平成16(わ)1293 住居侵入,強盗致傷被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年1月27日 神戸地方裁判所
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判決文本文3,106 文字)

主文 被告人を懲役3年6月に処する。 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,金員窃取の目的で,平成16年11月10日午前零時20分ころ,兵庫県A市Ba丁目b番c号Cd号のD方に無施錠の玄関から侵入し,同所において,2階書斎で整理棚の引き出しを開けるなどして金員を物色した後,2階6畳間に至った際,同人の妻のEに発見されて逮捕されそうになるや,その逮捕を免れるため,同女(当時32歳)に対し,その左中指に噛みつき,その顔面を手拳で殴打するなどの暴行を加え,さらに,2階階段付近廊下で,上記Dの長男F(当時5歳)に対し,その腹部付近を足蹴にして同人を階段から転落させる暴行を加え,よって,上記Eに加療約9日間を要する左頬部打撲傷,左中指咬創等の傷害を,上記Fに加療約6日間を要する左側頭部打撲傷,左肩胛部挫傷の傷害をそれぞれ負わせたものである。 (証拠の標目)―括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号―省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,(1)強盗致傷罪の成立の前提となる窃盗未遂罪の成立を争い,金員窃取の目的で被害者方に侵入して物色行為を行い,逮捕を免れる目的で暴行を加えたことを認める被告人の捜査段階供述は,捜査官に灰皿を二,三回机にたたきつけられたためその誘導に迎合したことによるものであるから,いずれも信用性がなく,他に窃盗の実行の着手を認めるに足りる証拠はない,(2)仮に窃盗の実行の着手が認められるとしても,各被害者の傷害の程度は軽微で強盗致傷罪にいう傷害には当たらず,結局強盗致傷罪は成立しないなどと主張し,上記(1)については,被告人 足りる証拠はない,(2)仮に窃盗の実行の着手が認められるとしても,各被害者の傷害の程度は軽微で強盗致傷罪にいう傷害には当たらず,結局強盗致傷罪は成立しないなどと主張し,上記(1)については,被告人も公判廷で同旨の供述をしている。そこで,以下,その主張を排斥した理由につき補足する。 2 被告人の本件住居侵入の目的についての供述経過を見ると,(1)逮捕当日の平成16年11月10日には窃盗及びわいせつ目的,(2)同日の弁解録取ではわいせつ目的,(3)同月12日には窃盗目的,(4)弁護人と接見した同月18日にはわいせつ目的,(5)同月22日から起訴に至るまでは判示に沿う窃盗目的と供述している。 そこで,侵入目的が窃盗目的であり,被害者宅2階書斎で物色行為をしたことを認める旨の被告人の捜査の最終段階の供述調書の信用性について検討するに,①警察官の取調べ方法に関する被告人の当公判廷における供述を前提にしても,取調べの際に警察官が灰皿を二,三回机にたたきつけたことが一度あっただけにすぎず,それだけでは直ちに任意性を疑わせる事情とまではいえない上,被告人が上記の事情を接見した弁護人に訴えていないばかりか,そうしなかった理由につき合理的な説明をすることができないことにかんがみると,被告人の公判供述の信用性には多分に疑問を差し挟む余地があること,②他方で,被告人は,当番弁護士及び弁護人との接見を通じて,自己の意に反する供述をする必要はないことなど,適切な助言,援助を得ていること,③取調べ検察官は,上記のように被告人の供述に変遷が見られることから,問答形式を用いてその理由などを問い質すなど,慎重に被告人を取り調べていることがうかがわれ,被告人も供述を変遷させた経緯や理由につきそれぞれ合理的な説明をしていること,④その内容も,見ず知らずの被害者宅に深夜手袋を の理由などを問い質すなど,慎重に被告人を取り調べていることがうかがわれ,被告人も供述を変遷させた経緯や理由につきそれぞれ合理的な説明をしていること,④その内容も,見ず知らずの被害者宅に深夜手袋をはめて侵入したという当時の状況や,その直前に12万円余りの現金が入った財布在中のセカンドバッグをなくしていたことに照らし,誠に自然かつ合理的であって,その中には,被害者宅2階書斎にある整理棚の在中物などに関していわゆる秘密の暴露といってよい供述が存在することに加え,本件の直前にタクシーを降車した場所や前科の内容など,被告人のみが語り得る内容を多く含んでいることなどの諸事情に照らすと,被告人の捜査の最終段階の供述には任意性,自発性が十分に認められ,その信用性も高度であると認められる。 そして,被告人の信用性十分な上記捜査段階の供述からすれば,判示事実を優に認めることができる。 3 また,軽微な傷であっても,人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上,強盗致傷罪における傷害に当たると解されるから,弁護人の主張は採用できない。また,仮にこの点に関する弁護人主張の見解を採ったとしても,各被害者の判示の負傷状況は強盗致傷罪における傷害として十分な程度のものであると認められる。 4 以上のように,弁護人の主張はいずれも理由がない。 (法令の適用)被告人の判示所為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,E及びFに対する各強盗致傷の点は平成16年法律第156号附則3条1項により同法による改正前の刑法240条前段にそれぞれ該当するが,判示の住居侵入と各強盗致傷との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いEに対する強盗致傷罪の刑で処断することとし,所定刑中有期懲役刑を選択し,なお犯情 の間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いEに対する強盗致傷罪の刑で処断することとし,所定刑中有期懲役刑を選択し,なお犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中200日(その日数については,本件における具体的審理経過を考慮した。)をその刑に算入することとする。 (量刑の理由)本件は,酒に酔って財布を落とすなどしたため,金員窃取の目的で被害者宅に侵入し,金品を物色した後に家人に見つかり,逮捕を免れるために2人の被害者に手拳で殴打したり,足蹴にして階段から転落させるなどの暴行を加えて,判示各傷害を負わせた住居侵入,強盗致傷事案である。 その自己中心的かつ安易な動機には酌量の余地がない上,犯行態様も粗暴であること,最も安心すべき自宅において被害に遭った各被害者の心身の苦痛も大きかったと認められることなどに照らすと,犯情は相当に悪質であり,被告人の刑責は重いといわざるを得ない。 しかしながら,他方で,被害弁償として200万円を支払っていること,被害者らが負った傷害の程度はいずれも比較的軽微であること,酔余たまたま所持金を落としたことが契機となった偶発的,衝動的な犯行といえること,正業に就いており,20年以上前の罰金前科以外に前科がない上,それなりに反省してもいること,今後の監督を約束している妻がいることなど,被告人のために酌むべき事情もまた認められるので,酌量減軽の上,主文の刑に処することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成18年1月27日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官的場純男 主文 の刑に処することとした。 よって,主文のとおり判決する。 理由 平成18年1月27日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官的場純男 裁判官西野吾一 裁判官三重野真人

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