主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決中,控訴人らの敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。 (3) 訴訟費用中第1審において控訴人らと被控訴人との間に生じたもの及び第2審において生じたものは,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文1項と同じ。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,東京都渋谷区の住民である被控訴人が,渋谷区総務部総務課長事務取扱者に資金前渡された区長交際費(渋谷区の予算科目の区分上は交際費。以下,原判決の引用部分を含めて「交際費」又は「区長交際費」という。)の中から,助役,収入役,総務部長が購読するための政党紙等(赤旗,公明新聞,聖教新聞)の購読料金を支払うことは,交際費の賛助的性格を逸脱しており,違法な支出であると主張して,渋谷区長である控訴人A,総務部総務課長であった控訴人B,収入役であったCの各個人に対し,渋谷区に代位して,上記支出相当額とこれに対する遅延損害金を渋谷区に賠償することを求めた住民訴訟である。 原審は,本件各訴えは適法であるとしたうえ,助役,収入役,総務部長などにおいて情報を収集するための費用は交際費に含まれず,区長としての交際と何ら関係のない政党紙等の購読契約・支払は,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱するものであり,違法な財務会計行為であったとし,控訴人Bについては資金前渡を受けた職員として,控訴人Aについては予算執行者,支出負担行為及び支出命令の原権限者として,それぞれ支払額の限度で責任を認め,Cについては,専決権限を有する副収入役が審査した時点で支払が終了しているため本件損害との因果関係がなく,この副収入役を監 出負担行為及び支出命令の原権限者として,それぞれ支払額の限度で責任を認め,Cについては,専決権限を有する副収入役が審査した時点で支払が終了しているため本件損害との因果関係がなく,この副収入役を監督する収入役についても因果関係がないとして責任がないとした。 一部敗訴した控訴人両名がこれを不服として控訴した。 2 本件に関連する法令等の定め,前提となる事実,当事者の主張及び争点は,次のとおり補正し,当審における当事者の主張を次項のとおり付加するほか,原判決事実及び理由の「第2 事案の概要」欄の各項における控訴人らに対する請求に関する部分の記載と同一であるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁13,14行目の「地方自治法」を「平成10年法律第54号による改正前の地方自治法」に改める。 (2) 同7頁18行目の「地方自治法」を「平成10年法律第54号による改正前の地方自治法」に改める。 (3) 同9頁6行目の「記入紙」を「記入し」に改める。 (4) 同16頁8行目の「地方自治法242条の2第1項4号」の前に「平成14年法律第4号による改正前の」を加入する。 (5) 同18頁17行目から18行目にかけての「区の行政執行上有効な関係を保つべき団体の関係」を「区の行政執行上友好な関係を保つべき団体との関係」に改める。 3 当審における当事者の主張(1) 控訴人らア本件交際費支出の適法性について(ア) 地方自治法施行令147条2項によれば,予算の調製の様式は,総務省令で定める様式を基準としなければならないとされ,地方自治法施行規則14条によれば,予算の調製の様式は,別記のとおりとする,と定められている。そして,同別記「予算の調製の様式(第十四条関係)」の1条2項によれば,歳入歳出予算の款項の区分及び区分ごとの金額は,「第1表歳入歳出予算」による 調製の様式は,別記のとおりとする,と定められている。そして,同別記「予算の調製の様式(第十四条関係)」の1条2項によれば,歳入歳出予算の款項の区分及び区分ごとの金額は,「第1表歳入歳出予算」によるとされ,同第1表には,「款何々」,「項何々」と記載されている。したがって,歳入歳出予算の議決の対象範囲は款,項のみであり,それ以下の目,節にどのような科目をたて,どのように配分するかは本来長の裁量に委ねられている。 (イ) 本件購読料金の支出は(款)総務費(項)総務管理費の中の(目)一般管理費(節)交際費から支出されたものである。 渋谷区区長交際費支出基準及び支出細則は,(節)交際費について区長が自らの裁量により支出すべき対象を事務執行上の「基準」として予め定めたものにすぎず,これと相違する事務の執行があったからといって違法の問題は生じない。 もともと,(節)交際費についてどのような支出に充てるべきかの詳細については,区長である控訴人Aの裁量に委ねられているのであり,かつ,支出基準,支出細則は条例や規則のように法的拘束力をもつものでなく,訓令のように職務命令となるものでもない。また,「交際費」の使途について法令上の限定も存在しない(この点,私企業における,課税所得を算出する際の収入から控除することが許される必要経費としての「交際費」の範囲に税法上限定が加えられていることとは異なる。)。 さらに,本件支払は支出細則の賛助的経費に該当するものとして支出されたものであるが,当該経費に該当することの認定についても区長の裁量が広く認められるべきであって,そのように支出したことに誤りはないというべきである。 (ウ) 仮にそうでないとしても,支出細則の「4諸費(2)その他区長が特に必要と認める経費」に該当するというべきであり,本件支払は支出基準,支出細 そのように支出したことに誤りはないというべきである。 (ウ) 仮にそうでないとしても,支出細則の「4諸費(2)その他区長が特に必要と認める経費」に該当するというべきであり,本件支払は支出基準,支出細則に沿った支出というべきである。 (エ) 渋谷区では,総務部のほか,企画部,区民部,教育委員会事務局において,公費を支出して新聞紙を購読しているが,これらを目的別に大別すると,出張所,社会教育館,図書館などにおいて,これらの施設を利用する区民に対する閲覧用のものと,本件購読の対象となっている新聞紙など,区長をはじめとする職員が,区の行政執行上必要となる情報を収集するためのものとに分類される。 このうち,区長をはじめとする職員が,区の行政執行上必要となる情報を収集するために購読する新聞については,総務部総務課及び企画部広報課において,一般紙を両課合わせて1ないし2部購読しており,(款)総務費(項)総務管理費(目)一般管理費ないし(目)広報費の(節)需用費から支出している。また,これらの新聞によって得られた情報のうち,職員が共通して知る必要があると考えられるものについては,必要に応じその箇所の切抜きを回覧するなどして,これらを共有するための措置がとられている。 なお,本件で問題になっている政党紙等については,区政は,区が区民に身近な行政主体として執行しなければならない平和問題をはじめ,福祉,医療保険,教育・文化,環境・都市整備や,さらには情報公開など自治行政のあり方など広範囲において種々問題を抱え,その中には,多くの政治的課題が含まれている。したがって,こうした渋谷区の区政執行のため,各政党,各会派の主張を的確に把握し,政治的な情勢をも考慮のうえ,種々の判断,決定をする必要のある,区長及び助役など区長と情報を共有している必要がある限定された範囲 ,こうした渋谷区の区政執行のため,各政党,各会派の主張を的確に把握し,政治的な情勢をも考慮のうえ,種々の判断,決定をする必要のある,区長及び助役など区長と情報を共有している必要がある限定された範囲の職員が購読するための新聞として,本件政党紙等が,総務部総務課において,交際費により購読されている。これらの新聞の記事については,一般紙と異なり,一般職員に情報を共有するための措置はとられていない。また,図書館等における一般区民の閲覧に供するための購読も行っていない。 以上のように,渋谷区の上記各所属においては,各所属ごとの行政執行上の目的に合わせ,どの新聞を購読することが当該目的達成のために必要かという点を判断し,必要最小限の新聞を精査した上で購読しているのであり,その購読が不要であったり,購読部数が多すぎるといった不適当な事情は全く存在しない。 イ本件支払により渋谷区に損害が発生していないことについて(ア) 仮に本件購読契約を締結し購読料を支払ったことについて,交際費という予算項目からである点において誤りがあるとしても,交際費は,(款)総務費(項)総務管理費の中の(目)一般管理費の下の(節)として定められているのである。 前記のとおり,(款)(項)については議会の議決を受けるものであるからその流用をすることには制限がある。すなわち,地方自治法220条2項によれば,歳出予算の経費の金額は,各款の間又は各項の間において相互にこれを流用することができない,ただし,歳出予算の各項の金額は,予算の執行上必要がある場合に限り,予算の定めるところにより,これを流用することができる,とされている。予算の流用については,各款の間においては,一切禁止されており,各項の間においては,予算で定める場合に限り,つまり,地方自治法215条7号に定めるところによ れを流用することができる,とされている。予算の流用については,各款の間においては,一切禁止されており,各項の間においては,予算で定める場合に限り,つまり,地方自治法215条7号に定めるところにより,予め予算に流用できる範囲を定めておくことで行うものに限り,長の判断により流用ができるのである。 これに対し,各目の間及び各節の間の流用については,法令に特段の定めはなく,長による予算の執行という裁量と責任の範囲内において行うことが許されている。 したがって,各目の間の流用,例えば(款)総務費(項)総務管理費の中で(目)一般管理費から(目)文書広報費への流用や,各節の間の流用,例えば,(款)総務費(項)総務管理費(目)一般管理費の中での(節)交際費から(節)需用費への流用などは,長の権限,責任において行うことができるのである。 (イ) なお,渋谷区予算事務規則は,18条1項に,目間の流用及び節間の流用について定めており,同条同項によれば,同一項内の目又は節の金額は,予算の執行上やむを得ない事由がある場合のほか,相互に流用してはならないとされ,一定の制限が設けられている。 しかし,一方,複雑な社会状況の中で,迅速で弾力的な行政は多くの区民が求めるところであり,「やむを得ない事由」については,ごく限定的に捉え,予算流用を必要以上に制限することにより,業務の硬直化,遅滞を招来し,不適正な処理を残すのであれば,それは許されることではない。 このため,「予算の執行上やむを得ない事由」の意義については,区行政の円滑かつ適正な運営のために,目間又は節間の予算の調整が必要となる事態と包括的に捉え,個別に判断して流用を行っている。 本件購読に係る費用の支払について,交際費からの支出が仮に違法であり,交際費以外の相応の費目から支出しなければならないとするの 調整が必要となる事態と包括的に捉え,個別に判断して流用を行っている。 本件購読に係る費用の支払について,交際費からの支出が仮に違法であり,交際費以外の相応の費目から支出しなければならないとするのであれば,新聞の購読自体は,区長及び区長の決定する事項について補佐すべき職員が,情報を収集し,共有しておくために必要なのであるから,当該相応の費目(需用費)からの支出を行うための措置としての節間の流用は,予算の執行上やむを得ない事由がある場合というべきであって,長の判断によりこれを行うことができる。 (ウ) また,渋谷区会計事務規則は,地方自治法232条の5第2項及び地方自治法施行令161条1項14号を受け,資金前渡の手続により処理できる経費を定めている。 同規則79条1項23号によれば,交際費は資金前渡により処理できるとされており,本件購読料金の支出は,この規定に基づき,資金前渡の手続により処理したものである(なお,同規則は,平成11年12月28日付けで全部改正されており,平成12年4月1日以降は同規則58条1項22号によることになる。)。 ところで,資金前渡により支出できるものは限られている。本件購読料金の支払は,交際費からの支出であるため資金前渡により支払ったものである。したがって,節間の流用等必要な会計事務手続を経て,本件購読料金を(節)需用費から支出することとなった場合は,資金前渡により処理できないため,通常の支出手続,すなわち,契約行為(支出負担行為),支出命令を経て支出を行うことになる。 (エ) 新聞購読を(節)交際費から支出するのが誤りであるというのであれば,被控訴人A及び同Bの誤りは,被控訴人Aの裁量により行うことができる,交際費を適当な費目に流用するという事務手続きをせずに,本件支出を行ったことにあるということになる。しか であるというのであれば,被控訴人A及び同Bの誤りは,被控訴人Aの裁量により行うことができる,交際費を適当な費目に流用するという事務手続きをせずに,本件支出を行ったことにあるということになる。しかし,そのような会計事務手続きに誤りがあったからといって,新聞購読契約を締結すること,ないしそれに基づく支出をすることが違法であり,区に損害が発生したことにはならないというべきである。区政運営のために必要な情報を収集するために新聞を購読することが違法であるという評価をうけるべきではない以上,その購読料を支払ったことにより区に損害が発生することはありえない。 (オ) また,本件購読契約,本件支払の対象は新聞紙であるため,購読契約の相手方によって契約金額,支払金額に差が出る性質のものではないから,通常の契約手続,支出手続によっても,資金前渡を経た現金払いによっても,購読料に差が出るものではない。したがって,区から支出される公金の額に差は生じないのであるから,区に損害が生じることはありえない。 (カ) たとえ行政法規に違反している事実があったとしても,そのことのみによって,具体的な損害が発生していないにもかかわらず,損害賠償責任を容認することはあり得ない。 本件支出は,渋谷区の行政を遂行する上で必要な情報を収集するためにされたものであり,そのような費用として本件各購読料金を支出すること自体は何ら違法がない以上,その支出が適切ではない予算科目からされたという事務手続上の過誤が仮にあったとしても,渋谷区には何の損害も発生していないのであるから,控訴人らに損害賠償責任が発生するはずはないというべきである。 ウ以上のとおりであるから,本件支出については,渋谷区に損害を発生させていないばかりでなく,もともと違法性がないというべきである。 (2) 被控訴人ア 責任が発生するはずはないというべきである。 ウ以上のとおりであるから,本件支出については,渋谷区に損害を発生させていないばかりでなく,もともと違法性がないというべきである。 (2) 被控訴人ア区長の裁量で交際費が自由に支出できるなら,いくらでも恣意的支出が可能となり歯止めがない。目・節に係る流用が区長の裁量権の範囲といっても,渋谷区予算事務規則18条で,同項内の目又は節の金額は,予算の執行上やむを得ない事由(会計年度中に予算に不足が生じた場合,事業の性質上緊急を要する場合や議会の開会時期の関係で,補正予算を調製できない場合には,予備費の充用又は予算の流用により対応する。)がある場合のほか,相互に流用してはならないと規定している。仮に,交際費から他の費目に流用できるとしても,予算の執行上やむを得ない事由に該当しない。 イ全体の奉仕者である地方公共団体が特定の政党や政治家及び宗教団体等と特別の関係を有することを認められていないことは,万人周知の事実であり,それらに係る政党紙等の出版社についても同様である。 よって,地方公共団体を代表する区長らが,これら特定の政党紙等の出版社に対する賛助的目的で本件政党紙を購読するべく,賛助的経費として区長交際費から本件購読契約に基づく購読料を支出したことは,行政の不偏性を犯した故意並びに重過失による違法支出である。 ウ控訴人らは,事務手続上の問題として,区長交際費支出の事務手続を,内部的に事後訂正しさえすれば解決する問題だと主張しているが,既に交際費として支出している事実を棚上げにし,歪曲しようとする姿勢は言語道断である。 仮に本件購読契約に基づく購読料の支出を交際費から他の費目に流用できるとしても,会計年度中においてのみ可能なことであって,本件当該会計年度を既に終了し決算も終了しており,遡って流 言語道断である。 仮に本件購読契約に基づく購読料の支出を交際費から他の費目に流用できるとしても,会計年度中においてのみ可能なことであって,本件当該会計年度を既に終了し決算も終了しており,遡って流用の予算措置を講じ,事務的に事後処理などできない。 エ交際費による本件購読契約の対象となった政党紙等の定期購読は,本件に係る平成9年度だけではなく,前区長当時から長年にわたる慣行として行われていた。 このように,長年にわたる慣行として,本件購読契約に基づく購読料を交際費から支出していたということは,本件購読契約を交際という観点から行っていたことは明らかであり,契約及び支出の責任者は交際という意識をもって契約し,支出していたと解するのが自然である。 政治的及び宗教的に中立性が求められる行政執行者である控訴人ら個人や行政各機関が,自らの情報収集のために,特定のイデオロギ-や宗旨に立脚した本件購読契約の対象となった政党紙等の購読料を公費で支出することは違法であり,他の管理職である部長や課長と同様に控訴人らにおいても自費で購読すべきであって,交際費はもとより需用費からの支出も違法である。 交際の対象にならない本件政党紙等の購読料を交際費から支出したことは,義理や社交上の必要性から本件政党紙等を購読することによって,本件政党紙等の関係者との交際を目的として,賛助的経費として支出したことは明白である。 オ区長交際費からの支出負担行為や支払を行うことができるのは,区長交際費という費目の性質上,区長の交際上必要と認められる経費に限られるというべきであり,区長としての交際とは何ら関係のない本件購読契約及び本件支払は,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱する違法な財務会計行為であって,支出してはならない使途先に支出したことは,貴重な税金を無駄に支出したこと の交際とは何ら関係のない本件購読契約及び本件支払は,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱する違法な財務会計行為であって,支出してはならない使途先に支出したことは,貴重な税金を無駄に支出したことになり,区に損害を与えている。 第3 当裁判所の判断 1 本件各訴えの適法性の有無(争点1)当裁判所も,控訴人Bが平成9年4月分から平成10年3月分までの交際費の資金前渡を受けた職員として行った本件購読契約締結及び本件支払は,いずれも財務会計上の行為に該当するので,控訴人らは平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号(以下,原判決を引用する部分を含め,「地方自治法242条の2第1項4号」という。)の「当該職員」に当たる者であり,また,被控訴人が本件購読契約及び本件支払が行われてから1年を経過してから監査請求をしたことについて正当な理由があると判断する。その理由は,原判決事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄の1項における控訴人らに関する部分に説示のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決25頁14行目の「方法によて」を「方法によって」に改める。)。 したがって,本件各訴えは適法である。 2 本件購読契約及び本件支払の違法性の有無(争点2)(1) 地方公共団体である特別区も社会的実体を有するものとして活動している以上,特別区の長が,当該特別区の事務を遂行する過程において,外部の者との間で,社会通念上相当な範囲内の儀礼的行為,接遇,賛助等の交際を行うことは,同事務に随伴するものとして許容されるというべきであるが,その交際に伴って公金の支出が必要となる場合があり,そのような場合,交際費として支出を行うことも,社会通念上相当な範囲内である限り許されるものと解される。 (2) 渋谷区における区長交際費については,渋谷 際に伴って公金の支出が必要となる場合があり,そのような場合,交際費として支出を行うことも,社会通念上相当な範囲内である限り許されるものと解される。 (2) 渋谷区における区長交際費については,渋谷区区長交際費支出基準(甲9)が定められており,同基準には,「渋谷区の区行政を円滑に運営するにあたり,区長がその交際に要する経費の適正かつ公平な執行を図るため交際費の支出基準を定める。」「交際費は別に定める「支出細則」に基づいて支出し,支出額は社会通念上認められる範囲でかつ必要最小限でなければならない。」と記載され,同基準が引用する支出細則は,交際費を儀礼的経費,接遇経費,賛助的経費,諸費の各費目に分けて,それぞれの使途を定めている。そして,上記支出細則によれば,賛助的経費とは,「行事,事業,刊行物等に対する賛助を目的とする経費」とされ,具体的には①区政と関わりの深い団体等が主催する行事に対する賛助,②社会福祉事業,若しくは社会福祉事業を行う団体に対する賛助,③国,都,区政に関する刊行物若しくは活動に対する賛助と定められている。また,諸費については,①区長の職務上生ずる臨時的行事経費,②その他区長が特に必要と認める経費と定めている。 (3) ところで,渋谷区では,総務部総務課において,一般新聞として,朝日,毎日,日本経済,産経の4紙を各1部購読し,企画部広報課において,上記4紙に読売及び東京を加えた6紙を各1部購読しているが,これらの新聞購読に係る予算の費目(節)はいずれも需用費であることが認められる。(乙16)一方,前提となる事実に記載のとおり,渋谷区においては,控訴人Aが渋谷区長に就任する以前から,継続して,区長,助役,収入役,総務部長が購読するための赤旗,公明新聞各1部ずつの購読料金,及び区長,助役,収入役が購読するための聖教新聞各1 谷区においては,控訴人Aが渋谷区長に就任する以前から,継続して,区長,助役,収入役,総務部長が購読するための赤旗,公明新聞各1部ずつの購読料金,及び区長,助役,収入役が購読するための聖教新聞各1部の購読料金が,交際費として総務課長に資金前渡された前渡金から支払われていた。そして,これらの政党紙等は控訴人Aが渋谷区長に就任した後も継続して購入され,控訴人Bは,平成9年4月から平成10年3月まで,毎月の月初めに,資金前渡を受けた職員である総務課長事務取扱者として,渋谷区契約事務規則3条2項に基づいて,各新聞販売店との間で本件購読契約を締結し,毎月月末ころ,各新聞販売店に対し本件支払をしたものであり,これらの各支払について,前渡金出納簿には,「賛助的経費(刊行物)」として記載され,交際費支払済調書でも,種別賛助的経費,事項刊行物関係経費に分類されて,一括して記載されてきた。なお,これらの新聞販売店の発行した領収書には,宛名としていずれも当時の助役,収入役,総務部長と推認される個人名が記載されている。(甲2の1ないし21,乙2の1ないし36,乙3の1ないし39)(4) 本件購読契約の対象である刊行物は,赤旗,公明新聞,聖教新聞であって,控訴人らは,これらの購入目的について,助役,収入役,総務部長が区政運営に当たり必要な多くの情報を広範囲に収集することにあったと主張し,当該刊行物の賛助自体を目的としていたとの主張はない。そして,控訴人らは,本件政党紙等が渋谷区の区政執行のため,各政党,各会派の主張を的確に把握し,政治的な情勢をも考慮のうえ,種々の判断,決定をする必要のある,区長及び助役など区長と情報を共有している必要がある限定された範囲の職員が購読するための新聞として,本件政党紙等が,総務部総務課において,交際費により購読されている旨主張し, ,決定をする必要のある,区長及び助役など区長と情報を共有している必要がある限定された範囲の職員が購読するための新聞として,本件政党紙等が,総務部総務課において,交際費により購読されている旨主張し,渋谷区総務部総務課長Dの陳述書(乙第16号証)には,本件で問題となっている政党紙等について,区の行政執行上必要となる情報を収集することができるものであるが,一般紙と異なり政治色が強く,このため,区長及び助役など区長と情報を共有し,政治的,政策的決定を補佐すべき,限られた範囲の職員のために購読するという性格のものであったことから,需用費を用いて購読するよりも交際費(支出細則4(2)のその他区長が特に必要と認める経費)を用いて購読する方が適当であると判断して,その購読経費を交際費から支出してきたものであるとする記載がある。 しかし,区長交際費として資金前渡を受けた総務課長において支出負担行為や支払をすることができるのは,区長交際費という費目の性質上,区長がその事務を遂行するに当たって必要な,交際に要する経費に限られるというべきであるから,仮に,控訴人らの主張するとおり,本件政党紙等が,助役,収入役,総務部長が区政運営に当たり必要な多くの情報を広範囲に収集する目的で購読され,あるいは,渋谷区の区政執行のため,各政党,各会派の主張を的確に把握し,政治的な情勢をも考慮のうえ,種々の判断,決定をする区長及び助役など区長と情報を共有している必要がある限定された範囲の職員が読むためのものとして購読されたとしても,そのような助役,収入役,総務部長が読むための新聞に関する本件購読契約及び本件支払は,区長としての交際とは何ら関係のないものであり,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱するものであり,違法な財務会計行為であったというほかない。 しかも,本件支 する本件購読契約及び本件支払は,区長としての交際とは何ら関係のないものであり,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱するものであり,違法な財務会計行為であったというほかない。 しかも,本件支払は,前記のとおり,前渡金出納簿及び交際費支払済調書では,すべて「賛助的経費(刊行物)」(支出細則3(3))に分類されて記載されており,支出細則4(2)の「その他区長が特に必要と認める経費」として支払われた旨の記載はない。そうすると,本件支払は,支出細則4(2)の「その他区長が特に必要と認める経費」として支出されたものとは認められず,むしろ,支出細則3(3)の賛助的経費(刊行物)として支出されたものと認められる。 そして,公明新聞,赤旗は,いずれも政党の機関紙であり,聖教新聞は宗教団体に関係の深い新聞であることは当裁判所に顕著であるから,本件で問題となっている助役,収入役,総務部長が読むためのそれらの新聞に関する本件購読契約及び本件支払は,区長としての交際とは何ら関係のないものである点でも,特定の政党,宗教団体に関係の深い新聞への賛助としてされた点でも,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱するものであり,違法な財務会計行為であったというべきである。 (5) 控訴人らは,渋谷区区長交際費支出基準及び支出細則について,区長交際費について区長が自らの裁量により支出すべき対象を事務執行上の「基準」として予め定めたものにすぎず,これと相違する事務の執行があったからといって違法の問題は生じない旨主張する。 しかし,区長交際費は区の事務を遂行する過程において外部の者との間で社会通念上相当な範囲内の交際を行うに伴って公金の支出が必要となる場合に社会通念上相当な範囲内である限り支出することが許されるものであり,区長の自由な裁量により支出することが許される 部の者との間で社会通念上相当な範囲内の交際を行うに伴って公金の支出が必要となる場合に社会通念上相当な範囲内である限り支出することが許されるものであり,区長の自由な裁量により支出することが許されるものではなく,本件購読契約及び本件支払が,支出細則3(3)ではなく,4(2)に該当するものとして支出されたと仮定しても,区長としての交際とは何ら関係のないもので,区長交際費として資金前渡された趣旨を逸脱するもので,違法な財務会計行為であったことは,(4)に判断したとおりである。 (6) 控訴人らは,仮に,本件購読料金の交際費からの支出が違法であるとしても,需用費からの支出を行うことができ,需用費からの支出を行うための措置として,交際費から需用費への節間の流用ができる旨主張する。 しかし,節間の流用を行う場合には,所定の会計事務手続を経る必要があること,本件購読料金を(節)需用費から支出することとなった場合は,資金前渡により処理できず,通常の支出手続,すなわち,契約行為(支出負担行為),支出命令を経て支出を行うことになる旨控訴人ら自ら述べるところであり,本件購読契約,本件支払について,節間の流用のために必要となる所定の事務手続は経ておらず,また,通常の支出手続によっていないのであるから,本件購読契約及び本件支払について,交際費から需用費への節間の流用が可能であることをもって,適法であるということはできない。 また,現実に行われた本件購読契約,本件支払が違法である以上,仮に,交際費から需用費への節間の流用が可能であるとしても,そのことを理由に渋谷区に損害が発生していないということはできない。 (7) 交際費としての本件購読契約及び本件支払が違法である以上,本件購読契約及び本件支払に基づいて新聞が配達され,実際に購読をしたとしても,違法として許さ が発生していないということはできない。 (7) 交際費としての本件購読契約及び本件支払が違法である以上,本件購読契約及び本件支払に基づいて新聞が配達され,実際に購読をしたとしても,違法として許されない支出をしたものであり,それが渋谷区の損害であることに変わりはない。渋谷区に損害が発生していない旨の控訴人らの主張は理由がない。 3 控訴人らの責任の有無(争点3)当裁判所は,控訴人らには,上記違法な行為によって渋谷区に生じた損害を賠償する責任があると判断する。その理由は,原判決事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」欄の3項における控訴人らに関する部分に説示のとおりであるから,これを引用する。 第4 結論以上によれば,被控訴人の控訴人らに対する請求を,控訴人Aについて,東京都渋谷区に対し,22万5078円及びこれに対する平成12年11月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金,控訴人Bについて,東京都渋谷区に対し,22万5078円及びこれに対する平成12年11月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で認容し,その余を棄却した原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部裁判長裁判官西田美昭裁判官森高重久裁判官伊藤正晴
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