の購入申込みをした前記Bに対し、同月4日頃、前記「Medi-Tea」と称するもの1 袋を、DMT等を含有する水溶液を製造する方法等を記載した「図解!うまくいく清澄方法」等記載の書面と併せて前記当時の同人方宛てに発送し、その頃から同月16日頃までの間に、これらを同人に受領させ、もって前記麻薬の製造及び施用の犯行を容易ならしめて、これらを幇助した。 第2(令和2年6月26日付け起訴状関係)被告人は、令和2年1月20日頃、日本国内の場所不詳において、Gが、みだりに、麻薬であるDMT等を含有する水溶液を製造するために用いることの情を知りながら、DMT等を含有するミモザ・テヌイフローラの粉末にクエン酸、砂糖等を混ぜた「Medi-Tea」と称するもの2袋を、名古屋市H区IJ丁目K番L号MN号の同人宛てに発送し、同月下旬頃、これを同人に受領させ、もって麻薬の製造に要する原材料を提供した。 第3(令和2年8月12日付け起訴状関係)被告人は、令和2年1月24日、三重県志摩市O町PQ番地所在のO郵便局において、Rが、みだりに、麻薬であるDMT等を含有する水溶液を製造するために用いることの情を知りながら、DMT等を含有するミモザ・テヌイフローラの粉末にクエン酸、砂糖等を混ぜた「Medi-Tea」と称するもの1袋及びDMT等を含有するアカシア・コンフサ根樹皮の粉末にクエン酸、砂糖等を混ぜた「Medi-Tea」と称するもの1袋を、大阪府枚方市ST丁目U番地所在のV郵便局局留め同人宛てに発送し、同年2月3日、これを同人に受領させ、もって麻薬の製造に要する原材料を提供した。 第4(令和2年8月31日付け起訴状公訴事実第1関係)被告人は、令和2年2月24日頃、大阪府豊中市内において、Wが、 年2月3日、これを同人に受領させ、もって麻薬の製造に要する原材料を提供した。 第4(令和2年8月31日付け起訴状公訴事実第1関係)被告人は、令和2年2月24日頃、大阪府豊中市内において、Wが、みだりに、麻薬であるDMT等を含有する水溶液を製造するために用いることの情を知りながら、DMT等を含有するアカシア・コンフサ根樹皮の粉末にクエン酸、砂糖等 - 3 - を混ぜた「Medi-Tea」と称するもの1袋を、堺市X区Y町Z丁a番b号の同人宛てに発送し、同月26日、これを同人に受領させ、もって麻薬の製造に要する原材料を提供した。 第5(令和2年5月29日付け起訴状関係)被告人は、法定の除外事由がないのに、令和2年2月26日頃、大阪府豊中市cd丁目e番fgh号i方において、麻薬であるDMT等を含有する水溶液を飲用し、もって麻薬を施用した。 第6(令和2年8月31日付け起訴状公訴事実第2関係)被告人は、jが、みだりに、令和2年2月29日頃、奈良県山辺郡k村lm番地の同人方において、DMT等を含有するアカシア・コンフサの木片の粉末に、クエン酸、熱湯を加え、攪拌するなどして、麻薬であるDMT等を含有する水溶液約900ミリリットル(領置番号省略はその鑑定残量)を製造するに先立ち、その情を知りながら、被告人が運営するインターネットサイト「薬草協会」を通じて前記アカシア・コンフサの木片の購入申込みをした前記jに対し、同月28日、大阪府豊中市内において、同木片を前記の同人方宛てに発送し、同月29日、これを同人に受領させ、もって前記麻薬の製造の犯行を容易ならしめて、これを幇助した。 第7(令和2年4月14日付け起訴状関係)被告人は、 みだりに、令和2年3月3日、三重県志摩市O町no番及びp番当時の被告人方において、麻薬であるDMT 犯行を容易ならしめて、これを幇助した。 第7(令和2年4月14日付け起訴状関係)被告人は、 みだりに、令和2年3月3日、三重県志摩市O町no番及びp番当時の被告人方において、麻薬であるDMT等を含有する水溶液約858.774グラム(領置番号省略はその鑑定残量)を所持した。 【証拠の標目】(略)【事実認定の補足説明】第1 前提事実DMT等は、幻覚物質であり、麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻向法」という。) - 4 - により麻薬に指定されているが(同法2条1号、別表第1の75号、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令1条49号〔号数は令和4年政令第255号による改正後のもの〕)、DMT等を含有する植物は、麻薬原料植物に指定されておらず(同法2条4号、別表第2)、麻向法による規制はされていない(同法2条1号、別表第1の76号ロ)。アカシア・コンフサ(以下、単に「アカシア」という。)及びミモザ・テヌイフローラ(以下、単に「ミモザ」という。)は、DMT成分を含有する植物である。 被告人は、数年前から、「薬草協会」と題するインターネットサイト(以下「本件サイト」という。)を開設し、同サイト上で、アカシア又はミモザに含まれるDMT成分の薬理効果を得るための商品として、アカシアの根樹皮(以下、これも単に「アカシア」という。)の粉末(15g)又はミモザの粉末(17g)、クエン酸、エリスリトール(甘味料)及び砂糖を原材料とする「Medi-Tea」という商品を6000円(アカシアの場合)又は7000円(ミモザの場合)で販売していた。本件サイトでは、DMT成分の薬理効果を得ることを「酔う」と表現していて、「Medi-Tea」の商品紹介として、「一番最初に安心安全に酔いを試すとしたらこれです。」、「酔うた 場合)で販売していた。本件サイトでは、DMT成分の薬理効果を得ることを「酔う」と表現していて、「Medi-Tea」の商品紹介として、「一番最初に安心安全に酔いを試すとしたらこれです。」、「酔うためにはMAOIと組み合わせる必要があります。」などと記載されていた。なお、MAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)は、体内でDMT成分が分解されるのを阻害する働きを有している。また、本件サイトでは、「Medi-Tea」の商品紹介の直下でアカシアの木片(30g)も5000円で販売されており、その商品紹介として、「混ぜ物による健康被害を防ぐため、木片そのままの形での流通を勧めています。」、「一個で8回分です。」、「やすりで削るかコーヒーミルで砕いてご使用ください。」などと記載していた。そして、決済方法を記載したページでは、「Medi-Tea」を初心者用キット、アカシアの木片を経験者用と位置付けていた。 被告人は、本件サイト上で「Medi-Tea」を購入した者に対し、同商品を発送するに際し、「図解!うまくいく清澄方法」と題する書面を同封していた。同 - 5 - 書面には、「Medi-Tea」に入っている脱酸素剤を取った上で熱湯600ミリリットルの中に入れ、適宜振り混ぜながら室温に戻るまで放置し、これをキッチンペーパーを使って漉し、これに(無調整豆乳と)付属の清澄剤(活性炭やゼラチン)を入れて振ったりかき混ぜたりしてから、再度キッチンペーパーを使って漉す、という方法が記載されている(以下、「Medi-Tea」を用いて生成する液体を「本件お茶」という。)。 被告人が、判示第1及び第6記載の正犯者並びに第2ないし第4記載の被提供者に対し、本件サイトを通じた注文に応じて、各判示記載の「Medi-Tea」又はアカシアの木片を販売したことに争いはなく、関 被告人が、判示第1及び第6記載の正犯者並びに第2ないし第4記載の被提供者に対し、本件サイトを通じた注文に応じて、各判示記載の「Medi-Tea」又はアカシアの木片を販売したことに争いはなく、関係証拠によって優に認められる。 第2 主な争点弁護人らは、①全ての事件に共通して、判示各記載の水溶液とされる物は、麻向法上の麻薬原料植物以外の植物の一部と水等の混合液にすぎないから、同法上の麻薬に当たらないし、そのような物の生成、所持及び身体への使用を、麻向法により規制するのは不合理である、②麻薬製造の幇助事件(判示第1の1及び判示第6)について、各水溶液とされる物の生成過程には化学的変化が伴っていないから、その生成は麻向法上の製造に当たらない、③麻薬施用(幇助)事件(判示第1の2及び判示第5)について、Bや被告人が飲んだ液体にDMTが含有されていたかは不明である、④麻薬製造の原材料提供事件(判示第2ないし第4)について、「Medi-Tea」は麻薬の製造行為に要する原材料(麻向法68条)に当たらない上、被告人は、各被提供者が本件お茶を生成する具体的計画や予定を知らなかったから情を知っていたともいえない、⑤jによる麻薬製造の幇助(判示第6)について、アカシアの木片は一般的に取引される価値中立的な商品であるから、被告人の行為は合法的な商行為であって、被告人に麻薬製造の幇助犯は成立しない、などと主張する。 よって、本件の主な争点は、⑴ 判示第1(Bによる麻薬製造、施用の幇助)について - 6 - ①Bが生成した本件お茶にはDMT等が含まれ、麻向法上の麻薬に当たるか②その生成や飲用が同法上の麻薬の製造及び施用として規制対象になるか⑵ 判示第2ないし第4(麻薬原材料提供)について①各被提供者が生成した(生成しようとした)本件 れ、麻向法上の麻薬に当たるか②その生成や飲用が同法上の麻薬の製造及び施用として規制対象になるか⑵ 判示第2ないし第4(麻薬原材料提供)について①各被提供者が生成した(生成しようとした)本件お茶は麻向法上の麻薬に当たり、その生成は同法上の麻薬の製造として規制対象になるか②「Medi-Tea」が麻薬の製造行為に要する原材料に当たり、被告人は、各被提供者が本件お茶を生成することにつき情を知っていたといえるか⑶ 判示第5(麻薬施用)について被告人が飲用した液体にはDMT等が含まれ、麻向法上の麻薬に当たり、その飲用は同法上の麻薬の施用として規制対象になるか⑷ 判示第6(jによる麻薬製造の幇助)について①jが生成した液体は麻向法上の麻薬に当たり、その生成は同法上の麻薬の製造として規制対象になるか②アカシア木片を販売した被告人に麻薬製造の幇助犯が成立するか⑸ 判示第7(麻薬所持)について被告人が所持していた液体は麻向法上の麻薬に当たり、その所持は同法上の麻薬の所持として規制対象になるかである。 第3 主な争点に対する判断 1 判示第1(Bによる麻薬製造、施用の幇助)について⑴ Bが生成した本件お茶にはDMT等が含まれ、麻向法上の麻薬に当たるかア関係証拠によれば、Bは、DMT成分の薬理効果を得るため、本件サイトを通じて、アカシアを原材料とした「Medi-Tea」を購入するとともに、別のインターネットサイトで、オーロリクス(MAOIの商品名)を購入し、令和元年7月16日から翌17日までの間、前記「図解!うまくいく清澄方法」と題する書面の記載に従い、「Medi-Tea」と熱湯600ミリリットルを瓶の中に - 7 - 入れ、ふたを閉めて瓶を振り、計量カップの上にコーヒーフィルターをセットしたコーヒードリッ 法」と題する書面の記載に従い、「Medi-Tea」と熱湯600ミリリットルを瓶の中に - 7 - 入れ、ふたを閉めて瓶を振り、計量カップの上にコーヒーフィルターをセットしたコーヒードリッパーを置き、そこに瓶の中のものを注ぎ込んで漉し、計量カップ内の漉されたものを空になった瓶に戻し、「Medi-Tea」付属の清澄剤を入れた上でふたを閉めて振り、計量カップの上にキッチンペーパーをセットしたコーヒードリッパーを置き、そこに瓶の中のものを注ぎ込んで漉して本件お茶約600ミリリットルを生成したことが認められる。そして、Bは、同月23日頃に、オーロリクス1錠と本件お茶の一部を飲用し、程なくして幻覚を体験したこと、同月24日にBから任意提出された本件お茶の残り及び同日差し押えられたBの尿からは、いずれもDMTが検出されたことが認められる。 上記のとおりの本件お茶の生成方法や、Bが本件お茶を飲用して速やかにDMT成分の薬理効果を得ていることからすると、アカシアに含まれていたDMT成分は、本件お茶の中に溶け出していたものと相当程度推認することができる。 そして、大学において薬用植物や生薬に関する全般を対象として研究しているq証人は、DMT分子には、その構造上、プラスに帯電した水素イオン(プロトン)を引き寄せるプロトン親和性があり、水中では、水中に存在するプロトンと結合して分子全体がプラスに帯電してイオン化し、水分子に取り囲まれて水和すること、クエン酸は水の中に入ると水素イオンが電離するので、クエン酸水溶液中の水素イオンは単なる水中よりも多くなり、同水溶液中にDMTがあると、その水素イオンとも結合してDMTがイオン化し、単なる水中よりも多くのDMTが水和すること、水は植物の乾燥粉末の内外を自由に出入りすることができ、その際、水に溶解したものは 溶液中にDMTがあると、その水素イオンとも結合してDMTがイオン化し、単なる水中よりも多くのDMTが水和すること、水は植物の乾燥粉末の内外を自由に出入りすることができ、その際、水に溶解したものは水と一緒に出入りをするため、アカシアやミモザの乾燥粉末が水の中に入ると、乾燥粉末に含まれるDMTが水和し、DMT濃度の低い植物の外に水和したDMTが移動することなどを証言する。 q証言は、専門的知見に裏付けられた具体的なものであって、全体として信用することができる。q証言によっても、アカシアやミモザの植物内でDMT成分がどのような状態で存在しているかは不明であるものの、DMTが弱酸性のクエン酸水 - 8 - 溶液でよく溶けることは、PubChem(アメリカ国立衛生研究所作成のデータベース)の記載によっても裏付けられているし、DMTが植物細胞内の液胞内部に蓄積されるなどして有機酸の塩となっていれば、単純なDMTよりも水和しやすいことが認められる。そして、アカシアやミモザの植物内でDMT成分が、単純なDMTや有機酸の塩よりも水に溶けにくい状態で存在している可能性を指し示す証拠はない。したがって、q証言によると、Bが生成した本件お茶は、アカシアと弱酸性の熱湯が攪拌されることで、アカシアに含まれるDMT等が水和して植物から抽出された水溶液であることが強く推認される。なお、この場合、アカシアから抽出される植物成分はDMT等だけではないものの、その水溶液がDMT等を含有する物であることに変わりはない。 そして、Bが飲用した本件お茶の残りからDMTが検出されたことは、上記推認と整合的である。その鑑定試料を調製したr証人の証言によると、Bが飲用した本件お茶の残りは、1ミリリットルよりはるかに少ない量しかなく、茶色い液体で目に見える木片や粉末などはな れたことは、上記推認と整合的である。その鑑定試料を調製したr証人の証言によると、Bが飲用した本件お茶の残りは、1ミリリットルよりはるかに少ない量しかなく、茶色い液体で目に見える木片や粉末などはなく、調製の過程でアンモニア水等を加え、更にクロロホルムを加えて激しく振動させ、その後、水の層とクロロホルムの層に分け、クロロホルム層を鑑定試料にしたことが認められる。確かに、仮に上記お茶の残りに目に見えないほどの微細なアカシア植物片が存在していた場合、クロロホルムを加えて激しく振動させた際に、その植物片に含まれるDMT等がクロロホルムに溶出したことが考えられないではない。しかしながら、鑑定によりDMTが検出されたのはそのためであり、上記お茶の残りにはDMT等が全く溶けていなかったと考えることは、Bによる本件お茶の生成方法や本件お茶を飲用したときのBの反応及びq証言の内容と相容れないものとなるのであって、常識に照らして考えられない。なお、後述するとおり、jは、Bと類似する方法でアカシアの木片から液体を生成しているところ、同液体の鑑定では、同液体を遠心分離にかけ、その上清を口径約0. 2マイクロメートルのフィルターで濾過した液体を用いて鑑定しており、それでもDMTが検出されている。上記お茶の残りにDMT等が全く溶けていなかったと考 - 9 - えられないことは、このことによっても裏付けられている。 以上より、Bが生成し、飲用した本件お茶はDMT等を含有する物であり、麻向法2条1号、別表第1の76号所定の麻薬に当たる。 イ弁護人らは、①アカシアに含まれるDMT成分が、有機酸の塩の状態で液胞膜の内部に蓄積され、既に水和した状態である可能性があるから、植物細胞から出てきた水和したDMTは植物細胞内の状態と同じ状態であって、植物の一部にすぎな 含まれるDMT成分が、有機酸の塩の状態で液胞膜の内部に蓄積され、既に水和した状態である可能性があるから、植物細胞から出てきた水和したDMTは植物細胞内の状態と同じ状態であって、植物の一部にすぎないといえ、Bが生成した本件お茶は麻向法上の麻薬に当たらない、②国際麻薬統制委員会(INCB)の2012年版の年次報告書やフランスやイタリアの裁判例によれば、麻薬の成分を含む植物を煮出したにすぎない水溶液は麻薬として規制すべきでないなどと主張する。 しかしながら、①について、アカシアに含まれるDMT成分が、有機酸の塩の状態で液胞膜の内部に蓄積され、既に水和した状態で存在していたとしても、Bが本件お茶を生成する過程で、Bの注いだ熱湯と渾然一体となり、本件お茶の一部として植物外に存在することになるから、もはや植物の一部であるということはできない。また、②について、そもそもINCBの年次報告書は、我が国における麻向法の解釈を何ら拘束するものではない上、その記載内容も、麻薬の成分を含む植物の使用が危険である旨各国政府に注意喚起するものであって、植物の製剤を規制すべきではないかのような意見が記載されているとは認められない。また、DMTのみを抽出できていなければ規制の対象としない旨のフランスの裁判例は、麻薬を含有する物それ自体も麻薬であるとする我が国の麻向法の下では妥当しないと考えられるし、麻薬含有植物それ自体を使用したときと比較して、麻薬の含有割合を高めるなどして薬理効果を増幅させなければ規制の対象としない旨のイタリアの裁判例は、薬理効果の程度の違いのみに着目することに合理的な根拠があるとはいえないから、これらの裁判例と同様の解釈をすることは相当でない。 よって、弁護人らの上記各主張は採用することができない。 ⑵ Bによる本件お茶の生成及び飲用が、麻向 ることに合理的な根拠があるとはいえないから、これらの裁判例と同様の解釈をすることは相当でない。 よって、弁護人らの上記各主張は採用することができない。 ⑵ Bによる本件お茶の生成及び飲用が、麻向法上の麻薬の製造及び施用とし - 10 - て規制対象になるかア弁護人らは、①Bによる本件お茶の生成は、化学的な合成を経ていないから、麻向法上の麻薬の製造に当たらない、②同法上、麻薬原料植物として指定されていない麻薬含有植物(以下「未指定植物」という。)は規制対象でないから、「Medi-Tea」から本件お茶を生成するような簡易な加工によって、未指定植物から麻薬を含有する物を生成したり、それを使用したりすることが規制されるのであれば、あえて規制の対象から外した未指定植物の利用が制限されるに等しく不合理であると主張し、また、DMTを含有する液体として、沖縄県下で用いられている染料や柑橘類の飲料等を挙げ、これらと区別して本件お茶の生成や飲用のみを規制することの不合理性等も指摘している。そこで、このような弁護人らの主張等も踏まえて、Bによる本件お茶の生成及び飲用が、麻向法による規制対象となるか検討する。 イ麻向法は、厚生労働大臣から免許を受けた麻薬製造業者以外の者による麻薬(ジアセチルモルヒネを除く。以下同じ。)の製造を原則として禁止しているところ(同法20条1項)、ここにいう製造には、不純物を含む麻薬から不純物を除去して純粋な麻薬を作ること(精製)や麻薬に化学的変化を加えて他の麻薬にすることも含まれるが(同法2条12号)、その字義どおり、麻薬以外の物を原料として麻薬を抽出しあるいは作り出すことも、当然に製造に当たると解される。 弁護人らが主張する化学的な合成がいかなるものを指すのか不明であるものの、麻向法は、明文上、化学的な合成を 薬以外の物を原料として麻薬を抽出しあるいは作り出すことも、当然に製造に当たると解される。 弁護人らが主張する化学的な合成がいかなるものを指すのか不明であるものの、麻向法は、明文上、化学的な合成を製造の要件にしているとは認められない。また、弁護人らが主張する化学的な合成を経ない方法で、麻薬以外の物から麻薬を抽出し、あるいは作り出した場合でも、麻薬濫用の危険はあり得るのであって、これを規制し得なければ、麻薬の濫用による保健衛生上の危害を防止するという麻向法の目的を全うすることができないことは明らかである。 よって、この点に関する弁護人らの主張(前記①)は採用できない。 ウ麻向法は、麻薬取締法(昭和28年3月17日法律第14号)が麻薬取 - 11 - 締法等の一部を改正する法律(平成2年法律第33号)によって改正された法律である。改正前の麻薬取締法では、麻薬を、あへんアルカロイド系麻薬、コカアルカロイド系麻薬及び合成麻薬に分類して規制しており、あへん法で規制されていたけしを除く麻薬含有植物は、一律に栽培が禁止されていた(同法12条3項)。 従前、我が国においては、麻薬やあへん、大麻を規制対象とする「麻薬に関する単一条約(1961年)」に批准していたが、その他の幻覚剤、鎮痛剤等を規制対象とする「向精神薬に関する条約(1971年)」には批准していなかった。しかし、昭和63年、世界的な薬物濫用の拡大に伴う麻薬等の不正取引等を規制対象とする「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(1988年)」が発効し、我が国においても同条約に批准し、国際的な薬物取引規制に参画する必要が生じたところ、そのためには、同条約が向精神薬として定める「向精神薬に関する条約(1971年)」の付表Ⅰに掲げられた物質のうち、それまで我が国では規制 に批准し、国際的な薬物取引規制に参画する必要が生じたところ、そのためには、同条約が向精神薬として定める「向精神薬に関する条約(1971年)」の付表Ⅰに掲げられた物質のうち、それまで我が国では規制していなかったDMTなどの物質を規制し、「向精神薬に関する条約(1971年)」に批准する必要が生じた。そこで、平成2年法律第33号により、麻薬取締法を改正し、それまで国内で規制していなかったDMTなどの物質を麻薬として指定し、規制することになった(麻薬及び向精神薬を指定する政令の施行について(平成2年8月21日薬発第840号)参照)。もっとも、新たに麻薬として指定する物質のうち植物に由来するものの原料植物については、その含有量や当時の社会情勢等からして、規制する必要性までは認められない一方、これら植物を広く規制してしまうと、それまで合法であり、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の防止等の改正法の目的に照らして何ら問題のなかった行為まで規制してしまうとともに、これら植物の抜去等の取締りに多大な労力を要することになるといった弊害が想定された。そこで、麻向法は、麻薬取締法のように麻薬含有植物の栽培を一律に禁止するのではなく、栽培等を禁止する必要のある植物を麻薬原料植物に指定して、その栽培を禁止し(麻向法2条4号、12条3項)、麻薬を含有する同植物(その一部を含む)を麻薬として厳格に規制する(麻向法2条1号、別表第1の76号)一 - 12 - 方で、未指定植物については規制せず、社会情勢等の変化に応じて規制の必要が生じれば、その都度、麻薬原料植物に指定することにした(前記別表第2の4号参照)。 以上のような麻向法の改正経緯や、麻薬の濫用による保健衛生上の危害を防止しようとした同法の目的からすると、麻向法は、未指定植物それ自体を規制対象にしなかっ ることにした(前記別表第2の4号参照)。 以上のような麻向法の改正経緯や、麻薬の濫用による保健衛生上の危害を防止しようとした同法の目的からすると、麻向法は、未指定植物それ自体を規制対象にしなかったにすぎず、同植物に含まれる麻薬成分の安全性を確認したわけでも、同植物から麻薬を生成すること等を放任したわけでもないと解される。もっとも、麻薬の濫用による保健衛生上の危害が何ら生じないにもかかわらず、未指定植物を利用する過程で不可避的に麻薬が生成されたり、それが身体に用いられたりしてしまう場合があり得るところ、それらを一律に規制の対象にしてしまうと、未指定植物を規制しなかった麻向法の趣旨に反する帰結となってしまう。 そこで、未指定植物から麻薬を生成することが製造に当たり、未指定植物から生成された麻薬を身体に用いることが施用に当たるのは、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがある場合に限られると解するのが相当である。麻向法は、このような限定を明文上していないものの、合成麻薬や麻薬原料植物由来の麻薬の生成等については、類型的に、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあると認められるのに対し、未指定植物についてそのようにいえないことは前述したとおりである。したがって、上記解釈は、麻向法が麻薬を含有する植物について、その栽培等を禁止する麻薬原料植物と、規制しない未指定植物の両者の存在を認めていることと整合的であって妥当といえる。上記解釈によると、弁護人らが指摘する沖縄県下で用いられている染料や柑橘類飲料等の生成や使用は、DMT成分の薬理効果を得るために行われるものではなく、それらの生成、使用により麻薬の濫用による保健衛生上の危害が生じるおそれは何ら存しないから、麻向法の製造や施用には当たらないというべきである。 他方、Bは、DM 果を得るために行われるものではなく、それらの生成、使用により麻薬の濫用による保健衛生上の危害が生じるおそれは何ら存しないから、麻向法の製造や施用には当たらないというべきである。 他方、Bは、DMT成分の薬理効果を得るために、本件お茶を生成し、それをオーロリクスと併用して飲んだのであるから、その生成と飲用には、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあると認められる。したがって、Bが本件お - 13 - 茶を生成したことは麻薬の製造に当たり、それを飲用したことは麻薬の施用に当たる。 エ弁護人らは、麻向法が明確性の原則に反し、罪刑法定主義(憲法31条)に反するなどとも主張するが、前記法律解釈を前提に、ある事実が麻薬の製造や施用に当たるかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において十分に判断可能であるといえる。よって、麻向法が違憲であるとか、同法に基づいてBによる本件お茶の生成及びその飲用を規制することが罪刑法定主義に反するとかいうことはできない。 ⑶ 前記第1で認定した本件サイトの記載や、被告人が、Bに対し、「Medi-Tea」と併せて「図解!うまくいく清澄方法」と題する書面を送付したことからすると、被告人は、Bが、DMT成分の薬理効果を得るために、「Medi-Tea」を使って本件お茶を生成し、それを飲用することを高い蓋然性をもって認識・認容していたと認められる。したがって、被告人は、Bによる本件お茶の生成と飲用に、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあることを知りながら、「Medi-Tea」を発送したと認められる。 よって、被告人には、Bによる麻薬の製造及び施用について幇助犯が成立する。 2 判示第2ないし第4(麻薬製造の原材料提供)について⑴ 各被提供者が生成した(生成しようとした)本件お茶は られる。 よって、被告人には、Bによる麻薬の製造及び施用について幇助犯が成立する。 2 判示第2ないし第4(麻薬製造の原材料提供)について⑴ 各被提供者が生成した(生成しようとした)本件お茶は麻向法上の麻薬に当たり、各被提供者による本件お茶の生成が、麻向法で規制される麻薬の製造に当たるか関係証拠によれば、各被提供者は、DMT成分の薬理効果を得るために、「Medi-Tea」から前記「図解!うまくいく清澄方法」記載の方法で本件お茶を生成した(生成しようとした)と認められる。したがって、前記1同様、各被提供者が生成した(生成しようとした)本件お茶は麻向法上の麻薬に当たり、その生成には、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあると認められるから、麻向法で規制される麻薬の製造に当たる。 - 14 - ⑵ 「Medi-Tea」が麻薬の製造行為に要する原材料に当たり、被告人は、各被提供者が本件お茶を生成することにつき情を知っていたといえるか既に判示したことからすると、「Medi-Tea」が麻薬の製造行為に要する原材料であることは明らかである。弁護人らは、「Medi-Tea」が麻薬の製造行為に要する原材料に当たるとすると、本件お茶の生成に要した水等も原材料に当たってしまい不合理であるなどと主張する。しかし、情を知って麻薬の製造行為に要するものを提供すれば、そのもの自体が適法なものであっても処罰の対象になることは、麻向法68条の文言上明らかである。したがって、弁護人らの主張は失当である。 また、前記第1の事実からすると、被告人は、本件サイトを通じて「Medi-Tea」を注文した各被提供者が、DMT成分の薬理効果を得るために、「Medi-Tea」から本件お茶を生成することを、高い蓋然性をもって認識・認容していたと認め 人は、本件サイトを通じて「Medi-Tea」を注文した各被提供者が、DMT成分の薬理効果を得るために、「Medi-Tea」から本件お茶を生成することを、高い蓋然性をもって認識・認容していたと認められる。したがって、被告人は、各被提供者が麻薬である本件お茶を製造することにつき情を知っていたといえる。 以上より、被告人には、判示第2ないし第4のとおり、麻薬の製造行為に要する原材料の提供罪が成立する。 3 判示第5(麻薬施用)について被告人が飲用した液体にはDMT等が含まれ、麻向法上の麻薬に当たり、その飲用は、麻向法上の麻薬の施用として規制対象になるか関係証拠によれば、被告人は、鍋に水1リットルとミモザの粉90グラム、クエン酸10ミリリットルを入れて火にかけ、20分ほど煮立たせた後に火を止め、人肌以下の温度まで冷めるのを待ち、その後、無調整豆乳75ミリリットルを入れてかき混ぜ、ミモザの粉やポリフェノールなどが沈殿したら、キッチンペーパーを使って漉し得られた液体を、i方で冷凍保管していたこと、令和2年2月26日頃、i方において、DMT成分の薬理効果を得ながら音楽制作をするため、オーロリクスを服用した後、解凍した上記液体60ミリリットルにグレープフルーツジュース - 15 - 等を加えたものを飲用し、10分程度で、DMT成分の薬理効果を感じ始めたことが認められる。 上記液体の生成方法等に照らすと、上記液体は、前記1同様、ミモザに含まれるDMT等が、熱せられたクエン酸水溶液に水和して植物から抽出された水溶液であると認められる。したがって、上記液体は、麻薬を含有する物として、麻向法上の麻薬に該当する。弁護人らは、冷凍や解凍を経た上記液体にDMTが含まれていたかは不明である旨主張する。しかし、被告人は、上記液体を飲用してから速や って、上記液体は、麻薬を含有する物として、麻向法上の麻薬に該当する。弁護人らは、冷凍や解凍を経た上記液体にDMTが含まれていたかは不明である旨主張する。しかし、被告人は、上記液体を飲用してから速やかにDMT成分の薬理効果を感じていること、冷凍や解凍を経ることにより水溶液中のDMT等が分解されるとの知見は認められないこと、「図解!うまくいく清澄方法」には、本件お茶を凍らせれば酸化せずに2年以上使用できる旨記載されていることからすると、冷凍・解凍による状態変化を経ても、上記液体にはDMT等が含まれていたと認められる。 そして、被告人は、DMT成分の薬理効果を得ながら音楽制作をするため、上記液体をオーロリクスと併用して飲んでおり、その飲用には、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあると認められるから、麻向法上の麻薬の施用として規制対象になる。 以上より、被告人には、判示第5のとおり麻薬施用罪が成立する。 4 判示第6(jによる麻薬製造の幇助)についてjが生成した液体は麻向法上の麻薬に当たり、その生成は同法上の麻薬の製造として規制対象になるか関係証拠によれば、jは、従前からDMT成分の薬理効果を得るため「Medi-Tea」を購入して本件お茶を生成、飲用していたが、より経済的にDMT成分の薬理効果を得ようとして、本件サイトを通じてアカシアの木片を購入し、令和2年2月29日頃、アカシアの木片15グラムをコーヒーミルに入れて粉状に粉砕し、そこに熱湯900ミリリットルとクエン酸ひとつまみを加えてしばらく放置し、その後に豆乳大さじ2杯を加えて、長めの箸でかき混ぜて、再び放置し判示第6記載 - 16 - の液体を生成したことが認められる。そして、鑑定の結果、jが生成した液体からはDMTが検出されているから、同液体は、 2杯を加えて、長めの箸でかき混ぜて、再び放置し判示第6記載 - 16 - の液体を生成したことが認められる。そして、鑑定の結果、jが生成した液体からはDMTが検出されているから、同液体は、前記1同様、アカシアに含まれるDMT等が弱酸性の熱湯に水和して植物から抽出された水溶液である、と考えるのが合理的である。 弁護人らは、前記1同様、鑑定試料にアカシアの植物片が混入し、鑑定の過程で植物片内のDMTが溶け出した可能性もあると主張する。しかしながら、関係証拠によれば、jが生成した液体の鑑定では、同液体を遠心分離にかけ、その上清を口径約0.2マイクロメートルのフィルターで濾過した液体を用いており、それでもDMTが検出されている。それにもかかわらず、jが生成した液体にはDMT等が全く溶けていなかったと考えることは、q証言の内容と相容れないものとなるのであって、常識に照らして考えられない。 以上より、jが生成した液体は麻向法上の麻薬に当たり、その生成には、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあると認められるから、同法上の麻薬の製造として規制対象になる。 アカシアの木片を販売した被告人に麻薬製造の幇助犯が成立するか前記第1の本件サイトの記載からすると、被告人は、本件サイトを通じてアカシアの木片を購入する者の多くは、本件お茶を生成した経験のある者であって、購入したアカシアの木片から、DMT成分の薬理効果を得るために、本件お茶と類似の水溶液を生成することを想定していたと認められる。したがって、被告人がjにアカシアの木片を販売した行為は、麻薬製造の幇助に当たる。 弁護人らは、アカシアの木片は、DMTを含有する水溶液の製造の他にも、染料やアクセサリーに用いられる可能性もある価値中立的な商品であり、これを販売することは合法的 為は、麻薬製造の幇助に当たる。 弁護人らは、アカシアの木片は、DMTを含有する水溶液の製造の他にも、染料やアクセサリーに用いられる可能性もある価値中立的な商品であり、これを販売することは合法的な商取引の域を出ないなどと主張する。しかし、被告人の本件サイトを通じたアカシアの木片の販売行為は、それを購入した者による麻薬の製造を予定していると認められるから、採用することができない。 以上より、被告人には、jによる麻薬の製造について幇助犯が成立する。 - 17 - 5 判示第7(麻薬所持)について被告人が所持していた液体は麻向法上の麻薬に当たり、その所持は同法上の麻薬の所持として規制対象になるか関係証拠によれば、被告人は、本件サイトで「Medi-Tea」の広告写真に用いたり、ろ過速度を速めたり清澄剤を選定したりする実験に用いるため、アカシアやミモザを原料とした複数の液体を生成し、令和2年3月3日、三重県内の当時の被告人方において、ティーカップやペットボトルに入れて同液体を冷凍保管していたと認められ、鑑定の結果、その液体からはDMTが検出された。被告人の上記液体の生成目的等からすると、上記液体も、アカシアやミモザの粉末を熱せられたクエン酸水溶液と混ぜ合わせるなどして生成したと強く推認される。したがって、前記1同様、上記液体も、アカシアやミモザに含まれるDMT等が、熱せられたクエン酸水溶液に水和して植物から抽出された水溶液であると強く推認され、被告人が保管していた液体は麻向法上の麻薬に当たる。 未指定植物から生成された麻薬を保管することが麻向法上の所持に当たるのは、前記1ウ同様、その保管により麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがある場合に限られると解するのが相当である。そして、前記第1記載の被告人の活動内容 ることが麻向法上の所持に当たるのは、前記1ウ同様、その保管により麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがある場合に限られると解するのが相当である。そして、前記第1記載の被告人の活動内容等からすると、その保管目的は、それ自体を身体に用いるか、そうでなくても「薬草協会」の活動に役立てるものであったと強く推認され、その保管には、麻薬の濫用による保健衛生上の危害の生じるおそれがあるというべきである。被告人は、上記液体は飲用に適さない状態になっていたが、捨てるのがもったいなくて保管していた、染色には使えるかなと思っていた旨供述するが、被告人が上記液体と同様の液体を染色に使っていたことをうかがわせる証拠はないし、わざわざ冷凍保管していたことからすると、前記推認は揺らがない。したがって、被告人による上記液体の保管は、麻向法上の麻薬の所持として規制対象になる。 以上より、被告人には、判示第7のとおり麻薬の所持罪が成立する。 第4 その余の弁護人らの主張に対する判断 - 18 - 弁護人らは、①被告人による判示記載の各行為は、精神疾患を治療するなどの目的で行われた宗教的な行為であり、違法性が阻却される、②被告人の行為が違法な行為であったとしても、被告人は合法であるとの確信を持って活動していたから、違法性の意識がない、③検察官による追起訴は、有罪心証の形成や実験、時間稼ぎを目的とする不当なものであり、公訴権の濫用であって公訴棄却すべきであるなどとも主張する。 しかしながら、①について、麻薬は疼痛の軽減等のために医療上極めて高い価値を有しているものの、中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす物質であることから、その濫用は社会全体に対して害悪をもたらすおそれが大きい。そこで、麻向法は、麻薬について、原則として、厚生労働大臣等から免 ているものの、中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす物質であることから、その濫用は社会全体に対して害悪をもたらすおそれが大きい。そこで、麻向法は、麻薬について、原則として、厚生労働大臣等から免許を受けた者でなければ製造、施用、所持等することを禁止しており、その禁止は同法の目的に照らして合理的なものである。したがって、免許を持たない被告人が、判示記載の各行為を精神疾患の治療等を目的とする宗教的な行為として行っていたとしても、正当行為として違法性が阻却されることにはならない。また、②について、関係証拠によれば、被告人は、平成30年頃、弁護士に対して本件お茶が麻薬に当たるかどうかを確認し、適法性が不明である旨の回答を受けたにもかかわらず、「Medi-Tea」の販売等の行為を継続していたのであるから、各犯行時、被告人に違法性の意識がなかったということはできない。さらに、③について、全ての証拠を検討しても、弁護人らが主張する不当な目的が検察官にあったとは認められず、検察官の訴追裁量等に照らし、本件各公訴提起自体が職務犯罪を構成するような違法なものであることをうかがわせる事情も見当たらない。したがって、検察官の追起訴は公訴権の濫用に当たらない。 よって、弁護人らの上記各主張はいずれも採用することができない。 【法令の適用】罰条判示第1及び第6の各所為 - 19 - 判示第1の1及び第6の各所為は、それぞれ刑法62条1項、麻向法65条1項1号判示第1の2の所為は、刑法62条1項、麻向法66条の2第1項、27条1項判示第2ないし第4の各所為それぞれ麻向法68条、65条1項1号判示第5の所為麻向法66条の2第1項、27条1項判示第7の所為麻向法66条1項科刑上一罪の処理 判示第2ないし第4の各所為それぞれ麻向法68条、65条1項1号判示第5の所為麻向法66条の2第1項、27条1項判示第7の所為麻向法66条1項科刑上一罪の処理判示第1の1の罪と判示第1の2の罪につき、刑法54条1項前段、10条により1罪として重い判示第1の1の罪の刑で処断法律上の減軽判示第1の罪と判示第6の罪につき、刑法63条、68条3号併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第7の罪の刑に法定の加重。ただし、短期は判示第1、第6の罪の刑のそれによる)執行猶予刑法25条1項没収主文掲記の液体及び麻薬水溶液につき、麻向法69条の3第1項本文(なお、判示第1の麻薬は、現存しないため没収することができない。)主文掲記の通常貯金債権につき、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)11条1項1号、2号(同債 - 20 - 権のうち5000円に相当する部分は判示第6の犯行により被告人が得た薬物犯罪収益であり、これに対する利息債権は薬物犯罪収益に由来する財産である。)追徴麻薬特例法13条1項前段、11条1項1号(判示第1の犯行により被告人が得た薬物犯罪収益6000円は、既に費消しているか、現に存在するか明らかでなく没収することができないので、その価額を追徴する。)訴訟費用刑事訴訟法181条1項本文【量刑の理由】被告人は、自ら常習的に麻薬を含有する植物から麻薬を製造・施用する傍ら、同植物等を原材料とした商品を開発し、自ら開設したイ 訴訟費用刑事訴訟法181条1項本文【量刑の理由】被告人は、自ら常習的に麻薬を含有する植物から麻薬を製造・施用する傍ら、同植物等を原材料とした商品を開発し、自ら開設したインターネットサイト等を通じて、長年にわたり、同商品を多数人に販売していた。本件各犯行はその一環であって、悪質な犯行である。もっとも、被告人に違法性の意識がなかったとはいえないものの、これまで、麻薬原料植物以外の植物から麻薬成分を抽出した水溶液が麻薬に該当するという司法判断はなかったのであり、被告人は、そのような中で、本件お茶等に精神的効用があると信じて本件各犯行に及んだのであるから、典型的な薬物犯罪とは一線を画する。このことは、同種事犯の中での非難を一定程度弱める事情といえる。 その上で、被告人に前科がないこと、本件各罪の成立に関する法解釈等については争うものの、事実関係については概ね認めていること、自らの活動が違法と評価されるのであれば、今後は行わないと述べていることなど被告人のために酌むべき事情もある。そこで、被告人を主文掲記の懲役刑に処しつつも、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑懲役4年、主文掲記の没収及び追徴)令和4年9月26日 - 21 - 京都地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官安永武央 裁判官村川主和 裁判官大野友己
▼ クリックして全文を表示