- 1 -主文 1 原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,平成20年1月から本判決確定の日までの間,毎月10日限り29万7590円,毎年6月5日限り56万8225円及び毎年12月5日限り62万1705円の割合による各金員並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告は,原告に対し,平成20年1月から本判決確定の日までの間,毎月10日限り29万7590円,毎年6月5日限り57万8850円及び毎年12月5日限り63万3330円の割合による各金員並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告と締結した雇用契約により,アメリカ合衆国軍隊(以下「在日米軍」という。)の基地内において,自動車機械工等として勤務していた原告が,被告に解雇されたものの,解雇事由がない又は解雇事由があるとしても解雇権の濫用であって解雇は無効であるとして,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と賃金(毎月10日限り29万7590円)及び賞与(毎年6月5日限り57万8850円及び毎年12月5日限り63万3330円)並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(各掲記の証拠(枝番号のすべてを表す場合は,枝番号の記載を省略- 2 -する。以下同じ。)等によるほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア被告は,在 である。 1 前提事実等(各掲記の証拠(枝番号のすべてを表す場合は,枝番号の記載を省略- 2 -する。以下同じ。)等によるほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア被告は,在日米軍及び諸機関(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「地位協定」という。)15条に定めるもの。)が必要とする労務の円滑な充足と労働者の権利,利益の擁護を図る観点から,原告を含む労働者(以下「駐留軍等労働者」という。)を雇用し,その労務を在日米軍及び諸機関に提供している(いわゆる間接雇用方式)。 間接雇用方式による労務提供を実施するため,被告は,米国政府との間で3つの労務提供契約,すなわち,各軍の司令部や部隊等の事務員,技術要員及び警備員等を対象とする基本労務契約(MasterLaborContract。以下「基本労務契約」という。),非戦闘船舶に乗り込む船員を対象とする船員契約(Mariner’sContract)及び前記諸機関の労働者を対象とする諸機関労務協約(IndirectHireAgreement。以下「諸機関労務協約」という。)を締結し,当該契約に基づき,日米両国政府が分担して労務管理を行っている(いわゆる日米共同管理方式)。 イ原告は,平成7年4月17日,基本労務契約に基づき,牧港補給地区陸軍S-4整備課の重量装置機械工(基本給表2の7等級)として,被告に雇用され(乙2),平成8年4月1日,自動車機械工インターメディエイト訓練生として嘉手納飛行場空軍第18輸送中隊車両保全修理課に転任し,これに伴って低い等級(基本給表2の5等級)への変更となった(乙3)が,同年11月1日,自動車機械工に昇格(基本給表2の7等級)した(乙 として嘉手納飛行場空軍第18輸送中隊車両保全修理課に転任し,これに伴って低い等級(基本給表2の5等級)への変更となった(乙3)が,同年11月1日,自動車機械工に昇格(基本給表2の7等級)した(乙4)。 そして,原告は,平成14年10月16日,諸機関労務協約に基づき,自動車機械工(基本給表2の7等級)としてP1海兵隊福利厚生部(MCCS)自動車輸送課に転任し(就労先P2)(乙5),公式人事措置通知書(乙6。以下「本件公式人事措置通知書」という。)により,平成19年12月20日発- 3 -効の制裁解雇(以下「本件制裁解雇」という。)により解雇されるまでの間,同職場に勤務していた。 ウ P3は,原告の同僚であったが,平成18年から原告の第一監督者となった(乙17,証人P3)。 P4は,平成16年5月からMCCSロジスティック部門,モータートランスポート部門のディレクターに就任した(乙22)。 P5は,MCCSモータートランスポート部門のメンテナンスオフィサーであり,原告の第二監督者であった(乙19,証人P5)。 P6は,MCCSモータートランスポート部門のマネージャーであったが,その後,MCCSロジスティック部門のチーフオフィサーに昇任した(乙18)。 (2) 本件制裁解雇に至る経緯ア原告は,平成19年1月17日のP3に対する発言(以下「本件発言」という。)により,調査のため,翌18日から休業手当支給身分(調査の間または在日米軍が決定した他の理由で一時的に勤務状態から離れるものであり,この期間,通常給与の60パーセントの給与の支給を受ける(乙1)。)に置かれた(乙7)。 イ在沖米海兵隊民間人人事部(以下「海兵隊人事部」という。)従業員管理関係調整職P7は,同年3月20日,原告がP3に話した上司(P4)を ントの給与の支給を受ける(乙1)。)に置かれた(乙7)。 イ在沖米海兵隊民間人人事部(以下「海兵隊人事部」という。)従業員管理関係調整職P7は,同年3月20日,原告がP3に話した上司(P4)を殺すとの発言は,計画的殺人として表現できる,その理由は,原告が,もし原告に何かあっても,原告の家族はいかなる法的懲罰からも解放されるよう原告の妻を離婚するために必要な書類をすでに準備したと述べたからである,原告に対してこれまで正式な制裁措置は科されていないが,原告の遅刻,反抗及び不注意な仕事に係る公式訓戒文書の発出準備を終えていた,原告は口頭又は書面による数多くの話し合いを通じて違反行為を是正するための相当な機会を与えられていたが,向上の兆候を示さなかった,これらすべての要因を考慮した場合,- 4 -原告を引き続き雇用することは,福利厚生部ばかりでなく,海兵隊全体にとっても有害であり,職場の平和及び士気を回復するためには,原告を雇用から解除するという究極の措置を追及する以外に選択肢はないとする海兵隊人事部労務専門官宛の原告に係る違反行為に対する調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)を作成し,同労務専門官は,本件調査報告書を踏まえ,原告について,諸機関労務協約附属書8D節10aの規定に基づき同附属書6別添1の12に規定する「秩序を乱す行為」b「重」(乙1)に該当するものとして,本件調査報告書と制裁措置(解雇)の公式人事措置通知書(乙10)を沖縄防衛局長(当時の那覇防衛施設局長)に送付した。 ウこれに対し,沖縄防衛局労務管理官は,同年5月22日,海兵隊人事部労務管理官に対し,原告の「殺す」等の発言は,本当に殺すつもりであったのか,単に叩きのめすといった程度のものなのか,客観的に判断できず,原告が実際に殺人を犯す可能性を証明することは 日,海兵隊人事部労務管理官に対し,原告の「殺す」等の発言は,本当に殺すつもりであったのか,単に叩きのめすといった程度のものなのか,客観的に判断できず,原告が実際に殺人を犯す可能性を証明することは困難であり,また,解雇については,証拠の存在及び段階的な措置がとられているかが重要になり,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合には,権利の濫用として無効になる可能性が高いことから,本件については1回目での解雇は難しく,公式な制裁措置を段階的に実施していく必要があり,制裁解雇に同意できず,解雇以外の制裁措置をとるよう要請した(乙11)。 エ海兵隊人事部は,同年10月5日,①原告が上司(P4)を殺すと発言し,P4に対し,殺す又は深刻な身体的危害を与えると脅迫したこと,②海兵隊人事部が原告の同僚から聴取調査を実施し,原告が同僚らに対して,敵対的・脅迫的な態度で対応し,職場に悪影響を与え,かつ,同僚らが原告に対して恐怖心を抱いていることなどが判明したとし,これら原告の態度やP4に対する脅迫的な発言等は,同僚や軍属の安全や秩序にとって重大な危険があるという理由により,諸機関労務協約英文附属書18D節10及び英文附属書3の別添1(12b)に基づき,原告を秩序を乱す行為(重)で解雇するという原告に対- 5 -する解雇予告通知書(以下「本件解雇予告通知書」という。)を作成し,同年11月7日,本件解雇予告通知書に沖縄防衛局の署名を得,同月20日,原告に対し,本件解雇予告通知書を交付した(乙8)。 オ海兵隊人事部は,同年12月11日,本件解雇予告通知書に対し,原告が提出した返答を慎重に検討した結果,制裁措置は妥当であると決定し,原告に対する秩序を乱す行為(重)の嫌疑は立証されているから,同月20日付けで解雇処分を科するとする原告 解雇予告通知書に対し,原告が提出した返答を慎重に検討した結果,制裁措置は妥当であると決定し,原告に対する秩序を乱す行為(重)の嫌疑は立証されているから,同月20日付けで解雇処分を科するとする原告に対する解雇決定通知書(以下「本件解雇決定通知書」という。)を作成し,同月14日,本件解雇決定通知書に沖縄防衛局の署名を得,同月18日,原告に対し,本件解雇決定通知書を交付した(乙9)。 カ被告は,同月14日,沖縄防衛局が本件公式人事措置通知書記載の同月20日発効の本件制裁解雇について同意することによって,本件制裁解雇の人事措置を正式なものとした。 (3) 諸機関労務協約の定め(乙1)ア諸機関労務協約附属書8(英文附属書18)(雇用の解除,出勤停止及び減給)のD節(米軍機関の発議に基づく措置)10(制裁解雇)a従業員は,著しい非行,詐欺,重要事項についての虚偽の陳述その他附属書6(英文附属書3)における違反行為及び制裁措置に関する表(以下「本件違反行為表」という。)に記載された行為のために解雇の措置がとられる場合には「制裁解雇」の人事措置によって解雇されるものとする。 イ諸機関労務協約附属書8(雇用の解除,出勤停止及び減給)のD節10b日本国の労働法規によって除外される場合を除き,すべての制裁解雇事案について,従業員は,公式な人事措置通知書による予告,それに回答する権利及び解雇の決定を確認する通知書,または,在日米軍が制裁の軽減を決定する場合には,制裁の軽減に関する旨の公式な人事措置通知書が与えられる。 ウ諸機関労務協約附属書6(英文附属書3)(従業員の行為)のD節(制裁措置)4(制裁解雇)- 6 -制裁解雇とは,最も厳しい種類の不利益措置をいう。この措置をとる前に,個々の事案における事実及び事情は,慎重に分析 6(英文附属書3)(従業員の行為)のD節(制裁措置)4(制裁解雇)- 6 -制裁解雇とは,最も厳しい種類の不利益措置をいう。この措置をとる前に,個々の事案における事実及び事情は,慎重に分析されるものとし,その事実及び事情は,従業員が行為の規範に対して明白に不服従を表明し,またはそれに従うことを拒否したとの結論を立証するに足りるものでなければならない。従業員を制裁解雇する旨の決定が行われるに先立って,その者を矯正するために段階的な制裁措置を原則として適用するものとする。ただし,その違反行為が従業員を継続して雇用することが諸機関にとって有害である程度に重大である場合には,制裁解雇措置をとることができる。 エ諸機関労務協約附属書6(従業員の行為)のD節5(制裁措置の画一化)本件違反行為表には,違反行為と共に,1回目,2回目及び3回目の違反行為に対する制裁の適当な範囲が記載されている。 在日米軍において行われる適当な制裁措置の決定は,諸機関全体を通じ公平な制裁を課し,かつ,同種の事案には同様の措置をとることを保証するため,この協約に定める手続及び本件違反行為表に従うものとする。ただし,同表は,必ずしも機械的に運用されるものではない。違反行為と制裁を評価するに当たっては,その事情が慎重に考慮されるものとする。誘惑及び挑発の要素,その者の勤務記録,諸機関に対するその者の貢献,その者の周囲における評価,矯正の可能性並びにその制裁がほかの従業員に対して効果的な事例として役立つ程度等の面について考慮が払われるものとする。 オ諸機関労務協約附属書6(従業員の行為)の別添1(本件違反行為表)の1 本件違反行為表12「秩序を乱す行為」には,a「軽」とb「重」があり,以下のとおり,その違反行為の内容が説明されている。 a軽: 協約附属書6(従業員の行為)の別添1(本件違反行為表)の1 本件違反行為表12「秩序を乱す行為」には,a「軽」とb「重」があり,以下のとおり,その違反行為の内容が説明されている。 a軽:業務,規律または士気に悪影響を与える乱暴な騒がしい遊び。無礼な,下品なまたは挑発的な言葉を用いること。喧嘩(けんか)または喧嘩をせん動すること。 - 7 -b重:争闘,脅迫もしくは他人に対する傷害,権限ある者に対する肉体的抵抗,士気,業務もしくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動またはみだらなもしくは不道徳な行為。 そして,「秩序を乱す行為」b「重」に該当する違反行為に対する制裁措置として,1回目については,公式訓戒から解雇まで,2回目については,出勤停止から解雇まで,3回目については解雇が,それぞれ適当な制裁の範囲とされている。 なお,本件違反行為表には,ここに掲げる制裁措置のほかにも,算定期間内に4回又はそれ以上の違反行為を犯した従業員に対して制裁解雇が認められるとの注記がある。 (4) 原告の賃金及び賞与ア原告の賃金は,毎月末締め,翌月10日払いであり,本件制裁解雇によって解雇されるまでの間,1か月当たり29万7590円(基本給26万0900円+格差給2万6090円+扶養手当6500円+通勤手当4100円(平成18年11月分(甲25の2)参照,乙1)が支給されていた。 イ原告の賞与は,毎年6月5日払いの夏季手当と毎年12月5日払いの年末手当であり,平成18年6月5日に支給された夏季手当は,56万8225円((基本給26万0900円+扶養手当6500円)×212.5パーセント(甲25の4)),同年12月5日に支給された年末手当は,62万1705円((基本給26万0900円+扶養手当6500円)×232.5パーセント( 00円+扶養手当6500円)×212.5パーセント(甲25の4)),同年12月5日に支給された年末手当は,62万1705円((基本給26万0900円+扶養手当6500円)×232.5パーセント(甲25の5))である。 (5) 本訴の提起原告は,平成20年5月30日,本件制裁解雇を不服として,当裁判所に本訴を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 2 争点及び当事者の主張本件制裁解雇は,いわゆる懲戒解雇の一種であると解されるところ,本件におけ- 8 -る争点は,①原告の制裁解雇事由の存在(被告が主張立証責任を負う。)と②本件制裁解雇が解雇権の濫用に当たるか(原告が権利濫用の評価根拠事実について,被告が権利濫用の評価障害事実についてそれぞれ主張立証責任を負う。)である。 (1) 争点①(原告の制裁解雇事由の存在)についてア被告の主張制裁解雇に当たっては,諸機関労務協約附属書6「従業員の行為」D節5bの規定に基づき,誘惑及び挑発の要素,その者の勤務記録,諸機関に対するその者の貢献,その者の周囲における評価,矯正の可能性,その制裁がほかの従業員に対して効果的な事例として役立つ程度等の面について考慮すべきものである。 そして,後記のとおり,原告は,勤務状況が極めて悪く,種々の問題行動を繰り返し,継続的に職場の環境や秩序を乱しており,上司から繰り返し注意を受けていたにもかかわらず,その態度を改めることもなかった上,原告は,P3に対して上司であるP4を殺す旨の本件発言をするに至ったものであり,被告は,諸機関労務協約附属書8D節10a及び本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するとして,本件制裁解雇をしたものである。 以下,原告の制裁解雇事由が存在することについて,個々の事実ごとに主張する。 (ア) 原 0a及び本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するとして,本件制裁解雇をしたものである。 以下,原告の制裁解雇事由が存在することについて,個々の事実ごとに主張する。 (ア) 原告がP4を殺す旨の本件発言をしたことaP3は,平成19年1月17日,原告から,今までのカウンセリングシートのコピーを求められたため,原告ももらっていると思うがどうしたのかと聞くと,原告は,コピーは捨ててしまったかもしれない,最近P4が自分を狙っており,首にしようとしているというような話をした。これに対し,P3は,カウンセリングシートのコピーはP5しか手に入らないので,P5に聞くよう伝えると共に,P4が原告を狙っているようなことはないと言った。それに対して,原告は,「もう我慢できない,家族には迷- 9 -惑をかけたくないから妻と離婚する準備とか,手続も全部したから,もうP4を殺す」と言った。 b 以上の事実は,P3の供述から認められるところ,P3の供述は,以下の理由により信用することができる。 すなわち,P3は,原告の本件発言に驚き,聞き返したところ,原告が再度「P4を殺す」と言った旨述べており,具体的かつ迫真性に満ちたものである上,妻との離婚手続についても容易にねつ造し得る内容ではなく正に真に体験したからこそなし得る供述というべきである。また,本件発言の際の原告の様子について,「すごく怒っていたので,目も赤くなってから,もう涙が出そうなぐらいで,手もぐっとしてから,ガタガタもして,もういつ爆発するのもおかしくない感じ」であったため,原告に対して,「落ち着いてお家に帰りなさいって,頭を冷やすように帰りなさい」と言った旨述べており,臨場感に富む迫真性がある供述である。さらに,P3が,原告の脅迫的言辞を上司に報告したのは たため,原告に対して,「落ち着いてお家に帰りなさいって,頭を冷やすように帰りなさい」と言った旨述べており,臨場感に富む迫真性がある供述である。さらに,P3が,原告の脅迫的言辞を上司に報告したのは,原告の上記様子から危険を感じ,もしかしたら大変なことになるかもしれない,そうなれば自分では責任がとれないと考えたためであり,迫真に満ちた真に体験した者しかなし得ない心情が如実に表れていると認められる。 このようなP3の供述は,P3から原告の本件発言の直後に報告を受けたP5の供述とも合致する上,以降内容が一貫しており,変遷がない。 そして,P3は,当初原告の同僚であり,その後原告の上司になったが,原告に対して友好的に接し,原告と監督者との間で仲裁役を務めるなど原告に同情的であるとさえ見える対応をとっていたものであって,原告に不利な供述をする理由はない。 なお,P3は,日本語に堪能であり,沖縄の方言も少しなら理解できることから,原告を含め日本人従業員と日本語で普通に会話することができたものであり,原告も,P3と話すときは日本語で話し,時に沖縄の方言- 10 -も使う旨述べており,P3の日本語の日常会話に問題がなかったことは明らかである。このようなP3が本件発言を聞き間違った可能性はなく,かつ,P3が発言内容を確認するために聞き返した上で,原告が再度「殺す」との発言をしたと述べているのであるから,勘違いあるいは記憶違いという可能性もない上,「殺す」と「ウチクルス」という言葉を混同した可能性もない。 c これに対し,原告は,本件発言について,「殺す」と発言したことを否定し,「ウチクルス」と発言した旨供述するが,不自然である上,P3の供述と齟齬しており,信用できない。 すなわち,原告は,同日午後5時40 は,本件発言について,「殺す」と発言したことを否定し,「ウチクルス」と発言した旨供述するが,不自然である上,P3の供述と齟齬しており,信用できない。 すなわち,原告は,同日午後5時40分ころ,仕事を終えて帰宅する際,P3が一人でたばこを吸って休んでいるのを見かけ,P3に相談を持ちかけたところ,P3がP4に対する不満を述べたことから,慰めるつもりで,「ゴメンヤ。ヌーガラ・アレーカラ・ワーガ・マトゥミティ・ウチクルスサー・キッサヌ相談や忘シリリヨ,P3(ごめんね。何かあれば,私がまとめてこらしめてやるよ。さっきあなたに相談したことは忘れなさいよ,P3。)」などと言ったと供述する。しかしながら,①そもそも原告がP3を慰めるつもりでP4をこらしめるなどと発言するのは不自然であるし,②P3は原告が「ウチクルス」ではなく「殺す」という発言をしたと明言しており,原告の供述はP3の供述と齟齬している。また,③P3は平成19年1月からは禁煙しており,たばこを吸っていたP3に話しかけたというのは客観的事実と合致しないものであり,原告の供述は信用できない。 (イ) 原告の勤務状況等が極めて悪く,原告が職場の秩序を乱し,ほかの従業員に恐怖や不安を与えていたことについてa 常習的に遅刻することについて本件職場では,遅刻をする場合は上司に連絡をすることになっているが,原告が上司に連絡をすることはほとんどなかった。また,原告は,遅刻の- 11 -理由も話さず,常習的に遅刻をしており,注意しても直らず反省している様子はなかった。そして,P5は,平成18年10月17日,原告に対して,午前6時30分以降に出勤することについて,口頭で何度も注意してきたが,遅刻が改まらないことから,今日から是正するよう,また,このまま出勤が遅れることが続けば,公 18年10月17日,原告に対して,午前6時30分以降に出勤することについて,口頭で何度も注意してきたが,遅刻が改まらないことから,今日から是正するよう,また,このまま出勤が遅れることが続けば,公式人事措置がとられる旨の注意を行った。 これに対して,原告は,平成18年10月17日,午前6時30分に職場に着いており,遅刻していないなどと供述するが,P4,P5及びP3が,原告が職場に着いた時間を午前6時32分であると確認しており,原告以外の7人は集まっていたのであるから,かかる原告の供述は信用できない。 b 許可なく定刻より早く職場を離れることについて原告は,平成17年3月14日,定刻より早い午後3時22分に職場を離れており,この行為に対して,同月17日,P5は原告に対して,文書により注意を行った。同文書には,原告が遅刻や定時前の退出に関して,これが初めての違反行為ではなく,注意も初回ではないこと,また,P4とP5から過去に再三にわたって終業時間を知らされており,何時,あるいは,なぜ職場にいないのかについて,監督者に報告することの重要性を伝えられていたにもかかわらず,それを守らない行為は,監督者の指示に従わない行為であること,今後同様あるいは,ほかの違反行為があった場合には,出勤停止あるいは解雇も含むより厳しい措置がとられることを警告することなどが記載されている。そして,原告は,これらの内容を認識した上で当該注意書に署名した。 これに対して,原告は,午前の仕事が延び,昼食時間をきちんととるため,午後の勤務に遅れるような場合について,常識的には,上司に連絡するが,いないときには同僚に伝えても,まかり通っていたなどと述べてい- 12 -る。しかしながら,P3は,昼食時間が長引くことを同僚に言うべきかについて,決めるのは上司 ,常識的には,上司に連絡するが,いないときには同僚に伝えても,まかり通っていたなどと述べてい- 12 -る。しかしながら,P3は,昼食時間が長引くことを同僚に言うべきかについて,決めるのは上司だから,上司に連絡しないといけないと述べているところ,そもそも,勤務場所に戻るのが遅くなるとの報告をすべき相手が監督者であることは当然であり,直属の上司がその場にいなければ携帯電話に電話することもできるのであって,同僚に連絡すればよいというのは不自然不合理である。仮に原告が述べるような制度であったとすれば,原告自身もほかの同僚から頼まれることが相当あるはずであるが,原告は,そのようなことを頼まれたことはないと述べており,このことからしても,上司がいないときには同僚に伝えることがまかり通っていたとの原告の供述は信用しがたい。 c 業務指示に素直に従わないことについて原告は,平成16年12月2日午前7時,メンテナンスチーフから原告に与えられた業務があるのにもかかわらず,その業務に就かないことで,再度指示されたが守らず,個人の判断でほかのメカニックに指示されていた大型フォークリフトの修理に就いた。原告には指示があるまでは,ほかのメカニックの業務に関わらず,原告に割り当てられた業務を行うよう繰り返し指示されていた。何度も注意された後,原告はやっと自分の持ち場に戻り,その日中攻撃的な態度をとっていた。 d 職場内における協調性を無視した態度と周囲の人間関係への配慮に欠けることについて原告は,平成17年5月19日午前6時30分のミーティングにおいて,グループから離れた場所へ座り,誰とも話をせず,床をじっと見るか,ほかの従業員を怒りの表情で睨みつけるなどし,自分自身を孤立させている。 原告に対して,現在どの車両の作業をしているのか尋ねるとただ指 グループから離れた場所へ座り,誰とも話をせず,床をじっと見るか,ほかの従業員を怒りの表情で睨みつけるなどし,自分自身を孤立させている。 原告に対して,現在どの車両の作業をしているのか尋ねるとただ指を差すなどし,その態度はほかの従業員達を困惑させ続けている。このような行為は,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する。 - 13 -e 勤務中に頻繁に長時間個人的な携帯電話を使用することについて原告は,平成18年9月22日午前11時ころ,携帯電話で話していた。 この行為は何人もの従業員に何回も目撃されており,頻繁な長い個人的な携帯電話の使用が重大な問題になりつつあった。従業員による携帯電話の使用は許可されているが,通話時間は短く,控えめでなければならない。 原告の頻繁な携帯電話使用は元々低い生産性を更に低下させる。 これに対し,原告は,勤務時間中に個人的な用事で長時間携帯電話を使用したことはなく,携帯電話の使用は仕事のためであると述べているが,そもそも,仕事上の備品の注文等は上司から連絡するのが通常であるし,急いで連絡する必要があるとしても数分程度であり,長電話の必要はなく,原告の供述は不自然不合理である。また,P8は,原告が遠くの方に離れて長時間携帯電話で話をしている際,一生懸命おじぎをしているのを目撃しており,仕事上の電話の相手は,下請けの会社であるから,原告がおじぎをするのは不自然である。 f その他原告は,腹を立てて感情的になることがあり,同僚であるP9に対しても,P4に対する脅し言葉を口にしたこともあった。かかる行為は,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する。 原告は,P6が原告に対して指導をした際,これに対して憤慨し,P6が立ち去ろうとしたところ,手に持ったスパナを振り上げてP6を殴る 為は,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する。 原告は,P6が原告に対して指導をした際,これに対して憤慨し,P6が立ち去ろうとしたところ,手に持ったスパナを振り上げてP6を殴る仕草をしたことがあった。かかる行為は,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する。 原告は,自分の通り道にほかのメカニックの道具箱があるとその道具箱を壁にたたきつけるかのように押しのけたりしていた。 原告は,機嫌が悪いときは,ドアをバタンと強く閉めたり,駐車の際に急ブレーキをかけたりし,また,こちらからのかけ声に無反応であったり- 14 -した。 原告の勤務状況等が極めて悪いこと及び職場における粗暴な言動について,原告に対して注意が口頭及び文書により繰り返し行われた。 また,P8は,原告から,年休が足りなくなったので,誰か売ってくれる人はいないかとか,次の年から借り入れはできないかとの要求を受けたことがあり,P8ができないと断ると,原告は,二人だけの秘密にしておけば上司には知られないと言ってきたと述べており,このことは原告が年休について極めてルーズな考え方をもっていたことの一端を表すものである。 これに対し,原告は,P8に年休を何とかできないかなどと頼んだことはないと供述する。しかしながら,P8の供述は格別不自然不合理ではなく,殊更に虚偽の供述をする必要性もなく,その態度も真しであり十分信用できる。P8は,平成18年10月ころ,年末に団体で中国に行く予定が入ったが,有給休暇をほとんど使い果たしてしまっていた原告から,年末に中国に行くのに有給が足りないと相談された上,そのことを口止めされ,原告がまた病休に入るなと予想していたところ,やはり年末前から病休に入った旨供述している。原告も平成18年11月ころ病気休暇中 末に中国に行くのに有給が足りないと相談された上,そのことを口止めされ,原告がまた病休に入るなと予想していたところ,やはり年末前から病休に入った旨供述している。原告も平成18年11月ころ病気休暇中に中国旅行に行ったことを認める供述をしており,P8の供述を裏付けるものである。なお,原告は,中国旅行に行ったことの理由について,医師から,職場のことは一切忘れて,旅行なり,好きなことをやるのがこの病気には一番よいと言われたなどと供述するが,①海外旅行を特に勧められたわけではなく,また,治療の必要上やむを得ず海外を選択して行ったものとも認められないし,そもそも病気休暇中に海外旅行に行くというのは社会常識に反する不当な行動であるといわざるを得ず,医師が海外旅行を勧めるとは考えがたい。しかも,②原告は,職場以外では何の変調もなかったと供述しており,わざわざ海外旅行に行く必要はない。さらに,③原告がう- 15 -つ病との診断を受けたのは平成18年11月15日であるところ,海外旅行に行くためには,パスポートやビザの取得等種々の準備が必要であって,医師から気分転換を勧められたとしても短期間で準備ができるはずがなく,あらかじめ海外旅行の準備を始めていたのでなければ同月ころに海外旅行にいけるはずがないのであって,原告の供述は不合理である。 以上のとおり,原告の勤務態度は,同僚を睨みつけたり,無反応であったり,噛みつかんばかりの態度をとったり,長時間ぼうっとしていたり,威圧を加えたり,あるいは攻撃的,脅迫的な態度がしばしば認められるものであり,原告の上司や同僚は,原告の敵対的で脅迫的な態度を懸念し,原告が危害を加えないか,もしくは職場で重大な事故を起こすのではないかと感じていた。このようなことから,原告の職場の上司又は同僚であるP10,P5,P11, は,原告の敵対的で脅迫的な態度を懸念し,原告が危害を加えないか,もしくは職場で重大な事故を起こすのではないかと感じていた。このようなことから,原告の職場の上司又は同僚であるP10,P5,P11,P6,P4,P12,P8及びP9は,原告がいると職場に恐怖と不安が生じるとして,原告の復職に反対している。 (ウ) 小括以上によれば,原告の行為が,諸機関労務協約附属書8D節10a及び本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するとして,本件制裁解雇をしたことが正当であることは明らかである。 これに対し,原告は,懲戒当時,使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該懲戒の理由とされたものではないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないとして,本件解雇予告通知書には記載されておらず,本件訴訟において新たに懲戒事由として主張された事実は,本件制裁解雇の理由とされたものではないことが明らかであり,本件制裁解雇の有効性を根拠付けることはできない旨主張する。 しかしながら,本件制裁解雇の主な理由は,原告が平成19年1月17日に行った本件発言であるものの,本件解雇予告通知書で述べられている事由- 16 -や上記原告の個々の違反行為などは,諸機関労務協約附属書6「従業員の行為」D節5bの規定に従って,本件制裁解雇に当たって総合的に考慮(勤務記録,周囲の評価,矯正の可能性等)されたものであり,被告が本件訴訟において指摘する事実はすべて,本件制裁解雇時において認識し,考慮した事実である。原告が引用する最高裁の判断は,雇用者が懲戒時に認識していなかった非行事実について判断しているものであるから,本件訴訟に何ら影響を及ぼすものではない。 イ原告の主張( ,考慮した事実である。原告が引用する最高裁の判断は,雇用者が懲戒時に認識していなかった非行事実について判断しているものであるから,本件訴訟に何ら影響を及ぼすものではない。 イ原告の主張(ア) 制裁解雇事由の変遷懲戒当時,使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該懲戒の理由とされたものではないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできない(最高裁平成8年(オ)第752号同年9月26日第一小法廷判決)。 これを本件において見るに,海兵隊人事部が原告を解雇するに当たり,懲戒事由を記載した本件解雇予告通知書を原告に交付しているところ,沖縄防衛局と海兵隊人事部は,原告に本件解雇予告通知書を交付する以前から,解雇後は訴訟に発展するであろうことを見越して,慎重に協議をし,沖縄防衛局は,本件が訴訟問題になった場合にMCCSが100パーセント沖縄防衛局側をサポートすることと本件解雇予告通知書を書き直すということを条件で解雇に同意したというのである。そうすると,本件解雇予告通知書は,後の訴訟を予定して,推敲を重ねて作成・交付された文書であることは明らかであり,本件制裁解雇における解雇事由は,本件解雇予告通知書に記載された事実に尽きるはずである。すなわち,本件解雇予告通知書には記載されず,本訴訟において新たに解雇事由として主張された事実は,本件制裁解雇の理由とされたものではないことが明らかであるから,本件制裁解雇の有効性を根拠付けることはできない。 - 17 -そして,本件解雇予告通知書に記載された具体的な事実は,被告が主張する原告の本件発言のほか,①常日頃から攻撃的な態度で,同僚達を睨むようなこともあったこと,②平成15年4月17日,P6に対して攻撃的な態度を示したこと 通知書に記載された具体的な事実は,被告が主張する原告の本件発言のほか,①常日頃から攻撃的な態度で,同僚達を睨むようなこともあったこと,②平成15年4月17日,P6に対して攻撃的な態度を示したこと,③同年6月25日,同僚に対する攻撃的・脅迫的な態度のため,口頭カウンセリングを受けたこと,④平成17年3月17日,遅刻・早退を理由に文書によるカウンセリングを受け,感情的になって吐きそうもしくは卒倒しそうな行動をしたこと,⑤同年4月から5月にかけて,敵対的で脅迫的な態度があったこと,⑥平成17年ころ,書面でのカウンセリングを受けて憤慨し,工具類を投げ捨てるなどしたこと,⑦平成18年10月17日,カウンセリングの受け取りを断り,攻撃的な態度をとったことの7つである。そして,本件解雇予告通知書は,原告の行為を本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当すると指摘するのみであり,ほかの項目に該当するとの指摘はない。 したがって,本件制裁解雇の事由は,本件解雇予告通知書記載の事実に尽きるはずであると共に,諸機関労務協約上の根拠は,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」のみであるはずである。にもかかわらず,被告は,本件訴訟において,本件解雇予告通知書に記載されていない事実を本件制裁解雇の事由として主張すると共に,諸機関労務協約上の根拠についても,本件違反行為表から「反抗」,「無許可欠勤」,「不注意な仕事または職務上の過失」等,「秩序を乱す行為」以外のものを指摘している。このような被告の主張は,解雇事由の後付けであり,すべて排除されなければならない。 これに対し,被告は,本件発言のみでは本件制裁解雇が正当であると断定することは困難と考えられたため,沖縄防衛局は当初,解雇に同意しなかったものの,その後,海兵隊人事部から得た無許可欠勤等 ない。 これに対し,被告は,本件発言のみでは本件制裁解雇が正当であると断定することは困難と考えられたため,沖縄防衛局は当初,解雇に同意しなかったものの,その後,海兵隊人事部から得た無許可欠勤等の原告の言動,勤務状況を総合考慮すると制裁解雇が妥当と判断したと主張する。 しかしながら,被告の主張によれば,沖縄防衛局は,平成18年12月2- 18 -6日の時点で,同月12日付け公式訓戒文書(乙37)の内容を承諾し,平成19年1月17日には,沖縄防衛局と海兵隊人事部で事前協議まで行われていたというのであり,この時点で,沖縄防衛局は,海兵隊人事部が本件発言以外にも非違行為が存在すると主張していることを,十分理解していたということになる。そうすると,沖縄防衛局は,海兵隊人事部が主張する平成18年以前の原告の非違行為(無許可欠勤等)を十分熟知しながら,平成19年5月22日,海兵隊人事部に対し,制裁解雇に同意できない旨回答したのであり(乙11),沖縄防衛局が,同日以降に海兵隊人事部から新たな情報を得たという点について,具体的な主張立証が一切ないことにもかんがみれば,被告の主張に理由がないことは明白である。 (イ) 原告の制裁解雇事由の不存在被告は,平成19年1月17日,原告がP3に対して,P4を殺すという脅迫的言辞(本件発言)を行ったと主張する。 しかしながら,同日の原告とP3のやりとりは,以下のとおりである。 原告は,同日,仕事を終えて帰宅しようとした際,一人でたばこを吸って休んでいるP3を見かけ,P3に対して,「最近,P4は,俺の揚げ足を取って違反行為だとレポートを求めたり,休みを許可してくれなかったりと,何かおかしくないか。俺をクビにしようとしていないか。どれくらいレポートがたまっているのかな。」と話しかけた。これに対 揚げ足を取って違反行為だとレポートを求めたり,休みを許可してくれなかったりと,何かおかしくないか。俺をクビにしようとしていないか。どれくらいレポートがたまっているのかな。」と話しかけた。これに対し,P3は,「P5しかわからんよ。でも,原告だけじゃないよ。原告が病気で休んでいる時のことだけど,俺は前もってP4の許可を取って休んだのに,その日の朝,『工場にメカニックが一人しかいない。』とP4に呼び出されて,当日の休暇をキャンセルさせられ,俺とP5はレポートされた事もあったよ。気分次第でころころ変わるP4について行くのに疲れるよ。ダー,何も考えないようにしようと思ったのにワジワジーして(腹がたって)しまったサー。」と言ってため息をついた。 - 19 -原告は,P3もP4のやり方に困っているのだなと思い,P3を慰めるつもりで,「ゴメンヤ。ヌーガラ・アレーカラ・ワーガ・マトゥミティ・ウチクルスサー・キッサヌ相談や忘シリリヨ,P3(ごめんね。何かあれば,私がまとめてこらしめてやるよ。さっきあなたに相談したことは忘れなさいよ,P3。)」と言った。 以上の事実については,原告が,時間,場所,会話内容について,具体的かつ詳細に供述しているところであり,P3が沖縄の方言をよく知っている理由についても,具体的かつ詳細に述べている。 これに対し,P3は,原告は「P4を殺す」と日本語で述べたとか,原告から方言で慰められたことはあったが,それは,別の日のことであったなどと供述している。 しかしながら,P3は,原告が本当に何かするかもしれないと思ったと供述する一方,車に乗って走り去る原告を一人で帰らせたとも供述し,P4のところに行くとは思わなかったかという問いに対して,「ちゃんと車が入って,出たと見えましたから。」と供述するなどしている。このよう 述する一方,車に乗って走り去る原告を一人で帰らせたとも供述し,P4のところに行くとは思わなかったかという問いに対して,「ちゃんと車が入って,出たと見えましたから。」と供述するなどしている。このようなP3の行動は,P3が供述するような緊迫したやりとりの直後とは考えられないほど,のんびりとした対応であり,規律と秩序を重んじる基地内において,不自然な行動であって,その供述を信用できない。むしろ,このようなP3の行動は,原告の供述するとおり,原告がP3を慰める発言をしたことを前提とすると自然であり,整合性を有する。 また,仮に,原告が本当に上司を殺害しかねないような人物と判断されたのであれば,直ちに通行許可書を取り上げようとするはずであるが,P3は,P6からの命令で,原告に対して,アドミンリーブ(休業手当支給身分)になる旨の連絡をし,電話で出勤しないように伝えただけであり,原告から通行許可書を取り上げるなどしておらず,緊急性・切迫性が一切感じられない。 さらに,原告が上司の殺害を口にするような危険人物ということであれば,- 20 -アドミンリーブという有給扱いにしているのも不自然である。 以上によれば,原告が,平成19年1月17日に脅迫的言辞を行った事実がないことは明らかである。P6は,日頃から原告を疎ましく思っていたところ,P3から原告の発言を聞いて,これを奇貨とし,原告を解雇するため,殊更に原告の発言を誇張して,部下であるP3らと口裏合わせをしていると考えるのが素直である。 いずれにせよ,被告が懲戒事由として主張する各事実は,そのほとんどが実際には存在しないものである。 また,仮に平成19年1月17日の原告の言動に一部不穏当なものが含まれていたとしても,違反行為表12「秩序を乱す行為」a「軽」の「無礼な,下品なまたは挑発的な言 実際には存在しないものである。 また,仮に平成19年1月17日の原告の言動に一部不穏当なものが含まれていたとしても,違反行為表12「秩序を乱す行為」a「軽」の「無礼な,下品なまたは挑発的な言葉」に該当する可能性があるにとどまり,「秩序を乱す行為」b「重」,すなわち,「争闘,脅迫もしくは他人に対する傷害,権限ある者に対する肉体的抵抗,士気,業務もしくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動またはみだらなもしくは不道徳な行為」に該当することはあり得ない。このことは,当初沖縄防衛局自身が,原告の言動について,「本当に殺すつもりであったのか,単にたたきのめすといった程度のものなのか,客観的に判断できず,同氏が実際に殺人を犯す可能性を証明することは困難」(乙11)と認めていたことからしても明らかである。 (2) 争点②(本件制裁解雇が解雇権の濫用に当たるか)についてア原告の主張本件制裁解雇は,P6らによるパワーハラスメントの仕上げとして,原告を職場から追放する目的でなされたものであり,解雇権の濫用というほかない。 また,仮に従業員に一定の非があったとしても,直ちに懲戒解雇が有効となるわけではない。懲戒解雇は,労働者にとって最大の不利益処分であるから,使用者の懲戒権の行使も客観的に合理的な理由を欠き,または社会通念上相当として是認し得ない場合には,懲戒権の濫用として無効となる。 - 21 -(ア) パワーハラスメントの存在本件制裁解雇は,P6ら上司によるパワーハラスメントの仕上げとして,原告を職場から排除するためになされたものである。この点,被告は,パワーハラスメントの存在を否定し,あたかも原告の被害妄想であるかのように主張するが,以下の事実から,パワーハラスメントが存在したことは明らかである。 a 原告に対しての である。この点,被告は,パワーハラスメントの存在を否定し,あたかも原告の被害妄想であるかのように主張するが,以下の事実から,パワーハラスメントが存在したことは明らかである。 a 原告に対してのみ行われていた監視及び記録の作成原告の上司らは,原告以外の者が遅刻や早退することもあったにもかかわらず,原告についてのみ,日々の行動を監視して,これを記録した日誌なるもの(乙13)を作成しており,原告の上司らが,原告のみを狙い打ちにして,処分の理由探しを行っていたことが明らかである。なお,この日誌は,客観的な記録ではなく,上司が一方的に作成していたものであって,原告には誤りを正す機会もなかったものであるから,内容の正確性・客観性・公平性には疑問がある。 b 原告を狙い打ちにした不利益取扱アメリカ人優位・日本人劣位という厳然とした力関係のある職場で,一部の日本人(原告とP12)だけが上司から嫌われて,奨励金を支給されなかったということがあった。 c 原告を狙い打ちにしたカウンセリング原告の職場には時間に若干ルーズな雰囲気があり,遅刻や早退をする者が少なからずいた。にもかかわらず,原告のみが度々カウンセリングの対象とされていた。その最たるものが,平成18年10月17日,スタッフミーティングに2分遅刻したとされるケースである。 原告は,同日,定刻に出勤しており,遅刻した事実はないが,仮に2分の遅刻があったとしても,書面によるカウンセリング(乙30)が行われたことは,原告のみを狙い打ちにした処分であることは明白である。P3- 22 -は,2分間程度の遅刻は原告以外の者がする可能性もあること,2分間の遅刻をした場合に通常は文書による注意は行っていないことを認めながら,あたかも原告が遅刻を続けていたので,2 る。P3- 22 -は,2分間程度の遅刻は原告以外の者がする可能性もあること,2分間の遅刻をした場合に通常は文書による注意は行っていないことを認めながら,あたかも原告が遅刻を続けていたので,2分間の遅刻でも文書による注意を行ったかのように供述するが,正確性・客観性に疑問のある日誌なるもの(乙13)を見ても,平成18年に入ってからの原告の遅刻は,同年2月3日(10分,説明なし),同年3月3日(6分,連絡あり),同年5月24日(10分,連絡あり),同年10月3日(5分,謝罪なし)のみであり,同月17日の以前に,悪質な遅刻が続いていた様子は見受けられない。 d 上司が原告を柔軟に取り扱っていた事実はないこと原告は,職場のストレスから心の健康を害し,沖縄県立P13病院へ通院していたところ,平成17年6月8日,海兵隊人事部労務管理調整官のP7とP14が診察に同席した。同日のカルテ(甲7)には,「軍雇用員の規定では病人は病気が治るまで復職してはならないことになっているため,無理をして仕事を続けさせることができない,と人事部P7氏はいう。 米国人のPt(患者)の上司は,Pt(患者)のことを考えて今後どうにかしてあげようという姿勢は見られないため,一旦休職・休養しその間は休んでいても60%の給料は出すので,その後配置換えを考えているので,今はゆっくり休んでほしいという。」と記載されている。すなわち,海兵隊人事部労務管理調整官P7が,医師に対し,アメリカ人の原告の上司は,原告のことを考えて今後どうにかしてあげようという姿勢は見られないと説明しているのであり,原告の上司が柔軟に原告に対応した事実がないことは明白である。 e なりふり構わぬ解雇手続沖縄防衛局は,平成19年5月22日,海兵隊に対し,「本件について,仮に裁判となった場合 るのであり,原告の上司が柔軟に原告に対応した事実がないことは明白である。 e なりふり構わぬ解雇手続沖縄防衛局は,平成19年5月22日,海兵隊に対し,「本件について,仮に裁判となった場合は,権利の濫用に当たり解雇が無効になる可能性が- 23 -高い」,「本件については1回目での解雇は難しく,公式な制裁措置を段階的に実施していく必要がある」,「今回が第1回目の違反行為であること等を総合的に勘案し,IHA規定に照らし,解雇措置以外の制裁措置を執ることが妥当と思量する」として,解雇には同意できないと回答した(乙11)ところ,海兵隊人事部は,平成18年12月12日付け公式訓戒文書(乙37)を平成19年6月4日に原告に交付し,さらに,同年11月20日に原告に対して解雇予告を行った。要するに,海兵隊は,当初沖縄防衛局が「解雇はできない」と判断した同一事実に対する制裁を,「公式訓戒」「制裁解雇」と2回に手続を分けて実施したにすぎない。沖縄防衛局は,海兵隊側と繰り返し話し合いをもつ中で,海兵隊側の姿勢に押されて,裁判で海兵隊側が沖縄防衛局を100パーセントサポートすることと本件解雇予告通知書を書き直すことを条件に,解雇に同意したようである。そこには,日本政府の機関でありながら,日本国民を守らず,海兵隊の言いなりにならざるを得ない沖縄防衛局の姿が見える。このような異様な経過からも,P6ら原告の上司が,日本の労働諸法制や労働慣行を無視して,原告を職場から排除するという目的に向かってなりふり構わず邁進していた様子が見て取れる。 以上のとおり,本件制裁解雇は,P6らによるパワーハラスメントの仕上げとして,原告を職場から排除するために行われたものであり,社会的相当性を欠くことは明らかであるから,解雇権の濫用に当たる。 (イ) 懲戒 制裁解雇は,P6らによるパワーハラスメントの仕上げとして,原告を職場から排除するために行われたものであり,社会的相当性を欠くことは明らかであるから,解雇権の濫用に当たる。 (イ) 懲戒解雇としての要件を欠いていること仮に原告に形式的には懲戒事由に該当する事実が存在したとしても,懲戒処分,少なくとも本件制裁解雇が有効とされるための要件を満たしていない。 a 一事不再理違反一事不再理の法理は就業規則の懲戒条項にも該当し,過去に懲戒処分の対象となった行為について重ねて懲戒することはできないし,過去に懲戒- 24 -処分の対象となった行為について反省の態度が見受けられないことだけを理由として懲戒することもできない。 本件において,平成18年10月17日の2分の遅刻については,同年12月12日付け公式訓戒文書(乙37)と本件解雇予告通知書(乙8)の双方で取り上げられており,実質的に同一事項について2度の制裁を科すものであるから,一事不再理の原則に反するものである。 b 平等取扱原則違反同じ規定に同じ程度に違反した場合には,これに対する懲戒は同一種類,同一程度であるべきである。したがって,懲戒処分は,同様の事例についての先例を踏まえてなされるべきである。また,従前黙認してきた種類の行為に対し処分を行うには,事前の十分な警告を必要とする。 前記(ア)のとおり,本件制裁解雇は,原告に対するパワーハラスメントの仕上げとして,原告を職場から追放するためになされたものであり,原告のみを殊更不利益に扱う処分である。すなわち,原告のみの行動を殊更に監視・記録し,軽微な遅刻等についても原告についてだけカウンセリングを加え,ほかの従業員もしている軽微な非違行為も理由にして,制裁解雇に踏み切っているのである。このような本件制裁解雇は 行動を殊更に監視・記録し,軽微な遅刻等についても原告についてだけカウンセリングを加え,ほかの従業員もしている軽微な非違行為も理由にして,制裁解雇に踏み切っているのである。このような本件制裁解雇は,原告のみを不利益に取り扱うもので,平等取扱原則に違反する。 c 相当性の欠如懲戒は,規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものでなければならず,使用者が当該行為や被処分者に関する情状を適切に酌量しないで重すぎる量刑をした場合は,懲戒権を濫用したものとされる。 仮に原告の行為に懲戒理由の存在が認められるとしても,前記(1)イのとおり,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」a「軽」の「無礼な,下品なまたは挑発的な言葉」に該当する可能性があるにとどまり,b「重」,すなわち,「争闘,脅迫もしくは他人に対する傷害,権限ある者に対する- 25 -肉体的抵抗,士気,業務もしくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動またはみだらなもしくは不道徳な行為」に該当することはあり得ず,このような行為に対する相当な懲戒は,公式訓戒で十分である。原告の行為に対し,労働者にとって最大の不利益処分である制裁解雇を科すことは,制裁として重すぎ,明らかに相当性を欠くものである。 また,前記(ア)eのとおり,海兵隊人事部は,当初沖縄防衛局が解雇できないと判断した同一事実に対する制裁を,公式訓戒と制裁解雇の2回に分けて実施し,沖縄防衛局は,海兵隊の姿勢に押し切られて本件制裁解雇を承認しているわけであるが,このように手続を2回に分けたとしても,相当性が備わらないことは明白である。 d 適正手続の欠如就業規則や労働協約上,労働組合との協議や懲戒委員会の討議を経るべきことなどが要求される場合には,この手続を遵守しなければならない。 仮にそのような規定がない 明白である。 d 適正手続の欠如就業規則や労働協約上,労働組合との協議や懲戒委員会の討議を経るべきことなどが要求される場合には,この手続を遵守しなければならない。 仮にそのような規定がない場合でも,本人に弁明の機会を与えられなければならない。これらの手続的要件に反する懲戒処分は,懲戒権の濫用として無効となる。 海兵隊人事部も沖縄防衛局も,原告に本件解雇予告通知書を交付する以前,本件解雇予告通知書に記載されている各事実について,原告の弁明を聞く機会を設けずに本件制裁解雇を行った。また,本件制裁解雇の意思決定が,いつ,どの機関において,どのように行われたのかも全く不透明であり,少なくとも原告側に明らかになっていない。したがって,本件制裁解雇が適正な手続を経てされたものでないことは明白である。 この点,被告は,平成19年6月29日に弁明の機会を与えたと主張するが,沖縄施設局職員は,原告に対し,自己都合退職を勧めただけであり,原告の弁明を聞いたのではなく,被告の主張には理由がない。 イ被告の主張- 26 -(ア) パワーハラスメントの不存在aP15について原告は,P15から嫌がらせを受けたなどと主張するが,P15が原告に嫌がらせをしたことは一切なく,すべての整備士は公平,平等に扱われていた。 P15は,メンテナンスチーフとして任務遂行のために必要な措置をとるため,仕事の配分や優先順位をつけ,場合によっては,部隊の車両を修理するための優先順位等を変更することもあった。本件職場のすべての整備士はこれら優先順位の変更に対応することを求められ,また,優先順位の変更は,すなわち,与えられた仕事の変更であると理解することは当然であった。任務遂行のためアメリカ人と日本人の整備士は公平に扱われており れら優先順位の変更に対応することを求められ,また,優先順位の変更は,すなわち,与えられた仕事の変更であると理解することは当然であった。任務遂行のためアメリカ人と日本人の整備士は公平に扱われており,原告のみに不当な要求をしたことはなかった。にもかかわらず,原告のみが,仕事の変更をP15の嫌がらせと受け止めそのように強弁している。 原告は,P15の嫌がらせにより心身過労となり,1週間の自宅静養を要すると診断されたなどと主張するが,診断書(甲5)からも,原告の職場環境が診断結果の原因であるとは認められず,むしろ原告の健康状態が良くないことを知ったP15は,原告がどのような状態か確認するため原告のところまで行ったり,ほかの従業員よりも原告に仕事をより自由に選べるよう取り計らったり,診断の後,ストレスの伴う要求を原告にしないよう努力するなど,より柔軟に原告に対応したものである。 P6,P4,P5及びほかの従業員らは,P15が原告に対して嫌がらせをしたのを見聞きしたことは一切ない。 b その他の上司について原告と同じ整備士であるP9は,原告が上司などからいじめや特別な扱いを受けたり,酷使されていたとは思わないし,そのような事実を目撃し- 27 -たことはないなどと述べている。 また,上司であるP5は,原告の体調や精神的な病気のことを考えて,ほかの従業員よりも優しくしたつもりであったので,原告が監督者から嫌がらせを受けたと主張していることを聞いてとてもショックだったと述べている。 さらに,本件職場の事務担当者であるP8は,P3,P4及びP5らが原告に対して,嫌がらせや脅しをしていたことはなく,逆に監督者らは,原告の問題解決に協力的であり,むしろ原告は,監督者を無視するような感じだったと思うと述べている。 以上のとおり,原 及びP5らが原告に対して,嫌がらせや脅しをしていたことはなく,逆に監督者らは,原告の問題解決に協力的であり,むしろ原告は,監督者を無視するような感じだったと思うと述べている。 以上のとおり,原告に対し,上司らの嫌がらせやいじめ・脅し等は一切なかったのであり,むしろ,上司らは原告の問題行動に対し,協力的であったり,優しく接したり,柔軟に対応したりしてきたのである。原告が意図的に虚偽の事実を申し立てているのか,被害妄想的に思い込んでいるのかはともかく,上司らから嫌がらせやいじめがあったとする原告の主張が失当であることは明らかである。 (イ) 懲戒解雇としての要件を欠いていないことa 原告は,海兵隊人事部及び沖縄防衛局が,原告に本件解雇予告通知書を交付する以前,同書面に記載されている各事実について,原告の弁明を聞く機会を設けず,本件制裁解雇を行った旨主張し,また,被告が原告に対してした解雇予告通知を不利益処分であるとした上で,不利益処分を課す際の弁明の機会付与は処分の前に行うべきであり,処分後に弁明の機会を与えても遅いなどと主張し,さらに,平成19年4月25日に沖縄防衛局が行った原告から弁明を求める機会及び同年2月27日から同年3月1日までの間に海兵隊人事部が行った原告との面談が,いずれも同年5月22日付け回答よりも前に行われているところ,同回答は原告の弁明を踏まえた上で,仮に裁判となった場合は,権利の濫用に当たり解雇が無効になる- 28 -可能性が高いと判断しているのであり,その後原告に弁明の機会を与えることなく解雇予告通知に至ったことは不合理であるなどと主張する。 しかしながら,諸機関労務協約附属書8「雇用の解除,出勤停止及び減給」D節10bの規定によれば,日本国の労働法規によって除外される場合を除き,すべての制 たことは不合理であるなどと主張する。 しかしながら,諸機関労務協約附属書8「雇用の解除,出勤停止及び減給」D節10bの規定によれば,日本国の労働法規によって除外される場合を除き,すべての制裁解雇事案について,従業員は,公式な人事措置通知書による予告,それに回答する権利及び解雇の決定を確認する通知書または在日米軍が制裁の軽減を決定する場合に,制裁の軽減に関する旨の公式な人事措置通知書が与えられることになっているところ,本件解雇予告通知書はあくまで上記予告であり,制裁解雇処分は決定されていない段階であるから,解雇予告通知を不利益処分であるとする原告の主張は前提を誤っており失当である。 また,原則として嫌疑に対しての公式な返答の機会は,従業員が解雇予告通知書を受領した後に与えられることになっており,本件解雇予告通知書にも「もしこの人事措置に不服であれば,この通知書を受け取ってから,10労働日以内にその意向を文書で回答することができます。」と明記されている上,原告は,本件解雇予告通知書が手交された平成19年11月20日の後に,解雇事由に対して弁明する機会が与えられ,これに対して,同月29日に不服を申し立てたが,同年12月20日付けで解雇処分にするとの本件解雇決定通知書を同月18日に受領している。なお,実際には,沖縄防衛局は,本件解雇予告通知書を原告に手交する前である同年4月25日に原告と会い,原告の弁明を聞くなど,上記の正規の弁明機会以外にも弁明の機会をもっている。また,海兵隊人事部も同年1月17日に起こった事件内容を調査するため同年2月27日から同年3月1日の期間に原告に会っており,その際,原告に事件内容を詳述する機会が与えられていた。以上のとおり,原告に対し,十分な弁明の機会が与えられており,解雇措置の過程において適正な手続 27日から同年3月1日の期間に原告に会っており,その際,原告に事件内容を詳述する機会が与えられていた。以上のとおり,原告に対し,十分な弁明の機会が与えられており,解雇措置の過程において適正な手続がなされているのであって原告の主張は- 29 -失当である。 また,被告は,同年5月22日付け回答以降,海兵隊から新たに得た同僚等の証言記録等を慎重に考慮する過程で,同年6月29日に原告と面談を行っており,同回答以降原告に弁明の機会を与えていないとする原告の主張は失当である。 b その他原告は,本件発言のみを取り上げて,本件制裁解雇が処分としての相当性を欠くなどとも主張するが,本件発言を中心としつつも,原告の改善の可能性(矯正の可能性),これまでの勤務態度,職場に与える影響等を総合考慮することは何ら違法でもなければ不適切でもなく,諸機関労務協約附属書6D節5bにおいても,これらを考慮要素とすることは当然に予定されているところであるから,原告の主張は前提を誤っている。 仮に同じ内容の違反行為を行ったとしても,これまで真面目かつ誠実に勤務していた者であって,かつ,真しに反省し今後違反をしない旨誓約している場合と,これまで勤務態度が極めて不良で種々問題行動を繰り返し,度重なる注意をしても改善せず,かつ,到底真しに反省しているとは認められず言い逃れに終始し今後も種々問題行動をすることが推測されるような場合とでは処分結果が異なるのは当然である。 第3 当裁判所の判断 1 本件制裁解雇は,諸機関労務協約附属書8D節10a及び本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するとしてなされたものであるところ,本件制裁解雇に関する諸機関労務協約の規定(前提事実(3)参照)及び本件制裁解雇の手続(前提事実(2)参照)等に照らせば, 表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するとしてなされたものであるところ,本件制裁解雇に関する諸機関労務協約の規定(前提事実(3)参照)及び本件制裁解雇の手続(前提事実(2)参照)等に照らせば,いわゆる懲戒解雇の一種であると解される。 そこで,まずは,被告が主張立証責任を負うと解される原告の制裁解雇事由の存在について検討する。 2 争点①(原告の制裁解雇事由の存在)について(1) 本件発言について- 30 -ア被告は,平成19年1月17日,原告がP3に対して,P4を殺す旨発言(本件発言)し,本件発言が本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する旨主張する。そして,本件発言を聞いたとされるP3は,原告が「もう我慢できない,家族には迷惑をかけたくないから妻と離婚する準備とか,手続も全部したから,もうP4を殺す」と発言した旨,また,当時の原告について,「すごく怒っていたので,目も赤くなってから,もう涙が出そうなぐらいで,手もぐっとしてから,ガタガタもして,もういつ爆発するのもおかしくない感じ」であったと証言している(証人P3)。 そこで,かかるP3の証言の信用性について検討する。 確かに,P3の証言内容は,相応に迫真性等があり,海兵隊人事部従業員管理関係調整職P7作成の本件調査報告書(乙10)には,原告の本件発言に関する証言とおおむね一致する記載が存することが認められ,遅くとも本件調査報告書が作成された平成19年3月20日ころから,P3が一貫した供述をしていることがうかがわれる。また,本件調査報告書によれば,原告自身が,「死なす」又は「殺す(くるす)」のような言葉を使用したことを認めていたことがうかがわれるところである。 しかしながら,本件発言の具体的な内容を原告が争っているところ(原告は,「ゴメンヤ。ヌーガラ・ 死なす」又は「殺す(くるす)」のような言葉を使用したことを認めていたことがうかがわれるところである。 しかしながら,本件発言の具体的な内容を原告が争っているところ(原告は,「ゴメンヤ。ヌーガラ・アレーカラ・ワーガ・マトゥミティ・ウチクルスサー・キッサヌ相談や忘シリリヨ,P3(ごめんね。何かあれば,私がまとめてこらしめてやるよ。さっきあなたに相談したことは忘れなさいよ,P3。)」と発言したにすぎない旨供述している。),前提事実等(2)の本件制裁解雇に至る経緯にかんがみれば,原告を解雇することについて,沖縄防衛局よりも海兵隊人事部が積極的であったことが明らかであり,P3は,本件発言当時から現在に至るまでの間,原告が勤務するP1海兵隊福利厚生部(MCCS)の第1監督者の立場にあるから,原告に不利な虚偽の供述をするおそれがあることは否定できず,かかるP3の供述の信用性は,慎重に判断しなければならない- 31 -(なお,被告は,P5の供述と一致していることをP3の供述の信用性を肯定する一事情として主張しているが,P5は,本件発言当時,P1海兵隊福利厚生部(MCCS)の第2監督者の立場にあり,現在も同部自動車輸送部のメンテナンスオフィサーであるから,原告に不利な虚偽の供述をするおそれがあることはP3同様であり,P5の供述と一致するからといって,直ちにP3の供述の信用性が肯定されることとはならない。)。 この点,原告が「殺す(ころす)」と発言したか,「ウチクルス」と発言したかには争いがあるが,いずれの発言であっても,実際に殺害あるいはこれに準じた行為を企図している場合のみに用いられる言葉ではなく,すなわち,当該発言がなされた状況や前後の会話等から,どのような趣旨で発せられたかを検討しなければ,その意味を明らかにすることはできないところ,P3は を企図している場合のみに用いられる言葉ではなく,すなわち,当該発言がなされた状況や前後の会話等から,どのような趣旨で発せられたかを検討しなければ,その意味を明らかにすることはできないところ,P3は,原告が「殺す」という発言をするのに先立ち,「家族には迷惑をかけたくないから妻と離婚する準備とか,手続も全部した」と言った,また,本件発言の際の原告の様子について,「すごく怒っていたので,目も赤くなってから,もう涙が出そうなぐらいで,手もぐっとしてから,ガタガタもして,もういつ爆発するのもおかしくない感じ」であったと供述している。かかる供述の内容にかんがみると,要するに,P3は,原告の本件発言について,P4に対する不平や不満等から軽はずみに発せられた発言ではなく,現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であった旨供述しているものと解される(そうであるからこそ,本件発言は,本件制裁解雇における解雇事由として,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するものとされたと解される。)。 ところで,仮に本件発言が,P3の供述するとおり,現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったとすれば,海兵隊は,原告からP4の生命・身体を守る措置をとってしかるべきであると解される上,原告が米軍基地内に立ち- 32 -入ることができないように通行許可証(ベースパス)を取り上げるなど,原告からP4の生命・身体を守る措置をとることが容易に可能であったと推察される。そうであるにもかかわらず,前提事実等(2)アのとおり,海兵隊は,原告に対して,本件発言がなされた翌日である平成19年1月18日から休業手当支給身分(調査の ることが容易に可能であったと推察される。そうであるにもかかわらず,前提事実等(2)アのとおり,海兵隊は,原告に対して,本件発言がなされた翌日である平成19年1月18日から休業手当支給身分(調査の間一時的に勤務状態から離れること)とした(乙7)ものの,原告から通行許可証(ベースパス)を取り上げるなどの措置をとっておらず(甲21,証人P3,証人P5,原告本人),その他の証拠からしても,海兵隊が,原告からP4の生命・身体を守る何らかの措置をとったとの事情はうかがわれない。そうすると,本件発言後における海兵隊の原告に対する対応は,現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることが高い蓋然性で予見されたにしては悠長にすぎるものであって,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,P4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったとは認めがたい。この点,沖縄防衛局も,平成19年3月22日に海兵隊人事部から送付された本件調査報告書及び公式人事措置通知書(乙10)に対し,前提事実等(2)ウのとおり,原告が実際に殺人を犯す可能性を証明することは困難であり,また,解雇については,証拠の存在及び段階的な措置がとられているかが重要になり,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合には,権利の濫用として無効になることから,制裁解雇に同意できず,解雇以外の制裁措置をとるよう要請しており,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,P4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったと認めるにつき,慎重な見解を有していたものといえる。さらに,P3の供述によれば,原告は,P3とカウンセリングシートの写しを入手する方法を話していたところ,本件発言をするに至ったというのである ったと認めるにつき,慎重な見解を有していたものといえる。さらに,P3の供述によれば,原告は,P3とカウンセリングシートの写しを入手する方法を話していたところ,本件発言をするに至ったというのであるが,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったとすれば,唐突な感は否めない上,- 33 -P4を含む上司又は同僚に対し,実際に暴力を振るったことがない原告の行動傾向(原告が同僚であるP16と口論をしたことがあることに争いはないが,P3自身が,原告が暴力を振るったことはない旨証言している(証人P3)。)からしても,やはり唐突であるといわざるを得ない。そうすると,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったとは認められず,これと矛盾するP3の供述,すなわち,原告が「家族には迷惑をかけたくないから妻と離婚する準備とか,手続も全部した」と言ったという供述部分及び本件発言の際の原告の様子について,「すごく怒っていたので,目も赤くなってから,もう涙が出そうなぐらいで,手もぐっとしてから,ガタガタもして,もういつ爆発するのもおかしくない感じ」であったという供述部分は,いずれもにわかに信用することができず(前記のようにP3が一貫した供述をしていることなどに照らせば,原告が,妻と離婚する準備もしている旨の発言をした可能性は否定できないが,そうであっても,上記説示したところに照らせば,原告が,P4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるようなニュアンスで同発言をしたものとも,P3がそのように受け止めたものとも認められない。),原告がP3に対し,P 殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるようなニュアンスで同発言をしたものとも,P3がそのように受け止めたものとも認められない。),原告がP3に対し,P4を「殺す」又は「ウチクルス」という趣旨の発言をしたとの限度において,信用することができるにとどまる。なお,P3は,原告に聞き返すと原告が再度「殺す」と言った旨も供述しているが,前記のとおり,本件発言の主要部分についての供述が信用できないことからすれば,原告が再度「殺す」と言った旨の供述も信用することができない。 一方,原告は,本件発言について,「ゴメンヤ。ヌーガラ・アレーカラ・ワーガ・マトゥミティ・ウチクルスサー・キッサヌ相談や忘シリリヨ,P3(ごめんね。何かあれば,私がまとめてこらしめてやるよ。さっきあなたに相談したことは忘れなさいよ,P3。)」と発言したにすぎない旨供述しているとこ- 34 -ろ,かかる供述は,カウンセリングシートに関する会話の後,P3がP4に対する不満を口にしたことに呼応されてなされた発言として自然であるし,原告がP4に対する不満を有していたという争いのない事実とも矛盾しないものであって,おおむねその内容を信用することができる(もっとも,平成19年3月20日付け本件調査報告書(乙10)には,原告が「死なす」又は「殺す(くるす)」のような言葉を使用したことを認めた旨の記載があり,かかる記載内容が虚偽であるとも解されない。そうすると,具体的な発言の内容に関する原告の記憶は必ずしも明瞭でないとうかがわれるところであり,かかる事情に照らせば,原告の供述によっても,本件発言が「ウチクルス」という発言であったとまで断定することはできない。)。 そして,前記のとおり,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に に照らせば,原告の供述によっても,本件発言が「ウチクルス」という発言であったとまで断定することはできない。)。 そして,前記のとおり,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったとは認められないことに加え,当時の原告とP3との関係は比較的友好的であったとうかがわれること(証人P3,原告本人)や前記原告の供述からうかがわれる本件発言に至る経緯等からすれば,原告は,P3に対して,上司であるP4に対する不満等を話しても,P4らに伝わることはないであろうと考え,その不満等を暴力的な言葉を使用して表現したものと認めるのが相当である。 これに対し,被告は,①そもそも原告がP3を慰めるつもりでP4をこらしめるなどと発言するのは不自然であること,②P3は原告が「ウチクルス」ではなく「殺す(ころす)」という発言をしたと明言しており,原告の供述はP3の供述と齟齬していること,③P3は平成19年1月からは禁煙しており,たばこを吸っていたP3に話しかけたというのは客観的事実と合致しないことなどを指摘し,原告の供述は信用できない旨主張する。しかしながら,上記①については,原告がP3を慰めるつもりであったかは措くとしても,原告がP4に対する不満を持っていたことには争いがないところ,原告がP3もP4に- 35 -対する不満を有しているものと考えたことから出た発言であるならば,不自然であるとはいえない上,上記②については,前記のとおり,P3の供述にはにわかに信用しがたい部分があり,P3の供述は,原告がP3に対して,P4を「殺す」又は「ウチクルス」という趣旨の発言をしたとの限度において,信用することができるにとどまるから,原告が「殺す」と発言したというP3の供述と矛盾すること 3の供述は,原告がP3に対して,P4を「殺す」又は「ウチクルス」という趣旨の発言をしたとの限度において,信用することができるにとどまるから,原告が「殺す」と発言したというP3の供述と矛盾することが,原告の供述の信用性を減殺させるとは解されず,上記③については,P3が当時禁煙していたことは,客観的な裏付けを欠くものであって,前記同様,これと矛盾することが,原告の供述の信用性を減殺させるとは解されず,かかる被告の主張は採用できない。 以上によれば,原告が「殺す(ころす)」と発言したか,「殺す(くるす)」ないし「ウチクルス」と発言したかは必ずしも判然としないものの,いずれの発言であったとしても,その発言がなされた前後の状況に照らせば,原告が上司であるP4に対する不満等を暴力的な言葉を使用して表現したものにとどまり,本件発言が現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言であったとは認められない。 イ以上を前提に,本件発言が解雇事由足り得るかについて,検討する。 この点,前提事実等(3)オのとおり,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」の説明として,「争闘,脅迫もしくは他人に対する傷害,権限ある者に対する肉体的抵抗,士気,業務もしくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動またはみだらなもしくは不道徳な行為」が挙げられているところ,同記載を例示であると解したとしても,同記載と同程度の行為でなければ,これに該当するものとして,同表記載の制裁措置を行うことが許されないことはいうまでもない。 そして,前記アのとおり,原告の本件発言は,その表現内容や上司に対する発言であることに照らせば,不穏当な発言というべきであるものの,P3に対- 36 -して,P4に対する不満等を暴力的 もない。 そして,前記アのとおり,原告の本件発言は,その表現内容や上司に対する発言であることに照らせば,不穏当な発言というべきであるものの,P3に対- 36 -して,P4に対する不満等を暴力的な言葉を使用して表現したものにとどまり,現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言ではない上,本人(P4)に対して直接発せられた発言でないことなどにも照らせば,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」a「軽」にいう「無礼な,下品なまたは挑発的な言葉を用いること」に当たるといえるものの,1回目の違反から制裁解雇が許容されるような,争闘等と並び評価される「脅迫」や「士気,業務若しくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動」あるいはこれに準じた行為に該当するとは解されず,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に当たるものとは解されない。 (2) その他の解雇事由について被告は,①原告の職場内における協調性を無視した態度等,②原告が同僚であるP9に対して,P4に対する脅し言葉を口にしたこと,③原告が手に持ったスパナを振り上げてP6を殴る仕草をしたことなどが,いずれも本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する旨主張する。 しかしながら,上記①については,本件解雇予告通知書(乙8)の記載等によれば,本件制裁解雇に当たって総合的に考慮(勤務記録,周囲の評価,矯正の可能性等)した事情にすぎないと解され,本件制裁解雇において,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する事由とされているとは認めがたい。 また,この点を措くとしても,原告が,同僚を睨みつけたり,無反応であったり,噛みつかんばかりの態度をとったり,長時間ぼうっとしていたり,攻撃的・脅迫的な態度をとったとい とされているとは認めがたい。 また,この点を措くとしても,原告が,同僚を睨みつけたり,無反応であったり,噛みつかんばかりの態度をとったり,長時間ぼうっとしていたり,攻撃的・脅迫的な態度をとったというのは,原告の上司又は同僚の陳述書(乙14ないし22)やP3,P5及びP8の各証言に基づく主張と解されるが,客観的な裏付けが存するわけではなく,むしろ原告が仕事等で表彰されていたこと(甲1ないし3,17,18)などからうかがわれる原告の人物像とは必ずしも一致せず,にわかに信用しがたい上,原告が上記のような態度等をとったことがあるとしても,原告が罹患する精神的な疾患(甲6ないし12)等の影響とも考え得るところで- 37 -あり,原告が実際に暴力を振るうなどしたことはないという争いのない事実からすれば,これらの態度があったとしても原告が直ちに上司又は同僚等に対して暴力を振るうなどすることが予見されるわけではなく,いずれにしても1回目の違反から制裁解雇が許容されるような「争闘,脅迫もしくは他人に対する傷害,権限ある者に対する肉体的抵抗,士気,業務もしくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動またはみだらなもしくは不道徳な行為」あるいはこれに準じた行為に該当するとは解されず,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するものとは認められない。 また,上記②については,本件解雇予告通知書(乙8)に明確な記載がなく,本件制裁解雇の解雇事由とされているとは認めがたい上,この点を措くとしても,原告の同僚であるP9が,原告がP4を殺すという脅し言葉を口にしたことがある旨述べている(乙16)ものの,その発言の日時や具体的内容等が全く明らかでなく,裏付けも欠くものであって,その発言の存在自体が的確に立証されていないばかりか,本件発言同様,現に原告がP4を とがある旨述べている(乙16)ものの,その発言の日時や具体的内容等が全く明らかでなく,裏付けも欠くものであって,その発言の存在自体が的確に立証されていないばかりか,本件発言同様,現に原告がP4を殺害,あるいは,少なくともP4に何らかの物理的攻撃に出ることを高い蓋然性で予見させるような発言があったと解すべき事情もうかがわれず,単にP4に対する不満を表現したにすぎない可能性も存することからすれば,いずれにしても本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するものとは認められない。 さらに,上記③については,上記②同様,本件解雇予告通知書(乙8)に明確な記載がなく,本件制裁解雇の解雇事由とされているとは認めがたい上,この点を措くとしても,原告の同僚であるP8が,原告がP6の背後からスパナを振り上げて殴る仕草をした旨述べている(乙14,証人P8)ものの,仮にそのような行動に原告が及んでいたとしても,P8の供述からうかがわれる状況にかんがみれば,原告の行動は,P6が原告のもとを立ち去る際に,その背後からP6に気付かれないような形で原告がP6をスパナで殴るそぶりをしたというにとどまり,上司に対する態度として不適切であるものの,真に殴打する行為に出たわけ- 38 -でも,殴打することを告知したわけでもない以上,1回目の違反から制裁解雇が許容されるような「争闘,脅迫もしくは他人に対する傷害,権限ある者に対する肉体的抵抗,士気,業務もしくは規律の保持に悪影響を与える粗野な言動またはみだらなもしくは不道徳な行為」あるいはこれに準じた行為に該当するとは解されず,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するものとは認められない。 (3) 小括以上によれば,本件制裁解雇の解雇事由である本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に されず,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するものとは認められない。 (3) 小括以上によれば,本件制裁解雇の解雇事由である本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する違反行為は認められず,その余の点について判断するまでもなく,本件制裁解雇は無効である。 なお,被告は,その他の違反行為(本件違反行為表1「反抗」a「軽」,本件違反行為表2「無許可欠勤」a「軽」,本件違反行為表5「不注意な仕事または職務上の過失」a「軽」,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」a「軽」,本件違反行為表16「私的業務」に該当する旨主張しているもの。)も主張しているが,これらの違反行為は,個々的に見ると,制裁措置として解雇が許容されるものではない(乙1)上,被告の主張によっても,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する違反行為が存在することを前提に,本件制裁解雇に当たって総合的に考慮(勤務記録,周囲の評価,矯正の可能性等)した事情にすぎず(被告は,本件違反行為表には,ここに掲げる制裁措置のほかにも,算定期間内に4回又はそれ以上の違反行為を犯した従業員に対して制裁解雇が認められるとの注記がある旨の指摘もしているが,本件解雇予告通知書(乙8)及び本件解雇決定通知書(乙9)によれば,本件制裁解雇は,本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する違反行為に基づくものであることが明らかであり,同注記に基づくものと解する余地はない。),本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当する違反行為が認められない以上,その他の違反行為が存在したとしても,上記結論が左右されることはない。 - 39 - 3 争点②(本件制裁解雇が解雇権の濫用に当たるか)について仮に本件発言が本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b 違反行為が存在したとしても,上記結論が左右されることはない。 - 39 - 3 争点②(本件制裁解雇が解雇権の濫用に当たるか)について仮に本件発言が本件違反行為表12「秩序を乱す行為」b「重」に該当するとしても,1回目の違反行為に対する制裁措置として,公式訓戒から解雇までを選択できるところ,前記2(1)アで認定した本件発言の内容及び性質からすれば,「争闘」や「他人に対する傷害」といった直接的な有形力の行使等とは,非難の程度が自ずと異なるものであって,原告にその他の違反行為等の非難されるべき事情が存したとしても,制裁解雇を選択したことは,重きに失するものといわざるを得ず,本件制裁解雇は解雇権の濫用というべきである。 これに対し,被告は,本件発言を中心としつつも,原告の改善の可能性(矯正の可能性),これまでの勤務態度,職場に与える影響等を総合考慮すれば制裁解雇が相当である旨主張するが,被告の主張する事情には,これを認めるに足る的確な証拠を欠くため,その存在が明白とはいいがたい事情も存する上,存在するとしても,その態様も被告が主張するほど悪質な違反行為等であったとは解されないものも認められる。例えば,被告は,原告が理由も明らかにせず常習的に遅刻をしていた旨主張しており(前記第2の2(1)ア(イ)a参照),P3及びP5は,これに沿う供述をする(なお,遅刻があったことは原告も認めるところである(原告本人)。)が,原告が遅刻した頻度や時間等を客観的に裏付けるタイムカード等が存在せず,原告の遅刻の頻度や時間等は必ずしも判然としない上,P4及びP5作成の日誌(乙13)によっても,平成18年度における原告の遅刻は,同年2月3日に10分間,同年3月3日に6分間,同年5月24日に10分間,同年10月3日に5分間及び同月17日に2分間 P4及びP5作成の日誌(乙13)によっても,平成18年度における原告の遅刻は,同年2月3日に10分間,同年3月3日に6分間,同年5月24日に10分間,同年10月3日に5分間及び同月17日に2分間の5回しか記載されていない。ところで,同日誌は,原告の違反行為を記録することを目的として作成されたことが明らかであり,その目的からすれば,原告が遅刻した場合には,できるだけ記録されると考えられ,仮に記録漏れがあったとしても,同日誌の記載を大幅に上回るような頻度や時間等の遅刻が存したとは解されない(これに反するP5らの供述は信用できない。)。確かに,職場への遅刻は非難されるべきであるとしても,1年間に5回程度であれば常習的と- 40 -はいえず,遅刻した時間も最も長いもので10分間程度であり,そのうち2回については連絡もされており,遅刻の理由が明らかにされていないとはいえない。これらの事情を考慮すれば,被告が主張するほどに悪質な遅刻が常習的に行われていたとは解されない。そうすると,上記のとおり制裁措置として,公式訓戒から解雇までを選択できるところ,原告には,上記認定したような本件発言やP6への行動等,職場の秩序を乱すような上司に対する不適切な言動や,上記のように勤務態度においても不十分な点が存するものの,これまで検討したこれら各行為の態様,程度等に照らせば,原告に対し,制裁解雇を選択したことは,やはり重きに失するといわざるを得ない。 4 結論以上のとおり,本件制裁解雇は無効である。 したがって,本件請求のうち,原告が被告に対する雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分は理由がある。また,本件請求のうち,賃金の支払を求める部分については,前提事実等(4)のとおり,月当たりの賃金が原告の主張する29万7590円(基本給26万 有する地位にあることの確認を求める部分は理由がある。また,本件請求のうち,賃金の支払を求める部分については,前提事実等(4)のとおり,月当たりの賃金が原告の主張する29万7590円(基本給26万0900円+格差給2万6090円+扶養手当6500円+通勤手当4100円)であると認められ(被告もこれを争っていない。),理由があり,賞与の支払を求める部分については,前提事実等(4)のとおり,主文掲記の金額(夏季手当56万8225円((基本給26万0900円+扶養手当6500円)×212.5パーセント),年末手当62万1705円((基本給26万0900円+扶養手当6500円)×232.5パーセント))の支払を求める限度で理由があり(被告は,賞与額が年によって異なる旨の主張をするが,上記賞与額を下回る金額を支給すべきことをうかがわせる証拠は存しない。),これを超える部分は理由がない。 よって,主文とおり判決する。 那覇地方裁判所民事第1部 - 41 -裁判官新 海 寿加子 裁判官横 倉 雄一郎 裁判長裁判官田中健治は転補のため署名押印できない。 裁判官新 海 寿加子
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